説明

病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット、その作動方法、およびそれを用いた治療方法

病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット、その作動方法、およびそれを用いた治療方法を提供する。この病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットは、バクテリアの鞭毛運動によって移動ことができ、疾病を認識するバクテリアの認知性を用いて病変を標的化して進むことができ、バクテリアの自体蛍光発現性を用いて、病変にマイクロロボットがどれほど標的化されたかを分析することができ、病変で自己分裂して増殖して病変を自体的且つ間接的に治療することができる。前記バクテリアは、免疫反応に対して鈍感となるように遺伝子操作され、病的細胞の成長を抑制する物質を生産する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット、その作動方法、およびそれを用いた治療方法に係り、さらに詳しくは、バクテリアの駆動性、認知性、蛍光性および治癒性などを生かして構成したマイクロロボットに関する。前記バクテリアは、遺伝子操作によって様々な性質を持つように変異させたもので、マイクロロボットが病変治療用として利用できるようにする。
【背景技術】
【0002】
既存のマイクロロボットとしては、図1に示した消化器の検査および治療のための医療用マイクロロボット、および図2に示した血管治療用マイクロロボットが提案されている。
【0003】
一般に、マイクロロボット110は、位置情報提供部120、駆動部130、治療部140、ロボット制御部150、データ送受信部160、無線電力受信部170、センシング部180、および動力源部190などから構成される。
【0004】
このような構成要素の中でも、駆動部130、センシング部180および動力源部190はマイクロロボットの最も重要な構成要素である。
【0005】
ところが、実際マイクロロボットのサイズ制限により、駆動部130、センシング部180および動力源部190の大きさが非常に制限的である。
【0006】
大部分は、例えば、駆動部130として通常直径1〜2mmのマイクロモータを使用する。また、小型化のために、知能性材料として形状記憶合金またはEAP(Electro-Active Polymer)などが使用されるが、このような知能性材料も適用において限界を持っている。
【0007】
また、動力源部190として通常バッテリーを使用しているが、マイクロロボットの体積制限により、十分な容量のバッテリーをマイクロロボット内に搭載することが難しい。
【0008】
かかる問題点を解決するために、生体細胞を用いる研究、特に自発的に収縮する心筋細胞を用いる研究が行われてきた。心筋細胞を用いる場合には、マイクロ構造体を製造し、このマイクロ構造体に心筋細胞を培養することにより、その収縮力を得る方法を取る。この方法は、心筋細胞の収縮力を用いて多様な機能を実現することができるという利点を持っている。
【0009】
ところが、心筋細胞を用いたマイクロシステムは、その制御が難しいうえ、持続的に心筋細胞の収縮力を維持するために環境を造成することが容易ではない。
【0010】
特に、人体内に適用される場合には、免疫反応により適用が容易ではないという欠点を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、従来の技術の前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、バクテリアの特性の一つである鞭毛運動によって移動することができ、疾病を認識する認知性を用いて、病変を標的として病変部分に向けて進めることができ、自体蛍光発現性を用いて、病変にマイクロロボットがどれほど標的化されたかを分析することができ、病変内で自己分裂によって増殖して病変を自体的且つ間接的に治療することができる、バクテリア基盤のマイクロロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、検査および治療のための医療用マイクロロボットであって、
カプセル型マイクロ構造体の後面と外周に付着し、病変を探していく移動性および認知性を有するバクテリアと、
前記マイクロ構造体の外部一側から血液サンプルを内部に採取する採取部と、
前記採取部で採取した血液サンプルが内部に流入すると、病変との反応を観察するために反応試薬を噴出する反応試薬部と、
前記血液サンプルおよび前記反応試薬を吸入して混合する混合部と、
前記血液サンプルと前記反応試薬との混合物を分析する診断部と、
前記診断部で分析された病変結果に基づいて処理方法を判断する制御部と、
前記制御部の指示に従い、薬品を流出させる薬品部と、
