発光素子、発光素子の製造方法、画像表示装置および照明装置
【課題】高い発光効率を有し、出射光の方向を制御することにより、必要とされる配光特性を示す発光素子等を提供する。
【解決手段】透明な基板11上に発光部17が点在する発光素子であって、基板11は、発光部17側の基板面が発光部17下で窪んだ穿孔部16bを有することを特徴とする電界発光素子10。
【解決手段】透明な基板11上に発光部17が点在する発光素子であって、基板11は、発光部17側の基板面が発光部17下で窪んだ穿孔部16bを有することを特徴とする電界発光素子10。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、画像表示装置や照明装置に用いられる発光素子等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネセンス現象を利用したデバイスが重要度を増している。このようなデバイスとして、発光材料を層状に形成し、この発光層に陽極と陰極とからなる一対の電極を設けて電圧を印加することで発光を行わせる電界発光素子等の発光素子が注目を集めている。このような電界発光素子は、陽極と陰極の間に電圧を印加することで、陽極と陰極からそれぞれ正孔と電子を注入し、注入された電子と正孔とが、発光層で結合することにより生じるエネルギーを利用して発光を行う。即ち、電界発光素子は、この結合によるエネルギーで発光層の発光材料が励起され、励起状態から再び基底状態に戻る際に光を発生する現象を利用したデバイスである。
【0003】
この電界発光素子等の発光素子を画像表示装置として使用した場合、発光材料が自己発光であるため、画像表示装置としての応答速度が速く、視野角が広いという特徴を有する。更に電界発光素子の構造上、画像表示装置の薄型化が容易になるという利点もある。また発光材料として例えば有機物質を利用した有機電界発光素子の場合は、有機物質の選択によって色純度の高い光を発生させやすく、そのため色再現域を広くとることが可能であるという特徴がある。
更に、電界発光素子等の発光素子は、白色での発光も可能であり、面発光であることから、この電界発光素子を照明装置に組み込んで利用する用途も提案されている。
【0004】
このような発光素子の一例として、例えば、特許文献1には、正孔電極注入層と電子注入電極層との間に挿入される誘電体層を備え、少なくとも誘電体層および電極層の一つを通って延び、正孔注入電極領域、電子注入電極領域および誘電体領域を備える内部キャビティ表面にエレクトロルミネセンスコーティング材料を塗布するキャビティ発光エレクトロルミネセンスデバイスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−522371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで一般に、基板上に発光部が点在する発光素子、例えば、キャビティ発光エレクトロルミネセンスデバイスでは、エレクトロルミネッセンスコーティング材料から発した光をキャビティを通して直接取り出すことができるため光の利用効率を向上させやすい。ところが、光を基板側から取り出したい場合、基板に入射する光の角度によっては、基板表面において反射が生じやすくなるため、光の利用効率が減少する場合があった。
本発明の目的は、発光部から発した光を基板側から取り出す際に、基板表面における反射を抑制し、高い発光効率を有する電界発光素子等の発光素子を提供することである。また、他の目的は、出射光の方向を制御することにより、必要とされる配光特性を示す発光素子を提供することである。
また、他の目的は、高いコントラストおよび解像度を有し、また高い発光効率を有し、さらに好ましい配光特性を有する画像表示装置を提供することである。
更に、他の目的は、高い発光効率を有し、また好ましい配光特性を有する照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を備える。
(1)透明な基板上に発光部が点在する発光素子であって、前記基板は、発光部側の基板面が前記発光部下で窪んだ穿孔部を有することを特徴とする発光素子。
(2)前記発光部が、前記基板面1mm2中に102個以上形成されている前項(1)に記載の発光素子。
(3)前記穿孔部は、1つの前記発光部下に1つ存在する前項(1)または(2)に記載の発光素子。
(4)前記穿孔部は、前記基板の表面から当該穿孔部の最深部に至る経路部分の少なくとも一部に絞り形状を有する前項(1)〜(3)のいずれかに記載の発光素子。
(5)前記絞り形状は、幅が連続的に狭くなる形状である前項(4)に記載の発光素子。
(6)前記絞り形状は、幅が連続的に広くなる形状である前項(4)に記載の発光素子。
(7)前記穿孔部は、前記基板の表面から当該穿孔部の最深部に至る幅が略同一である前項(1)〜(3)のいずれかに記載の発光素子。
(8)前記穿孔部の最深部が平面である前項(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子。
(9)前記穿孔部の最深部が曲面である前項(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子。
(10)前記穿孔部の最深部が尖頭形状である前項(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子。
(11)前記穿孔部が凸面の底部を有する前項(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子。
(12)前記穿孔部は、略円柱形状をなす前項(7)または(8)に記載の発光素子。
(13)前記穿孔部は、回転体以外の形状である前項(1)〜(11)に記載の発光素子。
(14)前記穿孔部は、略直方体形状をなす前項(7)または(8)に記載の発光素子。
(15)前記穿孔部は、他の穿孔部に対し、互いに長辺が略平行にして前記基板面に並んでいる前項(14)に記載の発光素子。
(16)前記穿孔部の前記基板面における形状の最大幅が0.01μm〜5μmである前項(1)〜(15)の何れかに記載の発光素子。
(17)前記穿孔部の前記基板面における形状の最大幅が、0.01μm〜1μm未満である前項(16)に記載の発光素子。
(18)前記基板の屈折率は、前記発光部の屈折率より低い前項(1)〜(16)のいずれかに記載の発光素子。
(19)前記発光素子は、電界発光素子である前項(1)〜(18)のいずれかに記載の発光素子。
(20)前記発光部が、有機化合物からなる発光体を含む前項(19)に記載の発光素子。
(21)前記発光部が、有機金属錯体からなる発光体を含む前項(20)に記載の発光素子。
(22)前記発光部は、燐光発光する有機材料を含む前項(20)に記載の発光素子。
(23)発光素子は、基板上に積層されている第1の電極層及びその上にさらに積層されている第2の電極層を有し、穿孔部上に、穿孔部から第1の電極層を貫通する貫通部を有し、かつ、貫通部内に発光部を有する前項(19)〜(22)のいずれかに記載の発光素子。
(24)発光素子は、第1の電極層と第2の電極層との間に誘電体層を有し、かつ、前記貫通部がさらに当該誘電体層を貫通している前項(23)に記載の発光素子。
(25)前記貫通部は、幅が10μm以下である前項(23)〜(24)のいずれかに記載の発光素子。
(26)前記貫通部の最大幅が、0.01μm〜5μmである前項(23)〜(25)のいずれかに記載の発光素子。
(27)前記貫通部の幅が、前記貫通部に対応する前記穿孔部の幅に合っている前項(23)〜(26)のいずれかに記載の発光素子。
(28)前記貫通部は、略円柱形状をなす前項(23)〜(27)のいずれかに記載の発光素子。
(29)前記貫通部は、略直方体形状をなす前項(23)〜(27)のいずれかに記載の発光素子。
(30)前記貫通部は、他の貫通部に対して、互いに長辺を略平行にして前記基板面上に並んでいる前項(29)に記載の発光素子。
(31)前記貫通部から前記穿孔部に渡る内壁が、連続した面で構成されている前項(23)〜(30)のいずれかに記載の発光素子。
(32)前記第1の電極層および前記第2の電極層のうち少なくとも一方は、不透明材料からなる前項(23)〜(31)のいずれかに記載の発光素子。
(33)前項(1)〜(32)に記載の発光素子の製造方法であって、透明な基板上に少なくとも第1の電極層および誘電体層を積層して形成する積層工程と、少なくとも前記第1の電極層および前記誘電体層を貫通する貫通部を形成する貫通部形成工程と、前記貫通部を形成した部分以外の部分をマスクとして前記基板に穿孔部を形成する穿孔部形成工程と、前記貫通部の内面に発光部を形成する発光部形成工程と、第2の電極層を形成する第2電極層形成工程と、を有することを特徴とする発光素子の製造方法。
(34)前記第2電極層形成工程は、前記発光部上に前記第2の電極層を形成する工程である前項(33)に記載の発光素子の製造方法。
(35)前記貫通部形成工程および前記穿孔部形成工程の少なくとも一方は、ドライエッチングにより前記貫通部または前記穿孔部を形成する工程である前項(33)または(34)に記載の発光素子の製造方法。
(36)前項(1)〜(32)のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする画像表示装置。
(37)前項(1)〜(32)のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0008】
前項(1)の発明によれば、発光部から発した光を透明な基板側から取り出す際に、前記基板表面における反射を抑制し、高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(2)の発明によれば、高輝度で高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(3)の発明によれば、前記発光素子の製造が容易になる。
前項(4)〜(14)の発明によれば、本発明を実施しない場合に比べ、種々の配光分布を得ることができる。
前項(4)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、発光部において発した光が基板側により入射しやすくなる。
前項(5)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、絞り形状を有する部分において光の反射を抑制することができる。
前項(13)〜(15)の発明のように、穿孔部の形状が、回転体以外の形状にすることにより、基板面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。
前項(16)の発明によれば、高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(17)の発明によれば、より高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(18)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、基板の法線方向における光成分が増加し、基板正面側から見た輝度を向上させることができる。
前項(19)〜(24)の発明によれば、発光部が点在する発光素子の製造がし易い。
前項(22)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、輝度が高く、色純度の高い発光素子を提供できる。
前項(24)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(25)または(26)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、発光素子の発光強度を大きくすることができる。
前項(27)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、輝度の向上と製造容易性を両立させることができる。
前項(28)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、発光素子の製造が容易となる。
前項(29)及び前項(30)の発明によれば、貫通部の形状が、基板面上で異方性のある形状にすることにより、基板面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。
前項(31)の発明によれば、貫通部及び穿孔部を同時に製造しやすい。
前項(32)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、電極に使用する材料の選択性を高めることができる。
前項(33)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、より容易に穿孔部を形成することができる。
前項(34)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、より簡単な工程で発光素子を製造することができる。
前項(35)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、穿孔部の形状制御が容易となる。
前項(36)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、より解像度が高く、耐久性に優れた画像表示装置を提供できる。
前項(37)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、より輝度が高く、耐久性に優れた照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態が適用される電界発光素子の一例を説明した部分断面図である。
【図2】(a)〜(c)は穿孔部を設けた場合と設けなかった場合とで、発光部において発した光の進路について説明を行なった図である。
【図3】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部を絞り形状とせずに形成する場合の一例を説明した図である。
【図4】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の断面形状を半円形状とした例である。
【図5】本実施の形態が適用される電界発光素子において、基板の表面から凹部の最深部である底部に至る経路部分の一部に絞り形状を設けた例である。
【図6】図3で説明した電界発光素子に対し、穿孔部の底面部を凸形状とした例である。
【図7】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の断面形状を基板の表面から凹部の最深部である底部に至るまで広がる形状とした場合である。
【図8】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の断面形状を三角形形状とした場合である。
【図9】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の側壁の傾きに合わせて陽極層および誘電体層の貫通部の形状を変更した例である。
【図10】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の基板の表面における幅を貫通部の幅より広くした場合の一例を説明した図である。
【図11】(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される電界発光素子において、発光部17の他の形態を例示して説明した部分断面図である。
【図12】基板上に低屈折率層が積層された構造を採る場合を例にとり説明した図である。
【図13】(a)〜(h)は、本実施の形態が適用される電界発光素子の製造方法について説明した図である。
【図14】本実施の形態における電界発光素子を用いた画像表示装置の一例を説明した図である。
【図15】本実施の形態における電界発光素子を備える照明装置の一例を説明した図である。
【図16】凹部のパターンについて説明した図である。
【図17】実施例3dで作成した電界発光素子の配光分布について説明した図である。
【図18】実施例4で作成した電界発光素子の配光分布について説明した図である。
【図19】実施例5で作成した電界発光素子の配光分布について説明した図である。
【図20】実施例7で作成した電界発光素子の配光分布について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
(発光素子)
本発明の発光素子では、透明な基板上に発光部が点在し、前記基板の発光部側の基板面が、前記発光部下で窪んだ穿孔部を形成している。発光部は、基板面1mm2中に102個以上形成されていることが好ましく、同104〜108個形成されていることがより好ましい。発光部の密度が、低すぎると輝度が得にくく、また、高すぎると、発光部が重複して点在できなくなり発光効率が低下する。
本発明において、「発光部」とは、少なくとも実際に発光している領域である。この領域は層状構造であってもよい(この層を「発光層」と言う。)さらに、電極と発光層の間に電荷が移動する層があってもよい。これら層の電極と発光している領域との間の部分(発光にかかわる電荷が移動する部分)を含めて「発光部」とする。すなわち、発光部は1つの層あるいは2層以上の複数の積層構造からなっていても良い。例えば、発光部は、発光層を含み、電荷注入層、電荷移動層、電荷ブロッキング層から選ばれる1つあるいは2つ以上の存在する層も含む。
穿孔部は、1つの発光部下に1つ存在するように構成することが好ましい。このようにすると、穿孔部と、発光部を形成するための貫通部とを同時に形成でき、製造上有利である。
【0011】
以下、本発明の発光素子の一例として電界発光素子を挙げ、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される電界発光素子の一例を説明した部分断面図である。
図1に示した電界発光素子10は、基板11と、基板11側を下側とした場合に基板11上に形成され正孔を注入するための第1の電極層としての陽極層12と、第1の電極層上に形成される誘電体層13と、誘電体層13を挟んで陽極層12と対向して形成され電子を注入するための第2の電極層としての陰極層14とが順に形成した構造を採る。また、陽極層12および誘電体層13を貫通して形成される貫通部16aと基板11に形成される穿孔部16bとからなる凹部16を有し、そして凹部16の内面と接触して形成され電圧を印加することで発光する発光材料からなる発光部17を有する。
なお、凹部16とは、穿孔部16bと貫通部16aとを合わせた部分である。凹部16は、1個の穿孔部16bに対し複数の貫通部16a、または複数の穿孔部16bに対し1個の貫通部16aで構成されていてもよいが、製造が容易になることから、1つの凹部16は、1つの穿孔部16bと1つの貫通部16aから構成することが好ましい。
この発光部17は、図1に示した電界発光素子10では、凹部16の内部のみならず誘電体層13の上面にも展開し、形成されている。また、陰極層14は、この発光部17の更に上面に形成する形で形成されており、いわゆるベタ膜状に成膜されている。なお、誘電体層13を設けた方が一般に電界発光素子の電流効率が良く好ましいが、発光部17に十分電流が流れるならば(ショートしなければ)、必ずしも誘電体層13は必須ではない。例えば、前記発光材料と同程度以上の抵抗率を有する材料の層に、前記誘電体層13が置き換わった構造であってもよい。前記発光材料と同程度以上の抵抗率を有する材料が前記発光材料そのものであっても良い。
【0012】
基板11は、陽極層12、誘電体層13、陰極層14、発光部17を形成する支持体となるものである。基板11には、電界発光素子10に要求される機械的強度を満たす材料が用いられる。
【0013】
本実施の形態において発光部17から発した光は、基板11の側から取り出す。そのため基板11は透明な基板である。基板11を作製するための材料としては、通常、可視光に対して透明であることが必要である。なお本実施の形態において、「可視光に対し透明である」とは、発光部17から発する波長の可視光を透過することができればよいという意味であり、可視光領域全域にわたり透明である必要はない。ただし、本実施の形態では、可視光として、波長450nm〜700nmの光を透過することが好ましい。また透過率としては波長550nmの可視光に対し、50%以上であることが好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
なお、発光光が可視光でない場合は、少なくとも発光波長領域に対して、可視光の場合と同様に透明であることが必要である。透過率としては、発光が最大強度となる波長に対し、50%以上であることが好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
このような透明な基板の条件を満たす材料として、具体的には、サファイアガラス、ライムソーダガラス、石英ガラスなどのガラス類;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂などの透明樹脂;シリコン;窒化アルミ、アルミナなどの透明金属酸化物などが挙げられる。なお基板11として、上記透明樹脂からなる樹脂フィルム等を使用する場合は、水、酸素などのガスに対するガス透過性が低いことが好ましい。ガス透過性が高い樹脂フィルム等を使用する場合は、光の透過性を損なわない範囲でガスの透過を抑制するバリア性薄膜を形成することが好ましい。また、詳しくは後述するが、基板11に穿孔部16bを形成するのにエッチングを利用する場合は、寸法安定性の観点から、基板11としてガラス類を使用することが好ましい。
【0014】
