説明

発光素子、発光装置、照明装置並びに電子機器

【課題】新規な発光材料を提供することを課題とする。
【解決手段】第1の電極と、発光層と、第2の電極とを有し、前記発光層は、カルコゲナイド化合物から形成された発光母体と、2種類のハロゲン化合物から形成された発光中心と、を含むことを特徴とした発光素子である。前記カルコゲナイド化合物は、カルコゲン元素と、周期表第2族から第13族に属する元素から選ばれた元素と、を含み、前記ハロゲン化合物は、ハロゲン化合物と、典型金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素から選ばれた元素と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子に関する。また、発光素子を有する発光装置、照明装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、携帯電話、デジタルカメラ等における表示装置は、平面的で薄型の表示装置が求められており、この要求を満たすための表示装置として、自発光型である発光素子を利用した表示装置が注目されている。自発光型の発光素子の一つとして、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence(EL))を利用する発光素子があり、この発光素子は、発光材料を一対の電極で挟み、電圧を印加することにより、発光材料からの発光を得ることができるものである。
【0003】
このような自発光型の発光素子は、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。また、非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
さらに、このような自発光型の発光素子は膜状に形成することが可能であるため、大面積の素子を形成することにより、面発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0006】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。前者は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有し、後者は、蛍光材料の薄膜からなる発光層を有している点に違いがある。しかし、そのメカニズムは共通しており、高電界で加速された電子による母体材料又は発光中心の衝突励起により発光が得られる。このような理由のため、一般的な無機EL素子で発光を得るためには高い電界が必要であり、発光素子に数百Vの電圧を印加する必要がある。例えば、近年フルカラーディスプレイに必要とされる高輝度の青色発光の無機EL素子が開発されたが、100〜200Vの駆動電圧が必要である(例えば、非特許文献1参照)。そのため、無機EL素子は消費電力が大きく、中小型サイズのディスプレイ、例えば、携帯電話等のディスプレイには採用することが難しかった。
【非特許文献1】ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス(Japanese Journal of Applied Physics)、1999年、Vol.38、p.L1291
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、混色発光が可能な発光素子、ならびに該発光素子を利用した発光装置、照明装置、及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発光素子の発光体を製造するに当たり様々な発光中心化合物を利用する。カルコゲナイド化合物を母体とし、発光中心化合物としてハロゲン元素を添加した蛍光体である。従来はカルコゲナイド化合物の一つである硫化亜鉛(ZnS)を母体とし、発光中心としてハロゲン化合物の一つである塩化銅(I)(CuCl)を利用しているが、この材料にとらわれることなくまた従来の発光体と同等以上の特性を有するものである。
【0009】
上記構成において、発光体の母体となるカルコゲナイド化合物とは、周期表第16族のカルコゲン元素、つまり酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、又はポロニウム(Po)と、周期表第2族から第13族に属する金属元素とを含む化合物である。例えば酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化マグネシウム(MgS)、硫化カルシウム(CaS)、又は硫化ストロンチウム(SrS)などが挙げられる。またSrGa、又はZnMgSのように2種以上のカルコゲナイド化合物を混合した複合材料を使用してもよい。
【0010】
また上記構成において、ハロゲン化合物とは周期表17族のハロゲン元素、つまりフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、又はアスタチン(At)を含む化合物である。例えば周期表において遷移金属元素である第11族の銅(Cu)、銀(Ag)、又は金(Au)、希土類元素であるセリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、又はツリウム(Tm)、典型金属元素であるアルミニウム(Al)又はガリウム(Ga)などを少なくとも一つ以上含む化合物である。銅化合物は銅イオンが一価、二価になることができるのでフッ化銅(I)(CuF)、フッ化銅(II)(CuF)、塩化銅(I)(CuCl)、塩化銅(II)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、臭化銅(II)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、又はヨウ化銅(II)(CuI)や、銀化合物としてはフッ化銀、塩化銀、臭化銀(AgBr)、又はヨウ化銀(AgI)などがある。銅イオンのように価数にとらわれることなく利用できる。また上記のようなハロゲン化合物を2種類以上混合した複合材料を使用してもよい。
【0011】
本発明は、第1の電極、前記第1の電極上の発光層及び前記発光層上の第2の電極を有し、前記発光層にカルコゲン元素とハロゲン元素を含む発光素子に関するものである。
【0012】
また本発明は、第1の電極、前記第1の電極上の第1の誘電体膜、前記第1の誘電体膜上の発光層、前記発光層上の第2の誘電体膜、前記第2の誘電体膜上の第2の電極を含み、前記発光層にカルコゲン元素とハロゲン元素を含む発光素子に関するものである。
