発光素子及びその製造方法
【課題】第1電極上にパーティクル(異物)や突起部が存在したとしても、第1電極と第2電極との間で短絡が生じることがない構成、構造を有し、しかも、駆動電圧の低下を図り得る発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子は、第1電極21、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層23、半透過・反射膜40、抵抗層50、及び、第2電極22が、順次、積層されて成り、第1電極21は発光層からの光を反射し、第2電極22は発光層からの光を透過し、半透過・反射膜40は、有機層側から、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成り、有機層上における半透過・反射膜40の平均膜厚は、1nm乃至6nmである。
【解決手段】発光素子は、第1電極21、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層23、半透過・反射膜40、抵抗層50、及び、第2電極22が、順次、積層されて成り、第1電極21は発光層からの光を反射し、第2電極22は発光層からの光を透過し、半透過・反射膜40は、有機層側から、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成り、有機層上における半透過・反射膜40の平均膜厚は、1nm乃至6nmである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及びその製造方法に関し、より具体的には、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置に代わる表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に、『有機EL素子』と略称する場合がある)を用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に、『有機EL表示装置』と略称する場合がある)が注目されている。有機EL表示装置は、自発光型であり、消費電力が低いという特性を有しており、また、高精細度の高速ビデオ信号に対しても十分な応答性を有するものと考えられており、実用化に向けての開発、商品化が鋭意進められている。
【0003】
有機EL素子は、通常、第1電極、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、及び、第2電極が、順次、積層された構造を有する。そして、有機EL素子においては、共振器構造を導入することによって、即ち、有機層を構成する各層の厚さの最適化を図ることで、発光色の色純度を向上させたり、発光効率を高めるなど、発光層で発生する光を制御する試みが行われている(例えば、国際公開第01/39554号パンフレット参照)。
【0004】
ここで、色度、輝度の視野角依存性に問題が生じる場合があるので、即ち、視野角が大きくなるに従い、有機EL表示装置からの光のスペクトルにおけるピーク波長が大きく移動したり、光強度が大幅に低下するといった問題が生じる場合があるので、共振の強さはなるべく低く抑える、つまり、有機層の厚さは出来る限り薄くすることが望ましい(上述した国際公開第01/39554号パンフレット参照)。然るに、有機層の厚さが薄い場合、図18に模式的に示すように、第1電極上にパーティクル(異物)や突起部が存在すると、有機層のカバレッジが完全ではなくなり、第1電極と第2電極との間で短絡が生じる虞がある。そして、このような短絡が生じると、アクティブマトリクス方式の有機EL表示装置においては、短絡を含む画素が欠陥となってしまい、有機EL表示装置の表示品質を劣化させてしまう。また、パッシブマトリクスの有機EL表示装置においては、欠線となってしまい、やはり、有機EL表示装置の表示品質を劣化させてしまう。このような問題は、特に、大型の有機EL表示装置に顕著な問題となる。即ち、視野角特性がより厳しくなる一方、単位面積当たりの許容欠陥数が少なくなるからである。
【0005】
これまで、第1電極と第2電極との間での短絡を減少させる取り組みが、種々、行われてきている。例えば、特開2001−035667には、ボトムエミッション方式の有機EL表示装置において、アノード電極と有機膜の間に高抵抗層を挿入する技術が開示されている。また、特開2006−338916には、トップエミッション方式の有機EL表示装置において、アノード電極を2層とし、有機層に近いアノード電極を構成する層を高抵抗にする技術が開示されている。更には、特開2005−209647には、ボトムエミッション方式の有機EL表示装置において、カソード電極を2層とし、有機層に近いアノード電極を構成する層を高抵抗にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/39554号パンフレット
【特許文献2】特開2001−035667
【特許文献3】特開2006−338916
【特許文献4】特開2005−209647
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの特許公開公報に開示されたように、アノード電極とカソード電極との間に高抵抗層を挿入した場合でも、共振器構造と組み合わせる場合、上述した問題を解決することができない。即ち、表示欠陥の発生を確実に防止するために、パーティクル(異物)や突起部への高抵抗層のカバレッジを向上させるためには、高抵抗層の膜厚を十分厚くする必要がある。しかしながら、高抵抗層の膜厚を厚くすると、上述したとおり、視野角依存性が増大してしまう。
【0008】
また、有機EL素子の駆動電圧を低下させることは、有機EL表示装置全体の消費電力を低減させる上で非常に重要である。
【0009】
従って、本発明の目的は、たとえ、第1電極上にパーティクル(異物)や突起部が存在したとしても、第1電極と第2電極との間で短絡が生じることがない構成、構造を有し、しかも、駆動電圧の低下を図り得る発光素子、並びに、係る発光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る発光素子は、
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)半透過・反射膜、
(D)抵抗層、及び、
(E)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
半透過・反射膜は、有機層側から、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の積層構造から成り、
有機層上における半透過・反射膜の平均膜厚は、1nm乃至6nmである。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る発光素子は、
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)抵抗層、及び、
(D)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層が形成されている。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の発光素子の製造方法は、
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)抵抗層、及び、
(D)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過する発光素子の製造方法であって、
有機層上に、物理的気相成長法(PVD法)に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜する工程を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様に係る発光素子において、半透過・反射膜は、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の積層構造から成り、また、本発明の第2の態様に係る発光素子において、有機層と抵抗層との間には混合層が形成されている。更には、本発明の発光素子の製造方法にあっては、有機層上に、物理的気相成長法に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜する。そして、このように、半透過・反射膜や混合層を形成することで、抵抗層と有機層との間に良好なる電気的コンタクトを得ることができるし、有機層へのキャリアの注入状態の改善を図ることができ、駆動電圧の低下を達成することができ、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0014】
しかも、有機層は第1電極と半透過・反射膜あるいは混合層(以下、半透過・反射膜及び混合層を総称して、『半透過・反射膜等』と呼ぶ場合がある)とによって挟まれており、共振器構造を有するので、発光色の色純度の向上、発光効率の向上を図ることができるし、輝度や色度の視野角依存性を非常に少なくすることができる。そして、有機層の上方には抵抗層が形成され、抵抗層上に第2電極が形成されている。それ故、第1電極上に異物(パーティクル)や突起部が存在し、あるいは又、段差が存在して、有機層のカバレッジが完全ではなかったとしても、第2電極から有機層に確実に電圧を印加でき、しかも、抵抗層が存在するが故に、第1電極と第2電極との間で短絡が生じることがないし、第1電極と半透過・反射膜等とが接触した状態となることもない。
【0015】
また、発光素子の特性に関しても、例えば、従来の有機EL素子において用いられているMg−Ag等から半透過・反射膜等を構成し、半透過・反射膜等とは別に第2電極を設けているので、従来の発光素子あるいは有機EL素子と変わらない信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の模式的な一部断面図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置における有機層等の模式図である。
【図3】図3の(A)は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、第1電極上に異物が存在しているときの有機層等の成膜状態を模式的に示す一部断面図であり、図3の(B)は、2層構成の半透過・反射膜を備えた実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置における相対輝度比の経時変化を調べたグラフである。
【図4】図4は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、有機層等の模式的な配置図である。
【図5】図5の(A)、(B)及び(C)は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図6】図6の(A)及び(B)は、図5の(C)に引き続き、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図7】図7の(A)及び(B)は、図6の(B)に引き続き、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図8】図8は、画素の駆動のための全電流が変化したときの、全電流に対するリーク電流変化の割合のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例4の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の外周部近傍の模式的な一部断面図である。
【図10】図10は、実施例4の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の外周部近傍における取出し電極及び第2電極の配置を模式的に示す図である。
【図11】図11は、実施例5における有機エレクトロルミネッセンス表示装置の模式的な一部断面図である。
【図12】図12の(A)及び(B)は、実施例5の発光素子の模式図である。
【図13】図13の(A)及び(B)は、実施例6の発光素子の模式図である。
【図14】図14の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例6の発光素子及び比較例6の発光素子における消費電力と輝度特性の関係、及び、駆動電圧と電流密度の関係を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例7の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の模式的な一部断面図である。
【図16】図16の(A)及び(B)は、実施例7の有機エレクトロルミネッセンス表示装置における有機層等の模式図である。
【図17】図17の(A)及び(B)は、それぞれ、半透過・反射膜の膜厚と平均光反射率の値の関係を示すグラフ、及び、屈折率の異なる2つの層が積層された状態における層の界面での平均光反射率と屈折率差の関係を示すグラフである。
【図18】図18は、従来の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、第1電極上に異物が存在しているときの有機層等の成膜状態を模式的に示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の第1の態様及び第2の態様に係る発光素子、並びに、本発明の発光素子の製造方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様に係る発光素子)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例1の更に別の変形)
6.実施例5(実施例1の更に別の変形)
7.実施例6(実施例5の変形)
8.実施例7(本発明の第2の態様に係る発光素子、その他)
【0018】
[本発明の第1の態様及び第2の態様に係る発光素子、並びに、本発明の発光素子の製造方法、全般に関する説明]
本発明の発光素子の製造方法においては、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の成膜におけるPVD法の条件に依存して、更には、抵抗層の成膜条件に依存して、本発明の第1の態様に係る発光素子が得られる場合もあるし、本発明の第2の態様に係る発光素子が得られる場合もある。ここで、PVD法として、特に真空蒸着法やロングスロー・マグネトロン・スパッタリング法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法に基づき形成することが、有機層のダメージ発生を防止し、しかも、後述するように、不連続な部分を設けるといった観点から好ましい。有機層にダメージが発生すると、リーク電流の発生による「滅点」と呼ばれる非発光画素(あるいは非発光副画素)が生じる虞がある。本発明の第2の態様に係る発光素子にあっては、有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層が形成されているが、係る混合層は、有機層上にPVD法に基づき第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜し、次いで、PVD法に基づき抵抗層を成膜することで、得ることができる。
【0019】
本発明の第1の態様に係る発光素子あるいは本発明の発光素子の製造方法において、第1半透過・反射膜は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、又は、セシウム(Ce)から成り、第2半透過・反射膜は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と銀(Ag)[例えば、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)]から成り、若しくは、マグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)から成る構成とすることができ、又は、アルミニウム(Al)若しくは銀(Ag)から成る構成とすることができる。(第1半透過・反射膜の構成材料,第2半透過・反射膜の構成材料)の好ましい組合せとして、具体的には、(カルシウム,マグネシウム−銀)、(アルミニウム,マグネシウム−銀)、(バリウム,マグネシウム−銀)、(セシウム,マグネシウム−銀)、(リチウム,マグネシウム−銀)を例示することができる。また、第1半透過・反射膜の厚さの値として1nm乃至5nm、第2半透過・反射膜の厚さの値として1nm乃至5nmを例示することができる。第2半透過・反射膜をマグネシウム−銀から構成する場合、マグネシウムと銀との体積比として、Mg:Ag=5:1〜30:1を例示することができる。また、第2半透過・反射膜をマグネシウム−カルシウムから構成する場合、マグネシウムとカルシウムとの体積比として、Mg:Ca=2:1〜10:1を例示することができる。尚、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜が積層された半透過・反射膜は、本発明の第1の態様に係る発光素子あるいは本発明の発光素子の製造方法において、通常、「膜」として識別されるが、部分的に、有機層の最上層部、半透過・反射膜及び抵抗層の下層部が混在した状態、あるいは、例えば、有機層の最上層部、半透過・反射膜を構成するマグネシウム及び抵抗層が混在し、銀粒子が点在した状態となっている場合もある。
【0020】
一方、本発明の第2の態様に係る発光素子において、金属は、アルカリ土類金属[具体的には、例えば、カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)]を含む構成とすることができる。尚、金属として、その他、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、セシウム(Cs)を挙げることもできる。
【0021】
上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、抵抗層を構成する材料の電気抵抗率は、1×102Ω・m乃至1×106Ω・m(1×104Ω・cm乃至1×108Ω・cm)、好ましくは1×104Ω・m〜1×105Ω・m(1×106Ω・cm〜1×107Ω・cm)であり、有機層の上方における抵抗層の厚さは、0.1μm乃至2μm、好ましくは0.3μm乃至1μmである形態とすることができる。そして、この場合、抵抗層は酸化物半導体から成る形態とすることが望ましく、あるいは又、抵抗層は、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化モリブデン(MoO2,MoO3)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ハフニウム(HfO)、IGZO、酸化ニオブと酸化チタンの混合物、酸化チタンと酸化亜鉛(ZnO)の混合物、又は、酸化ケイ素(SiO2)と酸化錫(SnO2)の混合物、これらの材料の適宜の組合せから成る形態とすることができる。尚、抵抗層を構成する材料の電気抵抗率は、より具体的には、発光素子あるいは有機EL素子の駆動時、抵抗層において生じる電圧降下の値を考慮して決定すればよく、電圧降下の値として、例えば、0.05ボルト乃至1.0ボルトを例示することができる。
【0022】
あるいは又、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、抵抗層は、有機層側から、第1抵抗層及び第2抵抗層の積層構造を有し、第2抵抗層の電気抵抗率は第1抵抗層の電気抵抗率よりも高い形態とすることができる。あるいは又、抵抗層は、有機層側から、第1抵抗層、第2抵抗層、及び、第3抵抗層の積層構造を有し、第2抵抗層の電気抵抗率は、第1抵抗層の電気抵抗率よりも高く、且つ、第3抵抗層の電気抵抗率よりも高い形態とすることができる。ここで、第1抵抗層や第3抵抗層を構成する材料として、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化ニオブと酸化チタンの混合物、酸化チタンと酸化亜鉛の混合物、又は、酸化ケイ素と酸化錫の混合物であって、成膜時の酸素分圧を下げて成膜した膜を挙げることができるし、第2抵抗層を構成する材料として、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化ニオブと酸化チタンの混合物、酸化チタンと酸化亜鉛の混合物、又は、酸化ケイ素と酸化錫の混合物を挙げることができる。第1抵抗層、第2抵抗層及び第3抵抗層の電気抵抗率をR1(Ω・m),R2(Ω・m),R3(Ω・m)とするとき、例えば、
1×10-3≦R1/R2≦1×10-1
1×10-3≦R3/R2≦1×10-1
を満足することが望ましい。このように抵抗層を多層構造とすることで、半透過・反射膜等と抵抗層との間の接触状態をより一層良好なものとすることができ、抵抗層における電圧降下を少なくすることができ、駆動電圧の低電圧化を図ることができる。
【0023】
尚、抵抗層が第1抵抗層及び第2抵抗層の積層構造を有する場合、あるいは又、抵抗層が第1抵抗層、第2抵抗層及び第3抵抗層の積層構造を有する場合、混合層は、第1抵抗層を構成する材料を含んでいる。
【0024】
あるいは又、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、抵抗層が少なくとも第1抵抗層及び第2抵抗層の積層構造を有する場合、第1抵抗層を構成する材料の屈折率をn1、第2抵抗層を構成する材料の屈折率をn2としたとき、更には、有機層の最上層を構成する材料の屈折率をn0としたとき、効率を重視する場合、
−0.6≦n0−n1≦−0.4
0.4≦n1−n2≦ 0.9
を満足することが望ましく、あるいは又、視野角を重視する場合、
−0.2≦n0−n1≦ 0.2
0.2≦n1−n2≦ 0.4
を満足することが望ましい。
【0025】
更には、上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、半透過・反射膜と有機層との界面によって構成された第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)、若しくは、混合層と有機層との界面によって構成された第2界面(あるいは、後述する第4界面)との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させる形態とすることができる。そして、この場合、第1界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL1、第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす形態とすることができる。あるいは又、この場合、第1界面と第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
0.7≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦1.3
又は、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する形態とすることができる。これらのように、第1界面と第2界面等によって構成される光の干渉条件あるいは共振条件を規定することで、輝度、色度の視野角依存性を非常に少なくすることができる。
【0026】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、(0,0)又は(1,0)又は(0,1)である。
【0027】
ここで、上述したとおり、第1電極と有機層との界面を『第1界面』と呼び、半透過・反射膜等と有機層との界面を『第2界面』と呼ぶ。また、半透過・反射膜等と抵抗層との界面を『第3界面』と呼び、第1抵抗層と第2抵抗層との界面を『第4界面』と呼ぶ。本発明の第1の態様に係る発光素子にあっては、通常、第1界面と第2界面との間で発光層で発光した光を共振させるが、半透過・反射膜等の厚さが薄くなると、半透過・反射膜等の平均光透過率の値が高くなり、発光層で発光した光の大部分が半透過・反射膜等を透過するようになる場合がある。このような場合には、第1界面と第3界面との間で、発光層で発光した光を共振させ、あるいは又、抵抗層が多層構成である場合には、第1界面と第4界面との間で、発光層で発光した光を共振させ、あるいは又、第1界面と第3界面との間、及び、第1界面と第4界面との間で、発光層で発光した光を共振させる。
【0028】
以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法によって得られた発光素子(以下、これらを総称して、単に『本発明の発光素子等』と呼ぶ場合がある)においては、
第1界面と第2界面(あるいは、第3界面若しくは第4界面)との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させ、
発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、600nm乃至650nmであり、
第1電極上における有機層の膜厚は、1.1×10-7m乃至1.6×10-7mである形態(赤色を発光する赤色発光・副画素を構成する赤色発光の発光素子であり、赤色発光素子、赤色発光有機EL素子と呼ぶ)とすることができる。
【0029】
あるいは又、本発明の発光素子等においては、
第1界面と第2界面(あるいは、第3界面若しくは第4界面)との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させ、
発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、500nm乃至550nmであり、
第1電極上における有機層の膜厚は、9×10-8m乃至1.3×10-7mである形態(緑色を発光する緑色発光・副画素を構成する緑色発光の発光素子であり、緑色発光素子、緑色発光有機EL素子と呼ぶ)とすることができる。
【0030】
あるいは又、本発明の発光素子等においては、
第1界面と第2界面(あるいは、第3界面若しくは第4界面)との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させ、
発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、430nm乃至480nmであり、
第1電極上における有機層の膜厚は、6×10-8m乃至1.1×10-7mである形態(青色を発光する青色発光・副画素を構成する青色発光の発光素子であり、青色発光素子、青色発光有機EL素子と呼ぶ)とすることができる。
【0031】
以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様に係る発光素子を適用した有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)は、
(a)第1電極、
(b)開口部を有し、開口部の底部に第1電極が露出した絶縁層、
(c)開口部の底部に露出した第1電極の部分の上から、開口部を取り囲む絶縁層の部分に亙り設けられ、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(d)少なくとも有機層上に形成された半透過・反射膜(有機層側から、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の積層構造から成る)、
(e)半透過・反射膜を覆う抵抗層、及び、
(f)抵抗層上に形成された第2電極、
が、順次、積層されて成る発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子,有機EL素子)を、複数、有し、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
有機層上における半透過・反射膜の平均膜厚は、1nm乃至6nmであり、
絶縁層の上の半透過・反射膜の部分は、少なくとも部分的に不連続である。
【0032】
また、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第2の態様に係る発光素子を適用した有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)は、
(a)第1電極、
(b)開口部を有し、開口部の底部に第1電極が露出した絶縁層、
(c)開口部の底部に露出した第1電極の部分の上から、開口部を取り囲む絶縁層の部分に亙り設けられ、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(d)有機層を覆う抵抗層、及び、
(e)抵抗層上に形成された第2電極、
が、順次、積層されて成り、