基板11の厚さは、要求される機械的強度にもよるが、好ましくは、0.01mm〜10mm、より好ましくは0.05mm〜2mmである。また基板11の屈折率は、屈折率として発光部17を構成する発光材料の屈折率より低い値を有することが好ましい。即ち、基板11の屈折率が発光部17を構成する発光材料の屈折率より高い場合は、発光部17から基板11へ入射する際に全反射しやすくなり、結果として基板11からの光取り出し量は低下しやすくなる。発光部17を形成する材料については同様に後述するが、屈折率は、1.5〜1.9程度のものが多い。よって基板11の屈折率はこの値より低い値を有することが好ましい。
【0015】
陽極層12は、陰極層14との間で電圧を印加し、陽極層12より発光部17に正孔を注入する。陽極層12に使用される材料としては、電気伝導性を有するものであることが必要である。具体的には仕事関数が低いものであり、仕事関数は、−4.5eV以下であることが好ましい。加えて、アルカリ性水溶液に対し、電気抵抗が顕著に変化しないことが好ましい。
【0016】
このような条件を満たす材料として、金属酸化物、金属、合金が使用できる。ここで、金属酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)が挙げられる。また金属としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)等が挙げられる。そしてこれらの金属を含むステンレス等の合金も使用できる。このように陽極層12に用いることができる材料は、透明材料のみならず、不透明材料であってもよい。即ち、本実施の形態において陽極層12は、貫通部16aにより貫通するため、発光部17から発した光は、貫通部16aおよび穿孔部16bを通り、基板11の側から取り出すことができる。陽極層12の厚さは、例えば、2nm〜2mm、好ましくは2nm〜2μmで形成することができる。なお仕事関数は、例えば、紫外線光電子分光分析法により測定することができる。
【0017】
誘電体層13は、陽極層12と陰極層14の間に設けられ、陽極層12と陰極層14とを所定の間隔にて分離し絶縁すると共に、発光部17に電圧を印加するためのものである。このため誘電体層13は高抵抗率材料であることが必要であり、電気抵抗率としては、108Ωcm以上、好ましくは1012Ωcm以上有することが要求される。具体的な材料としては、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物;酸化ケイ素(二酸化ケイ素)、酸化アルミニウム等の金属酸化物が挙げられるが、他にポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、パリレン等の高分子化合物も使用可能である。誘電体層13の厚さとしては、電界発光素子10全体の厚さを抑えるために1μmを越えないことが好ましい。また、陽極層12と陰極層14との間隔が狭い方が、発光のために必要な電圧が低くて済むので、この観点からも誘電体層13は薄い方がより好ましい。但し、薄すぎると電界発光素子10を駆動するための電圧に対し、絶縁耐力が十分でなくなるおそれがある。ここで絶縁耐力は、発光部17が形成されていない状態で、陽極層12と陰極層14の間に流れる電流の電流密度が、0.1mA/cm2以下であることが好ましく、0.01mA/cm2以下であることがより好ましい。また電界発光素子10の駆動電圧に対し、2Vを超えた電圧に耐えることが好ましいため、例えば、駆動電圧が5Vである場合は、発光部17が形成されていない状態で、陽極層12と陰極層14の間に約7Vの電圧を印加した場合に上記の電流密度を満たすことが必要である。これを満たす誘電体層13の厚さとしては、好ましくは、10nm〜500nm、更に好ましくは50nm〜200nmで作製するのがよい。
【0018】
陰極層14は、陽極層12との間で電圧を印加し、発光部17に電子を注入する。本実施の形態においては、後述する通り凹部16が発光部17により埋められているため陰極層14は、誘電体層13の上に形成する形でいわゆるベタ膜状に形成されている。即ち、凹部16による貫通する孔部を有さず、凹部16により貫通されない連続膜として形成される。
【0019】
陰極層14に使用される材料としては、陽極層12と同様に電気伝導性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、仕事関数が低く、かつ化学的に安定なものが好ましい。仕事関数は、化学的安定性を考慮すると−2.9eV以下であることが好ましい。具体的には、Al、MgAg合金、AlLiやAlCaなどのAlとアルカリ金属の合金等の材料を例示することができる。陰極層14の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50nm〜500nmがより好ましい。本実施の形態の電界発光素子10の場合は、基板11側から発光部17から発した光を取り出す。そのため陰極層14は、不透明材料により形成されていてもよい。なお本実施の形態のように陰極層14がベタ膜として、発光部17を覆っている形態において、基板11側からのみならず陰極層14側からも光を取り出したい場合は、陰極層14は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料により形成する必要がある。
【0020】
また、陰極層14から発光部17への電子の注入障壁を下げて電子の注入効率を上げる目的で、図示しない陰極バッファ層を、陰極層14に隣接して設けてもよい。陰極バッファ層は、陰極層14より仕事関数の低いことが必要であり、金属材料が好適に用いられる。例えば、アルカリ金属(Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Sr、Ba、Ca、Mg)、希土類金属(Pr、Sm、Eu、Yb)、あるいはこれら金属のフッ化物、塩化物、酸化物から選ばれる単体あるいは2つ以上の混合物を使用することができる。陰極バッファ層の厚さは0.05nm〜50nmが好ましく、0.1nm〜20nmがより好ましく、0.5nm〜10nmがより一層好ましい。
【0021】
凹部16は、発光部17をその内面に塗布し、かつ発光部17からの光を取り出すためのものである。本実施の形態では、凹部16は、陽極層12および誘電体層13を貫通して形成される貫通部16aと基板11に形成される穿孔部16bとからなる。なお図1において貫通部16aと穿孔部16bとの境界を点線で示している。また本実施の形態において、「基板の表面」とは、図1における基板11および陽極層12の境界面および貫通部16aと穿孔部16bとの境界面から構成される面を意味する。このように凹部16を設けることにより貫通部16aにおいて発光部17から発せられた光は、凹部16の貫通部16aから穿孔部16bへ伝搬する。そしてそこから更に基板11内を伝搬することで、基板11側から光を取り出すことができる。ここで、貫通部16aは、陽極層12と誘電体層13を貫通して形成されているため、第1の電極層である陽極層12が不透明材料により形成されるときでも光を取り出すことが可能である。
【0022】
ここで、貫通部16aの形状は、例えば、略円柱形状、略直方体形状(溝形状)などとすることができるが、これに限られるものではない。貫通部16aの最大幅は、好ましくは0.01μm〜10μmであり、より好ましくは0.01μm〜5μmであり、特に好ましくは0.01μm〜1μmである。なお、貫通部16aの最大幅とは、貫通部16aが穿孔部16bと接する面(基板表面)における貫通部16aの形状が内包する最大円の直径のことを言う。
本実施の形態において、貫通部16aの形状を直方体とすることにより、基板面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。さらに、貫通部16aを互いに略平行である略直方体形状とした場合、つまり貫通部16aを他の貫通部に対して、互いに長辺が略平行にして基板11面に並んでいる場合、より異方性のある配光分布を得やすい。
基板11上に点在する発光部の間隔を小さくすれば、それだけ単位面積当たりの発光部17の数が増加するため、電界発光素子全体としての発光強度を大きくすることができる。例えば、本実施の形態の電界発光素子10では、貫通部16aで強く光る場合においては貫通部16aの間隔を小さくすれば、それだけ単位面積当たりの貫通部16aの数が増加するため、発光強度を大きくすることができる。
また、本実施の形態の電界発光素子10では、発光部17は、陽極層12と陰極層14の近傍において発光しやすい。即ち貫通部16aの中央部は、非発光部分となりやすく、この非発光部分の面積が大きいと電界発光素子10を高輝度で発光させにくい。よって、貫通部16aの幅(W)を小さくすれば、凹部16の中央部の非発光部分が減少することになるため、発光強度を大きくしやすくなる。より具体的には、貫通部16aは、幅(W)が10μm以下であることが好ましい。なお、ここで貫通部16aの幅とは、貫通部16aの端部から他の端部への短軸側の距離(最短距離)を指す。また同上の理由で隣接する貫通部16a同士の短軸側の距離(最短距離)も短いほうがよい。
【0023】
また本実施の形態では、穿孔部16bを設けることで、光の取り出し効率を向上させている。
穿孔部16bは、発光部17下の基板11表面に設けられる。穿孔部16bは、複数の発光部17下に1つ設けたり、1つの発光部17下に複数設けることもできるが、通常、光取り出しの効率を上げやすいので、1つの発光部17に対して1つの穿孔部16bが設けられる。なお、穿孔部16bの最大幅とは、基板11表面において穿孔部16bの形状が内包する最大円の直径のことを言う。
穿孔部16bの形状は、例えば、略円柱形状、略直方体形状などとすることができるが、これに限られるものではない。なお穿孔部16bを回転体以外の形状にすることで、基板11面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。そして穿孔部16bの最大幅(穿孔部16bを略円柱形状とした場合、その直径)は、このましくは0.01μm〜10μmであり、より好ましくは0.01μm〜5μmであり、さらに好ましくは0.01μm〜2μmである。なお上記範囲で、穿孔部16bの最大幅の上限を1μm未満にすると発光効率がより向上する。
本実施の形態において、穿孔部16bの形状を直方体とすることにより、基板面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。さらに、穿孔部16bを互いに略平行である略直方体形状とした場合、つまり穿孔部16bを他の穿孔部に対し、互いに長辺が略平行にして基板11面に並んでいる場合、より異方性のある配光分布を得やすい。
【0024】
図2(a)〜(c)は穿孔部16bを設けた場合と設けなかった場合とで、発光部17において発した光の進路について説明を行なった図である。
ここで図2(a)は、貫通部16aと共に穿孔部16bを設けて凹部16を形成する本実施の形態の電界発光素子10における光の進路について説明した図である。一方、図2(c)は、貫通部16aは設けるが穿孔部16bを設けずに凹部16を形成した電界発光素子における光の進路について説明した図である。
図2(c)で示したように穿孔部16bを設けない場合、発光部17から発し、基板11側に向かう光は、その方向が基板11の表面に対し一定の角度より上である場合は、屈折しつつ基板11内に侵入し、光を基板11側から取り出すことができる。ただし、光の方向が基板11の表面に対し一定の角度以下である場合は、全反射を生じ、基板11内に侵入することができない。即ち、全反射した光は、基板11側から取り出すことができず、それだけ光の利用効率が減少することになる。
一方、図2(a)で示したように穿孔部16bを設けた場合は、発光部17から発し、基板11側に向かう光は、穿孔部16bの側面および底面に対し、上述した一定の角度より上の角度で到達しやすい。そのため基板11内に侵入することができる光の割合が図2(c)の場合より増加する。即ち、全反射を生じる光の割合が減少し、基板11側から取り出すことができる光の量が増加する。その結果、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0025】
また、図2(b)で示したように、穿孔部16bの底部に存在する底面において反射した光も穿孔部16bの側面において基板11内に侵入することができる。そして、更に陽極層12で反射することにより基板11側から光を取り出すことができる。この場合、陽極層12は、反射を生じやすいという観点から金属または合金を材料として使用することが好ましい。
【0026】
また貫通部16aと共に穿孔部16bを設けて凹部16を形成する本実施の形態の電界発光素子10においては、発光効率の向上を図ることができるため、低消費電力化を行ないやすくなる。更に、低消費電力化することで電界発光素子10の耐久性の向上を図りやすくなる。
【0027】
なお、図1に示した穿孔部16bの断面形状は、底部に向かってその幅が小さくなる台形形状となっている。即ち、基板11の表面から凹部16の最深部である底部に至る経路部分が絞り形状となっており、穿孔部16bの最深部が平面である。このように絞り形状を設けることにより、光が基板11に入射するときに、穿孔部16bの側面において光の角度が上述した一定の角度より大きくなりやすくなり発光部17において発した光がより基板11側に入射しやすくなる。またこの形状を採ると光は基板11の法線方向により近い角度で基板11に侵入する。更に基板11の屈折率として発光部17の屈折率より低い値を採ることで、光はレンズ効果により基板11の法線方向により近い角度に屈折して侵入する。
以上のことにより光が基板11から更に外部に出射するときに、その光量が増加すると共に、特に穿孔部16bの断面形状を絞り形状とすることにより基板正面側から見た輝度を向上させることができる。そしてこの場合、このような配光をより得やすくするには、絞り形状は幅が連続的に狭くなる形状であることが好ましい。つまり、絞り形状の中でも階段状のものは、上述した光の反射が生じやすいため、連続的に狭くなる絞り形状の方が好ましい。
【0028】
ただし、このように穿孔部16bの断面形状を絞り形状とすることは、所望の配光によっては必ずしも必須ではない。種々の配光特性を得るための穿孔部16bの形状としては、例えば、以下の図3〜図10の形状が例示できる。
図3は、穿孔部16bを絞り形状とせずに形成する場合の一例を説明した図である。
図3に示した電界発光素子10aは、穿孔部16bの断面形状を長方形形状とした例である。つまり穿孔部16bは、基板11の表面から穿孔部16bの最深部に至る幅が略同一である。このように穿孔部16bを形成した場合でも、上述した穿孔部16bを設けない図2(c)の場合よりも基板11内に侵入する光の割合を増加させることができ、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0029】
また、図4に示した電界発光素子10bは、穿孔部16bの断面形状を半円形状とした例である。この電界発光素子10bでは、穿孔部16bの基板11の表面から凹部16の最深部である底部に至る経路部分が絞り形状となっているが、その形状を半円形状となるように形成している。上述した穿孔部16bの断面形状を台形形状とした電界発光素子10や穿孔部16bの断面形状を長方形形状とした電界発光素子10aに対し、穿孔部16bの底部に底面が存在しないため、底面において反射する光の割合を減少させることができる。
【0030】
更に、図5に示した電界発光素子10cは、基板11の表面から凹部16の最深部である底部に至る経路部分の一部に絞り形状を設けた例である。この電界発光素子10cでは、絞り形状として円弧をなすような形状を採用している。この場合、穿孔部16bの最深部が曲面となる。
【0031】
また、図6に示した電界発光素子10dは、図3で説明した電界発光素子10aに対し、穿孔部16bの底面部を凸形状とした例である。つまり穿孔部16bが凸面の底部を有する。この場合、穿孔部16bの底面部で光が反射した場合であっても、穿孔部16bの側面部に入射する光の量が電界発光素子10aに対し増加する。そのため図2(b)で説明したように陽極層12で再び反射されて基板11側から光を取り出すことができる。
【0032】
更に、図7に示した電界発光素子10eは、穿孔部16bの断面形状を基板11の表面から凹部16の最深部である底部に至るまで広がる形状とした場合である。つまり穿孔部16bは絞り形状を有し、そしてこの絞り形状は幅が連続的に広くなる形状である。
このように穿孔部16bを形成しても、上述した穿孔部16bを設けない図2(c)の場合よりも基板11内に侵入する光の割合を増加させることができ、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0033】
更に、図8に示した電界発光素子10fは、穿孔部16bの断面形状を底部に向かってその幅が小さくなる三角形形状とした場合である。つまり穿孔部16bの最深部が尖頭形状となる。この場合も穿孔部16bの底部に底面が存在しないため、底面において反射する光の割合を減少させることができる。
【0034】
また更に、図9に示した電界発光素子10gは、穿孔部16bの側壁の傾きに合わせて陽極層12および誘電体層13の貫通部16aの形状を変更した例である。なおこの形態では、貫通部16aと穿孔部16bとは側壁の断面形状を連続的に直線状となるように形成したが、曲線状となるように形成してもよい。
【0035】
なお、上述した例では、貫通部16aの幅と穿孔部16bの幅とは、ほぼ一致しており、貫通部16aの幅と穿孔部16bの幅は略同一であった。即ち、穿孔部16bは、穿孔部16bの幅が貫通部16aの幅に合わせて形成していた。これは貫通部16aから穿孔部16bに渡る内壁が、連続した面で構成されていると言うこともできる。ただし必ずしもこのようにする必要はなく、穿孔部16bの基板11表面における幅を貫通部16aの幅より広くしてもよい。
図10は、穿孔部16bの基板11の表面における幅を貫通部16aの幅より広くした場合の一例を説明した図である。
図10で示した電界発光素子10hは、図1で示した電界発光素子10と比べて、穿孔部16bの断面形状は底部に向かってその幅が小さくなる台形形状となっている点では同様である。一方、電界発光素子10hでは、穿孔部16bの基板11の表面における幅が貫通部16aの幅より広くしている。
このように穿孔部16bを形成しても、上述した穿孔部16bを設けない図2(c)の場合よりも基板11内に侵入する光の割合を増加させることができ、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0036】
本発明において、発光部17は、電圧を印加し、電流を供給することで光を発する発光材料であり、少なくとも貫通部16aの内面を含む凹部16の内面に接触して塗布されることで形成される。発光部17において、陽極層12から注入された正孔と陰極層14から注入された電子(正孔)とが再結合し、発光が生じる。そして本実施の形態では、製造工程の簡略化のために好ましくは、上述の通り凹部16は、発光部17の材料により埋められている。
【0037】
発光部17の材料としては、有機材料および無機材料の何れをも使用することができる。この場合、有機材料を用いた電界発光素子は、有機電界発光素子として捉えることができる。
ここで有機材料を発光材料として用いる場合は、低分子化合物及び高分子化合物のいずれをも使用することができる。例えば、大森裕:応用物理、第70巻、第12号、1419−1425頁(2001年)に記載されている発光性低分子化合物及び発光性高分子化合物などを例示することができる。
【0038】
但し、本実施の形態では、塗布性に優れた材料が好ましい。即ち本実施の形態における電界発光素子の構造では、発光部17が、少なくとも貫通部16aの内面、好ましくは凹部16内で安定に発光するためには発光部17が凹部16の内面に均一に接し、膜厚が均等に成膜されること、即ちカバレッジ性が向上することが好ましい。塗布性に優れた材料を使用せずに発光部17を形成すると、凹部16全体に発光部17が一様に接していない、あるいは凹部16内面の膜厚が均一でない成膜状態になりやすい。そのため凹部16から出射する光の輝度のばらつき等を生じやすくなる。
また、凹部16内に発光部17を均一に形成するためには、塗布法で行うことが好ましい。即ち、塗布法では、凹部16に発光材料を含む発光材料溶液を埋め込むことが容易であるため凹凸を有する面においてもカバレッジ性を高めて成膜することが可能である。塗布法においては塗布性を向上させる目的で、主に重量平均分子量で1,000〜2,000,000である材料が好適に用いられる。また、塗布性を向上させるためレベリング剤、脱泡剤などの塗布性向上添加剤を添加したり、電荷トラップ能力の少ないバインダー樹脂を添加することもできる。
【0039】
具体的に、塗布性に優れる材料としては、例えば、特開2007−86639号公報に挙げられている所定の構造を有する分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物や、特開2000−034476号公報に挙げられている所定の高分子蛍光体などが挙げられる。
ここで、塗布性に優れた材料の中でも、電界発光素子10の製造のプロセスが簡素化されるという点で発光性高分子化合物が好ましく、発光効率が高い点で燐光発光性化合物が好ましい。従って、特に燐光発光性高分子化合物が好ましい。なお、複数の材料同士を混合、あるいは塗布性を損なわない範囲で低分子発光材料(例えば、分子量1000以下)を添加することも可能である。この際の低分子発光材料の添加量は30wt%以下が好ましい。
また、発光性高分子化合物は、共役発光性高分子化合物と非共役発光性高分子化合物とに分類することもできるが、中でも非共役発光性高分子化合物が好ましい。
上記の理由から、本実施の形態で用いられる発光材料としては、燐光発光性非共役高分子化合物(燐光発光性高分子であり、かつ非共役発光性高分子化合物でもある発光材料)が特に好ましい。
【0040】