前記薬品部から流出した薬品を噴射するためのポンプによって、薬品を外部病変に伝達噴射する排出部とを含んでなる、病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを提供する。
【0013】
ここで、前記バクテリアは、自力で動く移動能力を有する鞭毛を備え、カプセル型マイクロ構造体の外周に付着させる。このようなバクテリアの移動性と認知性を用いて、マイクロロボットは、病変追跡によって病変に移動し、病変への薬物伝達とバクテリアの増殖で疾病を治療する。
【0014】
また、前記バクテリアの特性を用いて病変に移動したマイクロロボットは、診断に応じて薬物を病変の表面に噴射して外部で治療し、前記バクテリアは、病変内で増殖させて内部で治療する。
【0015】
本発明の他の観点によれば、移動性および認知性を有するバクテリアを用いてマイクロロボットが病変を探して移動する移動段階と、
前記マイクロロボットが前記バクテリアによって前記病変に位置したとき、採取部で血液サンプルを採取する採取段階と、
前記採取部で採取した血液サンプルが前記マイクロロボットの内部に流入すると、病変との反応を観察するために反応試薬部から反応試薬を噴出する試薬噴出段階と、
前記採取部からの血液サンプルと前記反応試薬部からの反応試薬とを混合部で吸入して混合する混合段階と、
前記混合部からの血液と反応試薬との混合物を診断部へ伝達して分析する診断段階と、
前記診断部で分析された病変結果に基づいて処理方法を制御部で判断し、制御信号を送る制御信号段階と、
前記制御部の制御信号に従い、薬品を薬品部から流出させる薬品流出段階と、
前記薬品部から流出した薬品を噴射するためのポンプによって、薬品を排出部を介して外部病変に伝達噴射する薬品排出段階とを含んでなる、検査および治療のための医療用マイクロロボットを用いた治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明によれば、バクテリアを用いたマイクロロボットは、バクテリアの多様な性質と遺伝子操作による特性の実現によって培養されるバクテリアを用いて、培養されたバクテリア200を適切に活用するためのマイクロ構造体を製作し、バクテリアに結合されたマイクロロボットによって病変を認識して移動し、多様な方法(薬品伝達、siRNA、バクテリアを用いた治療)の治療機能を行うことができるという効果がある。
【0017】
このようなマイクロロボットの技術を、遺伝子操作されたバクテリアを用いて向上させることにより、マイクロロボットの小型化を図ることができ、バクテリアの移動性および認知性によって駆動器およびセンサーを同時に具現することができるという効果がある。
【0018】
また、制限されたバクテリア基盤のマイクロロボットは、既存の薬物を用いた治療に比べてバクテリアの移動性および認知性によって病変に直接到達して局部的に治療を行うことができ、薬物伝達による治療、siRNAによる増殖抑制、およびバクテリア自体の治療機能を病変の外部と内部で同時に行うことができるという利点を持っている。よって、本発明のマイクロロボットは、標的治療に効果的な新規方法を提示することができるので、非常に有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の消化器官用マイクロロボットを示す図である。
【図2】従来の血管治療用マイクロロボットを示す図である。
【図3】本発明に係る病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットシステムを示す図である。
【図4】本発明に係る病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを示す図である。
【図5】本発明に係る病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを用いた作動方法を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを用いた治療方法における、siRNA合成バクテリアを用いた癌組織増殖抑制マイクロ構造体を示す図である。
【図7】本発明に係る病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを用いた治療方法における、薬品活性化酵素合成バクテリアを用いた薬物伝達マイクロ構造体を示す図である。
【図8】本発明に係る病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを用いた治療方法における、siRNAと薬品活性酵素合成バクテリアを用いたマイクロ構造体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一様態において、本発明は、自力で動く移動能力を有する鞭毛を備えたバクテリアをカプセル型マイクロ構造体の外周に付着させて構成したもので、バクテリアの移動性および認知性を用いて病変追跡によって病変に移動し、病変への薬物の伝達とバクテリアの増殖で疾病を治療することを特徴とする、病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを提供する。