有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層が形成されている発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子,有機EL素子)を、複数、有し、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
絶縁層の上の混合層の部分は、少なくとも部分的に不連続である。
【0033】
ここで、上記の有機EL表示装置において、絶縁層の上の半透過・反射膜等の部分は少なくとも部分的に不連続であるが、より具体的には、絶縁層の上の半透過・反射膜等の部分は、有機層の上の半透過・反射膜等の部分と、部分的に繋がっていてもよいし、繋がっていなくともよい。また、一部の有機EL素子にあっては、絶縁層の上の半透過・反射膜等の部分は有機層の上の半透過・反射膜等の部分と部分的に繋がっており、残りの有機EL素子にあっては、絶縁層の上の半透過・反射膜等の部分は有機層の上の半透過・反射膜等の部分と繋がっていない形態もあり得る。
【0034】
尚、有機EL表示装置において、複数の有機EL素子の配列を、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、デルタ配列、レクタングル配列とすることができる。
【0035】
以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法にあっては、第1電極上に異物又は突起部が存在する場合、異物又は突起部の近傍には半透過・反射膜等が形成されておらず、異物又は突起部の周辺に位置する半透過・反射膜等の部分と異物の下又は突起部の根本に位置する第1電極の部分との間には抵抗層が存在する構成とすることができる。ここで、異物(パーティクル)は、屡々、第1電極等の形成時や搬送時に第1電極上に付着する可能性が大である。一方、突起部は、屡々、第1電極等の形成時に生成する。
【0036】
以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、第1電極の平均光反射率は50%以上、好ましくは80%以上であり、半透過・反射膜等の平均光透過率は50%乃至97%、好ましくは60%乃至97%であることが望ましい。
【0037】
本発明の発光素子等における第1電極(光反射電極)を構成する材料(光反射材料)として、第1電極をアノード電極として機能させる場合、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)といった仕事関数の高い金属あるいは合金(例えば、銀を主成分とし、0.3重量%乃至1重量%のパラジウム(Pd)と、0.3重量%〜1重量%の銅(Cu)とを含むAg−Pd−Cu合金や、Al−Nd合金)を挙げることができる。更には、アルミニウム(Al)及びアルミニウムを含む合金等の仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料を用いる場合には、適切な正孔注入層を設けるなどして正孔注入性を向上させることで、アノード電極として用いることができる。第1電極の厚さとして、0.1μm乃至1μmを例示することができる。あるいは又、誘電体多層膜やアルミニウム(Al)といった光反射性の高い光反射膜上に、インジウムとスズの酸化物(ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物(IZO)等の正孔注入特性に優れた透明導電材料を積層した構造とすることもできる。一方、第1電極をカソード電極として機能させる場合、仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料から構成することが望ましいが、アノード電極として用いられる光反射率の高い導電材料に適切な電子注入層を設けるなどして電子注入性を向上させることで、カソード電極として用いることもできる。
【0038】
一方、本発明の発光素子等における第2電極を構成する材料(半光透過材料)として、第2電極をカソード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、有機層に対して電子を効率的に注入できるように仕事関数の値の小さな導電材料から構成することが望ましく、例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム、銀、カルシウム、ストロンチウム等の金属あるいは合金を挙げることができるし、ITOやIZOから成る所謂透明電極材料に適切な電子注入層を設けて電子注入性を向上させる構成としてもよい。第2電極の厚さとして、2×10-9m乃至5×10-8m、好ましくは、3×10-9m乃至2×10-8m、より好ましくは、5×10-9m乃至1×10-8mを例示することができる。また、第2電極に対して、低抵抗材料から成るバス電極(補助電極)を設け、第2電極全体として低抵抗化を図ってもよい。第2電極をアノード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、仕事関数の値の大きな導電材料から構成することが望ましい。
【0039】
第1電極や第2電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、メタルマスク印刷法といった各種印刷法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等を挙げることができる。各種印刷法やメッキ法によれば、直接、所望の形状(パターン)を有する第1電極や第2電極を形成することが可能である。尚、有機層を形成した後、第1電極や第2電極を形成する場合、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さな成膜方法、あるいは又、MOCVD法といった成膜方法に基づき形成することが、有機層のダメージ発生を防止するといった観点から好ましい。有機層の形成からこれらの電極等の形成までを大気に暴露することなく実行することが、大気中の水分による有機層の劣化を防止するといった観点から好ましい。第2電極と半透過・反射膜等とは、電気的に接続されていてもよいし、接続されていなくともよい。
【0040】
抵抗層、第1抵抗層、第2抵抗層、第3抵抗層は、例えば、スパッタリング法や、CVD法、イオンプレーティング法等のカバレッジの良好な成膜方法にて成膜することが好ましい。
【0041】
第1電極及び半透過・反射膜等は入射した光の一部を吸収し、残りを反射する。従って、反射光に位相シフトが生じる。この位相シフト量Φ1,Φ2は、第1電極及び半透過・反射膜等を構成する材料の複素屈折率の実数部分と虚数部分の値を、例えばエリプソメータを用いて測定し、これらの値に基づく計算を行うことで求めることができる(例えば、"Principles of Optic", Max Born and Emil Wolf, 1974(PERGAMON PRESS) 参照)。尚、有機層や第2電極、その他の層の屈折率もエリプソメータを用いて測定することで求めることができる。
【0042】
有機層は有機発光材料から成る発光層を備えているが、具体的には、例えば、正孔輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造、正孔輸送層と電子輸送層を兼ねた発光層との積層構造、正孔注入層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と電子注入層との積層構造から構成することができる。また、電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び正孔注入層を『タンデムユニット』とする場合、有機層は、第1のタンデムユニット、接続層、及び、第2のタンデムユニットが積層された2段のタンデム構造も有していてもよく、更には、3つ以上のタンデムユニットが積層された3段以上のタンデム構造も有していてもよく、これらの場合、発光色を赤色、緑色、青色と各タンデムユニットで変えることで、全体として白色を発光する有機層を得ることができる。有機層の形成方法として、真空蒸着法等の物理的気相成長法(PVD法);スクリーン印刷法やインクジェット印刷法といった印刷法;転写用基板上に形成されたレーザ吸収層と有機層の積層構造に対してレーザを照射することでレーザ吸収層上の有機層を分離して、有機層を転写するといったレーザ転写法、各種の塗布法を例示することができる。有機層を真空蒸着法に基づき形成する場合、例えば、所謂メタルマスクを用い、係るメタルマスクに設けられた開口を通過した材料を堆積させることで有機層を得ることができる。
【0043】
ここで、本発明にあっては、正孔輸送層(正孔供給層)の厚さと電子輸送層(電子供給層)の厚さは、概ね等しいことが望ましい。あるいは又、正孔輸送層(正孔供給層)よりも電子輸送層(電子供給層)を厚くしてもよく、この場合には、低い駆動電圧で高効率化に必要、且つ、十分な発光層への電子供給が可能となる。即ち、本発明の発光素子等にあっては、アノード電極に相当する電極と発光層との間に正孔輸送層を配置し、しかも、電子輸送層よりも薄い膜厚で形成することで、正孔の供給を増大させることが可能となる。そして、これにより、正孔と電子の過不足がなく、且つ、キャリア供給量も十分多いキャリアバランスを得ることができるため、高い発光効率を得ることができる。また、正孔と電子の過不足がないことで、キャリアバランスが崩れ難く、駆動劣化が抑制され、発光寿命を長くすることができる。
【0044】
本発明において、複数の発光素子あるいは有機EL素子は、第1基板上あるいは第1基板の上方に形成されている。ここで、第1基板として、あるいは又、第2基板として、高歪点ガラス基板、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)基板、硼珪酸ガラス(Na2O・B2O3・SiO2)基板、フォルステライト(2MgO・SiO2)基板、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)基板、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。但し、後述する下面発光型の有機EL表示装置にあっては、第1基板は、発光素子が出射する光に対して透明であることが要求される。第1基板と第2基板を構成する材料は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0045】
有機EL表示装置において、第1電極は、例えば、層間絶縁層上に設けられている。そして、この層間絶縁層は、第1基板上に形成された発光素子駆動部を覆っている。発光素子駆動部は、1又は複数の薄膜トランジスタ(TFT)から構成されており、TFTと第1電極とは、層間絶縁層に設けられたコンタクトプラグを介して電気的に接続されている。層間絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料;SiN系材料;ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。層間絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、各種印刷法等の公知のプロセスが利用できる。後述する下面発光型の有機EL表示装置にあっては、層間絶縁層は、発光素子からの光に対して透明な材料から構成する必要があるし、発光素子駆動部は発光素子からの光を遮らないように形成する必要がある。一方、層間絶縁層上に設けられた絶縁層は、平坦性に優れ、しかも、有機層の水分による劣化を防止して発光輝度を維持するために吸水率の低い絶縁材料から構成することが好ましく、具体的には、ポリイミド樹脂を挙げることができる。第2電極に対して低抵抗材料から成るバス電極(補助電極)を設ける場合、絶縁層の射影像中にバス電極(補助電極)の射影像が含まれるような位置にバス電極(補助電極)を設けることが望ましい。
【0046】
有機EL表示装置にあっては、第2電極の上方に固定された第2基板を備えている構成とすることができる。尚、このような構成の有機EL表示装置を便宜上、『上面発光型の有機EL表示装置』と呼ぶ場合がある。一方、第2電極の下方に固定された第1基板を備えている構成とすることもできる。尚、このような構成の有機EL表示装置を便宜上、『下面発光型の有機EL表示装置』と呼ぶ場合がある。そして、上面発光型の有機EL表示装置において、第2電極と第2基板との間には、第2電極側から、保護膜及び接着層(封止層)が形成されている形態とすることができる。ここで、保護膜を構成する材料として、発光層で発光した光に対して透明であり、緻密で、水分を透過させない材料を用いることが好ましく、具体的には、例えば、アモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)、アモルファス酸化シリコン(α−Si1-yOy)、アモルファスカーボン(α−C)、アモルファス酸化・窒化シリコン(α−SiON)、Al2O3を挙げることができるし、接着層(封止層)を構成する材料として、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤といった熱硬化型接着剤や、紫外線硬化型接着剤を挙げることができる。尚、下面発光型の有機EL表示装置にあっても、第1電極の上方に第2基板を配し、第1電極と第2基板の間には、第1電極側から、上述した保護膜及び接着層が形成されている形態とすることができる。
【0047】
有機層の上方には、有機層への水分の到達防止を目的として、上述したとおり、絶縁性あるいは導電性の保護膜を設けることが好ましい。保護膜は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、あるいは又、CVD法に基づき形成することが、下地に対して及ぼす影響を小さくすることができるので好ましい。あるいは又、有機層の劣化による輝度の低下を防止するために、成膜温度を常温に設定し、更には、保護膜の剥がれを防止するために保護膜のストレスが最小になる条件で保護膜を成膜することが望ましい。また、保護膜の形成は、既に形成されている電極を大気に暴露することなく形成することが好ましく、これによって、大気中の水分や酸素による有機層の劣化を防止することができる。更には、有機EL表示装置が上面発光型である場合、保護膜は、有機層で発生した光を例えば80%以上、透過する材料から構成することが望ましく、具体的には、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えば、上述した材料を例示することができる。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを生成しないため、透水性が低く、良好な保護膜を構成する。尚、保護膜を導電材料から構成する場合、保護膜を、ITOやIZOのような透明導電材料から構成すればよい。
【0048】
有機EL表示装置をカラー表示の有機EL表示装置としたとき、有機EL表示装置を構成する有機EL素子のそれぞれによって、副画素が構成される。ここで、1画素は、例えば、赤色を発光する赤色発光・副画素(赤色発光素子から構成される)、緑色を発光する緑色発光・副画素(緑色発光素子から構成される)、及び、青色を発光する青色発光・副画素(青色発光素子から構成される)の3種類の副画素から構成されている。従って、この場合、有機EL表示装置を構成する有機EL素子の数をN×M個とした場合、画素数は(N×M)/3である。あるいは又、有機EL表示装置を、液晶表示装置用のバックライト装置や面状光源装置を含む照明装置として用いることができる。
【0049】
発光素子からの光が通過する第2基板や第1基板には、必要に応じて、カラーフィルターや遮光膜(ブラックマトリクス)を形成してもよい。
【0050】
場合によっては、赤色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RR、緑色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RG、及び、青色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RBの値を異ならせてもよい。即ち、例えば、
RB>RG
RB>RR
としてもよい。RB,RG,RRを異ならせるためには、例えば、赤色発光素子を構成する抵抗層の厚さと、緑色発光素子を構成する抵抗層の厚さと、青色発光素子を構成する抵抗層の厚さとを異ならせればよい。あるいは又、赤色発光素子を構成する抵抗層の構成材料と、緑色発光素子を構成する抵抗層の構成材料と、青色発光素子を構成する抵抗層の構成材料とを異ならせればよい。あるいは又、赤色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量と、緑色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量と、青色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量とを異ならせればよい。
【0051】
また、場合によっては、第2電極を外部の回路に接続するための取出し電極を、有機EL表示装置の外周領域に設けてもよい。ここで、有機EL表示装置の外周領域とは、表示領域を額縁状に包囲する領域であり、表示領域とは、有機EL表示装置としての実用上の画像表示機能を果たす略中央に位置する領域である。取出し電極は、第1基板あるいは第2基板に設けられており、例えば、チタン(Ti)膜、モリブデン(Mo)膜、タングステン(W)膜、タンタル(Ta)膜等の所謂高融点金属膜から構成すればよい。第2電極と取出し電極との接続は、例えば、取出し電極上に第2電極の延在部を形成すればよい。取出し電極の形成方法として、第1電極や第2電極の形成方法にて説明したと同様の方法を挙げることができる。
【実施例1】
【0052】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る発光素子及び本発明の発光素子の製造方法に関する。実施例1の発光素子を適用した有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図1に示し、実施例1の発光素子における有機層等の模式図を図2の(A)及び(B)に示す。
【0053】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7の有機EL表示装置は、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であり、上面発光型である。即ち、第2電極を通して、更には、第2基板を通して光が出射される。実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7の有機EL表示装置は、発光素子(具体的には、有機EL素子)10を、複数(例えば、N×M=2880×540)、有する。尚、1つの発光素子(有機EL素子)10は、1つの副画素を構成する。従って、有機EL表示装置は、(N×M)/3の画素を有する。ここで、1画素は、赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、及び、青色を発光する青色発光副画素の3種類の副画素から構成されている。
【0054】
実施例1の発光素子(有機EL素子)は、
(A)第1電極21、
(B)有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、
(C)半透過・反射膜、
(D)抵抗層50、及び、
(E)第2電極22、
が、順次、積層されて成る。そして第1電極21は、発光層23Aからの光を反射し、第2電極22は、発光層23Aからの光を透過し、半透過・反射膜は、有機層23側から、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成り、有機層23上における半透過・反射膜の平均膜厚は1nm乃至6nmである。
【0055】
また、実施例1の有機EL表示装置は、
(a)第1電極21、
(b)開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24、
(c)開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙り設けられ、有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、
(d)少なくとも有機層23上に形成された半透過・反射膜(有機層23側から、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成る)、
(e)半透過・反射膜を覆う抵抗層50、及び、
(f)抵抗層50上に形成された第2電極22、
を具備した有機EL素子を、複数、有している。そして、第1電極21は発光層23Aからの光を反射し、第2電極22は発光層23Aからの光を透過し、有機層23上における半透過・反射膜の平均膜厚は1nm乃至6nmであり、絶縁層24の上の半透過・反射膜の部分は、少なくとも部分的に不連続である。
【0056】
尚、図2の(A)及び(B)、後述する図3の(A)、図7の(A)及び(B)、図12の(A)及び(B)、図13の(A)及び(B)においては、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成る半透過・反射膜を、1層で図示する。また、以下の説明においては、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42を総称して、『半透過・反射膜40』と表現する場合がある。
【0057】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例5、実施例7においては、第1電極21をアノード電極として用い、第2電極22をカソード電極として用いる。具体的には、第1電極21は、厚さ0.2μmのAl−Nd合金といった光反射材料から成り、第2電極22は、厚さ0.1μmのITOやIZOといった透明導電材料から成る。また、第1半透過・反射膜41は、厚さ2nmのカルシウム(Ca)から成り、第2半透過・反射膜42マグネシウム(Mg)を含む導電材料、より具体的には、厚さ3nmのMg−Ag(MgとAgとの体積比として、10:1)から成る。所望の形状にパターニングされた第1電極21は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。一方、第2電極22及び半透過・反射膜40は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法によって成膜されている。第2電極22及び半透過・反射膜40はパターニングされておらず、1枚のシート状に形成されている。尚、有機層23と半透過・反射膜40との間には、厚さ0.3nmのLiFから成る電子注入層(図示せず)が形成されている。第1電極21及び第2電極22の屈折率測定結果、第1電極21の光反射率測定結果、半透過・反射膜40の光透過率測定結果を、以下の表2に示す。尚、測定は、波長530nmにおいて行った結果である。
【0058】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7において、絶縁層24は、平坦性に優れ、しかも、有機層23の水分による劣化を防止して発光輝度を維持するために吸水率の低い絶縁材料、具体的には、ポリイミド樹脂から構成されている。有機層23は、例えば、正孔輸送層、及び、電子輸送層を兼ねた発光層の積層構造から構成されているが、図面では1層で表す場合がある。
【0059】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7において、有機EL素子を構成する第1電極21は、CVD法に基づき形成されたSiO2から成る層間絶縁層16(より具体的には、上層層間絶縁層16B)上に設けられている。そして、この層間絶縁層16は、ソーダガラスから成る第1基板11上に形成された有機EL素子駆動部を覆っている。有機EL素子駆動部は、複数のTFTから構成されており、TFTと第1電極21とは、層間絶縁層(より具体的には、上層層間絶縁層16B)に設けられたコンタクトプラグ18、配線17、コンタクトプラグ17Aを介して電気的に接続されている。尚、図面においては、1つの有機EL素子駆動部につき、1つのTFTを図示した。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。
【0060】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7において、第2電極22上には、有機層23への水分の到達防止を目的として、プラズマCVD法に基づき、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)から成る絶縁性の保護膜31が設けられている。保護膜31の上には、ソーダガラスから成る第2基板33が配されているが、保護膜31と第2基板33とは、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着されている。保護膜31及び接着層32の屈折率測定結果を、以下の表2に示す。尚、屈折率は、波長530nmにおける測定結果である。
【0061】
以上、纏めると、実施例1の発光素子の詳しい構成は、以下の表1のとおりである。
【0062】
[表1]
第2基板33 :ソーダガラス
接着層32 :アクリル系接着剤
保護膜31 :SiNx層(厚さ:5μm)
第2電極(カソード電極)22:ITO層(厚さ:0.1μm)
抵抗層50 :Nb2O5層(厚さ:0.5μm)
半透過・反射膜
第2半透過・反射膜42 :Mg−Ag膜(厚さ:3nm)
第1半透過・反射膜41 :Ca膜 (厚さ:2nm)
電子注入層 :LiF層(厚さ:0.3nm)
有機層23 :後述
第1電極(アノード電極)21:Al−Nd層(厚さ:0.2μm)
層間絶縁層16 :SiO2層
TFT :有機EL素子駆動部を構成
第1基板11 :ソーダガラス
【0063】
[表2]
第1電極21の屈折率
実数部:0.755
虚数部:5.466
半透過・反射膜40の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
第2電極22の屈折率
実数部:1.814
虚数部:0
抵抗層50の屈折率
実数部:2.285
虚数部:0
保護膜31の屈折率
実数部:1.87
虚数部:0
接着層32の屈折率
実数部:1.53
虚数部:0
第1電極21の光反射率 :85%
半透過・反射膜40の光透過率:60%
第2電極22の光反射率 : 2%
【0064】
尚、絶縁層24の上の半透過・反射膜の部分40Aは少なくとも部分的に不連続であるが、絶縁層24の上の半透過・反射膜の部分40Aは、有機層23の上の半透過・反射膜の部分40Bと部分的に繋がっている。場合によっては、絶縁層24の上の半透過・反射膜の部分40Aは、有機層23の上の半透過・反射膜の部分40Bと繋がっていない。あるいは又、場合によっては、一部の有機EL素子にあっては、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aは有機層23の上の半透過・反射膜40の部分40Bと部分的に繋がっており、残りの有機EL素子にあっては、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aは有機層23の上の半透過・反射膜40の部分40Bと繋がっていない。尚、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aの平均膜厚は、有機層23上における半透過・反射膜40の部分40Bの平均膜厚よりも薄い。従って、有機層23上における半透過・反射膜40の部分40Bの平均膜厚を1nm乃至6nmとすることで、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aを、確実に不連続な状態とすることができる。
【0065】
そして、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26と、半透過・反射膜40と有機層23との界面によって構成された第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を、半透過・反射膜40、更には、第2電極22から出射させる。
【0066】
また、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例6の発光素子においては、図2の(A)及び(B)に示すように、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26から発光層23Aの最大発光位置までの距離をL1、光学距離をOL1、半透過・反射膜40と有機層23との界面によって構成された第2界面27から発光層23Aの最大発光位置までの距離をL2、光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす。
【0067】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
