説明

疎水性シリカ粒子およびそれらの製造方法

一段法で疎水性シリカ粒子を製造するための方法を提供する。前記方法によって製造される、任意で染料および/または磁化性成分を含む疎水性シリカミクロ粒子およびナノ粒子も提供する。本発明は、潜在指紋の検出、視覚化および/または分析における前記シリカナノ粒子の使用も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランクおよびドープされた疎水性シリカ粒子の合成方法、ならびにこれらの粒子の、例えば、指紋採取および他の用途における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
潜在指紋の現像は、接触に従って表面に付着した「粘着性」材料に接着する散粉剤、または塗布された現像剤とその表面上の付着材料中に一般に見出される化学物質との化学的相互作用に起因して目に見える着色を生じさせる化学的現像剤、いずれかの使用を一般に含む[1]。粉末粒子のサイズおよび形状は、指紋への接着量に大きな影響を及ぼし、微細な粒子の方が大きな粒子より良好に接着する傾向があり、したがって、結果的に、大部分の粒子が、1〜10Mの粒径に基づくものとなる[2]。付着プリント内の疎水性材料に対する親和性を示す、天然および合成両方の様々な粒子に基づく一連の散粉剤が市販されている。
【0003】
ナノテクノロジーにおける最近の技術革新とともに、可能性のある代替アプローチが研究されてきた。潜在指紋を視覚化するために、硫化カドミウムおよび酸化ユーロピウム(III)系粉末が使用された[3〜5]。しかし、これらの方法は複雑であり、専門家に技術開発および高価な機材を求め、したがって、現場での、例えば犯罪現場での使用には適さない。
【0004】
テトラエトキシシラン(TEOS)とフェニルトリエトキシシラン(PTEOS)の組み合わせを用いる、バイオ分析およびバイオセンサー用途において使用するための比較的疎水性のシリカエーロゲル[3]および対応するナノ粒子[4]の製造が、二つの報告書に記載されている。前者の報告書は、PTEOSの割合が増加するにつれて、結果として生じるゾルゲルの疎水性も増大することを証明し、一方、後者の報告書は、それらの粒子の疎水性を利用して、結果として生じる粒子に疎水性染料、ローダミン6Gを取り込んでいる。これらのナノ粒子は、水性条件下でそれらの粒子内に強く保持される染料に伴って高蛍光性であった。しかし、これらの粒子は、多段階経路を用いて合成される。
【発明の開示】
【0005】
疎水性シリカ粒子を製造するための新規、一段合成経路を、今般、開発した。本合成経路は、より単純であり、ならびにそのシリカモノマー骨格に染料(例えば、有色染料または蛍光染料)および磁性または常磁性亜粒子が任意で取り込まれている様々なミクロまたはナノ粒子の製造に適用することができる。
【0006】
このアプローチは、粒子へのそれらの合成中の、またはそれらのゾルゲル等価物への蛍光または着色分子の直接取り込みから生じる問題を克服する。結果として生じる粒子またはゲルは、粒子を洗浄すると、一般に、染料を喪失するからである。この観察は、粒子のマトリックスの架橋シリケート骨格内に埋め込まれた分子間に弱い相互作用しかなく、そのため、染料分子が、それらをそのマトリックス内に保持する引力に支配されないという意味を含む。
【0007】
本発明は、潜在指紋用の現像剤としてのこれらの疎水性シリカミクロおよびナノ粒子の使用も実証した。
【0008】
従って、本開示は、(1)シランエーテルモノマー、例えばアルコキシシランと(2)有機置換シランエーテルモノマー、例えばフェニル変性シランエーテルの混合物と、(3)加水分解剤とを一段階で互いに反応させることを含む、疎水性シリカ粒子を調製するための方法を提供する。
【0009】
一つの実施形態において、前記加水分解剤は、アルカリである。
【0010】
従って、本方法は、一般に、アルコキシシラン、特にテトラアルコキシシラン(本明細書ではTAOSと略記する)の使用を含む。詳細には、TAOSは、TEOS(テトラエトキシシラン)またはTMOS(テトラメトキシシラン)から選択される。
【0011】
本方法は、一般に、ヒドロカルビル置換、特に、アリール置換シランエーテル、例えば、エーテル形成基(RO−)のうちの1つまたは2つがアリール含有基、例えばフェニル基によって各々置換されているシランエーテルの使用を含む。
【0012】
従って、例示的置換シランエーテルは、式(R’O)m(R2nSiのものであり、式中R’は、有機残基であり、R2は、アリール含有基であり、mは、2または3であり、一方、nは、1または2であるが、但し、(n+m)=4であることを条件とする。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、TEOS(テトラエトキシシラン)モノマーとPTEOS(フェニルトリエトキシシラン)モノマーの混合物と、加水分解剤とを一段階で互いに反応させることを含む、疎水性シリカ粒子を調製するための方法を提供する。
【0014】
本発明のさらなる実施形態において、TEOSモノマーとPTEOSモノマーの混合物と、アルカリとを一段階で互いに反応させることを含む、疎水性シリカ粒子を調製するための方法を提供する。
【0015】
本発明のさらなる実施形態において、(i)TEOS(テトラエトキシシラン)もしくはTMOS(テトラメトキシシラン)モノマー、またはこれらの組み合わせと(ii)PTEOS(フェニルトリエトキシシラン)モノマーの混合物と、加水分解剤、例えばアルカリ、とを一段階で互いに反応させることを含む、疎水性シリカ粒子を調製するための方法を提供する。
【0016】
前記加水分解剤、例えばアルカリは、シランエーテルモノマー、例えばTEOSと、有機置換シランエーテルモノマー、例えばPTEOSとの反応のための触媒としての役割を果す。
【0017】
本発明の実施形態において、本方法は、製造後機能を付与するための機能性因子を組み込むことを含む。前記機能性因子は、粒子の検出、画像化および取り扱いを助けることができる。特に、染料分子、他の視覚化剤および/または磁性粒子が、前記シリカ粒子に取り込まれる。染料分子および/または他の視覚化剤の追加は、指紋の視覚化に役立つ。より詳細に後で説明するように、磁性(または磁化性)粒子の追加が前記粒子の取り扱いに役立つ場合もある。
【0018】
本発明のさらなる態様において、本発明の方法によって得ることができる疎水性シリカミクロ粒子を提供する。本発明は、本発明の方法(よって得られた生成物の特性を有すること)によって得ることができる疎水性シリカナノ粒子も提供する。本発明の一つの実施形態において、合着したシリカナノ粒子である疎水性シリカミクロ粒子を提供する。
【0019】
一つの実施形態において、シリカナノ粒子から疎水性シリカミクロ粒子を製造するための方法を提供し、本方法は、ナノ粒子が凝集したシリカミクロ粒子を形成するために適する条件を提供することを含む。一般に、本方法は、ナノ粒子を乾燥させて、合着を助長することを含む。
【0020】
直接であろうと、表面から採取されていようと、指紋を検出するための疎水性シリカ粒子の使用も本発明に含まれる。
【0021】
本発明のさらなる態様において、ある表面上のまたはある表面から採取された指紋を検出するための方法を提供し、本方法は、疎水性シリカ粒子を含む薬剤を指紋に接触させることを含む。本方法は、指紋に塗布されたまたは指紋の一部として含まれている粒子を画像化することを、任意で含むことがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、語「含む(comprise)」および「含有する(contain)」ならびにこれらの語の変形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「を含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」という意味であり、他の部分、添加物、成分、整数または段階を排除するためのものではない(且つ、排除しない)。
【0023】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、単数形は、その文脈が別様に要求していない限り、複数形を含む。詳細には、明確でない物品が使用されている場合、その明細は、その文脈が別様に要求していない限り、単数性ばかりでなく複数性も考慮していると解釈しなければならない。
【0024】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して記載する特徴、整数、特性、化合物、化学的部分または基は、適合不能でない限り、本明細書に記載する他の任意の態様、実施形態または実施例に適用できると理解しなければならない。
