説明

癌または前癌状態の治療及び特にレーザー治療のための装置と方法

癌または前癌状態の治療のための装置であって、その装置が治療光源(2)を含むものにおいて、前記光源(2)が1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線を放射するように設計されていることを特徴とする装置。前記光源(2)は好ましくはパルス型光線を出力するためのレーザーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腫瘍学の分野に関し、かつ癌または前癌状態を治療光線、特に必ずしも熱的ではないレーザービームにより治療するための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、癌は初めは正常細胞であるが、癌細胞と呼ばれる一般的に異常な形態と挙動を持つ細胞の出現を含む細胞過程である。これらの癌細胞は正常細胞を犠牲にして育ち、癌腫瘍を形成するようにそれ自体配置する。即ち、癌組織は:
− 実質的に構造化された構成体でかつ癌腫瘍に対応して配置された実際の癌細胞、及び
− 支質、すなわち癌腫瘍のための支持と栄養物を提供する結合組織、
により形成される。
【0003】
癌の発現は株細胞からの初期クローンの発現から転移散在までの種々の既知の段階を通過する。加えて、実際の癌の出現前に、被験者はいわゆる前癌状態を経る。世界保健機関は二つの形式の前癌状態を区別する:
− 癌の著しく高い危険と関連する臨床的状態である前癌状態、
− 前癌性病変、すなわち組織病理学的異常、それらはもしそれらが充分長い時間持続するなら癌の出現をもたらすことができる。これらの前癌性病変はまた形成異常と呼ばれる。
【0004】
癌組織または前癌性病変を治療するために、現在、腫瘍学ではいわゆる光力学治療法(PDT)を使用することが既知である。この比較的新しい方法は癌細胞を光化学反応により破壊することを意図している。この方法は、第一段階で、治療される領域(癌組織または前癌性病変)を光増感製品でマーキングすることからなり、次いで、第二段階で、治療される領域を、好ましくは光増感製品により吸収される適切な波長を持ちかつ光増感製品を活性化しかつ癌細胞のその部位での破壊を確実とする細胞毒性化合物を生成することを可能とするレーザービームで照射することからなる。治療される癌または前癌状態のタイプに依存して、光増感製品は静脈内に注射され、経口投与されまたは例えば光加齢等に起因する皮膚の前癌性病変である皮膚癌の治療、光線角化症の治療等では治療される領域の表面に直接適用されることができる。
【0005】
光力学治療法の利点の一つは治療される領域に殆どまたは全く熱的影響を起こさず、従って破壊的ではない低出力レーザー(“非熱的”レーザー)を使用する可能性にある。
【0006】
しかし、光力学治療法は多数の不利を持つ。第一の不利は患者の光増感と関連し、それは比較的長い期間、一般的には約48時間の間、如何なる太陽光露出も避けることを必要とする。第二の不利は高価な医薬(光増感製品)の使用と関連し、それは特にこの治療を効果的とするために数回繰り返されなければならないのでこの治療を高価とする。第三の不利はある患者での光増感製品の注射または適用と関連した副作用の出現にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は癌または前癌状態の治療のための新しい解決策を提供することを意図しており、それは“非熱的”治療光線を用いるが、光増感製品の使用を必要としないという、PDTの利点を持つ。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明はそれ自身既知の態様で治療光源を含む癌または前癌状態の治療のための装置に関する。
【0009】
本発明の特徴によれば、光源は1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線を放射するように設計される。
【0010】
本発明はまた、癌または前癌状態を治療するための方法に関し、そこでは治療される部位が好ましくはPDTの場合に使用されるような光増感医薬の前投与なしに1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線で照射される。
【0011】
治療装置は好ましくは次の追加的特徴の一つ及び/または他により、単独でまたは互いに組合せて、特徴付けられる:
− 光源は治療パルス型光線を放射するように設計されている;
