癌の化学療法および放射線療法の際に細胞を保護するための局所的血管収縮剤および方法
化学療法または放射線療法により誘導される有害な作用、例えば脱毛、粘膜炎または皮膚炎に対する保護を提供するために、血管収縮剤が局所的に投与される。局所的血管収縮剤の適切な投与量および処方物が提供される。斯かる組成物の使用のための方法も提供される。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
35U.S.C.§22(c)に従って、合衆国政府は認可番号CA22484の国立衛星研究所の基金に一部支援された、ここに記載する発明において一定の権利を有すると認められる。
【0002】
本願は、2005年6月17日に提出された合衆国仮特許出願第60/691,571号の優先権を主張するものであり、その全体を本明細書の一部として援用する。
【0003】
発明の分野
本発明は癌治療の分野に関する。本発明は特に、血管収縮剤分子を使用して、放射線療法および癌化学療法剤の毒性副作用から非腫瘍性細胞を保護するための、医薬製剤および方法を提供する。
【0004】
発明の背景
癌患者を治療するための化学療法および放射線療法の使用には、斯かる治療の正常細胞に対する毒性、特に毛髪濾胞、皮膚上皮、および胃腸粘膜内の幹細胞を含む上皮細胞ポピュレーションに対する毒性に起因して、重篤な副作用を伴う。
【0005】
現在、癌治療の副作用を防止するためには、存在するとしても僅かな治療しか存在しない。癌の治療における化学療法薬および放射能治療法(ここでは放射線療法とも称する)の完全な有用性は、これら薬剤の非特異的細胞毒性に付随した副作用に起因して、充分には利用されてこなかった。
【0006】
効果的な治療は、好ましくは下記の手段を含んでいる:i)皮膚上皮、毛髪濾胞および胃腸粘膜の危険な状態にある幹細胞において、全身投与される細胞毒性薬物の濃度を減少させるための手段、およびii)組織中での放射線に誘導された細胞死の多くは放射線に誘導された酸素遊離ラジカルから生じるので、皮膚上皮、毛髪濾胞および胃腸粘膜の危険な状態にある幹細胞において酸素の濃度を一時的に減少させるための手段。
【0007】
上皮細胞に対する癌治療の毒性は、化学療法または放射線療法を受けている患者が共通に罹患する多くの副作用の原因である。これには胃腸障害、悪心、嘔吐、下痢、直腸炎、食欲不振、脱毛、骨髄抑制、照射部位における皮膚発赤または潰瘍形成が含まれる。これらの合併症は耐えるのが難しいので、これら副作用を回避するために、患者は推奨される癌療法での治療を見合わせ、または中断する可能性がある。毒性を最小化し、且つ正常な薬物感受性の細胞を保護するために、化学療法に際して、化学療法剤は典型的には最適投与量未満で投与される。
【0008】
例えば、胃腸障害は、患者が彼等の疾患と闘う能力を最適化するために必要な栄養を得るのを困難にするので、患者の回復機会を損なう可能性がある。化学療法および放射線療法に関連した胃腸管腔細胞の死および組織脱落は、胃腸管損傷に付随した分子の血管内への放出をもたらす。これらの血流に運ばれる分子は、脳内の部位によって検出されるときに、化学療法を受けている患者の間で共通の悪心応答をトリガーする。オンダンセトロンのような薬物での現在の治療は、これらの脳中心を抑制するように働き、従って悪心応答を減少させる。しかし、胃腸管ライニングの一次破壊は、化学療法の最も効果的な使用を更に制限する。
【0009】
これらの患者における悪心を低減するためのより良好な機構は、脳におけるこれら分子の作用を抑制するよりも、むしろ胃腸管表面の一次破壊を排除し、それによって損傷に付随した悪心誘導分子の放出を防止することであろう。化学療法剤に対する正常細胞の感受性を低減することは、より高い薬物投与量での投与を可能にし、化学療法を更に効果的にするであろう。
【0010】
放射線に誘導された皮膚炎は、癌治療のもう一つの認識された副作用である。放射線療法は、癌患者のための主療法または補助療法として正規に使用されるが、照射領域内での皮膚炎または焦げた皮膚は、放射線療法患者の大部分に共通した、且つ苦痛を伴う副作用である。
【0011】
粘膜炎もまた、癌療法の重要で且つ高くつく副作用である。粘膜表面の炎症として、粘膜炎は化学療法および/または放射線療法の頻繁かつ潜在的に重篤な合併症である。それは紅斑、剥離、潰瘍形成、出血および浸出液として現れ得る。粘膜炎は、DNA複製および粘膜幹細胞増殖に対する化学療法または放射線療法の直接の阻害効果から生じることが、一般に受け入れられている。これらの事象は、基底上皮の再生能力の低下をもたらし、粘膜萎縮、コラーゲン破壊、および潰瘍形成を導く。二次的な影響は、保護粘膜バリアの分解後における多くの病原体による感染である。
【0012】
粘膜炎は、口腔から腸および直腸まで、胃腸管および泌尿生殖器管の全体に亘って存在し得る。それは異常な栄養摂取、増大した全身的感染、痛みを減少させるための麻薬の使用、および癌治療の延長を導くので、特に衰弱性である。癌治療による粘膜炎を防止するための商業的な薬物は知られていない。口腔粘膜炎の現在の治療には、口腔衛生の基本原理の適用が含まれ、また症状を最小化するための努力において、痛みを軽減するための局所麻酔および全身的鎮痛薬のような治療法が使用される。胃腸管の正常な細胞を保護するための補助的手段には、栄養刺激および増殖因子の摂取を最大化することが含まれる。しかし、これらの療法もまた、粘膜炎の基礎をなす原因に対して対処していない。
【0013】
放射線療法または化学療法剤の存在下において、正常細胞の日常的な成長および増殖を促進する保護療法を成功裏に実施することは、より高い投与量で、より攻撃的な癌治療を可能にするであろう。結局、これらの保護療法は、癌およびその治療の副作用に対処するだけでなく、現在の療法を使用することにより見られるよりも、癌に対する更に大きな治療効果を可能にする。
【0014】
保護療法を開発するための二つの有用なターゲットは、(1)上皮細胞、例えば口腔および全体の胃腸管または泌尿生殖器管をライニングする細胞、(2)他の上皮細胞、例えば、毛髪濾胞および表皮を含む皮膚の上皮細胞である。現存するアプローチの効果および有用性は限定的であり、これら副作用を緩和するための新しい効果的な療法についての必要性が強調されている。
【0015】
従って、癌治療の副作用、例えば粘膜炎を低減できる安全かつ有効な薬物製剤、並びにこれら副作用を低減または最小化する方法についての必要性が存在している。更に詳細に言えば、危険な状態にある非腫瘍性組織に対して血管収縮剤を局所投与し、そうすることにより全身的な化学療法剤の送達を低減し、また一時的な低酸素症を生じさせて、放射線療法の際の酸素ラジカル形成を低減する方法を提供する必要性が存在している。
【0016】
また、投与量、送達媒体処方物、および血管収縮剤受容体特異性についての設計により、癌療法副作用に対して、危険な状態にある非腫瘍性細胞に対する保護、特に局部的な保護を与えるけれども、適用される血管収縮剤の1以上の望ましくない全身的効果を低減または更に防止するような、局所的血管収縮製剤を提供する必要性が存在している。
【0017】
また、癌患者がその風味に充分耐えられる処方で、血管収縮剤の局所的な経口投与を可能にする製剤を提供する必要性が存在している。
【0018】
また、ヒトまたは動物の癌患者における皮膚もしくは粘膜表面への送達を容易にする局所的送達媒体と組合せた、有効かつ無毒の投与量での血管収縮剤の適用を含んでなる治療方法の必要性が存在している。
【0019】
発明の概要
本発明は、癌治療の副作用を防止するための、局所的に適用される医薬製剤および方法に関する。より詳細に言えば、本発明は、癌患者の皮膚、毛髪濾胞、並びに胃腸管および泌尿生殖器管の非癌性上皮細胞を、癌化学療法および/または放射線療法の結果として生じる副作用から保護するための、血管収縮剤分子の送達に関する。
【0020】
その幾つかの側面の一つにおいて、本発明は、患者における治療の副作用から生じる症状を低下させるための方法を提供する。この方法は、1以上の化学療法剤、放射線療法またはそれらの組合せを用いた処置のような治療の副作用を低減するために有効な量で、血管収縮剤を医薬的に許容可能な送達媒体中に含有する製剤を投与することを含んでなるものである。種々の好ましい実施形態において、副作用によって生じる症状には、脱毛症、皮膚炎、粘膜炎、胃腸障害、または直腸炎の1以上が含まれる。
【0021】
一つの実施形態において、前記副作用に関する症状は、皮膚、頭皮、口、直腸、鼻腔食道系、胃腸系、または泌尿生殖器系の1以上の非癌性細胞において低減される。一定の実施形態において、当該製剤は予防的に、例えば化学療法、放射線療法または塀用療法の開始前に、または前記副作用を呈する原因損傷の発生前に投与される。現在の好ましい一定の実施形態は、粘膜炎および直腸炎、即ち、斯かる治療において問題である共通の二つの副作用に向けられている。一定の実施形態では、標的粘膜の細胞への血管収縮剤の送達を最適化するために、当該製剤は、標的粘膜細胞[例えば直腸炎については直腸または直腸粘膜、および粘膜炎(例えば口腔粘膜炎)については口腔粘膜]への血管収縮剤の送達を最適化するために、送達媒体と共に処方される。
【0022】
以下で更に詳細に述べるように、本発明の方法において、また本発明の製剤と共に使用するための現在の好ましい血管収縮剤には、エピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエピネフリン、ゾルミトリプタン、テトラヒドロザリン、およびナファゾリン、並びにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。当業者は、上記の組合せが本発明の範囲内において有用であることを理解するであろう。本発明の種々の実施形態と共に使用するための、現在の好ましいαアドレナリン作動性受容体アンタゴニストには、プラゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、アルフゾシン、タムスロシン、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
もう一つの実施形態において、当該方法は更に、治療の後に、医薬的に許容可能な送達媒体の中にαアドレナリン作動製受容体アンタゴニストを含有する有効量の第二の製剤を、当該化合物を、前記血管収縮剤含有製剤を受ける細胞に送達するために投与することを含むものである。このような方法は、感受性細胞型の血管収縮剤への露出に伴う影響を緩和するために有用である。好ましくは、このようなアンタゴニストは、血管収縮剤の何等かの乾燥効果の更なる軽減を提供する湿潤特性または潤滑特性を有する成分、例えば送達媒体と共に投与される。
【0024】
本発明のもう一つの側面においては、化学療法剤または放射線を用いるような治療の毒作用から、患者における細胞を保護するための医薬製剤が提供される。この製剤は、少なくとも一つの血管収縮剤と、当該細胞に奉仕する脈管構造へと前記血管収縮剤を送達するのに適した医薬的に許容可能な送達媒体とを含有する。他の実施形態において、当該製剤はまた、例えば患者に経口投与する製剤の嗜好性(palatability)を改善するために、風味剤のような1以上の添加剤を含有する。好ましい実施形態において、前記血管収縮剤はエピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエプネフリン、ゾルミトリプタン、テトラヒドロザリン、もしくはナファゾリン、またはこれらの組み合わせである。
【0025】
幾つかの実施形態において、当該製剤はエピネフリンを含有する。好ましくは、その濃度は約5mM〜約1500mM、より好ましくは約100mM〜約1500mMである。また、約5〜約100mM、約50〜250mM、約100mM〜1000mM、または更に1500mMを有する組成物も好ましい。或いは、一定の実施形態は、約0.009%〜約11%のエピネフリンを利用する。また、約0.009%〜約0.9%、約0.1%〜約0.5%、約0.5%〜約11%、および約1.1%〜約11%を有する組成物も好ましい。
【0026】
他の実施形態において、当該医薬製剤は、好ましくは約10mM〜約5000mM、また好ましくは約250mM〜約5000mMのフェニレフリンを含有する。また、約10〜100mM、50〜250mM、100〜500mM、および250〜2500mM以上を含有する組成物も好ましい。約0.03%〜約25%のフェニレフリンを有する組成物もまたここでは有用である。また、約0.03%〜0.22%、約0.20%〜約1.5%、約1.5%〜約5%、および約5%〜約25%を有するこれら製剤も好ましい。
【0027】
他の実施形態において、当該医薬組成物は、好ましくは約4.5mM〜約1500mM、好ましくは約100mM〜約1500mMのエピネフリンを含有する。他の好ましい範囲には、約4.5〜50mM、40〜100mM、75〜250mM、10〜500mM、200〜800mM、または100〜1500mM以上が含まれる。
【0028】
もう一つの実施形態において、当該医薬製剤は、好ましくは約10mM〜約5000mM、好ましくは約250mM〜約5000mMの濃度のメトキサミンを含有する。他の好ましい範囲には、約10〜100mM、50〜250mM、200〜1000mM、250〜2500mMまたはそれ以上が含まれる。或いは、該組成物は約0.01%〜約25%を含有する。また、約0.01%〜約0.5%、約0.5%〜1%、および約1%超〜約25%以下の組成物も好ましい。
【0029】
もう一つの実施形態において、本発明の医薬製剤は更に、遊離ラジカルスカベンジャーを含有する。これは、治療により誘導される遊離ラジカル形成によって酸化的損傷が生じる場合に特別に有用である。
【0030】
もう一つの実施形態において、当該医薬製剤は、リポソーム、リピド液滴エマルジョン、油、ポリオキシアルキレンエーテルの水性エマルジョン、水性アルコール混合物、プロピレングリコールを含有する水性エタノール混合物、水性緩衝液中の医薬的に許容可能なガム、水性緩衝液中の修飾セルロース、アルコール−水緩衝混合物中の修飾セルロース、アルコール−水緩衝液−プロピレングリコール混合物中の修飾セルロース、または水性緩衝液中のジエチレングリコールモノエチルエーテルを含んでなる、1以上の医薬的に許容可能な送達媒体を含んでいる。現在のところ好ましいのは、水性アルコール混合物、およびプロピレングリコールを含有する水性エタノール混合物である。また、修飾セルロースに基づく送達媒体、特に例えばアルコール−水性緩衝液−プロピレングリコール混合物中のヒドロキシプロピルメチルセルロースも好ましい。
【0031】
他の側面において、本発明は、細胞、好ましくは上皮もしくは毛髪濾胞内の幹細胞に到達する全身的な化学療法剤の量を低下させるように、血管収縮剤が一時的に皮膚血管を収縮させるために有効な量で存在する方法を提供する。他の実施形態において、血管収縮剤の濃度は、上皮または毛髪濾胞内の幹細胞に到達する酸素添加された血液の量を低減させるように、真皮の血管を一時的に収縮させるために充分なものである。一定の実施形態において、斯かる幹細胞の近傍において局部的に化学療法剤の量を減少させ、酸素添加された血液の量も減少させるように、血管は一時的に制限される。他の実施形態において、血管収縮剤は、真皮の血管を一時的に収縮させることにより、真皮脈管構造内に存在して口腔粘膜内の幹細胞に到達する全身的な化学療法の量を低減させるために有効な量で存在し、または真皮血管を一時的に収縮させることにより、真皮脈管構造内に存在して口腔粘膜内の幹細胞に到達する酸素添加された血液の量を低減するために有効な量で存在する。
【0032】
もう一つの実施形態において、この皮膚用局所製剤は、放射線療法に誘導された皮膚炎または化学療法もしくは放射線療法に誘導された脱毛症を防止するために効果的であるエピネフリンの予防的投与量を提供するが、望ましくない全身的または心臓の副作用を生じ得るエピネフリンの壊死的局部毒性または皮膚通過を最小化もしくは回避するために、充分に低い投与量を提供するように処方される。
【0033】
更なる実施形態において、当該局所的送達媒体は、具体的には皮膚のために処方され、好ましくは血管収縮剤が角質層を貫通して、下地(underlying)の真皮脈管構造にアクセスすることを可能にするように処方されるが、該脈管構造は上皮および毛髪濾胞幹細胞に供給するが、皮膚および毛髪濾胞を越えた血管収縮剤の分布を排除または制限する。
【0034】
更なる実施形態において、選択された血管収縮剤は、皮膚または粘膜の脈管構造の収縮を与えることができるが、二重のαおよびβアドレナリン作動性アゴニストで見られる望ましくない心臓副作用の如何なる実質的な危険も提示するものではない。一つの現在の好ましい実施形態においては、局所的に適用される血管収縮剤として、α1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストが使用される。本発明を何れかの特定の動作理論に限定せずに、このような血管収縮剤は高度に選択的なアゴニストであるので、有用な性質を提供する可能性がある。エピネフリンのような二重αおよびβアドレナリン作動性アゴニストの望ましくない心臓副作用は、心拍数に影響するβ2受容体での相互作用によるものであることが、当業者によって理解されるであろう。本発明の種々の実施形態において使用するための、α1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストの現在の好ましい例は、フェニレフリンおよびメトキサミンである。選択性の低いα1アドレナリン作動性受容体特異的で、β1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストでもあるが、β2アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストではない現在の好ましい例は、ノルエピネフリンである。上記の組合せもまた、ここでの使用のために想定される。
【0035】
本発明のもう一つの実施形態において、局所製剤は、放射線療法または全身的化学療法、またはこれら両方の同時もしくは逐次的な組み合わせを受けている癌患者における口腔粘膜炎を低減し、または好ましくは予防するために処方される。該製剤は、口腔粘膜炎を低減または完全に防止する最小投与量のエピネフリン、フェニレフリン、ノルエピネフリン、もしくはメトキサミン、またはそれらの組み合わせを提供するように処方される。好ましくは、該処方剤はまた、口腔粘膜炎に対する如何なる有意な壊死毒性をも誘導しない投与量のエピネフリン、フェニレフリン、ノルエピネフリンもしくはメトキサミン、またはそれらの組合せを用いて処方される。
【0036】
口腔粘膜炎防止としての更なる実施形態において、ヒト癌患者において経口的に適用される薬物の容認を得るためには、経口的に投与される製剤の何等かの望ましくない感覚的性質を低減または最小化するために、低いが保護的投与量のエピネフリン、フェニレフリン、ノルエピネフリン、もしくはメトキサミン、またはそれらの組合せが使用される。斯かる望ましくない感覚的な質には、血管収縮剤分子がもたらす「薬」味または苦い味が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、斯かる望ましくない感覚的性質を低減、マスキングもしくは除去し、および癌患者による当該製剤の経口的容認性を改善するために、1以上の化合物、例えば風味剤または添加剤が当該製剤に加えられる。
【0037】
口腔粘膜炎治療のもう一つの実施形態において、当該方法は、放射線療法もしくは化学療法での治療の後に、局所的血管収縮剤治療から生じ得るドライマウスを最小化または排除するために、湿潤性局所的送達媒体中の局所的αアドレナリン作動性受容体アンタゴニスト(例えばプラゾシン)で口腔を処置するステップを含んでいる。もう一つの実施形態において、当該方法は直腸炎予防のためのものであり、血管収縮剤治療の後に直腸粘膜分泌および機能を再樹立するために、直腸が、湿潤性および潤滑性のフォームまたは座薬中の、αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストの適用で治療される。
【0038】
本発明のもう一つの実施形態において、当該局所製剤は、化学療法に由来する口腔粘膜炎、胃腸障害、または低い腹部放射線療法を受けた後に直腸の内部表面の粘膜炎を発症した患者の直腸炎を、低減または防止するように使用するために処方される。これらの実施形態において、当該製剤は、好ましくは、例えば中咽頭の粘膜、胃もしくは十二指腸粘膜または直腸粘膜を、薬理学的に有効な濃度の血管収縮剤で効率的にコーティングすることを可能にする粘膜接着性分子を含んでいる。
【0039】
本発明のもう一つの側面に従えば、癌の化学療法または放射線療法に際しての損傷から、細胞、好ましくは非腫瘍性細胞を保護するための方法が提供される。該方法は、放射線療法または癌化学療法の際の損傷から非腫瘍細胞を保護するのに有効な時間および量で、上皮細胞の集団に対して上記で述べた製剤を投与することにより、患者を治療することを含んでなるものである。該方法はまた、血管収縮を軽減するために、患部粘膜表面にαアドレナリン作動性受容体アンタゴニストを投与するステップを含むことができる。好ましくは、このような治療は、湿潤な機能的粘膜表面を再樹立するのを補助する。好ましい実施形態において、該方法は、当該製剤を頭皮に適用することにより、癌治療の際の脱毛を防止するために使用される。もう一つの実施形態において、当該方法は、当該製剤を経口投与することにより、癌治療による胃腸障害を防止するために使用される。もう一つの実施形態において、当該方法は、身体の適切な領域に前記製剤を局所的に投与することによって、化学療法または放射線療法に由来する粘膜炎を防止するために使用される。更にもう一つの実施形態において、当該方法は、当該製剤を皮膚に塗布することにより、放射線に誘導された照射部位における皮膚炎、皮膚発赤、および潰瘍形成を防止するために使用される。
【0040】
本発明のこれら特徴および他の特徴は、以下の詳細な説明、実施例および表から更に充分に理解されるであろう。
【0041】
発明の詳細な説明
本発明は、患者の身体における非癌性の迅速に分割する細胞を、患者に投与された化学療法剤または放射線療法の毒性効果から保護するための医薬製剤および方法を提供する。特に、本発明の製剤および方法は、上皮細胞を保護するために設計される。最も特別には、標的は毛髪濾胞をライニングする上皮細胞、並びに皮膚、口、直腸、胃腸管および泌尿生殖器管の上皮細胞および/または粘膜細胞である。一つの実施形態において、当該製剤は、前記製剤を頭皮に局所的に塗布することにより、癌治療の際の脱毛を低減もしくは防止するために使用される。もう一つの実施形態は、当該製剤を経口投与することによって、癌治療による胃腸障害を低減または防止することを含んでいる。もう一つの実施形態は、前記製剤を身体の適切な領域に局所的に投与することにより、化学療法または放射線療法に由来する粘膜炎を低減または防止することを含んでいる。更にもう一つの実施形態において、当該製剤は、皮膚にこれを投与することにより、照射部位において放射線に誘導された皮膚炎、皮膚発赤および潰瘍形成を防止するために使用される。
【0042】
本発明は、化学療法および放射線治療に由来する望ましくない副作用を防止する上で効果的である血管収縮剤分子を同定した。送達媒体中に処方された血管収縮剤は、特に、皮膚もしくは口の表面、または直腸、胃腸管もしくは泌尿生殖器管に局所的に投与されるように設計される。これらの局所的製剤は、正常な非腫瘍性細胞を、癌治療に由来する損傷から保護することができる。血管収縮剤は、それらが局所的に適用される所定の組織を最小貫通することにより、意図した領域において局所的な保護効果を生じる。局所的脈管構造の一時的収縮は、保護されるべき危険な状態にある非腫瘍性細胞への全身的化学療法剤および酸素の送達を減少させる。更に、血管収縮剤の局所的送達は、部分的には皮膚または粘膜への血管収縮剤適用の自己制限的性質の故に、如何なる全身的分布をも低下または完全に回避させるはずであり、この場合は薬物自身が、さもなくばこれを通して全身に分布されるであろう血管を収縮させることによって、その自己制限的分布に積極的に寄与する。
【0043】
本発明の追加の側面は、i)粘膜表面に対する効果を達成するが壊死毒性を回避する血管収縮剤の濃度;ii)治療されるべき皮膚および/または粘膜層を通しての局所的送達媒体の浸透(例えば、一実施形態ではアルコール、プロピレングリコール、水のパーセンテージを変化させることによる)および粘膜表面への付着;iii)ヒト癌患者による最大の経口許容度を可能にするような製剤の味、を方向性をもたせて操作することを可能にする。その幾つかの他の側面において、本発明はまた、血管収縮剤の経口使用の後に生じ得る乾燥マウスを緩和するため、また複数のアドレナリン作動性受容体部位に結合する血管収縮剤に起因して生じ得る副作用を回避するための、αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストの局所的使用を提供する(例えば、αおよびβアドレナリン作動性受容体アゴニストのエピネフリンは望ましくない心臓血管系副作用を誘導する能力を有し、この副さ用は、選択的なα1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストであるフェニレフリンおよびメトキサミンでは生じることが予測されない)。
【0044】
全身的に分布されるαおよびβアゴニスト、例えばエピネフリンの望ましくない心臓系副作用は周知であるが、全身的に分布される血管収縮剤による腫瘍細胞の遠隔保護が可能である。従って、ここに教示される方法および組成物は、皮膚または粘膜における望ましい局部的な血管収縮剤の効果を提供する一方、全身投与から生じる副作用を回避する。正常組織の意図した保護は、特定の投与部位(例えば皮膚、口腔粘膜、直腸粘膜など)について選択および最適化された適切な送達媒体と組合せて、適切に選択された血管収縮剤を含んでいる。入手可能な血管収縮剤および送達媒体成分の選択の故に、局所的に処方された血管収縮剤は、局所的送達によってアクセス可能な癌治療の副作用に感受性である如何なる正常細胞型を保護するためにも使用することができる。
【0045】
