説明

疎水性、疎油性および自己洗浄性の表面を与える紡織繊維および織物のための仕上げ剤

本発明は、撥水性、撥油性および/または自己洗浄性等の特有の特性を得るために繊維および材料を被覆する方法に関する。前記特有の特性は、繊維または材料の前処理およびプレポリマーおよびナノ粒子によるその後の被覆によって得られる。プレポリマーは、炭化水素基によるかフッ化炭素基によって一部置換されている。ナノ粒子は、それ自体が炭化水素またはフッ化炭素で処理した表面を有できる。プレポリマーは、UVから可視の波長の光を照射することによって固定および硬化する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、紡織繊維および織物の仕上げ剤配合物および仕上げ剤、ならびにそのような機能層を有する紡織繊維および織物を仕上げる方法に関する。同様に、本発明は、本発明による方法に基づいて処理したまたは得られた本発明による仕上げ剤を有する紡織繊維および織物に関する。
【0002】
繊維加工仕上げ産業で現在使用されている仕上げ剤配合物および方法は、主として仕上げ剤配合物を固定させることを対象としており、したがって、120℃を超える温度で恒久的に効果を生じる。例えば、これらには布地の撥水性表面処理および皺になりにくい表面処理、ならびに難燃性および軟化仕上げ剤の固定が含まれる。使用される化学物質を塗布する所定の反応原理を考慮すると、140℃と170℃の間の固定温度が絶対的に必要である。
【0003】
このやり方に対する重大な不都合は、反応結合体の高いエネルギー消費と効果が特定される化学物質の部分的に不適切な熱安定性、ならびに、さらなる欠点として相当な排気問題をもたらす高温におけるそれらの揮発性(蒸発および昇華)にある。仕上げ剤成分の官能性はそれらを熱負荷にさらす間にしばしば失われるため、上記の不都合は、医療および保健の分野に対して現在要求されている官能的仕上げ剤との関連で今日特に重要になりつつある。
【0004】
さらに、プロセス工学技術は、今日120℃〜180℃の高い固定温度を対象としており、それに伴って品物の交換により必要となる固定結合体に対して必要な加熱および冷却段階のための操作上の問題が生じる。この結果、品物を品揃えする官能をもった機械の稼働率は40〜70%に過ぎない。
【0005】
これらの記述は、今日の繊維工業により使用されている水性の含浸液およびコーティング液を考慮に入れると、効果をもたらす仕上げ剤配合物の恒久的な固定が、含浸された織物を乾燥する条件下、すなわち120℃より低い温度で既に可能であるようにするために、新たな仕上げ剤配合物およびプロセスが必要であることを示している。
【0006】
(放射線硬化コーティング)
UV範囲(100〜380nm)内および可視範囲(380nm〜780nm)内の電磁放射線は、室温(20℃)で、ある一定のモノマーおよびオリゴマーを重合することを可能にする。このためには、増感剤、開始剤、共開始剤および硬化促進剤が必要であり得る。既知の放射線硬化性モノマーおよび/またはオリゴマーとしては、アクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシド、オキセタンおよびビニルエーテルが挙げられる。アクリレートおよび不飽和ポリエステルは、ここでは主としてラジカル反応機構により重合する。エポキシド、オキセタンおよびビニルエーテルは主としてカチオン反応機構をたどる。放射線硬化を構成する化学原理は文献に広範囲にわたって記載されている。
【0007】
放射線硬化モノマーおよび/またはオリゴマーに対する応用の1つの既知の領域としては、歯の充填が挙げられる。非フッ素化アクリレートおよび過フッ素化側鎖を有するアクリレートのモノマー混合をガラス板にコートし、続いてUV硬化することが、Priolaらにより、K.Bellfield,C.Crivello,Eds.,ACS Symposiums Series 847,Photoinitiated Polymerization,American Chemical Society,Washington,2003の中のUV−curing of Fluorinated Systems:Synthesis and Propertiesに最近記載された。
【0008】
インキジェット法を用いて適用するUV硬化性インキを布地に刷り込む方法が、国際公開第01/17780号パンフレットに開示されている。それは、好ましくは75ピコリットルの量を示す滴容量で印刷し、UV光のヘッドを、印刷ヘッドと共にまたはそれら単独で、印刷面上に移動させることができる。
