説明

発光モジュール、バックライト装置および表示装置

【課題】表示装置の色再現性を高める。
【解決手段】青色発光素子と緑色発光素子と赤色発光蛍光体とを組み合わせた発光モジュールであって、青色発光素子の発光スペクトルのピーク波長が445nm以上460nm以下の範囲内にあり、その半値幅が15nm以上35nm以下の範囲内にあり、その色度がxy色度座標上で(0.16111、0.01379)(0.15664、0.01771)(0.15099、0.02274)(0.14396、0.0297)(0.1355、0.03988)(0.12412、0.0578)(0.1096、0.08684)(0.14、0.08)(0.15、0.06)を結ぶ範囲内b1にある。緑色発光素子の発光スペクトルのピーク波長が515nm以上535nm以下の範囲内にあり、その半値幅が25nm以上40nm以下の範囲内にある。赤色発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が620nm以上660nm以下の範囲内にあり、その半値幅が50nm以上100nm以下の範囲内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色発光素子、緑色発光素子および赤色発光蛍光体を組み合わせた発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の透過型の表示装置のバックライト光源として、例えば、特許文献1に、青色LED(Light Emitting Diode)、緑色LEDおよび赤色発光蛍光体を組み合わせた発光モジュールが提案されている。また、特許文献2には、そのような発光モジュールにおいて、青色LED、緑色LEDおよび赤色発光蛍光体のそれぞれの色度が開示されている。これによると、青色LEDの色度がxy色度座標上で、(0.0123、0.5346)、(0.0676、0.4633)、(0.17319、0.0048)を結ぶ範囲内にあり、緑色LEDの色度がxy色度座標上で、(0.025、0.5203)、(0.4479、0.541)、(0.0722、0.7894)を結ぶ範囲内にあり、赤色発光蛍光体の色度がxy色度座標上で、(0.556、0.4408)、(0.6253、0.3741)、(0.7346、0.2654)を結ぶ範囲内にあることとすると、優れた色再現性を得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−158296号公報
【特許文献2】特開2008−53691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者らが研究開発を進めたところ、従来の発光モジュールでは液晶表示装置の色再現性が期待するほどは高くならないことが判明した。
すなわち、単純に先行文献のごとく、青色LED(青色LEDベアチップ)、緑色LED(緑色LEDベアチップ)、赤色発光蛍光体(粉体材料)各々の色度範囲を決定しても、それを組み合わせた光源の光色を設定しなければ、色再現範囲の最適化には至らないというおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりも表示装置の色再現性を高めることができる発光モジュール、バックライト装置およびそれらを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を受けて、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、(1)特に、GaN系の緑色LEDではピーク波長が535nm以上のものでは発光効率が極端に低下してしまい、従来のGaP系の緑色LEDのような550nm近傍の純度の高い緑ではなく青緑を呈すること、また、(2)GaN系においてはピーク波長535nm以下の青緑色LEDを前提にできるだけ波長の短いものを選定できるようにする構成が有利となることを見出した。
【0007】
ただし、色再現性を向上させるためには、(a)青緑色LEDに対応する補色の赤色発光蛍光体の選定、(b)その赤色発光蛍光体を主に高効率に励起しつつ高色域を実現する青色LEDの選定、および、(c)一般に可視光励起の赤発光蛍光体では緑スペクトル帯域近傍まで励起吸収帯が伸びているため、緑色LED(青緑色LED)による赤色発光蛍光体の再励起と、赤色発光蛍光体の光吸収による、青色LEDや緑色LEDの分光変化と、赤色発光蛍光体自身の光自己吸収とを考慮に入れた多重繰り込みの最適化検討を行うことが重要となる。しかしながら、単純に各々の構成要素の分光分布を組み合わせるだけでは誤差があるので導出不可能であり、さらには、先の全体の光色色度をそもそもどう設定するかによっても結果が異なるという課題を抱える。
