説明

番組共視聴システム

【課題】映像情報、主音声、映像を解説する副音声を提供する番組を運転者を含み異なる役割をもつ複数人に提供して番組を共視聴させる共視聴システムを提供する。
【解決手段】本発明による共視聴システムは、以下の構成を備えている。主音声提供手段31〜34は、番組の主音声を提供する。映像情報提供手段50〜53は、番組の映像情報を提供し、副音声提供手段40〜43は、番組の副音声を提供する。制御手段2により、運転者60には前記主音声提供手段の出力と前記主音声提供手段の出力とは空間的に区別される副音声提供手段出力を提供し、前記運転者以外の者61〜63には少なくとも前記映像情報,主音声,または副音声の全てまたは任意の組み合わせを提供するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、番組共視聴システム、さらに詳しく言えば、自動車内において、運転者には運転に支障のない範囲で番組の情報を提供し、番組を視聴する他の同乗者と実質的な共視聴状態を形成しえる番組共視聴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン放送において、副音声つきで主音声を提供している放送番組があり、普及し初めている。ドラマの番組を例にすると副音声を「ト書き」として利用しているものがあり、映像を観察できない場合でも内容の理解ができる点で優れている。逆に言えば、「ト書き」は、映像を観察できる場合には、不要であり煩わしいことにもなりかねない。
そこで、番組を共視聴する場合にそれらの情報を切りわけて利用したいという要請があり関連する下記の出願がなされている。
【0003】
車内で番組を共視聴する場合を例にして説明する。車内でテレビやビデオ等(以下、番組という)を上映する際、運転中のドライバーは映像を参照することができず、視聴時に充分な情報を得、また同乗者とともに楽しむことができなかった。このような場合番組に視覚障害者などを対象とする副音声が付帯する場合はそれを活用するのが適当である。
【0004】
特許文献1記載の「映像表示装置」の発明は、二か国語放送に関連して主スピーカと副スピーカのそれぞれから選択的に主音声,副音声を流せるようにしたものである。
特許文献2記載の「車載用5チャンネルオーディオ装置」は、副音声を前方に設置されたセンタースピーカから出力し、運転者を含む前部座席の乗員だけに聴取させる構成を提案している。すなわち、カーナビなどの音声を運転席の近くのスピーカのみから出力し、他のスピーカからはオーディオ装置の音のみを出力することで、後部座席者の音楽鑑賞を妨げないようにしている。
特許文献3記載の「車載用デジタルテレビ放送受信装置」は、副音声を含む番組であるかどうか、また車両がどのような状況にあるかを自動的に判別し、副音声の出力を自動的に選択しまた解除する方法の提案をしている。走行状況(停止/走行)と放送種別に基づき音声を選択するものである。
【特許文献1】特開平09−055902号公報
【特許文献2】特開2005−047479号公報
【特許文献3】特開2001−094897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの特許文献より、車両内で人により出力音声を選択的に異ならせる提案がなされているが、使い勝手に問題があるように思われる。特に、主音声と副音声が同時に提供される者(運転者)にとって、それらが明確に区別されることが好ましい。本願のように、認知的負荷の異なる運転者と同乗者の情報共有の促進およびコミュニケーションの活性化という意味での検討はなされていない。
本発明の目的は、番組について自動車の運転者には運転に支障のないように他の同乗者とは異なる情報を提供するが、同乗者と核の部分の情報を共有させ、その番組についての会話を可能にする番組共視聴システムを提供することにある。
本発明のさらなる目的は、複数人による共視聴空間において、全員に提供される主音声とは提供される方向が異なり空間的に区別され単独に利用可能で各人別に固有に設けられる副音声提供用スピーカを用いて、副音声を聞くことができる番組共視聴システムを提供することにある。健常者も視覚障害者も区別無く同じ番組を視聴することができ、核となる情報を共有することができ、コミュニケーションの活性化を図ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の番組共視聴システムは、
映像情報、主音声、映像を解説する副音声を提供する番組を運転者を含み異なる役割をもつ複数人に提供して番組を共視聴させる共視聴システムにおいて、
主音声を提供する主音声提供手段と、
映像情報提供手段と、
副音声提供手段とを設け、