血管収縮剤分子は、危険な状態にある非腫瘍細胞の部位に局所的かつ効率的に送達され得ることが本発明に従って発見された。そこでは、それらは血管壁の細胞内アドレナリン作動性受容体に結合して脈管構造の収縮を生じさせ、そうすることによって、血液により運ばれる化学療法薬または酸素の、局所の危険な状態にある非腫瘍細胞への送達を一時的に減少させることができる。得られる利益は、局所の危険な状態にある正常な幹細胞の大きく低減されたアポトーシス、および化学療法または放射線療法に付随した副作用の緩和である。このプロセスの視覚的相関または代理マーカーは、実際には皮膚(例えばヒトおおびラット)に見ることができ、ここではノルエピネフリンもしくはエピネフリン、または一般に2〜3倍の高濃度のフェニレフリンが皮膚の視覚的白化を生じる。局所的に処置されて視覚的に白化したラットの皮膚が放射線照射されるときには、白化した領域において皮膚炎は完全に防止される(実施例2)。この同じ減少が、粘膜炎(実施例4)および脱毛(実施例3)についての齧歯類モデルでも観察されている。
【0046】
次いで、本発明の種々の実施形態で見出された要素と現存の技術との比較において、以下の所見を得ることができる。第一に、全身に投与された化学療法薬に対する保護を与える血管収縮剤の局所塗布は、筆者が知る限りにおいて、今まで文献に記載されたことはない。第二に、局所的に塗布された血管収縮剤の使用によって危険な状態にある非腫瘍性の幹細胞を保護する本発明の方法は、その種々の要素において非自明であると思われる。例えば、Vasin等は、局所的に塗布されたαアドレナリン作動性受容体アゴニスト(フェニレフリン)がマウス皮膚に対する放射線保護を提供することを記載したが(Vasin, M., et al, Radiatsionnaia Biologiia, Radioecologiia 44(1):68-71, 2004)、彼等は、血管収縮剤の下地脈管構造への送達を可能にする医薬製剤の設計を教示せず、また表面上皮細胞を死滅させることも、血管収縮剤の全身生体分布を可能にすることも教示しなかった。遠隔全身効果を回避しながら、局部的な局所的放射線保護を達成する完全な方法の重要な要素が存在する。実際に、放射線保護化合物または化学保護化合物の全身の生体分布は、腫瘍自身を治療から保護し、または毒性の副作用(例えば、β2アドレナリン作動性受容体アゴニストで全身的に治療された人で誘導され得るような心臓毒性)を生じるといった意図しない効果を導く可能性がある。現在の文献は、下地脈管構造に対しては充分な血管収縮剤の送達を可能にする一方、表面上皮細胞を死滅させず、また血管収縮剤の全身分布も可能にしない局所的送達媒体を選択する方法については、僅かな洞察しか提供せず、または全く洞察を提供しない。文献は同様に、細胞障害性薬物が代謝および/または血液からクリアされるときに生じる、血液に運ばれる化学療法剤に対する延長露出に対して保護を与えるために必要な、局所的適用の基本方針に関する洞察を提供しない。文献はまた、高投与量のエピネフリンまたはフェニレフリンの高投与量が、口腔粘膜に対して壊死性の組織損傷を起こし得ることを教示していない。本発明の一定の実施形態に従えば、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびフェニレフリンの有効性および毒性の両方を確立し、また非毒性で且つ有効な局所投与量、並びに有毒な壊死投与量を同定するための動物試験システムが提供される。加えて、局所的な経口の0.1%エピネフリンがマウスにおいて口腔放射線損傷を低減することが報告されているが、血管収縮剤溶液のヒトの経口使用を可能にするために風味剤が必要であるとの示唆は存在しない。更に、化学療法および放射線療法の脅威が過ぎ去った後の、αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストの局所的な経口送達が、湿潤な潤滑された機能性粘膜表面の迅速な再樹立を可能にすることの教示も存在しない。
【0047】
要するに、血管収縮剤は、想定された局所適用の各々について処方されるときに、癌患者において、化学療法および放射線療法に誘導された副作用を防止するための有効な手段を提供する。
【0048】
<局所的送達媒体> 薬理学的に有効な濃度での血管収縮剤の外に、本発明の製剤は、局所的送達媒体をも含んでなるものである。局所的送達媒体の機能は、血管収縮剤を、癌治療の副作用から保護するための標的である細胞集団または組織に供給する局部脈管構造へと運ぶことである。
【0049】
「局所的な」の用語は、全身的ではなく局部的に作用するように意図された薬物の投与を意味する。癌治療の副作用を防止するためには、血管収縮剤が意図した部位へと送達され、且つ全身的な分布から制限されることが重要である。血管収縮剤の全身分布を限定することによって、遠隔腫瘍細胞の血管収縮剤への露出を制限するとともに、エピネフリン活性剤の既知の心臓副作用を回避する利益が得られるであろう。非侵襲的局所送達を使用した、皮膚または粘膜内における血管収縮活性剤の局部送達は多くの魅力を有しており、これには下記のものが含まれる:i)処置の非侵襲性に起因した患者の許容性;ii)胃腸での薬物消化の回避;およびiii)胃腸送達された分子の初回通過肝臓代謝の回避。本発明に使用される局所送達媒体の多くの成分を下記に列記する。これら要素で構成される局所送達媒体は、小さい有機薬物分子の皮膚への充分な送達を可能にすることが知られているが、局所送達はまた、同じ薬物を系の中に送達するための非常に非効率的な手段であることも知られている。一例として、2%ミノキシジルの局所製剤においては、1%〜3%のミノキシジルだけが、全身的に生体利用性になると見積もられている。血管収縮剤は、それらの効率的な脈管構造の収縮のために、さもなければ全身的に分布されるものが局部に残留するという顕著な追加の素因を提供することもまた、本発明の側面にとって重要である。
【0050】
<皮膚送達系> 皮膚送達系は、典型的には溶液、エマルジョンもしくはクリーム、ゲル、またはリポソーム懸濁液の中に調製された薬物からなっている。これら主要なタイプの皮膚または真皮送達形態の説明、組成、製品および塗布について、以下で簡単に概説する。
【0051】
皮膚は、全体の厚さが2〜3mmの複雑な多層器官である。皮膚は二つの主要な層、即ち、真皮および表皮からなっている。真皮は表皮のための生理学的な支持体を提供し、結合組織、神経、血管およびリンパ管、皮脂線および汗腺からなっている。図1は、これら組織要素の構成を、ラット皮膚の断面で図示している。表皮は約100ミクロンの厚さであり、多くの層からなっている。胚芽層は、表皮幹細胞を含む表皮の基底層である。該基底層の上には、有棘層、顆粒層、透明層、および最後に角質層が存在する。各層は、異なる分化段階にあり、この分化の際に、細胞は基底層から表面へと移動し、角質化して角質層を形成する。角質層は、平坦化されケラチンで満たされた前者の細胞からなっている。角質層内の脂質マトリックスは、コレステロール、遊離脂肪酸およびセラミドで構成された脂質膜の二重層で構成されている。角質層および脂質マトリックス層は、殆どの局所的に送達される物質の低い浸透率の主な原因である。この角質化した脂質マトリックスは、分子の経皮的吸収に対する主要な障壁であるが、該脂質マトリックスを緩め、または流動化させる分子は、皮膚を通る分子の浸透を明らかに向上させる。この目的で使用される幾つかの普通の浸透剤には、アルコール、レシチン、およびリポソームが含まれる。
【0052】
皮膚はまた、真皮内の幾つかの他の層を含んでおり、これには皮脂(油)腺、外分泌(汗腺)および毛髪濾胞が含まれる。毛髪濾胞の大部分は真皮層内に位置しているが、濾胞それ自身は特殊化された表皮細胞で構成される。該濾胞は、外側基底層ならびに毛幹を取囲む外側および内側の毛根鞘からなっている。毛髪濾胞の基底において、マトリックス細胞および真皮乳頭の両者が一緒になって毛幹を生じる。
【0053】
局所薬用の最も普通の製剤は溶液であり、この場合、活性剤が溶媒の中で可溶化される。溶媒に基づく系は単純であるが、許容可能な局所的送達媒体である。アルコールは、局所溶液のために最も普通に使用される溶媒である。典型的には、薬物は水およびアルコールの混合物の中で混合される。アルコール含量は10〜100%の間で変化する。使用されるアルコールには、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、メタノール、またはブタンジオールが含まれる。水中の70%エタノール溶液のような高アルコール含量の溶液、または、例えば60%のエタノール、20%のプロピレングリコールおよび20%の水を含有する溶液は、表皮の角質層を貫通するために特に良好である。局所的ミノキシジル、即ち毛髪再生治療剤は、送達媒体として後者の処方を使用する。
【0054】
溶液に基づく送達系は、小さい有機分子の送達のために理想的である。特に表皮幹細胞への血管収縮剤の投与のための本発明の好ましい実施形態においては、アルコール含有溶液が特に良く適している。水性アルコールに基づく送達媒体は、血管収縮剤の局所投与のために有効であることが示された(実施例1、2、3、4)。この送達系の他の利点には、製造の容易さ、皮膚上での迅速乾燥、処方後における活性薬物化合物の分析の容易さが含まれる。
【0055】
皮膚適用に向けられた本発明の一定の実施形態は、エピネフリン、フェニレフリン、ノルエピネフリンまたはメトキサミンの皮膚脈管構造への充分な送達を可能にして、一時的な脈管構造の収縮を達成し、そうすることによって表皮および毛髪濾胞の幹細胞に対する保護を与えるために、エタノール、プロピレングリコールおよび水のパーセンテージを最適化するのが好ましい。主要な皮膚脈管構造は真皮内にあり、大抵は、毛髪濾胞球を取囲む血管網を形成している(図1に示されている)。この脈管構造への局所的薬物送達は、「経濾胞」送達によって達成される。即ち、局所的に塗布されたアルコール:水溶液が毛管チャンネル内で毛髪濾胞球へと移行し、次いで毛髪濾胞球を含んでなる幹細胞を通って拡散し、該球を取囲む真皮脈管構造にアクセスする。真皮脈管構造にアクセスする局所溶液のための、局所送達媒体中のアルコールの最小パーセンテージは、i)ヒト毛幹チャンネルに存在する皮脂線油の溶解または軟化と、およびii)油−角質層マトリックスの浸透とを可能にするのが好ましい。図2は、蛍光色素(ナイル赤、FW:320)がアルコール:水の溶液でラット皮膚に塗布されたときに、角質層および下地の真皮を浸透し、並びに、ずっと濾胞球の基底を通って体毛濾胞チャンネルの各々を貫通する
【0056】
実施例1および関連のラットの皮膚実験におけるように、局所的血管収縮剤が適用されるときは、局所的に塗布された血管収縮剤が効率的に真皮脈管構造にアクセスし、これを収縮させることを示す機能的結果(例えば皮膚の白化)も存在する。例えば白化等の視覚的評価のし用は、「代理終点」を提供することができ、治療または推定治療の迅速な評価を可能にする。このような代理終点の使用は、新規または改善された局所処方物(formulation)の開発を可能にする。実施例に見ることができるように、化学療法剤または放射線療法の全身使用の副作用に伴う皮膚炎、脱毛、粘膜炎、および他の症状の低減または防止等の望ましい結果は、白化等の肉眼観察による結果と高度に相関するであろう。
【0057】
本発明の一つの側面は、標的脈管構造への血管収縮剤の充分な送達を可能にしながら、その上の上皮表面を損傷しないための、局所的溶媒送達媒体の最適化を含んでいる。表2−1、表3−1、および表4−1はこの例を提供する。表2−1において、血管収縮剤は血管収縮および放射線保護を達成するのに充分な投与量で、真皮脈管構造に送達される。使用される媒体は、約55%のアルコール(25:30;エタノール:プロピレングリコール)〜100%アルコール(0:100;エタノール:プロピレングリコール)の範囲に亘る。表3−1において、55%アルコール媒体のコントロールは、皮膚に対して毒性を示さず、また毛髪成長に対する効果も示さなかった。表4−1は、10%と小量のアルコール(5:5;エタノール:プロピレングリコール)および生理食塩水溶液を用いた口腔粘膜表面のための局所媒体は、放射線保護を与えるために充分な送達を粘膜幹細胞に与える一方、粘膜を損傷しなかった(媒体コントロールは「0」のスコアを示した)。ハムスター頬袋に塗布された皮膚のための局所媒体(50%アルコールを含有する)の初期試験は、本質的に、頬袋の「固定」および乾燥をもたらした。0.87%リン酸緩衝塩水の粘膜媒体の皮膚への塗布は、媒体が「混乱」して皮膚を流れ落ちたので失敗した。
【0058】
ゲルは、液体溶媒を含浸されたゲル化剤からなる半固体である。ゲル化剤の濃度および分子量は、媒体処方物の密度に影響する。該ゲル化剤は、典型的には大きな有機分子または小さい無機分子の懸濁液である。天然または合成のポリマーからなる大きな有機分子は、ランダムにコイルを巻いた鎖として存在し、これが縺れてゲル構造を形成する。この種の幾つかの普通のポリマーは、天然のガム(例えばキサンタンガム)およびセルロース誘導体(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース[HPMC])である。ゲルの粘度は、典型的には剪断力(例えば激しい混合)を加えたとき、または温度が上昇したときに低下する。粘膜表面に適用するための本発明の好ましい実施形態(例えば実施例4)には、ゲル化剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する水:アルコールゲル内の血管収縮剤分子の処方物が含まれる。ゲルの性質は、それらが比較的調製が容易で、また適用部位での長い滞留時間を有する傾向があり、所望の部位における活性剤の持続放出を可能にするので、局所的な送達媒体のためには魅力的である。
【0059】
リポソームは、皮膚科学のための活性成分を送達するための良好な媒体である。リポソーム送達は、下記を含む幾つかの利点を提供する:i)リポソームの角質層脂質との高い適合性に起因した、投与部位における送達された物質の顕著に増大した蓄積;ii)広範な種類の親水性および疎水性分子の皮膚への容易な送達;iii)トラップされた化合物の代謝分解からの保護;およびiv)細胞膜の天然構造に対する密接な類似性、およびそれとの類似した生体適合性および生体分解性。リポソーム送達系の欠点には、製造の困難さ、および乏しい長期安定性が含まれる。
【0060】
<粘膜送達系> ここで定義される粘膜送達は、口、直腸、胃腸、または泌尿生殖器管の粘膜への血管収縮剤の局部的送達である。粘膜表面の透過性は非常に高く、皮膚の透過性よりも5000倍まで大きい。この結論は、表2−1、表4−1のデータによって明瞭に支持され、そこでは50μMと低い局所的エピネフリンで粘膜部位(ハムスター頬袋)での識別可能な放射線保護が見られるのに対して、放射線皮膚炎に対する保護を与えるためには、皮膚に塗布された>〜20mMのエピネフリンが必要とされる。粘膜の高い透過性の故にも注意が必要とされる;皮膚上での放射線保護性のエピネフリン投与量(100mM、表2−1、表3−1)は、口腔粘膜の保護のために使用されるときには非常に壊死的である(表4−1)。粘膜的に活性な血管収縮剤は、溶液、ゲルまたはリポソーム懸濁液として処方することができる。粘膜表面は癌治療の望ましくない副作用が生じる共通の部位であるから、薬物の粘膜表面への送達は非常に魅力的な投与経路である。
【0061】
粘膜送達の限界は、湿潤な粘膜適用部位に対する媒体接着の欠如である。局所処方物への粘膜接着剤の添加は、送達媒体特性を大きく改善することができる。粘膜送達のための本発明のもう一つの好ましい実施形態においては、血管収縮剤処方物への粘膜接着剤分子の添加が特徴である。実施例4は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む粘膜媒体中に処方された、治療された粘膜上皮において生物学的に活性な血管収縮剤の二つの例、即ち、エピネフリンおよびフェニレフリンを提供する。粘膜接着剤化合物は、湿った粘膜表面に接着でき、または斯かる表面への接着性を増大できる主に合成もしくは天然のポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、モノマー性αシアノアクリレート、ポリアクリル酸、およびポリメタクリル酸誘導体である。天然に存在する粘膜接着剤には、例えばキトサン、ヒアルロン酸、およびキサンタンガムのようなガムが含まれる。多くの斯かる粘膜接着剤化合物は、医薬製剤または食品における使用が認可されており、ここでは1以上のこれら化合物を単独または組合せで使用することが想定される。
【0062】
<血管収縮剤を含有する医薬製剤の投与> 保護の標的である細胞集団または組織に応じて、以下の部位が、本発明の製剤の局所的投与のために想定される:経口、鼻、眼、胃腸、直腸、泌尿生殖器、および皮膚(真皮)。本発明の医薬製剤は、水、緩衝された塩水、エタノール、またはポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール)のような生物学的に適合する媒体と共に、投与のために便利に処方される。選択された媒体中の特定の組成物濃度は、送達媒体およびその中に配置された活性物質の特定の性質と共に、当該媒体の疎水性または親水性に依存するであろう。溶解度の限界は、当業者によって容易に決定されるであろう。
【0063】
<医薬製剤の投与のための養生法> 本発明を構成する医薬製剤は、化学療法および/または放射線療法の養生の前、最中または後に、適切な間隔で投与されてよい。特定の症例における適切な間隔は、通常は化学療法または放射線療法、および保護の標的である細胞集団の性質に依存するであろう。
【0064】
例えば、化学療法に誘導される脱毛の予防のために、予定された化学療法剤の投与または頭蓋放射線療法の前に、血管収縮剤を含有する溶媒、リポソーム、または他の送達媒体を、患者の頭皮に対して予防的に適用されることができる。毛髪濾胞の露出表面をライニングする上皮細胞を化学療法薬から保護することにより、癌化学療法に通常付随する毛髪の喪失を防止することができる。同様に、放射線に誘導される皮膚炎、または口腔/胃腸管粘膜炎の治療のために、当該局所的製剤を患者に予防的に適用して、それぞれの副作用の各々を防止することができる。
【0065】
本発明を例示するために以下の実施例が提供される。それらは如何なる意味でも本発明を限定するものではない。
【0066】
実施例についての表のリスト
表1−1。 エタノール:プロピレングリコール:水の送達媒体中で局所的に適用されたエピネフリンまたはフェニレフリンにより誘導されたヒト皮膚の血管収縮。
【0067】
表2−1。 エタノール:プロピレングリコール:水の送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンを予防的に局所塗布することによる、皮膚の放射線に誘導された皮膚炎の防止。
【0068】
表3−1。 エタノール:プロピレングリコール:水の送達媒体中のエピネフリンを予防的に局所塗布することによる、放射線に誘導されまたはサイトキサンに誘導された脱毛の防止。
【0069】
表4−1。 エタノール:プロピレングリコール:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC):PBS(リン酸緩衝塩水)の送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンを予防的に局所塗布することによる、放射線に誘導された口腔粘膜炎の防止。
【0070】
表5−1。 少なくとも一つの風味剤が添加される、エピネフリンまたはフェニレフリンのために望ましい改善された味覚。
【0071】
表6−1。 種々の局所的処方物の溶解度および血管収縮効果(皮膚白化の肉眼観察により決定されたもの)。
【0072】
表7−1。 ヒトの胸部および腕の皮膚白化に対する局所的血管収縮剤のための、三つの処方物の性質。
【0073】
表8−1。 局所的血管収縮剤の複数の処方物についての、成分溶解度、皮膚白化効果、および皮膚刺激の結果。
【0074】
実施例1
この実施例は、エタノール:プロピレングリコール:水送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンエの局所塗布が、薬物濃度および時間に依存したヒト皮膚の白化(血管収縮)を与えることを示している。エピネフリンHClの0.1%水溶液およびフェニレフリンの0.25%水溶液は、実験の180分の観察期間に亘って、検出可能な皮膚の白化を与えなかった。
【0075】
これらの実験のために、エピネフリンHVl(FW:220)を指示された50:25:25(エタノール:プロピレングリコール:水)送達媒体の中に溶解し、またフェニレフリンHCl(FW:204)を指示された送達媒体の中に溶解した。所定の局所血管収縮剤(例えば10mMエピネフリン)のアリコートを、ヒト皮膚(腕)の同じ2平方センチメータの皮膚パッチに塗布し(0分で30μL、15分、30分および45分で15μL)、指示された時間において皮膚白化スコアを判断した。その結果を表1−1に示す。
【表1】
*0%=斑のあるピンクの皮膚、100%=白い皮膚、僅かな斑
【0076】
実施例2
この実施例は、エタノール:プロピレングリコール:水送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンの局所塗布が、濃度に依存して、ラット皮膚の放射線に誘導された皮膚炎を防止することを示している。
【0077】
これらの実験のために、エピネフリンHVl(FW:220)またはフェニレフリンHCl(FW:204)を、指示された局所処方物の中に溶解した(表2−1参照)。ラット(4〜5週齢;背中は予め剃髪された)は、合計で4回(−2時間、−1時間、−30分、および−10分)の局所塗布を受け、次いで、時間0分において、背中の4.5cm2の領域にCs137源から8.7Gyのγ線照射を受けた。13日後に皮膚炎の重篤度をスコアリングした。
【表2】
*媒体は、(%エタノール:%プロピレングリコール:%水)として表される
【0078】
実施例3
この実施例は、エタノール:プロピレングリコール:水の送達媒体中のエピネフリンの局所塗布が、放射線の全身照射またはサイトキサンによって誘導された脱毛を、濃度依存的に防止することを示している。
【0079】
これらの実験のために、エピネフリンHCl(FW:220)が指示された局所処方物の中に溶解された(表3−1参照)。新生児ラット(11日齢)が、背中に合計4回(−2時間、−1時間、−30分、および−10分)の局所塗布を受け、次いで、全身の放射線照射(Cs137からの〜7.5Gy[3.65分]γ線の)または1回のサイトキサンの腹腔内注射(32μg/gm体重)を受けた。9日後(生後20日)に、脱毛の重篤度をスコアリングした。
【表3】
*媒体は、(%エタノール:%プロピレングリコール:%水)として表される
【0080】
実施例4
この実施例は、粘膜接着性エタノール:プロピレングリコール:ヒドロキシプロピルメチルセルロース:リン酸緩衝塩水送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンを局所塗布することによって、放射線に誘導される口腔粘膜炎に対して濃度依存性の保護を与えることを示している。
【0081】
これらの実験のために、エピネフリンHCl(FW:220)またはフェニレフリンHCl(FW:204)を指示された局所処方物の中に溶解した(表4−1参照)。Alvarez等(Clin. Cancer Res. 9:3454-3461, 2003)に基づくアッセイにおいて、シリアンゴールデンハムスター(Syrian golden hamsters;5〜6週齢)をネンブタール(60μg/gm体重)で麻酔し、左側の頬袋をピンセットで裏返し、(水で)濯ぎ、水滴を吸取って清浄にし、該頬袋を裏返し、Qチップの綿棒を使用して該左側頬袋の内側に〜0.3mLの粘膜接着性局所処方物を塗布した(この時点を0分と表す)。12分後、この左側頬袋を裏返し、広げ、直径〜2cmのプラスチックディスクを横切ってクリップで固定した。追加の局所処方物をQチップで塗布して、該頬袋の裏返された内側表面を均一に覆った。20分後、媒体で被覆された固定された頬袋を、厚さ2.5cmの鉛プレートを貫通して穿孔された直径1.5cmのウインドウを覆う位置にテープで固定した。眠っているハムスターを該プレート上の小さい棚の上に固定し、前記ウインドウを通して頬袋の放射線照射を可能にした。次いで、前記鉛プレートをハムスターとCs137照射器中の照射源の間に配置し、時間を計った前記頬袋の放射線照射を行った。
【0082】
照射後、前記頬袋を水で濯ぎ、水を吸い取って裏返した。16日後に、放射線照射された頬袋の中の粘膜炎の重篤度を以下の基準を使用してスコアリングした。
スコアリング基準: 紅斑の程度: 0(なし)〜5(最悪)
腫脹の程度: 0(なし)〜4(最悪)
収縮/硬さの程度: 0(なし)〜4(最悪)
擬膜の存在: 0(なし)〜4(最悪)
粘膜炎重篤度スコア: 合計= 0(なし)〜17(最悪)
【表4】
*媒体は、(%エタノール:%プロピレングリコール:%HPMC:%水)として表される。
0.10%エピネフリンHCl=4.55mM
0.25%フェニレフリンHCl=12.3、<
**Cs137との整列に起因した24分の露出を通して、これら動物は実験Cにおける20分の動物と同じGy線量を受けた。
【0083】
実施例5
この実施例は、0.1%エピネフリンまたは025%フェニレフリンの水溶液は、ヒト患者によって「望ましくない」味を有すると評価されるが、味をマスクする風味剤の添加によって、「非常に望ましい」範囲へと、味覚記述子の大きく顕著な(2.7〜3.1倍)改善が与えられることを示している。このような改善は、放射線療法または化学療法に誘導される口腔粘膜炎を防止するための、これら経口の局所的溶液の使用に対するヒト患者のコンプライアンスを最大化するのを補助するために非常に好ましいものである。望ましくない味を部分的にまたは完全にマスクするための風味剤は当該技術において知られており、当業者は、嗜好性または許容性を増大する溶液を処方する上において、甘味剤および他の風味剤を使用できることを理解するであろう。
【0084】
この実験のために、表5−1に示すように味覚試験溶液を処方した。1mLの各溶液を、文字だけで標識したガラス瓶の中に配置した。患者は味を質問され、表5−1に示したスコアシートに各溶液のスコアを記録した。幾人かの患者は、瓶MおよびNは「薬のような味がした」または「苦かった」と指摘した。
【表5】
* S19チェリー風味剤;ミシ癌州ランシングのLorAnnオイルズInc.
** S59スペアミント油;LorAnnオイルズInc.
+ S48ペパーミント油;LorAnnオイルズInc.
