説明

異常判定装置、駆動装置及びロボット装置

【課題】異常判定をより短時間に行う。
【解決手段】被駆動部を駆動する駆動装置を動作させる動作電流の電流値を複数の動作パターンを有する駆動装置の動作に応じて検出する検出部と、検出部によって検出された電流値と、動作パターンごとに関連付けて予め設定された動作電流の許容範囲とに基づいて、駆動装置の動作が異常であるか否かを判定する判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常判定装置、駆動装置及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット装置のアーム部が、ロボット装置周囲の人や物に衝突した場合に、例えば、アーム部を緊急停止させたり、アーム部を退避させる緊急退避動作をさせたりするために、ロボット装置に想定を超える異常な外力が加えられているか否かを判定する異常判定の技術が知られている。例えば特許文献1では、アーム部を駆動するモータなどの電動機に流れる電流値に基づいて、アーム部を駆動する駆動軸に発生するトルクを計算し、計算により得られたトルクと正常時のトルクとを比較して、ロボット装置に異常な外力が加えられているか否かの異常判定をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−127889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような技術では、アーム部や衝突された人や物の損傷を低減させるため、異常判定を短時間に行うことが要求される。このため、異常判定に必要な計算量は、少ない方が望ましい。
ところで、一般にロボット装置は、例えばアーム部の伸縮や屈伸などを可能にするため、関節部において連結されたアーム部を有している。このようなロボット装置は、アーム部の伸縮や屈伸などによってアーム部の長さが変化することにより、アーム部を駆動するトルクが変化する。
しかしながら、上述のような技術は、アーム部を駆動する駆動軸に発生するトルクに基づいて異常判定を行っている。このため、上述のような技術は、関節部の角度が変化するたびに、アーム部を駆動する駆動軸に発生するトルクを、電動機に流れる電流値に基づいて計算しなおす必要がある。つまり、上述した従来技術では、ロボット装置に異常な外力が加えられているか否かの異常判定をするための計算量が多くなることがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、異常判定をより短時間に行うことができる異常判定装置、駆動装置、及びロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、被駆動部を駆動する駆動装置を動作させる動作電流の電流値を複数の動作パターンを有する前記駆動装置の動作に応じて検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記電流値と、前記動作パターンごとに関連付けて予め設定された前記動作電流の許容範囲とに基づいて、前記駆動装置の動作が異常であるか否かを判定する判定部とを備えることを特徴とする異常判定装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、複数の被駆動部を駆動する複数の駆動装置を動作させる動作電流の各電流値を複数の動作パターンを有する前記駆動装置の動作に応じてそれぞれ検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記各電流値を演算した演算値と、前記動作パターンごとに関連付けて予め設定された前記演算値の許容範囲とに基づいて、前記駆動装置の動作が異常であるか否かを判定する判定部とを備えることを特徴とする異常判定装置である。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、上記の異常判定装置を備えることを特徴とする駆動装置である。また、本発明の一実施形態は、上記の異常判定装置と、回転駆動軸の回転力を被駆動軸に伝達可能なトルク制限機構であって、回転駆動軸と被駆動軸とのうち少なくとも一方の回転軸の周面の少なくとも一部に対して接触可能に設けられ、回転軸の軸方向とは異なる方向に力が加えられた状態で回転軸に接触することによって回転駆動軸の回転力を被駆動軸に伝達する伝達部と、回転駆動軸と被駆動軸とに対して相対的な変位を生じさせるトルク許容値が可変となるように、回転軸に対する伝達部の接触状態を調整可能な調整部とを含むトルク制限機構と、回転駆動軸を回転させる回転機構とを備えることを特徴とする駆動装置である。
【0009】
また、本発明の一実施形態は、上記の駆動装置を備えることを特徴とするロボット装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異常判定装置は、異常判定をより短時間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る異常判定装置の構成の一例を示す構成図である。
【図2】本実施形態における動作パターン及び動作電流の許容範囲の一例を示す図である。
【図3】本実施形態における異常判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る異常判定装置の構成の一例を示す構成図である。
【図5】本実施形態における異常判定装置の判定動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態における異常判定装置の書き込み動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態における生成部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態における選択部及び書き込み部を備える異常判定装置の構成の一例を示す図である。
【図9】本実施形態における異常判定装置を備えている駆動装置の構成の一例を示す図である。
【図10】本実施形態における複数の電動機を備える駆動装置の構成の一例を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る駆動装置の構成の一例を示す構成図である。
【図12】本実施形態におけるトルク制限機構の構成の一例を示す図である。
【図13】本実施形態におけるトルク制限機構の特性を示すグラフである。
【図14】本発明の第5の実施形態に係るロボット装置の構成の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る一例としての異常判定装置10の構成を示す構成図である。
【0013】
本実施形態の異常判定装置10は、被駆動部(本実施形態においては、例えばアーム部32)を駆動する駆動装置20に通信線CLを介して接続される。駆動装置20は、例えば、ロボット装置30に備えられており、電動機25と、制御部21とを備えている。
電動機25は、回転駆動軸26を介してアーム部32を駆動する。
制御部21は、通信線CLを介して異常判定装置10と通信可能であるとともに、電力供給線PLを介して電動機25に動作電流を供給して電動機25を駆動する。
【0014】
異常判定装置10は、検出部11と、取得部12と、判定部13とを備えている。
検出部11は、アーム部(被駆動部)32を駆動する駆動装置20が有する電動機25を動作させる動作電流の電流値を、複数の動作パターンPTを有する駆動装置20の動作に応じて検出する。本実施形態では、検出部11は、例えば、駆動装置20の制御部21と電動機25とを接続する電力供給線PLを流れる電流を計測して、電動機25の動作電流の電流値を検出する。このように、検出部11は、動作パターンPTに基づいて繰り返し行われる駆動装置20の動作に対して電流値を検出する。動作パターンPTについては、後述する。
