説明

発光素子の駆動回路およびそれを用いた発光装置、電子機器

【課題】バースト調光の点灯時間が短いときに出力電圧の低下を抑制可能な制御回路を提供する。
【解決手段】位相補償用キャパシタC3の一端の電位は固定される。誤差増幅器22は、LEDストリング6の第2端子に生ずる検出電圧VLEDと所定の基準電圧Vrefの誤差に応じた電流をキャパシタC3に供給する。スイッチSW10aは、誤差増幅器22とキャパシタC3の間に設けられ、バースト調光パルスPWMがアサートされる期間、オンする。パルス生成部20は、キャパシタC3に生ずるフィードバック電圧VFBに応じたデューティ比を有するスイッチングパルス信号Spwmを生成する。フィードバック電圧調節回路50は、バースト調光パルスPWMのパルス幅に応じてオン、オフ状態が切りかえ可能に構成され、そのオン状態においてキャパシタC3に電流を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルのバックライトや照明機器として、LED(発光ダイオード)をはじめとする発光素子を利用した発光装置が利用される。図1は、比較技術に係る発光装置の構成例を示す回路図である。発光装置1003は、複数のLEDストリング1006_1〜1006_nと、スイッチング電源1004と、電流駆動回路1008を備える。
【0003】
各LEDストリング1006は、直列に接続された複数のLEDを含む。スイッチング電源1004は、入力電圧Vinを昇圧してLEDストリング1006_1〜1006_nの一端に駆動電圧Voutを供給する。
【0004】
電流駆動回路1008は、LEDストリング1006_1〜1006_nごとに設けられた電流源CS〜CSを備える。各電流源CSは、対応するLEDストリング1006に、目標輝度に応じた駆動電流ILEDを供給する。
【0005】
スイッチング電源1004は、出力回路1102と、制御IC1100を備える。出力回路1102は、インダクタL1、スイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、出力キャパシタC1を含む。制御IC1100は、LEDストリング1006_1〜1006_nそれぞれのカソード端子に生ずる電圧(検出電圧という)VLED1〜VLEDnのうち最も低いひとつが目標電圧Vrefに近づくように、スイッチングトランジスタM1のオン、オフのデューティ比をフィードバック制御する。その結果、スイッチング電源1004の出力電圧Voutは、(Vref+Vf)に安定化される。Vfは、LEDストリング1006の順方向電圧(電圧降下)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−114324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした発光装置1003において、LEDストリング1006の輝度を調節するために、駆動電流ILEDをPWM(Pulse Width Modulation)制御する場合がある。具体的には、電流駆動回路1008のPWMコントローラ1009は、輝度に応じたデューティ比を有するバースト調光パルスPWM〜PWMを生成し、それぞれに対応する電流源CS〜CSをスイッチング制御する。このような制御を、バースト調光あるいはバースト制御とも称する。
【0008】
本発明者らは、かかる発光装置について検討を行った結果、以下の課題を認識するに至った。
電流源CSがオフする期間つまりLEDストリング1006の消灯期間は、検出電圧VLEDが不定となり、検出電圧VLEDにもとづくフィードバック制御を行うことができない。そこで制御IC1100は、電流源CSがオンする期間、つまりLEDストリング1006の点灯期間における検出電圧VLEDにもとづいて、スイッチングトランジスタM1のオン、オフのデューティ比を調節する。
【0009】
ここでLEDストリング1006の点灯期間が短くなると、フィードバック制御が有効な期間が短くなる。点灯期間がスイッチング電源のスイッチングトランジスタM1のスイッチングパルスと同程度まで短くなると、誤差増幅器によるフィードバックが追従できなくなり、駆動電圧Voutが低下し、点灯期間においてLEDストリング6の輝度が低下し、あるいは発光しなくなる。
【0010】
なお、この認識を本発明の分野における共通の一般知識の範囲として捉えてはならない。さらに言えば、上記検討自体が、本出願人がはじめて想到したものである。
