説明

発光物の判別方法

【課題】本発明は、細胞および微生物を含有するか含有する可能性のある検体に対し蛍光色素を用いて検出する方法であり、従来から知られている方法と比較して正確性を向上させた発光物の判別方法を提供すること。
【解決手段】蛍光色素で染色した細胞または微生物を光源2で励起し、蛍光発光させその励起し発光した蛍光の色相角、色度、彩度および明度などの色彩的情報を受光部4の電荷素子結合ユニット10で計測し、演算部11により判別することを特徴としたもので、非特異的吸着や自家発光物の混入による測定誤差を低減し、正確性、信頼性を向上させた発光物の判別方法、小型で低コストな発光物判別装置1を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の検出に使用される計測方法および検出方法における夾雑物との判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光色素を用いて細胞部位や微生物を判定する方法の一例として蛍光性酵素基質であるフルオレセイン系蛍光色素が細胞部位や微生物を検出するための試薬として有用であることは、よく知られている事実である。フルオレセイン系蛍光色素は、細胞部位や微生物の細胞膜を透過して取り込まれると、細胞質内のエステラーゼ酵素群により加水分解され、フルオレセイン骨格を有する蛍光物質(5−カルボキシフルオレセインなど)に変換されて発光機能が発現する。従って、細胞部位や微生物を固定化した基板上にフルオレセイン系蛍光色素を接触させてから、または、フルオレセイン系蛍光色素を接触させた細胞部位や微生物を基材上に捕捉してから、励起光を照射することで生じる光点を細胞部位や微生物と判定する方法が古くから知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
下記、特許文献1において、細胞部位や微生物を判定するための蛍光色素として、エステラーゼ活性指標指示薬である5−スルホフルオレセインジアセテート及び6−スルホフルオレセインジアセテートを用いた方法が提案されている。これは、各地の土壌中に存在する微生物細胞を、寒天培地によって培養し、得られた微生物コロニーに対して蛍光色素を使用して染色評価試験を実施した結果として、5−スルホフルオレセインジアセテート及び6−スルホフルオレセインジアセテートの2種類を、有力な生菌検出用蛍光色素として提案している。
【0004】
また、別の手法として、蛍光色素をバクテリオファージに封入し、バクテリオファージによって目的の微生物に蛍光色素を注入させ、微生物を検出する手法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
これは、蛍光色素が特定の種類の微生物に対して選択的に注入することができるのと同時に、遊離の蛍光色素による夾雑物への非特異的吸着を抑えられるというものである。また、このとき微生物よりも小さな孔径をもつろ過フィルタを用いることによって自家蛍光をもち、計測のノイズとなりうる微粒子及び、過剰量のバクテリオファージを除去することができるというものである。
【特許文献1】特開平7−135996号公報
【特許文献2】特開2000−270892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような従来の方法では、蛍光色素が検体に含まれる細胞や微生物と反応し検出することができるが、同じく検体内に含まれる夾雑物とも反応し検出されることがあり、正確に検出することができないという問題がある。その結果、検出された細胞数および微生物数が、実際に含まれている数に対して見かけ上大きい値を示すことになり、検出感度が上がらないこととなる。これは、主に蛍光性酵素基質の分解性や吸着により、細胞や微生物でなくても夾雑物表面で反応し、発光するからである。
【0007】
また、特許文献2のような手法の場合、蛍光色素をバクテリオファージに封入することで、蛍光色素の結合性、吸着性を抑えることができる。しかしながら、この手法を用いても、自家蛍光を示す夾雑物による影響を受け、求める検出感度が得られない恐れがある。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光体の色相角、色度、彩度及び明度から選択される少なくとも1つの色彩的特性を検出することで、夾雑物と吸着、分解している発光との判別ができる判別方法を提供することを目的としている。
【0009】
