説明

癌治療の標的としてのDUB3

Rho、Arf、Rab、Ran又はRapファミリータンパク質の活性化を調節する方法であって、前記試料にUSP−17調節因子、例えばDUB−3の発現又は活性化阻害剤を投与するステップを含む方法が記載される。本発明は、転移癌及び他の状態の治療におけるUSP−17調節因子の使用を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本出願は、炎症性疾患、感染性疾患及び腫瘍性疾患の治療方法並びにこうした治療で使用するための組成物に関する。詳細には、本出願は、原発腫瘍を有する動物における転移発生など、細胞浸潤を伴う又は細胞浸潤の結果生じる疾患を阻害又は治療する方法、急性慢性炎症を低減する方法、及び感染症の全身への拡散を低減する方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
疾患の転移拡散は、癌治療における予後不良因子である。多数の既存の化学療法戦略は、原発腫瘍での治療においてはある程度成功しているものの、こうした戦略は、転移形成の予防及びこうした転移が生じた場合のこの治療においては成功しないことが多い。したがって、原発腫瘍からの転移発生を防ぎ、転移が生じた時と場所においてこれを根絶する新たな戦略を開発する差し迫った必要がある。
【0003】
脱ユビキチン化(結合したタンパク質からのユビキチンモノマー又はユビキチン鎖の除去)は、2つの主なサブファミリー、すなわち、ユビキチナチン(ubiquitinatin)−プロセシングプロテアーゼ(UBP)及びユビキチンカルボキシル末端加水分解酵素(UCH)に分けられるシステインプロテアーゼにより行われる(Wing 2003年による概説)。脱ユビキチン化酵素のファミリーであるDUB(脱ユビキチン化酵素)は、ユビキチン特異的プロセシングプロテアーゼ(USP)サブファミリーUSP−17に属し、造血細胞で特異的に発現される最初のメンバーが同定された(Zhuら、1996a)。以来、2004年のBurrows及び同僚によるヒトメンバーDub−3を含むさらに4種類のDUBファミリーメンバーが同定されている(Zhuら、1997年;Baekら、2004年;Baekら、2001年;Burrowsら、2004年;Saitonら、2000年)。Dub−3は、様々な悪性細胞株で発現されており、癌の病因におけるDub−3の潜在的役割を示唆する(Burrowsら、2004年)。これまでに、他の脱ユビキチン化酵素が発癌経路で役割を果たすことが示されている。脱ユビキチン化酵素Unp(偏在核タンパク質)、VDU2(pVHL相互作用脱ユビキチン化酵素2)及びHAUSP(ヘルペスウイルス関連ユビキチン特異的プロテアーゼ)は、腫瘍抑制因子Rb(網膜芽細胞腫タンパク質)、pVHL(von Hippel−Lindau)及びp53とそれぞれ相互作用することが示されている(DeSalle LMら、2001年;Li Zら、2002年;Li Mら、2002年)。
【0004】
最近、Rasスーパーファミリーメンバーの活性は、翻訳後プロセシングにより制御され得、GTP−GDPサイクリングにだけ制御され得るわけではないことが見出された。Rasスーパーファミリーメンバーは、C末端CAAXモチーフ(Aは脂肪族アミノ酸、Xは任意のアミノ酸)を有し、このC末端CAAXモチーフに対する翻訳後修飾は、もう1つのGTPアーゼ活性化様式に関与する。翻訳後修飾は、一連の酵素作用、すなわち、細胞質プレニルトランスフェラーゼ、小胞体(ER)プロテアーゼRCE1(Ras変換酵素)、及びER酵素ICMT(イソプレニルシステイン特異的(directed)カルボキシルメチルトランスフェラーゼ)により実現される。(Clark 1992年;Casey Seabra 1996年;Boyartchukら、1997年;Diaら、1998年)。これらの翻訳後修飾の産物は、最終的に完全なGTPアーゼ活性をもたらす、親水性GTPアーゼ分子のC末端における疎水性ドメインである。
【0005】
20〜30kDaの単量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質のRasスーパーファミリーは、150を超える既知のヒトメンバーを有し、5つのファミリー、すなわち、Ras、Rho、Arf、Rab、及びRanに分けられ(Wennerbergら、2005年)、メンバーのそれぞれが細胞に対する異なる効果を有し、異なる制御作用を受ける。例えば、Rasは、増殖因子を介して増殖を制御するが、Rhoファミリーは増殖因子を介して増殖を制御しない。さらに、Rasは、ファルネシル化により制御されるが、Rasファミリーのメンバー全てがファルネシル化により制御されるわけではない。例えばRap−1は、ゲラニルゲラニル化により制御される。さらに、Rhoファミリーのタンパク質は、ゲラニルゲラニル化により制御される。また、Rhoファミリーはアクチン細胞骨格を制御し、Rap−1は接着を制御するが、Rasは制御しない。
【0006】
Rhoファミリーは、細胞運動及び腫瘍転移に最も関連がある。Rhoファミリーのうち、RhoA、Rac−1及びCdc42は、癌の浸潤に最も関連したGTPアーゼである。癌細胞の浸潤及び転移は、3つの細胞プロセス、すなわち、細胞接着、細胞遊走及び細胞外マトリックス分解酵素の産生により制御され、これら3つのプロセスは、全てRasスーパーファミリーGTPアーゼにより誘導される(それぞれ、Katagiriら、2000年;Edenら、2002年;Zhugeら、2001年)。
【0007】
国際公開第2005/049818号パンフレットに記載の通り、本発明者らは、恐らくRcel制御を介したRasプロセシング及び活性化の制御因子としてDUB−3を同定した。特に、本文献は、DUB−3を増大する薬剤が、Ras活性化の低下に有利となり得、こうした薬剤は癌治療に使用され得ることを開示する。
【0008】
上述の通り、Rasスーパーファミリーの異なるファミリーは、この制御及び効果を含め、多くの側面で互いに大きく異なる。したがって、Rasスーパーファミリーの1つのファミリーの制御経路の同定は、こうした制御経路が該スーパーファミリーの他のファミリーに当てはまることを示すものではない。
【0009】
[発明の概要]
本明細書では、Rasスーパーファミリーのファミリーの制御に多くの違いがあるにもかかわらず、本発明者らは、USP−17酵素DUB−3がRhoタンパク質制御に役割を果たすことを予想外に見出した。さらに驚いたことは、DUBの上方及び下方制御とも、Rhoタンパク質の活性化を高める効果を有することの実証であった。
【0010】
さらに、本発明者らは、DUB−3が、Rhoタンパク質の修飾を介して悪性細胞のケモカイン刺激性細胞接着、遊走及び化学浸潤(chemoinvasion)に役割を果たすこと、並びに、この結果、DUB−3などのUSP−17酵素が、癌の転移及び浸潤治療のための治療標的として使用できることをさらに示した。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様では、生体試料におけるRhoタンパク質の活性化を調節する方法であって、前記試料にUSP−17調節因子を投与するステップを含む方法が提供される。
【0012】
本発明の方法は、任意のRhoタンパク質、例えばRhoA、RhoB、RhoC、Rac1、Rac2、Rac3、RhoG、Cdc42、TC10、TCL、Wrch−1、Rnd1、Rnd2、RhoE/Rnd3、RhoD、Rif、及び/又はRhoH/TIFの活性化を調節するのに使用され得る。
【0013】
1つの実施形態では、Rhoタンパク質はRac1である。
【0014】
さらに、予想に反して、DUB−3がRhoタンパク質の制御に影響するという実証は、USP−17酵素、例えばDUB−3が、Rasファミリー以外のRasスーパーファミリーの他のファミリーに対し制御的役割を果たすことを示唆するものである。
【0015】
故に、本発明の第2の態様では、生体試料におけるRasスーパーファミリータンパク質の活性化を調節する方法であって、前記試料にUSP−17酵素を調節する薬剤を投与するステップを含み、前記Rasスーパーファミリータンパク質が、Rho、Arf、Rab、又はRanタンパク質である方法が提供される。
【0016】
本発明の別の態様では、生体試料におけるRasスーパーファミリータンパク質の活性化を調節する方法であって、前記試料にUSP−17酵素を調節する薬剤を投与するステップを含み、前記Rasスーパーファミリータンパク質が、Ral、Rap又はRhebタンパク質である方法が提供される。1つの実施形態では、Rasスーパーファミリータンパク質は、RalA、RalB、Rap1a、Rap1b、Rap2a、Rap2b、及びRhebから成る群から選択される。
【0017】
本発明者らは、インビボでのDUB−3の役割を解明するため、DUB−3の制御(control)を調べた。実施例に記載の通り、本発明者らは、DUB−3がケモカイン、CXCL12/SDFによりメッセージレベルで制御されることを見出した。故に本発明の第1又は第2の態様の1つの実施形態では、Rasスーパーファミリータンパク質、例えばRhoファミリータンパク質の活性化はケモカイン刺激性活性化である。
【0018】
さらに、本発明の第3の態様では、細胞におけるUSP−17酵素、例えばDUB−3の発現を刺激する方法であって、ケモカインを前記細胞に投与するステップを含む方法が提供される。
【0019】
任意の適切なケモカインが使用されてよい。適切なケモカインには、IL−8、RANTES、MIP−1a、MIP−1b、MCP−1、CCL19、CCL21又はGタンパク質共役受容体化学誘引性リガンドが含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
1つの実施形態では、ケモカインはCXCL12/SDFである。
【0021】
ケモカイン刺激は、細胞接着、細胞遊走及び細胞浸潤(化学浸潤)を誘導することが知られている。ケモカイン刺激は、DUB−3メッセージ発現を制御することが見出されたため、本発明者らは、DUB−3の脱制御がケモカイン誘導性機能に影響し得るかどうかを調べた。
【0022】
実施例に記載の通り、DUB−3の調節が、人工基底膜を介したCXCL12/SDF刺激性走化性、並びにCXCL12/SDF刺激性遊走及び浸潤を阻害することが意外にも示された。
【0023】
したがって、本発明者らは、DUB−3などのUSP 17酵素はケモカインが促進する細胞事象の重要な調節因子であり、細胞浸潤を伴う炎症性疾患及び感染性疾患や腫瘍転移など、細胞浸潤に媒介される疾患及び状態の潜在的治療標的となることを確証した。
【0024】
故に、本発明の第4の態様によれば、ケモカイン誘導性細胞浸潤を調節する方法であって、USP−17調節因子を投与するステップを含む方法が提供される。
【0025】
第5の態様では、ケモカイン誘導性細胞接着を調節する方法であって、USP−17調節因子を投与するステップを含む方法が提供される。
【0026】
本発明の第6の態様では、ケモカイン誘導性細胞遊走を調節する方法であって、USP−17調節因子を投与するステップを含む方法が提供される。
【0027】
本発明の第4、第5又は第6の態様の1つの実施形態では、ケモカインはCXCL12である。
【0028】
本発明者らは、Rac、RhoA及びCdc42など幾つかのRhoタンパク質、並びにRap1に対するDUB−3の影響を調べ、実施例に記載の通り、DUB−3調節が、Rac及びRap1活性化を脱制御すること、両タンパク質のSDF−1/CXCL12刺激性形質膜輸送を阻害し、さらに、細胞増殖を阻害することを実証した。
【0029】
したがって、本発明の第7の態様では、走化性細胞におけるRhoタンパク質及び/又はRapタンパク質のケモカイン誘導性移行を阻害する方法であって、前記細胞にUSP−17調節因子を投与するステップを含む方法が提供される。
【0030】
1つの実施形態では、Rhoタンパク質はRacである。
【0031】
1つの実施形態では、ケモカインはSDF−1/CXCL12である。
【0032】
細胞遊走及び浸潤を調節可能にすることで、本発明は、転移の治療及び予防での使用を見出す。
【0033】
故に、本発明の第8の態様では、原発腫瘍を有する動物における腫瘍転移数を減少させる方法であって、前記動物にUSP−17調節因子を投与するステップを含む方法が提供される。
【0034】
本発明の第8の態様では、転移発生率が低下し得る、すなわち転移発生が阻害され得る、及び/又は既存の転移数を減少し得るように1つ又は複数の転移が根絶され得る。
