説明

発光体用フレキシブル基板および発光体装置

【課題】曲面形成が可能で表示や照明に適した発光体用フレキシブル基板および発光体装置を得る。
【解決手段】板状の金属基体11と、金属基体11の一方の面に接合する絶縁層12と、該絶縁層12に接合され配線パターンに形成された導体層13と、を有する積層基板10において、前記金属基体11は屈曲可能な金属基板でなり、前記絶縁層12は液晶ポリマーでなり前記金属基板11に直接接合され、前記積層基板10は前記導体層13側が窪むとともに前記の金属基体11側が出っ張るよう形成された窪み部14が複数個並設され、前記窪み部14に発光素子が実装されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の発光素子が実装される発光体用フレキシブル基板および発光体装置にかかわる。
【背景技術】
【0002】
発光装置は、各種のランプ類、文字、記号、画像等による情報伝達あるいは電飾のために用いられる表示装置、更に照明灯、液晶表示のバックライト等に用いられる照明装置等に広く使用される。通常の表面実装部品(SMD:Surface Mount Device)である発光体は、その発光素子が平板状の絶縁基板の一主面に固着されて樹脂封止され、発光素子の電極が絶縁基板上の配線あるいはそのランド部にワイヤーボンディング等により接続する構造になる。ここで、上記配線は絶縁基板の一主面(表面)に配設され、更に他主面(裏面)に引き出される。そして、この発光体は例えばプリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)等の配線板の回路配線等に電気接続され取り付けられる。
【0003】
その他に、従来からの発光素子用パッケージとして上記配線の替わりにリードフレームが用いられる。また、発光体装置の高輝度化を容易にするために、すり鉢状のキャビティをもつセラミックス成形体が用いられ、発光素子がそのキャビティ内に載置される構造のものがある。ここで、上記キャビティの側面には導体からなる光反射層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−305834号公報
【特許文献2】特開平9−45965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、LEDを用いた照明灯等の照明装置では、例えば白色光の高輝度化あるいは大光量化が加速している。しかし、上述したような従来の発光体装置では、その高輝度あるいは大光量のための大出力によるLEDの発熱に対応できる充分な放熱性の確保できない虞がある。高効率の放熱ができないと、LEDの経時的な特性劣化が生じ易くなる。そして、LEDの発光効率の劣化により短寿命化の虞が生じる。その他に、発光素子の実装基板において、光照射による絶縁基板の例えば絶縁性、耐熱性等の劣化が起こり易くなる。これ等のために、高い信頼性を有した発光体装置の実現が難しくなる。
【0006】
また、表示装置あるいは照明装置では、例えば球面、円筒面のような曲面、あるいは二次元平面からの面発光が高精度に制御できるように、フレキシブルで自在な形状に変更できる発光体装置が求められている。
【0007】
本発明は、大光量化に対応できる放熱性と高い信頼性を有する発光体装置を可能にすることができる発光体用フレキシブル基板、およびその発光体装置を提供することを主目的とする。また、量産性に優れた発光体用フレキシブル基板を提供し、例えば高輝度あるいは大光量の発光体装置を安価に提供できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態にかかる発光体用フレキシブル基板は、板状の金属基体と、該金属基体に一方の面が接合された絶縁層と、該絶縁層の他方の面に接合され配線パターンに形成された導体層とを有する積層基板からなる発光体用フレキシブル基板において、前記金属基体は屈曲可能な金属基板でなり、前記絶縁層は液晶ポリマーでなり前記金属基板に直接接合され、前記積層基板は前記導体層側が窪むとともに、前記の金属基体側が出っ張るよう形成された窪み部が複数個並設され、前記窪み部の前記導体層側に発光素子が実装されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる発光体用フレキシブル基板の一例を示す一部断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる発光体用フレキシブル基板の他例を示す一部断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる発光体用フレキシブル基板の製造方法の一例を示す製造工程別断面図である。