【0015】
取得部12は、検出部11によって検出された電流値を、検出部11から取得する。また、取得部12は、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された電動機25を動作させる動作電流の許容範囲を、制御部21から取得する。
【0016】
判定部13は、検出部11によって検出された電流値と、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された動作電流の許容範囲とに基づいて、駆動装置20(又はアーム部32)に異常な外力が加えられているか否か、すなわち駆動装置20の動作が異常であるか否かを判定する。そして、判定部13は、検出部11によって検出された電流値が許容範囲外である場合に、駆動装置20の動作が異常であると判定する。
【0017】
また、判定部13は、駆動装置20の動作が異常であると判定した場合に、予め定められた異常検出時の動作を駆動装置20に行わせる。判定部13は、駆動装置20の動作が異常であると判定した場合に、例えば、駆動装置20の制御部21に異常を示す情報(異常情報)を出力する。駆動装置20の制御部21は、異常判定装置10の判定部13から異常情報を取得した場合は、予め定められた異常検出時の動作を電動機25に行わせる。ここで、本実施形態において、予め定められた異常検出時の動作は、例えば、制御部21がアーム部32を緊急に停止させる緊急動作や、正常時のアーム部32の移動方向とは逆の方向にアーム部32を移動させてアーム部32を退避させる緊急動作などが含まれる。また、制御部21は、緊急動作として、例えば、正常時のアーム部32の移動速度よりも遅い速度によってアーム部32を移動させたり、正常時のアーム部32の駆動トルクよりも小さい駆動トルクによってアーム部32を駆動させたりしてもよい。
【0018】
次に、動作パターンPT及び動作電流の許容範囲について説明する。
図2は、動作パターンPT及び動作電流の許容範囲を示す図である。
本実施形態では、図2(a)に示すように、例えば、制御部21は、時刻t0から時刻t1において、動作電流波形W1を電動機25に出力して、被駆動部としてのアーム部32を加速させる動作パターンPT1によって、電動機25を駆動する。また、例えば、制御部21は、時刻t1から時刻t2において、動作電流波形W2を電動機25に出力して、アーム部32を等速移動させる動作パターンPT2によって、電動機25を駆動する。また、例えば、制御部21は、時刻t2から時刻t3において、動作電流波形W3を電動機25に出力して、アーム部32を減速させる動作パターンPT3によって、電動機25を駆動する。また、例えば、制御部21は、時刻t3から時刻t4において、動作電流波形W4を電動機25に出力して、アーム部32を、動作パターンPT2よりも遅い速度で等速移動させる動作パターンPT4によって、電動機25を駆動する。また、例えば、制御部21は、時刻t4から時刻t5において、動作電流波形W5を電動機25に出力して、アーム部32を、減速停止させる動作パターンPT5によって、電動機25を駆動する。このようにして、制御部21は、これら動作パターンPT1〜PT5を繰り返して電動機25にアーム部(被駆動部)32の動作パターンPTごとに動作電流を出力する。
【0019】
また、図2(a)に示すように、動作電流の許容範囲は、例えば、上限値ULと下限値LLとを有する。上限値ULは、動作電流の許容範囲のうち、動作電流の許容範囲の上限の電流値である。下限値ULは、動作電流の許容範囲のうち、動作電流の許容範囲の下限の電流値である。本実施形態において、例えば、制御部21は、時刻t0から時刻t1において、動作パターンPT1に関連付けられて設定された動作電流の許容範囲として、上限値UL1と、下限値LL1とを有する。同様に、例えば、制御部21は、時刻t1から時刻t2において、動作パターンPT2に関連付けられて設定された動作電流の許容範囲として、上限値UL2と、下限値LL2とを有する。同様に、例えば、制御部21は、時刻t2から時刻t3において、動作パターンPT3に関連付けられて設定された上限値UL3と下限値LL3とを、時刻t3から時刻t4において、動作パターンPT4に関連付けられて設定された上限値UL4と下限値LL4とを、時刻t4から時刻t5において、動作パターンPT5に関連付けられて設定された上限値UL5と下限値LL5とを、それぞれ有する。
【0020】
ここで、上述したように、制御部21は、例えば動作パターンPT1〜PT5に基づいて順次繰り返して電動機25に動作電流を出力する。つまり、アーム部(被駆動部)32は、動作パターンPT1〜PT5のいずれかに基づいて繰り返し駆動される。したがって、制御部21は、電動機25の動作電流の許容値を、例えばアーム部32の動作パターンPTごと(例、動作パターンPT1〜PT5)に予め設定しておくことができる。
【0021】
一方、図2(b)は、動作電流の電流値が許容範囲外になった場合を示している。
図2(b)において、例えば、制御部21は、時刻t6から時刻t7において、動作電流波形W1bを電動機25に出力して、アーム部32を等速移動させる動作パターンPT1によって、電動機25を駆動する。また、例えば、制御部21は、時刻t7から時刻t8において、動作電流波形W2bを電動機25に出力して、アーム部32を等速移動させる動作パターンPT1によって、電動機25を駆動する。ここで、時刻t7.1において、アーム部32が周囲の物体に衝突した場合について説明する。アーム部32が物体に衝突したことによって、アーム部32が停止するとともに回転駆動軸26の回転が停止する。電動機25は、回転駆動軸26の回転が停止すると、回転駆動軸26が回転している場合に比べて多くの電流が流れる。図2(b)は、回転駆動軸26の回転が衝突によって停止している場合に、動作電流の電流値が動作電流波形W2cに示す値になって、時刻t7.2から時刻t8にかけて許容範囲外になっている(本実施形態においては、例えば上限値ULを超える動作電流が流れている)ことを示している。そして、異常判定装置10は、動作電流の電流値が許容範囲外になっているので、駆動装置20の動作が異常であると判定する。
【0022】
次に、図3を参照して、本実施形態の異常判定装置10の動作を説明する。
図3は、異常判定装置10の動作を示すフローチャートである。
まず、異常判定装置10の検出部11は、駆動装置20の制御部21から電力供給線PLを介して電動機25に出力される動作電流の電流値を検出する(ステップS100)。
【0023】
次に、異常判定装置10の取得部12は、検出部11によって検出された動作電流の電流値を、検出部11から取得する(ステップS110)。
【0024】
次に、異常判定装置10の取得部12は、駆動装置20の制御部21から、動作電流の許容範囲を示す情報を取得する(ステップS120)。
【0025】
次に、異常判定装置10の判定部13は、ステップS120において取得部12によって取得された動作電流の許容範囲を示す情報に基づいて、ステップS110において取得部12によって取得された動作電流の電流値が、動作電流の許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS130)。
【0026】
