説明

異常診断結果出力機能を有するフィールド機器と異常診断結果出力方法

【課題】異常診断を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールに関し、ホスト装置などへ適切に異常状態を知らせてユーザーの負担を減らすために、異常診断結果の時系列データに対し重み付けをしてパターン認識処理を行い、そのパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断して出力を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールとその異常診断結果出力方法を提供すること。
【解決手段】異常診断を行うフィールド機器において、異常診断結果の時系列パターンに基づき、前記異常診断結果の出力可否を判断するように構成された、ことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常診断を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールに関し、異常診断結果の時系列データに対し重み付けをしてパターン認識処理を行い、そのパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断して出力を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールとその異常診断結果出力方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィールド機器は、センサにより検出された物理量に基づきプロセス値や診断変数値を演算するほか、センサの故障などを診断する異常診断処理を行う。そして、フィールド機器は、その異常診断結果を計数して、その計数値が所定の判定値以上になった場合にその異常診断結果を出力する。このようなフィールド機器について、図5を用いて説明する。
【0003】
フィールド機器13は、センサ1、入力処理部2、駆動部3、演算部4、異常診断部5、計数部6、出力判断部10、出力処理部11、表示部12などから構成される。また、出力判断部10は、記憶部7、比較部8、出力選択部9などから構成される。そして、フィールド機器13は、出力処理部11から伝送線路(図示しない)を経由し、ホスト装置や設定器(いずれも図示しない)などに接続されて、プラント設備が構成される。
【0004】
駆動部3によって駆動されたセンサ1は、測定物理量を検出して電気信号に変換する。入力処理部2は、センサ1から電気信号を受け取り増幅してデジタル値に変換する。駆動部3は、入力処理部2から増幅信号やデジタル値を受け取り、それに基づきセンサ1を駆動する。演算部4は、入力処理部2からデジタル値を受け取り、プロセス値や診断変数値を演算する。出力処理部11は、演算部4からプロセス値を受け取り、プロセス値に対応(比例)した電流または電圧信号をホスト装置などに出力する。表示部12は、演算部4からプロセス値などの演算値を受け取り表示する。
【0005】
異常診断部5は、演算部4からプロセス値や診断変数値を受け取り、その値に基づき異常診断を行う。計数部6は、その異常診断結果を計数する。比較部8は、その計数値と記憶部7に記憶された判定値とを比較して、計数値が判定値未満または判定値以上になったことを表す選択信号を、出力選択部9に送る。
【0006】
出力選択部9は、その選択信号に基づき、計数値が判定値未満の場合には、異常診断結果を出力処理部11や表示部12に出力せず、計数値が判定値以上の場合には、異常診断結果を出力処理部11や表示部12に出力する。
【0007】
出力処理部11は、出力選択部9から異常診断結果を受け取った場合、その異常診断結果を通信信号としてホスト装置などに出力する。表示部12は、出力選択部9から異常診断結果を受け取った場合、その異常診断結果を表示する。
【0008】
ここで、計数部6と出力判断部10の動作を図6も用いて説明する。図6において、横軸は時間、縦軸は異常診断結果を計数した計数値を表す。
【0009】
異常診断部5は、定期または非定期の時間間隔でプロセス値や診断変数値に基づき、1または2以上の異常診断を行う。そして、異常診断部5は、各々の異常診断毎に、異常診断結果を異常状態または正常状態として計数部6に出力する。計数部6は、各々の異常診断毎に異常診断結果を計数する。
【0010】
計数部6は、異常診断結果が異常状態の場合には計数値を増加し(例えば現在の計数値に1を足す)、正常状態の場合には計数値を減少する(例えば現在の計数値から1を引く)。時間t1の間において、異常診断結果は正常状態であるため、計数値は0を維持する。なお計数値は0を下限値とする。時間t2の間において、異常診断結果は異常状態になり、計数値は増加する。時間t1とt2の間において、計数値は判定値未満なので、出力選択部9は、比較部8の選択信号に基づき、異常診断結果を出力しない。そのため、時間t2の間における異常状態は、ホスト装置などには出力されず、表示器12に表示されない。
