説明

発光素子を用いた照明装置

【課題】温かみのある白色を発光する白色発光ダイオードを用いた照明装置、多様な色調
の発光に応ぜられる中間色発光ダイオードを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】青紫色または青色で発光する半導体発光素子と、該半導体発光素子を載置す
るための凹部を備えかつ凹部の斜面は可視波長域光線反射面として構成された支持部材と
、該半導体発光素子に電力を供給するための端子と、該発光素子からの発光の一部または
全部を吸収し異なる波長の蛍光を発する蛍光物質とを少なくとも含み、該蛍光物質は少な
くとも緑色・黄緑色・黄色のいずれかで発光する第一の蛍光物質と、黄赤色・赤色のいず
れかで発光する第二の蛍光物質のいずれか一方を少なくとも含む発光デバイスを、1個以
上含む光源ユニットを、3ユニット以上含む照明装置であって、該発光デバイスにおける
第一の蛍光物質と第二の蛍光物質との配合比が光源ユニットごとにあるいは発光デバイス
ごとに異なっており、部位によって発光色が異なって視認されるようにしたことを特徴と
する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用高輝度白色発光ダイオード、特殊装飾照明用中間色発光ダイオードを
用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色発光ダイオード素子と青色吸収黄色発光蛍光体とを組み合わせた白色発光ダ
イオードが盛んに研究され、特許文献を始め各種文献において提案、発表されている(例
えば、非特許文献1、特許文献1ないし5参照のこと)。最近では、前記組み合わせによ
る照明器具、照明機器、照明装置が実用に供されている。
【0003】
その中でも特によく用いられている蛍光体として、一般式(Y,Gd)(Al,Ga
12:Ce3+で表され、セリウムで付活してなるイットリウム・アルミニウム・
ガーネット系蛍光体が知られている。しかしながら、青色発光ダイオード素子とイットリ
ウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とから成る白色発光ダイオードは赤色成分の不
足から青白い発光となる特徴を有し、演色性に偏りがみられるという問題があった。
【0004】
一方、照明技術は、その用途や使用態様、ニーズは多様化しており、前示発光ダイオー
ドを利用した照明技術においても色温度の高い白色だけではなく、従来の通常の照明器具
にみられる各種の色温度の白色を実現することを始め、多様な色調設計が求められている
。例えば、電球色と呼ばれる温かみのある白色を達成した白色発光ダイオードが求められ
ている。このような背景から、2種の蛍光体を混合・分散させることによりイットリウム
・アルミニウム・ガーネット系蛍光体では不足している赤色成分を別の赤色蛍光体で補う
白色発光ダイオードが検討されている。
【0005】
このような白色発光ダイオードが、特許文献4(「白色発光素子」)、特許文献5(「
窒化物蛍光体及びその製造方法」)等において提案されている。しかしながら、これらの
提案による発明においても前記課題が充分に達成されるとは言えず、多様な色彩や色度を
もとめるニーズに対して充分に応えられる状況には遠く、また、発光強度の点でも不充分
であり、改善すべき問題を含んでいるものであった。すなわち、特許文献4に記載された
発明は、使用する赤色蛍光体がCdすなわちカドミウム元素を含有してなる点で難のある
ものであった。近年、環境汚染の懸念から、カドミウム及びカドミウムを含む化合物は、
これを使用から外し、カドミウムを含有しない物質で代替することが行なわれている。こ
のような配慮は蛍光物質の設計においても同様の取り組みをすることが望ましいと考えら
れ、これを使用することは好ましいとは言えない。
【0006】
さらに特許文献5に記載の、Ca1.97Si:Eu0.03を代表例とする赤
色発光蛍光体は、カドミウム等環境汚染の懸念のある元素を含まない点では問題ないが、
その発光強度は不十分であり、さらなる改善が望まれているものであった。しかも、これ
ら特許文献4、5に記載された技術思想は、専ら白色の実現についてのみ言及されている
にすぎないものであった。照明技術は、その用途が多様であることは前述したとおりであ
り、装飾効果も求められている。そのため多彩な色調、色合いが求められており、そのた
め色調を調製実現する各種光源が必要とされている。すなわち、白色発光ダイオードだけ
ではこのようなニーズ応えることができず、さらに各種中間色の発光ダイオードの実現が
望まれていた。加えて、色調表現を充分にするためには、極力所望とする色調に、色度範