本発明の電界発光素子10における発光部17は、好ましくは、燐光を発光する燐光発光性単位とキャリアを輸送するキャリア輸送性単位とを一つの分子内に備えた、燐光発光性高分子(燐光発光材料)を少なくとも含む。燐光発光性高分子は、重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物とを共重合することによって得られる。燐光発光性化合物はイリジウム(Ir)、白金(Pt)および金(Au)の中から一つ選ばれる金属元素を含む金属錯体であり、中でもイリジウム錯体が好ましい。
重合性置換基を有する燐光発光性化合物としては、例えば下記式(E−1)〜(E−49)に示す金属錯体の一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。
【0041】
【化1】
【0042】
【化2】
【0043】
【化3】
【0044】
【化4】
【0045】
【化5】
【0046】
【化6】
【0047】
なお、上記式(E−35)、(E−46)〜(E−49)において、Phはフェニル基を表す。
これらの燐光発光性化合物における重合性置換基としては、例えば、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などが挙げられ、中でもビニル基、メタクリレート基、スチリル基及びその誘導体が好ましい。これらの置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して金属錯体に結合していてもよい。
重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物は、ホール輸送性および電子輸送性の内のいずれか一方または両方の機能を有する有機化合物における一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。
このような化合物の代表的な例として、下記式(E−50)〜(E−67)に示した化合物を挙げることができる。
【0048】
【化7】
【0049】
【化8】
【0050】
例示したこれらのキャリア輸送性化合物における重合性置換基はビニル基であるが、ビニル基をアクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などの重合性置換基で置換した化合物であってもよい。また、これらの重合性置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して結合していてもよい。
【0051】
重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。また、重合体の分子量が重量平均分子量で1,000〜2,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。ここでの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定されるポリスチレン換算分子量である。
【0052】
燐光発光性高分子は、一つの燐光発光性化合物と一つのキャリア輸送性化合物、一つの燐光発光性化合物と二つ以上のキャリア輸送性化合物を共重合したものであってもよく、また二つ以上の燐光発光性化合物をキャリア輸送性化合物と共重合したものであってもよい。
【0053】
燐光発光性高分子におけるモノマーの配列は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよく、燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数をm、キャリア輸送性化合物構造の繰り返し単位数をnとしたとき(m、nは1以上の整数)、全繰り返し単位数に対する燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数の割合、すなわちm/(m+n)の値は、0.001〜0.5が好ましく、0.001〜0.2がより好ましい。
【0054】
燐光発光性高分子のさらに具体的な例と合成法は、例えば特開2003−342325号公報、特開2003−119179号公報、特開2003−113246号公報、特開2003−206320号公報、特開2003−147021号公報、特開2003−171391号公報、特開2004−346312号公報、特開2005−97589号公報に開示されている。
【0055】
本実施の形態における電界発光素子10の発光部17は、好ましくは前述した燐光発光性化合物を含むが、発光部17のキャリア輸送性を補う目的で正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物が含まれていてもよい。これらの目的で用いられる正孔輸送性化合物としては、例えば、TPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4,4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)などの低分子トリフェニルアミン誘導体が挙げられる。更に、ポリビニルカルバゾール、トリフェニルアミン誘導体に重合性官能基を導入して高分子化したもの;特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物;ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレンなどが挙げられる。また、電子輸送性化合物としては、例えば、Alq3(アルミニウムトリスキノリノレート)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体などの低分子材料が挙げられる。更に上記の低分子電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどの既知の電子輸送性化合物が挙げられる。
【0056】
また、発光部17に使用する発光材料として上述した発光性高分子化合物ではなく発光性低分子化合物を使用する場合でも、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物、もしくは積層が可能である。そして、発光材料として上述した発光性高分子化合物を添加することも可能である。
この場合の正孔輸送性化合物の具体例としては、例えば、特開2006−76901号公報に記載されているTPD、α−NPD、m−MTDATA、フタロシアニン錯体、DTDPFL、spiro−TPD、TPAC、PDA等が挙げられる。
また、下記式(E−68)〜(E−76)に示した化合物が挙げられる。
【0057】
【化9】
【0058】
また、この場合の電子輸送性化合物の具体例としては、例えば、特開2006−76901号公報に記載されているBPhen、BCP、OXD−7、TAZ等が挙げられる。また、下記式(E−77)〜(E−85)に示した化合物が挙げられる。
【0059】
【化10】
【0060】
また、例えば、特開2006−273792号公報に記載の一分子内に正孔輸送性及び電子輸送性を有するバイポーラー型分子構造を有する化合物でも使用可能である。
【0061】
本実施の形態における電界発光素子10は、上述の通り発光体として無機材料を用いることもできる。無機材料を用いた電界発光素子は、無機電界発光素子として捉えることができる。無機材料としては、例えば無機蛍光体を用いることができる。この無機蛍光体の具体例、および電界発光素子の構成、製造方法は、例えば特開2008−251531号公報に記載されたものを公知の技術として挙げることができる。
【0062】
以上詳述した電界発光素子10は、図1〜図10で示した電界発光素子10,10a〜10hでは、発光部17が凹部16の内部のみならず誘電体層13の上面にも展開し、形成されていたが、これに限られるものではない。
【0063】
図11(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される電界発光素子10において、発光部17の他の形態を例示して説明した部分断面図である。
図11(a)で示した電界発光素子10iは、発光部17が凹部16の内部に形成されるが、発光層を誘電体層13の上面までには形成せずに作製した場合を示している。貫通部16a内に突出した陰極層14面による反射を利用してより光を効率よく取出すことができる。
また、図11(b)で示した電界発光素子10jは、発光層を誘電体層13の上面に至るまで形成させ、そして凹部16を全て発光材料で埋めるように形成した場合を示している。この構成を採ることにより、陰極層14を、平面状に形成することができる。陰極層14を平面状に成膜することで陰極層14のピンホールやクラックを抑制して、輝度ムラの少ない電界発光素子を得ることができる。
更に、図11(c)で示した電界発光素子10kでは、貫通部16aを陰極層14にも設け、発光部17を凹部16の内部に発光層を沿わせる形で形成した場合を示している。この形態では、発光部17の材料を、凹部16の一部にのみ充填する形となっている。そして、貫通部16aが陰極層14に対しても形成されることで、陰極層14が不透明材料により形成する場合でも、基板11側のみならず、陰極層14側からも光の取り出しが可能となり、光を効率よく取出すことができる。
このような電界発光素子10i,10kにおいても発光部17において発光しやすい箇所については変化が生じないため、図1〜図10で示した電界発光素子10,10a〜10hの場合と比べ、発光効率等には経時変化が生じにくい。ただし、後述する電界発光素子10の製造方法の説明において詳述するが、電界発光素子10,10a〜10hの場合の方が製造容易であるという特徴がある。
【0064】
なお、以上詳述した電界発光素子10,10a〜10lでは、基板11側を下側とした場合、陽極層12を下側に形成し、誘電体層13を挟み込み対向する形で陰極層14を上側に形成する場合を例示して説明を行ったが、これに限られるものではなく、陽極層12と陰極層14を入れ替えた構造でもよい。即ち、基板11側を下側とした場合、陰極層14を下側に形成し、誘電体層13を挟み込み対向する形で陽極層12を上側に形成する形態でもよい。
【0065】
(発光素子の製造方法)
次に、本実施の形態が適用される発光素子の製造方法について、図1で説明を行った電界発光素子10の場合を例に取り説明を行う。
図13(a)〜(h)は、本実施の形態が適用される電界発光素子10の製造方法について説明した図である。
まず基板11上に、第1の電極層である陽極層12、および誘電体層13を順に積層して形成する(図13(a):積層工程)。本実施の形態では、基板11として、ガラス基板を使用した。また陽極層12を形成する材料としてITOを使用し、また誘電体層13を形成する材料として二酸化ケイ素(SiO2)を使用した。
これらの層を基板11上に形成するには、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などを用いることができる。また、塗布成膜方法、即ち、目的とする材料を溶剤に溶解させた状態で基板11に塗布し乾燥する方法が可能な場合は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などの方法を用いて成膜することも可能である。
【0066】
また、陽極層12を形成した後に、陽極層12の表面処理を行うことで、オーバーコートされる層の性能(陽極層12との密着性、表面平滑性、ホール注入障壁の低減化など)を改善することができる。表面処理を行うには高周波プラズマ処理を始めとしてスパッタリング処理、コロナ処理、UVオゾン照射処理、紫外線照射処理、または酸素プラズマ処理などがある。
【0067】
更に、陽極層12の表面処理の表面処理を行う代わりに、もしくは表面処理に追加して、図示しない陽極バッファ層を形成することで表面処理と同様の効果が期待できる。そして、陽極バッファ層をウェットプロセスにて塗布して作製する場合には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法などを用いて成膜することができる。
【0068】
上記ウェットプロセスによる成膜で用い得る化合物は、陽極層12と発光部17に含まれる発光性化合物に良好な付着性を有した化合物であれば特に制限はない。例えば、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物であるPEDOT、ポリアニリンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物であるPANIなどの導電性ポリマーを挙げることができる。さらに、これら導電性ポリマーにトルエン、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤を添加して用いてもよい。また、界面活性剤などの第三成分を含む導電性ポリマーでもよい。界面活性剤としては、例えばアルキル基、アルキルアリール基、フルオロアルキル基、アルキルシロキサン基、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボキシレート、アミド、ベタイン構造、および第4級化アンモニウム基からなる群から選択される1種の基を含む界面活性剤が用いられるが、フッ化物ベースの非イオン性界面活性剤も用い得る。
【0069】
また、陽極バッファ層をドライプロセスにて作製する場合は、特開2006−303412号公報に例示のプラズマ処理などを用いて成膜することができる。この他にも金属単体あるいは金属酸化物、金属窒化物等を成膜する方法が挙げられ、具体的な成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、化学反応法、コーティング法、真空蒸着法などを用いることができる。
【0070】
次に、図13(a)の工程で形成した各層を貫通する形で貫通部16aの形成を行うが、貫通部16aを形成するには、例えば、リソグラフィを用いた方法が使用できる。これを行うには、まず誘電体層13の上にレジスト液を塗布し、スピンコート等により余分なレジスト液を除去して、レジスト層71を形成する(図13(b))。
【0071】
そして、貫通部16aを形成するための所定のパターンが描画されたマスク(図示せず)をかぶせ、紫外線(UV:Ultra Violet)、電子線(EB:Electron Beam)等により露光を行うと、レジスト層71に凹部16に対応した所定のパターンが露光される。そして現像液を用いてレジスト層71の露光部分を除去すると、露光されたパターンの部分のレジスト層71が除去される(図13(c))。これにより露光されたパターンの部分に対応して、誘電体層13の表面が露出する。
【0072】
次に、残存したレジスト層71をマスクとして、露出した誘電体層13の部分をエッチング除去する(図13(d))。エッチングとしては、ドライエッチングとウェットエッチングの何れをも使用することができる。またこの際に等方性エッチングと異方性エッチングを組合せることで、凹部16の形状の制御を行うことができる。ドライエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)や誘導結合プラズマエッチングが利用でき、またウェットエッチングとしては、希塩酸や希硫酸への浸漬を行う方法などが利用できる。このエッチングにより上記パターンに対応して、陽極層12の表面が露出する。
【0073】
次に、残ったレジスト層71をレジスト除去液等を用いて除去し、誘電体層13をマスクとして、露出した陽極層12の部分をエッチング除去する(図13(e))。エッチングとしては、図13(d)で説明した方法と同様の方法を用いることができるが、エッチング条件の変更により、誘電体層13にあまり影響を及ぼさずに、陽極層12を選択的にエッチングすることができる。これにより、上記パターンに対応して、基板11の表面が露出し、貫通部16aが形成される。なお図13(c)および図13(d)で説明した各工程は、第1の電極層である陽極層12および誘電体層13を貫通する貫通部16aを形成する貫通部形成工程として捉えることができる。
【0074】
次に、貫通部16aを形成した部分以外の部分をマスクとして、露出した基板11の部分をエッチング除去する(図13(f):穿孔部形成工程)。エッチングとしては、図13(d)で説明した方法と同様の方法を用いることができるが、エッチング条件の変更により、誘電体層13にあまり影響を及ぼさずに、基板11を選択的にエッチングすることができる。これにより、上記パターンに対応して、穿孔部16bを形成することができ、貫通部16aと併せて凹部16を形成することができる。また、この方法によれば、別途マスクを用意してリソグラフィを行なう必要がないため、より容易に穿孔部16bを形成することが可能となる。
なお本実施の形態では、穿孔部16bとして断面形状が台形形状のものを形成する場合を例に取り説明を行なったが、エッチング条件の変更により上述した種々の形状を形成することが可能である。より具体的には、等方性エッチングと異方性エッチングを組合せることで、種々の形状を形成することが可能となる。また、上述した貫通部形成工程および穿孔部形成工程をドライエッチングで行なった場合は、同一装置内に保持したまま、反応ガス等のエッチング条件を変更することで続けて作業を行なうことができる。また、穿孔部16bを形成するのにウェットエッチングで行なう場合において、基板11としてガラス類を使用したときは、フッ酸溶液などへの浸漬を行なう方法が利用できる。
【0075】
次に、発光部17を形成する(図13(g):発光部形成工程)。発光部17の形成には、前述の塗布法が用いられる。具体的には、まず発光部17を構成する発光材料を、有機溶媒や水等の所定の溶媒に分散させた発光材料溶液を塗布する。塗布を行う際にはスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング法、インクジェット法、スリットコーティング法、ディスペンサー法、印刷等の種々の方法を使用することができる。塗布を行った後は、加熱あるいは真空引きを行うことで発光材料溶液を乾燥させ、発光材料が凹部16の内面に固着し、発光部17が形成される。この際、発光部17は、誘電体層13上に展開した形で形成される。この形態によれば、塗布を行なった後、凹部16以外の部分に塗布された塗布液を除去する必要がなくなるため、凹部16の内部だけに発光部17を形成する場合に比べ電界発光素子10の製造がより容易になる。
【0076】
そして、第2の電極層である陰極層14を、発光部17上に積層する形で形成する(図13(h):第2電極層形成工程)。陰極層14を形成するには、陽極層12を形成する方法と同様の方法で行うことができる。
【0077】
以上の工程により、電界発光素子10を製造することができる。また、これら一連の工程後、電界発光素子10を長期安定的に用い、電界発光素子10を外部から保護するための保護層や保護カバー(図示せず)を装着することが好ましい。保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物、窒化ケイ素、酸化ケイ素等のシリコン化合物などを用いることができる。そして、これらの積層体も用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板、金属などを用いることができる。この保護カバーは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で基板11と貼り合わせて密閉する方法を採ることが好ましい。またこの際に、スペーサを用いることで所定の空間を維持することができ、電界発光素子10が傷つくのを防止できるため好ましい。そして、この空間に窒素、アルゴン、ヘリウムのような不活性なガスを封入すれば、上側の陰極層14の酸化を防止しやすくなる。特にヘリウムを用いた場合、熱伝導が高いため、電圧印加時に電界発光素子10より発生する熱を効果的に保護カバーに伝えることができるため、好ましい。更に酸化バリウム等の乾燥剤をこの空間内に設置することにより上記一連の製造工程で吸着した水分が電界発光素子10にダメージを与えるのを抑制しやすくなる。
以上、発光部の光源として電界発光を用いた場合を例に挙げて説明をしたが、他の同様な大きさの光源に置き換えて本発明の発光素子を製造してもよい。
【0078】
(画像表示装置)
次に、以上詳述した発光素子を備える画像表示装置について説明を行う。
図14は、本実施の形態における電界発光素子を用いた画像表示装置の一例を説明した図である。
図14に示した画像表示装置200は、いわゆるパッシブマトリクス型の画像表示装置であり、電界発光素子10の他に、陽極配線204、陽極補助配線206、陰極配線208、絶縁膜210、陰極隔壁212、封止プレート216、シール材218とを備えている。
【0079】
本実施の形態において、電界発光素子10の基板11上には、複数の陽極配線204が形成されている。陽極配線204は、一定の間隔を隔てて平行に配置される。陽極配線204は、透明導電膜により構成され、例えばITO(Indium Tin Oxide)を用いることができる。また陽極配線204の厚さは例えば、100nm〜150nmとすることができる。そして、それぞれの陽極配線204の端部の上には、陽極補助配線206が形成される。陽極補助配線206は陽極配線204と電気的に接続されている。このように構成することにより、陽極補助配線206は、基板11の端部側において外部配線と接続するための端子として機能し、外部に設けられた図示しない駆動回路から陽極補助配線206を介して陽極配線204に電流を供給することができる。陽極補助配線206は、例えば、厚さ500nm〜600nmの金属膜によって構成される。
【0080】
また、電界発光素子10上には、複数の陰極配線208が設けられている。複数の陰極配線208は、それぞれが平行となるよう、かつ、陽極配線204と直交するように配設されている。陰極配線208には、Al又はAl合金を使用することができる。陰極配線208の厚さは、例えば、100nm〜150nmである。また、陰極配線208の端部には、陽極配線204に対する陽極補助配線206と同様に、図示しない陰極補助配線が設けられ、陰極配線208と電気的に接続されている。よって、陰極配線208と陰極補助配線との間に電流を流すことができる。
