異形樹脂粒子の製造方法
【課題】柔軟性の高いウレタン樹脂を含有する異形樹脂粒子を容易に製造できる異形樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の異形樹脂粒子の製造方法は、ポリイソシアネートプレポリマーとポリオールと(メタ)アクリレート単量体を含むビニル系単量体成分とを水に懸濁させた状態で反応させる異形樹脂粒子の製造方法であって、ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの合計の質量Aとビニル系単量体成分の質量Bとの比率(A/B)を70/30〜5/95にする。
【解決手段】本発明の異形樹脂粒子の製造方法は、ポリイソシアネートプレポリマーとポリオールと(メタ)アクリレート単量体を含むビニル系単量体成分とを水に懸濁させた状態で反応させる異形樹脂粒子の製造方法であって、ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの合計の質量Aとビニル系単量体成分の質量Bとの比率(A/B)を70/30〜5/95にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂とアクリル樹脂を含有する異形樹脂粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂とアクリル樹脂とが複合化された樹脂粒子は、耐光性、弾力性、耐磨耗性、耐衝撃性等が優れることから、有機フィラーやトナーとして有用である。
特許文献1には、ウレタン樹脂とアクリル樹脂とが複合化された樹脂粒子の製造方法として、ポリイソシアネートプレポリマーと(メタ)アクリレート単量体とをラジカル重合開始剤を用いて水懸濁系で反応させる方法が開示されている。特許文献1に記載の製造方法によれば、真球状の樹脂粒子が得られる。
ところで、フィラーやトナーとしては、真球状の樹脂粒子以外に、表面に凹凸を有する異形樹脂粒子が使用されることがある。
特許文献2には、ウレタン樹脂とアクリル樹脂を含有する異形樹脂粒子を製造する方法として、モノマー、イソシアネートおよび重合開始剤からなる油滴を分散した水溶液中にアミンまたはポリオールを添加し、これをイソシアネートと反応させると共にモノマーを重合させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3051443号公報
【特許文献2】特許第3036011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の製造方法では、高い水溶性を有するポリオールを使用する必要があった。そのため、特許文献2に記載の製造方法では、ポリオールとして低分子量のものを使用しなければならず、ウレタン樹脂の柔軟性を高くできなかった。その結果、異形樹脂粒子の利用分野を充分に広げることができなかった。
そこで、本発明は、柔軟性の高いウレタン樹脂を含有する異形樹脂粒子を容易に製造できる異形樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を包含する。
[1]ポリイソシアネートプレポリマーとポリオールと(メタ)アクリレート単量体を含むビニル系単量体成分とを水に懸濁させた状態で反応させる異形樹脂粒子の製造方法であって、
ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの合計の質量Aとビニル系単量体成分の質量Bとの比率(A/B)を70/30〜5/95にすることを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法。
[2]ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの各々一部を反応させた後、ビニル系単量体成分を反応させると共に残りのポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールを反応させることを特徴とする[1]に記載の異形樹脂粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の異形樹脂粒子の製造方法によれば、柔軟性の高いウレタン樹脂を含有する異形樹脂粒子を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例4で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例5で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例6で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例7で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例8で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例9で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例10で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例11で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例12で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例13で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】実施例14で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】実施例15で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】比較例1で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】実施例16で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図18】実施例17で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図19】実施例18で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図20】実施例19で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図21】実施例20で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の異形樹脂粒子の製造方法は、ポリイソシアネートプレポリマーとポリオールと(メタ)アクリレート単量体を含むビニル系単量体成分とを水に懸濁させた状態で反応させる方法である。