また、染色において発光輝度の低いものは、受光フィルタのカット率により、必要な強度が得られないために判別できない場合があるか、または、輝度が非常に高い染色方法では飽和状態になってしまい、色彩情報を正確に得られないという課題があり、輝度の低いものや、非常に高いものを明確に判別することが要求されている。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、輝度のレンジを増加させ、精度よく検出することができる判別方法を提供することを目的としている。
【0011】
また、蛍光色素の発光を判別するとき、1種類の夾帯域フィルタなどを用いて蛍光を測定する場合、蛍光色素以外の自家蛍光や、蛍光色素の夾雑物への非特異的吸着による蛍光も同じように検出してしまい、判別が困難であるという課題があり、精度の高い判別方法が要求されている。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、RGBの輝度情報を用いて自家蛍光や蛍光色素の色彩情報を測定し、高精度に判別することができる手段を提供するものである。
【0013】
また、細胞や微生物を染色する場合、検体スケールが大きい場合には、大量の蛍光色素が必要となるうえ、検体に含まれる成分の影響によって染色力が異なるため、安定して染色できるように検体成分を分離して観察することが要求されている。
【0014】
また細胞や微生物が生きて運動性を持つ場合、液中では移動するために長時間の観察ができないという課題があり、経時的に観察できることが要求されている。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、メンブレンフィルタを用いて細胞や微生物を固定することで、検体成分を除去し、細胞や微生物の液中での運動を防止し、安定して細胞内での経時的な発光の観察することのできる判別方法を提供することを目的としている。
【0016】
また、捕集手段の基材によっては、発光体の発光よりも輝度の高い自家発光や基材表面に発光体を備えた基材があり、これらがバックグラウンド増加の原因となり、細胞や微生物の発光以外の発光を検出し、発光が検出することができないという課題があり、発光体を吸収することが要求されている。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、基材の発光を抑えるのと同時に、基材と接する発光体の発光を吸収し検出方向のみの発光させることができる判別方法を提供することを目的としている。
【0018】
また、染色には、様々な発光波長をもつため、その波長に対応した吸収性能を基材に持たせなければならず、発光手段の種類が限られてしまうという課題があり、励起波長によらず、様々な波長の光を抑えた基材が要求されている。
【0019】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光波長を問わず基材として使用することが可能で、精度良く検出することができる判別方法を提供することを目的としている。
【0020】
また、発光手段によっては、細胞や微生物1個で十分な強度が得られない課題があり、十分に強度が得られる発光手段が要求されている。
【0021】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、蛍光によって大きさの小さい細胞、微生物であっても十分に1個から検出できる判別方法を提供することを目的としている。
【0022】
また、発光手段には、細胞や微生物の活性によって染色性能が毎回異なってしまうという課題があり、化学的に安定な発光手段が要求されている。
【0023】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、化学的に安定な生体成分である核酸を検出することによる安定した判別方法を提供することを目的としている。
【0024】
また、発光手段には、細胞や微生物の活性を検出することが求められる場合に工程が複雑化するという課題があり、少ない染色工程で、簡易的に染色できることが要求される。
【0025】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、単一の発光手段で活性を評価できるような簡易的な判別方法を提供することを目的としている。
【0026】
また、励起光を用いることで、細胞部位や微生物に熱を与えるため、観察中に細胞や微生物の水分量が変化、乾燥し蛍光色素が分解し、または溶媒の極性の変化などによって蛍光色素が細胞外へ流出してしまうなどの原因により、蛍光発光が検出できないという課題があり、観察中に水分量の変化、乾燥を防止することが要求されている。
【0027】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、乾燥防止効果を持たせることで検出を安定化することができる判別方法を提供することを目的としている。