【0035】
故に本発明は、ステージ3又はステージ4の腫瘍を治療するのに使用され得る。
【0036】
腫瘍転移の治療に関連するほか、USP−17脱制御が、細胞浸潤及び移動挙動を減少し得るという発見は、細胞遊走を特徴とする炎症性疾患に関与する細胞にも関連する。
【0037】
したがって、本発明の第9の態様では、細胞浸潤を伴う炎症性疾患又は感染性疾患の治療を必要とする動物における細胞浸潤を伴う炎症性疾患又は感染性疾患を治療する方法であって、前記動物にUSP−17調節因子を投与するステップを含む方法が提供される。
【0038】
本発明が使用され得る炎症性疾患又は状態には、関節リウマチ、同種移植拒絶反応、糖尿病、多発性硬化症(MS)/実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚炎、及び喘息が含まれる。
【0039】
本発明が使用され得る炎症性疾患又は状態の他の例には、肝炎、変形性関節症、結核、呼吸器感染症、乾癬、HIV、インフルエンザ、SARS、結膜炎(conjunctitis)、帯状疱疹、髄膜炎、接触性皮膚炎、歯肉炎、蜂巣炎、肺炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚潰瘍形成、真菌感染症、鵞口瘡、脳炎、及び尿管感染症を含む、ウイルス感染症及び細菌感染症が含まれる。
【0040】
本発明の1つの実施形態では、USP−17酵素はDUB−3である。その調節が本発明での使用を見出し得る他のUSP−17酵素には、USP−17ホモログ、DUB−3、DUB−4、DUB−5、DUB−6、DUB−7、DUB−8、DUB−9、DUB−10、DUB−11、DUB−12、DUB−13、及びDUB−14、並びにこれらの変異体又は断片が含まれる。DUB−3〜DUB−12の各々のアミノ酸配列が、図12に示される。DUB−3〜DUB−12、並びにこれらの変異体及び断片に関するさらなる詳細は、国際公開第2005/049818号パンフレットに記載されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
任意の適切なUSP−17調節因子が、本発明で使用されてよい。USP−17調節因子は、USP−17酵素の発現及び/又は活性を調節し得る。USP−17調節因子は、通常の状態と比較して1つ又は複数のUSP−17酵素の増減をもたらし得る。1つの実施形態では、USP−17調節因子は、投与される細胞における特定のUSP−17酵素、例えばDUB−3タンパク質の濃度を低下させる。別の実施形態では、USP−17調節因子は、投与される細胞における1つ又は複数のUSP−17タンパク質の濃度を上昇させる。
【0042】
本発明で使用され得るUSP−17調節因子には、例えば、小分子薬剤、ペプチド又は抗体、前記ペプチド又は抗体をコードする核酸分子、アプタマー、アンチセンス分子又は例えばDUB3に対するpSuper標的構築物などのsiRNA分子が含まれる。
【0043】
上述及び実施例に記載の通り、DUB−3を増大する薬剤は、Ras活性化の低下に有利であること、及びこうした薬剤は癌治療に使用され得ることが開示された国際公開第2005/049818号パンフレットに記載された結果とは特に異なり、本発明者らは、DUB−3の下方制御がRho及びRapタンパク質の活性化を高める結果となり、さらに転移癌などの病因と関係がある走化性などの細胞プロセスを阻害することを示した。したがって、1つの実施形態では、USP−17調節因子は1つ又は複数のUSP−17酵素、例えばDUB−3の活性化又は発現を阻害する。
【0044】
故にUSP−17調節因子は、例えばDUB3 siRNAなどのUSP17 siRNA、又は例えば、Burrowsら、2004年に開示されている抗体(Burrows JFら、JBC 2004年 279(14):13993〜4000頁)など、抗体又は抗体断片などの抗体分子といった小分子阻害剤などのUSP−17阻害剤であってよい。
【0045】
DUB−3を阻害するのに使用され得るヘアピンsiRNA配列例は、GCAGGAAGATGCCCATGAATTCATGGGCATCTTCCTGCである。任意の適切なベクターが使用され得る。例えば、1つの実施形態では、pSUper標的構築物が使用され得る。
【0046】
USP−17酵素とRho、Arf、Rab、及びRanタンパク質活性化との関連、並びにケモカイン誘導性細胞浸潤及び移動挙動に対するUSP−17酵素の影響の発見は、さらに、Rho、Arf、Rab、又はRanタンパク質活性化のさらなる調節因子、並びに故に細胞浸潤及び移動挙動の調節因子の同定を可能にする。
【0047】
したがって、本発明の第10の態様では、Rho、Arf、Rab、又はRanタンパク質活性化の調節因子を同定するためのアッセイ方法であって、
a)USP−17タンパク質を発現することができる試験細胞に候補薬剤を接触させるステップと、
b)前記試験細胞における候補薬剤の存在下でのUSP−17タンパク質発現を判定するステップと、
c)候補薬剤の存在下でのUSP−17タンパク質発現を前記候補薬剤に曝露されない対照細胞と比較するステップと
を含み、対照細胞と試験細胞とのUSP−17タンパク質発現の差が、候補薬剤がRho、Arf、Rab、又はRanタンパク質活性化を調節し得ることを示す方法が提供される。
【0048】
また、本発明の第11の態様では、腫瘍転移の調節因子を同定するためのアッセイ方法であって、
a)USP−17タンパク質を発現することができる試験細胞に候補調節因子を接触させるステップと、
b)前記試験細胞における候補調節因子の存在下での前記USP−17タンパク質発現を判定するステップと、
c)候補調節因子の存在下でのUSP−17タンパク質発現を前記候補調節因子に曝露されない対照細胞と比較するステップと
を含み、対照細胞と試験細胞とのUSP−17タンパク質発現の差が、候補調節因子が腫瘍転移の調節因子であり得ることを示す方法も提供される。
【0049】
本発明の第10又は第11の態様のアッセイ方法は、確認ステップ、すなわち
(d)Rho、Arf、Rab、又はRanファミリータンパク質、例えばRacの活性化を判定するためのアッセイを提供するステップと、
(e)候補調節因子の存在下及び非存在下でのファミリータンパク質の活性化を判定するステップであって、候補調節因子の非存在下でのファミリータンパク質発現と比べた候補調節因子の存在下でのファミリータンパク質発現の低下が、候補薬剤がRho、Arf、Rab、又はRanタンパク質発現の阻害剤であることを裏付けるステップと
を含み得る。
【0050】
さらに、第11の態様のアッセイは、上述の通りステップ(d)及び(e)を場合により含むほか、或いは又はさらに、1つ又は複数のさらなる確認ステップを含み得る。
【0051】
1つの実施形態では、さらなる確認アッセイステップは、
(i)細胞遊走アッセイを提供するステップと、
(ii)候補調節因子の存在下での細胞遊走を判定するステップと、
(iii)候補調節因子の非存在下での細胞遊走を判定するステップと
を含む。前記候補調節因子の存在下での細胞遊走の減少は、調節因子が腫瘍転移阻害剤であることを裏付ける。
【0052】
使用され得る別のさらなる確認アッセイステップは、
(i)細胞接着アッセイを提供するステップと、
(ii)候補調節因子の存在下での細胞の細胞接着を判定するステップと、
(iii)候補調節因子の非存在下での細胞の細胞接着を判定するステップと
を含む。前記候補調節因子の存在下での細胞接着の減少は、調節因子が腫瘍転移阻害剤であることを裏付ける。
【0053】
使用され得る別のさらなる確認アッセイステップは、
(i)細胞化学浸潤アッセイを提供するステップと、
(ii)候補調節因子の存在下での細胞化学浸潤を判定するステップと、
(iii)候補調節因子の非存在下での細胞化学浸潤を判定するステップと
を含む。前記候補調節因子の存在下での化学浸潤の減少は、調節因子が腫瘍転移阻害剤であることを裏付ける。
【0054】
本発明の第12の態様は、走化性細胞における腫瘍GTPアーゼ移行の調節因子を同定するためのアッセイ方法であって、
a)USP−17タンパク質を発現することができる試験細胞に候補調節因子を接触させるステップと、
b)前記試験細胞における候補調節因子の存在下での前記USP−17タンパク質発現を判定するステップと、
c)候補調節因子の存在下でのUSP−17タンパク質発現を前記候補調節因子に曝露されない対照細胞と比較するステップと
を含み、対照細胞と試験細胞とのUSP−17タンパク質発現の差が、候補調節因子がGTPアーゼ移行の調節因子であり得ることを示す方法を提供する。
【0055】
本発明の第10〜第12の態様の1つの実施形態では、USP−17タンパク質はDUB−3である。
【0056】
本発明のこの態様の1つの実施形態では、GTPアーゼはRhoタンパク質、例えばRacである。別の実施形態では、GTPアーゼはRap1である。
【0057】
1つの実施形態では、移行は、ケモカイン、サイトカイン又は増殖因子誘導性移行である。1つの実施形態では、ケモカインはSDF−1/CXCL12である。
【0058】
また、細胞遊走を伴う炎症性疾患の治療剤の調製におけるUSP−17調節因子の使用も、本発明の第13の態様として提供される。
【0059】
本発明の第14の態様は、腫瘍転移及び浸潤の治療剤の調製におけるUSP−17調節因子の使用を提供する。
【0060】
本発明の第13又は第14の態様の1つの実施形態では、USP−17調節因子はUSP−17タンパク質の発現又は活性を低下させる。
【0061】
本発明は、任意の腫瘍タイプの転移の予防又は治療に使用され得る。例えば、本発明がその転移の治療に使用され得る原発腫瘍には、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、卵巣癌、リンパ腫、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、脳癌、骨癌、膀胱癌、脾臓癌及び頭頸部腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明の第15の態様は、炎症性疾患の治療剤の調製におけるDUB−3調節因子の使用を提供する。
【0063】
実施例に記載の通り、本発明者らは、DUB−3がRap−1のサイトカイン誘導性活性化を調節することも見出した。
【0064】
したがって、本発明のさらなる態様では、生体試料におけるRapタンパク質の活性化を調節する方法であって、前記試料にUSP−17調節因子、例えばDUB−3を投与するステップを含む方法が提供される。この態様の1つの実施形態では、Rap活性化は、ケモカイン、サイトカイン又は増殖因子誘導性活性化である。
【0065】
本発明のこの態様の1つの実施形態では、調節因子は、USP−17タンパク質、例えばDUB−3の発現又は活性化を増大する。
【0066】
本発明の各態様の好ましい特徴は、他の態様の各々に関しては準用する。
【0067】
[詳細な説明]
USP−17調節因子
任意の適切なUSP−17調節因子が、本発明では使用され得る。USP−17調節因子は、USP−17の活性又は発現を増減し得る。
【0068】
上述の通り、調節因子は、核酸分子又は抗体分子であってよい。別の実施形態では、USP−17調節因子は、DUB−3のペプチド又は非ペプチド小分子調節因子であってよい。さらなる実施形態では、USP−17調節因子はアプタマーであってよい。例えば、調節因子は、siRNA、例えばpSUPER RNAiシステム(Oligoengine社、シアトル、USA)を使用するsiRNAであってよい。pSUPER RNAiシステムは、siRNA様転写物の細胞内合成を導く哺乳類発現ベクターである。ベクターは、ポリメラーゼ−III H1−RNA遺伝子プロモーターを使用する。
【0069】
1つの実施形態では、USP−17調節因子は、DUB−3調節因子である。特定の実施形態では、本発明で使用するためのDUB−3調節因子はDUB−3阻害剤である。
【0070】
核酸
本発明で使用するための核酸は、DNA又はRNAを含み得る。核酸は、標準的方法を用いるクローニングを含め、組換え的に、合成的に、又は当業者に利用可能な任意の手段により作製され得る。
【0071】
核酸は、任意の適切なベクター、例えばウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)、バキュロウイルス;酵母ベクター、ファージ、染色体、人工染色体、プラスミド、又はコスミドDNAに挿入され得る。ベクターは、原核又は真核細胞であり得る宿主細胞に核酸を導入するのに使用され得る。
