説明

疎水性の固体表面を用いた選鉱法

本発明は、少なくとも1の疎水性材料を、前記の少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する混合物から分離するための方法において、以下の工程:(A)少なくとも1の好適な分散媒中の、処理すべき混合物のスラリー又は分散液を調製する工程、(B)工程(A)からのスラリー又は分散液を少なくとも1の固体の疎水性表面と接触させ、分離すべき少なくとも1の疎水性材料と前記の表面とを結合させる工程、(C)工程(B)からの、少なくとも1の疎水性材料と結合している少なくとも1の固体の疎水性表面を、少なくとも1の親水性材料を含んでいるスラリー又は分散液から除去する工程、及び(D)少なくとも1の疎水性材料を固体の疎水性表面から分離する工程を含むことを特徴とする方法に関する。本発明によれば、前記方法は、(疎水性)硫化鉱物、特に硫化銅を、親水性金属酸化物(脈石)を有する混合物から分離するために使用される。固体表面は、例えば疎水性の構造化表面を有するコンベヤベルトであってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1の疎水性材料を、前記の少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する混合物から分離するための方法、及び、少なくとも1の疎水性材料を上記混合物から分離するための固体の疎水性表面の使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、疎水性表面を用いた、選鉱のための、疎水性金属化合物、例えば金属硫化物の、前記疎水性金属化合物と親水性金属酸化物との混合物からの分離を含む。
【0003】
現在、全ての鉛、亜鉛及び銅鉱石のうち90%が浮選により選鉱されている。浮選は、水中に分散又は懸濁された材料を付着する気泡により水表面へと輸送し、そこで清浄装置により除去する分離方法である。ここで、空気が導入され、かつ浮選浴中に微分散される。疎水性粒子、例えば硫化鉱石は水で容易に湿潤されないため、気泡に付着する。このようにして、前記粒子を気泡により浮選槽の表面へと搬送し、泡と共にすくい取ることができる。前記方法の欠点は、気泡が上方へと向かう際にしばしばそのバラストを失うことである。従って、満足のいく収量を得るために、鉱石粒子の疎水性を高める化学添加剤、例えばキサントゲン酸塩が添加される。さらに、空気の一定の導入は高い危険性と関連する。
【0004】
上記欠点は、磁気による浮選によって回避することができる。前記方法では、硫化鉱石成分が原則的に意図的な様式で磁性粒子と結合される。第二の工程において磁界が印加され、かつ所望の鉱石成分を含有する磁性成分がこのようにして非磁性成分から分離される。
【0005】
例えばUS4,657,666には、疎水性磁性粒子が意図的に疎水性硫化鉱石に付着する選鉱法が記載されている。磁性粒子は、マグネタイト、及び、シランへの結合により予め疎水化されている他の磁性酸化鉄から選択されている。所望の硫化鉱石は、意図的な様式で浮選剤/捕収剤の混合物を用いて酸化脈石の存在下に疎水化される。磁性粒子と所望の鉱石との付着物が酸化脈石から分離された後、磁性粒子は50%体積濃度のH22溶液での処理により所望の鉱石から分離される。
【0006】
US4,906,382には硫化鉱石の選鉱法が開示されており、その際、硫化鉱石は二官能性分子で変性された磁性顔料と撹拌される。二つの官能基のうち一方は磁性コアに付着している。磁性粒子は、pH値の変動により第二の官能基を介して可逆的に凝集し得る。磁性粒子は硫化鉱石の選鉱のために使用することができる。
【0007】
DE19514515には、マグネタイト又はヘマタイト粒子を用いた価値の高い材料の選鉱法が開示されている。このために、マグネタイト又はヘマタイト粒子はカルボン酸又は官能化アルカノールで変性される。
【0008】
従来技術に記載された選鉱法の欠点は、磁化された粒子を効率的に元の混合物から分離するためには強磁場が必要であるという点である。このためには複雑でコストのかかる装置が必要である。さらに、所望の鉱石に結合している磁性粒子が浮選プロセスの間に持続的に付着したままとなり、かつ分離後に再度完全に分離できることを保証しなければならない。
【0009】
