説明

異方的熱電材料とこれを用いた放射検出器および発電デバイス

【課題】高い放射検出感度や発電時の高い起電圧を実現するために、ゼーベック係数の大きな異方性を有し、かつ異方性を有する面に沿って大きな結晶が得られる異方的熱電材料を提供すること。
【解決手段】化学式Sr2-xLaxNb2O7で表され、c軸方向に4層のNbO6八面体からなるブロック層が周期的に積層してなる層状ペロブスカイト型の結晶構造を有し、a軸方向とa軸に対して垂直方向のゼーベック係数との差の絶対値が100μV/K以上であることを特徴とする異方的熱電材料によって高い放射検出感度や発電時の高い起電圧が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱エネルギーを電気エネルギーに変換する材料と、放射検出および発電を行う熱電変換技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電材料の両端に温度差が生じると、その温度差に比例して起電圧が発生する。この効果は熱エネルギーを電気エネルギーに変換するゼーベック効果として知られ、発生する起電圧Vは、温度差ΔTと材料固有のゼーベック係数Sによって、V=S(-ΔT)で表される。熱電材料の性能はゼーベック係数の他に電気抵抗率ρと熱伝導率κによって評価される。これらを総合して熱電材料の良否が決定され、電力を取り出すことが可能となる。その際の変換効率はZTという指標で表される。
【0003】
【数1】

【0004】
上記の通り、一般的には等方的な物性を示す熱電材料において、ゼーベック効果によって発生する起電圧は、その材料に印加された温度差と同じ方向にのみ現れる。その一方で、電気輸送特性に異方性を示す熱電材料においては、図1のように、結晶軸abcが空間軸xyzに対して傾斜した系を定義すると、与えられた温度差とは直交する方向に、その温度差が寄与する起電圧の発生が観測される。すなわち、図1のような系では、次の式(2)に示すように、z軸方向に温度差ΔTzを与えると、x軸方向に起電圧Vxが発生する。
【0005】
【数2】

【0006】
ただし、lは試料の幅、dは試料の厚さ、αは試料表面に対するab面の傾斜角、ΔSはc軸方向のSとab面内方向のSとの差(異方性)を表す。このように、異方性のある熱電材料の傾斜配置において、熱流と異なる方向に起電圧が発生する効果を異方熱電効果、あるいは非対角熱電効果と呼ぶ。異方熱電効果によって発生する起電圧は、式(2)より、ゼーベック係数の異方性ΔS、試料のアスペクト比l/d、および積層傾斜角の2倍の正弦値sin2αに比例する。
【0007】
この異方熱電効果を利用して、YBa2Cu3O7-δ(YBCO)の傾斜積層薄膜からなる放射検出器[特許文献1]およびCaxCoO2の傾斜積層薄膜からなる放射検出器[非特許文献1]がこれまでに開示されている。
【0008】
例えばCaxCoO2は伝導性のCoO2層と絶縁性のCa層がそれぞれc軸方向に沿って交互に積層する異方的な結晶構造を有する。それゆえ、適当な基板表面上に、c軸を傾斜積層させたCaxCoO2薄膜では、CoO2面が図1における層状面に対応し、図1と同様の系が成り立つ。傾斜積層させたCaxCoO2薄膜の表面に電磁波が入射すると、CaxCoO2薄膜の表面の法線方向に温度差が発生し、その結果、上述した異方熱電効果によってCaxCoO2薄膜の表面と平行方向に起電圧が発生する。このように、電磁波の入射に伴って薄膜表面と平行方向に発生する起電圧を読み取ることで、CaxCoO2傾斜積層薄膜では、約600mV/Kの感度で電磁波の検出が可能となる。
【0009】
YBCOにおいてΔSは高々10μV/K、CaxCoO2においてΔSは35μV/K程度である[非特許文献1]。より高い検出感度を実現するには、これ以上のΔSが必要となる。
【0010】
上述したYBCOやCaxCoO2などの層状物質では、層に対して平行方向(層平行方向)と層に対して垂直方向(層垂直方向)の2方向間に熱電特性の大きな異方性が存在し、これと比較して層内の異なる方向ではほとんど異方性がない。さらに、これら層状物質の結晶は層平行方向に成長しやすく、層垂直方向には成長しづらいという特徴があるので、単結晶の製造で一般的に用いられるフラックス法やフローティングゾーン法などでは層垂直方向に高々100μm程度、典型的には数μmから数十μmという非常に薄い結晶しか得られない。異方熱電効果を利用するデバイスを作製するにはこの薄い単結晶をさらに斜めに切り出す工程を経て傾斜積層体としなければならない。従って最終的に得られる傾斜積層体は、単結晶の厚みと同程度の高々数十μm角に留まってしまう。このような理由により、従来の層状物質において異方熱電効果を利用するような大面積のデバイスを実現するには単結晶基板をテンプレートとして気相成長などにより層状物質の傾斜配向薄膜を成長させる必要があるが、この場合厚みは高々数μmのものしか得られない。このため、光吸収以外の手段でデバイスに対して効率よく温度差をつけることは困難で、放射検出などのセンサ用途での利用に限られていた。発電用途で利用するには少なくとも数十μm以上の厚さの傾斜積層体をより大きな面積で得ることが、固体接触等により効率よく温度差をつけるために必要となる。
【0011】