【図4】同上発光体用フレキシブル基板の一製造工程における絞り成形加工の説明に供する図であり、(a)はその説明断面図、(b)は(a)のX−X矢視断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかる発光体用フレキシブル基板の変形例の説明に供するための概略断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる発光体装置の2例を示した断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる発光体装置の別の2例を示した断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかる発光体装置の複数例を示した説明平面図である。
【図9】同上発光体装置による面発光の説明に供するための概略側面図である。
【図10】は本発明の第2の実施形態にかかる発光体装置の製造方法の一例を示す製造工程別断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は一部省略される。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる。
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態にかかる発光体用フレキシブル基板およびその製造方法について図1ないし図5を参照して説明する。
【0012】
図1は発光体用フレキシブル基板を構成する積層基板10を示す。この基板は屈曲可能な板状の金属基体11の一主面に液晶ポリマー絶縁層12が形成され、その上面に配線パターンを形成した導体層13が配設された積層フレキシブル基板である。更に、金属基体11、液晶ポリマーからなる絶縁層12および導体層13からなる積層板の所定の領域において、複数の窪み部(キャビティ部)14が設けられている。ここで、窪み部14は、積層板の上面である導体層13側が窪んで形成された凹部14Aと、それに対応して下面である金属基体11側が凸状に出っ張る凸部14Bを有している。窪み部14は積層板の上面および下面で凹凸状になって配列されている。金属基体11と液晶ポリマー絶縁層12、および液晶ポリマー絶縁層12と導体層13は相互に接着剤なしに直接的に接合される。
【0013】
図2に示す発光体用フレキシブル基板を構成する積層基板20では、図1で説明した積層基板10の窪み部14の領域において、金属基体11の主面に液晶ポリマー絶縁層12より熱伝導率の高い平らな突起部15が設けられている。突起部15は、液晶ポリマー絶縁層12内に所定の厚さに埋め込まれ、導体層13に近づくように形成されている。
【0014】
金属基体11は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、Al−Cu合金等の軟質性を示し延展性のある金属シートであり、その厚さが例えば50μm〜300μm程度になる。
【0015】
液晶ポリマー絶縁層12は、耐熱性があり、光反射性の高い熱可塑性樹脂が好ましく、その厚さが15μm〜100μm程度になる。そして、発光体用フレキシブル基板の製造方法で説明するが、フィルム状の液晶ポリマー絶縁層12は金属基体11への熱圧着、あるいは上述した窪み部14を形成するための絞り成形加工において、液晶特性が余り変化しないものが好適である。
【0016】
そのような液晶ポリマーとして、例えば、溶融状態でも液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーがあり、具体的には、サーモトロピック液晶ポリエステルやサーモトロピック液晶ポリエステルアミドが挙げられる。その他に、例えばキシダール(商品名.Dartco社製)、ベクトラ(商品名.Clanese社製)等の多軸配向の熱可塑性ポリマーがある。また、他の絶縁性樹脂を添加・配合し変性したものであってもよい。そして、ベクスターFAタイプ(融点285℃)、ベクスターCTタイプ(融点310℃)、BIACフィルム(融点335℃)などが例示される。
【0017】
液晶ポリマーは熱膨張係数が17〜18×10−6/℃であり、屈曲可能な金属基板であるCu、Al、ステンレス鋼の熱膨張係数に近い。またこれらの金属に直接的に熱圧着により接合されて積層体になる。
【0018】
積層体にすることにより、液晶ポリマー絶縁層を薄くしても、絞り成形加工時に亀裂が生じることがない。薄い絶縁層構造は熱抵抗を低減できるので、マウントされる発光素子からの熱を効率よく金属基体に伝える放熱性を高めることがでる。
【0019】
