説明

癌の治療のためのカナマイシンアンチセンス核酸

本発明は、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に対して相補的な配列を含む核酸に関する。この核酸は、DNAワクチンアジュバントとして有用であり、例えば癌の治療のために、例えば非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤、例えば全トランスレチノイン酸(ATRA)と組み合わせて使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に対して相補的な配列を含む核酸に関する。この核酸は、DNAワクチンアジュバントとして有用であり、例えば癌の治療のために、例えば非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤(non-immunosuppressive inducer of tumor cell apoptosis)、例えば全トランスレチノイン酸(ATRA)と組み合わせて使用され得る。
【背景技術】
【0002】
癌は、米国における死亡原因が2番目に高く、心疾患の次である。これらの癌死亡の約10%が血液癌、例えば白血病、リンパ腫及び骨髄腫によって引き起こされる。欧州及び米国のみで、190万人の人々が血液癌を罹患していると推定される。これらの血液癌の幾つかは奇病であり、例えば急性骨髄性白血病(AML)である。急性前骨髄球性白血病(APL、AMLタイプM3)は、前骨髄球性白血病遺伝子(PML)をレチノイン酸受容体アルファ遺伝子(RARα)と融合させる相互転座t(15;17)によって、及び前骨髄球性段階における骨髄分化の停止によって特徴づけられる。全トランスレチノイン酸(ATRA)媒介性分化療法は現在、APL患者における標準的治療法の基本である。しかし、ATRAと化学療法を組み合わせた現行の治療で獲得される寿命の延長にもかかわらず、現行の維持療法の順守をしないために、約10人の患者はなお再発する。したがって、残存疾患を根絶するための新規治療方針及び生活の質の改善が求められている。
【0003】
現在までに、多くの腫瘍関連性抗原が同定されており、これらの腫瘍抗原に対する免疫応答を引き起こさせるためのワクチン接種戦略が開発された。天然及び組み換え癌タンパク質抗原は、規定の免疫原性抗原を標準レベルで含み、そしてそれらの有効性は、適切なアジュバント及び送達系の発見に依存する。DNA送達、例えば生存宿主に対する遺伝子発現カセットの直接的注入は、ワクチン及び免疫療法に対する新規アプローチである。送達された遺伝子の発現は、発現された抗原に対する宿主免疫防御の特異的免疫活性をもたらし得る。
【0004】
ワクチン戦略の有効性は、体液性及び細胞毒性の両方であり得る免疫応答の獲得に依存する。DNAワクチンは、これらの要求を満たし、プラスミドによってコードされた抗原に対する強力且つ持続的細胞媒介性免疫応答(CD8+細胞毒性T細胞及びCD4+ヘルパーT細胞の産生)及び体液性免疫応答をもたらすことが示されている。癌へのこの種のワクチン接種の適用は、B−非ホジキンリンパ腫(B-Non Hodgkin’s Lymphoma)(B−NHL)に対して、それに対する抗腫瘍応答を引き起こす抗原として表面免疫グロブリンのイディオタイプを用いて、最初に使用された(Stevenson et al., 1995, Immunological Reviews 145:211-28; Syrengelas et al., 1996, Nature Medicine 2:1038-41, Rice et al., 2008, Nature Reviews 8:108-20)。当該防御免疫は、リンパ腫及び骨髄腫の他のマウスモデルにおいても観察された。
【0005】
しかし、細胞免疫系の全身性の機能障害が数人の癌患者において報告されている。このため、これらの患者、特にAPL患者の悪い免疫状態は、ワクチン戦略単独の治療への免疫療法的アプローチに対する主要な障害とみなされる。Padua 他(2003, Nature Medicine 9:1413-1417)は、APL動物モデル(Brown et al. 1997, Proc Natl Acad Sci U S A. 94:2551-6)を利用して、PML−RARα腫瘍抗原が破傷風毒素断片(FrC)配列と連結された核酸を含むDNAワクチンのインビボにおける有効性を試験した。それらの結果は、ATRAがPML−RARα−FrC DNAワクチン接種においてアジュバントとして作用して、APLマウスの生存を延長させることを実証した。これは、CD4+及びCD8+T細胞、RARα抗体及びIFNγ産生の増大を伴い、関連性免疫応答の誘導を実証した。
【0006】
国際公開第03/090778号は、(i)非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤、例えばATRA、及び(ii)免疫原性ポリペプチド、例えばPML−RARαFrC、PML−RARαAS−FrC又はScFvBCL1−FrCをコードする配列を含む核酸、を含むワクチン組成物が、APLマウスを再発及び死亡から救済することをさらに教示している。
【0007】
したがって、DNAワクチン接種とATRA投与とを組み合わせる治療法は、白血病の有望な治療法を構成する(Padua and Chomienne, 2004, Discovery Medicine 4:41-44)。癌患者において免疫応答を増大させるために有用である、DNAアジュバント開発への必要性が当技術分野において存在する。
【発明の概要】
【0008】
発明の説明
驚くべきことに、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片と相補的である配列番号1のKanAS配列が、DNAワクチン接種における非常に有効なアジュバントであることが明らかとなった。
【0009】
より具体的には、本発明者は、配列番号1のKanAS配列を、単独で又はPML−RARα腫瘍抗原と融合されて含むプラスミドが、ATRAと組み合わせて投与されたときに、APLマウスの生存を延長させることを示した。さらに、MDSマウスにおいて、KanASは単独で寿命を延長させた。免疫応答はフローサイトメトリーによって測定され、KanAS単独で処置されたMDSマウスが、同定された野生型FVB/Nマウスと比較して、3倍増加したメモリーT細胞を有することが判明した。さらに、白血病幹細胞群は、KanASを用いた処置で減少した(未処置マウスにおいて約25%、処置マウスにおいて約10%)。最終的に、DNAがリガンドの1つである受容体である、Toll様受容体(TLR)の下流経路に存在する、MyD88転写産物の一時的上方制御が観察された。
【0010】
免疫応答を発揮する任意の抗原が、KanASの上流又は下流でクローニングされ得る。KanASを含む核酸を用いたDNAワクチン接種はしたがって、全ての癌に適用可能であり、感染症を含む、免疫応答を必要とする多くの他の疾患に対して適用可能である。本発明のDNAワクチン接種戦略は、癌遺伝子が生殖細胞系に存在し、遺伝する癌、例えば乳癌及び結腸癌に対して遺伝的素因を有する個人に対しても適用可能である。
【0011】
さらに自家ワクチンとは異なり、本発明のDNAワクチンは、既定の癌状態に特異的なワクチンではない。それらは、自己抗原に対する自己免疫を含む危険が全く存在しない。さらに、これらのワクチンは、容易にスケールアップ可能な標準的細菌発酵処理によって製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明のKanAS核酸を含む、pVax14及びpVax15プラスミドを示す。pVax14は配列番号1のKanAS核酸を含み、pVax15は配列番号3のPML−RARαKanAS核酸を含む。
【図2】図2は、配列番号1のKanAS核酸を含むpVax14核酸が、APL(急性前骨髄球性白血病)マウスモデルにおいて寿命を延長させることを示す。プラスミド地図に関する図10を参照。列1:ATRA+pVaxKanAS(n=12)(PVax14,VVACS02);列2:ATRA+pCDNA3PML−RARαFrC(n=48)(VVACS01);列3:ATRA+pCDNA3PML−RARαASFrC(n=12)(VVACS04);列4:ATRA+pVaxPML−RARαFrC(n=12)(VVACS01).列5:ATRA(n=32);列6:プラセボ+DNA(pCDNA3PML−RARαFrC)(n=11)(VVACS01);列7:プラセボ(n=10)。
