説明

異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像の生成方法及びその装置

【課題】異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像の生成を効率的に行う。
【解決手段】一つの対象地物のうち最も詳細度が高い外観表示用画像を持つ三次元モデルを仮想空間内に配置する第1の過程と、前記三次元モデルを撮影するように配置される仮想空間内のカメラを、当該三次元モデルを撮影するとき前記三次元モデルの詳細度が切り替わる直前の距離まで離し、当該地物の三次元モデルが収まる範囲の画角で前記三次元モデルの全周を複数N回に分けて撮影する第2の過程と、前記第2の過程で撮影した三次元モデルを撮影した時点の詳細度の外観表示用画像により前記N回レンダリングする第3の過程と、前の過程でレンダリングした画像を低い詳細度の三次元データのテクスチャとして用いる第4の過程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いて三次元都市モデルを作成する際に、三次元モデルを構成し異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像を生成する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元都市モデルとは、(i)建物や地形などを表した三次元座標値を持つポリゴン、(ii)そのポリゴンに貼り付けるテクスチャ、(iii)道路中心線や信号の制御情報など都市機能を形成する様々な情報、の3つの要素からなりたつデータを意味する。この三次元都市モデルは、仮想都市または実在都市を模擬したものであるから、ドライビングシミュレータや洪水シミュレータなどシミュレーション分野で利用するために作成される。
そして、コンピュータのモニタ画面上に表示するための各モデルは、これを見る仮想の視点までの距離に応じて複数の異なる詳細度を切り替えて表示され、そのための三次元データを持つ。詳細度は、視点又はカメラが地物から見る距離が近いほど高く、遠いほど低い。
三次元データは上述のように建物や地形などのポリゴンとその表面画像のテクスチャからなるが、各モデルのポリゴンには、複数の異なる詳細度をした三次元データを持つ。
このとき、異なる詳細度をした三次元データのテクスチャをポリゴン毎に予め備えておくことは、きわめて煩雑で手間のかかることであると予想される。そこで、詳細度が低いモデルデータに詳細度が高いモデルデータに用いたテクスチャを貼り付けるようにすれば、全ての詳細度について全てのポリゴンに貼り付けるテクスチャを作る手間が省けることになろう。しかし、詳細度が高いモデルデータは凹凸が複雑な部分も表示できるようにしなければ現実に近い模擬をすることができず、そのような複雑な部分毎に異なるテクスチャファイルを使用することとなり、そのようなテクスチャファイルを編集してまとめることに大変な手間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする課題は、異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像の生成を効率的に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため請求項1に係る異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像の生成方法は、一つの対象地物のうち最も詳細度が高い外観表示用画像を持つ三次元モデルを仮想空間内に配置する第1の過程と、前記三次元モデルを撮影するように配置される仮想空間内のカメラを、当該三次元モデルを撮影するとき前記三次元モデルの詳細度が切り替わる直前の距離まで離し、当該地物の三次元モデルが収まる範囲の画角で前記三次元モデルの全周を複数N回に分けて撮影する第2の過程と、前記第2の過程で撮影した三次元モデルを撮影した時点の詳細度の外観表示用画像により前記N回レンダリングする第3の過程と、前の過程でレンダリングした距離から三次元モデルの詳細度がより低く切り替わりさらに詳細度がより低く切り替わる直前の距離まで離し、当該地物の三次元モデルが収まる範囲の画角で前記三次元モデルの全周を複数回に分けて撮影するようにし、前の過程で得た地物の画像を三次元モデルのテクスチャとして用いてレンダリングすることを所定の低い詳細度まで繰り返す第4の過程とからなることを特徴とするものである。