また、非特許文献2、特許文献2および非特許文献3には異種材料からなる傾斜積層構造を構成する事により生じる材料異方性および異方熱電効果を利用して冷却や発電を行うデバイスが開示されている。これらは特性の異なる2種類の材料を人工的に積層したもので、ゼーベック係数の異方性ΔSは材料の組み合わせにより数百μV/K程度まで大きくできるが、1mm以下の厚さにすることが難しく、デバイスのアスペクト比l/dを大きくすることができないので大きな起電圧を得ることが困難であった。このため冷却時あるいは発電時には低い電圧で大きな電流を流す必要があり、動作のための電源やインバーターの回路設計などが複雑になるという問題があった。
【0012】
以上に述べた背景から、優れた放射検出感度を実現するためにはゼーベック係数の大きな異方性、すなわち35μV/K以上のΔSと傾斜積層体としたときの厚さが1mm以下であることが必要となる。また、発電時に効率よく温度差をつけながら高い電圧を得るためには35μV/K以上のΔSと傾斜積層体としたときの厚さが10μm以上1mm以下であることが必要となる。
【0013】
一方、非特許文献4には、層平行方向が異なる向きにおいて異方性を有する層状物質の材料として、Sr2-xLaxNb2O7が開示されている(非特許文献4)。非特許文献4では本材料の結晶合成方法、格子定数、電気輸送特性及び磁気特性が開示されている。
【0014】
非特許文献4では、図2に示されるように、Sr2-xLaxNb2O7は、c軸方向に4層のNbO6八面体からなるブロック層が周期的に積層された層状ペロブスカイト構造を有する。非特許文献4によればSr2-xLaxNb2O7の電気抵抗率は軸方向で異なる。Sr2-xLaxNb2O7のb軸方向の電気抵抗率は、a軸方向の電気抵抗率と比較して10倍、c軸方向の電気抵抗率は、a軸方向の電気抵抗率と比較して100倍の値を示す。また、層平行方向であるa軸方向の電気抵抗率とb軸方向の電気抵抗率の間には、大きな異方性がある。Sr2-xLaxNb2O7の単結晶はチョクラルスキー法またはフローティングゾーン法などの一般的な方法により、層平行方向に数mm、層垂直方向に1mm程度の大きさのものが作製できる。
【0015】
これまでのところSr2-xLaxNb2O7のゼーベック係数の異方性について開示がされた文献は無く、上記の非特許文献4等においても開示されていない。また、Sr2-xLaxNb2O7のゼーベック係数の異方性について示唆された文献もなく、上記の非特許文献4等においても開示されていない。これは、電気抵抗率の異方性があっても異方熱電効果による起電圧に直接関わるゼーベック係数の差ΔSが大きくなるとは限らないからである。このことは層平行方向と層垂直方向の電気抵抗率の比が室温で数十倍程度あるYBCOにおいてΔSが小さいことからもわかる(非特許文献5)。そのため、上記非特許文献4等の開示内容から直ちに、ゼーベック係数の異方性を見出すことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平8-247851号公報
【特許文献2】特許第4078392号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Applied Physics Letters 95, 051913 (2009).
【非特許文献2】Applied Physics Letters 89, 192103 (2006).
【非特許文献3】Applied Physics Letters 94, 061917 (2009).
【非特許文献4】Progress in Solid State Chemistry 29, 1-70 (2001).
【非特許文献5】Physical Review B 50, 6534-6537 (1994).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前述の通り、異方熱電効果により高い放射検出感度を実現するにはゼーベック係数の異方性ΔSとデバイスのアスペクト比l/dを大きくする必要がある。具体的にはΔSが35μV/K以上、デバイス厚さが1mm以下である事が好ましい。また発電に用いる際には効率よく温度差をつけられるということも条件に加わり、ΔSが35μV/K以上、傾斜積層体としたときの厚さが10μm以上1mm以下である事が必要となる。従来のCaxCoO2などの層状物質あるいは異種材料からなる傾斜積層構造を用いた場合はこのようなデバイスは実現できない。
【0019】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高い放射検出感度および発電時の高い動作電圧を実現する異方的熱電材料と、これを用いた放射検出器および発電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記従来の課題を解決するために、本発明者らは熱電材料の異方熱電特性について研究を重ねた結果、化学式Sr2-xLaxNb2O7で表される層状ペロブスカイト構造を有する材料の結晶において、層平行方向と層垂直方向の間だけではなく、結晶成長が容易な層平行方向であるa軸方向およびb軸方向との間においてもゼーベック係数が大きな異方性を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明に到達するに至った。
【0021】