【0068】
ここで、
λ :発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面26で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面27で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例6にあっては、(0,0)である。
【0069】
更には、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例6の発光素子においては、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26と、半透過・反射膜40と有機層23との界面によって構成された第2界面27との間の光学距離をOL、発光層23Aで発生した光が第1界面26と第2界面27で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する。
【0070】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7において、各有機層23は、具体的には、赤色発光副画素を構成する赤色発光有機EL素子における赤色発光有機層、緑色発光副画素を構成する緑色発光有機EL素子における緑色発光有機層、及び、青色発光副画素を構成する青色発光有機EL素子における青色発光有機層から構成されている。複数の有機EL素子の配列を、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、デルタ配列、あるいは、レクタングル配列とすることができる。
【0071】
即ち、赤色発光有機EL素子としての発光素子は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極22から出射させ、
発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、600nm乃至650nm(実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7にあっては、具体的には、620nm)であり、
第1電極21上における有機層23の膜厚は、1.1×10-7m乃至1.6×10-7m(実施例1にあっては、具体的には、140nm)である。
【0072】
具体的には、赤色発光有機層の構成は、以下の表3のとおりである。最大発光位置は、電子輸送層23Cと発光層23Aとの界面である(図2の(A)参照)。尚、表3、あるいは、後述する表4及び表5にあっては、下欄に位置する層ほど、第1電極に近いところに位置している。
【0073】
[表3]
【0074】
また、緑色発光有機EL素子としての発光素子は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極22から出射させ、
発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、500nm乃至550nm(実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7にあっては、具体的には、530nm)であり、
第1電極21上における有機層23の膜厚は、9×10-8m乃至1.3×10-7m(実施例1にあっては、具体的には、118nm)である。
【0075】
具体的には、緑色発光有機層の構成は、以下の表4のとおりである。尚、最大発光位置は、正孔輸送層23Bと発光層23Aとの界面である(図2の(B)参照)。
【0076】
[表4]
【0077】
また、青色発光有機EL素子としての発光素子は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極22から出射させ、
発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、430nm乃至480nm(実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7にあっては、具体的には、460nm)であり、
第1電極21上における有機層23の膜厚は、6×10-8m乃至1.1×10-7m(実施例1にあっては、具体的には、88nm)である。
【0078】
具体的には、青色発光有機層の構成は、以下の表5のとおりである。尚、最大発光位置は、正孔輸送層23Bと発光層23Aとの界面である(図2の(B)参照)。
【0079】
[表5]
【0080】
実施例1、あるいは、後述する実施例3〜実施例7にあっては、抵抗層50は、1×104Ω・m(1×106Ω・cm)の電気抵抗率を有する酸化ニオブ(Nb2O5)から成り、有機層23の上方における抵抗層50の厚さは、0.5μmである。このような抵抗層50における電圧降下は、以下のとおりである。ここで、第2電極22及び抵抗層50の諸元を以下のとおりとする。
【0081】
[第2電極22]
電気抵抗率(ρ1) :3.0×10-4Ω・cm
膜厚(d1) :0.1μm
第2電極22を流れる電流密度(J1):10mA/cm2
[抵抗層50]
電気抵抗率(ρ2) :1.0×104Ω・cm〜1.0×106Ω・cm
膜厚(d2) :0.5μm
抵抗層50を流れる電流密度(J2) :10mA/cm2
【0082】
第2電極22のシート抵抗=(ρ1/d1)=30Ω/□
抵抗層50のシート抵抗 =(ρ2/d2)=2×108Ω/□〜2×1010Ω/□
【0083】
第2電極22における電圧降下=ρ1×d1×J1=3.0×10-11V
抵抗層50における電圧降下 =ρ2×d2×J2=5mV〜500mV
【0084】
以上のとおり、抵抗層50をNb2O5から構成する場合、抵抗層50における電圧降下は、最大でも0.5ボルト程度であると見積もることができ、有機EL素子あるいは有機EL表示装置の駆動においては、特段に問題となるような電圧降下の値ではない。
【0085】
赤色発光有機層、緑色発光有機層及び青色発光有機層におけるλ,L1,OL1,2OL1/λ,L2,OL2,2OL2/λ,nave,{−2Φ1/(2π)+m1},{−2Φ2/(2π)+m2}の値を、以下の表6に例示する。但し、m1=0,m2=0である。
【0086】
[表6]
【0087】
異物(パーティクル)が、第1電極21等の形成時や搬送時、屡々、第1電極21上に付着する。また、第1電極21の形成時、第1電極21からの突起部が、屡々、生成する。更には、有機層23の形成時、段差が発生する。このような異物や突起部によって、図3の(A)に模式的に図示するように、有機層23のカバレッジが完全ではなくなる。然るに、有機層23上において厚さ1nm乃至6nmといった非常に薄い半透過・反射膜40を形成するが故に、第1電極21上に異物又は突起部が存在し、また、段差が存在する場合、異物又は突起部、段差の近傍では、半透過・反射膜40の成膜時、一種の「段切れ」が発生し、異物又は突起部、段差の近傍には半透過・反射膜40が形成されない。そして、この状態で、抵抗層50を形成するので、異物又は突起部の周辺に位置する半透過・反射膜40の部分と異物の下又は突起部の根本に位置する第1電極21の部分との間には抵抗層50が存在する状態となる。
【0088】
また、上述したとおり、有機層23上の半透過・反射膜40の部分40Bの平均膜厚を1nm乃至6nmとするので、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aは、不連続な状態となる。より具体的には、発光層23Aを備えた有機層23が、開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙って設けられており、半透過・反射膜40も、有機層23上から、更には、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙って設けられている。ここで、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分は、開口部25に向かって下る傾斜が付いている。従って、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分の上の半透過・反射膜40の部分40Aの膜厚は、有機層23上の半透過・反射膜40の部分40Bの膜厚よりも薄くなる。それ故、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分の上の半透過・反射膜40の部分40Aは、不連続な状態(切れ切れの状態)となる。この状態を、模式的に図4に示すが、半透過・反射膜40の不連続な部分を黒く塗りつぶした。また、コンタクトプラグ18及び第1電極21を点線で示し、開口部25の縁部を一点鎖線で示した。図4においては、規則的に不連続な部分が設けられているように図示しているが、実際には、不連続な部分は不規則に設けられている。
【0089】
発光素子の駆動のために第1電極21及び第2電極22に電圧を印加したとき、第1電極21と第2電極22との間には抵抗層50が存在するので、たとえ、異物や突起部があったとしても、第1電極21と第2電極22との間で短絡が生じることがないし、第1電極21と半透過・反射膜40とが接触することもなく、欠陥画素や欠線が生じることを確実に防止することができる。尚、第1電極21と半透過・反射膜40とが接触すると、第1電極21と半透過・反射膜40とが同電位となり、有機層23において発光が生じなくなる。
【0090】
また、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例6にあっては、半透過・反射膜は、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成り、その形成方法にあっては、有機層23上に、PVD法に基づき、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42を、順次、成膜する。そして、このように、半透過・反射膜40を形成することで、抵抗層50と有機層23との間に良好なる電気的コンタクトを得ることができるし、有機層23へのキャリアの注入状態の改善を図ることができ、駆動電圧の低下を達成することができ、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0091】
実施例1の有機EL表示装置における相対輝度比の経時変化を調べた結果を、図3の(B)のグラフに示す。尚、図3の(B)の横軸は、有機EL表示装置の駆動時間(単位:時間)を示し、縦軸は相対輝度比を示す。ここで、第1半透過・反射膜41を形成せずに、厚さ5nmの第2半透過・反射膜42のみを形成した発光素子を備えた有機EL表示装置(比較例1)における相対輝度値をRL0、実施例1の有機EL表示装置における相対輝度値をRL1としたとき、相対輝度比は、
相対輝度比=RL1/RL0
で求められる。また、相対輝度値は、
相対輝度値=(所定時間経過後の輝度値)/(初期輝度値)
で求められる。
【0092】
図3の(B)から、時間経過に伴い、実施例1の有機EL表示装置は、比較例1の有機EL表示装置よりも、相対輝度比が大きいことが判る。即ち、2層構成の半透過・反射膜41,42を備えた実施例1の有機EL表示装置の方が、比較例1の有機EL表示装置よりも、初期輝度値からの輝度値の低下が少なく、長寿命であることが判る。また、実施例1の有機EL表示装置の駆動電圧(10ミリアンペア/cm2の電流を流したときの電圧)は、比較例1の有機EL表示装置と比べて、15%低減していた。
【0093】
以下、実施例1の有機EL表示装置の製造方法の概要を、図5の(A)〜(C)、図6の(A)〜(B)、及び、図7の(A)〜(B)を参照して説明する。
【0094】
[工程−100]
先ず、第1基板11上に、副画素毎にTFTを、周知の方法で作製する。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。次に、第1基板11上に、TFTを覆うように、SiO2から成る下層層間絶縁層16AをCVD法にて成膜した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、下層層間絶縁層16Aに開口16’を形成する(図5の(A)参照)。
【0095】
[工程−110]
次いで、下層層間絶縁層16A上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、アルミニウムから成る配線17を形成する。尚、配線17は、開口16’内に設けられたコンタクトプラグ17Aを介して、TFTのソース/ドレイン領域14に電気的に接続されている。配線17は、信号供給回路(図示せず)に接続されている。そして、全面にSiO2から成る上層層間絶縁層16BをCVD法にて成膜する。次いで、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、上層層間絶縁層16B上に開口18’を形成する(図5の(B)参照)。
【0096】
[工程−120]
その後、上層層間絶縁層16B上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、Al−Nd合金から成る第1電極21を形成する(図5の(C)参照)。尚、第1電極21は、開口18’内に設けられたコンタクトプラグ18を介して、配線17に電気的に接続されている。
【0097】
[工程−130]
次いで、開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24を、第1電極21を含む層間絶縁層16上に形成する(図6の(A)参照)。具体的には、スピンコーティング法及びエッチング法に基づき、厚さ1μmのポリイミド樹脂から成る絶縁層24を、層間絶縁層16の上、及び、第1電極21の周辺部の上に形成する。尚、開口部25を囲む絶縁層24の部分は、なだらかな斜面を構成していることが好ましい。
【0098】
[工程−140]
次に、開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙り、有機層23を形成する(図6の(B)参照)。尚、有機層23は、例えば、有機材料から成る正孔輸送層、電子輸送層を兼ねた発光層が順次積層されている。具体的には、絶縁層24を一種のスペーサとし、絶縁層24の上に各副画素を構成する有機層23を形成するためのメタルマスク(図示せず)を絶縁層24の突起部の上に載置した状態で、抵抗加熱に基づき、有機材料を真空蒸着する。有機材料は、メタルマスクに設けられた開口を通過し、副画素を構成する開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分の上に亙り堆積する。
【0099】
[工程−150]
その後、表示領域の全面に、第1半透過・反射膜41、第2半透過・反射膜42を、順次、形成する(図7の(A)参照)。半透過・反射膜40は、N×M個の有機EL素子を構成する有機層23の全面を覆っている。但し、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aは、前述したとおり、少なくとも部分的に不連続となる。半透過・反射膜40は、有機層23に対して影響を及ぼすことのない程度に成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法である真空蒸着法に基づき形成されている。第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の成膜条件を以下の表7に例示するが、Mg−Ag(体積比10:1)の共蒸着膜を成膜することで、第2半透過・反射膜42を得ることができる。また、有機層23を大気に暴露することなく、有機層23の形成と同一の真空蒸着装置内において連続して半透過・反射膜40の形成を行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。尚、半透過・反射膜40の成膜にあっては、不連続状態を得るためにはカバレッジが悪い方がよい。従って、成膜時の圧力を低くすることが好ましく、具体的には、例えば、1×10-3Pa以下が望ましい。
【0100】
[表7]
第1半透過・反射膜41の真空蒸着法に基づく成膜条件
Ca加熱温度 :480゜C
Ca成膜レート:0.05nm/秒
第2半透過・反射膜42の真空蒸着法に基づく成膜条件
Mg加熱温度 :280゜C
Mg成膜レート:0.05nm/秒
Ag加熱温度 :1100゜C
Ag成膜レート:0.05×{x/(100+x)}nm/秒
ここで、「x」はAg濃度(%)
【0101】
[工程−160]
次いで、1×104Ω・m(1×106Ω・cm)の電気抵抗率を有する酸化ニオブ(Nb2O5)から成り、有機層23の上方における厚さが0.5μmである抵抗層50を、スパッタリング法にて形成する。抵抗層50は第2電極22と接することになるが、抵抗値を高くして、抵抗層50を流れる電流を1副画素全体に流れる電流の1/10以下に抑えることができれば、たとえ、図3の(A)に示した状態が発生したとしても、表示画像において滅点、半滅点等の欠点、欠陥として認識されない。抵抗層50をNb2O5から構成する場合、抵抗層50に要求される特性を計算してみると、前述したとおりとなり、1×102Ω・m乃至1×104Ω・mの電気抵抗率が好ましい。また、抵抗層50の成膜時の回りこみによるカバレッジを考慮すると、成膜時の圧力は高い方が好ましく、0.1Pa乃至10Paとすることが望ましい。また、抵抗層50を酸化物半導体から構成する場合、成膜時の酸素濃度(酸素分圧)によって抵抗層50の電気抵抗率が変化する場合があるが、抵抗層50をNb2O5から構成する場合、成膜時の酸素濃度が変化しても(具体的には、例えば、酸素分圧が1×10-4Paから1×10-2Paまで変化しても)、1×102Ω・m〜1×104Ω・m(1×104Ω・cm〜1×106Ω・cm)までしか変化せず、安定した電気抵抗率を得ることができる。
【0102】
[工程−170]
その後、表示領域の全面に第2電極22を形成する(図7の(B)参照)。第2電極22は、N×M個の有機EL素子を構成する有機層23の全面を覆っている。但し、第2電極22は、抵抗層50、有機層23及び絶縁層24によって第1電極21とは絶縁されている。第2電極22も、有機層23に対して影響を及ぼすことのない程度に成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法であるロングスロー・マグネトロン・スパッタリング法に基づき形成されている。また、有機層23を大気に暴露することなく、有機層23の形成と同一の真空蒸着装置内において連続して第2電極22までの形成を行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。具体的には、厚さ0.1μmのITO層を全面に成膜することで、第2電極22を得ることができる。
【0103】
[工程−180]
次いで、第2電極22上に、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)から成る絶縁性の保護膜31をプラズマCVD法に基づき形成する。保護膜31の形成は、第2電極22を大気に暴露することなく、連続して行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。その後、保護膜31と第2基板33とを、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着する。最後に、外部回路との接続を行うことで、有機EL表示装置を完成させることができる。
【0104】
尚、第2半透過・反射膜42を、マグネシウム(Mg)−銀(Ag)から構成する代わりに、マグネシウム(Mg)−カルシウム(Ca)から構成することもできる。具体的には、マグネシウムとカルシウムとの体積比は、Mg:Ca=9:1であり、第2半透過・反射膜の膜厚は2nmである。このような第2半透過・反射膜は、真空蒸着法によって成膜することができる。
【実施例2】
【0105】
実施例2は、実施例1の変形であり、抵抗層が、有機層側から、第1抵抗層及び第2抵抗層の積層構造を有し、第2抵抗層の電気抵抗率は、第1抵抗層の電気抵抗率よりも高い。実施例2にあっては、第1抵抗層及び第2抵抗層を構成する材料は、どちらもNb2O5であるが、Nb2O5をスパッタリング法にて成膜するときの酸素分圧を変えることで、第1抵抗層及び第2抵抗層の電気抵抗率R1,R2を以下のとおりとした。
【0106】
第1抵抗層の電気抵抗率R1:1×102Ω・m(1×104Ω・cm)
第2抵抗層の電気抵抗率R2:1×104Ω・m(1×106Ω・cm)
【0107】
抵抗層での電圧降下を測定すると、1層の抵抗層(電気抵抗率:1×104Ω・m(1×106Ω・cm)から構成したときの電圧降下の測定結果と比較して、実施例2にあっては、電圧降下の値が小さくなり、駆動電圧の低電圧化を図ることができた。
【0108】
抵抗層の構成が異なる点を除き、実施例2の有機EL表示装置、発光素子、有機EL素子の構成、構造は、実施例1の有機EL表示装置、発光素子、有機EL素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0109】
実施例3も実施例1の変形である。実施例1にあっては、赤色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値(抵抗層単位面積当たりの電気抵抗値。以下においても同じ)RR、緑色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RG、及び、青色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RBの値を同じとした。即ち、全面を抵抗層で一様に覆った。ところで、一般に、発光波長の短い青色発光素子における光学距離OLBは、発光波長がより長い緑色発光素子、赤色発光素子における光学距離OLG,OLRよりも短い。それ故、青色発光素子における有機層の厚さを、緑色発光素子、赤色発光素子における有機層の厚さよりも薄くする必要がある。それ故、青色発光素子における第1電極と第2電極との間での短絡が最も生じ易いので、青色発光素子における抵抗層の厚さを最も厚くする必要がある。一方、各発光素子を構成する材料、有機層の膜厚に依存して、一般に、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧は、青色発光素子、赤色発光素子、緑色発光素子の順に高くなる傾向にあるが、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧を、出来るだけ揃えることが好ましい。また、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧にばらつきがある場合、駆動電圧のばらつきを出来るだけ少なくすることが好ましい。更には、画素の面積が異なる場合、例えば、赤色発光素子の面積≦緑色発光素子の面積<青色発光素子の面積の場合、画素の面積が大きいほど、滅点の数が増加し易い。
【0110】
図8に、画素の駆動のための全電流が変化したときの、全電流に対するリーク電流変化の割合のシミュレーション結果を示す。全電流が少なくなると、異物によるリーク電流の割合が増えることになる。更に、抵抗層の抵抗が高くなると、リーク電流が抑えられる結果となっている。尚、図8において、曲線「A」は、抵抗層の抵抗が1×104Ωのときのデータであり、曲線「B」は、抵抗層の抵抗が1×105Ωのときのデータであり、曲線「C」は、抵抗層の抵抗が1×106Ωのときのデータである。
【0111】
実施例3にあっては、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧を、出来るだけ揃えるために、赤色発光素子を構成する抵抗層の単位面積当たりの抵抗値RR、緑色発光素子を構成する抵抗層の単位面積当たりの抵抗値RG、及び、青色発光素子を構成する抵抗層の単位面積当たりの抵抗値RBの値を異ならせる。即ち、RB>RG,RB>RRとする。より具体的には、
RB=150Ω・cm2
RG= 50Ω・cm2
RR=100Ω・cm2
とした。これによって、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧を揃えることができ、駆動電圧の上昇を最小限とすることができ、しかも、第1電極と第2電極との間での短絡の発生を確実に抑制することができる。
【0112】
例えば、赤色発光素子を構成する抵抗層の厚さと、緑色発光素子を構成する抵抗層の厚さと、青色発光素子を構成する抵抗層の厚さとを異ならせた。具体的には、抵抗層を成膜した後、青色発光素子を構成する抵抗層をレジスト層で被覆し、緑色発光素子及び赤色発光素子を構成する抵抗層を露出し、緑色発光素子及び赤色発光素子を構成する抵抗層を厚さ方向に部分的にエッチングする。次いで、レジスト層を除去し、青色発光素子及び赤色発光素子を構成する抵抗層をレジスト層で被覆し、緑色発光素子を構成する抵抗層を露出させ、緑色発光素子を構成する抵抗層を厚さ方向に部分的にエッチングする。あるいは又、赤色発光素子を構成する抵抗層の構成材料と、緑色発光素子を構成する抵抗層の構成材料と、青色発光素子を構成する抵抗層の構成材料とを異ならせればよいし(例えば、実施例2において、第1抵抗層及び第2抵抗層を形成した後、赤色発光素子及び緑色発光素子の上方に位置する第2抵抗層の部分をエッチング法にて除去する)、あるいは又、赤色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量と、緑色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量と、青色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量とを異ならせればよい。
【実施例4】
【0113】
実施例4も実施例1の変形である。実施例4にあっては、第2電極22を外部の回路(図示せず)に接続するための取出し電極60を、有機EL表示装置の外周領域に設ける。実施例4において、取出し電極60は、第1基板11の外周部に設けられており、チタン(Ti)膜から成る。第2電極22の延在部22Aが取出し電極60の上にまで延びている。実施例4における有機EL表示装置の外周部近傍の模式的な一部断面図を図9に示し、外周部近傍における取出し電極60及び第2電極22の配置を模式的に図10に示す。尚、図10において、取出し電極60の外周を実線で示し、内周を点線で示し、取出し電極60を明確化するため、取出し電極60に右上から左下に延びる斜線を付した。一方、延在部22Aを含む第2電極22を明確化するため、第2電極22に左上から右下に延びる斜線を付した。取出し電極60は、例えば、実施例1の[工程−100]から[工程−130]のいずれかの工程中、あるいは、これらの工程と工程の間で、例えば、スパッタリング法とエッチング法の組合せ、メタルマスクを用いたPVD法、リフトオフ法等に基づき、表示領域を額縁状に包囲するように取出し電極60を設ければよい。尚、取出し電極60が第1基板11に設けられた各種配線等と重複する部分が生じる場合には、取出し電極60と各種配線等との間に絶縁膜を形成すればよい。
【実施例5】
【0114】
実施例5も、実施例1の変形である。図11並びに図12の(A)及び(B)に示すように、実施例5の発光素子(有機EL素子)にあっては、第1電極21と有機層23との間に導電体膜70が設けられている。そして、導電体膜70は、発光層23Aからの光の一部を透過させる。また、第1電極21は、導電体膜70を透過した光を反射する。ここで、第1電極21上における導電体膜70の平均膜厚は、1nm乃至6nmである。より具体的には、導電体膜70は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と銀(Ag)、より具体的には、厚さ2nmのMg−Agから成る。ここで、マグネシウムと銀との体積比は、Mg:Ag=10:1である。所望の形状にパターニングされた第1電極21及び導電体膜70は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。導電体膜70の光透過率は70%であった。尚、導電体膜を、マグネシウム(Mg)−銀(Ag)から構成する代わりに、マグネシウム(Mg)−カルシウム(Ca)から構成することもできる。具体的には、マグネシウムとカルシウムとの体積比は、Mg:Ca=9:1であり、導電体膜の膜厚は2nmである。尚、図11及び図12、並びに、後述する図13の(A)、(B)において、半透過・反射膜40を1層で表している。
【0115】
実施例5の発光素子にあっては、第1電極21と有機層23との間に導電体膜70が形成されているので、有機層23から第1電極21に至る電気抵抗の低減を図ることができる結果、駆動電圧の低下を図ることができる。そして、駆動電圧を低下させることができるが故に、第1電極21と第2電極22との間に加わる電界強度が低減され、リークに起因した滅点を減少させることができるし、消費電力の大幅な低減を図ることもできる。具体的には、第1電極21と有機層23との間に導電体膜70が形成されていない発光素子と比較して、導電体膜70が形成された実施例6の発光素子においては、駆動電圧を1.1ボルト乃至1.32ボルト、低減することができた。