【図3】図3は、配列番号3のPML−RARαKanAS核酸を含むpVax15核酸が、APLマウスモデルにおいて寿命を延長させることを示す。列1:ATRA+pCDNA3PML−RARαFrC(n=21)(VVACS01);列2:ATRA+pVaxPML−RARαKanAS(n=10)(pVax15,VVACS03);列3:ATRA(n=9)。
【図4】図4は、配列番号1のKanAS核酸を含むpVax14(VVACS02)核酸が、MDS(骨髄異形成症候群)マウスモデルにおいて寿命を延長させることを示す。列1:pVaxKanAS(pVax14,VVACS02)(n=6);列2:未処置(n=25)。P=0.0002。
【図5】図5は、配列番号1のKanAS核酸を含むpVax14核酸が、MDSマウスモデルにおいて寿命を延長させることを示す。pVaxKanAS(n=10)(pVax14,VVACS02);PML−RARaAS−FrC(n=16)(VVACS04);未処置:n=25。P値:未処置vs.PML−RARaAS−FrC<0.0001;未処置vs.pVaxKanAS=0.0002;PML−RARaAS−FrC vs.pVaxKanAS=0.3648。
【図6】図6は、pCDNA3PMLRARαASFrCが、MDSマウスモデルの寿命を延長させることを示す。pCDNA3PMLRARαASFrC(n=16)(VVACS04);未処置:n=26;ATRA:0=11;ATRA+pCDNA3PMLRARαASFrC(n=9)(VVACS04)。Log−ランクP値:pCDNA3PMLRARαFrC(VVACS04),ATRA又はATRA+DNAvs未処置=<0.0001;pCDNA3PML−RARαASFrC(VVACS04) vs.ATRA=0.9994;pCDNA3PML−RARαASFrC(VVACS04) vs.ATRA+pCDNA3PML−RARαASFrC(VVACS04)=0.1957;ATRA vs.pCDNA3PML−RARαASFrC+ATRA=0.3834。
【図7】図7は、配列番号1のKanAS核酸を含むpVax14核酸を用いたマウスのワクチン接種が、CD4+、CD44hi、CD62LloメモリーT細胞群の増大をもたらすことを示す。D15、D33及びD183は、MDSの診断からの日数を示す。
【図8】図8は、配列番号1のKanAS核酸を含むpVax14核酸を用いたマウスのワクチン接種が、安定なレベルでのMac−2hi/Gr1lo白血病始原細胞群の維持を可能とすることを示す。D15、D33及びD183は、MDSの診断からの日数を示す。
【図9】図9は、DNAワクチン接種が、DNAがリガンドであるToll様受容体(TLR)の下流のシグナル経路に存在する、MyD88を上方制御することを示す。したがって、DNAワクチン接種時に見られるMyD88の発現増大は、TLRの一時的活性化が存在することを示す。
【図10】図10は、VVACSプラスミド地図を示す。
【図11】図11は、AMLマウスモデルにおける、異なるVVACS産物(VVACS01 & VVACS02 & VVACS03)プラスATRAの効果を示す。
【図12】図12は、VVACS02 DNAを用いたDNAワクチン接種が、特異的なT細胞応答をもたらすことを示す。Elispotアッセイは、IFNgの増大を示す。
【図13】図13は、VVACS02 DNAを用いたDNAワクチン接種が、病勢安定(stable disease)を維持することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のKanAS核酸
本発明は、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に相補的な配列を含む、又はから成る、単離及び/又は精製された核酸に関する。本発明のかかる核酸は、「KanAS核酸」と呼ばれる。前記カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片は、任意の長さであり得、例えば少なくとも、最大、又は約50、100、150、200、250、300、350、400、450、473又は500個の連続的ヌクレオチドであり得る。
【0014】
本発明において、「核酸」は、リボヌクレオシドのリン酸エステルポリマー形態(「RNA分子」)又はデオキシリボヌクレオシドのリン酸エステルポリマー形態(「DNA分子」)又はそれらの任意のリン酸エステル類縁体、例えばホスホロチオエート及びチオエステルのことであって、それらは一本鎖形態又は二本鎖らせんのいずれかであり得る。用語「核酸」は、二本鎖DNA、特に直鎖(例えば制限断片)又は環状DNA分子を含む。核酸は好ましくはDNA分子に相当する。
【0015】
本明細書において使用される「単離及び/又は精製された」は、ヒト又は動物の身体から単離及び/又は精製された化合物、並びに/或いは化合物のライブラリーから単離及び/又は精製された化合物のことである。
【0016】
本明細書において使用される用語「カナマイシン耐性タンパク質」は、カナマイシンに対する耐性を付与することができる酵素のことである。かかる酵素は、以下の酵素反応を触媒する:
【0017】
ATP + カナマイシン → ADP + カナマイシン3’−リン酸
【0018】
カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列は、任意の微生物由来であり得、例えば、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ストレプトミセス・フラジエ(Streptomyces fradiae)、サルモネラ・ティフィムリム(Salmonella typhimurium)、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、ストレプトミセス・リボシディフィカス(Streptomyces ribosidificus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)又はラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)由来であり得る。好ましくは、カナマイシン耐性タンパク質をコードする前記配列は、配列番号9の1226〜2020位のヌクレオチドから成る配列を有する。
【0019】
本発明のKanAS核酸は、pVax1ベクター(カタログ番号V260-20, Invitrogen, Carlsbad, California, USA)断片に相補的な配列をさらに含み得る。pVax1ベクターの配列は、配列番号9として示される。
【0020】
したがって本発明のKanAS核酸は、例えば、配列番号9の断片に相補的である配列であって、配列番号9の前記断片は、配列番号9の1226〜2020位に位置するヌクレオチドの内、少なくとも、最大又は約50、100、150、200、250、300、350、400、450、473又は500個の連続的ヌクレオチドを含む。配列番号9の断片は、例えば、配列番号9の1226〜2020位に位置するヌクレオチドの内、50〜500、100〜500、200〜500、300〜500、400〜500又は450〜500個の連続的ヌクレオチドを含み得る。KanAS核酸はまた、かかる配列の誘導体に相当し得る。
【0021】
好ましい実施形態において、KanAS核酸は:
− 配列番号1又は2と少なくとも80、85、90、95、96、97、98又は99%同一である配列;
− 配列番号1又は2の、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400又は450個の連続的ヌクレオチドの断片;又は
− 配列番号1又は2の誘導体
を含むか、又はから成る。
【0022】