なお、本明細書では、ポリイソシアネートプレポリマー、ポリオールおよびビニル系単量体成分を総称して「重合性成分」という。また、ポリイソシアネートとポリオールを総称して「ウレタン成分」という。
【0009】
ウレタン成分に含まれるポリイソシアネートプレポリマーとしては、イソシアネートを用いて得られ、末端に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物、または、2官能以上のイソシアネートが使用される。
【0010】
イソシアネートを用いて得られ、末端に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が過剰量となる量のイソシアネート化合物を反応させてなる付加物;ポリオールの末端にイソシアネートを付加させて得られる化合物;イソシアネート化合物のウレトジオン型ポリイソシアネート、イソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0011】
イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族系ジイソシアネート化合物、脂環族系ジイソシアネート化合物、芳香族系ジイソシアネート化合物などのジイソシアネート化合物が使用される。具体的には、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ハロゲン化フェニルジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート重合体、ジフェニルメタンジイソシアネートの重合体、ヘキサメチレンジイソシアネートの重合体、3−フェニル−2−エチレンジイソシアネート、クメン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−エトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、5,6−ジメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、ベンジジンジイゾシアネート、9,10−アンスラセンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートベンジル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、2,6−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、1,4−アンスラセンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)などが挙げられる。
【0012】
2官能以上のイソシアネートとしては、前記ジイソシアネート化合物の他に、3官能以上のイソシアネートとして、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、2,4,4’−トリイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどを用いることができる。
【0013】
イソシアネートの中でも、芳香族系のイソシアネートを用いたものより柔軟性の高いウレタン樹脂が得られることから、脂肪族、脂環式などの無黄変タイプのイソシアネートが好ましい。
また、ポリイソシアネートプレポリマーを構成するイソシアネート、ポリオールのいずれかに3官能以上のものを使用することが好ましい。イソシアネート、ポリオールのいずれかに3官能以上のもので構成されたポリイソシアネートプレポリマーを使用すれば、架橋構造が得られ、得られる異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上させることができる。
ポリイソシアネートプレポリマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
ウレタン成分に含まれるポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオールなどが使用される。
ポリオールは、目的、用途に応じて適宜選択される。
例えば、柔軟性の高いウレタン樹脂を得る場合には、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。弾性の高いウレタン樹脂を得る場合には、ポリエステルポリオールを用いることが好ましい。耐加水分解性の高いウレタン樹脂を得る場合には、ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。耐熱性の高いウレタン樹脂を得る場合には、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオールを用いることが好ましい。
また、ポリオールのいずれかに3官能以上のものを使用することが好ましい。ポリオールに3官能以上のものを使用すれば、架橋構造が得られ、得られる異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上させることができる。
ポリオールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
ビニル系単量体成分に含まれる(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化物、ニトリル誘導体である。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピオンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
(メタ)アクリレート単量体の中でも、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。(メタ)アクリレート単量体がメチル(メタ)アクリレートであれば、重合時の粒子の体積収縮が大きくなり、より異形性が大きくなる。
また、(メタ)アクリレート単量体に3官能以上のものを使用することが好ましい。(メタ)アクリレート単量体に3官能以上のものを使用すれば、架橋構造が得られ、得られる異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上させることができる。