【0008】
そこで、本発明者らは、上記各事項に着目し、広範な色度であってもこれらの複合的な課題を解決するための手法として本発明を見出すに至った。
すなわち、本発明に係る発光モジュールは、青色発光素子と緑色発光素子と赤色発光蛍光体とを組み合わせた発光モジュールであって、前記青色発光素子の発光スペクトルのピーク波長が445nm以上460nm以下、その半値幅が15nm以上35nm以下、その色度がxy色度座標上で(0.16111、0.01379)(0.15664、0.01771)(0.15099、0.02274)(0.14396、0.0297)(0.1355、0.03988)(0.12412、0.0578)(0.1096、0.08684)(0.14、0.08)(0.15、0.06)を結ぶ範囲内にあり、前記緑色発光素子の発光スペクトルのピーク波長が515nm以上535nm以下、その半値幅が25nm以上40nm以下であり、前記赤色発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が620nm以上660nm以下、その半値幅が50nm以上100nm以下である。
【0009】
本発明に係るバックライト装置は、上記発光モジュールを備える。
本発明に係る表示装置は、上記バックライト装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る発光モジュールは、再現可能な色度範囲を広げることができるので、結果として、表示装置の色再現性を高めることができる発光モジュール、バックライト装置およびそれらを用いた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す概略図
【図2】図1の発光モジュールの構成の一例を示す図であり、(a)は上面図、(b)はA−A断面図
【図3】xy色度座標上に青色LED、緑色LEDおよび赤色発光蛍光体の色度範囲を示した図
【図4】シミュレーションにより得られた実施例1の発光スペクトルの一例を示す図
【図5】シミュレーションにより得られた実施例2の発光スペクトルの一例を示す図
【図6】シミュレーション結果と実測結果とのずれを説明するための図
【図7】シミュレーションにより得られた実施例1のDCI色域面積比を示す図
【図8】シミュレーションにより得られた実施例2のDCI色域面積比を示す図
【図9】実施例1のDCI色域面積比のデータを示す図
【図10】実施例2のDCI色域面積比のデータを示す図
【図11】図7に関係式(1)〜(3)の直線を追記した図
【図12】図8に関係式(1)〜(3)の直線を追記した図
【図13】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図14】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図15】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図16】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図17】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図18】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図19】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図20】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図21】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図22】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図23】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図24】シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す図
【図25】図7にDCIカバー率が高くなる色度範囲を追記して一部を拡大した図
【図26】図8にDCIカバー率が高くなる色度範囲を追記して一部を拡大した図
【図27】発光モジュールの変形例の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
<構成>
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す概略図である。
【0013】