【0081】
更に基板11上には、陽極配線204を覆うように絶縁膜210が形成される。絶縁膜210には、陽極配線204の一部を露出するように矩形状の開口部220が設けられている。複数の開口部220は、陽極配線204の上にマトリクス状に配置されている。この開口部220において、陽極配線204と陰極配線208の間に電界発光素子10が設けられる。すなわち、それぞれの開口部220が画素となる。従って、開口部220に対応して表示領域が形成される。ここで、絶縁膜210の膜厚は、例えば、200nm〜300nmとすることができ、開口部220の大きさは、例えば、300μm×300μmとすることができる。
【0082】
前述の通り電界発光素子10は、開口部220において陽極配線204と陰極配線208の間に位置している。そしてこの場合、電界発光素子10の陽極層12が陽極配線204と接触し、陰極層14が陰極配線208と接触する。電界発光素子10の厚さは、例えば、150nm〜200nmとすることができる。
【0083】
絶縁膜210の上には、複数の陰極隔壁212が陽極配線204と垂直な方向に沿って形成されている。陰極隔壁212は、陰極配線208の配線同士が導通しないように、複数の陰極配線208を空間的に分離するための役割を担っている。従って、隣接する陰極隔壁212の間にそれぞれ陰極配線208が配置される。陰極隔壁212の大きさとしては、例えば、高さが2μm〜3μm、幅が10μmのものを用いることができる。
【0084】
また基板11は、封止プレート216とシール材218を介して貼り合わせられている。これにより、電界発光素子10が設けられた空間を封止することができ、電界発光素子10が空気中の水分により劣化するのを防ぐことができる。封止プレート216としては、例えば、厚さが0.7mm〜1.1mmのガラス基板を使用することができる。
【0085】
このような構造の画像表示装置200において、図示しない駆動装置により、陽極補助配線206、図示しない陰極補助配線を介して、電界発光素子10に電流を供給し、発光部17(図1参照)を発光させることができる。そして凹部16(図1参照)から基板11を通し、光を出射させることができる。そして、上述の画素に対応した電界発光素子10の発光、非発光を制御装置により制御することにより、画像表示装置200に画像を表示させることができる。
【0086】
(照明装置)
次に、電界発光素子10を用いた照明装置について説明を行う。
図15は、本実施の形態における電界発光素子を備える照明装置の一例を説明した図である。
図15に示した照明装置300は、上述した電界発光素子10と、電界発光素子10の基板11(図1参照)に隣接して設置され陽極層12(図1参照)に接続される端子302と、基板11(図1参照)に隣接して設置され電界発光素子10の陰極層14(図1参照)に接続される端子303と、端子302と端子303とに接続し電界発光素子10を駆動するための点灯回路301とから構成される。
【0087】
点灯回路301は、図示しない直流電源と図示しない制御回路を内部に有し、端子302と端子303を通して、電界発光素子10の陽極層12と陰極層14との間に電流を供給する。そして、電界発光素子10を駆動し、発光部17(図1参照)を発光させて、凹部16から基板11を通し、光を出射させ、照明光として利用する。発光部17は白色光を出射する発光材料より構成されていてもよく、また緑色光(G)、青色光(B)、赤色光(R)を出射する発光材料を使用した電界発光素子10をそれぞれ複数個設け、その合成光が白色となるようにしてもよい。なお、本実施の形態の照明装置300では、凹部16(図1参照)の径と間隔を小さくして発光させた場合、人間の目には面発光しているように見える。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
[燐光発光性高分子化合物の作製]
前述した式E−2で表される化合物(重合性置換基を有するイリジウム錯体)、式E−54で表される化合物(正孔輸送性化合物)、および式E−66で表される化合物(電子輸送性化合物)をE−2:E−54:E−66=1:4:5(質量比)の割合で脱水トルエンに溶解させ、更に重合開始剤として、V−601(和光純薬工業株式会社製)を溶解させた。そして、凍結脱気操作を行った後に真空密閉し、70℃で100時間攪拌して重合反応を行なった。反応後、反応液をアセトン中に滴下して沈殿を生じさせ、更に、この脱水トルエン−アセトンでの再沈殿精製を3回繰り返して燐光発光性高分子化合物を精製した。ここで、脱水トルエンおよびアセトンとしては、和光純薬工業株式会社製の高純度グレードのものを更に蒸留したものを用いた。
3回目の再沈殿精製後の溶剤を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、溶剤中に400nm以上での吸収を有する物質が検出されないことを確認した。即ち、このことは溶剤中に、不純物がほとんど含まれないということであり、燐光発光性高分子化合物を十分に精製できていることを意味する。そして、精製された燐光発光性高分子化合物を、室温で2日間かけて真空乾燥させた。その結果得られた燐光発光性高分子化合物(ELP)は、純度が99.9%を超えることを高速液体クロマトグラフィー(検出波長254nm)により確認した。
【0089】
[発光材料溶液の調製]
このように作製した発光性高分子化合物(重量平均分子量=52000)3重量部を97重量部のキシレンに溶解させ、発光材料溶液(以下、「溶液A」ともいう。)を調製した。
【0090】
[発光素子の作製]
発光素子として、図1で示した電界発光素子10を、図13で説明した方法で作製した。
具体的には、まず表面に膜厚150nmのITO(Indium Tin Oxide)膜を有するガラス基板(25mm角)上に、スパッタ装置(キヤノンアネルバ株式会社製E−401s)を用いて、二酸化ケイ素(SiO2)層を280nm成膜した。ここで、ガラス基板は、基板11に対応する。またITO膜は陽極層12に、二酸化ケイ素層は誘電体層13に対応する。
【0091】
次に、フォトレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製AZ1500)をスピンコート法により約1μm成膜した。紫外線による露光後、TMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide:(CH3)4NOH)1.2%液により現像し、レジスト層を図16のようにパターン化した。
【0092】
次に反応性イオンエッチング装置(サムコ株式会社製RIE−200iP)を用いてドライエッチングすることで二酸化ケイ素層のパターン化を行った。ここでエッチング条件としては、反応ガスとしてCHF3を使用し、圧力0.3Pa、出力Bias/ICP=60/100(W)で、16分間反応させた。
【0093】
そしてレジスト除去液によりレジスト残渣を除去し、上述した反応性イオンエッチング装置を用いてドライエッチングすることでITO膜のパターン化を行った。ここでエッチング条件としては、反応ガスとしてCl2とSiCl4の混合ガスを使用し、圧力1Pa、出力Bias/ICP=180/100(W)で、7分間反応させた。
続いて、反応ガスをCHF3ガスに置換して、エッチング条件として圧力0.3Pa、出力Bias/ICP=120/100(W)で20分間反応させた。
【0094】
次に純水を吹きかけることにより洗浄を行ない、スピン乾燥装置を用いて乾燥させた。そして、乾燥したガラス基板を、反応性イオンエッチング装置(サムコ株式会社製RIE−200iP)に装着した。そして反応性イオンエッチング装置内に酸素ガスを導入し、交流電圧を印加し放電させることで酸素プラズマを生成させ、ガラス基板に照射した。ここでプラズマ生成装置内に導入する酸素ガス流量を調整し、圧力は1Pa、投入電力は150Wで30秒間になるようにして処理を行なった。次いで、導入するガスの種類を酸素からCHF3ガスに切り替えた。ここで流量を制御することで圧力を7Paとした。そしてPEモードで投入電力300Wにて10秒間処理を行なった。その結果、深さ200nm(この内、穿孔部16b部分の深さ30nm)、直径2μmの凹部16を形成した。また、凹部16は、図16のパターンで配置され、密度6×104個/mm2であった。なお、発光部17、貫通部16a、穿孔部16bはそれぞれの位置および個数が一致しているので、発光部17の配置及び密度も凹部16と同様である。
次に、溶液Aをスピンコート法(回転数:3000rpm)により塗布し、次いで窒素雰囲気下、120℃で1時間放置して、発光部17を含む発光層を形成した。
【0095】
そして真空蒸着室に投入し、真空蒸着装置で発光部17を含む発光層上に陰極バッファ層として厚さ2.0nmのナトリウム(Na)膜を形成した。続いて陰極層14として、厚さ150nmのアルミニウム(Al)膜を形成した。以上の工程により電界発光素子10を作製することができた。
【0096】
(実施例2)
陽極層12をタングステン(W)膜としたこと以外は、実施例1と同様にして電界発光素子10を作製した。
【0097】
(比較例1〜2)
比較例1では、穿孔部16bを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電界発光素子の作製を行なった。また比較例2では、穿孔部16bを形成しなかったこと以外は、実施例2と同様にして電界発光素子の作製を行なった。
【0098】
(実施例3a〜3f)
発光素子として、図9に示した電界発光素子10gを図13に示した方法で作製した。この際、二酸化ケイ素層のドライエッチング条件は、反応ガスとしてCHF3を使用し、圧力0.45Pa、出力Bias/ICP=60/100(W)で、16分間反応させたこと、そしてレジスト層のパターンの調整をして発光部17の密度および穿孔部16bの最大幅を表1記載のようにしたことを除いて、実施例1と同様の方法で発光素子10gを作製した。なお穿孔部16bの深さは80nmとなった。
【0099】
(実施例4)
発光素子として、図3に示した電界発光素子10aを図13で説明した方法で作製した。この際、ITO膜のパターン化後の基板のエッチングは、エッチング条件として圧力0.3Pa、出力Bias/ICP=120/100(W)で25分間反応させたこと、そして発光部17の密度および穿孔部16bの最大幅を表1記載のようにしたことを除いて、実施例1と同様の方法で発光素子10aを作製した。なお凹部16のサイズ及び密度は実施例3dと同様である。
【0100】
(実施例5)
発光素子として、図4に示した電界発光素子10bを図13で示した方法で作製した。この際、基板11はウェットエッチングで穿孔部16bを形成することを除いて、実施例1と同様の方法で発光素子10bを作製した。ウェットエッチングの条件は、温度25℃の関東化学株式会社製TP−2水溶液を用いて1分間晒した。なお凹部16のサイズ及び密度は実施例3dと同様である。また、得られた穿孔部16bの断面形状は、図4と同様、ほぼ円の一部ではあるが、半円ではなかった。
【0101】
(実施例6)
発光素子として、図10に示した電界発光素子10hを作製した。この際、ITO膜エッチング後の基板ドライエッチング条件は、反応ガスとしてArとCHF3の混合ガスを使用し、圧力0.45Pa、出力Bias/ICP=80/100(W)で、8分間反応させたことを除いて、実施例1と同様の方法で電界発光素子10hを作製した。なお凹部16のサイズ及び密度は実施例3dと同様である。
【0102】
(実施例7)
発光素子として、図12に示した電界発光素子10lを図13で説明した方法で作製した。この際、あらかじめ基板11に低屈折率層(屈折率1.36のMgF2)を100nm成膜したガラス基板を使用した。低屈折率層18のドライエッチングを含め基板11のドライエッチングは、40分間反応させた。
【0103】
[特性評価]
(発光効率)
実施例1〜2および比較例1〜2で作製した有機電界発光素子に、定電圧電源(ケイスレーインスツルメンツ株式会社製SM2400)を用いて段階的に電圧を印加して電界発光素子に流れる電流密度を測定し、また電界発光素子の正面の発光強度を輝度計(株式会社トプコン製BM−9)で計測した。そして、電流密度に対する発光強度の比から発光効率(正面)を決定した。
また、配光分布の異なる電界発光素子間の比較のために、全積分の発光効率も求めた。積分球(オーシャンオプティックス製、直径約50cm)の内部の中心部に電界発光素子を固定し、この電極にプログラマブル直流電源(ケスレー製、2400)を電気的に接続した。この状態で電界発光素子に段階的に0Vから10Vの電圧を印加し、この時に電界発光素子に流れた電流と積分球内の光量を記録した。得られた電流と光量のプロットの勾配から電流効率(QE)を算出した。積分球は、あらかじめ標準光源(オーシャンオプティックス製、LS−1−CAL)を用いて校正を行った。なお、電界発光素子は、正面の発光面以外の部分(ガラス端面および背面)は、黒色塗料で塗装し、この部分から発せられる光が、電界発光素子外部に漏洩しないようにした。
【0104】
(配光分布)
作製した電界発光素子に対し、測定電界発光素子面の中央部の直上(電界発光素子面の中央を通る法線上)に輝度計(株式会社トプコン製BM−9)を配置し、電界発光素子の発光輝度を測定できるようにした。定電圧電源(ケイスレーインスツルメンツ株式会社製SM2400)を用いて輝度100cd/m2になるように電界発光素子に電圧を印加した。この状態から、電界発光素子中央部を通る軸を中心として、電界発光素子を回転させ、2°おきに輝度を測定した。なお、輝度は、角度0°で測定された最大輝度を1とした際の相対値で示した。これらのグラフにおいて0°は輝度計が電界発光素子面の直上にある状態で、90°は輝度計が電界発光素子面と同一平面にある状態である。
測定された配光のパターンは下記A,B,Cに分類した。
Aは、例えば図19のように、どの角度でもある程度の発光強度を有するパターンである。
Bは、例えば、図17、図20のように、相対的に正面に高い発光強度を有するパターンである。
Cは、例えば、図18のように、相対的に高角度に高い発光強度を有するパターンである。
結果を以下の表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示した実施例1と比較例1とを比較すると穿孔部16bを形成した実施例1の方が、発光効率がよいことがわかる。また実施例2と比較例2についても穿孔部16bを形成した実施例2の方が、発光効率がよいことがわかる。このことから穿孔部16bを形成しない場合より形成した方が発光効率がよくなることは明らかである。
実施例3a〜3fより、穿孔部16bの最大幅が1μm未満になると発光効率がより向上することが分かる。
本発明では、表1及び図17〜20に示したように、穿孔部16bの形状を調整することにより配光分布を制御することができる。
例えば、実施例5(図19)のように、配光分布Aのパターンを持つ発光素子では、広域に照射する一般的な照明に向いている。
また、本発明では、発光素子の発光面が平面状であっても、配光分布Bのパターンを持つ発光素子を作成でき、特に、実施例7(図20)の電界発光素子のように、正面にビーム状に光照射する発光素子の作成も可能である。
これとは逆に、配光分布Cのパターンを持つ発光素子の作成もでき、特に、実施例4(図18)の発光素子のように、正面の発光強度は押さえて、ほぼ発光面方向のみに強い発光強度を有する発光素子の作成も可能である。
【符号の説明】
【0107】
10…電界発光素子、11…基板、12…陽極層、13…誘電体層、14…陰極層、16…凹部、16a…貫通部、16b…穿孔部、17…発光部、18…低屈折率層、200…画像表示装置、300…照明装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、画像表示装置や照明装置に用いられる発光素子等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネセンス現象を利用したデバイスが重要度を増している。このようなデバイスとして、発光材料を層状に形成し、この発光層に陽極と陰極とからなる一対の電極を設けて電圧を印加することで発光を行わせる電界発光素子等の発光素子が注目を集めている。このような電界発光素子は、陽極と陰極の間に電圧を印加することで、陽極と陰極からそれぞれ正孔と電子を注入し、注入された電子と正孔とが、発光層で結合することにより生じるエネルギーを利用して発光を行う。即ち、電界発光素子は、この結合によるエネルギーで発光層の発光材料が励起され、励起状態から再び基底状態に戻る際に光を発生する現象を利用したデバイスである。
【0003】
この電界発光素子等の発光素子を画像表示装置として使用した場合、発光材料が自己発光であるため、画像表示装置としての応答速度が速く、視野角が広いという特徴を有する。更に電界発光素子の構造上、画像表示装置の薄型化が容易になるという利点もある。また発光材料として例えば有機物質を利用した有機電界発光素子の場合は、有機物質の選択によって色純度の高い光を発生させやすく、そのため色再現域を広くとることが可能であるという特徴がある。
更に、電界発光素子等の発光素子は、白色での発光も可能であり、面発光であることから、この電界発光素子を照明装置に組み込んで利用する用途も提案されている。
【0004】
このような発光素子の一例として、例えば、特許文献1には、正孔電極注入層と電子注入電極層との間に挿入される誘電体層を備え、少なくとも誘電体層および電極層の一つを通って延び、正孔注入電極領域、電子注入電極領域および誘電体領域を備える内部キャビティ表面にエレクトロルミネセンスコーティング材料を塗布するキャビティ発光エレクトロルミネセンスデバイスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−522371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで一般に、基板上に発光部が点在する発光素子、例えば、キャビティ発光エレクトロルミネセンスデバイスでは、エレクトロルミネッセンスコーティング材料から発した光をキャビティを通して直接取り出すことができるため光の利用効率を向上させやすい。ところが、光を基板側から取り出したい場合、基板に入射する光の角度によっては、基板表面において反射が生じやすくなるため、光の利用効率が減少する場合があった。
本発明の目的は、発光部から発した光を基板側から取り出す際に、基板表面における反射を抑制し、高い発光効率を有する電界発光素子等の発光素子を提供することである。また、他の目的は、出射光の方向を制御することにより、必要とされる配光特性を示す発光素子を提供することである。
また、他の目的は、高いコントラストおよび解像度を有し、また高い発光効率を有し、さらに好ましい配光特性を有する画像表示装置を提供することである。
更に、他の目的は、高い発光効率を有し、また好ましい配光特性を有する照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を備える。
(1)透明な基板上に発光部が点在する発光素子であって、前記基板は、発光部側の基板面が前記発光部下で窪んだ穿孔部を有することを特徴とする発光素子。
(2)前記発光部が、前記基板面1mm2中に102個以上形成されている前項(1)に記載の発光素子。
(3)前記穿孔部は、1つの前記発光部下に1つ存在する前項(1)または(2)に記載の発光素子。
(4)前記穿孔部は、前記基板の表面から当該穿孔部の最深部に至る経路部分の少なくとも一部に絞り形状を有する前項(1)〜(3)のいずれかに記載の発光素子。
(5)前記絞り形状は、幅が連続的に狭くなる形状である前項(4)に記載の発光素子。
(6)前記絞り形状は、幅が連続的に広くなる形状である前項(4)に記載の発光素子。
(7)前記穿孔部は、前記基板の表面から当該穿孔部の最深部に至る幅が略同一である前項(1)〜(3)のいずれかに記載の発光素子。
(8)前記穿孔部の最深部が平面である前項(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子。
(9)前記穿孔部の最深部が曲面である前項(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子。
(10)前記穿孔部の最深部が尖頭形状である前項(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子。
(11)前記穿孔部が凸面の底部を有する前項(1)〜(7)のいずれかに記載の発光素子。
(12)前記穿孔部は、略円柱形状をなす前項(7)または(8)に記載の発光素子。
(13)前記穿孔部は、回転体以外の形状である前項(1)〜(11)に記載の発光素子。
(14)前記穿孔部は、略直方体形状をなす前項(7)または(8)に記載の発光素子。
(15)前記穿孔部は、他の穿孔部に対し、互いに長辺が略平行にして前記基板面に並んでいる前項(14)に記載の発光素子。
(16)前記穿孔部の前記基板面における形状の最大幅が0.01μm〜5μmである前項(1)〜(15)の何れかに記載の発光素子。
(17)前記穿孔部の前記基板面における形状の最大幅が、0.01μm〜1μm未満である前項(16)に記載の発光素子。
(18)前記基板の屈折率は、前記発光部の屈折率より低い前項(1)〜(16)のいずれかに記載の発光素子。
(19)前記発光素子は、電界発光素子である前項(1)〜(18)のいずれかに記載の発光素子。
(20)前記発光部が、有機化合物からなる発光体を含む前項(19)に記載の発光素子。
(21)前記発光部が、有機金属錯体からなる発光体を含む前項(20)に記載の発光素子。
(22)前記発光部は、燐光発光する有機材料を含む前項(20)に記載の発光素子。