− 各パルスの時間は調整されることができる;
− 各パルスの時間は0.5秒未満、好ましくは少なくとも0.1秒と0.3秒の間の値に設定されることができる;
− 二つのパルス間の時間間隔は調整可能である;
− 二つのパルス間の時間間隔は0.5秒を越える値に、好ましくは0.9秒を越えるかまたはそれに等しい値に設定されることができる;
− 治療光線の放射時間は調整可能である;
− 各放射におけるパルスの数は調整可能である;
− 各放射におけるパルスの数は少なくとも50と300の間に設定されることができる;
− 治療光線の出力は調整可能である;
− 治療光線の出力は少なくとも1Wと5Wの間に設定されることができる;
− パルスの出力密度は少なくとも30W/cmと300W/cmの間に設定されることができる;
− 光源はレーザー光源である;
− レーザー光源はラマンファイバーレーザーを含む;
− ラマンファイバーレーザーは励起レーザーダイオード、イッテルビウム−ドープドファイバーレーザー、及びイッテルビウム−ドープドファイバーレーザーにより発生されたビームの波長を変換(transpose)することを意図したラマン変換器を含む。
【0012】
本発明による治療法は好ましくは次の追加的特徴の一つ及び/または他により、単独でまたは互いに組合せて、特徴付けられる:
− 治療光線は有利にはパルス型ビームである;
− 治療される部位のレベルでのレーザービームの出力密度(d)は好ましくは30W/cmと300W/cmの間にあり、より好ましくは100W/cmのオーダーにある;
− パルスフルエンスは好ましくは1J/cmと30J/cmの間にある;
− 各放射に対する合計フルエンスは6000J/cmと90000J/cmの間にあり、より好ましくは30000J/cmのオーダーにある;
− 二つの連続パルス間の時間(T)は0.5秒を越え、特に0.9秒を越えるかまたはそれに等しい;
− 各放射中におけるパルスの数(N)は好ましくは50と300パルスの間にある;
− 各パルスの時間(t)は好ましくは0.5秒未満であり、より好ましくは0.1秒と0.3秒の間にある;
− 治療される部位の照射作業は各照射作業間に少なくとも一日の休みを持って多数回繰り返される。
【0013】
前述の波長と出力特性を持つ治療光線の使用はPDTの場合におけるような医薬の使用を必要とすることなく、前癌状態または癌の治療に満足すべき結果を得ることを可能とすることが有利にかつ驚くべきことに示された。従って、前述の出力と波長範囲のこの治療光線の作用が癌細胞中に含まれた酸素から直接一重項酸素を発生させること、及び光線により活性化された医薬を伴うPDTにより生成された壊死に比肩しうる態様で、癌細胞の壊死を十分な量で生成することを可能とするであろうことを憶測することができる。しかし、本発明者らはこの説明に拘束されない。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は本発明の治療装置及びその使用の好適実施態様の以下の説明からより明らかとなる。この説明は本発明による治療装置の概括図を示す添付図1を参照した非限定例として提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付図1の図を参照すると、癌または前癌状態を治療するための装置1はファイバー出力200、及び適合インターフェース3を持つ光源2を本質的に含む。適合インターフェース3は一般に、光源2により出力200で発生された治療光線(L)を治療される部位に向けることを可能とする。
【0016】
適合インターフェース3は当業者にはそれ自体既知であり、従ってこの説明では詳細に説明されないであろう。それはPDTの文脈で実施される態様に比肩しうる態様で、治療される癌または前癌状態のタイプに基づいて当業者により選ばれる。以下は本発明の非限定的及び非網羅的例である:
− 皮膚科学または外科では、適合インターフェース3は実行医が治療される癌腫瘍または前癌性病変にできるだけ接近してビームをもたらすことを可能とするハンドピースである;
− ORL及び眼科学では、適合インターフェース3はハンドピース、生体顕微鏡または観測レーザーを持つスリットランプであることができる;
− 胃腸病学、呼吸器学、泌尿器科学及び婦人科学では、適合インターフェース3は内視鏡である。
【0017】
本発明の第一特徴によれば、適合インターフェース3にかかわらず、光源2は出力200で1.2μmと1.3μmの間の放射波長を持つ治療光線を放射するように設計される。
【0018】