表示装置1は、バックライト装置2および液晶パネル装置3から構成される。バックライト装置2は、筐体4、発光モジュール5から構成される。なお、必要に応じて拡散シート6のような光学シートが設けられる。液晶パネル装置3は、偏光板7、TFT(Thin Film Transistor)基板8、電極9、配光膜10、液晶層11、配光膜12、電極13、カラーフィルタ14、ガラス基板15および偏光板16から構成される。
【0014】
筐体4は、内部に発光モジュール5および拡散シート6を収納するものである。発光モジュール5は、青色光、緑色光および赤色光の混色光を出射するものである。拡散シート6は、発光モジュール5から出射された混色光を液晶パネル装置3に面状に均一に導くものである。偏光板7,16は、特定の方向に振動する光を形成するものである。TFT基板8は、ガラス基板15と対向して配置され、その隙間に液晶層11等を挟みこむものである。配光膜10,12は、液晶層11に含まれる液晶分子を一定方向に整列させるものである。電極9,13は、液晶層11に含まれる液晶分子の傾きを画素毎に変更するものである。カラーフィルタ14は、画素毎に青色、緑色、赤色のフィルタが設けられ、液晶層11を通過してきた発光モジュール5からの出射光を画素毎に決められた色だけを透過させるものである。
【0015】
図2は、図1の発光モジュールの構成の一例を示す図であり、(a)は上面図、(b)はA−A断面図である。
発光モジュール5は、基台17、外部リード18、青色発光素子としての青色LED19、緑色発光素子としての緑色LED20、透光性樹脂21および赤色発光蛍光体22から構成されている。赤色発光蛍光体22は、シリコーン樹脂等の透光性樹脂21中に分散されている。青色LED19から出射された青色光の一部、および、緑色LED20から出射された緑色光の一部は、赤色発光蛍光体22により赤色光に変換される。その結果、発光モジュール5からは、青色光、緑色光および赤色光の混色光が出射される。なお、青色LED19は2本の外部リード18に接続され、緑色LED20は別の2本の外部リード18に接続されている。青色LED19および緑色LED20に流される電流の大きさは個別に制御される。これにより、それぞれの発光強度が個別に制御される。
<R,G,B各色の発光特性>
青色LED19の発光スペクトルのピーク波長は、445nm以上460nm以下の範囲内にあり、その半値幅が15nm以上35nm以下の範囲内にある。また、青色LED19の色度はxy色度座標上で(0.16111、0.01379)(0.15664、0.01771)(0.15099、0.02274)(0.14396、0.0297)(0.1355、0.03988)(0.12412、0.0578)(0.1096、0.08684)(0.14、0.08)(0.15、0.06)を結ぶ範囲内にある(図3の符号b1参照)。このようなLEDとしては、例えば、窒化ガリウム系のLEDが挙げられる。
【0016】
緑色LED20の発光スペクトルのピーク波長は、515nm以上535nm以下の範囲内にあり、その半値幅が25nm以上40nm以下の範囲にある。また、緑色LED20の色度はxy色度座標上で、(0.03885、0.81202)、(0.0743、0.8338)、(0.15472、0.80586)、(0.22962、0.75433)、(0.3016、0.69231)、(0.33736、0.65885)、(0.33736、0.6)、(0.03885、0.6)を結ぶ範囲内にある(図3の符号g1参照)。このようなLEDとしては、例えば、窒化ガリウム系のLEDが挙げられる。
【0017】
緑色LEDつまり緑色発光LEDではピーク波長が535nm以上のものでは発光効率が急速に悪化するが、本実施形態においては分光分布や設定色度の最適化が可能であるため、これら現実的な範囲での広色域化が実現できる。
【0018】
赤色発光蛍光体22の発光スペクトルのピーク波長は、620nm以上660nm以下の範囲内にあり、その半値幅が50nm以上100nm以下の範囲内にある。また、赤色発光蛍光体22の色度はxy色度座標上で、(0.62704、0.37249)、(0.627104、0.342896)、(0.72997、0.24003)、(0.72997、0.27003)を結ぶ範囲内にある(図3の符号r1参照)。このような蛍光体としては窒化物系の蛍光体が主に考えられる。
【0019】
このような窒化物系の蛍光体の例には、下記組成で表されるもののほか、それに添加物を付与したもの、コーテイングを施したものが含まれる。