従って本発明の対象は、疎水性材料を、前記疎水性材料と親水性材料とを含有する混合物から効率的にかつ高純度で分離するための方法を提供することである。本発明の更なる対象は、分離すべき疎水性成分への磁性化可能な粒子の結合及び空気流の使用を回避するこの種の方法を提供することである。
【0010】
前記対象は、少なくとも1の疎水性材料を、前記の少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する混合物から分離するための方法において、以下の工程:
(A)少なくとも1の好適な分散媒中の、処理すべき混合物のスラリー又は分散液を調製する工程、
(B)工程(A)からのスラリー又は分散液を少なくとも1の固体の疎水性表面と接触させ、分離すべき少なくとも1の疎水性材料と前記の表面とを結合させる工程、
(C)工程(B)からの、少なくとも1の疎水性材料と結合している少なくとも1の固体の疎水性表面を、少なくとも1の親水性材料を含んでいるスラリー又は分散液から除去する工程、及び
(D)少なくとも1の疎水性材料を固体の疎水性表面から分離する工程
を含むことを特徴とする方法により達成される。
【0011】
本発明の方法により、少なくとも1の疎水性材料の、前記の少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する混合物からの分離が提供される。
【0012】
本発明の目的のために、"疎水性"とは、相応する表面が元来疎水性であってもよいし、その製造後に疎水化されていてもよいことを意味する。元来疎水性である表面を付加的に疎水化することも可能である。
【0013】
本発明の方法の有利な一実施態様において、少なくとも1の疎水性材料は少なくとも1の疎水性金属化合物又は石炭であり、かつ少なくとも1の親水性材料は有利に少なくとも1の親水性金属化合物である。
【0014】
本発明によれば、前記方法により特に、硫化鉱石の、前記硫化鉱石と酸化金属化合物からなる群から選択された少なくとも1の親水性金属化合物とを含有する混合物からの分離が提供される。
【0015】
従って、少なくとも1の疎水性金属化合物は、有利に硫化鉱石からなる群から選択されている。少なくとも1の親水性金属化合物は、有利に酸化金属化合物からなる群から選択されている。
【0016】
本発明により使用することのできる硫化鉱石の例は、例えば、黄銅鉱CuFeS2、斑銅鉱Cu5FeS4、輝銅鉱Cu2S及びこれらの混合物からなる銅鉱石の群から選択されている。
【0017】
本発明により使用することのできる好適な酸化金属化合物は、有利に二酸化ケイ素SiO2、有利に六方晶変態、長石、例えば曹長石Ma(Si3Al)O8、雲母、例えば白雲母KAl2[(OH,F)2AlSi310]及びこれらの混合物からなる群から選択されている。
【0018】
本発明の方法において、鉱山の鉱床から得られた未処理の鉱石混合物を使用するのが有利である。
【0019】
有利な一実施態様において、本発明により分離することのできる鉱石混合物は、本発明の方法の前に、100μm以下、特に有利に60μm以下の粒径に粉砕される。有利な鉱石混合物は、少なくとも0.4質量%、特に有利に少なくとも10質量%の硫化鉱物含分を有する。
【0020】
本発明により使用することのできる鉱石混合物中に存在する硫化鉱物の例は、上記のものである。さらに、銅以外の金属の硫化物、例えば鉛、亜鉛、モリブデンの硫化物、PbS、ZnS及び/又はMoS2も鉱石混合物中に存在していてよい。さらに、金属及び半金属の酸化化合物、例えばケイ酸塩又はホウ酸塩、又は金属及び半金属の他の塩、例えばリン酸塩、硫酸塩又は炭酸塩が、本発明により処理すべき鉱石混合物中に存在していてよい。
【0021】
本発明の方法により分離することのできる典型的な鉱石混合物は、以下の組成を有する:SiO2 約30質量%、Na(Si3Al)O8 約10質量%、Cu2S 約3質量%、MoS2 約1質量%、クロム、鉄、チタン及びマグネシウムの酸化物 残分。
【0022】
本発明の方法の個々の工程を以下に詳説する:
工程(A):
本発明の方法の工程(A)は、少なくとも1の好適な溶剤中の、処理すべき混合物のスラリー又は分散液の調製を含む。
【0023】
好適な分散媒として、処理すべき混合物が完全には可溶でない全ての分散媒が好適である。本発明の方法の工程(A)におけるスラリー又は分散液の製造に好適な分散媒は、水、水溶性有機化合物及びその混合物からなる群から選択されている。
【0024】
特に有利な一実施態様において、工程(A)における分散媒は水である。