【0116】
尚、実施例5の発光素子、有機EL表示装置に対して、実施例2〜実施例4にて説明した発光素子を適用することができることは云うまでもない。
【実施例6】
【0117】
実施例6は、実施例5の変形である。実施例6の発光素子における有機層等の模式図を図13の(A)及び(B)に示す。尚、実施例6の発光素子を適用した実施例6における有機EL表示装置は、有機層の構成が異なる点、第1電極がカソード電極として機能し、第2電極がアノード電極として機能する点を除き、実施例5において説明した有機EL表示装置と同じ構成、構造を有し、参照番号が異なる点を除き、模式的な一部断面図も図11と同様であるが故に、詳細な説明は省略する。
【0118】
実施例6の発光素子(有機EL素子)は、
(A)第1電極621、
(B)導電体膜70、
(C)有機発光材料から成る発光層623Aを備えた有機層623、
(D)半透過・反射膜(有機層623側から、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成る)、
(E)抵抗層50、及び、
(F)第2電極622、
が、順次、積層されて成る。
【0119】
そして、実施例5と異なり、有機層623は、第1電極621側から、電子輸送層623C、発光層623A、正孔輸送層、及び、正孔注入層が積層された構造を有する。但し、図面では1層で表す場合があるし、正孔注入層及び正孔輸送層を、正孔輸送層623B、1層で表す場合もある。また、第1電極621は、発光層623Aからの光を反射し、第2電極622は、発光層623Aからの光を透過し、有機層623上における半透過・反射膜40の平均膜厚は全体として1nm乃至6nmである。
【0120】
尚、実施例6にあっても、実施例5の発光素子と同様に、第1電極621と有機層623との間には導電体膜70が設けられており、導電体膜70は、発光層623Aからの光の一部を透過させ、第1電極621は、発光層623Aからの光を反射し、第1電極621上における導電体膜70の平均膜厚は1nm乃至6nmである。
【0121】
ここで、実施例6においては、第1電極621をカソード電極として用い、第2電極622をアノード電極として用いる。具体的には、第1電極621は、厚さ0.3μmのAl−Nd合金といった光反射材料から成り、第2電極622は、厚さ0.1μmのITOといった透明導電材料から成る。半透過・反射膜40及び導電体膜70の構成は、実施例5と同様である、実施例5と異なり、有機層623と半透過・反射膜40との間にはLiFから成る電子注入層は形成されておらず、その代わりに、有機層623と導電体膜70との間に、厚さ0.3nmのLiFから成る電子注入層(図示せず)が形成されている。
【0122】
以上、纏めると、実施例6の発光素子の詳しい構成は、以下の表8のとおりである。また、第1電極621及び第2電極622の屈折率測定結果、第1電極621の光反射率測定結果、半透過・反射膜40及び導電体膜70の光透過率測定結果を、以下の表9に示す。尚、測定は、波長530nmにおいて行った結果である。
【0123】
[表8]
第2基板33 :ソーダガラス
接着層32 :アクリル系接着剤
保護膜31 :SiNx層(厚さ:5μm)
第2電極(アノード電極)622:ITO層(厚さ:0.1μm)
抵抗層50 :Nb2O5層(厚さ:0.5μm)
半透過・反射膜
第2半透過・反射膜42 :Mg−Ag膜
第1半透過・反射膜41 :Ca膜
電子注入層 :LiF層(厚さ:0.3nm)
有機層623 :後述
導電体膜70 :Mg−Ag膜(厚さ:2nm)
第1電極(カソード電極)621:Al−Nd層(厚さ:0.3μm)
層間絶縁層16 :SiO2層
TFT :有機EL素子駆動部を構成
第1基板11 :ソーダガラス
【0124】
[表9]
第1電極621の屈折率
実数部:0.755
虚数部:5.466
半透過・反射膜40の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
導電体膜70の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
第2電極622の屈折率
実数部:1.814
虚数部:0
抵抗層50の屈折率
実数部:2.285
虚数部:0
保護膜31の屈折率
実数部:1.87
虚数部:0
接着層32の屈折率
実数部:1.53
虚数部:0
第1電極621の光反射率 :85%
半透過・反射膜40及び導電体膜70の光透過率:60%
導電体膜70の光透過率 :79%
第2電極622の光反射率 : 2%
【0125】
実施例6にあっては、第1電極621と有機層623(より具体的には、導電体膜70)との界面によって構成された第1界面26と、半透過・反射膜40と有機層623との界面によって構成された第2界面27との間で、発光層623Aで発光した光を共振させて、その一部を半透過・反射膜40、更には、第2電極622から出射させる。
【0126】
また、実施例6の発光素子において、図13の(A)及び(B)に示すように、第1界面26から発光層623Aの最大発光位置までの光学距離をOL1、第2界面27から発光層623Aの最大発光位置までの光学距離をOL2としたとき、上述した式(1−1)及び式(1−2)を満たす。
【0127】
更には、実施例6の発光素子において、第1界面26と第2界面27との間の光学距離をOL、発光層623Aで発生した光が第1界面26と第2界面27で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層623Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する。
【0128】
即ち、赤色発光素子(赤色発光有機EL素子)は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層623Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極622から出射させ、発光層623Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、600nm乃至650nm(実施例6にあっては、具体的には、620nm)であり、第1電極621上における有機層623の膜厚は、1.1×10-7m乃至1.6×10-7m(実施例6にあっては、具体的には、140nm)である。
【0129】
具体的には、赤色発光有機層の構成は、以下の表10のとおりである。最大発光位置は、電子輸送層623Cと発光層623Aとの界面である(図13の(A)参照)。尚、表10、あるいは、後述する表11及び表12にあっても、下欄に位置する層ほど、第1電極に近いところに位置している。
【0130】
[表10]
【0131】
また、緑色発光素子(緑色発光有機EL素子)は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層623Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極622から出射させ、発光層623Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、500nm乃至550nm(実施例6にあっては、具体的には、530nm)であり、第1電極621上における有機層623の膜厚は、9×10-8m乃至1.3×10-7m(実施例6にあっては、具体的には、118nm)である。
【0132】
具体的には、緑色発光有機層の構成は、以下の表11のとおりである。尚、最大発光位置は、正孔輸送層623Bと発光層623Aとの界面である(図13の(B)参照)。
【0133】
[表11]
【0134】
また、青色発光素子(青色発光有機EL素子)は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層623Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極622から出射させ、発光層623Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、430nm乃至480nm(実施例6にあっては、具体的には、460nm)であり、第1電極621上における有機層623の膜厚は、6×10-8m乃至1.1×10-7m(実施例6にあっては、具体的には、88nm)である。
【0135】
具体的には、青色発光有機層の構成は、以下の表12のとおりである。尚、最大発光位置は、正孔輸送層623Bと発光層623Aとの界面である(図13の(B)参照)。
【0136】
[表12]
【0137】
実施例6の発光素子にあっては、有機層623は、第1電極621側から、電子輸送層623C、発光層623A、正孔輸送層、及び、正孔注入層が積層された構造を有し、発光層623Aへの電子注入性が向上する結果、駆動電圧の低下を図ることができる。そして、駆動電圧を低下させることができるが故に、第1電極621と第2電極622との間に加わる電界強度が低減され、リークに起因した滅点を減少させることができるし、消費電力の大幅な低減を図ることもできる。
【0138】
具体的には、実施例5の発光素子と比較して、実施例6の発光素子においては、駆動電圧を1.7ボルト乃至2.6ボルト、低減することができた。
【0139】
また、導電体膜70を形成していない実施例6の発光素子及び比較例6の発光素子における、消費電力と輝度特性の関係を図14の(A)に示し、駆動電圧と電流密度の関係を図14の(B)に示すが、実施例6の発光素子は、比較例6の発光素子と比べて、輝度特性の向上、電流密度の低下が達成されている。
【0140】
実施例6の発光素子、有機EL表示装置は、実質的に、実施例1の発光素子、有機EL表示装置と同様の方法で製造することができるので、製造方法の説明は省略する。
【0141】
尚、実施例6の発光素子、有機EL表示装置に対して、実施例2〜実施例4にて説明した発光素子を適用することができることは云うまでもない。
【実施例7】
【0142】
実施例7は、本発明の第2の態様に係る発光素子及び本発明の発光素子の製造方法に関する。実施例7の発光素子を適用した有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図15に示し、実施例7の発光素子における有機層等の模式図を図16の(A)及び(B)に示す。
【0143】
実施例7の発光素子(有機EL素子)は、
(A)第1電極21、
(B)有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、
(C)抵抗層50、及び、
(D)第2電極22、
が、順次、積層されて成り、
第1電極21は、発光層23Aからの光を反射し、
第2電極22は、発光層23Aからの光を透過し、
有機層23と抵抗層50との間には、有機層23の最上層部を構成する材料と、抵抗層50の最下層部を構成する材料と、金属との混合層80が形成されている。
【0144】
また、実施例7の有機EL表示装置は、
(a)第1電極21、
(b)開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24、
(c)開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙り設けられ、有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、
(d)有機層23を覆う抵抗層50、及び、
(e)抵抗層50上に形成された第2電極22、
が、順次、積層されて成り、
有機層23と抵抗層50との間には、有機層23の最上層部を構成する材料と、抵抗層50の最下層部を構成する材料と、金属との混合層80が形成されている発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子,有機EL素子)を、複数、有し、
第1電極21は、発光層23Aからの光を反射し、
第2電極22は、発光層23Aからの光を透過し、
絶縁層24の上の混合層80の部分は、少なくとも部分的に不連続である。
【0145】
実施例7にあっては、混合層80は、より具体的には、有機層23の最上層部を構成する材料である上述したET085と、抵抗層50の最下層部を構成する材料であるNb2O5と、金属であるアルカリ土類金属(より具体的にはカルシウム,Ca)から構成されている。
【0146】
尚、実施例7における、第1電極21、第2電極22の構成、有機層23の構成は、実施例1における第1電極21、第2電極22の構成、有機層23の構成と同じである。また、有機層23と半透過・反射膜40との間には、実施例1と同様に、厚さ0.3nmのLiFから成る電子注入層(図示せず)が形成されている。更には、実施例7の発光素子(有機EL素子)、有機EL表示装置の構成、構造は、半透過・反射膜40の代わりに混合層80が設けられている点を除き、実質的に、実施例1の発光素子(有機EL素子)、有機EL表示装置の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、混合層80の屈折率及び光透過率測定結果は、以下の表13のとおりであった。
【0147】
[表13]
混合層80の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
混合層80の光透過率:60%
【0148】
絶縁層24の上の混合層の部分は少なくとも部分的に不連続であるが、絶縁層24の上の混合層の部分は、有機層23の上の混合層の部分と部分的に繋がっている。場合によっては、絶縁層24の上の混合層の部分は、有機層23の上の混合層の部分と繋がっていない。あるいは又、場合によっては、一部の有機EL素子にあっては、絶縁層24の上の混合層の部分は有機層23の上の混合層の部分と部分的に繋がっており、残りの有機EL素子にあっては、絶縁層24の上の混合層の部分は有機層23の上の混合層の部分と繋がっていない。尚、絶縁層24の上の混合層の部分の平均膜厚は、有機層23上における混合層の部分の平均膜厚よりも薄い。従って、絶縁層24の上の混合層の部分を不連続な状態とすることができる。
【0149】
そして、実施例7にあっては、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26と、混合層80と有機層23との界面によって構成された第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を、混合層80、更には、第2電極622から出射させる。
【0150】
また、実施例7の発光素子においては、図16の(A)及び(B)に示すように、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26から発光層23Aの最大発光位置までの距離をL1、光学距離をOL1、混合層80と有機層23との界面によって構成された第2界面27から発光層23Aの最大発光位置までの距離をL2、光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす。
【0151】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
【0152】
ここで、
λ :発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面26で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面27で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、実施例7にあっては、(0,0)である。
【0153】
更には、実施例7の発光素子においては、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26と、混合層80と有機層23との界面によって構成された第2界面27との間の光学距離をOL、発光層23Aで発生した光が第1界面26と第2界面27で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する。
【0154】
実施例7の発光素子において、有機層23と抵抗層50との間には混合層80が形成されており、その形成方法にあっては、有機層23上に、PVD法に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜する。そして、このように、混合層80を形成することで、抵抗層50と有機層23との間に良好なる電気的コンタクトを得ることができるし、有機層23へのキャリアの注入状態の改善を図ることができ、駆動電圧の低下を達成することができ、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0155】
実施例7の発光素子は、実施例1の発光素子の製造工程における[工程−150]において、以下の表14に例示する成膜条件にて、有機層23上に、PVD法に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜し、更には、抵抗層を形成することで、有機層23の最上層部を構成する材料と、抵抗層50の最下層部を構成する材料と、第1半透過・反射膜を構成する材料及び第2半透過・反射膜を構成する材料が混然となった混合層80を得ることができる。
【0156】
[表14]
第1半透過・反射膜の真空蒸着法に基づく成膜条件
Al加熱温度 :1000゜C
Al成膜レート:0.05nm/秒
第2半透過・反射膜の真空蒸着法に基づく成膜条件
Mg加熱温度 :280゜C
Mg成膜レート:0.05nm/秒
Ag加熱温度 :1100゜C
Ag成膜レート:0.05×{x/(100+x)}nm/秒
ここで、「x」はAg濃度(%)
【0157】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における発光素子や有機EL素子、有機EL表示装置の構成、構造、発光素子や有機EL素子、有機EL表示装置を構成する材料等は例示であり、適宜変更することができる。実施例7の発光素子にあっては、第2半透過・反射膜を成膜した後、第1半透過・反射膜を成膜してもよい。また、実施例7においては、場合によっては、1層の半透過・反射膜を成膜することでも(例えば、カルシウム、マグネシウム及び銀の共蒸着法に基づく半透過・反射膜の成膜、あるいは、アルミニウム、マグネシウム及び銀の共蒸着法に基づく半透過・反射膜の成膜)、有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層を形成することができる。
【0158】
実施例においては、前述したとおり、有機層を副画素毎に形成してもよいし、赤色発光・副画素及び緑色発光・副画素のそれぞれについては、その上に青色発光・副画素を構成する有機層が延在している構造とすることもできる。即ち、青色の発光層を共通層とし、表示領域全面に青色発光・副画素を構成する有機層を形成する形態とすることもできる。この場合、赤色発光・副画素に関しては、赤色を発光する有機層と青色を発光する有機層の積層構造となるが、第1電極と第2電極との間で電流を流すと赤色を発光するが、青色発光エネルギーが赤色発光有機層へエネルギー移動することで、赤色発光有機層の発光効率の向上を図ることができる。同様に、緑色発光・副画素に関しては、緑色を発光する有機層と青色を発光する有機層の積層構造となるが、第1電極と第2電極との間で電流を流すと緑色を発光するが、青色発光エネルギーが緑色発光有機層へエネルギー移動することで、緑色発光有機層の発光効率の向上を図ることができる。また、赤色発光有機層における発光層及び緑色発光有機層における発光層の上に全面に共通層を形成することで、青色発光有機層を構成する発光層を個別に形成することなく形成することができ、例えば、青色発光有機層を構成する発光層を形成するためのマスクが不要となり、量産性も向上する。あるいは又、例えば、赤色発光・副画素や緑色発光・副画素について、赤色発光・副画素や緑色発光・副画素を構成する赤色発光有機層や緑色発光有機層の上に青色発光有機層を形成してもよい。
【0159】
図17の(A)に、半透過・反射膜40の膜厚と波長530nmにおける平均光反射率の値の関係を例示する。図示するように、半透過・反射膜40の膜厚が薄くなると、平均光反射率は0に近づいていく。従って、半透過・反射膜40の膜厚が薄くなると、半透過・反射膜40は、殆どの光を透過するようになる。また、波長530nmの光が、或る層Aから層Aに接した層に入射したとき、層Aと層Bとの界面で反射されるときの平均光反射率と、層Aを構成する材料の屈折率と層Bを構成する材料の屈折率との差Δnの関係を図17の(B)に例示する。図示するように、フレネル反射に基づき、Δnの値が増加すると平均光反射率の値は増加する。
【0160】
従って、半透過・反射膜40の膜厚が薄くなり、半透過・反射膜40が殆どの光を透過するようになると、半透過・反射膜40と抵抗層50との界面である第3界面において、反射が生じる。あるいは又、抵抗層50が少なくとも2層の抵抗層の積層構造を有する場合、半透過・反射膜40と積層構造を有する抵抗層の構成材料等とに依存して、第1抵抗層と第2抵抗層との界面である第4界面において、主に、反射が生じる。その結果、第1界面と、半透過・反射膜40と抵抗層50との界面によって構成された第3界面との間で、発光層で発光した光を共振させ、あるいは又、第1界面と、第1抵抗層と第2抵抗層との界面によって構成された第4界面との間で、発光層で発光した光を共振させることができ、あるいは又、第1界面と第3界面との間で、発光層で発光した光を共振させ、且つ、第1界面と第4界面との間で、発光層で発光した光を共振させることができる。混合層を備えている場合も同様である。
【0161】
それ故、このような場合、第2界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2とする代わりに、第3界面若しくは第4界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2とすればよい。また、Φ2を、第3界面若しくは第4界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]とすればよい。あるいは又、第2界面との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第2界面で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]とする代わりに、第3界面若しくは第4界面との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第3界面若しくは第4界面で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]とすればよい。以上に説明したように、半透過・反射膜40と抵抗層50との界面である第3界面において主に反射が生じ、あるいは又、第1抵抗層と第2抵抗層との界面である第4界面において主に反射が生じる場合には、「半透過・反射膜と有機層との界面によって構成された第2界面」を、『半透過・反射膜と抵抗層との界面である第3界面』若しくは『第1抵抗層と第2抵抗層との界面である第4界面』と読み替えればよい。混合層を備えている場合も同様である。
【0162】
具体的には、実施例6における発光素子の変形例として、抵抗層を第1抵抗層と第2抵抗層との組合せとした以下の表15に示す構造を有する発光素子を作製したところ、半透過・反射膜と抵抗層との界面である第3界面、及び、第1抵抗層と第2抵抗層との界面である第4界面において反射が生じ、抵抗層を第2抵抗層のみとした発光素子と比較して、発光効率が1.3倍となった。尚、第1抵抗層を構成する材料の屈折率n1、第2抵抗層を構成する材料の屈折率n2、有機層の最上層を構成する材料の屈折率n0の関係は、
−0.6≦n0−n1≦−0.4
0.4≦n1−n2≦ 0.9
といった効率を重視する関係にある。
【0163】
[表15]
第2基板 :ソーダガラス
接着層 :アクリル系接着剤
保護膜 :SiNx層(厚さ:5μm)
第2電極 :ITO層(厚さ:0.1μm)
第2抵抗層 :厚さ0.5μm (屈折率n2:1.7)
第1抵抗層 :厚さ0.06μm(屈折率n1:2.4)
半透過・反射膜:
第2半透過・反射膜:Mg−Ag膜
第1半透過・反射膜:Ca膜
有機層(全体) :厚さ130nm(屈折率n9:1.8)
導電体膜 :Mg−Ag膜(厚さ:2nm)
第1電極 :Al−Nd層(厚さ:0.2μm)
層間絶縁層 :SiO2層
TFT :有機EL素子駆動部を構成
第1基板 :ソーダガラス
【符号の説明】
【0164】
10・・・発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)、11・・・第1基板、12・・・ゲート電極、13・・・ゲート絶縁膜、14・・・ソース/ドレイン領域、15・・・チャネル形成領域、16・・・層間絶縁層、16A・・・下層層間絶縁層、16’,18’・・・開口、16B・・・上層層間絶縁層、17・・・配線、17A,18・・・コンタクトプラグ、21・・・第1電極、22・・・第2電極、22A・・・第2電極の延在部、23・・・有機層、23A・・・発光層、24・・・絶縁層、25・・・開口部、26・・・第1界面、27・・・第2界面、31・・・保護膜、32・・・接着層、33・・・第2基板、40・・・半透過・反射膜、40A・・・絶縁層の上の半透過・反射膜の部分、40B・・・有機層の上の半透過・反射膜の部分、41・・・第1半透過・反射膜、42・・・第2半透過・反射膜、50・・・抵抗層、60・・・取出し電極、70・・・導電体膜、80・・・混合層
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及びその製造方法に関し、より具体的には、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置に代わる表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に、『有機EL素子』と略称する場合がある)を用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、単に、『有機EL表示装置』と略称する場合がある)が注目されている。有機EL表示装置は、自発光型であり、消費電力が低いという特性を有しており、また、高精細度の高速ビデオ信号に対しても十分な応答性を有するものと考えられており、実用化に向けての開発、商品化が鋭意進められている。
【0003】
有機EL素子は、通常、第1電極、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、及び、第2電極が、順次、積層された構造を有する。そして、有機EL素子においては、共振器構造を導入することによって、即ち、有機層を構成する各層の厚さの最適化を図ることで、発光色の色純度を向上させたり、発光効率を高めるなど、発光層で発生する光を制御する試みが行われている(例えば、国際公開第01/39554号パンフレット参照)。
【0004】
ここで、色度、輝度の視野角依存性に問題が生じる場合があるので、即ち、視野角が大きくなるに従い、有機EL表示装置からの光のスペクトルにおけるピーク波長が大きく移動したり、光強度が大幅に低下するといった問題が生じる場合があるので、共振の強さはなるべく低く抑える、つまり、有機層の厚さは出来る限り薄くすることが望ましい(上述した国際公開第01/39554号パンフレット参照)。然るに、有機層の厚さが薄い場合、図18に模式的に示すように、第1電極上にパーティクル(異物)や突起部が存在すると、有機層のカバレッジが完全ではなくなり、第1電極と第2電極との間で短絡が生じる虞がある。そして、このような短絡が生じると、アクティブマトリクス方式の有機EL表示装置においては、短絡を含む画素が欠陥となってしまい、有機EL表示装置の表示品質を劣化させてしまう。また、パッシブマトリクスの有機EL表示装置においては、欠線となってしまい、やはり、有機EL表示装置の表示品質を劣化させてしまう。このような問題は、特に、大型の有機EL表示装置に顕著な問題となる。即ち、視野角特性がより厳しくなる一方、単位面積当たりの許容欠陥数が少なくなるからである。
【0005】
これまで、第1電極と第2電極との間での短絡を減少させる取り組みが、種々、行われてきている。例えば、特開2001−035667には、ボトムエミッション方式の有機EL表示装置において、アノード電極と有機膜の間に高抵抗層を挿入する技術が開示されている。また、特開2006−338916には、トップエミッション方式の有機EL表示装置において、アノード電極を2層とし、有機層に近いアノード電極を構成する層を高抵抗にする技術が開示されている。更には、特開2005−209647には、ボトムエミッション方式の有機EL表示装置において、カソード電極を2層とし、有機層に近いアノード電極を構成する層を高抵抗にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/39554号パンフレット