この治療光線は好ましくはコーヒーレント光線(レーザー)である。それにもかかわらず、別の実施態様では、治療光線は十分な出力を持つ光源により発生された後に1.2μmから1.3μmの範囲の周波数成分のみを保持するように光学ろ過されたインコーヒーレント光線であることもできる。
【0019】
図1を参照すると、装置1の光源2はまた、実行医が主ビーム(L)放射パラメーター(特に出力、パルスの数、各パルスの時間、二つのパルス間の時間間隔)を調整することを可能とする手段(208,209,210,S1,S2,S3,S4,S5)を含み;これらの調整手段は以下により詳細に説明されるであろう。
【0020】
装置1はまた、制御手段4を含み、それは実行医が設定された放射パラメーターに従って治療光線の活性化を制御することを可能とする。これらの制御手段4は例えば作動ペダルまたはいずれかの他の均等な手動活性化手段を含む。
【0021】
治療光線がレーザービームであるとき、その最も一般的な意味において、本発明は特定の形式のレーザー光源2に限定されず、前述の波長条件を満足するレーザービームの放射を可能とし、かつ当業者に既知のいずれのレーザー光源も使用されることができる。特に、非網羅的態様で、以下の形式のレーザー光源を使用することができる:
− 連続またはパルス型ラマンファイバーレーザー;
− ネオジム(Nd)−ドープド固体またはファイバーレーザーにより、イッテルビウム−ドープド固体またはファイバーレーザーにより励起された、またはダイオード励起されたパルスまたは連続型Cr:フォルステライト(Cr+:MgSIO)レーザー;
− 別のレーザー光源により励起されたパルスまたは連続型パラメトリック発振器;
− パワーレーザーダイオード;
− 別のレーザー光源により励起された固体連続またはパルス型ラマン変換器またはレーザー。
【0022】
上述のレーザー中、好ましくはラマンファイバーレーザーは以下の理由のため使用される:
− レーザーのファイバー出力はビームの出力200への輸送を容易とする;
− 発生されたレーザービームは良好なスペクトル及び空間的品質を持つ;
− レーザー光源2は小型で有利である;
− レーザー光源2は信頼性がありかつどのようなメンテナンスも必要としない;
− この形式のレーザー光源はレーザーの品質と製造費用の間の最良の妥協を提供する。
【0023】
1.2μmと1.3μmの間の波長を持つラマンファイバーレーザーの好適実施態様
図1を参照とすると、光源2はラマンファイバーレーザーであり、910−930nmまたは970−980nmの波長を持つ励起レーザーダイオード201、イッテルビウム(Yb)−ドープドファイバーレーザー202、及び1260−1270nmの波長を持つレーザービームを得るためにファイバーレーザー202の出力でのビームの波長を変換することを意図したラマン変換器204を含む。
【0024】
イッテルビウム(Yb)−ドープドファイバーレーザー202は芯がイッテルビウムによりドープされた二重被覆ファイバー205及びファイバー中に光刻印された入力と出力の二つのブラッグ格子207aからなる。レーザー202のファイバーの出力203はラマン変換器204の入力に直接溶接される。
【0025】
ラマン変換器204は芯が燐でドープされたファイバー206及び1260−1270nmの範囲の波長に設定された入力と出力の二つのブラッグ格子207bを含む。この変換器204は単一工程でレーザー202の放射波長の変換を実施可能とする。
【0026】
別の代替例において、前述のファイバーとは異なるモノモードファイバーを使用することができ;この場合ファイバーの性質及び特に使用されるドーピング剤の形式に従ってラマン変換器204の変換の工程数を適合させることが適切である。
【0027】
ブラッグ格子をモノモードカップラーで置換することもまた可能である。
【0028】
図1に関して上述した1.2μmと1.3μmの間の波長で治療レーザービームの放射を可能とするラマンファイバーレーザーはそれ自体新規であり、従って癌または前癌状態の治療の特定分野以外の他の用途(医学または非医学)で有利に使用されることができる。
【0029】
図1を参照すると、レーザービームの出力は低いロックインレートを持つカップラー208及び電子制御手段210に連結されたフォトダイオード209を介して調整される。電子制御手段210はまた、その入力で第一の連続設定点信号(S1)を受ける。この設定点信号の値は実行医により(例えば電位差計等により)手動で設定され、それは連続モードのレーザービームの設定点出力を特徴付ける。この設定点値(信号S1)から、電子制御手段210は励起ダイオード201の電流にその出力で直接作用することにより放射されるレーザービームの出力を自動的に設定する。従って電子制御手段210は実行医が治療レーザービームの出力を予め規定された値(設定点信号S1)に手動で設定することを可能とする。