【0025】
本発明によれば、一般に分散媒の量は、容易に撹拌可能でありかつ/又は搬送可能なスラリー又は分散液が得られるように選択されることができる。有利な一実施態様において、全スラリー又は分散液に対する処理すべき混合物の量は、100質量%まで、特に有利に0.5〜10質量%、極めて特に有利に1〜5質量%である。
【0026】
本発明によれば、スラリー又は分散液は当業者に公知の全ての方法により調製することができる。有利な一実施態様において、処理すべき混合物及び好適な量の分散媒又は分散媒混合物は、好適な反応器、例えばガラス反応器中で合一され、かつ当業者に公知の装置を用いて、例えば、ガラス槽中で機械的プロペラ型撹拌機を用いて撹拌される。
【0027】
本発明の方法のもう1つの有利な一実施態様において、処理すべき混合物及び分散媒又は分散媒混合物に、更に少なくとも1の付着性を改善する物質を添加することができる。
【0028】
付着性を改善する好適な物質の例は、長鎖及び短鎖アミン、アンモニア、長鎖アルカン及び長鎖非分枝鎖アルコールである。特に有利な一実施態様において、スラリー又は分散液に、鉱石及び磁性粒子の乾燥質量に対して有利に0.1〜0.5質量%、特に有利に0.3質量%の量のドデシルアミンが添加される。
【0029】
場合により添加することができる付着性を改善する物質は、一般に、該物質の付着性改善作用を保証するのに十分な量で添加される。有利な一実施態様において、少なくとも1の付着性を改善する物質は、それぞれ全スラリー又は分散液に対して0.01〜10質量%、特に有利に0.05〜0.5質量%の量で添加される。
【0030】
特に有利な一実施態様において、混合物中に存在する少なくとも1の疎水性材料は、本発明の方法の工程(B)の前に少なくとも1の物質により疎水化される。
【0031】
少なくとも1の疎水性材料、有利に少なくとも1の疎水性金属化合物の疎水化は、工程(A)の前、即ち、処理すべき混合物のスラリー又は分散液の調製前に行うことができる。しかしながら本発明によれば、分離すべき疎水性材料を工程(A)におけるスラリー又は分散液の調製後に疎水化することも可能である。有利な一実施態様において、処理すべき混合物は工程(A)の前に好適な物質を用いて疎水化される。
【0032】
本発明によれば、疎水化物質として、分離すべき疎水性金属化合物の表面のさらなる疎水化が可能な全ての物質を使用することができる。疎水化剤は一般に基及びアンカー基からなり、その際、アンカー基は有利に少なくとも1の反応性基、特に有利に3の反応性基を有し、該基は分離すべき疎水性材料、有利に分離すべき疎水性金属化合物と相互作用する。好適なアンカー基はホスホン酸基又はチオール基である。
【0033】
特に有利な一実施態様において、疎水化物質は、一般式(I)
【化1】

[式中、
1は、水素又は分枝鎖又は非分枝鎖C1−C20−アルキル基、C2−C20−アルケニル基、C5−C20−アリール基又はヘテロアリール基、有利にC2−C20−アルキル基であり、かつ
2は、水素、OH又は分枝鎖又は非分枝鎖C1−C20−アルキル基、C2−C20−アルケニル基、C5−C20−アリール基又はヘテロアリール基、有利にOHである]
のリン含有化合物、一般式(II)
【化2】

[式中、
3は、分枝鎖又は非分枝鎖C1−C20−アルキル基、C2−C20−アルケニル基、C5−C20−アリール基又はヘテロアリール基、有利にC2−C20−アルキル基であり、かつ
2は、水素又は分枝鎖又は非分枝鎖C1−C20−アルキル基、C2−C20−アルケニル基、C5−C20−アリール基又はヘテロアリール基、有利に水素である]
の硫黄含有化合物、及びその混合物からなる群から選択されている。
【0034】
極めて特に有利な一実施態様において、オクチルホスホン酸が使用され、即ち、一般式(I)においてR1はC8−アルキル基でありかつR2はOHである。
【0035】
疎水化作用を有する前記化合物は、個々に、又は、相互に混合して、処理すべき混合物に対して0.01〜50質量%、特に有利に0.1〜50質量%の量で添加される。疎水化作用を有する前記物質は、分離すべき疎水性材料、有利に分離すべき少なくとも1の金属化合物に、当業者に公知の全ての方法により施与されてよい。有利な一実施態様において、処理すべき混合物は、例えば遊星型ボールミル中で適量の疎水化物質と粉砕及び/又は撹拌される。好適な装置は当業者に公知である。
【0036】