Ca−α−SiAlON:Eu、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu、CaAlSiN:Eu、(Sr,Ca)AlSiN:Eu、SrSi:Eu、CaSiN:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、Sr(Si,Al)(N,O):Eu、YS:Eu、GdS:Eu、CaS:Eu、LaS:Eu、LiEuW、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn。
【0020】
また、CaAlSiN−SiO:Euの組成比を調整し、発光波長を調整するものなど赤色発光の窒化物蛍光体は広く知られている。
なお、蛍光体の発光スペクトルのピークはブロードであり、ピーク波長が複数現れることもある。また、上記例示品を含め、複数の蛍光体を混合して使用してもよい。その場合には、いずれかのピーク波長が上記の範囲内にあればよいものとする。
【0021】
図3は、xy色度座標上に青色LED、緑色LEDおよび赤色発光蛍光体の色度範囲を示した図である。同図には、本実施形態の各色の色度範囲がb1,g1,r1で示され、特許文献2に開示された各色の色度範囲が比較例としてb2,g2,r2で示されている。
【0022】
一般に、発光モジュールから出射される青色光、緑色光および赤色光のそれぞれの色度をxy色度座標上にプロットしたときにできる三角形の範囲が、表示装置が再現可能な色度範囲の理論上の限界となる。したがって、青色光、緑色光および赤色光のそれぞれの色度を白色の色度(0.333、0.333)から遠ざけることにより三角形の範囲を広げるほど、表示装置の再現可能な色度範囲を広くできると言える。本実施形態の青色LEDの色度範囲b1は、比較例(特許文献2)の青色LEDの色度範囲b2よりも白色の色度(0.333、0.333)から遠い位置にある。したがって、本実施形態によれば、表示装置が再現可能な色度範囲を比較例よりも広げることができる。このとき、好ましくはxy色度座標上で下方に色度を設定することが望ましい。
【0023】
一般的な青色LEDと黄色発光蛍光体を使用した白色LEDでは、青色LEDで比較的短波長に発光ピークがある事例、例えばxy色度座標上で(0.157、0.020)と、黄色YAG蛍光体で比較的長波長に発光ピークがある事例、例えばxy色度座標上で(0.470、0.519)とを結んだ、色度座標上の線を上回る範囲で発光色が調整されている。すなわち、一般的な白色LEDでは、色度がxy色度座標上で青色LEDの色度と黄色発光蛍光体の色度とを結ぶ線よりも上側の領域に存在するように設定されている。一方、本実施形態では、xy色度座標上でこの線を下回る発光色を実現することが可能になり、従来発光色として考慮や設定が出来なかった光色範囲を実現できることから、分光設計の元となる色度範囲を従来以上に拡張して検討することができる。従来においては、そもそもの光源の設定色度がどうあれば良いかの観点が無く、本発明には、このような新たな観点でもたらされたものである。
<R,G,Bの混色光の色度>
発光モジュール5から出射される混色光の色度は、青色光、緑色光および赤色光の光束比により定まる。光束比は、LEDに流す電流の大きさ、蛍光体の分散量などの各種のパラメータにより定まる。すなわち、これらのパラメータを調整することにより任意の色度の混色光を作り出すことができる。
【0024】
本実施形態では、発光モジュール5から出射される混色光の色度がxy色度座標上で以下の関係式を満たすように調整されている。
x≧0.20 ・・・(1)
y≦0.21 ・・・(2)
y≧0.75x−0.097 ・・・(3)
これらの関係式を満たすことにより、表示装置1のDCI(Digital Cinema Initiative)色域面積比を高めることができる。DCI色域面積比は、表示装置の色再現性を評価する指標のひとつであり、式(4)により求められる。
【0025】
DCI色域面積比=S1/S2×100 ・・・(4)
ここで、S1は、表示装置のR,G,B各色の色度をu’v’色度座標上にプロットしてできる三角形の面積であり、S2は、DCI規格で定められたR,G,B各色の色度をu’v’色度座標にプロットしてできる三角形の面積である。これから明らかなように、DCI色域面積比が高いほど、概ね、表示装置の色再現性が優れていると言える。上記の関係式(1)〜(3)の根拠については、後に詳細に説明する。
【0026】
また、上記の関係式(1)〜(3)を満たした上で、混色光の色度がxy色度座標上で、(0.22、0.17)、(0.26、0.21)、(0.30、0.21)、(0.30、0.17)、(0.26、0.13)、(0.22、0.10)を結ぶ範囲内となるように調整されていればより好ましい。混色光の色度がこの範囲内にあれば、表示装置のDCIカバー率を高めることができる。DCIカバー率は、表示装置の色再現性を評価する指標のひとつであり、式(5)により求められる。
【0027】
DCIカバー率=S3/S2×100 ・・・(5)