【特許文献2】特開2001−035667
【特許文献3】特開2006−338916
【特許文献4】特開2005−209647
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの特許公開公報に開示されたように、アノード電極とカソード電極との間に高抵抗層を挿入した場合でも、共振器構造と組み合わせる場合、上述した問題を解決することができない。即ち、表示欠陥の発生を確実に防止するために、パーティクル(異物)や突起部への高抵抗層のカバレッジを向上させるためには、高抵抗層の膜厚を十分厚くする必要がある。しかしながら、高抵抗層の膜厚を厚くすると、上述したとおり、視野角依存性が増大してしまう。
【0008】
また、有機EL素子の駆動電圧を低下させることは、有機EL表示装置全体の消費電力を低減させる上で非常に重要である。
【0009】
従って、本発明の目的は、たとえ、第1電極上にパーティクル(異物)や突起部が存在したとしても、第1電極と第2電極との間で短絡が生じることがない構成、構造を有し、しかも、駆動電圧の低下を図り得る発光素子、並びに、係る発光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る発光素子は、
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)半透過・反射膜、
(D)抵抗層、及び、
(E)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
半透過・反射膜は、有機層側から、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の積層構造から成り、
有機層上における半透過・反射膜の平均膜厚は、1nm乃至6nmである。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る発光素子は、
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)抵抗層、及び、
(D)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層が形成されている。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の発光素子の製造方法は、
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)抵抗層、及び、
(D)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過する発光素子の製造方法であって、
有機層上に、物理的気相成長法(PVD法)に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜する工程を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の態様に係る発光素子において、半透過・反射膜は、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の積層構造から成り、また、本発明の第2の態様に係る発光素子において、有機層と抵抗層との間には混合層が形成されている。更には、本発明の発光素子の製造方法にあっては、有機層上に、物理的気相成長法に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜する。そして、このように、半透過・反射膜や混合層を形成することで、抵抗層と有機層との間に良好なる電気的コンタクトを得ることができるし、有機層へのキャリアの注入状態の改善を図ることができ、駆動電圧の低下を達成することができ、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0014】
しかも、有機層は第1電極と半透過・反射膜あるいは混合層(以下、半透過・反射膜及び混合層を総称して、『半透過・反射膜等』と呼ぶ場合がある)とによって挟まれており、共振器構造を有するので、発光色の色純度の向上、発光効率の向上を図ることができるし、輝度や色度の視野角依存性を非常に少なくすることができる。そして、有機層の上方には抵抗層が形成され、抵抗層上に第2電極が形成されている。それ故、第1電極上に異物(パーティクル)や突起部が存在し、あるいは又、段差が存在して、有機層のカバレッジが完全ではなかったとしても、第2電極から有機層に確実に電圧を印加でき、しかも、抵抗層が存在するが故に、第1電極と第2電極との間で短絡が生じることがないし、第1電極と半透過・反射膜等とが接触した状態となることもない。
【0015】
また、発光素子の特性に関しても、例えば、従来の有機EL素子において用いられているMg−Ag等から半透過・反射膜等を構成し、半透過・反射膜等とは別に第2電極を設けているので、従来の発光素子あるいは有機EL素子と変わらない信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の模式的な一部断面図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置における有機層等の模式図である。
【図3】図3の(A)は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、第1電極上に異物が存在しているときの有機層等の成膜状態を模式的に示す一部断面図であり、図3の(B)は、2層構成の半透過・反射膜を備えた実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置における相対輝度比の経時変化を調べたグラフである。
【図4】図4は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、有機層等の模式的な配置図である。
【図5】図5の(A)、(B)及び(C)は、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図6】図6の(A)及び(B)は、図5の(C)に引き続き、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図7】図7の(A)及び(B)は、図6の(B)に引き続き、実施例1の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法の概要を説明するための第1基板等の模式的な一部端面図である。
【図8】図8は、画素の駆動のための全電流が変化したときの、全電流に対するリーク電流変化の割合のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例4の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の外周部近傍の模式的な一部断面図である。
【図10】図10は、実施例4の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の外周部近傍における取出し電極及び第2電極の配置を模式的に示す図である。
【図11】図11は、実施例5における有機エレクトロルミネッセンス表示装置の模式的な一部断面図である。
【図12】図12の(A)及び(B)は、実施例5の発光素子の模式図である。
【図13】図13の(A)及び(B)は、実施例6の発光素子の模式図である。
【図14】図14の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例6の発光素子及び比較例6の発光素子における消費電力と輝度特性の関係、及び、駆動電圧と電流密度の関係を示すグラフである。
【図15】図15は、実施例7の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の模式的な一部断面図である。
【図16】図16の(A)及び(B)は、実施例7の有機エレクトロルミネッセンス表示装置における有機層等の模式図である。
【図17】図17の(A)及び(B)は、それぞれ、半透過・反射膜の膜厚と平均光反射率の値の関係を示すグラフ、及び、屈折率の異なる2つの層が積層された状態における層の界面での平均光反射率と屈折率差の関係を示すグラフである。
【図18】図18は、従来の有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、第1電極上に異物が存在しているときの有機層等の成膜状態を模式的に示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の第1の態様及び第2の態様に係る発光素子、並びに、本発明の発光素子の製造方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様に係る発光素子)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例1の更に別の変形)
6.実施例5(実施例1の更に別の変形)
7.実施例6(実施例5の変形)
8.実施例7(本発明の第2の態様に係る発光素子、その他)
【0018】
[本発明の第1の態様及び第2の態様に係る発光素子、並びに、本発明の発光素子の製造方法、全般に関する説明]
本発明の発光素子の製造方法においては、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の成膜におけるPVD法の条件に依存して、更には、抵抗層の成膜条件に依存して、本発明の第1の態様に係る発光素子が得られる場合もあるし、本発明の第2の態様に係る発光素子が得られる場合もある。ここで、PVD法として、特に真空蒸着法やロングスロー・マグネトロン・スパッタリング法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法に基づき形成することが、有機層のダメージ発生を防止し、しかも、後述するように、不連続な部分を設けるといった観点から好ましい。有機層にダメージが発生すると、リーク電流の発生による「滅点」と呼ばれる非発光画素(あるいは非発光副画素)が生じる虞がある。本発明の第2の態様に係る発光素子にあっては、有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層が形成されているが、係る混合層は、有機層上にPVD法に基づき第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜し、次いで、PVD法に基づき抵抗層を成膜することで、得ることができる。
【0019】
本発明の第1の態様に係る発光素子あるいは本発明の発光素子の製造方法において、第1半透過・反射膜は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、又は、セシウム(Ce)から成り、第2半透過・反射膜は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と銀(Ag)[例えば、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)]から成り、若しくは、マグネシウム(Mg)とカルシウム(Ca)から成る構成とすることができ、又は、アルミニウム(Al)若しくは銀(Ag)から成る構成とすることができる。(第1半透過・反射膜の構成材料,第2半透過・反射膜の構成材料)の好ましい組合せとして、具体的には、(カルシウム,マグネシウム−銀)、(アルミニウム,マグネシウム−銀)、(バリウム,マグネシウム−銀)、(セシウム,マグネシウム−銀)、(リチウム,マグネシウム−銀)を例示することができる。また、第1半透過・反射膜の厚さの値として1nm乃至5nm、第2半透過・反射膜の厚さの値として1nm乃至5nmを例示することができる。第2半透過・反射膜をマグネシウム−銀から構成する場合、マグネシウムと銀との体積比として、Mg:Ag=5:1〜30:1を例示することができる。また、第2半透過・反射膜をマグネシウム−カルシウムから構成する場合、マグネシウムとカルシウムとの体積比として、Mg:Ca=2:1〜10:1を例示することができる。尚、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜が積層された半透過・反射膜は、本発明の第1の態様に係る発光素子あるいは本発明の発光素子の製造方法において、通常、「膜」として識別されるが、部分的に、有機層の最上層部、半透過・反射膜及び抵抗層の下層部が混在した状態、あるいは、例えば、有機層の最上層部、半透過・反射膜を構成するマグネシウム及び抵抗層が混在し、銀粒子が点在した状態となっている場合もある。
【0020】
一方、本発明の第2の態様に係る発光素子において、金属は、アルカリ土類金属[具体的には、例えば、カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)]を含む構成とすることができる。尚、金属として、その他、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、セシウム(Cs)を挙げることもできる。
【0021】
上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、抵抗層を構成する材料の電気抵抗率は、1×102Ω・m乃至1×106Ω・m(1×104Ω・cm乃至1×108Ω・cm)、好ましくは1×104Ω・m〜1×105Ω・m(1×106Ω・cm〜1×107Ω・cm)であり、有機層の上方における抵抗層の厚さは、0.1μm乃至2μm、好ましくは0.3μm乃至1μmである形態とすることができる。そして、この場合、抵抗層は酸化物半導体から成る形態とすることが望ましく、あるいは又、抵抗層は、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化モリブデン(MoO2,MoO3)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ハフニウム(HfO)、IGZO、酸化ニオブと酸化チタンの混合物、酸化チタンと酸化亜鉛(ZnO)の混合物、又は、酸化ケイ素(SiO2)と酸化錫(SnO2)の混合物、これらの材料の適宜の組合せから成る形態とすることができる。尚、抵抗層を構成する材料の電気抵抗率は、より具体的には、発光素子あるいは有機EL素子の駆動時、抵抗層において生じる電圧降下の値を考慮して決定すればよく、電圧降下の値として、例えば、0.05ボルト乃至1.0ボルトを例示することができる。
【0022】
あるいは又、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、抵抗層は、有機層側から、第1抵抗層及び第2抵抗層の積層構造を有し、第2抵抗層の電気抵抗率は第1抵抗層の電気抵抗率よりも高い形態とすることができる。あるいは又、抵抗層は、有機層側から、第1抵抗層、第2抵抗層、及び、第3抵抗層の積層構造を有し、第2抵抗層の電気抵抗率は、第1抵抗層の電気抵抗率よりも高く、且つ、第3抵抗層の電気抵抗率よりも高い形態とすることができる。ここで、第1抵抗層や第3抵抗層を構成する材料として、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化ニオブと酸化チタンの混合物、酸化チタンと酸化亜鉛の混合物、又は、酸化ケイ素と酸化錫の混合物であって、成膜時の酸素分圧を下げて成膜した膜を挙げることができるし、第2抵抗層を構成する材料として、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化ニオブと酸化チタンの混合物、酸化チタンと酸化亜鉛の混合物、又は、酸化ケイ素と酸化錫の混合物を挙げることができる。第1抵抗層、第2抵抗層及び第3抵抗層の電気抵抗率をR1(Ω・m),R2(Ω・m),R3(Ω・m)とするとき、例えば、
1×10-3≦R1/R2≦1×10-1
1×10-3≦R3/R2≦1×10-1
を満足することが望ましい。このように抵抗層を多層構造とすることで、半透過・反射膜等と抵抗層との間の接触状態をより一層良好なものとすることができ、抵抗層における電圧降下を少なくすることができ、駆動電圧の低電圧化を図ることができる。
【0023】
尚、抵抗層が第1抵抗層及び第2抵抗層の積層構造を有する場合、あるいは又、抵抗層が第1抵抗層、第2抵抗層及び第3抵抗層の積層構造を有する場合、混合層は、第1抵抗層を構成する材料を含んでいる。
【0024】
あるいは又、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、抵抗層が少なくとも第1抵抗層及び第2抵抗層の積層構造を有する場合、第1抵抗層を構成する材料の屈折率をn1、第2抵抗層を構成する材料の屈折率をn2としたとき、更には、有機層の最上層を構成する材料の屈折率をn0としたとき、効率を重視する場合、
−0.6≦n0−n1≦−0.4
0.4≦n1−n2≦ 0.9
を満足することが望ましく、あるいは又、視野角を重視する場合、
−0.2≦n0−n1≦ 0.2
0.2≦n1−n2≦ 0.4
を満足することが望ましい。
【0025】
更には、上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、半透過・反射膜と有機層との界面によって構成された第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)、若しくは、混合層と有機層との界面によって構成された第2界面(あるいは、後述する第4界面)との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させる形態とすることができる。そして、この場合、第1界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL1、第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす形態とすることができる。あるいは又、この場合、第1界面と第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
0.7≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦1.3
又は、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する形態とすることができる。これらのように、第1界面と第2界面等によって構成される光の干渉条件あるいは共振条件を規定することで、輝度、色度の視野角依存性を非常に少なくすることができる。
【0026】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面(あるいは、後述する第3界面若しくは第4界面)で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、(0,0)又は(1,0)又は(0,1)である。
【0027】
ここで、上述したとおり、第1電極と有機層との界面を『第1界面』と呼び、半透過・反射膜等と有機層との界面を『第2界面』と呼ぶ。また、半透過・反射膜等と抵抗層との界面を『第3界面』と呼び、第1抵抗層と第2抵抗層との界面を『第4界面』と呼ぶ。本発明の第1の態様に係る発光素子にあっては、通常、第1界面と第2界面との間で発光層で発光した光を共振させるが、半透過・反射膜等の厚さが薄くなると、半透過・反射膜等の平均光透過率の値が高くなり、発光層で発光した光の大部分が半透過・反射膜等を透過するようになる場合がある。このような場合には、第1界面と第3界面との間で、発光層で発光した光を共振させ、あるいは又、抵抗層が多層構成である場合には、第1界面と第4界面との間で、発光層で発光した光を共振させ、あるいは又、第1界面と第3界面との間、及び、第1界面と第4界面との間で、発光層で発光した光を共振させる。
【0028】
以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法によって得られた発光素子(以下、これらを総称して、単に『本発明の発光素子等』と呼ぶ場合がある)においては、
第1界面と第2界面(あるいは、第3界面若しくは第4界面)との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させ、
発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、600nm乃至650nmであり、
第1電極上における有機層の膜厚は、1.1×10-7m乃至1.6×10-7mである形態(赤色を発光する赤色発光・副画素を構成する赤色発光の発光素子であり、赤色発光素子、赤色発光有機EL素子と呼ぶ)とすることができる。
【0029】
あるいは又、本発明の発光素子等においては、
第1界面と第2界面(あるいは、第3界面若しくは第4界面)との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させ、
発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、500nm乃至550nmであり、
第1電極上における有機層の膜厚は、9×10-8m乃至1.3×10-7mである形態(緑色を発光する緑色発光・副画素を構成する緑色発光の発光素子であり、緑色発光素子、緑色発光有機EL素子と呼ぶ)とすることができる。
【0030】
あるいは又、本発明の発光素子等においては、
第1界面と第2界面(あるいは、第3界面若しくは第4界面)との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させ、
発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、430nm乃至480nmであり、
第1電極上における有機層の膜厚は、6×10-8m乃至1.1×10-7mである形態(青色を発光する青色発光・副画素を構成する青色発光の発光素子であり、青色発光素子、青色発光有機EL素子と呼ぶ)とすることができる。
【0031】
以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様に係る発光素子を適用した有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)は、
(a)第1電極、
(b)開口部を有し、開口部の底部に第1電極が露出した絶縁層、
(c)開口部の底部に露出した第1電極の部分の上から、開口部を取り囲む絶縁層の部分に亙り設けられ、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(d)少なくとも有機層上に形成された半透過・反射膜(有機層側から、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の積層構造から成る)、
(e)半透過・反射膜を覆う抵抗層、及び、
(f)抵抗層上に形成された第2電極、
が、順次、積層されて成る発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子,有機EL素子)を、複数、有し、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
有機層上における半透過・反射膜の平均膜厚は、1nm乃至6nmであり、
絶縁層の上の半透過・反射膜の部分は、少なくとも部分的に不連続である。
【0032】
また、以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の第2の態様に係る発光素子を適用した有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)は、
(a)第1電極、
(b)開口部を有し、開口部の底部に第1電極が露出した絶縁層、
(c)開口部の底部に露出した第1電極の部分の上から、開口部を取り囲む絶縁層の部分に亙り設けられ、有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(d)有機層を覆う抵抗層、及び、
(e)抵抗層上に形成された第2電極、
が、順次、積層されて成り、
有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層が形成されている発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子,有機EL素子)を、複数、有し、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
絶縁層の上の混合層の部分は、少なくとも部分的に不連続である。
【0033】
ここで、上記の有機EL表示装置において、絶縁層の上の半透過・反射膜等の部分は少なくとも部分的に不連続であるが、より具体的には、絶縁層の上の半透過・反射膜等の部分は、有機層の上の半透過・反射膜等の部分と、部分的に繋がっていてもよいし、繋がっていなくともよい。また、一部の有機EL素子にあっては、絶縁層の上の半透過・反射膜等の部分は有機層の上の半透過・反射膜等の部分と部分的に繋がっており、残りの有機EL素子にあっては、絶縁層の上の半透過・反射膜等の部分は有機層の上の半透過・反射膜等の部分と繋がっていない形態もあり得る。
【0034】
尚、有機EL表示装置において、複数の有機EL素子の配列を、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、デルタ配列、レクタングル配列とすることができる。
【0035】
以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法にあっては、第1電極上に異物又は突起部が存在する場合、異物又は突起部の近傍には半透過・反射膜等が形成されておらず、異物又は突起部の周辺に位置する半透過・反射膜等の部分と異物の下又は突起部の根本に位置する第1電極の部分との間には抵抗層が存在する構成とすることができる。ここで、異物(パーティクル)は、屡々、第1電極等の形成時や搬送時に第1電極上に付着する可能性が大である。一方、突起部は、屡々、第1電極等の形成時に生成する。
【0036】
以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子、本発明の発光素子の製造方法において、第1電極の平均光反射率は50%以上、好ましくは80%以上であり、半透過・反射膜等の平均光透過率は50%乃至97%、好ましくは60%乃至97%であることが望ましい。
【0037】
本発明の発光素子等における第1電極(光反射電極)を構成する材料(光反射材料)として、第1電極をアノード電極として機能させる場合、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)といった仕事関数の高い金属あるいは合金(例えば、銀を主成分とし、0.3重量%乃至1重量%のパラジウム(Pd)と、0.3重量%〜1重量%の銅(Cu)とを含むAg−Pd−Cu合金や、Al−Nd合金)を挙げることができる。更には、アルミニウム(Al)及びアルミニウムを含む合金等の仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料を用いる場合には、適切な正孔注入層を設けるなどして正孔注入性を向上させることで、アノード電極として用いることができる。第1電極の厚さとして、0.1μm乃至1μmを例示することができる。あるいは又、誘電体多層膜やアルミニウム(Al)といった光反射性の高い光反射膜上に、インジウムとスズの酸化物(ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物(IZO)等の正孔注入特性に優れた透明導電材料を積層した構造とすることもできる。一方、第1電極をカソード電極として機能させる場合、仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料から構成することが望ましいが、アノード電極として用いられる光反射率の高い導電材料に適切な電子注入層を設けるなどして電子注入性を向上させることで、カソード電極として用いることもできる。
【0038】
一方、本発明の発光素子等における第2電極を構成する材料(半光透過材料)として、第2電極をカソード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、有機層に対して電子を効率的に注入できるように仕事関数の値の小さな導電材料から構成することが望ましく、例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム、銀、カルシウム、ストロンチウム等の金属あるいは合金を挙げることができるし、ITOやIZOから成る所謂透明電極材料に適切な電子注入層を設けて電子注入性を向上させる構成としてもよい。第2電極の厚さとして、2×10-9m乃至5×10-8m、好ましくは、3×10-9m乃至2×10-8m、より好ましくは、5×10-9m乃至1×10-8mを例示することができる。また、第2電極に対して、低抵抗材料から成るバス電極(補助電極)を設け、第2電極全体として低抵抗化を図ってもよい。第2電極をアノード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、仕事関数の値の大きな導電材料から構成することが望ましい。