【0072】
例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞へのDNA導入及び遺伝子発現における核酸操作、並びにタンパク質分析のための既知の方法及びプロトコルに関するさらなる詳細については、例えば、Current Protocols in Molecular Biology、第5版、Ausubelら編、John Wiley & Sons、2005年及び、Molecular Cloning:a Laoboratory Manual:第3版 Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年を参照されたい。
【0073】
アンチセンス/siRNA
本発明で使用するためのUSP−17調節因子は、遺伝子発現を調節することができる、例えばDUB−3タンパク質コード配列の発現を下方制御することができる核酸分子を含み得る。こうした核酸分子には、アンチセンス分子、例えば低分子干渉RNA(siRNA)などの低分子干渉核酸(siNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA、ショートヘアピンRNA(shRNA)、核酸センサー分子、アロザイム、酵素の核酸分子、及び三重鎖オリゴヌクレオチド並びに配列特異的にRNA干渉「RNAi」又は遺伝子サイレンシングを媒介するのに使用することができる任意の他の核酸分子が含まれるが、これらに限定されない(例えばBass、2001年、Nature、411、428〜429頁;Elbashirら、2001年、Nature、411、494〜498頁;国際公開第00/44895号パンフレット;国際公開第01/36646号パンフレット;国際公開第99/32619号パンフレット;国際公開第00/01846号パンフレット;国際公開第01/29058号パンフレット;国際公開第99/07409号パンフレット;及び国際公開第00/44914号パンフレット;Allshire、2002年、Science、297、1818〜1819;Volpeら、2002年、Science、297、1833〜1837頁;Jenuwein、2002年、Science、297、2215〜2218頁;Hallら、2002年、Sience、297、2232〜2237;Hutvanger及びZamore、2002年、Sience、297、2056〜60頁;McManusら、2002年、RNA、8、842〜850頁;Reinhartら、2002年、Gene & Dev.、16、1616〜1626;Reinhart & Bartel、2002年、Sience、297、1831頁参照)。
【0074】
「アンチセンス核酸」は、RNA−RNA又はRNA−DNA又はRNA−PNA(タンパク質核酸;Egholmら、1993年 Nature 365、566頁)相互作用を用いて標的RNAに結合する非酵素的核酸分子であり、標的RNAの活性を変化させる(概説として、Stein及びCheng、1993年 Science 261、1004頁並びにWoolfら、米国特許第5,849,902号明細書参照)。アンチセンス分子は、アンチセンス分子の単一の連続配列に沿った標的配列に相補的であり得、又は特定の実施形態では、アンチセンス分子が2つ以上の不連続基質配列に相補的であり得る、若しくはアンチセンス分子の2つ以上の不連続配列部分が標的配列に相補的であり得る、若しくはこの両方であり得るように、アンチセンス分子がループを形成するように、基質、アンチセンス分子若しくはこの両方が結合できるように、アンチセンス分子は基質に結合し得る。アンチセンス法の詳細は、当技術分野では周知であり、例えばSchmajukら、1999年、J.Biol.Chem.、274、21783〜21789頁、Delihasら、1997年、Nature、15、751〜753頁、Steinら、1997年、Antisense N.A.Drug Dev.、7、151、Crooke、2000年、Methods Enzymol.、313、3〜45;Crooke、1998年、Biotech.Genet.Eng.Rev.、15、121〜157頁、Crooke、1997年、Ad.Pharmacol.、40、1〜49頁を参照されたい。
【0075】
「三重鎖核酸」又は「三重鎖オリゴヌクレオチド」は、配列特異的に二本鎖DNAに結合して三重らせんを形成することができるポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドである。こうした三重らせん構造の形成は、標的遺伝子の転写を調節することが示されている(Duval−Valentinら、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89、504頁)。
【0076】
アプタマー
アプタマーは、特定の分子標的と密接に結合する核酸(DNA及びRNA)マクロ分子である。アプタマーは、例えばSELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化)によりインビトロでの選択を繰り返すことで迅速に作製することができ、小分子、タンパク質、核酸などの様々な分子標的に結合する(Ellington及びSzostak、Nature 346(6287):818〜822頁(1990年)、Tuerk及びGold、Science 249(4968):505〜510頁(1990年)米国特許第6,867,289号明細書;米国特許第5,567,588号明細書、米国特許第6,699,843号明細書参照)。
【0077】
顕著な特異性を示すことに加え、アプタマーは一般に、きわめて高い親和性で標的に結合する。大半の抗タンパク質アプタマーは、ピコモル(pM)〜低ナノモル(nM)範囲の平衡解離定数(Kds)を有する。
【0078】
アプタマーは、化学合成により迅速に作製され、望ましい保存特性を有し、治療適用での免疫原性をほとんど誘発しないか又は誘発しない。
【0079】
非修飾アプタマーは、アプタマーの本質的に低い分子量のために、主にヌクレアーゼ分解及び腎クリアランスにより、数分〜数時間の半減期で血流から急速に除去される。しかし、当技術分野で周知の通り、2’−フッ素置換ピリミジン、ポリエチレングリコール(PEG)結合などの修飾は、該分子の半減期を必要に応じて数日〜数週間に調整するのに使用することができる。
【0080】
ペプチドアプタマーは、細胞内の他のタンパク質相互作用を干渉するように設計されたタンパク質である。これは、タンパク質スカフォールドに両末端で付加された可変ペプチドループから成る。この二重構造的拘束は、抗体に匹敵するレベル(ナノモル範囲)までペプチドアプタマーの結合親和性を大幅に高める。可変ループの長さは、典型的には10〜20アミノ酸から成り、スカフォールドは、良好な可溶性及び緻密性(compacity)特性を有する任意のタンパク質であってよい。アプタマーは、任意のデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はリンに結合した非架橋リガンドの1つとして酸素の代わりに硫黄を有するデオキシチオホスホスフェート(又はホスホロチオエート)など、これらの塩基の修飾物を含み得る。モノチオホスフェートαSは、1個の硫黄原子を有する故にリン中心の周囲がキラルとなる。
【0081】
ジチオホスフェートは、両方の酸素の位置で置換される故にアキラルとなる。ホスホロチオエートヌクレオチドは、市販されているか又は当技術分野で周知の幾つかの異なる方法で合成することができる。
【0082】
抗体分子
本発明の文脈では、「抗体分子」は、免疫グロブリン若しくはこの一部、又は抗体結合ドメインである、若しくは抗体結合ドメインに相同な結合ドメインを含む任意のポリペプチドを指すと理解すべきである。抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体及びこれらの断片、並びに別のポリペプチドに融合した免疫グロブリン結合ドメインを含むキメラ抗体が含まれるがこれらに限定されない。
【0083】
インタクトな(完全な)抗体は、重鎖及び軽鎖から成る免疫グロブリン分子を含む。重鎖及び軽鎖の各々は、それぞれVH及びVLと名付けられた可変領域を有する。可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR、超可変領域としても知られる)及び4つのフレームワーク領域(FR)又はスカフォールドから成る。CDRは、抗原分子と相補的な立体構造を形成し、抗体の特異性を決定する。
【0084】
抗体断片は、インタクトな抗体の結合能を保持し得、インタクトな抗体の代わりに使用され得る。したがって、本発明の目的のため、特に文脈が求めない限り、「抗体」という用語は、抗体断片を包含すると理解すべきである。抗体断片例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、dAb、及びFv断片、scFv、二重特異性scFv、ダイアボディ、直鎖抗体が含まれる(米国特許第5,641,870号明細書、実施例2;Zapataら、Protein Eng 8(10):1057〜1062頁[1995]参照)、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成される多特異性抗体が含まれる。
【0085】
Fab断片は、VH及びCH1と共にL鎖全体(VL及びCL)から成る。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ又は複数のシステインを含む別の数個の残基を、CH1ドメインのカルボキシ末端に有することでFab断片とは異なる。F(ab’)2断片は、2つのジスルフィド結合Fab断片を含む。
【0086】
Fd断片は、VH及びCH1ドメインから成る。
【0087】
Fv断片は、単一抗体のVL及びVHドメインから成る。
【0088】
一本鎖Fv断片は、scFvが抗原結合部位を形成できるようにするリンカーで結合されたVH及びVLドメインを含む抗体断片である。(Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol.113、Rosenburg及びMoore編、Spiringer−Verlag、ニューヨーク、269〜315頁(1994年)参照)。
【0089】
ダイアボディは、Vドメインの鎖内ペアリングではなく鎖間ペアリングを実現し、結果として多価断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片が得られるように、VHとVLドメインとの間に短いリンカー(約5〜10残基)でscFv断片(前節参照)を構築して調製される小さな抗体断片である(例えば、EP 404 097;国際公開第93/11161号パンフレット;及びHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448頁(1993年)参照)。
【0090】
断片にさらに包含されるのは、個々のCDRである。
【0091】
本発明の1つの実施形態では、USP−17調節因子は、DUB−3のタンパク質分解活性又は脱ユビキチン化活性を阻害する抗体分子である。こうした適切な抗体例は、Burrows JFら、JBC 2004年 279(14):13993〜4000頁に開示されている。
【0092】
上述の通り、本発明で使用するための抗体分子は、例えば、脱ユビキチン化活性を阻害する任意の他の抗体にまで及ぶ。例えば脱ユビキチン化活性を阻害する能力を保持する、既知の抗DUB−3抗体変異体が使用され得る。故に、既知のUSP−17のCDRアミノ酸配列、例えば1つ又は複数のアミノ酸残基が修飾されるDUB−3抗体分子も、CDR配列として使用され得る。こうした変異体は、当技術分野で周知の方法を用いて提供され得る。CDRは、抗体重鎖若しくは軽鎖配列又はこの部分を含むフレームワーク構造に運ばれ得る。好ましくはこうしたCDRは、自然発生的VH及びVLドメインのCDRの位置に相当する場所に位置する。このようなCDRの位置は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、米国保健福祉省、公衆衛生局、Nat’l Inst.of Health、NIH Publication No.91−3242、1991年及びオンラインwww.kabatdatabase.com