さらに液晶ポリマー絶縁層は白色であり、発光素子の光反射を良好にする。
【0020】
導体層13は、例えばCu箔のような金属箔がパターニングされ、あるいはその表面にメッキ層が形成された、発光素子の搭載されるダイランド、回路配線、外部用端子等である。そして、導体層13は、後述される発光素子のような実装部品に電気接続するように液晶ポリマー絶縁層12上に所要の配線パターン形状に配設されている。ここで、金属箔は、その厚さが例えば10μm〜35μm程度で適宜に決められる。メッキ層としては、例えば金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)の単層、Ni/AuあるいはNi/Agの複合層が好適である。これ等の導体層13およびメッキ層は延展性のあることが好ましい。
【0021】
窪み部14は、皿状で内部にある底面部14aに発光素子のような実装部品が搭載(以下、マウントともいう)される凹部領域を有する。ここで、側面部14bは窪み部14の凹部14Aの外部の方向に広がるように一定角度に傾斜している。そして、その傾斜角度は所要の形状に適宜に決められる。このように、窪み部14は、積層基板10の上面から下面に逆錐台形例えば逆円錐台形、逆楕円錐台形、逆角錐台形等となり、その深さは実装部品の寸法により適宜に決められる。一方、金属基体11は例えば錐台形に突出し凸部14Bを形成する。
【0022】
放熱用の突起部15は、発光素子のような実装部品から発生する熱を放熱し易くするものであり、発光素子のような実装部品が搭載される底面部14aに位置する箇所に設けられる。突起部15には、液晶ポリマー絶縁層12よりも熱伝導率の高い素材が用いられ、導体材料、あるいは熱硬化性樹脂と金属との混合物などが好適である。突起部15は平坦が好ましく、厚さは液晶ポリマー絶縁層12の厚さを考慮して適宜に決められる。液晶ポリマー絶縁層12は突起部15と底面部14aに挟まれた領域の厚さが他の領域よりも薄くなる。なお、後述されるが、発光素子のような実装部品への通電形態によっては、突起部15が液晶ポリマー絶縁層12を貫通し上記実装部品の外部接続用端子と電気接続するようになっても構わない。
【0023】
次に、発光体用フレキシブル基板の製造方法の一例について説明する。以下、図2で説明した積層基板20の場合について述べる。
【0024】
図3(a)に示すように、例えば厚さが100μm程度のAl製の金属基体11を用意する。そして、例えばスクリーン印刷等により、金属基体11の一主面に熱伝導性ペーストを貼着し、上部が平坦な突起部15を形成する。ここで、熱伝導性ペーストとしては、例えばAg、Cu、Au等の金属粉体を熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂中に分散させたものが好適に使用できる。
【0025】
次に、図3(b)に示すように、液晶ポリマー絶縁層12となる例えば厚さ50μm程度の液晶ポリマーフィルム12aと、例えば厚さ20μm程度の金属箔16とを金属基板11の上方に重ねる。その後に、金属基体11、液晶ポリマーフィルム12aおよび金属箔16に所定の加熱加圧の処理である熱プレスを行う。ここで、加熱の温度は、液晶ポリマーのガラス転移点Tgあるいは融点Tmより低い温度に設定される。加熱温度では、特に液晶ポリマーの配向性が変わらないようにするのが好ましい。また、加圧の圧力は30〜100kgf/cm程度の範囲で適宜に決められる。なお、この熱プレスは減圧雰囲気下が好ましい。
【0026】
このようにして、図3(c)に示すように、金属基体11、液晶ポリマーフィルム12aおよび金属箔16が熱圧着し積層体となる。これにより、突起部15は、その上部が金属箔16との間の距離が5〜10μm程度に接近した位置になるように液晶ポリマー12内に埋め込まれる。
【0027】
次に、図3(d)に示すように、金属箔16をパターニングして導体層13の配線パターン13a,13bに形成する。そして、導体層13の表面にメッキ層17を形成する。
【0028】
次に、図3(d)状態になった積層基板に対してプレス機による絞り成形加工を施し、所要の窪み部14を形成する。絞り成形加工では、例えば図4に示すような上パンチ(ポンチ)21と下パンチ(ダイス)22により平板状のフレキシブル基板に対する熱プレスを行う。この加温化で実施する熱プレスの温度は、図3(c)で説明した熱圧着のための熱プレスの温度以下にするとよい。これは、互いに接合している金属基体11、液晶ポリマー絶縁層12および導体層13の間における剥がれの発生を防止するためである。また、この熱プレスにおいては、金属基体11等の酸化を防止する上で、不活性ガスあるいは還元性ガスの雰囲気下での絞り成形加工が好ましい。更に、絞り成形加工では、真空成形法、圧空成形法等を採用することもできる。