【0028】
また、細胞や微生物への浸透性が高い保水溶液や疎水性が高い保水溶液は細胞毒性や細胞を死活するという課題があり、細胞や微生物を死活させないことが要求されている。
【0029】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、細胞や微生物を生かしたまま保水効果を持たすことができる判別方法を提供することを目的としている。
【0030】
また、細胞や微生物は表面の疎水性により、染色試薬が浸透しにくい場合があり、発光の輝度を低下させるという課題があり、染色試薬の透過性が十分得られることが要求される。
【0031】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、細胞膜透過性を増加し、高い確率で染色できる判別方法を提供することを目的としている。
【0032】
また、検体の前処理などの影響で、染色方法によっては、十分な強度が得られないという課題があり、十分に強度が得られる染色方法が要求される。
【0033】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、蛍光色素の輝度増感剤を用いることで高い輝度を得ることができる判別方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の判別方法は上記目的を達成するために、細胞および微生物を検出する方法において、細胞および微生物を捕集する捕集手段と、染色により発光させる発光手段と、発光体の発光した色の色相角、色度、彩度及び明度から選択される少なくとも1つの色彩的特性を計測する色彩計測手段と、発光手段による反応物および/または発光手段による反応物以外の非特異的吸着および/または反応物以外の自家発光を判別する発光物判断手段を備えたことを特徴とするものであり、不純物と目的の細胞および微生物を特定することができ、計測精度を高め、低濃度の細胞および微生物の計測をすることができるとしたものである。
【0035】
この手段により不純物が多く含まれる土壌や食材から細胞や微生物のみを検出することができ、また、検体内に含まれる検出試薬と反応する夾雑物とを判別し、検出することができる判別方法が得られる。
【0036】
また、色彩計測手段として、光学的輝度のダイナミックレンジの大きいCCDもしくはCMOSからなる受像素子を用いたことを特徴としたものであり、これにより、発光手段の感度によらず色彩により細胞や微生物と反応した発光と、細胞や微生物以外の検体に含まれる不純物との違いを精度良く区別することができる判別方法が得られる。
【0037】
また、色彩計測手段として、RGBの輝度をそれぞれ測定する手段を用いることを特徴としたものであり、色彩情報を、効率的に精度良く測定することができる。
【0038】
また、捕集手段において、メンブレンフィルタを用いて細胞および微生物を固定することを特徴としたものであり、検体由来の染色阻害成分の影響を除去でき、空間的に細胞または微生物を固定することができ、経時的に安定して測定することができる。
【0039】
また、捕集手段において、構成物の自家発光を抑制する機能を持たせたことを特徴としたものであり、捕集手段のもつ自家発光に由来するバックグラウンドを抑制し、測定感度の向上を行うことができる。
【0040】
また、捕集手段において、構成物の材質に発光を吸収する基材を用いることを特徴としたものであり、発光手段以外の発光を吸収して除去することにより、測定感度が高い判別方法が得られる。
【0041】
また、捕集手段において、構成物の表面に金属膜を形成することを特徴としたものであり、自家発光による影響が少なく、高い感度で測定することができる。
【0042】
また、発光手段として蛍光色素を用いることを特徴としたものであり、細胞1個から感度が得ることができ、波長情報も同時に得ることで、高精度な判別方法が得られる。
【0043】
また、発光手段において、蛍光色素として核酸染色性の化合物を使用することを特徴としたものであり、化学的に安定な生体成分を検出することで、細胞の活性に影響することなく、安定している判別方法を得ることができる。
【0044】
また、蛍光色素として細胞内エステラーゼ分解性の化合物を使用することを特徴としたものであり、簡便な染色工程で細胞の活性を測定することができる。
【0045】
また、発光手段において、乾燥防止剤を混合して使用することを特徴としたものであり、蛍光強度の褪色による測定安定性の低下を抑え、安定して計測することができる。
【0046】
