説明

異常温度検知装置

【課題】検知領域で発生した異常な温度変化を危険度に応じて検知・警報し、火災等の危険性を知らせることができる。
【解決手段】検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子によって検知領域を区画毎に温度測定し、各区画毎の温度情報に基づいて検知領域の異常温度を検知し、異常温度検知警報を発報する異常温度検知方法において、検知領域の区画毎に今回温度と経時的温度差(前回温度と今回温度の温度差)とからなる温度情報を取得する工程と、前記各区画毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定する工程とによって、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行い、その広がる速さに応じて種類の異なる警報を発報する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体から放射される赤外線を赤外線検知素子で検知することによって異常な温度変化を検知し、火災発生等を検知する異常温度検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体と背景との温度差を赤外線のエネルギー量の差として焦電素子等の赤外線検知素子を用いて検出させることにより、人体の存在を検知する赤外線受光式の人体検知装置がある。この人体検知装置では、赤外線検知素子からの検知領域内に見かけ上の温度変化が生じた場合に、人体が存在するとして判断するよう構成されている。
そして従来技術によれば、赤外線検知素子を備えた人体検知装置を利用し、人体検知を行うと同時に、火災発生などの異常温度検知を行う異常検知装置が知られている。(例えば特許文献1を参照)
従来の異常温度検知装置は、検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子と、赤外線検知素子から出力される検知信号に基づいて検知領域内の人体の有無を判断する人体検知部と、赤外線検知素子から出力される検知信号に基づいて検知領域内での火災発生等による異常な温度変化を検知する異常温度検知部とから構成され、前記人体検知部で人体の存在を検知した場合は侵入警報を発報するとともに、前記異常温度検知部で異常温度を検知した場合は、侵入警報と異なる警報(例えば火災警報)を発報するように構成されている。
【特許文献1】特開平5−346994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の異常温度検知装置では、検知領域から受光した赤外線の受光量が予め設定した値(設定レベル)を超えた場合、人体検知または異常温度検知したと判断するよう構成しており、人体検知のための設定レベル(人体検知温度)と異常温度検知のための設定レベル(火災発生温度)とがそれぞれ設定されている。
また火災発生等による異常な温度変化を検知する異常温度検知では、前記設定レベルを複数回数超え、かつ、ちらつきや揺らぎ現象を生じる炎のパルスを複数回検知した場合、火災が発生したと判断し、火災警報を発報するよう構成することによって、火災警報の誤報を抑制していた。そして火災警報の誤報抑制のため、炎の発生を火災警報発報の前提としており、炎の発生前に火災の危険性がある異常温度の警報を発報することは出来なかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の異常温度検知装置によれば、検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子と、この赤外線検知素子から出力される検知信号に基づいて検知領域の区画毎の測定温度を取得する温度検知部と、前記温度検知部からの出力信号に基づいて検知領域の異常温度を検知する制御部と、前記制御部の制御によって異常温度検知警報を発報する出力部とから構成される異常温度検知装置において、温度検知部から逐次入力される出力信号に基づいて制御部は、検知領域の区画毎に今回温度と経時温度差とからなる温度情報を取得し、さらに各区画毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定し、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類の異なる警報を発報するよう出力部を制御するものである。
【0005】