すなわち本発明の異方的熱電材料は、化学式Sr2-xLaxNb2O7で表され、c軸方向に5層のNbO6八面体からなるブロック層が周期的に積層してなる層状ペロブスカイト型の結晶構造を有し、a軸方向とa軸に対して垂直方向のゼーベック係数との差の絶対値が100μV/K以上であるような大きな異方性を有する。さらに、異方性を有する結晶軸のうち、a軸およびb軸は結晶成長が容易な層状構造の層平行方向を向いており、一般的な結晶成長法によって容易に数mm角の結晶を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の異方的熱電材料は結晶成長が容易な層平行方向における異なる向きに関してゼーベック係数の大きな異方性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】異方熱電効果の説明図
【図2】本発明の異方的熱電材料Sr2-xLaxNb2O7の結晶構造を示した図
【図3】実施の形態2に記載の単結晶基板上のSr2-xLaxNb2O7の結晶配向薄膜の構造を示した図
【図4】実施の形態3に記載の板状の結晶から傾斜結晶片切り出す際の配置を示した図
【図5】実施の形態3に記載の放射検出器の構成を示した図
【図6】実施の形態4に記載の放射検出器の構成を示した図
【図7】実施の形態5に記載の発電デバイスの構成を示した図
【図8(a)】実施の形態6に記載の放射検出器の構成を示した図
【図8(b)】実施の形態6に記載の放射検出器の構成を示した上面図
【図9】実施例1に記載のSr2-xLaxNb2O7のX線回折パターンを示した図
【図10】実施例1に記載のSr2-xLaxNb2O7のc軸長の変化を示した図
【図11】実施例1に記載のゼーベック係数、熱伝導率の測定原理を示した図
【図12】実施例2に記載のSr1.8La0.2Nb2O7の熱伝導率κ、ゼーベック係数S、電気抵抗率ρの温度依存性を示した図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
(実施の形態1)
実施の形態1では本発明の異方的熱電材料におけるバルク単結晶の作製について述べる。
【0026】
本発明の異方的熱電材料は化学式Sr2Nb2O7,Sr4Nb4O14,SrNbO3.5等で表される図2のような結晶構造を有する酸化物材料に電気伝導担体(電気伝導キャリア)を注入したものであり、単結晶あるいは結晶配向した焼結体からなるバルクまたは薄膜の形態で用いられる。Sr2Nb2O7の結晶のa、b、c軸の方向は図2に記載したとおりである。
【0027】
本実施の形態では本発明の異方的熱電材料Sr2-xLaxNb2O7の単結晶バルクの作製方法について説明する。Sr2-xLaxNb2O7単結晶はストロンチウム、ランタン及びニオブが含まれる酸化物を溶融し、結晶成長行うことで得られる。この際、原料として炭酸ストロンチウム(SrCO3)、三酸化二ランタン(La2O3)と五酸化二ニオブ(Nb2O5)などを用いることができる。これらの原料を所望のモル比率となる様に秤量・混合し、焼成を行うことによって単結晶成長を行う際の出発材料とする。焼成過程における条件としては1000〜1400℃での固相反応法による合成が好ましく、焼成雰囲気としては空気、酸素、またはアルゴンなどの不活性雰囲気ガス等を流入する。後の過程で所望の構造を得るためにはアルゴンなどの不活性ガスまたは水素入りアルゴンガスなどの還元性のガス等を流入し焼成・合成する事が望ましい。また本発明におけるランタンの役割は結晶内へのドーピングによって電気伝導キャリアを注入することであるため、電気伝導キャリアを注入することができれば、他の希土類元素やビスマス・タリウムなどでも構わない。その他、電気伝導キャリアを注入する他の手法としては材料内の酸素を欠損させる、ニオブに変わってモリブデンなど六族の遷移金属元素をドーピングするなどの手段もある。
【0028】
次に得られた出発原料を用い、結晶合成を行う。結晶合成方法としてはセルフフラックス法やフローティングゾーン法またはチョクラルスキー法などに代表される引き上げ法等が有るが、比較的簡便に結晶を得られる方法としては赤外線集中加熱式フローティングゾーン法がある。フローティングゾーン法を用いる場合には、結晶育成を行うに先立ち、出発原料を棒状に成型する必要がある。そこで原料を焼成することで得られる出発原料を棒状(φ5×100mm)に油圧式ハンドプレス機で成型して焼成を行う。この焼成は、1300~1500℃付近での融点直下で行われ、十分な強度の焼成物が得られることが望ましい。また焼成雰囲気としてはアルゴンなどの不活性雰囲気ガスを流入することが望ましい。また、後の過程で所望の構造を得るためには、水素入りアルゴンガスなどの酸素還元性のガス等を流入することが望ましい。
【0029】
フローティングゾーン法を用いる場合、溶融体が安定して移動する速度で、棒状の出発原料を移動させ、結晶成長させる。具体的には5〜15mm/Hr程度の速度で、棒状の出発原料が下方に移動させることが望ましい。
【0030】
また、結晶内の不純物や元素の欠損を、電気伝導性を妨げない程度、含有していても良い。
【0031】
以上、Sr2-xLaxNb2O7の単結晶の作製方法の一例を示したが、本発明のSr2-xLaxNb2O7を作製するにあたり、上記セルフフラックス法、チュクラルスキー法を用いる他、その他一般的に用いられる方法により作成することが出来る。