これらのKanAS核酸は、好ましくは生物活性を示す。本明細書において使用される用語KanAS核酸の「生物活性」は、哺乳動物、例えばマウス、ラット又はヒトにおいて免疫応答を引き起こす能力のことである。かかる生物活性を測定する方法は、当業者に周知である。例えば、Padua 他 (2003, Nature Medicine 9:1413-1417)において開示された方法が使用され得る。1つの好ましい実施形態において、KanAS核酸の生物活性は、ATRAと組み合わせて投与されたとき、APL又はMDSのマウスモデル(以降、「APLマウス」又は「MDSマウス」と呼ぶ)において生存を延長する能力を評価することによって測定される(本発明の実施例2及び3を参照)。
【0023】
本発明の問い合わせ配列と、例えば少なくとも95%「同一」である配列を有する核酸によって、当該配列が、当該問い合わせ配列の各100ヌクレオチドごとに最大5個のヌクレオチドの変更を含み得ることが意図される。他言すれば、問い合わせ配列と少なくとも95%同一である配列を有する核酸を得るために、最大5%(100個中5個)の配列中のヌクレオチドが、挿入されるか、欠失されるか又は別のヌクレオチドで置換され得る。
【0024】
用語「誘導体」は、断片(fragment)、類縁体(homologue)、変異体(mutant)及び天然発生のバリアント(variant)、例えば対立遺伝子バリアント、スプライスバリアント、又はタンパク質プロセシングを通じて得られたバリアントを含む。参照配列と「少なくとも80、85、90、95、96、97、98又は99%同一」であるアミノ酸配列から成る誘導体は、当該参照配列と比較して、変異、例えば欠失、挿入及び/又は置換を含み得る。置換の場合、参照配列と少なくとも80、85、90、95、96、97、98又は99%同一であるアミノ酸配列を含む誘導体は、参照配列よりも別の種由来の相同配列に相当し得る。当該置換は、以下の表に示された通りの保存的置換に相当し得る。
【0025】
【表1】

【0026】
1つの具体的な実施形態において、KanAS核酸は、少なくとも1つのペプチド又はポリペプチドをコードするアンチセンス配列を含むか、又はから成り、ここで前記アンチセンス配列はカナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片と相補的である。
【0027】
KanAS核酸は、少なくとも1つの免疫原性ポリペプチドをコードする配列をさらに含み得る。少なくとも1つの免疫原性ポリペプチドをコードする前記配列は例えば、国際公開第03/090778号に記載の免疫原性ポリペプチドをコードする核酸配列に相当する。
【0028】
1つの実施形態において、当該免疫原性ポリペプチドは腫瘍抗原に相当する。したがってこの実施形態にしたがって、本発明のKanAS核酸は、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に対して相補的な配列、及び腫瘍抗原をコードする配列を含む。これらの2つの配列は、フレーム中で融合され得、すなわち、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に対して相補的な配列によってコードされるペプチド又はポリペプチドと、腫瘍抗原との間の融合タンパク質の発現をもたらす。当該腫瘍抗原は、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に対して相補的な配列によってコードされるペプチド又はポリペプチドのN末端又はC末端と融合され得る。
【0029】
有利に使用され得る腫瘍抗原の中で、ヒトPML(前骨髄球性白血病遺伝子)−RARα(レチノイン酸受容体アルファ遺伝子)、急性骨髄性白血病1/8−21(AML1/ETO)、コア結合因子ベータ/筋ミオシン重鎖(CBFベータ/MYH11)、ets−様遺伝子/血小板由来増殖因子受容体ベータ(Tel−PDGF)、前骨髄球性白血病ジンクフィンガー/レチノイン酸受容体アルファ(PLZF−RAR)、40個の潜在的パートナーが存在する骨髄/リンパ(MLL)融合体(fusion)、ets−様遺伝子/急性骨髄性白血病1(AML−1−ETO)、切断点クラスター領域/アベルソン(Abelson)(BCR−ABL)、TEL−AML1、E2A−PBX、MLL−AF4、及び変異によって活性化される癌遺伝子、例えばRAS遺伝子、が引用され得る。
【0030】
本発明の具体的実施形態において、腫瘍抗原はPML−RARαである。用語「PML−RARα」は、The 他 (1990, Nature 347:558-61)に記載されている、t(15;17)染色体転座から生じる融合タンパク質を意味する。PML−RARα抗原は例えば、配列番号5の配列又はその誘導体を含み得る、又はから成り得る。
【0031】
好ましい実施形態において、KanAS核酸は、以下:
− 配列番号3又は4のPML−RARαKanASと、少なくとも80、85、90、95、96、97、98若しくは99%同一である配列;
− 配列番号3又は4の内、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、500若しくは550個の連続的ヌクレオチドの断片;又は、
− 配列番号3又は4の誘導体
を含む、又はから成る。
【0032】
これらのKanAS核酸は好ましくは生物活性を示す。
【0033】
或いは、免疫原性ポリペプチドをコードする配列は、癌状態に対して「非特異的」である。本実施形態の枠組み内において、当該配列が腫瘍抗原を含まないとしても、任意の免疫応答増強剤が好適であり得る。
【0034】
癌状態に対して「非特異的」である免疫原性ポリペプチドは、例えば、国際公開第03/090778号に開示されており、PML−RARαAS又はScFvBCL1を含む。「非特異的」免疫原性ポリペプチドは例えば、配列番号6(PML−RARαAS)の配列若しくはその誘導体を含む又はから成る配列によってコードされ得る。前記「非特異的」免疫原性ポリペプチドをコードする配列はまた、破傷風毒素断片C(FrC)(配列番号16)、コレラ毒素(CT)配列、E.コリ易熱性毒素(LT)配列、百日咳毒素(PT)配列、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)毒素A配列、及びそれらの免疫原性断片から成る群から選択され得る。
【0035】
免疫原性ポリペプチドは、好適なソフトウェアを用いて当業者によって容易に同定され得る。例えば、(疎水性プロットを分析することにより)ポリペプチドの疎水性を特徴付けすることによって、それらが免疫原性であるか否かを予測可能である。ポリペプチドの疎水性の特徴付けのためのソフトウェアは、例えば、Kyte-Doolittle 又はHopp-Woods アルゴリズムの使用に基づくものを含む。Kyte-Doolittleアルゴリズムは、タンパク質の疎水性を表現するために広く適用される基準である。0超の値を有する領域は、性質上疎水性である。Hopp-Woods アルゴリズムは、ポリペプチドの潜在的な抗原性領域を予測するために考案された。0超の値は親水性であり、したがって折り畳まれたタンパク質表面において曝露される傾向にある。
【0036】
具体的な実施形態において、免疫原性ポリペプチドは、配列番号18〜23のいずれか1つから成る群から選択される。これらの免疫原性ポリペプチドは、ポリペプチドの疎水性の特徴付けをするための上記ソフトウェアを用いて同定された。
【0037】
本発明は、KanAS核酸を含むベクターにさらに関する。ここで当該ベクター上において、当該KanAS核酸は、当該KanAS核酸の転写を可能とするシグナル(例えばプロモーター、ターミネーター及び/又はエンハンサー)の制御下に配置されている。当該ベクターは好ましくは、DNAワクチン接種ベクターに、すなわちDNAワクチンの開発のために特に設計されたベクターに相当する。当該DNAワクチン接種ベクターは、例えばpVax1 (Invitrogen, Carlsbad, California, USA) 又はpCDNA3 (Invitrogen, Carlsbad, California, USA) 発現ベクターに相当し得るか、又はそれらに由来し得る。当該ベクターは、抗生物質、例えばアンピシリン又はカナマイシンに対する耐性を付与する耐性遺伝子をさらに含み得る。或いは、当該ベクターは、抗生物質に対して耐性を付与する遺伝子を全く含まない。
【0038】
本発明のKanAS核酸の治療的使用