運転者には前記主音声提供手段の出力と前記主音声提供手段の出力とは空間的に区別される副音声提供手段出力を提供するとともに、
前記運転者以外の者には少なくとも前記映像情報,主音声,または副音声の全てまたは任意の組み合わせを提供できる制御手段とを設けて構成されている。
【0007】
本発明による請求項2記載の番組共視聴システムは、請求項1記載のシステムにおいて、
運転席を含む車内空間には、共同または単独に利用可能な映像スクリーンと、
共同または単独に利用可能な主音声提供用スピーカと、
単独に利用可能な副音声提供用スピーカと、
が設けられて構成されている。
【0008】
本発明による請求項3記載の番組共視聴システムは、請求項2記載のシステムにおいて、
前記単独に利用可能な副音声提供用スピーカは、副音声を頭部近くの後方から出力するように配置されている。
本発明による請求項4記載の番組共視聴システムは、請求項2記載のシステムにおいて、
前記単独に利用可能な副音声提供用スピーカは、
運転席以外の位置から主音声提供用のスピーカとは異なる方向からの超指向性副音声を提供するスピーカを設けて構成されている。
【0009】
本発明による請求項5記載の番組共視聴システムは、
映像情報、主音声、映像を解説する副音声を提供する番組を共視聴空間で複数人に提供して番組を共視聴させる共視聴システムにおいて、
番組の主音声を複数人に提供する主音声提供手段と、
番組の映像情報提供手段と、
番組の副音声提供手段とを設け、
前記副音声提供手段の出力は、前記主音声提供手段の出力とは提供される方向が異なり空間的に区別され単独に利用可能で各人別に固有に設けられるとともに、
前記複数人に個別的に前記副音声の有無の組み合わせを提供できる制御手段とを設けて構成されている。
【0010】
本発明による請求項6記載の番組共視聴システムは、請求項5記載のシステムにおいて、
前記映像情報提供手段は、前記共視聴空間で共同に利用可能な映像スクリーンであり、 前記主音声提供手段は、複数人で利用可能な主音声提供用スピーカであり、
前記副音声提供手段は、主音声とは提供される方向が異なり空間的に区別され単独に利用可能で各人別に固有に設けられる副音声提供用スピーカである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、運転者など副音声を選択的に聴取している者が、それがもともと番組の主音声として提供されている音声なのか、視覚情報補償用の解説として付帯した副音声なのかを副音声を固有のスピーカにより独立して提供し、主音声と音の方向を変えることにより、容易に区別できるようにしてある。したがって、運転者は運転中に聴取している番組の理解を容易にすることができる。また、これにより主音声と映像のみを視聴している他の同乗者との話題交換を容易にすることができる。
さらに本発明によれば、同一の映像で同一の主音声を聞く共視聴空間において、副音声用のスピーカにて個別に主音声とは異なる方向より副音声を付加して聞くことができるので、副音声と主音声が区別でき、他の人に迷惑・不快感を与えずに副音声を聞くことができる。また、健常者も視覚障害者も区別無く同じ番組を視聴することができ、同じ情報を共有することでコミュニケーションの活性化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面等を参照して本発明による装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による番組共視聴システムの実施例を示すブロック図、図2は本発明による番組共視聴システムの番組の選択回路を示す回路図である。
この実施形態は、車体1内の空間で、運転者60、助手席同乗者61、その他の同乗者62,63で番組を共同聴取する場合を例にしている。
【0013】
図2に示すように共視聴用の番組はチューナ71、ストリーミング受信器72、ビデオ再生装置73または、外部入力74に接続された機器から提供され、これらが接続されている入力セレクタ75により選択される。
なお副音声(視覚補償情報)抽出器76で副音声信号(視覚補償情報)4が抽出される。通常、副音声チャネルには主音声も含まれ、ドラマでいえば「セリフ+ト書き」の状態となっている。演算により、視覚補償情報 (ドラマでいえば「ト書き」) 部分のみを取り出す。もともと副音声チャネルが「ト書き」だけであれば、この抽出器76による演算は不要である。入力セレクタの出力である映像信号5、主音声信号3、および副音声抽出器76で副音声から主音声を引いて得られる副音声信号(視覚補償情報)4が、図1に示す制御手段2に接続される。
【0014】
車体1の車内空間には主音声再生スピーカ31〜34が配置されており、乗員の全てが主音声を聴取できるようになっている。