【0030】
加えて、電子制御手段210はその入力で四つの他の連続設定点信号S2,S3,S4及びS5を受け、それらの値は実行医により手動で設定される:
− 設定点信号S2は例えば操作モード(連続またはパルス型)を特徴付ける;
− 設定点信号S3は例えばパルス型モードの場合、治療レーザービームの各パルスの時間を特徴付ける;
− 設定点信号S4は例えばパルス型モードの場合、二つの連続パルス間の時間間隔を特徴付ける;
− 設定点信号S5は制御手段4の各作動時の治療レーザービームの放射の時間(または言い換えればパルス型モードの場合のパルスの数)を特徴付ける。
【0031】
電子制御手段210はかくして放射されるレーザービームの物理的特性(出力、モード(パルスまたは連続型)、放射時間、及びパルス型モードの場合には:各パルスの時間及び各パルス間の時間間隔)を自動的に設定するために、設定点信号S1からS5及びカプラー208とフォトダイオード209により抽出された信号に基づき励起ダイオード201の電流を制御する。
【0032】
治療法
本発明の装置は次のように実施される:
工程1:実行医は治療レーザービームの放射パラメーターを手動で設定する(出力、モード(パルスまたは連続型)、放射時間(またはパスル型モードの場合のパルスの数)、及びパルス型モードの場合には:各パルスの時間及び二つのパルス間の時間間隔)。
【0033】
工程2:適合インターフェース3により、実行医は非常に正確でかつそれ自体既知の態様で、治療される癌または前癌状態部位に関してレーザービームの空間的位置を調整する。
【0034】
工程3:整合性が完全であるとき、実行医は制御ペダル4を作動させ、それは予め規定された放射パラメーターを持つ治療ビームの放射(治療される部位の照射)を起動する。
【0035】
目標部位が治療されるとき、実行医は腫瘍または癌または前癌性病変の全表面を覆うのに必要な回数だけ別の治療される部位に工程2と3の作業を繰り返す。
【0036】
上述の作業は実行医によりケースバイケース基準で決定された治療プロトコルに従う頻度で繰り返される。
【0037】
本発明の治療法は悪性または良性腫瘍の治療、前癌状態の治療、及び腫瘍の術後、照射後及び/または化学療法後治療のために使用されることができる。この治療は外科、化学療法または照射に対する補足として実施されることができる。
【0038】
この治療装置は光線により接近可能な全ての前癌性病変(形成異常、上皮内癌)または癌を治療するために使用されることができる:ただ単に部位の位置により適切な適合インターフェースを選択することが必要なだけである。特に、この治療装置は現在PDTにより治療される全ての前癌性病変(形成異常、上皮内癌)または癌を治療するために使用されることができる。非限定的及び非網羅的例として、治療されることができる種々の癌は:
− ORLにおいて:口腔の癌、甲状腺癌、咽頭喉頭部癌、喉頭癌、鼻咽頭癌;
− 消化系:食道癌、バレット食道、胃癌、結腸及び直腸癌、膵臓癌、胆嚢癌;
− 呼吸系:呼吸経路または肺の全ての既知の形式の癌;
− 泌尿器科学において:腎臓癌、睾丸癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌;
− 婦人科学において:(子宮)頸癌、(子宮)体癌(子宮癌)、膣癌;
− 皮膚科学において:紫外線角化症、黒色腫、基底細胞癌、上皮内新形成及び扁平上皮癌;
を含む。
【0039】
癌または前癌性病変の形式にかかわらず、連続レーザービームよりむしろパルス型レーザービーム(L)を使用することが好ましい。何故なら、これは熱傷組織の危険を減らすことを可能とするからである。
【0040】
より詳細には、癌または前癌性病変の形式にかかわらず、本発明の治療法及び治療装置は以下の技術的特徴の一つ及び/または他を持つことが好ましい。
【0041】
治療される部位のレベルでのレーザービームの出力密度(d)は好ましくは30W/cmと300W/cmの間にあり、より好ましくは100W/cmのオーダーにある。ここで出力密度(d)は以下の式により規定されることは注目されたい:
d=P/S
ここでPはパルス出力を表し、Sは治療される部位のレベルでのレーザービームにより形成されるスポットの表面を表す。
【0042】