【0085】
実施例6
この実施例は、異なる比率の水、エタノールおよびPGを含んでなる送達媒体中の、異なるエピネフリン酒石酸塩溶液、エピネフリン酒石酸塩、およびフェニレフリン塩酸塩溶液を比較することに関する。
【0086】
それぞれの血管収縮剤塩のアリコートを、ガラス試験官の中に秤量した。次いで、指示された最終薬物濃度を達成するために、必要な容量の液体を加えた。各希釈剤溶液[エタノール:プロピレングリコール(PG):水]のパーセント組成が表6−1に指示されている。
【表6】
1 局所塗布20分後のヒト皮膚の白化の範囲(+++++=90〜100%白化)
2 NBp: L(−)ノルエピネフリン酒石酸塩
3 EPi(±): (±)エピネフリンHCl
4 EPi-: L(−)エピネフリン酒石酸塩
5 PhE: R(−)フェニレフリンHCl
6 60:0:40: イソプロパノール:PG:水
7 試験せず
【0087】
血管収縮剤塩を各希釈剤の中に溶解させるために必要な熱の概略の量が示されている。希釈されたら、サンプルは計量されて室温(〜22°)で24時間維持され、次いで4℃で24時間維持された。新しく作製した透明な処方剤を、最初の混合から短時間後にヒトの皮膚に塗布することにより、当該局所的処方物により誘導された皮膚の白化を試験した。薬物の溶液は、沈殿物質の出現について、48時間の観察期間に亘ってモニターされた。
【0088】
実施例7
この実施例は、少なくとも50%のエタノールにプラスして、変化する比率のPGおよび水を含有する試験溶液を用いて得られた効果を示している。
【0089】
L(−)ノルエピネフリン酒石酸塩をガラス製微小瓶(1.5mL)の中に計量した。次いで、図3に特定されたパーセンテージ(容積:容積:容積)のエタノール:プロピレングリコール(PG):水で構成された溶媒を、各瓶に添加した。ネオエピネフリンを溶解するために必要とされるときには、1秒づつ増大させて瓶を沸騰水浴に接触させ、次いで透明になるまで渦で撹拌することによって、瓶を加熱した。密封された瓶は、室温で24時間、4℃で24時間放置された。この24時間の2回のインキュベーションの間に、何等かの結晶物質の形成を同定するために、各瓶の中の液体は拡大鏡を使用して検査された。結晶が形成されれば、ノルエピネフリンは当該溶媒混合物では「不溶性」と認められた。図3におけるデータは、ノルエピネフリンの溶解度の予測されなかった二峰性のパターンを示している。溶解度の面積(例えば約50:30:20および約60:10:30)は、ノルエピネフリンが可溶性でない溶媒処方物(例えば55:20:25)によって分離されている。
【0090】
三つの処方物A、BおよびCが、更なる特徴付けのために選択された(表7−1)。各処方物について3重のアリコートもまた、上腕および上部胸のヒト皮膚に塗布された。局所塗布の60分間に、局所塗布部位における皮膚の白化がモニターされ、目視によりスコアリングされた(皮膚白化のパーセンテージとして)。12分(胸部)または20分(腕)における皮膚の白化が記録された。局所的な薬物塗布の1時間後に当該部位に触れて、皮膚に検出可能な残渣が残っていれば、それが何であるかを決定した。皮膚の白化は、高いアルコール濃度で最も強く、また塗布部位での「残渣」の量は、当該処方物のプロピレングリコール含量を直接反映した。残渣は、局所部位における「粘着な」質によって検出することができるであろう。胸部および腕についての結果が、それぞれ図4および図5に示されている。
【表7】
1 〜80μLの処方物がQチップでから1cm2のヒト皮膚に塗布された。皮膚白化の程度(0〜100%)が目視によりモニターされ、局所塗布の12分後(胸部)または20分後(腕)にスコアリングされた。
2 p=0.001 vs. Grp1
3 p=0.001 vs. Grp1
【0091】
実施例8
この実施例は、ヒト皮膚でのノルエピネフリンの皮内送達に際して、ヒト皮膚における既知の浸透エンハンサが有する効果を示している。
【0092】
正常にケラチン化されたヒト皮膚の下の真皮脈管構造にノルエピネフリンを局所的に送達するための最も安全で最も有効な手段を同定するために、水および指定された浸透エンハンサで構成される局部的送達処方物に、L(−)ノルエピネフリン酒石酸塩を添加した。
【0093】
透明なノルエピネフリン含有溶液が達成されたサンプルにおいて、アリコート(〜100μL)を、綿棒を使用してヒト前腕皮膚の〜1cm2の領域に塗布した。塗布部位の下の皮膚白化(即ち、真皮脈管構造の収縮)の程度を、塗布後の60分に亘って肉眼でスコアリングした。
【0094】
結果は、以下の表8−1に与えられる。
【表8】
1 NEp: L(−)ノルエピネフリン酒石酸塩
2 局所塗布20分後のヒト皮膚白化の程度(+++++=90〜100%白化)
3 SLS: ラウリル硫酸ナトリウム
4 トランスクトール: ジエチレングリコールモノエチルエーテル
5 TG:プロピレングリコール
6 −:試験せず
【0095】
実施例9
この実施例は、エピネフリンまたはノルエピネフリンの1回の局所塗布が、ヒト頭皮を含むヒト皮膚の白化を迅速に誘導できること、また複数回の局所塗布は持続的な皮膚白化応答を提供でき、これは2〜3時間に亘る全身的化学療法に対する持続的保護と相関し得ることを示す。
【0096】
L(−)エピネフリン酒石酸塩またはL(−)ノルエピネフリン酒石酸塩の750mM溶液を、該結晶性血管収縮剤の塩をエタノール:PG:水の50:30:20の混合物中に溶解させることによって調製し、腕(図6、パネルA,B)または頭皮の何れかのヒト皮膚に局所的に塗布した。皮膚白化の程度を記録し、また皮膚薄化が局所薬物を塗布した部位に限定されることを示すために、局所塗布後の特定の時間においてデジタル画像を記録した。〜30μモル/cm2の局所投与量を生じさせるために、薬物処方物のアリコート(40μL)を〜1cm2の皮膚に塗布した。腕および頭皮の両方の塗布部位において、局所的な薬物塗布後10分までに皮膚の部分的白化が見られ、また一般には15分までに皮膚の完全な白化が見を見ることが可能であった(パネルAおよびB)。頭皮上のノルエピネフリンの塗布部位は、毛髪のない額および毛髪で覆われた頭皮の両方を含んでおり、白化応答の迅速な開始および消失は、これらの連続的領域において同じであり、皮膚または毛髪に対する認識可能な毒性もなかった。
【0097】
「皮膚白化」領域(ヒトまたはラットにおいて)は、鋭く境界を付された縁部を備えた白い皮膚パッチとして、そのピーク(100%)において特徴付けられる。この白化は時間とともに自然に消失し、境界をなす縁部のない周囲の皮膚の色を伴った皮膚になる。
【0098】
1回の局所的薬物の塗布(例えば図6のパネルA参照)は、迅速な皮膚の白化および比較的速い白化の消失を可能にする。1回の塗布スケジュールは、1週間当り5日間、2〜3分/日で放射線照射される患者の癌放射線療法の治療において有用であることが期待される。
【0099】
複数回の局所薬物投与(図6、パネルB)は、より持続する皮膚の白化を可能にする。複数回薬物塗布について観察された血管収縮のより遅い消失は、3〜4週ごとに1回、1〜2時間にわたる静脈化学療法を受ける癌化学療法の患者を治療するために有用であると期待される。
【0100】
実施例10
この実施例は、10日齢の子ラットに対する適切な送達媒体中のエピネフリンの局所塗布が、単独で、塗布部位においてある面積の皮膚の白化を誘導すること、またこの同じ領域が、動物が全身のγ線照射で治療された後に完全な正常な外被成長を保持することを示す。
【0101】
50:30:20のエタノール:PG:水の中の(±)エピネフリンHCl(epi)の950mM溶液、または媒体単独を、動物がCs137源から7.5Gyの全身γ放射線を受ける前に、10日齢の新生児ラットの背中に塗布した(40μL、25μL、25μL、25μL、それぞれ−120分、−60分、−30分、および−10分において)。このepi治療されたラットにおける皮膚白化の領域を示すために、特定の時点でデジタル画像を記録した。皮膚の白化は、媒体単独で処置されたラットには見られなかった。30分および60分、120分の局所的epi投与において、エピネフリン処置された皮膚フィールド内に、皮膚の白い領域が目視可能であり、これは一般には120分までに一つの白化フィールドの中に重なって併合される。局所的epi治療および第10日での放射線照射の後に、20日齢のラットの外被が保持される領域の比較によって、照射の前に皮膚白化の不連続な領域が見られるこれら動物においては、保護された外被の不連続な領域が20日齢の動物に見られることが示された。生後10日に局所的エピネフリンで治療され、次いで放射線照射された殆どのラットについて、エピネフリン治療された皮膚を覆う皮膚白化の融合領域は、第20日における保護された外被の融合領域に関連していた。照射前に局所的媒体だけで処置された動物は、照射前に検出可能な皮膚の白化を示さず、また第20日にスコアリングしたときには完全に裸になっていた。第20日に保護されたラットの外被領域は保持されて、動物の成熟外被の中に組込まれ、これは全身照射の後に再成長された。
【0102】
実施例11
この実施例は、本発明の一実施形態に従った、動物モデルにおける化学療法に誘導された脱毛の予防を示している。
【0103】
ノルエピネフリンまたはエピネフリンのような血管収縮剤の局所塗布は、ヒトまたはラットの皮膚において白化を誘導する(例えば、図7のパネルA参照)。複数回の塗布は、自然に消失する前に、2〜3時間以上持続する皮膚の白化を誘導することができる。収縮したときに、真皮脈管構造および表皮におけるその従属幹細胞、毛髪濾胞等への血流は大きく減少する。
【0104】
図7のパネルBに示すように、サイトキサンのような化学療法剤の静脈注入の後に、該薬物は経時的に、血液血漿から系統的にクリアされる。サイトキサンのクリアランス半減期は約1時間である(パネルB)。
【0105】
パネルCは、エピネフリンのような局所的血管収縮剤が皮膚に塗布されたときに、皮膚は迅速に白化することを示している。この皮膚の白化応答は、皮膚への血流送達の減少に一致している。局所的血管収縮剤が、15〜20分の「頭部スタート」で頭皮のような皮膚に塗布されれば(図7のパネルCにおける**記号を参照のこと)、サイトキサンのような化学療法剤の全身血液レベルはそれらの最高レベル(例えば0〜2時間)にあるのに対して、皮膚およびその幹細胞への血液送達は減少するであろう。
【0106】
添付の実施例において、我々は、サイトキサン投与量における30%程度の減少でも、ラットの外被の実際的に完全な保持をもたらし、またサイトキサン投与量における20%程度の減少がヒト癌患者における頭皮毛髪の「美容的に許容可能な」維持を可能にできるであろうことを示す。
【0107】
パネルDについては、10日齢の子ラットが、1回の副腔内投与量のサイトキサン(30μg/g体重)を受ける前に2時間、局所的な950mMのエピネフリンで4回処置された。局所的エピネフリンで処置された領域は、第20日に保護された外被を含んでいたのに対して、局所媒体単独で処置された領域は保護された外被を含んでいなかった。エピネフリン処置された10日齢のラットに見られる部分的な外被保護は、より年齢の高いラット(またはヒト)に比較して、10日齢のラットの皮膚に見られる血管収縮剤に対する低下した応答(および比較的短時間維持される中程度の皮膚白化)と一致している(パネルE)。
【0108】
実施例12
この実施例は、サイトキサンに誘導された脱毛を予防するために、毛髪濾胞含有皮膚への血流の減少パーセントを定義するのを補助する。
【0109】
10日齢のスプラグ・ドーリーラット(処置群当り4匹の動物)に、水に溶解したサイトキサン(シクロホスファミド;シグマ社#C0768)の腹腔内注射を、指示された投与量で与えた。生後20日に、各動物の背側の外被密度が、未処理の20日齢ラットの正常な外被密度のパーセンテージとして肉眼でスコアリングされた。この結果が図8に示されている。30μg/gm体重のサイトキサンおよび更に高い投与量において、ラットは第20日にはヌードであった;20μg/gmタイ中のサイトキサンおよび更に低い投与量において、ラットは完全な外被を有しており、これは成体まで安定に維持された。
【0110】
Davis,S.T.等(Science 291:134-137, 2001)は、癌化学療法に起因して50%以下の毛髪密度が失われる可能性があり、癌患者はこれを未だ美容的に許容可能と判断し得ることを示した。この所見は、図8のデータを考慮すると、毛髪濾胞幹細胞に送達される血液で運ばれるサイトキサン投与量の20〜30%の減少が、化学療法後の美容的に許容可能な毛髪密度を生じるであろうことを意味している。
【0111】
実施例13
この実施例は、ノルエピネフリンまたはエピネフリン処理されたラット皮膚における皮膚白化の誘導に、通常は皮膚のγ線照射に続く等級2〜4の皮膚炎に対する保護が付随することを示す。
【0112】
成体ラット(40〜45gm)を刈り込んで、背中を覆う外被を除去した。200mMのノルエピネフリンまたは100mMのエピネフリンを含有する局所薬物処方物のアリコート(100μL)を該ラットの背中に1回塗布し、その後の設定された時点において、局所処置フィールド内の矩形領域(1.5cm×3cm)が、Cs137線源から8.8Gy線量のγ線照射を受けた。照射の直前に、前記局所治療フィールド内の皮膚白化の程度もまた肉眼でスコアリングされた(0〜100%の白化)。動物は照射の前に、30μg/gm体重のペントバルビタールナトリウムで麻酔された。照射後にラットは檻に戻され、13日後に、照射された矩形フィールド内の放射線皮膚炎の重篤度が肉眼でスコアリングされ、写真撮影された。この結果は図9に示されている。0〜100の「放射線皮膚炎の重篤度スコア」は、照射後13日に、かさぶたで覆われる照射されたフィールドのパーセンテージを表す。8.8Gy線量のγ放射線では、媒体で処理された動物は、照射された矩形領域を覆う等級3〜等級4の皮膚炎(即ち、100%のかさぶた)を有する。「%放射線皮膚防止」スコア(図9に示した)は、 [100−放射線皮膚炎重篤度スコア]に等しい。
【0113】
エタノール:PG:水の送達媒体中のノルエピネフリンまたはエピネフリンを単回局所塗布することは、試験された最初の時点(3分)から少なくとも45分に亘る「放射線保護ウインドウ」を生じる上で非常に効果的であった。照射開始時の皮膚白化の程度と放射線保護の程度との間には、強い正の相関が存在した。8.8Gyのγ線量(1.72Gy/分)は投与するために5.1分を要し、従って、顕著な最も早い時点(例えば3分)について、照射自身の間に追加の白化が生じる可能性がある。
【0114】
実施例14
この実施例は、ノルエピネフリン処置されたラット皮膚における皮膚白化の誘導に、皮膚の6MeV電子線照射後に通常は生じる等級2の皮膚炎に対する完全な保護が伴うことを示すものである。
【0115】
成体ラット(40〜45gm)を刈り込んで、それらの背中を覆っている外被を除去した。300mMのノルエピネフリンを含有する局所薬剤処方物のアリコート(100μL)を、このラットの背中に1回塗布し、その後の設定された時点において、局所処置フィールド内の矩形領域(1.5cm×3cm)が、線型加速器から27Gy線量の6MeV電子照射を受けた。動物は、照射前に30μg/gm体重のペントバルビタールナトリウムで麻酔された。照射後にラットは檻に戻され、13日後に照射された矩形フィールド内の放射線皮膚炎の重篤度が肉眼でスコアリングされ、写真撮影された。0〜100の「放射線皮膚炎の重篤度スコア」は、照射後13日に、かさぶたで覆われる照射されたフィールドのパーセンテージを表す。
【0116】
その結果が図10に示されている。エタノール:PG:水の送達媒体中のノルエピネフリンを単回局所塗布することは、試験された最初の時点(2分)から30分に亘る「放射線保護ウインドウ」を生じる上で非常に効果的であった。27Gyの6MeV電子線量は投与するために数分を要し、従って、顕著な最も早い時点(例えば2分)について、照射自身の間に追加の白化が生じる可能性がある。
【0117】
実施例15
この実施例は、適切な送達媒体中のエピネフリンの局所塗布が、口腔粘膜の迅速且つ完全な白化を誘導できることを示す。
【0118】
血管収縮剤の局所塗布が口腔粘膜における白化応答を誘導できるかどうかを決定するために、エピネフリンまたはフェニレフリンを含有する処方物が、シリアンゴールデンハムスターの頬袋口腔粘膜に局所的に塗布された。化学療法または放射線療法に誘導された粘膜炎の研究のためにハムスターの頬袋を使用することは、以前に報告されている(Alvarez, E., et al. Clin. Cancer Res., 9: 3454-3461, 2003)。ハムスターはペントバルビタールナトリウムで麻酔し、左側の頬袋をピンセットで裏返し、水で濯いで水滴を吸取り、ステンレス鋼クリップを使用して、直径2cmの不活性なプラスチックディスク上に固定された(図11のパネル参照)。5:1:94[エタノール:ヒドロキシプロピルメチルセルロース:リン酸緩衝塩水(PBS)]の局所送達媒体中に10mMエピネフリンHClまたは10mMフェニレフリンHClを含有する局所製剤、または該送達媒体単独を、頬袋の表面に塗布した。デジタル画像が記録された。
【0119】
局所処置の30分後に、媒体単独での頬袋は処置前と異なるようには見えなかった(図11、パネルAおよびB参照)。局所エピネフリンまたはフェニレフリンで処置された頬袋は白く且つ半透明になり、未処置または媒体で処置されたコントロールで見られた組織の「ピンク色」は見られなかった。他の処置群において、30分での白化の程度は、局所処方物に使用されたエピネフリンまたはフェニレフリンの濃度に依存した。同様の白化応答が、眠っているハムスターの頬内に復位された清浄化された頬袋の中にエピネフリンもしくはフェニレフリンの局所処方物を配薬し、次いで30分後に裏返して写真撮影したときに観察された。
【0120】
実施例16
この実施例は、γ放射線の増大する線量がこのハムスターモデルにおける口腔粘膜炎の増大する重篤度を生じること、適切な送達媒体中で局所的に塗布されるエピネフリンの増大する投与量が、この放射線に誘導された口腔粘膜炎を完全に防止できること、および、非常に高投与量の局所的エピネフリンまたはフェニレフリンは、40Gy線量のγ放射線と組合せたときに、付随する40Gyのγ放射線を伴わないときは完全に存在しない口腔粘膜に対する重篤な毒性を生じることを示す。
【0121】
適切な送達媒体中の血管収縮剤を局所塗布することが、粘膜照射または全身的化学療法後の口腔粘膜破壊および粘膜炎を防止できるかどうかを決定するために、刊行されたハムスターモデル(Alvarez, E., et al. , Clin Cancer Res. 9:3454- 3461, 2003)が使用された。
【0122】
標準の実験において、麻酔された動物の左側頬袋がピンセットで裏返され、その内容物を洗い流し、水滴を吸取り、次いでそれをハムスター頬内のもとの部位へと反転または復位させる。該頬袋は、200〜300μLの液体を、それがハムスターの口の中に零れ落ちる前に保持する容量を有している。従って、薬物は、液体を頬袋「容器」の中に単純にピペッティングすることによって、頬袋の内側粘膜表面に「局所的に」塗布することができる。頬袋を満たし、暫く待ち、次いで照射前にそれを空にすることは、ヒトの「ブクブクして吐き出す」適用プロトコールに類似している。殆どの実験について、単純な液体処方物を使用するのではなく、1〜3%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のようなゲル化剤を含有する液体が使用された。興味ある血管収縮剤を含有するこの室温での緩いゲルは、綿棒(Qチップ)を使用して頬袋の内側に塗布される。動物の体温において、それは柔らかい流動性をもった粘膜接着性の溶液になり、それが適用される全表面を効果的に被覆する。
【0123】
典型的には5〜20分の処置の後に、典型的に「充填された」頬袋がピンセットで注意深く裏返され、その内容物が吸取られ、次いで頬袋は広げられ、クリップを用いて不活性なプラスチックディスク(直径2cm、図13のパネルB参照)を横切って広げられる。次いで、固定された頬袋の露出された「内側」表面は、綿棒を使用して、局所薬物処方物で再度コーティングされる。この固定された頬袋およびハムスターは、次いで鉛プレート(厚さ2.5cmの)の上に注意深く配置され、該プレートがCs137照射器の内側に配置されたときに、頬袋がCs137照射源と直接整列している小さいウインドウの上に横たわるようにされた。その中で動物が眠りながら頬袋の照射だけが行われる小さい囲いを形成するために、他の鉛プレートが使用される。
【0124】
粘膜接着性の局所送達媒体を使用することは、20分の照射時間の間、特に照射されるときに固定された頬袋の表面が垂直に載せられるので、頬袋の表面を濡れた状態で且つ薬物で被覆された状態に維持するのを補助する。
【0125】
増大する重篤度の粘膜炎が14〜30分の露出で観察された;40Gyの露出に概ね等しい24分の露出が、Alvarez等(2003)によって使用された。照射の終了時に、頬袋を水で洗浄し、水滴を吸取り、ハムスターの頬内の正常な部位に復位させた。麻酔された動物は覚醒され、16日後(Alvarez et al., 2003)に動物は再度麻酔され、頬袋が反転され、写真が撮影される。
【0126】
「粘膜炎の重篤度スコア」が、照射後の第16日に付与される。凝集スコアは紅斑(0〜5)浮腫(0〜4)、組織の硬さ(0〜4)および擬膜形成(0〜4)を組込んでいる。11〜13の範囲の粘膜炎重篤度スコアは、ヒトの等級3の粘膜炎に類似した重篤度である。11〜13のスコアにおいては、擬膜の拡散パッチ、並びに重篤な紅斑および浮腫が目視可能であり、袋も更に固くなって、プラスチックディスクを覆って広げ難くなる。
【0127】
図12は、幾つかの重要な結果を示している。i)粘膜炎重篤度スコアは、γ放射線の線量が増大すると共に増大する;ii)(−)エピネフリンの増大する投与量の粘膜表面への局所塗布はγ線に誘導された病状に対する保護を与え、400μMは完全に保護的である;iii)10mMフェニレフリン、即ちα1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストの粘膜表面への局所的塗布は、心臓関連の副作用もなく、完全に保護的である;iv)大過剰投与量の(−)エピネフリンまたはフェニレフリンと、24分の照射との組合せは重篤な粘膜病状を誘導する;v)放射線照射を伴わない大過剰の(−)エピネフリンまたはフェニレフリンは識別可能な粘膜病状を誘導しない。
【0128】
局所的に塗布されたフェニレフリン(10mM)、即ち、α1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストは心臓関連の副作用を伴わず、γ放射線に誘導された粘膜炎を完全に防止する上で効果的であった。
【0129】
実施例17
この実施例は、適切な局部送達媒体中でヒト口腔粘膜に塗布されたエピネフリンが持続的な粘膜白化を誘導でき、これは全身的化学療法および外部放射線照射療法に対する保護を提供すると期待されることを示している。
【0130】
この実験において、L(−)エピネフリン酒石酸塩が、エタノール:リン酸緩衝塩水:ヒドロキシプロピルメチルセルロース:風味剤:蔗糖の媒体中に、1mMまたは10mM濃度で溶解された。初期のエピネフリンの舌への適用では柔らかい「薬様」の味覚を有していることが示されたので、チェリー風味剤(LorAnnオイルズInc)および濃縮蔗糖溶液のアリコートが供給媒体に添加された。最初の20分間は、1mM溶液で濡らしたQチップを使用して、下唇および下唇に隣接する口腔粘膜に薬を塗った。僅かな白化応答しか見られないので、次の50分に亘って4回、10mM溶液で濡らしたQチップを使用して、下唇および口腔粘膜に薬を塗った。その結果が図13に示されている。画像が撮影され、次いで観察された粘膜白化の程度についてスコアリングされた。10mM(−)エピネフリンの局所的治療を開始してから20分以内に、明らかな白化が見られ、図示のように、3時間までに自然に消失して正常な色の唇および粘膜を生じる前に、この白化は1.5〜2時間持続した。