【0029】
絞り成形加工で用いられる上パンチ21および下パンチ22における金型は、窪み部14の所要の形状に合わせて種々の形状になる。図4では、上パンチ21の雄部21aはそのX−X切断面23が円形になる場合が示されている。これに対応し、下パンチ22の雌部22aも円形状になる。
【0030】
上記絞り成形加工では、窪み部14が形成される領域の金属基体11および導体層13は引張り応力あるいは一部の圧縮応力を受ける。ここで、金属基体11および導体層13は、軟質性を示し延展性があることから、塑性変形する。このようにして、絞り成形加工における引張応力あるいは圧縮応力は容易に緩和され、それ等の残留応力あるいは残留歪みは小さくなり、高い信頼性を有する発光体用フレキシブル基板が得られる。なお、導体層13は、そのパターン形状の工夫によっても上記応力による破断等は容易に回避される。
【0031】
上述したような製造方法により、図2で説明したような積層基板20が作製される。
【0032】
本実施形態の発光体用フレキシブル基板は、軟質性のある金属基体11上に液晶ポリマー絶縁層12および導体層13が積層され、一体接合する構造になる。そして、所定の領域に複数に配列された窪み部14が形成されている。このために、窪み部14に搭載される例えば発光素子のような実装部品から生じる熱が金属基体11を通して容易に放熱できるようになる。なお、窪み部14の側面部14bを外部の方向に広がるように一定角度に傾斜させることで、金属基体11の表面積が広くなるので効率的に放熱できるようになる。また、多数の窪み部14を有する発光体用フレキシブル基板であっても、金属基体11上に液晶ポリマー絶縁層12および導体層13が積層されることで、多数の窪み部14形成時に金属基体11が補強板の役割を果たし、液晶ポリマー絶縁層12の亀裂等の不具合を防ぐことができる。
【0033】
したがって本実施形態において、液晶ポリマーフィルム単独で熱プレスすると亀裂が発生する薄いフィルムを用いても亀裂のない絶縁層を得ることができる。
【0034】
そして、上記積層基板において、その一体接合は通常の熱プレスにより容易に行うことができる。複数に配列される窪み部14は、所望の形状の金型を適用し、通常の絞り成形加工により簡便に形成することができる。このため、その積層基板は量産性に優れ低コスト化が容易になる。
【0035】
次に、発光体用フレキシブル基板のその他の変形例について図5を参照して説明する。図5は、積層基板10,20で説明した皿状の窪み部14を拡大した概略断面図である。
【0036】
図5(a)に示す積層基板では、積層基板10,20における窪み部14の側面部14bは粗面になり、例えば波打つように形成される。この粗面は、金属基体11、液晶ポリマー絶縁層12および導体層13の表面に形成されることとなる。このようにすることにより、金属基体11の表面積が、より広くすることができるため、さらに効率的に放熱することができる。また、底面部14aに搭載された発光素子から出射する光の拡散が、側面部14b粗面の光乱反射によって生じ易くなり、発光の外方向への指向性が抑えられる。そして、発光素子からの発光強度の出射角度依存性が低減し、前方向への照明の一様性が向上する。このような粗面は、その粗さが可視光を乱反射できる程度に形成されていればよい。さらにまた、窪み部14が波打つように形成されることで強度が増し、窪み部14が変形することを防ぐことができる。
【0037】
図5(b)に示す積層基板では、積層基板10,20における窪み部14の側面部14bの表面は凹面になる。このようにすると、底面部14aの発光素子から出射する光の拡散が抑えられて、外方向への指向性が高くなる。この場合には、例えば底面部14aに垂直方向に光が出射し易くなり、その方向での発光強度を大きくすることができる。
【0038】
さらに、図5(c)に示す積層基板では、積層基板10,20における窪み部14の側面部14b表面は共に一定角度の傾斜面である。しかし、図1,2の場合と異なり、その傾斜角度が側面部14bの外部に開く方向により異なり不均一になる。このようにすると、発光素子からの出射光を定まった斜め方向に集光することができる。
【0039】
上記変形例で用いられる絞り成形加工では、上パンチ21および下パンチ22における金型は、図5で説明した窪み部14の所要の形状に合わせて種々の形状になる。そして、図4に示したX−X切断面23は例えば楕円形状になってもよい。あるいは、任意の閉曲面形状、三角形状、方形状、多角形状になるように形成されてもよい。