パルスフルエンスは好ましくは1J/cmと30J/cmの間にある。ここでパルスフルエンス(F)は以下の式により規定されることは注目される:
F=d×t
この式でdはパルス出力密度を表し、tはパルス持続時間を表す。
【0043】
スポットの表面(S)はファイバーの出力でのレーザービームの直径、ビームの“ウエスト”及びレーザーのファイバー出力と治療される部位の間の距離に依存する。レーザービームの所定のウエスト及び直径に対しては、レーザーのファイバー出力が遠いほど、スポットの表面は大きくなるであろうし、かつ出力密度とパルスフルエンスはより低くなるであろう。
【0044】
各放射に対する合計フルエンスは好ましくは6000と90000J/cmの間にあり、より好ましくは30000J/cmのオーダーにある。ここで各放射に対する合計フルエンス(FT)は次の式により規定されることは注目されたい:
FT=F×N
ここでNは各放射におけるパルスの数を表し、Fはパルスフルエンスを表す。
【0045】
二つの連続パルス間の時間(T)は組織のいかなる過熱も防ぐのに十分な大きさでなければならない。二つの連続パルス間の時間(T)は好ましくは0.5秒を越え、特に0.9秒を越えるかまたはそれに等しい。
【0046】
特に、患者を極めて長い間固定しないために各放射における治療時間を制限しながら前述のフルエンス値に従うことを可能とする満足すべき妥協は好ましくは50と300パルスの各放射におけるパルスの数(N)と0.1秒と0.3秒の間の各パルスの時間(t)により得られた。
【0047】
特に、治療装置は、好ましくはパルス出力が1Wと5Wの間にあり、より好ましくは3Wのオーダーにあり、かつ装置の出力でのパルス出力密度が30W/cmと300W/cmの間にあり、より好ましくは100W/cmのオーダーにあるビームにより特徴付けられる。
【0048】
治療プロトコルは特に腫瘍または癌または前癌病変の大きさ並びに患者に対する希望の固定時間に従って実行医により規定される。
【0049】
以下は治療プロトコルの例である:一度に多数の日の間毎日または一度に多数の日の間3日毎に。いずれの場合でも、各照射作業間に少なくとも一日の休みをとって、治療される部位を多数回照射する作業を繰り返すことが好ましい。
【0050】
それにもかかわらず、有利には本発明の治療が有害な副作用、及び特に組織の過熱を起こさないことが可能であることは強調されるべきである。従って、前述のプロトコル例のように、各作業間に1日の休みを設ける必要なしに、一日の内に治療される部位を照射する多数の連続作業を実施することにより治療プロトコルの合計時間を短くすることが望ましい。
【0051】
しかし、本発明は単に指標としてのみ与えられている前述のパラメーター及び使用の条件に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明による治療装置の概括図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌または前癌状態の治療のための装置であって、その装置が治療光源(2)を含むものにおいて、前記光源(2)が1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線を放射するように設計されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記光源(2)がパルス型治療光線を放射するように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各パルスの時間が調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
各パルスの時間が0.5秒未満の値に、好ましくは少なくとも0.1秒と0.3秒の間の値に設定されることができることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
二つのパルス間の時間間隔が調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項6】
二つのパルス間の時間間隔が0.5秒を越える値に、好ましくは0.9秒を越えるかまたはそれに等しい値に設定されることができることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
治療光線の各放射におけるパルスの数または放射の時間が調整可能であることを特徴とする請求項1から6の一つに記載の装置。
【請求項8】