また、発光手段において、乾燥防止剤として糖アルコール類を混合することを特徴としたものであり、細胞に非侵襲で高い乾燥防止性能を得ることができる。
【0047】
また、発光手段において、2価金属錯体を細胞および微生物に接触させることを特徴としたものであり、細胞膜のイオン透過性を向上させ、蛍光染色性能を高めることができる。
【0048】
また、発光手段において、輝度増感剤を蛍光色素と混合して使用することを特徴としたものであり、簡便に蛍光強度を高め、検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の判別方法によれば、発光手段と色彩的特長の計測手段と、反応物の発光と、検体に含有される反応物以外の発光とを判別する手段を設けることで、感度、精度、信頼性の高い判別方法を提供することができる。
【0050】
また、アレルギーを伴う細胞や細菌の検出や微生物による腐敗、品質を維持できるという効果のある判別方法を提供できる。
【0051】
また、高感度の判定することができ、細胞や細菌の高い濃度の汚染から低い濃度の汚染までを検出することができる。
【0052】
また、さらに精度良く検出することができ、廃棄をする際にも容易に廃却することができる効果のある判別方法を提供できる。
【0053】
また、夾雑物などを分離し、高感度で精度良く検出し、細胞や細菌の個数を計測することができる。
【0054】
また、細胞や細菌の移動を防止し、判別時の作業を効率的にできる。
【0055】
また、細胞や細菌が生きた状態で観察することができ、リアルタイムでの反応を観察することで、細胞毒性などの判別にも使用でき、品質管理のため、殺菌剤・防腐剤などの開発にも使用できる。
【0056】
また、乾燥防止剤により、調製後の検体の保持時間を高め、作業効率を高めることができる。
【0057】
また、細胞および細菌への毒性が低いものを用いることで、環境負荷の低減することができることは勿論、作業者の十分に安全に作業ができる。
【0058】
また、細胞や細菌の表面に金属錯体を結合させ、表面上での試薬等の浸透を和らげ、浸透圧の変化を抑え、生きた細胞や細菌をそのまま維持することでき、精度、感度良くさらにはリアルタイムで判別することができるので、実際の現場モニタリングや環境計測などを容易に使用することができる。
【0059】
また、蛍光色素に輝度増感剤を付着させ、表面上での試薬等の浸透性を高め、細胞膜の浸透圧の変化を抑え、生きた細胞や細菌の活性を維持することでき、さらに精度、感度良くさらにはリアルタイムで判別することができるので、実際の現場モニタリングや環境計測などを容易に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本発明の請求項1記載の発明は、細胞および微生物を検出する方法において、細胞および微生物を捕集する捕集手段と、染色により発光させる発光手段と、発光体の発光した色の色相角、色度、彩度及び明度から選択される少なくとも1つの色彩的特性を計測する色彩計測手段と、発光手段による反応物および/または発光手段による反応物以外の非特異的吸着および/または反応物以外の自家発光を判別する発光物判断手段を備えたことを特徴としたものであり、反応物による発光と、検体中に混合している目的の反応物以外の物質に由来する自家発光や染色による発光を判別することができ、信頼性の高い測定方法を実現できるという作用を有する。
【0061】
また、請求項2記載の発明は、前記色彩計測手段として、光学的輝度のダイナミックレンジの大きいCCDもしくはCMOSからなる受像素子を用いたことを特徴としたものであり、発光が弱いものと、発光が極めて強く、測定レンジの差が2桁から4桁以上と、非常に大きいものを同時に計測することができ、測定方法および判別方法を簡略化し、判別時間および判別手段を簡略化して小型化することができるという作用を有する。
【0062】
また、請求項3記載の発明は、前記色彩計測手段として、RGBの輝度をそれぞれ測定する手段を用いることを特徴としたものであり、色彩情報を、RGB、すなわち赤色、緑色、青色の3原色の輝度の情報から求めるものであり、色彩的情報を簡易的な構造での取得を実現することができる。
【0063】
また、請求項4記載の発明は、捕集手段において、メンブレンフィルタを用いて細胞および微生物を固定することを特徴としたものであり、前処理工程などで混入したの測定、染色阻害成分の影響を除去でき、高精度な判別方法を実現することができるという作用を有する。また、平面的に細胞または微生物を固定することができ、表面を走査することで、細胞および微生物を1個ずつ精度良く検出することができるという作用を有する。
【0064】