そして、異常判定装置10の判定部13は、ステップS130において、動作電流の電流値が動作電流の許容範囲内であると判定した場合(ステップS140−YES)は、正常と判定して、処理をステップS150に進める。一方、判定部13は、ステップS130において、動作電流の電流値が動作電流の許容範囲内でないと判定した場合(ステップS140−NO)は、異常と判定して、処理をステップS160に進める。本実施形態では、例えば、上述した図2(b)に示す時刻t7.2〜t8の場合には、判定部13は、動作電流の電流値が動作電流の許容範囲内に入っていないと判定して、処理をステップS160に進める。
【0027】
次に、異常判定装置10の判定部13は、ステップS140において、正常と判定した場合、正常の判定結果を生成して(ステップS150)、処理をステップS170に進める。一方、異常判定装置10の判定部13は、ステップS140において、異常と判定した場合、異常の判定結果を生成して(ステップS160)、処理をステップS170に進める。
【0028】
次に、異常判定装置10の判定部13は、生成した判定結果を駆動装置20の制御部21に出力して処理を終了する(ステップS170)。
【0029】
このようにして、異常判定装置10は、駆動装置20の動作ごとに対応した動作電流の検出部11によって検出された電流値と、動作ごとに関連付けられて予め定められている動作電流の許容範囲とに基づいて、駆動装置20に異常な外力が加えられているか否か、すなわち駆動装置20の一連の動作が異常であるか否かを判定する。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、異常判定装置10は、動作電流の電流値と、動作電流の許容範囲とによって異常判定をすることができる。したがって、例えば、本実施形態の異常判定装置10は、電流値をトルクに変換する計算を行うことなく異常判定をすることができるため、トルクに基づいて異常判定を行う場合に比べて、計算量を低減することができる。
【0031】
[第2の実施形態]
次に、図4から図6を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態において説明した構成及び動作と同一の構成及び動作は、説明を省略する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る一例としての異常判定装置210の構成を示す構成図である。
【0032】
本実施形態の異常判定装置210は、アーム部(被駆動部)32を駆動する駆動装置220に通信線CLを介して接続される。
駆動装置220は、例えば、ロボット装置230に備えられており、回転駆動軸26を介してアーム部32を駆動する電動機25と、電力供給線PLを介して電動機25に動作電流を供給して電動機25を駆動する制御部221とを有している。
【0033】
また、異常判定装置210は、検出部211と、取得部212と、判定部213と、記憶部215と、生成部217とを備える。
【0034】
記憶部215には、動作パターンPTに関連付けられた動作電流の許容範囲が予め記憶されている。動作電流の許容範囲は、例えば、駆動装置220が正常に動作した際に検出部211によって検出された電流値に応じて動作パターンPTごとに定められている。また、例えば、動作電流の許容範囲は、駆動装置220が正常に動作した際に検出部211によって検出された電流値に所定の割合を演算して定められている。本実施形態においては、動作電流の許容範囲は、例えば、駆動装置220が正常に動作した際に検出部211によって検出された電流値に所定の割合を乗じて定められている。また、動作電流の許容範囲は、駆動装置220が正常に動作した際に検出部211によって検出された電流値を所定の期間ごとに平均した値に応じて定められている。本実施形態の動作電流の許容範囲は、例えば、動作パターンPTに基づいて電動機25を動作させた場合に検出部11によって検出された電流値を、所定の期間(例えば10[ms])ごとに平均した値に、所定の値(例えば±20[%])を乗じて定められて、記憶部215に記憶されている。
【0035】
検出部211は、アーム部(被駆動部)32を駆動する駆動装置220が有する電動機25を動作させる動作電流の電流値を、複数の動作パターンPTを有する駆動装置220の動作に応じて検出する。本実施形態では、検出部211は、例えば駆動装置220の制御部221と電動機25とを接続する電力供給線PLを流れる電流を計測して、電動機25の動作電流の電流値を検出する。このように、検出部211は、動作パターンPTに基づいて繰り返し行われる駆動装置220の一連の動作に対して電流値を検出する。
【0036】
取得部212は、検出部211によって検出された電流値を、検出部211から取得する。また、取得部212は、駆動装置220の駆動状態を、通信線CLを介して駆動装置220の制御部221から取得する。また、取得部212は、検出部211から取得した動作電流の電流値と、制御部221から取得した駆動状態とに基づいて、動作電流の許容範囲を算出し、取得した動作パターンPTに関連付けて動作電流の許容範囲を記憶部215に記憶させる。ここで駆動状態には、駆動装置220の制御部221が電動機225を動作させる動作パターンPTと、駆動装置220が正常に動作したか否かを示す情報とが含まれている。
【0037】
判定部213は、検出部211によって検出された電流値と、取得部212によって取得された駆動装置220の駆動状態とを取得部212から取得する。また、判定部213は、記憶部215に記憶されている動作電流の許容範囲を、取得した駆動状態に含まれている動作パターンPTに関連付けて読み出す。また、判定部213は、検出部211によって検出された電流値と、記憶部215から読み出した動作電流の許容範囲とに基づいて、駆動装置220に異常な外力が加えられているか否か、すなわち駆動装置220の動作が異常であるか否かを判定する。そして、判定部213は、検出部211によって検出された電流値が許容範囲外である場合に、駆動装置220の動作が異常であると判定する。
【0038】
生成部217は、取得部212が取得した駆動状態に含まれている動作パターンPTに基づいて許容範囲を示す情報を生成して、生成した許容範囲を示す情報を記憶部215に書き込む。
【0039】
次に、図5を参照して、本実施形態の異常判定装置210の記憶部215に予め動作電流の許容範囲を記憶させる動作を説明する。
図5は、異常判定装置210の動作を示すフローチャートである。
まず、異常判定装置210の取得部212は、駆動装置220の制御部221から、駆動装置220の駆動状態を取得する(ステップS200)。
【0040】
次に、異常判定装置210の取得部212は、駆動装置220の制御部221から取得した駆動装置220の駆動状態に含まれる、駆動装置220が正常に動作したか否かを示す情報に基づいて、駆動装置220が正常に動作したか否かを判定する(ステップS210)。取得部212は、取得した駆動装置220が正常に動作したか否かを示す情報が正常に動作したことを示す場合には、ステップS220に処理を進める(ステップS210−YES)。一方、取得部212は、取得した駆動装置220が正常に動作したか否かを示す情報が正常に動作していないことを示す場合には、処理を終了する(ステップS210−NO)。
【0041】
次に、異常判定装置210の検出部211は、駆動装置220の制御部221から電力供給線PLを介して電動機25に出力される動作電流の電流値を検出する(ステップS220)。
【0042】
次に、異常判定装置210の取得部212は、検出部211によって検出された動作電流の電流値を、検出部211から取得する(ステップS220)。
【0043】
