説明

疼痛減弱のためのイプシロン阻害化合物の使用方法

本明細書における開示は、修飾εPKC阻害ペプチド、そのようなペプチドの作製方法、および疼痛の処置のためにεPKC阻害ペプチドを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許仮出願第60/881,396号、同60/903,684号、同60/917,876号、および同60/977,332号の恩典を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、異なるタイプの疼痛を調節する化合物の開発および使用に関し、重複するおよび/または重複しない生化学的活性の機序を持つ化合物は、疼痛および関連する状態の処置のために単一の化合物実体(いわゆる「ハイブリッド」化合物またはペプチド)に組み入れられる。ここで、化合物は、少なくとも1つのキャリア部分に結合された1つまたは複数のイプシロンPKC(εPKC)阻害ペプチドを含み、阻害ペプチド、キャリア部分、またはその両方は、得られた化合物の安定性、効力、またはその両方を上昇させるために原型配列から修飾されている。εPKC阻害ペプチドは、PKCアルファ、ベータ、デルタ、ガンマ、シータ、またはイータを含む他のPKCアイソザイムの1つまたは複数に対して特異的な活性を持つ1つまたは複数の調節ペプチドにも結合されている可能性がある。アイソザイム特異的PKC調節物質に対するハイブリッド化合物またはペプチドの利点は、様々なタイプの疼痛を調節するより広い活性スペクトルを提供する、および/またはより強い効力および/またはより安全な疼痛調節化合物を提供すること、ならびに/または疾病状態の複数の局面を緩和する二重の治療活性(例えば、疼痛軽減活性と抗炎症活性を組み合わせる)を提供することである。
【背景技術】
【0003】
背景
疼痛は、炎症によって、神経損傷によって、または過敏組織の機械的、温熱性、もしくは化学的刺激に対する反応によって引き起こされる、不快な感覚である。これは大きな健康問題となっており、毎年、疼痛関連の状態のために、多くの労働日数が失われている。様々な疼痛の中でも、神経障害性疼痛は、神経の傷害に起因する疾患で、100万人を超えるアメリカ人が罹患する。この状態は、糖尿病、帯状疱疹感染(水痘/帯状ヘルペス)、外傷性神経損傷、癌、または化学療法剤を用いた癌の処置を含む、様々な原因により発生する。炎症性疼痛は、病因が複数あるために最大の単一カテゴリーを形成している、異なった種類の疼痛である。疼痛は、関節リウマチのような自己免疫疾患などの他の局所性または全身性疾患に関連しており、かつ慢性であるため長い苦しみを引き起こすので、新しい鎮痛療法の探求は、医学界にとって大きな関心のある領域である(Reichling および Levine, 1999)。
【0004】
現在の疼痛治療の大部分は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)またはオピオイドのような全身投与する薬剤を用いる。これらの薬剤の多くは、心リスクの上昇から嗜癖までにわたる、全身性の副作用を引き起こす。カプサイシンクリームのような局所投与の経路を用いる疼痛治療薬は少数しかなく、これらはすべての種類の疼痛に効くわけではなく、局所刺激(灼熱感、皮膚疼痛、皮膚炎症等)を引き起こす。
【0005】
タンパク質キナーゼC(「PKC」)は、細胞の増殖、遺伝子発現の調節、およびイオンチャネルの活性を含む、様々な細胞の機能に関与するシグナル伝達の鍵となる酵素である。PKCのアイソザイムのファミリーには、その相同性および活性化物質に対する感受性に基づいて少なくとも3つのサブファミリーに分けられる、少なくとも11種の異なるタンパク質キナーゼが含まれる。このファミリーとは古典型、新型、および非典型のサブファミリーである。各アイソザイムには、アイソザイム特有の(「可変」または「V」)ドメインが散在するいくつかの相同な(「保存された」または「C」)ドメインが含まれる。イプシロンPKCは、δ、η、およびθPKCとともに「新型」サブファミリーのメンバーである。このサブファミリーのメンバーは、通常C2相同ドメインを持たず、活性化にカルシウムを必要としない。PKCの個々のアイソザイムは、様々な疾患状態の機序に関与するとされている。εPKCに由来するεPKC阻害ペプチドが作製され、侵害受容に影響を与えることが示された。たとえば、米国特許第6,376,467号および同第6,686,334号を参照されたい。
【0006】
このアプローチの1つの問題は、切り出された断片の「裸の」末端が、タンパク質中のそれらの状況のものとは異なり、断片がタンパク質の残りの部分に接続するところにおいて遊離のアミンおよびカルボキシル基を露出するということである。これらの異質の部分により、ペプチドがプロテアーゼに対してより感受性になる可能性がある。そのような不都合がある結果、ペプチドの効力は望むほど得られず、インビボの半減期は大きく短縮する可能性がある。
【0007】
先行技術の第2の分野は、同様な戦略を使用するもので、HIV-Tatおよび他のタンパク質の断片として、「キャリア」ペプチドが設計される。これらのペプチド断片は、親タンパク質が細胞膜を通過する能力を模倣する。特に興味深いのは、これらのキャリアペプチドに「カーゴ」ペプチドを接続でき、それによってキャリアペプチド断片によってカーゴとキャリアの両ペプチドが、細胞内に運ばれるという性質である。
【0008】
キャリアペプチドが断片であるということを認識する場合には、カーゴペプチドには上記と同様な欠陥が当てはまる可能性がある。すなわち、露出した末端が、プロテアーゼ感受性を含む望ましくない性質を与える可能性がある。
【0009】
先行技術のカーゴ/キャリアペプチド構築物は、カーゴとキャリアとの間にCys-Cysジスルフィド結合を用いており、これはペプチドが細胞に入る場合にグルタチオン還元のようないくつかの作用物質によって切断され得る。この性質は、生物活性にとって重要であると考えられており、というのはカーゴとキャリアの物理的な分離によって、細胞内でこの2つの部分が独立した効果を発揮できるようになるためである。しかし、この仮説は納得のいくように検証されておらず、実際、切断不能な類似体でも良好な活性を持つ可能性がある。さらに、ジスルフィド結合は、組立てが厄介であり、化学的分解を受けやすい。
【0010】
特定の先行技術のカーゴ/キャリアペプチドの設計は、タンパク質の連続するアミノ酸配列に基づいている。しかし、ペプチドの最適な長さは、十分に定義されておらず、類似体を試験した経験に基づいてではなく、配列の比較分析および所望の配列の理論的予測に基づいている。したがって、もとのεPKCのドメインに対応する追加の残基を含むような、以前に記載されたカーゴペプチドの類似体では、効力の増強が期待される可能性がある。
【発明の概要】
【0011】
発明の開示
本明細書における開示は、修飾εPKC阻害ペプチド、そのようなペプチドを作製する方法、および疼痛の処置のためにεPKC阻害ペプチドを使用する方法に関する。開示する発明は、疼痛知覚の抑制における、局所投与されたタンパク質キナーゼCイプシロン(εPKC)阻害物質の果たす役割にも関する。εPKC阻害物質を用いて全身的に疼痛を抑制する方法、特に、一次求心性機能への作用および交感神経系の調節を必要とする機序を介する方法。εPKC特異的阻害物質および別のPKC調節ペプチドを含むハイブリッドペプチドも、本明細書に開示する本発明の範囲内であると考えられる。複数のアイソザイム特異的PKC調節物質の活性が単一のハイブリッド化合物/ペプチドに組み合わされるように、任意のPKC調節ペプチドを用いてハイブリッド構築物を調製できる。他の局面および態様は、当業者には以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】修飾εPKC阻害ペプチド(KP-1634)の模式図を示す。
【図2】阻害性εPKC阻害ペプチド(KP-1586)の化学式を示す。
【図3】試験ペプチドの相対濃度を時間の経過とともにプロットすることにより、ペプチドKP-1586、KP-1630、およびKP-1631の安定性に対するラットまたはヒトの血清の影響を示す。
【図4】試験ペプチドの相対濃度を時間の経過とともにプロットすることにより、ペプチドKP-1632、KP-1633、およびKP-1634の安定性に対するラットまたはヒトの血清の影響を示す。
【図5】試験ペプチドの相対濃度を時間の経過とともにプロットすることにより、ペプチドKP-1635、KP-1636、およびKP-1637の安定性に対するラットまたはヒトの血清の影響を示す。
【図6】試験ペプチドの相対濃度を時間の経過とともにプロットすることにより、ペプチドKP-1586、KP-1630、KP-1631、KP-1632、KP-1633、KP-1634、KP-1635、KP-1636、KP-1637、およびKP-1638の化学的安定性に対する時間および温度の影響を示す。
【図7】対照および2つの用量のKP-1586で処置されたラットにおける1分当たりのフリンチ(flinch)の回数の時間に対するプロットにおいて、急性疼痛の減弱を示すホルマリン試験の結果を示す。
【図8】カラゲナンモデルにおいて、ペプチドKP-1586および対照ペプチドKP-1587に関して、足引っ込めの潜時をプロットした棒グラフで、急性炎症性疼痛に対するεPKC阻害ペプチドの影響を示す。
【図9】カラゲナンを投与した5日後にPGE2を投与して慢性痛覚過敏を促進したラットの慢性炎症性疼痛モデルにおいて、足引っ込めの潜時をプロットした棒グラフで、阻害ペプチドKP-1586または対照ペプチドKP-1587の影響を比較している。
【図10】足引っ込めの閾値の測定値に対するεPKC阻害ペプチドの影響を示す折れ線グラフである。
【図11】L5神経切断後のラット(神経障害性疼痛モデル)における温熱性痛覚過敏に対するεPKC阻害ペプチドの皮下注入の影響の棒グラフである。
【図12】L5神経切断後のラットにおいて足引っ込めの潜時を用いて測定した、温熱性痛覚過敏に対するεPKC阻害ペプチドの皮下ボーラス投与の影響を示す折れ線グラフである。
【図13】L5神経切断後のラットにおける温熱性痛覚過敏に対するεPKC阻害ペプチドの皮下注入の影響を示す棒グラフである。
【図14】機械的刺激に応答した、λカラゲナン誘導痛覚過敏に対する、局所投与したεPKC阻害物質の影響。皮内(A)および皮下(B)経路でεV1-2を注射すると足引っ込めの閾値(PWT)が上昇する。PWTの上昇は疼痛の低下を示す。カラゲナン前のレベルまでPWTが上昇することは、抗痛覚過敏効果と呼ばれる。カラゲナン前のレベルを超えてPWTが上昇することは、潜在的な鎮痛効果があるとされる。
【図15】手術と同側の肢の神経切断の遠位に投与されたεPKC阻害物質の抗痛覚過敏効果に対する、片側求心路遮断の効果。同側の足に対する化合物の皮内(i.d.)投与は、求心路遮断動物においてもまだカラゲナン誘導疼痛を阻害することができた。
【図16】εPKC阻害物質の抗痛覚過敏効果に対する両側腰部交感神経切除に加え両側副腎神経節切除の効果。実験はSPGN(交感神経節後ニューロン)末端が退化するように、手術後7日目に行われた。外科的な交感神経切除は、片側求心路遮断手術の効果と似た効果を呈した。εPKC阻害物質(εV1-2-TAT)の皮下注射は、交感神経切除ラットにおいて抗痛覚過敏/鎮痛効果を誘導しなくなったが、偽手術をした動物への効果は変わらなかった。痛覚過敏の逆転は非常に早く、εPKC阻害物質の投与の5分以内であった。
【図17】εPKC阻害物質の抗痛覚過敏効果に対するフェントラミン注射の効果。非選択性αアドレナリン受容体拮抗物質であるフェントラミンの注射は、事前にフェントラミンを注射した肢の遠位面に注射したεPKC阻害物質(εV1-2-TAT)の疼痛軽減効果を排除した。フェントラミンの後では、εV1-2-TATの抗痛覚過敏効果は失われた。
【図18】ラットのカラゲナン炎症性疼痛モデルにおける機械的痛覚過敏に対する皮内KAI-1678の効果。ラットは、右後足の足底部へのカラゲナン注射の60分後に、KAI-1678の皮内ボーラス注射の処置をされた。KAI-1678は、同側の後肢(すなわちカラゲナン投与と同じ肢、黒記号)、または対側の後肢(すなわちカラゲナンを投与されなかった肢、白抜き記号)に10 mcg/kg(三角)または100 mcg/kg(丸)が投与された。データは、規定の時点における各群(N=2〜5動物/群)の動物の測定値(PWT)の平均±SEM(平均の標準誤差)として示されている。約90gの付近の点線は、カラゲナン前のベースラインのPWT測定値を表し、疾患状態を示すPWTは約60gである。カラゲナン前のベースライン以上の測定値は、カラゲナン誘導機械的痛覚過敏が完全に逆転したことを示す。
【図19】ラットのカラゲナン炎症性疼痛モデルにおける機械的痛覚過敏に対するKAI-1678の皮下ボーラス投与の効果。KAI-1678またはKAI-1678の不活性類似体であるKP-1723の皮下ボーラス注射は、右後足の足底部へのカラゲナン注射の60分後にラットに投与された。KAI-1678またはKP-1723は対側後肢(すなわち、カラゲナンを投与されなかった肢)に、示された用量が投与された。データは、規定の時点における各群(N=2〜5動物/群)の動物の測定値(PWT)の平均±SEM(平均の標準誤差)として示されている。約90gの付近の点線は、カラゲナン前のベースラインのPWT測定値を表し、疾患状態を示すPWTは約62gである。カラゲナン前のベースライン以上の測定値は、カラゲナン誘導機械的痛覚過敏が完全に逆転したことを示す。
【図20】ラットのカラゲナン炎症性疼痛モデルにおけるKAI-1678の皮下ボーラス投与の活性に対する投与部位の効果。右後足の足底表面にカラゲナン注射を受けたラットは、カラゲナン注射の60分後から4時間間隔で2回のKAI-1678の10 mcg/kgの皮下ボーラス注射を受けた。示されたように、KAI-1678の2回の投与はラットの異なる部位に行われた。データは、規定の時点における各群(N=2動物/群)の動物の測定値(PWT)の平均±SEM(平均の標準誤差)として示されている。約90gの付近の点線は、カラゲナン前のベースラインのPWT測定値を表し、疾患状態を示すPWTは約60gである。カラゲナン前のベースライン以上の測定値は、カラゲナン誘導機械的痛覚過敏が完全に逆転したことを示す。
【図21】ラットのカラゲナン炎症性疼痛モデルにおける機械的痛覚過敏に対するKAI-1678の皮下注入の効果。ラットは、右後足の足底部へのカラゲナン注射の60分後に、KAI-1678またはKAI-1678の不活性類似体であるKP-1723の6時間の皮下注入で処置された。KAI-1678またはKP-1723は、対側後肢(すなわち、カラゲナンを投与されなかった肢)に、示された用量速度で投与された。データは、規定の時点における各群(N=2〜6動物/群)の動物の測定値(PWT)の平均±SEM(平均の標準誤差)として示されている。約90gの付近の点線は、カラゲナン前のベースラインのPWT測定値を表し、疾患状態を示すPWTは約55gである。カラゲナン前のベースライン以上の測定値は、カラゲナン誘導機械的痛覚過敏が完全に逆転したことを示す。
【図22】ラットのカラゲナン炎症性疼痛モデルにおける機械的痛覚過敏に対するKAI-1678の静脈内注入の効果。ラットは右後足の足底部にカラゲナン注射を受けた60分後から、KAI-1678の静脈内注入で処置された。KAI-1678は2時間(三角)または5時間(丸)、示された用量速度で頚静脈から注入された。5時間の注入終了後に、モデルの応答性を試験するために、10 mg/kgのインドメタシンが強制経口投与された。データは、規定の時点における各群(N=3または4動物/群)の動物の測定値(PWT)の平均±SEM(平均の標準誤差)として示されている。約90gの付近の点線は、カラゲナン前のベースラインのPWT測定値を表し、疾患状態を示すPWTは約55gである。カラゲナン前のベースライン以上の測定値は、カラゲナン誘導機械的痛覚過敏が完全に逆転したことを示す。
【図23】ラットのカラゲナン炎症性疼痛モデルにおけるKAI-1678の活性に対する坐骨神経および伏在神経の切断の効果。ラットの左(対側)後脚から坐骨神経および伏在神経の1 cmの部分が外科的に除去された。翌日、外科処置を受けたラットの右後足の足底部にカラゲナンが注射された。カラゲナン注射の60分後に、対側肢の神経切断部位の近位(白丸)または遠位(黒丸)において、25 mcg/kg/hrで4時間かけたKAI-1678の皮下注入を開始した。データは、規定の時点における各群(N=4動物/群)の動物の測定値(PWT)の平均±SEM(平均の標準誤差)として示されている。約90gの付近の点線は、カラゲナン前のベースラインのPWT測定値を表し、疾患状態を示すPWTは約60gである。カラゲナン前のベースライン以上の測定値は、カラゲナン誘導機械的痛覚過敏が完全に逆転したことを示す。
【図24】ラットのカラゲナン炎症性疼痛モデルにおける機械的痛覚過敏に対する皮下投与したKAI-1678の活性への外科的交感神経切除の効果。両側腰部交感神経切除および副腎神経節切除の1週間後に、外科処置を受けたラット(交感神経切除動物:黒丸)または腰部交感神経鎖および副腎神経節が露出されたが除去されなかったラット(偽手術動物:白丸)の右後足の足底部にカラゲナンが注射された。カラゲナン注射の60分後に、各動物のカラゲナン投与部位の対側の後肢において25 mcg/kg/hrで4時間かけたKAI-1678の皮下注入を開始した。データは、規定の時点における各群(N=2〜4動物/群)の動物の測定値(PWT)の平均±SEM(平均の標準誤差)として示されている。約90gの付近の点線は、カラゲナン前のベースラインのPWT測定値を表し、疾患状態を示すPWTは約55gである。カラゲナン前のベースライン以上の測定値は、カラゲナン誘導機械的痛覚過敏が完全に逆転したことを示す。
【図25】ラットのL5神経切断神経障害性疼痛モデルにおける機械的異痛に対するKAI-1678の皮下ボーラス投与の効果。L5脊髄神経切断の7日後に、ラットに示された用量のKAI-1678の皮下ボーラス投与を行なった(0日目)。化合物投与後の示された時間に、von Freyフィラメントを用いて動物を試験し、(左)30回の試験のうちの足引っ込めの回数(各フィラメントで5回の試験)、または(右)5回の試験のうち少なくとも3回足を引っ込めた最低のvon Freyフィラメントとして決定した、足引っ込めの閾値が決定された。データは、規定の時点における各群(N=6動物/群)の動物の平均±SEM(平均の標準誤差)として示されている。
【図26】ラットのL5神経切断神経障害性疼痛モデルにおける異痛に対するKAI-1678の皮下注入の効果。L5脊椎神経の神経切断の翌日に、示された1日用量の化合物を送達するために、KAI-1678を含む浸透圧ミニポンプが皮下に埋め込まれた。示された時間に動物を試験し、(左)von Freyフィラメントを用いた30回の試験(各フィラメントで5回の試験)のうちの足引っ込めの回数、または(右)輻射熱源への曝露に応答した足引っ込めの潜時が決定された。データは、規定の時点における各群(N=6動物/群)の動物の平均±SEM(平均の標準誤差)として示されている。
【図27】IVボーラス後のラットにおけるKAI-1678血漿濃度。300および3,000 mcg/kgの静脈内ボーラス投与後のKAI-1678の血漿濃度。3匹のラット(300 mcg/kg)および2匹のラット(3,000 mcg/kg)の平均データが示されている。これらのデータから得られる終末半減期の予備的見積りは、約38および約66分である(それぞれ300 mcg/kgおよび3,000 mcg/kg)。
【図28】IV注入により投与されたラットにおけるKAI-1678血漿濃度。50 mcg/kg/hrの静脈内注入で投与されたKAI-1678の血漿濃度。3匹のラットの平均データが示されている。
【図29】皮下ボーラス投与後のラットにおけるKAI-1678血漿濃度。約80および800 mcg/kgの皮下ボーラス投与後のKAI-1678の血漿濃度。3匹のラット(80 mcg/kg)および4匹のラット(800 mcg/kg)の平均データが示されている。これらのデータから得られる終末半減期の予備的見積りは、約35分である。
【図30】皮下注入により投与されたラットにおけるKAI-1678血漿濃度。2時間の皮下注入により投与されたラットにおけるKAI-1678の血漿濃度。各用量レベルの2匹のラットの平均データが示されている。
【図31】5日間の皮下注入により投与されたイヌにおけるKAI-1678血漿濃度。3 mg/kg/日、8 mg/kg/日、および25 mg/kg/日の皮下注入により投与されたイヌにおけるKAI-1678の血漿濃度。試料は1日目の最初の4時間および6日目の注入終了時(EOI)に回収され、その間の期間には採取されていないことに注意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の説明
本明細書に記載される本発明は、イプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)アイソザイムを阻害し、別のアイソザイム特異的PKC調節物質に結合されている、修飾ペプチドに関する。典型的には、本明細書に論じられるεPKCは、阻害ペプチドの標的細胞への輸送を促進するために、キャリア部分に結合されている。カーゴ阻害ペプチド、キャリアペプチド、または両ペプチドを、原型対照に対して修飾し、得られるカーゴ/キャリアペプチド構築物の安定性を上昇させることができる。開示する修飾εPKCペプチドは、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、および炎症性疼痛のような様々なタイプの疼痛を、予防、逆行、および別のやり方で処置する上で有用である。εPKC阻害ペプチドを使用して、他のPKCアイソザイムに対する活性を持つ1つまたは複数のアイソザイム特異的PKC調節ペプチドを含む、ハイブリッドペプチド構築物も作製できる。
【0014】
定義
本明細書で使用される以下の用語および熟語は、文脈がそうでないことを示す場合を除き、以下に説明される意味を持つことが、全体として意図される。
【0015】
「PKC調節化合物」は、PKCアイソザイムの酵素活性を調節する能力のある、低分子およびペプチドを含む任意の化合物である。「調節」という用語は、PKCアイソザイムの酵素活性および他の機能的活性を上昇させるかまたは低下させることを指す。特異的なPKC調節物質(「アイソザイム特異的PKC調節物質」)は、1つのPKCアイソザイムを、別のものよりも正または負のいずれかに測定可能な程度に調節する任意の化合物である。
【0016】
「PKC活性化物質」は、PKCアイソザイムの酵素活性を活性化する能力のある、低分子およびペプチドを含む任意の化合物である。特異的なPKC活性化物質は、1つのPKCアイソザイムを、別のものよりも測定可能な程度に活性化する任意の化合物である。
【0017】
「PKC阻害物質」は、PKCアイソザイムの酵素活性および他の機能的活性を阻害する能力のある、低分子およびペプチドを含む任意の化合物である。特異的なPKC阻害物質は、1つのPKCアイソザイムを、別のものよりも測定可能な程度阻害する任意の化合物である。
【0018】
「εPKC活性化ペプチド」は、εPKC酵素を活性化できるペプチドを指す。
【0019】
「εPKC阻害ペプチド」は、εPKC酵素を阻害または不活化できるペプチドを指す。
【0020】
「γPKC活性化ペプチド」は、γPKC酵素を活性化できるペプチドを指す。
【0021】
「γPKC阻害ペプチド」は、γPKC酵素を阻害または不活化できるペプチドを指す。
【0022】
「KAI-1586」という用語は、「キャップ付き」HIV Tat由来トランスポーターペプチドにCys-Cysジスルフィド結合を介して結合したεPKCの第1の可変領域に由来するペプチドを指し、以下のように表すことができる。