各放射におけるパルスの数が少なくとも50と300の間に設定されることができることを特徴とする請求項2及び7に記載の装置。
【請求項9】
治療光線の出力が調整可能であることを特徴とする請求項1から8の一つに記載の装置。
【請求項10】
治療光線の出力が少なくとも1Wと5Wの間に設定されることができることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
パルスの出力密度が少なくとも30W/cmと300W/cmの間に設定されることができることを特徴とする請求項2及び9に記載の装置。
【請求項12】
光源(2)がレーザー光源であることを特徴とする請求項1から11の一つに記載の装置。
【請求項13】
レーザー光源(2)がラマンファイバーレーザーを含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
ラマンファイバーレーザーが励起レーザーダイオード(201)、イッテルビウム−ドープドファイバーレーザー(202)、及びイッテルビウム−ドープドファイバーレーザーにより発生されたビームの波長を変換することを意図したラマン変換器(204)を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
癌または前癌状態を治療するための方法において、治療される部位が1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線により照射されることを特徴とする治療方法。
【請求項16】
治療光線がレーザービームであることを特徴とする請求項15に記載の治療方法。
【請求項17】
治療光線がパルス型であることを特徴とする請求項15または16に記載の治療方法。
【請求項18】
パルスフルエンスが1J/cmと30J/cmの間にあることを特徴とする請求項17に記載の治療方法。
【請求項19】
二つの連続パルス間の時間(T)が0.5秒を越えることを特徴とする請求項17または18に記載の治療方法。
【請求項20】
二つの連続パルス間の時間(T)が0.9秒を越えるかまたはそれに等しいことを特徴とする請求項17または18に記載の治療方法。
【請求項21】
各放射におけるパルスの数(N)が50と300パルスの間にあることを特徴とする請求項17から20の一つに記載の治療方法。
【請求項22】
各パルスの時間(t)が0.5秒未満であることを特徴とする請求項17から21の一つに記載の治療方法。
【請求項23】
各パルスの時間(t)が0.1秒と0.3秒の間にあることを特徴とする請求項17から21の一つに記載の治療方法。
【請求項24】
治療される部位のレベルでの治療光線の出力密度(d)が30W/cmと300W/cmの間にあることを特徴とする請求項15から23の一つに記載の治療方法。
【請求項25】
治療される部位のレベルでの治療光線の出力密度(d)が実質的に100W/cmに等しいことを特徴とする請求項15から23の一つに記載の治療方法。
【請求項26】
各放射に対する合計フルエンスが6000J/cmと90000J/cmの間にあることを特徴とする請求項15から25の一つに記載の治療方法。
【請求項27】
各放射に対する合計フルエンスが実質的に30000J/cmに等しいことを特徴とする請求項15から25の一つに記載の治療方法。
【請求項28】
治療される部位を照射する作業が各照射作業間に少なくとも一日の休みを持って多数回繰り返されることを特徴とする請求項15から27の一つに記載の治療方法。
【請求項29】
光増感医薬が患者に投与されないことを特徴とする請求項15から28の一つに記載の治療方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−517559(P2007−517559A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548237(P2006−548237)
【出願日】平成17年1月10日(2005.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000128
【国際公開番号】WO2005/077460
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506242739)オプティカル システム アンド リサーチ フォー インダストリー アンド サイエンス オシリス (4)
【出願人】(506242740)ユニヴェルシテ デ シアンス エ テクノロジス ドゥ リール (1)
【Fターム(参考)】