囲を広げることが望まれていた。
【0007】
【非特許文献1】M.Yamada et al.、Jpn.J.Appl.Phys.、vol.42(2003)、pp.L20−23
【特許文献1】特許第2900928号明細書
【特許文献2】特許第2927279号明細書
【特許文献3】特許第3364229号明細書
【特許文献4】特開平10−163535号公報
【特許文献5】特開2003−321675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上述べた従来技術においては、多様な色調、色度、発光強度等の点で、さ
らには環境に悪影響を与える点で不都合のあるものであったところから、このような問題
の無い発光ダイオード、温かみのある白色を発光する白色発光ダイオードを用いた照明装
置、多様な色調の発光に応ぜられる中間色発光ダイオードを用いた照明装置を提供しよう
というものである。さらに詳細に述べると、本発明は、照明装置とするために、環境汚染
のおそれのない成分からなる発光効率の高い新規な赤色蛍光体を材料設計し、これを青色
発光ダイオードと組み合わせ、採用することによって、温かみのある白色を発光し、高効
率で発光する白色発光ダイオードを提供しようというものである。また、広い色度範囲か
ら任意に発光色を選択可能とする中間色発光ダイオードを提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、本発明者らにおいては、鋭意研究した結果、本発明者らが先に開発し、特許
出願(特願2003−394855)した発明に係る蛍光体、すなわち、CaAlSiN
結晶相中にMn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、T
m、Yb、Luから選ばれる1種または2種以上の元素を固溶してなる、黄赤色・赤色の
いずれかで発光する蛍光物質を使用し、この蛍光体にさらに緑色・黄緑色・黄色のいずれ
かで発光する蛍光物質を所定割合混合し、この混合した蛍光体に対して青紫色または青色
で発光する半導体発光素子を組み合わせ、該混合した蛍光体を該半導体素子近傍に実装し
、半導体発光素子に通電し発光させることによって高効率で温かみのある白色を発光する
白色発光ダイオード、あるいは、広い色度範囲から任意の選択可能な色調の光を発光する
ダイオード、いわゆる中間色発光ダイオードを作製し、これらを用いた照明装置を提供す
るのに成功したものである。
【0010】
本発明は上記した成功と知見に基づいてなされたものであり、その講じた技術的事項は
以下(1)ないし(3)に記載するとおりである。これによって前記課題を解決するのに
成功した。
【0011】
(1) 青紫色または青色で発光する半導体発光素子と、該半導体発光素子を載置するた
めの凹部を備えかつ凹部の斜面は可視波長域光線反射面として構成された支持部材と、該
半導体発光素子に電力を供給するための端子と、該発光素子からの発光の一部または全部
を吸収し異なる波長の蛍光を発する蛍光物質とを少なくとも含み、該蛍光物質は少なくと
も緑色・黄緑色・黄色のいずれかで発光する第一の蛍光物質と、黄赤色・赤色のいずれか
で発光する第二の蛍光物質のいずれか一方を少なくとも含む発光デバイスを、1個以上含
む光源ユニットを、3ユニット以上含む照明装置であって、該発光デバイスにおける第一
の蛍光物質と第二の蛍光物質との配合比が光源ユニットごとにあるいは発光デバイスごと
に異なっており、部位によって発光色が異なって視認されるようにしたことを特徴とする
照明装置。
【0012】
(2) それぞれの光源ユニットには散乱要素を含む導光部材が光学的に接続されている
ことを特徴とする前記(1)項に記載の照明装置。
(3) 該散乱要素は気泡から成り、該導光部材は透明樹脂製の棒状部材であることを特
徴とする前記(2)項に記載の照明装置。
【発明の効果】
【0013】
以上の特徴は、CaAlSiN結晶相中にMn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、G
d、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる1種または2種以上の元素
を固溶せしめてなる、黄赤色・赤色のいずれかで発光する蛍光物質を使用し、これを緑色
・黄緑色・黄色のいずれかで発光する蛍光物質と混合し、この混合蛍光体を青紫色または
青色で発光する半導体発光素子と組み合わせたところにあり、この構成によって、温かみ
のある白色を高効率で発光する白色発光ダイオードを作製するのに成功したものであり、
奏せられる効果は極めて大きい。