【0013】
本発明において、前記発光層の発光母体は、前記カルコゲン元素と、周期表第2族から第13族に属する元素と、を含む1種類又は2種類以上のカルコゲナイド化合物から形成されるものである。
【0014】
本発明において、前記発光層の発光中心は、前記ハロゲン元素と、典型金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素と、を含む1種類又は2種類以上のハロゲン化合物から形成されるものである。
【0015】
また本発明は、第1の電極、前記第1の電極上の発光層、前記発光層上の第2の電極を含み、前記発光層に少なくとも2種類以上のハロゲン元素を含む発光素子に関するものである。
【0016】
また本発明は、第1の電極、前記第1の電極上の第1の誘電体膜、前記第1の誘電体膜上の発光層、前記発光層上の第2の誘電体膜、前記第2の誘電体膜上の第2の電極を含み、前記発光層に少なくとも2種類以上のハロゲン元素を含む発光素子に関するものである。
【0017】
また本発明において、前記発光層は、典型金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素に属する元素から選ばれた少なくとも2種類以上の元素を含むものである。
【0018】
また本発明は、第1の電極と、前記第1の電極の上方に形成された発光層と、前記発光層の上方に形成された第2の電極と、を有する発光素子であり、前記発光層は、組成式MXで表される化合物と、アクセプターと、第1のドナーと、第2のドナーと、を含むことを特徴としている。前記化合物MXは、Mが周期表第2族から13族に属する元素から選ばれた元素で構成されており、Xがカルコゲン元素である。前記発光層に含まれるアクセプターはMより低価数のイオンであり、前記発光層には、Mより低価数のイオンであるアクセプターが二以上含まれていてもよい。そして前記第1及び第2のドナーは、それぞれXより低価数のイオンであってもよい。また、Mが周期表第2族から第13族に属する元素から選ばれた2種類以上の元素によって構成されていてもよい。さらに、化合物MXの結晶構造内には少なくとも一の単位格子が含まれる。単位格子の結晶系は、立方晶系、六方晶系、正方晶系、斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系等のいずれか、またはこれらの組み合わせである。例えば、ZnO、ZnS、ZnSe、MgS、CaS、SrS、又はZnMgSが挙げられる。
【0019】
また本発明は、上記の発光素子を有する発光装置に関するものである。
【0020】
また本発明では、上記に記載の発光装置を照明装置に用いることも可能である。
【0021】
また本発明では、上記に記載の発光装置を表示部に用いることを特徴とする電子機器にも関するものである。
【0022】
また、本発明は、上述した発光素子を有する発光装置も範疇に含めるものである。本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を範疇に含む。また、発光素子が形成されたパネルにコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0023】
また、本発明の発光素子を表示部に用いた電子機器も本発明の範疇に含めるものとする。したがって、本発明の電子機器は、表示部を有し、表示部は、上述した発光素子と発光素子の発光を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の発光素子は、カルコゲナイド化合物とハロゲン化合物から発光層を形成することができる。また、本発明の発光素子は、単色発光ではなく混色および白色発光が可能である。
【0025】
遷移金属のようなd軌道を有するイオンの場合、結晶格子内においてその金属イオンに対して配位子が正八面体の6配位を形成しているのか、正四面体の4配位を形成しているのかで結晶場分裂に差異が現れるが、さらに分光化学序列により配位子が遷移金属の結晶場分裂に与える影響の大きさが異なることが知られている。配位子としてハロゲン元素であるフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)を考えると結晶場分裂のエネルギーの大きさは同じ価数の陰イオンであっても配位子の種類に依存し、そのエネルギーの大きさはI<Br<Cl<Fとなることが知られている。つまりハロゲン元素が異なることによってエネルギー準位が異なり、発光スペクトルが長波長側、もしくは短波長側にシフトすることや、より幅広なピークが得られることにより混色発光が可能である。この混色発光の組み合わせやより幅広なスペクトルであれば、白色発光を得ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明に係る薄膜型発光素子について図1(A)〜図1(C)を用いて説明する。
【0028】
本実施の形態で示す発光素子は、基板100の上に、第1の電極101と第2の電極105を有し、第1の電極と第2の電極との間に、第1の誘電体層102と発光層103と第2の誘電体層104とを有する素子構成である。なお、本実施の形態では、第1の電極101と第2の電極105は陽極、陰極のどちらを機能としてもよいものとして以下に説明をする。
【0029】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えば、ガラス、石英又はプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでも用いることができる。
【0030】
第1の電極101及び第2の電極105は、金属、合金、導電性化合物、又はこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(Indium Tin Oxide(「ITO」ともいう))、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide(「IZO」ともいう))、又は、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム−酸化スズ(「IWZO」ともいう)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリングにより成膜される。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム−酸化スズ(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。この他、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン(TiN))等用いることができる。なお、第1の電極101または/及び第2の電極105を、透光性を有する電極とする場合、可視光の透過率の低い材料であっても、1nm〜50nm、好ましくは5nm〜20nm程度の厚さで成膜することで、透光性の電極として用いることができる。なお、スパッタリング以外にも、真空蒸着、CVD、又はゾル−ゲル法を用いて電極を作製することもできる。