【0009】
1984年の欧州特許出願公開第0120316号明細書は、糸および引き伸ばされたポリマーフィルムの特性がコーティングによってどのように改良できるかを記載している。活性の多官能性モノマーを、大規模な架橋もグラフトも基本的に起こらない方法で使用することが提案されている。これは、被覆された繊維の特性にマイナスの影響を及ぼしたり、うっかり改変することを避ける手助けとなることを意図している。活性モノマーが塗布された後、それらは、乾燥され、加熱または電子線もしくはUV光を照射することによる単一のステップで硬化する。とりわけ、その明細書は、フルオロ有機活性モノマーを、ポリアミドまたはポリエステル繊維をより疎水性および汚れを寄せつけないようにするために、電子線硬化させることを提案している。欧州特許出願公開第0120316号明細書は、その処理が織物、例えば絨毯にも応用できることに言及している一方、その出版物はこれに関する特別な技術的指示も何ら開示していない。
【0010】
それ故、本発明の目的は、仕上げ剤配合物、仕上げ剤、仕上がった紡織繊維および織物ならびに市場で得られる製品および既知の装置に対する不都合とは無関係の紡織繊維および織物を仕上げる方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、とりわけ、現在実施されている高温固定のせいである効果を与える化学物質の一部の損失およびそのエネルギー消費なしで紡織繊維および織物を仕上げるおよび固定することを可能にするタイプの設備技術を提供することである。
【0011】
この目的は、新規な仕上げ剤配合物、新規な仕上げ装置および方法、新規な仕上げ剤、ならびにその新規な仕上げ剤を施した紡織繊維および織物によって達成される。その新規な仕上げ方法と組み合わせて、繊維工業にとっては一部新規であり例外的である特別に選択された組成物により、とりわけ次の事柄を達成することが可能となる:
− モノマーまたはオリゴマーは、100%架橋性である;
− 有機溶媒を使用する必要がなく、その結果、加工および硬化の途中でVOC(揮発性有機炭素)が放出されない;
− 水中のエマルジョン/分散体が可能である;
− 既知の高温の方法よりエネルギー消費が著しく少ない;
− 短い硬化時間;
− 低い熱負荷のため、熱に敏感な基材のコーティングが可能である。
【0012】
新しいタイプの設備技術と併用して、本発明による配合物および方法は、効果を与える化学物質の最低限の損失および大幅に低いエネルギー消費でUVまたは青色光硬化性化学物質で紡織繊維および織物を仕上げること、およびこれらの化学物質を、溶媒または分散相を蒸発させた後、UVまたは青色光硬化によって固定することを可能にする。
【0013】
本発明によれば、繊維工業でこれまで使用されなかった新規な配合物が設備およびプロセス技術と共に提供され、その結果、所望の仕上げ効果を得ることと平行して、繊維工業では一般的な高温の固定(140〜180℃)を取り除き、それによって仕上げ工程に必要なエネルギーを40〜70%低下することが可能となる。さらに、この技術は、固定プロセスの間の効果発揮化学物質の望ましくない蒸発、ならびにその結果必要となる高額な廃棄エア浄化系の投資を排除する。
【0014】
仕上げるべき紡織繊維または織物は、天然および/または合成繊維からなる。事前の洗浄段階の後、それらは好ましくはプレポリマーを含有する溶液を含浸させる。その構成は、乾燥した後に布地物品に反応性基を有するプライマー層を形成させる。プライマー層に適するプレポリマーとしては、架橋性のアクリレート、ポリアミド、ウレタン、タンニンおよびリグニンが挙げられる。繊維および織物に塗布されるか繊維および織物上に生じるプライマー層は、好ましくは、高含量の遊離フェノール、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸または官能的に類似の基を示す。プライマー層を塗布する代わりに、後者は、また、ベース繊維を酸、塩基または放電処理することによって発生させることもできる。
【0015】
布地物品表面の望ましい官能化を達成するために必要な仕上げ剤配合物を次に塗布する。この配合物は、官能化および非官能化コモノマーおよび/または溶媒に溶解するか水に乳化および/または分散したその表面を同様に官能化できるナノ粒子からなる。布地物品表面を官能化する、成分含有水性系の場合、その配合物は、界面活性化合物を好ましくは含み、その構造により、該化合物は固定化反応中に界面活性剤としての官能を失い、その結果、好ましいその官能基が固定化され相指向性となり布地物品上に支持される。