【0014】
さらにまた本発明は、前記構成によって、任意の色調を可能とし、中間色を発光する中
間色発光ダイオードを作製、提供するのに成功したもので、その意義もまた、極めて大き
い。これにより、従来公知の赤色蛍光体を用いた場合よりも色度範囲が広く演色性に優れ
たものを達成することができる等格別の効果が奏せられ、今後装飾用を始め各種用途に大
いに利用され、照明技術を通じて広く産業の発展に大いに寄与するものと期待される。
【0015】
さらにこの発光ダイオードの高い発光効率から、今後省エネルギー型照明器具の実現に
直結し、格別の効果が奏せられるものと期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面、実施例等によって具体的に説明する。本明細書中において、「黄
赤色・赤色のいずれかで発光する第二の蛍光物質」あるいは「CaAlSiN結晶相中
にMn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、
Luから選ばれる1種または2種以上の元素が固溶してなる」第二の蛍光物質とは、本発
明者らの開発によるものであって、すでに特許出願(特願2003−394855)され
ているものである。すなわち、この「黄赤色・赤色のいずれかで発光する」、「CaAl
SiN結晶相中にMn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、E
r、Tm、Yb、Luから選ばれる1種または2種以上の元素が固溶してなる」第二の蛍
光物質は、上記先の特許出願にその製造方法を開示したことによって容易に入手方法を明
らかにしているが、この点は、本明細書においても後述実施例において、前記先行出願と
同様、具体的にその製造方法、調製方法を容易に取得可能に開示し、明らかにしている。
【0017】
以下に、本発明を実施例および図面に基づいて具体的に説明するが、ただし、これらの
実施例は、あくまでも本発明を容易に理解するための一助として示すものであって本発明
を限定する趣旨ではない。
【0018】
まず、本発明の発光ダイオードランプの構造と作動原理について簡単に説明する。半導
体青色発光ダイオード素子を用意し、この半導体発光ダイオード素子を図4に模式的に示
すように凹部構造の支持部材に載置し、外部から電力を供給するための少なくとも2つの
導電路を接続し、この上を透明樹脂に分散し、前記青色発光ダイオード素子から発せられ
た光を吸収して緑色、および赤色等異なる波長の蛍光を発する第1および第2の蛍光体を
被覆し、実装する。この図4に示される発光ダイオードランプは、その外観形状から砲弾
型と称されるものである。
【0019】
図1は、上記作製した発光ダイオードランプに通電し、発光させた場合の発光スペクト
ルを示すCIEのXYZ表色系の色度図(JISZ8701参照)である。この図におい
て、B点(▲)は、青色発光ダイオード素子の発光の色度座標である。G点(●)は、青
色光で励起され緑色の発光を示す第一の蛍光物質の色度座標である。R点(◆)は、青色
光で励起され赤色の発光を示す第二の蛍光物質の色度座標である。因みに特許文献4では
、この青・緑・赤の混合により(x,y)が0.21≦x≦0.48、0.19≦y≦0
.45の範囲の白色を得る技術について開示しているが、実際には特許文献4の技術によ
りB、G、Rの3座標点を結んで形成される三角形の内側の任意の中間色の発光を得るこ
とが可能である。
【0020】
本発明では、上記発光スペクトルに説明した原理により各種の白色及び多彩な中間色の
発光ダイオードを達成することができる。なお、本発明の特徴は、実質的には第二の蛍光
物質に新規な材料を用いたことによって、高輝度発光が可能となったものである。この第
二の蛍光物質は、本発明者らの発明による先の特許出願(特願2003−394855)
に係るものであり、Euで付活させたCaAlSiN3結晶からなる新規蛍光物質である
。この第二の新規蛍光物質は従来公知の青色励起赤色発光蛍光物質と比較して高輝度であ
り、またより長波長での発光を示す材料である。図2及び図3に、その発光スペクトルと
励起スペクトルを示す。
【0021】
青色・緑色・赤色の混合により任意の中間色を実現するにあたり、JIS Z8110
の系統色名の一般的な色度区分を用いて説明する。青色としては、青紫色あるいは青色の
範囲の光源が望ましい。単色光源とするならば波長範囲にして380nm乃至485nm
である。三角形の面積を広くして達成可能な色度範囲を広くする観点からは短波長である
ことが望ましいようにも考えられるが、実際には比視感度特性の問題から長波長のものの