【0005】
上記課題を解決するため請求項2に係る異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像の生成装置は、地物について最も詳細度が高いテクスチャデータとしての外観表示用画像を格納するテクスチャデータ格納部と、写真撮影した地物をもとにその地物を模擬した幾何情報データである三次元モデルを格納する三次元モデルデータ格納部と、仮想空間内に配置された前記三次元モデルを仮想空間内に配置された仮想のカメラにより所定の距離・位置・姿勢・画角で撮影して三次元モデルの全周囲をレンダリングするためのパラメータの組み合わせ数Nを決定するカメラパラメータ編集手段と、前記カメラパラメータ編集手段により決定されたパラメータにしたがって三次元モデルデータ格納部から読み出した三次元モデルを前記テクスチャデータ格納部から読み出したテクスチャでレンダリングして画像を生成するとともに当該生成した画像を現在の三次元モデルより低い詳細度の三次元モデルのテクスチャデータとして詳細度とともに前記テクスチャデータ格納部に格納する画像生成手段とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像の生成方法によると、仮想空間内のカメラを、三次元モデルを撮影するとき三次元モデルの詳細度が切り替わる直前の距離まで離し、撮影した時点の詳細度の外観表示用画像によりN回レンダリングするから、詳細度が異なる毎に外観表示用画像を効率よく生成することができる。
【0007】
請求項2に係る異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像の生成装置によると、画像生成手段において、カメラパラメータ編集手段により決定されたパラメータにしたがって三次元モデルデータ格納部から読み出した三次元モデルをレンダリングして画像を生成するとともに当該生成した画像を現在の三次元モデルより低い詳細度の三次元モデルのテクスチャデータとして前記テクスチャデータ格納部に格納するから、詳細度が異なる毎に外観表示用画像を効率よく生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】地物の外観表示用画像の生成方法を説明するフロー図である。
【図2】地物の外観表示用画像の生成装置を説明する機能ブロック図である。
【図3】地物の外観表示用画像を説明する図である。
【図4】詳細度が異なるテクスチャの貼り付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
地物の外観表示用画像の生成を、コンピュータが備える機能により実現する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明方法の実施例を説明するフロー図である。図2は本発明装置の実施例の機能ブロック図であり、図2において、101はテクスチャデータ格納部、102はモデルデータ格納部、103はカメラパラメータ編集手段、104は画像生成手段である。
【0011】
テクスチャデータ格納部101は、所定数の地物について最も詳細度が高いテクスチャデータとしての各外観表示用画像の電子データを格納する。テクスチャデータは、予め各地物について本システムに用いることが予定される最も詳細度が高くなるような距離から写真撮影しその画像から得たテクスチャである。三次元モデルデータ格納部102は、写真撮影した地物をもとにその地物を模擬した幾何情報データである三次元モデルを格納する。三次元モデルデータは、前もって地物について、最も詳細度が高くなる位置において撮影写真に写された実在の地物を電子的に模擬した幾何情報データ(ポリゴン)であり、その地物の位置が緯度経度、高さ、向きなどの三次元座標値を含む。カメラパラメータ編集手段103は、三次元モデルデータ格納部102から読み出して仮想空間内に配置された所定の三次元モデルを仮想空間内に配置された仮想のカメラにより所定の距離・位置・姿勢・画角で撮影して三次元モデルの全周囲をレンダリングするためのパラメータの組み合わせ数Nを決定する。画像生成手段104は、前記カメラパラメータ編集手段103により決定されたパラメータにしたがって三次元モデルデータ格納部102から読み出した三次元モデルを前記テクスチャデータ格納部101から読み出したテクスチャによりレンダリングして画像を生成するとともに当該生成した画像を現在の三次元モデルより低い詳細度の三次元モデルのテクスチャデータとして詳細度とともに前記テクスチャデータ格納部102に格納する。
