説明

異方性導電接着剤

【課題】製造コストを抑えつつ、高温高湿環境下においても長期にわたり安定した導通性を発現できる異方性導電接着剤の実現。
【解決手段】絶縁性接着剤組成物中に、導電粒子が分散した異方性導電接着剤であって、前記導電粒子は、平均粒子径が3〜15μm、見掛け密度が0.3〜3.0g/cmであるニッケル粒子と、該ニッケル粒子より平均粒子径が小さい金粒子とからなり、かつ、当該異方性導電接着剤100質量%中、1〜20質量%含まれることを特徴とする異方性導電接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子などの電子部品を電気的に接続する接着剤として、導電接着剤が広く用いられている。導電接着剤は、樹脂を含む絶縁性の接着剤組成物中に導電粒子を分散させた材料であり、主に電子部品の相対する電極間の電気的接続、および固定(接着)等の目的に使用される。
導電性接着剤は、従来のはんだと同様の接合性質を有する等方性導電接着剤と、接続方向が一方向のみに導通する異方性導電接着剤とに大別される。特に、異方性導電接着剤は、相対する電極間を電気的に接続したり、接着したりすると共に、隣接する電極間を絶縁することも可能であり、近年の電子部品の高集積化や高密度化に対応できる接着剤として好適に使用されている。
【0003】
異方性導電接着剤を構成する導電粒子としては、通常、ニッケル粒子、金粒子、半田粒子等の金属粒子、金などの金属でメッキされた樹脂粒子(例えば金メッキ樹脂粒子)、金メッキ樹脂粒子の表面を絶縁被覆した粒子などが用いられる(例えば特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−64330号公報
【特許文献2】特開2006−274108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ニッケル粒子を用いた異方性導電接着剤は、高温高湿環境下における導通信頼性に劣り、安定した導通性が得られにくかった。
また、金粒子や半田粒子は、導通性に優れるものの柔らかい金属であるため圧力によって容易に変形しやすく、かつ一旦変形すると復元しにくい金属粒子である。そのため、金粒子や半田粒子を用いた異方性導電接着剤は、熱圧着で圧力を解放したときに膜厚がわずかに戻る現象が起きると、初期抵抗値が高くなりやすい。そのため、たとえ初期抵抗を低く設定できたとしても、長期の使用により接着部分が膨張収縮を繰り返して変形した場合、その変形に追随できず導通信頼性が低下しやすかった。
【0006】
一方、金メッキ樹脂粒子や金メッキ樹脂粒子の表面を絶縁被覆した粒子は、弾力性があり復元力を有するものの、金属粒子と同程度の導通抵抗を得るためには接着剤組成物への添加量を増やす必要がありコストが増大しやすかった。また、圧力を加えた場合、金メッキ樹脂粒子や金メッキ樹脂粒子の表面を絶縁被覆した粒子は割れることがあった。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、製造コストを抑えつつ、高温高湿環境下においても長期にわたり安定した導通性を発現できる異方性導電接着剤の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の異方性導電接着剤は、絶縁性接着剤組成物中に、導電粒子が分散した異方性導電接着剤であって、前記導電粒子は、平均粒子径が3〜15μm、見掛け密度が0.3〜3.0g/cmであるニッケル粒子と、該ニッケル粒子より平均粒子径が小さい金粒子とからなり、かつ、当該異方性導電接着剤100質量%中、1〜20質量%含まれることを特徴とする。
ここで、前記金粒子は、前記導電粒子100質量%中、5〜30質量%含まれることが好ましい。
また、前記ニッケル粒子は、金メッキが施されている金メッキニッケル粒子であることが好ましい。
さらに、前記金メッキニッケル粒子の金の被覆量が、当該金メッキニッケル粒子100質量%中、30質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造コストを抑えつつ、高温高湿環境下においても長期にわたり安定した導通性を発現できる異方性導電接着剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の異方性導電接着剤は、絶縁性接着剤組成物中に、導電粒子が分散してなる。