上記のKanAS核酸は、DNAワクチン接種において、特にアジュバントとして有用であることが明らかとなった。かかるKanAS核酸は、免疫応答を引き起こし、したがって免疫応答の増強が求められている種々の疾患、例えば感染症及び癌を治療するために使用され得る。したがって本発明は、DNAワクチン接種における(例えばアジュバントとしての)使用のための、及び/又は、癌、良性腫瘍若しくは感染症の治療又は予防における使用のための、本発明のKanAS核酸に関する。
【0039】
本明細書において使用される用語「癌」は、任意の種類の悪性(すなわち良性ではない)腫瘍のことである。
【0040】
悪性腫瘍は好ましくは、血液(blood)(又は血液(haemotological))癌、例えば白血病、リンパ腫又は骨髄腫に相当する。かかる血液癌は例えば、急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukaemia)(APL)、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukaemia)(AML)、リンパ性若しくは骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(chronic lymphocytic leukaemia)(CML)、骨髄単球性白血病(myelomonocytic leukaemia)(CMML)、小児急性リンパ性白血病(childhood acute lymphoblastic leukaemia)(ALL)、骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome)(MDS)、ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)(HL)、非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin lymphoma)(NHL)及び多発性骨髄腫(multiple myeloma)(MM)を含む。
【0041】
或いは当該腫瘍は、固形腫瘍、例えば上皮性悪性腫瘍(carcinoma)、腺癌(adenocarcinoma)、非上皮性悪性腫瘍(sarcoma)、悪性黒色腫(malignant melanoma)、中皮腫(mesothelioma)又は芽細胞腫(blastoma)に相当し得る。具体的実施形態において、当該固形腫瘍は、膵臓癌、肺癌、乳癌、結腸癌又は結腸直腸癌に相当し得る。
【0042】
用語「感染症」は、種々の生命体、例えば細菌、マイコプラズマ、原虫、真菌及びウィルス(例えばHIV、肝炎ウィルス、特にHBV若しくはHCV)によって引き起こされる疾患を含む。
【0043】
「治療」は、(すなわち、所定の疾患を罹患している患者に対する)治療的使用を意味し、「予防」は、(すなわち、所定の疾患の発症に対して感受性である個体に対する)予防的使用を意味する。用語「治療」は、疾患の全快をもたらす治療のみならず、疾患の進行を遅らせ、及び/又は患者の生存を延長する治療を含む。
【0044】
癌治療の枠内において、本発明のKanAS核酸は好ましくは、非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤と組み合わせた、同時又は連続的使用のためのものである。他言すれば、当該非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシスの誘導剤及び当該核酸は、同時に、すなわち時間的に同時に、又は連続的に、すなわち患者の一般的治療スケジュールの間において異なる時間に投与され得る。しかし、本発明のKanAS核酸は、単独で使用されたときにおいても有効である(例えば、実施例3を参照)。
【0045】
「アポトーシス」は、画一的な形態学的変化を示す、細胞死の一形態のことである。アポトーシスは、例えばDengler 他 (1995, Anticancer Drugs. 6:522-32)に記載されたヨウ化プロピジウムを用いたフローサイトメトリーアッセイによって、又はGorczyca (1993, Cancer Res. 53:1945-51)によって記載されたインサイチュにおける末端デオキシヌクレオチド転移酵素及びニック翻訳アッセイ(terminal deoxynucleotidyl transferase and nick translation assay)(TUNEL分析)によって測定され得る。
【0046】
「非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤」は、当業者に周知である。非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤は、例えば、レチノイド化合物、ヒ素関連性化合物、CD437、並びに他の分化誘導剤及びアポトーシス誘導剤、CD44を活性化する化合物、例えば抗体及びヒアルロン酸、造血増殖因子及び分化因子、5−アザシチジン及び他の脱メチル化剤、ファルネシル転移酵素(FTI)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、小分子例えばイマチニブ(Imatinib)、BH3模倣阻害剤、例えばABT737、並びにRAC1阻害剤に相当し得る。
【0047】
「レチノイド化合物」はビタミンA誘導体のことであり、例えば、レチノイン酸(RA)、全トランスレチノイン酸(ATRA)、9−シス RA、4−HPPR、13−シス RA及びレチノイン酸の合成類縁体、例えばAM580を含む。好ましくは、当該レチノイド化合物は、ATRA又はAM580に相当する。
【0048】
「ヒ素関連性化合物」は、ヒ素のようにホスファターゼ阻害剤である任意の化合物、又はジチオール基結合によって共有結合を形成することができる任意の化合物を意味する。かかる化合物は例えば、ヒ素及び三酸化ヒ素を含む。
【0049】
好ましい実施形態において、非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤は、前記核酸によって引き起こされる生物学的応答に対してアジュバント活性を有する。
【0050】
「アジュバント活性」は、本明細書において、2つの成分の組み合わせによって達成される効果であって、当該2つの成分のいずれか1つの効果よりも大きいものと定義される。
【0051】
場合により非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤と組み合わされる、本発明のKanAS核酸は、少なくとも1つの抗癌剤、例えば5−アザシチジン (Vidaza(商標)) 又はデシタビン(decitabine)と組み合わせて(同時に、又は連続的に)投与され得る。
【0052】
癌治療の枠内において、本発明のKanAS核酸は、好ましくは、腫瘍抗原をコードする配列を含む。最も好ましくは、当該腫瘍抗原は、治療されるべき癌に特異的である。癌療法のために有用な抗原の例は、急性前骨髄球性白血病(APL)及び骨髄異形成症候群(MDS)の治療のためのPML−RARα、急性骨髄性白血病(AML)タイプM2の治療のためのAML1−ETO、AMLタイプM4好酸球増多症におけるCBFベータ−MYH11、慢性骨髄単球性白血病(CMML)のためのTel−PDGF、バリアントAPLにおけるPLZF−RARα、種々のリンパ性白血病又は骨髄性白血病におけるMLL融合体(fusion)、小児急性リンパ性白血病のための、TEL−AML−1、E2A−PBX、MLL−AF4又は変異によって活性化される癌遺伝子、例えばRAS遺伝子、並びに、慢性骨髄性白血病又は小児急性リンパ性白血病(ALL)の治療のためのBCR−ABL、を含む。
【0053】
本発明はまた、免疫応答を引き起こすための、及び/又は癌若しくは感染症を治療若しくは予防するための方法であって、有効量の本発明のKanAs核酸を、それを必要とする個体へ投与する工程であって、場合により前記KanAsを核酸非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤と組み合わせて投与する前記工程を含む、前記方法を意図する。
【0054】
