説明

異種材料との熱接着性を有するポリオレフィン系樹脂組成物

【課題】 240℃を超えるような高温にする必要がなく、オゾン処理や酸素処理等を行わなくても、ポリエステル、ポリアミド、エチレンビニルアルコール共重合体、金属箔(例えばAl箔)のいずれにも高い接着力を有する熱接着性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
上記課題は、ポリ(α−オレフィン)に不飽和ジカルボン酸無水物モノマーをグラフト重合させたグラフト共重合体(E)の該モノマー部分を開環させて得られたα−オレフィンとジカルボン酸のグラフト共重合体(A)と、
ポリオレフィン(D)100重量部に対して、分子内に2個以上10個以下のエポキシ基を有する化合物(B)を0.05〜5重量部を溶融混練して得られるポリオレフィン組成物(C)を、
前記グラフト共重合体(A)と前記ポリオレフィン組成物(C)を、重量比で(A)/(C)=2/98〜40/60の範囲内で混合し、溶融混練によって得られる異種材料との熱接着性を有するポリオレフィン系樹脂組成物によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種材料との熱接着性を有するポリオレフィン系樹脂組成物に関する。更に詳しくは、ポリオレフィンと非相溶である異種材料との多層共押出成形や多層ラミネート加工の場合の接着層、混合組成物を形成する場合の相溶化剤として使用しうるポリオレフィン系樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、無極性の炭化水素であり、極性を有する異種材料(ポリアミド、ポリエステル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、金属箔など)との相溶性がなく、両者の多層成形(多層キャスト製膜、多層インフレーション製膜、多層ブロー成型など)や混合物を形成するために、極性基を有する接着性樹脂組
成物を用いることが知られており、工業的にも一般的に利用されている。
【0003】
これら接着性樹脂に導入されている極性基は、カルボン酸、ジカルボン酸無水物、グリシジル化合物、などが挙げられ、前記異種材料との熱接着性を有している。
【0004】
しかし、市販されている接着性樹脂とポリエステルとの熱接着性は未だ十分なレベルとはいえず、接着性向上のための発明が種々考案されている。
【0005】
特許文献1では、ポリオレフィン(a)、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(b)、エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系重合体(c)の接着性樹脂組成物が考案されている。
【0006】
該発明で、有効な接着性が発現するためには240〜340℃の高温下で成形にすることが好ましく、製造エネルギーコストの増大が否めないばかりか、接着性樹脂組成物層やポリオレフィン層が高温により低粘度化するため、成形時の溶融張力が不足し、ドローダウン等の不具合が生じやすくなる。低温成形を行うためにオゾン処理や酸素処理を推奨しているが、特殊な装置設備の導入が必要となる。
【0007】
特許文献2では、ポリオレフィン(a)、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(b)、エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系重合体(e)からなるポリオレフィン層と、ポリアミド(c)、アミノ基と反応する官能基を有するオレフィン系重合体(d)からなる基材層の直接接着積層体が考案されている。
【0008】
該発明でも、有効な接着性が発現するためには240〜340℃の高温下で成形にすることが好ましく、製造エネルギーコストの増大が否めない。
【0009】
さらに該発明は、ポリアミドとの接着性向上を第一目的としてなされたものであり、他の異種基材、とくにポリエステルとの接着性向上についての大きな効果は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−188679号公報
【特許文献2】特開平11−58633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、異種材料とくにポリエステルとの接着性を向上する樹脂組成物は、高温下あるいはオゾン処理や酸素処理等の特殊装置を設置しなければ成形が困難であった。
【0012】
さらに主に異種材料として挙げているポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、金属箔のいずれにも同レベルの高い接着力を有する樹脂組成物はなかった。
【0013】
本発明の目的は、240℃を超えるような高温にする必要がなく、オゾン処理や酸素処理等を行わなくても、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、金属箔(例えばAl箔)のいずれにも高い接着力を有する熱接着性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、
ポリ(α−オレフィン)に不飽和ジカルボン酸無水物モノマーをグラフト重合させたグラフト共重合体(E)の該モノマー部分を開環させて得られたα−オレフィンとジカルボン酸のグラフト共重合体(A)と、
ポリオレフィン(D)100重量部に対して、分子内に2個以上10個以下のエポキシ基を有する化合物(B)を0.05〜5重量部を溶融混練して得られるポリオレフィン組成物(C)を、
前記グラフト共重合体(A)と前記ポリオレフィン組成物(C)を、重量比で(A)/(C)=2/98〜40/60の範囲内で混合し、溶融混練によって得られる異種材料との熱接着性を有するポリオレフィン系樹脂組成物