ここで、S3は、表示装置のR,G,B各色の色度をu’v’色度座標上にプロットしてできる三角形とDCI規格で定められたR,G,B各色の色度をu’v’色度座標にプロットしてできる三角形とが重複した領域の面積である。S2は、DCI規格で定められたR,G,B各色の色度をu’v’色度座標にプロットしてできる三角形の面積である。これから明らかなように、DCIカバー率が高いほど、DCI規格で定められた色度範囲の実現性が高いと言える。上記の混色光の色度範囲の根拠については、後に詳細に説明する。
<シミュレーション>
発明者らはシミュレーションを実施することにより、上記関係式(1)〜(3)を満たせばDCI色域面積比を高められること、上記混色光の色度範囲を満たすことによりDCIカバー率を高められることを明らかにした。以下、実施したシミュレーションについて説明する。
【0028】
発明者らは、本実施形態の具体例である実施例1,2のそれぞれについて、発光モジュールから出射される混色光の色度を変化させながら、DCI色域面積比およびDCIカバー率を得ることにより、DCI色域面積比およびDCIカバー率を高めるための混色光の色度範囲を求めた。実施例1,2の仕様は、以下の通りである。また、実施例1,2のR,G,B各単色光の色度は図3にプロットされている。
(実施例1)
青色LED:ピーク波長450nm、半値幅20nm、色度(0.1549、0.0253)
緑色LED:ピーク波長520nm、半値幅30nm、色度(0.161、0.7047)
赤色発光蛍光体:ピーク波長645nm、半値幅90nm、色度(0.6561、0.343)
(実施例2)
青色LED:ピーク波長450nm、半値幅20nm、色度(0.1541、0.0238)
緑色LED:ピーク波長525nm、半値幅35nm、色度(0.2029、0.704)
赤色発光蛍光体:ピーク波長645nm、半値幅90nm、色度(0.6561、0.343)
本シミュレーションでは、混色光の色度のx値を0.18、0.20、0.22、0.24、0.25、0.26、0.28、0.29、0.30、0.32、0.33、0.34、0.36、0.38、0.40、0.42、0.44、0.46の範囲で変化させ、y値を0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27の範囲で変化させた。つまり、x値が18種類、y値が21種類の合計378種類のバリエーションで色度を変化させている。
【0029】
発明者らは、まず、混色光の色度毎に発光スペクトルを求めた。混色光の色度毎の発光スペクトルは、以下の手順により得ることができる。
(a)R,G,B各単体での発光のスペクトルを特定する。これは、青色LED、緑色LEDおよび赤色発光蛍光体のそれぞれの発光スペクトルを実測することとしてもよいし、カタログ等から得ることとしてもよい。
(b)R,G,B各単色光のスペクトルと三刺激値とからR,G,B各単色光の色度を算出する。
(c)混色光の色度のバリエーションの中から、目標色度をひとつ選択する。
(d)R,G,B各単色光の色度と目標色度とを用いて、目標色度を実現するためのR,G,B各単色光の光束比を算出する。
(e)R,G,B各単色光のスペクトルを、R,G,B各単色光の光束比で重み付けをして足し合わせることにより、目標色度を実現するための発光スペクトルを得る。
【0030】
上記(c)(d)(e)のステップを、残りのバリエーションの色度でも繰り返すと、混色光の色度毎に発光スペクトルを得ることができる。
図4,5に、シミュレーションにより得られた発光スペクトルの一例を示す。図4は、実施例1の発光モジュールにおいてx値を0.26とし、y値を0.13から0.20まで変化させたときの各色度の発光スペクトルであり、図5は、実施例2の発光モジュールにおいてx値を0.26とし、y値を0.13から0.20まで変化させたときの各色度の発光スペクトルである。
【0031】
なお、発明者らは、研究開発において、発光モジュールの発光スペクトルの実測結果がシミュレーション結果から特定の傾向でズレることを見出した。図6に、シミュレーションにより得られた発光スペクトルと実測により得られた発光スペクトルを示す。このようなズレは、従来、シミュレーションのみで発光スペクトルを最適化しようとしていたときに、シミュレーション誤差として見逃されていたものである。これらの分光分布のズレは可視光(青色光)で励起される蛍光体に起因することが大きく、赤色発光蛍光体は青色LEDで励起されるだけでなく緑色(青緑色)LEDによっても励起されるからである。本実施形態では、これらの傾向を考慮して、シミュレーション結果が実測結果に近づくように適切に補正をしている。これにより、従来よりも好適な表示装置を発明することができる。
【0032】