【0040】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、本発明の発光体用フレキシブル基板を用いた発光体装置およびその製造方法について図6ないし図10を参照して説明する。
【0041】
図6に示す発光体装置は、第1の実施形態にかかる積層基板10の窪み部14領域に発光素子を実装した後、それを各複数の発光素子を搭載した発光体装置に裁断する。導電層13は窪み部14の液晶ポリマー絶縁層12の側面部12aと底面部12b上に延在している。第1の配線パターン13aはリード部13a1とマウント部13a2からなる。リード部13a1は側面部12aに、またマウント部13a2は底面部12bに配置される。
【0042】
第2の配線パターン13bはリード部13b1を有し、平面領域の配線から側面部12a上に延在している。このリード部13b1の先端が底面部12bまで延び端子13b2になっている。
【0043】
図6(a)の発光体装置30では、導体層13の第1の配線パターン13aのマウント部13a2上に発光素子31がフェイスアップにマウントされている。発光素子31の表面に設けられた外部接続用端子である2つの電極(図示せず)の一方が第1のワイヤ32により第1の配線パターン13aに接続され、他方の電極が第2のワイヤ34により第2の配線パターン13bにボンディングされている。そして、発光体装置30の端部における第1の配線パターン13aのマウント部13a2および第2の配線パターン13bの端子13b2が発光体端子になる。
【0044】
そして、透光性樹脂材料により封止樹脂35が窪み部14に形成され、発光素子31、第1のワイヤ32、第2のワイヤ34等がこの封止樹脂35により窪み部14に封止され実装される。
【0045】
これに対して、図6(b)の発光体装置40では、発光素子31はフリップチップ構造に実装されている。すなわち、発光素子31の2つの電極(図示せず)の一方が、Au−錫(Sn)系合金、ハンダやAuバンプからなる第1の導体バンプ36によりマウント部となる第1のパターン13aの端子に接続される。同様に、他方の電極が第2の導体バンプ38により第2の配線パターン13bの端子に接続される。その他は、図6(a)の場合と同じである。
【0046】
図7に示す発光体装置は、第1の実施形態にかかる積層基板20の窪み部14領域に発光素子31を実装した後、それを複数の発光素子をもつ組ごとに裁断して得られる。図7(a)の発光体装置50では、発光素子31は窪み部14内において、液晶ポリマー絶縁層12を介して突起部15上に配置されている第1の配線パターン13aのマウント部13a2にフェイスアップにマウントされている。その他は、図6(a)の場合と略同じになっている。そして、図7(b)の発光体装置60では、発光素子31は窪み部14内において、液晶ポリマー絶縁層12を介して突起部15上にフリップチップ構造に実装される。その他は、図6(b)の場合と略同じになっている。
【0047】
発光素子31は、例えばGaN系半導体のようなIII族窒化物系化合物半導体からなり紫外光から青色光を発光する波長変換型LED素子が使用される。その他に、緑色光から赤色光、赤外光を発光するLED素子やレーザ素子(LD素子)を用いることができる。
【0048】
封止樹脂35は、無色透明なエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂あるいはBTレジン等が好適である。更に、封止樹脂35中での光の分散材として発光の損失がなく、無色透明で高反射率の材料が添加されるとよい。そのような材料として、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化バリウム、酸化チタン、硫酸バリウム、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0049】
そして、発光素子31が波長変換型LED素子の場合には、封止樹脂35に所要の蛍光体が添加される。そのような蛍光体は、半導体LED素子からの光により励起され長波長側にシフトした波長で発光するものである。例えば、A12:M(A:Y、Gd、Lu、Tb等 B:Al、Ga M:Ce3+、Tb3+、Eu3+、Cr3+、Nd3+、Er3+等)、ABO:M(A:Y、Gd、Lu、Tb B:Al、Ga M:Ce3+、Tb3+、Eu3+、Cr3+、Nd3+、Er3+)などのアルミン酸塩、又は、(Ba,Ca,Eu)Si:Eu2+などのオルトケイ酸塩が例として挙げられる。
【0050】