「有効量」は、治療されるべき疾患を予防、治療又は遅延させることができるペプチド濃度を達成するために十分な量を意味する。かかる濃度は当業者によってごく普通に決定され得る。実際に投与される化合物の量は通常、治療される環境、選択された投与経路、投与される実際の化合物、年齢、体重、個々の患者の応答、患者の症状の深刻度などを含む、関連性のある環境を考慮して、医師によって決定され得る。投与量が投与されるペプチドの安定性に依存し得ることはまた、当業者により理解され得る。
【0055】
「それを必要とする個体」は、治療若しくは予防されるべき疾患を罹患している、又は罹患し易い個体を意味する。本発明の枠内において、治療されるべき個体は、好ましくはヒト個体である。しかし、KanAS核酸の獣医学的使用が同様に、本発明において意図される。
【0056】
本発明の医薬組成物
本発明のKanAS核酸は、薬剤(医薬)として有用である。したがって本発明の一態様は、物理学的に許容される担体中において、上記のKanAS核酸、及び/又はかかるKanAS核酸を含む発現ベクター、を含む医薬組成物を対象とする。かかる医薬組成物は好ましくは、ワクチン組成物に相当する。
【0057】
用語「生理学的に許容される担体」は、活性成分の生物活性の有効性を妨害せず、且つ投与される宿主に対して毒性ではない、任意の担体を含むことを意味する。好適な生理学的に許容される担体は当業者に周知であり、例えば本技術分野における標準的参考文献である Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA, 1985)に記載されている。
【0058】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤、例えばヒ素、三酸化ヒ素、全トランスレチノイン酸(ATRA)、9−シスRA、4−HPPR、13−シスRA又はAM580、をさらに含む。かかる医薬組成物は、癌の治療のために特に有用である。好ましくは、非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤は、KanAS核酸、及び/又は当該KanAS核酸を含む発現ベクターによって引き起こされる生物学的応答に対してアジュバント活性を有する。最も好ましくは、本発明のKanAS核酸は、腫瘍抗原、例えば治療されるべき癌に特異的な腫瘍抗原を含む。
【0059】
医薬組成物は、少なくとも1つの抗癌剤、例えば5−アザシチジン (Vidaza(商標)) 又はデシタビン(decitabine)をさらに含み得る。
【0060】
本発明はさらに、以下の組み合わせに関する:
(i)生理学的に許容される担体中、本発明のKanAS核酸、及び/又はかかるKanAS核酸を含むベクターを含む、第1の医薬組成物;及び
(ii)生理学的に許容される担体中、非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤、例えばヒ素、三酸化ヒ素、全トランスレチノイン酸(ATRA)、9−シスRA、4−HPPR、13−シスRA又はAM580を含む、第2の医薬組成物;及び、場合により、
(iii)抗癌剤、例えば5−アザシチジン (Vidaza(商標)) 又はデシタビン(decitabine)。
【0061】
かかる組み合わせは、例えばキットに相当し得る。当該キットは、癌の治療における使用説明書をさらに含み得る。或いは、第1及び第2の組成物は別々に商品化され得る。
【0062】
本発明の組み合わせの第1及び第2の医薬組成物は、連続的に(すなわち、共通の治療スケジュール期間内において異なる時に)投与されることが意図され得るか、又は同時に投与されることが意図され得る。
【0063】
好ましい実施形態において、本発明の組み合わせの第1の医薬組成物は、腫瘍抗原、例えば治療される癌に特異的な腫瘍抗原(例えば、PML−RARα、AML1−ETO、CBFベータ−MYH11、Tel−PDGF、PLZF−RARα、MLL融合体、TEL−AML−1又はBCR−ABL)をコードする配列を含む、KanAS核酸を含む。最も好ましくは、非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤は、KanAS核酸、及び/又は当該KanAS核酸を含む発現ベクターによって引き起こされる生物学的応答に対してアジュバント活性を有する。
【0064】
本発明のKanAS核酸、及び/又は当該KanAS核酸を含む発現ベクターは、送達用のビヒクルを使用しない、裸の(naked)形態で投与され得る。この目的を達成するために、当該核酸は生理学的に許容される溶液、例えば無菌食塩水又は無菌緩衝食塩水中に、担体と共に、又は担体を用いずに希釈される。存在する場合には、担体は好ましくは等張性、低張性、又は弱い高張性であり、相対的に低いイオン強度、例えばショ糖溶液、例えば20%ショ糖を含有する溶液によって提供されるイオン強度を有する。
【0065】
或いは、本発明のKanAS核酸、及び/若しくは当該KanAS核酸を含む発現ベクター、又は本発明のワクチン組成物、組み合わせ、若しくはキットの核酸は、細胞への取り込みを支援する薬剤と共に投与され得る。かかる薬剤の例は、(i)細胞透過性を改変する化学物質、例えばブピバカイン(bupivacaine)(例えば、国際公開第94/16737号参照)、(ii)ポリヌクレオチドの被包のためのリポソーム若しくはウィルス粒子、又は(iii)それら自身をポリヌクレオチドと共に結合させる、カチオン性脂質又はシリカ、金若しくはタングステン微小粒子。
【0066】
アニオン性及び中性リポソームは、当技術分野で周知であり(リポソームの製造方法の詳細な説明については、例えば、Liposomes: A Practical Approach, RPC New Ed, IRL press, 1990を参照)、ポリヌクレオチドを含む、広範囲の製造物を送達するために有用である。
【0067】
カチオン性脂質はまた、当業者に周知であり、遺伝子送達のために一般的に使用される。かかる脂質は、DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)としても知られるLipofectin Tm、DOTAP(1,2−ビス(オレイルオキシ)−3(トリメチルアンモニオ)プロパン)、DDAB(ジメチルジオクタデシル−アンモニウムブロミド)、DOGS(ジオクタデシルアミドログリシルスペルミン)、及びコレステロール誘導体、例えばDC−Chol(3 ベータ−(N−(N’,N’−ジメチルアミノメタン)−カルバモイル)コレステロール)を含む。これらのカチオン性脂質の記載は、EP187,702、国際公開第90/11092号、米国特許第5,283,185号明細書、国際公開第91/15501号、国際公開第95/26356号及び米国特許第5,527,928号明細書において見ることができる。遺伝子送達のためのカチオン性脂質は、中性脂質、例えば国際公開第90/11092号に記載されているDOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)と共に好ましくは使用される。
【0068】
カチオン性リポソームを含む製剤は、場合により他のトランスフェクション促進性化合物(transfection-facilitating compound)を含み得る。それらの多くは、国際公開第93/18759号、第93/19768号、第94/25608号及び第95/02397号に記載されている。それらは、核膜を通じたDNAの輸送を容易にするために有用なスペルミン誘導体(例えば国際公開第93/18759号参照)、並びに膜透過性化合物、例えばGALA、グラミシジンS及びカチオン性胆汁酸塩(例えば国際公開第93/19768号参照)を含む。
【0069】
金又はタングステン微小粒子は、国際公開第91/00359号又は第93/17706号に記載されているような遺伝子送達のために使用され得る。微小粒子被覆されたポリヌクレオチドは、皮内経路を介して、又は表皮内経路を介して、無針注射器具(「遺伝子銃(gene gun)」)、例えば米国特許第4,945,050号明細書、第5,015,580号明細書及び国際公開第94/24263号に記載されたものを用いて注射される。或いは、裸のDNAが直接的に注射、すなわち筋肉注射され得る。
【0070】