【0025】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示されていることがある。範囲形式での記載は、単に便宜および簡潔のためであり、本発明の範囲に対する変えられない制限と解釈すべきではないことは理解される。従って、ある範囲の記載は、すべての可能なサブ範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと見なさなければならない。例えば、1から6のような範囲の記載は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などのサブ範囲、ならびにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6を具体的に開示したものと見なさねばならない。これは、その範囲の幅に関係なく適用される。多数の範囲の記載は、終点の組み合わせを具体的に開示したものと見なさねばならないことも理解される。
【0026】
方法A
(1)シランエーテルモノマー、例えばアルコキシシランと(2)有機置換シランエーテルモノマー、例えばフェニル変性シリケートの混合物と、加水分解剤、例えばアルカリとを一段階で互いに反応させることを含む、疎水性シリカ粒子を調製するための方法を提供する。
【0027】
従って、本方法は、一般に、アルコキシシランモノマーの使用を含む。本方法は、テトラアルコキシシラン(本明細書ではTAOSと略記する)の使用を含む場合がある。詳細には、TAOSは、TEOS(テトラエトキシシラン)またはTMOS(テトラメトキシシラン)から選択される。
【0028】
一つの実施形態において、本方法は、TEOS(テトラエトキシシラン)モノマーとPTEOS(フェニルトリエトキシシラン)モノマーの混合物と、加水分解剤とを一段階で互いに反応させることを含む。あるいは、本方法では、TMOSをTEOSの代わりに使用することができる。
【0029】
一つの実施形態において、本方法は、TMOSモノマーとPTEOSモノマーを反応させることを含む。
【0030】
一つの実施形態において、前記混合物は、水混和性溶剤、例えばエタノール、および水をさらに含む。
【0031】
一つの実施形態において、本方法は、周囲温度で行われる。反応の継続時間は、重要ではない。一つの実施形態において、TAOSモノマーとPTEOSモノマーとの反応は、一晩または同等の期間、すなわち、約12時間〜約18時間の間行われる。反応の長さは、生成されるシリカ粒子のサイズに影響を及ぼす。早く反応を停止させるほど、形成される粒子は小さいと考えられる。従って、他の実施形態では、12時間未満、例えば6時間〜12時間の間の期間にわたって反応が行われる。さらに他の実施形態では、反応が18時間より長く行われることもある。所望される場合、温度を上昇させ(または低下させ)、反応の継続期間を短縮する(または増す)ことができる。
【0032】
加水分解剤、一般にはアルカリは、反応中触媒として作用する。好ましくは、この触媒は、水酸化物、例えば、水酸化アンモニウムである。他の実施形態において、前記触媒は、酸である場合がある。酸の例は、無機酸、例えば、塩酸である。この実施形態における反応は、酸誘導加水分解を含む。
【0033】
シランエーテルモノマー、例えばTAOS、および有機置換シランエーテルモノマー、例えばPTEOSモノマーは、例えば、2:1から1:2、例えば4:3から3:4、特に、1.2:1から1:1.2の比率(PTEOS:TAOS)で使用することができる。一つの類の方法において、前記比率は、少なくとも約1:1、例えば、1:5以下、例えば1:2である。一つの類の方法において、PTEOS:TAOS比は、好ましくは、1:1 v/vである。TAOSおよびPTEOSの一方または両方を代替試薬で置換する場合、同じ比率を用いることができることは理解される。
【0034】
本発明のさらなる実施形態において、方法Aの反応から形成された反応媒体から疎水性シリカ粒子を単離するための方法を提供する。
【0035】
上の方法によって製造される粒子は、主としてナノ粒子、すなわち、約200nmから約900nm、一般には約300nmから約800nm、および特に400nmから500nmの平均直径のものである傾向がある。
【0036】
その後、これらのナノ粒子を処理してミクロ粒子を形成することができ、これらのミクロ粒子は、合着ナノ粒子と考えることができる。これらのミクロ粒子は、方法Bを使用して製造することができる。
【0037】
方法B
一つの実施形態において、疎水性シリカミクロ粒子は、
i)粒子の懸濁液を遠心分離する段階;
ii)その疎水性シリカ粒子の懸濁液を水相に移入する段階;
iii)その懸濁液をその水相から有機相に抽出する段階;
iv)その有機相を蒸発させる段階;および
v)(iv)において得られた生成物を粉砕し、篩い分けする段階
を含む方法を使用して得られる。
【0038】
一般に、前記懸濁液は、本明細書に開示する方法Aに対応する方法の反応生成物である。代替実施形態において、前記疎水性シリカミクロ粒子は、本明細書に開示する方法A以外の方法から製造されたシリカナノ粒子から形成される。
【0039】
前記有機相は、好ましくは、非極性であるか低い極性を有する有機溶剤を含む。一つの実施形態において、前記有機相は、ジクロロメタンである。代替実施形態において、有機相として使用することができる他の有機溶剤としては、例えば、アルカン、例えばヘキサン、トルエン、酢酸エチル、クロロホルムおよびジエチルエーテルが挙げられる。
【0040】
方法C
代替実施形態において、前記疎水性シリカミクロ粒子は、
(a)その反応生成物を遠心分離すること;および
(b)その反応生成物を流体中で洗浄すること
を含む方法により、方法Aにより製造された反応生成物から得ることができる。
【0041】
一つの実施形態において、本方法は、段階(a)および(b)の多数回の反復を含む。好ましくは、前記流体は、水溶液:溶剤混合物であり、一般に、水:有機溶剤混合物である。一般に、前記有機溶剤は、エタノールである。好ましくは、最初の流体は、水および有機溶剤の約60(水):40(溶剤)の比率での混合物から約40:60 v/v混合物を含む。他の実施形態において、前記溶剤は、例えば、ジメチルホルムアミド、n−プロパノールまたはイソプロパノールであり得る。
【0042】
一般に、前記混合物中の溶剤の割合は、最初の洗浄(すなわち、懸濁)(b)と最後の洗浄(懸濁)の間で増加される。合着したナノ粒子であるミクロ粒子を得るために、最終懸濁液を乾燥させる。その後、好ましくは、ミクロ粒子を篩い分けする。篩い分けたら、ミクロ粒子は、指紋現像剤として塗布する準備が整っている。
【0043】
方法Bおよび/または方法Cを行うことによって製造される粒子は、ミクロ粒子である、つまり、マイクロメートルオーダーの、好ましくは約30から約90μmの平均直径を有する。一部の実施形態において、前記ミクロ粒子は、約45から約65μmまたは約65から約90μmの平均直径を有する。方法Bおよび/または方法Cを使用して製造されるミクロ粒子は、合着したナノ粒子と考えられる。
【0044】
従って、例えば少なくとも10μmの直径を有するシリカミクロ粒子を製造するための方法を本明細書に開示する。本方法は、一般に、
(i)粒径制御法(この技法により、500nm+/−100nmの平均粒径を有する粒子の形成が可能になる)によりナノ粒子を製造するための第一段階;
(ii)それらのナノ粒子を合着させて、少なくとも5μm、一般には少なくとも20μmおよび好ましくは少なくとも約25から30μmの直径を有するミクロ粒子の場合のようなエアフィルタ(例えば、フェースマスク)による除去に適するサイズのミクロ粒子にするための第二段階
を含む。一般に、段階(ii)は、それらのナノ粒子を乾燥させて、合着を助長することを含む。
【0045】
方法D
本発明の代替実施形態において、方法Aを行うことで製造された反応生成物から、疎水性シリカナノ粒子を単離する。前記疎水性シリカナノ粒子は、前記反応生成物を遠心分離すること、およびそれを水溶液:溶剤混合物に懸濁させることを含む方法を使用して単離する。一つの実施形態において、方法Dは、方法Cに類似しているが、但し、方法Dは、ナノ粒子の乾燥を含まない。
【0046】
一つの実施形態において、前記水溶液:溶剤混合物は、第一の水溶液:溶剤混合物である。この第一水溶液:溶剤混合物は、好ましくは、50:50混合物である。
【0047】