【0023】
「KAI-1634」という用語は、共有結合し、εPKCの第1の可変領域に由来する、2つの修飾εPKCペプチド、およびキャップ付きHIV Tat由来トランスポーターペプチドを指す。構築物は、図1に示される。
【0024】
「キャップ付き」という用語は、化学修飾されてアミノ末端、カルボキシル末端、または両末端が変化しているペプチドを指す。非修飾カーゴペプチドにジスルフィド結合したキャップ付きキャリアペプチドは、図2に示される。
【0025】
「キャリア」という用語は、たとえば、米国特許および米国特許出願公開第 4,847,240号、同5,888,762号、同5,747,641号、同6,593,292号、US2003/0104622、US2003/0199677、およびUS2003/0206900に記載されるように、ポリリジン、ポリアルギニン、アンテナペディア(Antennapedia)由来ペプチド、HIV Tat由来ペプチド、および同様のものを含む、カチオン性ポリマー、ペプチド、および抗体配列のような、細胞の取り込みを促進する部分を指す。キャリア部分の例は、「キャリアペプチド」であり、これはトランスポーターペプチドに化学的に会合または結合しているεPKC阻害ペプチドの細胞内取り込みを促進するペプチドである。
【0026】
本明細書で定義される「予防」という用語は、「処置」の1つの要素であり、本明細書で定義される「防止」および「抑制」の両方を含むことが意図される。ヒトの医療では、最終的な誘導事象は不明または潜在的である可能性があるか、またはその事象の発生のずっと後まで患者が確認できないので、「防止」および「抑制」を区別することは必ずしも可能ではないことは、当業者に理解されるだろう。
【0027】
「安定性」という用語は、一般に、たとえば、保管寿命に基づくcys-cys交換を遅らせることによって、タンパク質分解を遅らせることによって、または両方によって、保管寿命を改善する修飾を指す。「効力」という用語は、特定の結果を得るために必要な特定のペプチド組成物の量に関する。組成物の用量を減少させて望ましい終点を達成することができる場合、1つのペプチド組成物は、別のものより効力が強いという。所定のペプチド組成物の効力の改善を伴う、その組成物の特定の修飾を行うことができる。
【0028】
イプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)阻害物質
本発明で使用できる公知のεPKC阻害物質は多い。PKCの低分子阻害物質は、すべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,141,957号、同5,204,370号、同5,216,014号、同5,270,310号、同5,292,737号、同5,344,841号、同5,360,818号、同5,432,198号、同5,380,746号、および同5,489,608号、(欧州特許第0,434,057号)に記載されている。これらの分子は、以下のクラスに属する:N,N'-ビス-(スルホンアミド)-2-アミノ-4-イミノナフタレン-1-オン;N,N'-ビス-(アミド)-2-アミノ-4-イミノナフタレン-1-オン;隣位の置換炭素環式化合物;1,3-ジオキサン誘導体;1,4-ビス-(アミノ-ヒドロキシアルキルアミノ)-アントラキノン;フロ-クマリンスルホンアミド;ビス-(ヒドロキシアルキルアミノ)-アントラキノン;およびN-アミノアルキルアミド、2-[1-(3-アミノプロピル)-1H-インドール-3-イル]-3-(1H-インドール-3-イル)マレイミド、2-[1-[2-(1-メチルピロリジノ)エチル]-1H-インドール-3-イル]-3-(1H-インドール-3-イル)マレイミド、Go 7874。PKCの他の公知の低分子阻害物質は、以下の出版物に記載されており(Fabre, S., et al. 1993. Bioorg. Med. Chem. 1, 193, Toullec, D., et al. 1991. J. Biol. Chem. 266, 15771, Gschwendt, M., et al. 1996. FEBS Lett. 392, 77, Merritt, J.E., et al. 1997. Cell Signal 9, 53., Birchall, A.M. et al. 1994. J. Pharmacol. Exp. Ther. 268, 922. Wilkinson, S.E., et al. 1993. Biochem. J. 294, 335., Davis, P.D., et al. 1992. J. Med. Chem. 35, 994)、かつ、以下のクラスに属し:2,3-ビス(1H-インドール-3-イル)マレイミド(ビスインドリルマレイミドIV);2-[1-(3-ジメチルアミノプロピル)-5-メトキシインドール-3-イル]-3-(1H-インドール-3-イル)マレイミド(Go 6983);2-{8-[(ジメチルアミノ)メチル]-6,7,8,9-テトラヒドロピリド[1,2-a]インドール-3-イル}-3-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)マレイミド(Ro-32-0432);2-[8-(アミノメチル)-6,7,8,9-テトラヒドロピリド[1,2-a]インドール-3-イル]-3-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)マレイミド(Ro-31-8425);および3-[1-[3-(アミジノチオ)プロピル-1H-インドール-3-イル]-3-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)マレイミド ビスインドリルマレイミドIX、メタンスルホネート(Ro-31-8220)、すべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0029】
イプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)阻害ペプチド
様々なεPKC阻害物質は、本明細書に記載されており、本明細書に開示する方法を用いて使用できる。阻害ペプチドは、可変ドメインでも定常ドメインでも任意のドメインに由来され得る。したがって、阻害ペプチドは、V1、V2、V3、V4、またはV5に由来することができる。また阻害ペプチドは定常領域C1(C1a、C1b)、C3、C4、またはC5に由来され得る。これらの領域の1つまたは複数と重複するペプチドも考えられる。原型ペプチドの別の供給源は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、「タンパク質キナーゼCのアイソザイム特異的拮抗物質」という題名の米国特許出願第11/011,557号に見出される。
【0030】
1つの態様では、カーゴペプチドは、E-A-V-S-L-K-P-T(SEQ ID NO: X)というアミノ酸配列、ペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシル末端にまたは内部に位置するシステイン残基およびカーゴペプチドに連結したキャリアペプチドを含む、εV1-2というεPKC阻害ペプチド誘導体である。上記のカーゴペプチドは、互いに結合し、最終的にキャリアペプチドに結合した1つまたは複数のカーゴペプチドをさらに含むことができる。
【0031】
キャリアとカーゴの両方の修飾は、効力、生体液/組織における安定性、および化学的安定性の改善を目的として行われた。これらの変化は、様々な臨床適応において使用するための強化した特性をεPKCに提供する。
【0032】
用いられた修飾には以下が含まれる。
1. インビボにおけるタンパク質分解を妨げ、それにより効力および/または有効性の持続時間を増加させるための、カーゴおよび/またはキャリアペプチドのキャッピング
2. 効力を改善するための、親タンパク質の連続領域をさらに組込んだ重複ペプチドの作製;
3. 化学的安定性および薬剤製品の寿命を改善するための、単一ペプチド鎖においてカーゴおよびキャリアを持つ線状ペプチドの作製;
4. プロテアーゼ耐性および効力を改善するための、2つまたはそれ以上のコピー数の活性ペプチドを持つ多量体ペプチドの作製;
5. タンパク質分解を妨げるための、ペプチドのレトロ-インベルソ型類似体の作製;および
6. 化学的安定性を改善するためのジスルフィド類似体の導入。
【0033】
本明細書に記載される修飾は、修飾εPKC阻害ペプチドの効力、血漿安定性、および化学的安定性を改善する。εPKC阻害ペプチドに対する効果的な修飾は、原型εPKC阻害ペプチドを選択し、かつ疼痛治療のためのカーゴペプチドとなるようにこれらのペプチドを修飾することにより、同定される。原型ペプチドは、既知のペプチド、またはεPKC阻害ペプチドとしてまだ同定されていないものでもよい。1つの好ましい原型配列は、E-A-V-S-L-K-P-T(SEQ ID NO: X)であり、この場合、ペプチドは、未修飾であり、かつカーゴペプチドおよびキャリアペプチドのアミノ末端に存在するCys残基を介してキャリアに結合されているが、出発カーゴペプチドとして任意の阻害性εPKCペプチドを使用できる。様々な修飾または類似体ペプチドが考えられる。そのような類似体のいくつかは、重複し、原型配列を越えて伸長しているアミノ酸配列を含む。原型に対して切断されている類似体ペプチドもある。さらに、原型配列の類似体は、置換されたアミノ酸がアラニン残基またはアスパラギン酸残基である、原型配列に対して1つまたは複数のアミノ酸置換を持っていてもよい。そのようなアラニンまたはアスパラギン酸を含むペプチドの体系的な作製は、「スキャニング」として知られている。類似体および修飾キャリアペプチドを含む線状ペプチドの作製も、さらに考えられる。
【0034】
原型配列に対するさらなる修飾は、カーゴペプチド、もしくはキャリアペプチド、または両ペプチドの内部の特定の分解部位を修飾し、これらの部位を分解から阻止するアミノ酸置換または他の化学的修飾を導入することに向けられる。
【0035】
表1は、原型配列として本発明に使用されるイプシロンPKC阻害ペプチドのいくつかの例を列挙する。
【0036】
(表1)イプシロンPKC由来のペプチド