【0031】
ただし、発光は、第1の電極101もしくは第2の電極105を通って外部に取り出されるため、第1の電極101および第2の電極105のうち、少なくとも一方は透光性を有する材料で形成されている必要がある。また、第2の電極105よりも第1の電極101における仕事関数が大きくなるように材料を選択することが好ましい。さらに第1の電極と第2の電極はそれぞれ一層である必要は無く、2層以上の構成を取っていても良い。
【0032】
第1の誘電体層と第2の誘電体層は公知の材料であれば問題ないが、特に誘電率の高い材料を利用することが好ましい。この誘電体層としては有機材料であっても良いし、無機材料であっても良い。例えば有機材料であればアセタール樹脂、エポキシ樹脂、メチル・メタアクリレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、又はシアノ・エチル・セルロースを用いることができる。無機材料であれば窒化アルミ(AlN)、窒化ホウ素(BN)などの窒化物、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸リチウム(LiTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、五酸化タンタル(Ta)、酸化ビスマス(Bi)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、酸化ケイ素(SiO)、又は酸化アルミニウム(Al)などの酸化物が挙げられる。またこれら無機材料の複合材料でも良い。また第1の誘電体層と第2の誘電体層は1層である必要は無く、それぞれが2層以上あっても良い。さらに第1の誘電体層と第2の誘電体層は1nm〜10000nm、好ましくは300nm〜800nm程度の膜厚が好ましい。
【0033】
発光層103は半導体である母体材料を利用すれば良い。カルコゲナイド化合物が特に利用され、周期表第2族から第13族に属する金属元素を含む酸化物、硫化物、又はセレン化物などが挙げられる。例えば硫化物であれば硫化亜鉛(ZnS)、硫化銅(CuS)、硫化アルミニウム(Al)、硫化カルシウム(CaS)、硫化ストロンチウム(SrS)、硫化亜鉛(ZnS)、又は硫化マグネシウム(MgS)などが挙げられる。また酸化物では酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、又は酸化ガリウム(Ga)などが挙げられる。セレン化物ではセレン化亜鉛(ZnSe)、セレン化カドミウム(CdSe)、又はセレン化バリウム(BaSe)などが挙げられる。またこれらカルコゲナイド化合物同士を2種類以上混合した複合材料を利用することもできる。例えば、SrGa、ZnMgS、YS、又はZnSiOなどの複合材料が挙げられる。発光層の膜厚は10nm〜1000nm、好ましくは30nm〜500nmが好ましい。
【0034】
発光層103では母体となるカルコゲナイド化合物の他に、発光中心となる材料を添加する。添加材料としてはハロゲン化合物が挙げられる。周期表17族のハロゲン元素、つまりフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、又はアスタチン(At)が含まれる化合物である。例えば周期表において遷移金属である第11族の銅(Cu)、銀(Ag)、又は金(Au)、希土類元素であるセリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、又はツリウム(Tm)などを少なくとも一つ以上含む化合物である。銅化合物としてはフッ化銅(CuF)、塩化銅(CuCl)、臭化銅(CuBr)、ヨウ化銅(CuI)などがある。またアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)のような典型金属元素を利用したハロゲン化合物でも良い。また上記のようなハロゲン化合物を2種類以上混合した複合材料を発光中心として使用してもよい。ハロゲン化合物のうち、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)がドナーとして、典型金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素がアクセプターとして機能し、このドナーとアクセプターの再結合により発光するという機構を取る。
【0035】
発光層の添加材料として上記のハロゲン化合物を複数、発光層の母体材料に添加しても良い。例えば発光層の母体材料として硫化亜鉛(ZnS)を使用した場合、添加材料として塩化銅(I)(CuCl)だけではなくヨウ化銅(I)(CuI)を同時に添加することもできる。これにより塩化銅のみの発光だけではなく、エネルギー準位の異なるヨウ化銅からの発光も得ることができ、その結果混色発光を得ることができる。また塩化銅(I)とヨウ化銅(I)のような同じ金属で異なるハロゲン化合物を共に添加するだけではなく、異なる金属のハロゲン化合物を共に添加することもできる。例えば母体材料の硫化亜鉛(ZnS)に対して塩化銀(AgCl)と塩化マンガン(II)(MnCl)を共に添加して混色発光を得ることもできる。また異なる金属の異なるハロゲン化合物を共に添加することもできる。例えば母体材料の硫化亜鉛(ZnS)に対して塩化銅(CuCl)とフッ化マンガン(II)(MnF)を共に添加して混色発光を得ることもできる。
【0036】
本発明に係る発光素子は上記に記載した構成だけではなく、電極上の誘電体層は第1又は第2の電極のどちらか一方のみの上に形成するだけでも良い。また図1(B)のように基板106上に第1の電極107と第2の電極109の間に発光層108のみを有する誘電体層を含まない構成でも良い。さらには誘電体を含まない構成で第1の電極と第2の電極との間にp型半導体とn型半導体の積層としどちらか一方か両方の半導体が発光層となる構成であっても良い。