さらにこの発明の異常温度検知方法によれば、検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子によって検知領域を区画毎に温度測定し、各区画毎の温度情報に基づいて検知領域の異常温度を検知し、異常温度検知警報を発報する異常温度検知方法において、検知領域の区画毎に今回温度と経時的温度差とからなる温度情報を取得する工程と、前記各区画毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定する工程とによって、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行い、その広がる速さに応じて種類の異なる警報を発報する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の異常温度検知装置および異常温度検知方法によれば、赤外線検知素子(サーモパイル素子)を使用して検知領域の区画毎の測定温度を取得し、さらに各区画毎の温度情報(今回温度と経時温度差)に基づいて検知領域で発生した異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定し、異常温度範囲が広がる速さに応じて異なる種類の警報を発報するため、検知した温度(異常温度)が非常に高温でなくてもその異常温度範囲の広がる速さが急激である異常な温度変化を検知することによって火災発生の危険性がある異常温度を検知することができ、炎の存在の有無にかかわらず、火災発生の危険性を知らせることができる。つまり異常温度範囲の広がりが急激であるときのTPH−A発報と、それほど急激でないときのTPH−B発報と、広がりが遅いが非常に高温であるときのTPH−C発報とによって、火災発生の危険性を知らせることができる。
また異常温度(火災検知温度)の検出のみで火災発生を判断して警報を発報する従来技術の異常温度検知装置に対し、本発明の異常温度検知装置では異常温度の検出と異常温度範囲が広がる速さを判定することによって、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知をし、それぞれ種類の異なる警報を発報するため、火災発生の危険度に応じた検知、警報の発報をすることができるとともに、火災警報の誤報も抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明による異常温度検知装置の好適な実施例について、図1から図9を参照して説明する。
【0008】
図1は、本発明による異常温度検知装置を説明する図である。
本発明による異常温度検知装置は、赤外線の受光量によって物体の表面温度を計測できる赤外線検知素子(サーモパイル素子)を使用し、火災発生などの危険性がある異常な温度変化を検知して警報する異常温度検知装置10であって、図1(a)に示すように、監視したい領域に設置し(例えば監視領域の天井など)、該領域(以下、検知領域という)にある物体の温度変化を検知し、検知領域内で異常温度の発生を検知したときは異常温度検知警報を発報し、検知領域を監視・警備する。
【0009】
本発明の実施例による異常温度検知装置10は、図1(b)のブロック図に示すように、集光レンズ1と、特定波長帯域の赤外線のみを透過させる光学フィルタ2と、赤外線の受光によりその検知信号を出力する赤外線検知素子3と、赤外線検知素子3から出力される検知信号を増幅する増幅部4と、当該増幅部4に接続される温度検知部5と、前記温度検知部5からの出力信号が入力される制御部6と、前記制御部6の制御によって種類の異なる警報を発報する出力部7とを備える。
【0010】
前記赤外線検知素子3は、複数の区画に区切られた検知領域から各区画毎の赤外線を受光してその各受光量に応じた出力レベルの検知信号を各区画毎に出力するように構成される。
検知領域の区画毎に検知信号を出力する赤外線検知素子3として、例えば、複数の検知素子を並べ、検知素子毎の検知範囲がそれぞれ検知領域を複数の区画に区切るように設定され、検知領域の各区画に対応した各検知素子から、各区画毎の検知信号をそれぞれ出力するように構成したものや、あるいは、モータ等を用いて検知素子を制御して検知素子による検知範囲を随時変更する等の手段によって、一の検知素子から検知領域内の複数の区画の検知信号を各区画毎に出力可能とし、各区画毎の検知信号をそれぞれ出力するように構成したものを使用する。
そして前記温度検知部5では、赤外線検知素子3からの検知信号に基づいて検知領域に在る物体の表面温度を計測し、前記検知素子毎に測定温度を取得する。つまり検知領域の区画毎の測定温度を取得することができる。
また前記制御部6では、温度検知部5からの出力信号に基づいて検知領域内に火災発生などの危険性がある異常な温度変化が発生したか否かを判定(異常温度検知)し、異常温度を検知したときは出力部7から異常温度検知警報を発報するよう制御する。
なお前記制御部6において、温度検知部5からの出力信号に基づいて検知領域内に人体の存在があるか否かも判定し、出力部7から人体検知警報も発報できるように構成してもよい。
【0011】
この発明による異常温度検知装置10では、温度検知部5からの出力信号(検知素子毎の測定温度)が制御部6に逐次入力され、該制御部6では逐次入力される出力信号に基づいて、検知領域の区画毎に今回温度と経時温度差(前回温度と今回温度との温度差)とからなる温度情報を取得する。また前記制御部6では、検知素子毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定することによって、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行い、それぞれ種類の異なる警報を発報する。
【0012】