医薬組成物において使用されるDNA量は、例えば、DNAコンストラクト中で使用されるプロモーターの強度、発現される腫瘍抗原の免疫原性、投与対象の哺乳動物の状態(例えば体重又は年齢)、投与様式、及び製剤の種類に依存する。一般的に、約1μg〜約8mgの、好ましくは約1μg〜約1mgの(Graham, B. S.et al.J.Infect.Dis.194, 1650-1660(15-12-2006))、好ましくは約10μg〜約800μgの、及びより好ましくは約25μg〜約250μgの、治療的に有効な投与量が、ヒト成人に投与され得る。当該投与は、単回投与で達成され得るか、又は間隔を空けて繰り返される。
【0071】
投与経路は、DNAワクチン接種の分野において使用される任意の従来の経路である。一般的な指針として本発明の核酸は、非経口経路で、例えば皮内経路で、表皮内経路で、又は筋肉内経路で投与され得る。投与経路の選択は、選択される剤形に依存する。ブピバカイン(bupivacaine)と共に製剤化されるポリヌクレオチドは、筋肉へ有利に投与される。中性若しくはアニオン性リポソーム、又はカチオン性脂質、例えばDOTMA又はDC−Cholが使用されるとき、当該製剤は、筋肉内経路で又は皮内経路で有利に注射され得る。裸の形態のポリヌクレオチドは、筋肉内、皮内又は皮下経路で有利に投与され得る。さらに、エレクトロポレーションが、DNAの筋肉への送達を改善するためになされ得る(Mir et al. 1999, Proc Natl Acad Sci U S A. 96:4262-7)。
【0072】
癌治療の枠内において、核酸療法は好ましくは、非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤、例えばヒ素の投与、低用量の化学療法、又は全トランスレチノイン酸、又は他のレチノイン酸化合物、例えば9−シスRA、4HPR、13シスRA、CD437、並びに他の分化及びアポトーシス誘導剤、抗体又はヒアルロン酸によるCD44の活性化、造血増殖及び分化因子と組み合わされ得る。患者はこの誘導剤を、本発明の核酸と同一のワクチン組成物中に存在する形で、又は別の組成物の形態で存在する形で投与される。後者の場合、投与経路は、当該核酸に対して使用される投与経路と同一であってもよく、又は当該投与経路と異なってもよい。例えば、皮内経路又は筋肉内経路で核酸組成物が送達される一方で、誘導剤は経口で投与される。
【0073】
雑誌の記事又は要約、刊行された特許出願、公表された特許又は他の参考文献を含む、本明細書に引用された全ての参考文献は、当該引用された参考文献中に存在する全てのデータ、表、図及び文章を含めて、本明細書中に参照により完全に組み込まれる。
【0074】
異なる意味を有するが、用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」及び「から成る(consisting of)」は、本明細書中において交換可能に使用され、互いに置き換えられ得る。
【0075】
本発明は、以下の実施例及び図を考慮してさらに評価され得る。
【実施例】
【0076】
実施例
実施例1:DNAコンストラクト
5つのDNAコンストラクトが使用された:
− pCDNA3PML−RARαFrCコンストラクト(VVACS01とも呼ばれる)。国際公開第03/090778号の18ページ12行目〜19ページ2行目、実施例1bに記載されている。
− pCDNA3PML−RARαASFrCコンストラクト(VVACS04とも呼ばれる)。国際公開第03/090778号の19ページ、4〜15行目、実施例1bに記載されている。
− pVaxKanASコンストラクト(pVax14又はVVACS02とも呼ばれる)。配列番号1の配列から成る核酸の、pVax1ベクターへのクローニングにより産生された。
− pVaxPML−RARαKanASコンストラクト(pVax15又はVVACS03とも呼ばれる)。PML−RARα腫瘍抗原をコードする配列の、pVax14へのクローニングにより産生された。
− pVaxPML−RARαFrCコンストラクト、PML−RARαFrCの、pVax1ベクターへのクローニングにより産生された。
【0077】
pVax14(pVaxKanAS又はVVACS02)を、以下のプラマー対を用いた、pVax1のPCR増幅によって構築した:配列番号10及び11のプライマー対、並びに配列番号12及び13のプライマー対。NotI及びBamHIをクローニングサイトとして用いた。
【0078】
pVax15(pVaxPML−RARαKanAS又はVVACS03)を、配列番号14及び15のプライマーを用いて、pCDNA3PML−RARFrC由来のリーダーPML−RAR105bp配列を増幅することによって構築した。増幅された断片を、HindIII及びBamHIクローニングサイトを用いて、pVax14へとクローニングした。
【0079】
pCDNA3PML−RARαFrC(VVACS01)及びpVaxPML−RARαKanAS(VVACS03)を、COS細胞へと一時的にトランスフェクトした。RQ−PCR実験は、PML−RARαが両方のコンストラクトを用いて発現されることを実証した。
【0080】
実施例2:KanASは、APLマウスモデルの寿命を延長する。
Padua 他 (2003, Nature Medicine 9:1413-1417)に開示されたプロトコルを用いて、APLマウスモデルにおける異なるDNAコンストラクトの効果を試験した。簡潔に述べると、104個のAPL細胞を、FVB/Nマウスへと注射した。その後、5mg/日のATRAを21日間放出するATRAペレットを、トロカールを用いてマウスの頸部後方に導入した。DNA(2×50マイクログラムのプラスミド)を、ATRAペレットを導入した日後に、及び20日毎に、合計3回注射した。以下のDNAコンストラクトをマウスに注射した:
− pVaxKanASコンストラクト、pVax14とも呼ばれる:
− pCDNA3PML−RARαFrCコンストラクト(VVACS01);
− pVaxPML−RARαFrCコンストラクト;及び
− pCDNA3PML−RARαASFrCコンストラクト(VVACS04)。
【0081】
ATRAペレットの製造業者(Innovative Research, Sarasota, USA)から購入されたペレットを、プラセボとして使用した。
【0082】
マウスを2年間監視下に置き、Kaplan-Meier曲線を作図した。
【0083】
結果を、図2及び以下の表1に示す。log−ランク(Mantel-Cox)及びWilcoxon 検定をKaplan-Meier 曲線に適用した。いずれも統計的検定も、有意性の観点で同一の結果を導いた。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
したがって、ATRAと組み合わせて投与されるpVaxKanASコンストラクトは、APLマウスモデルにおいて保護効果を有する。約40%のマウスは死亡を免れた。この保護効果は、pCDNA3PML−RARαFrCコンストラクトの保護効果と同程度である。他方で、pVaxKanASコンストラクトの保護効果は、ATRA担体のものとは有意に異なる(p=<0.05、ATRA対ATRA+pVaxKanASについて)。
【0088】
PML−RARαKanASコンストラクト(pVax15とも呼ばれる)の効果を試験するために、別の実験を行った。本実験において使用されるAPL細胞がより高代継代且つより悪性であり、マウスが9カ月間監視下に置かれた以外は、プロトコルは上記と同一であった。
【0089】
結果を図3、及び以下の表2に示す。
【0090】
【表5】

【0091】
PML−RARαKanASコンストラクトも同様に、ATRA単体と比較して保護効果を有する(p=0.0009)。PML−RARαKanASコンストラクトは、pCDNA3PML−RARαFrCコンストラクトと少なくとも同程度に効果的である。
【0092】
実施例3:KanAS及びPMLRARαASFrCは、MDSマウスモデルの寿命を延長する。
Omidvar 他 (2007, Cancer Res. 67:11657-67)に記載されたMDSマウスモデルを、MDSにおけるKanASの効果を調べるために使用した。このマウスモデルは、BCL−2を有する変異体NRASを生じるマウスの使用に基づく。それらは、血小板減少症及び切迫した死を示唆する血小板数に減少するまで監視下に置かれた。
【0093】