【0037】
以下にさらに詳細に説明されるように、εPKC阻害ペプチドは、キャリアペプチドのようなキャリア部分に化学的に結合していることが好ましい。1つの態様では、阻害ペプチドとキャリアペプチドとがジスルフィド結合で連結している。キャリア部分をεPKC阻害ペプチドと結合するために、静電的相互作用および疎水性相互作用も利用できる。ジスルフィド結合を形成する場合は、Cys残基をPKC阻害ペプチドまたはキャリアペプチド配列に付加すると都合がよい場合がある。Cys残基は、アミノ末端もしくはカルボキシル末端、または両末端に付加できる。Cys残基は、カーゴペプチドまたはキャリアペプチドのアミノ酸配列内部にも存在し得る。そのような内在性Cys残基は、キャリアペプチドとカーゴペプチドとの間のジスルフィド結合の連結を安定化することが示されている。別の連結系では、グリシン残基リンカーを用いて関心対象のペプチドを線状化する。1つの好ましい態様は、KP-1678であり、これは、アミノ末端がアセチル化され、カルボキシル末端がアミノ基

により修飾されている、εV1-2およびTATキャリアペプチドの配列を持つ。
【0038】
ハイブリッドペプチド構築物
上記のように、PKC調節ペプチドに対する様々な修飾が考えられる。そのような修飾の一例には、たとえば、カーゴのPKC調節ペプチドおよびキャリアペプチドを含む、線状ペプチドの作製が含まれる。別の例は、複数のPKC調節ペプチドおよびキャリアペプチドを含む、多量体ペプチド構築物である。いずれのペプチド設計モデルも、複数の調節PKCペプチドが含まれるように修飾でき、かつそれらの調節ペプチドを、同一の構築物を用いて異なるPKCアイソザイムを調節できるように選択できる。
【0039】
ハイブリッドペプチドアプローチは、単一機能のペプチド構築物以上に様々な利点がある。たとえば、同じ構築物中の複数のPKC調節ペプチドの使用により、他のアイソザイム特異的調節ペプチドを用いて、2つまたはそれ以上の異なるPKCアイソザイムを同時に調節することが可能になる。このような合同調節は、アイソザイム特異的ペプチド単独を使用する場合よりも特異性が低いが、アイソザイム非特異的ペプチド調節物質および他の低分子型キナーゼ阻害物質を使用するよりは特異性が高い。アイソザイム特異的調節ペプチドの使用は、単なる例示である。ハイブリッドペプチド構築物は、任意のPKCアイソザイムに特異的または非特異的である調節ペプチドも含み得る。
【0040】
ハイブリッドペプチド構築物を作製するために、任意のPKCアイソザイムのペプチド調節物質を使用することが考えられる。PKCのアイソザイムファミリーには、相同性および活性化物質に対する感受性に基づいて、少なくとも3つのサブファミリーに分けられる少なくとも11の異なるタンパク質キナーゼが含まれている。各アイソザイムには、アイソザイム特有の(「可変」または「V」)ドメインが散在するいくつかの相同な(「保存された」または「C」)ドメインが含まれる。「古典型」または「cPKC」サブファミリーのメンバーであるα、βI、βII、およびγPKCは、4つの相同性ドメイン(C1、C2、C3、およびC4)を含んでおり、活性化にはカルシウム、ホスファチジルセリン、およびジアシルグリセロールまたはホルボールエステルを必要とする。「新型」または「nPKC」サブファミリーのメンバーであるδ、ε、η、およびθPKCでは、C2様のドメインがC1ドメインの前にある。しかし、そのC2ドメインはカルシウムに結合しないため、nPKCサブファミリーは活性化にカルシウムを必要としない。最後に、「非典型」または「aPKC」サブファミリーであるζおよびλPKCは、C2相同性ドメインとC1相同性ドメインの半分の両方を欠いており、ジアシルグリセロール、ホルボールエステル、およびカルシウムに非感受性である。1つまたは複数のPKCアイソザイムに対する活性を持つ調節ペプチドを用いて、ハイブリッドペプチド構築物を調製することができる。
【0041】
好ましい態様では、ハイブリッドペプチド構築物は、1つまたは複数のεPKC調節ペプチド、および1つまたは複数のγPKC調節ペプチドを含む。1つの好ましい態様では、1つまたは複数のεPKC阻害ペプチドを1つまたは複数のγPKC阻害ペプチドと共に用いて、εPKC-γPKCハイブリッド阻害ペプチドが作製される。
【0042】
様々なεPKC阻害ペプチドが上に論じられているが、これらのペプチドは、ハイブリッドペプチド構築物を調製するために使用できるいくつかのペプチドの例である。様々なγPKC阻害物質は、本明細書に記載されており、本明細書に開示する方法を用いて使用できる。したがって、阻害ペプチドは、可変ドメインにでも、定常ドメインにでも、任意のドメインに由来してもよい。したがって、阻害ペプチドは、V1、V2、V3、V4、またはV5に由来してもよい。阻害ペプチドは、定常領域C1(C1a、C1b)、C3、C4、またはC5に由来してもよい。これらの領域の1つまたは複数が重複するペプチドも考えられる。カーゴペプチドは、様々なドメインに由来し、長さが5〜30アミノ酸の範囲である。より具体的には、PKCドメインに由来するペプチドは、長さが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30残基である。原型ペプチドの別の供給源は、全体が参照により本明細書に組み入れられる、活性化ペプチドを阻害ペプチドに変換する「タンパク質キナーゼCのアイソザイム特異的拮抗物質」という題名の米国特許出願第11/011,557号に記載されている。好ましいγPKC阻害ペプチド原型の配列は、R-L-V-L-A-S(SEQ ID NO: XX)である。PKCペプチドに関して上記の全ての修飾は、ハイブリッド構築物で使用することが考えられるγPKCにも同様に当てはまる。
【0043】
以下の表には、原型配列として本発明を用いて使用するためのガンマPKC阻害ペプチドのいくつかの例が列挙されている。
【0044】
(表2)

【0045】
(表3)

【0046】
(表4)

【0047】
(表5)

【0048】
(表6)

【0049】
(表7)

【0050】
(表8)

【0051】
(表9)