【0032】
(実施の形態2)
実施の形態2では本発明の異方的熱電材料における薄膜単結晶の作製について述べる。
【0033】
図3を用いながら本発明のSr2-xLaxNb2O7の結晶配向薄膜31を作製する方法について説明する。本実施の形態におけるSr2-xLaxNb2O7薄膜は単結晶基板32上に作製される。
【0034】
Sr2-xLaxNb2O7のa軸方向のゼーベック係数に対するb軸およびc軸方向のゼーベック係数がそれぞれ大きな異方性を示す。そのため、異方熱電効果による起電圧を大きくするためには図3の様に基板面34に対してSr2-xLaxNb2O7の結晶配向薄膜31のa軸方向33が傾斜するように結晶成長を行うことが好ましい。以下、Sr2-xLaxNb2O7のa軸と基板面34とのなす傾斜角をαとする。
【0035】
用いる単結晶基板32はSrTiO3、MgO、Al2O3、LaAlO3、NdGaO3、YAlO3、LaSrAlO4、Si等の単結晶材料が好ましい。Sr2-xLaxNb2O7のa軸方向33と基板面34とのなす傾斜角aは、上記単結晶基板32の低指数面からの傾斜角を変化させることによって制御できる。低指数面とは(100)、(010)、(001)、(110)、(011)、(101)、(111)およびこれらと等価な面のことを言う。またAl2O3の場合は(0001)、(11-20)、(1-100)、(10-12)、(11-23)、(10-11)およびこれらと等価な面である。
【0036】
Sr2-xLaxNb2O7のa軸方向33と基板面34とのなす傾斜角αは10°から80°の間にあることが好ましく、30°から60°であることがより好ましい。この理由は、式(1)にも示すように、異方熱電効果によって発生する起電圧が、sin2αに比例し、αが45°で最大になるためである。
【0037】
Sr2-xLaxNb2O7の結晶配向性薄膜31の膜厚は、a軸方向33が基板面34に対して一定の角度αを保っていれば特に限定されるものでは無いが、光吸収により、Sr2-xLaxNb2O7の結晶配向性薄膜31の膜厚方向に温度差を効率的につけるためには30nm以上であることが好ましい。
【0038】
Sr2-xLaxNb2O7の結晶配向性薄膜31をスパッタ法によって作製する場合、Sr,La及びNbのモル比が2-x:x:2でとなる酸化物をターゲットとする。スパッタは純アルゴン中あるいはアルゴンと水素の混合ガス中にて行うことが好ましい。スパッタ時の圧力は0.1Paから10Paの範囲であることが好ましい。薄膜作製時の基板温度は400℃から900℃の間で保持することが好ましい。
【0039】
以上、Sr2-xLaxNb2O7の結晶配向性薄膜31の作製方法の一例を示したが、Sr2-xLaxNb2O7のa軸方向33が基板面34に対して傾斜した構造を実現できれば作製方法は特に限定されない。スパッタ法の他に、蒸着法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法等の気相成長によるもの、あるいは液相や固相からの成長等、種々の方法を用いて、当該薄膜を作成する事が可能である。
【0040】
(実施の形態3)
実施の形態3では実施の形態1に記載したバルク単結晶を用いた放射検出器について述べる。
【0041】
図4および図5を用いながら実施の形態1に記載した方法で作製されるSr2-xLaxNb2O7を用いた放射検出器の構成について説明する。
【0042】
まず、図4で示すような結晶成長によって得られた板状の結晶41を、刃物により劈開および切断して傾斜結晶片42を切り出す。この際、図4で示したように、Sr2-xLaxNb2O7のa軸が、傾斜結晶片42の長手方向の外形面に対して角度α傾斜するように切り出す。
【0043】
次に図5のように前記傾斜結晶片42の長手方向に対向する形で、前記傾斜結晶片42の短辺側の両端面に第1電極51および第2電極52を配置する。
【0044】
傾斜結晶片42の厚みに対する、第1電極51の配置位置中心から第2電極52の配置位置中心までの距離が、式(1)におけるアスペクト比l/dに対応するので、大きな起電圧を得るためには傾斜結晶片42の厚みが薄いことが好ましい。具体的には傾斜結晶片42の厚みは1mm以下であることが好ましい。
【0045】
第1電極および第2電極には、導電性に優れる材料を用いることが好ましい。例えば、Cu、Ag、Mo、W、Al、Ti、Cr、Au、Pt、Inなどの金属、あるいは、TiN、スズ添加酸化インジウム(ITO)、SnO2などの窒化物または酸化物を用いてもよい。その他、ハンダ、銀ロウ、導電性ペーストなどを電極として用いる。また、第1電極および第2電極とSr2-xLaxNb2O7との間の接触抵抗を低減するために中間層としてAl、Ti、Taなどを設けてもよい。
【0046】
上記のように電極が設けられた傾斜結晶片を、放熱体53に接続することで放射検出器を構成できる。この際、放熱体53と傾斜結晶片42との接続面は、Sr2-xLaxNb2O7のa軸とのなす角度がαである。放熱体53と傾斜結晶片42との接続部は電気的に絶縁されていることが好ましい。
【0047】
放熱体53には電気的に絶縁性を有するアルミナ、窒化アルミ、窒化硼素などからなるセラミクスまたは単結晶を用いることができる。また絶縁体によってコーティングされた銅、アルミ、ステンレス、チタンなどを用いることもできる。
