説明

【課題】 畳表部の畳床部への取り付け及び取り外しを容易にでき、取り外して洗浄、日干し等、或いは交換が容易であると共に衛生性に優れ、更に作製時の労力を低減でき、且つ畳表部のずれや皺、変形等を防止できる畳を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の畳1は、畳床部2と、畳床部2に脱着自在に覆設される畳表部3と、を備え、畳表部3が、a.平板状の下側上面部と、下側上面部の側部に形設された下側側面部と、を有する畳表支持部と、b.下側上面部の上面に積層され固定される上側上面部と、上側上面部の4辺に延設され下側側面部の外周面に積層され固定される上側側面部と、を有する畳表と、c.下側側面部の内面の所定部に配設され畳床部2の側面に脱着自在に係着する係着部8と、を備えた構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳床部とそれに脱着自在に覆設される畳表部とを備えた畳に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、畳は適度の弾力性を有すると共に吸湿性に優れているため、日本住宅における伝統的な床材として広く用いられている。通常、畳は横糸状物に天然のイグサを用い縦糸に麻糸や木綿糸等を用いて編んだ畳表と、乾燥した稲わらを適度の厚みになるように麻糸等で縫い固めた畳床と、により構成され、畳表は畳床の上面と側面を覆って下面で麻糸等により縫着されている。
なお、畳表としては、近年、天然のイグサの替わりに熱可塑性樹脂製の糸状物からなるいわゆる模造イグサを編んだものが用いられており、感触や外観が天然のイグサを用いたものと略同様である上に耐水性及び耐久性に優れたものとなっている。また、畳床としては、近年、木板とクッション材を積層したものや合成樹脂の発泡体等で形成されたもの等があり、耐水性に優れると共にダニ等の害虫やカビ等が繁殖し難く衛生的なものとなっている。
このような畳としては特許文献1に記載されたもの等がある。特許文献1には稲わらを用いた畳床を多孔フィルムと保護布からなる防水通気シートで包み込むこと、及び、その畳床に畳表を粘着テープや面ファスナー等の固定手段で固定することが記載されている。なお、固定手段としては粘着テープやベルクロ(登録商標)を用いることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−331999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の畳では以下のような課題を有していた。
(1)畳表として合成樹脂製の模造イグサを編んだものを用いた場合であっても、畳表面に食事中に飲料等をこぼした場合、それを拭き取るだけでは完全に取り去ることができず、特に老人ホーム等で失禁した尿やテーブルから落とした食品の油分や汁分が付着した場合は拭き取るだけでは汚れや染み、悪臭等が残り、衛生性に欠けるという課題を有していた。
(2)縫着部分の糸から尿等が染み込み、畳を干したり畳表を拭いても縫着部分の糸は畳内部に入っているので、糸に染み込んだ尿等の臭気が抜けず不快感を与えるという課題を有していた。
(3)畳を日干しして乾燥や殺菌する場合、或いは畳の交換をする場合等には畳を搬送する必要があるが、畳を搬送するのは煩雑で且つ場所を取ると共に、特に畳床として稲わらを編み固めたものを用いた場合は重量が重く、簡単に持ち運ぶことができず取り扱い性に欠けるという課題を有していた。
(4)特許文献1の畳では、畳表を畳床にただ固定しただけでは、畳表が畳床に対してずれたり皺が寄ったり、畳表の上面と側面の角部が丸くなったりし易く、特に粘着テープやベルクロ(登録商標)等の比較的固定力の弱い固定手段を用いると、この傾向が著しくなり外観に欠けるという課題を有していた。