図2から図5を参照して、本発明の第1実施例による異常温度検知方法について説明する。
【0013】
第1実施例では、図5に示すように、8つの赤外線検知素子(サーモパイル素子)を1列に配列した一次元構成の赤外線検知素子(i=1〜I,I=8)を使用した異常温度検知装置10によって検知領域の異常温度を検知する。そして8つの赤外線検知素子〔8×1〕によって、検知領域を8つの区画〔8×1〕に区切るようにして各区画毎の検知信号がそれぞれ出力され、検知領域の区画毎に温度情報を取得する。つまり各検知素子の座標値が検知領域の各区画の座標値に対応する。従って、各検知素子から出力される検知信号をもとに取得した温度情報を各検知素子毎に解析することによって、検知領域の各区画毎に温度情報を取得し、当該温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定することができる。
この実施例では、検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子(i=1〜8)によって検知領域を区画毎に温度測定し、前記検知素子毎の温度情報に基づいて検知領域の異常温度を検知し、異常温度検知警報を発報する異常温度検知方法において、今回温度と経時温度差(前回温度と今回温度との温度差)とからなる温度情報を検知素子毎に取得する工程と、前記検知素子毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定する工程とによって、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行い、その広がる速さに応じて種類の異なる警報を発報する。
【0014】
温度検知部5から逐次入力される出力信号に基づいて、今回温度と経時温度差とからなる温度情報を検知素子毎に取得する工程について、図2のフローチャートを参照して説明する。
複数の赤外線検知素子(サーモパイル素子)からの検知信号をもとに、検知素子毎の温度情報を取得するにあたって、先ず初回の異常温度検知ルーチンであるか否かを判定し(ステップS1)、初回である場合(YES)、温度検知部5から入力された出力信号をもとに各検知素子(i=1〜I)の測定温度を取得して前回温度(t0[i])とした後(ステップS2)、異常温度の検知数をカウントしたTPHカウントをリセットする(ステップS3)。その後、温度検知部5から次に入力された出力信号をもとに各検知素子(i=1〜I)の今回温度(t1[i])を測定するとともに(ステップS4)、各検知素子の前回温度(t0[i])と今回温度(t1[i])の温度差(tdiff[i])を求める(ステップS5)。
初回のルーチンでない場合は(NO)、既に前回温度(t0[i])は取得済みなので、ステップ2を経ずにステップS3へ進み、その後、各検知素子の今回温度(t1[i])を測定するとともに(ステップS4)、各検知素子の前回温度(t0[i])と今回温度(t1[i])の温度差(tdiff[i])を求める(ステップS5)。
【0015】
なお、ステップS2の前回温度(t0[i])の測定や、ステップS4の今回温度(t1[i])の測定や、ステップS5の温度差(tdiff[i])の算出は、検知素子毎に繰り返して実行し、今回温度(t1[i])と経時温度差(tdiff[i])とからなる温度情報を検知素子毎(i=1〜I)に取得する。
【0016】
次に、前記検知素子毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定する工程について、図3のフローチャートを参照して説明する。
図3に示す異常温度検知方法によれば、まず複数の検知素子の中の1つをスキャン基準と設定し(ステップS6)、該スキャン基準とその1つ及び2つ隣の検知素子の温度情報をスキャンすることによって異常温度検知を行う。そして前記スキャン基準を1つずつ移動させながら検知素子全てをスキャンすることによって、検知領域全体の異常温度検知を行う(ステップS7〜S15)。
【0017】
スキャン基準の設定範囲は、全検知素子(i=1〜I)のうち両端各2素子(1,2,I−1,I)を除いた検知素子(3≦i≦I−2)とする。
図5(a)は、この実施例によるスキャン基準の設定範囲を図示したものである。この実施例では、8つの検知素子を1列に配列した一次元構成(8×1)の検知素子(i=1〜8)を使用するため、3≦i≦6の検知素子(ドット領域)をスキャン基準の設定範囲とし、前記スキャン基準を開始点に設定した後(i=3)、終止点(i=6)に至るまで、スキャン基準を1つずつ移動させてスキャン基準毎に異常温度検知を繰り返し実行する。
【0018】
この実施例では図3のフローチャートに示すように、まずスキャン基準を開始点に設定し(ステップS6)、当該スキャン基準とその1つ及び2つ隣の検知素子における今回温度をスキャンし、第1温度レベル(例えば45℃)以上の検知素子があるか否か判断するTPH検出を行い(ステップS7)、火災の危険性のある異常な温度変化が発生したか否かの検知を行う。