【0131】
これらの結果は、血管収縮剤を局所的に塗布することができ、また化学療法剤は循環する血液血漿区画から徐々にクリアされながら、化学療法剤が負荷された血液の粘膜構造への送達を実行するために充分に長い時間に亘って、持続した白化が可能であるとの原理の証明を提供する。
【0132】
実施例18
放射線皮膚炎または放射線に誘導された脱毛の100%保護を提供するための、%血流減少の決定。
【0133】
この実施例は、ラットの刈り込まれた背中に塗布されたエタノール:PG:水供給媒体中のノルエピネフリンが、真皮脈管構造の収縮を生じることを示している。これに一致して、全身の血液に運ばれた色素分子の皮膚送達は、ノルエピネフリン処理されたラットの皮膚において顕著に低減される。ノルエピネフリン濃度(300mM)および使用される送達媒体組成物(50:30:20)は、例えば外部放射線(γ線または電子線)に対する完全な保護を与えることが示された平行実験に使用したものと同一であった。
【0134】
ノルエピネフリンの局所塗布に続く、皮膚からの全身的な色素排除:
【0135】
300mMノルエピネフリンまたは媒体単独での局所処置の10分後に、400μLの黒色色素溶液を各試験ラットの中に腹腔内瞬時投与で注入した。パッチにおける皮膚色の比色計測定が行われ、0〜30分の進行が記録された。0分の読み値と指示された時点での読み値の間の比色計単位における変化が、図15にプロットされている。皮膚の色の比色計測定は、CR−400比色計(ミノルタ社)を使用して行われた。
【0136】
比色計の読み値は、全身的な血液に運ばれた色素分子の送達が、30分の時点において、ノルエピネフリン処置された皮膚で39%低下されることを示した。この同じ結果が、2匹の追加の処理されたラットを用いて得られた。色素排除フェノタイプの開始および持続(図14)は、0分において、エタノール:PG:水送達媒体中の300mMの局所的ノルエピネフリンで処理されたラットに付与される放射線皮膚炎の「保護ウインドウ」と同じであることが観察された。
【0137】
実施例19
血管収縮剤に、ケラチン化された皮膚および頭皮の皮内脈管構造への送達のための媒体をプラスした例示処方物
【0138】
ここに記載する多くの適用は、好ましくは、ヒトおよび他の哺乳動物におけるケラチン化された皮膚および頭皮の角質層表面から約1mm下にある皮内脈管構造への、血管収縮剤の送達を提供する。図1は、毛髪濾胞の基底において「毛球ケラチン細胞」の回りに網目構造を形成する小さい血管を示している。これらの細胞は、放射線または全身的化学療法に露出された哺乳類におけるアポトーシスの主要な標的である。
【0139】
真皮血管は、血管が毛球ケラチン細胞に密接に結合している真皮乳頭において、毛髪濾胞細胞に栄養を提供する。
【0140】
局所的に塗布された血管収縮剤の真皮脈管構造への好ましい送達は、下記のことを必要とする:
【0141】
i) 皮膚標的領域、例えば脱毛防止であれば頭皮表面、或いは放射線療法患者における放射線皮膚炎を防止するのであれば上部胸部および腋窩を覆う、薬物含有溶液の均一な広がり;
【0142】
ii) 真皮中への直接の拡散、並びに皮脂線によって毛髪濾胞チャンネルの中に押出される油性の皮脂を通る拡散を可能にするための、油性角質層の浸透、
【0143】
「経濾胞」送達において、送達媒体は、好ましくは皮脂の軟化および/または溶解、並びに薬物含有媒体の毛球への拡散、および毛球細胞を貫通しその回りを通って真皮乳頭内の脈管構造に到達する拡散を可能にする。
【0144】
エピネフリン水溶液のヒト皮膚への直接の塗布は、「玉を形成し(beading up)」、且つ皮膚を転がり落ちる溶液をもたらす。実施例1は、これに一致して、処置された皮膚の検出可能な白化が存在しないことを示している。図2は、蛍光色素であるナイル赤[MW:320、比較のためにエピネフリン酒石酸塩(FW:337))がエタノール媒体中に溶解され、次いで30分においてラットの皮膚に局所的に塗布されたときに、上皮およびその上にある角質層の両者に色素分子が負荷されることを示している。規則的に離間した毛髪濾胞の各々もまた染色され、且つ濾胞直径に関係なく等しく染色されるが、これは色素が毛髪濾胞構造の全ての側面を通して全体に等しく分布することを示している。図2の左右両方のパネルにおいて、真皮内の蛍光バックグラウンドは、組織切片の外側でよりも顕著に高く、この色素が低濃度でも真皮結合組織の全体に拡散したことを示唆している。
【0145】
エピネフリン、フェニレフリンおよびノルエピネフリンの局所的送達を用いたここでの初期の仕事は、一部は、Tata等の仕事(Relative Influence of Ethanol and Propylene Glycol Cosolvents on Deposition of Minoxidil into the Skin. J. Pharm. ScL, 83: 1508-1510, 1994)によってガイドされた。彼等は、エタノール:PGの二成分系局所送達媒体における変化によって、ミノキシジルの経皮的送達を立証した。ノルエピネフリンおよび関連のカテコールアミンは一級もしくは二級アミンであるから、ここでは、特に未破壊のラットもしくはヒトの皮膚における薬物の効能を与えることが分っている濃度で、カテコールアミンの溶解を可能にする局所送達媒体のために、第三の水性成分が必要とされることが発見された。これらカテコールアミンを含有する現在の医薬処方物が存在するが、各場合に、当該処方物(薬物脳井戸および送達媒体の両方)は、ここに教示される方法を実施するために機能的でなく、またヒトの皮膚に局所的に塗布されたときに如何にして効能を達成するかについて有用でも有益でもない。
【0146】
従って、脱毛または放射線皮膚炎を防止するために、ヒト癌患者において鱗片状(ケラチン化された)皮膚に塗布するための局所的血管収縮剤の有用な処方物の必要性が、我々を、好ましい処方物の開発に適用される幾つかの基準の同定に導いた。これらの基準には下記のものが含まれる:
【0147】
i) 局所薬物処方物の迅速な吸収、好ましくは皮膚上に望ましくない残渣を伴わない;
【0148】
ii) 局所的薬物塗布に続く皮膚白化の迅速な開始;
【0149】
iii) 正常な皮膚のpHに概ね等しいpHをもった局所的に適用される薬物溶液;
【0150】
iv) 好ましくは、室温または冷蔵庫温度の両方において長期保存の際に活性剤の実質的な沈殿を伴わない、高濃度のカテコールアミンの溶解を可能にする溶媒特性;
【0151】
v) 望ましい濡れ特性、例えば、薬物溶液を皮膚または頭皮に塗布するために使用されるスポンジアプリケータを自然に濡らすために充分に低い処方物密度(または粘度);
【0152】
vi) 抹消脈管構造の収縮を可能にするための強力なα1アドレナリン作動性受容体アゴニストであるが、β2アゴニストに付随する何等かの可能な心臓の頻脈/不整脈副作用を回避するためにβ2アドレナリン作動性受容体アゴニストではない血管収縮剤。
【0153】
ここに開示したように、上記の各々の要件は成功裏に対処されている。
【0154】
i) 実施例7および図3に記載された実験は、46の処方物におけるエピネフリン酒石酸塩の600mM溶液の調製および分析を含んでいた。ここで、三つの溶媒(エタノール、PGおよび水)のパーセンテージは系統的に変化された。ノルエピネフリンの持続的溶解性、並びに46の処方物のうちで三つの薬理学的特性がスコアリングされた。詳細に研究された三つの処方物、A(50:30:20;エタノール:PG:水;vol:vol:vol)、B(60:15:25)、およびC(70:0:30)のうち、AおよびBは、薬物塗布の1時間後に検出された望ましくない「粘着性」の残渣が、局所処置部位に残した。70%エタノールおよび30%水で構成される処方物Cは、検出可能な残渣を伴うことなく、塗布の数分以内に完全に吸収された。
【0155】
ノルエピネフリンは強力な薬理学的に活性な物質であり、規制のための毒物として掲載されている。放射線療法の患者は、例えば週当り5回で6週間の治療を受ける。安全性の理由、並びに患者のための単純な利便性の理由で、局所的に塗布される薬物は迅速に吸収されるべきである。これにより、皮膚に薬物残渣を伴わずに、或いは、不当な安全性の危険、例えば小さい子供が持ったときに接触し得る衣類上での蓄積を伴わずに、処置された皮膚部位(例えば乳癌患者の型および腋窩)に衣類を毎日戻すことが可能になる。
【0156】
ii) 実施例7、並びに図4および図5は、ヒトボランティアの胸部および上腕部の皮膚における皮膚白化応答の応答時間を記載している。線型加速器の多額の費用のため、並びに再スケジュールのオプションがなく特定の日に処置されなければならない多くの患者のために、ヒト放射線療法の患者についての照射スケジュールは緻密にコントロールされる。こうして、所定の患者は1回の外来当り15分〜20分間クリニックに居ることになり、照射(たとえば2Gy/日)には1〜3分だけを要するであろう。局所的に塗布された血管収縮剤処方物には、放射線施設内での実際的でない遅延を生じることなく、患者が放射線保護を期待して照射を受けることができるように迅速に皮膚の白化応答を開始することが必要とされる。照射のラットモデルを使用した実施例13および実施例14は、白化ウインドウが放射線保護ウインドウを充分に予測することを示した。更に、実施例13に見られるように、スコアリングの制限内において、放射線保護は白化応答に僅かに先行する。70:0:30の送達媒体中に600mMのノルエピネフリンを有する実施例7の処方物Cは、上腕部位においてさえ迅速に白化応答を誘導した。上腕部は、試験された他の腕、胸または首の部位に比較して、重度にケラチン化されていてるので比較的遅いように思える。
【0157】
iii) 皮膚の正常なpHは4〜5.5にあり、皮膚の大きなアルカリ性は、P.acnesのような皮膚病原体の増殖を支える大きな能力と関連している。70%エタノール:30%水の媒体処方物に溶解されたエピネフリン酒石酸塩の600mM溶液(例えば処方物C)の、未調節のpHは4.1である。酒石酸上の両方のイオン性プロトンのpKaは、温和な酸性の水−エタノール溶液を生じ、該溶液は皮膚と高度に適合性であり、複数回の塗布後にも認識可能な刺激を伴わない。
【0158】
iv) 好ましくは、医薬処方物は、製品の保存寿命の間は当該処方物の各要素が可溶性のまま残るように設計される。実施例7および図3のデータは、エタノール:PG:水の3成分媒体中における600mMのエピネフリン酒石酸塩の持続的な可溶性が、完全に直感的ではないことを示している。溶解度の「島」が、50:30:20処方物の回りに見られる。エピネフリン酒石酸塩は、エタノール:水の単独溶液中で安定に可溶性であることが、或る程度非予測的に見出された。処方物C(70:0:30)は、望ましい白化応答を誘導するための許容可能な活性を有する濃度の、エピネフリン酒石酸塩(600mM)の安定な溶液を提供した。α1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストであるフェニレフリンHClは、実施例6に示した様に、許容可能な白化応答を誘導するために必要な濃度では局所的媒体中で安定に可溶性ではないので、ケラチン化した皮膚に対する局所塗布のための血管収縮剤としては好ましくない。
【0159】
v) 濡れ性は、ここに記載するタイプの局所処方物のための有用な性質である。処方物C70:0:30のエピネフリン酒石酸塩溶液の密度(0.931gm/リットル)は、水の密度よりも顕著に低い。処方物Cの50μLのアリコートが商業的に入手可能なスポンジアプリケータの表面に供給されたときに、該液体は該スポンジを自然に濡らす。癌患者においては、脱毛を防止するために、局所的ノルエピネフリン処方物が、例えば目の中に垂れること等を伴わずに、頭皮および眉のような所望の部位に塗布されることが重要であろう。従って、標的部位に液体の薄膜を塗布するために使用できるスポンジアプリケータは、非常に有用であろう。これらスポンジアプリケータの幾つかは重力によって充填され、ここでは破られた保存瓶からの液体がスポンジの頂部へと流れ、次いで該スポンジの底部が、この溶液を皮膚に塗布するために使用される。従って、頭皮または他のケラチン化された皮膚への薬物塗布を可能にするために、薬物処方物がアプリケータ(例えばスポンジ)を自然に濡らすことができることは非常に有用で且つ極めて好ましい。
【0160】
vi) 真皮脈管構造の収縮を誘導するために、ここで使用するために局所的に塗布された血管収縮剤分子は、好ましくは、真皮血管壁内の平滑筋細胞の原形質膜に存在するα1アドレナリン作動性受容体のアゴニストである。しかし、当該薬物のリスクプロファイル、スピード規制認可、蓄積医師製品承認(garner physician product acceptance)を改善するために極めて好ましい第二の要件は、当該分子がβ2アドレナリン作動性受容体のアゴニストでないことである。β2アドレナリン作動性受容体は、エピネフリンの全身注射または心臓内注射に通常伴われる頻脈および/または不整脈の効果を媒介する。
【0161】
フェニレフリンおよびメトキサミンは、おそらく論理的選択であるが、実施例6におけるフェニレフリン(および別途メトキサミン)に見られるように、それは未破壊のヒト皮膚に適用されたときに充分に皮膚の白化を誘導する能力を欠いている。口腔粘膜および他の粘膜表面は未破壊の皮膚よりも約4000倍以上吸収性であるから、フェニレフリンはやはり、粘膜白化を誘導し、粘膜に対して白化フェノタイプに関連した放射線保護および化学療法保護を与える活性剤としての優れた選択肢のまま残されることに留意すべきである。
【0162】
下記の表19−1から分るように、ケラチン化された皮膚に塗布する血管収縮剤のための許容可能な溶液は、ノルエピネフリンである。α1アドレナリン作動性受容体についてのその結合親和性(効力)は、エピネフリンについてのそれよりも僅かに良好である。また、それはβ2受容体のアゴニストではなく、従って頻脈/不整脈の作用を与えることははできない。
【表9】
【0163】
ノルエピネフリンは、β1アドレナリン作動性受容体アゴニストであり、従って、血中の薬理学的濃度において血圧を増大できるであろう。本発明を如何なる特定の動作モードにも限定するものではないが、血管収縮剤として皮膚に局所的に塗布され、拡散によって真皮脈管構造に送達されるノルエピネフリンは、その分布において自己制限的であると思われる。局所的ノルエピネフリン塗布の自己性限的性質に加えて、ノルエピネフリンを含むカテコールアミンを異化する二つの非常に効率的な酵素、即ち、組織、血液および血球の両方に広く分布したCOMT(カテコールO−メチルトランスフェラーゼ)およびMAO(モノアミンオキシダーゼ)が存在する。従って、処方物Cは、70:0:30の送達媒体中の600mMノルエピネフリンを提供し、この基準を満たしている。
【0164】
顕著には、長期の継続的且つ徹底したスクリーニングの後に、上記に列記した基準i)〜vi)の各々を満たす許容可能な処方物が同定された。EtOHおよび水を70:30の比率で含有する送達媒体が効果的であった。ノルエピネフリンを約450mM〜約750mMで含有する組成物もまた有効であった。好ましい処方物は、500〜700mMのエピネフリンを含有する。更に好ましいのは、約550〜650mMのエピネフリンを含有する処方物である。現在の好ましい実施例においては、70%エタノールプラス30%の水中に溶解された600mMのエピネフリン酒石酸塩が上記基準を満たし、ケラチン化された皮膚または頭皮組織の皮内脈管構造へと血管収縮剤を送達することが見出された。
【0165】
当業者は、ここに提供された実施例および説明が、未だ添付の特許請求の範囲内にあるが変化および適合されることができる、本発明の側面を更に記述するために役立つことを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、ラット皮膚の組織学的横断面を示している。それは、上皮および毛髪濾胞内の幹細胞、並びに毛髪濾胞を取り囲んで真皮およびその上にある皮膚構造に血液を提供する真皮脈管構造の位置を示している。
【図2】図2は、ラット皮膚に局所的に塗布されたエタノール送達媒体中の色素分子(ナイル赤、FW:318)が、どのようにして角質を通って上皮を貫通し、規則的に配列された毛髪濾胞の各々を濾胞球の底を通って貫通するかを示している。
【図3】図3は、エタノール、プロピレングリコールおよび水の混合物を含んでなる種々の局所薬剤処方物中における、ノルエピネフリンの溶解度を示している。黒丸はノルエピネフリンが可溶性である点を表し、白丸はノルエピネフリンが可溶性でない点を表している。
【図4】図4は、ヒト胸部皮膚の白化応答 vs.指示された薬物処方物の単回局所塗布後の時間を表すグラフを示している。
【図5】図5は、ヒト上腕皮膚の白化応答 vs.指示された薬物処方物の単回局所塗布後の時間を表すグラフを示している。
【図6】パネルAは、皮膚白化応答 vs.ヒト腕へのエピネフリンの単回局所塗布後の時間(時)を表すグラフを示している。 パネルBは、皮膚白化応答 vs.ヒト腕への一連のエピネフリン局所塗布後の時間(エピネフリンの最初の局所塗布後の時間)を表すグラフを示している。
【図7】パネルA: 血管収縮の剤の局所塗布は、ヒトまたはラットにおいて皮膚の白化を誘導する; パネルB: 化学療法剤(サイトキサン)は、静脈注射または経口投与の後、経時的に、血液から全身的にクリアされる。 パネルC: 血管収縮剤の局所的塗布は、処置された領域への血液供給の低下に一致して、皮膚を迅速に白化する。 パネルD: サイトキサン(30μg/gm b.w)の単回i.p.投与前に、2時間に亘って4回の局所的な950mMエピネフリンを用いて10日齢のラットの子供を治療した結果。 パネルEは、塗布された血管収縮剤の濃度の関数としての、ヒト皮膚およびラット皮膚(両者共に10日および22日齢)についての皮膚白化応答のプロットである。
【図8】図8は、ラットにおけるサイトキサンにより誘導された脱毛の投与量依存性を示している。20μg/gm b.w.以下のサイトキサン投与量では、治療されたラットは完全に体毛で覆われ、成体になるまでそれを維持した。
【図9】図9は、放射線照射前の目視での皮膚白化の評価が、照射後の放射線皮膚炎予防の決定と相関することを示している。 パネルA:200mMノルエピネフリンでの処置 パネルB:100mMエピネフリンでの処置
【図10】図10は、血管収縮剤の局所的治療が与えられた照射の前の時間量の関数として、放射線皮膚炎の重篤度を示している。
【図11】図11は、血管収縮剤で局所的に処置されたシリアンゴールデンハムスターの口腔粘膜における白化応答を示している。
【図12】図12は、増大した放射線量から生じる、ハムスター頬袋モデルにおける口腔粘膜炎の増大した重篤度をグラフで表している。適切な送達媒体中の適切な投与量で局所的に塗布された血管収縮剤は、放射線誘導された口腔粘膜炎を予防することができるのに対して、高濃度の場合は、40Gyの放射線量と組合されたときに口腔粘膜に対して重篤な毒性を生じる。
【図13】図13は、局所的に投与された(−)エピネフリンが、ヒト口腔粘膜において観察される粘膜白化の程度に影響することを示している。最大白化応答(%)vs.局所処置後の時間のプロットが、傾向粘膜および唇の両者について示されている。
【図14】図14は、ラットの剃毛した背中に塗布されたエタノール:PG:水送達媒体中のノルエピネフリンが、皮膚脈管構造の収縮を生じ、これに一致して、血液に運ばれた全身の色素分子の送達はノルエピネフリン処置された皮膚へと顕著に減少する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
35U.S.C.§22(c)に従って、合衆国政府は認可番号CA22484の国立衛星研究所の基金に一部支援された、ここに記載する発明において一定の権利を有すると認められる。
【0002】
本願は、2005年6月17日に提出された合衆国仮特許出願第60/691,571号の優先権を主張するものであり、その全体を本明細書の一部として援用する。
【0003】
発明の分野
本発明は癌治療の分野に関する。本発明は特に、血管収縮剤分子を使用して、放射線療法および癌化学療法剤の毒性副作用から非腫瘍性細胞を保護するための、医薬製剤および方法を提供する。
【0004】
発明の背景
癌患者を治療するための化学療法および放射線療法の使用には、斯かる治療の正常細胞に対する毒性、特に毛髪濾胞、皮膚上皮、および胃腸粘膜内の幹細胞を含む上皮細胞ポピュレーションに対する毒性に起因して、重篤な副作用を伴う。
【0005】
現在、癌治療の副作用を防止するためには、存在するとしても僅かな治療しか存在しない。癌の治療における化学療法薬および放射能治療法(ここでは放射線療法とも称する)の完全な有用性は、これら薬剤の非特異的細胞毒性に付随した副作用に起因して、充分には利用されてこなかった。
【0006】
効果的な治療は、好ましくは下記の手段を含んでいる:i)皮膚上皮、毛髪濾胞および胃腸粘膜の危険な状態にある幹細胞において、全身投与される細胞毒性薬物の濃度を減少させるための手段、およびii)組織中での放射線に誘導された細胞死の多くは放射線に誘導された酸素遊離ラジカルから生じるので、皮膚上皮、毛髪濾胞および胃腸粘膜の危険な状態にある幹細胞において酸素の濃度を一時的に減少させるための手段。
【0007】
上皮細胞に対する癌治療の毒性は、化学療法または放射線療法を受けている患者が共通に罹患する多くの副作用の原因である。これには胃腸障害、悪心、嘔吐、下痢、直腸炎、食欲不振、脱毛、骨髄抑制、照射部位における皮膚発赤または潰瘍形成が含まれる。これらの合併症は耐えるのが難しいので、これら副作用を回避するために、患者は推奨される癌療法での治療を見合わせ、または中断する可能性がある。毒性を最小化し、且つ正常な薬物感受性の細胞を保護するために、化学療法に際して、化学療法剤は典型的には最適投与量未満で投与される。
【0008】
例えば、胃腸障害は、患者が彼等の疾患と闘う能力を最適化するために必要な栄養を得るのを困難にするので、患者の回復機会を損なう可能性がある。化学療法および放射線療法に関連した胃腸管腔細胞の死および組織脱落は、胃腸管損傷に付随した分子の血管内への放出をもたらす。これらの血流に運ばれる分子は、脳内の部位によって検出されるときに、化学療法を受けている患者の間で共通の悪心応答をトリガーする。オンダンセトロンのような薬物での現在の治療は、これらの脳中心を抑制するように働き、従って悪心応答を減少させる。しかし、胃腸管ライニングの一次破壊は、化学療法の最も効果的な使用を更に制限する。
【0009】
これらの患者における悪心を低減するためのより良好な機構は、脳におけるこれら分子の作用を抑制するよりも、むしろ胃腸管表面の一次破壊を排除し、それによって損傷に付随した悪心誘導分子の放出を防止することであろう。化学療法剤に対する正常細胞の感受性を低減することは、より高い薬物投与量での投与を可能にし、化学療法を更に効果的にするであろう。
【0010】
放射線に誘導された皮膚炎は、癌治療のもう一つの認識された副作用である。放射線療法は、癌患者のための主療法または補助療法として正規に使用されるが、照射領域内での皮膚炎または焦げた皮膚は、放射線療法患者の大部分に共通した、且つ苦痛を伴う副作用である。
【0011】
粘膜炎もまた、癌療法の重要で且つ高くつく副作用である。粘膜表面の炎症として、粘膜炎は化学療法および/または放射線療法の頻繁かつ潜在的に重篤な合併症である。それは紅斑、剥離、潰瘍形成、出血および浸出液として現れ得る。粘膜炎は、DNA複製および粘膜幹細胞増殖に対する化学療法または放射線療法の直接の阻害効果から生じることが、一般に受け入れられている。これらの事象は、基底上皮の再生能力の低下をもたらし、粘膜萎縮、コラーゲン破壊、および潰瘍形成を導く。二次的な影響は、保護粘膜バリアの分解後における多くの病原体による感染である。
【0012】