(23)発光素子は、基板上に積層されている第1の電極層及びその上にさらに積層されている第2の電極層を有し、穿孔部上に、穿孔部から第1の電極層を貫通する貫通部を有し、かつ、貫通部内に発光部を有する前項(19)〜(22)のいずれかに記載の発光素子。
(24)発光素子は、第1の電極層と第2の電極層との間に誘電体層を有し、かつ、前記貫通部がさらに当該誘電体層を貫通している前項(23)に記載の発光素子。
(25)前記貫通部は、幅が10μm以下である前項(23)〜(24)のいずれかに記載の発光素子。
(26)前記貫通部の最大幅が、0.01μm〜5μmである前項(23)〜(25)のいずれかに記載の発光素子。
(27)前記貫通部の幅が、前記貫通部に対応する前記穿孔部の幅に合っている前項(23)〜(26)のいずれかに記載の発光素子。
(28)前記貫通部は、略円柱形状をなす前項(23)〜(27)のいずれかに記載の発光素子。
(29)前記貫通部は、略直方体形状をなす前項(23)〜(27)のいずれかに記載の発光素子。
(30)前記貫通部は、他の貫通部に対して、互いに長辺を略平行にして前記基板面上に並んでいる前項(29)に記載の発光素子。
(31)前記貫通部から前記穿孔部に渡る内壁が、連続した面で構成されている前項(23)〜(30)のいずれかに記載の発光素子。
(32)前記第1の電極層および前記第2の電極層のうち少なくとも一方は、不透明材料からなる前項(23)〜(31)のいずれかに記載の発光素子。
(33)前項(1)〜(32)に記載の発光素子の製造方法であって、透明な基板上に少なくとも第1の電極層および誘電体層を積層して形成する積層工程と、少なくとも前記第1の電極層および前記誘電体層を貫通する貫通部を形成する貫通部形成工程と、前記貫通部を形成した部分以外の部分をマスクとして前記基板に穿孔部を形成する穿孔部形成工程と、前記貫通部の内面に発光部を形成する発光部形成工程と、第2の電極層を形成する第2電極層形成工程と、を有することを特徴とする発光素子の製造方法。
(34)前記第2電極層形成工程は、前記発光部上に前記第2の電極層を形成する工程である前項(33)に記載の発光素子の製造方法。
(35)前記貫通部形成工程および前記穿孔部形成工程の少なくとも一方は、ドライエッチングにより前記貫通部または前記穿孔部を形成する工程である前項(33)または(34)に記載の発光素子の製造方法。
(36)前項(1)〜(32)のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする画像表示装置。
(37)前項(1)〜(32)のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0008】
前項(1)の発明によれば、発光部から発した光を透明な基板側から取り出す際に、前記基板表面における反射を抑制し、高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(2)の発明によれば、高輝度で高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(3)の発明によれば、前記発光素子の製造が容易になる。
前項(4)〜(14)の発明によれば、本発明を実施しない場合に比べ、種々の配光分布を得ることができる。
前項(4)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、発光部において発した光が基板側により入射しやすくなる。
前項(5)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、絞り形状を有する部分において光の反射を抑制することができる。
前項(13)〜(15)の発明のように、穿孔部の形状が、回転体以外の形状にすることにより、基板面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。
前項(16)の発明によれば、高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(17)の発明によれば、より高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(18)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、基板の法線方向における光成分が増加し、基板正面側から見た輝度を向上させることができる。
前項(19)〜(24)の発明によれば、発光部が点在する発光素子の製造がし易い。
前項(22)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、輝度が高く、色純度の高い発光素子を提供できる。
前項(24)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、高い発光効率を有する発光素子を提供できる。
前項(25)または(26)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、発光素子の発光強度を大きくすることができる。
前項(27)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、輝度の向上と製造容易性を両立させることができる。
前項(28)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、発光素子の製造が容易となる。
前項(29)及び前項(30)の発明によれば、貫通部の形状が、基板面上で異方性のある形状にすることにより、基板面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。
前項(31)の発明によれば、貫通部及び穿孔部を同時に製造しやすい。
前項(32)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、電極に使用する材料の選択性を高めることができる。
前項(33)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、より容易に穿孔部を形成することができる。
前項(34)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、より簡単な工程で発光素子を製造することができる。
前項(35)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、穿孔部の形状制御が容易となる。
前項(36)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、より解像度が高く、耐久性に優れた画像表示装置を提供できる。
前項(37)の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、より輝度が高く、耐久性に優れた照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態が適用される電界発光素子の一例を説明した部分断面図である。
【図2】(a)〜(c)は穿孔部を設けた場合と設けなかった場合とで、発光部において発した光の進路について説明を行なった図である。
【図3】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部を絞り形状とせずに形成する場合の一例を説明した図である。
【図4】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の断面形状を半円形状とした例である。
【図5】本実施の形態が適用される電界発光素子において、基板の表面から凹部の最深部である底部に至る経路部分の一部に絞り形状を設けた例である。
【図6】図3で説明した電界発光素子に対し、穿孔部の底面部を凸形状とした例である。
【図7】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の断面形状を基板の表面から凹部の最深部である底部に至るまで広がる形状とした場合である。
【図8】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の断面形状を三角形形状とした場合である。
【図9】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の側壁の傾きに合わせて陽極層および誘電体層の貫通部の形状を変更した例である。
【図10】本実施の形態が適用される電界発光素子において、穿孔部の基板の表面における幅を貫通部の幅より広くした場合の一例を説明した図である。
【図11】(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される電界発光素子において、発光部17の他の形態を例示して説明した部分断面図である。
【図12】基板上に低屈折率層が積層された構造を採る場合を例にとり説明した図である。
【図13】(a)〜(h)は、本実施の形態が適用される電界発光素子の製造方法について説明した図である。
【図14】本実施の形態における電界発光素子を用いた画像表示装置の一例を説明した図である。
【図15】本実施の形態における電界発光素子を備える照明装置の一例を説明した図である。
【図16】凹部のパターンについて説明した図である。
【図17】実施例3dで作成した電界発光素子の配光分布について説明した図である。
【図18】実施例4で作成した電界発光素子の配光分布について説明した図である。
【図19】実施例5で作成した電界発光素子の配光分布について説明した図である。
【図20】実施例7で作成した電界発光素子の配光分布について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
(発光素子)
本発明の発光素子では、透明な基板上に発光部が点在し、前記基板の発光部側の基板面が、前記発光部下で窪んだ穿孔部を形成している。発光部は、基板面1mm2中に102個以上形成されていることが好ましく、同104〜108個形成されていることがより好ましい。発光部の密度が、低すぎると輝度が得にくく、また、高すぎると、発光部が重複して点在できなくなり発光効率が低下する。
本発明において、「発光部」とは、少なくとも実際に発光している領域である。この領域は層状構造であってもよい(この層を「発光層」と言う。)さらに、電極と発光層の間に電荷が移動する層があってもよい。これら層の電極と発光している領域との間の部分(発光にかかわる電荷が移動する部分)を含めて「発光部」とする。すなわち、発光部は1つの層あるいは2層以上の複数の積層構造からなっていても良い。例えば、発光部は、発光層を含み、電荷注入層、電荷移動層、電荷ブロッキング層から選ばれる1つあるいは2つ以上の存在する層も含む。
穿孔部は、1つの発光部下に1つ存在するように構成することが好ましい。このようにすると、穿孔部と、発光部を形成するための貫通部とを同時に形成でき、製造上有利である。
【0011】
以下、本発明の発光素子の一例として電界発光素子を挙げ、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される電界発光素子の一例を説明した部分断面図である。
図1に示した電界発光素子10は、基板11と、基板11側を下側とした場合に基板11上に形成され正孔を注入するための第1の電極層としての陽極層12と、第1の電極層上に形成される誘電体層13と、誘電体層13を挟んで陽極層12と対向して形成され電子を注入するための第2の電極層としての陰極層14とが順に形成した構造を採る。また、陽極層12および誘電体層13を貫通して形成される貫通部16aと基板11に形成される穿孔部16bとからなる凹部16を有し、そして凹部16の内面と接触して形成され電圧を印加することで発光する発光材料からなる発光部17を有する。
なお、凹部16とは、穿孔部16bと貫通部16aとを合わせた部分である。凹部16は、1個の穿孔部16bに対し複数の貫通部16a、または複数の穿孔部16bに対し1個の貫通部16aで構成されていてもよいが、製造が容易になることから、1つの凹部16は、1つの穿孔部16bと1つの貫通部16aから構成することが好ましい。
この発光部17は、図1に示した電界発光素子10では、凹部16の内部のみならず誘電体層13の上面にも展開し、形成されている。また、陰極層14は、この発光部17の更に上面に形成する形で形成されており、いわゆるベタ膜状に成膜されている。なお、誘電体層13を設けた方が一般に電界発光素子の電流効率が良く好ましいが、発光部17に十分電流が流れるならば(ショートしなければ)、必ずしも誘電体層13は必須ではない。例えば、前記発光材料と同程度以上の抵抗率を有する材料の層に、前記誘電体層13が置き換わった構造であってもよい。前記発光材料と同程度以上の抵抗率を有する材料が前記発光材料そのものであっても良い。
【0012】
基板11は、陽極層12、誘電体層13、陰極層14、発光部17を形成する支持体となるものである。基板11には、電界発光素子10に要求される機械的強度を満たす材料が用いられる。
【0013】
本実施の形態において発光部17から発した光は、基板11の側から取り出す。そのため基板11は透明な基板である。基板11を作製するための材料としては、通常、可視光に対して透明であることが必要である。なお本実施の形態において、「可視光に対し透明である」とは、発光部17から発する波長の可視光を透過することができればよいという意味であり、可視光領域全域にわたり透明である必要はない。ただし、本実施の形態では、可視光として、波長450nm〜700nmの光を透過することが好ましい。また透過率としては波長550nmの可視光に対し、50%以上であることが好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
なお、発光光が可視光でない場合は、少なくとも発光波長領域に対して、可視光の場合と同様に透明であることが必要である。透過率としては、発光が最大強度となる波長に対し、50%以上であることが好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
このような透明な基板の条件を満たす材料として、具体的には、サファイアガラス、ライムソーダガラス、石英ガラスなどのガラス類;アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂などの透明樹脂;シリコン;窒化アルミ、アルミナなどの透明金属酸化物などが挙げられる。なお基板11として、上記透明樹脂からなる樹脂フィルム等を使用する場合は、水、酸素などのガスに対するガス透過性が低いことが好ましい。ガス透過性が高い樹脂フィルム等を使用する場合は、光の透過性を損なわない範囲でガスの透過を抑制するバリア性薄膜を形成することが好ましい。また、詳しくは後述するが、基板11に穿孔部16bを形成するのにエッチングを利用する場合は、寸法安定性の観点から、基板11としてガラス類を使用することが好ましい。
【0014】
基板11の厚さは、要求される機械的強度にもよるが、好ましくは、0.01mm〜10mm、より好ましくは0.05mm〜2mmである。また基板11の屈折率は、屈折率として発光部17を構成する発光材料の屈折率より低い値を有することが好ましい。即ち、基板11の屈折率が発光部17を構成する発光材料の屈折率より高い場合は、発光部17から基板11へ入射する際に全反射しやすくなり、結果として基板11からの光取り出し量は低下しやすくなる。発光部17を形成する材料については同様に後述するが、屈折率は、1.5〜1.9程度のものが多い。よって基板11の屈折率はこの値より低い値を有することが好ましい。
【0015】
陽極層12は、陰極層14との間で電圧を印加し、陽極層12より発光部17に正孔を注入する。陽極層12に使用される材料としては、電気伝導性を有するものであることが必要である。具体的には仕事関数が低いものであり、仕事関数は、−4.5eV以下であることが好ましい。加えて、アルカリ性水溶液に対し、電気抵抗が顕著に変化しないことが好ましい。
【0016】
このような条件を満たす材料として、金属酸化物、金属、合金が使用できる。ここで、金属酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)が挙げられる。また金属としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)等が挙げられる。そしてこれらの金属を含むステンレス等の合金も使用できる。このように陽極層12に用いることができる材料は、透明材料のみならず、不透明材料であってもよい。即ち、本実施の形態において陽極層12は、貫通部16aにより貫通するため、発光部17から発した光は、貫通部16aおよび穿孔部16bを通り、基板11の側から取り出すことができる。陽極層12の厚さは、例えば、2nm〜2mm、好ましくは2nm〜2μmで形成することができる。なお仕事関数は、例えば、紫外線光電子分光分析法により測定することができる。
【0017】
誘電体層13は、陽極層12と陰極層14の間に設けられ、陽極層12と陰極層14とを所定の間隔にて分離し絶縁すると共に、発光部17に電圧を印加するためのものである。このため誘電体層13は高抵抗率材料であることが必要であり、電気抵抗率としては、108Ωcm以上、好ましくは1012Ωcm以上有することが要求される。具体的な材料としては、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物;酸化ケイ素(二酸化ケイ素)、酸化アルミニウム等の金属酸化物が挙げられるが、他にポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、パリレン等の高分子化合物も使用可能である。誘電体層13の厚さとしては、電界発光素子10全体の厚さを抑えるために1μmを越えないことが好ましい。また、陽極層12と陰極層14との間隔が狭い方が、発光のために必要な電圧が低くて済むので、この観点からも誘電体層13は薄い方がより好ましい。但し、薄すぎると電界発光素子10を駆動するための電圧に対し、絶縁耐力が十分でなくなるおそれがある。ここで絶縁耐力は、発光部17が形成されていない状態で、陽極層12と陰極層14の間に流れる電流の電流密度が、0.1mA/cm2以下であることが好ましく、0.01mA/cm2以下であることがより好ましい。また電界発光素子10の駆動電圧に対し、2Vを超えた電圧に耐えることが好ましいため、例えば、駆動電圧が5Vである場合は、発光部17が形成されていない状態で、陽極層12と陰極層14の間に約7Vの電圧を印加した場合に上記の電流密度を満たすことが必要である。これを満たす誘電体層13の厚さとしては、好ましくは、10nm〜500nm、更に好ましくは50nm〜200nmで作製するのがよい。
【0018】
陰極層14は、陽極層12との間で電圧を印加し、発光部17に電子を注入する。本実施の形態においては、後述する通り凹部16が発光部17により埋められているため陰極層14は、誘電体層13の上に形成する形でいわゆるベタ膜状に形成されている。即ち、凹部16による貫通する孔部を有さず、凹部16により貫通されない連続膜として形成される。
【0019】
陰極層14に使用される材料としては、陽極層12と同様に電気伝導性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、仕事関数が低く、かつ化学的に安定なものが好ましい。仕事関数は、化学的安定性を考慮すると−2.9eV以下であることが好ましい。具体的には、Al、MgAg合金、AlLiやAlCaなどのAlとアルカリ金属の合金等の材料を例示することができる。陰極層14の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50nm〜500nmがより好ましい。本実施の形態の電界発光素子10の場合は、基板11側から発光部17から発した光を取り出す。そのため陰極層14は、不透明材料により形成されていてもよい。なお本実施の形態のように陰極層14がベタ膜として、発光部17を覆っている形態において、基板11側からのみならず陰極層14側からも光を取り出したい場合は、陰極層14は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料により形成する必要がある。
【0020】
また、陰極層14から発光部17への電子の注入障壁を下げて電子の注入効率を上げる目的で、図示しない陰極バッファ層を、陰極層14に隣接して設けてもよい。陰極バッファ層は、陰極層14より仕事関数の低いことが必要であり、金属材料が好適に用いられる。例えば、アルカリ金属(Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Sr、Ba、Ca、Mg)、希土類金属(Pr、Sm、Eu、Yb)、あるいはこれら金属のフッ化物、塩化物、酸化物から選ばれる単体あるいは2つ以上の混合物を使用することができる。陰極バッファ層の厚さは0.05nm〜50nmが好ましく、0.1nm〜20nmがより好ましく、0.5nm〜10nmがより一層好ましい。
【0021】
凹部16は、発光部17をその内面に塗布し、かつ発光部17からの光を取り出すためのものである。本実施の形態では、凹部16は、陽極層12および誘電体層13を貫通して形成される貫通部16aと基板11に形成される穿孔部16bとからなる。なお図1において貫通部16aと穿孔部16bとの境界を点線で示している。また本実施の形態において、「基板の表面」とは、図1における基板11および陽極層12の境界面および貫通部16aと穿孔部16bとの境界面から構成される面を意味する。このように凹部16を設けることにより貫通部16aにおいて発光部17から発せられた光は、凹部16の貫通部16aから穿孔部16bへ伝搬する。そしてそこから更に基板11内を伝搬することで、基板11側から光を取り出すことができる。ここで、貫通部16aは、陽極層12と誘電体層13を貫通して形成されているため、第1の電極層である陽極層12が不透明材料により形成されるときでも光を取り出すことが可能である。