工程(B):
本発明の方法の工程(B)は、工程(A)からのスラリー又は分散液と少なくとも1の固体の疎水性表面との接触による、分離すべき少なくとも1の疎水性材料、有利に分離すべき少なくとも1の金属化合物と固体の疎水性表面との結合を含む。
【0037】
本発明の目的のために、固体の疎水性表面とは、疎水性でありかつ、一枚の表面、例えばプレート又はコンベヤベルトを表すか、又は多数の可動性粒子の表面、例えば複数の球体の個々の表面の集合体を表す表面が使用されることを意味する。前記実施態様の組合せが可能である。
【0038】
本発明の方法において、処理すべき混合物中に存在する疎水性材料の少なくとも一部との結合に好適な、全ての固体の疎水性表面を使用することが可能である。疎水性材料は、疎水性の相互作用により固体の疎水性表面に結合する。
【0039】
有利な一実施態様において、固体の疎水性表面は、管の内壁、プレートの表面、コンベヤベルトの固定又は可動性の表面、反応器の内壁、三次元物品の表面であり、前記表面をスラリー又は分散液に入れる。固体の疎水性表面は、特に有利に、反応器の内壁、又は、繊維状のミクロ3D構造体を表面上に有するコンベヤベルトの固定又は可動性の疎水性表面である。
【0040】
本発明によれば、固体の疎水性表面を形成する材料により元来疎水性である固体の疎水性表面を使用することができる。しかしながら本発明によれば、元来疎水性ではない表面を少なくとも1の疎水性層の施与により疎水化することも可能である。
【0041】
有利な一実施態様において、金属、プラスチック、ガラス、木材又は金属合金からなる固体表面は、場合により好適な物質で表面被覆されていてよい疎水性化合物の施与により疎水化される。疎水性化合物を含有するこの表面は、本発明の方法の一実施態様において、本発明の方法において使用するのに十分にそれ自体が疎水性である。疎水性層の施与は、例えば蒸着により行うことができる。
【0042】
本発明によれば、当業者に公知でありかつ好適な疎水性層の形成に好適な全ての疎水性材料を、この疎水性層の形成に使用することができる。疎水性層は極性基を有しない層であるため、撥水特性を有する。
【0043】
好適な化合物の例は、一方の官能基を介して共有又は配位結合により固体表面に付着し、かつ、他方の疎水性官能基を介して共有又は配位結合により所望の鉱石に付着する二官能性化合物である。無機化合物への結合を生じる基の例は、カルボキシル基−COOH、ホスホン酸基−PO32、トリハロシリル基−SiHal3(ここで、基Halはそれぞれ相互に無関係にF、Cl、Br、Iである)、トリアルコキシシリル基−Si(OR53(ここで、基R5はそれぞれ相互に無関係にC1−C12−アルキル及び/又はC2−C12−アルケニルである)である。
【0044】
所望の鉱石への結合を生じる基の例は、分枝鎖又は非分枝鎖C1−C20−アルキル基、C5−C20−アリール基及びヘテロアリール基、一般式(III)
【化3】

[式中、
nは、1〜25であり、
基Xは、それぞれ相互に無関係に、S又はOであり、かつ
6は、分枝鎖又は非分枝鎖C1−C10−アルキル基、アンモニウム、一価の金属カチオン、例えばアルカリ金属カチオンである]
の化合物である。
【0045】
6がアンモニウム又は一価の金属カチオンである場合、イオン性化合物(III)が存在し、その際、基−[CH2n−X−C(=X)−X-は末端基X上に一価の負電荷を有し、かつこの電荷はアンモニウム又は一価の金属カチオンにより電荷平衡となっている。
【0046】
所望の鉱石への結合は、有利に一般式(IIIa)
【化4】

[式中、
nは、2〜20であり、かつ
6は、分枝鎖又は非分枝鎖C1−C5−アルキル基である]
の基を介して生じる。
【0047】
もう1つの有利な一実施態様において、固体の疎水性表面は、処理すべき混合物を含有するスラリー又は分散液を貫通する連続式コンベヤベルトの表面である。コンベヤベルトの表面積は、有利な一実施態様において、当業者に公知の方法により、例えば3次元構造体をコンベヤベルトに施与することにより増大される。そのような3次元構造体の例は繊維であり、該繊維がコンベヤベルトの表面に施与される。コンベヤベルトは当業者に公知の全ての好適な材料、例えばポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート、金属材料、例えばアルミニウム、多成分系材料、例えばアルミニウム合金からなっていてよい。繊維も同様に当業者に公知の全ての好適な材料からなっていてよい。