によりかかる目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、超高温成形やオゾン処理や酸素処理等の特殊装置を必要とせず、通常のポリオレフィンの成形温度により、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)に加えてポリエステル、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、金属箔のいずれにも同レベルの高い熱接着力を有し、ポリオレフィンと非相溶である前記異種材料との多層共押出成形品や多層ラミネート加工品、あるいはポリオレフィンと非相溶である前記異種材料との均一な混合組成物を提供することができる。本発明の樹脂組成物はさらにポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリビニルアルコール等にも接着性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のポリ(α−オレフィン)に不飽和ジカルボン酸無水物モノマーをグラフト重合させたグラフト共重合体(E)について説明する。
【0017】
α―オレフィンには、エチレンまたはプロピレンが挙げられ、その単独または共重合体であるポリ(α−オレフィン)は、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とから得られる触媒(チーグラー触媒:たとえば、シリカ)にクロムの化合物(たとえば、酸化クロム)を担持させることによって得られる触媒系(フィリップス触媒)、またはラジカル開始剤(たとえば、有機過酸化物)を用いてオレフィンを単独重合または共重合することによって得られる。これには市販のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ポリプロピレン共重合体を使用できる。
【0018】
本発明において使用される不飽和ジカルボン酸無水物モノマーとは、少なくとも1個の二重結合を有し、且つ2個のカルボキル基からなる環状の無水物(基)を含有する化合物であり、具体的には無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、無水フマル酸などが挙げられる。
とりわけ樹脂加工時における耐熱安定性、人体へ及ぼす悪影響の少なさ価格の観点から無水マレイン酸、無水フタル酸が好適な化合物として挙げられる。
【0019】
α−オレフィンと不飽和ジカルボン酸無水物モノマーの比は、α−オレフィン100重量部に対し不飽和ジカルボン酸無水物モノマー0.01〜20重量部が適当である。
【0020】
ポリ(α−オレフィン)に不飽和ジカルボン酸無水物モノマーをグラフト重合させたグラフト共重合体(E)とは、具体的には上記ポリオレフィンへの不飽和モノマーのグラフト共重合体を指す。グラフト共重合は、ポリ(α−オレフィン)
100重量部に不飽和モノマー0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜3重量部、有機過酸化物0.001〜20重量部、好ましくは0.005〜0.05重量部を添加した混合物を押出機に供給し、溶融、反応させて得られる。
【0021】
本発明において使用される有機過酸化物の代表例としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジーt−ブチルパーオキサイドが挙げられる。該有機化酸化物のうち、1分間の半減期が100〜280℃のものが望ましく、とりわけ120〜230℃のものが好適である。この半減期は、圧力容器内に過酸化物を密封し、一定温度と一定時間をかけて、活性酸素量をヨウ素滴定で測定できる。これらの有機過酸化物は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
100重量部のポリ(α−オレフィン)に対して不飽和ジカルボン酸無水物モノマーの配合が、0.01重量部未満では、本発明の樹脂組成物と異種材料との接着性が
乏しい。一方、20重量部を超えると、グラフト反応効率が低下するために未反応または単独重合の不飽和化合物がグラフト反応中にかなり残留するばかりでなく、ポリオレフィンが本来有している物性が損なわれる。
【0023】
また、100重量部のポリ(α−オレフィン)に対する有機過酸化物の配合が0.001重量部未満では、満足すべきグラフト共重合物が得られない。一方、20重量部を超えるとポリ(α−オレフィン)が本来有している物性が損なわれる。
【0024】
このような混合物は、通常の押出機に投入され、その内部で溶融混練されるとともにグラフト反応が進行し、これにより、グラフト変性物が得られる。この際、使用される押出機はノンベント式およびベント式のいずれを用いてもよいが、未反応または単独重合の不飽和化合物および有機過酸化物の分解物の除去の点からベント式の押出機が望ましい。混練温度は180〜250℃であり、使用されるポリ(α−オレフィン)、不飽和ジカルボン酸の無水物モノマーおよび有機過酸化物の種類によって異なるが、190〜230℃が望ましい。押出機内滞留時間は60秒以上であり、とりわけ90秒以上が好適である。上限は特に制限されないが実用180秒までが好ましい。混練温度が180℃未満では、グラフト反応が良好に行われない。一方、250℃を越えると、ポリ(α−オレフィン)の一部に劣化が起こるとともに、不飽和ジカルボン酸無水物モノマーによっては分解温度以上となり熱劣化が生じる。押出機内滞留時間が60秒未満では、満足すべきグラフト反応が行われない。
【0025】
ポリ(α−オレフィン)に不飽和ジカルボン酸無水物モノマーをグラフト重合させたグラフト共重合体は市販品があり、それを利用できる。
【0026】
前記のグラフト共重合体(E)の該モノマー部分を開環させて得られるα−オレフィンとジカルボン酸の共重合体(A)について説明する。
【0027】
