説明

異方性導電性ペースト

【課題】接続部分の接着強度を十分に確保することができ、高い接続信頼性を有する異方性導電性ペーストを提供すること。
【解決手段】本発明の異方性導電性ペーストは、240℃以下の融点を有する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、熱硬化性樹脂および硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有し、前記硬化剤は、カルボン酸系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、および、アミン系硬化剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品および配線基板の接続に用いる異方性導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品および配線基板の接続には、異方性導電材(異方性導電性フィルム、異方性導電性ペースト)を用いた接続方式が利用されている。例えば、電子部品と配線基板とを接続する場合には、電極が形成された電子部品と、電極のパターンが形成された配線基板との間に異方性導電材を配置し、電子部品と配線基板とを熱圧着して電気的接続を確保している。
【0003】
異方性導電材としては、例えば、基材となるバインダー樹脂に、金属微粒子や表面に導電膜を形成した樹脂ボールなどの導電性フィラーを分散させた材料が提案されている(例えば、特許文献1)。電子部品と配線基板とを熱圧着させると、接続対象である電子部品および配線基板の電極同士の間には、ある確率で導電性フィラーが存在するため、導電性フィラーが面状に配置された状態となる。このように、接続対象である電子部品および配線基板の電極同士が導電性フィラーを介して接触することにより、これらの電極同士の間での導電性が確保される。一方、電子部品の電極同士の間隙や配線基板の電極同士の間隙では、バインダー樹脂内に導電性フィラーが埋設されたような状態となり、面方向への絶縁性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−165825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載の異方性導電材を用いた場合には、接続部分の接着強度を十分に確保することができなかった。また、上記特許文献に記載の異方性導電材を用いた場合には、接続部分の接続信頼性を確保するために、接続対象である電子部品および配線基板の電極に金メッキ処理を施しておく必要があるなど、接続信頼性の点で問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、接続部分の接着強度を十分に確保することができ、高い接続信頼性を有する異方性導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような異方性導電性ペーストを提供するものである。
すなわち、本発明の異方性導電性ペーストは、240℃以下の融点を有する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、熱硬化性樹脂および硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有し、前記硬化剤は、カルボン酸系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、および、アミン系硬化剤を含有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の異方性導電性ペーストにおいては、前記カルボン酸系硬化剤の含有量が、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
本発明の異方性導電性ペーストにおいては、前記鉛フリーはんだ粉末が、スズ、銅、銀、ビスマス、アンチモン、インジウムおよび亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0009】
なお、本発明において、異方性導電性ペーストとは、所定値以上の熱および所定値以上の圧力をかけた箇所では熱圧着方向(厚み方向)に導電性を持つようになるが、それ以外の箇所では面方向に絶縁性を有する異方性導電材を形成できるペーストのことをいう。
また、本発明の異方性導電性ペーストが、接続部分の接着強度を十分に確保することができ、高い接続信頼性を有する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
【0010】
すなわち、本発明の異方性導電性ペーストは、従来の異方性導電材とは異なり、鉛フリーはんだ粉末を含有している。そして、この異方性導電性ペーストを、鉛フリーはんだ粉末の融点以上の温度で熱圧着する場合には、鉛フリーはんだ粉末同士が溶融するとともにそれぞれが近接していき、その周囲の鉛フリーはんだ同士で接合して大きくなる。一方で、熱圧着により、電子部品および配線基板の電極同士の間隔も短くなるので、上記のようにして大きくなった鉛フリーはんだにより、電極同士をはんだ接合することができる。このように、本発明では、電子部品および配線基板の電極同士がはんだ接合されているために、従来の異方性導電材のように、電極および導電性フィラーが接触し合うことで接続されている場合と比較して、極めて高い接続信頼性を有するものと本発明者らは推察する。
一方で、所定値以上の熱および所定値以上の圧力にて熱圧着がされない箇所(電子部品の電極同士の間隙や配線基板の電極同士の間隙など)については、上記のようにはんだ接合がされることがなく、熱硬化性樹脂組成物内に鉛フリーはんだ粉末が埋設されたような状態となる。そのため、所定値以上の熱および所定値以上の圧力にて熱圧着がされない箇所については、絶縁性が確保される。