(5)特許文献1の畳では、畳表の上面は畳床に固定されていないため、長期間使用するにつれ表面に皺や変形が生じ易く外観に欠けるという課題を有していた。また、畳表の上面を畳床に固定すると畳表の取り付け取り外しが困難になり、洗浄や交換作業に手間がかかるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、畳表部の畳床部への取り付け及び取り外しを容易にでき、取り外して洗浄、日干し等、或いは交換が容易であると共に衛生性に優れ、更に作製時の労力を低減でき、且つ畳表部のずれや皺、変形等を防止できる畳を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の畳は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の畳は、畳床部と、前記畳床部に脱着自在に覆設される畳表部と、を備え、前記畳表部が、a.平板状の下側上面部と、前記下側上面部の側部に形設された下側側面部と、を有する畳表支持部と、b.前記下側上面部の上面に積層され固定される上側上面部と、前記上側上面部の4辺に延設され前記下側側面部の外周面に積層され固定される上側側面部と、を有する畳表と、c.前記下側側面部の内面の所定部に配設され前記畳床部の側面に脱着自在に係着する係着部と、を備えた構成を有している。
【0007】
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)畳表部で畳床部の上面及び側面を覆うため、床等に敷設すると外観は通常の畳と変わらず同様に使用できる。
(2)畳表部が畳床部に対して脱着自在なので、畳表部を畳床部から取り外して洗浄でき、又は日干しして乾燥や殺菌等をでき、常に清潔に保つことができ異臭の発生を防止できる。また、畳表部は漬け置き洗いが可能で、油分等の汚れも確実に落とすことができ衛生性に優れる。
(3)畳表部は、上面部と側面部で畳床部の上面と側面を覆って側面部内面の係着部で係着しているだけなので、容易に取り付け及び取り外すことができ、畳表部の洗浄、日干し等を容易にできる他、畳表部の交換(張り替え)作業を業者によらずにできる。
(4)畳表支持部に畳表が貼着や粘着等で積層され固定されているので、畳表に皺や型崩れが生じるのを防止でき、新品と同等の美しさを長期間保つことができる。特に、畳表支持部の下側上面部の全面に接着材を塗布する等して畳表の上側上面部全体を下側上面部に固定すれば、畳表に皺や変形が生じるのを確実に防止できる。
(5)畳表支持部を備えたことにより、畳表に皺や型崩れが生じ難くなると共に、畳表部の取り扱い時に湾曲したり折れ曲がったりし難いため取り付け及び取り外し作業を円滑に行うことができる。
(6)畳表部の作製時において、畳表支持部の下側側面部の内面に面ファスナー等の係着部を貼着等で固定できるので、従来のように柔軟な畳表の裏面に直接面ファスナー等を固定する場合に比べ、固定作業が容易で、且つ強固に固定でき、作製作業の労力を低減できる。
【0008】
ここで、畳床部としては、稲わらを編んだもの、木板とクッション材を積層したもの、合成樹脂製の発泡体等が用いられる。発泡体としては、ポリウレタン、EVA、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の発泡体や、ウレタンフォームや発泡スチロール等が用いられる。また、発泡体やその他の畳床部の芯材を被覆する被覆部を設けてもよい。被覆部としては、ビニルシート等の合成樹脂製等のシートやフィルムが用いられる。被覆部は、合成樹脂製等のシートをつぎ合わせたものや袋状のもの等を用いることができる。この場合、シートの合わせ目部分は融着又は接着により水密に接合する。また、被覆部の内面や発泡体の表面に接着材を塗布して被覆部を発泡体に接着固定することもできる。また、延伸フィルムやシュリンクフィルム等により発泡体を覆った後、加熱収縮させて発泡体の表面に密着した被覆部を形成することもできる。これにより、発泡体等の畳床部の芯材に水分が侵入することがなく、尿や油分等の侵入及びダニやカビの繁殖を防止でき、常に清潔に保つことができる。なお、ダニ等の害虫の繁殖を確実に防止するために被覆部としてシート状防虫材を用いてもよい。
【0009】