【0048】
工程(C):
本発明の方法の工程(C)は、工程(B)からの、少なくとも1の疎水性材料、有利に少なくとも1の疎水性金属化合物と結合している少なくとも1の固体の疎水性表面の、少なくとも1の親水性材料を含んでいるスラリー又は分散液からの除去を含む。
【0049】
工程(A)からのスラリー又は分散液を少なくとも1の固体の疎水性表面(B)と接触させた後、分離すべき疎水性材料、有利に分離すべき疎水性金属化合物は、少なくとも部分的に、疎水性の固体表面に結合する。しかしながら、処理すべき混合物中に存在する親水性材料は疎水性表面に結合しないため、スラリー又は分散液中に残存したままである。このようにして、前記化合物を疎水性表面と一緒に除去することによって、処理すべき混合物中の疎水性材料の濃度を低減させることができる。
【0050】
負荷された疎水性の固体表面の除去は、当業者に公知の全ての方法により行われてよい。例えば、疎水性の固体表面を有するプレートは、スラリー又は分散液を含有する浴から引き上げられてよい。さらに、本発明によれば、スラリー又は分散液を貫通するコンベヤベルト上に疎水性の固体表面を配置することも可能である。疎水性の固体表面を管又は反応器の内部に配置する場合には、有利な一実施態様において、反応器又は管にスラリー又は分散液が導通される。スラリー又は分散液が前記表面を通過することによって、固体の疎水性表面の除去が生じる。本発明によれば、疎水性の固体表面が反応器の内壁である場合には、この疎水性の固体表面の除去を、処理すべきスラリー又は分散液を反応器から排出することによって達成することも可能である。
【0051】
工程(D):
工程(D)は、少なくとも1の疎水性材料の、有利に少なくとも1の疎水性金属化合物の、固体の疎水性表面からの分離を含む。
【0052】
工程(C)の後に、疎水性の固体表面には、処理すべき反応混合物からの分離すべき疎水性材料が少なくとも部分的に負荷されている。分離すべき親水性材料を得るために、本発明によれば、この疎水性材料を疎水性の固体表面から分離することが必要である。
【0053】
この分離は、疎水性材料及び/又は表面に不利な影響を及ぼすことなく疎水性材料を前記表面から分離するのに好適である、当業者に公知の全ての方法により行うことができる。
【0054】
有利な一実施態様において、本発明の方法の工程(D)におけおる分離は、固体の疎水性表面を、有機溶剤、塩基性化合物、酸性化合物、酸化剤、界面活性化合物及びこれらの混合物からなる群から選択された物質で処理することにより行われる。
【0055】
好適な有機溶剤の例は、メタノール、エタノール、プロパノール、例えばn−プロパノール又はイソプロパノール、芳香族溶剤、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エーテル、例えばジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル及びその混合物である。本発明により使用することのできる塩基性化合物の例は、塩基性化合物の水溶液、例えばアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、例えばKOH、NaOHの水溶液、アンモニア水溶液、一般式R73Nの有機アミンの水溶液であり、ここで、R7は、他の官能基により置換されていてもよいC1−C8−アルキルからなる群から選択されている。酸性化合物は、鉱酸、例えばHCl、H2SO4、HNO3又はその混合物、有機酸、例えばカルボン酸である。酸化剤として、例えばH22を例えば30質量%濃度の水溶液(パーヒドロール(Perhydrol))として使用することができる。
【0056】
本発明により使用できる界面活性化合物の例は、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び/又は両性イオン性界面活性剤である。
【0057】
有利な一実施態様において、分離すべき疎水性材料が結合する疎水性の固体表面は、有機溶剤、特に有利にアセトンで洗浄され、疎水性材料が疎水性の固体表面から分離される。この手順は機械的に支持されてもよい。有利な一実施態様において、有機溶剤又は他の上記の分離剤は、加圧下に、疎水性の所望の鉱石が負荷されている疎水性表面に施与される。更に有利な一実施態様において、分離を補助するために、場合によりさらに超音波を使用することもできる。