次に、異常判定装置210の取得部212は、例えば、ステップS220において取得した動作電流の電流値を所定の期間ごとに平均化する。さらに、取得部212は、所定の期間ごとに平均化した動作電流の電流値に所定の割合を演算して、動作電流の許容範囲を算出する(ステップS230)。本実施形態の取得部212は、例えば、所定の割合として動作電流の電流値の+20[%]を、平均化した動作電流の電流値に乗じる演算を行って上限値ULを算出する。同様に、取得部212は、例えば、所定の割合として動作電流の電流値の−20[%]を、平均化した動作電流の電流値に乗じる演算を行って下限値LLを算出する。
【0044】
次に、異常判定装置210の取得部212は、ステップS230において算出した上限値ULと下限値LLとを、ステップS200において取得した動作パターンPTに関連付けて、動作電流の許容範囲として記憶部215に記憶させて、処理を終了する(ステップS240)。このように本実施形態の異常判定装置210は、動作電流の電流値を例えば所定の期間ごとに平均化した電流値に基づいて、動作電流の許容範囲を算出し、記憶部215に記憶させている。したがって、本実施形態の異常判定装置210は、平均化しない場合の電流値に含まれる電流値のばらつきが低減されるため、動作電流の許容範囲のデータ量を、電流値の平均化をしない場合に比べて低減することができる。
【0045】
次に、図6を参照して、本実施形態の異常判定装置210の動作を説明する。
図6は、異常判定装置210の動作を示すフローチャートである。
まず、異常判定装置210の検出部211は、駆動装置220の制御部221から電力供給線PLを介して電動機225に出力される動作電流の電流値を検出する(ステップS300)。
【0046】
次に、異常判定装置210の取得部212は、検出部211によって検出された動作電流の電流値を、検出部211から取得する(ステップS310)。
【0047】
次に、異常判定装置210の取得部212は、駆動装置220の制御部221から、駆動状態を取得する(ステップS320)。
【0048】
次に、異常判定装置210の判定部213は、記憶部215に記憶されている動作電流の許容範囲を示す情報のうちから、取得部212によって取得された駆動状態に含まれる動作パターンPTに関連付けられている動作電流の許容範囲を示す情報を、記憶部215から読み出す(ステップS330)。
【0049】
次に、異常判定装置210の判定部213は、記憶部215から読み出した動作電流の許容範囲を示す情報と、検出部211によって検出された動作電流の電流値とを比較する(ステップS340)。
次に、異常判定装置210の判定部213は、ステップS340の比較の結果に基づいて検出部211によって検出された動作電流が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS350)。異常判定装置210の判定部213は、検出部211によって検出された動作電流が許容範囲内である場合(ステップS350−YES)は、正常と判定して処理をステップS360に進める。一方、異常判定装置210の判定部213は、検出部211によって検出された動作電流が許容範囲内でない場合(ステップS350−NO)は、異常と判定して処理をステップS370に進める。
【0050】
次に、異常判定装置210の判定部13は、ステップS350において正常と判定した場合、判定結果を「正常」にした判定結果を生成して、処理をステップS380に進める(ステップS360)。一方、異常判定装置210の判定部13は、ステップS350において異常と判定した場合、判定結果を「異常」にした判定結果を生成して、処理をステップS380に進める(ステップS370)。
【0051】
次に、異常判定装置210の判定部213は、生成した判定結果を駆動装置220の制御部221に出力して処理を終了する(ステップS380)。
このようにして、異常判定装置210は、駆動装置220の動作に対応して検出部211によって検出された電流値と、駆動状態に関連付けられて予め定められている動作電流の許容範囲とに基づいて、駆動装置220の動作が異常であるか否かを判定する。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、異常判定装置210は、動作電流の電流値と、動作電流の許容範囲とによって異常判定をすることができる。したがって、本実施形態の異常判定装置210は、電流値をトルクに変換する計算を行うことなく異常判定をすることができるため、トルクに基づいて異常判定を行う場合に比べて、計算量を低減することができる。本実施形態の異常判定装置210は、駆動装置220が動作電流の許容範囲を有していなくても、記憶部215に記憶されている動作電流の許容範囲に基づいて異常判定を行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態の生成部217は、駆動装置220の所定の動作時間ごとに許容範囲を示す情報を生成してもよい。
異常判定装置210は、例えば、駆動装置220の所定の動作時間ごとに、図7に示すように、生成部217によって、動作パターンPTに基づいて許容範囲を示す情報を生成して、生成した許容範囲を示す情報を記憶部215に書き込む。
図7は、生成部217が許容範囲を示す情報を生成する手順を示すフローチャートである。
【0054】
生成部217は、駆動装置220の動作において所定の動作時間が経過するごとに、取得部212を介して、駆動装置220の制御部221から駆動状態を取得する(ステップS400)。本実施形態の生成部217は、駆動装置220の動作時間が、例えば駆動装置220の保守時間の間隔として、例えば100時間を経過するごとに、駆動装置220の制御部221から動作パターンPTを取得する。
次に、生成部217は、取得した動作パターンPTに基づいて許容範囲を示す情報を生成する(ステップS410)。本実施形態の生成部217は、例えば、上述した図2に示すように、動作電流の電流値に所定の割合を演算して、動作電流の上限値ULと下限値LLとを生成する。
次に、生成部217は、生成した許容範囲を示す情報を記憶部215に書き込んで、処理を終了する(ステップS420)。
このように、本実施形態の異常判定装置210は、生成部217によって、動作パターンPTに基づいて許容範囲を示す情報を生成することができる。これにより、異常判定装置210は、動作パターンPTが変更されても、異常判定を行うことができる。また、本実施形態の異常判定装置210は、駆動装置220の所定の動作時間が経過するごとに、許容範囲を示す情報を生成する。これにより、異常判定装置210は、例えば経年変化による駆動装置220の動作の変化が発生しても、異常判定を行うことができる。
【0055】
なお、図8に示すように、異常判定装置210が、選択部214及び書き込み部216を備えている構成であってもよい。
図8は、選択部214及び書き込み部216を備える異常判定装置210を示す図である。
書き込み部216は、上位装置HOSTから、許容範囲を示す情報が入力される。また、書き込み部216は、入力された許容範囲を示す情報を記憶部215に書き込む。
選択部214は、上位装置HOSTから、許容範囲の設定値が入力される。また、選択部214は、記憶部215に記憶されている複数の許容範囲を示す情報のうちから判定部213に供給する許容範囲を示す情報を、入力された許容範囲の設定値に応じて選択する。本実施形態において、選択部214は、例えば、駆動装置220の動作に応じて予め記憶部215に記憶されている許容範囲を示す情報と、書き込み部216によって記憶部215に書き込まれた許容範囲を示す情報と、のいずれかを設定する許容範囲の設定値に応じて選択する。
【0056】
判定部213は、上述したステップS320において、上位装置HOSTから入力された許容範囲の設定値及び許容範囲を示す情報を選択部214を介して記憶部215から読み出して異常判定を行う。
【0057】
