説明

痛みを治療するためのバニロイド受容体アンタゴニストの使用

ヒトまたはヒト以外の哺乳動物における、骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みを治療および/または予防する方法であって、有効かつ非毒性で医薬上許容される量のバニロイド受容体アンタゴニストを投与することを含む、方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は治療方法、特に骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みの治療および/または予防方法に関する。
【0002】
(従来技術)
バニロイド(vaniloid)は、バニリル(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)基または同等な官能基の存在により特徴付けられる一連の天然または合成化合物である。その機能がかかる化合物により調整されるバニロイド受容体(VR−1)は広く研究されており、SzallasiおよびBlumberg(The American Society for Pharmacology and Experimental Therapeutics, 1999, Vol.51, No.2)により広範囲にわたって検討されている。
構造の異なる多種のバニロイド化合物、例えば、欧州特許出願番号EP0347000およびEP0401903、英国特許出願番号GB2226313および国際特許出願公開番号WO92/09285に開示されているものが当該分野にて公知である。特に注目すべきバニロイド化合物またはバニロイド受容体モジュレーターの例がカプサイシンまたはトランス8−メチル−N−バニリル−6−ノネンアミド(唐辛子より単離)、カプサゼピン(Tetrahedron, 53, 1997, 4791)およびオルバニルまたはN−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)オレアミド(J. Med. Chem., 36, 1993, 2595)である。
【0003】
米国特許第3424760号および第3424761号は共に、鎮痛活性、中枢神経系活性および精神薬理学的活性を示すと考えられる、一連の3−ウレイドピロリジンを記載する。
国際特許出願公開番号WO01/021577は、メラニン凝集ホルモンのアンタゴニストとしての生物学的活性を有する、一連のN−テトラヒドロナフタレニル誘導体の調製を開示する。
国際特許出願公開番号WO02/08221は、バニロイド受容体、特にカプサイシンまたはVR−1受容体としても知られている、I型バニロイド受容体に対して高い選択性および高い親和性で結合するジアリールピペラジンおよび関連化合物を開示する。該化合物はまた、慢性および急性の痛みの状態、痒みおよび尿失禁の治療に有用であるようである。国際特許出願公開番号WO02/16317、WO02/16318およびWO02/16319はバニロイド受容体に対して高い親和性を有する化合物は胃−十二指腸潰瘍の治療に有用であることを示唆する。
国際特許出願公開番号WO02/072536、WO02/090326、WO03/022809およびWO03/053945;および国際特許出願PCT/GB03/00608もまた、バニロイド受容体アンタゴニストとしての活性を有する種々の化合物を記載する。
【0004】
(発明の開示)
この度、意外にも、バニロイド受容体アンタゴニストとしての活性を有する化合物が骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みの治療および/または予防にて活性を有することが見出された。
したがって、本発明は、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物における、骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みを治療および/または予防する方法であって、有効かつ非毒性で医薬上許容される量のバニロイド受容体アンタゴニストを投与することを含む、方法を提供する。
【0005】
適当には、本願発明は骨盤痛の治療および/または予防方法を提供する。
適当には、本願発明は腎疝痛またはそれに伴う痛みの治療および/または予防方法を提供する。
適当には、本願発明は胆石疝痛またはそれに伴う痛みの治療および/または予防方法を提供する。
適当には、本願発明は、胸やけなどの機能性消化不良またはそれに伴う痛みの治療および/または予防方法を提供する。
適当には、本願発明はバレット化生またはそれに伴う痛みの治療および/または予防方法を提供する。
適当には、本願発明は嚥下障害またはそれに伴う痛みの治療および/または予防方法を提供する。
適当には、バニロイド受容体アンタゴニストはバニロイド受容体−1のアンタゴニストである。
【0006】
本発明に従って用いられる適当なバニロイド受容体アンタゴニストは、欧州特許出願番号EP0347000およびEP0401903;英国特許出願番号GB2226313;国際特許出願公開番号WO92/09285、WO01/021577、WO02/08221、WO02/16317、WO02/16318、WO02/16319、WO02/072536、WO02/090326、WO03/022809およびWO03/053945;国際特許出願番号PCT/GB03/00608;および米国特許第3424760号および第3424761号に開示されているものを包含する。
本発明に従って用いられる好ましいバニロイド受容体アンタゴニストは、国際特許出願公開番号WO92/072536、WO02/090326、WO03/022809およびWO03/053945;国際特許出願番号PCT/GB03/00608に開示されているものを包含する。
【0007】
本発明に従って用いられる特に好ましいバニロイド受容体アンタゴニストは、N−(2−ブロモフェニル)−N’−[((R)−1−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)ピロリジン−3−イル)]尿素(以下、「化合物A」という)またはその医薬上許容される誘導体である。化合物Aは国際特許出願公開番号WO03/022809の実施例1に開示されている。