なお、本発明において「導電」とは、異方性導電接着剤を介して表面抵抗が5Ω/□のITOコートガラス表面と銅回路とを接合部が幅150μm×長さ2mmとなるように接合させたときの接続抵抗が10Ω以下となるものをいう。
【0011】
<導電粒子>
本発明に用いる導電粒子は、特定のニッケル粒子と金粒子とからなり、異方性導電接着剤100質量%中、1〜20質量%含まれている。導電粒子の含有量が1質量%以上であれば十分な導電性が得られる。一方、導電粒子の含有量が20質量%以下であれば、本発明の異方性導電接着剤を用いて例えば電子素子と電極とを接合したときに、隣接する電極同士が導通して短絡するのを抑制できる。導電粒子の含有量は、1〜10質量%が好ましい。なお、導電粒子の含有量は、硬化した異方性導電接着剤(すなわち固形分換算した異方性導電接着剤)100質量%中の値である。
【0012】
(ニッケル粒子)
ニッケル粒子としては、平均粒子径が3〜15μm、見掛け密度が0.3〜3.0g/cmであるニッケル粒子を用いる。
平均粒子径が3μm以上であれば、異方性導電接着剤が硬化したときの膜厚を十分に確保できるので、安定した剥離強度の発現が可能となる。一方、ニッケル粒子に含まれる粗大粒子が十分に潰れないと、導通性が不十分になることがあるが、平均粒子径が15μm以下であれば、ニッケル粒子を通常の圧着条件で潰した場合でも粒子径が揃いやすく、安定した導電性の発現が可能となる。
ここで、ニッケル粒子および後述する金粒子の平均粒子径とは、レーザー光散乱法により実測される累積粒度分布の50%粒子径のことである。
【0013】
ニッケル粒子は、表面が凹凸状で粒子内部に適度な空隙を有するものが好ましい。通常、ニッケル粒子は硬く、球状であるため電子素子や電極との接触点(接触面積)が小さく、接触抵抗が高くなる傾向にある。しかし、内部に多くの空隙を有するニッケル粒子は、通常のニッケル粒子に比べて外部からの圧力によって押し潰されて変形しやすい。従って、内部に多くの空隙を有するニッケル粒子を導電粒子として含有する異方性導電接着剤を用い、圧力を加えて電子素子と電極とを接合したときに、ニッケル粒子が押し潰されて変形することで電子素子や電極との接触面積が増える。その結果、異方性導電接着剤の導通性が向上する。
【0014】
表面が凹凸状で粒子内部に適度な空隙を有するニッケル粒子として、本発明においては見掛け密度が0.3〜3.0g/cmであるニッケル粒子を用いる。
見掛け密度が0.3g/cm以上であれば、適度な空隙を有すると共に、適度な硬さをも備えるので、外部から圧力が加わっても割れにくい。一方、見掛け密度が3.0g/cm以下であれば十分な空隙を有するので、圧力が加わったときに変形しやすくなり、異方性導電接着剤の導通性を向上できる。ニッケル粒子の見掛け密度は1.5〜2.7g/cmが好ましい。
ここで、ニッケル粒子の見掛け密度とは、ニッケル粒子の質量を、空隙を含む体積で割った値のことであり、粒子内部に存在する空隙の割合を示す指標となる。なお、粒子内部に空隙を有するほど粒子表面は凹凸状になる傾向にある。
【0015】
このようなニッケル粒子としては、例えば日興リカ社製の「Type123」などが好適である。
【0016】
ニッケル粒子としては、金メッキが施されている金メッキニッケル粒子を用いることが好ましい。
ニッケル粒子は、腐食しにくい金属であるものの、高温高湿環境下において抵抗変化率が大きくなる傾向にあるため、ニッケル粒子のみを用いた異方性導電接着剤は導通信頼性に劣り、安定した導通性が得られにくかった。
そこで、本発明においては導電粒子としてニッケル粒子と後述する金粒子を併用することで、高温高湿環境下での異方性導電接着剤の導通性を向上させるが、ニッケル粒子として導通性に優れた金でニッケル粒子をメッキした金メッキニッケル粒子を用いれば、高温高湿環境下での異方性導電接着剤の導通性をより向上させることができる。
【0017】
金メッキニッケル粒子は、金の被覆量が金メッキニッケル粒子100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。金の被覆量が30質量%以下であれば、製造コストを抑えつつ、異方性導電接着剤の導通性を向上できる。
【0018】
ニッケル粒子に金メッキを施す方法としては特に制限されないが、電気メッキ法、無電解メッキ法、物理的蒸着法(真空蒸着法、イオンプレーディング法、イオンスパッタリング法等)などが挙げられる。