【0011】
本発明の異方性導電性ペーストで電子部品および配線基板を接続した場合には、上記のように、電子部品および配線基板の電極同士ははんだ接合され、このはんだ接合の部分は熱硬化性樹脂組成物に覆われていると推察される。このように、本発明では、はんだ接合と熱硬化性樹脂という2種類の方法で電子部品および配線基板を接続するために、接続部分の接着強度が高くなる。なお、本発明では、はんだ接合の部分は熱硬化性樹脂組成物に覆われており、この熱硬化性樹脂組成物が熱により硬化することで、はんだ接合の部分を補強することができる。そして、この熱硬化性樹脂組成物中の硬化剤が、カルボン酸系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、および、アミン系硬化剤という3種の硬化剤を含有するものであるために、はんだ接合の部分を十分に補強できる。このようにして、本発明の異方性導電性ペーストで電子部品および配線基板を接続した場合には、接続部分の接着強度を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接続部分の接着強度を十分に確保することができ、高い接続信頼性を有する異方性導電性ペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の異方性導電性ペーストは、電子部品および配線基板の接続に用いる異方性導電性ペーストである。そして、この異方性導電性ペーストは、以下説明する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、以下説明する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有するものである。
この鉛フリーはんだ粉末の含有量が10質量%未満の場合(熱硬化性樹脂組成物の含有量が90質量%を超える場合)には、得られる異方性導電性ペーストを熱圧着した場合に、電子部品および配線基板の間に十分なはんだ接合を形成できず、電子部品および配線基板の間の導電性が不十分となり、他方、鉛フリーはんだ粉末の含有量が50質量%を超える場合(熱硬化性樹脂組成物の含有量が50質量%未満の場合)には、得られる異方性導電性ペーストにおける絶縁性、特に加湿状態に放置した場合の湿中絶縁性が不十分となり、結果として、はんだブリッジにより、異方性を示さなくなる。また、得られる異方性導電性ペーストにおいて、絶縁性と熱圧着した場合の導電性とのバランスをとるという観点から、この鉛フリーはんだ粉末の含有量は、20質量%以上45質量%以下であることが好ましく、30質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0014】
本発明に用いる鉛フリーはんだ粉末は、240℃以下の融点を有するものである。この鉛フリーはんだ粉末の融点が240℃を超えるものを用いる場合には、異方性導電性ペーストにおける通常の熱圧着温度では鉛フリーはんだ粉末を溶融させることができない。また、異方性導電性ペーストにおける熱圧着温度を低くするという観点からは、鉛フリーはんだ粉末の融点が220℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
ここで、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、100質量ppm以下であることが好ましい。
【0015】
前記鉛フリーはんだ粉末は、スズ(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
また、前記鉛フリーはんだ粉末における具体的なはんだ組成(質量比率)としては、以下のようなものを例示できる。
2元系合金としては、例えば、95.3Ag/4.7BiなどのAg−Bi系、66Ag/34LiなどのAg−Li系、3Ag/97InなどのAg−In系、67Ag/33TeなどのAg−Te系、97.2Ag/2.8TlなどのAg−Tl系、45.6Ag/54.4ZnなどのAg−Zn系、80Au/20SnなどのAu−Sn系、52.7Bi/47.3InなどのBi−In系、35In/65Sn、51In/49Sn、52In/48SnなどのIn−Sn系、8.1Bi/91.9ZnなどのBi−Zn系、43Sn/57Bi、42Sn/58BiなどのSn−Bi系、98Sn/2Ag、96.5Sn/3.5Ag、96Sn/4Ag、95Sn/5AgなどのSn−Ag系、91Sn/9Zn、30Sn/70ZnなどのSn−Zn系、99.3Sn/0.7CuなどのSn−Cu系、95Sn/5SbなどのSn−Sb系が挙げられる。
3元系合金としては、例えば、95.5Sn/3.5Ag/1InなどのSn−Ag−In系、86Sn/9Zn/5In、81Sn/9Zn/10InなどのSn−Zn−In系、95.5Sn/0.5Ag/4Cu、96.5Sn/3.0Ag/0.5CuなどのSn−Ag−Cu系、90.5Sn/7.5Bi/2Ag、41.0Sn/58Bi/1,0AgなどのSn−Bi−Ag系、89.0Sn/8.0Zn/3.0BiなどのSn−Zn−Bi系が挙げられる。
その他の合金としては、Sn/Ag/Cu/Bi系などが挙げられる。
【0016】
また、前記鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径は、1μm以上34μm以下であることが好ましく、3μm以上20μm以下であることがより好ましい。鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径が前記下限未満では、電子部品および配線基板間の導電性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、異方性導電性ペーストにおける絶縁性が低下する傾向にある。