方が人間にとって明るく感じられるので、そのことも考慮に入れ波長を決定することにな
る。
【0022】
後述する実施例では、市販されている入手の容易な青色発光ダイオード素子の中から発
光中心波長460nmのものを採用した。緑色としては、波長495nm乃至550nm
の緑色の範囲の蛍光物資が望ましいが、任意の中間色ではなく、温かみのある白色のみを
実現しようとする実施態様においては、波長550nm乃至585nmの黄緑色あるいは
黄色の範囲で発光する蛍光物質であっても良い。後述する実施例では、従来公知のイット
リウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体粉末を採用した。
【0023】
赤色については、波長610nm乃至780nmの赤色の範囲で発光する蛍光物質が望
ましいが、波長585nm乃至610nmの黄赤色であっても良い。本発明では赤色蛍光
体としてEuで付活させたCaAlSiN結晶の新規物質からなる蛍光体粉末を採用し
た(その取得方法については後述実施例において明らかにする)。従来は青色励起で十分
な輝度を示す良い赤色蛍光物質がなかった。
【0024】
特許文献4では、図1のRで示された色度座標も、黄赤であるかあるいは黄赤と赤との
境界付近の色度である。また、特許文献5では、例えばその実施例1はx=0.583、
y=0.406であり、これらもやはり黄赤色である。Euで付活させたCaAlSiN
結晶では、高輝度であるうえに、その発光色度も従来に無い長波長の発光による赤色と
なっており、本件実施例の場合にはx=0.670、y=0.327である。
【0025】
該蛍光物質を使用して製作した本発明の温かみのある白色発光ダイオードは、従来技術
により作製した場合と比較して高輝度である。また、該蛍光物質を使用して製作した本発
明の中間色発光ダイオードは従来の技術により製作した場合に比して、高輝度であると同
時に表現可能な色度範囲が広くなっている。このように、本発明は明らかに新規性と進歩
性とを有する。なお、演色性向上のために蛍光物質は3種類以上を混合しても良い。
以下、本発明をさらに実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0026】
〔赤色蛍光体の準備〕
先ず、使用する赤色蛍光体は、先の出願に係る特願2003−394855に記載のC
aAlSiN結晶相を主体とする窒化物蛍光体粉末を使用した。その調製方法は、以下
のとおりである。原料粉末は、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含
有量92%の窒化ケイ素粉末、比表面積3.3m2/g、酸素含有量0.79%の窒化ア
ルミニウム粉末、窒化カルシウム粉末、金属ユーロピュウムをアンモニア中で窒化して合
成した窒化ユーロピュウムを用いた。組成式Eu0.0005Ca0.9995AlSi
で示される組成が得られるように、窒化ケイ素粉末34.0735重量%と窒化アル
ミニウム粉末29.8705重量%、窒化カルシウム粉末35.9956重量%、窒化ユ
ーロピュウム粉末0.06048重量%をそれぞれ秤量し、メノウ乳棒と乳棒で30分間
混合を行ない、得られた混合物を、金型を用いて20MPaの圧力を加えて成形し、直径
12mm、厚さ5mmの成形体とした。
【0027】
なお、粉末の秤量、混合、成形の各工程は全て、水分1ppm以下酸素1ppm以下の
窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中で操作を行った。この成形体は窒
化ホウ素製のるつぼに入れて黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成の操作は、ま
ず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度
で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、
毎時500℃で1800℃まで昇温し、1800℃で2時間保持して行った。焼成後、得
られた焼結体をメノウの乳棒と乳鉢を用いて粉末に粉砕し、CuのKα線を用いた粉末X
線回折測定を行ったところ、得られたチャートからCaAlSiN結晶相であることが
確認された。この粉末を、日立製作所製分光蛍光光度計F−4500で測定し、図2に示
す発光スペクトル及び図3に示す励起スペクトルを得た。
【0028】
光度計は、ローダミンBを参照試料として励起補正を実施し、しかる後に米国NIST
に準拠した標準光源を用いて校正した。発光スペクトルの測定にあたっては、実施例にて
用いた青色発光ダイオード素子の発光中心波長と同じ460nmを励起波長とした。発光