【0012】
三次元モデルデータ格納部102から、所定の地物の三次元モデルを読み出し、仮想空間内に配置する(図1のP101)。このときの三次元モデルデータは当該地物のうち最も詳細度が高いものとして格納されている。前記P201における配置とともに、当該三次元モデルにはテクスチャをどのように貼り付けるかという情報も含まれていて、三次元テクスチャデータ格納部101から、当該所定の地物の三次元モデルのテクスチャとしての外観表示用画像も同時に読み出す。このテクスチャは当該三次元モデルに対応して最も詳細度が高いテクスチャである。
ここで、カメラパラメータ編集手段103は、読み出した三次元モデルの幅・高さなどの大きさに合わせてレンダリングに必要なカメラの位置・姿勢・画角等のパラメータの組み合わせを決定する。これらのパラメータの組み合わせの総数Nは、三次元モデルの全周囲が十分レンダリングされるだけの数が用意される。仮想空間内の仮想のカメラは、前記三次元モデルを撮影するとき前記最も詳細度が高い外観表示用画像を持つ三次元モデルの詳細度が切り替わる直前の距離まで離し、当該地物の三次元モデルが収まる範囲の画角で前記三次元モデルの全周を複数N回に分けて撮影する(図1のP102)。この数Nは三次元モデルの全周囲をレンダリングするためのパラメータの組み合わせにより決定される。レンダリング回数の最大値は、カメラの方向と直角な面すなわちモデルの面の数と同一となる。レンダリングする際の画角はモデル形状によって変化する。
三次元モデルの詳細度と距離の関係は、図3のように、モデルとカメラの距離に従って表示する三次元データの詳細度を切り替えるため、モデルとカメラの距離が近いほど詳細な三次元データを表示し、距離が遠いほど詳細度が低い三次元データを表示する。もし常に詳細度が高い三次元データを表示したとしても、距離が遠いときは図示しないモニタ上では小さく表示され、詳細部分が人間の目には判別できなくなるため、描画処理が無駄になってしまう。本発明はこれを避けるためである。
詳細度が低いデータはポリゴン数が少ないデータ、詳細度が高いデータはポリゴン数が多いデータである。このとき詳細度が高いデータは、1枚にまとめたテクスチャを用いずに、部分毎に異なるテクスチャ(外観表示用画像)を用いていることがある。その理由として、
A.凹凸が複雑なため、全てのポリゴンのテクスチャを1枚にまとめて用いるより、複数のテクスチャをポリゴン毎に用いる方が容易である。
B.異なる地物で、部分的に同じテクスチャを共有したい。
ここで、詳細度が低いデータも作りたい場合、詳細度が高いデータで複数のテクスチャを用いていると、そのテクスチャをそのまま詳細度が低いデータ用として流用することができない。理由は、ポリゴンの頂点毎にテクスチャ座標を割り当てる通常のテクスチャマッピング手法の場合、ポリゴンの頂点以外にはテクスチャ座標を割り当てることができないからである。例えば、詳細度が低いデータには頂点が4点あるとして、ここに詳細度が高いデータ使用している2枚のテクスチャを貼り付けたいとき、図4に説明するように正しく貼り付けるためには全8頂点(5ポリゴン)が必要なので、詳細度が低いデータにはそれら2枚のテクスチャは完全に重なった状態で貼り付けることしかできない。
したがって、詳細度が高いデータ用のテクスチャを詳細度が低いデータに貼り付けたい場合は、それらのテクスチャを編集し、新たに詳細度が低いデータ用のテクスチャを作成する必要があるが、これを地物ごとに手作業で行うのは煩雑であるため、詳細度が高いデータ及びそれに用いるテクスチャを用いて、詳細度が低いデータ用のテクスチャを手作業なしに生成しようとする。
画像生成手段104は、前記カメラパラメータ編集手段103により決定されたパラメータにしたがって三次元モデルデータ格納部102から読み出した地物の最も詳細度が高い三次元モデルを前記テクスチャデータ格納部101から読み出した最も詳細度がテクスチャ(M1)でレンダリングして画像を生成する(図1のP103)。この全周囲について生成した画像を現在の三次元モデルより低い詳細度の三次元モデルのテクスチャデータ(M2)として詳細度とともに前記テクスチャデータ格納部101に格納する。