共重合体(E)において通常、環状構造を取っているジカルボン酸無水物部分を予め加水反応により開環させることにより、α−オレフィンとジカルボン酸の共重合体(A)が得られる。加水反応は共重合体(E)を30〜80℃、好ましくは40〜60℃で50〜100%RHの環境下に5時間以上保つことにより進行する。これにより、ほとんど、例えば95%以上のジカルボン酸無水物部分が開環する。
【0028】
本発明の分子内に2個以上10個以下のエポキシ基を有する化合物(B)について説明する。
【0029】
最も好ましい具体例は、多官能のエポキシ基を有する高級脂肪酸エステルであり、エポキシ化大豆油およびエポキシ化アマニ油、等のエポキシ化植物油が挙げられる。
【0030】
もう一つの好ましい具体例として、オレフィン基を有する化合物と(メタ)アクリル酸グリシジルの共重合体が挙げられる。オレフィン基はエチレン基、プロピレン基、スチレン基等であり、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体等である。これらはいずれも市販品があり、それを利用できる。スチレン−(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体として市販されているものは、エポキシ基数が4〜10のBASFジャパン株式会社製JONCRYL(登録商標)、エポキシ基数が2の東亜合成株式会社製アルフォン(登録商標)などが挙げられる。
【0031】
エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体として市販されているものは、住友化学株式会社製ボンドファースト(登録商標)、
エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体として市販されているものは、日本ポリエチレン株式会社製レクスパールRB(登録商標)などが挙げられる。
【0032】
本発明のポリオレフィン(D)について説明する。
具体例として、ポリエチレンとして、市販されている低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられ、ポリプロピレンとして、市販されているホモポリマー、ブロックコポリマー、あるいはランダムコポリマーが挙げられる。一例として、本発明による多層製膜を行う場合、ポリエチレンは190℃におけるMFRが、0.50〜10.00g/10分の範囲内の材料であり、ポリプロピレンは230℃におけるMFRが、0.50〜10.00g/10分の範囲内の材料を使用することが好ましい。
【0033】
ポリオレフィン組成物(C)は、前記ポリオレフィン(D)100重量部に対して、分子内に2個以上10個以下のエポキシ基を有する化合物(B)を0.05〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部を溶融混練して得られる。化合物(B)が0.05重量部未満では熱接着に有効な予備反応が不十分であり、5重量部を越えると化合物(B)が溶融押出機内で過剰な滑剤作用を示し、成形性が低下する。(D)と(B)を前記の組成で混合した後、通常の押出機に投入し、その内部で溶融混練することで組成物(C)が得られる。この際、使用される押出機はノンベント式およびベント式のいずれを用いてもよいが、未反応または単独重合の(B)を除去する点からベント式の押出機が望ましい。更に混練温度は180〜250℃、混練時間は120〜180秒が好ましい。
【0034】
本発明の異種材料との熱接着性を有するポリオレフィン系樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)とポリオレフィン組成物(C)を、重量比で(A)/(C)=2/98〜40/60、好ましくは5/95〜30/70の範囲内で混合して溶融混練して得られる。
【0035】
グラフト共重合体(A)のメルト・フロー・レート(MFR−A)と、ポリオレフィン組成物(C)のメルト・フロー・レート(MFR−C)の比は、
MFR−A/MFR−C >1.5
である。この比は、PP系は230℃、PE系は190℃で測定したものである。比が1.5未満では、(A)、(C)両者が均一な微分散の傾向となり、熱接着時の異種材料との界面に存在する極性基が希釈され効率的な接着が発現しない。最大比は特に制限されないが、例えば10程度までが実用的である。
【0036】
(A)と(C)の溶融混練は、異種材料との成形前に予め行ってもよいし、異種材料との成形時に同時に行ってもよい。
この溶融混練に使用される押出機はノンベント式およびベント式のいずれを用いてもよい。混練温度は180〜250℃であり、使用されるポリオレフィンの種類によって異なるが、190〜230℃が望ましい。押出機内滞留時間は60秒以上であり、とりわけ90秒以上が好適である。上限は特に制限されないが実用180秒までが好ましい。
【0037】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には本発明の目的を損わない範囲で種々の目的で第3成分を含むことができる。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、PE系では190〜210℃、好ましくは200〜200℃、PP系では190〜240℃、好ましくは200〜230℃程度で成形して使用できる。
【0039】
(A)と(C)を溶融混練してなる本発明の樹脂組成物をフィルムとして製膜することができる。製膜方法は樹脂フィルムの製膜で一般的なインフレーション法、Tダイ法などが挙げられる。製膜したフィルムを異種材料フィルムとの熱接着を行う場合、樹脂組成物フィルムの製膜時あるいは熱接着の直前にコロナ放電処理を施すことが更に好ましい。コロナ放電処理量は処理直後のフィルム表面の濡れ指数で39〜55dyne/cmが好適である。
【実施例】
【0040】
本発明について実施例を挙げて更に具体的に説明する。
下記の樹脂を用いた。
PP:ポリプロピレン、サンアロマー製、“PB370A”
