説明

留置針組立体

【課題】留置針としての穿刺性能を維持しつつ、穿刺痛を軽減し、且つ操作性を向上させた留置針組立体を提供する。
【解決手段】留置針組立体10は、先端が細径化された刃先をもつ内針11と、内針11の後端部が固定される内針基12と、内針11が挿通される中空のカバー19と、カバー19の後端が固定されると共に、内針基12と摺動自在に係合されるスライド部20と、内針11とカバー19とが挿通され、少なくとも内針11の刃先が外部に突出するカテーテル15とを備える。カバー19の先端はカテーテル15の先端よりも外側に突出し、且つ内針11の刃先に向かって細くなるテーパー部191が設けられ、内針基12とスライド部20とを接合したときには内針11の刃先がカバー19の先端から突出し、内針基12とスライド部20とを離間したときには内針11の刃先がカバー19内に収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析や輸液、輸血などを行う際に使用される留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、治療のために血液透析や輸液、輸血などが行われており、その処置を行うための器具として留置針が用いられている。この留置針は、金属製の内針を樹脂製のカテーテル(外筒)内に収納したもので、血管への挿入後に内針を抜くと、カテーテルのみが被穿刺者の体表面に留置されるものである。
【0003】
また留置針では、穿刺時に被穿刺者の感じる痛み(以下、穿刺痛という)を減らすための工夫として、内針を細径化する試みがなされている。このように内針を細径化した場合は、内針が挿通されるカテーテルチューブも細径化する必要がある。これは、内針とカテーテルチューブとが密着していないと穿刺がうまくゆかないためである。
【0004】
一方、穿刺終了後に内針を安全に廃棄するための安全機構を備えた留置針の提案がなされている。例えば、ハウジングを伸縮自在な構成とし、穿刺終了後にハウジングをテレスコープ状に伸ばすことにより針先を覆うようにした留置針が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開2000−254225号公報
【特許文献2】特開2004−24622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、穿刺痛を軽減するために内針を細径化すると強度が低下して穿刺時に内針が変形しやすくなるため、正確な穿刺を行うことが難しくなり、穿刺性能が低下することが考えられる、また、カテーテルチューブ全体に亘って細径化すると、内部を流れる液体の流量が減少するため、治療のために十分な流量を確保することができなくなるおそれがある。
【0006】
また、安全機構としてハウジングをテレスコープ状に伸ばすように構成された留置針では、ハウジングを多段に伸ばさなければ内針を覆うことができないため、必然的にハウジングが大きくなり、穿刺時の操作性が悪くなることが考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、留置針としての穿刺性能を維持しつつ、穿刺痛を軽減し、且つ操作性を向上させた留置針組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、先端に穿刺部を有する細径化された内針と、当該内針の後端部が固定される内針基と、内針が挿通される中空のカバーと、当該カバーの後端が固定されると共に、内針基と摺動自在に係合されるスライド部と、内針とカバーとが挿通され、内針の穿刺部とカバーの先端が外部に突出するカテーテルとを備え、カバーの先端はカテーテルの先端よりも外側に突出し、且つ内針の穿刺部に向かって細くなるテーパー部が設けられ、内針基とスライド部とを接合したときには内針の穿刺部がカバーの先端から突出し、内針基とスライド部とを離間したときには内針の穿刺部がカバー内に収納される留置針組立体であることを要旨とする。
【0009】
第1の特徴に係る留置針組立体によると、内針を細径化し、且つカバーの先端にテーパー部を設けているため、穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。また、内針がカバーにより補強されているために穿刺時に変形しにくく、正確な穿刺を行うことができる。したがって、内針の細径化による穿刺性能の低下を防止することができる。更に、カテーテルチューブの全体を細径化しなくてもよいため、内部を流れる液体の流量を減らすことなく、治療のために十分な流量を確保することができる。また、わずかな長さ分だけ本体を伸ばせばよいため、留置針組立体をコンパクトにすることができ、穿刺時の操作性を向上させることができる。
【0010】
また、第1の特徴に係る留置針組立体において、カバーの先端は、斜めに切断された刃面形状に形成されていてもよい。