ワクチン接種プロトコルは以下の通りである:2×50マイクログラムのDNAを診断後の日に投与した(0日目)。当該日付は、末梢血血小板数が正常値未満(<105/マイクロリットル)に減少した日に相当した。20日目及び40日目に、2×50マイクログラムのDNAを再度注射した。pVaxKanAS(VVACS02)で処置された6匹のマウスを用いて第一の実験を行った。図4に示される通り、KanAS単体は、未処置群と比較してマウスの寿命を延長した(p=0.003)。
【0094】
pVaxKanASで処置された10匹のマウス、及びpCDNA3PML−RARαFrC(VVACS04)で処置された16匹のマウスを用いて、第二の実験を行った。結果が図5に示される本実験によって、先の実験の枠組み内で得られる結果を確認した。
【0095】
ATRA、及びpCDNA3PMLRARASFrC又はVVACS04の併用投与の効果を試験するために、第三の実験を行った(図6)。マウスの4つの群に分けた:
− pCDNA3PMLRARαASFrCで処置されたマウス;
− ATRAで処置されたマウス;
− ATRA及びpcDNA3PMLRARαASFrCで処置されたマウス;及び
− 未処置マウス。
【0096】
血小板数が105/マイクロリットル未満に減少して疾患が発症までマウスを監視下に置いた。10mgのATRAを21日間放出するペレット(Innovative Research, Sarasota, USA)を用いて当該マウスを処置した。次の日に、2×50マイクログラムのDNAでマウスを処置し、その後20日の間隔を空けて2回処置し、合計で1匹のマウスあたり300マイクログラム与えた。
【0097】
結果的に、KanASを含むDNAコンストラクトは、単体で用いられる場合、及び非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤と組み合わされる場合のいずれにおいても、DNAワクチン接種において非常に有効であった。かかるKanASコンストラクトは、例えばAPL及びMDSの患者を疾患再発又は疾患増悪から保護するために、DNAワクチンとして使用され得る。
【0098】
実施例4:MDSマウスモデルにおける疾患の再発
BCL−2を有する変異体NRASを生じるトランスジェニックマウスは治癒されず、必然的に再発及び死亡するだろう。したがって、KanASを含むDNAコンストラクトの投与で誘導される免疫がどの程度続くかを決定するために、実験を行った。この目的のために、pVaxKanAS(pVax14,VVACS02)で処置されたMDSマウスのCD4+、CD44hi、CD62Lloプロファイル(図7)及びMac−2hi/Gr1loプロファイル(図8)を分析した。疾患の再発は、Mac1hi/Gr1lo群の増加によって追跡された。それは白血病幹細胞の減少のマーカーである。
【0099】
血球数を測定することによって、マウスの疾患増悪を追跡した。血小板が105/マイクロリットルに減少したとき、マウスを試験に採用し、2×50マイクログラムのpVax14(pVaxKanAS)DNAをワクチン接種した。20日間の間隔をあけて、DNAの注射を繰り返した。その後、最後の注射を40日目に行った。
【0100】
3回目の注射の後、マウスの疾患増悪を追跡した。より具体的には、Mac1/Gr1の状況をフローサイトメトリーによって(図8)、並びにCD44hi及びCD62Lloによって特徴付けられるメモリーT細胞の存在によって(図7)試験した。疾患の再発は約150日目に生じた。
【0101】
pVaxKanAS単体で処理されたMDSマウスは、野生型FVB/Nマウスと比較して、メモリーT細胞が3倍増加することが明らかとなった。さらに、白血病幹細胞(leukaemic initiating cell)群は、pVaxKanASを用いた処理で減少した(未処置マウスで約25%、対して処置マウスで約10%)。これらの結果は、KanASを含むDNAコンストラクトが、癌患者の治療のために効果的であることを裏付けた。
【0102】
実施例5:AMLマウスモデルにおける、KanASを含むDNAコンストラクトの効果
KanAS核酸を含む、又は含まない異なるコンストラクトの効果を、AMLマウスモデルにおいて評価した。
【0103】
当該コンストラクトを図10に示す。VVACS02及びVVACS04と呼ばれるコンストラクトは、本発明のKanAS核酸を「Flipper」領域に含む。より具体的には、VVACS02は上記のpVax14と呼ばれるベクターである。このベクターの配列を配列番号17で示す。
【0104】
図2及び11は、ATRAと、KAnASを含むDNAコンストラクトとの組み合わせが、マウスの寿命を延長することを示す。
【0105】
VVCAS02(pVax14又はpVaxKanAS)DNAを用いたDNAワクチン接種が、特異的なT細胞応答を引き起こすか否かを決定するために、Elispotアッセイ(Furugaki et al., Blood. 2010; 115:653-6)が使用された。当該結果を図12に示す。
【0106】
図13に示される通り、VVCAS02(pVax14又はpVaxKanAS)を用いたDNAワクチン接種は、病勢安定(stable disease)をもたらした。
【0107】
VVCAS02(pVax14又はpVaxKanAS)を用いたDNAワクチン接種が、病勢安定をもたらしたという事実は、Fan 他 (Nat Med. 2009;15:566-71)によって記載された通り、Firefly(商標)装置(Cell Biosciences)を用いてERKを定量化することによってさらに研究された。当該結果を以下の表3及び4に示す。
【0108】
【表6】

【0109】
VVCAS02(pVax14又はpVaxKanAS)の作用機序が特徴付けされた。
【0110】
第一に、FVNコントロールマウスにおけるメモリーT細胞及び4匹のMDS−AMLマウスにおけるメモリーT細胞を、VVACS02及びATRAを用いた処置の後の異なる日に評価した。メモリーT細胞群−CD4+、CD44hi、CD62Lloの増加が2回目のDNAワクチン接種後に観察された(データ示さず)。さらに、メモリーT細胞は、最後DNA注射後、約4〜5か月間高レベルを維持した。(データ示さず)。
【0111】
第二に、MyD88(TLR下流の遺伝子)の発現を、(i)コントロールのFVBNマウス、(ii)VVACS02及びATRAで、113日目又は142日目に処置した2匹のMDS−AMLマウス、及び(iii)別の薬剤で処置した1匹のMDS−AMLマウス、で評価した。113日目にVVACS02で処置したマウスにおいて、MyD88の発現増大及びTLRの活性化が観察された(データ示さず)。さらに、最後のDNA注射後約3.5か月で基礎発現が見られた。この効果は他のマウスにおいて観察されなかった。この結果は、Toll様受容体が、VVACS02の有益な効果の一因となることを示唆している。
【0112】
要約すると、実施例5に示した実験データは、VVACS02がMDSモデルにおいて病勢安定をもたらすことを実証する。それはまた、好適な免疫応答を生じさせる。DNAアジュバントを用いない治療、例えばATRA単体での治療とは対照的に、その発現が上方制御される、下流分子のMYD88を測定することによって示された通り、VVACS02が作用する機構が、Toll様受容体が関与するDNAアジュバントとしてであることをこれらの結果は示唆する。
【0113】
実施例6:MDSマウスモデルにおける、KanASを含むDNAコンストラクト、ATRA及び5−アザシチジンの組み合わせの効果
【0114】
KanAS、ATRA及び5−アザシチジンの組み合わせのMDSに対する効果を試験するために、Omidvar 他 (2007, Cancer Res. 67:11657-67)に記載されたMDSマウスモデルが使用された。
【0115】
1mg/mlの5−アザシチジン溶液を100マイクロリットル、診断日に、そしてその後マウスが死亡するまで、月曜日、水曜日及び金曜日に、IPでマウスに注射した。
【0116】
ATRAを10mg、21日間放出ペレットで投与した。
【0117】
ワクチン接種プロトコルは以下の通りであった:100マイクログラムのDNA(VVACS02又はpVax14又はpVaxKanAS)を、診断日後に投与した(0日目)。その日は、末梢血の血小板数が正常未満に減少した日であった(<105/マイクロリットル)。20日目及び40日目に、2×50マイクログラムのDNAを再度注射した。