【0011】
時間t3の間において、異常診断結果は異常状態を継続しており、計数値は判定値以上なので、出力選択部9は、比較部8の選択信号に基づき、異常診断結果を出力する。そのため、異常状態は、ホスト装置などに出力され、表示器12に表示される。なお、計数値は判定値を上限値とする。
【0012】
時間t4の間において、異常診断結果は正常状態になり、計数値は減少する。計数値は判定値未満なので、出力選択部9は、比較部8の選択信号に基づき、異常診断結果を出力しない。
【0013】
ここで、各々の異常診断で診断される異常には、重要性の低いものと高いものが存在する。重要性の低いものとして、例えば電気ノイズが一時的にフィールド機器に加わった場合である。これは一時的な現象であるため、フィールド機器13は、異常状態をホスト装置などへ出力や表示器12へ表示したくない。また、重要性の高いものとして、例えばセンサ異常や電気ノイズが連続的にフィールド機器に加わった場合である。このような場合には、フィールド機器13は、異常状態をホスト装置などへ出力したり、表示器12へ表示することが望ましい。
【0014】
そのために、記憶部7は、ホスト装置などから判定値を通信信号として出力処理部11を介して受け取り、判定値を設定できる。ホスト装置などが、センサ異常診断結果の計数値に対する判定値を小さくすることにより、フィールド機器13は、迅速にセンサ異常状態をホスト装置などへ出力したり、表示器12へ表示できる。また、ホスト装置などが、電気ノイズ混入による異常診断結果の計数値に対する判定値を大きくすることにより、フィールド機器13は、一時的に加わる電気ノイズによる異常状態を、ホスト装置などへ出力や表示器12へ表示しなくなり、一方、一時的ではなく連続的に加わる電気ノイズによる異常状態を、ホスト装置などへ出力したり、表示器12へ表示できる。
【0015】
このように、ユーザーは、各々の異常診断結果に対する判定値を設定(変更)することにより、重要性の高い異常を優先的にホスト装置などによって知ることができ、一方、重要性の低い異常はユーザーに知らされなくなる。そのためユーザーは、異常の監視、原因究明や対策に対する負担を軽減でき、重要性の高い異常の原因究明や対策に専念できる。
【0016】
なお、重要性の低い異常として、センサへの振動、測定流体中に発生する気泡やスラリー、弁の開閉で発生するウォーターハンマーによる大きな圧力などが、一時的に圧力計や流量計などのフィールド機器に加わる場合がある。
【0017】
【特許文献1】特開平7−93682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記電気ノイズ、振動、気泡などの大きさや発生する頻度などは、プロセスの状態(周囲のノイズ環境、フィールド機器の設置状態、流体を流すポンプの動作状態など)により変化することがある。そのためユーザーは、各々の判定値を、自らの要求(異常状態を知る優先度など)に適した値に設定するには、プロセスの状態に関する知識を必要とし、場合によってはその値の決定が困難な場合がある。また、プロセスの状態は、時間経過とともに変化することがあり、ユーザーは、定期または非定期にプロセスの状態に合わせて、各々の判定値を再度設定変更する必要もある。このように、ユーザーによる適切な判定値の決定やプロセス状態への監視負担が増加することがある。
【0019】
本発明の目的は、異常診断を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールに関し、ホスト装置などへ適切に異常状態を知らせてユーザーの負担を減らすために、異常診断結果の時系列データに対し重み付けをしてパターン認識処理を行い、そのパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断して出力を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールとその異常診断結果出力方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、
異常診断を行う異常診断部と、この異常診断部で検出した異常診断結果を計数する計数部と、この計数値に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断する出力判断部を備えたフィールド機器において、
前記出力判断部は、前記計数値を時系列に記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された計数値に対し重み付けをしてパターン認識処理を行うパターン認識処理部と、このパターン認識処理部で処理されたパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断する、