http://immuno.bme.nwu.edu
に記載の通りに決定され得る。
【0093】
さらに、修飾は、或いは又はさらに可変領域のフレームワーク領域に対し行われ得る。フレームワーク領域のこうした変更は、安定性を向上させ得、抗体の免疫原性を低下させ得る。
【0094】
本明細書では本発明で使用するための抗体は、「キメラ」抗体を含む。キメラ抗体では、重鎖及び/又は軽鎖部分が、特定の種由来の抗体、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である一方、鎖の残りは、これが所望の生物活性を示す限り、別の種由来の抗体、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体、及びこうした抗体の断片における対応する配列と同一又は相同である(米国特許第4,816,567号明細書;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851〜6855頁(1984年)参照)。本明細書では目的とするキメラ抗体は、ヒト以外の霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿など)由来の可変領域抗原結合配列、及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化(primatized)」抗体を含む。
【0095】
本発明で使用するための抗体分子は、任意の適切な方法で自然に又は合成的に作製され得る。このような方法には、例えば、従来のハイブリドーマ法(Kohler及びMilstein(1975年)Nature、256:495〜499頁)、組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号明細書参照)、又は抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法(例えばClacksonら(1991年)Nature、352:624〜628頁及びMarksら(1992年)Bio/Technology、10:779〜783頁参照)。他の抗体作製法は、Antibodies:A Laboratory Manual、編Harlowら、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年に記載されている。
【0096】
従来のハイブリドーマ法は、典型的には、抗原に結合可能なリンパ球の産生を誘発するための、抗原でのマウス又は他の動物の免疫感作を含む。リンパ球は単離され、ミエローマ細胞系と融合されてハイブリドーマ細胞を形成する。ハイブリドーマ細胞は次いで、親ミエローマ細胞の増殖は阻害するが抗体産生細胞の増殖を可能にする条件で培養される。ハイブリドーマは、産生抗体の結合特異性を変え得る又は変え得ない遺伝子変異を受け得る。
【0097】
合成抗体は、当技術分野で周知の方法を用いて作製することができる(例えば、Knappikら、J.Mol.Biol.(2000年)296、57〜86頁及びkrebsら、J.Immunol.Meth.(2001年)2154 67〜84頁参照)。
【0098】
修飾は、当技術分野で周知の任意の適切な方法により、抗体分子のVH、VL若しくはCDRで、又は実際にFRで行われ得る。例えば、可変VH及び/又はVLドメインは、こうしたCDRを欠くVH又はVLドメインにCDR、例えばCDR3を導入して作製され得る。Marksら(1992年)Bio/Technology、10:779〜783頁は、CDR3を欠くVH可変領域のレパートリーが作製され、次いで特定の抗体のCDR3と結合されて新規なVH領域を生成するシャッフリング法を記載する。類似の方法により、本発明のCDR由来配列を含む新規なVH及びVLドメインが生成され得る。
【0099】
本発明で使用するための抗体の代替作製方法は、例えば、エラープローンPCRによるVH又はVLドメインコード遺伝子のランダム突然変異誘発を含み得る(Gramら、1992年、P.N.A.S.89 3576〜3580頁参照)。さらに又は或いは、CDRは、例えばBarbasら 1991年 PNAS 3809〜3813頁及びScier 1996 J Mol Biol 263 551〜567頁に記載の分子進化アプローチにより突然変異誘発の標的にされ得る。
【0100】
こうした変異体、抗体及び断片を作製することで、USP−17調節因子、例えばDUB−3への結合及び分子の脱ユビキチン化活性の阻害が試験され得る。
【0101】
免疫複合体
本発明の別の実施形態では、本発明で使用するための抗体分子は、「活性治療剤」に結合した抗体断片を含む、免疫複合体の形態であってよい。治療剤は、化学療法剤又は別の分子であってよい。
【0102】
免疫複合体の生成方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、米国特許第5,057,313号明細書、Shihら、Int.J.Cancer 41:832〜839頁(1988年);Shihら、Int.J.Cancer 46:1101〜1106頁(1990年)、Wong、Chemistry Of Protein Conjugation And Cross−Linking(CRC Press 1991年);Upeslacisら、「Modification of Antibodies by Chemical Methods」、Monoclonal Antibodies:Principles And Applications、Birchら編、187〜230頁(Wiley−Liss,Inc.1995年);Price、「Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies」、Monoclonal Antibodies:Production、Engineering And Clinical Application、Ritterら編、60〜84頁(Cambridge University Press 1995年)参照。
【0103】
本発明で使用するための抗体分子はさらなる修飾を含み得る。例えば抗体は、グリコシル化、ペグ化、又はアルブミン若しくは非タンパク質性ポリマー結合することができる。抗体分子は、免疫複合体の形態であってよい。
【0104】
アッセイ
薬剤、例えば小分子又は抗体の、DUB−3の脱ユビキチン化活性を調節する、例えば阻害する能力は、任意の適切な方法により試験され得る。例えば阻害剤は、DUB触媒ドメインへの結合及びDUB3活性遮断が試験され得る。アッセイは、標的に結合したユビキチンの使用、及び組換えDUB3プローブによる切断に対する薬剤効果の試験を含み得る。
【0105】
細胞浸潤を阻害する薬剤の能力は、当技術分野で周知の任意の適切な浸潤アッセイにより試験され得る。例えば、化学誘引物質勾配への人工細胞外マトリックス(ECM)を介した細胞移動を測定する浸潤アッセイが使用されてよい。浸潤活性の同定は、細胞がECMを分解する能力のほかECMを介して遊走する能力を必要とするであろう。このような能力は、実施例に記載の通り及び当技術分野で周知の通り、改変ボイデンチャンバーにより試験され得る。薬剤は、任意の適切な細胞系、例えばMDA−MB−231細胞を用いて試験され得る。薬剤は、これが統計的に有意な量で浸潤を阻害する能力を有するならば、細胞浸潤を阻害すると考えられ得る。例えば、1つの実施形態では、DUB−3調節因子として使用するための薬剤は、適切な対照抗体と比較した場合、浸潤を少なくとも10%、例えば少なくとも25%、50%、70%、80%又は90%阻害することができる。
【0106】
細胞遊走を阻害する薬剤の能力は、当技術分野で周知の任意の適切な遊走アッセイにより試験され得る。例えば、化学誘引物質勾配への細胞移動を測定する遊走アッセイが使用され得る。こうした能力は、実施例に記載の通り及び当技術分野で周知の通り、改変ボイデンチャンバーにより試験され得る。
【0107】
細胞接着を阻害する薬剤の能力は、当技術分野で周知の任意の適切な接着アッセイにより試験され得る。例えば、該能力は、実施例に記載の通り及び当技術分野で周知の通り、フィブリノーゲン被覆プレートに接着する細胞の能力を判定して試験され得る。
【0108】
治療
「治療」は、ヒト又はヒト以外の動物に便益をもたらすことができる任意のレジメンを含む。治療は、現状に関してであり得、又は予防(予防的治療)であり得る。治療には、治癒、緩和又は予防効果が含まれ得る。
【0109】
「癌治療」は、癌の増殖及び/又は血管新生を原因とする状態の治療を含み、並びに腫瘍増殖又は腫瘍の治療を含む。本発明を用いて治療することができる腫瘍例は、例えば、骨肉腫及び軟部組織肉腫を含む肉腫、癌腫、例えば、乳−、肺−、膀胱−、甲状腺−、前立腺−、結腸−、直腸−、膵臓−、胃−、肝臓−、子宮−、前立腺、子宮頸及び卵巣癌、非小細胞肺癌、肝細胞癌、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、神経芽細胞腫、メラノーマ、ミエローマ、ウィルムス腫瘍、並びに急性リンパ芽球性白血病及び急性骨髄芽球性白血病を含む白血病、星状細胞腫、グリオーマ並びに網膜芽細胞腫である。
【0110】
本明細書では、本発明は、腫瘍が転移した、ステージ3及びステージ4の腫瘍の治療において特に有用である。多くの腫瘍治療は、局所腫瘍治療では成功しているものの、転移治療の治療又は予防では治療効果がほとんどないか又はない。
【0111】
上述の通り本発明は、原発腫瘍を有する動物における腫瘍転移数を減少させる方法であって、前記動物にUSP−17酵素の調節因子、例えばDUB−3を投与するステップを含む方法が提供される。
【0112】
転移の減少は、転移発生率の低下を含み得(すなわち転移発生が阻害され得る)、及び/又は既存の転移数を減少し得るような1つ又は複数の転移の根絶を含み得る。
【0113】
本発明の方法は、DUB3などのUSP17タンパク質が高度に発現される、例えば星状細胞腫、乳腺腫瘍及び他の腫瘍の転移治療において特に有用であり得る。
【0114】
炎症性疾患/感染性疾患
本発明はさらに、炎症性疾患、例えば細胞浸潤を伴う炎症性疾患での使用を見出す。本発明が使用され得る炎症性疾患には、炎症性筋疾患、関節リウマチ、同種移植拒絶反応、糖尿病、多発性硬化症(MS)/実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚炎、及び喘息が含まれる。
【0115】
全身に感染が拡散する間、炎症細胞は、正常又は病変組織に侵入又は循環系から浸出する。これは、慢性炎症又は感染の全身拡散をもたらし得る。したがって本発明は、呼吸器感染症、皮膚、腸若しくは他の組織の感染症の治療、又はインフルエンザ、肝炎、SARSなどの感染性疾患などの状態の治療にも使用され得る。
【0116】
医薬組成物
本発明で使用するための抗体及び核酸分子を含むUSP−17調節因子、例えばDUB−3調節因子は、医薬組成物として提供され得る。本発明による使用のための医薬組成物は、活性成分に加え、薬学的に許容可能な賦形剤、キャリア、緩衝剤、安定剤又は当業者によく知られた他の材料を含み得る(例えば、Remington:the Science and Practice of Pharmacy、第21版、Gennaro ARら、編、Lippincott Williams & Wilkins、2005年参照。)。こうした材料は、酢酸、トリス、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝剤;抗酸化物質;保存剤;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシンなどのアミノ酸;炭水化物;キレート剤;等張化剤(tonicifier);並びに界面活性剤を含み得る。
【0117】
医薬組成物は、本発明の組成物活性に悪影響を与えない補足的活性を好ましくは有する、治療中の特定の適応のため必要に応じて選択される1つ又は複数のさらなる活性化合物も含有し得る。例えば、癌治療では、USP−17調節因子に加えて製剤は、追加成分、例えば第2の又はさらなるUSP−17調節因子、化学療法剤、又はUSP−17タンパク質以外の標的に対する、例えば特定の癌の増殖に影響する増殖因子に対する抗体を含み得る。
【0118】