粘膜炎は、口腔から腸および直腸まで、胃腸管および泌尿生殖器管の全体に亘って存在し得る。それは異常な栄養摂取、増大した全身的感染、痛みを減少させるための麻薬の使用、および癌治療の延長を導くので、特に衰弱性である。癌治療による粘膜炎を防止するための商業的な薬物は知られていない。口腔粘膜炎の現在の治療には、口腔衛生の基本原理の適用が含まれ、また症状を最小化するための努力において、痛みを軽減するための局所麻酔および全身的鎮痛薬のような治療法が使用される。胃腸管の正常な細胞を保護するための補助的手段には、栄養刺激および増殖因子の摂取を最大化することが含まれる。しかし、これらの療法もまた、粘膜炎の基礎をなす原因に対して対処していない。
【0013】
放射線療法または化学療法剤の存在下において、正常細胞の日常的な成長および増殖を促進する保護療法を成功裏に実施することは、より高い投与量で、より攻撃的な癌治療を可能にするであろう。結局、これらの保護療法は、癌およびその治療の副作用に対処するだけでなく、現在の療法を使用することにより見られるよりも、癌に対する更に大きな治療効果を可能にする。
【0014】
保護療法を開発するための二つの有用なターゲットは、(1)上皮細胞、例えば口腔および全体の胃腸管または泌尿生殖器管をライニングする細胞、(2)他の上皮細胞、例えば、毛髪濾胞および表皮を含む皮膚の上皮細胞である。現存するアプローチの効果および有用性は限定的であり、これら副作用を緩和するための新しい効果的な療法についての必要性が強調されている。
【0015】
従って、癌治療の副作用、例えば粘膜炎を低減できる安全かつ有効な薬物製剤、並びにこれら副作用を低減または最小化する方法についての必要性が存在している。更に詳細に言えば、危険な状態にある非腫瘍性組織に対して血管収縮剤を局所投与し、そうすることにより全身的な化学療法剤の送達を低減し、また一時的な低酸素症を生じさせて、放射線療法の際の酸素ラジカル形成を低減する方法を提供する必要性が存在している。
【0016】
また、投与量、送達媒体処方物、および血管収縮剤受容体特異性についての設計により、癌療法副作用に対して、危険な状態にある非腫瘍性細胞に対する保護、特に局部的な保護を与えるけれども、適用される血管収縮剤の1以上の望ましくない全身的効果を低減または更に防止するような、局所的血管収縮製剤を提供する必要性が存在している。
【0017】
また、癌患者がその風味に充分耐えられる処方で、血管収縮剤の局所的な経口投与を可能にする製剤を提供する必要性が存在している。
【0018】
また、ヒトまたは動物の癌患者における皮膚もしくは粘膜表面への送達を容易にする局所的送達媒体と組合せた、有効かつ無毒の投与量での血管収縮剤の適用を含んでなる治療方法の必要性が存在している。
【0019】
発明の概要
本発明は、癌治療の副作用を防止するための、局所的に適用される医薬製剤および方法に関する。より詳細に言えば、本発明は、癌患者の皮膚、毛髪濾胞、並びに胃腸管および泌尿生殖器管の非癌性上皮細胞を、癌化学療法および/または放射線療法の結果として生じる副作用から保護するための、血管収縮剤分子の送達に関する。
【0020】
その幾つかの側面の一つにおいて、本発明は、患者における治療の副作用から生じる症状を低下させるための方法を提供する。この方法は、1以上の化学療法剤、放射線療法またはそれらの組合せを用いた処置のような治療の副作用を低減するために有効な量で、血管収縮剤を医薬的に許容可能な送達媒体中に含有する製剤を投与することを含んでなるものである。種々の好ましい実施形態において、副作用によって生じる症状には、脱毛症、皮膚炎、粘膜炎、胃腸障害、または直腸炎の1以上が含まれる。
【0021】
一つの実施形態において、前記副作用に関する症状は、皮膚、頭皮、口、直腸、鼻腔食道系、胃腸系、または泌尿生殖器系の1以上の非癌性細胞において低減される。一定の実施形態において、当該製剤は予防的に、例えば化学療法、放射線療法または塀用療法の開始前に、または前記副作用を呈する原因損傷の発生前に投与される。現在の好ましい一定の実施形態は、粘膜炎および直腸炎、即ち、斯かる治療において問題である共通の二つの副作用に向けられている。一定の実施形態では、標的粘膜の細胞への血管収縮剤の送達を最適化するために、当該製剤は、標的粘膜細胞[例えば直腸炎については直腸または直腸粘膜、および粘膜炎(例えば口腔粘膜炎)については口腔粘膜]への血管収縮剤の送達を最適化するために、送達媒体と共に処方される。
【0022】
以下で更に詳細に述べるように、本発明の方法において、また本発明の製剤と共に使用するための現在の好ましい血管収縮剤には、エピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエピネフリン、ゾルミトリプタン、テトラヒドロザリン、およびナファゾリン、並びにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。当業者は、上記の組合せが本発明の範囲内において有用であることを理解するであろう。本発明の種々の実施形態と共に使用するための、現在の好ましいαアドレナリン作動性受容体アンタゴニストには、プラゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、アルフゾシン、タムスロシン、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
もう一つの実施形態において、当該方法は更に、治療の後に、医薬的に許容可能な送達媒体の中にαアドレナリン作動製受容体アンタゴニストを含有する有効量の第二の製剤を、当該化合物を、前記血管収縮剤含有製剤を受ける細胞に送達するために投与することを含むものである。このような方法は、感受性細胞型の血管収縮剤への露出に伴う影響を緩和するために有用である。好ましくは、このようなアンタゴニストは、血管収縮剤の何等かの乾燥効果の更なる軽減を提供する湿潤特性または潤滑特性を有する成分、例えば送達媒体と共に投与される。
【0024】
本発明のもう一つの側面においては、化学療法剤または放射線を用いるような治療の毒作用から、患者における細胞を保護するための医薬製剤が提供される。この製剤は、少なくとも一つの血管収縮剤と、当該細胞に奉仕する脈管構造へと前記血管収縮剤を送達するのに適した医薬的に許容可能な送達媒体とを含有する。他の実施形態において、当該製剤はまた、例えば患者に経口投与する製剤の嗜好性(palatability)を改善するために、風味剤のような1以上の添加剤を含有する。好ましい実施形態において、前記血管収縮剤はエピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエプネフリン、ゾルミトリプタン、テトラヒドロザリン、もしくはナファゾリン、またはこれらの組み合わせである。
【0025】
幾つかの実施形態において、当該製剤はエピネフリンを含有する。好ましくは、その濃度は約5mM〜約1500mM、より好ましくは約100mM〜約1500mMである。また、約5〜約100mM、約50〜250mM、約100mM〜1000mM、または更に1500mMを有する組成物も好ましい。或いは、一定の実施形態は、約0.009%〜約11%のエピネフリンを利用する。また、約0.009%〜約0.9%、約0.1%〜約0.5%、約0.5%〜約11%、および約1.1%〜約11%を有する組成物も好ましい。
【0026】
他の実施形態において、当該医薬製剤は、好ましくは約10mM〜約5000mM、また好ましくは約250mM〜約5000mMのフェニレフリンを含有する。また、約10〜100mM、50〜250mM、100〜500mM、および250〜2500mM以上を含有する組成物も好ましい。約0.03%〜約25%のフェニレフリンを有する組成物もまたここでは有用である。また、約0.03%〜0.22%、約0.20%〜約1.5%、約1.5%〜約5%、および約5%〜約25%を有するこれら製剤も好ましい。
【0027】
他の実施形態において、当該医薬組成物は、好ましくは約4.5mM〜約1500mM、好ましくは約100mM〜約1500mMのエピネフリンを含有する。他の好ましい範囲には、約4.5〜50mM、40〜100mM、75〜250mM、10〜500mM、200〜800mM、または100〜1500mM以上が含まれる。
【0028】
もう一つの実施形態において、当該医薬製剤は、好ましくは約10mM〜約5000mM、好ましくは約250mM〜約5000mMの濃度のメトキサミンを含有する。他の好ましい範囲には、約10〜100mM、50〜250mM、200〜1000mM、250〜2500mMまたはそれ以上が含まれる。或いは、該組成物は約0.01%〜約25%を含有する。また、約0.01%〜約0.5%、約0.5%〜1%、および約1%超〜約25%以下の組成物も好ましい。
【0029】
もう一つの実施形態において、本発明の医薬製剤は更に、遊離ラジカルスカベンジャーを含有する。これは、治療により誘導される遊離ラジカル形成によって酸化的損傷が生じる場合に特別に有用である。
【0030】
もう一つの実施形態において、当該医薬製剤は、リポソーム、リピド液滴エマルジョン、油、ポリオキシアルキレンエーテルの水性エマルジョン、水性アルコール混合物、プロピレングリコールを含有する水性エタノール混合物、水性緩衝液中の医薬的に許容可能なガム、水性緩衝液中の修飾セルロース、アルコール−水緩衝混合物中の修飾セルロース、アルコール−水緩衝液−プロピレングリコール混合物中の修飾セルロース、または水性緩衝液中のジエチレングリコールモノエチルエーテルを含んでなる、1以上の医薬的に許容可能な送達媒体を含んでいる。現在のところ好ましいのは、水性アルコール混合物、およびプロピレングリコールを含有する水性エタノール混合物である。また、修飾セルロースに基づく送達媒体、特に例えばアルコール−水性緩衝液−プロピレングリコール混合物中のヒドロキシプロピルメチルセルロースも好ましい。
【0031】
他の側面において、本発明は、細胞、好ましくは上皮もしくは毛髪濾胞内の幹細胞に到達する全身的な化学療法剤の量を低下させるように、血管収縮剤が一時的に皮膚血管を収縮させるために有効な量で存在する方法を提供する。他の実施形態において、血管収縮剤の濃度は、上皮または毛髪濾胞内の幹細胞に到達する酸素添加された血液の量を低減させるように、真皮の血管を一時的に収縮させるために充分なものである。一定の実施形態において、斯かる幹細胞の近傍において局部的に化学療法剤の量を減少させ、酸素添加された血液の量も減少させるように、血管は一時的に制限される。他の実施形態において、血管収縮剤は、真皮の血管を一時的に収縮させることにより、真皮脈管構造内に存在して口腔粘膜内の幹細胞に到達する全身的な化学療法の量を低減させるために有効な量で存在し、または真皮血管を一時的に収縮させることにより、真皮脈管構造内に存在して口腔粘膜内の幹細胞に到達する酸素添加された血液の量を低減するために有効な量で存在する。
【0032】
もう一つの実施形態において、この皮膚用局所製剤は、放射線療法に誘導された皮膚炎または化学療法もしくは放射線療法に誘導された脱毛症を防止するために効果的であるエピネフリンの予防的投与量を提供するが、望ましくない全身的または心臓の副作用を生じ得るエピネフリンの壊死的局部毒性または皮膚通過を最小化もしくは回避するために、充分に低い投与量を提供するように処方される。
【0033】
更なる実施形態において、当該局所的送達媒体は、具体的には皮膚のために処方され、好ましくは血管収縮剤が角質層を貫通して、下地(underlying)の真皮脈管構造にアクセスすることを可能にするように処方されるが、該脈管構造は上皮および毛髪濾胞幹細胞に供給するが、皮膚および毛髪濾胞を越えた血管収縮剤の分布を排除または制限する。
【0034】
更なる実施形態において、選択された血管収縮剤は、皮膚または粘膜の脈管構造の収縮を与えることができるが、二重のαおよびβアドレナリン作動性アゴニストで見られる望ましくない心臓副作用の如何なる実質的な危険も提示するものではない。一つの現在の好ましい実施形態においては、局所的に適用される血管収縮剤として、α1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストが使用される。本発明を何れかの特定の動作理論に限定せずに、このような血管収縮剤は高度に選択的なアゴニストであるので、有用な性質を提供する可能性がある。エピネフリンのような二重αおよびβアドレナリン作動性アゴニストの望ましくない心臓副作用は、心拍数に影響するβ2受容体での相互作用によるものであることが、当業者によって理解されるであろう。本発明の種々の実施形態において使用するための、α1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストの現在の好ましい例は、フェニレフリンおよびメトキサミンである。選択性の低いα1アドレナリン作動性受容体特異的で、β1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストでもあるが、β2アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストではない現在の好ましい例は、ノルエピネフリンである。上記の組合せもまた、ここでの使用のために想定される。
【0035】
本発明のもう一つの実施形態において、局所製剤は、放射線療法または全身的化学療法、またはこれら両方の同時もしくは逐次的な組み合わせを受けている癌患者における口腔粘膜炎を低減し、または好ましくは予防するために処方される。該製剤は、口腔粘膜炎を低減または完全に防止する最小投与量のエピネフリン、フェニレフリン、ノルエピネフリン、もしくはメトキサミン、またはそれらの組み合わせを提供するように処方される。好ましくは、該処方剤はまた、口腔粘膜炎に対する如何なる有意な壊死毒性をも誘導しない投与量のエピネフリン、フェニレフリン、ノルエピネフリンもしくはメトキサミン、またはそれらの組合せを用いて処方される。
【0036】
口腔粘膜炎防止としての更なる実施形態において、ヒト癌患者において経口的に適用される薬物の容認を得るためには、経口的に投与される製剤の何等かの望ましくない感覚的性質を低減または最小化するために、低いが保護的投与量のエピネフリン、フェニレフリン、ノルエピネフリン、もしくはメトキサミン、またはそれらの組合せが使用される。斯かる望ましくない感覚的な質には、血管収縮剤分子がもたらす「薬」味または苦い味が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、斯かる望ましくない感覚的性質を低減、マスキングもしくは除去し、および癌患者による当該製剤の経口的容認性を改善するために、1以上の化合物、例えば風味剤または添加剤が当該製剤に加えられる。
【0037】
口腔粘膜炎治療のもう一つの実施形態において、当該方法は、放射線療法もしくは化学療法での治療の後に、局所的血管収縮剤治療から生じ得るドライマウスを最小化または排除するために、湿潤性局所的送達媒体中の局所的αアドレナリン作動性受容体アンタゴニスト(例えばプラゾシン)で口腔を処置するステップを含んでいる。もう一つの実施形態において、当該方法は直腸炎予防のためのものであり、血管収縮剤治療の後に直腸粘膜分泌および機能を再樹立するために、直腸が、湿潤性および潤滑性のフォームまたは座薬中の、αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストの適用で治療される。
【0038】
本発明のもう一つの実施形態において、当該局所製剤は、化学療法に由来する口腔粘膜炎、胃腸障害、または低い腹部放射線療法を受けた後に直腸の内部表面の粘膜炎を発症した患者の直腸炎を、低減または防止するように使用するために処方される。これらの実施形態において、当該製剤は、好ましくは、例えば中咽頭の粘膜、胃もしくは十二指腸粘膜または直腸粘膜を、薬理学的に有効な濃度の血管収縮剤で効率的にコーティングすることを可能にする粘膜接着性分子を含んでいる。
【0039】
本発明のもう一つの側面に従えば、癌の化学療法または放射線療法に際しての損傷から、細胞、好ましくは非腫瘍性細胞を保護するための方法が提供される。該方法は、放射線療法または癌化学療法の際の損傷から非腫瘍細胞を保護するのに有効な時間および量で、上皮細胞の集団に対して上記で述べた製剤を投与することにより、患者を治療することを含んでなるものである。該方法はまた、血管収縮を軽減するために、患部粘膜表面にαアドレナリン作動性受容体アンタゴニストを投与するステップを含むことができる。好ましくは、このような治療は、湿潤な機能的粘膜表面を再樹立するのを補助する。好ましい実施形態において、該方法は、当該製剤を頭皮に適用することにより、癌治療の際の脱毛を防止するために使用される。もう一つの実施形態において、当該方法は、当該製剤を経口投与することにより、癌治療による胃腸障害を防止するために使用される。もう一つの実施形態において、当該方法は、身体の適切な領域に前記製剤を局所的に投与することによって、化学療法または放射線療法に由来する粘膜炎を防止するために使用される。更にもう一つの実施形態において、当該方法は、当該製剤を皮膚に塗布することにより、放射線に誘導された照射部位における皮膚炎、皮膚発赤、および潰瘍形成を防止するために使用される。
【0040】
本発明のこれら特徴および他の特徴は、以下の詳細な説明、実施例および表から更に充分に理解されるであろう。
【0041】
発明の詳細な説明
本発明は、患者の身体における非癌性の迅速に分割する細胞を、患者に投与された化学療法剤または放射線療法の毒性効果から保護するための医薬製剤および方法を提供する。特に、本発明の製剤および方法は、上皮細胞を保護するために設計される。最も特別には、標的は毛髪濾胞をライニングする上皮細胞、並びに皮膚、口、直腸、胃腸管および泌尿生殖器管の上皮細胞および/または粘膜細胞である。一つの実施形態において、当該製剤は、前記製剤を頭皮に局所的に塗布することにより、癌治療の際の脱毛を低減もしくは防止するために使用される。もう一つの実施形態は、当該製剤を経口投与することによって、癌治療による胃腸障害を低減または防止することを含んでいる。もう一つの実施形態は、前記製剤を身体の適切な領域に局所的に投与することにより、化学療法または放射線療法に由来する粘膜炎を低減または防止することを含んでいる。更にもう一つの実施形態において、当該製剤は、皮膚にこれを投与することにより、照射部位において放射線に誘導された皮膚炎、皮膚発赤および潰瘍形成を防止するために使用される。
【0042】
本発明は、化学療法および放射線治療に由来する望ましくない副作用を防止する上で効果的である血管収縮剤分子を同定した。送達媒体中に処方された血管収縮剤は、特に、皮膚もしくは口の表面、または直腸、胃腸管もしくは泌尿生殖器管に局所的に投与されるように設計される。これらの局所的製剤は、正常な非腫瘍性細胞を、癌治療に由来する損傷から保護することができる。血管収縮剤は、それらが局所的に適用される所定の組織を最小貫通することにより、意図した領域において局所的な保護効果を生じる。局所的脈管構造の一時的収縮は、保護されるべき危険な状態にある非腫瘍性細胞への全身的化学療法剤および酸素の送達を減少させる。更に、血管収縮剤の局所的送達は、部分的には皮膚または粘膜への血管収縮剤適用の自己制限的性質の故に、如何なる全身的分布をも低下または完全に回避させるはずであり、この場合は薬物自身が、さもなくばこれを通して全身に分布されるであろう血管を収縮させることによって、その自己制限的分布に積極的に寄与する。
【0043】
本発明の追加の側面は、i)粘膜表面に対する効果を達成するが壊死毒性を回避する血管収縮剤の濃度;ii)治療されるべき皮膚および/または粘膜層を通しての局所的送達媒体の浸透(例えば、一実施形態ではアルコール、プロピレングリコール、水のパーセンテージを変化させることによる)および粘膜表面への付着;iii)ヒト癌患者による最大の経口許容度を可能にするような製剤の味、を方向性をもたせて操作することを可能にする。その幾つかの他の側面において、本発明はまた、血管収縮剤の経口使用の後に生じ得る乾燥マウスを緩和するため、また複数のアドレナリン作動性受容体部位に結合する血管収縮剤に起因して生じ得る副作用を回避するための、αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストの局所的使用を提供する(例えば、αおよびβアドレナリン作動性受容体アゴニストのエピネフリンは望ましくない心臓血管系副作用を誘導する能力を有し、この副さ用は、選択的なα1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストであるフェニレフリンおよびメトキサミンでは生じることが予測されない)。
【0044】
全身的に分布されるαおよびβアゴニスト、例えばエピネフリンの望ましくない心臓系副作用は周知であるが、全身的に分布される血管収縮剤による腫瘍細胞の遠隔保護が可能である。従って、ここに教示される方法および組成物は、皮膚または粘膜における望ましい局部的な血管収縮剤の効果を提供する一方、全身投与から生じる副作用を回避する。正常組織の意図した保護は、特定の投与部位(例えば皮膚、口腔粘膜、直腸粘膜など)について選択および最適化された適切な送達媒体と組合せて、適切に選択された血管収縮剤を含んでいる。入手可能な血管収縮剤および送達媒体成分の選択の故に、局所的に処方された血管収縮剤は、局所的送達によってアクセス可能な癌治療の副作用に感受性である如何なる正常細胞型を保護するためにも使用することができる。
【0045】
血管収縮剤分子は、危険な状態にある非腫瘍細胞の部位に局所的かつ効率的に送達され得ることが本発明に従って発見された。そこでは、それらは血管壁の細胞内アドレナリン作動性受容体に結合して脈管構造の収縮を生じさせ、そうすることによって、血液により運ばれる化学療法薬または酸素の、局所の危険な状態にある非腫瘍細胞への送達を一時的に減少させることができる。得られる利益は、局所の危険な状態にある正常な幹細胞の大きく低減されたアポトーシス、および化学療法または放射線療法に付随した副作用の緩和である。このプロセスの視覚的相関または代理マーカーは、実際には皮膚(例えばヒトおおびラット)に見ることができ、ここではノルエピネフリンもしくはエピネフリン、または一般に2〜3倍の高濃度のフェニレフリンが皮膚の視覚的白化を生じる。局所的に処置されて視覚的に白化したラットの皮膚が放射線照射されるときには、白化した領域において皮膚炎は完全に防止される(実施例2)。この同じ減少が、粘膜炎(実施例4)および脱毛(実施例3)についての齧歯類モデルでも観察されている。
【0046】
次いで、本発明の種々の実施形態で見出された要素と現存の技術との比較において、以下の所見を得ることができる。第一に、全身に投与された化学療法薬に対する保護を与える血管収縮剤の局所塗布は、筆者が知る限りにおいて、今まで文献に記載されたことはない。第二に、局所的に塗布された血管収縮剤の使用によって危険な状態にある非腫瘍性の幹細胞を保護する本発明の方法は、その種々の要素において非自明であると思われる。例えば、Vasin等は、局所的に塗布されたαアドレナリン作動性受容体アゴニスト(フェニレフリン)がマウス皮膚に対する放射線保護を提供することを記載したが(Vasin, M., et al, Radiatsionnaia Biologiia, Radioecologiia 44(1):68-71, 2004)、彼等は、血管収縮剤の下地脈管構造への送達を可能にする医薬製剤の設計を教示せず、また表面上皮細胞を死滅させることも、血管収縮剤の全身生体分布を可能にすることも教示しなかった。遠隔全身効果を回避しながら、局部的な局所的放射線保護を達成する完全な方法の重要な要素が存在する。実際に、放射線保護化合物または化学保護化合物の全身の生体分布は、腫瘍自身を治療から保護し、または毒性の副作用(例えば、β2アドレナリン作動性受容体アゴニストで全身的に治療された人で誘導され得るような心臓毒性)を生じるといった意図しない効果を導く可能性がある。現在の文献は、下地脈管構造に対しては充分な血管収縮剤の送達を可能にする一方、表面上皮細胞を死滅させず、また血管収縮剤の全身分布も可能にしない局所的送達媒体を選択する方法については、僅かな洞察しか提供せず、または全く洞察を提供しない。文献は同様に、細胞障害性薬物が代謝および/または血液からクリアされるときに生じる、血液に運ばれる化学療法剤に対する延長露出に対して保護を与えるために必要な、局所的適用の基本方針に関する洞察を提供しない。文献はまた、高投与量のエピネフリンまたはフェニレフリンの高投与量が、口腔粘膜に対して壊死性の組織損傷を起こし得ることを教示していない。本発明の一定の実施形態に従えば、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびフェニレフリンの有効性および毒性の両方を確立し、また非毒性で且つ有効な局所投与量、並びに有毒な壊死投与量を同定するための動物試験システムが提供される。加えて、局所的な経口の0.1%エピネフリンがマウスにおいて口腔放射線損傷を低減することが報告されているが、血管収縮剤溶液のヒトの経口使用を可能にするために風味剤が必要であるとの示唆は存在しない。更に、化学療法および放射線療法の脅威が過ぎ去った後の、αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストの局所的な経口送達が、湿潤な潤滑された機能性粘膜表面の迅速な再樹立を可能にすることの教示も存在しない。