【0011】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、バースト調光の点灯時間が短いときに出力電圧の変動を抑制可能な制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、発光素子の駆動回路に関する。駆動回路は、駆動対象の発光素子の第1端子に駆動電圧を供給するスイッチング電源と、発光素子の第2端子に接続され、バースト調光パルスがアサートされる期間、発光素子に駆動電流を供給する電流ドライバと、を備える。スイッチング電源は、一端の電位が固定されたキャパシタと、発光素子の第2端子に生ずる検出電圧と所定の基準電圧の誤差に応じた電流をキャパシタに供給する誤差増幅器と、誤差増幅器の出力端子とキャパシタの間に設けられ、バースト調光パルスがアサートされる期間、オンするスイッチと、キャパシタに生ずるフィードバック電圧を受け、それに応じたデューティ比を有するスイッチングパルス信号を生成するパルス生成部と、スイッチングパルス信号にもとづき、スイッチング電源のスイッチング素子を駆動するドライバと、バースト調光パルスのパルス幅に応じてオン、オフ状態が切りかえ可能に構成され、オン状態においてキャパシタに電流を供給するフィードバック電圧調節回路と、を備える。
【0013】
この態様によれば、バースト調光パルスのパルス幅が短い場合に、誤差増幅器の応答の遅れによってキャパシタへの電流供給が不足しても、フィードバック調整回路からの電流供給によってキャパシタが充電され、フィードバック電圧が上昇する。その結果、瞬時にスイッチングパルス信号のパルス幅を増大させ、出力電圧を増加させることにより、発光素子を確実に点灯させることができる。
またフィードバック調整回路がオンし続け、キャパシタへの電流供給が持続すると、フィードバック電圧が上昇し続け、出力電圧が上昇してしまう。そこでバースト調光パルスのパルス幅が短い場合には、適切なタイミングにてフィードバック電圧調節回路をオフすることにより、出力電圧の過度の上昇を抑制できる。
【0014】
フィードバック電圧調節回路は、バースト調光パルスのパルス幅があるしきい値より長いときオン状態となり、バースト調光パルスのパルス幅がしきい値より短いとき、バースト調光パルスがアサートされる期間オン状態となり、その後オフ状態となってもよい。
【0015】
ある態様の駆動回路は、検出電圧が所定のしきい値電圧より高いときにアサートされるショート検出信号を生成するショート検出コンパレータをさらに備えてもよい。フィードバック電圧調節回路は、バースト調光パルスがネゲートされるタイミングにおいて、ショート検出信号がアサートされているとき、オフしてもよい。
【0016】
フィードバック電圧調節回路は、その入力端子にショート検出信号が入力され、そのクロック端子にバースト調光パルスの反転信号が入力されるフリップフロップを含んでもよい。フィードバック電圧調節回路は、当該フリップフロップの出力信号に応じてオン、オフ状態が切りかえられてもよい。
【0017】
フィードバック電圧調節回路は、バースト調光パルスがネゲートされる期間にショート検出信号がアサートされると、オンしてもよい。
【0018】
フィードバック電圧調節回路は、バースト調光パルスとショート検出信号の反転信号を受けるNANDゲートと、その入力端子にショート検出信号が入力され、そのクロック端子にバースト調光パルスの反転信号が入力され、そのリセット端子にNANDゲートの出力信号が入力されたフリップフロップを含んでもよい。フィードバック電圧調節回路は、当該フリップフロップの出力信号に応じてオン、オフ状態が切りかえられてもよい。
【0019】
本発明の別の態様は、発光装置である。この装置は、発光素子と、発光素子を駆動する上述のいずれかの態様の駆動回路と、を備える。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、電子機器である。この電子機器は、液晶パネルと、液晶パネルのバックライトとして設けられた上述の発光装置と、を備える。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のある態様によれば、バースト調光の点灯時間が短いときに出力電圧を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】比較技術に係る発光装置の構成例を示す回路図である。
【図2】実施の形態に係る発光装置を備える電子機器の構成を示す回路図である。
【図3】フィードバック電圧調節回路の構成例を示す回路図である。
【図4】図2の制御ICの動作を示すタイムチャートである。
【図5】図2の制御ICの動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図2は、実施の形態に係る発光装置を備える電子機器の構成を示す回路図である。