そして、例えばGaN系の半導体LED素子からの青色光によりYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系の蛍光体を励起し、黄色系の蛍光を出射させそれらの混合色である白色光を生成する。あるいは、半導体LED素子からの紫外光により上記封止樹脂35中に混在する複数の蛍光体を励起し、例えば色光の三原色の赤、緑、青の蛍光を出射させて白色光を生成する。
【0051】
発光体装置の構造としてはその他に種々の形態が考えられる。上記発光体装置は、発光素子31の2つの外部接続用電極が片面配置になる場合のものであった。III−V族化合物半導体からなる発光素子のように、2つの電極が発光素子の表面と裏面の両面配置になる場合がある。このような発光素子を実装する場合には、導電性のある突起部15が液晶ポリマー絶縁層12を貫通し導体層13に電気接続する積層基板を使用するとよい。あるいは、突起部15がその上の液晶ポリマー絶縁層12を貫通する導体バンプ等の導通部材により接続する積層基板であってもよい。
【0052】
突起部15が導体層13に電気接続する積層基板を用いる場合には、発光素子は、その裏面が突起部15に電気接続する第1の配線パターン13aに例えばAg等の導電性ペーストによりマウントされる。そして、その表面の1つの電極がボンディングワイヤにより第2の配線パターン13bに電気接続される。このような発光素子が実装される発光体装置では、金属基体11は、発光素子の放熱機能と共に発光体端子としても機能する。
【0053】
次に、本発明の発光体用フレキシブル基板に複数の発光素子を配列し実装する発光体装置について説明する。図8に示す発光体装置は、例えば、本発明の発光体用フレキシブル基板に配列された複数の窪み部14にそれぞれ発光素子を実装した後、それを所定の寸法に裁断して得られる。
【0054】
図8(a)に示す発光体装置70は、例えば積層基板10,20の複数の窪み部14にそれぞれ発光素子31が実装され、その所要数(図では7個)の発光素子31が直列に一次元配列した構造になっている。これ等の発光素子31は導体層13により直列接続され、第1の発光体端子42および第2の発光体端子44を通して外部から通電できるようになっている。
【0055】
図8(b)に示す発光体装置80では、図8(a)に示したように所要数(図では14個)の発光素子31が直列に一次元配列した構造になっているが、その配列が途中で折り返された構造になっている。そして、第1の発光体端子42および第2の発光体端子44は発光体装置80の一端部に配置されるようになっている。図8(b)では折り返しは一回になっているが複数回になっても構わない。
【0056】
そして、図8(c)に示す発光体装置90は、例えば積層基板10,20の複数の窪み部14にそれぞれ発光素子31が実装され、その所要数の発光素子31が直並列に二次元配列した構造になっている。ここで、図8(a)に示したような一次元方向に配列された複数の発光素子31からなる発光体装置70が並列に電気接続するように集積されている。これ等の二次元配列された所要数の発光素子31は、導体層13により接続され、第1の発光体端子42および第2の発光体端子44を通して外部から通電できるようになっている。
【0057】
発光体装置としてはその他に種々の形態が考えられる。発光色の異なる発光素子31が発光体用フレキシブル基板に集積する構造になっていてもよい。発光素子は赤色、緑色、青色の色光の三原色の可視光を出射する構成とし、光を集めて白色光が取り出されるようになっていてもよい。この場合、封止樹脂35は、例えば無色透明なエポキシ樹脂、アクリル樹脂あるいはシリコーン樹脂が極めて好適に使用される。
【0058】
上記発光体装置は、表示装置あるいは照明装置において、二次元平面からの面発光の他に例えば球面、円筒面のような曲面からの面発光を容易にする。図9(a)では、発光体装置70,80,90は表示装置あるいは照明装置に平面状に取り付けられている。この場合には、例えば発光体装置90においては、大光量の出射光46が容易に得られる。
【0059】
また、図9(b)では、発光体装置70,80,90はフレキシブルで自在な形状に変更できることから、表示装置あるいは照明装置において、円筒面のような曲面からの出射光46が容易に得られる。図9(b)では、発光体装置70,80,90は表示装置あるいは照明装置に円筒状やらせん状に取り付けられる。
【0060】
次に、上記発光体装置の製造方法の一例について説明する。ここで、図2で説明した積層基板20に発光素子を実装する発光体装置の場合について述べる。図3で説明したような方法で作製した積層基板20において、図10(a)に示すように、導電性ペーストあるいは非導電性ペーストにより、その窪み部14内の第1の配線パターン13aに発光素子31を接着させマウントする。ここで、例えばGaN系半導体の裏面のようにサファイア基板からなり絶縁性を有する場合には、導電性ペーストあるいは非導電性ペーストが用いられ、GaP、GaAsP系、GaAlAs系半導体の裏面のように導電性がある場合には、導電性ペーストが用いられる。