また、金メッキニッケル粒子としては、例えば福田金属箔粉工業社製の「GNP−10」などが好適である。
【0019】
(金粒子)
金粒子は、上述したように柔らかい金属であるため圧力によって容易に変形しやすく、一旦変形すると復元しにくい。そのため、長期の使用により電子部品が変形した場合、その変形に追随できず異方性導電接着剤の導通信頼性が低下しやすかった。
しかし、金粒子を見掛け密度が0.3〜3.0g/cmであるニッケル粒子と併用することで、金粒子は表面が凹凸状のニッケル粒子の凹部に侵入する。従って、圧力によって金粒子が変形しても凹部内にて金粒子とニッケル粒子とが接触し続けるので、金粒子の復元力の低さをニッケル粒子で補うことができ、異方性導電接着剤は長期にわたり安定した導通性を発現できる。
【0020】
また、ニッケル粒子の凹部に金粒子が侵入することで、ニッケル粒子の電子素子や電極に対する接触面積を十分に確保でき、異方性導電接着剤の導通性を良好に維持できる。特に、高温高湿環境下において異方性導電接着剤を使用する場合であっても、導通性に優れる金粒子と併用することで、異方性導電接着剤の導通性を向上させることができる。
【0021】
金粒子としては、ニッケル粒子より平均粒子径が小さい金粒子を用いる。金粒子の平均粒子径がニッケル粒子の平均粒子径よりも大きくなると、金粒子に圧力が加わりやすくなり、容易に変形し、かつ復元しにくくなる。その結果、ニッケル粒子との併用では金粒子の復元力の低さを補うことが困難となり、異方性導電接着剤の導通安定性が低下する。
【0022】
金粒子の平均粒子径は、ニッケル粒子の平均粒子径の1/10〜1/2が好ましい。金粒子の平均粒子径がニッケル粒子の平均粒子径の1/10以上であれば、ニッケル粒子の凹部に侵入した金粒子が基板とニッケル粒子の双方に接触して強固な導電パスが形成され、安定した導電性が得られやすくなる。
なお、金粒子の平均粒子径が小さくなると、同じ量の金粒子を用いた場合に平均粒子径の大きい金粒子に比べて相対的に金粒子の個数が増える。その結果、ニッケル粒子と電子素子等の基板との間に金粒子が存在する確率が高くなり、圧力を加えた際に金粒子を介してニッケル粒子と基板の間に強固な導通パスが形成されやすくなる。従って、ニッケル粒子単体に比べて安定した導通性が得られやすくなる。金粒子の平均粒子径がニッケル粒子の平均粒子径の1/2以下であれば、金粒子の個数を十分に確保できるので、ニッケル粒子と基板との間に金粒子が存在する確率をより高めることができる。従って、金粒子を介してニッケル粒子と基板の間に強固な導通パスが形成され、安定した導通性が得られやすくなる。
【0023】
金粒子としては、例えば福田金属箔粉工業社製の「PMP−Au−2」などが好適である。
【0024】
金粒子の含有量は、導電粒子100質量%中、5〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。金粒子の含有量が5質量%以上であれば、ニッケル粒子の電子素子や電極に対する接触面積を十分に確保できる。一方、金粒子の含有量が30質量%を超えても金粒子を併用する効果は頭打ちとなるばかりでなく、製造コストが増大する。従って、金粒子の含有量の上限値は30質量%以下が好ましい。
【0025】
<絶縁性接着剤組成物>
絶縁性接着剤組成物としては、異方性導電接着剤に用いられる公知の絶縁性接着剤組成物を用いることができる。絶縁性接着剤組成物に含まれる成分としては、バインダー、硬化剤、反応促進剤などが挙げられる。また、必要に応じて添加剤、溶剤などが含まれていてもよい。
バインダーとしては、絶縁性を有するものであれば特に制限されないが、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
ここで、絶縁性とは、絶縁性接着剤組成物を介して電極同士を接合させたときの絶縁抵抗が10Ω以上となるものをいう。
【0026】
硬化剤としては、上述したバインダーを硬化できるものであれば特に制限されないが、例えばアミン化合物、アミド化合物、イミダゾール化合物、イソシアネート化合物などが挙げられる。
添加剤としては、例えばカップリング剤、チキソトロピック付与剤、キレート剤、防錆剤、分散剤、消泡剤などが挙げられる。
溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート、イソホロン、γ−ブチルラクトン、灯油類、合成イソパラフィン系炭化水素などが挙げられる。