【0011】
本発明の第2の特徴は、先端に穿刺部が形成された内針と、当該内針の後端部が固定される内針基と、内針が挿通される中空のカバーと、当該カバーの後端が固定されると共に、内針基と摺動自在に係合されるスライド部と、内針とカバーとが挿通され、内針の穿刺部が外部に突出するカテーテルとを備え、カテーテルの先端には内針の穿刺部に向かって細くなるテーパー部が設けられ、カバーの先端はカテーテルの先端よりも内側にあり、内針基とスライド部とを接合したときには内針の穿刺部がカバーの先端から突出し、内針基とスライド部とを離間したときには内針の穿刺部がカバー内に収納される留置針組立体であることを要旨とする。
【0012】
第2の特徴に係る留置針組立体によると、内針を細径化し、且つカバーの先端がカテーテルの内側にあるため、穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。また、内針がカバーにより補強されているために穿刺時に変形しにくく、正確な穿刺を行うことができる。したがって、内針の細径化による穿刺性能の低下を防止することができる。更に、カテーテルチューブの全体を細径化しなくてもよいため、内部を流れる液体の流量を減らすことなく、治療のために十分な流量を確保することができる。また、わずかな長さ分だけ本体を伸ばせばよいため、留置針組立体をコンパクトにすることができ、穿刺時の操作性を向上させることができる。
【0013】
また、第2の特徴に係る留置針組立体において、カバーの先端は、斜めに切断された刃面形状に形成され、当該斜めに切断されたカバーの向きは、内針の斜めに切断された向きと同じ向きに配置されていてもよい。
【0014】
また、第2の特徴に係る留置針組立体において、カバーは、内針とカテーテルの間の空隙部を埋めるように配置されていてもよい。
【0015】
また、第1及び第2の特徴に係る留置針組立体において、カバーは、内針と同軸に設けられた複数の部材からなってもよい。
【0016】
また、第1及び第2の特徴に係る留置針組立体において、内針基とスライド部とを離間したときに、内針基とスライド部との係合を固定する固定手段を備えてもよい。
【0017】
また、第1及び第2の特徴に係る留置針組立体において、内針は穿刺部が中空針、胴体部が透明体でそれぞれ形成され、且つ、内針が挿通されるカバーは透明体で形成されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、留置針としての穿刺性能を維持しつつ、穿刺痛を軽減し、且つ操作性を向上させた留置針組立体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。以下の面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る留置針組立体の構造を示す断面図である。図1に示す構造は、後述する他の実施形態と基本的に共通している。なお、各図においては、図を見易くするために細い部分の断面表現(斜線)を省略している。また、「先端側」とは内針11の刃先側を指し、「後端側」とは内針11の針基側を指すものとする。
【0021】
図1に示すように、第1の実施形態に係る留置針組立体10は、被穿刺者に穿刺される内針11と、この内針11の後端部を固定する内針基12と、カテーテル15と、カテーテル15に接続されたクランプチューブ16と、コネクター17と、止血弁18と、内針11が挿通される中空のカバー19と、カバー19の後端部を固定するスライド部20とを備えて構成されている。
【0022】
内針11は、カテーテルチューブ13及びカバー19の内腔に挿通される中空針であり、カバー19の内腔に挿通可能となるように外径が設定されている。また内針11は、血管への穿刺が容易である金属製のものが一般に用いられる。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、あるいはこれらの合金等の金属材料によって形成されている。さらに、内針11はカテーテルチューブ13及びカバー19に挿通された状態で被穿刺者に穿刺されるので、刃先がカテーテルチューブ13の先端から突出するような長さに設定されている。内針11の先端には鋭利な刃先(穿刺部)が形成されており、この刃先は穿刺抵抗を低くするために傾斜した刃面を備えている。また、内針11は穿刺痛を軽減するために細径化されている。
【0023】
内針基12は、穿刺者が穿刺時に握るグリップ121と、内針11の後端部を固定する針基122とから構成されている。グリップ121は円筒状に形成され、内部に貫通孔が設けられている。針基122は断面略凸形状に形成され、グリップ121の貫通孔内に取り付けられる。そして、内針11は針基122の先端部(以下、適宜に雄部という)に固定される。またグリップ121の先端側の内周面には、後述するスライド部20の弾性突起201と係合する溝123が形成されている。