【0022】
ここで、貫通部16aの形状は、例えば、略円柱形状、略直方体形状(溝形状)などとすることができるが、これに限られるものではない。貫通部16aの最大幅は、好ましくは0.01μm〜10μmであり、より好ましくは0.01μm〜5μmであり、特に好ましくは0.01μm〜1μmである。なお、貫通部16aの最大幅とは、貫通部16aが穿孔部16bと接する面(基板表面)における貫通部16aの形状が内包する最大円の直径のことを言う。
本実施の形態において、貫通部16aの形状を直方体とすることにより、基板面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。さらに、貫通部16aを互いに略平行である略直方体形状とした場合、つまり貫通部16aを他の貫通部に対して、互いに長辺が略平行にして基板11面に並んでいる場合、より異方性のある配光分布を得やすい。
基板11上に点在する発光部の間隔を小さくすれば、それだけ単位面積当たりの発光部17の数が増加するため、電界発光素子全体としての発光強度を大きくすることができる。例えば、本実施の形態の電界発光素子10では、貫通部16aで強く光る場合においては貫通部16aの間隔を小さくすれば、それだけ単位面積当たりの貫通部16aの数が増加するため、発光強度を大きくすることができる。
また、本実施の形態の電界発光素子10では、発光部17は、陽極層12と陰極層14の近傍において発光しやすい。即ち貫通部16aの中央部は、非発光部分となりやすく、この非発光部分の面積が大きいと電界発光素子10を高輝度で発光させにくい。よって、貫通部16aの幅(W)を小さくすれば、凹部16の中央部の非発光部分が減少することになるため、発光強度を大きくしやすくなる。より具体的には、貫通部16aは、幅(W)が10μm以下であることが好ましい。なお、ここで貫通部16aの幅とは、貫通部16aの端部から他の端部への短軸側の距離(最短距離)を指す。また同上の理由で隣接する貫通部16a同士の短軸側の距離(最短距離)も短いほうがよい。
【0023】
また本実施の形態では、穿孔部16bを設けることで、光の取り出し効率を向上させている。
穿孔部16bは、発光部17下の基板11表面に設けられる。穿孔部16bは、複数の発光部17下に1つ設けたり、1つの発光部17下に複数設けることもできるが、通常、光取り出しの効率を上げやすいので、1つの発光部17に対して1つの穿孔部16bが設けられる。なお、穿孔部16bの最大幅とは、基板11表面において穿孔部16bの形状が内包する最大円の直径のことを言う。
穿孔部16bの形状は、例えば、略円柱形状、略直方体形状などとすることができるが、これに限られるものではない。なお穿孔部16bを回転体以外の形状にすることで、基板11面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。そして穿孔部16bの最大幅(穿孔部16bを略円柱形状とした場合、その直径)は、このましくは0.01μm〜10μmであり、より好ましくは0.01μm〜5μmであり、さらに好ましくは0.01μm〜2μmである。なお上記範囲で、穿孔部16bの最大幅の上限を1μm未満にすると発光効率がより向上する。
本実施の形態において、穿孔部16bの形状を直方体とすることにより、基板面と平行な面への配光分布を異方性のあるものにすることができる。さらに、穿孔部16bを互いに略平行である略直方体形状とした場合、つまり穿孔部16bを他の穿孔部に対し、互いに長辺が略平行にして基板11面に並んでいる場合、より異方性のある配光分布を得やすい。
【0024】
図2(a)〜(c)は穿孔部16bを設けた場合と設けなかった場合とで、発光部17において発した光の進路について説明を行なった図である。
ここで図2(a)は、貫通部16aと共に穿孔部16bを設けて凹部16を形成する本実施の形態の電界発光素子10における光の進路について説明した図である。一方、図2(c)は、貫通部16aは設けるが穿孔部16bを設けずに凹部16を形成した電界発光素子における光の進路について説明した図である。
図2(c)で示したように穿孔部16bを設けない場合、発光部17から発し、基板11側に向かう光は、その方向が基板11の表面に対し一定の角度より上である場合は、屈折しつつ基板11内に侵入し、光を基板11側から取り出すことができる。ただし、光の方向が基板11の表面に対し一定の角度以下である場合は、全反射を生じ、基板11内に侵入することができない。即ち、全反射した光は、基板11側から取り出すことができず、それだけ光の利用効率が減少することになる。
一方、図2(a)で示したように穿孔部16bを設けた場合は、発光部17から発し、基板11側に向かう光は、穿孔部16bの側面および底面に対し、上述した一定の角度より上の角度で到達しやすい。そのため基板11内に侵入することができる光の割合が図2(c)の場合より増加する。即ち、全反射を生じる光の割合が減少し、基板11側から取り出すことができる光の量が増加する。その結果、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0025】
また、図2(b)で示したように、穿孔部16bの底部に存在する底面において反射した光も穿孔部16bの側面において基板11内に侵入することができる。そして、更に陽極層12で反射することにより基板11側から光を取り出すことができる。この場合、陽極層12は、反射を生じやすいという観点から金属または合金を材料として使用することが好ましい。
【0026】
また貫通部16aと共に穿孔部16bを設けて凹部16を形成する本実施の形態の電界発光素子10においては、発光効率の向上を図ることができるため、低消費電力化を行ないやすくなる。更に、低消費電力化することで電界発光素子10の耐久性の向上を図りやすくなる。
【0027】
なお、図1に示した穿孔部16bの断面形状は、底部に向かってその幅が小さくなる台形形状となっている。即ち、基板11の表面から凹部16の最深部である底部に至る経路部分が絞り形状となっており、穿孔部16bの最深部が平面である。このように絞り形状を設けることにより、光が基板11に入射するときに、穿孔部16bの側面において光の角度が上述した一定の角度より大きくなりやすくなり発光部17において発した光がより基板11側に入射しやすくなる。またこの形状を採ると光は基板11の法線方向により近い角度で基板11に侵入する。更に基板11の屈折率として発光部17の屈折率より低い値を採ることで、光はレンズ効果により基板11の法線方向により近い角度に屈折して侵入する。
以上のことにより光が基板11から更に外部に出射するときに、その光量が増加すると共に、特に穿孔部16bの断面形状を絞り形状とすることにより基板正面側から見た輝度を向上させることができる。そしてこの場合、このような配光をより得やすくするには、絞り形状は幅が連続的に狭くなる形状であることが好ましい。つまり、絞り形状の中でも階段状のものは、上述した光の反射が生じやすいため、連続的に狭くなる絞り形状の方が好ましい。
【0028】
ただし、このように穿孔部16bの断面形状を絞り形状とすることは、所望の配光によっては必ずしも必須ではない。種々の配光特性を得るための穿孔部16bの形状としては、例えば、以下の図3〜図10の形状が例示できる。
図3は、穿孔部16bを絞り形状とせずに形成する場合の一例を説明した図である。
図3に示した電界発光素子10aは、穿孔部16bの断面形状を長方形形状とした例である。つまり穿孔部16bは、基板11の表面から穿孔部16bの最深部に至る幅が略同一である。このように穿孔部16bを形成した場合でも、上述した穿孔部16bを設けない図2(c)の場合よりも基板11内に侵入する光の割合を増加させることができ、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0029】
また、図4に示した電界発光素子10bは、穿孔部16bの断面形状を半円形状とした例である。この電界発光素子10bでは、穿孔部16bの基板11の表面から凹部16の最深部である底部に至る経路部分が絞り形状となっているが、その形状を半円形状となるように形成している。上述した穿孔部16bの断面形状を台形形状とした電界発光素子10や穿孔部16bの断面形状を長方形形状とした電界発光素子10aに対し、穿孔部16bの底部に底面が存在しないため、底面において反射する光の割合を減少させることができる。
【0030】
更に、図5に示した電界発光素子10cは、基板11の表面から凹部16の最深部である底部に至る経路部分の一部に絞り形状を設けた例である。この電界発光素子10cでは、絞り形状として円弧をなすような形状を採用している。この場合、穿孔部16bの最深部が曲面となる。
【0031】
また、図6に示した電界発光素子10dは、図3で説明した電界発光素子10aに対し、穿孔部16bの底面部を凸形状とした例である。つまり穿孔部16bが凸面の底部を有する。この場合、穿孔部16bの底面部で光が反射した場合であっても、穿孔部16bの側面部に入射する光の量が電界発光素子10aに対し増加する。そのため図2(b)で説明したように陽極層12で再び反射されて基板11側から光を取り出すことができる。
【0032】
更に、図7に示した電界発光素子10eは、穿孔部16bの断面形状を基板11の表面から凹部16の最深部である底部に至るまで広がる形状とした場合である。つまり穿孔部16bは絞り形状を有し、そしてこの絞り形状は幅が連続的に広くなる形状である。
このように穿孔部16bを形成しても、上述した穿孔部16bを設けない図2(c)の場合よりも基板11内に侵入する光の割合を増加させることができ、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0033】
更に、図8に示した電界発光素子10fは、穿孔部16bの断面形状を底部に向かってその幅が小さくなる三角形形状とした場合である。つまり穿孔部16bの最深部が尖頭形状となる。この場合も穿孔部16bの底部に底面が存在しないため、底面において反射する光の割合を減少させることができる。
【0034】
また更に、図9に示した電界発光素子10gは、穿孔部16bの側壁の傾きに合わせて陽極層12および誘電体層13の貫通部16aの形状を変更した例である。なおこの形態では、貫通部16aと穿孔部16bとは側壁の断面形状を連続的に直線状となるように形成したが、曲線状となるように形成してもよい。
【0035】
なお、上述した例では、貫通部16aの幅と穿孔部16bの幅とは、ほぼ一致しており、貫通部16aの幅と穿孔部16bの幅は略同一であった。即ち、穿孔部16bは、穿孔部16bの幅が貫通部16aの幅に合わせて形成していた。これは貫通部16aから穿孔部16bに渡る内壁が、連続した面で構成されていると言うこともできる。ただし必ずしもこのようにする必要はなく、穿孔部16bの基板11表面における幅を貫通部16aの幅より広くしてもよい。
図10は、穿孔部16bの基板11の表面における幅を貫通部16aの幅より広くした場合の一例を説明した図である。
図10で示した電界発光素子10hは、図1で示した電界発光素子10と比べて、穿孔部16bの断面形状は底部に向かってその幅が小さくなる台形形状となっている点では同様である。一方、電界発光素子10hでは、穿孔部16bの基板11の表面における幅が貫通部16aの幅より広くしている。
このように穿孔部16bを形成しても、上述した穿孔部16bを設けない図2(c)の場合よりも基板11内に侵入する光の割合を増加させることができ、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0036】
本発明において、発光部17は、電圧を印加し、電流を供給することで光を発する発光材料であり、少なくとも貫通部16aの内面を含む凹部16の内面に接触して塗布されることで形成される。発光部17において、陽極層12から注入された正孔と陰極層14から注入された電子(正孔)とが再結合し、発光が生じる。そして本実施の形態では、製造工程の簡略化のために好ましくは、上述の通り凹部16は、発光部17の材料により埋められている。
【0037】
発光部17の材料としては、有機材料および無機材料の何れをも使用することができる。この場合、有機材料を用いた電界発光素子は、有機電界発光素子として捉えることができる。
ここで有機材料を発光材料として用いる場合は、低分子化合物及び高分子化合物のいずれをも使用することができる。例えば、大森裕:応用物理、第70巻、第12号、1419−1425頁(2001年)に記載されている発光性低分子化合物及び発光性高分子化合物などを例示することができる。
【0038】
但し、本実施の形態では、塗布性に優れた材料が好ましい。即ち本実施の形態における電界発光素子の構造では、発光部17が、少なくとも貫通部16aの内面、好ましくは凹部16内で安定に発光するためには発光部17が凹部16の内面に均一に接し、膜厚が均等に成膜されること、即ちカバレッジ性が向上することが好ましい。塗布性に優れた材料を使用せずに発光部17を形成すると、凹部16全体に発光部17が一様に接していない、あるいは凹部16内面の膜厚が均一でない成膜状態になりやすい。そのため凹部16から出射する光の輝度のばらつき等を生じやすくなる。
また、凹部16内に発光部17を均一に形成するためには、塗布法で行うことが好ましい。即ち、塗布法では、凹部16に発光材料を含む発光材料溶液を埋め込むことが容易であるため凹凸を有する面においてもカバレッジ性を高めて成膜することが可能である。塗布法においては塗布性を向上させる目的で、主に重量平均分子量で1,000〜2,000,000である材料が好適に用いられる。また、塗布性を向上させるためレベリング剤、脱泡剤などの塗布性向上添加剤を添加したり、電荷トラップ能力の少ないバインダー樹脂を添加することもできる。
【0039】
具体的に、塗布性に優れる材料としては、例えば、特開2007−86639号公報に挙げられている所定の構造を有する分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物や、特開2000−034476号公報に挙げられている所定の高分子蛍光体などが挙げられる。
ここで、塗布性に優れた材料の中でも、電界発光素子10の製造のプロセスが簡素化されるという点で発光性高分子化合物が好ましく、発光効率が高い点で燐光発光性化合物が好ましい。従って、特に燐光発光性高分子化合物が好ましい。なお、複数の材料同士を混合、あるいは塗布性を損なわない範囲で低分子発光材料(例えば、分子量1000以下)を添加することも可能である。この際の低分子発光材料の添加量は30wt%以下が好ましい。
また、発光性高分子化合物は、共役発光性高分子化合物と非共役発光性高分子化合物とに分類することもできるが、中でも非共役発光性高分子化合物が好ましい。
上記の理由から、本実施の形態で用いられる発光材料としては、燐光発光性非共役高分子化合物(燐光発光性高分子であり、かつ非共役発光性高分子化合物でもある発光材料)が特に好ましい。
【0040】
本発明の電界発光素子10における発光部17は、好ましくは、燐光を発光する燐光発光性単位とキャリアを輸送するキャリア輸送性単位とを一つの分子内に備えた、燐光発光性高分子(燐光発光材料)を少なくとも含む。燐光発光性高分子は、重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物とを共重合することによって得られる。燐光発光性化合物はイリジウム(Ir)、白金(Pt)および金(Au)の中から一つ選ばれる金属元素を含む金属錯体であり、中でもイリジウム錯体が好ましい。
重合性置換基を有する燐光発光性化合物としては、例えば下記式(E−1)〜(E−49)に示す金属錯体の一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。
【0041】
【化1】
【0042】
【化2】
【0043】
【化3】
【0044】
【化4】
【0045】
【化5】
【0046】
【化6】
【0047】
なお、上記式(E−35)、(E−46)〜(E−49)において、Phはフェニル基を表す。
これらの燐光発光性化合物における重合性置換基としては、例えば、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などが挙げられ、中でもビニル基、メタクリレート基、スチリル基及びその誘導体が好ましい。これらの置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して金属錯体に結合していてもよい。
重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物は、ホール輸送性および電子輸送性の内のいずれか一方または両方の機能を有する有機化合物における一つ以上の水素原子を重合性置換基で置換した化合物を挙げることができる。
このような化合物の代表的な例として、下記式(E−50)〜(E−67)に示した化合物を挙げることができる。
【0048】
【化7】
【0049】
【化8】
【0050】
例示したこれらのキャリア輸送性化合物における重合性置換基はビニル基であるが、ビニル基をアクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、スチリル基及びその誘導体、ビニルアミド基及びその誘導体などの重合性置換基で置換した化合物であってもよい。また、これらの重合性置換基は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の有機基を介して結合していてもよい。
【0051】
重合性置換基を有する燐光発光性化合物と、重合性置換基を有するキャリア輸送性化合物の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。また、重合体の分子量が重量平均分子量で1,000〜2,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。ここでの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定されるポリスチレン換算分子量である。
【0052】
燐光発光性高分子は、一つの燐光発光性化合物と一つのキャリア輸送性化合物、一つの燐光発光性化合物と二つ以上のキャリア輸送性化合物を共重合したものであってもよく、また二つ以上の燐光発光性化合物をキャリア輸送性化合物と共重合したものであってもよい。
【0053】
燐光発光性高分子におけるモノマーの配列は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよく、燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数をm、キャリア輸送性化合物構造の繰り返し単位数をnとしたとき(m、nは1以上の整数)、全繰り返し単位数に対する燐光発光性化合物構造の繰り返し単位数の割合、すなわちm/(m+n)の値は、0.001〜0.5が好ましく、0.001〜0.2がより好ましい。
【0054】
燐光発光性高分子のさらに具体的な例と合成法は、例えば特開2003−342325号公報、特開2003−119179号公報、特開2003−113246号公報、特開2003−206320号公報、特開2003−147021号公報、特開2003−171391号公報、特開2004−346312号公報、特開2005−97589号公報に開示されている。
【0055】
本実施の形態における電界発光素子10の発光部17は、好ましくは前述した燐光発光性化合物を含むが、発光部17のキャリア輸送性を補う目的で正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物が含まれていてもよい。これらの目的で用いられる正孔輸送性化合物としては、例えば、TPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4,4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)などの低分子トリフェニルアミン誘導体が挙げられる。更に、ポリビニルカルバゾール、トリフェニルアミン誘導体に重合性官能基を導入して高分子化したもの;特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物;ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレンなどが挙げられる。また、電子輸送性化合物としては、例えば、Alq3(アルミニウムトリスキノリノレート)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体などの低分子材料が挙げられる。更に上記の低分子電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどの既知の電子輸送性化合物が挙げられる。
【0056】
また、発光部17に使用する発光材料として上述した発光性高分子化合物ではなく発光性低分子化合物を使用する場合でも、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物、もしくは積層が可能である。そして、発光材料として上述した発光性高分子化合物を添加することも可能である。
この場合の正孔輸送性化合物の具体例としては、例えば、特開2006−76901号公報に記載されているTPD、α−NPD、m−MTDATA、フタロシアニン錯体、DTDPFL、spiro−TPD、TPAC、PDA等が挙げられる。
また、下記式(E−68)〜(E−76)に示した化合物が挙げられる。
【0057】
【化9】
【0058】
また、この場合の電子輸送性化合物の具体例としては、例えば、特開2006−76901号公報に記載されているBPhen、BCP、OXD−7、TAZ等が挙げられる。また、下記式(E−77)〜(E−85)に示した化合物が挙げられる。
【0059】
【化10】
【0060】