活性成分(例えば抗体分子及び/又は化学療法剤)は、ミクロスフェア、マイクロカプセル、リポソーム、他の微粒子送達系を介して投与されてよい。例えば、活性成分は、コロイド剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)若しくはマクロエマルジョンにおいて、例えば、コアセルベーション法又は界面重合(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)により調製され得るマイクロカプセル内に封入され得る。さらなる詳細は、Remington:the Science and Practice of Pharmacy、第21版、Gennaro ARら、編、Lippincott Williams & Wilkins、2005年を参照されたい。
【0119】
徐放性製剤は活性剤の送達に使用され得る。徐放性製剤の適切な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含む。マトリックスは、例えばフィルム、座薬又はマイクロカプセルなどの成形物の形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号明細書)、L−グルタミン酸及びエチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、並びにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0120】
上述の通り、核酸は治療方法でも使用され得る。本発明で使用するための核酸は、当技術分野で周知の任意の適切な方法により目的とする細胞に送達され得る。核酸(場合によりベクター中に含有される)は、インビボ又はエクスビボ法により患者の細胞に送達され得る。インビボ法では、ウイルスベクター(アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ関連ウイルスなど)によるトランスフェクション及び脂質ベースの系(脂質媒介遺伝子導入に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE及びDC−Cholである)が使用され得る(例えば、Andersonら、Science 256:808〜813頁(1992年)参照。国際公開第93/25673号パンフレットも参照)。
【0121】
エクスビボ法では、核酸は、患者の単離細胞へ導入され、修飾細胞は、患者に直接投与され、又は、例えば、患者に移植される多孔質膜内に封入されて投与される(例えば米国特許第4,892,538号明細書及び第5,283,187号明細書参照)。生存細胞への核酸導入に利用可能な方法には、レトロウイルスベクター、リポソーム、電気穿孔、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などが含まれ得る。
【0122】
USP−17調節因子、例えば抗体、薬剤、製品又は組成物は、腫瘍部位若しくは他の所望の部位に局所的に投与され得、又は腫瘍又は他の細胞を標的にする方法で送達され得る。標的療法は、抗体又は細胞特異的リガンドなどの標的系を使用して、特定の種類の細胞に活性剤をより特異的に送達するのに使用され得る。標的は、様々な理由、例えば薬剤が許容できないほど有毒である場合、又はそうしなければあまりに高い用量が必要となる場合、又はそうしなければ標的細胞に侵入できない場合に望ましい場合がある。
【0123】
用量
USP−17調節因子は、個体に対する便益を示すのに十分な「治療有効量」で個体に適切に投与される。実際の用量レジメンは、治療中の状態、この重症度、治療患者、使用薬剤を含む幾つかの要因に依存する、及び医師の裁量によるであろう。
【0124】
投与
USP−17調節因子は、化学療法剤と同時に、別々に又は連続して投与され得る。別々に又は連続して投与される場合、USP−17調節因子は、任意の適切な時間内、例えば互いに1、2、3、6、12、24、48又は72時間以内に投与され得る。1つの実施形態では、それらは、2時間以内、1時間以内、例えば互いに20分以内など、6時間以内に投与される。
【0125】
本発明の1つの実施形態では、USP−17調節因子及び化学療法剤は、個々の成分が相乗的に作用する増強比(potentiating ratio)で投与される。
【0126】
相乗作用は、Romaneliにより改変された(Cancer Chemother Pharmacol、41:385〜390頁、1998年)Kernの方法(Cancer Res、48:117〜121頁、1988年)による1(unity)を超えるRIとして定義され得る。
【0127】
本発明は、これより以下の非限定例においてさらに記載される。添付図が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1a】DUB−3メッセージがケモカインSDF−1/CXCL12で下方制御される、80ng/mlのSDF−1/CXCL12で刺激したMDA−MB−231細胞から抽出したRNAのRT−PCRの結果を示す図である。
【図1b】DUB−3メッセージがケモカインSDF−1/CXCL12で上方制御される、100ng/mlのSDF−1/CXCL12で刺激した、Jurkat細胞から抽出したRNAのRT−PCRの結果(i)及びPBMCから抽出したRNAのRT−PCRの結果(ii)及びPBMCから抽出したタンパク質(iii)を示す図である。
【図2a】GTPアーゼタンパク質レベルがDUB−3で制御されることを示す図である。図2aは、RhoファミリーGTPアーゼをトランスフェクトし、Dub−3(D3)、Dub−3CS(CS)、Dub−3siRNA、及び空ベクター(EV)を共トランスフェクトした293T細胞を示す。
【図2b】239T細胞におけるDub−3siRNAによるDub−3ノックダウンを示す。
【図3】Dub−3の脱制御が細胞接着を阻害することを示す図である。図3aは、10ng/mlのSDF−1/CXCL12によりフィブリノーゲン被覆プレートで刺激したトランスフェクトMDA−MB−231細胞、及び判定したパーセント細胞接着を示し、図3bは、EV及びDUB−3siRNAをトランスフェクトしたMDA−MB−231細胞のDub−3 RT−PCRを示す。
【図4】10ng/ml CXCL12/SDFへのMDA−MB−231細胞のパーセント遊走を示す図である。Dub−3ノックダウンは、SDF−1/CXCL12刺激性走化性を阻害する。MDA−MB−231に、EV、DUB3、DUB3CS又はDUB3siRNAをトランスフェクトし、細胞を10ng/ml SDF/CXCL12で10時間刺激し、改変ボイデンチャンバーによる走化性アッセイにかけた。
【図5】10ng/ml CXCL12/SDFで刺激したMDA−MB−231細胞のパーセント化学浸潤を示す図である。Dub−3の脱制御は、SDF−1/CXCL12誘導性細胞浸潤を阻害する。MDA−MB−231細胞に、EV、Dub−3、Dub−3C/S、Dub−3siRNAをトランスフェクトし、10ng/ml SDF−1/CXCL12で刺激した。Dub−3及びDub−3siRNAトランスフェクト細胞は、マトリゲルを介した浸潤を障害した。
【図6】Dub−3ノックダウンが、MDA−MB−231細胞におけるRap活性化を増大させることを示す図である。EV、D3 siRNA及びD3をトランスフェクトしたMDA−MB−231細胞を、100ng/ml SDF−1/CXCL12で刺激した。D3 siRNA細胞は、RalGDS−GST融合タンパク質プルダウンからのGTP結合Rapを増大させた。
【図7−1】a〜gは、Dub−3ノックダウンが、HeLa細胞でのSDF−1/CXCL12刺激性Rap形質膜移行を阻害することを示す図である。
【図7−2】a〜gは、Dub−3ノックダウンが、HeLa細胞でのSDF−1/CXCL12刺激性Rap形質膜移行を阻害することを示す図である。
【図8】Dub−3ノックダウンが、MDA−MB−231細胞でのSDF−1/CXCL12刺激性Rac活性化を低下させることを示す図である。EV及びD3 siRNAをトランスフェクトしたMDA−MB−231細胞を、100ng/ml SDF−1/CXCL12で刺激した。D3 siRNA細胞は、Pak−GST融合タンパク質プルダウンからのGTP結合Racを低下させた。
【図9】a〜fは、DUB−3ノックダウンが、HeLa細胞でのSDF−1/CXCL12刺激性Rac形質膜移行を阻害することを示す図である。
【図10】HeLa細胞から行ったPAKGST融合タンパク質を用いるCdc42 GTPプルダウンの結果を示す図である。DUB−3のノックダウンは、SDF−1/CXCL12に誘導された異常なCdc42−GTP結合の増大をもたらす。細胞にEV又はDUB3siRNAをトランスフェクトし、SDF−1/CXCL12で0、0.5、2、5及び10分間刺激した。
【図11】Dub−3ノックダウンが、MDA−MB−231細胞(a)及びHeLa細胞(b)における細胞増殖を阻害することを示す図である。細胞にDub−3siRNAをトランスフェクトし、生細胞を24時間ごとに計数した。DUB−3ノックダウン細胞数は、空ベクタートランスフェクト細胞よりも一貫して少なかった。
【図12−1】DUB−3、DUB−4、DUB−5、DUB−6、DUB−7、DUB−8、DUB−9、DUB−10、DUB−11又はDUB−12のアミノ酸配列を示す図である。
【図12−2】DUB−3、DUB−4、DUB−5、DUB−6、DUB−7、DUB−8、DUB−9、DUB−10、DUB−11又はDUB−12のアミノ酸配列を示す図である。
【図12−3】DUB−3、DUB−4、DUB−5、DUB−6、DUB−7、DUB−8、DUB−9、DUB−10、DUB−11又はDUB−12のアミノ酸配列を示す図である。
【図12−4】DUB−3、DUB−4、DUB−5、DUB−6、DUB−7、DUB−8、DUB−9、DUB−10、DUB−11又はDUB−12のアミノ酸配列を示す図である。
【図12−5】DUB−3、DUB−4、DUB−5、DUB−6、DUB−7、DUB−8、DUB−9、DUB−10、DUB−11又はDUB−12のアミノ酸配列を示す図である。
【実施例】
【0129】
試薬及び抗体
ウサギポリクローナルDUB−3抗体は、前述の通り(Burrows J.F.、2004年、上述)Fusion Antibodies社(ベルファスト、UK)により作製された。使用した他の抗体には、抗Rac、及び抗Rap抗体が含まれた。
【0130】
細胞培養及びトランスフェクション
David Waugh博士の好意により提供されたMDA−MB−231細胞を、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%L−グルタミン及び1%ピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM(PA)で37℃、5%COで増殖させた。Jurkat T細胞を、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び1%L−グルタミンを添加したRPMI(PA)で37℃、5%COで増殖させた。MDA−MB−231細胞に、メーカーの指示に従いFugene(Roche社)との比1:3で3ugのプラスミドDNAをトランスフェクトした。
【0131】
プラスミド
以下のプラスミド、Dub−3PDQ、CS−PDQ、D3pSuper、RapGFP、RacGFP、Cdc42GFP、RhoGFP及びEVpsuperを使用した。
【0132】
ケモカイン刺激及びRT−PCR
MDA−MB−231細胞を、10cm組織培養皿(Nunc社)に1.5×10細胞で播種し、0%FCS DMEMで12時間静置した。Jurkat細胞を、2%RPMIで1×10細胞/mlで静置した。予め播種したMDA−MB−231細胞及び9×10Jurkat細胞を、100ng/ml CXCL12/SDF−1(PeproTech社)により指定時間刺激した。細胞を次いで氷冷PBSで洗浄し、RNAをStat−60試薬(Tel−Test Inc社、フレンドウッド、USA)により抽出した。OneStep RT−PCRキット(Qiagen社)を、メーカーの指示に従い、RT−PCR用のプライマーセットD1、
5’−CAGTGAATTCGTGGGAATGGAGGACGACTCACTCTAC−3’
及びD2、5’−AGTCATCGATCTGGCACACAAGCATAGCCCTC−3’、
及びGAPDH F 5’−TGATGACATCAAGAAGGTGG−3’
及びGAPDH R 5’−TTACTCCTTGGAGGCCATGT−3’