密度=0.90g/cm、MFR=1.3g/10分
AD−PP:無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、
三菱化学製のZELAS“MC721AP”
密度=0.90g/cm、MFR=3.5g/10分
AD−PP1:前記AD−PPを予め50℃、70%RHの環境下に8時間、
静置することにより酸無水物を開環させたマレイン酸グラフト
ポリプロピレン
PE:線状低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン製のハーモレックス
“NF324A”
密度=0.906g/cm、MFR=0.9g/10分
AD−PE:無水マレイン酸グラフトポリエチレン、
三菱化学製のモディック“M545”
密度=0.90g/cm、MFR=6.0g/10分
AD−PE1:前記AD−PEを予め50℃、70%RHの環境下に8時間、
静置することにより酸無水物を開環させたマレイン酸グラフト
ポリエチレン
ESO:エポキシ化大豆油、花王製のカポックス、“S−6”(エポキシ基数:2〜10/分子)
EPOXY:スチレン−(メタ)アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル
共重合体、BASFジャパン株式会社製のJONCRYL、
“ADR-4300S”(エポキシ基数:7〜10/分子)
被着体1:延伸ナイロンフィルム、東洋紡製のハーデンフィルム、“N1102”、
厚み15μm
被着体2:延伸PETフィルム、東洋紡製のエステルフィルム、“E5102”、
厚み12μm
被着体3:エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エバールフィルム、
“EF−CR”、厚み15μm
【0041】
<単層の接着性フィルムの製膜>
予め開環されたα−オレフィンとジカルボン酸のグラフト共重合体(A)とポリオレフィン組成物(C)の混合物を溶融混練しながら、単層の空冷式インフレーション製膜機を用いて次の条件で行い、厚み80μmの単層フィルムを得た。
・外径55mm、圧縮比2.7のスクリュー押出機(押出温度210℃)
ダイス:外径200mm、リップ間隔3mm、温度210℃
ブロー比:1.8
製膜速度13m/分
・コロナ放電処理は、製膜工程の巻き取り直前に施し、処理直後のフィルム表面の濡れ指数で43〜52dyne/cmとなるように出力を調節した。
【0042】
<接着検体の作製>
単層フィルムと被着体フィルムの熱貼合は、所定温度に加熱した金属製ロールと間隙0.1mmに設置したゴム製の支持ロール間を2枚のフィルムを重ね合わせて0.5秒間で圧着通過させて接着検体とした。
【0043】
<接着強度の測定>
作製した接着検体を、JIS Z-1707に準じて接着強度を測定した。
得られた結果を表に示す。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、金属箔のいずれにも同レベルの高い熱接着力を有し、ポリオレフィンと非相溶である前記異種材料との多層共押出成形品や多層ラミネート加工品、あるいはポリオレフィンと非相溶である前記異種材料との均一な混合組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(α−オレフィン)に不飽和ジカルボン酸無水物モノマーをグラフト重合させたグラフト共重合体(E)の該モノマー部分を開環させて得られたα−オレフィンとジカルボン酸のグラフト共重合体(A)と、
ポリオレフィン(D)100重量部に対して、分子内に2個以上10個以下のエポキシ基を有する化合物(B)を0.05〜5重量部を溶融混練して得られるポリオレフィン組成物(C)を、
前記グラフト共重合体(A)と前記ポリオレフィン組成物(C)を、重量比で(A)/(C)=2/98〜40/60の範囲内で混合し、溶融混練によって得られる異種材料との熱接着性を有するポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物を溶融製膜し得られる異種材料との熱接着性を有するポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項3】
分子内に2個以上10個以下のエポキシ基を有する化合物(B)が、高級脂肪酸エステル、あるいは、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】
分子内に2個以上10個以下のエポキシ基を有する化合物(B)が、高級脂肪酸エステル、あるいは、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体であることを特徴とする請求項2記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。
【請求項5】
同一温度下でのグラフト共重合体(A)のメルト・フロー・レート(MFR−A)と、ポリオレフィン組成物(C)のメルト・フロー・レート(MFR−C)の比が、
MFR−A/MFR−C >1.5
であることを特徴とする請求項1又は3記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】
同一温度下でのグラフト共重合体(A)のメルト・フロー・レート(MFR−A)と、ポリオレフィン組成物(C)のメルト・フロー・レート(MFR−C)の比が、
MFR−A/MFR−C >1.5
であることを特徴とする請求項2又は4記載のポリオレフィン系樹脂フィルム。

【公開番号】特開2012−52039(P2012−52039A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196318(P2010−196318)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【出願人】(594050821)日生化学株式会社 (16)
【Fターム(参考)】