【0037】
本発明に係る半導体材料において添加材料を用いる場合には、固相反応、すなわち、硫化物及び添加材料を秤量し、乳鉢で十分に粒径が小さく揃い分散されるように混合、電気炉で加熱して反応させる方法により、硫化物に添加材料を含有させる。焼成温度は、500〜2000℃が好ましい。温度が低すぎる場合は固相反応が進まず、温度が高すぎる場合は材料が分解してしまうからである。なお、粉末状態で焼成を行ってもよいが、粉末を密にしたペレット状態で焼成を行うことが好ましい。また、一度高温で仮焼成を行ってからより低温で添加材料を加えて焼成を行っても良い。母体材料の焼成を1回目とし、2回目の焼成では添加材料を加えて焼成することもできる。さらに固相反応を行う場合、大気圧にてアルゴン(Ar)などの希ガス雰囲気、窒素(N)、酸素(O)、又は硫化水素(HS)雰囲気で行っても良い。さらには真空状態にて行うことが好ましい場合もあり、石英等に真空雰囲気で材料を封じ込めて焼成することもできる。また石英管に真空状態で材料を封じ込め、焼成電気炉の温度分布を利用した化学輸送法にて焼成することもできる。
【0038】
このように焼成をおこなうことによって、母体材料が活性化する。母体材料は例えば組成式MX(Mは周期表第2族から第13族のいずれかに属する元素を表し、Xはカルコゲン元素を表す。)で表され、焼成後は、母体材料の結晶構造内(結晶構造内には少なくとも一の単位格子が含まれる。単位格子の結晶系は、立方晶系、六方晶系、正方晶系、斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系等のいずれか、またはこれらの組み合わせである。)において、Xの第1の格子点は第1のハロゲン元素に置換され、Xの第2の格子点は第2のハロゲン元素に置換されている。第1のハロゲン元素及び第2のハロゲン元素は、それぞれ上述の発光中心となる材料として添加される材料に含まれる元素であり、ドナーとして作用する。また、上述の発光中心として添加される材料に含まれる遷移金属または典型金属は、Mの格子点の少なくとも一と置換されているか若しくは結晶構造の格子間に侵入した状態となっており、アクセプターとして作用する。第1のハロゲン元素と対となるアクセプターと、第2のハロゲン元素と対となるドナーとは、それぞれ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。以上に説明したような母体材料と、ドナーとして作用する2種以上のハロゲン元素と、アクセプターとして作用する金属とで構成される発光体は、新規な複合材料であり、混色を発光する発光体として発光層に適用することができる。なお、ZnMgSのように、Mが2種類以上の周期表第2族から第13族のいずれかに属する元素で構成されていてもよい。
【0039】
第1の電極、第2の電極、第1の誘電体層、第2の誘電体層を形成する方法としては公知の方法でよく、例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)、ホットウォール法等の真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング法、又はMEB法等の物理気相成長法(PVD)や、有機金属CVD法又はハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、ウェット法としてインクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、スキージ法、陽極酸化法、又はゾルーゲル法等を用いることができる。
【0040】
発光層を形成する方法としては電極や誘電体層を形成する方法と同じでよく、例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)、ホットウォール法等の真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング法、又はMEB法等の物理気相成長法(PVD)や、有機金属CVD法又はハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、ウェット法としてインクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、スキージ法、陽極酸化法、又はゾルーゲル法等を用いることができる。
【0041】
また図1(C)を用いて構成の異なる発光素子を説明する。
【0042】
基板110の上に、第1の電極111と第2の電極116を有し、第1の電極と第2の電極との間に、第1の誘電体層112と第1の発光層113と第2の発光層114、そして第2の誘電体層115とを有する素子構成である。なお、本実施の形態では、第1の電極111と第2の電極116は陽極、陰極のどちらを機能としてもよいものとして以下に説明をする。
【0043】
基板110、第1の電極111、第2電極116、第1の誘電体層112と第2の誘電体層115は上記に記載されている材料、形成方法を利用してよい。第1の発光層113、第2の発光層114に関しても同様に上記の材料、焼成方法を使用してよい。
【0044】
発光素子として第1の発光層113、第2の発光層114と2つの発光層を構成する場合、同一の発光色を発光することにより発光強度の向上した発光素子が形成できる。また異なる発光色を発光する場合には混色、この混色の組み合わせにより白色発光を有する発光素子を得ることができる。発光層は2つに限定することは無く、必要となれば2つ以上の発光層を有する発光素子を形成することもできる。
【0045】
発光層の構成としては、例えば第1の発光層113において母体に硫化亜鉛(ZnS)を使用し、発光中心となる添加材料として塩化銀(AgCl)を利用する。また第1の発光層113上に形成される第2の発光層114では、母体に硫化亜鉛(ZnS)を使用し、添加材料としては塩化銅(I)(CuCl)を利用する。こうすることで一つの発光素子から混色を得ることができる。このように同一の母体材料を使用して発光素子を形成すれば母体差異による劣化を防ぐことができ、発光素子の寿命をより向上させることができる。しかし第1及び第2の発光層の母体は同一の母体である必要はない。
【0046】
また、発光強度を向上させるために第1の発光層113では母体に硫化カルシウム(CaS)を利用し添加材料として塩化ユーロピウム(II)(EuCl)を、第2の発光層114では母体に酸化イットリウム(Y)を利用し添加材料として塩化ユーロピウム(III)(EuCl)を使用する。こうすることで単色発光でも強度の向上した発光素子を作成することができる。