と共に使用した。
【0133】
細胞接着アッセイ
96ウェルプレート(Nalge Nunc社)を、アッセイする前夜にPBS中の5μg/mlフィブリノーゲンにより被覆し、4℃でインキュベートした。細胞をプレートから除去し、10mM HEPES、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(PAA)で数回洗浄し、pHを7.5に調整し、計数した。細胞を次いで同じHBSS溶液で再懸濁し、37℃で30分間インキュベートして10μmのカルセインAM(Molecular Probes社、ペイズリー、UK)で標識した。標識後、細胞を3回洗浄し、10mM HEPES、1%BSA、1mM CaCl及び1mM MgCl HBSSで再懸濁した。細胞を被覆ウェルプレートに1ウェル(200μl)あたり50,000細胞で添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、次いで蛍光光度計Genios Pro(Tecan社、メンドルフ/チューリッヒ、スイス)(励起:485、蛍光(emission):530)で判定した。ウェルを次いでPBSで3回洗浄し、プレートを再び判定した。2回目の判定からのパーセンテージを1回目の判定から出した。
【0134】
細胞遊走アッセイ
MDA−MB−231細胞を前述の通りトランスフェクトした。細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、1トップチャンバーあたり500μl無血清培地中0.5×10細胞で無血清DMEMに播種し、750μlの無血清培地又は10ng/ml SDF−1/CXCL12含有無血清培地をボトムチャンバーに添加した。プレートを次いで37℃で5%COで20時間インキュベートした。インキュベーション後、遊走しなかった細胞を綿を用いてトップチャンバーから除去した。トップチャンバーの底の遊走細胞を、メタノールで10分間固定し、次いでクリスタルバイオレットで20分間染色した。染色後、トップチャンバーを流水で洗浄し、1時間風乾した。フィルターを次いで300μlの脱染溶液(エタノール1:クエン酸ナトリウム1)で20分間脱染し、200μlの脱染を分光測定により570nm(650nm参照)で測定した。
【0135】
化学浸潤アッセイ
MDA−MB−231細胞を前述の通りトランスフェクトした。マトリゲル(商標)(BD Biosciences社、オックスフォード、UK)を被覆し、化学浸潤アッセイが始まる12時間前に直径12mmのトランスウェル(Corning Costar Corp.社、ケンブリッジ、USA)インサートで乾燥させた。細胞を次いでトリプシン処理し、PBSで洗浄し、1トップチャンバーあたり500μl無血清培地中0.5×10細胞で無血清DMEMに播種し、10ng/ml SDF−1/CXCL12含有無血清培地750μlをボトムチャンバーに添加した。プレートを次いで37℃で5%COで24時間インキュベートした。24時間後、インサートを除去し、培地を捨てた。非浸潤細胞を綿を用いてインサートの上部から除去した。インサートをカルノア固定液(メタノール3:氷酢酸1)で10分間固定した。インサートを乾燥後、これをヘキスト33258染色(50ng/ml)で30分間染色した。染色後、インサートをPBSで2回洗浄し、次いで膜をインサートから除去し、顕微鏡スライドにマウントし、カバースリップで封入した。次いで、スライドを調べられるまで暗所に保存した。浸潤した細胞を、ニコンDXM1200デジタルカメラを備えたニコンEclipse TE300蛍光顕微鏡により×20で調べた。結果をLaboratory ImagingによるLuca GF 4.60を用いて分析した。
【0136】
GSTプルダウンアッセイ
MDA−MB−231細胞を前述の通りトランスフェクトし、SDF−1/CXCL12刺激の前に0%FCS DMEMで12時間静置した。細胞を次いで100ng/mlのSDF−1/CXCL12により様々な時間で刺激した。刺激後、細胞を氷冷PBSで直ちに洗浄し、0.5Mトリス pH7.5、0.1M MgC12、0.5M NaCl、1%トリトン及び5%グリセロール含有溶解緩衝液で、10μg/ml ロイペプチン、10μg/ml アプロチニン、1mM PMSF及び2mM NaVOにより溶解した。溶解物を氷上で10分間静置し、12,000RPMで10分間遠沈して膜を沈殿させた。溶解物を除去し、GSTビーズを予め結合させたPak−又はRalGDS−GST融合タンパク質のいずれかに添加した。ビーズ、溶解物、及び融合タンパク質を、4℃で1時間回転させた。ビーズを次いで阻害剤無しの溶解緩衝液で洗浄し、次いでβMEを加えたレムリ(leamelli)緩衝液中で煮沸し、12%ポリアクリルアミドゲルに添加した。
【0137】
共焦点顕微鏡
HeLa細胞を、LabTek II CC2処理チャンバースライド(Nalge Nunc社)の1.7cmウェルあたり1.5×10細胞で播種した。細胞を、FuGENE6トランスフェクション試薬(Roche社)を用いて、各プラスミド0.25μgで前述の通りトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後、細胞を室温で20分間、CBS中4%パラホルムアルデヒドにより固定した。細胞を次いで、PBS中0.5% Triton−X 100により5分間透過処理し、PBSで洗浄し、室温で1時間PBS中1%BSA、10%ロバ血清(Jackson ImmunoResearch社、ケンブリッジ、UK)のブロッキング溶液でブロッキングした。チューブリンを、抗α−チューブリン抗体(Molecular Probes社)により可視化し、1:200の希釈で使用した。1:100希釈の抗カルネキシン(Abcam社、ケンブリッジ、UK)を、小胞体の検出に使用した。ロバ抗マウスCy5又はTRITC複合体(Donkey anti−mouse Cy5 or TRITC conjugate)(Jackson ImmunoResearch社)を、2次標識抗体として1:200希釈で使用した。各抗体をブロッキング溶液で希釈し、室温で1時間インキュベートした。F−アクチンの可視化のためメーカーの指示に従い、Phalloidin Alexa Flour555又はRhodamine(Molecular Probes社)を使用した。スライドを、ライカDBMRE共焦点顕微鏡(Leica社、ミルトンキーンズ、UK)により40×で調べ、ライカLAS AFソフトウェア(Leica社)を用いて分析した。
【0138】
増殖アッセイ
MDA−MB−231細胞及びHeLa細胞を前述の通りトランスフェクトした。24時間後、トランスフェクション細胞を6ウェルプレート(Nalge Nunc社)で1ウェルあたり4.2×10細胞で播種した。細胞を24時間ごとにウェルから除去し、トリパンブルーで希釈し、生細胞を計数した。
【0139】
結果
本発明者らは、ケモカインが特異的にUSP−17、例えばDub−3レベルを調節することができるかどうか調べた。MDA−MB−231細胞は、SDF−1/CXCL12のケモカイン受容体であるCXCR4を内因的に発現することから、本発明者らは先ず、MDA−MB−231細胞を100ng/mlのSDF−1/CXCL12で刺激した(図1a)。Dub−3メッセージは、T0で構成的に発現され、刺激後10、15、及び30分目において、Dub−3メッセージレベルは有意に低下した。この結果は、刺激するとDub−3メッセージレベルを増大させるサイトカイン増殖因子刺激(Burrowsら、2004年)とは逆であった。
【0140】
MDA−MB−231細胞は接着細胞系であり、ケモカイン刺激は接着及び懸濁細胞に異なる形で(differentially)影響することから、本発明者らは、懸濁細胞のケモカイン刺激がMDA−MB−231細胞で見られるよりも異なる効果を有する可能性があると仮定した。Jurkat懸濁細胞はCXCR4を内因的に発現し、SDF−1/CXCL12に反応することから、これを使用した。Jurkat懸濁細胞を、2% FCS培地で一晩静置し、わずかに内因的に発現されたDub−3メッセージレベルを無効にした(図1b)。静置した細胞を次いで、100ng/mlのSDF−1/CXCL12で刺激した。Dub−3メッセージは、SDF−1/CXCL12刺激により早くも5分目で誘導され、15分目でピークに達した。同様に、DUB−3メッセージは、SDF−1/CXCL12刺激によりPBMCで誘導された(図1b(ii)(iii))。これらの結果は、Dub−3メッセージがケモカインSDF−1/CXCL12により制御されること、様々な細胞種で特異的に制御されることを示唆する。
【0141】
本発明者らは、Rap及び様々なRhoタンパク質に対するDub−3過剰発現及びDub−3ノックダウンの効果を調べた。図2aは、GTPase Rap、RhoA、Rac、及びCdc42をトランスフェクトし、及びDUB3、DUB3CS、DUB3siRNA又は空ベクター(EV)を共トランスフェクトした293T細胞を示す。全てのGTPaseで、Dub−3の上方及び下方調節は、非トランスフェクト、EV及びDUB3触媒不活性共トランスフェクションに比べ、GTPaseタンパク質レベルの増大をもたらした。これらの結果は、Dub−3調節因子の有無が、Rhoファミリー及びRapの幾つかのメンバーのタンパク質レベルに影響することができることを示す。Dub3siRNAをトランスフェクトした293T細胞におけるDub−3の著しいノックダウンは、図2bに示したRT−PCRにより実証した。
【0142】
ケモカイン刺激は、細胞接着、細胞遊走及び細胞浸潤(化学浸潤)を誘導することが知られている。ケモカイン刺激がDub−3メッセージ発現を制御したことから、本発明者らは、Dub−3の脱制御はケモカイン誘発性機能に影響し得るのではないかと考えた。本発明者らは、先ず、siRNAによるDub−3の過剰発現及び/又はノックダウンが、MDA−MB−231細胞刺激性接着に影響し得るかどうかを判定した。過去に、MDA−MB−231細胞のSDF−1/CXCL12刺激が、フィブロネクチン被覆プレートへの細胞接着を増大することが示されている(Fernandisら、2004年)。
【0143】
図3aでは、DUB3、触媒不活性DUB3C/S、EV及びDUB3siRNAをトランスフェクトしたMDA−MB−231細胞を、10ng/mlのSDF−1/CXCL12で刺激し、フィブリノーゲン被覆プレートに接着させた。EV及びDUB3C/Sはいずれも、100%に近い接着を示したが、過剰発現及びノックダウンによるDUB3の上方及び下方調節は、細胞接着を約50%減少させた。DUB3 mRNAは、EVトランスフェクションでは影響されなかったが、図3bに示した通りDUB3 siRNAでは有意に減少した。
【0144】
ケモカインに誘発される細胞接着、細胞遊走及び細胞浸潤は、全てRas様小GTPアーゼのRhoファミリーに媒介されることが知られている(Edenら、2002年;Macheskyら、1998年;Zhugeら、2001年)。本発明者らは、Dub−3がGTPアーゼのRhoファミリーを調節することで、細胞接着、細胞遊走及び細胞浸潤に影響し得るかどうか試験した。
【0145】
細胞遊走は、ケモカイン刺激の最も関連する機能である。Dub−3の脱制御が細胞接着に影響したことから、本発明者らは、これが走化性にも影響すると仮定した。図4は、SDF−1/CXCL12がMDA−MB−231細胞の遊走を刺激したことを示す。この場合も、MDA−MB−231細胞に、EV、Dub−3、Dub−3C/S、及びDub−3 siRNAをトランスフェクトした。細胞を10ng/mlのSDF−1/CXCL12で刺激し、改変ボイデンチャンバーを介して遊走させた。siRNAトランスフェクト細胞のみが、5%未満という非刺激値にほぼ等しい走化性の阻害を示したのに対し、トランスフェクトしない刺激細胞は約12%の遊走率であった。
【0146】
化学浸潤は、細胞骨格再構成、細胞接着、及び細胞外マトリックスを介した細胞遊走のためのマトリックス分解に依存する。さらに、浸潤細胞の先導端(leading edge)である浸潤突起(invadopodia)の形成は、細胞外マトリックスへの強力な接着に依存する。Dub−3脱制御が、細胞遊走及び細胞接着の両方に影響したことから、Dub−3脱制御細胞を、異常な化学浸潤について試験した。トランスフェクトMDA−MB−231細胞を、10ng/mlのSDF−1/CXCL12で刺激し、BDマトリゲルを被覆した改変ボイデンチャンバーを介して浸潤させた(図5)。非刺激細胞が約10%のランダムな浸潤率であったのに対し、刺激したトランスフェクト及びEVトランスフェクト細胞は、約40%の浸潤率であった。Dub−3過剰発現細胞及びDub−3siRNA細胞はどちらも、約10%と化学浸潤を障害した。これらの値は、非トランスフェクト及びEVトランスフェクト刺激細胞の約25%であった。