【0017】
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および硬化剤を含有するものである。そして、この熱硬化性樹脂組成物の酸価は、20mgKOH/g以上50mgKOH/gであることが好ましい。酸価が20mgKOH/g未満の場合には、得られる異方性導電性ペーストを熱圧着した場合に、はんだを十分に活性化することができず、電子部品および配線基板の間の導電性が不十分となる傾向にあり、他方、50mgKOH/gを超えると、得られる異方性導電性ペーストにおける絶縁性、特に加湿状態に放置した場合の湿中絶縁性が不十分となる傾向にある。また、得られる異方性導電性ペーストにおいて、絶縁性と熱圧着した場合の導電性とのバランスをとるという観点から、この熱硬化性樹脂組成物の酸価は、30mgKOH/g以上45mgKOH/gであることが好ましい。
【0018】
本発明に用いる熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂を適宜用いることができるが、フラックス作用を有するという観点から、特にエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
なお、本発明において、フラックス作用を有するとは、通常のロジン系フラックスのように、その塗布膜は被はんだ付け体の金属面を覆って大気を遮断し、はんだ付け時にはその金属面の金属酸化物を還元し、この塗布膜が溶融はんだに押し退けられてその溶融はんだと金属面との接触が可能となり、その残渣は回路間を絶縁する機能を有するものである。
【0019】
このようなエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を適宜用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型などのエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらのエポキシ樹脂は、常温で液状のものを含有することが好ましく、常温で固形のものを用いる場合には、常温で液状のものと併用することが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂の型の中でも、金属粒子の分散性およびペースト粘度を調整でき、さらに硬化物の落下衝撃に対する耐性が向上できるという観点や、はんだの濡れ広がり性が良好となるという観点から、液状ビスフェノールA型、液状ビスフェノールF型、液状水添タイプのビスフェノールA型が好ましい。
前記エポキシ樹脂の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、65質量%以上92質量%以下であることが好ましく、70質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量が前記下限未満では、電子部品を固着させるために十分な強度が得られないため、落下衝撃に対する耐性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物中の硬化剤の含有量が減少し、エポキシ樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にある。
【0020】
本発明に用いる硬化剤は、カルボン酸系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、および、アミン系硬化剤を含有する。本発明においては、これら3種の硬化剤を併用することが必要であり、これら3種の硬化剤のうちのいずれかを含有しない場合には、本発明の効果を達成できない。また、このような硬化剤としては、これら3種の硬化剤以外にも、他の硬化剤を併用してもよい。
【0021】
本発明に用いるカルボン酸系硬化剤としては、公知の有機酸を適宜用いることができる。このような有機酸の中でも、エポキシ樹脂との溶解性に優れるという観点、並びに保管中において結晶の析出が起こりにくいという観点から、アルキレン基を有する二塩基酸を用いることが好ましい。このようなアルキレン基を有する二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、2,5−ジエチルアジピン酸、グルタル酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2,2−ジエチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2−エチル−3−プロピルグルタル酸、セバシン酸、コハク酸、マロン酸、ジグリコール酸等が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸が好ましい。
前記カルボン酸系硬化剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。カルボン酸系硬化剤の含有量が前記下限未満では、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延することで硬化不良となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる異方性導電性ペーストにおける絶縁性が低下する傾向にある。
【0022】