一つの実施形態において、本方法は、前記第一水溶液:溶剤混合物から前記反応生成物を除去すること、それを遠心分離すること、およびそれを第二の水溶液:溶剤混合物に懸濁させることをさらに含む。好ましくは、前記第二水溶液:溶剤混合物は、前記第一混合物と同様の、溶剤と水性成分の割合を有する。
【0048】
一つの実施形態において、方法Cまたは方法Dにおける水溶液:溶剤混合物の一部を形成する水溶液は水である。
【0049】
本発明の一つの実施形態において、前記水溶液:溶剤混合物の溶剤部分を構成する溶剤は、例えば、水混和性溶剤である。一つの実施形態において、前記溶剤はエタノールである。他の実施形態において、前記溶剤は、例えば、ジメチルホルムアミド、n−プロパノールまたはイソプロパノールであり得る。
【0050】
一つの実施形態において、前記水溶液:溶剤混合物に反応生成物を懸濁させ、それを遠心分離する段階は、多数回反復される。好ましくは、その反復懸濁の経過とともに、その水溶液:溶剤混合物中の溶剤の割合が増すように、水溶液:溶剤混合物の組成を変える。好ましくは、本方法は、最終段階において、0%水溶液:100%溶剤である水溶液:溶剤「混合物」に反応生成物を懸濁させることを含む。総懸濁数は、一般には3から10、例えば、4、5、6、7、8または9である。一般に、最終懸濁を除き各懸濁後、懸濁液を遠心分離する。ナノ粒子は、最終エタノール懸濁液で保管することができる。遠心分離が、水溶液:溶剤混合物からナノ粒子を単離する一つの例示的方法であり、他の懸濁法が排除されないことは理解される。
【0051】
従って、本方法は、溶剤中の疎水性シリカナノ粒子の懸濁液を提供する。この懸濁液は、前記水溶液:溶剤混合物の一部を形成する水溶液を極微量含む場合がある。
【0052】
方法Dを使用して単離された疎水性シリカナノ粒子は、実質的に球形である。単離されたナノ粒子は、本質的にではないが好ましくは、約400から約500nmの平均直径を有する。より大きいまたはより小さい直径、例えば、約200nmから約900nmのナノ粒子を本方法によって製造できると考えられる。しかし、上の方法は、約200nmから約900nm、例えば、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850または900nmおよび範囲の上下限点を構成するサイズの任意の組み合わせである平均直径を有するナノ粒子を製造できると考えられる。前の文に列挙した直径サイズの各々を、任意の他の列挙されているサイズと組み合わせて特定の実施形態のサイズ範囲の終点を構成することができ、従って、ナノ粒子が200nmから約300nm、400nmから850nm、または300nmから700nmの平均直径を有する実施形態を含む。
【0053】
用語「平均直径(average diameter)」は、本発明の方法から一般に形成される粒子の「平均値直径(mean diameter)」を意味すると解釈することができる。用語「平均値」は、本質的に、測定において使用した粒子の数で割った測定したすべての直径の合計である統計学用語である。ナノ粒子の直径は、SEM写真および写真において使用される縮尺から概算し、ミクロ粒子については、篩のサイズと粒径分布測定およびSEM写真からの結果との組み合わせから概算した。平均値直径を決定することができる一つの方法は、商標Malvern Mastersizer(Malvern Instruments Ltd.)の装置の使用による方法である。
【0054】
方法Dを使用して単離される疎水性シリカナノ粒子は、一般に、水混和性溶剤中の懸濁液の形態である。
【0055】
粒子
本発明の一つの態様において、方法Bを使用して、方法Cを使用して、方法AとBを併用してまたは方法AとCを併用して得ることができる(方法Bを使用して、方法Cを使用して、方法AとBを併用してまたは方法AとCを併用して得られたミクロ粒子の特性を有する)疎水性シリカミクロ粒子を提供する。前記疎水性シリカミクロ粒子は、本方法において使用された極微量の不純物、例えば、極微量の加水分解剤、例えばアルカリなどを含む場合がある。従って、アルカリまたは加水分解剤の成分化学種、例えばアンモニウム、ナトリウムまたはカリウムを少量含有するシリカ粒子を含む。前記ミクロ粒子は、より小さなシリカナノ粒子の凝集体であると考えることができる。
【0056】
一つの実施形態において、方法Bを使用して、方法Cを使用して、方法AとBを併用してまたは方法AとCを併用して製造されたミクロ粒子を指紋などのための散粉剤として使用することができる。この実施形態において、前記ミクロ粒子は、フェースマスクを使用して効率的に捕捉するために十分なサイズのものであり、従って、吸入されない。したがって、一つの実施形態において、前記シリカミクロ粒子は、少なくとも10μm、一般には少なくとも20μmの平均直径を有する。一般に、前記ミクロ粒子は、約30〜90μmの平均直径を有する。一部の実施形態において、前記ミクロ粒子は、約45〜65μmまたは約65〜90μmの間の平均直径を有する。
【0057】
本発明のさらなる態様において、疎水性シリカミクロ粒子を含む指紋検出および/または分析の際に使用するための散粉剤を提供する。あるいは、前記ミクロ粒子は、エタノール水溶液混合物に懸濁させることができる。しかし、ミクロ粒子を含む薬剤の好ましい形態は、ミクロ粒子が懸濁液中で沈む傾向があるので、乾燥粒子の形態である。
【0058】
本発明の一つの態様において、方法Dによって得ることができる溶剤中の疎水性シリカナノ粒子の懸濁液を提供する。一つの実施形態において、前記溶剤はエタノールである。他の実施形態では、前記溶剤が、別の水混和性溶剤、例えば本明細書中で例示するものである場合もある。一つの実施形態において、前記懸濁液は、本方法において使用される水溶液:溶剤混合物の水性成分を極微量含む。
【0059】
前記粒子の物理的性質および直径は、SEMおよびTEMスキャンを使用して判定することができる。前記粒子は、様々な食品において凝結防止剤として、ならびに様々な薬物およびビタミン製剤のための調剤の際に凝結防止剤としておよび賦形剤として、一般に使用されている非晶質シリカ[12]の形態のものである。
【0060】
本発明の方法に基づいて形成されるナノ粒子は、指紋が存在するかどうかを判定するために、適する液体媒体中、潜在指紋にまたはある表面に塗布することができる。一般に、シリカナノ粒子を単離するための方法によって製造される溶剤中のナノ粒子の懸濁液は、指紋検出剤として使用する前に水性成分で希釈する。プリントが付着している物品をその液体媒体(すなわち、ナノ粒子の懸濁液)に浸漬し、その後、取り出す場合もある。浸漬の長さは重要でなく、約15分から約12時間またはそれ以上まで様々であり得る。
【0061】
従って、好ましい実施形態において、前記ナノ粒子は、適する液体媒体中で指紋または表面に塗布される。一般に、前記液体媒体は、水溶液:溶剤混合物である。従って、本発明の一つの態様において、疎水性シリカナノ粒子、水性成分および水混和性溶剤を含む懸濁液を提供する。一つの実施形態において、前記水性成分は水である。前記溶剤は、例えば、水混和性溶剤、すなわち、すべての割合で水に100%混和性であり得る。一つの実施形態において、前記溶剤はエタノールである。前記水:溶剤比は、約99.9:0.1(水:溶剤)から約96:4(水:溶剤)に及ぶ。溶剤のレベルは、好ましくは、約4%以下である。より高い溶剤レベルは、指紋を溶解することとなる、またはそれらの鮮明度を低下させることがあるからである。ナノ粒子が個別の粒子として残り、合着して凝集体を形成しないことを確実にするために、少なくとも微量の溶剤を含めることが好ましい。
【0062】
用語「指紋」が部分的プリントおよび/または他の体部のプリントへの言及を含むこと、ならびに例えば、前記シリカ粒子を指紋の一部分に塗布することができることは理解される。一般に、指紋は、分析前にその下にある表面から採取され、したがって、用語「指紋」は、採取された指紋を含む。実施形態において、指紋は、前記粒子の塗布前に採取される。
【0063】
この実施形態において、疎水性シリカナノ粒子は、その塗布プロセス中でエーロゾルを形成してはならず、従って、安全に塗布されなければならない。これらのナノ粒子が、皮膚および肺組織などの生体膜を横断するには大き過ぎることにも注目しなければならない。したがって、両方の形態、すなわちミクロ粒子およびナノ粒子が、上で説明した状況で使用されたとき安全な物質でなければならない。
【0064】
上で説明した方法は、一連の安全なシリカミクロおよびナノ粒子を生じさせる。しかし、これらの粒子を可視化できるために、それらの中に様々な染料を取り込むと有利である。