畳床部の上面にビニル床シート、ビニル床タイル、床クロス、ソフトクロス、ビニルシート等の床仕上げ材を配設することもできる。これにより、床仕上げ材として木目調のビニル床シート等を用い、部屋等の床に複数の畳床部のみを敷設するだけで、板の間風の部屋とすることができると共に、該畳床部に畳表部を覆設すれば畳敷きの部屋とすることができ、板の間風等と畳敷きとを簡単に変更することができる。なお、床仕上げ材としては、柔軟性と共に不透水性を有するものを用いるのが好ましい。踏んだときの感触が柔らかく、また洗浄等が容易で且つ畳床部への水分の浸入を防止し衛生的だからである。
【0010】
また、畳床部の側面に下方に向かって内側に傾斜した傾斜部、又は、側面の下部側に凹部を形成し、係着部が係着する被係着部を傾斜部又は凹部に配設してもよい。傾斜部又は凹部に被係着部を配設することにより、係着部及び被係着部、或いは下側側面部や上側側面部の厚みにより畳の側面が膨出するのを防ぎ、床等に敷設した際に膨出部により寸法誤差が生じて敷設できなくなったり隣り合う畳の間がきつくなって歪みが生じたりすることなく整然と敷設することができる。傾斜部の角度や凹部を大きさは、係着部及び被係着部、或いは下側側面部等の厚みにより、傾斜角度としては3°〜10°好ましくは5°〜10°、凹部としては幅2cm〜4cm、深さ2mm〜10mm程度に設定される。傾斜部の角度が5°より小さくなるにつれ係着部及び被係着部、或いは下側側面部等の厚み等により畳の側面が膨出する傾向があり3°より小さいとこの傾向が大きいため好ましくなく、10°より大きくなるにつれ床等に敷設した際に隣り合う畳間に形成される間隙が大きくなり畳がずれ易くなるため好ましくない。
【0011】
畳表としては、横糸状物として天然のイグサ或いは熱可塑性樹脂製の糸状物からなるいわゆる模造イグサ等と、縦糸として綿糸、麻糸、或いはナイロン等の合成繊維等と、を編んだものが用いられる。横糸状物が熱可塑性樹脂製の糸状物で形成されることにより、水分が横糸状物の内部まで浸透せず汚れがつき難いと共に拭くだけで汚れが取れ易く、また容易に洗浄及び乾燥でき常に清潔に保つことができる。また、洗浄及び乾燥を繰り返しても劣化し難く耐久性に優れると共に、ダニやカビが繁殖せず常に清潔に保つことができ、幼児やアレルギー体質の人が居る部屋でも安心して使用できる。なお、畳表の汚れやダニやカビの繁殖を確実に防止するために、縦糸として合成繊維により形成されたものを用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、重縮合系のポリアミド、ポリエステル等が用いられる。熱可塑性樹脂の糸状物としては、天然のイグサを模造したもの、例えば上述した熱可塑性樹脂を幅が30mm〜80mm、厚みが0.03mm〜0.07mmの帯状に成形した後、小径のノズルを通過させながら加熱収縮させて径が1mm〜2mmの糸状物としたもの等が用いられる。
【0012】
畳表支持部としては、ポリエチレンやポリプロピレン等により形成されたハニカム構造や段ボール構造(波形に成形した中しんの片面又は両面にライナーを貼り合せた構造)を有する合成樹脂製板状体等の軽量で柔軟性、不透水性を有する板状体が用いられる。これにより、畳表部が圧縮や引っ張り等の機械的強度に優れ、且つ軽量になり取り扱いが容易で、踏んだときの感触が柔らかく、また洗浄等を容易にすることができる。
また、畳表支持部は、上記のような板状体を下側上面部と下側側面部と所定の代部(後述する係着用代部や固定用代部)を有する展開図の形状に切断し、一方の面に畳表を貼着等で固定した後、各下側側面部を折り曲げ、所定の角部を固定用代部と裏面で固定し、所定部に係着部等を貼着等で固定して形成する。或いは、板状体を展開図の形状に切断し、各下側側面部を折り曲げ、所定の角部を固定用代部と裏面で固定した後、下側上面部及び下側側面部の表面に畳表を貼着等で固定して形成する。なお、固定用代部に替えて、L字状の固定部材を用いて所定の角部を固定してもよい。
【0013】
本発明の請求項2に記載の畳は、前記畳表部が、上面部と、前記上面部の4辺の内、前記畳表の横糸状物に直交する2辺に前記上面部と一体に形成され前記2辺で下方に向けて略直角に折り曲げられた屈曲部と、前記屈曲部から延設された延設側面部と、前記横糸状物に平行な2辺に前記上面部と一体に形成され内面に前記係着部が配設された係着側面部と、を備えた構成を有している。