【0052】
2007年4月6日付出願の米国特許仮出願第60/910,588号に議論されている全てのPKCペプチドは、参照により本明細書に組み入れられる。
【0053】
キャリア部分
細胞への取り込みを意図した様々な分子(特にペプチドのような巨大分子)が、細胞膜を通して輸送されにくいことが分かった。細胞への取り込みを促進するために提案された解決策には、ポリリジン、ポリアルギニン、アンテナペディア由来ペプチド、HIV Tat-由来ペプチド、および同様なものを含む、カチオン性(すなわち、正に荷電した)ポリマー、ペプチド、および抗体配列のようなキャリア部分の使用がある。(たとえば、米国特許および米国特許出願公開第4,847,240号、同5,888,762号、同5,747,641号、同6,593,292号、US2003/0104622、US2003/0199677、およびUS2003/0206900号を参照されたい。)
【0054】
カーゴ/キャリア複合体の特定の例は、KP-1634(SEQ ID NO: X)であり、これはアミノ末端にキャップが付いた2つのεPKC由来ペプチド、ならびにアミノ末端およびカルボキシル末端の両方にキャップが付いたHIV Tat由来のキャリアペプチドからできている。
【0055】
さらなる阻害物質
εPKCのさらなる阻害物質は、εPKCの活性化、細胞内移動、細胞内受容体(例えば、RACK)への結合、または触媒活性を測定するアッセイ法を用いて同定できる。伝統的には、PKCファミリーメンバーのキナーゼ活性は、リン酸ドナーとして放射性ATPを用いて、および基質としてヒストンタンパク質または短いペプチドを用いて、再構成されたリン脂質環境において、少なくとも部分的に精製したPKCを用いてアッセイされてきた(T. Kitano, M. Go, U. Kikkawa, Y. Nishizuka, Meth. Enzymol. 124, 349-352 (1986); R. O. Messing, P. J. Peterson, C. J. Henrich, J. Biol. Chem. 266, 23428-23432 (1991))。最近の改善には、生理的濃度におけるタンパク質キナーゼ活性を測定し、自動化および/またはハイスループットスクリーニングで使用できる、迅速で高感度の化学発光アッセイ法(C. Lehel, S. Daniel-Issakani, M. Brasseur, B. Strulovici, Anal. Biochem. 244, 340-346 (1997))、および単離された膜におけるPKCを用いるおよびMARCKSタンパク質由来の選択的なペプチド基質を用いるアッセイ法(B. R. Chakravarthy, A Bussey, J. F. Whitfield, M. Sikorska, R. E. Williams, J. P. Durkin, Anal. Biochem. 196, 144-150 (1991))が含まれる。εPKCの細胞内移動に影響を与える阻害物質は、分画(R. O. Messing, P. J. Peterson, C. J. Henrich, J. Biol. Chem. 266, 23428-23432 (1991))または免疫組織化学(米国特許第5,783,405号;米国特許出願第08/686,796号 現在では米国特許第6,255,057号、現在では米国特許第6,255,057号)によってεPKCの細胞内局在性を決定するアッセイ法により、同定できる。εPKCの阻害物質を同定するためには、アッセイ法はεPKCを用いて行なわれるべきである。そのようなεPKC阻害物質の選択性は、εPKCに対する阻害物質の効果を、他のPKCアイソザイムに対する効果と比較することによって決定できる。前記の特許および出版物の関連部分は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0056】
εPKC阻害物質を同定するためのさらなるアッセイ法は、米国特許第5,783,405号、同6,156,977号、および同6,423,684号に見出され、これらは全てその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0057】
機序
本明細書に報告される実験データにより、
(1) 試験動物の後肢に局所送達されたεPKC阻害ペプチドが、神経障害性および炎症性の疼痛モデルにおいて抗痛覚過敏/鎮痛効果を示したこと;
(2) εPKC阻害ペプチドのそのような効果が座骨および伏在求心性神経の内部を通る神経によって仲介されると考えられ、これらの神経が後肢に伸びているためεPKC阻害ペプチドによって阻害される神経反射の一部であり得ること;
(3) εPKC阻害ペプチドの効果が、交感神経副腎依存性と考えられ、これはεPKCが交感神経節に存在し神経伝達物質放出過程で機能するのみならず(例えば、Scholze et al.: J Neurosci., 22; 5823-32, 2002)、C線維(疼痛感知神経)の感作も調節する(Khasar, et al., Neuron, 24:253-260, 1999)という報告と一致すること;および
(4) εPKC阻害ペプチドの抗痛覚過敏/鎮痛効果が、アドレナリン受容体によって仲介されていることが、示される。注目すべきことは、副腎髄質および交感神経節後ニューロン(SPGN)末端から放出される神経伝達物質であるエピネフリン(EPI)は、C線維を感作することが公知である(ChenおよびLevine, J. Pain, 6: 439-446, 2005; Khasar, et al., Neuron, 24: 253-260, 1999)。εPKCがN型カルシウムチャネルをリン酸化する(ZhuおよびIkeda, J. Neurophysiol., 74: 1546-60, 1994)ことによってCa++流入を調節し(Boehm et al., J. Neurosci., 16: 4516-603, 1996)、それにより交感神経ニューロンからのカテコールアミンの放出を調節することが報告された(Scholze et al.: J. Neurosci., 22:5823-32, 2002)。
【0058】
εPKC阻害ペプチドの抗痛覚過敏効果の同定は、外因性EPIまたはイソプロプラノロール(ISO、合成βアドレナリン受容体作用物質)がβアドレナリン受容体の刺激を介してC線維に作用する、MessingおよびLevine(米国特許第6,686,334 B2号、米国特許第6,376,467 B1号および2002/0151465 A1)により論じられたものとは異なる。その研究では、外因性EPIまたはISOの痛覚過敏促進効果は、εPKC依存性であり、SPGN末端の自己調節性α2-アドレナリン受容体には作用しない。米国特許第6,686,334および同6,376,467号ならびに米国特許出願公開第2002/0151465 A1号は、下流に対するεV1-2の抗痛覚過敏効果、すなわち、外因性カテコールアミンによって、または理論的には交感神経副腎系から放出された後の内因性カテコールアミンによって、引き起こされる効果に注目した。本明細書で開示するデータは、MessingおよびLevineと矛盾するものではなく、疼痛の神経伝達においてεPKCの果たす役割に注目し、その理解を広げるものである。さらに、本明細書に提示される所見は、εPKC阻害ペプチドの抗痛覚過敏効果も、SPGNにおける「上流の」神経伝達により仲介されることを示し、交感神経副腎系に対するεPKC阻害ペプチドの効果をより特異的に強調するものである。
【0059】
本発明は、遠隔部位に局所的に投与されたεPKC阻害物質が、SPGNを介する機序によって疼痛を阻害でき、かつ該εPKC阻害物質が、体全体にわたる阻害物質の全身性分布に限定されることもまたそれを必要とすることもないことを示す。対側の肢の座骨神経および伏在神経を切断すると(求心路遮断)、皮下投与したεPKCが遠隔部位からの疼痛を阻害する能力が失われるので、遠隔作用、迅速な作用開始、およびεPKC阻害物質が低い用量で疼痛応答を阻害するためには、無傷の神経が必要である。さらに、両側の腰部交感神経切除に加え両側の副腎神経節切除、および片側のフェントラミン(非選択性αアドレナリン受容体拮抗物質)注射は、εPKC阻害物質の疼痛低下作用を失わせた。
【0060】
εPKC阻害物質で観察される、非常に低い用量、迅速な作用開始、および遠隔作用は、はるかに選択性の低いεPKC阻害物質(全身性投与では毒性を持つ阻害物質を含む)を用いて疼痛応答を抑制できる可能性があるという結論を支持する。さらに、本発明者らは局所的に投与された非常に低用量のεPKCがこの効果を持ち得ることを示したので、非選択性のおよび全身毒性があるεPKC阻害物質を同様に非常に低用量(すなわち、その薬剤の用量制限全身毒性レベルよりもはるかに低い用量)で投与しても、全身毒性の副作用が全くまたはほとんどなく、疼痛応答を阻害できる可能性があると考えられる。
【0061】
使用方法および製剤
本明細書に記載される修飾ペプチドは、疼痛の防止および処置に有用である。議論のため、疼痛およびその処置は、異なるクラスに分類される:急性、慢性、神経障害性、および炎症性の疼痛。本明細書に記載される修飾εPKC阻害ペプチドは、急性、慢性、神経障害性、および炎症性の疼痛の処置に有用である。
【0062】
興味深いことに、本明細書で開示する化合物は、複数の刺激によって引き起こされる神経障害性疼痛の発生の減弱または防止にも役に立つ。たとえば、以下の実施例7で説明されるように、慢性炎症性疼痛は、カラゲナンの投与後にプロスタグランジンE2の投与することによって誘導できる。この現象は、対象が複数の疼痛刺激または疼痛感作物質を受け、慢性の炎症性または神経障害性疼痛を示す、様々な系のモデルとなる。タキソールの投与を受ける化学療法患者は、神経障害性疼痛が発生し、これは薬剤の初回投与後に通常は解消することが分かっている。しかし、タキソールの全過程処置を受ける化学療法患者には、継続的な神経障害性疼痛がつきまとう。本開示は、予防的に、化学療法剤と共に、または化学療法の後に、本明細書に記載されるεPKC阻害ペプチドを投与すると、慢性の炎症性または神経障害性疼痛状態の発生を減弱または防止するために効果的であると予期する。
【0063】
一旦、カーゴ/キャリアペプチド構築物が組み立てられ、原型と比較し改善した安定性、効力、またはその両方が試験されると、構築物は、疼痛を誘導する事象の前、事象の間、または事象の間に継続的に、対象に投与するために、薬学的に許容される製剤中に入れられる。
【0064】
「薬学的に許容される製剤」は、望ましい結果を与え、かつ医師が患者に対する潜在的な害の方が患者に対する潜在的な恩恵よりも大きいと確信するのに十分な有害副作用が生じないようなやり方で修飾εPKC阻害物質を投与するために適した、製剤を含む。修飾εPKC阻害物質を伴う使用に適した薬学的に許容される製剤の成分は、投与の経路および方法によって部分的に決定される。製剤は全体として、典型的には、糖、アミノ酸、または電解質のような単純な化学物質を含む、薬学的に許容される担体に組み入れられた1つまたは複数の修飾εPKC阻害ペプチドを含む。例となる溶液は、典型的には生理食塩水または緩衝液を用いて調製される。薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知であり、様々な製剤で使用され得る賦形剤を含む可能性がある。たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, A. R. Gennaro, Editor, Mack Publishing Company (1990); Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, A.R. Gennaro, Editor, Lippincott Williams & Wilkins (2000); Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd Edition, A.H. Kibbe, Editor, American Pharmaceutical Association, and Pharmaceutical Press (2000); およびHandbook of Pharmaceutical Additives, MichaelおよびIrene Ash編, Gower (1995)を参照されたい。
【0065】
製剤中の阻害物質の用量は、カーゴ/キャリア構築物の安定性および効力、投与経路、ならびに所望の投与計画により影響される様々なパラメータにしたがって変わる。1μg/kg〜100mg/kg体重、好ましくは1μg/kg〜1 mg/kg、および最も好ましくは10μg/kg〜1 mg/kgの範囲の一日用量が考えられる。
【0066】
修飾εPKC阻害物質は、局所または全身の投与が可能である。局所投与は、局所性投与、経皮投与、皮内投与、髄腔内投与、腹腔内投与、または皮下注射によって実施できる。修飾εPKC阻害物質の全身投与は、好ましくは非経口であるが、経口投与、口腔内投与、および鼻腔内投与も考えられる。一般に非経口投与は、皮下、筋肉内、腹腔内、および静脈内のいずれかの注射による。修飾阻害ペプチドの注射可能な形態は、溶液もしくは懸濁液、注射の前に溶液または液体中の懸濁液に再構成するために適した固体の形態(例えば、乾燥または凍結乾燥)、または乳濁液として、通常の形態で調製できる。一般に、適当な賦形剤には、たとえば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、または同様なものが含まれる。さらに、たとえば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、シクロデキストリン等を含む、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、溶解度改善剤、等張化剤、および同様なもののような非毒性の補助物質を少量用いることもできる。
【0067】
修飾εPKC阻害ペプチドは、必要に応じて疼痛の処置のために投与できる。予防のためには、修飾εPKC化合物は、疼痛誘導性の事象の前に投与できる。たとえば、ペプチドは、予期される疼痛誘導性の事象の5分前、10分前、15分前、20分前、25分前、30分前、35分前、40分前、45分前、50分前、55分前、1時間前、数時間前、1日前、数日前、1週間前、または数週間前に投与できる。インビボで特に安定な修飾ペプチドを用いるか、ペプチドの徐放性製剤、例えば、髄腔内ポンプによる送達を用いることによって、さらに長い予防投与期間を得ることができる。
【0068】
実施例
以下の実施例は、上記の発明を用いるやり方をさらに十分に記載し、本発明の様々な局面を実行するために考えられる最良の様態を説明するためのものである。これらの実施例は、本発明の真の範囲を限定することはなく、説明の目的で提示されていることを理解する必要がある。本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0069】
実施例1
εPKC阻害物質類似体の最適化
効力および安定性に対する様々な化学修飾の影響を検討するために、原型として先行技術のεPKC阻害配列(KP-1636)が使用された。原型配列KP-1586は、以下に記載される作業の鋳型として使用された。この作業では様々なカーゴペプチドおよびキャリアペプチドが修飾され、これらは表2に提供されている。
【0070】
(表2)

【0071】
表2の「Tat」は、HIV Tatの断片47〜57を指し、「Cap Tat」は、この同じペプチドのNアセチル類似体またはCアミド類似体を指す。「hC」または「hCys」という用語は、ホモシステインアミノ酸を指す。
【0072】
実施例2
εPKC阻害物質類似体の安定性
実施例1に記載された様々なカーゴ/キャリアペプチド構築物の血漿中安定性および化学的安定性が試験された。化合物の血漿中の安定性は、ヒトおよびラットの両血清を用い、30分の処理後に出発材料の量が決定された。化学的安定性は、9日間の処理後に残存する出発材料の量の決定によって評価された。
【0073】
(表3)