【0027】
電子機器2は、ノートPC、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)などの電池駆動型の機器であり、発光装置3とLCD(Liquid Crystal Display)パネル5を備える。発光装置3はLCDパネル5のバックライトとして設けられる。
【0028】
発光装置3は、発光素子であるLEDストリング6_1〜6_nと、電流駆動回路8と、スイッチング電源4と、を備える。電流駆動回路8およびスイッチング電源4は、発光ストリングの駆動回路を構成する。
【0029】
各LEDストリング6は、直列に接続された複数のLEDを含む。スイッチング電源4は、昇圧型のDC/DCコンバータであり、入力端子P1に入力された入力電圧(たとえば電池電圧)Vinを昇圧して、出力端子P2から出力電圧(駆動電圧)Voutを出力する。複数のLEDストリング6_1〜6_nそれぞれの一端(アノード)は、出力端子P2に共通に接続される。
【0030】
スイッチング電源4は、制御IC100および出力回路102を備える。出力回路102は、インダクタL1、整流ダイオードD1、スイッチングトランジスタM1、出力キャパシタC1を含む。出力回路102のトポロジーは一般的であるため、説明を省略する。またそのトポロジーにさまざまな変形があることが当業者には理解され、本発明において限定されるものではない。
【0031】
制御IC100のスイッチング端子P4は、スイッチングトランジスタM1のゲートと接続される。制御IC100は、LEDストリング6の点灯に必要な出力電圧Voutが得られるように、フィードバックによりスイッチングトランジスタM1のオン、オフのデューティ比を調節する。なおスイッチングトランジスタM1は制御IC100に内蔵されてもよい。
【0032】
電流駆動回路8は、複数のLEDストリング6_1〜6_nの他端(カソード)と接続される。電流駆動回路8は、LEDストリング6_1〜6_nそれぞれに、目標輝度に応じた間欠的な駆動電流ILED1〜ILEDnを供給する。具体的には電流駆動回路8は、LEDストリング6_1〜6_nごとに設けられた複数の電流源CS〜CSと、PWMコントローラ9を備える。i番目の電流源CSは、対応するi番目のLEDストリング6_iのカソードと接続されている。電流源CSは、PWMコントローラ9から出力されるバースト調光パルスPWMに応じて、駆動電流ILEDiを出力する動作(アクティブ)状態φONと、駆動電流ILEDiを停止する停止状態φOFFが切りかえ可能に構成される。PWMコントローラ9は、目標輝度に応じたデューティ比を有するバースト調光パルスPWM〜PWMを生成し、電流源CS〜CSに出力する。バースト調光パルスPWMがアサート(たとえばハイレベル)される期間(点灯期間TON)、対応する電流源CSは動作状態φONとなり、LEDストリング6_iは点灯する。バースト調光パルスPWMがネゲート(たとえばローレベル)される期間(消灯期間TOFF)、対応する電流源CSは停止状態φOFFとなり、LEDストリング6_iは消灯する。点灯期間TONと消灯期間TOFFの時間比率を制御することにより、LEDストリング6_iに流れる駆動電流ILEDの実効値(時間平均値)が制御され、輝度を調節することができる。電流駆動回路8によるPWM駆動の周波数は数十〜数百Hzである。以下、バースト調光パルスPWM〜PWMは同じタイミングで遷移するものとし、それらをバースト調光パルスPWMと総称する。
【0033】
制御IC100と電流駆動回路8は、単一の半導体チップに集積化されてもよいし、別々のチップに集積化されてもよい。それらは、単一のパッケージ(モジュール)を構成してもよいし、別々のパッケージを構成してもよい。
【0034】
以上が発光装置3全体の構成である。続いて制御IC100の構成を説明する。制御IC100は、LEDストリング6_1〜6_nごとに設けられたLED端子LED〜LEDを備える。各LED端子LEDは、対応するLEDストリング6_iのカソード端子と接続される。なお、LEDストリングは複数である必要はなく、1個であってもよい。
【0035】
制御IC100は、主として誤差増幅器22、第1スイッチSW10a、パルス生成部20、ドライバ28、ショート検出回路60〜60、フィードバック回路70〜70を備える。
【0036】
FB端子と外部の固定電圧端子(接地端子)の間には、位相補償用抵抗R7および位相補償用キャパシタC3が設けられる。
【0037】