【0065】
従って、本発明の実施形態において、方法は、染料または他の画像化剤を本シリカ粒子に取り込むことをさらに含む。染料(例えば、有色染料または蛍光染料)などの小さな分子の取り込みを達成するために、粒子の中に官能基を組み込んで、染料分子との強い結合相互作用を形成する。これらの官能基は、疎水性もしくは親水性のいずれか、または両方の組み合わせである。
【0066】
それらの官能基は、一つ以上のシランエーテルモノマーの中に存在し、ならびに染料分子を添加すると、それらの染料分子と、それらのモノマーによって提供される、その混合物の二つの成分間の相互作用を最大にするために適する官能基との間に相互作用が形成されると考えられる。
【0067】
科学的理論によって拘束されないが、触媒、例えば水酸化アンモニウムの添加は、重合を生じさせ、染料−骨格相互作用を凍結させ、その結果、折り畳まれた骨格のポケットが生じ、そこに染料分子が配置されると考えられる。水溶液を使用してこれらの染料分子を結果として生じた粒子から容易に抽出することはできず、これは、染料分子それら自体より小さい細孔を生じさせる、または結合相互作用する部分構造を生じさせる染料分子の周りの骨格の緻密な折り畳みに起因し得る。このような結合相互作用の例は、PTEOSから誘導された粒子のポリマー内の平面芳香族基と染料分子との疎水相互作用である。他の例は、染料分子上の正電荷を有する基と隣接する負電荷を有する基とのイオン性相互作用であり、例えば、ポリマー骨格上のSi−O基は、大きな直径の細孔が存在する状態でさえ、そのマトリックス内に染料を維持するために十分な大きさである。
【0068】
前に説明したように、シランエーテルモノマー、例えばTEOSと、有機置換シランエーテルモノマー、例えばPTEOSとの比率は、好ましくは、約1:1 v/vである。シリカ粒子内への染料分子の最適な取り込みおよび従ってシリカ粒子内での染料分子の保持が示されるのは、この比率である。しかし、染料分子の取り込みおよび保持を生じさせる、ならびに従って粒子の検出を可能にする他の比率を用いることができることは、当業者には理解される。
【0069】
一つの実施形態において、前記粒子に取り込むことができる染料は、例えば、有色または蛍光染料であり得る。本発明の範囲に含まれる染料の例は、フルオレセイン誘導体、例えばOregon Green、Tokyo Green、SNAFLおよびカルボキシナフトフルオレセイン、ローダミン(例えば、ローダミンBおよびローダミン6G)およびその類似体、チアゾールオレンジ、過塩素酸オキサジン、メチレンブルー、塩基性黄40、塩基性赤28、ならびにクリスタルバイオレットおよびその類似体であるが、これらに限定されない。科学的理論によって拘束されないが、正電荷を有する染料、例えばローダミンは、本方法においてPTEOSが使用される場合、アニオン性またはカチオン性の基、例えばカルボン酸基を含む染料より良好に取り込まれると考えられる。本発明において使用することができる他の染料の例としては、平面芳香族部分構造および正電荷の官能基を有するもの(例えば、臭化エチジウムおよび他のDNA挿入剤)が挙げられる。
【0070】
好ましくは、染料は、上で説明した一段反応段階(方法A)の間に水溶液から取り込まれる、すなわち、染料をTAOS(例えば、TMOSおよび/またはTEOS)モノマーとPTEOSモノマーの反応混合物に含める。
【0071】
前記粒子が磁性または常磁性であると有利な場合もある。例えば、磁気ワンドまたは他の適切な道具を使用して磁化性ミクロ粒子を容易に指紋に散粉することができる。従って、本発明の好ましい実施形態では、磁性または常磁性亜粒子が方法Aにおけるモノマー混合物に取り込まれる。本発明の一つの実施形態において、本発明の粒子は、磁化性、例えば、磁性または常磁性である。
【0072】
一つの実施形態において、疎水性シリカ粒子を調製するための方法は、シランエーテルモノマー、例えばTAOS(例えば、TEOS)モノマーと有機変性シランエーテルモノマー、例えばPTEOSモノマーとの反応混合物に磁性または常磁性粒子を含めることをさらに含む。従って、好ましくは、前記磁性または常磁性粒子は、上で説明した一段反応段階(方法A)の間に取り込まれる。前記磁性および/または常磁性粒子は、任意の磁性または常磁性成分、例えば、金属、金属窒化物、金属酸化物および炭素であり得る。磁性金属の例としては、鉄が挙げられ、一方、金属酸化物の例としては磁鉄鉱が挙げられる。炭素は、例えば、カーボンブラック、フラーレンまたはカーボンナノチューブ(誘導体化もしくは非誘導体化カーボンナノチューブ)の形態であり得る。前記カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブおよび/または単層カーボンナノチューブであり得る。
【0073】
磁化性材料およびまた別の画像化材料(特に、染料、例えば蛍光または有色染料)の両方を含有する疎水性シリカ粒子は新規であり、本発明の一部を形成する。
【0074】
一つの実施形態において、シランエーテルモノマー、例えばTAOS(例えば、TEOS)モノマーと有機変性シランエーテルモノマー、例えばPTEOSモノマーの反応混合物に含める磁化性材料は、例えば磁鉄鉱を含む磁性または常磁性粒子であり得る。赤鉄鉱を前記混合物に含めると、「薄茶色」粒子が形成される。磁鉄鉱を前記混合物に含めると、黒色粒子が形成される。両方のタイプの取り込み粒子は、非常に磁化性であることがわかる。
【0075】
いくつかの実施形態において、方法Aは、その反応混合物に含められた、例えば二酸化チタンまたはカーボンブラックを含む。「白色」または「灰色」粒子の他の例は、二酸化チタンまたはカーボンブラック粒子のいずれかを、(1)シランエーテルモノマー、例えばTAOS(例えば、TEOS)モノマーと(2)有機変性シランエーテルモノマー、例えばPTEOSモノマーとの反応混合物、合成中の混合物にそれぞれ含めたときに形成される。これらの粒子の比較的大きなサイズにより、ポリマーマトリックス内にそれらが捕捉され、同時に、必要な疎水性シリカ粒子が生成されることとなる。「灰色」粒子の色は、合成中にTAOS(例えば、TEOS)/PTEOS混合物に含めるカーボンブラックまたは二酸化チタンの量に依存する。カーボンブラックまたは二酸化チタンのレベルが高いほど、濃い色の粒子が生じることとなる。磁化性要素を含む粒子の代替として、またはそれらに加えて、疎水性シリカ粒子を磁性物質、例えば鉄やすり粉と混合して、指紋に塗布することができる磁化性薬剤を形成することができる。
【0076】
先行技術の指紋検出方法は、磁性物質の塗布を含み、例えば、ステアリン酸などの疎水性物質で被覆されている鉄粒子の使用を含む。この形式の指紋検出は、鉄粒子を指紋にすり込み、こすり落とすことがあり、したがってその鉄を消耗し、次いで将来の施与に利用できる量を減らすという欠点を多くの場合有する。合成中にシリカに磁性粒子を取り込むことの一つの利点は、シリカ粒子当たりの磁性粒子の量が有意に変化しない結果につながるので、塗布することができる磁性物質のレベルが一定のままであるという点である。
【0077】
本発明のさらなる実施形態において、加水分解剤、例えばアルカリを使用して疎水性シリカ粒子を調製するための方法は、磁性ミクロまたはナノ粒子を鉄やすり粉と混合して一連の磁化性粒子を生じさせる混合を含む。
【0078】
本発明のさらなる態様に従って、本発明の方法によって得ることができる、または本発明の方法によって製造された粒子の特性を有する疎水性シリカ粒子を提供する。一つの実施形態において、疎水性シリカミクロ粒子を提供する。
【0079】
一つの実施形態において、本発明は、約200から約900nmの間、一般には約300から600nm、さらに一般的には約400nmから約500nmの直径を有する疎水性シリカナノ粒子を提供する。
【0080】
一つの実施形態において、前記疎水性シリカ粒子(ミクロ粒子および/またはナノ粒子)は染料を含む。そのような染料の例は、本明細書の他の箇所に記載する。この染料は、有色染料である場合もあり、または蛍光染料である場合もあり、ならびにそれらの粒子を見ることができるようにする視覚化手段を提供することができる。
【0081】
一つの実施形態において、前記シリカ粒子は、磁化性要素、例えば磁化性粒子をさらに含む。一つの実施形態において、前記粒子は、磁鉄鉱および/または赤鉄鉱を含む。
【0082】
一つの実施形態において、前記シリカ粒子は、染料および磁化性要素を含む。
【0083】
一つの実施形態において、前記シリカ粒子は、金属、金属酸化物、金属窒化物および/または炭素分子、例えばカーボンブラックおよび/または二酸化チタンを単独で、または染料および/もしくは磁化性要素、例えば磁鉄鉱、との組み合わせで含む。