また、例えば、特開2006−273792号公報に記載の一分子内に正孔輸送性及び電子輸送性を有するバイポーラー型分子構造を有する化合物でも使用可能である。
【0061】
本実施の形態における電界発光素子10は、上述の通り発光体として無機材料を用いることもできる。無機材料を用いた電界発光素子は、無機電界発光素子として捉えることができる。無機材料としては、例えば無機蛍光体を用いることができる。この無機蛍光体の具体例、および電界発光素子の構成、製造方法は、例えば特開2008−251531号公報に記載されたものを公知の技術として挙げることができる。
【0062】
以上詳述した電界発光素子10は、図1〜図10で示した電界発光素子10,10a〜10hでは、発光部17が凹部16の内部のみならず誘電体層13の上面にも展開し、形成されていたが、これに限られるものではない。
【0063】
図11(a)〜(c)は、本実施の形態が適用される電界発光素子10において、発光部17の他の形態を例示して説明した部分断面図である。
図11(a)で示した電界発光素子10iは、発光部17が凹部16の内部に形成されるが、発光層を誘電体層13の上面までには形成せずに作製した場合を示している。貫通部16a内に突出した陰極層14面による反射を利用してより光を効率よく取出すことができる。
また、図11(b)で示した電界発光素子10jは、発光層を誘電体層13の上面に至るまで形成させ、そして凹部16を全て発光材料で埋めるように形成した場合を示している。この構成を採ることにより、陰極層14を、平面状に形成することができる。陰極層14を平面状に成膜することで陰極層14のピンホールやクラックを抑制して、輝度ムラの少ない電界発光素子を得ることができる。
更に、図11(c)で示した電界発光素子10kでは、貫通部16aを陰極層14にも設け、発光部17を凹部16の内部に発光層を沿わせる形で形成した場合を示している。この形態では、発光部17の材料を、凹部16の一部にのみ充填する形となっている。そして、貫通部16aが陰極層14に対しても形成されることで、陰極層14が不透明材料により形成する場合でも、基板11側のみならず、陰極層14側からも光の取り出しが可能となり、光を効率よく取出すことができる。
このような電界発光素子10i,10kにおいても発光部17において発光しやすい箇所については変化が生じないため、図1〜図10で示した電界発光素子10,10a〜10hの場合と比べ、発光効率等には経時変化が生じにくい。ただし、後述する電界発光素子10の製造方法の説明において詳述するが、電界発光素子10,10a〜10hの場合の方が製造容易であるという特徴がある。
【0064】
なお、以上詳述した電界発光素子10,10a〜10lでは、基板11側を下側とした場合、陽極層12を下側に形成し、誘電体層13を挟み込み対向する形で陰極層14を上側に形成する場合を例示して説明を行ったが、これに限られるものではなく、陽極層12と陰極層14を入れ替えた構造でもよい。即ち、基板11側を下側とした場合、陰極層14を下側に形成し、誘電体層13を挟み込み対向する形で陽極層12を上側に形成する形態でもよい。
【0065】
(発光素子の製造方法)
次に、本実施の形態が適用される発光素子の製造方法について、図1で説明を行った電界発光素子10の場合を例に取り説明を行う。
図13(a)〜(h)は、本実施の形態が適用される電界発光素子10の製造方法について説明した図である。
まず基板11上に、第1の電極層である陽極層12、および誘電体層13を順に積層して形成する(図13(a):積層工程)。本実施の形態では、基板11として、ガラス基板を使用した。また陽極層12を形成する材料としてITOを使用し、また誘電体層13を形成する材料として二酸化ケイ素(SiO2)を使用した。
これらの層を基板11上に形成するには、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などを用いることができる。また、塗布成膜方法、即ち、目的とする材料を溶剤に溶解させた状態で基板11に塗布し乾燥する方法が可能な場合は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、インクジェット法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などの方法を用いて成膜することも可能である。
【0066】
また、陽極層12を形成した後に、陽極層12の表面処理を行うことで、オーバーコートされる層の性能(陽極層12との密着性、表面平滑性、ホール注入障壁の低減化など)を改善することができる。表面処理を行うには高周波プラズマ処理を始めとしてスパッタリング処理、コロナ処理、UVオゾン照射処理、紫外線照射処理、または酸素プラズマ処理などがある。
【0067】
更に、陽極層12の表面処理の表面処理を行う代わりに、もしくは表面処理に追加して、図示しない陽極バッファ層を形成することで表面処理と同様の効果が期待できる。そして、陽極バッファ層をウェットプロセスにて塗布して作製する場合には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法などを用いて成膜することができる。
【0068】
上記ウェットプロセスによる成膜で用い得る化合物は、陽極層12と発光部17に含まれる発光性化合物に良好な付着性を有した化合物であれば特に制限はない。例えば、ポリ(3,4)−エチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物であるPEDOT、ポリアニリンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物であるPANIなどの導電性ポリマーを挙げることができる。さらに、これら導電性ポリマーにトルエン、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤を添加して用いてもよい。また、界面活性剤などの第三成分を含む導電性ポリマーでもよい。界面活性剤としては、例えばアルキル基、アルキルアリール基、フルオロアルキル基、アルキルシロキサン基、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボキシレート、アミド、ベタイン構造、および第4級化アンモニウム基からなる群から選択される1種の基を含む界面活性剤が用いられるが、フッ化物ベースの非イオン性界面活性剤も用い得る。
【0069】
また、陽極バッファ層をドライプロセスにて作製する場合は、特開2006−303412号公報に例示のプラズマ処理などを用いて成膜することができる。この他にも金属単体あるいは金属酸化物、金属窒化物等を成膜する方法が挙げられ、具体的な成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、化学反応法、コーティング法、真空蒸着法などを用いることができる。
【0070】
次に、図13(a)の工程で形成した各層を貫通する形で貫通部16aの形成を行うが、貫通部16aを形成するには、例えば、リソグラフィを用いた方法が使用できる。これを行うには、まず誘電体層13の上にレジスト液を塗布し、スピンコート等により余分なレジスト液を除去して、レジスト層71を形成する(図13(b))。
【0071】
そして、貫通部16aを形成するための所定のパターンが描画されたマスク(図示せず)をかぶせ、紫外線(UV:Ultra Violet)、電子線(EB:Electron Beam)等により露光を行うと、レジスト層71に凹部16に対応した所定のパターンが露光される。そして現像液を用いてレジスト層71の露光部分を除去すると、露光されたパターンの部分のレジスト層71が除去される(図13(c))。これにより露光されたパターンの部分に対応して、誘電体層13の表面が露出する。
【0072】
次に、残存したレジスト層71をマスクとして、露出した誘電体層13の部分をエッチング除去する(図13(d))。エッチングとしては、ドライエッチングとウェットエッチングの何れをも使用することができる。またこの際に等方性エッチングと異方性エッチングを組合せることで、凹部16の形状の制御を行うことができる。ドライエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)や誘導結合プラズマエッチングが利用でき、またウェットエッチングとしては、希塩酸や希硫酸への浸漬を行う方法などが利用できる。このエッチングにより上記パターンに対応して、陽極層12の表面が露出する。
【0073】
次に、残ったレジスト層71をレジスト除去液等を用いて除去し、誘電体層13をマスクとして、露出した陽極層12の部分をエッチング除去する(図13(e))。エッチングとしては、図13(d)で説明した方法と同様の方法を用いることができるが、エッチング条件の変更により、誘電体層13にあまり影響を及ぼさずに、陽極層12を選択的にエッチングすることができる。これにより、上記パターンに対応して、基板11の表面が露出し、貫通部16aが形成される。なお図13(c)および図13(d)で説明した各工程は、第1の電極層である陽極層12および誘電体層13を貫通する貫通部16aを形成する貫通部形成工程として捉えることができる。
【0074】
次に、貫通部16aを形成した部分以外の部分をマスクとして、露出した基板11の部分をエッチング除去する(図13(f):穿孔部形成工程)。エッチングとしては、図13(d)で説明した方法と同様の方法を用いることができるが、エッチング条件の変更により、誘電体層13にあまり影響を及ぼさずに、基板11を選択的にエッチングすることができる。これにより、上記パターンに対応して、穿孔部16bを形成することができ、貫通部16aと併せて凹部16を形成することができる。また、この方法によれば、別途マスクを用意してリソグラフィを行なう必要がないため、より容易に穿孔部16bを形成することが可能となる。
なお本実施の形態では、穿孔部16bとして断面形状が台形形状のものを形成する場合を例に取り説明を行なったが、エッチング条件の変更により上述した種々の形状を形成することが可能である。より具体的には、等方性エッチングと異方性エッチングを組合せることで、種々の形状を形成することが可能となる。また、上述した貫通部形成工程および穿孔部形成工程をドライエッチングで行なった場合は、同一装置内に保持したまま、反応ガス等のエッチング条件を変更することで続けて作業を行なうことができる。また、穿孔部16bを形成するのにウェットエッチングで行なう場合において、基板11としてガラス類を使用したときは、フッ酸溶液などへの浸漬を行なう方法が利用できる。
【0075】
次に、発光部17を形成する(図13(g):発光部形成工程)。発光部17の形成には、前述の塗布法が用いられる。具体的には、まず発光部17を構成する発光材料を、有機溶媒や水等の所定の溶媒に分散させた発光材料溶液を塗布する。塗布を行う際にはスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング法、インクジェット法、スリットコーティング法、ディスペンサー法、印刷等の種々の方法を使用することができる。塗布を行った後は、加熱あるいは真空引きを行うことで発光材料溶液を乾燥させ、発光材料が凹部16の内面に固着し、発光部17が形成される。この際、発光部17は、誘電体層13上に展開した形で形成される。この形態によれば、塗布を行なった後、凹部16以外の部分に塗布された塗布液を除去する必要がなくなるため、凹部16の内部だけに発光部17を形成する場合に比べ電界発光素子10の製造がより容易になる。
【0076】
そして、第2の電極層である陰極層14を、発光部17上に積層する形で形成する(図13(h):第2電極層形成工程)。陰極層14を形成するには、陽極層12を形成する方法と同様の方法で行うことができる。
【0077】
以上の工程により、電界発光素子10を製造することができる。また、これら一連の工程後、電界発光素子10を長期安定的に用い、電界発光素子10を外部から保護するための保護層や保護カバー(図示せず)を装着することが好ましい。保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物、窒化ケイ素、酸化ケイ素等のシリコン化合物などを用いることができる。そして、これらの積層体も用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板、金属などを用いることができる。この保護カバーは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂で基板11と貼り合わせて密閉する方法を採ることが好ましい。またこの際に、スペーサを用いることで所定の空間を維持することができ、電界発光素子10が傷つくのを防止できるため好ましい。そして、この空間に窒素、アルゴン、ヘリウムのような不活性なガスを封入すれば、上側の陰極層14の酸化を防止しやすくなる。特にヘリウムを用いた場合、熱伝導が高いため、電圧印加時に電界発光素子10より発生する熱を効果的に保護カバーに伝えることができるため、好ましい。更に酸化バリウム等の乾燥剤をこの空間内に設置することにより上記一連の製造工程で吸着した水分が電界発光素子10にダメージを与えるのを抑制しやすくなる。
以上、発光部の光源として電界発光を用いた場合を例に挙げて説明をしたが、他の同様な大きさの光源に置き換えて本発明の発光素子を製造してもよい。
【0078】
(画像表示装置)
次に、以上詳述した発光素子を備える画像表示装置について説明を行う。
図14は、本実施の形態における電界発光素子を用いた画像表示装置の一例を説明した図である。
図14に示した画像表示装置200は、いわゆるパッシブマトリクス型の画像表示装置であり、電界発光素子10の他に、陽極配線204、陽極補助配線206、陰極配線208、絶縁膜210、陰極隔壁212、封止プレート216、シール材218とを備えている。
【0079】
本実施の形態において、電界発光素子10の基板11上には、複数の陽極配線204が形成されている。陽極配線204は、一定の間隔を隔てて平行に配置される。陽極配線204は、透明導電膜により構成され、例えばITO(Indium Tin Oxide)を用いることができる。また陽極配線204の厚さは例えば、100nm〜150nmとすることができる。そして、それぞれの陽極配線204の端部の上には、陽極補助配線206が形成される。陽極補助配線206は陽極配線204と電気的に接続されている。このように構成することにより、陽極補助配線206は、基板11の端部側において外部配線と接続するための端子として機能し、外部に設けられた図示しない駆動回路から陽極補助配線206を介して陽極配線204に電流を供給することができる。陽極補助配線206は、例えば、厚さ500nm〜600nmの金属膜によって構成される。
【0080】
また、電界発光素子10上には、複数の陰極配線208が設けられている。複数の陰極配線208は、それぞれが平行となるよう、かつ、陽極配線204と直交するように配設されている。陰極配線208には、Al又はAl合金を使用することができる。陰極配線208の厚さは、例えば、100nm〜150nmである。また、陰極配線208の端部には、陽極配線204に対する陽極補助配線206と同様に、図示しない陰極補助配線が設けられ、陰極配線208と電気的に接続されている。よって、陰極配線208と陰極補助配線との間に電流を流すことができる。
【0081】
更に基板11上には、陽極配線204を覆うように絶縁膜210が形成される。絶縁膜210には、陽極配線204の一部を露出するように矩形状の開口部220が設けられている。複数の開口部220は、陽極配線204の上にマトリクス状に配置されている。この開口部220において、陽極配線204と陰極配線208の間に電界発光素子10が設けられる。すなわち、それぞれの開口部220が画素となる。従って、開口部220に対応して表示領域が形成される。ここで、絶縁膜210の膜厚は、例えば、200nm〜300nmとすることができ、開口部220の大きさは、例えば、300μm×300μmとすることができる。
【0082】
前述の通り電界発光素子10は、開口部220において陽極配線204と陰極配線208の間に位置している。そしてこの場合、電界発光素子10の陽極層12が陽極配線204と接触し、陰極層14が陰極配線208と接触する。電界発光素子10の厚さは、例えば、150nm〜200nmとすることができる。
【0083】
絶縁膜210の上には、複数の陰極隔壁212が陽極配線204と垂直な方向に沿って形成されている。陰極隔壁212は、陰極配線208の配線同士が導通しないように、複数の陰極配線208を空間的に分離するための役割を担っている。従って、隣接する陰極隔壁212の間にそれぞれ陰極配線208が配置される。陰極隔壁212の大きさとしては、例えば、高さが2μm〜3μm、幅が10μmのものを用いることができる。
【0084】
また基板11は、封止プレート216とシール材218を介して貼り合わせられている。これにより、電界発光素子10が設けられた空間を封止することができ、電界発光素子10が空気中の水分により劣化するのを防ぐことができる。封止プレート216としては、例えば、厚さが0.7mm〜1.1mmのガラス基板を使用することができる。
【0085】
このような構造の画像表示装置200において、図示しない駆動装置により、陽極補助配線206、図示しない陰極補助配線を介して、電界発光素子10に電流を供給し、発光部17(図1参照)を発光させることができる。そして凹部16(図1参照)から基板11を通し、光を出射させることができる。そして、上述の画素に対応した電界発光素子10の発光、非発光を制御装置により制御することにより、画像表示装置200に画像を表示させることができる。
【0086】
(照明装置)
次に、電界発光素子10を用いた照明装置について説明を行う。
図15は、本実施の形態における電界発光素子を備える照明装置の一例を説明した図である。
図15に示した照明装置300は、上述した電界発光素子10と、電界発光素子10の基板11(図1参照)に隣接して設置され陽極層12(図1参照)に接続される端子302と、基板11(図1参照)に隣接して設置され電界発光素子10の陰極層14(図1参照)に接続される端子303と、端子302と端子303とに接続し電界発光素子10を駆動するための点灯回路301とから構成される。
【0087】
点灯回路301は、図示しない直流電源と図示しない制御回路を内部に有し、端子302と端子303を通して、電界発光素子10の陽極層12と陰極層14との間に電流を供給する。そして、電界発光素子10を駆動し、発光部17(図1参照)を発光させて、凹部16から基板11を通し、光を出射させ、照明光として利用する。発光部17は白色光を出射する発光材料より構成されていてもよく、また緑色光(G)、青色光(B)、赤色光(R)を出射する発光材料を使用した電界発光素子10をそれぞれ複数個設け、その合成光が白色となるようにしてもよい。なお、本実施の形態の照明装置300では、凹部16(図1参照)の径と間隔を小さくして発光させた場合、人間の目には面発光しているように見える。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
[燐光発光性高分子化合物の作製]
前述した式E−2で表される化合物(重合性置換基を有するイリジウム錯体)、式E−54で表される化合物(正孔輸送性化合物)、および式E−66で表される化合物(電子輸送性化合物)をE−2:E−54:E−66=1:4:5(質量比)の割合で脱水トルエンに溶解させ、更に重合開始剤として、V−601(和光純薬工業株式会社製)を溶解させた。そして、凍結脱気操作を行った後に真空密閉し、70℃で100時間攪拌して重合反応を行なった。反応後、反応液をアセトン中に滴下して沈殿を生じさせ、更に、この脱水トルエン−アセトンでの再沈殿精製を3回繰り返して燐光発光性高分子化合物を精製した。ここで、脱水トルエンおよびアセトンとしては、和光純薬工業株式会社製の高純度グレードのものを更に蒸留したものを用いた。
3回目の再沈殿精製後の溶剤を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、溶剤中に400nm以上での吸収を有する物質が検出されないことを確認した。即ち、このことは溶剤中に、不純物がほとんど含まれないということであり、燐光発光性高分子化合物を十分に精製できていることを意味する。そして、精製された燐光発光性高分子化合物を、室温で2日間かけて真空乾燥させた。その結果得られた燐光発光性高分子化合物(ELP)は、純度が99.9%を超えることを高速液体クロマトグラフィー(検出波長254nm)により確認した。
【0089】
[発光材料溶液の調製]
このように作製した発光性高分子化合物(重量平均分子量=52000)3重量部を97重量部のキシレンに溶解させ、発光材料溶液(以下、「溶液A」ともいう。)を調製した。
【0090】
[発光素子の作製]
発光素子として、図1で示した電界発光素子10を、図13で説明した方法で作製した。
具体的には、まず表面に膜厚150nmのITO(Indium Tin Oxide)膜を有するガラス基板(25mm角)上に、スパッタ装置(キヤノンアネルバ株式会社製E−401s)を用いて、二酸化ケイ素(SiO2)層を280nm成膜した。ここで、ガラス基板は、基板11に対応する。またITO膜は陽極層12に、二酸化ケイ素層は誘電体層13に対応する。
【0091】
次に、フォトレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製AZ1500)をスピンコート法により約1μm成膜した。紫外線による露光後、TMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide:(CH3)4NOH)1.2%液により現像し、レジスト層を図16のようにパターン化した。
【0092】