【0047】
本発明の発光素子は、発光層を形成する半導体の移動度により低駆動電圧で動作可能な発光素子を得ることができる。もしそのような低駆動電圧で発光可能であれば、消費電力も低減された発光素子を得ることができる。
【0048】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0049】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の発光素子を有する発光装置について図2を用いて説明する。
【0050】
本実施の形態で示す発光装置は、トランジスタ等の駆動用の素子を特に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の発光装置である。図2には本発明を適用して作製したパッシブ型の発光装置の斜視図を示す。
【0051】
図2において、基板951上には、第1の電極952と第2の電極956との間には発光層955が設けられている。なお、発光層955は実施の形態1で示した発光層を含んでいる。
【0052】
第1の電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブ型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0053】
本実施の形態では一つの発光素子の構成を示したが、それにとらわれることなく実施の形態1で示したように誘電体層を電極上に形成し発光層をp型半導体とn型半導体の積層構造にしても良い。
【0054】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の発光素子を有する発光装置について説明する。
【0055】
本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブ型の発光装置について説明する。本実施の形態では、画素部に本発明の発光素子を有する発光装置について図3(A)〜図3(B)を用いて説明する。なお、図3(A)は、発光装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0056】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0057】
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0058】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施例では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし、逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。非晶質半導体膜を用いてもよいし、結晶性半導体膜を用いてもよい。また、半導体材料についても特に限定されず、無機化合物を用いてもよいし、有機化合物を用いてもよい。
【0059】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0060】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0061】
第1の電極613上には、発光物質を含む層(発光層ともいう)616、および第2の電極617がそれぞれ形成されており、発光素子618を形成している。第1の電極613および第2の電極617の少なくとも一方は透光性を有しており、発光層616からの発光を外部へ取り出すことが可能である。なお、第1の電極613および第2の電極617の両方を透光性を有する材料で形成すれば素子基板610側と封止基板604側の両側から発光を取り出すことのできる両面発光装置として利用することができる。
【0062】
なお、第1の電極613、発光層616、第2の電極617の形成方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)、ホットウォール法等の真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング法、又はMEB法等の物理気相成長法(PVD)や、有機金属CVD法又はハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、ウェット法としてインクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、スキージ法、陽極酸化法、又はゾルーゲル法等を用いることができる。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0063】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0064】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、又は、ポリエステル若しくはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0065】
以上のようにして、本発明の発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0066】
本発明の発光装置は、実施の形態1で示した発光素子を有する。また、2種類以上のハロゲン化合物を添加材料として利用すれば混色もしくは、この混色の組み合わせから白色の素子を作製することができる。
【0067】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3に示す発光装置をその一部に含む本発明の電子機器について説明する。本発明の電子機器は、実施の形態1〜実施の形態3で示した発光素子を有する。
【0068】
本発明の発光装置を用いて作製された電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、又は記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図4(A)〜図4(D)、図5、図6(A)〜図6(C)、図7、図8に示す。
【0069】