【0016】
溶媒または分散剤は、60〜140℃で行われる主に熱による手順ステップにおいて蒸発させる。この手順ステップの間に、布地物品を官能化する化学物質は、自己組織化により布地物品を官能化するために必要な構造を形成する。完全に形成される構造の化学的固定は、使用される化学物質に対する異なる反応原理および当面の設備技術の不足のため、この際140〜180℃で実施される熱処理を提供する今日の繊維工業で普通に使用される手順とは対照的に、UVまたは青色光チャネル中で起こる。
【0017】
布地物品を官能化するために必要な仕上げ剤配合物の成分は、所望の効果を反映するように既に特異的に官能化されている反応性モノマーまたはプレポリマー、および/または同様にまた官能化しおよび/または反応性基を含有できるナノ粒子である。さらなる構成材料として、該仕上げ液は、界面活性剤および最も単純な場合は水である分散剤を含む。
【0018】
官能化モノマーまたはプレポリマーは、官能化される布地物品の対象用途に基づいて選択される。例えば、布地物品は、アクリレート、エポキシド、オキセタン、ビニルエーテルおよびそれらの混合物にそれらの反応性基(以後「RG」と称する)に基づいて配置すべき対応する長さの炭化水素鎖または過フッ化炭素鎖を有する反応性モノマー化合物を用いて疎水性または疎油性にする。
【0019】
試験により、酸素はラジカル硬化を崩壊する作用を有しており、保護ガスなしでの硬化を含む方法は粘着性の生成物を生じることが示されているため、ラジカル反応機構に基づいて重合するアクリレートおよび不飽和ポリエステルのUVまたは光硬化の間は、硬化は好ましくは保護ガス雰囲気(例えば、窒素、COまたはアルゴン)の下で行う。
【0020】
本発明で使用できるUV放射器は、例えば、ドイツGrafelfing、Dr.Honle AG、UV−Technologie製のUVAPRINT装置であり得る。そのメーカーによると、照射器の出力は、これらの装置においてはW/cmアーク長で普通は与えられる。後者は、好ましい装置において、最低30W/cmおよび最高240W/cm、最も好ましくは100W/cmを示す。
【0021】
布地物品に対する所望の対象用途によって、ナノ粒子としては、無機および有機ナノ粒子の両方を使用できる。代表的な無機ナノ粒子としては、二酸化ケイ素、バナジウム、鉄、タングステン、チタン、アルミニウムまたは亜鉛酸化物などの金属酸化物、炭素、ゼオライト等が挙げられる。代表的な有機ナノ粒子としては、好ましい実施形態においては錯化した形の金属原子を含有する対象用途に適応した、変性デンドリマー、グルカンまたはシクロデキストリンが挙げられる。
【0022】
ナノ粒子は、表面変性できる。さらなる架橋を受けることのない代表的な官能変性基としては、C〜C20の炭化水素鎖およびC〜C12の過フッ化炭素鎖、ならびにアクリルまたはエポキシ基等の共重合可能な基が挙げられる。代表的な架橋変性基としては、末端OHまたはNH基を含有するエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドブロック重合体またはポリアミド、あるいは末端のアクリルまたはエポキシ基を含有するシラン類が挙げられる。
【0023】
疎水性層および疎油性層のための仕上げ剤配合物の場合、効果を生ずる基は、下記のモノマー(RF)に対する基に相当する。モノマー単位は、一般に「RF」と呼ばれる1〜3個の官能基、ならびにいくつかの重合可能な基(RG)の両方を表すことができる。
【0024】
疎水および疎油特性を与えるために採用される代表的なモノマーの種類およびモノマーとしては:
(RG−(CH−(RF
(RG−(CH−N−(RF
(RG−(CH−Si−(RF
(式中、nは、好ましくは1〜3であり、mは、好ましくは0〜5である)
が挙げられる。
【0025】
疎水および疎油層の場合に効果を発揮する基(RF)は、C〜C20の鎖長の炭化水素および/またはC〜C12の鎖長の過フッ化炭化水素[sic]鎖である。
【0026】
界面活性剤は、HLB値が、3と16の間、好ましくは8と12の間にある反応性基を含有するモノマーおよび/またはポリマーを含む。
【0027】