そしてTPH検出した場合(YES)、スキャン基準の1つ隣の検知素子における経時温度差をスキャンし、1つ隣の温度差が第1温度差レベル(例えば5℃)以上か否かを判定する第1温度差判定(ステップS8)を行う。
また前記1つ隣の温度差が第1温度差レベル以上の場合(YES)、さらにスキャン基準の2つ隣の検知素子における経時温度差をスキャンし、2つ隣の温度差が第2温度差レベル(例えば5℃)以上か否かを判定する第2温度差判定を行う(ステップS9)。
一方、前記1つ隣の温度差が第1温度差レベル未満の場合(NO)、スキャン基準とその1つ及び2つ隣の検知素子における今回温度をスキャンし、第2温度レベル(例えば80℃)以上の検知素子があるか否かを判断するTPH−C検出を行う(ステップS10)。
【0019】
そして、前記第1温度差判定においてスキャン基準の1つの隣の検知素子の温度差が第1温度差レベル(例えば5℃)以上であり(YES)、かつ前記第2温度差判定においてスキャン基準の2つの隣の検知素子の温度差が第2温度差レベル(例えば5℃)以上である場合(YES)、TPH−A異常であると判断してTPH−Aカウントに1を加算する(ステップS11)。
また、前記第1温度差判定においてスキャン基準の1つの隣の検知素子の温度差が第1温度差レベル(例えば5℃)以上であるが(YES)、前記第2温度差判定においてスキャン基準の2つの隣の検知素子の温度差が第2温度差レベル(例えば5℃)未満である場合(NO)、TPH−B異常であると判断してTPH−Bカウントに1を加算する(ステップS12)。
一方、前記第1温度差判定においてスキャン基準の1つの隣の検知素子の温度差が第1温度差レベル(例えば5℃)未満であるが(NO)、TPH−C検出においてスキャン基準とその1つ及び2つ隣の検知素子の何れかにおいて第2温度レベル(例えば80℃)以上のものが検出された場合(YES)、TPH−C異常であると判断してTPH−Cカウントに1を加算する(ステップS13)。
【0020】
すなわち本発明による異常温度検知方法では、TPH検出の後、第1温度差判定と第2温度差判定とTPH−C検出とによって、異常温度の広がりが急激であるときのTPH−A異常検知(ステップS11)と、それほど広がりが急激ではないときのTPH−B異常検知(ステップS12)と、広がりは遅いが非常に高温であるときのTPH−C異常検知(ステップS13)との何れかを検知し、異常温度範囲が広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行う。
そして、ステップS6で設定したスキャン基準(i=3)をもとに、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行った後、スキャン基準を次の検知素子(i=4)に移動させ(ステップS14)、今度はスキャン基準(i=4)をもとに、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行う(ステップS7〜S13)。
なおスキャン基準を次の検知素子に移動させた後(ステップS14)、スキャン基準の設定範囲を超えたか否か(i>(I−2))を判定し(ステップS15)、スキャン基準が設定範囲内である場合は(NO)、ステップ7に戻り、移動したスキャン基準をもとにステップS7〜S13による異常温度検知を実行する。
一方、移動したスキャン基準が設定範囲を超えた場合は(YES)、次処理(ステップ16)へ進む(図4のフローチャートを参照)。
【0021】
なお図5(b)に、スキャン基準が開始点であるときの(i=3)、TPH検出及びTPH−C検出における今回温度のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第1温度差判定における経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第2温度差判定とにおける経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)とを、それぞれ図示する。
また図5(c)に、スキャン基準を開始点から1つ移動させたときの(i=4)、TPH検出及びTPH−C検出における今回温度のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第1温度差判定における経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第2温度差判定とにおける経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)とをそれぞれ図示する。
さらに図5(d)に、スキャン基準が終了点であるときの(i=6)、TPH検出及びTPH−C検出における今回温度のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第1温度差判定における経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第2温度差判定とにおける経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)とをそれぞれ図示する。
【0022】