【0074】
実施例3
εPKC阻害物質類似体の血漿中の安定性の経時変化
実施例1に記載された様々なカーゴ/キャリアペプチド構築物の血漿中の安定性は、ヒトおよびラットの両血清を用いて試験され、30分の処理まで時間の経過とともに出発材料の量が決定された。カーゴ/キャリアペプチドKP-1586、KP-1630、およびKP-1631の経時変化が図3に示されており、ペプチドKP-1632、KP-1633、およびKP-1634のデータは図4に示されており、ペプチドKP-1635、KP-1636、およびKP-1637のデータは図5に示されている。二量体ペプチドおよびキャップなしのキャリアペプチドを含む類似体は、原型材料よりもより安定していた。興味深いことに、KP-1586とKP-1630の安定性の比較で見られるように、カーゴペプチドにキャップを付けても、ほとんど影響がなかった。
【0075】
実施例4
εPKC阻害物質類似体の化学的安定性の経時変化
実施例1に記載された様々なカーゴ/キャリアペプチド構築物の化学的安定性は、37℃で200時間を超える時間にわたり、ペプチドの相対的濃度を調べることにより試験された。カーゴ/キャリアペプチドの経時変化は図6に示されている。この試験から得られるデータでは、原型配列は類似体と比較すると中程度でしか安定でないことが分かった。線状およびホモシステイン含有の両構築物とも、原型配列に比べて安定性が改善していた。たとえば、KP-1637は著しい安定性を示した。
【0076】
実施例5
修飾εPKC阻害ペプチドを用いた急性疼痛の減弱
ホルマリン誘導疼痛試験を用いて、修飾εPKCペプチドが急性疼痛を減弱する能力が検討された。本試験で使用された全てのラットにおいて、ホルマリンは足底内経路で投与された。試験対象は、疼痛誘導薬剤の15分前に髄腔内投与によって、修飾εPKCペプチドKP-1586を含むホルマリンの投与を受けた(予防モード)。試験対象には、2つの異なる濃度の修飾ペプチドが使用された。この実験から得られたデータは、図7に示されている。この試験の結果は、修飾εPKC阻害ペプチドの予防投与は、試験動物において1分当たりのフリンチの回数を減らすのに有効であったことを示す。したがって、修飾εPKCペプチドの投与は、急性疼痛刺激を減弱するために有効である。
【0077】
実施例6
修飾εPKC阻害ペプチドを用いた慢性疼痛の減弱
Chung(L5神経切断)は、慢性(神経障害性)疼痛の周知のモデルである。本開示に提供される代表的な修飾εPKCペプチドKP-1586は、全身送達をするとこのモデルにおいて疼痛の低下に有効であった。この実験の結果は、図8に示されている。
【0078】
試験ペプチドKP-1586は、皮下浸透圧ポンプによって何日間も送達された場合に、改変Chungモデルにおいて温熱性痛覚過敏を抑制したが、対照ペプチドは抑制しなかった。そのような阻害効果は、用量依存的であり、開始用量は10〜50 pmol/日であった。抗痛覚過敏効果は、埋め込みの翌日からすでに検出可能で、継続的に化合物が送達されると少なくとも1週間は継続した。
【0079】
同じモデルで、KP-1586の慢性皮下送達は、機械的異痛を抑制したが、対照ペプチドKP-1587はしなかった。この阻害は、ある観察時間枠、特にモデルの確立後7日目の試験では、用量依存的であった。抗異痛効果は、埋め込みの翌日からすでに検出可能になった。
【0080】
KP-1586はさらに、Chungモデルにおいて髄腔内投与後に、疼痛応答を修飾することができた。このモデルにおける薬剤の有効性は、単一のボーラス投与後に少なくとも90分続いた。
【0081】
実施例7
修飾εPKC阻害ペプチドを用いた慢性炎症性疼痛の減弱
カラゲナンを足底内に投与し、5日後にプロスタグランジンE2(PGE2)をラットの足に投与すると、炎症性の機序により急性および慢性の両疼痛が発生する。図9に示されるように、本明細書に記載される化合物の局所送達は、疼痛応答の発生を減弱させた。
【0082】
代表的な化合物KP-1586は、皮内投与により送達される場合には、カラゲナンの疼痛効果を逆行させることができたが、対照ペプチドKP-1587はできなかった。
【0083】
実施例8
皮下のεPKC阻害物質は炎症性疼痛を逆行させる
足引っ込め反応に対するεPKC阻害の効果を示すために、機械的疼痛モデルにおいて、カラゲナンを足底内に投与し、1時間後にKP-1634の皮下ボーラス投与を行なって試験した。図10に示されるように、阻害物質の投与後には足引っ込めの閾値は著しく上昇した一方、対照ペプチドKP-1587は同じ効果を誘導しなかった。
【0084】
実施例9
εPKC阻害ペプチドの皮下投与を用いた神経障害性疼痛の防止
皮下投与されたεPKC阻害ペプチドが神経障害性疼痛を防止する能力を試験するために、ChungモデルにおいてεPKCペプチドKP-1586が使用された。試験ペプチドは1 pmol/日、10 pmol/日、50 pmol/日、および100 pmol/日で投与された。この実験の結果は図11に示されている。
【0085】
皮下浸透圧ポンプによって送達され、術後1日、3日、および5日に試験された場合に、改変Chungモデルにおいて、試験ペプチドKP-1586は温熱性痛覚過敏を抑制したが対照ペプチド1587はしなかった。
【0086】
実施例10
εPKC阻害ペプチドの皮下投与を用いた神経障害性疼痛の逆行
皮下投与されたεPKC阻害ペプチドが神経障害性疼痛を逆行させる能力を試験するために、ChungモデルにおいてεPKCペプチドKP-1586が使用された。試験ペプチドは0.1 pmol/日、1 pmol/日、10 pmol/日、50 pmol/日、および1000 pmol/日で投与された。この実験の結果は図12に示されている。図13は切断事象の7日後に埋め込まれたポンプを用いた皮下注入により10 pmol/日で投与された阻害物質の効果を示す。
【0087】
実施例11
ラットでのPKCイプシロン阻害物質によるカラゲナン誘導機械的痛覚過敏の抑制における交感神経末端の役割
λカラゲナン(Carr)に誘導される炎症性疼痛には、交感神経系の活性が関与している。感覚神経ニューロンと同様に、交感神経ニューロンにはタンパク質キナーゼCのイプシロンアイソザイム(εPKC)が豊富にあり、εPKC阻害物質はCarr誘導性の機械的痛覚過敏を低下させるので、εPKC阻害物質の作用機序は、交感神経節後ニューロン(SPGN)を必要とするという仮説が立てられる。
【0088】
侵害受容屈曲反射は、Basile Analgesymeter(ランダルセリット(Randall-Selitto)試験)を用いて、軽く拘束したラットで定量した。炎症性の痛覚過敏は、化合物の投与の1時間前に片側の後足の背側に注射した、Carr(1%、5μL、皮内)によって誘導された。εPKC阻害ペプチド(εV1-2)は、全身性の経路により注射された。
【0089】
εV1-2の皮下注射は、Carr誘導の機械的痛覚過敏を用量依存的に抑制し、これは投与部位(同側もしくは対側の後肢、または背側の体幹)には依存しなかった。
【0090】
対照的に、εV1-2が坐骨および伏在神経の切断の遠位の皮下に投与された場合には、対側の足のCarr誘導の機械的痛覚過敏は抑制されなかった。この結果は、これらの神経における緊張性のニューロンシグナル伝達がεV1-2の作用部位である可能性を示唆した。さらに、実験の7日前に両側の腰部交感神経鎖(L2-L4)および両側副腎神経節を外科切除すると、εV1-2の抗痛覚過敏効果が完全に消失した。外科的交感神経切除の効果は、フェントラミン(10μg、Carr注射の直前に対側肢に皮下注射)のようなアドレナリン拮抗物質による急性処置に類似していた。
【0091】
本研究の結果は、εPKCの作用機序を示唆し、全身的に送達したεV1-2の抗痛覚過敏効果を示すものである。これらの結果は、炎症性疼痛の新規の治療法としてのεPKC阻害物質の開発の可能性を支持する。
【0092】
実施例12
タンパク質キナーゼCの選択的調節のためのペプチドを用いた疼痛応答の調節
λカラゲナン(Carr)に誘導される炎症性疼痛には、交感神経系の活性が関与していることが知られている。感覚神経ニューロンと同様に、交感神経ニューロンにはタンパク質キナーゼCのεアイソザイム(εPKC)が豊富にあり、εPKC阻害物質はCarr誘導性の機械的痛覚過敏を低下させるので、εPKC阻害物質の作用機序は、交感神経節後ニューロン(SPGN)を必要とするという仮説が立てられる。
【0093】
侵害受容屈曲反射は、Basile Analgesymeter(ランダルセリット試験)を用いて、軽く拘束したラットで定量した。炎症性の痛覚過敏は、化合物投与の1時間前に片側の後足の背側に注射した、Carr(1%、5μL、皮内)によって誘導された。εPKC阻害ペプチド(εV1-2)は、全身経路により注射された。
【0094】
εV1-2の皮下注射は、Carr誘導の機械的痛覚過敏を用量依存的に抑制し、これは投与部位(同側もしくは対側後肢、または背側の体幹)には依存しなかった。
【0095】
対照的に、εV1-2が坐骨神経および伏在神経の切断の遠位の皮下に投与された場合には、対側の足のCarr誘導の機械的痛覚過敏は抑制されなかった。この結果は、これらの神経における緊張性のニューロンシグナル伝達がεV1-2の作用部位である可能性を示唆した。さらに、実験の7日前に両側の腰部交感神経鎖(L2-L4)および両側副腎神経節を外科切除することにより、εV1-2の抗痛覚過敏効果が完全に消失した。外科的交感神経切除の効果は、フェントラミン(10μg、Carr注射の直前に対側肢に皮下注射)のようなアドレナリン拮抗物質による急性治療に類似していた。図14〜17を参照されたい。
【0096】
実施例12
KAI-1678の非臨床薬理学
KAI-1678が、通常は刺激のない刺激に対する亢進した応答である異痛、および有痛性刺激に対する亢進した応答である痛覚過敏を低下させる能力は、炎症性疼痛(カラゲナン誘導疼痛)および神経障害性疼痛(L5脊髄神経切断)のラットモデルにおいて評価された。カラゲナン誘導炎症性疼痛モデルでは、KAI-1678の局所皮内投与が機械的痛覚過敏を低下させるために有効であることが示された。しかし、遠隔部位へのKAI-1678の局所投与も同様に有効であり、これはKAI-1678の局所投与が系全体の疼痛緩和を提供し得ることを示唆した。この結論は、KAI-1678が、カラゲナン注射部位から離れた部位を含む動物の任意の部位へのボーラスまたは持続的注入のいずれかとしての皮下投与により有効であるという所見によって支持されている。KAI-1678は、系全体に及ぶ活性を持つと考えられるが、この化合物の静脈内注入は、最大の効果を示した皮下注入の終わりに測定されたレベルの5〜10倍の血漿定常状態レベルを達成するのに十分な用量速度であっても、カラゲナン誘導性の機械的痛覚過敏を阻害しない。KAI-1678の作用部位の解明は進行中であるが、化合物の標的を規定するために2つの所見が役立つ。カラゲナンの注射部位とは逆の後肢神経の座骨神経および伏在神経を破壊すると、神経破壊の遠位に投与された化合物の活性は消えるが、近位の場合には消えず、これは、化合物が有効性を示すために注射部位の機能的神経支配が必要であることを示唆する。さらなる検討は、KAI-1678が損傷部位の遠位に投与された場合に活性を持つためには、無傷の交感神経系およびαアドレナリン受容体シグナル伝達が必要であることを示す。これらの検討から得られる1つの仮説は、KAI-1678は、おそらく真皮内または表皮内で注射部位の局所神経に作用し、未同定の機序によって、αアドレナリン受容体シグナル伝達に依存する下行性の疼痛抑制シグナルを引き出すというものである。
【0097】
カラゲナンにより誘導される炎症性疼痛モデルで得られたのと類似した結果は、神経障害性疼痛におけるKAI-1678の有効性を探るために使用されたL5脊髄神経切断の単神経障害性疼痛モデルでも得られた。L5脊髄神経切断単神経障害性疼痛モデルでは、KAI-1678の皮下投与は損傷に誘導される異痛のレベルを低下させた。しかし、KAI-1678は両方の神経障害性疼痛モデルで活性を持っていたものの、最大の応答と最大の応答を引き出すために必要な用量とが、2つのモデル間で大きく異なっていた。これらの試験では、L5神経切断によって誘導された損傷は、KAI-1678による処置に対してはるかに感受性が高く、皮下のボーラスまたは注入のいずれにおいても投与された化合物の総用量が少なくても、損傷に誘導される異痛は完全に逆行した。
【0098】
これらを合わせると、非臨床薬理試験は、炎症性および神経障害性疼痛におけるKAI-1678の活性を支持する。さらにこれらの試験は、最大の効果と最大の効果を発揮するために必要な用量とが、疼痛の原因となっている損傷のタイプおよび供給源に依存して異なる可能性も示唆している。これらの各々のモデルにおいて、作用部位および作用機序を同定するための取り組みが継続している。
【0099】
カラゲナン炎症性疼痛モデルにおけるKAI-1678の活性
ラットのカラゲナンモデルは、炎症性疼痛の調節物質に対する応答を評価するために、広く使用されてきた。以下に記載する試験に用いられたモデルでは、右後肢の足底表面へ5μLの1%カラゲナン溶液の単回注射を用いて、局所浮腫および機械的痛覚過敏を生じる炎症応答が誘発された。機械的痛覚過敏は、カラゲナン注射の部位における機械的疼痛性刺激に応答した侵害受容屈曲反射(ランダルセリットの足引っ込め試験)の測定を用いて、以前に記載されたように定量された。これらの試験で用いられた条件下では、ランダルセリット試験における足引っ込めの閾値(PWT)は通常、未処置動物ではカラゲナン注射前の約90 gから、カラゲナン注射の1時間後には約55 gに低下した。さらに処置をしない場合には、PWTは数時間の間約55 gで安定化したため、このモデルを用いて、疾患状態の確立後に少なくとも6時間にわたって治療に対する応答の経時変化を評価することが可能であった。
【0100】
KAI-1678の皮内投与
以前の出版物では、カラゲナン誘導炎症性疼痛モデルにおいて、KAI-1678の類似体の局所皮内投与が有効であることが報告されている。このモデルでKAI-1678の皮内投与が活性を持つかどうかを決定するために、ラットの右後足にカラゲナンを注射した1時間後に、カラゲナン注射と同じ(同側)後足、または他の(対側)後足のいずれかに、KAI-1678を10 mcg/kgまたは100 mcg/kg皮内注射した。図18に示されるとおり、同側部位への10 mcg/kgのKAI-1678の皮内投与は、PWTがカラゲナン前のレベルに戻ったことで示されるように、機械的痛覚過敏を完全に逆行させることができた。100 mcg/kgのKAI-1678の同側部位への投与は、10 mcg/kg投与よりも有効性が高く、PWTをカラゲナン前のレベルよりも上昇させ、より長時間にわたってカラゲナン前のレベルまたはそれ以上にPWTを維持した。印象的なことに、KAI-1678の効果は、10 mcg/kgの投与の5分後には機械的痛覚過敏を実質的に逆行させ、100 mcg/kgの投与後5分の時点では完全に逆行させ、迅速な作用開始を示した。
【0101】
対側の後足へのKAI-1678の皮内投与も、機械的痛覚過敏を完全に逆行させることができ、各用量での最大の逆行の度合いは、同側の後足への同じ用量の投与で見られたものと類似していた(図18)。注目すべきことに、カラゲナン注射部位の近くにKAI-1678が投与された場合と同様に、対側の足へのKAI-1678の皮内投与は、迅速な作用開始を示し、低用量と高用量で5分の時点では機械的痛覚過敏を、それぞれほぼまたは完全に逆行させた。しかし、効果の持続時間に差が見られ、両方の用量で、KAI-1678が同側の後足に投与された場合の方が、対側の場合よりも効果はより長く続いた。
【0102】
KAI-1678に構造的に関連した選択的ペプチド性εPKC阻害物質の局所(同側)投与の有効性は以前に報告されているが、対側の後足へのKAI-1678の皮内投与が同様に有効なことが示されることは、予期されていなかった。この結果は、遠隔部位へのKAI-1678の局所投与が、炎症性疼痛モデルにおける機械的痛覚過敏を低下させる能力に基づいて、系全体にわたる疼痛抑制を誘発する可能性を示唆する。
【0103】
KAI-1678の皮下投与
KAI-1678を皮下投与し、この化合物をこの経路で投与するとカラゲナン炎症性疼痛モデルにおける機械的痛覚過敏を抑制することができるかどうかが試験された。図19に示されるように、対側の後肢の大腿部にKAI-1678を皮下ボーラス投与すると、疼痛応答が用量依存的に抑制され、0.1 mcg/kgという低い用量でも短時間の間、機械的痛覚過敏が完全に逆行した。100 mcg/kgの用量までは、応答の持続時間が延長した。しかし、100 mcg/kgを超える用量では、用量が増加すると応答の持続時間は短縮し、持続時間の間は放物線状の用量応答性が示唆された。
【0104】
一群の動物に不活性の対照ペプチドである100 mcg/kgのKP-1723も投与された(上記を参照されたい)。図19に示されるように、KP-1723は機械的痛覚過敏には効果がなく、KAI-1678で見られた効果はキャリア部分の非特異的な効果の結果ではないことが示された。
【0105】
KAI-1678を皮下ボーラス投与する部位がこのモデルで活性に影響するかどうかを決定するため、カラゲナン注射ラットのカラゲナン注射の部位の近くの同側後肢、対側後肢、または対側後肢の上の中央体幹に、カラゲナン注射の1時間後に10 mcg/kgのKAI-1678が皮下ボーラス投与された。潜在的な動物間差のコントロールのために、4時間後に各々の動物に対して、別の部位に10 mcg/kgの化合物の2回目の皮下投与が行われた。図20に示される結果は、化合物の投与部位には無関係に、第1回目の化合物投与の有効性は類似しており、第2回目の投与の応答持続時間は、最初の投与に比べて短縮していたことを示す。この後者の所見は、皮下ボーラス投与を繰り返すと、タキフィラキシーが生じる可能性を示唆している。この所見と一致することに、□PKC阻害物質類似体であるKAI-1678を繰り返し投与すると、応答の大きさおよび持続時間の両方が低下し、これは投与間隔と逆相関を示した(データは示さず)。見かけのタキフィラキシーの基本原理は、検討中である。
【0106】
図17(皮内投与)に示された結果と図18(皮下投与)の結果を比較すると、いずれの投与経路でも迅速な応答が引き起こされ、高い方の用量では、投与後5分という早い時期にカラゲナンに誘導される機械的痛覚過敏の完全な逆行が示されている。しかし、皮下のボーラス投与後の効果の持続時間は、カラゲナン注射部位に隣接して皮内投与した場合よりも短かった。抗痛覚過敏効果の持続時間を延長する試みにおいて、KAI-1678は、カラゲナンの皮内注射の1時間後から開始して、ラットに皮下注入によって投与された。図21に示されるように、KAI-1678の皮下注入は、用量依存的に応答の持続時間を延長した。しかし、皮下注入への応答は2相になって見られた。約1時間持続した第1の相は、試験した全ての用量において、機械的痛覚過敏の迅速で完全な逆行からなっていた。第2の相は通常注入開始後2時間から3時間の間に発生し、用量依存的であり、高用量(≧25 mcg/kg/hr)のKAI-1678でのみ、足引っ込めの閾値がカラゲナン前のベースラインレベルに戻ることによって示されるような、機械的痛覚過敏の完全な逆行が見られた。250 mcg/kg/hrでは、疼痛の逆行は、迅速であり、かつ痛覚過敏の再発なしに持続した。ただし、注入の際に、注入開始後約60分の時点で、足引っ込めの閾値のわずかな低下が見られた。注目すべきことに、その後の皮下注入実験で、KAI-1678の25,000 mcg/kg/hrの用量速度が試験された。この用量速度は、図21に示される実験で試験された用量速度250 mcg/kg/hrの100倍高いものであるが、250 mcg/kg/hrの注入で見られるのと類似した効果を引き起こした(データは示さず)。したがって、KAI-1678の皮下注入は、このモデルにおいて化合物のボーラス皮下投与で観察されたような放物線状の用量反応は示さない(図19を参照されたい)。
【0107】
皮下注入速度≧25 mg/kg/時間では、第2の相で得られる有効性は、注入の持続する間は維持されたが、注入終了後に迅速に逆行した(図21)。以下に議論されるように、KAI-1678の血漿レベルは、皮下注入の終了時に低下したが、終末半減期は約30分であった。したがって、皮下注入の終了時の有効性の低下は、血漿濃度の低下よりも迅速であり、これは血漿濃度が有効性を決定する主要な要因ではないことを意味している。
【0108】
KAI-1678の静脈内投与
上記の皮内および皮下試験は、KAI-1678が損傷部位から離れた部位に投与された場合に有効であることを示し、これは化合物が系全体の効果を持つことを示唆する。したがって、本発明者らは、静脈内(IV)経路によるKAI-1678の全身投与が、カラゲナン炎症性疼痛モデルで有効かどうかを調べた。これらの試験で使用されたIV注入用量速度は、薬物動態実験(以下を参照されたい)の結果に基づいて、KAI-1678の皮下注入で完全に有効な用量(例えば、≧25 mcg/kg/hr)と同じまたはこれを超えるKAI-1678の血漿レベルを得られるように選択された。
【0109】
図22に示されるように、1000 mcg/kg/hrという高い用量で5時間という長い時間KAI-1678をIV注入しても、カラゲナン誘導の機械的痛覚過敏には効果がなかった。これらの有効性試験の一部として血漿試料は採取されなかったが、薬物動態試験から、100 mcg/kg/hrのIV用量速度のKAI-1678の血漿レベルは、25 mcg/kg/hrの皮下注入(図20)で得られるものと同等またはそれを越えるものであり、1,000 mcg/kg/hrのIV用量速度のKAI-1678の血漿レベルは、250 mcg/kg/hrの皮下注入で得られるものの5〜10倍高いことが示唆される。カラゲナン誘導の痛覚過敏を低下させることが示されている公知の鎮痛剤である経口インドメタシンは、KAI-1678の5時間のIV注入の最後に投与されると、機械的痛覚過敏を完全に逆行させたので、IV KAI-1678がカラゲナン誘導の痛覚過敏に影響を与えることができないことは、技術的な問題のためとは考えられない。さらに、皮内または皮下投与後にこのモデルで有効であった構造的に関連したεPKC阻害物質も、IV注入で投与されると活性を持たなかったので(データは示さず)、IV活性の欠如はKAI-1678に特有なものではないと考えられる。
【0110】
ラットカラゲナンモデルにおけるKAI-1678を用いた作用部位試験
KAI-1678は系全体の応答を引き起こすと考えられるが、これは皮内投与または皮下投与の場合のみであるという実証は、この化合物の主な作用部位が末梢である可能性を示唆する。
【0111】
この仮説と、この化合物が対側肢に投与された場合でさえもKAI-1678投与に対する応答が非常に迅速であるという所見とを合わせると、迅速な作用開始には、化合物投与部位における皮膚の求心性神経が必須である可能性が示唆される。対側肢の皮膚の末梢求心性神経を伝わるシグナルは、同側の後足のカラゲナン注射部位で機械的痛覚過敏に影響を与えるためには、座骨神経および伏在神経を通らなくてはならないので、化合物を投与した側の座骨神経および伏在神経が無傷であることの必要性が調べられた。