【0024】
穿刺者はカテーテル15を被穿刺者に穿刺する際、この内針基12を保持しながら作業を行い、また穿刺後は、クランプチューブ16を保持した状態で内針基12を取り外すことにより内針11を本体部分から抜去することができる。なお、内針11を抜去した際、止血弁18により血液の外部への漏れが防止されることになる。
【0025】
カテーテル15は、カテーテルチューブ13及びカテーテル基14により構成されている。カテーテルチューブ13は血管内を傷つけるおそれの少ない軟質樹脂製のものが一般に用いられている。
【0026】
カバー19は、細径化した内針11の強度を補うための補強部材としての機能と、穿刺後にカテーテル15から抜き取られた内針11の刃先を覆うための保護部材としての機能を有するものである。カバー19は、金属や透明な樹脂(透明体)で形成されている。本実施形態ではチューブ状のカバーを示しているが、この例に限らず、金属や透明な樹脂(透明体)をコイル状に成形したものであってもよい。
【0027】
スライド部20は、断面略凸形状に形成され、内部に針基122の先端部が挿通可能な貫通孔が設けられている。カバー19の後端部はこの貫通孔内に固定されている。また、スライド部20の後端側(以下、適宜に雌部という)には、上述したグリップ121の溝123と係合する弾性突起201が2箇所に形成されている。この弾性突起201は外側に向けて付勢されている。
【0028】
スライド部20を内針基12に挿入すると、カバー19の内部に内針11が挿通されると共に、スライド部20の雌部に針基122の雄部が挿通され、スライド部20は内針基12と摺動自在に係合されることになる。この状態でスライド部20に形成された弾性突起201は、グリップ121の貫通孔の内周面側に付勢されている。
【0029】
第1の実施形態において、グリップ121の溝123と、スライド部20の弾性突起201とは、内針基12とスライド部20とを離間したときに、内針基12とスライド部20との係合を固定する固定手段として機能する。
【0030】
次に、留置針組立体10の先端部の構造について説明する。図2は、図1のA部分の拡大断面図である。
【0031】
図2に示すように、カバー19の先端はカテーテルチューブ13の先端よりも外部に突出し、且つ内針11の先端側に向かって細くなるテーパー部191が設けられている。内針11の先端はカバー19の先端から所定長さ突出している。またカテーテルチューブ13の先端には半円部131が設けられている。カバー19の先端はカテーテルチューブ13の先端から所定長さ突出している。また、図示していないが、カテーテルチューブ13の先端には、内針11の刃先に向かって細くなるテーパー部が設けられている(図5参照)。
【0032】
なお、第1の実施形態に示す内針11は、図3(a)に示すような中空針であるが、図3(b)に示すような無空針11Aであってもよい。
【0033】
上記のように構成された留置針組立体10では、カテーテル15に内針11及びカバー19が挿通された状態で被穿刺者の血管に穿刺され、カテーテルチューブ13が所定の位置まで挿入された後に内針11及びカバー19は内針基12とともにカテーテル15から抜き取られる。また、止血弁18も取り外される。そして、カテーテルチューブ13が被穿刺者の体表面に留置されると、コネクター17に図示しない輸液ラインなどが接続され、カテーテルチューブ13を通じて輸液や薬液などが血管中に投入される。
【0034】
第1の実施形態に係る内針11は細径化され、且つカバー19の先端には内針11の先端側に向かって細くなるテーパー部191が設けられているので、穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。また、内針11はカバー19により補強されているため、穿刺時に変形しにくく、正確な穿刺を行うことができる。したがって、内針の細径化による穿刺性能の低下を防止することができる。更に、カテーテルチューブ13の全体を細径化しなくてもよいため、内部を流れる液体の流量を減らすことなく、治療のために十分な流量を確保することができる。
【0035】
次に、穿刺終了後に内針11を廃棄するための安全機構について説明する。図4は、留置針組立体10から抜き取られたスライド部20と内針基12を示す断面図である。ここでは、スライド部20と内針基12とを含めた部分をハウジングという。
【0036】
上述したように、穿刺が終了すると、被穿刺者の体表面に留置されたカテーテルチューブ13から内針11やカバー19等が抜き取られ、図4(a)に示すように、スライド部20と内針基12とが接合した状態で取り出されることになる。この状態では内針11の刃先がカバー19の先端から突出している。ここで、スライド部20と内針基12とが離間するように図中矢印で示す方向にそれぞれ相互に移動させるか、或いは一方を固定して他方を矢印方向に移動させると、図4(b)に示すように、内針11の刃先がカバー19の内部に収納される。