【0027】
絶縁性接着剤組成物は、上述したバインダーおよび硬化剤と、必要に応じて添加剤や溶剤をプラネタリーミキサーやロールミルなどで均一に混合することにより得られる。
また、本発明の異方性導電接着剤は、絶縁性接着剤組成物に導電粒子を分散させることにより得られる。さらに、必要に応じてメチルセロソルブ等の粘度調整剤により、所望の粘度になるように調整してもよい。異方性導電接着剤の粘度は用途に応じて適宜設定されるが、23℃における粘度が100〜500dPa・sになるように調整するのが好ましい。なお、異方性導電接着剤の粘度は回転式粘度計により測定される値である。
【0028】
本発明の異方性導電接着剤は、種々の用途に使用できるが、半導体素子などの電子部品の電気的接続用として好適である。具体的には、液晶ディスプレイ(LCD)とテープキャリアパッケージ(TCP)との接続、LCDとフレキシブルプリント配線板(COF)との接続、TCPとプリント回路基板(PCB)との接続など、微細な回路同士を電気的に接続するのに適している。
【0029】
以上説明した本発明の異方性導電接着剤は、特定のニッケル粒子と金粒子とからなる導電粒子が絶縁性接着剤組成物中に分散してなるので、高温高湿環境下においても長期にわたり安定した導通性を発現できる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0031】
[実施例1]
<絶縁性接着剤組成物の調製>
還流冷却器および窒素ガス封入入口を備えた2Lのフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭チバ社製、「アラルダイトAER2502」)620gに、潜在性硬化剤として芳香族ポリアミン(4,4−ジアミノジフェニルスルフォン、東洋インキ製造社製)220gの混合物と、エチレングリコールメチルエーテル60g、およびジエチレングリコールモノプチルエーテル140gの混合溶媒とを仕込み、徐々に温度を上昇させながら60rpmの回転速度で撹拌を行い、約100℃で透明の混合物を得た。さらに混合物について150℃×15分の処理を行って、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤とを予備縮合させた反応生成物を得た。該反応生成物の粘度は250dPa・s(23℃)であり、軟化点は80℃であった。
ついで、得られた反応生成物70gに対し、反応促進剤としてイミダゾール誘導体(四国化成工業社製、「キュアゾールC17Z」)を8.0g添加し、セラミック製の3本ロールミルにて2回練肉した後、シランカップリング結合剤(日本ユニカー社製、「A−187」)を2.8g添加し、粘度200dPa・sの絶縁性接着剤組成物(固形分83質量%)を得た。
なお、反応生成物および絶縁性接着剤組成物の粘度は、回転式粘度計(リオン社製、「VISCOTESTER VT−04」)により測定した。
【0032】
<異方性導電接着剤の製造>
先に得られた絶縁性接着剤組成物118.7g(固形分として99g)に、ニッケル粒子A(日興リカ社製、「Type123」、平均粒子径:4.0μm、見掛け密度:2.11g/cm)0.95gと、金粒子(福田金属箔粉工業社製、「PMP−Au−2」、平均粒子径:1.26μm)0.05gを添加し、セラミック製の3本ロールミルにて1回の分散を行った後、60rpmの回転速度で30分間撹拌混合した。ついで、メチルセロソルブで粘度が130〜200dPa・s(23℃)になるように調整し、異方性導電接着剤を得た。
なお、異方性導電接着剤の粘度は、回転式粘度計(リオン社製、「VISCOTESTER VT−04」)により測定した。
【0033】
<評価>
(評価用試験片の作製)
厚さ50μmのポリイミドフィルムに、300μmピッチで18μm錫メッキ銅配線を備えたフレキシブルプリント基板(FPC)上に、異方性導電接着剤を乾燥膜厚が15μm程度になるように塗布し、70℃×40分の条件で、恒温乾燥炉内で乾燥させた。ついで、表面抵抗5Ω/□のITOコートガラスに対し、1×10mmの圧着ツールを使用し、最高到達温度170℃、圧着時間30秒、圧力3MPaで、異方性導電接着剤を介してFPCとコートガラスとを熱圧着し、評価用試験片とした。なお、圧着装置として、熱圧着機(日本アビオニクス社製、「パルスヒートNA−62D」)を使用した。
【0034】
(抵抗値の測定)