この場合、上位装置HOSTが、異常判定装置210の判定に用いられる許容範囲を変更することができる。上位装置HOSTは、異常判定装置210の判定に用いられる許容範囲を、駆動装置220の制御部221が電動機225を動作させる動作パターンPTに基づいて予め生成する。これにより、動作パターンPTが変更されても、異常判定装置210が異常判定をすることができる。また、上位装置HOSTと、複数の異常判定装置210とが有線又は無線によって通信できる構成であれば、上位装置HOSTが、異常判定装置210の判定に用いられる許容範囲を、複数の異常判定装置210に対して一斉に変更することができる。例えば工場の組み立てラインに、駆動装置220を有するロボット装置230が複数の設置されている場合において、組み立て対象の製品が変更され、各ロボット装置230の動作パターンPTが一斉に変更されることがある。この場合においても、本実施形態の異常判定装置210は、動作電流の許容範囲を一斉に変更して、異常判定をすることができる。つまり、これらの構成によれば、許容範囲の設定値の変更に要する時間を短縮することができる。
【0058】
[第3の実施形態]
【0059】
次に、図9を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態において説明した構成及び動作と同一の構成及び動作は、説明を省略する。
図9は、異常判定装置310を備えている駆動装置320の構成を示す図である。
図9に示すように、本実施形態の駆動装置320は、例えば、ロボット装置30に備えられており、電動機25(回転機構)と、制御部321と、異常判定装置310とを備えている。
【0060】
電動機25は、回転駆動軸26を介してアーム部32を駆動する。
制御部21は、通信線CLを介して異常判定装置10と通信可能であるとともに、電力供給線PLを介して電動機25に動作電流を供給して電動機25を駆動する。
【0061】
異常判定装置310は、検出部311と、取得部312と、判定部313と、記憶部315と、書き込み部316とを有しており、被駆動部(本実施形態においては、例えばアーム部32)を駆動する制御部321に通信線CLを介して接続される。
【0062】
検出部311は、アーム部(被駆動部)32を駆動する駆動装置320が有する電動機25を動作させる動作電流の電流値を、第1の実施形態において上述した複数の動作パターンPTを有する駆動装置320の動作に応じて検出する。本実施形態では、検出部311は、例えば、駆動装置320の制御部321と電動機25とを接続する電力供給線PLを流れる電流を計測して、電動機25の動作電流の電流値を検出する。このように、検出部311は、動作パターンPTに基づいて繰り返し行われる駆動装置320の一連の動作に対して電流値を検出する。
【0063】
取得部312は、検出部311によって検出された電流値を、検出部311から取得する。また、取得部312は、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された電動機25を動作させる動作電流の許容範囲を、制御部321から取得する。
【0064】
判定部313は、検出部311によって検出された電流値と、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された動作電流の許容範囲とに基づいて、駆動装置320に異常な外力が加えられているか否か、すなわち駆動装置320の動作が異常であるか否かを判定する。ここで、判定部313は、検出部311によって検出された電流値が許容範囲外である場合に、駆動装置320の動作が異常であると判定する。そして、判定部313は、検出部311によって検出された電流値が許容範囲外である場合に、駆動装置320の動作が異常であると判定する。
【0065】
また、判定部313は、駆動装置320の動作が異常であると判定した場合に、予め定められた異常検出時の動作を駆動装置320に行わせる。判定部313は、駆動装置320の動作が異常であると判定した場合に、例えば、駆動装置320の制御部321に異常を示す情報を出力する。駆動装置320の制御部321は、異常判定装置310のから異常情報を取得した場合は、予め定められた異常検出時の動作を電動機25に行わせる。ここで、本実施形態において、予め定められた異常検出時の動作は、例えば、制御部321がアーム部32を緊急に停止させる緊急動作や、正常時のアーム部32の移動方向とは逆の方向にアーム部32を移動させてアーム部32を退避させる緊急動作などが含まれる。また、制御部321は、緊急動作として、例えば、正常時のアーム部332の移動速度よりも遅い速度によってアーム部332を移動させたり、正常時のアーム部332の駆動トルクよりも小さい駆動トルクによってアーム部332を駆動させたりしてもよい。
【0066】
この場合、駆動装置320の制御部321と異常判定装置310とを一体化することができ、装置全体を小型化することができる。
【0067】
なお、図10に示すように、駆動装置320−2は複数の電動機25(本実施形態においては、電動機25a、電動機25b及び電動機25c)を備えている構成であってもよい。
図10は、複数の電動機25と制御部321−2とを備える駆動装置320−2の構成を示す図である。
この場合において、異常判定装置310−2は、検出部311(検出部311a、検出部311b及び検出部311c)と、取得部312−2と、判定部313−2とを備えている。
【0068】
検出部311a、検出部311b及び検出部311cは、被駆動部(本実施形態においてはアーム部32a、アーム部32b及びアーム部32c)を駆動する電動機25a、電動機25b及び電動機25cをそれぞれ動作させる動作電流の各電流値を複数の動作パターンPTを有する駆動装置320−2の動作に応じてそれぞれ検出する。つまり、検出部311aは、アーム部32aを駆動する電動機25aを動作させる動作電流の電流値を複数の動作パターンPTを有する駆動装置320−2の動作に応じて検出する。同様に、検出部311bは、アーム部32bを駆動する電動機25bを動作させる動作電流の電流値を複数の動作パターンPTを有する駆動装置320−2の動作に応じて検出する。同様に、検出部311cは、アーム部32cを駆動する電動機25cを動作させる動作電流の電流値を複数の動作パターンPTを有する駆動装置320−2の動作に応じて検出する。
【0069】
取得部312−2は、検出部311a、検出部311b及び検出部311cによって検出された各電流値を、検出部311(検出部311a、検出部311b及び検出部311c)からそれぞれ取得する。また、取得部312−2は、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された電動機25(電動機25a、電動機25b及び電動機25c)を動作させる動作電流の許容範囲を、制御部321−2から取得する。本実施形態の取得部312−2は、例えば、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された電動機25a、電動機25b及び電動機25cを動作させる各動作電流の合計値の許容範囲を、制御部321−2から取得する。
【0070】
判定部313−2は、各検出部311によって検出されたそれぞれの電流値を演算した演算値と、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された演算値の許容範囲とに基づいて、駆動装置320−2に異常な外力が加えられているか否かを判定する。本実施形態の判定部313−2は、検出部311a、検出部311b及び検出部311cによって検出されたそれぞれの電流値を合計した電流値と、取得部312−2によって取得された動作電流の合計値の許容範囲とに基づいて、駆動装置320−2の動作が異常であるか否かを判定する。