【0084】
本発明の疎水性シリカ粒子は、指紋検出および同定プロセスの中で使用することができる。従って、本発明の一つの態様において、本明細書に記載するような疎水性シリカ粒子、例えば本発明の方法によって得ることができるシリカ粒子の指紋の検出および/または同定の際の使用を提供する。一つの実施形態では、粒子の特性を有する疎水性シリカ粒子が、本発明の一つ以上の方法によって得られる。
【0085】
一つの実施形態において、前記使用は、指紋の画像化を含む。
【0086】
一つの実施形態において、指紋採取のための本発明の疎水性シリカミクロおよびナノ粒子の使用を提供する。一つの実施形態において、本発明のシリカ粒子は、指紋への散粉および/または指紋の現像のための薬剤として使用される。
【0087】
従って、本発明の一つの態様において、疎水性シリカ粒子を含む指紋への散粉用の薬剤を提供する。一つの実施形態において、前記粒子は、ミクロ粒子である。他の実施形態において、前記薬剤は、疎水性シリカナノ粒子を含む。
【0088】
一つの実施形態において、前記散粉用薬剤は、染料分子を含む疎水性シリカ粒子を含む。一つの実施形態において、前記散粉剤は、磁化性要素を含む疎水性シリカ粒子を含む。従って、前記シリカ粒子は、磁性または常磁性であり得る。一つの実施形態において、前記散粉用薬剤は、磁化性要素と染料分子の両方を含む疎水性シリカ粒子を含む。代替実施形態において、前記薬剤は、疎水性シリカ粒子と磁化性材料、例えば鉄やすり粉との混合物を含む。
【0089】
指先の模様により付着される潜在指紋は、天然分泌物と環境からの汚染物質の複雑な混合物である。この潜在プリントは、新しいプリントである場合もあり、時を経たプリントである場合もある。時を経たプリント内の残留物は、供与者によって分泌された疎水性内因性化学物質から主としてなる。従って、本発明の散粉剤は、新しい指紋と時を経た指紋の両方を検出および/または同定するために使用することができる。
【0090】
本発明のさらなる態様において、ナノ粒子の凝集体を含む疎水性シリカミクロ粒子を提供する。本発明のミクロ粒子は、散粉剤として、例えば粉末の形態で、様々な多孔質および半多孔質表面上の潜在プリントのために使用することができる。本ミクロ粒子は、標準的な市販のブラシを使用してまたは磁性粒子については市販の磁気ワンドにより、塗布することができる。本ミクロ粒子が、(一連の磁化性粒子を生じさせるために)磁性亜粒子を取り込んでいる、および/または鉄やすり粉と混合されている場合には、これらの粒子は、磁気ワンドを使用してプリントに塗布することができる。ミクロ粒子は、染料および/または有色粒子をさらに含む場合がある。
【0091】
一つの実施形態において、前記シリカミクロ粒子またはナノ粒子は、懸濁液として表面に直接塗布することができる。従って、本発明の一つの態様において、本発明のシリカ粒子を含む指紋を検出するための懸濁液を提供する。一つの実施形態において、この懸濁液は、水およびエタノールを含む。これは、対象、例えば武器をその懸濁液に浸漬することができる場合特に有利であり、例えば、その対象の任意の表面の潜在プリントを検出する可能性を大きくする。
【0092】
本発明のさらなる態様に従って、ある表面の付着物、例えば潜在指紋を現像するための薬剤としての疎水性シリカ粒子の使用を提供する。使用は指紋の画像化をさらに含み得る。
【0093】
本発明の一つの態様において、本発明のシリカ粒子を含む薬剤と指紋を接触させることを含む指紋の検出および/または同定方法を提供する。
【0094】
一般に、本方法は、その指紋の視覚化および/または画像化をさらに含む。
【0095】
一つの実施形態において、前記薬剤は散粉剤である。代替実施形態において、前記薬剤は、本明細書に記載するような懸濁液である。前記薬剤が懸濁液であるとき、本方法は、指紋を視覚化する前にその指紋を乾燥させる段階をさらに含む場合がある。
【0096】
この指紋を視覚化する段階は、当分野において公知の様々な方法を使用して行うことができる。例えば、光学的方法、例えばUVサーチライト、平床式光学スキャナ、蛍光スキャナおよびUV可視スキャナを含む光学スキャナを使用することができる。
【0097】
ここで、添付の実施例および図面を参照しながら、それらに限定されることなく本発明を説明する。
【0098】
材料および方法
材料
エタノール(99.7%)は、英国のHayman Ltd.から購入した。テトラエトキシシラン(98%+)、クリスタルバイオレット、チアゾールオレンジ、過塩素酸オキサジン1および二酸化チタンは、英国、ドーセットのAldrichから購入した。フェニルトリエトキシシランは、英国、ダービーシャーのFluorochemによって供給された。ブロモチモールブルーおよびメチレンブルーは、英国、レスターシャーリのBDH Chemicals Ltd.、現VWR International Ltd.、から購入した。水酸化アンモニウム溶液(28%)、フルオレセインナトリウム、ローダミンBおよびローダミン6Gは、英国、ドーセットのSigma−Aldrichから購入した。カーボンブラック溶液は、英国、チェシャーのCabot Corp.からの親切な寄贈品であった。ナノ粒子磁鉄鉱は、以前に出版物に掲載された方法[10〜11]に従って社内で合成した。
【0099】
TEOS:PTEOSから誘導された粒子の調製
ブランクミクロまたはナノ粒子の基本的調製方法は、30mLのエタノール、5mLのdH2O、各2.5mLのテトラエトキシシラン(TEOS)および2.5mLのフェニルトリエトキシシラン(PTEOS)の遠心管内での混合を含む。この混合物に、2mLの水酸化アンモニウム溶液を添加し、その溶液を一晩回転させる。この時間の後、その懸濁液を遠心分離する(3,000rpmで3分)。
【0100】
方法1
本方法は、ミクロ粒子を生じさせる。本方法は、遠心分離および水からジクロロメタンへの液相/液相抽出、その後の有機相の蒸発乾固を含み、それによって、合着粒子のガラス様シートが生じる。これを、乳鉢および乳棒を使用して粉砕し、得られた粒子をブロンズの網目を有する真鍮製試験篩(英国、ロンドンのEndecot Ltd.)により手で篩分ける。
【0101】
この調査に使用した粒径画分は、38〜45、45〜63および63〜90μmであり、これらを、各々、散粉剤として使用した。Malvern Mastersizer(英国、モールヴァンのMalvern Instruments Ltd.)を使用して、粒径分布を検証する。粒子の疎水性のため、エタノールを溶剤として使用する。Hitachi(株式会社日立製作所)走査電子顕微鏡(SEM)を使用して粒子を視覚化し、電子回折パターンにはHitachi透過型電子顕微鏡(TEM)を使用する。
【0102】
方法2
本方法は、ナノ粒子を生じさせる。10:90 v/vのエタノール/水を使用する一連の遠心分離および洗浄段階に従って生成物を単離し、その後、97:3 v/vの水/エタノール中の懸濁液として保持する。これらを粒径分布分析ならびにSEMおよびTEMにも付した。
【0103】
方法3
本方法は、ナノ粒子を生じさせる。水:エタノールの50:50混合物での二回の洗浄、その後、水:エタノールの25:75混合物を使用する洗浄、そして水:エタノールの0:100混合物を使用する最終洗浄に従って生成物を単離する。その後、その反応生成物をできる限り少量のエタノールに再懸濁させて、乾燥皿に移した。その懸濁液を室温で数日間放置し、その後数日間37℃の温度で保持した。
【0104】
種々の染料ドープ粒子については、適切な染料(25mg)をエタノールに溶解し、その後、他のシラン処試薬を添加する。二酸化チタン埋め込み粒子は、25mgの二酸化チタンを遠心管に添加し、その後、シラン処理試薬を添加することによって調製する。カーボンブラック粒子については、水中のカーボンブラック懸濁液の1:100倍希釈物の5mLをその前駆体溶液に添加する。TEOS:PTEOS被覆磁性粒子については、出版物に掲載されている方法に従って粒状磁鉄鉱を調製し、水中のその懸濁液の5mLをその前駆体溶液に含める。
【0105】
上で説明した2つの方法を使用して、一連のミクロ粒子およびナノ粒子を製造した。カーボンブラック埋め込みナノ粒子のSEM(図1)およびカーボンブラック埋め込みミクロ粒子のSEM(図2)を示す。前記ナノ粒子は、400〜500nmの平均直径を有する個別の球形粒子からなり、これに対して前記ミクロ粒子は、38〜63μm篩い分け画分については約27μmの平均直径を有するナノ粒子の凝集体からなる(図3)。
【0106】