【0058】
一般に、有機溶剤は、疎水性表面に付着している疎水性金属化合物の有利に全量を前記表面から分離するのに十分な量で使用される。有利な一実施態様において、選鉱すべき疎水性及び親水性材料の混合物1g当たり20〜100mlの有機溶剤が使用される。本発明によれば有利に、疎水性の固体表面は、複数の比較的少ない部分に分けられた、例えば2つの部分に分けられた有機溶剤で処理され、ここで、該部分の総和が上記の全量となる。
【0059】
本発明によれば、分離すべき疎水性材料は上記の有機溶剤中でスラリー又は分散液として存在する。疎水性材料は、当業者に公知の全ての方法により、例えば傾瀉、濾過、有機溶剤の蒸留、又は、容器底部での固体成分の沈殿により有機溶剤から分離されることができ、その後、鉱石を底部ですくい取ることができる。分離すべき疎水性材料、有利に分離すべき疎水性金属化合物は、有利に有機溶剤から濾過により分離される。このようにして得ることができる疎水性材料は、当業者に公知の他の方法により精製されることができる。溶剤は、場合により精製後に本発明の方法へ再循環されてよい。
【0060】
もう1つの有利な一実施態様において、工程(D)において疎水性材料が分離された疎水性の固体表面が乾燥される。乾燥は当業者に公知の全ての方法により、例えば炉中での30〜100℃の温度での処理により行われてよい。
【0061】
もう1つの有利な一実施態様において、場合により乾燥された疎水性の固体表面は、本発明の方法に再循環され、即ち本発明の方法の工程(B)において再利用される。例えばコンベヤベルトが使用される場合、本発明の方法は、処理すべきスラリー又は分散液に連続的にコンベヤベルトを貫通させ、溶剤で処理して疎水性粒子を分離し、乾燥させ、かつ処理すべき浴へ返送することにより行われることができる。疎水性の固体表面を再循環させる場合、本発明によれば、このために、使用される分離剤を完全に除去する必要がある。
【0062】
本発明は、少なくとも1の疎水性材料、有利に疎水性金属化合物又は石炭を、前記の少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料、有利に少なくとも1の親水性金属化合物とを含有する混合物から分離するための、固体の疎水性表面の使用をも提供する。
【0063】
固体の疎水性表面、疎水性材料、親水性材料及び前記の少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する混合物に関しては、本発明による方法に関して前述した通りである。
【0064】

図1は、本発明の方法の特に有利な一実施態様を示し、その際、連続式コンベヤベルトが疎水性の固体表面として使用されている。参照番号は以下の意味を有する:
1 少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する、分離すべき混合物
2 構造化表面を有する疎水性コンベヤベルト
3 付着した疎水性材料を有する疎水性コンベヤベルト
4 分離剤、例えば有機溶剤
図2は、少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する混合物中のコンベヤベルトの一部分の拡大図であり、以下の意味を有する:
5 ベルト表面上の構造体
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】連続式コンベヤベルトを疎水性の固体表面として使用する、本発明の方法の特に有利な一実施態様を示す図。
【図2】少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する混合物中のコンベヤベルトの一部分の拡大図。
【実施例】
【0066】
100mlのガラスビーカーを疎水化されたマグネタイトで被覆し(1−ドデシルトリクロロシランで表面被覆されたもの、マグネタイト表面1nm2当たり約10〜50分子のトリクロロシランが負荷されており、マグネタイト粒子の直径は10nmである)、約40cm2の壁面積を疎水化する。このようにして被覆したガラスビーカーに、水50ml、ドデシルアミン(純度98%;Alfa Aesar)0.05g、オクチルホスホン酸1.7質量%と撹拌したCu2S 0.50g、及び、SiO2 100%からなり、塩酸で洗浄し、かつオクチルホスホン酸1.7質量%と撹拌した海砂0.50gを導入する。混合物を400rpmで2時間撹拌し、次いで水を吸引により慎重に除去し、かつガラスビーカーの内容物を慎重に乾燥させる。底部にある砂を取り出し、回収する(0.46g)。次いで、アセトン30mlをガラスビーカーに導入し、混合物を5分間強力に撹拌する。次いで、アセトン相を傾瀉し、第二のガラスビーカーに移す。この手順をもう1度繰り返す。濾過によりCu2S 0.38gが得られる。