フィードバック回路70〜70はそれぞれ、LED端子(チャンネル)ごとに設けられる。i番目のフィードバック回路70は、対応するLED端子の検出電圧VLEDiに応じた電圧VLEDi’を、誤差増幅器22に出力する。具体的には、フィードバック回路70は、抵抗R11、R12を含む分圧回路であり、検出電圧VLEDiを分圧比K1で分圧する。第1スイッチSW11は、対応するチャンネルのバースト調光信号PWMがアサートされる期間(点灯期間)オンし、ネゲートされる期間(消灯期間)においてオフする。また、第iチャンネルの第1スイッチSW11は、そのチャンネルがフィードバックの対象から除外されるときにはオフとなる。たとえば第1スイッチSW11は、バースト調光信号PWMに応じて制御されるNチャンネルMOSFETである。第2スイッチSW12は、そのチャンネルがフィードバックの対象から除外すべきときにはオンとなり、検出電圧VLEDi’をたとえば電源電圧VDDにプルアップする。これにより、そのチャンネルの検出電圧VLEDi’を、他のチャンネルの検出電圧VLEDj’(j≠i)よりも高くすることができ、フィードバックから除外できる。なお、検出電圧の分圧は、本質的な処理ではないため、以下の説明では、特に必要が無い限り、VLED’とVLEDを区別しない。たとえば第2スイッチSW12は、バースト調光信号PWMに応じて制御されるPチャンネルMOSFETである。
【0038】
誤差増幅器22はいわゆるgm(トランスコンダクタンス)アンプであって、LEDストリング6の点灯期間において、検出電圧VLEDと基準電圧Vrefの誤差に応じた電流を生成し、FB端子に供給する。FB端子には、検出電圧VLEDと基準電圧Vrefの誤差に応じたフィードバック電圧VFBが発生する。
【0039】
具体的には誤差増幅器22は、複数の反転入力端子(−)と、ひとつの非反転入力端子(+)を有する。複数の反転入力端子にはそれぞれ、検出電圧VLED1〜VLEDnが入力され、非反転入力端子には基準電圧Vrefが入力される。誤差増幅器22は、最も低い検出電圧VLEDと基準電圧Vrefの誤差に応じた電流を出力する。
【0040】
第1スイッチSW10aは、誤差増幅器22の出力端子とFB端子の間に設けられる。第1スイッチSW10aは、バースト調光パルスPWMがアサートされる期間、つまり点灯期間TONにオンし、ネゲートされる期間つまり消灯期間TOFFにオフする。複数の電流源CS〜CSに対するバースト調光パルスPWM〜PWMの位相がシフトしている場合、少なくともひとつのバースト調光パルスPWMがアサートされる期間、第1スイッチSW10aはオンする。
【0041】
パルス生成部20は、たとえばパルス幅変調器であり、FB端子に生ずる電圧VFBを受け、それに応じたデューティ比を有するスイッチングパルス信号Spwmを生成する。具体的にはフィードバック電圧VFBが高いほどスイッチングパルス信号Spwmのデューティ比は大きくなる。
パルス生成部20は、オシレータ24、PWMコンパレータ26を含む。オシレータ24は、三角波もしくはのこぎり波の周期電圧Voscを生成する。
【0042】
PWMコンパレータ26はフィードバック電圧VFBを周期電圧Voscと比較し、比較結果に応じたレベルを有するPWM信号Spwmを生成する。なお、パルス生成部20としてパルス周波数変調器などを用いてもよい。PWM信号Spwmの周波数は、電流駆動回路8によるPWM駆動の周波数に比べて十分に高く、数百kHz(たとえば600kHz)である。
【0043】
ドライバ28は、スイッチングパルス信号Spwmにもとづき、スイッチング電源4のスイッチングトランジスタM1を駆動する。
【0044】
ショート検出回路60〜60は、LEDストリング6_1〜6_nのチャンネルごとに設けられ、同様に構成される。ショート検出回路60は、点灯期間TONにおけるLED端子の検出電圧VLEDiが、所定のしきい値電圧VTHより高いときアサートされるショート検出信号LSPiCHを生成する。消灯期間TOFFでは、ショート検出は無効化される。
【0045】
ショート検出回路60は、ショート検出コンパレータ62、抵抗R1、R2、トランジスタ63を含む。
LED端子の検出電圧VLEDiは、抵抗R1、R2によって分圧される。R1=2.4MΩ、R2=0.6MΩのとき、分圧比β=1/5である。トランジスタ63は、バースト調光パルスPWMと同期制御され、点灯期間TONにおいてオン、消灯期間TOFFにおいてオフする。ショート検出コンパレータ62は、点灯期間TONにおいて、抵抗R1、R2によって分圧された検出電圧VLEDi’を、しきい値電圧VTH’と比較し、VLEDi’>VTH’のときハイレベル(アサート)となるショート検出信号LSPiCHを出力する。VTH’=VTH×βが成り立つ。
【0046】