【0014】
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)畳表部の延設側面部が上面部に対して屈曲部で略直角に折り曲げられているので、延設側面部により畳床部の側部を保持して畳表部がその横糸状物に平行な方向にずれるのを防止できる。また係着側面部を畳床部の側面に係着することにより畳表部が横糸状物に直交する方向にずれるのを防止できる。
(2)畳表部の横糸状物に直交する2辺に延設部を形成しているので、延設側面部が簡単に外側に広がることはなく常に畳床部の側面に沿うため、畳表部のずれを確実に防止できると共に、畳を床等に敷設する際に延設側面部が広がって隣接する畳に引っ掛かることなく敷設作業を円滑にできる。
【0015】
ここで、上面部は畳表支持部の下側上面部と畳表の上側上面部とを積層し固定して形成され、延設側面部及び係着側面部は畳表支持部の下側側面部と畳表の上側側面部とを積層し固定して形成されている。
延設側面部及び係着側面部の一端部又は両端部には下方に向かって内側に傾斜した傾斜端部を形成することができる。これにより、床等に敷設した場合に延設側面部及び係着側面部の側端部が余って上面部に皺が生じたり隣り合う畳の間がきつくなって歪みが生じたりすることを防止できる。
屈曲部の折り曲げ方法としては、折り曲げる部分の全長にわたって十分に水分を含ませたり、高浸透性の界面活性剤等を塗布したりした後、アイロン或いは焼ごて等により押圧して折り曲げる方法、高温の蒸気を吹き付けたり濡れた布を熱したものを当てながら押圧する方法、熱プレスにより熱圧成形する方法、熱を加えずに加圧成形する方法等が用いられる。折り曲げる部分を適宜加熱することにより柔らかくなり折り曲げ作業がし易くなると共に折り曲げた後の戻り(外側への広がり等)を防止することができる。これにより、時間が経っても屈曲部が外側へ広がり難く、新品と同等の美しさを長期間保つことができ、畳を床に敷設した際にも整然として外観に優れる。
係着部及び畳床部の側面に配設される被係着部としては、面ファスナー、フック、ボタンや繰り返して使用できる粘着材等が用いられる。なお、係着部は係着側面部だけでなく延設側面部の内面に設けてもよい。これにより、畳表部が畳床部に強固に係着されるため、畳床部に対してずれたり外れたりし難くなる。
【0016】
本発明の請求項3に記載の畳は、請求項2に記載の発明において、前記畳表部の前記係着側面部の内、一方の前記係着側面部はその両端部で前記延設側面部に固定されると共に、他方の前記係着側面部はその内面の両端部に前記延設側面部の端部に延設された係着用代部に脱着自在に係着する端部係着部を備えた構成を有している。
【0017】
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)一方の係着側面部の両端部が延設側面部に固定されると共に、他方の係着側面部の両端部が延設側面部に係着用代部と端部係着部で係着され、畳表部の各角部において各側面部は互いに固定される。これにより、畳表部は畳床部に嵌まるように覆設固定されるので、係着側面部の全幅に係着部を設けなくても畳表部のずれを防止でき、係着側面部に小幅の係着部を設けるだけで確実に固定できる。また、小幅の係着部でよいので係着部の脱着が容易で、畳表部の取り付け及び取り外しが容易である。
(2)他方の係着側面部の内面の両端部に端部係着部を備えているので、取り付け時には予め端部係着部を係着用代部から外しておき、畳表部を畳床部に覆設した後で端部係着部を係着すれば取り付け作業が容易であり、取り外し時には端部係着部を外してから畳表部を畳床部から取り外せば取り外し作業が容易である。
【0018】
ここで、一方の係着側面部の両端部と延設側面部との固定手段としては融着や接着、縫着等が用いられる。この場合、延設側面部や係着側面部の端部、例えば下側側面部の端部に固定用代部を延設し、該固定用代部と係着側面部や延設側面部の裏面とを上記固定手段で固定することにより強固に固定できる。