スペクトルは図2に示すように653nmが発光ピーク波長となるブロードなものであっ
た。図2の発光スペクトルから求めたCIEのXYZ表色系色度図上の色度座標はx=0
.670、y=0.327であり、主波長(ドミナント波長)は612nmであった。こ
れは、JIS Z8110の参考付図1系統色名の一般的な色度区分で「赤」の範囲であ
る。
【0029】
図2で、従来公知のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の発光スペクト
ルとの比較からも明らかなように、このCaAlSiN3結晶相にEuを固溶させた赤色
蛍光体は、波長460nmの青色光の励起でかつてない高輝度の赤色発光を示した。図3
の励起スペクトルは、発光ピーク波長である653nmを発光モニタ波長として測定した
ものである。460nm付近を中心に大変広い波長範囲で高効率に励起できることがわか
る。
【0030】
〔緑色蛍光体の準備〕
従来公知のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体であって、CRT用の緑
色蛍光体として市販のものを用いた。校正したF−4500で測定した発光スペクトルを
図2に、励起スペクトルを図3に示す。発光スペクトルは励起波長460nmで測定した
ものであり、543nmが発光ピーク波長となるブロードなものであった。図2の発光ス
ペクトルから求めた色度座標はx=0.422、y=0.547であり、主波長563n
mであった。これは、系統色名の一般的な色度区分で「黄緑」の範囲である。図3の励起
スペクトルは、発光ピーク波長である543nmを発光モニタ波長として測定したもので
ある。なお、緑色蛍光体は、青色で励起され緑・黄緑・黄のいずれかの色で発光するもの
であればこれに限られるものではない。
【0031】
〔青色発光素子の準備〕
青色発光素子には、発光中心波長460nmである市販の青色発光ダイオード素子を用
いた。ここで使用したものは炭化ケイ素を基板とするInGaN半導体発光ダイオード素
子で、両面に電極がある形状のものである。なお、青色発光素子は、サファイアを基板と
し片面に2つの電極を有する形状の発光ダイオード素子であっても良い。また、青色で発
光し各蛍光体を励起可能なものであれば、発光ダイオード以外の発光素子であっても良い

【0032】
以上の準備の後、本発明による白色発光ダイオードを設計構造と製作プロセスに基づい
て具体的に示す。
【0033】
実施例1;
図4に示すいわゆる砲弾型白色発光ダイオードランプ(1)を製作した。
2本のリードワイヤ(2、3)があり、そのうち1本(2)には、凹部があり、青色発
光ダイオード素子(4)が載置されている。青色発光ダイオード素子(4)の下部電極と
凹部の底面とが導電性ペーストによって電気的に接続されており、上部電極ともう1本の
リードワイヤ(3)とが金細線(5)によって電気的に接続されている。蛍光体は第一の
蛍光体と第二の蛍光体を混合したもの(7)が樹脂に分散され、発光ダイオード素子(4
)近傍に実装されている。この蛍光体を分散した第一の樹脂(6)は、透明であり、青色
発光ダイオード素子(4)の全体を被覆している。凹部を含むリードワイヤの先端部、青
色発光ダイオード素子、蛍光体を分散した第一の樹脂は、透明な第二の樹脂(8)によっ
て封止されている。透明な第二の樹脂(8)は全体が略円柱形状であり、その先端部がレ
ンズ形状の曲面となっていて、砲弾型と通称されている。
【0034】
本実施例では、第一の蛍光体粉末と第二の蛍光体粉末の混合割合を5対2とし、その混
合粉末を35重量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサを用いて適量滴下
して、蛍光体を混合したもの(7)を分散した第一の樹脂(6)を形成した。得られた色
度はx=0.338、y=0.330であり、略白色であった。図5に実施例1の白色発
光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【0035】
次に、この第一の実施例の砲弾型白色発光ダイオードの製造手順を説明する。
まず、1組のリードワイヤの一方(2)にある素子載置用の凹部に青色発光ダイオード
素子(4)を導電性ペーストを用いてダイボンディングし、リードワイヤと青色発光ダイ
オード素子の下部電極とを電気的に接続するとともに青色発光ダイオード素子(4)を固
定する。次に、青色発光ダイオード素子(4)の上部電極ともう一方のリードワイヤとを
ワイヤボンディングし、電気的に接続する。あらかじめ緑色の第一の蛍光体粉末と赤色の