代表的な界面活性剤としては、ソルビタンラウレートまたはステアレート、モノ−およびジグリセリド、エトキシル化および/またはプロポキシル化C〜C20化合物または10〜30個のEO単位を有するビニルまたはアリルエーテルアルコキシレートが挙げられ、それらは圧倒的に求核反応性の基、例えば、アミノおよびヒドロキシル官能基と付加または縮合生成物を形成する。
【0028】
健康仕上げ剤の場合、健康物質(ゲストまたは薬物)を組み込むためのホスト系は、熱的およびUVまたは青色光硬化性プレポリマーまたはモノマーあるいはUVまたは青色光硬化性プレポリマーまたはモノマーならびに少なくとも1つのスペーサー機能を有する成分および界面活性剤からなる。この方法で構造化されたホスト系は、少なくとも1つのゲスト物質を含有する水性エマルジョンによって膨潤させることができ、エマルジョンに含まれている薬物を吸着し、再び放出できる。
【0029】
UVおよび青色光硬化性成分は、本質的に疎水性仕上げ剤用として記載したものと同じ化合物を含む。同じことが界面活性剤について言える。健康層の膨張を決定する助けとなるスペーサー物質は、一般的な型:RG−RS−RGをしている。RGは、UVもしくは青色光硬化反応性基、または該反応性基と架橋する官能基であり、RSは、該スペーサー物質を特徴付ける残基、例えば、ポリエーテル、ポリエステルまたはビニログ鎖:
【0030】
【化1】

である。スペーサー物質の親水性または疎水性を決定する残基RSの鎖長は、nおよびxによって定められ、ここでnは、好ましくは5を超えて30未満であり、xは、好ましくは2と4の間にある。
【実施例】
【0031】
(実施例1:ポリアミド織物への親水性および疎油性特性の付与)
350g/mの平方メートル重量を有する予め洗浄し、染色したポリアミド織物に、手順の第1ステップでプライマー層を形成する物質を含浸させる。プライマー物質として部分鹸化した酢酸ビニルとビニルピロリドンとからなるコポリマーを使用する。その含浸させ乾燥した織物に、第2ステップで、疎水性および疎油性特性を付与する水性エマルジョンをテンターフレームフーラード上で含浸させる。そのエマルジョンの製造および組成について以下に記す。
このエマルジョンは、過フッ素化アクリレートを含有し、次の構成材料で製造する:
【0032】
【表1】

【0033】
Emulsogen R109は、Clariant社製の10個のEOを有するビニル−エーテル−アルコキシレートである。
Laromer BDDAは、BASF社製のブタンジオールジアクリレートである。
水およびEmulsogen R109を一緒に十分混合する。この混合物に、Laromer BDDA、2−(ペルフルオロデシル)エチル−メタクリレートおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンの均一な溶液を少量ずつ加える。
【0034】
テンターフレームフーラード上で、布地物品の乾燥重量に対して80%の塗布液を含浸させた織物を、続いて120℃で2分間乾燥し、乾燥後、UVチャネルを通過させて疎水性および疎油性特性を付与する層を固定させる。UVチャネル中の反応時間は、5.5kW/mの特定の放射出力で2.5秒である。UVチャネルは、一方では望ましくない酸化作用を避けるため、他方ではオゾンの形成を防ぐために、窒素またはCOもしくはアルゴン等のその他の不活性ガスでフラッシングする。
【0035】
この方法で製造した織物仕上げ剤は、一方では、今日実施されている固定方法と比較してエネルギーコストが大幅に低減されることで区別され、他方では、卓越した使用特性、例えば137〜147°の接触角および5の水スプレーノートが得られる。
【0036】
(実施例2:混合織物への疎水性および疎油性特性の付与)
94%のナイロン66および6%のエラスタンからなり、280g/mの送りのメートル重量を有する溶剤で予め洗浄した混合織物を、染色(4時間の染色工程の一部として)した後乾燥し、プライマー層を施した。そのプライマー物質は、リグニン製品であり、0.5%水溶液として布地基材に塗布する。その織物を130℃で90秒間乾燥した後、疎水性または疎油性特性を付与するエマルジョンを塗布する。その配合物の処方およびその製造について以下に記す。エマルジョンはC18アクリレートを含有し、以下の構成材料で製造する:
【0037】
【表2】

【0038】
OTA480は、UCB社製のプロポキシル化トリメチロールプロパン−トリアクリレートである。
水とEmulsogen R109とを共に十分に混合する。この混合物に、OTA480、メタクリル酸オクタデシルエステルおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンの均一な溶液を少量ずつ加える。