スキャン基準を次に移動したときに、移動したスキャン基準が設定範囲を超えた場合、図4のフローチャートに示すように、TPH−Aカウントが1以上(tph−a≧1)であるか否かを判定することによってTPH−A異常があったか否かを判断し(ステップS16)、TPH−A異常検知がされた場合は出力部からTPH−A発報をするよう制御する(ステップS17)。
TPH−A異常検知がない場合は、TPH−Bカウントが1以上(tph−b≧1)であるか否かを判定することによってTPH−B異常があったか否かを判断し(ステップS18)、TPH−B異常検知がされた場合は出力部からTPH−B発報をするよう制御する(ステップS19)。
TPH−A異常検知もTPH−B異常検知もない場合は、TPH−Cカウントが1以上(tph−c≧1)であるか否かを判定することによってTPH−C異常があったか否かを判断し(ステップS20)、TPH−C異常検知がされた場合は出力部からTPH−C発報をするよう制御する(ステップS21)。
【0023】
TPH−A異常検知、若しくはTPH−B異常検知、若しくはTPH−C異常検知がされた場合、それぞれ種類の異なる異常温度検知警報を発報し(TPH−A発報,TPH−B発報,TPH−C発報)、警備室に待機する警備員等に対して検知領域において異常な温度変化が発生したことを知らせる。なお前記異常温度検知警報は警備員等が待機する警備室等に出力するだけでなく、検知領域にも出力されるよう構成する。
【0024】
そして、警備員等による異常温度検知警報の発報確認と、異常温度検知に対する解決処理(例えば、検知領域の監視映像確認や現場確認など)がなされ(ステップS22)、例えば警備員等によるリセット操作によって発報がリセットされた後(ステップS23)、制御部において検知素子毎の今回温度(t1[i])を前回温度(t0[i])として書換えることによって検知素子毎の前回温度を更新し(ステップS24)、異常温度検知を終了する。
なおTPH−A異常検知もTPH−B異常検知もTPH−C異常検知もない場合は、異常温度検知警報を発報せず、検知素子毎の前回温度を更新し(ステップS24)、異常温度検知を終了する。
【0025】
そして、制御部において一定周期ごとに、検知素子毎の温度情報を取得するとともに(図2)、前記検知素子毎の温度情報に基づいて異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知(TPH−A異常検知,TPH−B異常検知,TPH−C異常検知)を行い(図3)、それぞれ種類の異なる異常温度検知警報を発報(TPH−A発報,TPH−B発報,TPH−C発報)することによって(図4)、検知領域の異常温度を検知し、警報を発報する。
なお、TPH検出における第1温度レベル(tph)や、TPH−C検出における第2温度レベル(tph−c)や、第1温度差判定における第1温度差レベル(tph−ab)や、第2温度差判定における第2温度差レベル(tph−bc)を、それぞれ調整することによって、検知感度を調整することができる。例えば、第1温度差判定における第1温度差レベル(tph−ab)や、第2温度差判定における第2温度差レベル(tph−bc)を調整することによって、異常温度範囲の広がる速さの度合いを調整して異常温度検知することができる。
【0026】
このように本発明の異常温度検知方法によれば、検知素子毎の温度情報(今回温度と経時温度差)に基づいて異常温度を検出するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定し、異常温度範囲の広がる速さに応じて異なる種類の警報を発報するため(TPH−A発報、TPH−B発報、TPH−C発報)、炎の存在の有無にかかわらず、火災発生の危険度に対応した警報を発報することができ火災発生の危険性も知らせることができ、性能の高い異常温度の検知・警報をすることができる。
【0027】
次に図6から図9を参照して本発明の第2実施例による異常温度検知方法について説明する。
【0028】
第2実施例では、図9に示すように、8つの赤外線検知素子(サーモパイル素子)を8列に配列した二次元構成(i,j)の赤外線検知素子(i=1〜I,j=1〜J)を使用した異常温度検知装置10によって検知領域の異常温度を検知する。
そして64の赤外線検知素子〔8×8〕によって、検知領域を64の区画〔8×8〕に区切るようにして各区画毎の検知信号がそれぞれ出力され、検知領域の区画毎に温度情報を取得する。つまりこの実施例でも、第1実施例と同様に、各検知素子の座標値が検知領域の各区画の座標値に対応する。従って、各検知素子から出力される検知信号をもとに取得した温度情報を各検知素子毎に解析することによって、検知領域の各区画毎に温度情報を取得し、当該温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定することができる。