【0061】
次に、図10(b)に示すように、例えばGaN系半導体の発光素子31のように2つの電極が片面配置になる場合、第1のワイヤ32および第2のワイヤ34により、それぞれの電極は第1の配線パターン13aおよび第2の配線パターン13bにボンディングされる。これ等のワイヤは例えばAu細線あるいはAl細線からなる。
【0062】
そして、図10(c)に示すように、積層基板20の窪み部14内に搭載した発光素子31、第1のワイヤ32、第2のワイヤ34等を封止樹脂35により封止する。この樹脂封止は、例えば100℃〜150℃程度の温度で数時間の加熱処理により熱硬化させることができる熱硬化性樹脂を用いるとよい。このような温度では、そのガラス転移点Tgあるいは融点Tmが200℃以上になる液晶ポリマー絶縁層12は、その特性変化を全く生じさせないようにすることができる。このようにして、所要数の発光素子31が積層基板20の複数の窪み部14の領域に実装される。
【0063】
封止樹脂35は、窪み部14において液晶ポリマー絶縁層12樹脂と接着しているために、その剥離等の不具合はなく極めて高い気密封止が可能になる。そして、高い信頼性を有する発光体装置が得られる。
【0064】
次に、発光素子31を実装した積層基板20を所要の形状に裁断して個片化する。このようにして、例えば図6ないし図8で説明したような発光体装置が得られる。
【0065】
本実施形態の発光体装置では、金属基体11が放熱板になり、その発光素子31の動作時において発生する熱が効果的に金属基体11を通して放熱される。フェイスアップにマウントされた発光素子31からの熱は、その裏面および第1のワイヤ32から第1の配線パターン13aに伝熱される。そして、薄く形成された液晶ポリマー絶縁層12を通り、突起部15あるいは金属基体11に伝熱される。また、フリップチップ構造の実装のようなフェイスダウンにマウントされた発光素子31の場合には、第1の導体バンプ36から第1の配線パターン13a、液晶ポリマー絶縁層12を通り金属基体11に伝熱される。ここで、液晶ポリマー絶縁層12を貫通する突起部15あるいは導通部材が形成されている場合は、発生熱は、第1の配線パターン13aから直接に金属基体11に伝熱される。
【0066】
上記金属基体11は、発光素子31の実装される窪み部14において、液晶ポリマー絶縁層12に裏面から接着して接合し、パッケージ下面を凸状に覆うようになることから、上記伝導熱を効率的に放熱することができる。このようにして、本実施形態の発光体装置は、その高輝度化あるいは大光量化に対応した高い放熱性を有することができるようになる。
【0067】
また、金属基体11は、窪み部14の側面部14b、底面部14aの一部において、発光素子31からの光を液晶ポリマー絶縁層12裏面から発光体装置の前方向に反射し、発光体装置を高輝度にする。
【0068】
そして、本実施形態では、発光体装置において液晶ポリマー絶縁層12が優れた特性を発揮する。この液晶ポリマー絶縁層12は、高耐熱性である上に、広い波長領域に亘り高い光反射率を有している。このため、窪み部14の側面部14b、底面部14aの一部において、発光素子31の光が発光体装置の前方向に効率的に取り出され、発光体装置の高輝度化が容易になる。
【0069】
また、液晶ポリマー絶縁層12の熱伝導率は例えば高耐熱性のポリイミド系樹脂の10倍以上になり、またその低誘電率および高い絶縁耐性によりその薄膜化が可能になる。このために、液晶ポリマー絶縁層12に接合している金属基体11への発光素子31からの伝熱効率が高くなる。更に、高い紫外線照射耐性を有することから、例えば紫外線発光の波長変換型LED素子を用いた大光量の白色光の発光体装置が可能になる。
【0070】
このようにして、本実施形態の発光体装置は、その高輝度化あるいは大光量化においても高い信頼性を保持し、その長寿命化が容易になる。
【0071】
また、本実施形態の発光体装置は、フレキシブルで自在な形状に変形できることから、表示装置あるいは照明装置において、例えば球面、円筒面のような曲面、あるいは二次元平面等、所望の面発光が容易に得られる。
【0072】
そして、製造工程において複数の発光体装置を一枚の大面積の発光体用フレキシブル基板の原板に複数個集積することができることから、コンパクトで大光量化に適する安価な発光体装置が可能になる。
【0073】