【0071】
このように、本実施形態の異常判定装置310−2は、上記の検出部311によって検出されたそれぞれの電流値を合計した電流値と、取得部312−2によって取得された動作電流の合計値の許容範囲とに基づいて、駆動装置320−2の動作が異常であるか否かを判定する。これにより、異常判定装置310−2は、駆動装置320−2を備えていても、それぞれの電動機25について個別に異常判定を行う必要がない。したがって、異常判定装置310−2は、それぞれの電動機25について個別に異常判定を行う場合に比べて、異常判定の計算量を低減することができる。
【0072】
[第4の実施形態]
次に、図11から図12を参照して、本発明の第4の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態から第3の実施形態において説明した構成及び動作と同一の構成及び動作は、説明を省略する。
駆動装置420は、図11に示すトルク制限機構450を備えている。
図11は、本発明の第4の実施形態に係る一例としての駆動装置420の構成を示す構成図である。
本実施形態において、アーム部32a及びアーム部32bは、トルク制限機構450を介して連結されている。本実施形態の駆動装置420は、制御部421と電動機25とを備えている。
【0073】
次に、トルク制限機構450の構成について説明する。
図12は、トルク制限機構450の構成を示す図である。なお、図12においては、軸受などの記載を省略している。
トルク制限機構450は、図12(a)に示すように、被駆動軸451と、伝達部452と、調整部453とを有しており、電動機25の回転駆動軸26に生じた回転力を伝達部45を介して被駆動軸451に伝達可能である。
被駆動軸451は、アーム部32bと一体になって回転する回転軸であり、電動機25の回転駆動軸26に生じた回転力をアーム部32bに伝達する。
伝達部452は、図12(b)に示すように回転駆動軸26と被駆動軸451とのうち少なくとも一方の回転軸の周面(例、外周面又は内周面)に対して接触可能に設けられ、該回転軸の軸方向とは異なる方向(例、該回転軸の径方向)に力(例、張力や押圧力)が加えられた状態で接触することによって回転駆動軸26の回転力を被駆動軸451に伝達する。例えば本実施形態の伝達部452は、回転駆動軸26の周面及び被駆動軸451の周面に対して接触可能に設けられており、回転駆動軸26及び被駆動軸451に対して回転駆動軸26の径方向及び被駆動軸451の径方向に張力が加えられた状態で接触することによって回転駆動軸26の回転力を被駆動軸451に伝達する。
調整部453は、回転駆動軸26と被駆動軸451とに対して相対的な変位を生じさせるトルクの許容値が可変となるように、回転駆動軸26と被駆動軸451とのうち少なくとも一方に対する伝達部452の接触状態を調整可能である。例えば本実施形態の調整部453は、回転駆動軸26及び被駆動軸451に対する伝達部452の張力Tを伝達部452に接続された駆動部DR(駆動素子DR1、DR2)を用いて調整可能であり、回転駆動軸26と被駆動軸451とに対して相対的な変位を生じさせるトルクの許容値として、例えば伝達部452と、回転駆動軸26及び被駆動軸451との摩擦力を可変にする。なお、調整部453は、上記の伝達部452の張力Tに代えて、伝達部452が回転駆動軸26の周面及び被駆動軸451の周面に接触する接触角度θや摩擦係数μを可変にする構成であってもよい。
【0074】
次に、本実施形態に係るトルク制限機構450において、回転駆動軸26から被駆動軸451へ回転力を伝達し、当該被駆動軸451に回転力を作用させる構成を説明する。被駆動軸451を駆動させる際には、回転駆動軸26及び被駆動軸451に巻き付いた伝達部452に有効張力を生じさせ、当該有効張力によって回転駆動軸26被駆動軸451とを連結する。回転駆動軸26と被駆動軸451とが伝達部452によって連結されることで、回転駆動軸26から被駆動軸451へと回転力が伝達可能となる。
【0075】
ここで、オイラーの摩擦ベルト理論により、回転駆動軸26及び被駆動軸451に巻き付いた伝達部452のうち駆動素子DR1が接続された第一端部側の張力(T1)及び駆動素子DR2が接続された第二端部側の張力(T2)が下記式(1)を満たすとき、伝達部452と回転駆動軸26との間、伝達部452と被駆動軸451との間で、それぞれ摩擦力が生じる。このため、伝達部452と、回転駆動軸26の外周面及び被駆動軸451の外周面との間は、それぞれ回転方向の力が作用し合う状態(接触状態)となる。なお、ここでいう摩擦力とは、静止摩擦力及び動摩擦力が含まれる。
【0076】
伝達部452は、回転駆動軸26の外周面及び被駆動軸451の外周面に対して接触状態となったときに、摩擦力によって回転駆動軸26及び被駆動軸451と共に移動する。この移動により、回転駆動軸26から被駆動軸451にトルクが伝達される。ただし、式(1)において、μは伝達部452と回転駆動軸26の外周面及び被駆動軸451の外周面との間の見かけ上の摩擦係数であり、θは伝達部452の有効巻き付き角θ(接触角度)である。有効巻き付き角θについては、図5に示すように、回転駆動軸26の外周面及び被駆動軸451の外周面のうち伝達部452に対して接触状態となりうる部分の範囲である。
【0077】
【数1】

【0078】
このとき、トルクの伝達に寄与する有効張力は、(T1−T2)によって表される。上記式(1)に基づいて有効張力(T1−T2)を求めると、式(2)のようになる。式(2)は、T1を用いて有効張力を表す式である。
【0079】
【数2】

【0080】
上記式(2)より、回転駆動軸26から被駆動軸451に伝達されるトルクは、例えば駆動素子DR1の伸縮によって伝達部452に生じる張力T1によって一意に決定されることがわかる。式(2)の右辺のT1の係数部分は、伝達部452と回転駆動軸26との間における摩擦係数μ、及び伝達部452の有効巻き付き角θにそれぞれ依存する。
【0081】
ここで、トルク制限機構450においては、回転駆動軸26と伝達部452との間に働く力が、回転駆動軸26の外周面と伝達部452との間の最大静止摩擦力よりも小さい場合、回転駆動軸26の外周面と伝達部452との間には静止摩擦力が発生し、当該静止摩擦力によって回転駆動軸26から伝達部452にトルクが伝達される。
【0082】
また、図13は、摩擦係数μを変化させたときの有効巻き付き角θと係数部分の値との関係を示すグラフである。グラフの横軸は有効巻き付き角θを示しており、グラフの縦軸は係数部分の値を示している。図13に示すように、例えば摩擦係数μが0.3の場合には、有効巻き付き角θが300°以上のときに係数部分の値が0.8以上となっている。
【0083】
このことから、摩擦係数μが0.3の場合には、有効巻き付き角θを300°以上とすることにより、駆動素子DR1による張力T1の80%以上の力が被駆動軸451のトルクに寄与することがわかる。この巻き付き角(例、180°、270°、360°、360°以上)の他、図13のグラフから、例えば伝達部452と、回転駆動軸26及び被駆動軸451との間の摩擦係数を大きくするほど、係数部分の値が大きくなることが推定される。
【0084】