この実施例では、検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子(i=1〜8,j=1〜8)によって検知領域を区画毎に温度測定し、前記検知素子毎の温度情報に基づいて検知領域の異常温度を検知し、異常温度検知警報を発報する異常温度検知方法において、第1実施例と同様に、今回温度と経時温度差(前回温度と今回温度との温度差)とからなる温度情報を検知素子毎に取得する工程と、前記検知素子毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定する工程とによって、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行い、その広がる速さに応じて種類の異なる警報を発報する。
【0029】
温度検知部5から逐次入力される出力信号に基づいて、今回温度と経時温度差とからなる温度情報を検知素子毎に取得する工程について、図6のフローチャートを参照して説明する。
複数の赤外線検知素子(サーモパイル素子)からの検知信号をもとに、検知素子毎の温度情報を取得するにあたって、第1実施例と同様に、先ず初回の異常温度検知ルーチンであるか否かを判定し(ステップS31)、初回である場合(YES)、温度検知部5から入力された出力信号をもとに各検知素子((i,j)、i=1〜I,j=1〜J)の測定温度を取得して前回温度(t0[i,j])とした後(ステップS32)、異常温度の検知数をカウントしたTPHカウントをリセットする(ステップS33)。その後、温度検知部5から次に入力された出力信号をもとに各検知素子の今回温度(t1[i,j])を測定するとともに(ステップS34)、各検知素子の前回温度(t0[i,j])と今回温度(t1[i,j])の温度差(tdiff[i,j])を求める(ステップS35)。
初回のルーチンでない場合は(NO)、既に前回温度(t0[i,j])は取得済みなので、ステップ32を経ずにステップS33へ進み、その後、各検知素子の今回温度(t1[i,j])を測定するとともに(ステップS34)、各検知素子の前回温度(t0[i,j])と今回温度(t1[i,j])の温度差(tdiff[i,j])を求める(ステップS35)。
【0030】
なお、ステップS32の前回温度(t0[i,j])の測定や、ステップS34の今回温度(t1[i,j])の測定や、ステップS35の温度差(tdiff[i,j])の算出は、検知素子毎に繰り返して実行し、今回温度(t1[i,j])と経時温度差(tdiff[i,j])とからなる温度情報を検知素子毎((i,j)、i=1〜I,j=1〜J)に取得する。
【0031】
次に、前記検知素子毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定する工程について、図7のフローチャートを参照して説明する。
第2実施例による異常温度検知でも第1実施例と同様に、まず複数の検知素子の中の1つをスキャン基準と設定し(ステップS36)、該スキャン基準とその1つ及び2つ隣の検知素子の温度情報をスキャンすることによって異常温度検知を行う。そして前記スキャン基準を1つずつ移動させながら検知素子全てをスキャンすることによって、検知領域全体の異常温度検知を行う(ステップS37〜S45)。
【0032】
スキャン基準の設定範囲は、全検知素子((i,j)、i=1〜I,j=1〜J)のうち周囲各2素子を除いた検知素子(3≦i≦I−2,3≦j≦J−2)とする。
図9(a)は、この実施例によるスキャン基準の設定範囲を図示したものである。この実施例では、8つの検知素子を8列に配列した二次元構成(8×8)の検知素子(i,j)を使用するため、3≦i≦6かつ3≦j≦6の検知素子(ドット領域)をスキャン基準の設定範囲とし、前記スキャン基準を開始点に設定した後((i,j)=(3,3))、終止点((i,j)=(6,6))に至るまで、スキャン基準を1つずつ移動させてスキャン基準毎に異常温度検知を繰り返し実行する。
【0033】
この実施例では図7のフローチャートに示すように、まずスキャン基準を開始点((i,j)=(3,3))に設定し(ステップS36)、当該スキャン基準とその1つ及び2つ隣の検知素子における今回温度をスキャンし、第1温度レベル(例えば45℃)以上の検知素子があるか否か判断するTPH検出を行い(ステップS37)、火災の危険性のある異常な温度変化が発生したか否かの検知を行う。
そしてTPH検出した場合(YES)、スキャン基準の1つ隣の検知素子における経時温度差をスキャンし、1つ隣の温度差が第1温度差レベル(例えば5℃)以上か否かを判定する第1温度差判定(ステップS38)を行う。
また前記1つ隣の温度差が第1温度差レベル以上の場合(YES)、さらにスキャン基準の2つ隣の検知素子における経時温度差をスキャンし、2つ隣の温度差が第2温度差レベル(例えば5℃)以上か否かを判定する第2温度差判定を行う(ステップS39)。
一方、前記1つ隣の温度差が第1温度差レベル未満の場合(NO)、スキャン基準とその1つ及び2つ隣の検知素子における今回温度をスキャンし、第2温度レベル(例えば80℃)以上の検知素子があるか否かを判断するTPH−C検出を行う(ステップS40)。
【0034】