ことを特徴とする。
【0021】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記パターン認識処理は、階層型ニューラルネットワーク処理または相互結合型ニューラルネットワーク処理である、
ことを特徴とする。
【0022】
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記出力された異常診断結果の優先を含む信号に基づき、前記パターン認識処理において用いられる結合荷重または所定の閾値を決定する結合荷重決定部と、
前記パターン認識処理は、前記決定された結合荷重または所定の閾値を用いて処理される、
ことを特徴とする。
【0023】
請求項4の発明は、
異常診断を行う異常診断部と、この異常診断部で検出した異常診断結果を計数する計数部と、この計数値に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断する出力判断部を備えた異常診断結果出力モジュールにおいて、
前記出力判断部は、前記計数値を時系列に記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された計数値に対し重み付けをしてパターン認識処理を行うパターン認識処理部と、このパターン認識処理部で処理されたパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断する、
ことを特徴とする。
【0024】
請求項5の発明は、
異常診断を行い、検出された異常診断結果を計数して、この計数値に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断するステップを有する異常診断結果出力方法において、
前記出力可否を判断するステップは、前記計数値を時系列に記憶するステップと、この記憶された計数値に対し重み付けをしてパターン認識処理を行うステップと、そのパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断するステップを有する、
ことを特徴とする。
【0025】
請求項6の発明は、
異常診断を行うフィールド機器において、
異常診断結果の時系列パターンに基づき、前記異常診断結果の出力可否を判断するように構成された、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、異常診断を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールに関し、異常診断結果の時系列データに対し重み付けをしてパターン認識処理を行い、そのパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断して出力を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールとその異常診断結果出力方法によって、ホスト装置などへ適切に異常状態を知らせて、ユーザーの負担を減らすことを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[第1の実施例]
第1の実施例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明を適用したフィールド機器のブロック図であり、図5と同一のものは同一符号を付し説明を省略する。本実施例は、計数値を時系列に記憶して、それらの値に対し重み付けをしてパターン認識処理を行い、その結果に基づき、異常診断結果の出力可否を判断するものである。
【0028】
フィールド機器18は、センサ1、入力処理部2、駆動部3、演算部4、異常診断部5、計数部6、出力判断部17、出力処理部11、表示部12などから構成される。また、出力判断部17は、記憶部14、パターン認識処理部15、出力選択部16などから構成される。そして、フィールド機器18は、出力処理部11から伝送線路(図示しない)を経由し、ホスト装置や設定器(いずれも図示しない)などに接続されて、プラント設備が構成される。
【0029】
駆動部3によって駆動されたセンサ1は、測定物理量を検出して電気信号に変換する。測定物理量には、圧力、流量や温度などがあり、それらを検出するセンサには、振動式圧力センサ、測定流体中に発生する起電力や渦周波数を検出する電磁流量計や渦流量計のセンサ、温度センサなどがある。入力処理部2は、センサ1から電気信号を受け取り、その信号を増幅して(重畳ノイズの除去含む)、その増幅信号をAD変換器などによりデジタル値に変換する。駆動部3は、入力処理部2から増幅信号やデジタル値を受け取り、それに基づきセンサ1を駆動する。例えば、振動式圧力センサにおいて、センサ1、入力処理部2と駆動部3が共振回路を形成して、センサ1を振動させる。また、電磁流量計のセンサにおいて、駆動部3は、増幅信号やデジタル値に関係なく、所定の周波数で励磁コイル(図示しない)に電流を流して、測定流体に磁界を与えて起電力を発生させる。