【0021】
このようなマイクロロボットは、検査および治療のための医療用マイクロロボットであって、前記カプセル型マイクロ構造体と、前記マイクロ構造体の後面および外周に付着し、病変を探していく移動性および認知性を有するバクテリアとを含んでなる。
【0022】
マイクロ構造体は、前記マイクロ構造体の外部一側から血液サンプルを内部に採取する採取部と、前記採取部で採取した血液サンプルが内部に流入すると、病変との反応を観察するために反応試薬を噴出する反応試薬部と、前記血液サンプルおよび前記反応試薬を吸入して混合する混合部と、前記血液サンプルと前記反応試薬との混合物を分析する診断部と、前記診断部で分析された病変結果に基づいて処理方法を判断する制御部と、前記制御部の指示に従い、薬品を流出させる薬品部と、前記薬品部から流出した薬品を噴射するためのポンプによって、薬品を外部病変に伝達噴射する排出部とを含んでなる。
【0023】
他の様態において、本発明は、前記バクテリアによって病変に移動したマイクロロボットは診断に応じて薬物を病変の表面に噴射して外部で治療し、前記バクテリアは病変の内部で増殖して内部で治療することを含むことを特徴とする、病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを提供する。
【0024】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。これに先立ち、本明細書および請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的且つ辞典的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0025】
よって、本明細書に記載された実施例および図面に示された構成は、本発明の最も好適な一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではなく、本出願時点においてこれらを代替することが可能な各種均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0026】
図3は本発明に係る病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットシステムを示す図である。図示の如く、本発明に係るマイクロロボット400は、バクテリア200の駆動性、認知性、蛍光性および治癒性などを生かして構成したものである。
【0027】
第一に、バクテリア200は自体の鞭毛202を用いて自律移動することができる。第二に、バクテリア200は環境または疾病を認知することができる。第三に、バクテリア200は蛍光を発現する性質を有することができる。第四に、バクテリア200は疾病(例えば、特定の癌)を治療する能力を有することができる。第五に、バクテリア200は人体内免疫反応に鈍感であり得る。第六に、バクテリア200は自己分裂によって個体数を増加させることができる。最後に、バクテリア200は遺伝子操作によって前述の性質を持つように操作できる。
【0028】
このようなバクテリア200の特性を用いて、医療用に利用できるバクテリア200基盤のマイクロロボット400を構成することができる。
【0029】
このように、本発明では、前述したバクテリア200の特性を用いて鞭毛202の移動性を持って移動しながら、環境または疾病を認識する認知性を用いて病変を標的化して進むことができ、自体蛍光発現性を用いて、病変にマイクロロボット400がどれほど標的化されたかを分析することができ、人体内免疫反応に鈍感であるうえ、病変で自己分裂によって増殖して疾病を自体的且つ間接的に治療することができる、バクテリア200基盤のマイクロロボット400を製作した。
【0030】
すなわち、本発明のマイクロロボット400は、自力で動く移動能力を有する鞭毛202を備えたバクテリア200を、カプセル型マイクロ構造体300の外周に付着させて構成したものであって、バクテリア200の移動性および認知性を用いて病変追跡によって病変に移動し、病変への薬品363の伝達とバクテリア200の増殖によって疾病を治療する。
【0031】
図4は本発明に係る病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを示す図である。図示の如く、マイクロロボット400は、検査および治療のための医療用マイクロロボットであって、マイクロ構造体300は、カプセル型をしており、後面と外周にはバクテリア200が多数付着している。
【0032】