発明者らは、さらに、以下の手順により、DCI色域面積比を得た。
(f)液晶パネル装置のR,G,B各色の分光透過率を特定する。これは、青色、緑色および赤色のカラーフィルタのそれぞれの分光透過率を実測することとしてもよいし、カタログから得ることとしてもよい。
(g)混色光の発光スペクトルを混色と誤差補正により導出し、液晶パネル装置のR,G,B各色の分光透過率とを用いて、液晶パネル装置透過後のR,G,B各色のスペクトルを算出する。
(h)液晶パネル装置透過後のR,G,B各色のスペクトルから、R,G,B各色のu’v’色度を算出する。
(i)ステップ(h)で得られたR,G,B各色の色度をu’v’色度座標上にプロットしてできる三角形の面積を算出する。これが、式(4)のS1に相当する。
(j)DCI規格で定められたR,G,B各色の色度をu’v’色度座標上にプロットしてできる三角形の面積を算出する。これが、式(4)のS2に相当する。
(k)DCI色域面積比を、式(4)を用いて算出する。
【0033】
上記(g)から(k)までのステップを、残りのバリエーションの色度でも繰り返すと、混色光の色度毎にDCI色域面積比を得ることができる。
図7,8に、シミュレーションにより得られたDCI色域面積比を示す。図7は、実施例1の発光モジュールのDCI色域面積比をxy色度座標上にプロットしたものであり、図8は、実施例2の発光モジュールのDCI色域面積比をxy色度座標上にプロットしたものである。また、図9,10は、実施例1,2のDCI色域面積比のデータである。図7,8中、B,G,Rは、それぞれ青色LED、緑色LEDおよび赤色発光蛍光体の色度である。この三角形は、表示装置が再現可能な色度の理論上の限界を示している。
【0034】
また、図11は、図7に関係式(1)〜(3)の直線を追記したものであり、図12は、図8に関係式(1)〜(3)の直線を追記したものである。
x≧0.20 ・・・(1)
y≦0.21 ・・・(2)
y≧0.75x−0.097 ・・・(3)
これらによれば、発光モジュールから出射される混色光の色度が関係式(1)〜(3)を満たすことにより、DCI色域面積比が概ね90%以上まで高められることが分かる。この関係式(1)〜(3)を満たす範囲は、従来の技術常識では想定できないものである。従来の技術常識では、表示装置の色再現性を高めるには、発光モジュールから出射される混色光の色度を白色の色度(0.333、0.333)に近づけることが望ましいと理解されているからである。本シミュレーションによりこのような構成ではxy色度座標上で下方に、混色光の色度を設定するほど表示装置の色再現性を高められるという傾向(図7,8参照)が判明し、それに基づいて関係式(1)〜(3)の範囲であればDCI色域面積比を高められることが明らかとなった。
【0035】
このような構成では、一般的な青色LEDと黄色発光蛍光体を使用した白色LEDにおいて設定することができず、青色LEDと黄色発光蛍光体の発光色の色度を結ぶ線より下方に光色色度を設定可能であることから、従来にない光源色の範囲まで含めて、発明を行ったものである。
【0036】
発明者らは、さらに、以下の手順により、適切なDCIカバー率を得るための色度範囲を求めた。
(l)ステップ(h)で得られたR,G,B各色の色度をu’v’色度座標上にプロットする。
(m)DCI規格で定められたR,G,B各色の色度をu’v’色度座標上にプロットする。
(n)ステップ(l)でプロットしてできた三角形とステップ(m)でプロットしてできた三角形とが重複する範囲の面積を評価する。
【0037】
図13〜24に、シミュレーションにより得られたu’v’色度座標上の三角形の一例を示す。図13,14は、実施例1の発光モジュールにおいて、混色光の色度のx値を0.30とし、y値を0.07から0.30まで変化させたときの様子を示す。以下に、図番、実施例および混色光の色度の対応関係を示す。
【0038】
図13,14:実施例1、x=0.30、y=0.07〜0.30
図15,16:実施例1、x=0.26、y=0.07〜0.30
図17,18:実施例1、x=0.22、y=0.07〜0.30
図19,20:実施例2、x=0.30、y=0.07〜0.30
図21,22:実施例2、x=0.26、y=0.07〜0.30
図23,24:実施例2、x=0.22、y=0.07〜0.30
図中、実線で描かれた三角形がステップ(l)により得られた三角形であり、破線で描かれた三角形がステップ(m)により得られた三角形である。これらの実線の三角形と破線の三角形とが重複する面積が広いほど、DCIカバー率が高いことになる。
【0039】