図4(A)は本発明に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピーカ部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置において、表示部9103は、実施の形態1〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。そのため混色や白色発光素子である場合には液晶のようにカラーフィルタを形成する必要がある。
【0070】
図4(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングマウス9206等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、実施の形態1〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0071】
図4(C)は本発明に係る携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407、アンテナ9408等を含む。この携帯電話において、表示部9403は、実施の形態1〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0072】
図4(D)は本発明の係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラにおいて、表示部9502は、実施の形態1〜3で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0073】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0074】
また、本発明の発光装置は、混色や白発光を有する発光素子を有しているため、照明装置として用いることもできる。本発明の発光素子を照明装置として用いる一態様を、図5を用いて説明する。
【0075】
図5は、本発明の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図5に示した液晶表示装置は、筐体501、液晶層502、バックライト503、筐体504を有し、液晶層502は、ドライバIC505と接続されている。また、バックライト503は、本発明の発光装置が用いられおり、端子506により、電流が供給されている。
【0076】
本発明の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、無機EL特有の長寿命なバックライトが得られる。また、本発明の発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、発光装置は薄型であるため表示装置の薄型化も可能となる。
【0077】
また、本発明を適用した発光装置は高輝度の発光が可能であるため、自動車、自転車、船などのヘッドライトとして用いることが可能である。図6(A)〜図6(C)は、本発明を適用した発光装置を自動車のヘッドライトとして用いた例である。図6(B)は図6(A)のヘッドライト1000の部分を拡大した断面図である。図6(B)において、光源1011として本発明の発光装置が用いられている。光源1011から出た光は、反射板1012により反射され、外部へ取り出される。図6(B)に示すように、複数の光源を用いることで、より高輝度の光を得ることができる。また、図6(C)は、円筒形状に作製した本発明の発光装置を光源として用いた例である。光源1021からの発光は反射板1022により反射され、外部へ取り出される。
【0078】
図7は、本発明を適用した発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例である。図7に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として、本発明の発光装置が用いられている。本発明の発光装置は、高輝度の発光が可能であるため、細かい作業をする場合など、手元を明るく照らすことが可能である。
【0079】
図8は、本発明を適用した発光装置を、室内の照明装置3001として用いた例である。本発明の発光装置は大面積化が可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、本発明の発光装置は、薄型で低消費電力であるため、薄型化、低消費電力化の照明装置として用いることが可能となる。
【0080】
このように、本発明を適用した発光装置を、室内の照明装置3001として用いた部屋に、図4(A)で説明したような、本発明に係るテレビ装置3002を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。このような場合、両装置は低消費電力であるので、電気料金を心配せずに、明るい部屋で迫力のある映像を鑑賞することができる。
【0081】
照明装置としては、図6(A)〜図6(C)、図7、図8で例示したものに限られず、住宅や公共施設の照明をはじめ、様々な形態の照明装置として応用することができる。このような場合において、本発明に係る照明装置は、発光媒体が薄膜状であるので、デザインの自由度が高いので、様々な意匠を凝らした商品を市場に提供することができる。
【0082】
(実施の形態5)
本実施の形態は、本発明に係る複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、積層型素子という)の態様について、図9を参照して説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。発光ユニットとは実施の形態1〜実施の形態3と同様な構成を持ち、例えば2つの誘電体に挟まれた発光層、一つの誘電体と接した発光層、発光層のみ、もしくは2層以上の発光層である。
【0083】
図9において、第1の電極1401と第2の電極1402との間には、第1の発光ユニット1411と第2の発光ユニット1412が積層されている。第1の電極1401と第2の電極1402は実施の形態1〜実施の形態3と同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット1411と第2の発光ユニット1412は同じ構成である必要はない。
【0084】
電荷発生層1413は、有機化合物と金属酸化物の複合体でもよく、また第3の電極であっても良い。この有機化合物と金属酸化物の複合体は、有機化合物とVやMoOやWO金属酸化物から構成される。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔輸送性有機化合物として正孔移動度が10−6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物と金属酸化物の複合体は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。電極の場合では透明性材料を使用しても良いし、反射性材料を使用しても良い。