【0047】
要するに、血管収縮剤は、想定された局所適用の各々について処方されるときに、癌患者において、化学療法および放射線療法に誘導された副作用を防止するための有効な手段を提供する。
【0048】
<局所的送達媒体> 薬理学的に有効な濃度での血管収縮剤の外に、本発明の製剤は、局所的送達媒体をも含んでなるものである。局所的送達媒体の機能は、血管収縮剤を、癌治療の副作用から保護するための標的である細胞集団または組織に供給する局部脈管構造へと運ぶことである。
【0049】
「局所的な」の用語は、全身的ではなく局部的に作用するように意図された薬物の投与を意味する。癌治療の副作用を防止するためには、血管収縮剤が意図した部位へと送達され、且つ全身的な分布から制限されることが重要である。血管収縮剤の全身分布を限定することによって、遠隔腫瘍細胞の血管収縮剤への露出を制限するとともに、エピネフリン活性剤の既知の心臓副作用を回避する利益が得られるであろう。非侵襲的局所送達を使用した、皮膚または粘膜内における血管収縮活性剤の局部送達は多くの魅力を有しており、これには下記のものが含まれる:i)処置の非侵襲性に起因した患者の許容性;ii)胃腸での薬物消化の回避;およびiii)胃腸送達された分子の初回通過肝臓代謝の回避。本発明に使用される局所送達媒体の多くの成分を下記に列記する。これら要素で構成される局所送達媒体は、小さい有機薬物分子の皮膚への充分な送達を可能にすることが知られているが、局所送達はまた、同じ薬物を系の中に送達するための非常に非効率的な手段であることも知られている。一例として、2%ミノキシジルの局所製剤においては、1%〜3%のミノキシジルだけが、全身的に生体利用性になると見積もられている。血管収縮剤は、それらの効率的な脈管構造の収縮のために、さもなければ全身的に分布されるものが局部に残留するという顕著な追加の素因を提供することもまた、本発明の側面にとって重要である。
【0050】
<皮膚送達系> 皮膚送達系は、典型的には溶液、エマルジョンもしくはクリーム、ゲル、またはリポソーム懸濁液の中に調製された薬物からなっている。これら主要なタイプの皮膚または真皮送達形態の説明、組成、製品および塗布について、以下で簡単に概説する。
【0051】
皮膚は、全体の厚さが2〜3mmの複雑な多層器官である。皮膚は二つの主要な層、即ち、真皮および表皮からなっている。真皮は表皮のための生理学的な支持体を提供し、結合組織、神経、血管およびリンパ管、皮脂線および汗腺からなっている。図1は、これら組織要素の構成を、ラット皮膚の断面で図示している。表皮は約100ミクロンの厚さであり、多くの層からなっている。胚芽層は、表皮幹細胞を含む表皮の基底層である。該基底層の上には、有棘層、顆粒層、透明層、および最後に角質層が存在する。各層は、異なる分化段階にあり、この分化の際に、細胞は基底層から表面へと移動し、角質化して角質層を形成する。角質層は、平坦化されケラチンで満たされた前者の細胞からなっている。角質層内の脂質マトリックスは、コレステロール、遊離脂肪酸およびセラミドで構成された脂質膜の二重層で構成されている。角質層および脂質マトリックス層は、殆どの局所的に送達される物質の低い浸透率の主な原因である。この角質化した脂質マトリックスは、分子の経皮的吸収に対する主要な障壁であるが、該脂質マトリックスを緩め、または流動化させる分子は、皮膚を通る分子の浸透を明らかに向上させる。この目的で使用される幾つかの普通の浸透剤には、アルコール、レシチン、およびリポソームが含まれる。
【0052】
皮膚はまた、真皮内の幾つかの他の層を含んでおり、これには皮脂(油)腺、外分泌(汗腺)および毛髪濾胞が含まれる。毛髪濾胞の大部分は真皮層内に位置しているが、濾胞それ自身は特殊化された表皮細胞で構成される。該濾胞は、外側基底層ならびに毛幹を取囲む外側および内側の毛根鞘からなっている。毛髪濾胞の基底において、マトリックス細胞および真皮乳頭の両者が一緒になって毛幹を生じる。
【0053】
局所薬用の最も普通の製剤は溶液であり、この場合、活性剤が溶媒の中で可溶化される。溶媒に基づく系は単純であるが、許容可能な局所的送達媒体である。アルコールは、局所溶液のために最も普通に使用される溶媒である。典型的には、薬物は水およびアルコールの混合物の中で混合される。アルコール含量は10〜100%の間で変化する。使用されるアルコールには、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、メタノール、またはブタンジオールが含まれる。水中の70%エタノール溶液のような高アルコール含量の溶液、または、例えば60%のエタノール、20%のプロピレングリコールおよび20%の水を含有する溶液は、表皮の角質層を貫通するために特に良好である。局所的ミノキシジル、即ち毛髪再生治療剤は、送達媒体として後者の処方を使用する。
【0054】
溶液に基づく送達系は、小さい有機分子の送達のために理想的である。特に表皮幹細胞への血管収縮剤の投与のための本発明の好ましい実施形態においては、アルコール含有溶液が特に良く適している。水性アルコールに基づく送達媒体は、血管収縮剤の局所投与のために有効であることが示された(実施例1、2、3、4)。この送達系の他の利点には、製造の容易さ、皮膚上での迅速乾燥、処方後における活性薬物化合物の分析の容易さが含まれる。
【0055】
皮膚適用に向けられた本発明の一定の実施形態は、エピネフリン、フェニレフリン、ノルエピネフリンまたはメトキサミンの皮膚脈管構造への充分な送達を可能にして、一時的な脈管構造の収縮を達成し、そうすることによって表皮および毛髪濾胞の幹細胞に対する保護を与えるために、エタノール、プロピレングリコールおよび水のパーセンテージを最適化するのが好ましい。主要な皮膚脈管構造は真皮内にあり、大抵は、毛髪濾胞球を取囲む血管網を形成している(図1に示されている)。この脈管構造への局所的薬物送達は、「経濾胞」送達によって達成される。即ち、局所的に塗布されたアルコール:水溶液が毛管チャンネル内で毛髪濾胞球へと移行し、次いで毛髪濾胞球を含んでなる幹細胞を通って拡散し、該球を取囲む真皮脈管構造にアクセスする。真皮脈管構造にアクセスする局所溶液のための、局所送達媒体中のアルコールの最小パーセンテージは、i)ヒト毛幹チャンネルに存在する皮脂線油の溶解または軟化と、およびii)油−角質層マトリックスの浸透とを可能にするのが好ましい。図2は、蛍光色素(ナイル赤、FW:320)がアルコール:水の溶液でラット皮膚に塗布されたときに、角質層および下地の真皮を浸透し、並びに、ずっと濾胞球の基底を通って体毛濾胞チャンネルの各々を貫通する
【0056】
実施例1および関連のラットの皮膚実験におけるように、局所的血管収縮剤が適用されるときは、局所的に塗布された血管収縮剤が効率的に真皮脈管構造にアクセスし、これを収縮させることを示す機能的結果(例えば皮膚の白化)も存在する。例えば白化等の視覚的評価のし用は、「代理終点」を提供することができ、治療または推定治療の迅速な評価を可能にする。このような代理終点の使用は、新規または改善された局所処方物(formulation)の開発を可能にする。実施例に見ることができるように、化学療法剤または放射線療法の全身使用の副作用に伴う皮膚炎、脱毛、粘膜炎、および他の症状の低減または防止等の望ましい結果は、白化等の肉眼観察による結果と高度に相関するであろう。
【0057】
本発明の一つの側面は、標的脈管構造への血管収縮剤の充分な送達を可能にしながら、その上の上皮表面を損傷しないための、局所的溶媒送達媒体の最適化を含んでいる。表2−1、表3−1、および表4−1はこの例を提供する。表2−1において、血管収縮剤は血管収縮および放射線保護を達成するのに充分な投与量で、真皮脈管構造に送達される。使用される媒体は、約55%のアルコール(25:30;エタノール:プロピレングリコール)〜100%アルコール(0:100;エタノール:プロピレングリコール)の範囲に亘る。表3−1において、55%アルコール媒体のコントロールは、皮膚に対して毒性を示さず、また毛髪成長に対する効果も示さなかった。表4−1は、10%と小量のアルコール(5:5;エタノール:プロピレングリコール)および生理食塩水溶液を用いた口腔粘膜表面のための局所媒体は、放射線保護を与えるために充分な送達を粘膜幹細胞に与える一方、粘膜を損傷しなかった(媒体コントロールは「0」のスコアを示した)。ハムスター頬袋に塗布された皮膚のための局所媒体(50%アルコールを含有する)の初期試験は、本質的に、頬袋の「固定」および乾燥をもたらした。0.87%リン酸緩衝塩水の粘膜媒体の皮膚への塗布は、媒体が「混乱」して皮膚を流れ落ちたので失敗した。
【0058】
ゲルは、液体溶媒を含浸されたゲル化剤からなる半固体である。ゲル化剤の濃度および分子量は、媒体処方物の密度に影響する。該ゲル化剤は、典型的には大きな有機分子または小さい無機分子の懸濁液である。天然または合成のポリマーからなる大きな有機分子は、ランダムにコイルを巻いた鎖として存在し、これが縺れてゲル構造を形成する。この種の幾つかの普通のポリマーは、天然のガム(例えばキサンタンガム)およびセルロース誘導体(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース[HPMC])である。ゲルの粘度は、典型的には剪断力(例えば激しい混合)を加えたとき、または温度が上昇したときに低下する。粘膜表面に適用するための本発明の好ましい実施形態(例えば実施例4)には、ゲル化剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する水:アルコールゲル内の血管収縮剤分子の処方物が含まれる。ゲルの性質は、それらが比較的調製が容易で、また適用部位での長い滞留時間を有する傾向があり、所望の部位における活性剤の持続放出を可能にするので、局所的な送達媒体のためには魅力的である。
【0059】
リポソームは、皮膚科学のための活性成分を送達するための良好な媒体である。リポソーム送達は、下記を含む幾つかの利点を提供する:i)リポソームの角質層脂質との高い適合性に起因した、投与部位における送達された物質の顕著に増大した蓄積;ii)広範な種類の親水性および疎水性分子の皮膚への容易な送達;iii)トラップされた化合物の代謝分解からの保護;およびiv)細胞膜の天然構造に対する密接な類似性、およびそれとの類似した生体適合性および生体分解性。リポソーム送達系の欠点には、製造の困難さ、および乏しい長期安定性が含まれる。
【0060】
<粘膜送達系> ここで定義される粘膜送達は、口、直腸、胃腸、または泌尿生殖器管の粘膜への血管収縮剤の局部的送達である。粘膜表面の透過性は非常に高く、皮膚の透過性よりも5000倍まで大きい。この結論は、表2−1、表4−1のデータによって明瞭に支持され、そこでは50μMと低い局所的エピネフリンで粘膜部位(ハムスター頬袋)での識別可能な放射線保護が見られるのに対して、放射線皮膚炎に対する保護を与えるためには、皮膚に塗布された>〜20mMのエピネフリンが必要とされる。粘膜の高い透過性の故にも注意が必要とされる;皮膚上での放射線保護性のエピネフリン投与量(100mM、表2−1、表3−1)は、口腔粘膜の保護のために使用されるときには非常に壊死的である(表4−1)。粘膜的に活性な血管収縮剤は、溶液、ゲルまたはリポソーム懸濁液として処方することができる。粘膜表面は癌治療の望ましくない副作用が生じる共通の部位であるから、薬物の粘膜表面への送達は非常に魅力的な投与経路である。
【0061】
粘膜送達の限界は、湿潤な粘膜適用部位に対する媒体接着の欠如である。局所処方物への粘膜接着剤の添加は、送達媒体特性を大きく改善することができる。粘膜送達のための本発明のもう一つの好ましい実施形態においては、血管収縮剤処方物への粘膜接着剤分子の添加が特徴である。実施例4は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む粘膜媒体中に処方された、治療された粘膜上皮において生物学的に活性な血管収縮剤の二つの例、即ち、エピネフリンおよびフェニレフリンを提供する。粘膜接着剤化合物は、湿った粘膜表面に接着でき、または斯かる表面への接着性を増大できる主に合成もしくは天然のポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、モノマー性αシアノアクリレート、ポリアクリル酸、およびポリメタクリル酸誘導体である。天然に存在する粘膜接着剤には、例えばキトサン、ヒアルロン酸、およびキサンタンガムのようなガムが含まれる。多くの斯かる粘膜接着剤化合物は、医薬製剤または食品における使用が認可されており、ここでは1以上のこれら化合物を単独または組合せで使用することが想定される。
【0062】
<血管収縮剤を含有する医薬製剤の投与> 保護の標的である細胞集団または組織に応じて、以下の部位が、本発明の製剤の局所的投与のために想定される:経口、鼻、眼、胃腸、直腸、泌尿生殖器、および皮膚(真皮)。本発明の医薬製剤は、水、緩衝された塩水、エタノール、またはポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール)のような生物学的に適合する媒体と共に、投与のために便利に処方される。選択された媒体中の特定の組成物濃度は、送達媒体およびその中に配置された活性物質の特定の性質と共に、当該媒体の疎水性または親水性に依存するであろう。溶解度の限界は、当業者によって容易に決定されるであろう。
【0063】
<医薬製剤の投与のための養生法> 本発明を構成する医薬製剤は、化学療法および/または放射線療法の養生の前、最中または後に、適切な間隔で投与されてよい。特定の症例における適切な間隔は、通常は化学療法または放射線療法、および保護の標的である細胞集団の性質に依存するであろう。
【0064】
例えば、化学療法に誘導される脱毛の予防のために、予定された化学療法剤の投与または頭蓋放射線療法の前に、血管収縮剤を含有する溶媒、リポソーム、または他の送達媒体を、患者の頭皮に対して予防的に適用されることができる。毛髪濾胞の露出表面をライニングする上皮細胞を化学療法薬から保護することにより、癌化学療法に通常付随する毛髪の喪失を防止することができる。同様に、放射線に誘導される皮膚炎、または口腔/胃腸管粘膜炎の治療のために、当該局所的製剤を患者に予防的に適用して、それぞれの副作用の各々を防止することができる。
【0065】
本発明を例示するために以下の実施例が提供される。それらは如何なる意味でも本発明を限定するものではない。
【0066】
実施例についての表のリスト
表1−1。 エタノール:プロピレングリコール:水の送達媒体中で局所的に適用されたエピネフリンまたはフェニレフリンにより誘導されたヒト皮膚の血管収縮。
【0067】
表2−1。 エタノール:プロピレングリコール:水の送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンを予防的に局所塗布することによる、皮膚の放射線に誘導された皮膚炎の防止。
【0068】
表3−1。 エタノール:プロピレングリコール:水の送達媒体中のエピネフリンを予防的に局所塗布することによる、放射線に誘導されまたはサイトキサンに誘導された脱毛の防止。
【0069】
表4−1。 エタノール:プロピレングリコール:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC):PBS(リン酸緩衝塩水)の送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンを予防的に局所塗布することによる、放射線に誘導された口腔粘膜炎の防止。
【0070】
表5−1。 少なくとも一つの風味剤が添加される、エピネフリンまたはフェニレフリンのために望ましい改善された味覚。
【0071】
表6−1。 種々の局所的処方物の溶解度および血管収縮効果(皮膚白化の肉眼観察により決定されたもの)。
【0072】
表7−1。 ヒトの胸部および腕の皮膚白化に対する局所的血管収縮剤のための、三つの処方物の性質。
【0073】
表8−1。 局所的血管収縮剤の複数の処方物についての、成分溶解度、皮膚白化効果、および皮膚刺激の結果。
【0074】
実施例1
この実施例は、エタノール:プロピレングリコール:水送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンエの局所塗布が、薬物濃度および時間に依存したヒト皮膚の白化(血管収縮)を与えることを示している。エピネフリンHClの0.1%水溶液およびフェニレフリンの0.25%水溶液は、実験の180分の観察期間に亘って、検出可能な皮膚の白化を与えなかった。
【0075】
これらの実験のために、エピネフリンHVl(FW:220)を指示された50:25:25(エタノール:プロピレングリコール:水)送達媒体の中に溶解し、またフェニレフリンHCl(FW:204)を指示された送達媒体の中に溶解した。所定の局所血管収縮剤(例えば10mMエピネフリン)のアリコートを、ヒト皮膚(腕)の同じ2平方センチメータの皮膚パッチに塗布し(0分で30μL、15分、30分および45分で15μL)、指示された時間において皮膚白化スコアを判断した。その結果を表1−1に示す。
【表1】
*0%=斑のあるピンクの皮膚、100%=白い皮膚、僅かな斑
【0076】
実施例2
この実施例は、エタノール:プロピレングリコール:水送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンの局所塗布が、濃度に依存して、ラット皮膚の放射線に誘導された皮膚炎を防止することを示している。
【0077】
これらの実験のために、エピネフリンHVl(FW:220)またはフェニレフリンHCl(FW:204)を、指示された局所処方物の中に溶解した(表2−1参照)。ラット(4〜5週齢;背中は予め剃髪された)は、合計で4回(−2時間、−1時間、−30分、および−10分)の局所塗布を受け、次いで、時間0分において、背中の4.5cm2の領域にCs137源から8.7Gyのγ線照射を受けた。13日後に皮膚炎の重篤度をスコアリングした。
【表2】
*媒体は、(%エタノール:%プロピレングリコール:%水)として表される
【0078】
実施例3
この実施例は、エタノール:プロピレングリコール:水の送達媒体中のエピネフリンの局所塗布が、放射線の全身照射またはサイトキサンによって誘導された脱毛を、濃度依存的に防止することを示している。
【0079】
これらの実験のために、エピネフリンHCl(FW:220)が指示された局所処方物の中に溶解された(表3−1参照)。新生児ラット(11日齢)が、背中に合計4回(−2時間、−1時間、−30分、および−10分)の局所塗布を受け、次いで、全身の放射線照射(Cs137からの〜7.5Gy[3.65分]γ線の)または1回のサイトキサンの腹腔内注射(32μg/gm体重)を受けた。9日後(生後20日)に、脱毛の重篤度をスコアリングした。
【表3】
*媒体は、(%エタノール:%プロピレングリコール:%水)として表される
【0080】
実施例4
この実施例は、粘膜接着性エタノール:プロピレングリコール:ヒドロキシプロピルメチルセルロース:リン酸緩衝塩水送達媒体中のエピネフリンまたはフェニレフリンを局所塗布することによって、放射線に誘導される口腔粘膜炎に対して濃度依存性の保護を与えることを示している。
【0081】
これらの実験のために、エピネフリンHCl(FW:220)またはフェニレフリンHCl(FW:204)を指示された局所処方物の中に溶解した(表4−1参照)。Alvarez等(Clin. Cancer Res. 9:3454-3461, 2003)に基づくアッセイにおいて、シリアンゴールデンハムスター(Syrian golden hamsters;5〜6週齢)をネンブタール(60μg/gm体重)で麻酔し、左側の頬袋をピンセットで裏返し、(水で)濯ぎ、水滴を吸取って清浄にし、該頬袋を裏返し、Qチップの綿棒を使用して該左側頬袋の内側に〜0.3mLの粘膜接着性局所処方物を塗布した(この時点を0分と表す)。12分後、この左側頬袋を裏返し、広げ、直径〜2cmのプラスチックディスクを横切ってクリップで固定した。追加の局所処方物をQチップで塗布して、該頬袋の裏返された内側表面を均一に覆った。20分後、媒体で被覆された固定された頬袋を、厚さ2.5cmの鉛プレートを貫通して穿孔された直径1.5cmのウインドウを覆う位置にテープで固定した。眠っているハムスターを該プレート上の小さい棚の上に固定し、前記ウインドウを通して頬袋の放射線照射を可能にした。次いで、前記鉛プレートをハムスターとCs137照射器中の照射源の間に配置し、時間を計った前記頬袋の放射線照射を行った。
【0082】
照射後、前記頬袋を水で濯ぎ、水を吸い取って裏返した。16日後に、放射線照射された頬袋の中の粘膜炎の重篤度を以下の基準を使用してスコアリングした。
スコアリング基準: 紅斑の程度: 0(なし)〜5(最悪)
腫脹の程度: 0(なし)〜4(最悪)
収縮/硬さの程度: 0(なし)〜4(最悪)
擬膜の存在: 0(なし)〜4(最悪)
粘膜炎重篤度スコア: 合計= 0(なし)〜17(最悪)
【表4】
*媒体は、(%エタノール:%プロピレングリコール:%HPMC:%水)として表される。
0.10%エピネフリンHCl=4.55mM
0.25%フェニレフリンHCl=12.3、<
**Cs137との整列に起因した24分の露出を通して、これら動物は実験Cにおける20分の動物と同じGy線量を受けた。
【0083】
実施例5
この実施例は、0.1%エピネフリンまたは025%フェニレフリンの水溶液は、ヒト患者によって「望ましくない」味を有すると評価されるが、味をマスクする風味剤の添加によって、「非常に望ましい」範囲へと、味覚記述子の大きく顕著な(2.7〜3.1倍)改善が与えられることを示している。このような改善は、放射線療法または化学療法に誘導される口腔粘膜炎を防止するための、これら経口の局所的溶液の使用に対するヒト患者のコンプライアンスを最大化するのを補助するために非常に好ましいものである。望ましくない味を部分的にまたは完全にマスクするための風味剤は当該技術において知られており、当業者は、嗜好性または許容性を増大する溶液を処方する上において、甘味剤および他の風味剤を使用できることを理解するであろう。
【0084】
この実験のために、表5−1に示すように味覚試験溶液を処方した。1mLの各溶液を、文字だけで標識したガラス瓶の中に配置した。患者は味を質問され、表5−1に示したスコアシートに各溶液のスコアを記録した。幾人かの患者は、瓶MおよびNは「薬のような味がした」または「苦かった」と指摘した。
【表5】
* S19チェリー風味剤;ミシ癌州ランシングのLorAnnオイルズInc.
** S59スペアミント油;LorAnnオイルズInc.
+ S48ペパーミント油;LorAnnオイルズInc.