本明細書中に引用されている特許および特許出願を含めすべての刊行物は、出典を明示することにより本明細書の一部とするが、これに限定されるものではない。
特定のバニロイド受容体アンタゴニストは数種の互変異性型の一つとして存在してもよく、そのすべてが個々の互変異性型またはその混合物として本願発明に包含される。バニロイド受容体アンタゴニストが一つのキラル炭素を含有し、そのため1またはそれ以上の立体異性型にて存在する場合、あるいは1またはそれ以上の幾何異性体が存在する場合、本発明の方法は個々の異性体またはラセミ体を含む異性体の混合物としてバニロイド受容体アンタゴニストのすべての形態を包含することがわかるであろう。
【0008】
本明細書にて用いる場合、「バニロイド受容体アンタゴニスト」なる語は、バニロイド受容体のアンタゴニスト、例えば、低分子量のアンタゴニストに関する。かかる語がその適当な医薬上許容される誘導体を包含することが理解されよう。
バニロイド受容体アンタゴニスト活性はWO02/08221、WO02/16317およびWO02/090326などの上記した特許出願に開示されている方法を用いることにより評価することができる。
バニロイド受容体アンタゴニストの適当な医薬上許容される誘導体は、例えば、塩および溶媒和物である。
いずれか特定のバニロイド受容体アンタゴニストの適当な医薬上許容される誘導体は上記した刊行物に開示されているものを包含する。
適当な医薬上許容される塩は、酸付加塩などの適当な酸から誘導される塩、または塩基を包含する。
【0009】
適当な医薬上許容される塩は、例えば、アルミニウムなどの金属塩、リチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩または置換アンモニウム塩、例えばトリエチルアミンなどの低級アルキルアミン、2−ヒドロキシエチルアミン、ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどのヒドロキシアルキルアミン、ビシクロヘキシルアミンなどのシクロアルキルアミンとの塩、あるいはプロカイン、ジベンジルピペリジン、N−ベンジル−b−フェネチルアミン、デヒドロアビエチルアミン、N,N’−ビスデヒドロアビエチルアミン、グルカミン、N−メチルグルカミンまたはピリジン、コリジン、キニンまたはキノリンなどのピリジン型の塩基との塩を包含する。
適当な酸付加塩は、医薬上許容される無機塩、例えば、サルファート、ニトラート、ホスファート、ボラート、ヒドロクロリドおよびヒドロブロミドなどの医薬上許容される無機塩、ならびにアセタート、タートラート、マレアート、シトラート、スクシナート、ベンゾアート、アスコルバート、メタンスルホナート、α−ケトグルタラートおよびα−グリセロホスファートなどの医薬上許容される医薬上許容される有機酸付加塩、特に金属塩を包含する。
【0010】
本明細書で言うところのバニロイド受容体アンタゴニストは、都合よくは、上記したそれらを開示する特許刊行物に開示されている方法に従って調製される。
本明細書で言うところのバニロイド受容体アンタゴニストの塩および/または溶媒和物は、従来の方法、例えば上記した特許刊行物に開示されている方法に従って調製かつ単離することができる。
本発明はまた、骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みの治療および/または予防にて用いるための、バニロイド受容体アンタゴニストまたはその医薬上許容される誘導体を提供する。
本発明はまた、骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みの治療および/または予防用医薬の製造にて用いるための、バニロイド受容体アンタゴニストまたはその医薬上許容される誘導体を提供する。
【0011】
上記した方法にて、バニロイド受容体アンタゴニストそのものを投与してもよく、あるいは好ましくは医薬上許容される担体を含む医薬組成物としても投与することもできる。
本発明の治療において、本明細書の記載の上記したバニロイド受容体アンタゴニストを処方し、上記した特許出願および特許に開示される方法により投与される。
したがって、本発明はまた、骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みの治療および/または予防用の医薬組成物であって、バニロイド受容体またはその医薬上許容される誘導体と、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
本明細書にて用いる場合、「医薬上許容される」なる語は、ヒトおよび獣医学の両方に用いるための化合物、組成物および成分を包含し、例えば、「医薬上許容される塩」なる語は獣医学的に許容される塩を包含する。
【0012】
組成物は、所望により、使用に用いるための手書きによる、あるいは印刷された指示書を添付した包装形態であってもよい。
通常、本発明の医薬組成物は経口投与に適合されるであろうが、注射および経皮吸収によるような他の経路による投与用組成物も予想される。
経口投与に特に適する組成物は錠剤およびカプセルなどの単位剤形である。サッシェに入れられた散剤などの他の固定単位剤形を用いてもよい。
一般的な薬務によれば、担体は希釈剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤または他の一般的なアジュバントを含んでいてもよい。
典型的な担体は、例えば、微結晶セルロース、澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルポリピロリドン、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムまたはシュークロースを包含する。
【0013】
バニロイド受容体アンタゴニストの適当な投与量は、the British and US Pharmacopoeias、Remington's Pharmaceutical Science(Mack Publishing Co.)、Martindale the Extra Pharmacopoeia (London, the Pharmaceutical Press)(例えば、第31版、341頁およびそこで引用されているページを参照のこと)または上記した刊行物などの引用文献に記載または言及されているこれらの化合物について既知の用量、あるいは標準的操作により測定することのできる用量を包含する。