このように、本実施形態の駆動装置420は、トルク制限機構450を備えることにより、アーム部32を駆動する駆動トルクに上限値(トルク許容値)を設定することができる。これにより、駆動装置420は、アーム部32が例えばアーム部32の周囲の物体(例、人や物)に衝突して動作できなくなった場合に、トルク制限機構450によってアーム部32の駆動トルクが制限される。例えば、駆動装置420は、アーム部32bが物体に衝突すること等によってアーム部32bに生じるトルクが上記トルク許容値以上である場合に、回転駆動軸26と被駆動軸451との間に相対的な変位(例、滑り)を生じさせることによって、衝突された物体及びアーム部32bの衝撃や損傷などを低減することができる。したがって、本実施形態の駆動装置420は、アーム部32が物体に衝突した場合に、衝突された物体及びアーム部32の損傷を低減することができる。また、各実施形態におけるトルク制限機構450は、回転駆動軸26と被駆動軸451との間に相対的な変位を生じさせるトルク許容値を、動作パターンPTごとに関連付けられた動作電流の許容範囲に基づいて設定する。例えば、トルク制限機構420の該トルク許容値は、動作パターンPTに関連付けられた動作電流の許容範囲が±20%である場合、該許容範囲の上限の+20%に相当する電流値から算出されるトルクである。
【0085】
[第5の実施形態]
次に、図14を参照して、本発明の第5の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態から第4の実施形態において説明した構成及び動作と同一の構成及び動作は、説明を省略する。
図14は、本発明の第5の実施形態に係る一例としてのロボット装置530の構成を示す構成図である。
【0086】
本実施形態のロボット装置530は、アーム部32と、手先部35と、上述の異常判定装置310と、上述の駆動装置320(本実施形態においては、駆動装置320a、駆動装置320b、及び駆動装置320c)とを備えている。
駆動装置320aは、ロボット装置530の基底部31に備えられており、電動機25aを有している。また、駆動装置320aは、上位装置HOSTの駆動指令を受信した制御部321の駆動信号に基づいて電動機25aを駆動する。同様に、駆動装置320bは、電動機25bを有しており、上位装置HOSTの駆動指令を受信した制御部321の駆動信号に基づいて電動機25bを駆動する。同様に、駆動装置320cは、電動機25cを有しており、上位装置HOSTの駆動指令を受信した制御部321の駆動信号に基づいて電動機25cを駆動する。
【0087】
アーム部32は、駆動装置320によって駆動され、手先部35を移動させる。本実施形態のアーム部32には、アーム部32aとアーム部32bとアーム部32cとが含まれる。アーム部32aは、例えばアーム部32aの一端が、電動機25aの回転駆動軸26aに取り付けられ、回転駆動軸26aを中心にして回転動作する。アーム部32aは、アーム部32aの他端に、駆動装置320bを備えている。アーム部32bは、アーム部32bの一端が、電動機25bの回転駆動軸26bに取り付けられ、回転駆動軸26bを中心にして回転動作する。アーム部32bは、アーム部32bの他端に、駆動装置320cを備えている。アーム部32cは、アーム部32cの一端が、電動機25cの回転駆動軸26cに取り付けられ、回転駆動軸26cを中心にして回転動作する。
手先部35は、アーム部32の先端部分、つまりアーム部32cの他端に取り付けられて、アーム部32によって移動される。手先部35には、例えば、ロボット装置530が加工や移動などの作業を行う治工具が取り付けられる。
このようにして、ロボット装置530は、複数の駆動装置320(駆動装置320a、駆動装置320b及び駆動装置320c)と、複数のアーム部32とによって、手先部35に複数の自由度を持たせている。
【0088】
上位装置HOSTは、制御部321を介して駆動装置320a、駆動装置320b及び駆動装置320cに駆動指令を出力して、各駆動装置320を制御する。駆動装置320には、予めロボット装置530を駆動する複数の動作パターンPTと、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された各電動機25を動作させる動作電流の許容範囲とが記憶されている。本実施形態の駆動装置320には、例えば電動機25a、電動機25b及び電動機25cを動作させる各動作電流の合計値が、動作電流の許容範囲として記憶されている。
【0089】
異常判定装置310は、上述した実施形態において説明した検出部311と、取得部312と、判定部313とを備えている。本実施形態において、検出部311には、各駆動装置320の電動機25に対応した、検出部311a、検出部311b及び検出部311cとが含まれている。
検出部311は、ロボット装置530を駆動する複数の駆動装置320の電動機25をそれぞれ動作させる動作電流の各電流値を、複数の動作パターンPTを有するロボット装置530の動作に応じてそれぞれ検出する。本実施形態の検出部311aは、ロボット装置530の動作に応じて、電動機25aを動作させる動作電流の電流値を検出する。同様に、検出部311bは、ロボット装置530の動作に応じて、電動機25bを動作させる動作電流の電流値を検出する。同様に、検出部311cは、ロボット装置530の動作に応じて、電動機25cを動作させる動作電流の電流値を検出する。
【0090】
取得部312は、検出部311a、検出部311b及び検出部311cによって検出された電流値を、各検出部311からそれぞれ取得する。また、取得部312は、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された各電動機25を動作させる動作電流の許容範囲を、駆動装置320から取得する。本実施形態の取得部312は、例えば、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された電動機25a、電動機25b及び電動機25cを動作させる各動作電流の合計値の許容範囲を、駆動装置320から取得する。
【0091】
判定部313は、各検出部311によって検出されたそれぞれの電流値を演算した演算値と、動作パターンPTごとに関連付けて予め設定された演算値の許容範囲とに基づいて、ロボット装置530に異常な外力が加えられているか否かを判定する。そして、本実施形態の判定部313は、検出部311a、検出部311b及び検出部311cによって検出されたそれぞれの電流値を合計した電流値と、取得部312によって取得された動作電流の合計値の許容範囲とに基づいて、ロボット装置530の動作が異常であるか否かを判定する。
【0092】
このように、本実施形態のロボット装置530は、駆動装置320を備えている。したがって、ロボット装置530は、それぞれの駆動装置320について個別に異常判定を行う場合に比べて、異常判定の計算量を低減することができる。
【0093】
なお、本実施形態のロボット装置530は、上述した駆動装置420を備えていてもよい。この場合、本実施形態のロボット装置530は、トルク制限機構450を備えることにより、アーム部32を駆動する駆動トルクに上限値を設定することができる。これにより、ロボット装置530は、アーム部32が例えばアーム部32の周囲の人や物に衝突して動作できなくなった場合に、トルク制限機構450によってアーム部32の駆動トルクが制限される。したがって、本実施形態のロボット装置530は、アーム部32が人や物に衝突した場合に、衝突された人や物及びアーム部32の損傷を低減することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0095】
なお、上記の各実施形態における異常判定装置10(異常判定装置210、異常判定装置310)、駆動装置20(駆動装置220、駆動装置320、駆動装置420)、及び上位装置HOST(以下、これらの装置を総称して制御装置CONTと記載する)又はこの制御装置CONTが備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0096】