【0039】
第1電極や第2電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、メタルマスク印刷法といった各種印刷法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等を挙げることができる。各種印刷法やメッキ法によれば、直接、所望の形状(パターン)を有する第1電極や第2電極を形成することが可能である。尚、有機層を形成した後、第1電極や第2電極を形成する場合、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さな成膜方法、あるいは又、MOCVD法といった成膜方法に基づき形成することが、有機層のダメージ発生を防止するといった観点から好ましい。有機層の形成からこれらの電極等の形成までを大気に暴露することなく実行することが、大気中の水分による有機層の劣化を防止するといった観点から好ましい。第2電極と半透過・反射膜等とは、電気的に接続されていてもよいし、接続されていなくともよい。
【0040】
抵抗層、第1抵抗層、第2抵抗層、第3抵抗層は、例えば、スパッタリング法や、CVD法、イオンプレーティング法等のカバレッジの良好な成膜方法にて成膜することが好ましい。
【0041】
第1電極及び半透過・反射膜等は入射した光の一部を吸収し、残りを反射する。従って、反射光に位相シフトが生じる。この位相シフト量Φ1,Φ2は、第1電極及び半透過・反射膜等を構成する材料の複素屈折率の実数部分と虚数部分の値を、例えばエリプソメータを用いて測定し、これらの値に基づく計算を行うことで求めることができる(例えば、"Principles of Optic", Max Born and Emil Wolf, 1974(PERGAMON PRESS) 参照)。尚、有機層や第2電極、その他の層の屈折率もエリプソメータを用いて測定することで求めることができる。
【0042】
有機層は有機発光材料から成る発光層を備えているが、具体的には、例えば、正孔輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造、正孔輸送層と電子輸送層を兼ねた発光層との積層構造、正孔注入層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と電子注入層との積層構造から構成することができる。また、電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び正孔注入層を『タンデムユニット』とする場合、有機層は、第1のタンデムユニット、接続層、及び、第2のタンデムユニットが積層された2段のタンデム構造も有していてもよく、更には、3つ以上のタンデムユニットが積層された3段以上のタンデム構造も有していてもよく、これらの場合、発光色を赤色、緑色、青色と各タンデムユニットで変えることで、全体として白色を発光する有機層を得ることができる。有機層の形成方法として、真空蒸着法等の物理的気相成長法(PVD法);スクリーン印刷法やインクジェット印刷法といった印刷法;転写用基板上に形成されたレーザ吸収層と有機層の積層構造に対してレーザを照射することでレーザ吸収層上の有機層を分離して、有機層を転写するといったレーザ転写法、各種の塗布法を例示することができる。有機層を真空蒸着法に基づき形成する場合、例えば、所謂メタルマスクを用い、係るメタルマスクに設けられた開口を通過した材料を堆積させることで有機層を得ることができる。
【0043】
ここで、本発明にあっては、正孔輸送層(正孔供給層)の厚さと電子輸送層(電子供給層)の厚さは、概ね等しいことが望ましい。あるいは又、正孔輸送層(正孔供給層)よりも電子輸送層(電子供給層)を厚くしてもよく、この場合には、低い駆動電圧で高効率化に必要、且つ、十分な発光層への電子供給が可能となる。即ち、本発明の発光素子等にあっては、アノード電極に相当する電極と発光層との間に正孔輸送層を配置し、しかも、電子輸送層よりも薄い膜厚で形成することで、正孔の供給を増大させることが可能となる。そして、これにより、正孔と電子の過不足がなく、且つ、キャリア供給量も十分多いキャリアバランスを得ることができるため、高い発光効率を得ることができる。また、正孔と電子の過不足がないことで、キャリアバランスが崩れ難く、駆動劣化が抑制され、発光寿命を長くすることができる。
【0044】
本発明において、複数の発光素子あるいは有機EL素子は、第1基板上あるいは第1基板の上方に形成されている。ここで、第1基板として、あるいは又、第2基板として、高歪点ガラス基板、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)基板、硼珪酸ガラス(Na2O・B2O3・SiO2)基板、フォルステライト(2MgO・SiO2)基板、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)基板、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。但し、後述する下面発光型の有機EL表示装置にあっては、第1基板は、発光素子が出射する光に対して透明であることが要求される。第1基板と第2基板を構成する材料は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0045】
有機EL表示装置において、第1電極は、例えば、層間絶縁層上に設けられている。そして、この層間絶縁層は、第1基板上に形成された発光素子駆動部を覆っている。発光素子駆動部は、1又は複数の薄膜トランジスタ(TFT)から構成されており、TFTと第1電極とは、層間絶縁層に設けられたコンタクトプラグを介して電気的に接続されている。層間絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料;SiN系材料;ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。層間絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、各種印刷法等の公知のプロセスが利用できる。後述する下面発光型の有機EL表示装置にあっては、層間絶縁層は、発光素子からの光に対して透明な材料から構成する必要があるし、発光素子駆動部は発光素子からの光を遮らないように形成する必要がある。一方、層間絶縁層上に設けられた絶縁層は、平坦性に優れ、しかも、有機層の水分による劣化を防止して発光輝度を維持するために吸水率の低い絶縁材料から構成することが好ましく、具体的には、ポリイミド樹脂を挙げることができる。第2電極に対して低抵抗材料から成るバス電極(補助電極)を設ける場合、絶縁層の射影像中にバス電極(補助電極)の射影像が含まれるような位置にバス電極(補助電極)を設けることが望ましい。
【0046】
有機EL表示装置にあっては、第2電極の上方に固定された第2基板を備えている構成とすることができる。尚、このような構成の有機EL表示装置を便宜上、『上面発光型の有機EL表示装置』と呼ぶ場合がある。一方、第2電極の下方に固定された第1基板を備えている構成とすることもできる。尚、このような構成の有機EL表示装置を便宜上、『下面発光型の有機EL表示装置』と呼ぶ場合がある。そして、上面発光型の有機EL表示装置において、第2電極と第2基板との間には、第2電極側から、保護膜及び接着層(封止層)が形成されている形態とすることができる。ここで、保護膜を構成する材料として、発光層で発光した光に対して透明であり、緻密で、水分を透過させない材料を用いることが好ましく、具体的には、例えば、アモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)、アモルファス酸化シリコン(α−Si1-yOy)、アモルファスカーボン(α−C)、アモルファス酸化・窒化シリコン(α−SiON)、Al2O3を挙げることができるし、接着層(封止層)を構成する材料として、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤といった熱硬化型接着剤や、紫外線硬化型接着剤を挙げることができる。尚、下面発光型の有機EL表示装置にあっても、第1電極の上方に第2基板を配し、第1電極と第2基板の間には、第1電極側から、上述した保護膜及び接着層が形成されている形態とすることができる。
【0047】
有機層の上方には、有機層への水分の到達防止を目的として、上述したとおり、絶縁性あるいは導電性の保護膜を設けることが好ましい。保護膜は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、あるいは又、CVD法に基づき形成することが、下地に対して及ぼす影響を小さくすることができるので好ましい。あるいは又、有機層の劣化による輝度の低下を防止するために、成膜温度を常温に設定し、更には、保護膜の剥がれを防止するために保護膜のストレスが最小になる条件で保護膜を成膜することが望ましい。また、保護膜の形成は、既に形成されている電極を大気に暴露することなく形成することが好ましく、これによって、大気中の水分や酸素による有機層の劣化を防止することができる。更には、有機EL表示装置が上面発光型である場合、保護膜は、有機層で発生した光を例えば80%以上、透過する材料から構成することが望ましく、具体的には、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えば、上述した材料を例示することができる。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを生成しないため、透水性が低く、良好な保護膜を構成する。尚、保護膜を導電材料から構成する場合、保護膜を、ITOやIZOのような透明導電材料から構成すればよい。
【0048】
有機EL表示装置をカラー表示の有機EL表示装置としたとき、有機EL表示装置を構成する有機EL素子のそれぞれによって、副画素が構成される。ここで、1画素は、例えば、赤色を発光する赤色発光・副画素(赤色発光素子から構成される)、緑色を発光する緑色発光・副画素(緑色発光素子から構成される)、及び、青色を発光する青色発光・副画素(青色発光素子から構成される)の3種類の副画素から構成されている。従って、この場合、有機EL表示装置を構成する有機EL素子の数をN×M個とした場合、画素数は(N×M)/3である。あるいは又、有機EL表示装置を、液晶表示装置用のバックライト装置や面状光源装置を含む照明装置として用いることができる。
【0049】
発光素子からの光が通過する第2基板や第1基板には、必要に応じて、カラーフィルターや遮光膜(ブラックマトリクス)を形成してもよい。
【0050】
場合によっては、赤色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RR、緑色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RG、及び、青色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RBの値を異ならせてもよい。即ち、例えば、
RB>RG
RB>RR
としてもよい。RB,RG,RRを異ならせるためには、例えば、赤色発光素子を構成する抵抗層の厚さと、緑色発光素子を構成する抵抗層の厚さと、青色発光素子を構成する抵抗層の厚さとを異ならせればよい。あるいは又、赤色発光素子を構成する抵抗層の構成材料と、緑色発光素子を構成する抵抗層の構成材料と、青色発光素子を構成する抵抗層の構成材料とを異ならせればよい。あるいは又、赤色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量と、緑色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量と、青色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量とを異ならせればよい。
【0051】
また、場合によっては、第2電極を外部の回路に接続するための取出し電極を、有機EL表示装置の外周領域に設けてもよい。ここで、有機EL表示装置の外周領域とは、表示領域を額縁状に包囲する領域であり、表示領域とは、有機EL表示装置としての実用上の画像表示機能を果たす略中央に位置する領域である。取出し電極は、第1基板あるいは第2基板に設けられており、例えば、チタン(Ti)膜、モリブデン(Mo)膜、タングステン(W)膜、タンタル(Ta)膜等の所謂高融点金属膜から構成すればよい。第2電極と取出し電極との接続は、例えば、取出し電極上に第2電極の延在部を形成すればよい。取出し電極の形成方法として、第1電極や第2電極の形成方法にて説明したと同様の方法を挙げることができる。
【実施例1】
【0052】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る発光素子及び本発明の発光素子の製造方法に関する。実施例1の発光素子を適用した有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図1に示し、実施例1の発光素子における有機層等の模式図を図2の(A)及び(B)に示す。
【0053】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7の有機EL表示装置は、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置であり、上面発光型である。即ち、第2電極を通して、更には、第2基板を通して光が出射される。実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7の有機EL表示装置は、発光素子(具体的には、有機EL素子)10を、複数(例えば、N×M=2880×540)、有する。尚、1つの発光素子(有機EL素子)10は、1つの副画素を構成する。従って、有機EL表示装置は、(N×M)/3の画素を有する。ここで、1画素は、赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、及び、青色を発光する青色発光副画素の3種類の副画素から構成されている。
【0054】
実施例1の発光素子(有機EL素子)は、
(A)第1電極21、
(B)有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、
(C)半透過・反射膜、
(D)抵抗層50、及び、
(E)第2電極22、
が、順次、積層されて成る。そして第1電極21は、発光層23Aからの光を反射し、第2電極22は、発光層23Aからの光を透過し、半透過・反射膜は、有機層23側から、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成り、有機層23上における半透過・反射膜の平均膜厚は1nm乃至6nmである。
【0055】
また、実施例1の有機EL表示装置は、
(a)第1電極21、
(b)開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24、
(c)開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙り設けられ、有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、
(d)少なくとも有機層23上に形成された半透過・反射膜(有機層23側から、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成る)、
(e)半透過・反射膜を覆う抵抗層50、及び、
(f)抵抗層50上に形成された第2電極22、
を具備した有機EL素子を、複数、有している。そして、第1電極21は発光層23Aからの光を反射し、第2電極22は発光層23Aからの光を透過し、有機層23上における半透過・反射膜の平均膜厚は1nm乃至6nmであり、絶縁層24の上の半透過・反射膜の部分は、少なくとも部分的に不連続である。
【0056】
尚、図2の(A)及び(B)、後述する図3の(A)、図7の(A)及び(B)、図12の(A)及び(B)、図13の(A)及び(B)においては、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成る半透過・反射膜を、1層で図示する。また、以下の説明においては、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42を総称して、『半透過・反射膜40』と表現する場合がある。
【0057】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例5、実施例7においては、第1電極21をアノード電極として用い、第2電極22をカソード電極として用いる。具体的には、第1電極21は、厚さ0.2μmのAl−Nd合金といった光反射材料から成り、第2電極22は、厚さ0.1μmのITOやIZOといった透明導電材料から成る。また、第1半透過・反射膜41は、厚さ2nmのカルシウム(Ca)から成り、第2半透過・反射膜42マグネシウム(Mg)を含む導電材料、より具体的には、厚さ3nmのMg−Ag(MgとAgとの体積比として、10:1)から成る。所望の形状にパターニングされた第1電極21は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。一方、第2電極22及び半透過・反射膜40は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法によって成膜されている。第2電極22及び半透過・反射膜40はパターニングされておらず、1枚のシート状に形成されている。尚、有機層23と半透過・反射膜40との間には、厚さ0.3nmのLiFから成る電子注入層(図示せず)が形成されている。第1電極21及び第2電極22の屈折率測定結果、第1電極21の光反射率測定結果、半透過・反射膜40の光透過率測定結果を、以下の表2に示す。尚、測定は、波長530nmにおいて行った結果である。
【0058】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7において、絶縁層24は、平坦性に優れ、しかも、有機層23の水分による劣化を防止して発光輝度を維持するために吸水率の低い絶縁材料、具体的には、ポリイミド樹脂から構成されている。有機層23は、例えば、正孔輸送層、及び、電子輸送層を兼ねた発光層の積層構造から構成されているが、図面では1層で表す場合がある。
【0059】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7において、有機EL素子を構成する第1電極21は、CVD法に基づき形成されたSiO2から成る層間絶縁層16(より具体的には、上層層間絶縁層16B)上に設けられている。そして、この層間絶縁層16は、ソーダガラスから成る第1基板11上に形成された有機EL素子駆動部を覆っている。有機EL素子駆動部は、複数のTFTから構成されており、TFTと第1電極21とは、層間絶縁層(より具体的には、上層層間絶縁層16B)に設けられたコンタクトプラグ18、配線17、コンタクトプラグ17Aを介して電気的に接続されている。尚、図面においては、1つの有機EL素子駆動部につき、1つのTFTを図示した。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。
【0060】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7において、第2電極22上には、有機層23への水分の到達防止を目的として、プラズマCVD法に基づき、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)から成る絶縁性の保護膜31が設けられている。保護膜31の上には、ソーダガラスから成る第2基板33が配されているが、保護膜31と第2基板33とは、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着されている。保護膜31及び接着層32の屈折率測定結果を、以下の表2に示す。尚、屈折率は、波長530nmにおける測定結果である。
【0061】
以上、纏めると、実施例1の発光素子の詳しい構成は、以下の表1のとおりである。
【0062】
[表1]
第2基板33 :ソーダガラス
接着層32 :アクリル系接着剤
保護膜31 :SiNx層(厚さ:5μm)
第2電極(カソード電極)22:ITO層(厚さ:0.1μm)
抵抗層50 :Nb2O5層(厚さ:0.5μm)
半透過・反射膜
第2半透過・反射膜42 :Mg−Ag膜(厚さ:3nm)
第1半透過・反射膜41 :Ca膜 (厚さ:2nm)
電子注入層 :LiF層(厚さ:0.3nm)
有機層23 :後述
第1電極(アノード電極)21:Al−Nd層(厚さ:0.2μm)
層間絶縁層16 :SiO2層
TFT :有機EL素子駆動部を構成
第1基板11 :ソーダガラス
【0063】
[表2]
第1電極21の屈折率
実数部:0.755
虚数部:5.466
半透過・反射膜40の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
第2電極22の屈折率
実数部:1.814
虚数部:0
抵抗層50の屈折率
実数部:2.285
虚数部:0
保護膜31の屈折率
実数部:1.87
虚数部:0
接着層32の屈折率
実数部:1.53
虚数部:0
第1電極21の光反射率 :85%
半透過・反射膜40の光透過率:60%
第2電極22の光反射率 : 2%
【0064】
尚、絶縁層24の上の半透過・反射膜の部分40Aは少なくとも部分的に不連続であるが、絶縁層24の上の半透過・反射膜の部分40Aは、有機層23の上の半透過・反射膜の部分40Bと部分的に繋がっている。場合によっては、絶縁層24の上の半透過・反射膜の部分40Aは、有機層23の上の半透過・反射膜の部分40Bと繋がっていない。あるいは又、場合によっては、一部の有機EL素子にあっては、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aは有機層23の上の半透過・反射膜40の部分40Bと部分的に繋がっており、残りの有機EL素子にあっては、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aは有機層23の上の半透過・反射膜40の部分40Bと繋がっていない。尚、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aの平均膜厚は、有機層23上における半透過・反射膜40の部分40Bの平均膜厚よりも薄い。従って、有機層23上における半透過・反射膜40の部分40Bの平均膜厚を1nm乃至6nmとすることで、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aを、確実に不連続な状態とすることができる。
【0065】
そして、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26と、半透過・反射膜40と有機層23との界面によって構成された第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を、半透過・反射膜40、更には、第2電極22から出射させる。
【0066】
また、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例6の発光素子においては、図2の(A)及び(B)に示すように、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26から発光層23Aの最大発光位置までの距離をL1、光学距離をOL1、半透過・反射膜40と有機層23との界面によって構成された第2界面27から発光層23Aの最大発光位置までの距離をL2、光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす。
【0067】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
【0068】
ここで、
λ :発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面26で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面27で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例6にあっては、(0,0)である。
【0069】
更には、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例6の発光素子においては、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26と、半透過・反射膜40と有機層23との界面によって構成された第2界面27との間の光学距離をOL、発光層23Aで発生した光が第1界面26と第2界面27で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する。
【0070】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7において、各有機層23は、具体的には、赤色発光副画素を構成する赤色発光有機EL素子における赤色発光有機層、緑色発光副画素を構成する緑色発光有機EL素子における緑色発光有機層、及び、青色発光副画素を構成する青色発光有機EL素子における青色発光有機層から構成されている。複数の有機EL素子の配列を、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、デルタ配列、あるいは、レクタングル配列とすることができる。
【0071】
即ち、赤色発光有機EL素子としての発光素子は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極22から出射させ、
発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、600nm乃至650nm(実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7にあっては、具体的には、620nm)であり、
第1電極21上における有機層23の膜厚は、1.1×10-7m乃至1.6×10-7m(実施例1にあっては、具体的には、140nm)である。
【0072】
具体的には、赤色発光有機層の構成は、以下の表3のとおりである。最大発光位置は、電子輸送層23Cと発光層23Aとの界面である(図2の(A)参照)。尚、表3、あるいは、後述する表4及び表5にあっては、下欄に位置する層ほど、第1電極に近いところに位置している。
【0073】
[表3]
【0074】
また、緑色発光有機EL素子としての発光素子は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極22から出射させ、
発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、500nm乃至550nm(実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7にあっては、具体的には、530nm)であり、
第1電極21上における有機層23の膜厚は、9×10-8m乃至1.3×10-7m(実施例1にあっては、具体的には、118nm)である。
【0075】
具体的には、緑色発光有機層の構成は、以下の表4のとおりである。尚、最大発光位置は、正孔輸送層23Bと発光層23Aとの界面である(図2の(B)参照)。
【0076】
[表4]
【0077】
また、青色発光有機EL素子としての発光素子は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極22から出射させ、
発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、430nm乃至480nm(実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例7にあっては、具体的には、460nm)であり、
第1電極21上における有機層23の膜厚は、6×10-8m乃至1.1×10-7m(実施例1にあっては、具体的には、88nm)である。
【0078】
具体的には、青色発光有機層の構成は、以下の表5のとおりである。尚、最大発光位置は、正孔輸送層23Bと発光層23Aとの界面である(図2の(B)参照)。
【0079】
[表5]
【0080】