【0085】
なお、電荷発生層1413は、有機化合物と金属酸化物の複合体と他の材料とを組み合わせて形成してもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合体を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物と金属酸化物の複合体を含む層と、透明導電膜とを組み合わせて形成してもよい。
【0086】
いずれにしても、第1の発光ユニット1411と第2の発光ユニット1412に挟まれる電荷発生層1413は、第1の電極1401と第2の電極1402に電圧を印加したときに、一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。
【0087】
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電気絶縁性の電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での長寿命素子を実現できる。また、照明を応用例とした場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。また、表示装置に適用する場合には、低電圧駆動が可能で消費電力が低く、コントラストの高い表示装置を実現することができる。
【0088】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0089】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明を適用して作製した発光素子を有する発光装置について説明する。
【0090】
本実施の形態では、発光装置の一態様として表示装置について、図10〜図13を参照して説明する。図10は表示装置の主要部を示す構成図である。
【0091】
基板410には、第1の電極416と、その電極と交差する方向に伸びる第2の電極418が設けられている。少なくとも、第1の電極416と第2の電極418との交差部には、実施の形態1〜5で説明したものと同様なEL層が設けられ、発光素子を形成している。図10の表示装置は、第1の電極416と第2の電極418を複数本配置して、画素となる発光素子をマトリクス状に配列させ、表示部414を形成している。この表示部414は、第1の電極416と第2の電極418の電位を制御して個々の発光素子の発光及び非発光を制御して、動画及び静止画を表示することができる。
【0092】
この表示装置は、基板410の一方向に延設される第1の電極416と、それと交差する第2の電極418のそれぞれに映像を表示する信号を印加して発光素子の発光及び非発光を選択する。すなわち、画素の駆動は、もっぱら外部回路から与えられる信号で行う単純マトリクス型の表示装置である。このような表示装置は、構成が簡単であるので、大面積化をしても容易に製造をすることができる。
【0093】
なお、対向基板412は必要に応じて設ければ良く、表示部414の位置に合わせて設けることで保護部材とすることもできる。これは、板状の硬材としなくても、樹脂フィルム若しくは樹脂材料を塗布して代用することもできる。第1の電極416及び第2の電極418は基板410の端部に引き出され、外部回路と接続する端子を形成している。すなわち第1の電極416及び第2の電極418は基板410の端部で第1及び第2のフレキシブル配線基板420、422とコンタクトとを形成する。外部回路としては、映像信号を制御するコントローラ回路の他、電源回路、チューナ回路などが含まれる。
【0094】
図11は図10における表示部414の構成を示す部分拡大図を示す。基板410に形成された第1の電極416の側端部は隔壁層424が形成されている。そして、少なくとも第1の電極416の露出面上にはEL層426が形成されている。第2の電極418は、EL層426上に設けられている。第2の電極418は第1の電極416と交差するので、隔壁層424上に延設されている。隔壁層424は、第1の電極416と第2の電極418の間で短絡が起こらないように絶縁材料で形成されている。隔壁層424が第1の電極416の端部を覆う部位では、段差が急峻とならないように隔壁層424の側端部に勾配を持たせ、所謂テーパー形状としている。隔壁層424をこのような形状とすることで、EL層426や第2の電極418の被覆性が向上し、ひび割れや断裂などの不良を無くすことができる。
【0095】
図12は図10における表示部414の平面図であり、基板410上に第1の電極416、第2の電極418、隔壁層424、EL層426の配置を示している。補助電極428は第2の電極418を酸化インジウムスズ、酸化亜鉛などの酸化物透明導電膜で形成する場合に、抵抗損失を低減するために設けると好ましいものである。この場合、補助電極428はチタン、タングステン、クロム、タンタルなどの高融点金属、若しくは高融点金属とアルミニウム、銀などの低抵抗金属とを組み合わせて形成すると良い。
【0096】
図12において、A−B線及びC−D線に沿った断面図を図13(A)及び図13(B)に示す。図13(A)は図11における第1の電極416が配列する断面図であり、図13(B)は図11における第2の電極418が配列する断面図を示す。基板410上の第1の電極416と第2の電極418の交差部にはEL層426が形成され、その部位に発光素子が形成される。また基板410と対向基板412の間には、充填材432が設けられている。図13(B)で示す補助電極428は隔壁層424上にあって、第2の電極418と接触するように設けている。補助電極428を隔壁層424上に設けることにより、第1の電極416と第2の電極418の交差部に形成される発光素子を遮光することがないので、発光した光を有効に利用することができる。また、補助電極428が第1の電極416と短絡してしまうことを防ぐことができる。
【0097】
図14(A)〜図14(B)では、図13(A)〜図13(B)の対向基板412に色変換層430を配設した一例を示している。色変換層430は、EL層426で発光した光を波長変換して発光色を異ならせるためのものである。この場合、EL層426で発光する光は、エネルギーの高い青色若しくは紫外光であることが好ましい。色変換層430として、赤色、緑色、青色に変換するものを配列させれば、RGBカラー表示を行う表示装置とすることができる。また、色変換層430を着色層(カラーフィルタ)に置き換えることもできる。その場合は、EL層426は白色発光するように構成すれば良い。充填材432は基板410と対向基板412を固定するものであり適宜設ければ良い。