TEMデータ(図4a)は、シリカナノ粒子について規則正しい回折パターンを示さず、これは、粒子が非晶質、非結晶性シリカからなることを明示している。これは、結晶性シリカで観察される回折パターンとは対照的である(図4b)。
【0107】
様々な蛍光および有色疎水性粒子を調製した。加えて、様々な白色、灰色および磁性亜粒子も疎水性シリカミクロ粒子に取り込んだ。これらの粒子の比較的大きなサイズにより、ポリマーマトリックス内にそれらが捕捉され、同時に、必要な疎水性シリカ粒子が生成されることとなった。TEOS/PTEOS混合物に二酸化チタンを含めると白色粒子が形成され、カーボンブラックを含めると灰色粒子が形成され、および赤鉄鉱を含めると薄茶色粒子が形成され、または磁鉄鉱を含めると黒色粒子が形成された。磁鉄鉱取り込み粒子および赤鉄鉱取り込み粒子は、非常に磁化性であることが判明した。
【実施例1】
【0108】
臭化エチジウムおよび染料の取り込みに対するTEOS:PTEOS比の影響
これは、上で詳述した方法を使用して、1:0から0.9:0.1、0.8:0.2および0.7:0.3まで様々なTEOS:PTEOS比で行った。臭化エチジウム、クリスタルバイオレット、ブロモチモールブルー、およびローダミンの類似体を使用して効率的な染料取り込みのメカニズムを試験した。
【0109】
(i)臭化エチジウム(EtBr)
臭化エチジウム(図4)は、DNA用の蛍光マーカーとして広範に使用されており、これは、DNA α−ヘリックスの塩基対間へのその介在のためDNAとの高蛍光性複合体を形成する。このような介在は、DNA鎖内部の平面塩基対と染料の平面芳香族環の間の強い疎水性結合と、DNAの負電荷を有するリン酸基と染料の正電荷を有する基の間の静電結合との組み合わせに由来する。PTEOSの平面芳香族フェニル基は、EtBrの平面環と疎水相互作用を形成し、ならびにPTEOSおよびTEOS中に存在する負電荷を有するSi−Oは、EtBrの正電荷を有する窒素と静電結合を形成し、従って、DNAで見られる介在を刺激し、従って、ナノ粒子が形成される際の重合に基づいて非常に蛍光性で安定な複合体を生じさせる。TEOSおよびEtBrとで形成されたナノ粒子は、それらの形成後に染料が粒子から洗い落とされるので、低い蛍光のものである。対照的に、PTEOSを添加したとき、洗浄時に染料を保持する高蛍光性の粒子が形成された。染料の蛍光強度は、最初のモノマー混合物中のPTEOSの割合が増すにつれて増加することにも注目された。その後のすべての取り込み実験の際には1:1 v/vの比率を使用した。しかし、この染料は、高強度UV照明への暴露下で光退色を受けやすく、したがって、指紋現像作業用に適するレポーターシステムではないことが判明した。
【0110】
(ii)クリスタルバイオレット(CV)およびブロモチモールブルー(BTB)
クリスタルバイオレット(CV)およびブロモチモールブルー(BTB)を、独立して1:1混合のPTEOSモノマーとTEOSモノマーの混合物に含めた。両方の染料分子は、それらが平面フェニル基を含有する点でEtBrに類似しているが、CVは、EtBr中に存在するものに類似した第四アンモニウム基および第二アミノ基を含有し、これに対して、BTBは、フェノール基およびスルホン酸基を有する酸性分子である(図5)。CV取り込みナノ粒子は、暗紫色を有する粒子を生じさせた。これは、シラン残基との強い求引性相互作用を生じさせるCV中のアミノ基に起因し得る。比較して、BTB粒子は、検査でBTB染料がシリカナノ粒子内に維持されていることが見出せないようなオフホワイトであった。これは、おそらく、BTBの陰イオン化した酸性基とモノマー内の負電荷を有するSi−O基との反発に起因する。
【0111】
(iii)ローダミンの類似体
ローダミンBは、暗赤色の粉末を生じさせ、これに対してローダミン6Bは、オレンジ色の粉末を生じさせた(図示しない)。これらの両方が、強く蛍光性であった。
【実施例2】
【0112】
TEOS/PTEOSゾルゲルへの染料の取り込みに対するAPTESの影響
これは、TEOS:PTEOS粒子についての上記調製方法を使用して行った。加えて、同じ染料を使用したが、APTESをモノマー混合物に取り込んだ。ここでは、3:3:6のPTEOS:APTES:TEOS比を、通常の(2.5mL:2.5mL)PTEOS:TEOS比の代わりに用いた(1.25mL:1.25mL:2.5mL)。使用した染料は、フルオレセイン、チアゾールオレンジ、過塩素酸オキサジン、メチレンブルー、塩基性黄40および塩基性赤28であった。加えて、2つのタイプのローダミンを使用した、ローダミンBおよびローダミン6G。各場合、染料ドープ粒子は、磨砕および篩い分けしたミクロ粒子として単離した。
【0113】
広範な安定な染料ドープ粒子を形成した。各場合、上記PTEOSおよびTEOS法を使用して、水溶液から染料をミクロ粒子に取り込んだ。例えば、ローダミンBは、暗赤色粉末を生じさせ、一方、ローダミン6Bは、オレンジ色のものを生じさせた。両方とも強く蛍光性であった。対照的に、APTESをモノマーの混合物に含めたとき、得られた粉末は、薄ピンク色であり、低い残留蛍光のものであった。同じ現象が、フルオレセインナトリウムについて観察され、このとき、APTESの添加は、また、蛍光染料の取り込み不良を生じさせ、殆ど蛍光性でないオフホワイトの粉末を生じさせた。これらの結果は、シリカ粒子中のアミノ基の存在が、染料−ポリマー相互作用を不安定にして、染料が水性処理条件下で抽出され得る粒子を生じさせることを示している。
【実施例3】
【0114】
潜在指紋用の現像剤としての染料ドープ疎水性ナノ粒子懸濁液の使用
新しい(散粉の約20分前)プリントと時を経たプリント(様々な条件を中で詳述)の両方を調査した。21歳の白人女性および33歳の白人男性が、顕微鏡用非多孔質スライドガラス(VWR Int.)、供給されたものを使用に指紋を付着させた。現像には二つの方法を使用した。少量の懸濁液(97:3 v/vの水/エタノール中、10% w/vのもの500μL)を、滴下ピペットを使用してプリントに塗布した。2〜3分後、過剰な水で穏やかに洗浄することにより過剰な懸濁液を除去した。その後、そのプリントを放置して空気乾燥させた。あるいは、前記スライドを2〜3分間その懸濁液に浸漬させた。重力により過剰な現像液を除去し、前のとおり、その表面を空気乾燥させた。
【0115】
得られた指紋を種々の光学的方法によって視覚化した。蛍光の観察については、CSILtd.からのハンドヘルドのUVサーチライト(λ 415nm)を使用した。さらなる蛍光画像化および捕捉には、Tecan LS300光学スキャナ(英国、ThealeのTecan UK)を使用した。現像した指紋は、Nikon Coolpix 5400カメラを使用してデジタル捕捉もした。
【0116】
新しいプリントと時を経たプリントの両方について蛍光ナノ粒子と有色ナノ粒子の両方を現像剤として使用することに成功した。前者の例は、ローダミン6Gを取り込んだ粒子について図6(上)に示し、後者の例は、クリスタルバイオレット取り込み染料を有する粒子について図7(右)に示す。白色光照明下とUV照明下の両方で、蛍光粒子についての優れた鮮明度が見られた(図6の右上)。
【0117】
カーボンブラック、二酸化チタン、磁鉄鉱、クリスタルバイオレットおよびメチレンブルーが取り込まれたミクロ粒子での従来の散粉によって得られたプリントの例を図8に示す。優れた鮮明度がすべての粒子で観察され、これは、このアプローチの普遍性を証明した。しかし、散粉については、直径45〜63マイクロメートルの粒子が最良の結果を与えた。
【実施例4】
【0118】
潜在指紋用の散粉剤としての染料ドープ疎水性ミクロ粒子の使用
この調査のための開発した染料ドープ粒状粉末を、リスの毛のブラシまたはガラス繊維(Zephyr)ブラシのいずれかを使用して潜在指紋にブラッシングした。カーボンブラックおよび二酸化チタン含有粒子は、ガラス繊維(Zephyr)ブラシを使用して塗布した。社内開発磁性粉末は、市販のプラスチック磁気ブラシ(英国、ノーサンプトンのCrime Scene Investigation Equipment Ltd.)で塗布した。
【0119】
得られた指紋を種々の光学的方法によって視覚化した。蛍光の観察については、CSILtd.からのハンドヘルドのUVサーチライト(λ 415nm)を使用した。さらなる蛍光画像化および捕捉には、Tecan LS300光学スキャナ(英国、ThealeのTecan UK)を使用した。現像した指紋は、Nikon Coolpix 5400カメラを使用してデジタル捕捉もした。
【0120】