【0112】
図23に示される実験では、座骨神経および伏在神経の1 cmの部分がラットの左後脚から除去された。翌日、ラットが手術から回復した後に、ラットの右の後足の足底表面にカラゲナンが注射され、炎症性応答が惹起された。右の後足にカラゲナンを注射した60分後に、左後肢の座骨神経および伏在神経を除去した1 cmの部分の近位または遠位のいずれかの部位に、KAI-1678が皮下注入により投与された。図23に示されるように、KAI-1678を25 mcg/kg/hrで皮下注入すると、化合物投与部位が神経切断の近位の場合にはカラゲナン誘導の機械的痛覚過敏を排除するために有効であったが、遠位の場合にはそうではなかった。過去のデータ(図21)と比較すると、座骨神経および伏在神経の切除部位の近位に投与されたKAI-1678に対する応答は、外科手術をしていないラット(図21を参照されたい)で観察される応答と類似していたが、活性の第2相の開始は、KAI-1678を神経切断部位の近位に皮下注入したラットの方が、より迅速であると考えられた。神経切断部位の遠位への皮下注入に対する応答には手術手技の他の二次的影響があった可能性はあるものの、この実験の結果は、KAI-1678の有効性のためには、投与部位における神経支配が必要なことを示唆する。座骨神経および伏在神経は運動神経、一次感覚求心性ニューロン、および交感神経ニューロンを含んでいるので、これらのデータでは、作用部位をこれらのニューロンサブセットの1つに明確に特定することはできない。
【0113】
この所見は、1678が「正常な」ニューロンに作用して中枢へシグナルを伝達し、この結果系全体の疼痛抑制が見られた可能性を示唆する。この調節は、後角で起こっている可能性があるが、疼痛刺激により影響される皮膚知覚帯の外側の部位にKAI-1678が投与された場合にも有効性は観察され、これは脊髄のレベルよりも上で系全体の疼痛抑制が起きていることを示唆している(以下を参照されたい)。
【0114】
以前の検討では、カラゲナンに誘導される炎症性疼痛には交感神経副腎系からのカテコールアミンが関与しており、εPKCは交感神経系で発現されることが報告された。したがって本発明者らは、遠位に投与されたKAI-1678の有効性を維持するために無傷の交感神経副腎系が必要であるかどうかを調べた。図24に示されるように、両側の腰部交感神経切除に加え副腎神経節切除は、カラゲナンに対する疼痛応答を変化させなかった。しかし、対側後肢に25 mcg/kg/hrで皮下注入として投与されたKAI-1678がカラゲナン誘導の機械的痛覚過敏を逆行させる能力は、これらの動物では失われていた。図24に示されるように、KAI-1678の皮下注入に対する2相性の反応の初期および後期の両応答が、交感神経切除および副腎神経節切除によって失われた。□V1-2を含むKAI-1678類似体を用いた以前の実験では、本発明者らは上記のように、外科的交感神経切除が、遠隔皮下部位でも、損傷に隣接した皮内部位でも、ボーラス注射で投与されたεPKC阻害物質の効果を失わせることも示した。
【0115】
上記の交感神経切除実験は、手術的介入、およびカラゲナンによる介入前に1週間かけた動物の回復が必要である。図24に示されるように、神経切除を行なわない偽手術は、KAI-1678の有効性を部分的に低下させた可能性がある。したがって、本発明者らは、αアドレナリン拮抗物質であるフェントラミンを用いて、交感神経系機能を薬理学的に遮断し、手術を不要にした場合の効果を調べることにより、この試験を補おうとした。カラゲナン注射時にこの薬剤を投与しても、疼痛の確立には影響がなかったが、□V1-2を含むKAI-1678類似体の遠隔部位への皮下ボーラス投与の効果、および損傷部位への局所皮内投与の効果は失われた(データは示さず)。さらに、第2の神経障害性疼痛モデルにおける皮下ボーラス投与後の□V1-2を含むKAI-1678類似体の有効性も、フェントラミンの事前投与によって失われたが、やはりフェントラミンはこのモデルで疼痛の確立は防止しなかった(データは示さず)。
【0116】
このように、交感神経系の外科的切除およびαアドレナリン受容体の薬理学的遮断は、εPKC阻害物質の抗痛覚過敏活性を遮断する。これらの効果が交感神経系への依存を反映するのか、CNSにおけるアドレナリン受容体シグナル伝達への依存を反映するのかは明らかではない。
【0117】
カラゲナン炎症性疼痛モデル試験の概要
上記のデータは、KAI-1678が損傷部位の皮内、および遠隔部位の皮内または皮下に投与されると、炎症性疼痛を逆行させることができることを示す。静脈内投与では、KAI-1678の血漿濃度が有効な皮下注入時と同等なレベルでも、有効性は観察されなかった。本発明者らはまた、KAI-1678の遠隔部位への皮下投与の有効性は、投与部位の神経支配に依存することを示し、これはKAI-1678の遠隔部位の有効性は、投与部位でKAI-1678に曝露される皮下ニューロンに対する効果により仲介されていることを示唆する。これらのデータを説明する1つの仮説は、KAI-1678は、皮膚の侵害受容器に作用することにより、脊髄反射または上脊髄反射を開始するような上行シグナルを一次求心性ニューロンに送り、最終的には、下行性のカラゲナン誘導痛覚過敏の疼痛抑制が得られるというものである。または、KAI-1678が注射部位においてニューロンの緊張性シグナル伝達を低下させることにより作用し、この阻害が下行性の疼痛抑制に繋がる可能性もある。下行性の調節には、αアドレナリンシグナル伝達が関与している可能性があり、これはKAI-1678に対するフェントラミンの効果とも一致している。したがって、脊髄では下行経路から放出されるノルエピネフリンは、一次求心性侵害受容器の中枢末端のα2Aアドレナリン受容体に対する阻害作用(シナプス前阻害)により、疼痛リレーニューロンに対する直接のα2アドレナリン作用(シナプス後阻害)により、および抑制介在ニューロンのα1アドレナリン受容体に介在される活性化により、疼痛を抑制する。この仮説は、炎症性刺激に応答して膜チャネルおよび膜の脱分極を調節する一次求心性神経末端におけるεPKCの役割が提唱されている、他のεPKC作用モデルと対比をなす。
【0118】
神経障害性モデルにおけるKAI-1678の活性
KAI-1678の活性は、L5神経切断モデルまたは改変Chungモデルにおいて評価され、これはL5脊髄神経が外科的に切断され、持続的な疼痛が急速に発生する単神経障害性疼痛モデルである。このモデルにおけるKAI-1678の活性は、以下に記載されている。
【0119】
ラットのL5脊髄神経切断単神経障害性疼痛モデルにおけるKAI-1678の活性
ラットのL5脊髄神経切断モデルを用いて、神経障害性疼痛の調節物質に対する応答が評価された。以下に記載される試験では、L5脊髄神経の外科的切断を用いて、神経障害性疼痛を特徴づける機械的異痛、機械的痛覚過敏、および温熱性痛覚過敏が惹起された。このモデルでは、神経障害性の効果が1日以内に発生し、1〜2ヶ月継続すると報告されている。
【0120】
機械的胃痛および機械的痛覚過敏は、較正されたvon Freyフィラメントを神経切断と同側の後足の足底表面に対して押し付けることによって屈曲逃避応答(足引っ込め応答)を誘発するための該フィラメントを用いて、測定された。異痛の評価には2 g、6 g、および10 gのvon Freyフィラメントが用いられたが、これらの刺激は、未処置の動物には通常無害だからである。痛覚(有害刺激に対する応答)の評価のためには15 g、26 g、および60 gのフィラメントが用いられたが、これらの刺激は、未処置の動物に足引っ込め反応を誘発し、有痛性の刺激を代表すると考えられるからである。
【0121】
神経切断後に疾患状態が存在することは、2 gおよび10 gのフィラメントを用いて行われる試験に基づいて確認される。10回の試験を合計3セット行なうと(合計30回の試験)、2 gのvon Freyフィラメントに対して応答した足引っ込めの回数は、通常、神経損傷前の1〜2回から手術後の12〜15回に増加する。同様に、10 gのフィラメントに対して応答した足引っ込めの回数は、通常、神経損傷前の2〜3回から手術後の20〜23回に増加する。さらに処置をしなければ、機械的異痛は少なくとも3週間は安定しているため、このモデルを用いて、疾患状態の確立後、通常1〜2週間の間にわたって連続的に測定を行なって、ボーラス投与または持続注入のいずれかの処置に対する応答の経時変化を評価することができる。
【0122】
一旦、疾患状態が確認されると、各々のvon Freyフィラメントを用いた5回の試験に対して応答した足引っ込めの回数を観察することによって、機械的異痛または痛覚過敏の程度の評価を行なう。結果は通常、異痛フィラメント(2 g、6 g、および10 gで合計15回の試験)もしくは有痛性フィラメント(15 g、26 g、および60 gで合計の15回の試験)に対する足引っ込めの合計数か、または特定のフィラメントを用いた5回の試験のうち3回またはそれ以上の足引っ込めと定義される平均の陽性応答をグループ内の動物が示す最低のフィラメントのいずれかとして、表現される。
【0123】
このモデルでは、機械的異痛および痛覚過敏に対する化合物処置の効果の測定とともに、Hargreaves試験を用いて、L5脊髄神経切断における温熱性痛覚のレベルの変化も決定された。これらの試験では、罹患後足の外側足底表面に集中した輻射熱源上のガラス表面上にラットを置く。熱源を入れると、時間が経つにつれガラス表面が加熱する。動物が後足を挙げるまでの時間(足引っ込めの潜時、秒で測定)は、温熱性痛覚の指標となる。この試験で用いられた条件下では、足引っ込めの潜時は、神経損傷前の10〜12秒から、L5神経切断後の6〜8秒に低下し、これは温熱性痛覚過敏を示す。さらに処置をしない場合には、温熱性痛覚過敏は少なくとも3週間は安定して続く。
【0124】
KAI-1678の皮下投与
L5脊髄神経切断を受けたラットは、切断後7日目に0.00025〜0.25 mcg/ラット(約0.001〜1 mcg/kg)の範囲のKAI-1678のボーラス皮下投与で処置した。機械的異痛および痛覚過敏の程度は、化合物の投与前においておよび3時間後までにおいて、6本の異なるvon Freyフィラメントに応答した足引っ込めの回数(30回のうち)に基づいて評価した。比較のために、何匹かのラットには、KAI-1678の不活性類似体であるKP-1723を0.250 mcg/ラット(約1 mcg/kg)を投与した。
【0125】
図25に示されるように、KAI-1678で処置すると≧0.01 mcg/kgの用量において、機械的異痛および機械的痛覚過敏が用量依存的に低下した。15 g、26 g、および60 gのvon Freyフィラメントの複合測定に基づくと(図25、左)、手術前の応答に戻ったことで示されるように、0.1 mcg/kgおよび1 mcg/kgのKAI-1678は、機械的痛覚過敏を完全に逆行させた。これらの2つの用量における痛覚過敏の完全な逆行は、化合物投与後30分から60分の間に観察され、抗痛覚過敏効果は少なくとも2時間観察された。KAI-1678で得られた結果とは対照的に、1 mcg/kgのKP-1723での処置は、機械的痛覚過敏には効果がなかった。L5切断に誘導される機械的異痛に対するKAI-1678の影響を測定するために2 g、6 g、および10 gのvon Freyフィラメントを用いた場合にも、上記の結果と同様な結果が得られた(データは示さず)。
【0126】
このモデルにおけるKAI-1678の有効性は、5回の刺激のうちで3回足引っ込め反応を誘発する最低のvon Freyフィラメントを決定することによって足引っ込めの閾値が測定された場合にも、明らかであった(図25、右)。
【0127】
このモデルにおけるKAI-1678の有効性が、継続的な送達、皮下曝露によって延長できるかどうかを決定するために、0.00025〜0.25 mcg/日(約0.001〜1 mcg/kg/日)のKAI-1678、または0.25 mcg/日(約1 mcg/kg/日)のKAI-1723を送達する浸透圧ミニポンプが、切断後2日目に肩甲骨の間の皮下に埋め込まれた。機械的異痛は、2 gおよび10 gのフィラメントを用いて、切断後3、5、7、9、11日目(ポンプ埋め込み後1、3、5、7、9日目)に調べられた。図26(左)に示されるように、10 gのフィラメントを用いた試験の結果は、≧0.0025 mcg/日(約0.01 mcg/kg/日)の用量速度のKAI-1678は、機械的異痛のレベルを実質的に低下させることができ、0.025 mcg/日および0.25 mcg/日(約0.1および1 mcg/kg/hr)の用量速度は、機械的異痛をほぼ完全に逆転させ、これはポンプ埋め込み後7日まで継続したことを示す。最高の用量速度においては、機械的異痛の低下の証拠は、切断後11日目でも観察された。2 gのフィラメントを用いた機械的異痛の評価(データは示さず)、およびHargreaves試験を用いた温熱性痛覚過敏の評価(図26右)でも、同様な結果が得られた。KAI-1678を含むポンプの存在下で痛覚過敏の完全な逆行が約5日間見られた後、有効性は失われた。この時点で薬剤の皮下ボーラス投与を行なうと、疼痛の完全な逆行が誘発されたので(データは示さず)、これは薬剤耐性のためではなく、効果の消失はポンプが送達を維持できなかったことによる可能性がある。
【0128】
神経障害性疼痛モデル試験の概要
上記のデータは、L5脊髄神経切断単神経障害性疼痛モデルにおいて、KAI-1678が非常に有効であることを示す。皮下ボーラス投与を行なったKAI-1678の効力は、L5脊髄神経切断モデルにおいて、機械的および温熱性異痛の逆行において同等であった。皮下注入で投与した場合には、KAI-1678は、カラゲナン誘導炎症性疼痛モデルよりも約1000倍効力が強かった。KAI-1678治療に対してL5切断モデルの感受性が高い理由は不明であるが、このモデルは、構造的に関連したKAI-1678の類似体に対しても同様な高い感受性を示すので、選択的εPKC阻害物質に対するこのモデルの応答性を反映している可能性がある。KAI-1678が2つの神経障害性疼痛モデルで活性を持つことは、この化合物がヒトの神経障害性疼痛の管理にとって臨床的有用性がある可能性を示唆する。
【0129】
ラット薬理学試験からの結論
KAI-1678の活性は、ラットの炎症性および神経障害性疼痛モデルにおいて評価された。化合物の皮下投与は、示されたモデルにおいて有効である。皮下ボーラス投与されたKAI-1678の効力はモデル間で類似しており、試験した効果の発現時間の速さと持続性も類似しているが、モデル間で全体的効果の大きさは異なっている。異なる注入用量速度に対する応答も、モデル間で異なっている。特に、L5切断単神経障害性疼痛モデルは、KAI-1678に特に感受性が高いと考えられ、このモデルでは、カラゲナンモデルの約1000分の1の用量で活性がある。
【0130】
これらのモデルを用いた実験は継続中であるが、他の疼痛モデルにおけるさらなる研究も行なわれている。特に、Brennan切開モデルおよび単一の部分神経(spared nerve)モデルにおける予備的結果は、これらのモデルにおいても、カラゲナンモデルで活性を持つ用量と類似した用量でKAI-1678が活性を持つことを示唆している。
【0131】
これらを合わせると、得られた動物の有効性データは、KAI-1678が様々な疼痛モデルで活性を持つことを示唆し、本化合物の継続的開発を支持する。
【0132】
動物における薬物動態
KAI-1678の薬物動態は、静脈内のボーラスおよび注入、または皮下のボーラスおよび注入として化合物の投与を受けたラットにおいて検討されている。KAI-1678の毒物動態は、毒性試験の一部として、皮下注入により化合物の投与を受けたイヌにおいて検討されている。これらの試験では、KAI-1678の血漿レベルは、KAI Pharmaceuticalsにおいて開発されたサンドイッチベースのELISA法を用いて決定されてきた。このアッセイ法の定量下限は約0.3 ng/mLである。KAI-1678の組織レベルを測定するために、同様なアッセイ法が開発された。
【0133】
ラットではKAI-1678は静脈内ボーラス投与後に、全身循環から迅速に排除される。50 mcg/kg/hrで2時間の静脈内注入により投与されると、60分までに約10〜20 ng/mLの定常状態の血漿濃度に達し、注入の終了後には迅速に低下した。静脈内経路によるKAI-1678のボーラスおよび注入投与の終末半減期は、それぞれ約50および25分である。
【0134】
ボーラス(約80または800 mcg/kg)または注入(19および190 mcg/kg/hr)のいずれかでKAI-1678をラットに皮下投与すると、試験した用量にわたって曝露が用量比例的に増加した。KAI-1678の血漿濃度は、皮下ボーラスおよび注入によりそれぞれ約10分および1時間で最高値に達し、ペプチド投与を終了すると、それぞれ約35分および45分の半減期で低下した。皮下経路で投与されたKAI-1678の生物学的利用能は、ラットにおいて約10%である。
【0135】
終末半減期は決定されなかったが、5日間かけた連続皮下注入によりKAI-1678を投与されたイヌにおいても、KAI-1678は全身循環から迅速に排除された。この試験では、注入の終わりに取り出された様々な臓器から得られた組織試料におけるKAI-1678は検出されたが(腎臓、肝臓、および肺で最も顕著)、脳および脊髄におけるKAI-1678のレベルは一貫して低かった。
【0136】
ラットの薬物動態
静脈内投与
ラットにおけるKAI-1678の薬物動態を最初に特徴づけるために、雄ラットに1匹当たり100 mcgおよび1,000 mcg(約300および約3,000 mcg/kg)の用量で、尾静脈へのIVボーラス注射によりKAI-1678を投与した。注射後2時間まで定期的に採血を行ない、KAI-1678の血漿レベルを解析した。100 mcgおよび1,000 mcg用量群にはそれぞれ3匹および2匹の動物がおり、各群の動物の間ではKAI-1678の血漿濃度には一貫性があった。図27に示されるように、KAI-1678のC最大血漿レベルは、試験した用量では用量比例的に上昇した。これらのデータの予備的解析では、約300 mcg/kgおよび約3,000 mcg/kgの用量レベルの終末半減期は、それぞれ約38分および66分である。
【0137】
皮下投与
動物の有効性試験の大部分は、KAI-1678を皮下ボーラスまたは注入によってラットに投与して行われた。したがって、皮下経路で投与されたKAI-1678の薬物動態は、KAI-1678の血漿濃度の測定に基づいて評価された。
【0138】
図29で示される実験では、雄ラットに1匹当たり25または250 mcg(それぞれ約80および800 mcg/kg)の用量で、皮下ボーラス注射(左後脚に200μL)でKAI-1678を投与した。化合物の投与後2時間にわたりさまざまな時点で採血を行ない、KAI-1678の血漿濃度を決定した。1匹当たり25および250 mcgの用量群にはそれぞれ3匹および4匹の動物がおり、各群の動物の間ではKAI-1678の血漿濃度には一貫性があった。C最大には注射の10分以内に到達し、試験した2つの用量では用量比例的に増加した。これらのデータから得られる終末半減期の予備的見積りは、両方の用量レベルで、35分であった。静脈内ボーラスおよび皮下ボーラス投与したKAI-1678の時間に対する血漿濃度曲線下面積の比較は、皮下経路で投与されたKAI-1678の生物学的利用能が、この投与部位の場合、ラットでは約10%であることを示す。
【0139】
図30に示される実験では、雄ラットに19 mcg/kg/hrおよび190 mcg/kg/hrの用量で2時間の連続皮下注入でKAI-1678を投与した。注入の間および注入終了後1時間の間の様々な時点で採血を行ない、KAI-1678の血漿濃度を決定した。各用量群には2匹の動物がおり、KAI-1678の血漿濃度の測定値は、各用量群の動物の間では一貫性があった。低い方の用量速度(19 mcg/kg/hr)では、60分までに血漿濃度は定常状態(約3 ng/mL)に到達し、残りの注入時間を通して、比較的一定していた。高い方の用量速度(190 mcg/kg/hr)では、KAI-1678の血漿濃度は注入の間を通して増加し、2時間の注入の間にはプラトーまたは定常状態には到達しなかった(C最大約60 ng/mL)。両方の用量速度で、KAI-1678の血漿濃度は注入終了時に迅速に低下したが、注入終了の1時間後でも両方の用量レベルで化合物はまだ検出可能であった。
【0140】
図28と図30を比較すると、KAI-1678の50 mcg/kg/hrの静脈内注入は、19 mcg/kg/hrの皮下注入で得られる化合物の血漿濃度(約3 ng/mL)よりも高い濃度(10〜20 ng/mL)が得られ、190 mcg/kg/hrの皮下注入でのレベル(約60 ng/mL)に近いことが示される。興味深いことに、化合物の皮下注入で最大の有効性を示すために必要な用量速度よりも高い用量速度でKAI-1678の静脈内投与を行なっても、有効性は観察されないので、血漿濃度と有効性の間には相関がないようである。
【0141】
イヌの薬物動態
用量設定毒性試験の一部として、6頭のビーグル犬(1群に各性別1頭ずつ)に3 mg/kg/日、8 mg/kg/日、および25 mg/kg/日の用量レベルで5日間、KAI-1678の連続皮下注入を行なった。1日目(注入開始)および6日目(注入終了後)の様々な時点で採血を行なった。KAI-1678の血漿濃度は注入の最初の4時間の間上昇し、大部分の場合、5日目の注入終了までにさらに2〜3倍上昇し、試験した用量レベルの4時間の皮下注入では定常状態に到達しなかったことが示唆された(図31)。しかし、すべての用量レベルで、注入終了後に血漿レベルは迅速に低下した。ただし使用可能なデータポイントが少ないために、終末半減期は計算されなかった。
【0142】
この試験の一部として、投与終了時に動物のサブセットから組織を採取した。組織抽出物を調製し、KAI-1678の存在を解析したところ、KAI-1678は高い方の2つの用量群の組織のサブセットで検出された:肝臓、肺、腎臓、脳(大脳)、脊髄、注入部位(皮膚およびその下の骨格筋からなる)、左前肢の末梢神経、および脚の筋肉(注入部位に隣接しない)。一般に、主な臓器(腎臓、肝臓、および肺)におけるKAI-1678の組織レベルは、用量の増加に伴って上昇し、血漿レベルで見られる差を反映していた。予想されたように、KAI-1678濃度は注入部位の皮膚で最高であったが(25,000 mcg/kg/日の動物)、その下の筋肉では比較的低いレベルであった。神経系(脊髄および尺骨神経)および末梢組織(筋肉および皮膚)のKAI-1678レベルは、動物および用量群の間で一貫性はより少なかった。脳および脊髄でのレベルは、概ね一貫して低く、多くの場合は定量限界をわずかに上回る程度であり、皮下注入したKAI-1678へのこれらの組織の曝露が比較的低いことが示された。
【0143】
(表4)25 mg/kg/日において5日間の皮下注入としてKAI-1678を投与されたイヌにおけるKAI-1678の組織レベル