【0037】
そして、内針基12とスライド部20とをL1の長さとなるまで離間させると、グリップ121の溝123にスライド部20の弾性突起201が嵌め合わされ、内針基12とスライド部20との係合が固定されることになる。このように、内針基12とスライド部20との係合が固定されると、内針基12とスライド部20とを接合する方向への移動や、離間させる方向への移動が阻止されるため、使用済みの内針11の刃先による刺針事故を確実に防止することができる。したがって、本実施形態の構成によれば、内針基12とスライド部20とをL1の長さだけ伸ばせば安全機構が機能することになる。
【0038】
なお、上記のような安全機構を機能させたときに、内針11の刃先を確実にカバー19の内部に収納するためには、L1>L2(図2参照)となるように各部の寸法を設定する必要がある。
【0039】
これによれば、安全機構としてハウジングをテレスコープ状に伸ばすように構成された従来例に比べて、わずかな長さ分だけハウジングを伸ばせばよいため、ハウジングがコンパクトになり、穿刺時の操作性を向上させることができる。また本実施形態では、内針11の刃先がカバー19の先端からL2の長さしか突き出ないので、スライド部20と内針基12とを離間させる長さL1を短くすることができる。したがって、廃棄時の作業性を向上させることができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の留置針組立体10では、内針11を細径化し、且つカバー19の先端に内針11の先端側に向かって細くなるテーパー部191を設けているため、穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。また、内針11がカバー19により補強されているために穿刺時に変形しにくく、正確な穿刺を行うことができる。したがって、内針の細径化による穿刺性能の低下を防止することができる。更に、カテーテルチューブ13の全体を細径化しなくてもよいため、内部を流れる液体の流量を減らすことなく、治療のために十分な流量を確保することができる。また、ハウジングをコンパクトにすることができるため、穿刺時の操作性を向上させることができる。
【0041】
したがって、第1の実施形態に係る留置針組立体10では、留置針としての穿刺性能を維持しつつ、穿刺痛を軽減し、且つ操作性を向上させることができる。 なお、本実施形態では、カテーテルチューブ13の先端にテーパー部を設けた例について示したが、このようなテーパー部のないカテーテルチューブを用いて構成することもできる。この場合でも、細径化された内針11の外周にはカバー19が設けられているため、カテーテルチューブ13の径をカバー19の分だけ太くすることができる。すなわち、カテーテルチューブ13を内針11に合わせて細径化しなくても内針11とカテーテルチューブ13とを密着させることができるので、穿刺を容易に行うことができる。また、カテーテルチューブ13を内針11と密着するほど細径化しなくてもよいため、内部を流れる液体の流量を減らすことなく、治療のために十分な流量を確保することができる。
【0042】
[第2の実施形態]
次に、留置針組立体10の先端部の他の構造について説明する。図5は、カテーテルの先端にテーパー部を設けた場合の構成を示すもので、図1のA部分に相当する拡大断面図である。
【0043】
第2の実施形態では、図5に示すように、カテーテルチューブ23の先端に、内針11の刃先に向かって細くなるテーパー部24を設けて、カテーテルチューブ23の先端側の径がカテーテルチューブ本体の径よりも細くなるように構成されている。また、カバー19はカテーテルチューブ23の先端よりも内側となるように全体の長さが設定されている。本実施形態では、内針11の刃先からカバー19の先端までの長さはL3であり、上述した安全機構を機能させたときに内針11の刃先を確実にカバー19の内部に収納するためには、L1(図4参照)>L3となるように各部の寸法を設定する必要がある。
【0044】
第2の実施形態においては、内針11が細径化され、且つカバー19の先端はカテーテルチューブ23の内側にあるため、穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。また、内針11はカバー19により補強されているため、穿刺時に変形しにくく、正確な穿刺を行うことができる。したがって、内針の細径化による穿刺性能の低下を防止することができる。更に、カテーテルチューブ13の全体を細径化しなくてもよいため、内部を流れる液体の流量を減らすことなく、治療のために十分な流量を確保することができる。
【0045】
[第3の実施形態]