【0085】
実施例6
この実施例は、異なる比率の水、エタノールおよびPGを含んでなる送達媒体中の、異なるエピネフリン酒石酸塩溶液、エピネフリン酒石酸塩、およびフェニレフリン塩酸塩溶液を比較することに関する。
【0086】
それぞれの血管収縮剤塩のアリコートを、ガラス試験官の中に秤量した。次いで、指示された最終薬物濃度を達成するために、必要な容量の液体を加えた。各希釈剤溶液[エタノール:プロピレングリコール(PG):水]のパーセント組成が表6−1に指示されている。
【表6】
1 局所塗布20分後のヒト皮膚の白化の範囲(+++++=90〜100%白化)
2 NBp: L(−)ノルエピネフリン酒石酸塩
3 EPi(±): (±)エピネフリンHCl
4 EPi-: L(−)エピネフリン酒石酸塩
5 PhE: R(−)フェニレフリンHCl
6 60:0:40: イソプロパノール:PG:水
7 試験せず
【0087】
血管収縮剤塩を各希釈剤の中に溶解させるために必要な熱の概略の量が示されている。希釈されたら、サンプルは計量されて室温(〜22°)で24時間維持され、次いで4℃で24時間維持された。新しく作製した透明な処方剤を、最初の混合から短時間後にヒトの皮膚に塗布することにより、当該局所的処方物により誘導された皮膚の白化を試験した。薬物の溶液は、沈殿物質の出現について、48時間の観察期間に亘ってモニターされた。
【0088】
実施例7
この実施例は、少なくとも50%のエタノールにプラスして、変化する比率のPGおよび水を含有する試験溶液を用いて得られた効果を示している。
【0089】
L(−)ノルエピネフリン酒石酸塩をガラス製微小瓶(1.5mL)の中に計量した。次いで、図3に特定されたパーセンテージ(容積:容積:容積)のエタノール:プロピレングリコール(PG):水で構成された溶媒を、各瓶に添加した。ネオエピネフリンを溶解するために必要とされるときには、1秒づつ増大させて瓶を沸騰水浴に接触させ、次いで透明になるまで渦で撹拌することによって、瓶を加熱した。密封された瓶は、室温で24時間、4℃で24時間放置された。この24時間の2回のインキュベーションの間に、何等かの結晶物質の形成を同定するために、各瓶の中の液体は拡大鏡を使用して検査された。結晶が形成されれば、ノルエピネフリンは当該溶媒混合物では「不溶性」と認められた。図3におけるデータは、ノルエピネフリンの溶解度の予測されなかった二峰性のパターンを示している。溶解度の面積(例えば約50:30:20および約60:10:30)は、ノルエピネフリンが可溶性でない溶媒処方物(例えば55:20:25)によって分離されている。
【0090】
三つの処方物A、BおよびCが、更なる特徴付けのために選択された(表7−1)。各処方物について3重のアリコートもまた、上腕および上部胸のヒト皮膚に塗布された。局所塗布の60分間に、局所塗布部位における皮膚の白化がモニターされ、目視によりスコアリングされた(皮膚白化のパーセンテージとして)。12分(胸部)または20分(腕)における皮膚の白化が記録された。局所的な薬物塗布の1時間後に当該部位に触れて、皮膚に検出可能な残渣が残っていれば、それが何であるかを決定した。皮膚の白化は、高いアルコール濃度で最も強く、また塗布部位での「残渣」の量は、当該処方物のプロピレングリコール含量を直接反映した。残渣は、局所部位における「粘着な」質によって検出することができるであろう。胸部および腕についての結果が、それぞれ図4および図5に示されている。
【表7】
1 〜80μLの処方物がQチップでから1cm2のヒト皮膚に塗布された。皮膚白化の程度(0〜100%)が目視によりモニターされ、局所塗布の12分後(胸部)または20分後(腕)にスコアリングされた。
2 p=0.001 vs. Grp1
3 p=0.001 vs. Grp1
【0091】
実施例8
この実施例は、ヒト皮膚でのノルエピネフリンの皮内送達に際して、ヒト皮膚における既知の浸透エンハンサが有する効果を示している。
【0092】
正常にケラチン化されたヒト皮膚の下の真皮脈管構造にノルエピネフリンを局所的に送達するための最も安全で最も有効な手段を同定するために、水および指定された浸透エンハンサで構成される局部的送達処方物に、L(−)ノルエピネフリン酒石酸塩を添加した。
【0093】
透明なノルエピネフリン含有溶液が達成されたサンプルにおいて、アリコート(〜100μL)を、綿棒を使用してヒト前腕皮膚の〜1cm2の領域に塗布した。塗布部位の下の皮膚白化(即ち、真皮脈管構造の収縮)の程度を、塗布後の60分に亘って肉眼でスコアリングした。
【0094】
結果は、以下の表8−1に与えられる。
【表8】
1 NEp: L(−)ノルエピネフリン酒石酸塩
2 局所塗布20分後のヒト皮膚白化の程度(+++++=90〜100%白化)
3 SLS: ラウリル硫酸ナトリウム
4 トランスクトール: ジエチレングリコールモノエチルエーテル
5 TG:プロピレングリコール
6 −:試験せず
【0095】
実施例9
この実施例は、エピネフリンまたはノルエピネフリンの1回の局所塗布が、ヒト頭皮を含むヒト皮膚の白化を迅速に誘導できること、また複数回の局所塗布は持続的な皮膚白化応答を提供でき、これは2〜3時間に亘る全身的化学療法に対する持続的保護と相関し得ることを示す。
【0096】
L(−)エピネフリン酒石酸塩またはL(−)ノルエピネフリン酒石酸塩の750mM溶液を、該結晶性血管収縮剤の塩をエタノール:PG:水の50:30:20の混合物中に溶解させることによって調製し、腕(図6、パネルA,B)または頭皮の何れかのヒト皮膚に局所的に塗布した。皮膚白化の程度を記録し、また皮膚薄化が局所薬物を塗布した部位に限定されることを示すために、局所塗布後の特定の時間においてデジタル画像を記録した。〜30μモル/cm2の局所投与量を生じさせるために、薬物処方物のアリコート(40μL)を〜1cm2の皮膚に塗布した。腕および頭皮の両方の塗布部位において、局所的な薬物塗布後10分までに皮膚の部分的白化が見られ、また一般には15分までに皮膚の完全な白化が見を見ることが可能であった(パネルAおよびB)。頭皮上のノルエピネフリンの塗布部位は、毛髪のない額および毛髪で覆われた頭皮の両方を含んでおり、白化応答の迅速な開始および消失は、これらの連続的領域において同じであり、皮膚または毛髪に対する認識可能な毒性もなかった。
【0097】
「皮膚白化」領域(ヒトまたはラットにおいて)は、鋭く境界を付された縁部を備えた白い皮膚パッチとして、そのピーク(100%)において特徴付けられる。この白化は時間とともに自然に消失し、境界をなす縁部のない周囲の皮膚の色を伴った皮膚になる。
【0098】
1回の局所的薬物の塗布(例えば図6のパネルA参照)は、迅速な皮膚の白化および比較的速い白化の消失を可能にする。1回の塗布スケジュールは、1週間当り5日間、2〜3分/日で放射線照射される患者の癌放射線療法の治療において有用であることが期待される。
【0099】
複数回の局所薬物投与(図6、パネルB)は、より持続する皮膚の白化を可能にする。複数回薬物塗布について観察された血管収縮のより遅い消失は、3〜4週ごとに1回、1〜2時間にわたる静脈化学療法を受ける癌化学療法の患者を治療するために有用であると期待される。
【0100】
実施例10
この実施例は、10日齢の子ラットに対する適切な送達媒体中のエピネフリンの局所塗布が、単独で、塗布部位においてある面積の皮膚の白化を誘導すること、またこの同じ領域が、動物が全身のγ線照射で治療された後に完全な正常な外被成長を保持することを示す。
【0101】
50:30:20のエタノール:PG:水の中の(±)エピネフリンHCl(epi)の950mM溶液、または媒体単独を、動物がCs137源から7.5Gyの全身γ放射線を受ける前に、10日齢の新生児ラットの背中に塗布した(40μL、25μL、25μL、25μL、それぞれ−120分、−60分、−30分、および−10分において)。このepi治療されたラットにおける皮膚白化の領域を示すために、特定の時点でデジタル画像を記録した。皮膚の白化は、媒体単独で処置されたラットには見られなかった。30分および60分、120分の局所的epi投与において、エピネフリン処置された皮膚フィールド内に、皮膚の白い領域が目視可能であり、これは一般には120分までに一つの白化フィールドの中に重なって併合される。局所的epi治療および第10日での放射線照射の後に、20日齢のラットの外被が保持される領域の比較によって、照射の前に皮膚白化の不連続な領域が見られるこれら動物においては、保護された外被の不連続な領域が20日齢の動物に見られることが示された。生後10日に局所的エピネフリンで治療され、次いで放射線照射された殆どのラットについて、エピネフリン治療された皮膚を覆う皮膚白化の融合領域は、第20日における保護された外被の融合領域に関連していた。照射前に局所的媒体だけで処置された動物は、照射前に検出可能な皮膚の白化を示さず、また第20日にスコアリングしたときには完全に裸になっていた。第20日に保護されたラットの外被領域は保持されて、動物の成熟外被の中に組込まれ、これは全身照射の後に再成長された。
【0102】
実施例11
この実施例は、本発明の一実施形態に従った、動物モデルにおける化学療法に誘導された脱毛の予防を示している。
【0103】
ノルエピネフリンまたはエピネフリンのような血管収縮剤の局所塗布は、ヒトまたはラットの皮膚において白化を誘導する(例えば、図7のパネルA参照)。複数回の塗布は、自然に消失する前に、2〜3時間以上持続する皮膚の白化を誘導することができる。収縮したときに、真皮脈管構造および表皮におけるその従属幹細胞、毛髪濾胞等への血流は大きく減少する。
【0104】
図7のパネルBに示すように、サイトキサンのような化学療法剤の静脈注入の後に、該薬物は経時的に、血液血漿から系統的にクリアされる。サイトキサンのクリアランス半減期は約1時間である(パネルB)。
【0105】
パネルCは、エピネフリンのような局所的血管収縮剤が皮膚に塗布されたときに、皮膚は迅速に白化することを示している。この皮膚の白化応答は、皮膚への血流送達の減少に一致している。局所的血管収縮剤が、15〜20分の「頭部スタート」で頭皮のような皮膚に塗布されれば(図7のパネルCにおける**記号を参照のこと)、サイトキサンのような化学療法剤の全身血液レベルはそれらの最高レベル(例えば0〜2時間)にあるのに対して、皮膚およびその幹細胞への血液送達は減少するであろう。
【0106】
添付の実施例において、我々は、サイトキサン投与量における30%程度の減少でも、ラットの外被の実際的に完全な保持をもたらし、またサイトキサン投与量における20%程度の減少がヒト癌患者における頭皮毛髪の「美容的に許容可能な」維持を可能にできるであろうことを示す。
【0107】
パネルDについては、10日齢の子ラットが、1回の副腔内投与量のサイトキサン(30μg/g体重)を受ける前に2時間、局所的な950mMのエピネフリンで4回処置された。局所的エピネフリンで処置された領域は、第20日に保護された外被を含んでいたのに対して、局所媒体単独で処置された領域は保護された外被を含んでいなかった。エピネフリン処置された10日齢のラットに見られる部分的な外被保護は、より年齢の高いラット(またはヒト)に比較して、10日齢のラットの皮膚に見られる血管収縮剤に対する低下した応答(および比較的短時間維持される中程度の皮膚白化)と一致している(パネルE)。
【0108】
実施例12
この実施例は、サイトキサンに誘導された脱毛を予防するために、毛髪濾胞含有皮膚への血流の減少パーセントを定義するのを補助する。
【0109】
10日齢のスプラグ・ドーリーラット(処置群当り4匹の動物)に、水に溶解したサイトキサン(シクロホスファミド;シグマ社#C0768)の腹腔内注射を、指示された投与量で与えた。生後20日に、各動物の背側の外被密度が、未処理の20日齢ラットの正常な外被密度のパーセンテージとして肉眼でスコアリングされた。この結果が図8に示されている。30μg/gm体重のサイトキサンおよび更に高い投与量において、ラットは第20日にはヌードであった;20μg/gmタイ中のサイトキサンおよび更に低い投与量において、ラットは完全な外被を有しており、これは成体まで安定に維持された。
【0110】
Davis,S.T.等(Science 291:134-137, 2001)は、癌化学療法に起因して50%以下の毛髪密度が失われる可能性があり、癌患者はこれを未だ美容的に許容可能と判断し得ることを示した。この所見は、図8のデータを考慮すると、毛髪濾胞幹細胞に送達される血液で運ばれるサイトキサン投与量の20〜30%の減少が、化学療法後の美容的に許容可能な毛髪密度を生じるであろうことを意味している。
【0111】
実施例13
この実施例は、ノルエピネフリンまたはエピネフリン処理されたラット皮膚における皮膚白化の誘導に、通常は皮膚のγ線照射に続く等級2〜4の皮膚炎に対する保護が付随することを示す。
【0112】
成体ラット(40〜45gm)を刈り込んで、背中を覆う外被を除去した。200mMのノルエピネフリンまたは100mMのエピネフリンを含有する局所薬物処方物のアリコート(100μL)を該ラットの背中に1回塗布し、その後の設定された時点において、局所処置フィールド内の矩形領域(1.5cm×3cm)が、Cs137線源から8.8Gy線量のγ線照射を受けた。照射の直前に、前記局所治療フィールド内の皮膚白化の程度もまた肉眼でスコアリングされた(0〜100%の白化)。動物は照射の前に、30μg/gm体重のペントバルビタールナトリウムで麻酔された。照射後にラットは檻に戻され、13日後に、照射された矩形フィールド内の放射線皮膚炎の重篤度が肉眼でスコアリングされ、写真撮影された。この結果は図9に示されている。0〜100の「放射線皮膚炎の重篤度スコア」は、照射後13日に、かさぶたで覆われる照射されたフィールドのパーセンテージを表す。8.8Gy線量のγ放射線では、媒体で処理された動物は、照射された矩形領域を覆う等級3〜等級4の皮膚炎(即ち、100%のかさぶた)を有する。「%放射線皮膚防止」スコア(図9に示した)は、 [100−放射線皮膚炎重篤度スコア]に等しい。
【0113】
エタノール:PG:水の送達媒体中のノルエピネフリンまたはエピネフリンを単回局所塗布することは、試験された最初の時点(3分)から少なくとも45分に亘る「放射線保護ウインドウ」を生じる上で非常に効果的であった。照射開始時の皮膚白化の程度と放射線保護の程度との間には、強い正の相関が存在した。8.8Gyのγ線量(1.72Gy/分)は投与するために5.1分を要し、従って、顕著な最も早い時点(例えば3分)について、照射自身の間に追加の白化が生じる可能性がある。
【0114】
実施例14
この実施例は、ノルエピネフリン処置されたラット皮膚における皮膚白化の誘導に、皮膚の6MeV電子線照射後に通常は生じる等級2の皮膚炎に対する完全な保護が伴うことを示すものである。
【0115】
成体ラット(40〜45gm)を刈り込んで、それらの背中を覆っている外被を除去した。300mMのノルエピネフリンを含有する局所薬剤処方物のアリコート(100μL)を、このラットの背中に1回塗布し、その後の設定された時点において、局所処置フィールド内の矩形領域(1.5cm×3cm)が、線型加速器から27Gy線量の6MeV電子照射を受けた。動物は、照射前に30μg/gm体重のペントバルビタールナトリウムで麻酔された。照射後にラットは檻に戻され、13日後に照射された矩形フィールド内の放射線皮膚炎の重篤度が肉眼でスコアリングされ、写真撮影された。0〜100の「放射線皮膚炎の重篤度スコア」は、照射後13日に、かさぶたで覆われる照射されたフィールドのパーセンテージを表す。
【0116】
その結果が図10に示されている。エタノール:PG:水の送達媒体中のノルエピネフリンを単回局所塗布することは、試験された最初の時点(2分)から30分に亘る「放射線保護ウインドウ」を生じる上で非常に効果的であった。27Gyの6MeV電子線量は投与するために数分を要し、従って、顕著な最も早い時点(例えば2分)について、照射自身の間に追加の白化が生じる可能性がある。
【0117】
実施例15
この実施例は、適切な送達媒体中のエピネフリンの局所塗布が、口腔粘膜の迅速且つ完全な白化を誘導できることを示す。
【0118】
血管収縮剤の局所塗布が口腔粘膜における白化応答を誘導できるかどうかを決定するために、エピネフリンまたはフェニレフリンを含有する処方物が、シリアンゴールデンハムスターの頬袋口腔粘膜に局所的に塗布された。化学療法または放射線療法に誘導された粘膜炎の研究のためにハムスターの頬袋を使用することは、以前に報告されている(Alvarez, E., et al. Clin. Cancer Res., 9: 3454-3461, 2003)。ハムスターはペントバルビタールナトリウムで麻酔し、左側の頬袋をピンセットで裏返し、水で濯いで水滴を吸取り、ステンレス鋼クリップを使用して、直径2cmの不活性なプラスチックディスク上に固定された(図11のパネル参照)。5:1:94[エタノール:ヒドロキシプロピルメチルセルロース:リン酸緩衝塩水(PBS)]の局所送達媒体中に10mMエピネフリンHClまたは10mMフェニレフリンHClを含有する局所製剤、または該送達媒体単独を、頬袋の表面に塗布した。デジタル画像が記録された。
【0119】
局所処置の30分後に、媒体単独での頬袋は処置前と異なるようには見えなかった(図11、パネルAおよびB参照)。局所エピネフリンまたはフェニレフリンで処置された頬袋は白く且つ半透明になり、未処置または媒体で処置されたコントロールで見られた組織の「ピンク色」は見られなかった。他の処置群において、30分での白化の程度は、局所処方物に使用されたエピネフリンまたはフェニレフリンの濃度に依存した。同様の白化応答が、眠っているハムスターの頬内に復位された清浄化された頬袋の中にエピネフリンもしくはフェニレフリンの局所処方物を配薬し、次いで30分後に裏返して写真撮影したときに観察された。
【0120】
実施例16
この実施例は、γ放射線の増大する線量がこのハムスターモデルにおける口腔粘膜炎の増大する重篤度を生じること、適切な送達媒体中で局所的に塗布されるエピネフリンの増大する投与量が、この放射線に誘導された口腔粘膜炎を完全に防止できること、および、非常に高投与量の局所的エピネフリンまたはフェニレフリンは、40Gy線量のγ放射線と組合せたときに、付随する40Gyのγ放射線を伴わないときは完全に存在しない口腔粘膜に対する重篤な毒性を生じることを示す。
【0121】
適切な送達媒体中の血管収縮剤を局所塗布することが、粘膜照射または全身的化学療法後の口腔粘膜破壊および粘膜炎を防止できるかどうかを決定するために、刊行されたハムスターモデル(Alvarez, E., et al. , Clin Cancer Res. 9:3454- 3461, 2003)が使用された。
【0122】
標準の実験において、麻酔された動物の左側頬袋がピンセットで裏返され、その内容物を洗い流し、水滴を吸取り、次いでそれをハムスター頬内のもとの部位へと反転または復位させる。該頬袋は、200〜300μLの液体を、それがハムスターの口の中に零れ落ちる前に保持する容量を有している。従って、薬物は、液体を頬袋「容器」の中に単純にピペッティングすることによって、頬袋の内側粘膜表面に「局所的に」塗布することができる。頬袋を満たし、暫く待ち、次いで照射前にそれを空にすることは、ヒトの「ブクブクして吐き出す」適用プロトコールに類似している。殆どの実験について、単純な液体処方物を使用するのではなく、1〜3%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のようなゲル化剤を含有する液体が使用された。興味ある血管収縮剤を含有するこの室温での緩いゲルは、綿棒(Qチップ)を使用して頬袋の内側に塗布される。動物の体温において、それは柔らかい流動性をもった粘膜接着性の溶液になり、それが適用される全表面を効果的に被覆する。
【0123】
典型的には5〜20分の処置の後に、典型的に「充填された」頬袋がピンセットで注意深く裏返され、その内容物が吸取られ、次いで頬袋は広げられ、クリップを用いて不活性なプラスチックディスク(直径2cm、図13のパネルB参照)を横切って広げられる。次いで、固定された頬袋の露出された「内側」表面は、綿棒を使用して、局所薬物処方物で再度コーティングされる。この固定された頬袋およびハムスターは、次いで鉛プレート(厚さ2.5cmの)の上に注意深く配置され、該プレートがCs137照射器の内側に配置されたときに、頬袋がCs137照射源と直接整列している小さいウインドウの上に横たわるようにされた。その中で動物が眠りながら頬袋の照射だけが行われる小さい囲いを形成するために、他の鉛プレートが使用される。
【0124】
粘膜接着性の局所送達媒体を使用することは、20分の照射時間の間、特に照射されるときに固定された頬袋の表面が垂直に載せられるので、頬袋の表面を濡れた状態で且つ薬物で被覆された状態に維持するのを補助する。
【0125】
増大する重篤度の粘膜炎が14〜30分の露出で観察された;40Gyの露出に概ね等しい24分の露出が、Alvarez等(2003)によって使用された。照射の終了時に、頬袋を水で洗浄し、水滴を吸取り、ハムスターの頬内の正常な部位に復位させた。麻酔された動物は覚醒され、16日後(Alvarez et al., 2003)に動物は再度麻酔され、頬袋が反転され、写真が撮影される。
【0126】
「粘膜炎の重篤度スコア」が、照射後の第16日に付与される。凝集スコアは紅斑(0〜5)浮腫(0〜4)、組織の硬さ(0〜4)および擬膜形成(0〜4)を組込んでいる。11〜13の範囲の粘膜炎重篤度スコアは、ヒトの等級3の粘膜炎に類似した重篤度である。11〜13のスコアにおいては、擬膜の拡散パッチ、並びに重篤な紅斑および浮腫が目視可能であり、袋も更に固くなって、プラスチックディスクを覆って広げ難くなる。
【0127】
図12は、幾つかの重要な結果を示している。i)粘膜炎重篤度スコアは、γ放射線の線量が増大すると共に増大する;ii)(−)エピネフリンの増大する投与量の粘膜表面への局所塗布はγ線に誘導された病状に対する保護を与え、400μMは完全に保護的である;iii)10mMフェニレフリン、即ちα1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストの粘膜表面への局所的塗布は、心臓関連の副作用もなく、完全に保護的である;iv)大過剰投与量の(−)エピネフリンまたはフェニレフリンと、24分の照射との組合せは重篤な粘膜病状を誘導する;v)放射線照射を伴わない大過剰の(−)エピネフリンまたはフェニレフリンは識別可能な粘膜病状を誘導しない。
【0128】
局所的に塗布されたフェニレフリン(10mM)、即ち、α1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストは心臓関連の副作用を伴わず、γ放射線に誘導された粘膜炎を完全に防止する上で効果的であった。
【0129】
実施例17
この実施例は、適切な局部送達媒体中でヒト口腔粘膜に塗布されたエピネフリンが持続的な粘膜白化を誘導でき、これは全身的化学療法および外部放射線照射療法に対する保護を提供すると期待されることを示している。
【0130】
この実験において、L(−)エピネフリン酒石酸塩が、エタノール:リン酸緩衝塩水:ヒドロキシプロピルメチルセルロース:風味剤:蔗糖の媒体中に、1mMまたは10mM濃度で溶解された。初期のエピネフリンの舌への適用では柔らかい「薬様」の味覚を有していることが示されたので、チェリー風味剤(LorAnnオイルズInc)および濃縮蔗糖溶液のアリコートが供給媒体に添加された。最初の20分間は、1mM溶液で濡らしたQチップを使用して、下唇および下唇に隣接する口腔粘膜に薬を塗った。僅かな白化応答しか見られないので、次の50分に亘って4回、10mM溶液で濡らしたQチップを使用して、下唇および口腔粘膜に薬を塗った。その結果が図13に示されている。画像が撮影され、次いで観察された粘膜白化の程度についてスコアリングされた。10mM(−)エピネフリンの局所的治療を開始してから20分以内に、明らかな白化が見られ、図示のように、3時間までに自然に消失して正常な色の唇および粘膜を生じる前に、この白化は1.5〜2時間持続した。
【0131】
これらの結果は、血管収縮剤を局所的に塗布することができ、また化学療法剤は循環する血液血漿区画から徐々にクリアされながら、化学療法剤が負荷された血液の粘膜構造への送達を実行するために充分に長い時間に亘って、持続した白化が可能であるとの原理の証明を提供する。
【0132】
実施例18
放射線皮膚炎または放射線に誘導された脱毛の100%保護を提供するための、%血流減少の決定。
【0133】
この実施例は、ラットの刈り込まれた背中に塗布されたエタノール:PG:水供給媒体中のノルエピネフリンが、真皮脈管構造の収縮を生じることを示している。これに一致して、全身の血液に運ばれた色素分子の皮膚送達は、ノルエピネフリン処理されたラットの皮膚において顕著に低減される。ノルエピネフリン濃度(300mM)および使用される送達媒体組成物(50:30:20)は、例えば外部放射線(γ線または電子線)に対する完全な保護を与えることが示された平行実験に使用したものと同一であった。
【0134】
ノルエピネフリンの局所塗布に続く、皮膚からの全身的な色素排除:
【0135】
300mMノルエピネフリンまたは媒体単独での局所処置の10分後に、400μLの黒色色素溶液を各試験ラットの中に腹腔内瞬時投与で注入した。パッチにおける皮膚色の比色計測定が行われ、0〜30分の進行が記録された。0分の読み値と指示された時点での読み値の間の比色計単位における変化が、図15にプロットされている。皮膚の色の比色計測定は、CR−400比色計(ミノルタ社)を使用して行われた。
【0136】
比色計の読み値は、全身的な血液に運ばれた色素分子の送達が、30分の時点において、ノルエピネフリン処置された皮膚で39%低下されることを示した。この同じ結果が、2匹の追加の処理されたラットを用いて得られた。色素排除フェノタイプの開始および持続(図14)は、0分において、エタノール:PG:水送達媒体中の300mMの局所的ノルエピネフリンで処理されたラットに付与される放射線皮膚炎の「保護ウインドウ」と同じであることが観察された。
【0137】
実施例19
血管収縮剤に、ケラチン化された皮膚および頭皮の皮内脈管構造への送達のための媒体をプラスした例示処方物
【0138】
ここに記載する多くの適用は、好ましくは、ヒトおよび他の哺乳動物におけるケラチン化された皮膚および頭皮の角質層表面から約1mm下にある皮内脈管構造への、血管収縮剤の送達を提供する。図1は、毛髪濾胞の基底において「毛球ケラチン細胞」の回りに網目構造を形成する小さい血管を示している。これらの細胞は、放射線または全身的化学療法に露出された哺乳類におけるアポトーシスの主要な標的である。
【0139】
真皮血管は、血管が毛球ケラチン細胞に密接に結合している真皮乳頭において、毛髪濾胞細胞に栄養を提供する。
【0140】
局所的に塗布された血管収縮剤の真皮脈管構造への好ましい送達は、下記のことを必要とする:
【0141】
i) 皮膚標的領域、例えば脱毛防止であれば頭皮表面、或いは放射線療法患者における放射線皮膚炎を防止するのであれば上部胸部および腋窩を覆う、薬物含有溶液の均一な広がり;
【0142】
ii) 真皮中への直接の拡散、並びに皮脂線によって毛髪濾胞チャンネルの中に押出される油性の皮脂を通る拡散を可能にするための、油性角質層の浸透、
【0143】
「経濾胞」送達において、送達媒体は、好ましくは皮脂の軟化および/または溶解、並びに薬物含有媒体の毛球への拡散、および毛球細胞を貫通しその回りを通って真皮乳頭内の脈管構造に到達する拡散を可能にする。
【0144】
エピネフリン水溶液のヒト皮膚への直接の塗布は、「玉を形成し(beading up)」、且つ皮膚を転がり落ちる溶液をもたらす。実施例1は、これに一致して、処置された皮膚の検出可能な白化が存在しないことを示している。図2は、蛍光色素であるナイル赤[MW:320、比較のためにエピネフリン酒石酸塩(FW:337))がエタノール媒体中に溶解され、次いで30分においてラットの皮膚に局所的に塗布されたときに、上皮およびその上にある角質層の両者に色素分子が負荷されることを示している。規則的に離間した毛髪濾胞の各々もまた染色され、且つ濾胞直径に関係なく等しく染色されるが、これは色素が毛髪濾胞構造の全ての側面を通して全体に等しく分布することを示している。図2の左右両方のパネルにおいて、真皮内の蛍光バックグラウンドは、組織切片の外側でよりも顕著に高く、この色素が低濃度でも真皮結合組織の全体に拡散したことを示唆している。
【0145】
エピネフリン、フェニレフリンおよびノルエピネフリンの局所的送達を用いたここでの初期の仕事は、一部は、Tata等の仕事(Relative Influence of Ethanol and Propylene Glycol Cosolvents on Deposition of Minoxidil into the Skin. J. Pharm. ScL, 83: 1508-1510, 1994)によってガイドされた。彼等は、エタノール:PGの二成分系局所送達媒体における変化によって、ミノキシジルの経皮的送達を立証した。ノルエピネフリンおよび関連のカテコールアミンは一級もしくは二級アミンであるから、ここでは、特に未破壊のラットもしくはヒトの皮膚における薬物の効能を与えることが分っている濃度で、カテコールアミンの溶解を可能にする局所送達媒体のために、第三の水性成分が必要とされることが発見された。これらカテコールアミンを含有する現在の医薬処方物が存在するが、各場合に、当該処方物(薬物脳井戸および送達媒体の両方)は、ここに教示される方法を実施するために機能的でなく、またヒトの皮膚に局所的に塗布されたときに如何にして効能を達成するかについて有用でも有益でもない。
【0146】
従って、脱毛または放射線皮膚炎を防止するために、ヒト癌患者において鱗片状(ケラチン化された)皮膚に塗布するための局所的血管収縮剤の有用な処方物の必要性が、我々を、好ましい処方物の開発に適用される幾つかの基準の同定に導いた。これらの基準には下記のものが含まれる:
【0147】
i) 局所薬物処方物の迅速な吸収、好ましくは皮膚上に望ましくない残渣を伴わない;
【0148】
ii) 局所的薬物塗布に続く皮膚白化の迅速な開始;
【0149】
iii) 正常な皮膚のpHに概ね等しいpHをもった局所的に適用される薬物溶液;
【0150】
iv) 好ましくは、室温または冷蔵庫温度の両方において長期保存の際に活性剤の実質的な沈殿を伴わない、高濃度のカテコールアミンの溶解を可能にする溶媒特性;
【0151】
v) 望ましい濡れ特性、例えば、薬物溶液を皮膚または頭皮に塗布するために使用されるスポンジアプリケータを自然に濡らすために充分に低い処方物密度(または粘度);
【0152】
vi) 抹消脈管構造の収縮を可能にするための強力なα1アドレナリン作動性受容体アゴニストであるが、β2アゴニストに付随する何等かの可能な心臓の頻脈/不整脈副作用を回避するためにβ2アドレナリン作動性受容体アゴニストではない血管収縮剤。
【0153】
ここに開示したように、上記の各々の要件は成功裏に対処されている。
【0154】
i) 実施例7および図3に記載された実験は、46の処方物におけるエピネフリン酒石酸塩の600mM溶液の調製および分析を含んでいた。ここで、三つの溶媒(エタノール、PGおよび水)のパーセンテージは系統的に変化された。ノルエピネフリンの持続的溶解性、並びに46の処方物のうちで三つの薬理学的特性がスコアリングされた。詳細に研究された三つの処方物、A(50:30:20;エタノール:PG:水;vol:vol:vol)、B(60:15:25)、およびC(70:0:30)のうち、AおよびBは、薬物塗布の1時間後に検出された望ましくない「粘着性」の残渣が、局所処置部位に残した。70%エタノールおよび30%水で構成される処方物Cは、検出可能な残渣を伴うことなく、塗布の数分以内に完全に吸収された。
【0155】