【0039】
仕上げ液を72%被覆する塗布に続いて、布地物品をテンターフレーム内に固定し、120℃で90秒間乾燥する。疎水性および疎油性の特性を付与するために必要なナノスケールの構造(隣接するガス相に対する脂肪族炭化水素および/または過フッ化炭化水素の配向)は、織物が乾燥した後に完全に形成されるため、その織物は中間の乾燥した空間に保存できる。乾燥した高温の織物(120〜140℃)をエネルギーと関係する理由もあって縮合段階(150〜180℃)に直接導入する現行の通常の手順とは対照的に、その層は機能層の製造とは無関係にUVで固定する。固定のためには5.5kW/mの放射出力で、0.5〜10秒の反応時間が必要である。この仕上げ剤で得られる接触角は128〜132°であり、また、5回の洗濯の後でさえ5のスプレーノートを示す。
【0040】
(実施例3:自己洗浄特性を有するポリアミド織物への疎水性および疎油性特性の付与)
350g/mの平方メートル重量を有する予め洗浄した染色ポリアミド織物を、色堅ろう度を改良するために手順の第2ステップでタンニンの含浸にかけた。その含浸し乾燥した織物に、テンターフレームフーラード上の第2ステップで水性の疎水性および疎油性特性を付与する自己洗浄性エマルジョンを含浸させる。そのエマルジョンの製造および組成について以下に記載する。
【0041】
そのエマルジョンは、過フッ化アクリレートおよび過フッ化ナノ粒子を含有し、以下の構成材料で製造される:
【0042】
【表3】

【0043】
Emulsogen RAL307は、Clariant社製の30個のEOを含むアリル−エーテル−アルコキシレートである。
SR350は、Sartomer社製のトリメチロールプロパン−トリメタクリレートである。
【0044】
水、Emulsogen RAL307およびナノ粒子を共に十分に混合する。この混合物に、SR350、2−(ペルフルオロデシル)エチル−メタクリレートおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンの均一な溶液を少量ずつ加える。
【0045】
テンターフレームフーラード上で、布地物品の乾燥重量に対して80%の塗布液を含浸させた織物を、続いて120℃で2分間乾燥し、乾燥後、UVチャネルを通過させて疎水性および疎油性特性を付与する層を固定させる。UVチャネル中の反応時間は、5.5kW/mの特定の放射出力で2.5秒である。UVチャネルは、一方では望ましくない酸化作用を避けるため、他方ではオゾンの形成を防ぐために、窒素でフラッシングできる。
【0046】
この方法で製造した織物仕上げ剤は、一方では、今日実施されている固定方法と比較してエネルギーコストが大幅に低減されることで区別され、他方では、卓越した使用特性、例えば150°の接触角および5の水スプレーノートが得られる。
【0047】
(実施例4:エポキシドモノマーおよびオキセタンモノマー、ならびに過フッ素化残基を有するエポキシドモノマーを含有するUV硬化性仕上げ剤配合物)
【0048】
【表4】

【0049】
UVR6105は、Dow社により販売されているエポキシ樹脂である。UVR6000は、Dow社からのオキセタン樹脂を指す。
UVI6992は、Dow社から販売されているトリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩からなる光開始剤の名称である。
Span 60は、Uniqema社製のソルビタンモノステアレートである。
Montanox 60DFは、TensoChema AG社製のソルビタンモノステアレートを指す。
【0050】
第1ステップで、Span 60とMontanox 60DFを共に混合する。予め製造したUVR6105、UVR600、3−(1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルオキシ)−1,2−エポキシプロパンおよびUVI6992の混合物を、次に十分にブレンドしながら加える。3−(1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルオキシ)−1,2−エポキシプロパンは、ここではエタノール中の溶液として存在する。得られた混合物に水を少量ずつ十分にブレンドしながら加える。
【0051】
(実施例5:エポキシドモノマーおよびC18残基を有するエポキシドモノマーを含有するUV硬化性仕上げ剤配合物)
【0052】