第二の蛍光体粉末とを混合割合を5対2として混ぜておき、この混合蛍光体粉末をエポキ
シ樹脂に35重量%の濃度で混ぜる。次にこれを凹部に青色発光ダイオード素子を被覆す
るようにしてディスペンサで適量塗布し、硬化させ第一の樹脂部(6)を形成する。最後
にキャスティング法により凹部を含むリードワイヤの先端部、青色発光ダイオード素子、
蛍光体を分散した第一の樹脂の全体を第二の樹脂で封止する。本実施例では、第一の樹脂
と第二の樹脂の両方に同じエポキシ樹脂を使用したが、シリコーン樹脂等の他の樹脂ある
いはガラス等の透明材料であっても良い。できるだけ紫外線光による劣化の少ない材料を
選定することが好ましい。
【0036】
実施例2;
基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ(21)を製作した。構図を図6に示す
。可視光線反射率の高い白色のアルミナセラミックス基板(29)に2本のリードワイヤ
(22、23)が固定されており、それらワイヤの片端は基板のほぼ中央部に位置しもう
方端はそれぞれ外部に出ていて電気基板への実装時ははんだづけされる電極となっている
。リードワイヤのうち1本(22)は、その片端に、基板中央部となるように青色発光ダ
イオード素子ダイオード素子(24)が載置され固定されている。青色発光ダイオード素
子(24)の下部電極と下方のリードワイヤとは導電性ペーストによって電気的に接続さ
れており、上部電極ともう1本のリードワイヤ(23)とが金細線(25)によって電気
的に接続されている。
【0037】
蛍光体は第一の樹脂と第二の蛍光体を混合したもの(27)が樹脂に分散され、発光ダ
イオード素子近傍に実装されている。この蛍光体を分散した第一の樹脂(26)は、透明
であり、青色発光ダイオード素子(24)の全体を被覆している。また、セラミック基板
上には中央部に穴の開いた形状である壁面部材(30)が固定されている。壁面部材(3
0)は、図6に示したとおりその中央部が青色発光ダイオード素子(24)及び蛍光体(
27)を分散させた第一の樹脂(26)がおさまるための穴となっていて、中央に面した
部分は斜面となっている。この斜面は光を前方に取り出すための反射面であって、その斜
面の曲面形は光の反射方向を考慮して決定される。また、少なくとも反射面を構成する面
は白色または金属光沢を持った可視光線反射率の高い面となっている。本実施例では、該
壁面部材を白色のシリコーン樹脂(30)によって構成した。壁面部材の中央部の穴は、
チップ型発光ダイオードランプの最終形状としては凹部を形成するが、ここには青色発光
ダイオード素子(24)及び蛍光体(27)を分散させた第一の樹脂(26)のすべてを
封止するようにして透明な第二の樹脂(28)を充填している。本実施例では、第一の樹
脂(26)と第二の樹脂(28)とには同一のエポキシ樹脂を用いた。第一の蛍光体と第
二の蛍光体の混合割合、達成された色度等は、第一の実施例と略同一である。製造手順は
、アルミナセラミックス基板(29)にリードワイヤ(22、23)及び壁面部材(30
)を固定する部分を除いては、第一の実施例の製造手順と略同一である。
【0038】
実施例3;
実施例1の砲弾型発光ダイオードランプを多数個用いて、グラデーション状に発光色度
が変化している装飾性の高い照明装置(41)を実現した。模式図を図7に示す。上部の
横に長い支持体(51)は、建物の天井部に直接取り付け、あるいは鎖等でつり下げて照
明装置(41)の全体を支持するものである。支持体(51)の内部に、発光ダイオード
ランプ駆動部の電気回路がおさめられており、外部に商用交流100V電源から電力の供
給を受け、発光ダイオードランプに適切な電流を流す。駆動部は、図示しない電源スイッ
チ及び調光ダイヤルに接続されており、手動で照明電源のONあるいはOFFと照明発光
強度の調整とが可能となっている。支持体には複数のランプユニット(52)が接続され
ている。本実施例では、9ユニットである。個々のランプユニットには、多数個の砲弾型
発光ダイオードランプが設置されている。本実施例では、各ランプユニットに18個ずつ
の砲弾型発光ダイオードランプを同心円状に配置した。発光ダイオードは、ユニット単位
でその色度を変更して製作した。
【0039】
中央の第5のランプユニットの搭載された18個の発光ダイオードは第一の蛍光体と第
二の蛍光体の混合割合を5対2としてその色度を第一の実施例・第二の実施例同様にx=
0.34,y=0.33の白色とした。一方の端部の第一のランプユニットは、混合割合
を12対1とし、色度座標x=0.37,y=0.42の黄みの白とした。もう一方の端
部の第9のランプユニットは、混合割合を4対5とし、色度座標x=0.38,y=0.