次に、カバー19の他の実施形態について説明する。図6は、カバーを複数の部材により構成した場合の拡大断面図である。
【0046】
第3の実施形態に係るカバー29は、第1カバー291と第2カバー292とから構成されている。第1カバー291は、内針11と同軸で、内針11の外周に設けられている。また第2カバー292は、内針11と同軸で、第1カバー291の更に外周に設けられている。また、各カバーの先端には内針11の先端側に向かって細くなるテーパー部(符合を省略)が設けられている。そして、第2カバー292の先端はカバー19の先端から所定長さ突出し、第1カバー291の先端は第2カバー292の先端から所定長さ突出している。更に、内針11の先端は第1カバー291の先端から所定長さ突出している。カテーテルチューブ13は、先端側にテーパー部が設けられていてもよいし、全体が同じ径のものであってもよい。
【0047】
本実施形態のカバー29では、第1カバー291及び第2カバー292の肉厚を変えることにより、カバー29の外径を先端側から後端側に向かって段階的に太くすることができる。したがって、カテーテルチューブの外径が後端側に向かって太くなるような構造である場合には、このカテーテルチューブの外径に合わせて第1カバー291及び第2カバー292の肉厚を厚くすることにより、内針11の補強効果を増大させることができる。
【0048】
このようにカバーを複数の部材で構成した場合でも、図6に示すように、各カバーの先端にテーパー部を設けることによって穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。また、図5の実施形態と同様に、カバー29がカテーテルチューブ13の先端よりも内側となるように構成してもよい。この場合も、穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。なお、本実施形態では、カバー29を2つの部材(第1カバー291,第2カバー292)で構成した例について示したが、3つ以上の部材により構成してもよい。
【0049】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。図7は、第4の実施形態における内針の構造を示す側面図、図8は、本実施形態の内針をセットした留置針組立体の先端部分の拡大図である。
【0050】
図7に示すように、第4の実施形態に係る内針21は、先端穿刺部211が金属で形成され、内針胴部212は樹脂等の透明体で形成されている。先端穿刺部211は、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、あるいはこれらの合金等の金属材料で構成された中空針なので、血管への穿刺が容易になる。
【0051】
内針胴部212は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の透明または半透明の硬質材料が用いられているので、内針21が被穿刺者に穿刺されたときに血液の逆流を確認することが可能となる。
【0052】
これにより、通常の留置針では、血液の逆流を確認できる位置は内針11の基端部側の末端となる内針基12(図1参照)の位置であったのに対して、本実施形態の内針21を用いた場合には、図8に示すように、先端穿刺部211と内針胴部212との接続位置Bを過ぎれば血液の逆流を確認することが可能となる。 このように、第4の実施形態に係る内針21をセットした留置針組立体では、内針21の先端穿刺部211を金属で形成し、内針胴部212を透明体で形成したので、血液の逆流を速やかに確認することができる。
【0053】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態に係わる留置針組立体について、図9及び図10を用いて説明する。
【0054】
第5の実施形態に係る留置針組立体は、第1の実施形態に係る留置針組立体におけるカバー19の先端部分の形状が異なる。すなわち、図9に示すように、カバー19の先端は、カテーテルチューブ13の先端よりも外部に突出し、且つ内針11の先端側に向かって細くなるテーパー部191が設けられている。内針11の先端は、カバー19の先端から所定長さ突出している。またカテーテルチューブ13の先端には半円部131が設けられている。カバー19の先端はカテーテルチューブ13の先端から所定長さ突出している。
【0055】
カバー19の先端に設けられたテーパー部191は、図10の側面図に示すように、斜めに切断され、刃面形状に形成されている。すなわち、内針11の穿刺部に近い形状となっている。但し、カバー19単体では穿刺が難しい程度に先端を鈍化させている。
【0056】