フィードバック電圧調節回路50は、バースト調光パルスPWMのパルス幅に応じてオン、オフ状態が切りかえ可能に構成され、オン状態において位相補償用キャパシタC3に電流Icを供給し、オフ状態において位相補償用キャパシタC3への電流供給を停止する。
【0047】
フィードバック電圧調節回路50は、バースト調光信号PWMのパルス幅があるしきい値より長いときには点灯期間、消灯期間ともにオン状態となる。またフィードバック電圧調節回路50は、バースト調光信号PWMのパルス幅がしきい値より短いときには、点灯期間の終了後にオフする。
【0048】
フィードバック電圧調節回路50がオン状態において電流Icを注入することにより、スイッチングトランジスタM1のオン時間が長くなるように、フィードバック電圧VFBを変化させる。具体的にはフィードバック電圧調節回路50は、オン状態においてフィードバック電圧Vfbを上昇させることにより、スイッチングトランジスタM1のオン時間を長くする。
【0049】
注入電流Icは、誤差増幅器22のソース電流、シンク電流より小さいことが望ましく、たとえばソース電流、シンク電流が最大で100μAのとき、フィードバック電圧調節回路50の注入電流Icは1μA程度が好ましい。
【0050】
具体的には、フィードバック電圧調節回路50は、以下の条件を満たすときに、オンからオフに遷移する。i番目のチャンネルの検出電圧VLEDiがフィードバックされているとする。このときフィードバック電圧調節回路50は、バースト調光パルスPWMがアサートからネゲートに遷移するタイミングにおいて、ショート検出信号LSPiCHがアサートされているときにオフとなる。
【0051】
その後、フィードバック電圧調節回路50は、バースト調光パルスPWMがネゲートされる期間にショート検出信号LSPiCHがアサートされると、オンとなる。
【0052】
図3は、フィードバック電圧調節回路50の構成例を示す回路図である。フィードバック電圧調節回路50は、フリップフロップ52、NANDゲート54、電流源56、スイッチ58、ORゲート59を備える。
【0053】
電流源56は、位相補償用キャパシタC3に供給すべき電流Icを生成する。電流Icはたとえば1μA程度である。スイッチ58は電流Icの経路上に設けられ、スイッチ58のオン・オフが、フィードバック電圧調節回路50のオン・オフと対応付けられる。電流Icが位相補償用キャパシタC3に流れ込むことにより、フィードバック電圧VFBが上昇する。
【0054】
フリップフロップ52およびNANDゲート54は、LEDストリング6のチャンネルごとに設けられる。i番目のフリップフロップ52の入力端子Dには、ショート検出信号LSPiCHが入力され、そのクロック端子にはバースト調光パルスPWMの反転信号PWM#が入力される。図面において、論理反転はバーで示される。
【0055】
NANDゲート54は、バースト調光パルスPWMとショート検出信号LSPiCH#の反転信号の否定論理積(NAND)を生成する。NANDゲート54の出力信号は、フリップフロップ52のリセット端子に入力される。
【0056】
ORゲート59は、各チャンネルのフリップフロップ52の出力信号Q〜Qの論理和を生成し、論理和に応じてスイッチ58に供給する。スイッチ58は、ORゲート59の出力信号がローレベルのときオンし、ORゲート59の出力信号がハイレベルのときオフとなる。
【0057】
以上が制御IC100の構成である。続いてその動作を説明する。図4は、バースト調光パルスPWMのパルス幅がある程度長い場合のタイムチャートを、図5は、バースト調光パルスPWMのパルス幅が短い場合のタイムチャートを示す。
【0058】
まず図4を参照する。いま、ある程度長いパルス幅を有するバースト調光パルスPWMが繰り返し生成されている。理解の容易と説明の簡略のため、第1チャンネルのみに着目して説明する。
【0059】
時刻t0以前、バースト調光パルスPWMはローレベルであるから電流源CSはオフであり、LEDストリング6_1は消灯状態である。このときトランジスタ63がオフしてショート検出が無効化され、検出電圧VLED1’はローレベル(接地電圧)にプルダウンされるため、LSP1CHはローレベルである。
【0060】
時刻t0にバースト調光パルスPWMがハイレベルに遷移すると、電流源CSがオンし、LEDストリング6_1に駆動電流が流れ始め、LEDストリング6_1の電圧降下Vfがゼロから徐々に増大する。検出電圧VLED1は、
LED1=Vout−Vf
で与えられるから、時間とともに次第に低下していく。バースト調光パルスPWMがハイレベルに遷移した直後、VLED1’>VTH’が成り立つため、ショート検出信号LSP1CHはハイレベルとなる。時刻t1に、検出電圧VLED1’がしきい値電圧VTH’より低くなると、ショート検出信号LSP1CHはローレベルに遷移し、その後ローレベルを持続する。