また、請求項5記載の発明は、前記捕集手段において、構成物の自家発光を抑制する機能を持たせたことを特徴としたものであり、捕集手段の発する自家発光に由来するバックグラウンドを低い値に抑えることで、測定感度を向上させ、S/N向上に必要な様々な機構を最小限に減らすことができ、簡略化した判別方法を提供することができる。
【0065】
また、請求項6記載の発明は、前記捕集手段において、構成物の材質に発光を吸収する基材を用いることを特徴したものであり、励起光や自家蛍光などの発光手段以外の発光を吸収して除去することにより、バックグラウンドを低下させ、測定感度が高い判別方法を実現することができるという作用を有する。
【0066】
また、請求項7記載の発明は、前記捕集手段において、構成物の表面に金属膜を形成することを特徴としたものであり、基材由来の自家発光による影響を低減し、高い感度で測定することができるという作用を有する。
【0067】
また、請求項8記載の発明は、発光手段として蛍光色素を用いることを特徴としたものであり、複数の種類の色素を組み合わせて、より高次な情報を得ることができ、かつ細胞1個から感度が得ることで高精度な判別方法が得られるという作用を有する。
【0068】
また、請求項9記載の発明は、前記発光手段において、蛍光色素として核酸染色性の化合物を使用することを特徴としたものであり、生体のみに含まれる成分を直接検出することで、細胞の個数を特異的に直接カウントすることができるという作用を有する。
【0069】
また、請求項10記載の発明は、前記発光手段において、蛍光色素として細胞内エステラーゼ分解性の化合物を使用することを特徴としたものであり、簡便に活性をもった細胞および微生物を検出することができるという作用を有する。
【0070】
また、請求項11記載の発明は、前記発光手段において、乾燥防止剤を混合して使用することを特徴としたものであり、乾燥に由来する蛍光強度の変化、および褪色による測定不安定性の影響を抑え、高精度な測定を実現することができるという作用を有する。
【0071】
また、請求項12記載の発明は、前記発光手段において、乾燥防止剤として糖アルコール類を混合することを特徴としたものであり、常温で液体であるため扱いやすく、細胞に非侵襲で高い乾燥防止性能を安定に得ることができ、低コストで安定した測定を実現することができるという作用を有する。
【0072】
また、請求項13記載の発明は、前記発光手段において、2価金属錯体を細胞および微生物に接触させることを特徴としたものであり、細胞膜のイオン透過性を向上させ、染色試薬の浸透性、標識安定性を高めることができ、高精度な計測を行うことができるという作用を有する。
【0073】
また、請求項14記載の発明は、前記発光手段において、輝度増感剤を蛍光色素と混合して使用することを特徴としたものであり、染色工程を増やすことなく簡便に蛍光強度を高め、また安価で検出精度を向上させることができるという作用を有する。
【0074】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0075】
(実施の形態1)
まず、捕集手段となるメンブレンフィルタの上方から液体試料を吸引してろ過し、メンブレンフィルタ表面に微生物を2次元的に捕捉する。本発明において細胞および微生物を含有するか含有する可能性のある検体は液状検体であるが、検査対象が飲料水などの液状サンプルの場合は、それ自体が液状検体となる。検査対象が野菜や肉をはじめとする食材などの固体サンプルの場合は、それをホモジナイズして液状検体としたり、その表面から綿棒などを用いて細胞および微生物を採取し、これを生理食塩水や燐酸緩衝液などに遊離させて液状検体とする。また、まな板などの調理器具などが検査対象となる場合、その表面から綿棒などを用いて微生物を採取し、これを生理食塩水などに遊離させて液状検体とする。こうした液状検体をメンブレンフィルタで吸引濾過することでメンブレンフィルタ上に細胞および微生物を捕捉することができる。また、必要に応じて、適当な濃度の金属錯体を混合した水溶液などを液体試料に混合させるか、もしくは細胞および微生物が固定されたメンブレンフィルタの上方からろ過するか、または下方から接触させるなどの手法により、細胞および微生物の細胞膜透過性を一定に保たせることができる。
【0076】
なお、金属錯体としては、2価に対応しているものが好ましく、エチレンジアミン四酢酸などを0.5から100mM程度の濃度範囲にて使用する。
【0077】
次に発光手段として、乾燥防止成分、輝度増感剤を混合し、発光手段である生死細胞染色試薬または死細胞染色試薬のいずれか、または両方を一定濃度含む染色試薬をフィルタ表面に一定量滴下する。
【0078】