副音声再生スピーカ40〜43の各一対は各シートのヘッドレストの両側に乗員の耳に向けて配置されており、乗員の斜め後ろから副音声が供給される。なおこの副音声再生スピーカ40のみが運転者用として不可欠である。他の乗員は映像再生装置51〜53により映像を観ることができるから、副音声再生スピーカ41〜43は省略可能である。
各乗員の前に配置されている映像再生装置50〜53は、カーナビの映像が接続されており、後述するように番組の映像と選択視聴可能である。
【0015】
制御手段2に接続された番組映像信号5、ナビ画面信号7、番組主音声信号3は、運転者用切り替えスイッチ21、同乗者用切り替えスイッチ22により切り替えられる。
運転者用切り替えスイッチ21は、切り替え信号発生器23の出力により切り替えられる。切り替え信号発生器23は、車速ゼロでなく、パーキングの状態にないとき、すなわち走行状態において、運転者用切り替えスイッチ21は図示の状態でない接続状態(下側の接点に接続)にある。車速ゼロ信号8とパーキング信号9が存在するときにスイッチ21は図示の状態にあり、運転者の映像再生装置50に映像信号5が供給される。
運転者にはナビ画面を映像再生装置50から、副音声を副音声再生スピーカ40から提供される。主音声は常時各スピーカ31〜34から供給されているから、運転状態で、運転者は番組については映像、主音声、副音声の提供を受けることになる。
【0016】
一方、前記走行状態において、同乗者用切り替えスイッチ22が同乗者の操作による同乗者操作信号65により図示の位置にあるとすれば、運転者以外の者(同乗者)は各乗員の前の映像再生装置51〜53から番組映像が提供される。なお、スピーカ31〜34からは主音声が提供されている。
その結果運転者と同乗者には映像に関する情報がそれぞれの形で提供されることになり、運転者は、番組の映像を観なくても、番組の内容を把握することができ、同乗者との対話が成立する。
発明者の実験によれば、副音声が主音声とは全くことなる音源から提供されるので、副音声の理解が一層容易になり、「ト書き」の情報により、殆ど完全に番組の進行を把握できることが確認できた。
【0017】
本発明による副音声の提供で重要なことは、同時に提供される主音声とは明確に区別できる状態で副音声を提供することである。
そのために必ずしも実施例の形態によらなくても、目的に沿った副音声の提供が可能である。例えば、前記単独に利用可能な副音声提供用スピーカによらず、運転席以外の位置から主音声提供用のスピーカとは異なる方向からの超指向性副音声を提供することにより運転者に副音声を提供することができる。
【0018】
同乗者は走行状態において、番組の主音声と映像の提供を受ける例を示したが、同乗者用切り替えスイッチ22を同乗者別に設ければ、各人が所望の情報を選択して利用することができる。
例えば、同乗者の一人が視覚障害者であった場合は、主音声と副音声の提供を受けることができ、運転者と同様な情報の提供を受けることができる。
パーキングの状態においては、一層多様な情報を提供することができる。
主音声の提供を全員に一様な音声を提供する例を示したが、主音声を個別にまたは個別的(各人の直上に独立のスピーカを配置)に提供するようにし、主音声を選択可能に構成することもできる。
【0019】
本発明による他の実施例を説明する。
図3は、本発明による番組共視聴システムの他の実施例を示すブロック図である。前記図1においては、車内空間における場合の実施例であるが、図3は、車内でない通常の部屋内や広い空間における場合の実施例である。番組共視聴システムの番組の選択回路を示す回路図は、前記図2と同じものを使用できる。
共視聴空間10内には共通の映像再生装置54、主音声再生スピーカ31〜34が配置されており、複数の視聴者(共視聴者66〜69)の全てが映像と主音声を視聴できるようになっている。副音声の付加の有無は、視聴者操作信号64に基づき視聴者用切り替えスイッチ24〜27により視聴者ごとに個別に決めることができる。
副音声再生スピーカ40〜43の各一対は各シートのヘッドレスト部の両側に視聴者の耳に向けて配置されており、視聴者の斜め後ろから副音声が供給される。
前記図1の実施例と異なるのは、狭い車内空間ではなく、より広い空間を想定していることであり、運転者がいない同乗者のみすなわち同席者である共視聴者だけの場合である。車内でないので、車専用となる信号は無い。しかし、同一の映像で同一の主音声を聞く共視聴空間において、個別に主音声とは異なる方向より副音声を付加して聞くことができるので、健常者、視覚障害者の区別無く同じ番組を視聴することができ、同じ情報を共有することでコミュニケーションの活性化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば異なる役割を負担する同乗者に提供する情報を目的、状況に応じて、種々選択でき、情報の共有化を図ることがでる。そのために必要な画像ディスプレイは、従来のカーナビゲーションのディスプレイ等を転用することができる。本発明は自動車の電装産業の分野で広く利用できる。