より低い詳細度が低い三次元モデル及びテクスチャが必要なときは、カメラパラメータ編集手段103は、例えば、P203過程においてレンダリングした三次元モデルの詳細度から詳細度が切り換わりさらに詳細度が低く切り替わる直前の距離まで離しその位置における位置・姿勢・画角等のパラメータの組み合わせを決定する。仮想空間内の仮想のカメラは、前記決定したパラメータにおける状態で前記三次元モデルの全周を複数N回に分けて撮影する。このとき撮影した画像はテクスチャ(M3)として詳細度とともにテクスチャデータ格納部101に格納される。画像生成手段104は、前記カメラパラメータ編集手段103により撮影した三次元モデルに前記テクスチャデータ格納部101から読み出したテクスチャ(M2)を貼り付けてレンダリングして画像を生成する。以下、同様にして詳細度が切り換えて必要な詳細度の低さまで順次繰り返す(図1のP104)。
このようにして、異なる詳細度のデータが作られ、距離に応じて最適な詳細度のデータを表示することができる。このとき、詳細度が低いデータに詳細度が高いデータのテクスチャを貼り付ける。三次元データの詳細度が低くなっていたとしても、詳細度が高いデータの外観にできるだけ近く作ることが好ましいため、詳細度が低いデータにそのまま詳細度が高いデータのテクスチャを貼り付けるから、外観はかなり近いものが得られる。
【符号の説明】
【0013】
101 テクスチャデータ格納部
102 三次元モデルデータ格納部
103 カメラパラメータ編集手段、
104 画像生成手段




【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの対象地物のうち最も詳細度が高い外観表示用画像を持つ三次元モデルを仮想空間内に配置する第1の過程と、
前記三次元モデルを撮影するように配置される仮想空間内のカメラを、当該三次元モデルを撮影するとき前記三次元モデルの詳細度が切り替わる直前の距離まで離し、当該地物の三次元モデルが収まる範囲の画角で前記三次元モデルの全周を複数N回に分けて撮影する第2の過程と、
前記第2の過程で撮影した三次元モデルを撮影したときの詳細度の外観表示用画像により三次元モデルを前記N回レンダリングする第3の過程と、
前の過程でレンダリングした距離から三次元モデルの詳細度がより低く切り替わりさらに詳細度がより低く切り替わる直前の距離まで離し、当該地物の三次元モデルが収まる範囲の画角で前記三次元モデルの全周を複数回に分けて撮影するようにし、前の過程で得た地物の画像を三次元モデルのテクスチャとして用いてレンダリングすることを所定の低い詳細度まで繰り返す第4の過程とからなることを特徴とする異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像の生成方法。
【請求項2】
地物について最も詳細度が高いテクスチャデータとしての外観表示用画像を格納(表面画像の電子データを記録)するテクスチャデータ格納部と、
写真撮影した地物をもとにその地物を模擬した幾何情報データである三次元モデルを格納する三次元モデルデータ格納部と、
仮想空間内に配置された前記三次元モデルを仮想空間内に配置された仮想のカメラにより所定の距離・位置・姿勢・画角で撮影して三次元モデルの全周囲をレンダリングするためのパラメータの組み合わせ数Nを決定するカメラパラメータ編集手段と、
前記カメラパラメータ編集手段により決定されたパラメータにしたがって三次元モデルデータ格納部から読み出した三次元モデルを前記テクスチャデータ格納部から読み出したテクスチャでレンダリングして画像を生成するとともに当該生成した画像を現在の三次元モデルより低い詳細度の三次元モデルのテクスチャデータとして詳細度とともに前記テクスチャデータ格納部に格納する画像生成手段とからなることを特徴とする異なる詳細度を持つ同一地物の外観表示用画像の生成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−108632(P2012−108632A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255575(P2010−255575)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000176730)三菱プレシジョン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】