【0061】
時刻t2にバースト調光信号PWMがローレベルに遷移したタイミングにおいて、反転されたショート検出信号LSP1CH#はローレベルであるから、フリップフロップ52の出力信号Q1はローレベルであり、次にバースト調光信号PWMがハイレベルに遷移する時刻t3までの消灯期間TOFF、出力信号Q1はローレベルとなる。
【0062】
時刻t0〜t3の動作が繰り返され、スイッチ58の制御信号はローレベルを維持するため、スイッチ58つまりフィードバック電圧調節回路50はオンし続け、位相補償用キャパシタC3には、注入電流Icが供給され続ける。このように、バースト調光信号PWMのパルス幅がある程度長いときには、フィードバック電圧調節回路50はオン状態となる。誤差増幅器22の電流能力は、フィードバック電圧調節回路50の注入電流Icよりも十分大きいため、注入電流Icの影響をほとんどない。
【0063】
続いて図5を参照する。時刻t0にバースト調光パルスPWMがハイレベルに遷移し、検出電圧VLED1が時間とともに次第に低下していく。バースト調光信号PWMのパルス幅が短くなると、検出電圧VLED1がしきい値電圧VTHより低くなる前に、つまりショート検出信号LSP1CHがローレベルに遷移する前に、バースト調光信号PWMがローレベルに遷移する(時刻t1)。したがってフリップフロップ52の出力信号Q1がハイレベルとなる。
【0064】
ここで図2の制御IC100の効果を明確とするため、フィードバック電圧調節回路50が存在しない場合の動作を説明する。
バースト調光パルスPWMのパルス幅が短いと、誤差増幅器22の応答が遅れるため、誤差増幅器22から位相補償用キャパシタC3への電流供給が不十分となり、フィードバック電圧VFBが低下する。その結果、スイッチングパルス信号Spwmのオン時間が短くなり、駆動電圧Voutが低下してしまう。駆動電圧Voutが低下すると、LEDストリング6が発光しなくなる。
【0065】
続いてフィードバック電圧調節回路50を設けた場合の動作を説明する。誤差増幅器22の応答が遅れ、誤差増幅器22から位相補償用キャパシタC3への電流供給が不足した場合であっても、フィードバック電圧調節回路50から位相補償用キャパシタC3に対して注入電流Icが供給されるため、フィードバック電圧VFBの低下を抑制もしくは上昇させることができ、スイッチングパルス信号Spwmのオン時間が長くなる。その結果、駆動電圧Voutの低下を抑制することができ、LEDストリング6を発光させることができる。
【0066】
ただし、その後の消灯期間TOFFにおいて、電流Icが位相補償用キャパシタC3に供給され続けると、フィードバック電圧VFBが上昇し続け、出力電圧Voutが高くなりすぎる。バースト調光パルスPWMのパルス幅が短い場合には、消灯期間TOFFに遷移した後に電流Icを遮断することにより、出力電圧Voutの上昇を抑制することができる。
【0067】
このように、実施の形態に係る制御IC100によれば、誤差増幅器22の応答速度の遅れによる出力電圧の低下を抑制することができ、LEDストリング6を発光させることができる。
【0068】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセス、それらの組み合わせには、さまざまな変形例が存在しうる。以下、こうした変形例について説明する。
【0069】
実施の形態ではインダクタを用いた非絶縁型のスイッチング電源を説明したが、本発明はトランスを用いた絶縁型のスイッチング電源にも適用可能である。
【0070】
実施の形態では、発光装置3のアプリケーションとして電子機器を説明したが、用途は特に限定されず、照明などにも利用できる。
【0071】
また、本実施の形態において、ハイレベル、ローレベル、アサート、ネゲートの論理信号の設定は一例であって、インバータなどによって適宜反転させることにより自由に変更することが可能である。
【0072】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0073】