実施例1、あるいは、後述する実施例3〜実施例7にあっては、抵抗層50は、1×104Ω・m(1×106Ω・cm)の電気抵抗率を有する酸化ニオブ(Nb2O5)から成り、有機層23の上方における抵抗層50の厚さは、0.5μmである。このような抵抗層50における電圧降下は、以下のとおりである。ここで、第2電極22及び抵抗層50の諸元を以下のとおりとする。
【0081】
[第2電極22]
電気抵抗率(ρ1) :3.0×10-4Ω・cm
膜厚(d1) :0.1μm
第2電極22を流れる電流密度(J1):10mA/cm2
[抵抗層50]
電気抵抗率(ρ2) :1.0×104Ω・cm〜1.0×106Ω・cm
膜厚(d2) :0.5μm
抵抗層50を流れる電流密度(J2) :10mA/cm2
【0082】
第2電極22のシート抵抗=(ρ1/d1)=30Ω/□
抵抗層50のシート抵抗 =(ρ2/d2)=2×108Ω/□〜2×1010Ω/□
【0083】
第2電極22における電圧降下=ρ1×d1×J1=3.0×10-11V
抵抗層50における電圧降下 =ρ2×d2×J2=5mV〜500mV
【0084】
以上のとおり、抵抗層50をNb2O5から構成する場合、抵抗層50における電圧降下は、最大でも0.5ボルト程度であると見積もることができ、有機EL素子あるいは有機EL表示装置の駆動においては、特段に問題となるような電圧降下の値ではない。
【0085】
赤色発光有機層、緑色発光有機層及び青色発光有機層におけるλ,L1,OL1,2OL1/λ,L2,OL2,2OL2/λ,nave,{−2Φ1/(2π)+m1},{−2Φ2/(2π)+m2}の値を、以下の表6に例示する。但し、m1=0,m2=0である。
【0086】
[表6]
【0087】
異物(パーティクル)が、第1電極21等の形成時や搬送時、屡々、第1電極21上に付着する。また、第1電極21の形成時、第1電極21からの突起部が、屡々、生成する。更には、有機層23の形成時、段差が発生する。このような異物や突起部によって、図3の(A)に模式的に図示するように、有機層23のカバレッジが完全ではなくなる。然るに、有機層23上において厚さ1nm乃至6nmといった非常に薄い半透過・反射膜40を形成するが故に、第1電極21上に異物又は突起部が存在し、また、段差が存在する場合、異物又は突起部、段差の近傍では、半透過・反射膜40の成膜時、一種の「段切れ」が発生し、異物又は突起部、段差の近傍には半透過・反射膜40が形成されない。そして、この状態で、抵抗層50を形成するので、異物又は突起部の周辺に位置する半透過・反射膜40の部分と異物の下又は突起部の根本に位置する第1電極21の部分との間には抵抗層50が存在する状態となる。
【0088】
また、上述したとおり、有機層23上の半透過・反射膜40の部分40Bの平均膜厚を1nm乃至6nmとするので、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aは、不連続な状態となる。より具体的には、発光層23Aを備えた有機層23が、開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙って設けられており、半透過・反射膜40も、有機層23上から、更には、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙って設けられている。ここで、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分は、開口部25に向かって下る傾斜が付いている。従って、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分の上の半透過・反射膜40の部分40Aの膜厚は、有機層23上の半透過・反射膜40の部分40Bの膜厚よりも薄くなる。それ故、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分の上の半透過・反射膜40の部分40Aは、不連続な状態(切れ切れの状態)となる。この状態を、模式的に図4に示すが、半透過・反射膜40の不連続な部分を黒く塗りつぶした。また、コンタクトプラグ18及び第1電極21を点線で示し、開口部25の縁部を一点鎖線で示した。図4においては、規則的に不連続な部分が設けられているように図示しているが、実際には、不連続な部分は不規則に設けられている。
【0089】
発光素子の駆動のために第1電極21及び第2電極22に電圧を印加したとき、第1電極21と第2電極22との間には抵抗層50が存在するので、たとえ、異物や突起部があったとしても、第1電極21と第2電極22との間で短絡が生じることがないし、第1電極21と半透過・反射膜40とが接触することもなく、欠陥画素や欠線が生じることを確実に防止することができる。尚、第1電極21と半透過・反射膜40とが接触すると、第1電極21と半透過・反射膜40とが同電位となり、有機層23において発光が生じなくなる。
【0090】
また、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例6にあっては、半透過・反射膜は、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成り、その形成方法にあっては、有機層23上に、PVD法に基づき、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42を、順次、成膜する。そして、このように、半透過・反射膜40を形成することで、抵抗層50と有機層23との間に良好なる電気的コンタクトを得ることができるし、有機層23へのキャリアの注入状態の改善を図ることができ、駆動電圧の低下を達成することができ、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0091】
実施例1の有機EL表示装置における相対輝度比の経時変化を調べた結果を、図3の(B)のグラフに示す。尚、図3の(B)の横軸は、有機EL表示装置の駆動時間(単位:時間)を示し、縦軸は相対輝度比を示す。ここで、第1半透過・反射膜41を形成せずに、厚さ5nmの第2半透過・反射膜42のみを形成した発光素子を備えた有機EL表示装置(比較例1)における相対輝度値をRL0、実施例1の有機EL表示装置における相対輝度値をRL1としたとき、相対輝度比は、
相対輝度比=RL1/RL0
で求められる。また、相対輝度値は、
相対輝度値=(所定時間経過後の輝度値)/(初期輝度値)
で求められる。
【0092】
図3の(B)から、時間経過に伴い、実施例1の有機EL表示装置は、比較例1の有機EL表示装置よりも、相対輝度比が大きいことが判る。即ち、2層構成の半透過・反射膜41,42を備えた実施例1の有機EL表示装置の方が、比較例1の有機EL表示装置よりも、初期輝度値からの輝度値の低下が少なく、長寿命であることが判る。また、実施例1の有機EL表示装置の駆動電圧(10ミリアンペア/cm2の電流を流したときの電圧)は、比較例1の有機EL表示装置と比べて、15%低減していた。
【0093】
以下、実施例1の有機EL表示装置の製造方法の概要を、図5の(A)〜(C)、図6の(A)〜(B)、及び、図7の(A)〜(B)を参照して説明する。
【0094】
[工程−100]
先ず、第1基板11上に、副画素毎にTFTを、周知の方法で作製する。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。次に、第1基板11上に、TFTを覆うように、SiO2から成る下層層間絶縁層16AをCVD法にて成膜した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、下層層間絶縁層16Aに開口16’を形成する(図5の(A)参照)。
【0095】
[工程−110]
次いで、下層層間絶縁層16A上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、アルミニウムから成る配線17を形成する。尚、配線17は、開口16’内に設けられたコンタクトプラグ17Aを介して、TFTのソース/ドレイン領域14に電気的に接続されている。配線17は、信号供給回路(図示せず)に接続されている。そして、全面にSiO2から成る上層層間絶縁層16BをCVD法にて成膜する。次いで、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、上層層間絶縁層16B上に開口18’を形成する(図5の(B)参照)。
【0096】
[工程−120]
その後、上層層間絶縁層16B上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、Al−Nd合金から成る第1電極21を形成する(図5の(C)参照)。尚、第1電極21は、開口18’内に設けられたコンタクトプラグ18を介して、配線17に電気的に接続されている。
【0097】
[工程−130]
次いで、開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24を、第1電極21を含む層間絶縁層16上に形成する(図6の(A)参照)。具体的には、スピンコーティング法及びエッチング法に基づき、厚さ1μmのポリイミド樹脂から成る絶縁層24を、層間絶縁層16の上、及び、第1電極21の周辺部の上に形成する。尚、開口部25を囲む絶縁層24の部分は、なだらかな斜面を構成していることが好ましい。
【0098】
[工程−140]
次に、開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙り、有機層23を形成する(図6の(B)参照)。尚、有機層23は、例えば、有機材料から成る正孔輸送層、電子輸送層を兼ねた発光層が順次積層されている。具体的には、絶縁層24を一種のスペーサとし、絶縁層24の上に各副画素を構成する有機層23を形成するためのメタルマスク(図示せず)を絶縁層24の突起部の上に載置した状態で、抵抗加熱に基づき、有機材料を真空蒸着する。有機材料は、メタルマスクに設けられた開口を通過し、副画素を構成する開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分の上に亙り堆積する。
【0099】
[工程−150]
その後、表示領域の全面に、第1半透過・反射膜41、第2半透過・反射膜42を、順次、形成する(図7の(A)参照)。半透過・反射膜40は、N×M個の有機EL素子を構成する有機層23の全面を覆っている。但し、絶縁層24の上の半透過・反射膜40の部分40Aは、前述したとおり、少なくとも部分的に不連続となる。半透過・反射膜40は、有機層23に対して影響を及ぼすことのない程度に成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法である真空蒸着法に基づき形成されている。第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の成膜条件を以下の表7に例示するが、Mg−Ag(体積比10:1)の共蒸着膜を成膜することで、第2半透過・反射膜42を得ることができる。また、有機層23を大気に暴露することなく、有機層23の形成と同一の真空蒸着装置内において連続して半透過・反射膜40の形成を行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。尚、半透過・反射膜40の成膜にあっては、不連続状態を得るためにはカバレッジが悪い方がよい。従って、成膜時の圧力を低くすることが好ましく、具体的には、例えば、1×10-3Pa以下が望ましい。
【0100】
[表7]
第1半透過・反射膜41の真空蒸着法に基づく成膜条件
Ca加熱温度 :480゜C
Ca成膜レート:0.05nm/秒
第2半透過・反射膜42の真空蒸着法に基づく成膜条件
Mg加熱温度 :280゜C
Mg成膜レート:0.05nm/秒
Ag加熱温度 :1100゜C
Ag成膜レート:0.05×{x/(100+x)}nm/秒
ここで、「x」はAg濃度(%)
【0101】
[工程−160]
次いで、1×104Ω・m(1×106Ω・cm)の電気抵抗率を有する酸化ニオブ(Nb2O5)から成り、有機層23の上方における厚さが0.5μmである抵抗層50を、スパッタリング法にて形成する。抵抗層50は第2電極22と接することになるが、抵抗値を高くして、抵抗層50を流れる電流を1副画素全体に流れる電流の1/10以下に抑えることができれば、たとえ、図3の(A)に示した状態が発生したとしても、表示画像において滅点、半滅点等の欠点、欠陥として認識されない。抵抗層50をNb2O5から構成する場合、抵抗層50に要求される特性を計算してみると、前述したとおりとなり、1×102Ω・m乃至1×104Ω・mの電気抵抗率が好ましい。また、抵抗層50の成膜時の回りこみによるカバレッジを考慮すると、成膜時の圧力は高い方が好ましく、0.1Pa乃至10Paとすることが望ましい。また、抵抗層50を酸化物半導体から構成する場合、成膜時の酸素濃度(酸素分圧)によって抵抗層50の電気抵抗率が変化する場合があるが、抵抗層50をNb2O5から構成する場合、成膜時の酸素濃度が変化しても(具体的には、例えば、酸素分圧が1×10-4Paから1×10-2Paまで変化しても)、1×102Ω・m〜1×104Ω・m(1×104Ω・cm〜1×106Ω・cm)までしか変化せず、安定した電気抵抗率を得ることができる。
【0102】
[工程−170]
その後、表示領域の全面に第2電極22を形成する(図7の(B)参照)。第2電極22は、N×M個の有機EL素子を構成する有機層23の全面を覆っている。但し、第2電極22は、抵抗層50、有機層23及び絶縁層24によって第1電極21とは絶縁されている。第2電極22も、有機層23に対して影響を及ぼすことのない程度に成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法であるロングスロー・マグネトロン・スパッタリング法に基づき形成されている。また、有機層23を大気に暴露することなく、有機層23の形成と同一の真空蒸着装置内において連続して第2電極22までの形成を行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。具体的には、厚さ0.1μmのITO層を全面に成膜することで、第2電極22を得ることができる。
【0103】
[工程−180]
次いで、第2電極22上に、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xNx)から成る絶縁性の保護膜31をプラズマCVD法に基づき形成する。保護膜31の形成は、第2電極22を大気に暴露することなく、連続して行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。その後、保護膜31と第2基板33とを、アクリル系接着剤から成る接着層32によって接着する。最後に、外部回路との接続を行うことで、有機EL表示装置を完成させることができる。
【0104】
尚、第2半透過・反射膜42を、マグネシウム(Mg)−銀(Ag)から構成する代わりに、マグネシウム(Mg)−カルシウム(Ca)から構成することもできる。具体的には、マグネシウムとカルシウムとの体積比は、Mg:Ca=9:1であり、第2半透過・反射膜の膜厚は2nmである。このような第2半透過・反射膜は、真空蒸着法によって成膜することができる。
【実施例2】
【0105】
実施例2は、実施例1の変形であり、抵抗層が、有機層側から、第1抵抗層及び第2抵抗層の積層構造を有し、第2抵抗層の電気抵抗率は、第1抵抗層の電気抵抗率よりも高い。実施例2にあっては、第1抵抗層及び第2抵抗層を構成する材料は、どちらもNb2O5であるが、Nb2O5をスパッタリング法にて成膜するときの酸素分圧を変えることで、第1抵抗層及び第2抵抗層の電気抵抗率R1,R2を以下のとおりとした。
【0106】
第1抵抗層の電気抵抗率R1:1×102Ω・m(1×104Ω・cm)
第2抵抗層の電気抵抗率R2:1×104Ω・m(1×106Ω・cm)
【0107】
抵抗層での電圧降下を測定すると、1層の抵抗層(電気抵抗率:1×104Ω・m(1×106Ω・cm)から構成したときの電圧降下の測定結果と比較して、実施例2にあっては、電圧降下の値が小さくなり、駆動電圧の低電圧化を図ることができた。
【0108】
抵抗層の構成が異なる点を除き、実施例2の有機EL表示装置、発光素子、有機EL素子の構成、構造は、実施例1の有機EL表示装置、発光素子、有機EL素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0109】
実施例3も実施例1の変形である。実施例1にあっては、赤色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値(抵抗層単位面積当たりの電気抵抗値。以下においても同じ)RR、緑色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RG、及び、青色発光素子を構成する抵抗層の電気抵抗値RBの値を同じとした。即ち、全面を抵抗層で一様に覆った。ところで、一般に、発光波長の短い青色発光素子における光学距離OLBは、発光波長がより長い緑色発光素子、赤色発光素子における光学距離OLG,OLRよりも短い。それ故、青色発光素子における有機層の厚さを、緑色発光素子、赤色発光素子における有機層の厚さよりも薄くする必要がある。それ故、青色発光素子における第1電極と第2電極との間での短絡が最も生じ易いので、青色発光素子における抵抗層の厚さを最も厚くする必要がある。一方、各発光素子を構成する材料、有機層の膜厚に依存して、一般に、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧は、青色発光素子、赤色発光素子、緑色発光素子の順に高くなる傾向にあるが、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧を、出来るだけ揃えることが好ましい。また、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧にばらつきがある場合、駆動電圧のばらつきを出来るだけ少なくすることが好ましい。更には、画素の面積が異なる場合、例えば、赤色発光素子の面積≦緑色発光素子の面積<青色発光素子の面積の場合、画素の面積が大きいほど、滅点の数が増加し易い。
【0110】
図8に、画素の駆動のための全電流が変化したときの、全電流に対するリーク電流変化の割合のシミュレーション結果を示す。全電流が少なくなると、異物によるリーク電流の割合が増えることになる。更に、抵抗層の抵抗が高くなると、リーク電流が抑えられる結果となっている。尚、図8において、曲線「A」は、抵抗層の抵抗が1×104Ωのときのデータであり、曲線「B」は、抵抗層の抵抗が1×105Ωのときのデータであり、曲線「C」は、抵抗層の抵抗が1×106Ωのときのデータである。
【0111】
実施例3にあっては、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧を、出来るだけ揃えるために、赤色発光素子を構成する抵抗層の単位面積当たりの抵抗値RR、緑色発光素子を構成する抵抗層の単位面積当たりの抵抗値RG、及び、青色発光素子を構成する抵抗層の単位面積当たりの抵抗値RBの値を異ならせる。即ち、RB>RG,RB>RRとする。より具体的には、
RB=150Ω・cm2
RG= 50Ω・cm2
RR=100Ω・cm2
とした。これによって、青色発光素子、緑色発光素子及び赤色発光素子の駆動電圧を揃えることができ、駆動電圧の上昇を最小限とすることができ、しかも、第1電極と第2電極との間での短絡の発生を確実に抑制することができる。
【0112】
例えば、赤色発光素子を構成する抵抗層の厚さと、緑色発光素子を構成する抵抗層の厚さと、青色発光素子を構成する抵抗層の厚さとを異ならせた。具体的には、抵抗層を成膜した後、青色発光素子を構成する抵抗層をレジスト層で被覆し、緑色発光素子及び赤色発光素子を構成する抵抗層を露出し、緑色発光素子及び赤色発光素子を構成する抵抗層を厚さ方向に部分的にエッチングする。次いで、レジスト層を除去し、青色発光素子及び赤色発光素子を構成する抵抗層をレジスト層で被覆し、緑色発光素子を構成する抵抗層を露出させ、緑色発光素子を構成する抵抗層を厚さ方向に部分的にエッチングする。あるいは又、赤色発光素子を構成する抵抗層の構成材料と、緑色発光素子を構成する抵抗層の構成材料と、青色発光素子を構成する抵抗層の構成材料とを異ならせればよいし(例えば、実施例2において、第1抵抗層及び第2抵抗層を形成した後、赤色発光素子及び緑色発光素子の上方に位置する第2抵抗層の部分をエッチング法にて除去する)、あるいは又、赤色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量と、緑色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量と、青色発光素子を構成する抵抗層の導電性に寄与する物質の含有量とを異ならせればよい。
【実施例4】
【0113】
実施例4も実施例1の変形である。実施例4にあっては、第2電極22を外部の回路(図示せず)に接続するための取出し電極60を、有機EL表示装置の外周領域に設ける。実施例4において、取出し電極60は、第1基板11の外周部に設けられており、チタン(Ti)膜から成る。第2電極22の延在部22Aが取出し電極60の上にまで延びている。実施例4における有機EL表示装置の外周部近傍の模式的な一部断面図を図9に示し、外周部近傍における取出し電極60及び第2電極22の配置を模式的に図10に示す。尚、図10において、取出し電極60の外周を実線で示し、内周を点線で示し、取出し電極60を明確化するため、取出し電極60に右上から左下に延びる斜線を付した。一方、延在部22Aを含む第2電極22を明確化するため、第2電極22に左上から右下に延びる斜線を付した。取出し電極60は、例えば、実施例1の[工程−100]から[工程−130]のいずれかの工程中、あるいは、これらの工程と工程の間で、例えば、スパッタリング法とエッチング法の組合せ、メタルマスクを用いたPVD法、リフトオフ法等に基づき、表示領域を額縁状に包囲するように取出し電極60を設ければよい。尚、取出し電極60が第1基板11に設けられた各種配線等と重複する部分が生じる場合には、取出し電極60と各種配線等との間に絶縁膜を形成すればよい。
【実施例5】
【0114】
実施例5も、実施例1の変形である。図11並びに図12の(A)及び(B)に示すように、実施例5の発光素子(有機EL素子)にあっては、第1電極21と有機層23との間に導電体膜70が設けられている。そして、導電体膜70は、発光層23Aからの光の一部を透過させる。また、第1電極21は、導電体膜70を透過した光を反射する。ここで、第1電極21上における導電体膜70の平均膜厚は、1nm乃至6nmである。より具体的には、導電体膜70は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と銀(Ag)、より具体的には、厚さ2nmのMg−Agから成る。ここで、マグネシウムと銀との体積比は、Mg:Ag=10:1である。所望の形状にパターニングされた第1電極21及び導電体膜70は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。導電体膜70の光透過率は70%であった。尚、導電体膜を、マグネシウム(Mg)−銀(Ag)から構成する代わりに、マグネシウム(Mg)−カルシウム(Ca)から構成することもできる。具体的には、マグネシウムとカルシウムとの体積比は、Mg:Ca=9:1であり、導電体膜の膜厚は2nmである。尚、図11及び図12、並びに、後述する図13の(A)、(B)において、半透過・反射膜40を1層で表している。
【0115】
実施例5の発光素子にあっては、第1電極21と有機層23との間に導電体膜70が形成されているので、有機層23から第1電極21に至る電気抵抗の低減を図ることができる結果、駆動電圧の低下を図ることができる。そして、駆動電圧を低下させることができるが故に、第1電極21と第2電極22との間に加わる電界強度が低減され、リークに起因した滅点を減少させることができるし、消費電力の大幅な低減を図ることもできる。具体的には、第1電極21と有機層23との間に導電体膜70が形成されていない発光素子と比較して、導電体膜70が形成された実施例6の発光素子においては、駆動電圧を1.1ボルト乃至1.32ボルト、低減することができた。
【0116】
尚、実施例5の発光素子、有機EL表示装置に対して、実施例2〜実施例4にて説明した発光素子を適用することができることは云うまでもない。
【実施例6】
【0117】
実施例6は、実施例5の変形である。実施例6の発光素子における有機層等の模式図を図13の(A)及び(B)に示す。尚、実施例6の発光素子を適用した実施例6における有機EL表示装置は、有機層の構成が異なる点、第1電極がカソード電極として機能し、第2電極がアノード電極として機能する点を除き、実施例5において説明した有機EL表示装置と同じ構成、構造を有し、参照番号が異なる点を除き、模式的な一部断面図も図11と同様であるが故に、詳細な説明は省略する。
【0118】
実施例6の発光素子(有機EL素子)は、
(A)第1電極621、
(B)導電体膜70、
(C)有機発光材料から成る発光層623Aを備えた有機層623、
(D)半透過・反射膜(有機層623側から、第1半透過・反射膜41及び第2半透過・反射膜42の積層構造から成る)、
(E)抵抗層50、及び、
(F)第2電極622、
が、順次、積層されて成る。
【0119】
そして、実施例5と異なり、有機層623は、第1電極621側から、電子輸送層623C、発光層623A、正孔輸送層、及び、正孔注入層が積層された構造を有する。但し、図面では1層で表す場合があるし、正孔注入層及び正孔輸送層を、正孔輸送層623B、1層で表す場合もある。また、第1電極621は、発光層623Aからの光を反射し、第2電極622は、発光層623Aからの光を透過し、有機層623上における半透過・反射膜40の平均膜厚は全体として1nm乃至6nmである。
【0120】
尚、実施例6にあっても、実施例5の発光素子と同様に、第1電極621と有機層623との間には導電体膜70が設けられており、導電体膜70は、発光層623Aからの光の一部を透過させ、第1電極621は、発光層623Aからの光を反射し、第1電極621上における導電体膜70の平均膜厚は1nm乃至6nmである。
【0121】
ここで、実施例6においては、第1電極621をカソード電極として用い、第2電極622をアノード電極として用いる。具体的には、第1電極621は、厚さ0.3μmのAl−Nd合金といった光反射材料から成り、第2電極622は、厚さ0.1μmのITOといった透明導電材料から成る。半透過・反射膜40及び導電体膜70の構成は、実施例5と同様である、実施例5と異なり、有機層623と半透過・反射膜40との間にはLiFから成る電子注入層は形成されておらず、その代わりに、有機層623と導電体膜70との間に、厚さ0.3nmのLiFから成る電子注入層(図示せず)が形成されている。
【0122】
以上、纏めると、実施例6の発光素子の詳しい構成は、以下の表8のとおりである。また、第1電極621及び第2電極622の屈折率測定結果、第1電極621の光反射率測定結果、半透過・反射膜40及び導電体膜70の光透過率測定結果を、以下の表9に示す。尚、測定は、波長530nmにおいて行った結果である。
【0123】
[表8]
第2基板33 :ソーダガラス
接着層32 :アクリル系接着剤
保護膜31 :SiNx層(厚さ:5μm)
第2電極(アノード電極)622:ITO層(厚さ:0.1μm)
抵抗層50 :Nb2O5層(厚さ:0.5μm)
半透過・反射膜
第2半透過・反射膜42 :Mg−Ag膜
第1半透過・反射膜41 :Ca膜
電子注入層 :LiF層(厚さ:0.3nm)
有機層623 :後述
導電体膜70 :Mg−Ag膜(厚さ:2nm)
第1電極(カソード電極)621:Al−Nd層(厚さ:0.3μm)
層間絶縁層16 :SiO2層
TFT :有機EL素子駆動部を構成
第1基板11 :ソーダガラス
【0124】
[表9]
第1電極621の屈折率
実数部:0.755
虚数部:5.466
半透過・反射膜40の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
導電体膜70の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
第2電極622の屈折率
実数部:1.814
虚数部:0
抵抗層50の屈折率
実数部:2.285
虚数部:0
保護膜31の屈折率
実数部:1.87
虚数部:0
接着層32の屈折率
実数部:1.53
虚数部:0
第1電極621の光反射率 :85%
半透過・反射膜40及び導電体膜70の光透過率:60%
導電体膜70の光透過率 :79%
第2電極622の光反射率 : 2%
【0125】
実施例6にあっては、第1電極621と有機層623(より具体的には、導電体膜70)との界面によって構成された第1界面26と、半透過・反射膜40と有機層623との界面によって構成された第2界面27との間で、発光層623Aで発光した光を共振させて、その一部を半透過・反射膜40、更には、第2電極622から出射させる。