【0030】
演算部4は、入力処理部2からデジタル値を受け取り、プロセス値や診断変数値を演算する。プロセス値には、圧力値、流量値や温度値などがある。出力処理部11は、演算部4からプロセス値を受け取り、プロセス値に対応(比例)した電流(例えば4から20ミリアンペアの範囲)または電圧信号(例えば1から5ボルトの範囲)を、ホスト装置などに出力する。また、出力処理部11は、プロセス値をデジタル信号として、フィールドバス通信により送信してもよい。表示部12は、演算部4からプロセス値などの演算値を受け取り、その値を表示する。表示部12は、液晶表示のほか視覚的に認識できるものであればよい。
【0031】
異常診断部5は、演算部4からプロセス値や診断変数値を受け取り、その値に基づき異常診断を行う。異常診断には、センサ異常、プロセス値範囲外異常、振動異常、気泡異常、スラリー異常やウォーターハンマー異常などがある。センサ異常は、センサ1が故障したときに発生し、プロセス値範囲外異常は、プロセス値が所定の範囲を超えたときに発生する。振動異常、気泡異常やスラリー異常は、それぞれ所定の値より大きい振動、気泡の量やスラリーノイズを検出したときに発生し、ウォーターハンマー異常は、弁の開閉で所定の値より大きな圧力を検出したときに発生する。
【0032】
異常診断部5は、定期また非定期に各々の異常診断を行い、異常であれば異常状態、正常であれば正常状態を検出して、これらを異常診断結果として出力する。計数部6は、各々の異常診断結果を計数する。記憶部14は、計数部6から各々の計数値を受け取り、それらの値を時系列に記憶する。パターン認識処理部15は、記憶部14から時系列に記憶された各々の計数値を受け取り、それらの値に対してパターン認識処理を行う。
【0033】
出力選択部16は、パターン認識処理部15からパターン認識処理結果を、選択信号として受け取り、その信号に基づき、異常診断結果を出力処理部11や表示部12に出力するかどうかの出力可否の判断を行う。なお、計数部6と出力判断部17の詳しい動作は後述する。
【0034】
出力処理部11は、出力選択部16から異常診断結果を受け取った場合には、その異常診断結果を通信信号としてホスト装置などに出力する。表示部12は、出力選択部16から異常診断結果を受け取った場合には、その異常診断結果を表示する。
【0035】
ここで、各々の異常診断で診断される異常には、重要性の低いものと高いものが存在する。重要性の低いものとして、例えば電気ノイズが一時的にフィールド機器18に加わった場合である。これは一時的な現象であるため、フィールド機器18は、異常状態をホスト装置などへ出力や表示器12へ表示したくない。また、重要性の高いものとして、例えばセンサ異常や電気ノイズが連続的にフィールド機器18に加わった場合である。このような場合には、フィールド機器18は、異常状態をホスト装置などへ出力したり、表示器12へ表示することが望ましい。なお、ほかに重要性の低い異常として、センサへの振動、測定流体中に発生する気泡やスラリー、弁の開閉で発生するウォーターハンマーによる大きな圧力などが、一時的に圧力計や流量計などのフィールド機器に加わる場合がある。
【0036】
前記異常状態における計数部6の動作について、図3を用いて説明する。図3において、横軸は時間、縦軸は異常診断結果を計数した計数値を表す。計数部6は、異常診断結果が異常状態の場合には計数値を増加し(例えば現在の計数値に1を足す)、正常状態の場合には計数値を減少する(例えば現在の計数値から1を引く)。
【0037】
重要性の低い異常として、例えば電気ノイズが一時的にフィールド機器18に加わった場合について、図3(b)を用いて説明する。異常診断結果は、D1のときには正常状態、D2とD3のときには異常状態、D4からDn−4までの間には正常状態、Dn−3とDn−2のときには異常状態、Dn−1とDnのときには正常状態とする。この場合、D1からDnは、計数値の時系列パターンを表す。また、重要性の高い異常として、例えばセンサ異常や電気ノイズが連続的にフィールド機器18に加わった場合、計数値は、図3(a)に表されたD1からDnの時系列パターンである。
【0038】
記憶部14は、図3(a)、(b)に表された計数値を時系列に記憶する(例えばD1からDnの計数値)。パターン認識処理部15は、異常診断結果の時系列パターンの一つである、時系列に記憶された各々の計数値(例えばD1からDnの計数値)に対し重み付けをしてパターン認識処理を行う。
【0039】
パターン認識処理の一つとして、階層型ニューラルネットワーク処理について、図4を用いて説明する。図4は、階層型ニューラルネットワーク処理のデータ処理図である。
【0040】