第5の実施形態に係る留置針組立体によると、内針11は細径化され、且つカバー19の先端には内針11の先端側に向かって細くなるテーパー部191が設けられているので、穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。また、カバー19の先端が内針11の穿刺部に近い形状としているため、穿刺痛を更に軽減することができる。
【0057】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態に係る留置針組立体について、図11及び図12を用いて説明する。第6の実施形態に係る留置針組立体は、第2の実施形態に係る留置針組立体におけるカバー19の形状が異なる。すなわち、図11に示すように、カテーテルチューブ23の先端には、内針11の刃先に向かって細くなるテーパー部24が設けられ、カテーテルチューブ23の先端側の径がカテーテルチューブ本体の径よりも細くなるように構成されている。また、カバー19はカテーテルチューブ23の先端よりも内側となるように全体の長さが設定されている。
【0058】
更に、カバー19の先端は、図12の側面図に示すように、斜めに切断され、刃面形状に形成されている。このため、第2の実施形態において説明した図5の留置針組立体に比べて、内針11とカテーテルチューブ23の間の空隙部30の体積が小さくなる。また、斜めに切断されたカバーの向きは、内針11の斜めに切断された向きと同じ向きに配置されている。
【0059】
第6の実施形態に係る留置針組立体によると、内針11は細径化され、且つカバー19の先端はカテーテルチューブ23の内側にあるため、穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。また、内針11とカテーテルチューブ23の間には空隙部30が生じているが、カテーテルチューブ23は柔軟な材質でできているので、空隙部30が大きければ大きいほど、カテーテルチューブ23が変形して穿刺性が悪化してしまう。しかし、本実施形態に係る留置針組立体は、この空隙部30を小さくし、特に、内針を皮膚に穿刺した場合に下側となる部分の空隙部30を小さくしているので、穿刺性を向上させることができる。
【0060】
[第7の実施形態]
次に、第7の実施形態に係る留置針組立体について、図13を用いて説明する。第7の実施形態に係る留置針組立体は、第6の実施形態に係る留置針組立体におけるカバー19の形状が異なる。すなわち、図13に示すように、カテーテルチューブ23の先端に、内針11の刃先に向かって細くなるテーパー部24を設けて、カテーテルチューブ23の先端側の径がカテーテルチューブ本体の径よりも細くなるように構成されている。また、カバー19はカテーテルチューブ23の先端よりも内側となるように全体の長さが設定されている。
【0061】
更に、カバー19は、内針11とカテーテルチューブ23の間の空隙部を埋めるように配置されている。
【0062】
第7の実施形態に係る留置針組立体によると、内針11は細径化され、且つカバー19の先端はカテーテルチューブ23の内側にあるため、穿刺時に被穿刺者の感じる穿刺痛を軽減することができる。また、内針11とカテーテルチューブ23の間には空隙部が生じないため、第6の実施形態に比べて更に穿刺性を向上させることができる。さらに、第3の実施形態において説明したように、カバーを複数の部材から構成し、カバーの外径を先端側から後端側に向かって段階的に太くする構成に代わり、一つのカバーを用いるだけで、内針11の補強効果を増大させることができる。
【0063】
[第8の実施形態]
第8の実施形態では、上述した第1〜第7の実施形態に用いられる安全機構の作動手段について説明する。第1の実施形態では、図4を用いて安全機構の作動手段について説明したが、ここでは、その他の作動手段について説明する。
【0064】
図14(a)、(b)は、第8の実施形態に係わる留置針組立体から抜き取られたスライド部と内針基とを示す断面図である。ここでは、留置針組立体としての図示を省略している。留置針組立体の全体構成は、例えば図1に示されるものである。
【0065】
留置針組立体による穿刺が終了すると、被穿刺者の体表面に留置されたカテーテルチューブから、内針11やカバー19等が抜き取られ、図14(a)に示すように、スライド部20と内針基12とが接合した状態で取り出される。この状態では、内針11の刃先はカバー19の先端から突出している。本実施形態において、スライド部20は、弾性部材からなる突起状の第1の係止爪221と第2の係止爪222とを備える。一方、内針基12は、第1の係止爪221及び第2の係止爪222を係止する係止部(内側に突出した部分)124を備える。図14(a)に示す状態においては、係止部124が第1の係止爪221を係止しており、スライド部20の移動が阻止されている。
【0066】