【0048】
このように作製される放射検出器の、放熱体を配置しない側の面に対して入射光54が入射すると、傾斜結晶片42の厚み方向に温度差が付き、異方熱電効果により第1電極51と第2電極52の間に起電圧が発生する。この起電圧を読み取ることで入射光54の検出が可能となる。
【0049】
(実施の形態4)
実施の形態4では実施の形態2に記載した薄膜単結晶を用いた放射検出器について述べる。
【0050】
図6を用いながら本実施の形態の放射検出器の構成について説明する。
【0051】
本実施の形態の放射検出器は、実施の形態2に記載した方法で作製されるSr2-xLaxNb2O7の結晶配向薄膜61を単結晶基板62の上に配置し、傾斜配向薄膜61の上に第1電極63および第2電極64を配置することにより作製される。
【0052】
第1電極63および第2電極64には、導電性に優れる材料を用いることが好ましい。例えば、Cu、Ag、Mo、W、Al、Ti、Cr、Au、Pt、Inなどの金属、あるいは、TiN、スズ添加酸化インジウム(ITO)、SnO2などの窒化物または酸化物を用いてもよい。その他、ハンダ、銀ロウ、導電性ペーストなどを電極として用いてもよい。また、第1電極および第2電極とSr2-xLaxNb2O7との間の接触抵抗を低減するために中間層としてAl、Ti、Taなどを設けてもよい。
【0053】
このように作製される放射検出器の、傾斜配向薄膜61の側の表面に対して当てられた入射光65は傾斜配向薄膜61によって吸収され、膜厚方向に温度差が付き、異方熱電効果により第1電極63と第2電極64の間に起電圧が発生する。この起電圧を読み取ることで入射光65の検出が可能となる。
【0054】
(実施の形態5)
図7のように、実施の形態3で説明した放射検出器と同様の構成に、集熱体75を接続することで発電デバイスを構成できる。
【0055】
本実施の形態における放熱体74および集熱体75は実施の形態3における放熱体53と同様に、傾斜結晶片71との接合面において電気的に絶縁された状態で熱的に接続することが好ましい。
【0056】
放熱体74および集熱体75には電気的に絶縁性を有するアルミナ、窒化アルミ、窒化硼素などを用いることができる。また絶縁体によってコーティングされた銅、アルミ、ステンレス、チタンなどを用いることもできる。
【0057】
傾斜結晶片71の厚みに対する、第1電極72の端から第2電極73の端までの距離であるアスペクト比を大きくするために、傾斜結晶片42の厚みが薄いことが好ましい。具体的には傾斜結晶片42の厚みは1mm以下であることが好ましい。
【0058】
一方で、発電の際には、熱源と集熱体75との間の熱伝達および冷却媒体と放熱体74との間の熱伝達は、固体接触、流体による接触あるいは気体との接触など様々な方式が用いられるので、傾斜結晶片の厚みが薄すぎた場合には傾斜結晶片71に対して効率よく温度差を加えることが困難になる。従って効率よく発電を行うためには傾斜結晶片71の厚みは10μm以上であることが好ましい。
【0059】
(実施の形態6)
実施の形態6では本発明の材料における電極配置の異なる放射検出器について述べる。
【0060】
図8(a)、(b)を用いて、本実施の形態の放射検出器の構成を説明する。
【0061】
実施の形態1に記載の方法でSr2-xLaxNb2O7の単結晶を作製し、これを刃物にて劈開および切断し平板状の結晶片81を切り出す。この際結晶片81のもっとも広い面はSr2-xLaxNb2O7のc軸に対してほぼ垂直であることが好ましい。また、図8(a)、(b)において結晶片81は直方体状であるが、c軸にほぼ垂直な表面を有する平板状であれば良いので、直方体に限らず円板や多角形状の板など様々な形状でも良い。
【0062】
次に結晶片81の表面に電極を作製する。この際結晶片81の中央部に関して対向するように配置された電極82aと電極82bとが対応する向き、あるいは電極83aと電極83bとが対向する向きが、Sr2-xLaxNb2O7のa軸およびb軸に対して傾斜している(図8(b)のα)。前記傾斜の角度は30°以上60°以下であることが好ましく、45°であることが最も好ましい。この理由は、式(1)にも示すように、異方熱電効果によって発生する起電圧が、sin2αに比例し、αが45°で最大になるためである。
【0063】
検出対象である光は結晶片81の中央部付近の光照射領域84に照射されるが、Sr2-xLaxNb2O7のゼーベック係数および熱伝導率がa軸およびb軸に関して異方性を有するためab面内において異方熱電効果が生じる。これにより対向する電極間で起電圧が発生し、放射検出を行うことができる。
【0064】
電極には、導電性に優れる材料を用いることが好ましい。例えば、Cu、Ag、Mo、W、Al、Ti、Cr、Au、Pt、Inなどの金属、あるいは、TiN、スズ添加酸化インジウム(ITO)、SnO2などの窒化物または酸化物を用いてもよい。その他、ハンダ、銀ロウ、導電性ペーストなどを電極として用いる。また、電極とSr2-xLaxNb2O7との間の接触抵抗を低減するために中間層としてAl、Ti、Taなどを設けてもよい。
【0065】
以下、本発明のより具体的な実施例を説明する。
【実施例1】
【0066】