【0147】
最近、RasファミリーメンバーRap1が、細胞接着に関与する重要なGTPアーゼであることが示された(Katagiriら 2000年;Reedquistら 2000年)。SDF−1/CXCL12で刺激されたRap1は、細胞接着に続いて起こるRap1リガンドRapLの活性化により細胞接着を増大することが知られる(Katagiriら 2003年)。さらに、SDF−1/CXCL12刺激は、刺激後早くも30秒でRap1を活性化することが以前に示されている(24 Shimonaka,M.2003年)。図3が、DUB−3の上方及び下方調節がケモカイン刺激性細胞接着の減少をもたらしたことを示したことから、本発明者らはノックダウン又は過剰発現がRap1の活性化に影響し得るかどうかを試験した(図6)。T0でのEV細胞におけるごくわずかなRap1−GTPに比べ、対照EVトランスフェクト細胞においてSDF−1/CXCL12処理後2分目のRap1活性化が著しく増大した。DUB−3ノックダウン細胞は、図6に示した通りRap1の基礎活性化を増大させた。さらに、Rap1−GTPレベルが、Dub−3ノックダウン細胞でのケモカイン刺激後10分目では維持されたのに対し、EVトランスフェクト細胞では、Rap1−GTPは10分目で検出されなかった。逆に、Dub−3過剰発現細胞は、全ての時点でRap1活性化を鈍らせた。したがって、これらの結果は、Dub−3の上方及び下方調節がRapGTPアーゼの異常活性化をもたらすことから、Dub−3がRapGTPアーゼの活性化を制御することを示唆する。
【0148】
さらに、Rap1は、増殖因子に刺激された細胞において膜に移行することが示された(Bivonaら、2004年)。細胞は、ケモカイン勾配による刺激後に極性化するようになり、高濃度の化学誘引物質を検出する表面は先導端となる。これは、強いアクチン及びチューブリン極性化領域である。
【0149】
GTPアーゼのRhoファミリー及びRap GTPアーゼは、細胞極性に寄与する細胞骨格極性化を制御する。細胞極性は、RasGTPアーゼ Rap1によっても制御される。Rap1ノックアウト細胞が細胞極性及び細胞接着及びRap1のリガンドであるRapLを阻害した場合、欠損細胞は細胞極性及び遊走を阻害した(Dunchniewiczら 2006年;Katagiriら 2004)。したがって、本発明者らは、Rap1−GFP及びDUB3siRNA又はEVを発現するSDF−1/CXCL12刺激HeLa細胞におけるRap1の細胞局在を調べた。無血清培地で12時間インキュベートした後、細胞を50ng/mlのSDF−1/CXCL12で0、2、5、及び10分間刺激した(図7)。共焦点顕微鏡により、Rap1局在のほかF−アクチン形成及びα−チューブリン重合について細胞を分析した。F−アクチン及びα−チューブリンは、先導端形成及び細胞極性化を可視化するための対比染色として選択した。EVトランスフェクト細胞は、Rap1−GFPの拡散した細胞質局在又は核周囲局在のどちらか、並びに図7aに示した通りチューブリン及びF−アクチンの均一な分布を示した。Dub−3ノックダウン細胞では、Rap1GFPは核周囲への集中が観察され、強力な核周囲のチューブリン分布があったが、周辺のF−アクチン重合はごくわずかであった(図7b)。
【0150】
Bivonaら(2004年)は、強い核周囲分布を有するRap1を記載している。SDF−1/CXCL12刺激の2分後、EVトランスフェクト細胞は、Rap1形質膜局在の著しい増大のほか、周辺のチューブリン及びF−アクチン重合の形成増大を示した(図7c)。これらの構造の形成及びRap1−GFP膜局在が、2分目でのDub−3ノックダウン細胞では観察されなかったのに対し、Rap−1は、核周囲分布により依然として観察された(図7d)。5分目でのEVトランスフェクト細胞では、Rap−1は形質膜にあったが、2分目と比べると強度は低かった(図7e)。Rap−1は、依然としてDub−3ノックダウン細胞の核周囲で細胞内に集中していたほか、細胞極性化に関連した構造及び先導端形成は見えなかった(図7f)。DUB3siRNAをトランスフェクトしたHeLa細胞におけるDUB3の著しいノックダウンは、RT−PCRにより実証した。(図7g)。
【0151】
こうしたデータは、Dub−3が細胞極性及び標準的細胞接着、走化性及び化学浸潤に不可欠な細胞骨格の再構成に影響することを示唆する。
【0152】
細胞遊走及び浸潤に最も一般に関連するGTPアーゼは、RhoファミリーメンバーのRacである。Rac GTPアーゼは、ケモカインにより活性化され、遊走細胞の先導端でのラメリポディア形成を介して細胞極性化及び遊走を促進することが知られる。SDF−1/CXCL12刺激は、Racを活性化することが以前に示されている(Garcia−Bernalら、2005年)。本発明者らは、SDF−1/CXCL12により誘導されたRac−GTP結合が、MDA−MB−231細胞におけるDub−3のsiRNAノックダウン又はDub−3過剰発現により影響されたかどうかを試験した。
【0153】
DUB−3ノックダウンは、静置時のRac−GTP結合をもたらした。これは、EVトランスフェクト細胞では検出できなかった(図8)。SDF−1/CXCL12刺激後、EV細胞はRac−GTP結合が有意に増大した。この活性化は、対照細胞では10分目にバックグラウンドまで低下したが、Dub−3ノックダウン細胞では10分目で維持された。Dub−3過剰発現細胞は、調べた全ての時点でRac活性化を鈍らせた。Dub−3過剰発現細胞も、Rac−GTP結合が増大した。これらの結果は、Dub−3の上方及び下方調節がRacGTPアーゼの異常活性化をもたらすことから、Dub−3がRapGTPアーゼの活性化を制御することを示唆する。
【0154】
Racは、走化性細胞における先導端形成及び細胞極性化をもたらすアクチン重合の重要な調節因子であることが示されている(Pozoら、1999年)。SDF−1/CXCL12刺激DUB−3ノックダウン細胞におけるRac1の細胞局在も調べた。
【0155】
HeLa細胞にRac−GFP及びDUB3siRNA又はEVをトランスフェクトした。静置後、細胞を100ng/mlのSDF−1/CXCL12で0、2、5、及び10分間刺激した(図9)。共焦点顕微鏡により、Rac局在について細胞を分析した。F−アクチン形成及び小胞体(ER)局在を共染色して、先導端形成及び細胞極性化をそれぞれ可視化した。EVトランスフェクト細胞は、Rac−GFPの拡散した細胞質局在、F−アクチンの均一な分布、及び拡散した核周囲のERを示した(図9a)。Dub−3ノックダウン細胞では、RacGFPは核周囲に集中し、細胞は周辺のF−アクチン形成が減少した(図9b)。刺激後5分目で、EVトランスフェクト細胞は著しく増大したF−アクチン重合を示し、付随して増大した細胞周囲へのRac−GFP局在により細胞突起及び膜ラッフル(ruffle)を形成した(図9c)。さらに、ERはより集中したように見え、移動の方向に集中した。これは細胞極性化を示すものである。
【0156】
これらの構造の形成及びRac−GFP膜局在は、2分目のDUB3ノックダウン細胞では観察されず、Racはサイトゾルに拡散して局在していた(図9d)。10分目のEVトランスフェクト細胞では、図9eに示した通り、増大した周囲のF−アクチンと共局在する、形質膜へのRac局在が劇的に増大した。Dub−3細胞では10分目にRacは拡散して局在し、細胞局在及び先導端形成に関連した構造は、見えなかった(図9f)。したがって、結果は、細胞骨格再構成、細胞極性及びこれに続く走化性及び浸潤のための重要な事象である、Racの活性化及び細胞局在の制御におけるDub−3の関与を示唆する。
【0157】
PAKGST融合タンパク質を用いるCdc42 GTPプルダウンは、HeLa細胞から行った。細胞にEV又はDUB3siRNAをトランスフェクトし、0、0.5、2、5、及び10分間SDF−1/CXCL2で刺激した。図10に示した通り、DUB−3のノックダウンは、SDF−1/CXCL12により誘導された異常なCdc42−GTP結合の増加をもたらす。
【0158】
Dub−3ノックダウンがGTPアーゼ Rac、Rap及びCdc42の異常な活性をもたらしたことから、本発明者らは、Dub−3のノックダウンが細胞増殖に影響するかどうかを調べた。MDA−MB−231(図11a)及びHeLa(図11b)細胞に、Dub−3siRNA及びEVをトランスフェクトし、材料及び方法に記載の通り増殖アッセイを行った。Dub−3ノックダウンは、EV対照に比べMDA−MB−231細胞数の有意な減少をもたらした。HeLa細胞でのDub−3ノックダウンは、EV対照が通常通り増殖した細胞増殖を劇的に阻害した。こうした結果は、Dub−3が細胞増殖の阻害をもたらすことを示唆する。
【0159】
考察
上記に示され、考察されたデータは、治療標的としてのUSP−17タンパク質、例えばDUB−3を裏付ける。Dub−3が、悪性細胞の転移をもたらす動的なGTPアーゼ依存性事象を制御することが明確に示された。さらに、Dub−3遮断により、重大な転移事象、細胞接着、細胞遊走及び細胞浸潤が阻害されることが実証された。Dub−3は、関連する重要なGTPアーゼの翻訳後プロセシング、これに続く活性化及び細胞局在を制御することでこれらの事象に影響を与えることが示された。重要なことは、本発明者らは、Dub−3阻害が悪性細胞増殖を有意に低下させたことも示した点であり、これにより治療剤としてのDub−3の可能性が加わった。
【0160】
本明細書で本発明者らは、USP17タンパク質発現が、ケモカイン依存的に制御され得ること、及びDub−3の脱制御が、細胞接着、細胞遊走、化学浸潤及びGTPアーゼ活性化などのケモカイン刺激の下流事象に影響することを示した。データは、Dub−3活性はケモカイン誘導性機能に対する時期特異的影響が厳重に制御されることを示唆する。同様に、ケモカイン刺激性Dub−3遺伝子制御は、阻害的であれ活性的であれ、刺激された細胞の形態によって異なる可能性がある。これは、Dub−3誤制御が、多くの考えられる病理学的表現型につながる、様々な結果をもたらす可能性があることを示唆する。
【0161】
癌の表現型は、誤制御されたGTPアーゼの結果である場合が多い。同様に、浸潤癌細胞及び癌転移は、誤制御されたケモカイン経路が原因であり、悪性細胞の不適切な可動化が原因であることが示された(Chanら、2005年)。細胞接着、細胞遊走及び化学浸潤を誘導することが知られるRac、Rho、及びCdc42などのRho GTPアーゼは、転移表現型の発生に重要な役割を果たすと意味づけられている。これらのGTPアーゼの誤制御が、悪性腫瘍を促進する決定因子であり、Dub−3発現及び活性が、発病をもたらす決定因子であり得る可能性がある。
【0162】
さらに、細胞浸潤の主要なプロモーターである細胞外マトリックス(ECM)分解は、ECM成分を分解する酵素に制御されており、マトリックスメタロプロテイナーゼ、すなわちMMPSは、浸潤癌細胞表現型をもたらすECM分解にほとんどの場合に関連する酵素である。最近、小GTPアーゼのRasスーパーファミリーは、浸潤をもたらす細胞プログラムに重要な役割を果たすと意味づけられた(Chanら、2005年)。さらに、Rasスーパーファミリーメンバーの誤制御がMMPの過活性化をもたらすことで細胞浸潤を促進することが示された(Bartolomeら、2004年;Deroanneら、2005年;Zhugeら、2001年)。したがって、Dub−3などのUSP−17タンパク質は、病理学的表現型をもたらすRasスーパーファミリーメンバーを調節してマトリックス分解の制御に役割を果たし得る可能性がある。
【0163】
本明細書で本発明者らは、DUB3などのUSP−17タンパク質は、Rhoタンパク質の適正な活性化及び制御に重要であることを示した。誤制御されたDub−3は、GTPアーゼを不適切に活性化し、浸潤及び転移のGTPアーゼ促進をもたらすと考えられる。本明細書に記載された結果は、Dub−3が、悪性細胞のケモカイン刺激性細胞接着、遊走及び化学浸潤に不可欠な役割を果たすこと、故にDub−3を標的にすることが、浸潤癌の治療及び炎症疾患の制御に様々な治療的利点を有することを示唆する。