*特定された定量限界を下回ったデータポイントを少なくとも1つ含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾イプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)阻害構築物が原型配列と比較してより安定であるか、より強力であるか、またはその両方である、疼痛を患っている対象において疼痛を低下させるための該構築物の使用。
【請求項2】
修飾イプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)ペプチドが原型配列と比較してより安定であるか、より強力であるか、またはその両方であり、全身性抗痛覚過敏が達成される、有効量の修飾イプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)阻害構築物を対象に皮下経路で投与する段階
を含む、全身性抗痛覚過敏を必要とする対象において全身性抗痛覚過敏を達成するための修飾εPKC阻害構築物の使用。
【請求項3】
対象が患っている疼痛が、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、および炎症性疼痛からなる群より選択される、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
効力の上昇が、原型配列に比べてより速い作用の発現またはより長い活性の持続時間に起因する、請求項1または2記載の使用。
【請求項5】
対象が疼痛刺激を受ける前、受けている間、または受けた後に、修飾εPKC阻害ペプチドが対象に投与される、請求項1または2記載の使用。
【請求項6】
修飾εPKC阻害ペプチドが、慢性疼痛を患っている対象に投与される、請求項1または2記載の使用。
【請求項7】
阻害ペプチドが、疼痛刺激の5時間前、10時間前、15時間前、20時間前、25時間前、30時間前、35時間前、40時間前、45時間前、50時間前、55時間前、1時間前、数時間前、1日前、数日前、1週間前、または数週間前に投与される、請求項6記載の使用。
【請求項8】
修飾εPKC阻害ペプチドが、γPKC阻害ペプチドに直接的または間接的に共有結合している、請求項1または2記載の使用。
【請求項9】
構築物が、細胞内キャリアペプチドに共有結合しているεPKC阻害ペプチドを含み、
細胞内キャリアペプチド、阻害ペプチド、または両ペプチドがC末端において修飾されている、
請求項1または2記載の使用。
【請求項10】
阻害ペプチドが、