(メタ)アクリレート単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
また、ビニル系単量体成分には、必要に応じて、(メタ)アクリレート単量体と反応し得る他のビニル系単量体が含まれてもよい。
他のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリルアミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
他のビニル系単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
反応の際には、ウレタン成分の質量Aとビニル系単量体成分の質量Bとの比率(A/B)を70/30〜5/95にし、好ましくは67/33〜17/83にする。前記範囲から外れると、得られる樹脂粒子が真球状になる。
【0018】
反応の際には、反応を促進させるために、ラジカル重合開始剤およびウレタン化触媒を添加することが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクタエート等の有機過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチル錫ラウレート等の金属系触媒、トリエチルアミン等のアミン系触媒等が挙げられる。
【0019】
また、ビーズ原材料には、染料、顔料などの着色剤が含まれてもよい。ただし、ここで用いられる着色剤は、ウレタン化反応を阻害しないものである。ビーズ原材料に着色剤が含まれると、着色した異形樹脂粒子を得ることができ、着色した異形樹脂粒子を塗料に添加すると、ビロード調やスウェード調などの意匠性を有する塗膜を得ることができる。
また、ビーズ原材料の粘度が高く、取り扱いにくくなる場合には、ビーズ原材料に希釈溶剤を配合してもよい。希釈溶剤としては、ウレタン化反応を阻害しないものであればよい。
また、得られる異形樹脂粒子の諸物性を改良するために、ビーズ原材料に紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属粉、シリカなどの無機フィラー、香料などが含まれてもよい。
【0020】
反応の際には、重合性成分の懸濁状態を安定化させるために、分散媒である水に懸濁安定剤を添加することが好ましい。懸濁安定剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド系、第3燐酸塩類等が挙げられる。
懸濁安定剤の添加量は、重合性成分100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましい。懸濁安定剤の添加量が1質量部以上であれば、懸濁状態を充分に安定化させることができ、30質量部以下であれば、充分な大きさの異形樹脂粒子を得ることができる。
【0021】
また、懸濁安定剤に界面活性剤を併用してもよい。懸濁安定剤に併用する界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0022】
ウレタン成分およびビニル系単量体成分は、重合性成分を反応させる前に、水中で懸濁状態にされる。ここで、ウレタン成分およびビニル系単量体成分を水に懸濁させた状態では、これらの成分が混合した液滴を形成している。
重合性成分を反応させる前にウレタン成分およびビニル系単量体成分を懸濁状態にするためには、充分に攪拌すればよい。
【0023】
懸濁状態の重合性成分の反応方法は、ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの各々一部を反応させた後、ビニル系単量体成分を反応させると共に残りのポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールを反応させる方法(以下、「2段重合法」という。)、ウレタン成分とビニル系単量体成分とを同時に反応させる方法などが挙げられるが、2段重合法が好ましい。2段重合法では、一部のウレタン成分の反応によって形成したウレタン樹脂の粒子の内部にビニル系単量体成分が入り込み、その状態でビニル系単量体成分と残りのウレタン成分の反応とが進むため、ウレタン樹脂とアクリル樹脂が絡まった構造を有する樹脂粒子を容易に形成できる。このような樹脂粒子では、異形性が大きくなる。また、2段重合法では、未反応ポリオールの残留量を少なくできる。
ウレタン成分の一部を反応させた後、ウレタン成分の反応が完結する前にビニル系単量体成分の反応を開始させるためには、1段目のウレタン成分の反応の温度よりも2段目の反応の温度を高くし、かつ、2段目の反応の温度でラジカルを生成するラジカル重合開始剤を用いればよい。1段目の反応の温度を低くすることによって、ビニル系単量体成分の反応を抑制しつつウレタン化反応を生じさせ、しかもウレタン化反応の完結を防ぐことができる。また、2段目の反応によってビニル系単量体成分と残りのウレタン成分を反応させることができる。
1段目の反応では、例えば、反応温度を30〜70℃、反応時間を1〜6時間にし、2段目の反応では、反応温度を40〜90℃(ただし、1段目より高い温度)、反応時間を1〜6時間にすることができる。
【0024】
反応が終了した後、得られた懸濁液について、例えば、ろ過や遠心分離などによって固液を分離して、異形樹脂粒子を回収する。
固液分離前には、懸濁安定剤を分解するセルロース分解酵素、ポリビニルアルコール分解酵素などの酵素、次亜塩素酸塩などの試薬等で懸濁液を処理してもよい。前記試薬で処理することにより、懸濁液の粘度を下げて固液分離作業を容易にでき、また、洗浄もしやすくなる。
固液分離した後には、回収された異形樹脂粒子を洗浄して懸濁安定剤を除去することが好ましい。また、洗浄後には、例えば、加熱乾燥法、気流乾燥法、真空乾燥法、赤外線乾燥法等によって乾燥することが好ましい。
【0025】
上記製造方法により得られた異形樹脂粒子では、ウレタン樹脂の部分が収縮して変形するため、表面に凹凸が形成された非真球状になる。
また、上記製造方法では、ポリオールをポリイソシアネートプレポリマーと(メタ)アクリレート単量体と共に懸濁状態にしてから反応させるため、水に溶解させる必要がない。したがって、ポリオールは水溶性である必要は無く、ポリオールの分子量に制限がないため、高分子量のポリオールを用いることができる。よって、柔軟性の高いウレタン樹脂を含有する異形樹脂粒子を容易に得ることができる。
また、上記製造方法では、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂の両方を架橋構造にすることができるため、得られる異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上させることができる。