2…電子機器、3…発光装置、4…スイッチング電源、5…LCDパネル、6…LEDストリング、8…電流駆動回路、9…PWMコントローラ、100…制御IC、102…出力回路、19…パルス変調器、20…パルス幅変調器、22…誤差増幅器、24…オシレータ、26…PWMコンパレータ、28…ドライバ、C3…位相補償用キャパシタ、R7…位相補償用抵抗、SW10a…第1スイッチ、40…ソフトオフ回路、C4…ソフトオフ用キャパシタ、42…放電回路、44…電流源、M6…スイッチ、C2…キャパシタ、M2,M3…トランジスタ、L1…インダクタ、C1…出力キャパシタ、D1…整流ダイオード、M1…スイッチングトランジスタ、50…フィードバック電圧調節回路、52…フリップフロップ、54…NANDゲート、56…電流源、58…スイッチ、59…ORゲート、60…ショート検出回路、62…ショート検出コンパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象の発光素子の第1端子に駆動電圧を供給するスイッチング電源と、
前記発光素子の第2端子に接続され、バースト調光パルスがアサートされる期間、前記発光素子に駆動電流を供給する電流ドライバと、
を備え、
前記スイッチング電源は、
一端の電位が固定されたキャパシタと、
前記発光素子の第2端子に生ずる検出電圧と所定の基準電圧の誤差に応じた電流を前記キャパシタに供給する誤差増幅器と、
前記誤差増幅器の出力端子と前記キャパシタの間に設けられ、前記バースト調光パルスがアサートされる期間、オンするスイッチと、
前記キャパシタに生ずるフィードバック電圧を受け、それに応じたデューティ比を有するスイッチングパルス信号を生成するパルス生成部と、
前記スイッチングパルス信号にもとづき、前記スイッチング電源のスイッチング素子を駆動するドライバと、
前記バースト調光パルスのパルス幅に応じてオン、オフ状態が切りかえ可能に構成され、オン状態において、前記キャパシタに電流を供給するフィードバック電圧調節回路と、
を備えることを特徴とする発光素子の駆動回路。
【請求項2】
前記フィードバック電圧調節回路は、前記バースト調光パルスのパルス幅があるしきい値より長いときオン状態となり、前記バースト調光パルスのパルス幅が前記しきい値より短いとき、バースト調光パルスがアサートされる期間オンとなり、その後オフとなることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記検出電圧が所定のしきい値電圧より高いときにアサートされるショート検出信号を生成するショート検出コンパレータをさらに備え、
前記フィードバック電圧調節回路は、
前記バースト調光パルスがネゲートされるタイミングにおいて、前記ショート検出信号がアサートされているとき、オフすることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記フィードバック電圧調節回路は、
その入力端子に前記ショート検出信号が入力され、そのクロック端子に前記バースト調光パルスの反転信号が入力されるフリップフロップを含み、
当該フリップフロップの出力信号に応じてオン、オフ状態が切りかえられることを特徴とする請求項3に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記フィードバック電圧調節回路は、前記バースト調光パルスがネゲートされる期間に前記ショート検出信号がアサートされると、オンすることを特徴とする請求項3または4に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記フィードバック電圧調節回路は、
前記バースト調光パルスと前記ショート検出信号の反転信号を受けるNANDゲートと、
その入力端子に前記ショート検出信号が入力され、そのクロック端子に前記バースト調光パルスの反転信号が入力され、そのリセット端子に前記NANDゲートの出力信号が入力されたフリップフロップを含み、
当該フリップフロップの出力信号に応じてオン、オフ状態が切りかえられることを特徴とする請求項3に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記フィードバック電圧調節回路は、
オン状態において前記キャパシタに電流を供給する電流源を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項8】
発光素子と、
前記発光素子を駆動する請求項1から7のいずれかに記載の駆動回路と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
液晶パネルと、
前記液晶パネルのバックライトとして設けられた請求項8に記載の発光装置と、
を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−124120(P2012−124120A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275970(P2010−275970)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】