評価用試験片の隣接する錫メッキ銅配線間の抵抗値を、デジタルマルチメーター(アドバンスト社製、「R6581D」)を用いて測定した。これを初期抵抗値(X)とする。
ついで、評価用試験片を高温高湿環境下(温度65℃、湿度95%RHに保持した高湿恒温槽内)に1000時間放置して曝露処理を行った。曝露処理後の評価用試験片の抵抗値を初期抵抗値(X)と同様にして測定した。これを曝露処理後の抵抗値(Y)とする。
初期抵抗値(X)および曝露処理後の抵抗値(Y)の結果より、抵抗値の増加率(Y/X)を求め、以下に示す評価基準にて耐高温高湿性を評価した。結果を表1に示す。なお、○および△を合格とする。
○:抵抗値の増加率が2.0以下。
△:抵抗値の増加率が2.0超、2.5以下。
×:抵抗値の増加率が2.5超。
【0035】
[実施例2〜4、比較例1〜6]
ニッケル粒子の種類と添加量、および金粒子の添加量を表1、2に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして異方性導電接着剤を製造し、評価を行った。結果を表1、2に示す。
なお、ニッケル粒子としては、以下のものを使用した。
・金メッキニッケル粒子:福田金属箔粉工業社製、「GNP−10」、平均粒子径:11.9μm、見掛け密度:2.70g/cm、金の被覆量:10質量%。
・ニッケル粒子B:日興リカ社製、「Type4SP−20MICRON」、平均粒子径:8.2μm、見掛け密度:3.58g/cm
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表1から明らかなように、特定のニッケル粒子と金粒子とからなる導電粒子を用いた各実施例の異方性導電接着剤は、耐高温高湿性に優れていた。
一方、表2から明らかなように、導電粒子として金粒子を用いなかった比較例1、2の異方性導電接着剤は、耐高温高湿性が各実施例の異方性導電接着剤に比べて劣っており、高温高湿環境下における導通信頼性に劣り、安定した導通性が得られにくかった。
導電粒子の含有量が25質量%と多かった比較例3の異方性導電接着剤は、隣接電極間で短絡を生じたため曝露処理を行わず、曝露処理後の抵抗値を測定しなかった。
見掛け密度が3.58g/cmと大きいニッケル粒子を用いた比較例4、5の異方性導電接着剤は、ニッケル粒子が十分な空隙を有していなかったため、圧力が加わったときに押し潰されにくかった。そのため、基板との接触面積が増えず、異方性導電接着剤の導通性が十分なものではなかった。そのため、初期の段階において抵抗値(初期抵抗値)が各実施例や他の比較例に比べて高かった。また、抵抗値の増加率も各実施例や他の比較例に比べて著しく高く、耐高温高湿性に劣っており、安定した導通性が得られにくかった。
導電粒子としてニッケル粒子を用いなかった比較例6の異方性導電接着剤は、圧力によって金粒子が変形しやすく、かつ復元しないため初期抵抗値が高く、また、曝露処理後の抵抗値の増加が大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性接着剤組成物中に、導電粒子が分散した異方性導電接着剤であって、
前記導電粒子は、平均粒子径が3〜15μm、見掛け密度が0.3〜3.0g/cmであるニッケル粒子と、該ニッケル粒子より平均粒子径が小さい金粒子とからなり、かつ、当該異方性導電接着剤100質量%中、1〜20質量%含まれることを特徴とする異方性導電接着剤。
【請求項2】
前記金粒子は、前記導電粒子100質量%中、5〜30質量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の異方性導電接着剤。
【請求項3】
前記ニッケル粒子は、金メッキが施されている金メッキニッケル粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性導電接着剤。
【請求項4】
前記金メッキニッケル粒子の金の被覆量が、当該金メッキニッケル粒子100質量%中、30質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の異方性導電接着剤。

【公開番号】特開2010−174096(P2010−174096A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16722(P2009−16722)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】