階層型ニューラルネットワーク処理のデータ処理は、入力層21、中間層22、出力層23などから構成される。時系列に記憶された計数値(例えばD1からDnの計数値)は、入力層21に与えられる。中間層22を構成する各ユニット(29など)は、入力層21から受け取った各データに対し、結合荷重(28など)を用いて重み付け演算をして、その演算値と所定の閾値との比較結果を、出力層23に出力する。出力層23を構成するユニット27は、中間層22から受け取ったデータに対し、結合荷重24、25、26を用いて重み付け演算をして、その演算値と所定の閾値との比較結果(Dout)を、パターン認識処理部15の出力として、出力選択部16に送る。
【0041】
出力選択部16は、Doutがハイレベルのデータ(例えば1)の場合には、異常状態であることを出力処理部11と表示部12に出力して、Doutがローレベルのデータ(例えば0)の場合には、異常状態であることを出力処理部11と表示部12に出力しない。
【0042】
出力処理部11は、出力選択部16から受け取った異常状態であることのデータを、通信信号としてホスト装置などに出力する。表示部12は、前記異常状態であることを表示する。ここで、図3(b)に表された計数値の時系列パターンの場合には、計数値に0が多いため、Doutはローレベルのデータとなり得て、出力処理部11は、異常状態であることのデータを出力しない。一方、図3(a)に表された計数値の時系列パターンの場合には、計数値に0より大きな値が多いため、Doutはハイレベルのデータとなり得て、出力処理部11は、異常状態であることのデータを出力する。
【0043】
なお、階層型ニューラルネットワーク処理には、バックプロパゲーション、ネオコグニトロン、マルチモジュールニューラルネットワーク処理などがある。また、階層型ニューラルネットワーク処理のほかに、相互結合型ニューラルネットワーク処理があり、相互結合型ニューラルネットワーク処理には、ホップフィールドネットワーク、ボルツマンマシン、競合学習型ベクトル量子化ニューラルネットワーク、学習ベクトル量子化法 (LVQモデル)処理などがある。
【0044】
本実施例によって、異常診断を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールに関し、異常診断結果の時系列データに対し重み付けをしてパターン認識処理を行い、そのパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断して出力を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールとその異常診断結果出力方法によって、ホスト装置などへ適切に異常状態を知らせて、ユーザーの負担を減らすことを実現できる。
【0045】
[第2の実施例]
第2の実施例について、図2を用いて説明する。図2は、本発明を適用したフィールド機器のブロック図であり、図1と同一のものは同一符号を付し説明を省略する。本実施例は、ユーザーが、出力された異常状態を確認して、その異常状態の出力を必要とするかどうか、または必要性の優先順位に関する情報をフィールド機器に知らせて、フィールド機器は、その情報に基づきパターン認識処理の結合荷重などを変更する学習機能を有するものである。
【0046】
フィールド機器20は、図1の構成に加えて、出力処理部11から前記情報を受け取る結合荷重決定部19を有する。第1の実施例において、ユーザーが、出力または表示された異常状態を、ホスト装置や表示器12において確認したとき、ユーザーは、出力された異常診断結果の優先を含む情報として、その異常状態の出力を必要とするかどうか、またはその必要性の優先順位を検討して決定する。ホスト装置などは、ユーザーによりその決定した情報を信号として、フィールド機器20に送信して、出力処理部11は、前記情報(信号)を受け取り結合荷重決定部19に出力する。
【0047】
結合荷重決定部19は、受け取った前記情報(信号)に基づきパターン認識処理に用いられる結合荷重や所定の閾値を決定して、それらをパターン認識処理部15に送る。パターン認識処理部15は、結合荷重や所定の閾値を、結合荷重決定部19から送られた値に設定して、その設定された値に基づきパターン認識処理を行う。例えば、異常状態の出力を必要としない、またはその必要性の優先順位が低ければ、結合荷重決定部19は、パターン認識処理において関係する結合荷重を小さくしたり、所定の閾値を大きくしたりする。また、異常状態の出力を必要とする、またはその必要性の優先順位が高ければ、結合荷重決定部19は、パターン認識処理において関係する結合荷重を大きくしたり、所定の閾値を小さくしたりする。
【0048】
本実施例によって、異常診断を行うフィールド機器または異常診断結果出力モジュールに関し、異常状態の出力または表示についてのユーザーの要求を受け付けて、その要求に基づき、パターン認識処理における結合荷重などの値に反映させる学習機能を有するフィールド機器または異常診断結果出力モジュールとその異常診断結果出力方法によって、さらにホスト装置などへ適切に異常状態を知らせて、ユーザーの負担を減らすことを実現できる。