ここで、マイクロロボット400の外周に付着しているバクテリア200は、病変を探していく移動性および認知性を有する。このようにバクテリア200を外周に付着させたマイクロロボット400は、マイクロ構造体300の外部一側に位置し、血液サンプルを内部に採取する採取部310、および採取部310の一側に位置し、採取部310で採取した血液サンプルが内部に流入すると、病変との反応を観察するために反応試薬を噴出する反応試薬部320を含んで構成される。
【0033】
また、マイクロロボット400は、採取部310からの血液サンプルと反応試薬部320からの反応試薬を吸入して混合する混合部330、前記血液サンプルと反応試薬との混合物を分析する診断部340、診断部340で分析された病変結果に基づいて処理方法を判断する制御部350、および制御部350の指示に従い、病変に薬品362を流出させる薬品部360を含んで構成される。
【0034】
また、マイクロロボット400は、薬品部360から流出した薬品362を噴射するためのポンプ370によって、薬品を外部病変に伝達する排出部380をさらに含んで構成される。
【0035】
このように構成されたマイクロロボット400は、自力で動く移動能力を有する鞭毛付きバクテリア200をカプセル型のマイクロ構造体300の外周に付着させて構成することにより、バクテリア200の移動性および認知性を用いて病変追跡によって病変に移動し、前記病変への薬品362の伝達およびバクテリア200の増殖によって疾病を治療する。
【0036】
この際、バクテリア200は、多くのバクテリア200の鞭毛202といわれるコークスクリュー(corkscrew)のような尾部を回転させて流体内で自ら動く移動性を有する。このような鞭毛は約20nmの直径および約10,000nmの長さを有する。
【0037】
しかも、自体の鞭毛202を用いて自律移動することが可能なバクテリア200は、培養液内の化学的エネルギーを用いて鞭毛の機械的な運動を実現することができる。
【0038】
このような運動性は、バクテリア200基盤のマイクロロボット400の駆動力として利用できる。基本的にバクテリア200の菌株を選定するにおいて、このような運動性に優れた菌株を選定し、遺伝子操作によってもこのような運動性を増加させることができる。
【0039】
この際、マイクロロボット400の外周に付着するバクテリア200を、遺伝子操作によって、免疫反応に強いバクテリアに変異させることにより、人体内細胞攻撃に対して鈍感にする。人体内細胞攻撃に対して鈍感になったバクテリア200は、病変までマイクロロボット400を安全に移動させる移動性を持たせる。
【0040】
すなわち、バクテリア200を人体内免疫反応に対して鈍感となるように遺伝子操作して病変まで安全に移動させる。バクテリア200は、人体内免疫反応を誘導するマクロファージによって敏感に反応して除去される傾向がある。バクテリア200の遺伝子操作によって、このような免疫反応に鈍感なバクテリア200を製造することにより、バクテリア200が、免疫反応に鈍感であって強靭な特性を持たせる。
【0041】
このような特性を有するバクテリア200をマイクロ構造体400の外部に付着させて移動性を持たせることにより、免疫反応に鈍感でありながらも移動性を有するマイクロロボットに製作することができる。
【0042】
また、バクテリア200の認知性により、バクテリア200は環境または疾病を認識することが可能な能力を持つことができる。バクテリア200は、走化性、走光性、走磁性、走気(嫌気)性などの特性を有する。このような特性は、バクテリア200が病変を認識することに主に使用でき、バクテリア200の運動性を制御することにも使用できる。
【0043】
特に、走化性の場合には、バクテリア200が病変を追跡する特徴を用いて、向後、バクテリア200基盤のマイクロロボット400が病変への薬品362の伝達および治療に応用できる。
【0044】
また、マイクロロボット400を移動させるバクテリア200の蛍光性により、マイクロロボット400が人体における位置と病変に到達したかを把握することが可能である。
【0045】
すなわち、バクテリア200は、蛍光を発現する性質を持つことができる。バクテリア200の中には、蛍光を発現するバクテリア200がある。このような蛍光発現は遺伝子操作によって実現できる。
【0046】
このような蛍光特性によっては、人体の外部で蛍光を発現するバクテリア200の位置を測定してバクテリア200の移動経路および特定の疾病を追跡する追跡性能を確認することができる。
【0047】
マイクロロボット400の外周に付着して病変に到着したバクテリア200は、自己分裂によって自分の個体数を幾何級数的に増加させることができるため、自体的な増殖によって多くの個体数に増加させて病変治療機能を発現することができる。
【0048】