また、上記製造方法によれば、異形樹脂粒子の体積平均粒子径を1〜1000μmにすることができる。
【0026】
得られた異形樹脂粒子の用途としては、塗料、フィルム用コーティング剤、紙塗工剤、繊維加工剤、接着剤、粘着剤などに含まれる添加剤;光拡散フィルムや光拡散シート用の光拡散剤;化粧品用添加剤;フィルムのアンチブロッキング剤;筆記具、マーカー、プリンタ等に用いられるインキの添加剤;生理活性物質、反応検査薬、反応触媒の担体;樹脂あるいはゴムの改質剤、低収縮化剤などが挙げられる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水600gを仕込み、この中にメトローズ90SH−100(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学工業株式会社製)18.0gを溶解して分散媒を調製した。
これとは別に、ポリオールとして、クラレポリオールP−6010(ポリエステルポリオール、数平均分子量6000、官能基数2、株式会社クラレ製)108.7g、クラレポリオールF−3010(ポリエステルポリオール、数平均分子量3000、官能基数3、株式会社クラレ製)54.0g、ポリイソシアネートプレポリマーとして、ヘキサンメチレンジイソシアネートのウレトジオン型ポリイソシアネート37.3g、(メタ)アクリレート単量体として、メチルメタクリレート80.0g、エチレングリコールジメタクリレート20.0g、ラジカル重合開始剤として、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.4g、ベンゾイルパーオキサイド0.2g、ウレタン化触媒として、ジブチル錫ジラウレート2.5mgを混合して、ビーズ原材料を調製した。このビーズ原材料におけるウレタン成分とビニル系単量体成分との質量比率は2:1である。
前記分散媒を400rpmで攪拌しながら、前記ビーズ原材料を添加して、懸濁液を調製した。
次いで、攪拌継続下に懸濁液を40℃に昇温し、3時間反応させた(1段目の反応)。その後、60℃に昇温し、2時間反応させ(2段目の反応)、さらに95℃に昇温し、1時間保持した(熟成)。そして、室温まで冷却し、固液分離し、水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、平均粒子径19.7μmの樹脂粒子を得た。
【0028】
(実施例2〜20、比較例1,2)
実施例1において、ポリオール、ポリイソシアネートプレポリマー、(メタ)アクリレート単量体、他のビニル系単量体、ラジカル重合開始剤、ウレタン化触媒、分散媒の種類または量、反応条件を表1,2,3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子を得た。
【0029】
なお、表1における「合成物(I)」は、下記の方法で得たものである。
窒素ガスで充分に置換し、乾燥させた2Lオートクレーブに、プラクセル308(ポリエステルポリオール、数平均分子量800、官能基数3、ダイセル化学工業株式会社製)854gと、ヘキサメチレンジイソシアネート1008gとを仕込み、さらに窒素ガスにて充分に上部を置換した後に密閉し、120℃で20時間攪拌・混合して反応させた。その後、減圧下で未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去した後、トルエンを加えて不揮発分90質量%とした。これにより、イソシアネート基含有量8.1質量%の合成物(I)を得た。
【0030】
表1における「プラクセル320」は、ポリエステルポリオール、数平均分子量2000、官能基数3、ダイセル化学工業株式会社製である。
表1における「GI−1000」は、ポリブタジエンポリオール、数平均分子量1000、官能基数2、日本曹達株式会社製である。
表2における「PTMG1000」は、ポリエーテルポリオール、数平均分子量1000、官能基数2、三菱化学株式会社製である。
表2における「PCDL T−5652」は、ポリカーボネートポリオール、数平均分子量2000、官能基数2、旭化成ケミカルズ株式会社製である。
表3における「イエローUD−128」は、黄色加工顔料(ジスアゾイエロー系)、レジノカラー工業株式会社製である。
表3における「ホワイトUD−522A」は、白色加工顔料(酸化チタン系)、レジノカラー工業株式会社製である。
表3における「ブラックUD−403」は、黒色加工顔料(カーボンブラック系)、レジノカラー工業株式会社製である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
得られた樹脂粒子について走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−3000N)を用いて写真を撮影した。その写真を図1〜21に示す。また、その写真を観察して、樹脂粒子の異形度合いを評価した。評価結果を表1,2,3に示す。なお、異形度合いは、数値が大きい程、異形になり、真球でなくなっている。
また、樹脂粒子の体積平均粒子径を、株式会社島津製作所製粒度分布測定機SALD−2100を用いて測定した。
【0035】
ポリオールを含有するウレタン成分Aとビニル系単量体成分Bとを、質量比率(A/B)が70/30〜5/95になる範囲で反応させた実施例1〜20の製造方法では、ウレタン樹脂とアクリル樹脂を含有する異形樹脂粒子を得ることができた。
これに対し、ポリオールを含有するウレタン成分Aとビニル系単量体成分Bとを、質量比率A/B=80/20で反応させた比較例1の製造方法では、得られた樹脂粒子の形状が真球状であった。
ビニル系単量体成分Bのみを反応させた比較例2の製造方法では、得られた樹脂粒子の形状が真球状であった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂とアクリル樹脂を含有する異形樹脂粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂とアクリル樹脂とが複合化された樹脂粒子は、耐光性、弾力性、耐磨耗性、耐衝撃性等が優れることから、有機フィラーやトナーとして有用である。
特許文献1には、ウレタン樹脂とアクリル樹脂とが複合化された樹脂粒子の製造方法として、ポリイソシアネートプレポリマーと(メタ)アクリレート単量体とをラジカル重合開始剤を用いて水懸濁系で反応させる方法が開示されている。特許文献1に記載の製造方法によれば、真球状の樹脂粒子が得られる。
ところで、フィラーやトナーとしては、真球状の樹脂粒子以外に、表面に凹凸を有する異形樹脂粒子が使用されることがある。