【0049】
なお、これらの実施例は、フィールド機器に限られず、異常診断結果出力モジュールにおいて実現することもできる。また、フィールド機器には、測定対象(物理量)として温度やレベルを検出する温度伝送器やレベル計などがあり、流量計には、電磁流量計のほか渦流量計、超音波流量計やコリオリ式流量計などがある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明を適用したフィールド機器のブロック図である。
【図2】本発明を適用したフィールド機器のブロック図の他の例である。
【図3】計数部6における、時系列の計数値を表した図である。
【図4】階層型ニューラルネットワーク処理のデータ処理図である。
【図5】従来のフィールド機器のブロック図である。
【図6】従来の時系列の計数値と判定値との比較を表した図である。
【符号の説明】
【0051】
1 センサ
2 入力処理部
3 駆動部
4 演算部
5 異常診断部
6 計数部
11 出力処理部
12 表示部
14 記憶部
15 パターン処理認識部
16 出力選択部
17 出力判断部
18 フィールド機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常診断を行う異常診断部と、この異常診断部で検出した異常診断結果を計数する計数部と、この計数値に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断する出力判断部を備えたフィールド機器において、
前記出力判断部は、前記計数値を時系列に記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された計数値に対し重み付けをしてパターン認識処理を行うパターン認識処理部と、このパターン認識処理部で処理されたパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断する、
ことを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記パターン認識処理は、階層型ニューラルネットワーク処理または相互結合型ニューラルネットワーク処理である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記出力された異常診断結果の優先を含む信号に基づき、前記パターン認識処理において用いられる結合荷重または所定の閾値を決定する結合荷重決定部と、
前記パターン認識処理は、前記決定された結合荷重または所定の閾値を用いて処理される、
ことを特徴とする請求項2に記載のフィールド機器。
【請求項4】
異常診断を行う異常診断部と、この異常診断部で検出した異常診断結果を計数する計数部と、この計数値に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断する出力判断部を備えた異常診断結果出力モジュールにおいて、
前記出力判断部は、前記計数値を時系列に記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された計数値に対し重み付けをしてパターン認識処理を行うパターン認識処理部と、このパターン認識処理部で処理されたパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断する、
ことを特徴とする異常診断結果出力モジュール。
【請求項5】
異常診断を行い、検出された異常診断結果を計数して、この計数値に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断するステップを有する異常診断結果出力方法において、
前記出力可否を判断するステップは、前記計数値を時系列に記憶するステップと、この記憶された計数値に対し重み付けをしてパターン認識処理を行うステップと、そのパターン認識処理結果に基づき前記異常診断結果の出力可否を判断するステップを有する、
ことを特徴とする異常診断結果出力方法。
【請求項6】
異常診断を行うフィールド機器において、
異常診断結果の時系列パターンに基づき、前記異常診断結果の出力可否を判断するように構成された、
ことを特徴とするフィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−262375(P2008−262375A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104362(P2007−104362)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】