次に反応性イオンエッチング装置(サムコ株式会社製RIE−200iP)を用いてドライエッチングすることで二酸化ケイ素層のパターン化を行った。ここでエッチング条件としては、反応ガスとしてCHF3を使用し、圧力0.3Pa、出力Bias/ICP=60/100(W)で、16分間反応させた。
【0093】
そしてレジスト除去液によりレジスト残渣を除去し、上述した反応性イオンエッチング装置を用いてドライエッチングすることでITO膜のパターン化を行った。ここでエッチング条件としては、反応ガスとしてCl2とSiCl4の混合ガスを使用し、圧力1Pa、出力Bias/ICP=180/100(W)で、7分間反応させた。
続いて、反応ガスをCHF3ガスに置換して、エッチング条件として圧力0.3Pa、出力Bias/ICP=120/100(W)で20分間反応させた。
【0094】
次に純水を吹きかけることにより洗浄を行ない、スピン乾燥装置を用いて乾燥させた。そして、乾燥したガラス基板を、反応性イオンエッチング装置(サムコ株式会社製RIE−200iP)に装着した。そして反応性イオンエッチング装置内に酸素ガスを導入し、交流電圧を印加し放電させることで酸素プラズマを生成させ、ガラス基板に照射した。ここでプラズマ生成装置内に導入する酸素ガス流量を調整し、圧力は1Pa、投入電力は150Wで30秒間になるようにして処理を行なった。次いで、導入するガスの種類を酸素からCHF3ガスに切り替えた。ここで流量を制御することで圧力を7Paとした。そしてPEモードで投入電力300Wにて10秒間処理を行なった。その結果、深さ200nm(この内、穿孔部16b部分の深さ30nm)、直径2μmの凹部16を形成した。また、凹部16は、図16のパターンで配置され、密度6×104個/mm2であった。なお、発光部17、貫通部16a、穿孔部16bはそれぞれの位置および個数が一致しているので、発光部17の配置及び密度も凹部16と同様である。
次に、溶液Aをスピンコート法(回転数:3000rpm)により塗布し、次いで窒素雰囲気下、120℃で1時間放置して、発光部17を含む発光層を形成した。
【0095】
そして真空蒸着室に投入し、真空蒸着装置で発光部17を含む発光層上に陰極バッファ層として厚さ2.0nmのナトリウム(Na)膜を形成した。続いて陰極層14として、厚さ150nmのアルミニウム(Al)膜を形成した。以上の工程により電界発光素子10を作製することができた。
【0096】
(実施例2)
陽極層12をタングステン(W)膜としたこと以外は、実施例1と同様にして電界発光素子10を作製した。
【0097】
(比較例1〜2)
比較例1では、穿孔部16bを形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電界発光素子の作製を行なった。また比較例2では、穿孔部16bを形成しなかったこと以外は、実施例2と同様にして電界発光素子の作製を行なった。
【0098】
(実施例3a〜3f)
発光素子として、図9に示した電界発光素子10gを図13に示した方法で作製した。この際、二酸化ケイ素層のドライエッチング条件は、反応ガスとしてCHF3を使用し、圧力0.45Pa、出力Bias/ICP=60/100(W)で、16分間反応させたこと、そしてレジスト層のパターンの調整をして発光部17の密度および穿孔部16bの最大幅を表1記載のようにしたことを除いて、実施例1と同様の方法で発光素子10gを作製した。なお穿孔部16bの深さは80nmとなった。
【0099】
(実施例4)
発光素子として、図3に示した電界発光素子10aを図13で説明した方法で作製した。この際、ITO膜のパターン化後の基板のエッチングは、エッチング条件として圧力0.3Pa、出力Bias/ICP=120/100(W)で25分間反応させたこと、そして発光部17の密度および穿孔部16bの最大幅を表1記載のようにしたことを除いて、実施例1と同様の方法で発光素子10aを作製した。なお凹部16のサイズ及び密度は実施例3dと同様である。
【0100】
(実施例5)
発光素子として、図4に示した電界発光素子10bを図13で示した方法で作製した。この際、基板11はウェットエッチングで穿孔部16bを形成することを除いて、実施例1と同様の方法で発光素子10bを作製した。ウェットエッチングの条件は、温度25℃の関東化学株式会社製TP−2水溶液を用いて1分間晒した。なお凹部16のサイズ及び密度は実施例3dと同様である。また、得られた穿孔部16bの断面形状は、図4と同様、ほぼ円の一部ではあるが、半円ではなかった。
【0101】
(実施例6)
発光素子として、図10に示した電界発光素子10hを作製した。この際、ITO膜エッチング後の基板ドライエッチング条件は、反応ガスとしてArとCHF3の混合ガスを使用し、圧力0.45Pa、出力Bias/ICP=80/100(W)で、8分間反応させたことを除いて、実施例1と同様の方法で電界発光素子10hを作製した。なお凹部16のサイズ及び密度は実施例3dと同様である。
【0102】
(実施例7)
発光素子として、図12に示した電界発光素子10lを図13で説明した方法で作製した。この際、あらかじめ基板11に低屈折率層(屈折率1.36のMgF2)を100nm成膜したガラス基板を使用した。低屈折率層18のドライエッチングを含め基板11のドライエッチングは、40分間反応させた。
【0103】
[特性評価]
(発光効率)
実施例1〜2および比較例1〜2で作製した有機電界発光素子に、定電圧電源(ケイスレーインスツルメンツ株式会社製SM2400)を用いて段階的に電圧を印加して電界発光素子に流れる電流密度を測定し、また電界発光素子の正面の発光強度を輝度計(株式会社トプコン製BM−9)で計測した。そして、電流密度に対する発光強度の比から発光効率(正面)を決定した。
また、配光分布の異なる電界発光素子間の比較のために、全積分の発光効率も求めた。積分球(オーシャンオプティックス製、直径約50cm)の内部の中心部に電界発光素子を固定し、この電極にプログラマブル直流電源(ケスレー製、2400)を電気的に接続した。この状態で電界発光素子に段階的に0Vから10Vの電圧を印加し、この時に電界発光素子に流れた電流と積分球内の光量を記録した。得られた電流と光量のプロットの勾配から電流効率(QE)を算出した。積分球は、あらかじめ標準光源(オーシャンオプティックス製、LS−1−CAL)を用いて校正を行った。なお、電界発光素子は、正面の発光面以外の部分(ガラス端面および背面)は、黒色塗料で塗装し、この部分から発せられる光が、電界発光素子外部に漏洩しないようにした。
【0104】
(配光分布)
作製した電界発光素子に対し、測定電界発光素子面の中央部の直上(電界発光素子面の中央を通る法線上)に輝度計(株式会社トプコン製BM−9)を配置し、電界発光素子の発光輝度を測定できるようにした。定電圧電源(ケイスレーインスツルメンツ株式会社製SM2400)を用いて輝度100cd/m2になるように電界発光素子に電圧を印加した。この状態から、電界発光素子中央部を通る軸を中心として、電界発光素子を回転させ、2°おきに輝度を測定した。なお、輝度は、角度0°で測定された最大輝度を1とした際の相対値で示した。これらのグラフにおいて0°は輝度計が電界発光素子面の直上にある状態で、90°は輝度計が電界発光素子面と同一平面にある状態である。
測定された配光のパターンは下記A,B,Cに分類した。
Aは、例えば図19のように、どの角度でもある程度の発光強度を有するパターンである。
Bは、例えば、図17、図20のように、相対的に正面に高い発光強度を有するパターンである。
Cは、例えば、図18のように、相対的に高角度に高い発光強度を有するパターンである。
結果を以下の表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示した実施例1と比較例1とを比較すると穿孔部16bを形成した実施例1の方が、発光効率がよいことがわかる。また実施例2と比較例2についても穿孔部16bを形成した実施例2の方が、発光効率がよいことがわかる。このことから穿孔部16bを形成しない場合より形成した方が発光効率がよくなることは明らかである。
実施例3a〜3fより、穿孔部16bの最大幅が1μm未満になると発光効率がより向上することが分かる。
本発明では、表1及び図17〜20に示したように、穿孔部16bの形状を調整することにより配光分布を制御することができる。
例えば、実施例5(図19)のように、配光分布Aのパターンを持つ発光素子では、広域に照射する一般的な照明に向いている。
また、本発明では、発光素子の発光面が平面状であっても、配光分布Bのパターンを持つ発光素子を作成でき、特に、実施例7(図20)の電界発光素子のように、正面にビーム状に光照射する発光素子の作成も可能である。
これとは逆に、配光分布Cのパターンを持つ発光素子の作成もでき、特に、実施例4(図18)の発光素子のように、正面の発光強度は押さえて、ほぼ発光面方向のみに強い発光強度を有する発光素子の作成も可能である。
【符号の説明】
【0107】
10…電界発光素子、11…基板、12…陽極層、13…誘電体層、14…陰極層、16…凹部、16a…貫通部、16b…穿孔部、17…発光部、18…低屈折率層、200…画像表示装置、300…照明装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板上に発光部が点在する発光素子であって、前記基板は、発光部側の基板面が前記発光部下で窪んだ穿孔部を有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記発光部が、前記基板面1mm2中に102個以上形成されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記穿孔部は、1つの前記発光部下に1つ存在する請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記穿孔部は、前記基板の表面から当該穿孔部の最深部に至る経路部分の少なくとも一部に絞り形状を有する請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記絞り形状は、幅が連続的に狭くなる形状である請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記絞り形状は、幅が連続的に広くなる形状である請求項4に記載の発光素子。
【請求項7】
前記穿孔部は、前記基板の表面から当該穿孔部の最深部に至る幅が略同一である請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項8】
前記穿孔部の最深部が平面である請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
前記穿孔部の最深部が曲面である請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
前記穿孔部の最深部が尖頭形状である請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項11】
前記穿孔部が凸面の底部を有する請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項12】
前記穿孔部は、略円柱形状をなす請求項7または8に記載の発光素子。
【請求項13】
前記穿孔部は、回転体以外の形状である請求項1〜11に記載の発光素子。
【請求項14】
前記穿孔部は、略直方体形状をなす請求項7または8に記載の発光素子。
【請求項15】
前記穿孔部は、他の穿孔部に対し、互いに長辺が略平行にして前記基板面に並んでいる請求項14に記載の発光素子。
【請求項16】
前記穿孔部の前記基板面における形状の最大幅が0.01μm〜5μmである請求項1〜15の何れかに記載の発光素子。
【請求項17】
前記穿孔部の前記基板面における形状の最大幅が、0.01μm〜1μm未満である請求項16に記載の発光素子。
【請求項18】
前記基板の屈折率は、前記発光部の屈折率より低い請求項1〜16のいずれかに記載の発光素子。
【請求項19】
前記発光素子は、電界発光素子である請求項1〜18のいずれかに記載の発光素子。
【請求項20】
前記発光部が、有機化合物からなる発光体を含む請求項19に記載の発光素子。
【請求項21】
前記発光部が、有機金属錯体からなる発光体を含む請求項20に記載の発光素子。
【請求項22】
前記発光部は、燐光発光する有機材料を含む請求項20に記載の発光素子。
【請求項23】
発光素子は、
基板上に積層されている第1の電極層及びその上にさらに積層されている第2の電極層を有し、
穿孔部上に、穿孔部から第1の電極層を貫通する貫通部を有し、かつ、
貫通部内に発光部を有する請求項19〜22のいずれかに記載の発光素子。
【請求項24】
発光素子は、第1の電極層と第2の電極層との間に誘電体層を有し、かつ、前記貫通部がさらに当該誘電体層を貫通している請求項23に記載の発光素子。
【請求項25】
前記貫通部は、幅が10μm以下である請求項23〜24のいずれかに記載の発光素子。
【請求項26】
前記貫通部の最大幅が、0.01μm〜5μmである請求項23〜25のいずれかに記載の発光素子。
【請求項27】
前記貫通部の幅が、前記貫通部に対応する前記穿孔部の幅に合っている請求項23〜26のいずれかに記載の発光素子。
【請求項28】
前記貫通部は、略円柱形状をなす請求項23〜27のいずれかに記載の発光素子。
【請求項29】
前記貫通部は、略直方体形状をなす請求項23〜27のいずれかに記載の発光素子。
【請求項30】
前記貫通部は、他の貫通部に対して、互いに長辺を略平行にして前記基板面上に並んでいる請求項29に記載の発光素子。
【請求項31】
前記貫通部から前記穿孔部に渡る内壁が、連続した面で構成されている請求項23〜30のいずれかに記載の発光素子。
【請求項32】
前記第1の電極層および前記第2の電極層のうち少なくとも一方は、不透明材料からなる請求項23〜31のいずれかに記載の発光素子。
【請求項33】
請求項1〜32に記載の発光素子の製造方法であって、透明な基板上に少なくとも第1の電極層および誘電体層を積層して形成する積層工程と、
少なくとも前記第1の電極層および前記誘電体層を貫通する貫通部を形成する貫通部形成工程と、
前記貫通部を形成した部分以外の部分をマスクとして前記基板に穿孔部を形成する穿孔部形成工程と、
前記貫通部の内面に発光部を形成する発光部形成工程と、
第2の電極層を形成する第2電極層形成工程と、
を有することを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項34】
前記第2電極層形成工程は、前記発光部上に前記第2の電極層を形成する工程である請求項33に記載の発光素子の製造方法。
【請求項35】
前記貫通部形成工程および前記穿孔部形成工程の少なくとも一方は、ドライエッチングにより前記貫通部または前記穿孔部を形成する工程である請求項33または34に記載の発光素子の製造方法。
【請求項36】
請求項1〜32のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項37】
請求項1〜32のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項1】
透明な基板上に発光部が点在する発光素子であって、前記基板は、発光部側の基板面が前記発光部下で窪んだ穿孔部を有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記発光部が、前記基板面1mm2中に102個以上形成されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記穿孔部は、1つの前記発光部下に1つ存在する請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記穿孔部は、前記基板の表面から当該穿孔部の最深部に至る経路部分の少なくとも一部に絞り形状を有する請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記絞り形状は、幅が連続的に狭くなる形状である請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記絞り形状は、幅が連続的に広くなる形状である請求項4に記載の発光素子。
【請求項7】
前記穿孔部は、前記基板の表面から当該穿孔部の最深部に至る幅が略同一である請求項1〜3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項8】
前記穿孔部の最深部が平面である請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
前記穿孔部の最深部が曲面である請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
前記穿孔部の最深部が尖頭形状である請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項11】
前記穿孔部が凸面の底部を有する請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項12】
前記穿孔部は、略円柱形状をなす請求項7または8に記載の発光素子。
【請求項13】
前記穿孔部は、回転体以外の形状である請求項1〜11に記載の発光素子。
【請求項14】
前記穿孔部は、略直方体形状をなす請求項7または8に記載の発光素子。
【請求項15】
前記穿孔部は、他の穿孔部に対し、互いに長辺が略平行にして前記基板面に並んでいる請求項14に記載の発光素子。
【請求項16】
前記穿孔部の前記基板面における形状の最大幅が0.01μm〜5μmである請求項1〜15の何れかに記載の発光素子。
【請求項17】
前記穿孔部の前記基板面における形状の最大幅が、0.01μm〜1μm未満である請求項16に記載の発光素子。
【請求項18】
前記基板の屈折率は、前記発光部の屈折率より低い請求項1〜16のいずれかに記載の発光素子。
【請求項19】
前記発光素子は、電界発光素子である請求項1〜18のいずれかに記載の発光素子。
【請求項20】
前記発光部が、有機化合物からなる発光体を含む請求項19に記載の発光素子。
【請求項21】
前記発光部が、有機金属錯体からなる発光体を含む請求項20に記載の発光素子。
【請求項22】
前記発光部は、燐光発光する有機材料を含む請求項20に記載の発光素子。
【請求項23】
発光素子は、
基板上に積層されている第1の電極層及びその上にさらに積層されている第2の電極層を有し、
穿孔部上に、穿孔部から第1の電極層を貫通する貫通部を有し、かつ、
貫通部内に発光部を有する請求項19〜22のいずれかに記載の発光素子。
【請求項24】
発光素子は、第1の電極層と第2の電極層との間に誘電体層を有し、かつ、前記貫通部がさらに当該誘電体層を貫通している請求項23に記載の発光素子。
【請求項25】
前記貫通部は、幅が10μm以下である請求項23〜24のいずれかに記載の発光素子。
【請求項26】
前記貫通部の最大幅が、0.01μm〜5μmである請求項23〜25のいずれかに記載の発光素子。
【請求項27】
前記貫通部の幅が、前記貫通部に対応する前記穿孔部の幅に合っている請求項23〜26のいずれかに記載の発光素子。
【請求項28】
前記貫通部は、略円柱形状をなす請求項23〜27のいずれかに記載の発光素子。
【請求項29】
前記貫通部は、略直方体形状をなす請求項23〜27のいずれかに記載の発光素子。
【請求項30】
前記貫通部は、他の貫通部に対して、互いに長辺を略平行にして前記基板面上に並んでいる請求項29に記載の発光素子。
【請求項31】
前記貫通部から前記穿孔部に渡る内壁が、連続した面で構成されている請求項23〜30のいずれかに記載の発光素子。
【請求項32】
前記第1の電極層および前記第2の電極層のうち少なくとも一方は、不透明材料からなる請求項23〜31のいずれかに記載の発光素子。
【請求項33】
請求項1〜32に記載の発光素子の製造方法であって、透明な基板上に少なくとも第1の電極層および誘電体層を積層して形成する積層工程と、
少なくとも前記第1の電極層および前記誘電体層を貫通する貫通部を形成する貫通部形成工程と、
前記貫通部を形成した部分以外の部分をマスクとして前記基板に穿孔部を形成する穿孔部形成工程と、
前記貫通部の内面に発光部を形成する発光部形成工程と、
第2の電極層を形成する第2電極層形成工程と、
を有することを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項34】
前記第2電極層形成工程は、前記発光部上に前記第2の電極層を形成する工程である請求項33に記載の発光素子の製造方法。
【請求項35】
前記貫通部形成工程および前記穿孔部形成工程の少なくとも一方は、ドライエッチングにより前記貫通部または前記穿孔部を形成する工程である請求項33または34に記載の発光素子の製造方法。
【請求項36】
請求項1〜32のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項37】
請求項1〜32のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−82192(P2011−82192A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12286(P2011−12286)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【分割の表示】特願2010−532357(P2010−532357)の分割
【原出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【分割の表示】特願2010−532357(P2010−532357)の分割
【原出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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