なお、この制御装置CONT、又はこの制御装置CONTが備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、この制御装置CONT、又はこの制御装置CONTが備える各部はメモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、制御装置CONT、又はこの制御装置CONTが備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0097】
また、制御装置CONT、又はこの制御装置CONTが備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、制御装置CONT、又はこの制御装置CONTが備える各部による処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0098】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
10,210,310,310−2…異常判定装置、11,211,311(311a,311b,311c)…検出部、13,213,313,313−2…判定部、20,220,320,320−2,420…駆動装置、21,221,321,421…制御部、30,230,530…ロボット装置、32(32a,32b,32c)…アーム部(被駆動部)、215…記憶部、216…書き込み部、217…生成部、450…トルク制限機構、451…被駆動軸、452…伝達部、453…調整部、CL…通信線、PT…動作パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部を駆動する駆動装置を動作させる動作電流の電流値を複数の動作パターンを有する前記駆動装置の動作に応じて検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記電流値と、前記動作パターンごとに関連付けて予め設定された前記動作電流の許容範囲とに基づいて、前記駆動装置の動作が異常であるか否かを判定する判定部と
を備えることを特徴とする異常判定装置。
【請求項2】
前記検出部は、繰り返し行われる前記駆動装置の動作に対して前記電流値を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記検出部によって検出された前記電流値が、前記許容範囲外である場合に、前記駆動装置の動作が異常であると判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の異常判定装置。
【請求項4】
前記許容範囲は、
前記駆動装置が正常に動作した際に前記検出部によって検出された前記電流値に応じて前記動作パターンごとに定められている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異常判定装置。
【請求項5】
前記許容範囲は、
前記駆動装置が正常に動作した際に前記検出部によって検出された前記電流値に所定の割合を演算して定められている
ことを特徴とする請求項4に記載の異常判定装置。
【請求項6】
前記許容範囲は、
前記駆動装置が正常に動作した際に前記検出部によって検出された前記電流値を所定の期間ごとに平均した値に応じて定められている
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の異常判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、
前記駆動装置の動作が異常であると判定した場合に、予め定められた異常検出時の動作を前記駆動装置に行わせる
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の異常判定装置。
【請求項8】
前記許容範囲が記憶されている記憶部と、
入力された前記許容範囲を示す情報を前記記憶部に書き込む書き込み部とを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の異常判定装置。
【請求項9】
前記動作パターンに基づいて前記許容範囲を示す情報を生成して、生成した前記許容範囲を示す情報を前記記憶部に書き込む生成部を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の異常判定装置。
【請求項10】
前記生成部は、
前記駆動装置の所定の動作時間ごとに前記許容範囲を示す情報を生成する
ことを特徴とする請求項9に記載の異常判定装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の異常判定装置
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の異常判定装置と、
回転駆動軸の回転力を被駆動軸に伝達可能なトルク制限機構であって、前記回転駆動軸と前記被駆動軸とのうち少なくとも一方の回転軸の周面の少なくとも一部に対して接触可能に設けられ、前記回転軸の軸方向とは異なる方向に力が加えられた状態で前記回転軸に接触することによって前記回転駆動軸の回転力を前記被駆動軸に伝達する伝達部と、前記回転駆動軸と前記被駆動軸とに対して相対的な変位を生じさせるトルク許容値が可変となるように、前記回転軸に対する前記伝達部の接触状態を調整可能な調整部とを含むトルク制限機構と、
前記回転駆動軸を回転させる回転機構と
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項13】
前記トルク許容値は、前記動作パターンごとに関連付けられた前記動作電流の許容範囲に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項12に記載の駆動装置。
【請求項14】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の異常判定装置と通信可能な制御部
を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項15】
請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の駆動装置
を備えることを特徴とするロボット装置。
【請求項16】
複数の被駆動部を駆動する複数の駆動装置を動作させる動作電流の各電流値を複数の動作パターンを有する前記駆動装置の動作に応じてそれぞれ検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記各電流値を演算した演算値と、前記動作パターンごとに関連付けて予め設定された前記演算値の許容範囲とに基づいて、前記駆動装置の動作が異常であるか否かを判定する判定部と
を備えることを特徴とする異常判定装置。
【請求項17】
前記演算値は、
前記検出部によって検出された前記各電流値を合計した合計値である
ことを特徴とする請求項16に記載の異常判定装置。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載の異常判定装置
を備えることを特徴とするロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−66987(P2013−66987A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208957(P2011−208957)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】