すなわち、バクテリア200は、自己分裂によって個体数を増加させることができるもので、非常に少ない個体のバクテリア200がマイクロロボット400と共に病変に伝達されるとしても、自体的な増殖によって多くの個体数に増加してその治療機能を発現することができるという特徴を持っている。
【0049】
また、バクテリア200を用いたマイクロロボット400の製造においても、自体増殖によってバクテリア200の個体を増加させることにより、所望のバクテリア200の量を容易に確保することができるという利点を持っている。
【0050】
バクテリア200によって病変に移動したマイクロロボット400の診断部340における診断に応じて、薬品362を病変の表面に噴射して外部で治療する。バクテリア200は、病変の内部で増殖して内部で治療する。
【0051】
ここで、バクテリア200は、疾病(例えば、特定の癌)を治療する能力を持っているため、癌細胞集団が特異的に発現する化学的物質を追跡する。
【0052】
上述したように、バクテリア200は人体内でマクロファージから攻撃を受けて死んでしまうが、癌細胞の内部はバクテリア200が安全な空間であって、バクテリア200が増殖できる環境として知られている。よって、癌細胞の内部でバクテリア200が増殖することにより、癌細胞自体の大きさが減少して治療がなされる。
【0053】
バクテリア200は遺伝子操作によって様々な特性を基本的に持っている。このようなバクテリア200の特性は遺伝子操作によって活性化または非活性化できる。
【0054】
また、バクテリア200の幾つかの特性は、遺伝子操作によってさらに与えられる特性になる。バクテリア200の特性は、遺伝子操作技術によって1種のバクテリア200を同時に実現することができる。よって、このように操作されたバクテリア200はマイクロロボット400の製作に使用できるという利点を持つことができる。
【0055】
図5に示すように、検査および治療のための医療用マイクロロボットを用いた作動方法では、移動性および認知性を有するバクテリア200によってマイクロロボット400が病変を探して移動する(S10)。
【0056】
次に、バクテリア200によって病変に位置すると、マイクロロボット400の採取部310では血液サンプルを内部に採取する(S20)。
【0057】
採取部310で採取した血液サンプルが内部に流入すると、病変との反応を観察するために反応試薬部320から反応試薬を噴出する(S30)。
【0058】
採取部310からの血液サンプルと反応試薬部320からの反応試薬とを混合部330で吸入して混合し(S40)、混合部330から血液サンプルと反応試薬との混合物を診断部340に伝達して診断分析する(S50)。
【0059】
その後、診断部340で分析された病変結果に基づいて、制御部350では処理方法を判断して指示する制御信号を送る(S60)。
【0060】
制御部350の指示に従い、病変に薬品362を薬品部360から流入させると(S70)、薬品部360から流出した薬品362を噴射するためのポンプ370によって、薬品を排出部380を介して外部病変に排出噴射する(S80)。
【0061】
すなわち、バクテリア200を用いたマイクロロボット400は、多様な種類のバクテリア200を用いて治療機能を実現しようとする構造を持つ。
【0062】
このような移動性および認知性を持っているバクテリア200を用いて移動するマイクロロボット400は、移動性および調整性能を実現することができる。バクテリア200を用いたポンプ370および混合部330を応用して周辺の環境(血液)を採取し、反応試薬と混合して病変を確認する。マイクロ流体構造によって分析された信号は、薬品362排出の制御信号になる。この制御信号に従い、バクテリア200を用いたポンプ370によって薬品362を周辺に伝達する。
【0063】
しかも、マイクロロボット400のバクテリア200は、病変の内部で増殖して治療機能を行うことができる。
【0064】
本発明の一実施例において、病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット400を用いた治療方法は、マイクロロボット400に付着し且つ遺伝子操作によって変形されたバクテリア200を病変へまで移動させ、バクテリア200を病変の内部で増殖させで治療機能を行う。
【0065】
図6はバクテリア200が遺伝子操作されたsiRNAバクテリア210を用いた癌組織増殖方法を示す。この方法は次のように実現できる。まず、前記siRNA合成が可能な遺伝子をバクテリア200に挿入してsiRNAバクテリア210を培養する。siRNAバクテリア210をマイクロ構造体300のチャンバ392内に保護し、合成されたsiRNAバクテリア210のみをチャネルを介して外部に分泌することが可能なマイクロ構造体300を製作する。siRNAバクテリア210は、マイクロ構造体300によってマクロファージから攻撃を受けなくなる。
【0066】