蛍光色素は、核酸結合性の構造を含むものが好ましく、生死細胞試薬として、紫外励起で青色蛍光を発するものであれば、1,4−ジアミジノ―2−フェニルインドール、青色励起で緑色蛍光または黄緑色、黄色蛍光を発するもので、例えばアクリジンオレンジ、オキサゾールイエロー、チアゾールオレンジや、SYTO9、SYTO13、SYTO16、SYTO21、SYTO24、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR Goldなどのトリメチン架橋非対称シアニン色素系化合物が使用できる。また、死細胞試薬としては、緑色蛍光を発するもので、例えばアクリジン2量体、チアゾールオレンジ2量体、オキサゾールイエロー2量体などのモノメチン架橋非対称シアニン色素2量体や、SYTOX Green、TO−PRO−1などのモノメチン架橋非対称シアニン色素系化合物、赤色蛍光を発するものであれば、ヨウ化プロピジウム、臭化ヘキシジウム、臭化エチジウム、LDS−751、SYTOX Orangeなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素などが使用できる。
【0079】
なお、これらの蛍光色素は、細胞および微生物を含む試料に対して、あらかじめ0.1から100μMとなるようを混合しておき、同時に作用させるか、もしくは別々に、時間を置かず、もしくは適当な時間間隔を開けて作用させることとする。
【0080】
なお、メンブレンフィルタ上に捕捉した細胞および微生物を含む物質表面が、測定中に乾燥し、発光強度が変化することを防ぐための手段として、染色試薬には10から60%w/vのグリセロールや、10から90%v/vのD(−)−マンニトールやD−ソルビトールなどの成分のいずれかを1種類以上混合させておく。
【0081】
なお、メンブレンフィルタとしては、例えば、孔径が0.2μm〜1μmの公知のものを用いることができる。
【0082】
蛍光染色された細胞または微生物が展開されているメンブレンフィルタに対し、集光レンズなどを用いて、照射範囲が、例えば直径が3mm程度の一定面積となるよう励起光を照射し、発光点を得る。
【0083】
この操作は、例えば、トリメチン架橋非対称シアニン色素の場合には、波長が540nmから610nm付近の励起光を照射した場合、波長が560nmから630nm付近の蛍光を発し、またモノメチン架橋非対称シアニン色素は波長が480nmから510nm付近の励起光を照射した場合、波長が510nmから540nm付近の蛍光を発する。
【0084】
そのため励起光源としては発光ダイオードの場合、青色のものでは、好ましくは480nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるもの、黄色のものでは、好ましくは560nm付近の波長を発することができるものを使用する。
【0085】
また、レーザーを用いる場合には、青色のものでは、好ましくは475nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるものを使用する。
【0086】
また、ハロゲンランプや水銀ランプを使用する場合には、適当な分光フィルタとして、染色試薬の励起波長に合わせて最適なバンドパスフィルタ等を使用することができる。また、0.1から10nmの波長分解能を有する反射型や透過型の回折格子により、最適な角度を与え、任意の波長を含む励起光を取り出すことができる。
【0087】
また、蛍光フィルタとしては、RGB情報を損なわず、効果的に励起光由来の光成分を除去できるよう、励起波長に合わせたハイパスフィルタが使用される。
【0088】
当該蛍光はレンズを通し、色彩計測手段である受像素子として単板カラーCCDや、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色を取得できるRGB3種類の蛍光フィルタを含む3CCDなどの電荷結合素子ユニットを用いて露光時間0.1秒から10秒程度の露光時間でRGB3色からなる画像撮影することにより取得される。
【0089】