また、係着用代部には端部係着部が係着する端部被係着部が配設される。端部係着部や端部被係着部としては上述した係着部や被係着部と同様のものが用いられる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明の畳によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)畳表部が畳床部に対して脱着自在なので、畳表部を畳床部から取り外して洗浄でき、又は日干しして乾燥や殺菌等をでき、常に清潔に保つことができ異臭の発生を防止でき、また、畳表部は漬け置き洗いが可能で、油分等の汚れも確実に落とすことができる衛生性に優れた畳を提供することができる。
(2)畳表部は、上面部と側面部で畳床部の上面と側面を覆って側面部内面の係着部で係着しているだけなので、容易に取り付け及び取り外すことができ、畳表部の洗浄、日干し等を容易にできる他、畳表部の交換作業を業者によらずにできる使用性に優れた畳を提供することができる。
(3)畳表支持部に畳表が貼着等で積層され固定されているので、畳表に皺や型崩れが生じるのを防止でき、特に、畳表の上側上面部全体を畳表支持部の下側上面部に固定すれば、畳表に皺や変形が生じるのを確実に防止でき、新品と同等の美しさを長期間保つことができる外観に優れた畳を提供することができる。
(4)畳表支持部を備えたことにより、畳表に皺や型崩れが生じ難くなると共に、畳表部の取り扱い時に湾曲したり折れ曲がったりし難いため取り付け及び取り外し作業を円滑に行うことができる取り扱い性に優れた畳を提供することができる。
(5)畳表部の作製時において、畳表支持部の下側側面部の内面に面ファスナー等の係着部を貼着等で固定できるので、柔軟な畳表の裏面に直接面ファスナー等を固定する場合に比べ、固定作業が容易で、且つ強固に固定でき、作製作業の労力を低減できる作製作業性に優れた畳を提供することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)畳表部の延設側面部が上面部に対して屈曲部で略直角に折り曲げられているので、延設側面部により畳床部の側部を保持して畳表部がその横糸状物に平行な方向にずれるのを防止でき、また係着側面部を畳床部の側面に係着することにより畳表部が横糸状物に直交する方向にずれるのを防止でき外観に優れた畳を提供することができる。
(2)畳表部の横糸状物に直交する2辺に延設部を形成しているので、延設側面部が簡単に外側に広がることはなく常に畳床部の側面に沿うため、畳表部のずれを確実に防止できると共に、畳を床等に敷設する際に延設側面部が広がって隣接する畳に引っ掛かることなく敷設作業を円滑にできる敷設作業性に優れた畳を提供することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、
(1)畳表部の各角部において各側面部は互いに固定され、畳表部は畳床部に嵌るように覆設固定されるので、係着側面部の全幅に係着部を設けなくても畳表部のずれを防止でき、係着側面部に小幅の係着部を設けるだけで確実に固定できる畳を提供することができる。
(2)小幅の係着部でよいので係着部の脱着が容易で、畳表部の取り付け及び取り外しが容易である脱着作業性に優れた畳を提供することができる。
(3)他方の係着側面部の内面の両端部に端部係着部を備えているので、取り付け時には予め端部係着部を係着用代部から外しておき、畳表部を畳床部に覆設した後で端部係着部を係着すれば取り付け作業が容易であり、取り外し時には端部係着部を外してから畳表部を畳床部から取り外せば取り外し作業が容易である簡易性に優れた畳を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図4を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における畳の畳床部から畳表部を取り外した状態を示す要部斜視図であり、図2は図1を180°回転させた状態を示す要部斜視図であり、図3は畳表部の分解斜視図であり、図4(a)は畳床部に畳表部を取り付ける動作を示す要部斜視図であり、図4(b)は畳床部に畳表部を取り付けた状態を示す要部斜視図であり、図5(a)は図4(b)のA−B−C線の組合せ断面図であり、図5(b)は畳表部の表面の要部拡大図である。