また、本発明によれば複数の共視聴者であっても、個別に副音声を付加することができるので、健常者、視覚障害者の区別無く同じ番組を視聴することができ、情報の共有により番組に対する共通の会話などを楽しむことができる。本発明は映像・音声を共視聴する分野で広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による番組共視聴システムの実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明による番組共視聴システムの番組の選択回路を示す回路図である。
【図3】本発明による番組共視聴システムの他の実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
1 車体
10 共視聴空間
2 制御手段
21 運転者用切り替えスイッチ
22 同乗者用切り替えスイッチ
23 切り替え信号発生器(運転状況信号)
24〜27 視聴者用切り替えスイッチ
3 主音声信号
31〜34 主音声再生スピーカ
4 副音声信号(視覚補償情報)
40〜43 副音声再生スピーカ
5 映像信号
50〜53 映像再生装置
54 共同映像再生装置
60 運転者
61〜63 同乗者
64 視聴者操作信号
65 同乗者操作信号
66〜69 共視聴者
7 ナビ画面信号
71 チューナ
72 ストリーミング受信器
73 ビデオ再生装置
74 外部入力
75 入力セレクタ
76 副音声抽出器
8 車速ゼロ信号
9 パーキング信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像情報、主音声、映像を解説する副音声を提供する番組を運転者を含み異なる役割をもつ複数人に提供して番組を共視聴させる共視聴システムにおいて、
番組の主音声を提供する主音声提供手段と、
番組の映像情報提供手段と、
番組の副音声提供手段とを設け、
運転者には前記主音声提供手段の出力と前記主音声提供手段の出力とは空間的に区別される副音声提供手段出力を提供するとともに、
前記運転者以外の者には少なくとも前記映像情報,主音声,または副音声の全てまたは任意の組み合わせを提供できる制御手段とを設けて構成した番組共視聴システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
運転席を含む車内空間には、共同または単独に利用可能な映像スクリーンと、
共同または単独に利用可能な主音声提供用スピーカと、
単独に利用可能な副音声提供用スピーカと、
が設けられている番組共視聴システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、前記単独に利用可能な副音声提供用スピーカは、
副音声を頭部近くの後方から出力するように配置されている番組共視聴システム。
【請求項4】
請求項2記載のシステムにおいて、前記単独に利用可能な副音声提供用スピーカは、
運転席以外の位置から主音声提供用のスピーカとは異なる方向からの超指向性副音声を提供するスピーカである番組共視聴システム。
【請求項5】
映像情報、主音声、映像を解説する副音声を提供する番組を共視聴空間で複数人に提供して番組を共視聴させる共視聴システムにおいて、
番組の主音声を複数人に提供する主音声提供手段と、
番組の映像情報提供手段と、
番組の副音声提供手段とを設け、
前記副音声提供手段の出力は、前記主音声提供手段の出力とは提供される方向が異なり空間的に区別され単独に利用可能で各人別に固有に設けられるとともに、
前記複数人に個別的に前記副音声の有無の組み合わせを提供できる制御手段とを設けて構成した番組共視聴システム。
【請求項6】
請求項5記載のシステムにおいて、
前記映像情報提供手段は、前記共視聴空間で共同に利用可能な映像スクリーンであり、 前記主音声提供手段は、複数人で利用可能な主音声提供用スピーカであり、
前記副音声提供手段は、主音声とは提供される方向が異なり空間的に区別され単独に利用可能で各人別に固有に設けられる副音声提供用スピーカである番組共視聴システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−331615(P2007−331615A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166535(P2006−166535)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】