これらの操作により取得された複数の蛍光画像は、細胞および微生物の蛍光由来による発光点を含むものであるが、これらの発光点は発光物判断手段によってあらかじめ設定されたしきい値により、適切な発光強度をもち細胞や微生物の大きさに基づいて設定された大きさであり、RGBの輝度値より演算されて与えられた色度、色相角などの色彩的特長を示す値により判断される。色彩計測手段および発光物判断手段であるが、色彩的特長を示す表色系は、L*a*b表色系や、L*C*h表色系、XYZ表色系などの表色系が使用される。ここではXYZ表色系に基づいた色度を用いる。まず、RGBの輝度を測定する手段によって取得されたRGBそれぞれの輝度値から、リニアRGBへの変換、ガンマ補正がなされる。これにさらに重み付けとして表色系に基づいた定数を使用して演算され、細胞および微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が求められる。これに対し、あらかじめ設定された細胞および微生物のもつ値と、夾雑物のもつ値より設定されたしきい値の範囲より、細胞および微生物か、夾雑物かを判別する。発光物判断手段により細胞および微生物と検体中に混合された夾雑物とを判断されると、その総個数がカウントされ、積算して最終的に液体試料に含まれていた細胞および微生物の個数が計量される。
【0090】
なお、複数の蛍光色素と、複数の励起光源を使用することで、判別精度を向上させることができ、同時に生死判別も行えることから、実際には複数の蛍光色素を併用して使用することが望ましい。
【0091】
また、色彩計測手段である電荷結合素子ユニットの電荷結合素子を線状に配置されたものを利用することによってX軸方向(配列方向)への移動を不要なものとし、Y軸方向(移動方向)のみの移動によって一定範囲の検知を実施することが可能となり、計量を迅速に実施することもできる。
【0092】
以上の手法を用いて、もとの試料や細胞培養液に含まれていた細胞および微生物を判別し、数を計量することができるのである。
【0093】
図1は、本発明実施の形態1の発光物の判別方法を好適に実施するための発光物判別装置を示す概念図である。この発光物判別装置1は、光源2、集光レンズ3、受光部4を含む。光源2から発せられた励起光から目的の波長を取り出すために励起光分光フィルタ5で分光する。光源2としては、励起光を照射できれば良く、例えば発光ダイオードなどがある。分光された励起光は集光レンズ3を経て検査台6にセットされたメンブレンフィルタ7(別途の操作によりメンブレンフィルタ上に蛍光染色された細胞または微生物を捕捉してあるもの)上に集光される。光源2から発せられた励起光は、集光レンズ3によって集光されるが、その際、集光レンズ3によって励起光を照射する範囲は微小な1〜3mm角の一定面積に集光される。蛍光染色された細胞または微生物が励起光照射により蛍光発光しその発光した蛍光は、受光部4に到達する。さらに目的の蛍光を計測するためにダイクロイックミラー8、ハイパスフィルタ9を経て、受光部4に内蔵された電荷結合素子ユニット10に到達し、信号化される。これにより得られた信号は画像化され、発光物判断手段である演算部11によって画像処理される。受光部4は、ハイパスフィルタ9と電荷結合素子ユニット10を備えたものである。発光物判断手段、すなわち演算部11としては、画像処理をプログラミングされたマイコン等であり、外部接続した端末などによって操作されるソフトウェアと通信して使用されるものも該当する。
【0094】
図2は同実施の形態1の判別方法の詳細を示す図である。図2(a)はE.coliの輝度と色度の演算結果を示す図であり、図2(b)は、色度の演算工程フローを示す図である。
【0095】
E.coliを含む水検体をメンブレンフィルタにろ過し、生死細胞用蛍光色素であるSYTO9と、死細胞用蛍光色素であるヨウ化プロピジウムを用いて染色したものを、単板モノクロCCDと、青色励起光照射におけるG輝度画像とR輝度画像を取得したデータの一例を示す表である。このとき、B輝度画像は、励起光の波長と重なるために取得できず、1を代用して使用している。この変数は、最適な値に調整することができる。RGBの輝度は図2(b)に示される工程により演算され、x、yの値が算出される。この工程はまず、RGBの輝度を測定する手段によって取得されたRGBそれぞれの輝度値から、演算部11により、図1(b)に示すように、リニアRGBへの変換がなされ、次にガンマ補正がなされ、これにさらに重み付けとして表色系に基づいた定数を使用して演算され、細胞および微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が求められる。演算部11として上記フローに基づいてプログラミングされたマイコンなどがある。
【0096】
RGBの輝度を測定する手段としては、単板カラーCCDや、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色を取得できるRGB3種類の蛍光フィルタを含む3CCDなどの電荷結合素子ユニットなどがある。
【0097】