図中、1は本実施の形態1における畳、2は畳床部、3は畳表部、4は畳床部2の上面を覆う畳表部3の上面部、4aは上面部4の畳表の横糸状物に直交する2辺に形成された屈曲部、6は屈曲部4aに延設された延設側面部、7,7′は上面部4の畳表の横糸状物に平行な2辺に形成された係着側面部、8,8′は係着側面部7,7′の内面の下部に接着や縫着で貼着固定された面ファスナーや粘着体、フック、ボタン等からなる係着部、9aは係着側面部7の両端部内面に貼着等で固定され後述の端部被係着部9bに脱着自在に係着する前述の面ファスナー等からなる端部係着部、9bは延設側面部6の一端部に形設された係着用代部9cに貼着等で固定された端部被係着部である。また図2及び図3に示す9dは延設側面部6の係着用代部9cの反対側の端部に形設され係着側面部7′の端部の内面に融着や接着、縫着等で固定された固定用代部であり、延設側面部6と係着側面部7′は固定用代部9dにより角部で互いに固定されている。10は後述の被覆部10bにより全面が被覆された発泡体10aからなる畳床本体、11,11′は畳床本体10の側面に貼着等で固定され係着部8,8′が係着する前記面ファスナー等からなる被係着部、12は畳床本体10の上面の被覆部10bに敷設された床仕上げ材である。なおXは畳表部3の横糸状物に沿った方向を示す。
【0023】
図3において、3aは畳表部3の畳表、5は畳表部3の畳表3aが覆設される畳表支持部である。畳表支持部5は、合成樹脂製のシートや板状物、ハニカム材等により形成された矩形状の下側上面部5aとその各辺で折り曲げられた又はヒンジ状に形成又は接着された下側側面部5cとで形成されている。畳表3aは天然のイグサ或いは熱可塑性樹脂製の糸状物からなるいわゆる模造イグサを編んで形成された上側上面部5bとその4辺に延設された上側側面部5dとで形成され、畳表支持部5の下側上面部5aの上面には同形の畳表3aの上側上面部5bがその全面に渡って貼着され、下側側面部5cの外周面には上側側面部5dが貼着されている。
なお、畳表3aの上側側面部5dの下端部5d′は、粘着テープ等を貼着したり横糸状物や縦糸を互いに融着又は接着したりして畳表部3を繰り返し脱着しても解れないように形成されている。また、畳表3aの各上側側面部5dの両端部には下方に向かって内側に傾斜した傾斜端部5eが形成されると共に、畳表支持部5の各下側側面部5cの両端部(係着用代部9cや固定用代部9dが形設されている場合はそれを除いた端部)には同様に傾斜した傾斜端部5fが形成されている。傾斜端部5e,5fの作用は後述する。
図5(a)において、10aはポリスチレンフォーム等の発泡体、10bはシート状防虫材等からなる被覆部、13は畳床本体10の側面に形成された傾斜部である。畳床本体10の側面には下方に向かって内側に傾斜した傾斜部13が形成されている。傾斜部13の傾斜角度は係着部8や被係着部11の厚みにもよるが、3°〜10°に設定されている。また、上述の傾斜端部5e,5f(図3参照)は傾斜部13に合わせた傾斜角度で形成されている。これにより、係着部8や被係着部11、或いは下側側面部5cや上側側面部5dの厚み等で畳1の側面が膨出するのを防ぎ、且つ上側側面部5dや下側側面部5cの端部が余って皺等が生じ厚みが増し膨れるのを防ぎ、畳1を床等に敷設した際に膨出した部分や厚みが増した部分により寸法誤差が生じて敷設できなくなったり隣り合う畳1の間がきつく歪みが生じたりすることなく、畳1を整然と敷設することができる。
また、図5(b)において、3b,3cは畳表3aの横糸状物と縦糸である。
【0024】
以上のように構成された本実施の形態1における畳1について、以下その取り付け取り外し動作を図1乃至図4を用いて説明する。
畳表部3を畳床部2に取り付けるには、まず係着側面部7′を畳床部2の一辺に係止し、係着側面部7′の係着部8′(図2参照)を被係着部11′に係着する。次に上面部4を畳床部2の上面に重ねるように畳表部3の係着側面部7側を下方に回動させ、畳床部3の他辺に合わせる。次に係着側面部7の係着部8を被係着部11に係着すると共に、端部係着部9aを端部被係着部9bに係着する。