というアミノ酸配列を含み、
細胞内キャリアペプチドが、

というアミノ酸配列を含み、かつ
阻害ペプチドと細胞内キャリアペプチドとがG-Gにより連結して線状ペプチドを形成している、
請求項9記載の使用。
【請求項11】
修飾イプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)阻害構築物が原型配列と比較してより安定であるか、より強力であるか、またはその両方である、該構築物の有効量を疼痛を患っている対象に投与する段階
を含む、疼痛の治療方法。
【請求項12】
対象が患っている疼痛が、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、および炎症性疼痛からなる群より選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
効力の上昇が、原型配列と比べてより速い作用の発現またはより長い活性の持続時間に起因する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
対象が疼痛刺激を受ける前、受けている間、または受けた後に、修飾εPKC阻害ペプチドが対象に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
修飾εPKC阻害ペプチドが、慢性疼痛を患っている対象に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項16】
阻害ペプチドが、疼痛刺激の5時間前、10時間前、15時間前、20時間前、25時間前、30時間前、35時間前、40時間前、45時間前、50時間前、55時間前、1時間前、数時間前、1日前、数日前、1週間前、または数週間前に投与される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
修飾εPKC阻害ペプチドが、γPKC阻害ペプチドに直接的または間接的に共有結合している、請求項11記載の方法。
【請求項18】
構築物が、細胞内キャリアペプチドに共有結合しているεPKC阻害ペプチドを含み、
細胞内キャリアペプチド、阻害ペプチド、または両ペプチドがC末端において修飾されている、
請求項11記載の方法。
【請求項19】
阻害ペプチドが、

というアミノ酸配列を含み、
細胞内キャリアペプチドが、

というアミノ酸配列を含み、かつ
阻害ペプチドと細胞内キャリアペプチドとがG-Gにより連結して線状ペプチドを形成している、
請求項18記載の方法。
【請求項20】
修飾イプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)ペプチドが原型配列と比較してより安定であるか、より強力であるか、またはその両方であり、全身性抗痛覚過敏が達成される、有効量の修飾εPKC阻害構築物を対象に皮下経路で投与する段階
を含む、全身性抗痛覚過敏を達成する方法。
【請求項21】
対象が患っている疼痛が、急性疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、および炎症性疼痛からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
効力の上昇が、原型配列と比べてより速い作用の発現またはより長い活性の持続時間に起因する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
対象が疼痛刺激を受ける前、受けている間、または受けた後に、修飾εPKC阻害ペプチドが対象に投与される、請求項20記載の方法。
【請求項24】
修飾εPKC阻害ペプチドが、慢性疼痛を患っている対象に投与される、請求項20記載の方法。
【請求項25】
阻害ペプチドが、疼痛刺激の5時間前、10時間前、15時間前、20時間前、25時間前、30時間前、35時間前、40時間前、45時間前、50時間前、55時間前、1時間前、数時間前、1日前、数日前、1週間前、または数週間前に投与される、請求項23記載の方法。
【請求項26】
修飾εPKC阻害ペプチドが、γPKC阻害ペプチドに直接的または間接的に共有結合している、請求項20記載の方法。
【請求項27】
構築物が細胞内キャリアペプチドに共有結合しているεPKC阻害ペプチドを含み、
細胞内キャリアペプチド、阻害ペプチド、または両ペプチドがC末端において修飾されている、
請求項20記載の方法。
【請求項28】
阻害ペプチドが、

というアミノ酸配列を含み、
細胞内キャリアペプチドが、

というアミノ酸配列を含み、かつ
阻害ペプチドと細胞内キャリアペプチドとがG-Gにより連結して線状ペプチドを形成している、
請求項27記載の方法。
【請求項29】
細胞内キャリアペプチド、阻害ペプチド、または両ペプチドがC末端において修飾されている、細胞内キャリアペプチドに共有結合しているイプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)阻害ペプチド
を含む、εPKC阻害ペプチド組成物。
【請求項30】
PKC阻害ペプチドが、ジスルフィド結合により細胞内キャリアペプチドに連結している、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
細胞内キャリアペプチドが、

を含む修飾tatペプチドである、請求項29記載の組成物。
【請求項32】
細胞内キャリアペプチドが、

を含む修飾tatペプチドである、請求項29記載の組成物。
【請求項33】
修飾tatペプチドが、そのN末端においてアシル基、アルキル基、またはスルホニル基によって置換されている、請求項31または32記載の組成物。
【請求項34】
修飾tatペプチドが、そのN末端においてアシル化されている、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
tatペプチドが、そのC末端においてさらに修飾されている、請求項28記載の組成物。
【請求項36】
阻害ペプチドが、

というアミノ酸配列および末端のCysを含む、請求項28記載の組成物。
【請求項37】
末端のCysが阻害ペプチドのC末端に位置する、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
tatペプチドが、そのC末端におけるアミドの形成によってさらに修飾されている、請求項29記載の組成物。
【請求項39】
PKC阻害ペプチドが、修飾tatペプチドのアミノ酸の側鎖に共有結合している、請求項29記載の組成物。
【請求項40】
PKC阻害ペプチドが、システイン、セリン、リジン、およびチロシン、およびグルタミンより選択される残基の側鎖に共有結合している、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
PKC阻害ペプチドが、アミノ末端において修飾されている、請求項29記載の組成物。
【請求項42】
PKC阻害ペプチドが、N末端のシステイン残基の側鎖に共有結合している、請求項29記載の組成物。
【請求項43】
tatペプチドのN末端のシステインがアシル化されている、請求項29記載の組成物。
【請求項44】
tatペプチドのC末端のアルギニンが第一級カルボキサミドである、請求項29記載の組成物。
【請求項45】
PKC阻害ペプチドが、そのN末端におけるアシル化によって修飾されている、請求項41記載の組成物。
【請求項46】
PKC阻害ペプチドが、そのC末端におけるアミド化によって修飾されている、請求項45記載の組成物。
【請求項47】
tatペプチドが、

である、請求項29記載の組成物。
【請求項48】
PKC阻害ペプチドが、tatペプチドのシステイン残基のスルフヒドリル基を介してtatペプチドに共有結合している、請求項47記載の組成物。
【請求項49】
阻害ペプチドが、

というアミノ酸配列を含み、
細胞内キャリアペプチドが、

というアミノ酸配列を含み、かつ
阻害ペプチドと細胞内キャリアペプチドとがG-Gにより連結して線状ペプチドを形成している、
請求項29記載の組成物。
【請求項50】
第2の膜輸送ペプチドをさらに含む、請求項29記載の組成物。
【請求項51】
キャリアペプチドとカーゴペプチドとがペプチド結合によって連結している、キャリアペプチドおよびεPKC阻害カーゴペプチド
を含む、線状の治療ペプチド。
【請求項52】
キャリアペプチドとカーゴペプチドとがペプチド結合によってリンカーペプチドに連結している、キャリアペプチドとカーゴペプチドとの間に位置するリンカーペプチド
をさらに含む、請求項51記載の線状の治療ペプチド。
【請求項53】
カーゴとキャリアペプチドとが少なくとも1つのグリシン残基を介して連結している、請求項52記載の線状の治療ペプチド。
【請求項54】

という配列を含む、請求項52記載の線状の治療ペプチド。
【請求項55】

という配列を含む、請求項52記載の線状の治療ペプチド。
【請求項56】
イプシロンタンパク質キナーゼC(εPKC)阻害ペプチドとガンマPKC(γPKC)阻害ペプチドと細胞内キャリアペプチドとが共有結合している、イプシロンPKC(εPKC)阻害ペプチド、γPKC阻害ペプチド、および細胞内キャリアペプチド
を含む、ハイブリッドペプチドPKC阻害ペプチド組成物。
【請求項57】
εPKC阻害ペプチド、γPKC阻害ペプチド、および細胞内キャリアペプチドが、ジスルフィド結合による、請求項56記載の組成物。
【請求項58】
細胞内キャリアペプチドが、

を含む修飾tatペプチドである、請求項56記載の組成物。
【請求項59】
細胞内キャリアペプチドが、

を含む修飾tatペプチドである、請求項56記載の組成物。
【請求項60】
修飾tatペプチドが、そのN末端においてアシル基、アルキル基、またはスルホニル基によって置換されている、請求項59記載の組成物。
【請求項61】
修飾tatペプチドが、そのN末端においてアシル化されている、請求項60記載の組成物。
【請求項62】
tatペプチドが、そのC末端においてさらに修飾されている、請求項56記載の組成物。
【請求項63】
εPKC阻害ペプチドが、

というアミノ酸配列、および末端のCysを含む、請求項56記載の組成物。
【請求項64】
末端のCysが、阻害ペプチドのC末端に位置する、請求項63記載の組成物。
【請求項65】
tatペプチドが、そのC末端におけるアミドの形成によってさらに修飾されている、請求項56記載の組成物。
【請求項66】
PKC阻害ペプチドが、修飾tatペプチドのアミノ酸の側鎖に共有結合している、請求項56記載の組成物。
【請求項67】
PKC阻害ペプチドが、システイン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、スレオニン、リジン、チロシン、およびグルタミンより選択される残基の側鎖に共有結合している、請求項66記載の組成物。
【請求項68】
PKC阻害ペプチドが、N末端のシステイン残基の側鎖に共有結合している、請求項66記載の組成物。
【請求項69】
tatペプチドのN末端のシステインがアシル化されている、請求項66記載の組成物。
【請求項70】
tatペプチドのC末端のアルギニンが第一級カルボキサミドである、請求項66記載の組成物。
【請求項71】
PKC阻害ペプチドが、そのN末端におけるアシル化によって、もしくはそのC末端におけるアミド化によって、またはそのN末端におけるアシル化およびそのC末端におけるアミド化の両方によって修飾されている、請求項66記載の組成物。
【請求項72】
tatペプチドが、

である、請求項56記載の組成物。
【請求項73】
PKC阻害ペプチドが、tatペプチドのシステイン残基のスルフヒドリル基を介して、tatペプチドに共有結合している、請求項72記載の組成物。
【請求項74】
第2の膜輸送ペプチドをさらに含む、請求項56記載の組成物。
【請求項75】
γPKC阻害ペプチドが、R-L-V-L-A-Sというアミノ酸配列を含む、請求項56記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate


【公表番号】特表2010−516709(P2010−516709A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546583(P2009−546583)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/051736
【国際公開番号】WO2008/089494
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508083415)カイ ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (7)
【Fターム(参考)】