固形経口組成物は、ブレンドし、充填し、または打錠する慣用的方法により調製することができる。繰返しブレンド化操作を用いて活性剤を多量の充填剤を用いるそれらの組成物全体に分配させる。かかる操作はもちろん当該分野にて一般的である。錠剤は一般的薬務にて周知の方法に従って、特に腸溶性コーティング剤を用いて被覆してもよい。
【0014】
経口用液体製剤は、例えば、エマルジョン、シロップ、またはエリキシルの形態であるか、または使用前に水または他の適当なビヒクルで復元される乾燥製剤として提供されてもよい。かかる液体製剤は、沈殿防止剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、硬化食用油;乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレアート、またはアカシア;非水性ビヒクル(食用油を含んでいてもよい)、例えば落花生油、分別ココヤシ油、グリセリンのエステルなどの油性エステル、プロピレングリコールまたはエチルアルコール;保存剤、例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルまたはソルビン酸;および所望により、通常の矯味矯臭剤または着色剤などの一般的添加剤を含有してもよい。
【0015】
非経口投与用の流動性剤形は、該化合物および滅菌ビヒクルを利用して調製され、使用する濃度に応じてビヒクルに懸濁させるか、または溶解させるかのいずれかとすることができる。溶液の調製においては、化合物は注射用水に溶かし、適当なバイアルまたはアンプルに充填する前に濾過滅菌に付し、密封することができる。有利には、局所麻酔薬、保存剤および緩衝剤などのアジュバントはビヒクルに溶かすこともできる。安定性を向上させるために、組成物をバイアルに充填した後に凍結乾燥させ、真空下で水を除去させることができる。非経口用懸濁液は、化合物をビヒクルに溶かすかわりに懸濁させ、滅菌化を濾過により果たし得ないことを除き、実質的に同じ方法にて調製することができる。化合物は滅菌ビヒクルに懸濁させる前に酸化エチレンに曝すことで滅菌化することができる。有利には、界面活性剤または湿潤剤を組成物に含め、化合物の均一な分配を容易にする。
【0016】
組成物は、投与方法に応じて、0.1重量%ないし99重量%、好ましくは10−60重量%の活性物質を含有することができる。
組成物は、所望により、使用についての手書きまたは印刷された指示書が添付されている包装形態であってもよい。
組成物は、標準的な引用文献、the British and US Pharmacopoeias, Remington's Pharmaceutical Science (Mack Publishing Co,)、Remington's Pharmaceutical Science (Mack Publishing Co.)、Martindale The Extra Pharmacoppeia(London, The Pharmaceutica Press)およびHarry's Cosmeticology(Leonard Hll Books)に開示されている方法などの一般的方法に従って処方される。
上記した投与量の範囲にある本発明の組成物または方法では毒物学的悪影響は考えられない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたはヒト以外の哺乳動物における、骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みを治療および/または予防する方法であって、有効かつ非毒性で医薬上許容される量のバニロイド受容体アンタゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項2】
腎疝痛またはそれに伴う痛みを治療および/または予防するための請求項1記載の方法。
【請求項3】
胆石疝痛またはそれに伴う痛みを治療および/または予防するための請求項1記載の方法。
【請求項4】
機能性消化不良または胸やけなどのそれに伴う痛みを治療および/または予防するための請求項1記載の方法。
【請求項5】
バレット化生またはそれに伴う痛みを治療および/または予防するための請求項1記載の方法。
【請求項6】
嚥下障害またはそれに伴う痛みを治療および/または予防するための請求項1記載の方法。
【請求項7】
バニロイド受容体アンタゴニストがバニロイド受容体−1アンタゴニストである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
バニロイド受容体−1アンタゴニストが、N−(2−ブロモフェニル)−N’−[((R)−1−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)ピロリジン−3−イル)]尿素である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みの治療および/または予防用の医薬組成物であって、バニロイド受容体またはその医薬上許容される誘導体と、医薬上許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項10】
骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みの治療および/または予防に有用な、バニロイド受容体アンタゴニストまたはその医薬上許容される誘導体。
【請求項11】
骨盤痛、腎疝痛、胆石疝痛、機能性消化不良、バレット化生、嚥下障害およびそれに伴う痛みの治療および/または予防用の医薬の製造にて用いるための、バニロイド受容体アンタゴニストまたはその医薬上許容される誘導体。

【公表番号】特表2006−502173(P2006−502173A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535516(P2004−535516)
【出願日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010261
【国際公開番号】WO2004/024154
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】