ノルエピネフリンは強力な薬理学的に活性な物質であり、規制のための毒物として掲載されている。放射線療法の患者は、例えば週当り5回で6週間の治療を受ける。安全性の理由、並びに患者のための単純な利便性の理由で、局所的に塗布される薬物は迅速に吸収されるべきである。これにより、皮膚に薬物残渣を伴わずに、或いは、不当な安全性の危険、例えば小さい子供が持ったときに接触し得る衣類上での蓄積を伴わずに、処置された皮膚部位(例えば乳癌患者の型および腋窩)に衣類を毎日戻すことが可能になる。
【0156】
ii) 実施例7、並びに図4および図5は、ヒトボランティアの胸部および上腕部の皮膚における皮膚白化応答の応答時間を記載している。線型加速器の多額の費用のため、並びに再スケジュールのオプションがなく特定の日に処置されなければならない多くの患者のために、ヒト放射線療法の患者についての照射スケジュールは緻密にコントロールされる。こうして、所定の患者は1回の外来当り15分〜20分間クリニックに居ることになり、照射(たとえば2Gy/日)には1〜3分だけを要するであろう。局所的に塗布された血管収縮剤処方物には、放射線施設内での実際的でない遅延を生じることなく、患者が放射線保護を期待して照射を受けることができるように迅速に皮膚の白化応答を開始することが必要とされる。照射のラットモデルを使用した実施例13および実施例14は、白化ウインドウが放射線保護ウインドウを充分に予測することを示した。更に、実施例13に見られるように、スコアリングの制限内において、放射線保護は白化応答に僅かに先行する。70:0:30の送達媒体中に600mMのノルエピネフリンを有する実施例7の処方物Cは、上腕部位においてさえ迅速に白化応答を誘導した。上腕部は、試験された他の腕、胸または首の部位に比較して、重度にケラチン化されていてるので比較的遅いように思える。
【0157】
iii) 皮膚の正常なpHは4〜5.5にあり、皮膚の大きなアルカリ性は、P.acnesのような皮膚病原体の増殖を支える大きな能力と関連している。70%エタノール:30%水の媒体処方物に溶解されたエピネフリン酒石酸塩の600mM溶液(例えば処方物C)の、未調節のpHは4.1である。酒石酸上の両方のイオン性プロトンのpKaは、温和な酸性の水−エタノール溶液を生じ、該溶液は皮膚と高度に適合性であり、複数回の塗布後にも認識可能な刺激を伴わない。
【0158】
iv) 好ましくは、医薬処方物は、製品の保存寿命の間は当該処方物の各要素が可溶性のまま残るように設計される。実施例7および図3のデータは、エタノール:PG:水の3成分媒体中における600mMのエピネフリン酒石酸塩の持続的な可溶性が、完全に直感的ではないことを示している。溶解度の「島」が、50:30:20処方物の回りに見られる。エピネフリン酒石酸塩は、エタノール:水の単独溶液中で安定に可溶性であることが、或る程度非予測的に見出された。処方物C(70:0:30)は、望ましい白化応答を誘導するための許容可能な活性を有する濃度の、エピネフリン酒石酸塩(600mM)の安定な溶液を提供した。α1アドレナリン作動性受容体特異的アゴニストであるフェニレフリンHClは、実施例6に示した様に、許容可能な白化応答を誘導するために必要な濃度では局所的媒体中で安定に可溶性ではないので、ケラチン化した皮膚に対する局所塗布のための血管収縮剤としては好ましくない。
【0159】
v) 濡れ性は、ここに記載するタイプの局所処方物のための有用な性質である。処方物C70:0:30のエピネフリン酒石酸塩溶液の密度(0.931gm/リットル)は、水の密度よりも顕著に低い。処方物Cの50μLのアリコートが商業的に入手可能なスポンジアプリケータの表面に供給されたときに、該液体は該スポンジを自然に濡らす。癌患者においては、脱毛を防止するために、局所的ノルエピネフリン処方物が、例えば目の中に垂れること等を伴わずに、頭皮および眉のような所望の部位に塗布されることが重要であろう。従って、標的部位に液体の薄膜を塗布するために使用できるスポンジアプリケータは、非常に有用であろう。これらスポンジアプリケータの幾つかは重力によって充填され、ここでは破られた保存瓶からの液体がスポンジの頂部へと流れ、次いで該スポンジの底部が、この溶液を皮膚に塗布するために使用される。従って、頭皮または他のケラチン化された皮膚への薬物塗布を可能にするために、薬物処方物がアプリケータ(例えばスポンジ)を自然に濡らすことができることは非常に有用で且つ極めて好ましい。
【0160】
vi) 真皮脈管構造の収縮を誘導するために、ここで使用するために局所的に塗布された血管収縮剤分子は、好ましくは、真皮血管壁内の平滑筋細胞の原形質膜に存在するα1アドレナリン作動性受容体のアゴニストである。しかし、当該薬物のリスクプロファイル、スピード規制認可、蓄積医師製品承認(garner physician product acceptance)を改善するために極めて好ましい第二の要件は、当該分子がβ2アドレナリン作動性受容体のアゴニストでないことである。β2アドレナリン作動性受容体は、エピネフリンの全身注射または心臓内注射に通常伴われる頻脈および/または不整脈の効果を媒介する。
【0161】
フェニレフリンおよびメトキサミンは、おそらく論理的選択であるが、実施例6におけるフェニレフリン(および別途メトキサミン)に見られるように、それは未破壊のヒト皮膚に適用されたときに充分に皮膚の白化を誘導する能力を欠いている。口腔粘膜および他の粘膜表面は未破壊の皮膚よりも約4000倍以上吸収性であるから、フェニレフリンはやはり、粘膜白化を誘導し、粘膜に対して白化フェノタイプに関連した放射線保護および化学療法保護を与える活性剤としての優れた選択肢のまま残されることに留意すべきである。
【0162】
下記の表19−1から分るように、ケラチン化された皮膚に塗布する血管収縮剤のための許容可能な溶液は、ノルエピネフリンである。α1アドレナリン作動性受容体についてのその結合親和性(効力)は、エピネフリンについてのそれよりも僅かに良好である。また、それはβ2受容体のアゴニストではなく、従って頻脈/不整脈の作用を与えることははできない。
【表9】
【0163】
ノルエピネフリンは、β1アドレナリン作動性受容体アゴニストであり、従って、血中の薬理学的濃度において血圧を増大できるであろう。本発明を如何なる特定の動作モードにも限定するものではないが、血管収縮剤として皮膚に局所的に塗布され、拡散によって真皮脈管構造に送達されるノルエピネフリンは、その分布において自己制限的であると思われる。局所的ノルエピネフリン塗布の自己性限的性質に加えて、ノルエピネフリンを含むカテコールアミンを異化する二つの非常に効率的な酵素、即ち、組織、血液および血球の両方に広く分布したCOMT(カテコールO−メチルトランスフェラーゼ)およびMAO(モノアミンオキシダーゼ)が存在する。従って、処方物Cは、70:0:30の送達媒体中の600mMノルエピネフリンを提供し、この基準を満たしている。
【0164】
顕著には、長期の継続的且つ徹底したスクリーニングの後に、上記に列記した基準i)〜vi)の各々を満たす許容可能な処方物が同定された。EtOHおよび水を70:30の比率で含有する送達媒体が効果的であった。ノルエピネフリンを約450mM〜約750mMで含有する組成物もまた有効であった。好ましい処方物は、500〜700mMのエピネフリンを含有する。更に好ましいのは、約550〜650mMのエピネフリンを含有する処方物である。現在の好ましい実施例においては、70%エタノールプラス30%の水中に溶解された600mMのエピネフリン酒石酸塩が上記基準を満たし、ケラチン化された皮膚または頭皮組織の皮内脈管構造へと血管収縮剤を送達することが見出された。
【0165】
当業者は、ここに提供された実施例および説明が、未だ添付の特許請求の範囲内にあるが変化および適合されることができる、本発明の側面を更に記述するために役立つことを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、ラット皮膚の組織学的横断面を示している。それは、上皮および毛髪濾胞内の幹細胞、並びに毛髪濾胞を取り囲んで真皮およびその上にある皮膚構造に血液を提供する真皮脈管構造の位置を示している。
【図2】図2は、ラット皮膚に局所的に塗布されたエタノール送達媒体中の色素分子(ナイル赤、FW:318)が、どのようにして角質を通って上皮を貫通し、規則的に配列された毛髪濾胞の各々を濾胞球の底を通って貫通するかを示している。
【図3】図3は、エタノール、プロピレングリコールおよび水の混合物を含んでなる種々の局所薬剤処方物中における、ノルエピネフリンの溶解度を示している。黒丸はノルエピネフリンが可溶性である点を表し、白丸はノルエピネフリンが可溶性でない点を表している。
【図4】図4は、ヒト胸部皮膚の白化応答 vs.指示された薬物処方物の単回局所塗布後の時間を表すグラフを示している。
【図5】図5は、ヒト上腕皮膚の白化応答 vs.指示された薬物処方物の単回局所塗布後の時間を表すグラフを示している。
【図6】パネルAは、皮膚白化応答 vs.ヒト腕へのエピネフリンの単回局所塗布後の時間(時)を表すグラフを示している。 パネルBは、皮膚白化応答 vs.ヒト腕への一連のエピネフリン局所塗布後の時間(エピネフリンの最初の局所塗布後の時間)を表すグラフを示している。
【図7】パネルA: 血管収縮の剤の局所塗布は、ヒトまたはラットにおいて皮膚の白化を誘導する; パネルB: 化学療法剤(サイトキサン)は、静脈注射または経口投与の後、経時的に、血液から全身的にクリアされる。 パネルC: 血管収縮剤の局所的塗布は、処置された領域への血液供給の低下に一致して、皮膚を迅速に白化する。 パネルD: サイトキサン(30μg/gm b.w)の単回i.p.投与前に、2時間に亘って4回の局所的な950mMエピネフリンを用いて10日齢のラットの子供を治療した結果。 パネルEは、塗布された血管収縮剤の濃度の関数としての、ヒト皮膚およびラット皮膚(両者共に10日および22日齢)についての皮膚白化応答のプロットである。
【図8】図8は、ラットにおけるサイトキサンにより誘導された脱毛の投与量依存性を示している。20μg/gm b.w.以下のサイトキサン投与量では、治療されたラットは完全に体毛で覆われ、成体になるまでそれを維持した。
【図9】図9は、放射線照射前の目視での皮膚白化の評価が、照射後の放射線皮膚炎予防の決定と相関することを示している。 パネルA:200mMノルエピネフリンでの処置 パネルB:100mMエピネフリンでの処置
【図10】図10は、血管収縮剤の局所的治療が与えられた照射の前の時間量の関数として、放射線皮膚炎の重篤度を示している。
【図11】図11は、血管収縮剤で局所的に処置されたシリアンゴールデンハムスターの口腔粘膜における白化応答を示している。
【図12】図12は、増大した放射線量から生じる、ハムスター頬袋モデルにおける口腔粘膜炎の増大した重篤度をグラフで表している。適切な送達媒体中の適切な投与量で局所的に塗布された血管収縮剤は、放射線誘導された口腔粘膜炎を予防することができるのに対して、高濃度の場合は、40Gyの放射線量と組合されたときに口腔粘膜に対して重篤な毒性を生じる。
【図13】図13は、局所的に投与された(−)エピネフリンが、ヒト口腔粘膜において観察される粘膜白化の程度に影響することを示している。最大白化応答(%)vs.局所処置後の時間のプロットが、傾向粘膜および唇の両者について示されている。
【図14】図14は、ラットの剃毛した背中に塗布されたエタノール:PG:水送達媒体中のノルエピネフリンが、皮膚脈管構造の収縮を生じ、これに一致して、血液に運ばれた全身の色素分子の送達はノルエピネフリン処置された皮膚へと顕著に減少する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法剤、放射線療法、またはそれらの組合せで治療された、または治療されるべき患者において、脱毛症、皮膚炎、粘膜炎、胃腸障害または直腸炎の少なくとも一つの症状を低減するための方法であって、前記患者に対して、医薬的に許容可能な送達媒体中に血管収縮剤を含有する製剤を、前記少なくとも一つの症状を低減するために有効な量で局所的に投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記症状が、皮膚、頭皮、口、直腸、鼻腔食道系、胃腸系、または泌尿生殖器系の1以上の非癌性細胞において低減される方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記血管収縮剤が、望ましくない心臓副作用の実質的な危険を最小化するように選択される方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記血管収縮剤が、α1アドレナリン作動性受容体のアゴニストである方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記血管収縮剤が、5−HT1B/1D受容体のアゴニストである方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記投与ステップが予防的に行われる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記症状が胃腸障害であり、前記製剤は食道、胃、または腸内の細胞への血管収縮剤の送達を可能にする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記症状が直腸炎であり、前記製剤は直腸内の細胞に血管収縮剤を送達するための局所的送達媒体の中に血管収縮剤を含んでなる方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記製剤は、ゲル、粘膜接着性コーティング、座薬、またはフォーム製剤を含んでなる方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記療法は放射線療法であり、前記方法は更に、前記放射線療法の後に、直腸内の細胞へと血管収縮剤を送達するための医薬的に許容可能な送達媒体の中にアルファアドレナリン作動性受容体アンタゴニストを含有する有効量の製剤を投与することを含んでなる方法
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記医薬的に許容可能な送達媒体は、湿潤性または潤滑性の局所的送達媒体である方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法であって、前記症状は皮膚炎であり、また前記製剤は血管収縮剤を皮膚内の細胞に送達するための局所送達媒体中に血管収縮剤を含んでなる方法。
【請求項13】
請求項6に記載の方法であって、前記症状は口腔粘膜炎であり、前記製剤は血管収縮剤を口腔粘膜内の細胞に送達するための局所送達媒体中に血管収縮剤を含んでなる方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記血管収縮剤は、α1アドレナリン作動性受容体特異的な血管収縮剤である方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、更に、前記療法の後に、血管収縮剤を口腔粘膜内の細胞に送達するための医薬に許容可能な送達媒体中にαアドレナリン作動性受容体アンタゴニストを含有する有効量の製剤を投与することを含んでなる方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記製剤は、ゲルまたは粘膜接着性コーティングを含んでなる方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記血管収縮剤は、エピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエピネフリン、ゾルミトリプタン、テトラヒドロザリン、ナファゾリン、またはこれらの何れかの組み合わせの1以上である方法。
【請求項18】
請求項4に記載の方法であって、前記血管収縮剤は、エピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエピネフリン、テトラヒドロザリン、ナファゾリン、またはこれらの何れかの組み合わせである方法。
【請求項19】
請求項5に記載の方法であって、前記血管収縮剤は、ゾルミトリプタン、オキシデスミトリプタン、アビトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリウタン、またはそれらの何れかの組合せである方法。
【請求項20】
請求項10に記載の方法であって、前記αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストは、プラゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、アルフゾシン、タムスロシン、またはこれらの何れかの組合せである方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法であって、前記αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストは、プラゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、アルフゾシン、タムスロシン、またはこれらの何れかの組合せである方法。
【請求項22】
少なくとも一つの血管収縮剤と、癌患者における経口での嗜好性を改善するための少なくとも一つの添加剤とを、口腔粘膜に供給する脈管構造へと血管収縮剤を送達するために適した医薬的に許容可能な送達媒体の中に含有してなる医薬製剤。
【請求項23】
請求項22に記載の医薬製剤であって、前記血管収縮剤が、エピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエピネフリン、カポテン、エナラプリル、リシノプリル、ゾルミトリプタン、テトラヒドロザリン、プロカインイミド、酸化窒素、またはこれらの何れかの組み合わせである製剤。
【請求項24】
請求項23に記載の医薬製剤であって、エピネフリンを含有する製剤。
【請求項25】
請求項24に記載の医薬製剤であって、前記エピネフリンの濃度が約0.009%〜約11%である製剤。
【請求項26】
請求項22に記載の医薬製剤であって、フェニレフリンを含有する製剤。
【請求項27】
請求項26に記載の医薬製剤であって、前記フェニレフリンの濃度が約0.03%〜約25%である製剤。
【請求項28】
請求項22に記載の医薬製剤であって、メトキサミンを含有する製剤。
【請求項29】
請求項28に記載の医薬製剤であって、前記メトキサミンの濃度が約0.01%〜約25%である製剤。
【請求項30】
請求項22に記載の医薬製剤であって、更に、遊離ラジカルスカベンジャーを含有してなる製剤。
【請求項31】
請求項22に記載の医薬製剤であって、前記医薬的に許容可能な送達媒体は、リポソーム、リピド液滴エマルジョン、油、ポリオキシエチレンエーテルの水性エマルジョン、水性アルコール混合物、プロピレングリコールを含有する水性エタノール混合物、水性緩衝液中の医薬的に許容可能なガム、水性緩衝液中の修飾セルロース、アルコール−水緩衝混合物中の修飾セルロース、アルコール−水緩衝液−プロピレングリコール混合物中の修飾セルロース、または水性緩衝液中のジエチレングリコールモノエチルエーテルの1以上を含んでなる製剤。
【請求項32】
血管収縮剤を患者の扁平上皮細胞に送達する方法であって、前記患者に対して、医薬的に許容可能な送達媒体中に血管収縮剤を含有する組成物を局所的に投与するステップを含んでなり、前記媒体は、前記扁平上皮に対する血管収縮剤の浸透を可能にするように特に処方される方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記組成物は、上皮および毛髪濾胞幹細胞に役立つ下地をなす真皮の脈管構造に、前記血管収縮剤を送達する方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、前記媒体は、角質層または毛髪濾胞皮脂残渣の浸透を可能にする方法。
【請求項35】
請求項30に記載の方法であって、前記送達媒体はエタノールおよび水を含有し、前記血管収縮剤はノルエピネフリンを含有する方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、前記エタノールおよび水は70:30の比率で存在する方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、ノルエピネフリンは、約450〜750mMの濃度で存在する方法。
【請求項38】
局所的血管収縮剤処方物であって、血管収縮剤および医薬的に許容可能な送達媒体を含有してなり、前記血管収縮剤は、α1アドレナリン作動性受容体のアゴニストであるが、β2アドレナリン作動性受容体のアゴニストではなく、前記送達媒体はエタノールおよび水を70:30の比率で含有してなる処方物。
【請求項39】
請求項38に記載の処方物であって、前記血管収縮剤がノルエピネフリンである処方物。
【請求項40】
請求項39に記載の処方物であって、前記皮膚上に粘着性残差を残さない処方物。
【請求項41】
請求項39に記載の処方物であって、前記ノルエピネフリンが約450〜750mMの濃度で存在する処方物。
【請求項42】
請求項39に記載の処方物であって、約600mMのノルエピネフリンを含有する処方物。
【請求項1】
化学療法剤、放射線療法、またはそれらの組合せで治療された、または治療されるべき患者において、脱毛症、皮膚炎、粘膜炎、胃腸障害または直腸炎の少なくとも一つの症状を低減するための方法であって、前記患者に対して、医薬的に許容可能な送達媒体中に血管収縮剤を含有する製剤を、前記少なくとも一つの症状を低減するために有効な量で局所的に投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記症状が、皮膚、頭皮、口、直腸、鼻腔食道系、胃腸系、または泌尿生殖器系の1以上の非癌性細胞において低減される方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記血管収縮剤が、望ましくない心臓副作用の実質的な危険を最小化するように選択される方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記血管収縮剤が、α1アドレナリン作動性受容体のアゴニストである方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記血管収縮剤が、5−HT1B/1D受容体のアゴニストである方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記投与ステップが予防的に行われる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記症状が胃腸障害であり、前記製剤は食道、胃、または腸内の細胞への血管収縮剤の送達を可能にする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記症状が直腸炎であり、前記製剤は直腸内の細胞に血管収縮剤を送達するための局所的送達媒体の中に血管収縮剤を含んでなる方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記製剤は、ゲル、粘膜接着性コーティング、座薬、またはフォーム製剤を含んでなる方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記療法は放射線療法であり、前記方法は更に、前記放射線療法の後に、直腸内の細胞へと血管収縮剤を送達するための医薬的に許容可能な送達媒体の中にアルファアドレナリン作動性受容体アンタゴニストを含有する有効量の製剤を投与することを含んでなる方法
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記医薬的に許容可能な送達媒体は、湿潤性または潤滑性の局所的送達媒体である方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法であって、前記症状は皮膚炎であり、また前記製剤は血管収縮剤を皮膚内の細胞に送達するための局所送達媒体中に血管収縮剤を含んでなる方法。
【請求項13】
請求項6に記載の方法であって、前記症状は口腔粘膜炎であり、前記製剤は血管収縮剤を口腔粘膜内の細胞に送達するための局所送達媒体中に血管収縮剤を含んでなる方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記血管収縮剤は、α1アドレナリン作動性受容体特異的な血管収縮剤である方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、更に、前記療法の後に、血管収縮剤を口腔粘膜内の細胞に送達するための医薬に許容可能な送達媒体中にαアドレナリン作動性受容体アンタゴニストを含有する有効量の製剤を投与することを含んでなる方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記製剤は、ゲルまたは粘膜接着性コーティングを含んでなる方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、前記血管収縮剤は、エピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエピネフリン、ゾルミトリプタン、テトラヒドロザリン、ナファゾリン、またはこれらの何れかの組み合わせの1以上である方法。
【請求項18】
請求項4に記載の方法であって、前記血管収縮剤は、エピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエピネフリン、テトラヒドロザリン、ナファゾリン、またはこれらの何れかの組み合わせである方法。
【請求項19】
請求項5に記載の方法であって、前記血管収縮剤は、ゾルミトリプタン、オキシデスミトリプタン、アビトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリウタン、またはそれらの何れかの組合せである方法。
【請求項20】
請求項10に記載の方法であって、前記αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストは、プラゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、アルフゾシン、タムスロシン、またはこれらの何れかの組合せである方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法であって、前記αアドレナリン作動性受容体アンタゴニストは、プラゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、アルフゾシン、タムスロシン、またはこれらの何れかの組合せである方法。
【請求項22】
少なくとも一つの血管収縮剤と、癌患者における経口での嗜好性を改善するための少なくとも一つの添加剤とを、口腔粘膜に供給する脈管構造へと血管収縮剤を送達するために適した医薬的に許容可能な送達媒体の中に含有してなる医薬製剤。
【請求項23】
請求項22に記載の医薬製剤であって、前記血管収縮剤が、エピネフリン、フェニレフリン、メトキサミン、ノルエピネフリン、カポテン、エナラプリル、リシノプリル、ゾルミトリプタン、テトラヒドロザリン、プロカインイミド、酸化窒素、またはこれらの何れかの組み合わせである製剤。
【請求項24】
請求項23に記載の医薬製剤であって、エピネフリンを含有する製剤。
【請求項25】
請求項24に記載の医薬製剤であって、前記エピネフリンの濃度が約0.009%〜約11%である製剤。
【請求項26】
請求項22に記載の医薬製剤であって、フェニレフリンを含有する製剤。
【請求項27】
請求項26に記載の医薬製剤であって、前記フェニレフリンの濃度が約0.03%〜約25%である製剤。
【請求項28】
請求項22に記載の医薬製剤であって、メトキサミンを含有する製剤。
【請求項29】
請求項28に記載の医薬製剤であって、前記メトキサミンの濃度が約0.01%〜約25%である製剤。
【請求項30】
請求項22に記載の医薬製剤であって、更に、遊離ラジカルスカベンジャーを含有してなる製剤。
【請求項31】
請求項22に記載の医薬製剤であって、前記医薬的に許容可能な送達媒体は、リポソーム、リピド液滴エマルジョン、油、ポリオキシエチレンエーテルの水性エマルジョン、水性アルコール混合物、プロピレングリコールを含有する水性エタノール混合物、水性緩衝液中の医薬的に許容可能なガム、水性緩衝液中の修飾セルロース、アルコール−水緩衝混合物中の修飾セルロース、アルコール−水緩衝液−プロピレングリコール混合物中の修飾セルロース、または水性緩衝液中のジエチレングリコールモノエチルエーテルの1以上を含んでなる製剤。
【請求項32】
血管収縮剤を患者の扁平上皮細胞に送達する方法であって、前記患者に対して、医薬的に許容可能な送達媒体中に血管収縮剤を含有する組成物を局所的に投与するステップを含んでなり、前記媒体は、前記扁平上皮に対する血管収縮剤の浸透を可能にするように特に処方される方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記組成物は、上皮および毛髪濾胞幹細胞に役立つ下地をなす真皮の脈管構造に、前記血管収縮剤を送達する方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、前記媒体は、角質層または毛髪濾胞皮脂残渣の浸透を可能にする方法。
【請求項35】
請求項30に記載の方法であって、前記送達媒体はエタノールおよび水を含有し、前記血管収縮剤はノルエピネフリンを含有する方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、前記エタノールおよび水は70:30の比率で存在する方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、ノルエピネフリンは、約450〜750mMの濃度で存在する方法。
【請求項38】
局所的血管収縮剤処方物であって、血管収縮剤および医薬的に許容可能な送達媒体を含有してなり、前記血管収縮剤は、α1アドレナリン作動性受容体のアゴニストであるが、β2アドレナリン作動性受容体のアゴニストではなく、前記送達媒体はエタノールおよび水を70:30の比率で含有してなる処方物。
【請求項39】
請求項38に記載の処方物であって、前記血管収縮剤がノルエピネフリンである処方物。
【請求項40】
請求項39に記載の処方物であって、前記皮膚上に粘着性残差を残さない処方物。
【請求項41】
請求項39に記載の処方物であって、前記ノルエピネフリンが約450〜750mMの濃度で存在する処方物。
【請求項42】
請求項39に記載の処方物であって、約600mMのノルエピネフリンを含有する処方物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−543876(P2008−543876A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517201(P2008−517201)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/023708
【国際公開番号】WO2006/138691
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(500395761)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/023708
【国際公開番号】WO2006/138691
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(500395761)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (25)
【Fターム(参考)】
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