【表5】

【0053】
Montane 80VGは、TensoChema AG社製のソルビタンモノオレエートを指す。
Tween 80は、Fluka社製のソルビタンモノオレエートを指す。
【0054】
第1ステップでMontane 80VGおよびTween 80を一緒に混合する。予め製造しておいたUVR6105、1,2−オクタデセンオキシド、UVI6992およびエタノールの混合物を、次に十分にブレンドしながら加える。得られた混合物に水を少量ずつ十分にブレンドしながら加える。
【0055】
(実施例6:エポキシドモノマーおよびC18残基を有するエポキシドモノマーを含有するUV硬化性仕上げ剤配合物)
【0056】
【表6】

【0057】
OXT−121は、東亞合成により販売されているオキセタン樹脂である。
IRGACURE(登録商標)250は、Ciba社により販売されているヨードニウム塩、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヨードニウム−ヘキサフルオロホスフェートからなるカチオン性光開始剤を指す。
Synperonic PE/F108は、Uniqema社製のビニルエーテルアルコキシレート(約14,000g/mol)である。
【0058】
Synperonic PE/F108と予め製造しておいたOXT−121、UVR6000、3−(ペルフルオロ−n−デシル)−1,2−プロペンオキシドおよびIRGACURE 250の混合物を一緒に混合する。得られた混合物に水を少量ずつ十分にブレンドしながら加える。
【0059】
(実施例7:オキセタンモノマーおよびC18残基を有するエポキシドモノマーを含有するUVおよび青色光硬化性仕上げ剤配合物)
【0060】
【表7】

【0061】
Synperonic PE/F108と予め製造しておいたOXT−121、1,2−オクタデセンオキシドおよびIRGACURE 250の混合物を一緒に混合する。得られた混合物に水を少量ずつ十分にブレンドしながら加える。
【0062】
(実施例8:ポリアミド織物用の健康仕上げ剤)
予め洗浄し、染色した180g/mの平方メートル重量を有するポリアミドの織物に、色堅ろう度を改良するために5g/lのRewin RT(BEZEMA AG)の溶液を含浸させる。その前処理し、乾燥した織物に、第2ステップで、水性健康エマルジョンをテンターフレームフーラード上で含浸させる。そのエマルジョンの製造および組成について以下で説明する。
【0063】
エマルジョンは次の構成材料で製造する:
【0064】
【表8】

【0065】
Superonic PE/F108は、Unicema社製のビニルエーテルアルコキシレート(約14,000g/mol)である。
UVR6105は、Dow社により販売されているエポキシ樹脂である。
【0066】
水とSuperonic PE/F108とを互いに十分に混合する。OTA480、UVR6105、Pluronic PE6200、エチルヒドロキシエチルセルロース、ソルビタンモノラウレートおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンの混合物を少しずつこの混合物に加える。
【0067】
テンターフレームフーラード上で布地物品の乾燥重量に対して80%の液体塗布で含浸させた織物を、その後120℃で2分間乾燥し、乾燥後UVチャネルを通して健康層を固定させる。UVチャネル中の反応時間は、5.5kW/mの特定の放射出力で2.5秒間である。UVチャネルは、一方では望ましくない酸化作用を避けるため、他方ではオゾンの形成を抑えるために、窒素でフラッシングできる。
【0068】
このようにして製造された織物仕上げ剤は、優れたホスト特性によって区別され、言い換えると、ホスト層の良好な膨張性能および親油性物質に対する高い親和性を特徴とする。記載されている方法で組み立てられた層は、ホスト層1グラム当り23mgのイソオクタノール(治療および/または化粧用活性物質のモデル物質)という特定物質の吸収を示す。もう1つの基本的なホスト特性の特徴は、それぞれの衣料品が洗濯された後のホスト層の再装填である。当該仕上げ層の再装填能は、5回の洗濯の後にイソオクタノールに対してまだ最初の吸着能力の82%を示す。仕上げ層の官能基に関する特性に加えて、通常は行われる高温の固定が省かれるために、それらが高い費用効率で製造されることに言及する必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化したモノマーおよび/またはプレポリマーおよび/または官能化したおよび/または反応性基を有するナノ粒子、少なくとも1つの界面活性剤および少なくとも1つの分散剤および/または溶媒を含む紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造するための仕上げ剤配合物であって、官能化したモノマーおよび/またはプレポリマーおよび/または官能化したおよび/または反応性基を有するナノ粒子が、100nmから400nmのUV範囲、または400nmから800nmの可視範囲の光によって重合させることができる仕上げ剤配合物。