畳表部3を畳床部2から取り外すには、まず端部係着部9aを端部被係着部9bから外すと共に、係着部8を被係着部11から外す。次に畳表部3の係着側面部7側を上方に回動させ、係着側面部7′の係着部8′を被係着部11′から外す。
【0025】
なお、本実施の形態1では縦約1m、横約1m、厚み約5cmの畳について説明しているが、縦約2m、横約1mの1畳用の畳であってもよく、或いは厚み1cm〜2cmの薄畳であってもよい。
【0026】
以上のように本実施の形態1における畳1は構成されているので、以下のような作用を有する。
(1)畳表部3は、上面部4と延設側面部6と係着側面部7,7′で畳床部2の上面と側面を覆って係着側面部7,7′の内面の係着部8,8′と畳床部2の側面の被係着部11,11′で係着しているだけなので、容易に畳床部2に取り付け及び取り外しができ、畳表部3を洗浄、日干しして乾燥や殺菌、又は漬け置き洗い等でき、また交換作業も容易にでき、常に畳表部3を清潔に保つことができる。
(2)畳表部3を係着部8,8′により畳床部2の被係着部11,11′に係着しているので縫着部分がなく、畳にこぼした液体等が縫糸に染み込むことがないため、従来問題であった縫糸に雑菌が繁殖し不衛生になったり異臭を放ったりすることがなく衛生的に使用できる。
(3)畳表部3の畳表支持部5に畳表3aの上側上面部5b及び上側側面部5dが貼着等で固定されているので、上側上面部5b及び上側側面部5dに皺や型崩れが生じるのを防止でき、新品と同等の美しさを長期間保つことができる。特に、畳表支持部5の下側上面部5aの全面に接着材を塗布する等して、畳表3aの上側上面部5b全体を下側上面部5aに固定すれば、上側上面部5bに皺や変形が生じるのを確実に防止できる。また、畳表支持部5を備えたことにより、畳表部3の取り扱い時に湾曲したりねじれたりし難いため取り付け及び取り外し作業を円滑に行うことができ取り扱い性に優れる。
(4)畳表部3の作製時において、畳表支持部5の下側側面部5cの内面や係着用代部9cに面ファスナー等の係着部8や端部係着部9a、端部被係着部9bを貼着等で固定できるので、従来のように柔軟な畳表の裏面に直接面ファスナー等を固定する場合に比べ、固定作業が容易で、且つ強固に固定することができ、作製作業の労力を低減できる。
(5)係着側面部7′の両端部が延設側面部6,6の端部に固定用代部9dで固定され、係着側面部7の両端部が延設側面部6,6の端部に端部係着部9aと端部被係着部9bで係着固定されているので、畳表部3を畳床部2に嵌るように覆設固定することができ、畳表部3が畳床部2に対してずれるのを防止できる。
(6)また、係着側面部7,7′の全幅に係着部8,8′を設けなくてもずれることがなく、係着側面部7,7′に小幅の係着部8,8′を設けるだけで確実に固定でき、小幅の係着部8,8′や被係着部11,11′でよいので係着部8,8′の脱着が容易になり、畳表部3の取り付け及び取り外しが容易になって脱着作業性に優れる。さらに、延設側面部5が屈曲部4aで折り曲げられているので、畳表部3が横糸状物3bに平行な方向にずれるのを防止できると共に、延設側面部5は簡単に外側に広がることはなく、畳1を床等に敷設する際に延設側面部5が広がって隣接する畳に引っ掛かることなく敷設作業を円滑にできる。
(7)係着側面部7の内面の両端部に端部係着部9aを備えているので、取り付け時には予め端部係着部9aを端部被係着部9bから外しておき、畳表部3を畳床部2に覆設した後で端部係着部9aを端部被係着部9bに係着すれば取り付け作業が容易であり、取り外し時には端部係着部9aを外してから畳表部3を畳床部2から取り外せば取り外し作業が容易である。
(8)畳表部3の上側上面部5b及び上側側面部5dが熱可塑性樹脂の横糸状物3bと縦糸3cを密に編んで形成されることで、水分が横糸状物3bの内部まで浸透せず汚れがつき難いと共に拭くだけで汚れが取れ易く、また容易に洗浄でき常に清潔に保つことができる。また、洗浄及び乾燥を繰り返しても劣化し難く、長期間使用できる。