図13,14,19,20から、x=0.30ではy=0.17〜0.21のときにDCIカバー率が高くなることが分かる。また、図15,16,21,22から、x=0.26ではy=0.13〜0.21のときにDCIカバー率が高くなることが分かる。また、図17,18,23,24から、x=0.22ではy=0.10〜0.17のときにDCIカバー率が高くなることが分かる。
【0040】
すなわち、混色光の色度がxy色度座標上で、(0.22、0.17)、(0.26、0.21)、(0.30、0.21)、(0.30、0.17)、(0.26、0.13)、(0.22、0.10)を結ぶ範囲内であれば、DCIカバー率を高めることができる。
【0041】
図25は、図7の一部を拡大し、DCIカバー率が高くなる色度範囲を追記したものであり、図26は、図8の一部を拡大し、DCIカバー率が高くなる色度範囲を追記したものである。図25,26から明らかなように、DCIカバー率が高くなる色度範囲は、上記関係式(1)〜(3)を満たす範囲内に含まれている。
【0042】
本シミュレーションにより、発光モジュールから出射される混色光の色度が関係式(1)〜(3)を満たす範囲内であれば、DCI色域面積比を高められることが判明した。さらに、混色光の色度が、xy色度座標上で、(0.22、0.17)、(0.26、0.21)、(0.30、0.21)、(0.30、0.17)、(0.26、0.13)、(0.22、0.10)を結ぶ範囲内であれば、DCIカバー率を高めることができることが判明した。
【0043】
また、この範囲から従来の青色LEDとYAG蛍光体で設定可能な色度を除外し、今まで考えられていない新光色の色度範囲を設定することも可能なことが判る。例えば、一般的な青色LEDと黄色発光蛍光体を使用した白色LEDにおいて、各々の色度を色管理範囲±0.01ほどずらして、それより下に設定するなどすれば、従来に見られない新光色の色度設定も可能である。
【0044】
さらに好適には、色度条件を満足しつつ、その分光分布の特徴として緑色LEDと赤色発光蛍光体のピーク強度比が、ほぼ近似で、例えばプラスマイナス20%以内の強度差が好ましい。
【0045】
青色LEDと緑色LEDの発光ピーク強度比が、青色LEDに対して緑色LEDが1/2を下回る場合、さらには1/3を下回るような場合、好ましい色再現バランスが得られることが分かった。
【0046】
この理由として、このように分光分布の特徴を持たせた場合、全体の分光パワー中で青色LEDより光電変換効率の低い緑色LEDの光量を小さく、さらには、LEDの励起によって発光する光変換効率の低い赤蛍光体の光量を小さく設定することとなることから、トータルで液晶画面上での光電変換効率を高めることが可能となったと考えられる。
【0047】
組み合わされる液晶パネルのRGBの各々の分光透過率を勘案すれば、青フィルタの透過率が低いため、一般には等エネルギー白色点(0.33, 0.33)よりx値、y値が共に低い点にLEDの光色が設定されることが多い。
【0048】
その為に、青色LEDの発光ピークが高くなるが、緑色LEDもそれに合わせて大きく下げてしまうと、最終的に液晶パネルで白色を表示する際の輝度が下がってしまう。よって、視感度の高い緑色光の輝度はある程度確保する必要がある。
【0049】
また、波長が600nmを超える赤色光に関しては、赤フィルタの透過率は比較的高いものの、赤色光に対する視感度が低い。そのため、最終的に液晶パネルで白色を表示する際の輝度を確保するには、赤色光の輝度もある程度確保する必要がある。
【0050】
これらを勘案すると、xy色度座標上でのy方向の下限も自ずと本発明のごとく制限され、y値が同じであれば従来の青色LEDと黄色発光蛍光体の組み合わせにより得られる色度よりもx値が大きいほうが、緑色光と赤色光が確保されて色再現性が高まるということになる。本発明は、このような新たな知見に基づいて為されたものである。
【0051】
色再現性の観点からは、緑色LEDと赤色発光蛍光体のピーク強度が同等、あるいは、緑色LEDより赤色発光蛍光体のピーク強度が高いほうが好ましい。
また、本発明によれば、例えば、供給電流比率を青色LEDと緑色LEDで変化させることで、各々のLED間の発光バランスを意図的に変化させ、色再現を可変させることも可能である。
<変形例>
以上、本発明を実施形態に沿って説明したが、本発明はこの実施形態に限られない。例えば、以下のような変形例が考えられる。
(1)実施形態では、直下型のバックライト装置を開示しているが、本発明は、これに限らず、エッジライト型のバックライト装置としてもよい。
(2)実施形態では、青色LEDおよび緑色LEDを1個ずつ含む発光モジュールを開示しているが、本発明は、これに限らない。例えば、青色LEDおよび緑色LEDを複数個ずつ含む発光モジュールでもよい。図27に、発光モジュールの変形例として、基台17に青色LED19および緑色LED20が7個ずつ実装された発光モジュール5aを示す。