【請求項2】
官能化したモノマーおよび/またはプレポリマーが、遊離のアクリレート、エポキシド、オキセタンおよび/またはビニルエーテル基を含むことを特徴とする、請求項1に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項3】
モノマーにおける、効果を発揮する基が、1〜3個の官能基(RF)および1個または複数の重合可能な基(RG)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項4】
モノマーが、式:
(RG−(CH−(RF;または
(RG−(CH−N−(RF;または
(RG−(CH−Si−(RF
(式中、nは、好ましくは1〜3であり、mは、好ましくは0〜5である)
を有する群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項5】
効果を発揮する基(RF)が、C〜C20の鎖長の炭化水素および/またはフッ化炭素、好ましくはC〜C12の鎖長の過フッ化炭化水素を含むことを特徴とする、請求項4に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項6】
少なくとも1つの界面活性剤が、HLB値が3と16、好ましくは8と12の間のモノマーおよび/またはポリマーを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項7】
少なくとも1つの界面活性剤が、ソルビタンラウレートまたはステアレート、モノおよびジグリセリド、エトキシル化および/またはプロポキシル化C〜C20化合物または10〜30個のEO単位を有するビニルまたはアリルエーテルアルコキシレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項8】
界面活性剤が、圧倒的の求核反応性の基を有する付加または縮合生成物を形成することを特徴とする、請求項7に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項9】
再装填可能かつ膨張可能な仕上げ剤層を製造するための請求項1〜8のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物であって、一般型(RG−RS−RG)の少なくとも1つのスペーサー物質を含み、RGがUVもしくは青色光硬化反応性基、または該反応性基と架橋する官能基であり、RSが該スペーサー物質を特徴付ける残基であることを特徴とする仕上げ剤配合物。
【請求項10】
スペーサー物質を特徴付ける残基が、式:
【化1】

(式中、残基RSの鎖長は、nおよびxによって定められ、ここでnは、好ましくは5を超え30未満であり、xは、好ましくは2と4の間にある)
を有するポリエーテル、ポリエステルまたはビニログ鎖からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項11】
ナノ粒子が、二酸化ケイ素、金属酸化物、特に、バナジウム、鉄、タングステン、チタンまたは亜鉛の酸化物、炭素、ゼオライトまたはデンドリマー、グルカンおよびシクロデキストリンの群から好ましくは選択される無機および/または有機ナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項12】
ナノ粒子が表面に、C〜C20の炭化水素鎖またはC〜C12のフッ化炭素鎖、好ましくは過フッ化炭素鎖、およびアクリルまたはエポキシ基等の共重合可能な基を備えていることを特徴とする、請求項11に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項13】