本発明に用いるイミダゾール系硬化剤としては、イミダゾール骨格を有し、カルボキシル基およびアミノ基を有さない硬化剤を適宜用いることができる。このようなイミダゾール系硬化促進剤としては、常温で固体のものが好ましい。また、熱硬化性樹脂の硬化反応が急激に進むことが無く、応力の発生を防止できるという観点から、水酸基を有するものが特に好ましい。このようなイミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2P4MHZ、2MZA、2PZ、C11Z、C17Z、2E4MZ、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNZ(四国化成工業社製、商品名)が挙げられる。
前記イミダゾール系硬化剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、6質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。イミダゾール系硬化剤の含有量が前記下限未満では、電子部品と配線基板との接続部分の接着強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、電子部品を固着させるために十分な強度が得られないため、落下衝撃に対する耐性が低下する傾向にある。
【0023】
本発明に用いるアミン系硬化剤としては、ポリアミン系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤などの他に、メラミン、ジシアンジアミド、およびこれらの誘導体などのアミノ基を有する硬化剤を用いることができる。このようなアミン系硬化促進剤としては、常温で固体のものが好ましい。
前記ポリアミン系硬化剤としては、例えば、フジキュアFXR−1020、FXR−1030、FXR−1050、FXR−1080(富士化成工業社製、商品名)が挙げられる。
前記アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、アミキュアPN−23、PN−F、MY−24 、VDH、UDH、PN−31、PN−40(味の素ファインテクノ製、商品名)、EH−3615S、EH−3293S、EH−3366S、EH−3842、EH−3670S、EH−3636AS、EH−4346S(旭電化工業社製、商品名)が挙げられる。
前記アミン系硬化剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、6質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。アミン系硬化剤の含有量が前記下限未満では、電子部品と配線基板との接続部分の接着強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、電子部品を固着させるために十分な強度が得られないため、落下衝撃に対する耐性が低下する傾向にある。
【0024】
また、本発明においては、他の硬化剤として、以下のようなものを用いることができる。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、ノバキュアHX−3721(旭化成イーマテリアルズ社製、商品名)が挙げられる。
潜在性硬化剤としては、例えば、ノバキュアHX−3722、HX−3748、HX−3088、HX−3613、HX−3921HP、HX−3941HP(旭化成イーマテリアルズ社製、商品名)が挙げられる。
【0025】
前記硬化剤の合計の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、7質量%以上35質量%以下であることが好ましく、14質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。硬化剤の合計の含有量が前記下限未満では、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応性が速くなり、ペースト使用時間が短くなる傾向にある。
【0026】
また、本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂および前記硬化剤の他に、チクソ剤を用いることが好ましい。
本発明に用いるチクソ剤としては、公知のチクソ剤を適宜用いることができる。このようなチクソ剤としては、例えば、ソルビトール誘導体、脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油が挙げられる。これらの中でも、ソルビトール誘導体、脂肪酸アマイドが好ましい。
前記チクソ剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。チクソ剤の含有量が前記下限未満では、チクソ性が得られず、配線基板の電極上でダレが生じやすくなり、配線基板の電極上に電子部品を搭載した際の付着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、チクソ性が高すぎてシリンジニードルの詰まりにより塗布不良となりやすい傾向にある。
【0027】
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、前記エポキシ樹脂、前記硬化剤および前記チクソ剤以外に、界面活性剤、カップリング剤、消泡剤、粉末表面処理剤、反応抑制剤、沈降防止剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量としては、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。添加剤の含有量が前記下限未満では、それぞれの添加剤の効果を奏しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱硬化性樹脂組成物による接合強度が低下する傾向にある。