このような手法を用いて、E.coliと水道水をそれぞれ一定量メンブレンフィルタにろ過し、値を測定した。図3は同実施の形態1のE.coliと水道水に含まれる発光点のデータをグラフ上にプロットしたものである。これによると、E.coliがx<0.36、y>0.5の領域に分布していたのに対し、水道水中の発光物はxが0.3から0.6、yが0.3から0.6と幅広い領域に分布していることが確認された。このとき、しきい値xはc、yはdとして、x<c、y>dの領域に分類された集団をE.coliとして判別し、水道水中に含まれる発光物のような夾雑物の大半を判別できることが確認された。
【0098】
このしきい値は一例であるが、染色に使用する蛍光色素の種類や、濃度、希釈する溶液の極性などによっても変化することから、使用が想定される環境に最も適した値をあらかじめ設定しておくことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、細胞および微生物を含んだ検体から蛍光染色を用いて細胞および微生物を検出する方法であって、従来から知られている方法と比較してより正確性を持たせた検出を行うことができる判別方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明実施の形態1の発光物判別装置を示す概念図
【図2】同判別方法の詳細を示す図((a)はE.coliの輝度と色度の演算結果を示す図、(b)は色度の演算工程フローを示す図)
【図3】同E.coliと水道水中の発光物の色度分布を示す図
【符号の説明】
【0101】
1 発光物判別装置
2 光源
3 集光レンズ
4 受光部
5 励起光分光フィルタ
6 検査台
7 メンブレンフィルタ
8 ダイクロイックミラー
9 ハイパスフィルタ
10 電荷結合素子ユニット
11 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞および微生物を検出する方法において、細胞および微生物を捕集する捕集手段と、染色により発光させる発光手段と、発光体の発光した色の色相角、色度、彩度及び明度から選択される少なくとも1つの色彩的特性を計測する色彩計測手段と、発光手段による反応物および/または発光手段による反応物以外の非特異的吸着および/または反応物以外の自家発光を判別する発光物判断手段を備えたことを特徴とする発光物の判別方法。
【請求項2】
前記色彩計測手段として、光学的輝度のダイナミックレンジの大きいCCDもしくはCMOSからなる受像素子を用いたことを特徴とする請求項1記載の発光物の判別方法。
【請求項3】
前記色彩計測手段として、RGBの輝度をそれぞれ測定する手段を用いることを特徴とする請求項1または2記載の発光物の判別方法。
【請求項4】
捕集手段において、メンブレンフィルタを用いて細胞および微生物を固定することを特徴とする請求項1記載の発光物の判別方法。
【請求項5】
前記捕集手段において、構成物の自家発光を抑制する機能を持たせたことを特徴とする請求項1または4記載の発光物の判別方法。
【請求項6】
前記捕集手段において、構成物の材質に発光を吸収する基材を用いることを特徴する請求項1、4または5記載の発光物の判別方法。
【請求項7】
前記捕集手段において、構成物の表面に金属膜を形成することを特徴とする請求項1、4、5または6記載の発光物の判別方法。
【請求項8】
発光手段として蛍光色素を用いることを特徴とする請求項1記載の発光物の判別方法。
【請求項9】
前記発光手段において、蛍光色素として核酸染色性の化合物を使用することを特徴とする請求項1または8記載の発光物の判別方法。
【請求項10】
前記発光手段において、蛍光色素として細胞内エステラーゼ分解性の化合物を使用することを特徴とする請求項1、8または9記載の発光物の判別方法。
【請求項11】
前記発光手段において、乾燥防止剤を混合して使用することを特徴とする請求項1、8、9または10載の発光物の判別方法。
【請求項12】
前記発光手段において、乾燥防止剤として糖アルコール類を混合することを特徴とする請求項1、8、9、10または11記載の発光物の判別方法。
【請求項13】
前記発光手段において、2価金属錯体を細胞および微生物に接触させることを特徴とする請求項1、8、9、10、11または12記載の発光物の判別方法。
【請求項14】
前記発光手段において、輝度増感剤を蛍光色素と混合して使用することを特徴とする請求項1、8、10、11、12または13記載の発光物の判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−6709(P2007−6709A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187679(P2005−187679)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】