なお、便宜上、明細書においては「上面」および「下面」という文言を用いて説明した。「上面」と「下面」とは、互いに表裏の関係にあることを意味し、空間的な上下を意味するものではない。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0075】
上記実施形態において、発光素子が発光体用フレキシブル基板の窪み部の底面部に搭載される場合について説明している。その他に、発光素子は、例えばその支持部材、固定部材等の付属部品を介して底面部に搭載され、これ等の実装部品と共に実装されるようになっていてもよい。また、複数の窪み部は発光体用フレキシブル基板に等間隔に形成されなくてもよい。発光素子は発光ダイオード以外に、有機EL発光素子等を用いることができる。
【0076】
また、上記実施形態の発光体装置の製造においては、その個片化のための発光体用フレキシブル基板の裁断が樹脂封止の後工程になる場合について説明しているが、その裁断の後の発光素子用基板に発光素子の搭載、金属細線によるワイヤーボンディング、樹脂封止を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10,20…積層基板、11…金属基体、12…液晶ポリマー絶縁層、12a…液晶ポリマーフィルム、13…導体層、13a…第1の配線パターン、13a1…リード部、13a2…マウント部、13b…第2の配線パターン、13b1…リード部、13b2…端子、14…窪み部、14A…凹部、14B…凸部、14a…底面部、14b…側面部、15…突起部、16…金属箔、17…メッキ層、21…上パンチ、21a…雄部、22…下パンチ、22a…雌部、23…X−X切断面、30,40,50,60…発光体装置、31…発光素子、32…第1のワイヤ、34…第2のワイヤ、35…封止樹脂、36…第1の導体バンプ、38…第2の導体バンプ、42…第1の発光体端子、44…第2の発光体端子、46…出射光、70,80,90…発光体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の金属基体と、該金属基体に一方の面が接合された絶縁層と、該絶縁層の他方の面に接合され配線パターンに形成された導体層とを有する積層基板からなる発光体用フレキシブル基板において、
前記金属基体は屈曲可能な金属基板でなり、前記絶縁層は液晶ポリマーでなり前記金属基板に直接接合され、前記積層基板は前記導体層側が窪むとともに、前記の金属基体側が出っ張るよう形成された窪み部が複数個並設され、前記窪み部の前記導体層側に発光素子が実装されるようになっていることを特徴とする発光体用フレキシブル基板。
【請求項2】
前記窪み部は絞り成形加工で皿状に形成され底面部と側面部を有している請求項1記載の発光体用フレキシブル基板。
【請求項3】
前記金属基体は、前記窪み部の前記底面部において前記金属基体の前記絶縁層との接合部に、前記絶縁層内に埋め込まれるよう設けられた突起部を有することを特徴とする請求項2記載の発光素子用フレキシブル基板。
【請求項4】
前記窪み部の前記側面部の前記金属基体は波打つ形状に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の発光素子用フレキシブル基板。
【請求項5】
前記積層基板は、金属シートからなる前記金属基体、前記前記絶縁層を形成する液晶ポリマーフィルムおよび前記導体層がこの順で積層され、熱プレスによる絞り成形加工によって前記液晶ポリマーの絶縁層側に形成された底面部と側面部のある皿状の凹部と、前記金属基体側に形成された凸部からなる窪み部が設けられており、前記導体層が前記窪み部の前記底面部と前記側面部に設けられ前記底面部に発光素子を固定するマウント部を有している請求項1乃至4のいずれかに記載の発光体用フレキシブル基板。
【請求項6】
前記金属シートの厚さが50μm〜300μm、前記液晶ポリマーフィルムの厚さが15μm〜100μm、前記導体層は金属箔でなり10μ〜35μm厚である請求項5記載の発光体用フレキシブル基板。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の発光体用フレキシブル基板と、透光性絶縁体の封止により前記窪み部に実装された複数の発光素子とを具備し、前記発光体用フレキシブル基板が屈曲形状とされることを特徴とする発光体装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−216808(P2012−216808A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−70614(P2012−70614)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】