【0028】
次に、本発明の異方性導電性ペーストを用いた電子部品の接続方法について説明する。
本発明の異方性導電性ペーストを用いて、電子部品および配線基板の接続を図ることができる。ここで、電子部品としては、チップ、パッケージ部品などの他に、配線基板を用いてもよい。配線基板としては、フレキシブル性を有するフレキ基板、フレキシブル性を有しないリジット基板のいずれも用いることができる。さらに、電子部品としてフレキ基板を用いる場合には、2つの配線基板(リジット基板)とそれぞれ接続を図ることで、リジット基板同士をフレキ基板を介して電気的に接続することもできる。また、フレキ基板同士をフレキ基板を介して電気的に接続しても構わない。
このような電子部品の接続方法は、前記配線基板上に前記異方性導電性ペーストを塗布する塗布工程と、前記異方性導電性ペースト上に前記電子部品を配置し、前記鉛フリーはんだ粉末の融点よりも高い温度(好ましくは、20℃以上高い温度)で、前記電子部品を前記配線基板に熱圧着する熱圧着工程と、を備えればよい。
【0029】
塗布工程においては、前記配線基板上に前記異方性導電性ペーストを塗布する。
ここで用いる塗布装置としては、例えば、ディスペンサー、スクリーン印刷機、ジェットディスペンスメタルマスク印刷機が挙げられる。
また、塗布膜の厚みは、特に限定されないが、50μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上300μm以下であることがより好ましい。厚みが前記下限未満では、配線基板の電極上に電子部品を搭載した際の付着力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、接続部分以外にもペーストがはみ出しやすくなる傾向にある。
【0030】
熱圧着工程においては、前記異方性導電性ペースト上に前記電子部品を配置し、前記鉛フリーはんだ粉末の融点よりも高い温度(好ましくは、20℃以上高い温度)で、前記電子部品を前記配線基板に熱圧着する。
熱圧着時の温度が、前記鉛フリーはんだ粉末の融点よりも高いという条件を満たさない場合には、鉛フリーはんだを十分に溶融させることができず、電子部品および配線基板の間に十分なはんだ接合を形成できず、電子部品および配線基板の間の導電性が不十分となる傾向にある。
熱圧着時の圧力は、特に限定されないが、0.1MPa以上2MPa以下とすることが好ましく、0.2MPa以上1.0MPa以下とすることがより好ましい。圧力が前記上限未満では、電子部品および配線基板の間に十分なはんだ接合を形成できず、電子部品および配線基板の間の導電性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると配線基板にストレスがかかり、デッドスペースを広くとらなければならなくなる傾向にある。
なお、本発明においては、上記のように、熱圧着時の圧力を、従来の方法による場合と比較して、低い圧力範囲に設定することができる。そのため、熱圧着工程に用いる装置の低コスト化を達成することもできる。
熱圧着時の時間は、特に限定されないが、通常、5秒以上60秒以下であり、7秒以上20秒以下であることが好ましい。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
熱硬化性樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「EPICLON 860」、DIC社製
チクソ剤:商品名「ゲルオールD」、新日本理化社製
カルボン酸系硬化剤:アジピン酸、関東電化工業社製
イミダゾール系硬化剤:商品名「キュアゾール2MZA−PW」、四国化成工業社製
アミン系硬化剤:商品名「PN−F」、味の素ファインテクノ社製
酸無水物系硬化剤:商品名「ノバキュア HX−3721」、旭化成イーマテリアルズ社製
界面活性剤:商品名「BYK361N」、ビックケミージャパン社製
消泡剤:商品名「KS−66」、信越シリコーン社製
鉛フリーはんだ粉末A:平均粒子径は5μm、はんだの融点は139℃、はんだの組成は42Sn/58Bi
鉛フリーはんだ粉末B:平均粒子径は5μm、はんだの融点は217℃、はんだの組成は96.5Sn/3Ag/0.5Cu
[実施例1]
熱硬化性樹脂76質量%、チクソ剤2質量%、カルボン酸系硬化剤3質量%、イミダゾール系硬化剤12質量%、アミン系硬化剤6質量%、界面活性剤0.5質量%および消泡剤0.5質量%を容器に投入し、らいかい機を用いて混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
その後、得られた熱硬化性樹脂組成物62.5質量%、および鉛フリーはんだ粉末A37.5質量%を容器に投入し、混練機にて2時間混合することで異方性導電性ペーストを調製した。
次に、配線基板(電極:銅電極に金メッキ処理(Cu/Ni/Au))上に、得られた異方性導電性ペーストを塗布した(厚み:0.2mm)。そして、塗布後の異方性導電性ペースト上に、電子部品(電極:銅電極に金メッキ処理(Cu/Ni/Au))を配置し、熱圧着装置(アドバンセル社製)を用いて、以下の(i)および(ii)の条件で、電子部品を配線基板に熱圧着した。
(i)温度240℃、圧力1MPa、圧着時間5秒
(ii)温度150℃、圧力1MPa、圧着時間15秒
【0032】
[実施例2〜5]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物および異方性導電性ペーストを得た。