32のうすいピンクとした。中間に位置する第2、第3、第4、第6、第7、第8のラン
プユニットは、それぞれ段階的に混合割合を変更し、グラデーション状に色度が変化する
構成とした。
【0040】
なお、第一の蛍光体と第二の蛍光体の混合割合を変更した他に、適切な色度となるよう
に第一の樹脂を塗布する際の塗布量を適宜調整してそれぞれの砲弾型発光ダイオードラン
プを製造した。それぞれのランプユニットの下部には、散乱要素を含む導光部材(53)
を配置し、これにランプユニットからの光が入射するように設置した。具体的には、適度
に気泡を含む透明樹脂製の円柱状の部材を用いた。このようにして、高輝度な中間色発光
ダイオードランプを用いた、オーロラをイメージした高度に装飾的な照明装置が達成され
た。
【産業上の利用可能性】
【0041】
近年、青色発光ダイオード素子と蛍光体とを利用した照明用白色発光ダイオードが急拡
大している。本発明は、この分野に直接利用しうることは明らかであり、従来なかった温
かみのある高輝度白色照明、あるいは多様な色彩、色度設計が可能となり、所望とする中
間色を創出することが可能となったことから、大いに利用されるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】JIS Z8701によるXYZ表色系の色度図(CIE)と本発明の色度範囲を示す図。
【図2】蛍光分光光度計で測定した第一の蛍光体と第二の蛍光体の発光スペクトル(励起波長は実施例にて用いた青色発光ダイオード素子と同じ460nmとした)を示す図。
【図3】蛍光分光光度計で測定した第一の蛍光体と第二の蛍光体の励起スペクトル(発光モニタ波長は、それぞれの発光ピーク波長543nmと653nm)を示す図。
【図4】砲弾型発光ダイオードランプとして実装した第一の実施例の模式図。
【図5】第一の実施例の発光ダイオードの発光スペクトルを示す図。
【図6】チップ型発光ダイオードランプとして実装した第二の実施例の模式図。
【図7】多数の中間色発光ダイオードを一列に設置してグラデーション状の発光を実現した装飾性の高い照明装置である第三の実施例の模式図。
【図8】図7中の照明装置のうち色度が黄みの白である第1のランプユニットの発光ダイオードランプの発光スペクトルを示す図。
【図9】図7中の照明装置のうち色度がうすいピンクである第9のランプユニットの発光ダイオードランプの発光スペクトルを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青紫色または青色で発光する半導体発光素子と、該半導体発光素子を載置するための凹
部を備えかつ凹部の斜面は可視波長域光線反射面として構成された支持部材と、該半導体
発光素子に電力を供給するための端子と、該発光素子からの発光の一部または全部を吸収
し異なる波長の蛍光を発する蛍光物質とを少なくとも含み、該蛍光物質は少なくとも緑色
・黄緑色・黄色のいずれかで発光する第一の蛍光物質と、黄赤色・赤色のいずれかで発光
する第二の蛍光物質のいずれか一方を少なくとも含む発光デバイスを、1個以上含む光源
ユニットを、3ユニット以上含む照明装置であって、該発光デバイスにおける第一の蛍光
物質と第二の蛍光物質との配合比が光源ユニットごとにあるいは発光デバイスごとに異な
っており、部位によって発光色が異なって視認されるようにしたことを特徴とする照明装
置。
【請求項2】
それぞれの光源ユニットには散乱要素を含む導光部材が光学的に接続されていることを
特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
該散乱要素は気泡から成り、該導光部材は透明樹脂製の棒状部材であることを特徴とす
る請求項2に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−103965(P2007−103965A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351575(P2006−351575)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【分割の表示】特願2004−41502(P2004−41502)の分割
【原出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】