また、内針基12の一部(先端付近)には穴33が形成されており、この穴33を貫通するようにスイッチ31が設置されている。そして、この穴33を介してスイッチ31により第1の係止爪221を内針基12の内側へ押下することができるように構成されている。スイッチ31は、断面略L字形となる板状部材であり、上部を押下することにより、第1の係止爪221を内側へ押し込むことができるように構成されている。
【0067】
このようにして、スイッチ31により第1の係止爪221を内側へ押下すると、図14(b)に示すように、係止部124と第1の係止爪221との係合が解除される。すると、スライド部20と内針基12との間に設けられたバネ32が伸びて、スライド部20が内針11の先端側へ移動し、内針11の刃先がカバー19の内部に収納される。このとき、係止部124は第2の係止爪222を係止している状態となる。このため、内針11の刃先をカバー19の内部に収納した後、スライド部20が内針基12から外れてしまうことがない。なお、バネ32は、例えば圧縮コイルバネにより構成されている。留置針組立体の使用前及び使用中において、バネ32は縮んでおり、使用後においては、伸びるような特性をもつものである。
【0068】
また、第1〜第7の実施形態において、以下に説明するような安全機構の作動手段を用いてもよい。
【0069】
図15(a)は第8の実施形態に係わる針基の側面図、図15(b)は(a)のA−A線断面図である。また、図16(a)、(b)は第8の実施形態に係る他の留置針組立体から抜き取られた内針基を示す断面図である。ここでは、留置針組立体としての図示を省略している。留置針組立体の全体構成は、例えば図1に示されるものである。更に、図17(a)〜(c)は第8の実施形態に係るスイッチの正面図である。
【0070】
図15(a)、(b)に示すように、内針11の後端側にある針基122には、その円筒状の両側面を略円弧状に切り欠いた切り欠き部122Aが2箇所設けられている。
【0071】
一方、内針基12の内部には、図16(a)に示すように、断面略L字形のスイッチ35が設けられている。スイッチ35は、内針基12の内部を横断するように差し込まれており、内針11の長手方向に対して垂直に可動するように構成されている。スイッチ35の形状については後述する。内針基12の内部において、内針11の後端側にはバネ34が設けられている。このバネ34は、例えば圧縮コイルバネからなり、留置針組立体の使用前及び使用中においては伸びて、使用後においては縮むような特性をもつものである。
【0072】
スイッチ35は、図17(a)に示すように、係合部312を有する貫通孔311が形成されている。係合部312は、図15に示す針基122の切り欠き部122Aの2面幅よりもわずかに大きな幅となるように形成されている。貫通孔311は、係合部312を除いては、円形状に形成されている。そして、スイッチ31が押し込まれていない状態においては、図17(b)に示すように、係合部312に針基122の切り欠き部122Aが係合している。この状態では、スイッチ31がストッパーとなり、バネ32で付勢されているにもかかわらず、針基122は図17(a)に示す位置から移動できないようになっている。
【0073】
留置針組立体の使用後に、図16(b)に示すように、スイッチ31を針基122の内側へ押し込むと、図17(c)に示すように、スイッチ31の貫通孔311の円形状部位と針基122の本体部分とが互いに重なり合うような位置関係となる。この結果、係合部312と針基122の切り欠き部122Aとの係合が解除され、ストッパーが非存在の状態となる。そして、バネ32の付勢力によって、内針11の刃先がカバー19の内部に収納されることになる。
【0074】
第8の実施形態において説明した安全機構の作動手段によれば、簡単な構成でありながら、安全且つ確実に内針全体を被覆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1の実施形態に係る留置針組立体の構造を示す断面図である。
【図2】図1のA部分の拡大断面図である。
【図3】(a)、(b)は図1の内針の構造を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態に係る留置針組立体から抜き取られたスライド部と内針基とを示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る内針の先端部分を示す拡大断面図である。
【図6】第3の実施形態に係るカバーを複数の部材により構成した場合の拡大断面図である。
【図7】第4の実施形態に係る内針の構造を示す側面図である。
【図8】第4の実施形態に係る内針をセットした留置針組立体の先端部分の拡大図である。
【図9】第5の実施形態に係る内針の先端部分を示す拡大断面図である。
【図10】第5の実施形態に係るカバーの側面図である。
【図11】第6の実施形態に係る内針の先端部分を示す拡大断面図である。
【図12】第6の実施形態に係るカバーの側面図である。
【図13】第7の実施形態に係る内針の先端部分を示す拡大断面図である。