そして第1実施例と同様に、異常温度の広がりが急激であるときのTPH−A異常検知(ステップS41)と、それほど広がりが急激ではないときのTPH−B異常検知(ステップS42)と、広がりは遅いが非常に高温であるときのTPH−C異常検知(ステップS43)との何れかを検知し、異常温度範囲が広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行う。
その後、ステップS36で設定したスキャン基準((i,j)=(3,3))を次の検知素子((i,j)=(4,3))に移動させ(ステップS44)、今度は移動したスキャン基準((i,j)=(4,3))をもとに、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行う(ステップS37〜S43)。
なおスキャン基準を次の検知素子に移動させた後(ステップS44)、スキャン基準の設定範囲を超えたか否か(i>(I−2) and j>(J−2))を判定し(ステップS45)、スキャン基準が設定範囲内である場合は(NO)、ステップ37に戻り、移動したスキャン基準をもとにステップS37〜S43による異常温度検知を実行する。
一方、移動したスキャン基準が設定範囲を超えた場合は(YES)、次処理(ステップ46)へ進む(図8のフローチャートを参照)。
【0035】
なお図9(b)に、スキャン基準が開始点であるときの((i,j)=(3,3))、TPH検出及びTPH−C検出における今回温度のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第1温度差判定における経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第2温度差判定とにおける経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)とを、それぞれ図示する。
また図9(c)に、スキャン基準が終了点であるときの((i,j)=(6,6))、TPH検出及びTPH−C検出における今回温度のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第1温度差判定における経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)と、第2温度差判定とにおける経時温度差のスキャン対象となる検知素子(斜線領域)とをそれぞれ図示する。
【0036】
スキャン基準を次に移動したときに、移動したスキャン基準が設定範囲を超えた場合、図8のフローチャートに示すように、TPH−Aカウントが1以上(tph−a≧1)であるか否かを判定することによってTPH−A異常があったか否かを判断し(ステップS46)、TPH−A異常検知がされた場合は出力部からTPH−A発報をするよう制御する(ステップS47)。
TPH−A異常検知がない場合は、TPH−Bカウントが1以上(tph−b≧1)であるか否かを判定することによってTPH−B異常があったか否かを判断し(ステップS48)、TPH−B異常検知がされた場合は出力部からTPH−B発報をするよう制御する(ステップS49)。
TPH−A異常検知もTPH−B異常検知もない場合は、TPH−Cカウントが1以上(tph−c≧1)であるか否かを判定することによってTPH−C異常があったか否かを判断し(ステップS50)、TPH−C異常検知がされた場合は出力部からTPH−C発報をするよう制御する(ステップS51)。
【0037】
第1実施例と同様に、TPH−A異常検知、若しくはTPH−B異常検知、若しくはTPH−C異常検知がされた場合、それぞれ種類の異なる異常温度検知警報を発報し(TPH−A発報,TPH−B発報,TPH−C発報)、警備室に待機する警備員等に対して検知領域において異常な温度変化が発生したことを知らせる。なお前記異常温度検知警報は警備員等が待機する警備室等に出力するだけでなく、検知領域にも出力されるよう構成する。
【0038】
そして、警備員等による異常温度検知警報の発報確認と、異常温度検知に対する解決処理(例えば、検知領域の監視映像確認や現場確認など)がなされ(ステップS52)、例えば警備員等によるリセット操作によって発報がリセットされた後(ステップS53)、制御部において検知素子毎の今回温度(t1[i,j])を前回温度(t0[i,j])として書換えることによって検知素子毎の前回温度を更新し(ステップS54)、異常温度検知を終了する。
なおTPH−A異常検知もTPH−B異常検知もTPH−C異常検知もない場合は、異常温度検知警報を発報せず、検知素子毎の前回温度を更新し(ステップS54)、異常温度検知を終了する。
【0039】