本発明の熱電変換材料Sr2-xLaxNb2O7を赤外線集中加熱式フローティングゾーン法によって作製した。まず、化学量論比において原料となる炭酸ストロンチウム、三酸化二ランタン及び五酸化二二オブを所望の組成となるように秤量・混合し、アルゴン気流中、1400℃で、それぞれ20時間の焼成を行った。次に、得られた粉末を円柱棒状に成型して再度アルゴン気流中において1400℃で20時間の焼成を行った。更に得られた原料棒を用い、フローティングゾーン法によって水素(0.75%)を含むアルゴン気流中で、溶融体を8mm/Hrで移動させ、a軸方向に20mm、b軸方向に4mm、c軸方向に1mmの結晶を作製した。得られた結晶の一部を粉末状に粉砕し、X線回折による構造評価を行った。その結果、Sr1.8La0.2Nb2O7において図9に示すようなピークパターンが観測された。また全てのピークで指数付けが可能であり、試料が単相であることを確認した。また図10に示すようにc軸長はベガード則に従い、ランタン量xに比例して変化した。よって所望のLa量がドーピングされていることが判明した。またx=0.5以上の試料については単相の形態ではなく、不純物を含有することが判明した。
【0067】
上記方法について作製した試料の熱・電気伝導特性の評価を行った。電気抵抗率の測定には4端子法を用いた。a軸およびb軸方向に4mm、c軸方向に0.75mmとなるように、精密切断機で切り出し成型した試料を用いて、測定を行った。クロムを接着層として用いた金電極を試料上の電極として用いた。この電極はスパッタリング法を用いて作成した。ゼーベック係数・熱伝導率の測定には定常法を用いた。測定原理について図11を用いて説明する。精密切断機によって切断・成型した試料を、測定試料111として用いた。電気・熱の信号を取り出すために測定試料の上・下面にアルミニウムを接着層とする金電極112を作成した。その後、常温で硬化する銀ペースト113を用いて、銅製のリードバー114に試料を固定した。上部リードバー114にはヒーター115及び高温側温度計116が接続され、下部リードバー117には低温側温度計118及び熱浴119が接続されている。ヒーターで生じた熱が最下の熱浴119に吸熱されるように設けられた測定治具を用いた。具体的には、ヒーターで生じた熱が、上部リードバー114を介して試料111に流れ込み、試料111から下部リードバー117に流れ込むことで最下の熱浴119に吸熱されるように設けられた測定治具を用いた。試料における最上下間の2つの異なる温度を、リードバーに取り付けた温度計で読み取ることで、常時温度差をモニターした。温度計付近での起電力と温度差が分れば、ゼーベック係数を測定できる。熱伝導率は断面積・温度勾配に比例し、熱が流れる方向の長さに反比例する物理量である。よって、ヒーターを用いて熱流を発生させ、温度計間の試料の断面積・長さ・温度差により、熱伝導率を規格化した。測定治具及び試料からの周囲気体を介した熱放射が大きくなると、熱伝導率の正確な測定を行うことが出来ない。そのため、熱量が測定治具・試料表面から極力逃げないように10-2Pa程度の真空中で測定した。
【0068】
室温下で、それぞれの試料のa軸方向について測定した特性を表1に示す。電気抵抗率・及びゼーベック係数にはランタン量を増やすに従って単調に減少する傾向が得られた。一方で熱伝導率については大きな変化は見られなかった。これらの結果より見積もることの出来る変換効率は最大で4.6×10-2程度であった。この値はランタンをドープしない材料と比較して約200倍であった。
【0069】
【表1】

【実施例2】
【0070】
実施例1と同様の方法でSr1.8La0.2Nb2O7を作製した。結晶軸a,b及びc軸方向に測定した熱伝導率κ、ゼーベック係数S、電気抵抗率ρの室温以下の温度依存性を図12に示す。いずれの特性も結晶軸によって大きな異方性を示すことを確認した。本実施例にて初めて明らかになったゼーベック係数も大きな異方性を示す事が確認された。具体的には、室温付近ではa軸方向に-210μV/K程度なのに対し、b軸方向では-60μV/K、c軸方向では-15μV/Kであることが判明した。すなわちゼーベック係数の異方性はa軸方向とb軸方向との間でΔS~150μV/K、a軸方向とc軸方向との間でΔS~100μV/Kであり、それぞれ大きな値を示すことが判明した。また熱伝導率及び電気抵抗率においてもゼーベック係数と同様に大きな異方性を示した。電気抵抗率及びゼーベック係数の温度依存性からSr1.8La0.2Nb2O7は半導体的性質を持つことが明らかとなった。また熱伝導率の温度依存性より、Laドーピングが結晶内の均一性を乱し、熱伝導を担うフォノンの散乱中心になっていると考えられる。
【実施例3】
【0071】
本発明の熱電変換材料Sr1.8La0.2Nb2O7の傾斜配向性薄膜をスパッタ法にて作製した。
【0072】
基板は10mm角、厚さ500μmのSrTiO3単結晶であり、薄膜の結晶性も鑑みて面方位は(001)面から10°傾斜したものを使用した。この基板の上に直径4インチのSr1.8La0.2Nb2O7焼結体ターゲットを用いたRFマグネトロンスパッタリングにより薄膜作製を行った。
【0073】
Arが99%、H2が1%の雰囲気ガスを1.0Paに保ち、出力100Wで1時間プレスパッタリングをした後、700℃に加熱した基板上にプレスパッタリングの時と同様の条件で5時間堆積を行い、その後2時間かけて室温まで冷やした結果、膜厚1μmの薄膜が得られた。