このような合成siRNAバクテリア210を用いたマイクロ構造体300の外部にバクテリア200を付着させて病変に移動させ、病変の近くでは合成siRNAバクテリア210によって生成されたsiRNAを外部に分泌することにより、病変を治療することができる。
【0067】
図7は酵素合成バクテリア220を用いて病変に薬品362を伝達する方法を示す。一般に、抗癌剤は、毒性が強くて全身投与の際に副作用が大きい。
【0068】
このような薬物に異なる分子を結合させて化学的に不活性させた後、安全に癌細胞の周辺にまで移動させ、癌細胞の周辺でこの結合を断ち切って薬物を活性化させることにより、癌細胞にのみ選択的に高濃度で伝達する。
【0069】
このように、図7における第1チャンバ394には、化学的不活性化のための分子を壁に固定させた後、この分子に薬物を結合させる。この薬物を活性化させる酵素の合成が可能な酵素合成バクテリア220を培養する。培養された酵素合成バクテリア220を第2チャンバ396に入れる。
【0070】
このように構成されたマイクロ構造体300の外部にバクテリア200を付着させて病変に移動させ、病変の近くでマイクロ弁398を開く。
【0071】
すると、第2チャンバ396で合成された酵素合成バクテリア220が第1チャンバ394に移動し、不活性化された非活性物質(prodrug)を薬品(drug)362で活性化させる。最後に、チャネルを介して薬品362がマイクロ構造体300の外部に放出されて伝達される。ここで、マイクロ構造体300は、酵素合成バクテリア220を食作用から保護し、バクテリア200と薬物のチャンバ役割、並びに酵素および薬物伝達の通路であるチャネル役割を果たす。
【0072】
この際、siRNAと酵素合成バクテリア220を同時に用いる方法で、図8に示すように、まず、siRNAと活性化酵素を同時に合成することが可能なバクテリア200を遺伝子操作によって製作し培養する。
【0073】
この際、分泌される酵素は前述した薬品362の活性化に用いられ、分泌されたsiRNAは癌組織の増殖抑制に活用される。このように構成されたマイクロ構造体300の外部にバクテリア200を付着させて病変へ移動させ、病変の近くでマイクロ弁398を開く。この方法はsiRNAによる癌組織増殖抑制、薬物による癌細胞治療、および病変の内部におけるバクテリア増殖による治療の3つの性能を同時に実現することができるという特徴を持つ。
【0074】
すなわち、マイクロロボット400の外部にバクテリア200を付着させて病変に移動させながら、マイクロロボット400の内部に形成された第1チャンバ394に化学的不活性化のための分子薬品362を蓄え、第2チャンバ396にsiRNAと酵素合成バクテリア220を蓄えて、病変の近くでマイクロ弁398を開くことにより、第2チャンバ396からsiRNAと酵素合成バクテリア220を第1チャンバ394に移動させ、不活性化された非活性物質を薬品362で活性化させて、薬品362をマイクロ構造体300の外部へ放出させて病変を治療する。
【0075】
このような本発明のマイクロロボット400は、疾病の治療を担当する薬品362で表面を処理し、その上にバクテリア200を適切に付着させることにより構成される。
【0076】
マイクロロボット400は、バクテリア200の移動性および認知性を用いて病変まで移動し、薬品362を病変に伝達することにより病変を治療する。
【0077】
また、前記バクテリアの蛍光性によって、マイクロロボットが何処に位置しているかを測定することにより、病変に正確に到達したかを把握することができる。
【0078】
病変に到達したバクテリア200、およびマイクロロボット400から噴射される薬品362は、病変の表面で病変を治療する。この際、バクテリア200が病変の内部に入り込むと、バクテリア200が内部で増殖しながら病変を内部で治療する。したがって、薬品362は病変の外部で、バクテリア200は病変の内部で一緒に治療する機能を行うことができる。
【0079】
このように、本発明の病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットは、環境または疾病を認識するバクテリア200の認知性を用いて病変を標的化して移動することができ、自体蛍光発現性を用いて、病変にマイクロロボット400がどれほど標的化されたかを分析することができ、人体内免疫反応に対して鈍感であるうえ、自己分裂して増殖することができ、疾病に対する自体的且つ間接的な治療能力を持っている。
【0080】
バクテリア200を用いたマイクロロボット400は、バクテリア200の多様な性質と遺伝子操作による特性の実現によって培養されるバクテリア200を用いて、培養されたバクテリア200を適切に活用するためのマイクロ構造体300を製作し、バクテリア200に結合されたマイクロロボット400によって病変を認識して移動し、多様な方法(薬物伝達、siRNA、バクテリアを用いた治療)の治療機能を行うことができるという効果がある。