【0098】
本実施の形態の発光素子を利用した表示装置は、発光素子におけるEL層を薄膜化することにより、発光強度及び素子寿命を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の発光装置を説明する図。
【図3】本発明の発光装置を説明する図。
【図4】本発明の電子機器を説明する図。
【図5】本発明の電子機器を説明する図。
【図6】本発明の電子機器を説明する図。
【図7】本発明の電子機器を説明する図。
【図8】本発明の電子機器を説明する図。
【図9】本発明の発光素子を説明する図
【図10】本発明の発光装置を説明する図。
【図11】本発明の発光装置を説明する図。
【図12】本発明の発光装置を説明する図。
【図13】本発明の発光装置を説明する図。
【図14】本発明の発光装置を説明する図。
【符号の説明】
【0100】
100 基板
101 電極
102 誘電体層
103 発光層
104 誘電体層
105 電極
106 基板
107 電極
108 発光層
109 電極
110 基板
111 電極
112 誘電体層
113 発光層
114 発光層
115 誘電体層
116 電極
410 基板
412 対向基板
414 表示部
416 電極
418 電極
420 基板
422 基板
424 隔壁層
428 補助電極
501 筐体
502 液晶層
503 バックライト
504 筐体
505 ドライバIC
601 ソース側駆動回路
602 画素部
603 ゲート側駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 発光層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 発光層
956 電極
1000 ヘッドライト
1011 光源
1012 反射板
1021 光源
1022 反射板
1401 第1の電極
1402 第2の電極
1411 第1の発光ユニット
1412 第2の発光ユニット
1413 電荷発生層
2001 筐体
2002 光源
3001 室内の照明装置
3002 テレビ装置
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカ部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングマウス
9401 本体
9402 筐体
9403 表示部
9404 音声入力部
9405 音声出力部
9406 操作キー
9407 外部接続ポート
9408 アンテナ
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、前記第1の電極上の発光層と、前記発光層上の第2の電極と、を有し、
前記発光層は、カルコゲン元素と、周期表第2族から第13族に属する元素から選ばれた1種類又は2種類以上の元素と、を含む発光母体と、2種類以上のハロゲン元素と、典型金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素に属する元素から選ばれた1種類又は2種類以上の元素と、を含む発光中心と、を有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
第1の電極と、前記第1の電極上の第1の誘電体膜と、前記第1の誘電体膜上の発光層と、前記発光層上の第2の誘電体膜と、前記第2の誘電体膜上の第2の電極と、を有し、
前記発光層は、カルコゲン元素と、周期表第2族から第13族に属する元素から選ばれた1種類又は2種類以上の元素と、を含む発光母体と、2種類以上のハロゲン元素と、典型金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素に属する元素から選ばれた1種類又は2種類以上の元素と、を含む発光中心と、を有することを特徴とする発光素子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記遷移金属元素は、Cu、Ag、又はAuであることを特徴とする発光素子。
【請求項4】
第1の電極と、前記第1の電極の上方に形成された発光層と、前記発光層の上方に形成された第2の電極と、を有する発光素子であって、
前記発光層は、組成式MXで表される化合物と、アクセプターと、第1及び第2のドナーを有し、
前記Mは、周期表第2族から第13族に属する元素から選ばれた元素であり、
前記Xは、カルコゲン元素であり、
前記アクセプターは、前記Mより低価数のイオンであることを特徴とする発光素子。
【請求項5】
請求項4において、
前記発光層には、前記Mより低価数のイオンであるアクセプターが2種類以上含まれていることを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、
前記第1及び第2のドナーは、前記Xより低価数のイオンであることを特徴とする半発光素子。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項において、
前記Mは、周期表第2族から第13族に属する元素から選ばれた2種類以上の元素を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7のいずれか一項において、
前記化合物MXは、ZnO、ZnS、ZnSe、MgS、CaS、SrS、又はZnMgSであることを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の発光素子を有する発光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の発光装置を用いた照明装置。
【請求項11】
請求項9に記載の発光装置を表示部に用いることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−265982(P2007−265982A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51040(P2007−51040)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】