(3)光学シート類の構成は多様なバリエーションが存在する。本発明は、実施形態の構成に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば、液晶表示装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 表示装置
2 バックライト装置
3 液晶パネル装置
4 筐体
5 光源
5、5a 発光モジュール
6 拡散シート
7,16 偏光板
8 TFT基板
9,13 電極
10,12 配光膜
11 液晶層
14 カラーフィルタ
15 ガラス基板
16 偏光板
17 基台
18 外部リード
19 青色LED
20 緑色LED
21 透光性樹脂
22 赤色発光蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色発光素子と緑色発光素子と赤色発光蛍光体とを組み合わせた発光モジュールであって、
前記青色発光素子の発光スペクトルのピーク波長が445nm以上460nm以下の範囲内にあり、その半値幅が15nm以上35nm以下の範囲内にあり、その色度がxy色度座標上で(0.16111、0.01379)(0.15664、0.01771)(0.15099、0.02274)(0.14396、0.0297)(0.1355、0.03988)(0.12412、0.0578)(0.1096、0.08684)(0.14、0.08)(0.15、0.06)を結ぶ範囲内にあり、
前記緑色発光素子の発光スペクトルのピーク波長が515nm以上535nm以下の範囲内にあり、その半値幅が25nm以上40nm以下の範囲内にあり、
前記赤色発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が620nm以上660nm以下の範囲内にあり、その半値幅が50nm以上100nm以下の範囲内にあること
を特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記青色発光素子、前記緑色発光素子および前記赤色発光蛍光体の混色光の色度がxy色度座標上で、
x≧0.20
y≦0.21
y≧0.75x−0.097
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記青色発光素子、前記緑色発光素子および前記赤色発光蛍光体の混色光の色度がxy色度座標上で、(0.22、0.17)、(0.26、0.21)、(0.30、0.21)、(0.30、0.17)、(0.26、0.13)、(0.22、0.10)を結ぶ範囲内にあること
を特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記緑色発光素子の色度がxy色度座標上で、(0.03885、0.81202)、(0.0743、0.8338)、(0.15472、0.80586)、(0.22962、0.75433)、(0.3016、0.69231)、(0.33736、0.65885)、(0.33736、0.6)、(0.03885、0.6)を結ぶ範囲内にあること
を特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記赤色発光蛍光体の色度がxy色度座標上で、(0.62704、0.37249)、(0.627104、0.342896)、(0.72997、0.24003)、(0.72997、0.27003)を結ぶ範囲内にあること
を特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記緑色発光素子の発光スペクトルのピーク強度が、前記赤色発光蛍光体の発光スペクトルのピーク強度のプラスマイナス20%の範囲内にあること
を特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項7】
前記青色発光素子と前記緑色発光素子の発光スペクトルのピーク強度が、前記青色発光素子に対して前記緑色発光素子が1/2を下回ること
を特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項8】
請求項1に記載の発光モジュールを備えたバックライト装置。
【請求項9】
請求項8に記載のバックライト装置を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−69572(P2012−69572A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210898(P2010−210898)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】