【0081】
マイクロロボット400の技術は、遺伝子操作されたバクテリア200を用いて向上させることにより、マイクロロボット400の小型化を図ることができ、バクテリア200の移動性および認知性によって駆動器およびセンサーを同時に具現することができるという効果がある。
【0082】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、当業者であれば、添付した請求の範囲および本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変形、追加または置換を加え得ることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0083】
200 バクテリア
202 鞭毛
210 siRNAバクテリア
220 酵素合成バクテリア
300 マイクロ構造体
310 採取部
320 反応試薬部
330 混合部
340 診断部
350 制御部
360 薬品部
362 薬品
370 ポンプ
380 排出部
392 チャンバ
394 第1チャンバ
396 第2チャンバ
398 マイクロ弁
400 マイクロロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査および治療のための医療用マイクロロボットにおいて、
自力で動く移動能力を有する鞭毛(202)を備えたバクテリア(200)を、カプセル型マイクロ構造体(300)の外周に付着させて構成することにより、バクテリア(200)の移動性および認知性を用いて病変追跡によって病変に移動し、前記病変への薬物(362)の伝達およびバクテリア(200)の増殖で疾病を治療することを特徴とする、病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット。
【請求項2】
前記マイクロロボット(400)は、
カプセル型マイクロ構造体(300)の後面と外周に付着し、病変を探していく移動性および認知性を有するバクテリア(200)と、
前記マイクロ構造体(300)の外部一側に位置し、血液サンプルを内部に採取する採取部(310)と、
前記採取部(310)で採取した血液サンプルが内部に流入すると、病変との反応を観察するために反応試薬を噴出する反応試薬部(320)と、
前記血液サンプルおよび前記反応試薬を吸入して混合する混合部(220)と、
前記血液サンプルと前記反応試薬との混合物を分析する診断部(340)と
前記診断部(340)で分析された病変結果に基づいて処理方法を判断する制御部(350)と、
前記制御部の指示に従い、薬品を流出させる薬品部(360)と、
前記薬品部(360)から流出した薬品を噴射するためのポンプ(370)によって、薬品を外部病変に伝達噴射する排出部(380)とを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット。
【請求項3】
前記マイクロ構造体(300)の外周に付着するバクテリア(200)を、遺伝子操作によって、免疫反応に強いバクテリアに変異させることにより、人体内細胞攻撃にもかかわらず、病変へまでマイクロロボット(400)を安全に移動させる移動性を確保することを特徴とする、請求項2に記載の病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット。
【請求項4】
前記マイクロロボット(400)を移動させるバクテリア(200)の蛍光性によって、前記マイクロロボット(400)の人体内における位置を検出し且つ前記マイクロロボット(400)が病変に到達したか否かを把握することができることを特徴とする、請求項2に記載の病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット。
【請求項5】
前記マイクロロボット(400)の外周に付着して病変に到着したバクテリア(200)は、自己分裂によって自分の個体数を幾何級数的に増加させることができるため、自体的な増殖によって多くの個体数に増加して病変治療機能を発現することができることを特徴とする、請求項2に記載の病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット。
【請求項6】
前記バクテリア(200)によって病変に移動したマイクロロボットは、診断に応じて薬品を病変の表面に噴射して外部で治療し、前記バクテリアは、病変の内部で増殖させて内部で治療することを特徴とする、請求項2に記載の病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボット。
【請求項7】
検査および治療のための医療用マイクロロボットの作動方法において、
移動性および認知性を有するバクテリア(200)によってマイクロロボット(400)が病変を探して移動する移動段階(S10)と、