【0118】
12回の5−アザシチジン注射の後に、マウスを4つの群にランダムに分けた:
− 5−アザシチジン(n=5)
− 5−アザシチジン+ATRA(n=4)
− 5−アザシチジン+VVACS02 DNA(n=4)
− 5-アザシチジン+ATRA+VVACS02 DNA(n=4)
【0119】
結果を以下の表5に示す。
【0120】
【表7】

【0121】
KanAS、ATRA及び5−アザシチジンの組み合わせはしたがって、MDSマウスモデルの寿命を延長した。
【配列表フリーテキスト】
【0122】
配列表の説明
配列番号1は、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に相補的な配列を含む、KanAS核酸の配列を示す。
【0123】
配列番号2は、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に相補的な配列を含み、及びpVaxプラスミドの断片と相補的な配列をさらに含む、KanAS核酸の配列を示す。
【0124】
配列番号3は、PML−RARα抗原をコードする配列、及びカナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片と相補的な配列を含む、PML−RARαKanAS核酸の配列を示す。
【0125】
配列番号4は、PML−RARα抗原をコードする配列、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片と相補的な配列、及びpVaxプラスミドの断片と相補的な配列を含む、PML−RARαKanAS核酸の配列を示す。
【0126】
配列番号5は、PML−RARα抗原をコードする配列を示す。
配列番号6は、PML−RARαASの配列を示す。
配列番号7は、pVax14プラスミドの断片を示す。
配列番号8は、pVax15プラスミドの断片を示す。
配列番号9は、空のpVax1ベクターの配列を示す。
【0127】
配列番号10〜13は、pVax14プラスミドを構築するために使用されるプライマーを示す。
配列番号14及び15は、pVax15プラスミドを構築するために使用されるプライマーを示す。
【0128】
配列番号16は、FrC配列を示す。
配列番号17は、pVax14プラスミドの完全配列を示す。flipper領域は、配列番号2のKanAS配列を含む。
配列番号18〜23は、免疫原性ポリペプチドの配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAワクチン接種における使用のための、カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に相補的なアンチセンス配列を含む、単離された核酸。
【請求項2】
カナマイシン耐性タンパク質をコードする配列の断片に相補的なアンチセンス配列を含む、単離された核酸であって、前記アンチセンス配列が:
a)配列番号9の断片に相補的である配列であって、前記断片が、配列番号9の1226〜2020位に位置するヌクレオチドの内、少なくとも50個の連続的ヌクレオチドを含む、前記配列;
b)配列番号1又は2の配列
c)配列番号1又は2と少なくとも80%同一である配列;
d)配列番号1又は2の、少なくとも50個の連続的ヌクレオチドの断片;及び
e)哺乳動物において免疫応答を引き起こすことができる、(a)又は(b)の誘導体
から成る群から選択される配列から成る、前記単離された核酸。
【請求項3】
免疫原性ポリペプチドをコードする配列をさらに含む、請求項1又は2に記載の核酸。
【請求項4】
前記免疫原性ポリペプチドが腫瘍抗原である、請求項3に記載の核酸。
【請求項5】
前記腫瘍抗原をコードする配列が、配列番号5のPML−RARα配列と少なくとも80%同一である、請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
a)配列番号3又は4の配列;
b)配列番号3又は4と少なくとも80%同一である配列;
c)配列番号3又は4の内、少なくとも50個の連続的ヌクレオチドの断片;及び
d)哺乳動物において免疫応答を引き起こすことができる、(a)の誘導体
から成る群から選択される配列を含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項7】
癌、良性腫瘍若しくは感染症の治療及び/又は予防における使用のための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項8】
癌の治療及び/又は予防において、非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤と組み合わせて、同時に又は連続的に使用されるための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項9】
前記癌が、リンパ性白血病、骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病(APL)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄単球性白血病(CMML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、小児急性リンパ性白血病(ALL)、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)及び多発性骨髄腫(MM)から成る群から選択される血液癌である、請求項7又は8に記載の核酸。
【請求項10】
前記癌が、上皮性悪性腫瘍、腺癌、非上皮性悪性腫瘍、黒色腫、中皮腫及び芽細胞腫から成る群から選択される固形腫瘍である、請求項7又は8に記載の核酸。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項12】
(i)請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸、又は請求項11に記載のベクター;
(ii)生理学的に許容される担体;及び、場合により
(iii)非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤
を含む、医薬組成物。
【請求項13】
(i)生理学的に許容される担体中、請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸、又は請求項11に記載のベクターを含む、第1の医薬組成物;及び、
(ii)生理学的に許容される担体中、非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤を含む、第2の医薬組成物
の組み合わせ。
【請求項14】
前記非免疫抑制性の腫瘍細胞アポトーシス誘導剤が、レチノイド化合物又はヒ素関連性化合物である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の核酸、請求項12に記載の医薬組成物、又は請求項13に記載の組み合わせ。
【請求項15】
前記レチノイド化合物がATRAである、請求項14に記載の核酸、請求項14に記載の医薬組成物、又は請求項14に記載の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−521749(P2012−521749A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501318(P2012−501318)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054039
【国際公開番号】WO2010/109016
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(500248467)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム) (19)
【出願人】(510162850)ユニベルシテ パリ ディデロ−パリ 7 (2)
【Fターム(参考)】