【0067】
回収されたCu2Sの量は76%の相対量に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の疎水性材料を、前記の少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する混合物から分離するための方法において、以下の工程:
(A)少なくとも1の好適な分散媒中の、処理すべき混合物のスラリー又は分散液を調製する工程、
(B)工程(A)からのスラリー又は分散液を少なくとも1の固体の疎水性表面と接触させ、分離すべき少なくとも1の疎水性材料と前記の表面とを結合させる工程、
(C)工程(B)からの、少なくとも1の疎水性材料と結合している少なくとも1の固体の疎水性表面を、少なくとも1の親水性材料を含んでいるスラリー又は分散液から除去する工程、及び
(D)少なくとも1の疎水性材料を固体の疎水性表面から分離する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1の疎水性材料が、少なくとも1の疎水性金属化合物又は石炭であり、かつ少なくとも1の親水性材料が、少なくとも1の親水性金属化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
混合物中に存在する少なくとも1の疎水性材料を、工程(B)の前に少なくとも1の物質により疎水化する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1の疎水性金属化合物が、硫化鉱石からなる群から選択されている、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1の親水性金属化合物が、酸化金属化合物からなる群から選択されている、請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
硫化鉱石が、黄銅鉱CuFeS2、斑銅鉱Cu5FeS4、輝銅鉱Cu2S及びこれらの混合物からなる銅鉱石の群から選択されている、請求項4記載の方法。
【請求項7】
酸化金属化合物が、二酸化ケイ素SiO2、長石、雲母及びこれらの混合物からなる群から選択されている、請求項5記載の方法。
【請求項8】
工程(A)における分散媒が水である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
固体の疎水性表面が、管の内壁、プレートの表面、コンベヤベルトの表面、反応器の内壁、三次元物品の表面であり、これらをスラリー又は分散液に添加する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程(D)における分離を、有機溶剤、塩基性化合物、酸性化合物、酸化剤、界面活性化合物及びこれらの混合物からなる群から選択された物質で固体の疎水性表面を処理することにより行う、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
固体の疎水性表面を工程(D)後に工程(B)に再循環させる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1の疎水性材料を、前記の少なくとも1の疎水性材料と少なくとも1の親水性材料とを含有する混合物から分離するための、固体の疎水性表面の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−534554(P2010−534554A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516458(P2010−516458)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058854
【国際公開番号】WO2009/010422
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】