そして第1実施例と同様に、制御部において一定周期ごとに、検知素子毎の温度情報を取得するとともに(図6)、前記検知素子毎の温度情報に基づいて異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知(TPH−A異常検知,TPH−B異常検知,TPH−C異常検知)を行い(図7)、それぞれ種類の異なる異常温度検知警報を発報(TPH−A発報,TPH−B発報,TPH−C発報)することによって(図8)、検知領域の異常温度を検知する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】異常温度検知装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施例による異常温度検知方法における温度情報取得工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施例による異常温度検知方法における異常温度検知工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施例による異常温度検知方法における警報発報工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施例による異常温度検知装置における赤外線検知素子(サーモパイル素子)の構成を示す図である。
【図6】本発明の第2実施例による異常温度検知方法における温度情報取得工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施例による異常温度検知方法における異常温度検知工程を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施例による異常温度検知方法における警報発報工程を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施例による異常温度検知装置における赤外線検知素子(サーモパイル素子)の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 集光レンズ
2 光学フィルタ
3 赤外線検知素子
4 増幅部
5 温度検知部
6 制御部
7 出力部
10 異常温度検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子(3)と、この赤外線検知素子から出力される検知信号に基づいて検知領域の区画毎の測定温度を取得する温度検知部(5)と、前記温度検知部からの出力信号に基づいて検知領域の異常温度を検知する制御部(6)と、前記制御部(6)の制御によって異常温度検知警報を発報する出力部(7)とから構成される異常温度検知装置(10)において、
温度検知部(5)から逐次入力される出力信号に基づいて制御部(6)は、検知領域の区画毎に今回温度と経時温度差とからなる温度情報を取得し、さらに各区画毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定し、異常温度範囲の広がる速さに応じて種類の異なる警報を発報するよう出力部(7)を制御することを特徴とする異常温度検知装置。
【請求項2】
検知領域からの赤外線を受光してその受光量に応じた出力レベルの検知信号を出力する赤外線検知素子によって検知領域を区画毎に温度測定し、各区画毎の温度情報に基づいて検知領域の異常温度を検知し、異常温度検知警報を発報する異常温度検知方法において、
検知領域の区画毎に今回温度と経時的温度差とからなる温度情報を取得する工程と、
前記各区画毎の温度情報に基づいて異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定する工程とによって、
異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行い、その広がる速さに応じて種類の異なる警報を発報することを特徴とする異常温度検知方法。
【請求項3】
複数の区画に区切られた検知領域の各区画毎の温度情報に基づいて、異常温度を検知するとともに異常温度範囲が広がる速さを判定するにあたって、
複数の区画の中の1つをスキャン基準とし、
スキャン基準とその1つ及び2つ隣の区画における今回温度をスキャンし、第1温度レベルを超える区画を検出した後、
スキャン基準の1つ隣の区画における経時温度差をスキャンし、第1温度差レベルを超えるか否かを判定する第1温度差判定と、前記1つ隣の温度差が第1温度差レベルを超える場合にスキャン基準の2つ隣の区画における経時温度差をスキャンし、第2温度差レベルを超えるか否かを判定する第2温度差判定とによって、異常温度範囲の広がりが急激であるTPH−A異常と、広がりが急激でないTPH−B異常とをそれぞれ検知するとともに、
前記1つ隣の温度差が第1温度差レベル未満の場合にスキャン基準とその1つ及び2つ隣の区画における今回温度をスキャンし、第2温度レベルを超える区画を検出するTPH−C検出によって、異常温度範囲の広がりは遅いが非常に高温であるTPH−C異常を検知し、
異常温度範囲の広がる速さに応じて種類分けした異常温度検知を行い、その広がる速さに応じて種類の異なる警報を発報することを特徴とする請求項2に記載の異常温度検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−271552(P2007−271552A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100159(P2006−100159)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【Fターム(参考)】