疎水性、疎油性および/または自己洗浄性表面を得るための紡織繊維および織物の仕上げ剤であって、請求項1〜12のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物で製造されることを特徴とする仕上げ剤。
【請求項14】
官能化化学物質が、布地物品を官能化するために必要な構造を自己組織化によって形成することを特徴とする、請求項13に記載の仕上げ剤。
【請求項15】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物で製造され、水性エマルジョンにより膨潤させることができ、該エマルジョンに含有されている活性成分を吸着できることを特徴とする、請求項13または14に記載の仕上げ剤。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの仕上げ剤配合物を使用することを特徴とする、紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項17】
少なくとも1つの仕上げ剤配合物を、紡織繊維および織物に塗布し、次に約60〜140℃で乾燥し、その後それを約100nm〜400nmのUV範囲、または約400nm〜800nmの可視範囲の光により固定することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
固定のための照射が、0.5秒と10秒の間、好ましくは2.5秒かかることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
照射が5.5kW/mの特定の照射強度で起こることを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの仕上げ剤配合物を塗布する前に、反応性基を有するプライマー層を塗布することを特徴とする、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
プライマー層が、アクリレート、ポリアミド、ウレタン、タンニンおよびリグニンからなる群からの架橋性プレポリマーを含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
プライマー層が、高含量の、遊離フェノール、ヒドロキシ、アミノおよび/またはカルボン酸基を有することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
溶媒または分散剤が乾燥中に蒸発し、ここで布地物品を官能化する化学物質が、布地物品を官能化するために必要な構造を自己組織化によって形成することを特徴とする、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ラジカル反応機構に基づいて重合するアクリレートおよび不飽和ポリエステルを、UV範囲または可視範囲の光により、好ましくは保護ガス雰囲気下で硬化させることを特徴とする、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
本発明に基づいて仕上げられた請求項13〜15のいずれかに記載の仕上げ剤を有する繊維および織物。
【請求項26】
紡織繊維および織物用の仕上げ剤を製造する方法を実行するための設備技術であって、紡織繊維に仕上げ剤配合物を塗布する装置と、約60〜140℃で乾燥するためのその後の乾燥装置、次いで約100nm〜400nmのUV範囲または約400nm〜800nmの可視範囲の照射を発する照明手段を備えた硬化装置を含むことを特徴とする設備技術。
【請求項27】
硬化装置が、W/cmアーク長で表す発光体出力が、30W/cm〜240W/cm、好ましくは100W/cmである照明手段を備えたUVチャネル含むことを特徴とする、請求項26に記載の設備技術。
【請求項28】
UVチャネルが、保護ガスでフラッシングする手段を有することを特徴とする、請求項27に記載の設備技術。

【公表番号】特表2008−506866(P2008−506866A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521769(P2007−521769)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000420
【国際公開番号】WO2006/007754
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507022167)シューラー テクスティル アーゲー (2)
【Fターム(参考)】