【図14】(a)、(b)は第8の実施形態に係る留置針組立体から抜き取られたスライド部と内針基とを示す断面図である。
【図15】(a)は第8の実施形態に係る針基の側面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図16】(a)、(b)は第8の実施形態に係る他の留置針組立体から抜き取られた内針基を示す断面図である。
【図17】(a)〜(c)は第8の実施形態に係るスイッチの正面図である。
【符号の説明】
【0076】
10…留置針組立体
11、21…内針
11A…無空針
12…内針基
13、23…カテーテルチューブ
14…カテーテル基
15…カテーテル
19、29…カバー
20…スライド部
24…テーパー部
30…空隙部
31、35…スイッチ
32、34…バネ
121…グリップ
122…針基
122A…切り欠き部
123…溝
124…係止部
131…半円部
191…テーパー部
201…弾性突起
211…先端穿刺部
212…内針胴部
221…第1の係止爪
222…第2の係止爪
291…第1カバー
292…第2カバー
311…貫通孔
312…切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に穿刺部を有する細径化された内針と、当該内針の後端部が固定される内針基と、前記内針が挿通される中空のカバーと、当該カバーの後端が固定されると共に、前記内針基と摺動自在に係合されるスライド部と、前記内針と前記カバーとが挿通され、前記内針の穿刺部と前記カバーの先端が外部に突出するカテーテルとを備え、
前記カバーの先端は前記カテーテルの先端よりも外側に突出し、且つ前記内針の穿刺部に向かって細くなるテーパー部が設けられ、
前記内針基と前記スライド部とを接合したときには前記内針の穿刺部が前記カバーの先端から突出し、前記内針基と前記スライド部とを離間したときには前記内針の穿刺部が前記カバー内に収納されることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
前記カバーの先端は、斜めに切断された刃面形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
先端に穿刺部が形成された内針と、当該内針の後端部が固定される内針基と、前記内針が挿通される中空のカバーと、当該カバーの後端が固定されると共に、前記内針基と摺動自在に係合されるスライド部と、前記内針と前記カバーとが挿通され、前記内針の穿刺部が外部に突出するカテーテルとを備え、
前記カテーテルの先端には前記内針の穿刺部に向かって細くなるテーパー部が設けられ、
前記カバーの先端は前記カテーテルの先端よりも内側にあり、
前記内針基と前記スライド部とを接合したときには前記内針の穿刺部が前記カバーの先端から突出し、前記内針基と前記スライド部とを離間したときには前記内針の穿刺部が前記カバー内に収納されることを特徴とする留置針組立体。
【請求項4】
前記カバーの先端は、斜めに切断された刃面形状に形成され、
当該斜めに切断されたカバーの向きは、内針の斜めに切断された向きと同じ向きに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記カバーは、前記内針と前記カテーテルの間の空隙部を埋めるように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の留置針組立体。
【請求項6】
前記カバーは、前記内針と同軸に設けられた複数の部材からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の留置針組立体。
【請求項7】
前記内針基と前記スライド部とを離間したときに、前記内針基と前記スライド部との係合を固定する固定手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の留置針組立体。
【請求項8】
前記内針は穿刺部が中空針、胴体部が透明体でそれぞれ形成され、且つ、前記内針が挿通されるカバーは透明体で形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の留置針組立体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2008−173463(P2008−173463A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319259(P2007−319259)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(596183321)メディキット株式会社 (8)
【出願人】(592148993)東郷メディキット株式会社 (3)
【Fターム(参考)】