篩い分けからの様々な画分を散粉剤として使用した。塗布が最も容易で、最高鮮明度のプリントを生じさせるものは、蛍光および有色粒子については篩サイズ45〜63μmを有するものであり、亜粒子埋め込み粒子については63〜90μmのものであった。図6(下)に、白色照明下(左)およびUV照明下(右)、蛍光染料(ローダミン6G)で現像したプリントの例を示す。図7は、クリスタルバイオレット取り込み染料を塗布することによって生成された、ガラス上の40日経過サンプルからの散粉済プリントを示す(左)。一般に、蛍光および染料ドープ粒子でのほうが良好な鮮明度が観察された(図8)が、埋め込み粒子もやはり良好な鮮明度でプリントを生じさせた。
【0121】
以下のパラグラフは、本開示の一部を形成する。
1.TEOSモノマーとPTEOSモノマーの混合物と加水分解剤とを一段階で互いに反応させることを含む、疎水性シリカ粒子を調製するための方法。
【0122】
2.TEOSモノマーとPTEOSモノマーの混合物と、アルカリとを一段階で互いに反応させることを含む、疎水性シリカ粒子を調製するための方法。
【0123】
3.前記アルカリが、水酸化物である、パラグラフ2に記載の方法。
【0124】
4.前記水酸化物が、水酸化アンモニウムである、パラグラフ3に記載の方法。
【0125】
5.前記疎水性シリカ粒子が、反応媒体から単離される、パラグラフ1から4のいずれかに記載の方法。
【0126】
6.疎水性シリカミクロ粒子が、
a.反応生成物を遠心分離する段階;
b.その反応生成物を水相から有機相に抽出する段階;
c.その有機相を蒸発させる段階;および
d.(iii)で得られた生成物を粉砕し、篩い分けする段階
を含む方法を使用して単離される、パラグラフ5に記載の方法。
【0127】
7.前記有機相が、ジクロロメタンである、パラグラフ6に記載の方法。
【0128】
8.前記ミクロ粒子が、約30〜90μmの間の平均直径を有する、パラグラフ7に記載の方法。
【0129】
9.前記ミクロ粒子が、約45〜65μmの間の平均直径を有する、パラグラフ8に記載の方法。
【0130】
10.前記ミクロ粒子が、約65〜90μmの間の平均直径を有する、パラグラフ9に記載の方法。
【0131】
11.疎水性シリカナノ粒子が、水溶液:溶剤溶液に反応生成物を懸濁させる段階を含む方法を使用して単離される、パラグラフ5に記載の方法。
【0132】
12.前記溶剤が、エタノールである、パラグラフ11に記載の方法。
【0133】
13.前記ナノ粒子が、400〜500nmの平均直径を有する、パラグラフ10に記載の方法。
【0134】
14.TEOS:PTEOSの比率が、1:1 v/vである、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【0135】
15.染料分子が、反応生成物に取り込まれる、パラグラフ1から14のいずれかに記載の方法。
【0136】
16.前記染料分子が、TEOSまたはPTEOSモノマー上の官能基に結合される、パラグラフ15に記載の方法。
【0137】
17.前記官能基が、疎水性である、パラグラフ16に記載の方法。
【0138】
18.前記官能基が、親水性である、パラグラフ17に記載の方法。
【0139】
19.前記TEOSモノマー上の官能基が、負電荷を有するSi−O基である、パラグラフ16に記載の方法。
【0140】
20.前記PTEOSモノマー上の官能基が、平面芳香族フェニル基である、パラグラフ16に記載の方法。
【0141】
21.磁性または常磁性亜粒子が、反応生成物に取り込まれる、パラグラフ1から18のいずれかに記載の方法。
【0142】
22.二酸化チタン、カーボンブラックまたは磁鉄鉱が、TEOS/PTEOSモノマーの混合物に添加されている、パラグラフ19に記載の方法。
【0143】
23.ある表面上の潜在指紋を現像するための薬剤としての、先行するパラグラフのいずれかに記載の方法により調製された疎水性シリカ粒子の使用。
【0144】
24.前記疎水性シリカ粒子が、粉塵または懸濁液の中で前記表面に塗布される、パラグラフ23に記載の使用。
【0145】
25.ある表面上の潜在指紋を現像するための薬剤としての疎水性シリカ粒子の使用。
【0146】
26.前記疎水性シリカ粒子が、粉塵または懸濁液の中で前記表面に塗布される、パラグラフ25に記載の使用。
【0147】
参考文献
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】カーボンブラック埋め込みナノ粒子のSEM。
【図2】カーボンブラック埋め込みミクロ粒子のSEM。
【図3】38〜63μmメッシュによって得られたカーボンブラックが埋め込まれた疎水性ミクロ粒子のサイズ分布。
【図4a】非晶質シリカナノ粒子の電子回折パターン。
【図4b】α−石英の電子回折パターン。
【図5】有色および蛍光染料の構造。
【図6】ローダミン6G取り込み粒子で現像したプリント。ナノ粒子懸濁液として(上)および散粉用粉末として(下)塗布。左;白色光照明:右;UV照明。
【図7】クリスタルバイオレット取り込みミクロ粒子を散粉した40日経過したプリントのディテール(左)、およびクリスタルバイオレット取り込みナノ粒子の懸濁液で現像した同じ供与者からのプリント。
【図8】亜粒子を取り込んだもの(上)または染料を取り込んだもの(下)を散粉したガラス上の時を経たプリントの例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランエーテルモノマーと有機変性シランエーテルモノマーの混合物と、加水分解剤とを一段階で互いに反応させることを含む疎水性シリカ粒子を調製するための方法。
【請求項2】
前記シランエーテルモノマーが、TAOS(テトラアルコキシシラン)モノマーである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TEOS(トリエトキシシラン)モノマーとPTEOS(フェニルトリエトキシシラン)モノマーの混合物と、加水分解剤とを一段階で互いに反応させることを含む請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シランエーテルモノマーが、TMOS(テトラメトキシシラン)モノマーである請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記加水分解剤が、酸である先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記加水分解剤が、アルカリである請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリが、水酸化物である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリが、水酸化アンモニウムである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
染料分子および/または有色粒子が、前記モノマーと前記加水分解剤の混合物に含まれ、それによって、前記疎水性シリカ粒子に取り込まれる先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記染料分子および/または有色粒子が、ローダミンB、ローダミン6G、カーボンブラック、二酸化チタン、磁鉄鉱、クリスタルバイオレットおよびメチレンブルーから選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
磁性および/または常磁性粒子が、前記モノマーと前記加水分解剤の混合物に含まれ、それによって、前記疎水性シリカ粒子に取り込まれる先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記モノマーが、TEOSモノマーおよびPTEOSモノマーである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
赤鉄鉱、二酸化チタン、カーボンブラックおよび/または磁鉄鉱が、前記モノマーの混合物に含まれる請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
a.請求項1から13のいずれかに記載の方法から得られた疎水性シリカ粒子を含有する、反応生成物を遠心分離すること;
b.前記反応生成物を水相に懸濁させること;
c.前記反応生成物を前記水相から有機相に抽出すること;
d.前記有機相を蒸発させること;および