特許文献2には、ウレタン樹脂とアクリル樹脂を含有する異形樹脂粒子を製造する方法として、モノマー、イソシアネートおよび重合開始剤からなる油滴を分散した水溶液中にアミンまたはポリオールを添加し、これをイソシアネートと反応させると共にモノマーを重合させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3051443号公報
【特許文献2】特許第3036011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の製造方法では、高い水溶性を有するポリオールを使用する必要があった。そのため、特許文献2に記載の製造方法では、ポリオールとして低分子量のものを使用しなければならず、ウレタン樹脂の柔軟性を高くできなかった。その結果、異形樹脂粒子の利用分野を充分に広げることができなかった。
そこで、本発明は、柔軟性の高いウレタン樹脂を含有する異形樹脂粒子を容易に製造できる異形樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を包含する。
[1]ポリイソシアネートプレポリマーとポリオールと(メタ)アクリレート単量体を含むビニル系単量体成分とを水に懸濁させた状態で反応させる異形樹脂粒子の製造方法であって、
ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの合計の質量Aとビニル系単量体成分の質量Bとの比率(A/B)を70/30〜5/95にすることを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法。
[2]ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの各々一部を反応させた後、ビニル系単量体成分を反応させると共に残りのポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールを反応させることを特徴とする[1]に記載の異形樹脂粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の異形樹脂粒子の製造方法によれば、柔軟性の高いウレタン樹脂を含有する異形樹脂粒子を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例4で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例5で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例6で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例7で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例8で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例9で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例10で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例11で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例12で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例13で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】実施例14で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】実施例15で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】比較例1で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】実施例16で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図18】実施例17で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図19】実施例18で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図20】実施例19で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図21】実施例20で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の異形樹脂粒子の製造方法は、ポリイソシアネートプレポリマーとポリオールと(メタ)アクリレート単量体を含むビニル系単量体成分とを水に懸濁させた状態で反応させる方法である。
なお、本明細書では、ポリイソシアネートプレポリマー、ポリオールおよびビニル系単量体成分を総称して「重合性成分」という。また、ポリイソシアネートとポリオールを総称して「ウレタン成分」という。
【0009】
ウレタン成分に含まれるポリイソシアネートプレポリマーとしては、イソシアネートを用いて得られ、末端に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物、または、2官能以上のイソシアネートが使用される。
【0010】
イソシアネートを用いて得られ、末端に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が過剰量となる量のイソシアネート化合物を反応させてなる付加物;ポリオールの末端にイソシアネートを付加させて得られる化合物;イソシアネート化合物のウレトジオン型ポリイソシアネート、イソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0011】
イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族系ジイソシアネート化合物、脂環族系ジイソシアネート化合物、芳香族系ジイソシアネート化合物などのジイソシアネート化合物が使用される。具体的には、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ハロゲン化フェニルジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、オクタデシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート重合体、ジフェニルメタンジイソシアネートの重合体、ヘキサメチレンジイソシアネートの重合体、3−フェニル−2−エチレンジイソシアネート、クメン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−エトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、5,6−ジメチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、ベンジジンジイゾシアネート、9,10−アンスラセンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートベンジル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、2,6−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートジフェニル、1,4−アンスラセンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)などが挙げられる。
【0012】
2官能以上のイソシアネートとしては、前記ジイソシアネート化合物の他に、3官能以上のイソシアネートとして、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、2,4,4’−トリイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどを用いることができる。
【0013】
イソシアネートの中でも、芳香族系のイソシアネートを用いたものより柔軟性の高いウレタン樹脂が得られることから、脂肪族、脂環式などの無黄変タイプのイソシアネートが好ましい。
また、ポリイソシアネートプレポリマーを構成するイソシアネート、ポリオールのいずれかに3官能以上のものを使用することが好ましい。イソシアネート、ポリオールのいずれかに3官能以上のもので構成されたポリイソシアネートプレポリマーを使用すれば、架橋構造が得られ、得られる異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上させることができる。
ポリイソシアネートプレポリマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
ウレタン成分に含まれるポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオールなどが使用される。
ポリオールは、目的、用途に応じて適宜選択される。
例えば、柔軟性の高いウレタン樹脂を得る場合には、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。弾性の高いウレタン樹脂を得る場合には、ポリエステルポリオールを用いることが好ましい。耐加水分解性の高いウレタン樹脂を得る場合には、ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。耐熱性の高いウレタン樹脂を得る場合には、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオールを用いることが好ましい。
また、ポリオールのいずれかに3官能以上のものを使用することが好ましい。ポリオールに3官能以上のものを使用すれば、架橋構造が得られ、得られる異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上させることができる。
ポリオールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
ビニル系単量体成分に含まれる(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化物、ニトリル誘導体である。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピオンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
(メタ)アクリレート単量体の中でも、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。(メタ)アクリレート単量体がメチル(メタ)アクリレートであれば、重合時の粒子の体積収縮が大きくなり、より異形性が大きくなる。
また、(メタ)アクリレート単量体に3官能以上のものを使用することが好ましい。(メタ)アクリレート単量体に3官能以上のものを使用すれば、架橋構造が得られ、得られる異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上させることができる。
(メタ)アクリレート単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
また、ビニル系単量体成分には、必要に応じて、(メタ)アクリレート単量体と反応し得る他のビニル系単量体が含まれてもよい。
他のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリルアミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
他のビニル系単量体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
反応の際には、ウレタン成分の質量Aとビニル系単量体成分の質量Bとの比率(A/B)を70/30〜5/95にし、好ましくは67/33〜17/83にする。前記範囲から外れると、得られる樹脂粒子が真球状になる。
【0018】
反応の際には、反応を促進させるために、ラジカル重合開始剤およびウレタン化触媒を添加することが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクタエート等の有機過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチル錫ラウレート等の金属系触媒、トリエチルアミン等のアミン系触媒等が挙げられる。
【0019】
また、ビーズ原材料には、染料、顔料などの着色剤が含まれてもよい。ただし、ここで用いられる着色剤は、ウレタン化反応を阻害しないものである。ビーズ原材料に着色剤が含まれると、着色した異形樹脂粒子を得ることができ、着色した異形樹脂粒子を塗料に添加すると、ビロード調やスウェード調などの意匠性を有する塗膜を得ることができる。