実施例1で用いた異方性導電性ペーストに代えて上記のようにして得られた異方性導電性ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして、電子部品を配線基板に熱圧着した。
【0033】
[比較例1〜4]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物および異方性導電性ペーストを得た。
実施例1で用いた異方性導電性ペーストに代えて上記のようにして得られた異方性導電性ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして、電子部品を配線基板に熱圧着した。
【0034】
<電子部品の接続状態の評価>
電子部品の接続状態の評価(初期抵抗値、ピール強度、絶縁抵抗値)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1および表2に示す。
(1)初期抵抗値
回路パターンとして0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有する配線基板を準備した。そして、この配線基板のランド上に、それぞれ前記の実施例および比較例に記載の方法で、0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有する電子部品を熱圧着した。そして、デジタルマルチメーター(Agilent社製、商品名「34401A」)を用いて、接続したランドの端子同士の間の抵抗値を測定した。なお、抵抗値が高すぎて(100MΩ以上)、導通できなかった場合には、「導通不可」と判定した。
(2)ピール強度(接着強度)
前記(1)において初期抵抗値を測定した基板を用いて評価する。配線基板と電子部品をそれぞれ治具に固定して、電子部品を配線基板の基板面に対して90°の角度をなす方向に引張り速度50mm/minで引張り、そのときのピール強度を測定した。なお、配線基板と電子部品との接続部分で剥離せずに、電子部品が破壊された場合には、「破壊」と判定した。「破壊」という判定は、配線基板と電子部品との接続部分の接着強度が十分であることを示す。
(3)絶縁抵抗値
回路パターンとして0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有する配線基板を準備した。そして、この配線基板のランド上に、それぞれ前記の実施例および比較例に記載の方法で、0.2mmピッチランド(ライン/スペース=100μm/100μm)を有する電子部品を熱圧着して試験片を得た。この試験片を85℃、85%RH(相対湿度)中、15V電圧を印加して、168時間後の絶縁抵抗値を測定した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1および表2に示す結果からも明らかなように、本発明の異方性導電性ペーストを用いて、配線基板と電子部品とを接続する場合(実施例1〜5)には、接続部分の高い接着強度および高い接続信頼性を確保することができることが確認された。
これに対し、カルボン酸系硬化剤を含有しない異方性導電性ペーストを用いた場合(比較例1)には、配線基板と電子部品との導通を図ることができず、また、熱圧着温度が低い場合に接着強度が確保できなかった。
また、イミダゾール系硬化剤を含有しない異方性導電性ペーストを用いた場合(比較例2、4)、および、アミン系硬化剤を含有しない異方性導電性ペーストを用いた場合(比較例3)には、特に、熱圧着温度が低い場合に接着強度が確保できなかった。
さらに、本発明の異方性導電性ペーストの中でも、カルボン酸系硬化剤の含有量が、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下である場合(実施例1〜4)には、絶縁抵抗値がより高くでき、より高度の絶縁性が確保できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の異方性導電性ペーストは、電子部品および配線基板を接続するための技術として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
240℃以下の融点を有する鉛フリーはんだ粉末10質量%以上50質量%以下と、熱硬化性樹脂および硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物50質量%以上90質量%以下とを含有し、
前記硬化剤は、カルボン酸系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、および、アミン系硬化剤を含有する
ことを特徴とする異方性導電性ペースト。
【請求項2】
請求項1に記載の異方性導電性ペーストにおいて、
前記カルボン酸系硬化剤の含有量が、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下である
ことを特徴とする異方性導電性ペースト。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の異方性導電性ペーストにおいて、
前記鉛フリーはんだ粉末が、スズ、銅、銀、ビスマス、アンチモン、インジウムおよび亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む
ことを特徴とする異方性導電性ペースト。

【公開番号】特開2013−45650(P2013−45650A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182999(P2011−182999)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】