【0074】
エネルギー分散型蛍光X線分析により、薄膜における組成比がほぼ所望の組成であることを確認した。また、X線回折による極点図測定により、Sr1.8La0.2Nb2O7のa軸は基板面に対して約12°傾斜していることがわかった。
【実施例4】
【0075】
実施例2で作製したSr1.8La0.2Nb2O7の結晶を用いて、放射検出器を作製した。
【0076】
まず図4に示すように、Sr1.8La0.2Nb2O7の結晶を精密切断機で切り出すことで、ab面内に4mm×0.5mm、c軸方向に1mm、傾斜角度αが45°の傾斜結晶片を得た。この傾斜結晶片の0.5mm×1mmの2面にチタン、金の順にスパッタ法により電極を作製した。
【0077】
次に傾斜結晶片を厚さ500μmの窒化アルミ板の上にアピエゾングリースを用いて固定し、図5に示すような放射検出器を作製した。
【0078】
上記放射検出器の表面に対して、赤外線ランプ(波長800-2000nm、パワー480mW)から発生させた電磁波を図5の入射光54と同様の向きから試料の中央部に入射させ(スポット径3mm)、電極間に発生する起電圧を測定することで、放射検出器の評価を行った。
【0079】
デバイスにランプからの電磁波が入射していないときには、電極間の起電圧は発生しなかったが、デバイスに電磁波が入射すると、急激に増加し、定常的に約3.6mVの値を示した。ランプの入射をやめると、起電圧は発生しなくなった。以上の実験結果から、本実施例の放射検出器の感度は7.5mV/Wと見積もられた。
【0080】
非特許文献1に開示されているCaxCoO2薄膜では、480mWの電磁波に対して、110mVの起電力の発生が確認されており、感度は0.23mV/Wになる。従って、今回のSr2-xLaxNb2O7素子からなる放射検出器により、従来までのCaxCoO2薄膜素子からなる放射検出器と比較して、約32倍の感度向上が達成されたことになる。
【実施例5】
【0081】
実施例3にて10mm角のSrTiO3単結晶基板上に膜厚1μmで作製したSr1.8La0.2Nb2O7薄膜の表面に電極を設け、図6と同様の構成の放射検出器を作製した。
【0082】
2つの電極はタンタル、白金の順にスパッタ法で作製した。2つの電極の対向方向は、図5のようにSr1.8La0.2Nb2O7のa軸を薄膜表面に投影した時の向きに平行になるよう配置した。電極の大きさは1mm角とし、2つの電極間の距離は6mmとした。
【0083】
上記放射検出器の表面に対して、赤外線ランプ(波長800-2000nm、パワー480mW)から発生させた電磁波を図6の入射光65と同様の向きから試料の中央部に入射させ(スポット径5mm)、電極間に発生する起電圧を測定することで放射検出器の評価を行った。
【0084】
放射検出器にランプからの電磁波が入射していないときには、電極間の起電圧は発生しなかったが、電磁波が入射すると起電圧は急激に増加し、定常的に約0.4mVの値を示した。ランプの入射をやめると、起電圧は発生しなくなった。以上の実験結果から、本実施例の放射検出器の感度は0.83mV/Wと見積もられた。これは非特許文献1のCaxCoO2薄膜素子からなる放射検出器と比較して約3倍の感度であった。
【実施例6】
【0085】
実施例1にて作製したSr1.8La0.2Nb2O7試料を用いて発電デバイスを作製した。
【0086】
まず、図4に示すように、Sr1.8La0.2Nb2O7結晶を精密切断機で切り出すことで、ab面内に4mm×0.8mm、c軸方向に1mm、傾斜角度αが10°の傾斜結晶片を得た。この傾斜結晶片の1mm角の2面にチタン、金の順にスパッタ法により電極を作製した。
【0087】
厚さ1μmの窒化アルミでコーティングした銅製のヒートシンクを2個用いて傾斜積層体を挟み込んでアピエゾングリースによって固定し、図7に示すような発電デバイスを作製した。銅製のヒートシンクの内部には銅パイプが埋め込まれている。このパイプに冷水を流すことによりヒートシンクを冷却することができ、またパイプに温水を流すことによってヒートシンクを加熱することができる。
【0088】
銅製ヒートシンクの一方に15℃の冷水を流し他方に65℃の温水を流すことによって、発電デバイスに温度差をつけたところ、電極間から最大0.4mWの電力を取り出すことができた。この値はランタンドーピングをしていない材料と比較して約30倍の値である。
【実施例7】
【0089】
実施例1にて作製したSr1.8La0.2Nb2O7試料を6mm(a軸)×6mm(b軸)×1mm(c軸)サイズに成形した。この試料の表面にクロム、金の順にスパッタ法にて2対の電極(合計4個)を作製した。作製した電極は図8(a)、(b)に示したような配置であり、試料中央を介して対向した電極対(例えば、82aと82b)の対向方向が試料表面におけるa軸に対して45°傾斜している。こうして図8(a)、(b)に示したのと同様の放射検出器を得た。2つの電極配置位置の中心間の距離は5mmとした。ただし、この電極対の距離は用途や設置場所などに応じて最適化でき、5mmに限定されるものではない。
【0090】