【0164】
この明細書で言及された文献は全て、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された実施形態に対する様々な改変及び変更が可能であることは、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されたが、請求された本発明は、こうした特定の実施形態に不当に限定されるべきはでないことを理解すべきである。実際に、当業者には明らかな本発明を実施する記載された様式の様々な改変は、本発明により網羅されることが意図される。
【0165】
[参考文献]
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料におけるRasスーパーファミリータンパク質の活性化を調節する方法であって、前記試料にUSP−17調節因子を投与するステップを含み、前記Rasスーパーファミリータンパク質がRho、Arf、Rab、Ran又はRapファミリータンパク質である方法。
【請求項2】
Rasスーパーファミリータンパク質が、Rho、Arf、Rab又はRanファミリータンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rasスーパーファミリータンパク質が、Rhoファミリータンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Rhoファミリータンパク質が、RhoA、Rac又はCdc42である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Rasスーパーファミリータンパク質が、Rapタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
スーパーファミリータンパク質の活性化が、ケモカイン刺激性活性化である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ケモカイン誘導性細胞浸潤を調節する方法であって、USP−17調節因子を投与するステップを含む方法。
【請求項8】
ケモカイン誘導性細胞接着を調節する方法であって、USP−17調節因子を投与するステップを含む方法。
【請求項9】
ケモカイン誘導性細胞遊走を調節する方法であって、USP−17調節因子を投与するステップを含む方法。
【請求項10】
走化性細胞におけるRho、Arf、Rab、Ran及び/又はRapタンパク質のケモカイン誘導性移行を阻害する方法であって、前記細胞にUSP−17調節因子を投与するステップを含む方法。
【請求項11】
タンパク質がRhoタンパク質である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ケモカインがCXCL12である、請求項5〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
動物における腫瘍転移数を減少させる方法であって、前記動物にUSP−17調節因子を投与するステップを含む方法。
【請求項14】
動物が少なくとも1個の原発腫瘍を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
転移発生率が低下する、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つ又は複数の転移が根絶される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記動物がステージ3又はステージ4の腫瘍を有する、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記USP−17調節因子が、DUB−3発現及び/又はDUB−3活性を阻害する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
細胞におけるUSP−17タンパク質の活性又は発現を調節する方法であって、前記細胞にケモカインを投与するステップを含む方法。
【請求項20】
USP−17タンパク質がDUB−3である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炎症性疾患の治療を必要とする動物における炎症性疾患を治療する方法であって、前記動物にUSP−17調節因子を投与するステップを含む方法。
【請求項22】
炎症性疾患が細胞遊走を伴う炎症性疾患である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
炎症性疾患が、関節リウマチ、同種移植拒絶反応、糖尿病、多発性硬化症(MS)/実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚炎又は喘息である、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
炎症性疾患が炎症を伴う感染性疾患である、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項25】
感染性疾患がインフルエンザ、肝炎又は重症急性呼吸器症候群(SARS)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
細胞遊走を伴う感染症の治療を必要とする動物における細胞遊走を伴う感染症を治療する方法であって、前記動物にUSP−17調節因子を投与するステップを含む方法。
【請求項27】
感染症が呼吸器感染症、皮膚感染症又は腸感染症である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
感染症がインフルエンザ、肝炎又はSARSである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記調節因子がDUB−3発現及び/又はDUB−3活性を阻害する、請求項21〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
Rho、Arf、Rab又はRanタンパク質活性化の調節因子を同定するためのアッセイ方法であって、
a)USP−17タンパク質を発現することができる試験細胞に候補薬剤を接触させるステップと、
b)前記試験細胞における候補薬剤の存在下でのUSP−17タンパク質発現を判定するステップと、
c)候補薬剤の存在下でのUSP−17タンパク質発現を、前記候補薬剤に曝露されない対照細胞と比較するステップと
を含み、対照細胞と試験細胞とのUSP−17タンパク質発現の差が、候補薬剤がRho、Arf、Rab又はRanタンパク質活性化を調節し得ることを示す方法。
【請求項31】
腫瘍転移の調節因子を同定するためのアッセイ方法であって、
a)USP−17タンパク質を発現することができる試験細胞に候補調節因子を接触させるステップと、
b)前記試験細胞における候補調節因子の存在下でのUSP−17タンパク質発現を判定するステップと、
c)候補調節因子の存在下でのUSP−17タンパク質発現を、前記候補調節因子に曝露されない対照細胞と比較するステップと
を含み、対照細胞と試験細胞とのUSP−17タンパク質発現の差が、候補調節因子が腫瘍転移の調節因子であり得ることを示す方法。
【請求項32】
走化性細胞における腫瘍GTPアーゼ移行の調節因子を同定するためのアッセイ方法であって、
a)USP−17タンパク質を発現することができる試験細胞に候補調節因子を接触させるステップと、
b)前記試験細胞における候補調節因子の存在下でのUSP−17タンパク質発現を判定するステップと、
c)候補調節因子の存在下でのUSP−17タンパク質発現を、前記候補調節因子に曝露されない対照細胞と比較するステップと
を含み、対照細胞と試験細胞とのUSP−17タンパク質発現の差が、候補調節因子がGTPアーゼ移行の調節因子であり得ることを示す方法。
【請求項33】
GTPアーゼがRhoタンパク質である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
GTPアーゼがRap1タンパク質である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
転移の治療剤の調製におけるUSP−17調節因子の使用。
【請求項36】
炎症性疾患の治療剤の調製におけるUSP−17調節因子の使用。
【請求項37】
炎症性疾患が細胞遊走を伴う炎症性疾患である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
炎症性疾患が、関節リウマチ、同種移植拒絶反応、糖尿病、多発性硬化症(MS)/実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚炎又は喘息である、請求項36又は請求項37に記載の使用。
【請求項39】
炎症性疾患が炎症を伴う感染性疾患である、請求項36又は請求項37に記載の使用。
【請求項40】
感染性疾患がインフルエンザ、肝炎又は重症急性呼吸器症候群(SARS)である、請求項389に記載の使用。
【請求項41】
転移が、前骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ芽球性白血病、バーキットリンパ腫、膵臓癌、肺癌、脾臓癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、脳癌、骨癌又は頭頸部腫瘍である原発腫瘍の転移である、請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法又は請求項35に記載の使用。
【請求項42】
USP−17タンパク質がDUB−3である、請求項30〜34のいずれか一項に記載の方法又は請求項35〜40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
対照細胞と試験細胞とのUSP−17タンパク質発現の差が、試験細胞における発現の低下である、請求項30〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
USP−17タンパク質がDUB−3である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
USP−17調節因子がDub−3調節因子である、請求項35〜40のいずれか一項に記載の使用又は請求項41に記載の方法。
【請求項46】
調節因子がDUB−3発現又は活性の阻害剤である、請求項45に記載の使用又は方法。
【請求項47】
細胞における接着依存性増殖を阻害する方法であって、前記細胞にUSP−17調節因子を投与するステップを含む方法。
【請求項48】
前記USP−17調節因子の投与が、アノイキスを促進する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
接着依存性細胞増殖を遮断及び/又はアノイキスを促進するためのUSP−17調節因子の使用。

【図1a】
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【図2b】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図12−5】
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【図1b】
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【図2a】
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【図3】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−538600(P2009−538600A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510556(P2009−510556)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050262
【国際公開番号】WO2007/132269
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(504389636)ザ クイーンズ ユニヴァーシティ オブ ベルファスト (14)
【Fターム(参考)】