前記マイクロロボット(400)が前記バクテリア(200)によって前記病変に位置したとき、採取部(310)で血液サンプルを採取する採取段階(S20)と、
前記採取部(310)で採取した血液サンプルが前記マイクロロボット(400)の内部に流入すると、病変との反応を観察するために反応試薬部(320)から反応試薬を噴出する試薬噴出段階(S30)と、
前記採取部(310)からの血液サンプルと前記反応試薬部(320)からの反応試薬を混合部(330)で吸入して混合する混合段階(S40)と、
前記混合部(330)からの血液と反応試薬との混合物を診断部(340)へ伝達して分析する診断段階(S50)と、
前記診断部(340)で分析された病変結果に基づいて処理方法を制御部(350)で判断し、制御信号を送る制御信号段階(S60)と、
前記制御部(350)の制御信号に従い、薬品(362)を薬品部(360)から流出させる薬品流出段階(S70)と、
前記薬品部(360)から流出した薬品を噴射するためのポンプ(370)によって、薬品を排出部(380)を介して外部病変に伝達噴射する薬品排出段階(S80)とを含んでなることを特徴とする、病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットの作動方法。
【請求項8】
検査および治療のための医療用マイクロロボットを用いた治療方法において、
マイクロロボット(400)に付着し且つ遺伝子操作によって変形されたバクテリア(200)を病変にまで移動させ、病変の内部で前記バクテリア(200)を増殖させて内部治療機能を行うことを特徴とする、病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを用いた治療方法。
【請求項9】
前記マイクロロボット(400)の外部に前記バクテリア(200)を付着させて病変に移動させながら、前記マイクロロボット(400)の内部チャンバ(392)にsiRNAバクテリア(210)を蓄えることにより、病変の近くで合成siRNAバクテリア(210)により生成されたsiRNAを外部に分泌して病変を治療することを特徴とする、請求項8に記載の病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを用いた治療方法。
【請求項10】
前記マイクロロボット(400)の外部に前記バクテリア(200)を付着させて病変に移動させながら、前記マイクロロボット(400)の内部に形成された第1チャンバ(394)に化学的不活性化のための分子薬品(362)を蓄え、第2チャンバ(396)に酵素合成バクテリア(220)を蓄えることにより、病変の近くでマイクロ弁(398)を開いて、前記第2チャンバ(396)から合成された酵素合成バクテリア(220)を第1チャンバ(394)に移動させ、不活性化された非活性物質を薬品(362)で活性化させて、前記薬品(362)をマイクロ構造体(300)の外部へ放出させて病変を治療することを特徴とする、請求項8に記載の病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを用いた治療方法。
【請求項11】
前記マイクロロボット(400)の外部に前記バクテリア(200)を付着させて病変に移動させながら、前記マイクロロボット(400)の内部に形成された第1チャンバ(394)に化学的不活性化のための分子薬品(362)を蓄え、第2チャンバ(396)にsiRNAと酵素合成バクテリア(220)を蓄えることにより、病変の近くでマイクロ弁(398)を開いて、前記第2チャンバ(396)からsiRNAと酵素合成バクテリアを第1チャンバ(394)に移動させ、不活性化された非活性物質を薬品(362)で活性化させて、前記薬品(362)をマイクロ構造体(300)の外部へ放出させて病変を治療することを特徴とする、請求項8に記載の病変治療用バクテリア基盤のマイクロロボットを用いた治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【公表番号】特表2011−501685(P2011−501685A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535894(P2010−535894)
【出願日】平成20年12月30日(2008.12.30)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007769
【国際公開番号】WO2010/050649
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(308026861)インダストリー ファウンデーション オブ チョンナム ナショナル ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】