また、ビーズ原材料の粘度が高く、取り扱いにくくなる場合には、ビーズ原材料に希釈溶剤を配合してもよい。希釈溶剤としては、ウレタン化反応を阻害しないものであればよい。
また、得られる異形樹脂粒子の諸物性を改良するために、ビーズ原材料に紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属粉、シリカなどの無機フィラー、香料などが含まれてもよい。
【0020】
反応の際には、重合性成分の懸濁状態を安定化させるために、分散媒である水に懸濁安定剤を添加することが好ましい。懸濁安定剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド系、第3燐酸塩類等が挙げられる。
懸濁安定剤の添加量は、重合性成分100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましい。懸濁安定剤の添加量が1質量部以上であれば、懸濁状態を充分に安定化させることができ、30質量部以下であれば、充分な大きさの異形樹脂粒子を得ることができる。
【0021】
また、懸濁安定剤に界面活性剤を併用してもよい。懸濁安定剤に併用する界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0022】
ウレタン成分およびビニル系単量体成分は、重合性成分を反応させる前に、水中で懸濁状態にされる。ここで、ウレタン成分およびビニル系単量体成分を水に懸濁させた状態では、これらの成分が混合した液滴を形成している。
重合性成分を反応させる前にウレタン成分およびビニル系単量体成分を懸濁状態にするためには、充分に攪拌すればよい。
【0023】
懸濁状態の重合性成分の反応方法は、ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの各々一部を反応させた後、ビニル系単量体成分を反応させると共に残りのポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールを反応させる方法(以下、「2段重合法」という。)、ウレタン成分とビニル系単量体成分とを同時に反応させる方法などが挙げられるが、2段重合法が好ましい。2段重合法では、一部のウレタン成分の反応によって形成したウレタン樹脂の粒子の内部にビニル系単量体成分が入り込み、その状態でビニル系単量体成分と残りのウレタン成分の反応とが進むため、ウレタン樹脂とアクリル樹脂が絡まった構造を有する樹脂粒子を容易に形成できる。このような樹脂粒子では、異形性が大きくなる。また、2段重合法では、未反応ポリオールの残留量を少なくできる。
ウレタン成分の一部を反応させた後、ウレタン成分の反応が完結する前にビニル系単量体成分の反応を開始させるためには、1段目のウレタン成分の反応の温度よりも2段目の反応の温度を高くし、かつ、2段目の反応の温度でラジカルを生成するラジカル重合開始剤を用いればよい。1段目の反応の温度を低くすることによって、ビニル系単量体成分の反応を抑制しつつウレタン化反応を生じさせ、しかもウレタン化反応の完結を防ぐことができる。また、2段目の反応によってビニル系単量体成分と残りのウレタン成分を反応させることができる。
1段目の反応では、例えば、反応温度を30〜70℃、反応時間を1〜6時間にし、2段目の反応では、反応温度を40〜90℃(ただし、1段目より高い温度)、反応時間を1〜6時間にすることができる。
【0024】
反応が終了した後、得られた懸濁液について、例えば、ろ過や遠心分離などによって固液を分離して、異形樹脂粒子を回収する。
固液分離前には、懸濁安定剤を分解するセルロース分解酵素、ポリビニルアルコール分解酵素などの酵素、次亜塩素酸塩などの試薬等で懸濁液を処理してもよい。前記試薬で処理することにより、懸濁液の粘度を下げて固液分離作業を容易にでき、また、洗浄もしやすくなる。
固液分離した後には、回収された異形樹脂粒子を洗浄して懸濁安定剤を除去することが好ましい。また、洗浄後には、例えば、加熱乾燥法、気流乾燥法、真空乾燥法、赤外線乾燥法等によって乾燥することが好ましい。
【0025】
上記製造方法により得られた異形樹脂粒子では、ウレタン樹脂の部分が収縮して変形するため、表面に凹凸が形成された非真球状になる。
また、上記製造方法では、ポリオールをポリイソシアネートプレポリマーと(メタ)アクリレート単量体と共に懸濁状態にしてから反応させるため、水に溶解させる必要がない。したがって、ポリオールは水溶性である必要は無く、ポリオールの分子量に制限がないため、高分子量のポリオールを用いることができる。よって、柔軟性の高いウレタン樹脂を含有する異形樹脂粒子を容易に得ることができる。
また、上記製造方法では、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂の両方を架橋構造にすることができるため、得られる異形樹脂粒子の耐溶剤性を向上させることができる。
また、上記製造方法によれば、異形樹脂粒子の体積平均粒子径を1〜1000μmにすることができる。
【0026】
得られた異形樹脂粒子の用途としては、塗料、フィルム用コーティング剤、紙塗工剤、繊維加工剤、接着剤、粘着剤などに含まれる添加剤;光拡散フィルムや光拡散シート用の光拡散剤;化粧品用添加剤;フィルムのアンチブロッキング剤;筆記具、マーカー、プリンタ等に用いられるインキの添加剤;生理活性物質、反応検査薬、反応触媒の担体;樹脂あるいはゴムの改質剤、低収縮化剤などが挙げられる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水600gを仕込み、この中にメトローズ90SH−100(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学工業株式会社製)18.0gを溶解して分散媒を調製した。
これとは別に、ポリオールとして、クラレポリオールP−6010(ポリエステルポリオール、数平均分子量6000、官能基数2、株式会社クラレ製)108.7g、クラレポリオールF−3010(ポリエステルポリオール、数平均分子量3000、官能基数3、株式会社クラレ製)54.0g、ポリイソシアネートプレポリマーとして、ヘキサンメチレンジイソシアネートのウレトジオン型ポリイソシアネート37.3g、(メタ)アクリレート単量体として、メチルメタクリレート80.0g、エチレングリコールジメタクリレート20.0g、ラジカル重合開始剤として、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.4g、ベンゾイルパーオキサイド0.2g、ウレタン化触媒として、ジブチル錫ジラウレート2.5mgを混合して、ビーズ原材料を調製した。このビーズ原材料におけるウレタン成分とビニル系単量体成分との質量比率は2:1である。