(9)畳表部3が、熱可塑性樹脂製の横糸状物3bと合成繊維からなる縦糸3cにより形成された畳表3aと合成樹脂製板状体等で形成された畳表支持部5とで構成されると共に、畳床部2がシート状防虫材やビニルシート等の被覆部10bで被覆された合成樹脂の発泡体10aからなるので、ダニやカビが全く繁殖せず常に清潔に保つことができ、幼児やアレルギー体質の人が居る部屋でも安心して使用できる。
(10)床仕上げ材12として木目調のビニル床シート等を用い、部屋等の床に複数の畳床部2のみを敷設するだけで、板の間風の部屋とすることができると共に、該畳床部2に畳表部3を覆設すれば畳敷きの部屋とすることができ、板の間風等と畳敷きとを簡単に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように、本発明は畳床部とそれに脱着自在に覆設される畳表部とを備えた畳に関し、特に本発明によれば、畳表部の畳床部への取り付け及び取り外しを容易にでき、取り外して洗浄、日干し等、或いは交換が容易であると共に衛生性に優れ、更に作製時の労力を低減でき、且つ畳表部のずれや皺、変形等を防止できる畳を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態1における畳の畳床部から畳表部を取り外した状態を示す要部斜視図
【図2】図1を180°回転させた状態を示す要部斜視図
【図3】畳表部の分解斜視図
【図4】(a)畳床部に畳表部を取り付ける動作を示す要部斜視図(b)畳床部に畳表部を取り付けた状態を示す要部斜視図
【図5】(a)図3のA−B−C線の組合せ断面図(b)畳表の表面の要部拡大図
【符号の説明】
【0029】
1 畳
2 畳床部
3 畳表部
3a 畳表
3b 横糸状物
3c 縦糸
4 上面部
4a 屈曲部
5 畳表支持部
5a 下側上面部
5b 上側上面部
5c 下側側面部
5d 上側側面部
5d′ 下端部
5e,5f 傾斜端部
6 延設側面部
7,7′ 係着側面部
8,8′ 係着部
9a 端部係着部
9b 端部被係着部
9c 係着用代部
9d 固定用代部
10 畳床本体
10a 発泡体
10b 被覆部
11,11′ 被係着部
12 床仕上げ材
13 傾斜部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳床部と、前記畳床部に脱着自在に覆設される畳表部と、を備え、
前記畳表部が、
a.平板状の下側上面部と、前記下側上面部の側部に形設された下側側面部と、を有する畳表支持部と、
b.前記下側上面部の上面に積層され固定される上側上面部と、前記上側上面部の4辺に延設され前記下側側面部の外周面に積層され固定される上側側面部と、を有する畳表と、
c.前記下側側面部の内面の所定部に配設され前記畳床部の側面に脱着自在に係着する係着部と、
を備えていることを特徴とする畳。
【請求項2】
前記畳表部が、上面部と、前記上面部の4辺の内、前記畳表の横糸状物に直交する2辺に前記上面部と一体に形成され前記2辺で下方に向けて略直角に折り曲げられた屈曲部と、前記屈曲部から延設された延設側面部と、前記横糸状物に平行な2辺に前記上面部と一体に形成され内面に前記係着部が配設された係着側面部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の畳。
【請求項3】
前記畳表部の前記係着側面部の内、一方の前記係着側面部はその両端部で前記延設側面部に固定されると共に、他方の前記係着側面部はその内面の両端部に前記延設側面部の端部に延設された係着用代部に脱着自在に係着する端部係着部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の畳。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−32082(P2007−32082A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216560(P2005−216560)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(506336289)有限会社フォーマックス (1)
【Fターム(参考)】