上記放射検出器の表面の中央部に、表面からレーザー光(波長800nm、パワー225mW)を入射させ(スポット径5mm)、電極間に発生する起電力を測定した。2対の電極対のいずれに対しても、レーザー光が試料に入射していないときには起電力は観測されず、レーザー光が入射すると起電力は急激に増加し、定常的に約0.7mVの値を示した。この結果を元にSr1.8La0.2Nb2O7放射検出素子の感度を見積もると、3.1mV/Wが得られた。これは非特許文献1のCaxCoO2薄膜素子からなる放射検出器と比較して約13倍の感度であった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明にかかる異方的熱電材料は、結晶成長が比較的容易な層状構造に沿った方向に大きなゼーベック係数の異方性を有し、高感度の放射検出器や高い起電圧を有する発電デバイスの材料として有用である。
【符号の説明】
【0092】
31 結晶配向薄膜
32 単結晶基板
33 a軸方向
34 基板面
41 板状の結晶
42 傾斜結晶片
51 第1電極
52 第2電極
53 放熱体
54 入射光
61 結晶配向薄膜
62 単結晶基板
63 第1電極
64 第2電極
65 入射光
71 傾斜結晶片
72 第1電極
73 第2電極
74 放熱体
75 集熱体
81 結晶片
82a 電極
82b 電極
83a 電極
83b 電極
84 光照射領域
111 測定試料
112 金電極
113 銀ペースト
114 上部リードバー
115 ヒーター
116 上部温度計
117 下部リードバー
118 下部温度計
119 熱浴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
c軸方向に4層のNbO6八面体からなるブロック層が積層された層状ペロブスカイト型の結晶構造を有するSr2-xLaxNb2O7(xは0.4以下)を含む熱電材料。
【請求項2】
a軸方向のゼーベック係数と、a軸に対して垂直方向のゼーベック係数との差の絶対値が100μV/K以上である、請求項1記載の熱電材料。
【請求項3】
基板と、
前記基板上に配置され、a軸方向が前記基板表面に対して傾斜しているSr2-xLaxNb2O7(xは0.4以下)の熱電材料と、
を具備する熱電デバイス。
【請求項4】
放熱体と、
前記放熱体上に配置され、a軸方向が前記基板表面に対して傾斜しているSr2-xLaxNb2O7(xは0.4以下)を含む熱電材料と、
前記熱電材料のc軸方向に垂直な方向で、かつ、前記基板表面と平行な方向において、前記熱電材料に挟むように対向して配置された第1電極および第2電極と、
を具備する放射検出器。
【請求項5】
前記第1電極および前記第2電極間には、前記熱電材料に入射された電磁波により、起電力が生じる、請求項4記載の放射検出器。
【請求項6】
前記熱電材料の平均厚さが1mm以下である、請求項4記載の放射検出器。
【請求項7】
a軸方向が前記基板面に対して傾斜しているSr2-xLaxNb2O7(xは0.4以下)を含む熱電材料と、
前記熱電材料のc軸方向に垂直な方向で、かつ、前記基板表面と平行な方向において、前記熱電材料に挟むように対向して配置された第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極とが対向する方向に垂直、かつ、前記熱電材料のc軸方向に垂直な方向において対向するように配置された集熱体および放熱体と、
を具備する発電デバイス。
【請求項8】
前記熱電材料の平均厚さが10μm以上1mm以下である、請求項7記載の発電デバイス。
【請求項9】
Sr2-xLaxNb2O7(xは0.4以下)を含む熱電材料と、
前記熱電材料上に、前記熱電材料の中央を介して対向する方向に配置され、前記対向する方向と前記熱電材料のa軸とが30度から60度の間の角度を有するように配置された第1電極および第2電極と、
を具備する放射検出器。
【請求項10】
基板と、前記基板上に配置され、a軸方向が前記基板面に対して傾斜しているSr2-xLaxNb2O7(xは0.4以下)を含む熱電材料と、前記熱電材料のc軸方向に垂直な方向で、かつ、前記基板表面と平行な方向において、前記熱電材料に挟むように対向して配置された第1電極および第2電極と、を具備する放射検出器の前記熱電材料に対して電磁波を入射させ、
前記第1電極および前記第2電極との間の起電力を検出することで前記電磁波を検出する、放射検出方法。
【請求項11】
Sr2-xLaxNb2O7(xは0.4以下)を含む熱電材料と、
前記熱電材料上に、前記熱電材料の中央を介して対向する方向に配置され、前記対向する方向と前記熱電材料のa軸とが30度から60度の間の角度を有するように配置された第1電極および第2電極と、を具備する放射検出器の前記熱電材料に対して電磁波を入射させ、
前記第1電極および前記第2電極との間の起電力を検出することで前記電磁波を検出する、放射検出方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8(a)】
image rotate

【図8(b)】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−243824(P2011−243824A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115988(P2010−115988)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】