前記分散媒を400rpmで攪拌しながら、前記ビーズ原材料を添加して、懸濁液を調製した。
次いで、攪拌継続下に懸濁液を40℃に昇温し、3時間反応させた(1段目の反応)。その後、60℃に昇温し、2時間反応させ(2段目の反応)、さらに95℃に昇温し、1時間保持した(熟成)。そして、室温まで冷却し、固液分離し、水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、平均粒子径19.7μmの樹脂粒子を得た。
【0028】
(実施例2〜20、比較例1,2)
実施例1において、ポリオール、ポリイソシアネートプレポリマー、(メタ)アクリレート単量体、他のビニル系単量体、ラジカル重合開始剤、ウレタン化触媒、分散媒の種類または量、反応条件を表1,2,3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子を得た。
【0029】
なお、表1における「合成物(I)」は、下記の方法で得たものである。
窒素ガスで充分に置換し、乾燥させた2Lオートクレーブに、プラクセル308(ポリエステルポリオール、数平均分子量800、官能基数3、ダイセル化学工業株式会社製)854gと、ヘキサメチレンジイソシアネート1008gとを仕込み、さらに窒素ガスにて充分に上部を置換した後に密閉し、120℃で20時間攪拌・混合して反応させた。その後、減圧下で未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去した後、トルエンを加えて不揮発分90質量%とした。これにより、イソシアネート基含有量8.1質量%の合成物(I)を得た。
【0030】
表1における「プラクセル320」は、ポリエステルポリオール、数平均分子量2000、官能基数3、ダイセル化学工業株式会社製である。
表1における「GI−1000」は、ポリブタジエンポリオール、数平均分子量1000、官能基数2、日本曹達株式会社製である。
表2における「PTMG1000」は、ポリエーテルポリオール、数平均分子量1000、官能基数2、三菱化学株式会社製である。
表2における「PCDL T−5652」は、ポリカーボネートポリオール、数平均分子量2000、官能基数2、旭化成ケミカルズ株式会社製である。
表3における「イエローUD−128」は、黄色加工顔料(ジスアゾイエロー系)、レジノカラー工業株式会社製である。
表3における「ホワイトUD−522A」は、白色加工顔料(酸化チタン系)、レジノカラー工業株式会社製である。
表3における「ブラックUD−403」は、黒色加工顔料(カーボンブラック系)、レジノカラー工業株式会社製である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
得られた樹脂粒子について走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−3000N)を用いて写真を撮影した。その写真を図1〜21に示す。また、その写真を観察して、樹脂粒子の異形度合いを評価した。評価結果を表1,2,3に示す。なお、異形度合いは、数値が大きい程、異形になり、真球でなくなっている。
また、樹脂粒子の体積平均粒子径を、株式会社島津製作所製粒度分布測定機SALD−2100を用いて測定した。
【0035】
ポリオールを含有するウレタン成分Aとビニル系単量体成分Bとを、質量比率(A/B)が70/30〜5/95になる範囲で反応させた実施例1〜20の製造方法では、ウレタン樹脂とアクリル樹脂を含有する異形樹脂粒子を得ることができた。
これに対し、ポリオールを含有するウレタン成分Aとビニル系単量体成分Bとを、質量比率A/B=80/20で反応させた比較例1の製造方法では、得られた樹脂粒子の形状が真球状であった。
ビニル系単量体成分Bのみを反応させた比較例2の製造方法では、得られた樹脂粒子の形状が真球状であった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートプレポリマーとポリオールと(メタ)アクリレート単量体を含むビニル系単量体成分とを水に懸濁させた状態で反応させる異形樹脂粒子の製造方法であって、
ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの合計の質量Aとビニル系単量体成分の質量Bとの比率(A/B)を70/30〜5/95にすることを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの各々一部を反応させた後、ビニル系単量体成分を反応させると共に残りのポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールを反応させることを特徴とする請求項1に記載の異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項1】
ポリイソシアネートプレポリマーとポリオールと(メタ)アクリレート単量体を含むビニル系単量体成分とを水に懸濁させた状態で反応させる異形樹脂粒子の製造方法であって、
ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの合計の質量Aとビニル系単量体成分の質量Bとの比率(A/B)を70/30〜5/95にすることを特徴とする異形樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
ポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールの各々一部を反応させた後、ビニル系単量体成分を反応させると共に残りのポリイソシアネートプレポリマーおよびポリオールを反応させることを特徴とする請求項1に記載の異形樹脂粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−6664(P2011−6664A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117394(P2010−117394)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(390028048)根上工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(390028048)根上工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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