e.(d)において得られた生成物を粉砕し、篩い分けして、疎水性シリカミクロ粒子を形成することをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記有機相が、非極性溶剤または低い極性を有する溶剤、例えばジクロロメタンである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ミクロ粒子が、約10から約90μm、任意で約45から約65μm、およびさらに、任意で約65から約90μmの平均直径を有する請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から15のいずれかに記載の方法から得られた疎水性シリカ粒子を含む、反応生成物を水溶液:溶剤溶液に懸濁させて、疎水性ナノ粒子の懸濁液を形成することをさらに含む請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記反応生成物が、懸濁前に遠心分離される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記水溶液:溶剤混合物が、第一の水溶液:溶剤混合物であり、任意で、約60(水溶液):40(溶剤)と約40:60の間の混合物である、請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(i)前記疎水性シリカ粒子を流体に懸濁させ、前記懸濁液を遠心分離し、粒子を回収すること;
(ii)前記粒子を流体に再懸濁させ、再遠心分離し、再回収すること;および任意で
(iii)少なくとも一回(ii)を繰り返し、それによって疎水性ナノ粒子を懸濁させることをさらに含む請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記流体が、水および有機溶剤を含む混合物である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有機溶剤が、水混和性溶剤である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記有機溶剤が、エタノールである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記最初の流体が、約60(水):40(溶剤)から約40:60の混合比での水と有機溶剤の混合物を含む請求項21から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記最初の懸濁ステップ(i)と最後の懸濁ステップとの間で前記混合物中の溶剤の割合を増加させる請求項21から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
少なくとも二回、再懸濁、再遠心分離および再回収の段階を行い、最初の懸濁と同じ混合物を第一の再懸濁において使用する請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ナノ粒子が、約200から約900nmの平均直径、任意で約300から約600nmの平均直径、およびさらに、任意で約400から約500nmの平均直径を有する、請求項13から19のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記シランエーテルがTEOSであり、前記有機変性シランエーテルがPTEOSである場合、TEOS:PTEOSの比率が、1:1 v/vである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記粒子を乾燥させて前記粒子の凝集を助長してミクロ粒子を形成する最終段階を含む請求項17から27のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
ある表面上の疎水性領域または付着物、例えば潜在指紋を検出するための薬剤としての疎水性シリカ粒子の使用。
【請求項31】
前記疎水性シリカ粒子を請求項1から29のいずれかに記載の方法によって得ることができる請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記疎水性シリカ粒子が、粉塵または懸濁液の中で前記表面に塗布される請求項30または請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記懸濁液が、エタノール水性懸濁液である請求項31に記載の使用。
【請求項34】
前記シリカ粒子が、指紋の表面に塗布されたときに前記粒子を画像化するための染料分子および/または有色粒子をさらに含む請求項30から33のいずれかに記載の使用。
【請求項35】
前記粒子が、ミクロ粒子であり、ならびに約10μmから約90μmの間、任意で約45から約65μmまで、およびさらに、任意で約65から約90μmまでの平均直径を有し、任意で、前記ミクロ粒子を、指紋と接触させるための散粉剤に含める請求項30から34のいずれかに記載の使用。
【請求項36】
前記粒子が、ナノ粒子であり、ならびに約100から900nmまで、任意で約300から約600nmまで、およびさらに任意で約400から500nmの平均直径を有し、任意で、前記薬剤が、エタノール水性懸濁液中の前記ナノ粒子を含む請求項29から35のいずれかに記載の使用。
【請求項37】
指紋があるまたはあるかもしれない領域と、疎水性シリカ粒子を含む薬剤とを接触させることを含む、指紋または他の疎水性塊もしくは付着物を検出および/または同定するための方法。
【請求項38】
前記シリカ粒子を請求項1から29のいずれかに記載の方法によって得ることができる請求項37に記載の方法。
【請求項39】
指紋を視覚化または画像化することをさらに含む方法であって、前記シリカ粒子が、視覚化または画像化剤を含み、前記粒子を前記表面と接触させた後、視覚化および/または画像化することを含む請求項37または請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記粒子が、指紋を画像化するための染料分子を含む請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記粒子が、磁気アプリケータを使用して前記領域に前記薬剤を塗布することを可能にする磁性または常磁性粒子を含む請求項37から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
光学的方法を使用して指紋を視覚化することをさらに含み、任意で、前記光学的方法が、UVサーチライト;ならびに、平床式光学スキャナ、蛍光スキャナおよびUV可視スキャナを含む光学スキャナから選択される請求項37から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
請求項1から29のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる疎水性シリカ粒子、例えば、約200nmから900nmまたは約10μmから約90μmまでの平均直径を有する粒子。
【請求項44】
染料分子と、
(i)磁化性または常磁化性粒子;
(ii)より小さなナノ粒子の合体であるミクロ粒子であって、10μmから約90μmの間の平均直径を有するミクロ粒子である;または
(iii)約200nmから約900nmの平均直径を有するナノ粒子である
という特徴のうちの一つ以上とを含む疎水性シリカ粒子。
【請求項45】
(i)例えば直径で500nm+/−100nmの平均粒径を有する、疎水性ナノ粒子を製造すること;および
(ii)前記ナノ粒子の合着を生じさせて、または、前記ナノ粒子を合着させて、例えば、少なくとも5μm、一般には少なくとも20μmおよび好ましくは少なくとも約25から30μmの直径を有するミクロ粒子の場合のようなエアフィルタ(例えば、フェースマスク)による除去に適するサイズの、ミクロ粒子にすることを含む例えば少なくとも10μmの直径を有するシリカミクロ粒子を製造するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−504833(P2009−504833A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525649(P2008−525649)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050233
【国際公開番号】WO2007/017700
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508043109)ユニヴァーシティ・オヴ・サンダーランド (4)
【Fターム(参考)】