【0126】
また、実施例6の発光素子において、図13の(A)及び(B)に示すように、第1界面26から発光層623Aの最大発光位置までの光学距離をOL1、第2界面27から発光層623Aの最大発光位置までの光学距離をOL2としたとき、上述した式(1−1)及び式(1−2)を満たす。
【0127】
更には、実施例6の発光素子において、第1界面26と第2界面27との間の光学距離をOL、発光層623Aで発生した光が第1界面26と第2界面27で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層623Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する。
【0128】
即ち、赤色発光素子(赤色発光有機EL素子)は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層623Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極622から出射させ、発光層623Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、600nm乃至650nm(実施例6にあっては、具体的には、620nm)であり、第1電極621上における有機層623の膜厚は、1.1×10-7m乃至1.6×10-7m(実施例6にあっては、具体的には、140nm)である。
【0129】
具体的には、赤色発光有機層の構成は、以下の表10のとおりである。最大発光位置は、電子輸送層623Cと発光層623Aとの界面である(図13の(A)参照)。尚、表10、あるいは、後述する表11及び表12にあっても、下欄に位置する層ほど、第1電極に近いところに位置している。
【0130】
[表10]
【0131】
また、緑色発光素子(緑色発光有機EL素子)は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層623Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極622から出射させ、発光層623Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、500nm乃至550nm(実施例6にあっては、具体的には、530nm)であり、第1電極621上における有機層623の膜厚は、9×10-8m乃至1.3×10-7m(実施例6にあっては、具体的には、118nm)である。
【0132】
具体的には、緑色発光有機層の構成は、以下の表11のとおりである。尚、最大発光位置は、正孔輸送層623Bと発光層623Aとの界面である(図13の(B)参照)。
【0133】
[表11]
【0134】
また、青色発光素子(青色発光有機EL素子)は、第1界面26と第2界面27との間で、発光層623Aで発光した光を共振させて、その一部を第2電極622から出射させ、発光層623Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長は、430nm乃至480nm(実施例6にあっては、具体的には、460nm)であり、第1電極621上における有機層623の膜厚は、6×10-8m乃至1.1×10-7m(実施例6にあっては、具体的には、88nm)である。
【0135】
具体的には、青色発光有機層の構成は、以下の表12のとおりである。尚、最大発光位置は、正孔輸送層623Bと発光層623Aとの界面である(図13の(B)参照)。
【0136】
[表12]
【0137】
実施例6の発光素子にあっては、有機層623は、第1電極621側から、電子輸送層623C、発光層623A、正孔輸送層、及び、正孔注入層が積層された構造を有し、発光層623Aへの電子注入性が向上する結果、駆動電圧の低下を図ることができる。そして、駆動電圧を低下させることができるが故に、第1電極621と第2電極622との間に加わる電界強度が低減され、リークに起因した滅点を減少させることができるし、消費電力の大幅な低減を図ることもできる。
【0138】
具体的には、実施例5の発光素子と比較して、実施例6の発光素子においては、駆動電圧を1.7ボルト乃至2.6ボルト、低減することができた。
【0139】
また、導電体膜70を形成していない実施例6の発光素子及び比較例6の発光素子における、消費電力と輝度特性の関係を図14の(A)に示し、駆動電圧と電流密度の関係を図14の(B)に示すが、実施例6の発光素子は、比較例6の発光素子と比べて、輝度特性の向上、電流密度の低下が達成されている。
【0140】
実施例6の発光素子、有機EL表示装置は、実質的に、実施例1の発光素子、有機EL表示装置と同様の方法で製造することができるので、製造方法の説明は省略する。
【0141】
尚、実施例6の発光素子、有機EL表示装置に対して、実施例2〜実施例4にて説明した発光素子を適用することができることは云うまでもない。
【実施例7】
【0142】
実施例7は、本発明の第2の態様に係る発光素子及び本発明の発光素子の製造方法に関する。実施例7の発光素子を適用した有機EL表示装置の模式的な一部断面図を図15に示し、実施例7の発光素子における有機層等の模式図を図16の(A)及び(B)に示す。
【0143】
実施例7の発光素子(有機EL素子)は、
(A)第1電極21、
(B)有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、
(C)抵抗層50、及び、
(D)第2電極22、
が、順次、積層されて成り、
第1電極21は、発光層23Aからの光を反射し、
第2電極22は、発光層23Aからの光を透過し、
有機層23と抵抗層50との間には、有機層23の最上層部を構成する材料と、抵抗層50の最下層部を構成する材料と、金属との混合層80が形成されている。
【0144】
また、実施例7の有機EL表示装置は、
(a)第1電極21、
(b)開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した絶縁層24、
(c)開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上から、開口部25を取り囲む絶縁層24の部分に亙り設けられ、有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、
(d)有機層23を覆う抵抗層50、及び、
(e)抵抗層50上に形成された第2電極22、
が、順次、積層されて成り、
有機層23と抵抗層50との間には、有機層23の最上層部を構成する材料と、抵抗層50の最下層部を構成する材料と、金属との混合層80が形成されている発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子,有機EL素子)を、複数、有し、
第1電極21は、発光層23Aからの光を反射し、
第2電極22は、発光層23Aからの光を透過し、
絶縁層24の上の混合層80の部分は、少なくとも部分的に不連続である。
【0145】
実施例7にあっては、混合層80は、より具体的には、有機層23の最上層部を構成する材料である上述したET085と、抵抗層50の最下層部を構成する材料であるNb2O5と、金属であるアルカリ土類金属(より具体的にはカルシウム,Ca)から構成されている。
【0146】
尚、実施例7における、第1電極21、第2電極22の構成、有機層23の構成は、実施例1における第1電極21、第2電極22の構成、有機層23の構成と同じである。また、有機層23と半透過・反射膜40との間には、実施例1と同様に、厚さ0.3nmのLiFから成る電子注入層(図示せず)が形成されている。更には、実施例7の発光素子(有機EL素子)、有機EL表示装置の構成、構造は、半透過・反射膜40の代わりに混合層80が設けられている点を除き、実質的に、実施例1の発光素子(有機EL素子)、有機EL表示装置の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、混合層80の屈折率及び光透過率測定結果は、以下の表13のとおりであった。
【0147】
[表13]
混合層80の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
混合層80の光透過率:60%
【0148】
絶縁層24の上の混合層の部分は少なくとも部分的に不連続であるが、絶縁層24の上の混合層の部分は、有機層23の上の混合層の部分と部分的に繋がっている。場合によっては、絶縁層24の上の混合層の部分は、有機層23の上の混合層の部分と繋がっていない。あるいは又、場合によっては、一部の有機EL素子にあっては、絶縁層24の上の混合層の部分は有機層23の上の混合層の部分と部分的に繋がっており、残りの有機EL素子にあっては、絶縁層24の上の混合層の部分は有機層23の上の混合層の部分と繋がっていない。尚、絶縁層24の上の混合層の部分の平均膜厚は、有機層23上における混合層の部分の平均膜厚よりも薄い。従って、絶縁層24の上の混合層の部分を不連続な状態とすることができる。
【0149】
そして、実施例7にあっては、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26と、混合層80と有機層23との界面によって構成された第2界面27との間で、発光層23Aで発光した光を共振させて、その一部を、混合層80、更には、第2電極622から出射させる。
【0150】
また、実施例7の発光素子においては、図16の(A)及び(B)に示すように、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26から発光層23Aの最大発光位置までの距離をL1、光学距離をOL1、混合層80と有機層23との界面によって構成された第2界面27から発光層23Aの最大発光位置までの距離をL2、光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす。
【0151】
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
【0152】
ここで、
λ :発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面26で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面27で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、実施例7にあっては、(0,0)である。
【0153】
更には、実施例7の発光素子においては、第1電極21と有機層23との界面によって構成された第1界面26と、混合層80と有機層23との界面によって構成された第2界面27との間の光学距離をOL、発光層23Aで発生した光が第1界面26と第2界面27で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層23Aで発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する。
【0154】
実施例7の発光素子において、有機層23と抵抗層50との間には混合層80が形成されており、その形成方法にあっては、有機層23上に、PVD法に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜する。そして、このように、混合層80を形成することで、抵抗層50と有機層23との間に良好なる電気的コンタクトを得ることができるし、有機層23へのキャリアの注入状態の改善を図ることができ、駆動電圧の低下を達成することができ、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0155】
実施例7の発光素子は、実施例1の発光素子の製造工程における[工程−150]において、以下の表14に例示する成膜条件にて、有機層23上に、PVD法に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜し、更には、抵抗層を形成することで、有機層23の最上層部を構成する材料と、抵抗層50の最下層部を構成する材料と、第1半透過・反射膜を構成する材料及び第2半透過・反射膜を構成する材料が混然となった混合層80を得ることができる。
【0156】
[表14]
第1半透過・反射膜の真空蒸着法に基づく成膜条件
Al加熱温度 :1000゜C
Al成膜レート:0.05nm/秒
第2半透過・反射膜の真空蒸着法に基づく成膜条件
Mg加熱温度 :280゜C
Mg成膜レート:0.05nm/秒
Ag加熱温度 :1100゜C
Ag成膜レート:0.05×{x/(100+x)}nm/秒
ここで、「x」はAg濃度(%)
【0157】
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における発光素子や有機EL素子、有機EL表示装置の構成、構造、発光素子や有機EL素子、有機EL表示装置を構成する材料等は例示であり、適宜変更することができる。実施例7の発光素子にあっては、第2半透過・反射膜を成膜した後、第1半透過・反射膜を成膜してもよい。また、実施例7においては、場合によっては、1層の半透過・反射膜を成膜することでも(例えば、カルシウム、マグネシウム及び銀の共蒸着法に基づく半透過・反射膜の成膜、あるいは、アルミニウム、マグネシウム及び銀の共蒸着法に基づく半透過・反射膜の成膜)、有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層を形成することができる。
【0158】
実施例においては、前述したとおり、有機層を副画素毎に形成してもよいし、赤色発光・副画素及び緑色発光・副画素のそれぞれについては、その上に青色発光・副画素を構成する有機層が延在している構造とすることもできる。即ち、青色の発光層を共通層とし、表示領域全面に青色発光・副画素を構成する有機層を形成する形態とすることもできる。この場合、赤色発光・副画素に関しては、赤色を発光する有機層と青色を発光する有機層の積層構造となるが、第1電極と第2電極との間で電流を流すと赤色を発光するが、青色発光エネルギーが赤色発光有機層へエネルギー移動することで、赤色発光有機層の発光効率の向上を図ることができる。同様に、緑色発光・副画素に関しては、緑色を発光する有機層と青色を発光する有機層の積層構造となるが、第1電極と第2電極との間で電流を流すと緑色を発光するが、青色発光エネルギーが緑色発光有機層へエネルギー移動することで、緑色発光有機層の発光効率の向上を図ることができる。また、赤色発光有機層における発光層及び緑色発光有機層における発光層の上に全面に共通層を形成することで、青色発光有機層を構成する発光層を個別に形成することなく形成することができ、例えば、青色発光有機層を構成する発光層を形成するためのマスクが不要となり、量産性も向上する。あるいは又、例えば、赤色発光・副画素や緑色発光・副画素について、赤色発光・副画素や緑色発光・副画素を構成する赤色発光有機層や緑色発光有機層の上に青色発光有機層を形成してもよい。
【0159】
図17の(A)に、半透過・反射膜40の膜厚と波長530nmにおける平均光反射率の値の関係を例示する。図示するように、半透過・反射膜40の膜厚が薄くなると、平均光反射率は0に近づいていく。従って、半透過・反射膜40の膜厚が薄くなると、半透過・反射膜40は、殆どの光を透過するようになる。また、波長530nmの光が、或る層Aから層Aに接した層に入射したとき、層Aと層Bとの界面で反射されるときの平均光反射率と、層Aを構成する材料の屈折率と層Bを構成する材料の屈折率との差Δnの関係を図17の(B)に例示する。図示するように、フレネル反射に基づき、Δnの値が増加すると平均光反射率の値は増加する。
【0160】
従って、半透過・反射膜40の膜厚が薄くなり、半透過・反射膜40が殆どの光を透過するようになると、半透過・反射膜40と抵抗層50との界面である第3界面において、反射が生じる。あるいは又、抵抗層50が少なくとも2層の抵抗層の積層構造を有する場合、半透過・反射膜40と積層構造を有する抵抗層の構成材料等とに依存して、第1抵抗層と第2抵抗層との界面である第4界面において、主に、反射が生じる。その結果、第1界面と、半透過・反射膜40と抵抗層50との界面によって構成された第3界面との間で、発光層で発光した光を共振させ、あるいは又、第1界面と、第1抵抗層と第2抵抗層との界面によって構成された第4界面との間で、発光層で発光した光を共振させることができ、あるいは又、第1界面と第3界面との間で、発光層で発光した光を共振させ、且つ、第1界面と第4界面との間で、発光層で発光した光を共振させることができる。混合層を備えている場合も同様である。
【0161】
それ故、このような場合、第2界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2とする代わりに、第3界面若しくは第4界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2とすればよい。また、Φ2を、第3界面若しくは第4界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]とすればよい。あるいは又、第2界面との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第2界面で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]とする代わりに、第3界面若しくは第4界面との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第3界面若しくは第4界面で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]とすればよい。以上に説明したように、半透過・反射膜40と抵抗層50との界面である第3界面において主に反射が生じ、あるいは又、第1抵抗層と第2抵抗層との界面である第4界面において主に反射が生じる場合には、「半透過・反射膜と有機層との界面によって構成された第2界面」を、『半透過・反射膜と抵抗層との界面である第3界面』若しくは『第1抵抗層と第2抵抗層との界面である第4界面』と読み替えればよい。混合層を備えている場合も同様である。
【0162】
具体的には、実施例6における発光素子の変形例として、抵抗層を第1抵抗層と第2抵抗層との組合せとした以下の表15に示す構造を有する発光素子を作製したところ、半透過・反射膜と抵抗層との界面である第3界面、及び、第1抵抗層と第2抵抗層との界面である第4界面において反射が生じ、抵抗層を第2抵抗層のみとした発光素子と比較して、発光効率が1.3倍となった。尚、第1抵抗層を構成する材料の屈折率n1、第2抵抗層を構成する材料の屈折率n2、有機層の最上層を構成する材料の屈折率n0の関係は、
−0.6≦n0−n1≦−0.4
0.4≦n1−n2≦ 0.9
といった効率を重視する関係にある。
【0163】
[表15]
第2基板 :ソーダガラス
接着層 :アクリル系接着剤
保護膜 :SiNx層(厚さ:5μm)
第2電極 :ITO層(厚さ:0.1μm)
第2抵抗層 :厚さ0.5μm (屈折率n2:1.7)
第1抵抗層 :厚さ0.06μm(屈折率n1:2.4)
半透過・反射膜:
第2半透過・反射膜:Mg−Ag膜
第1半透過・反射膜:Ca膜
有機層(全体) :厚さ130nm(屈折率n9:1.8)
導電体膜 :Mg−Ag膜(厚さ:2nm)
第1電極 :Al−Nd層(厚さ:0.2μm)
層間絶縁層 :SiO2層
TFT :有機EL素子駆動部を構成
第1基板 :ソーダガラス
【符号の説明】
【0164】
10・・・発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)、11・・・第1基板、12・・・ゲート電極、13・・・ゲート絶縁膜、14・・・ソース/ドレイン領域、15・・・チャネル形成領域、16・・・層間絶縁層、16A・・・下層層間絶縁層、16’,18’・・・開口、16B・・・上層層間絶縁層、17・・・配線、17A,18・・・コンタクトプラグ、21・・・第1電極、22・・・第2電極、22A・・・第2電極の延在部、23・・・有機層、23A・・・発光層、24・・・絶縁層、25・・・開口部、26・・・第1界面、27・・・第2界面、31・・・保護膜、32・・・接着層、33・・・第2基板、40・・・半透過・反射膜、40A・・・絶縁層の上の半透過・反射膜の部分、40B・・・有機層の上の半透過・反射膜の部分、41・・・第1半透過・反射膜、42・・・第2半透過・反射膜、50・・・抵抗層、60・・・取出し電極、70・・・導電体膜、80・・・混合層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)半透過・反射膜、
(D)抵抗層、及び、
(E)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
半透過・反射膜は、有機層側から、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の積層構造から成り、
有機層上における半透過・反射膜の平均膜厚は、1nm乃至6nmである発光素子。
【請求項2】
第1半透過・反射膜は、カルシウム、アルミニウム、バリウム、又は、セシウムから成り、
第2半透過・反射膜は、マグネシウム−銀、マグネシウム−カルシウム、アルミニウム、又は、銀から成る請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
抵抗層を構成する材料の電気抵抗率は1×102Ω・m乃至1×106Ω・mであり、有機層の上方における抵抗層の厚さは0.1μm乃至2μmである請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、半透過・反射膜と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させる請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
第1界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL1、第2界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす請求項4に記載の発光素子。
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、(0,0)又は(1,0)又は(0,1)である。
【請求項6】
第1界面と第2界面との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第2界面で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
0.7≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦1.3
又は、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する請求項4に記載の発光素子。
【請求項7】
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)抵抗層、及び、
(D)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層が形成されている発光素子。
【請求項8】
金属はアルカリ土類金属を含む請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
抵抗層を構成する材料の電気抵抗率は1×102Ω・m乃至1×106Ω・mであり、有機層の上方における抵抗層の厚さは0.1μm乃至2μmである請求項7に記載の発光素子。
【請求項10】
第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、抵抗層と混合層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させる請求項7に記載の発光素子。
【請求項11】
第1界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL1、第2界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす請求項10に記載の発光素子。
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、(0,0)又は(1,0)又は(0,1)である。
【請求項12】
第1界面と第2界面との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第2界面で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
0.7≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦1.3
又は、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する請求項10に記載の発光素子。
【請求項13】
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)抵抗層、及び、
(D)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過する発光素子の製造方法であって、
有機層上に、物理的気相成長法に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜する工程を含む発光素子の製造方法。
【請求項1】
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)半透過・反射膜、
(D)抵抗層、及び、
(E)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
半透過・反射膜は、有機層側から、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜の積層構造から成り、
有機層上における半透過・反射膜の平均膜厚は、1nm乃至6nmである発光素子。
【請求項2】
第1半透過・反射膜は、カルシウム、アルミニウム、バリウム、又は、セシウムから成り、
第2半透過・反射膜は、マグネシウム−銀、マグネシウム−カルシウム、アルミニウム、又は、銀から成る請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
抵抗層を構成する材料の電気抵抗率は1×102Ω・m乃至1×106Ω・mであり、有機層の上方における抵抗層の厚さは0.1μm乃至2μmである請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、半透過・反射膜と有機層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させる請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
第1界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL1、第2界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす請求項4に記載の発光素子。
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、(0,0)又は(1,0)又は(0,1)である。
【請求項6】
第1界面と第2界面との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第2界面で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
0.7≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦1.3
又は、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する請求項4に記載の発光素子。
【請求項7】
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)抵抗層、及び、
(D)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過し、
有機層と抵抗層との間には、有機層の最上層部を構成する材料と、抵抗層の最下層部を構成する材料と、金属との混合層が形成されている発光素子。
【請求項8】
金属はアルカリ土類金属を含む請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
抵抗層を構成する材料の電気抵抗率は1×102Ω・m乃至1×106Ω・mであり、有機層の上方における抵抗層の厚さは0.1μm乃至2μmである請求項7に記載の発光素子。
【請求項10】
第1電極と有機層との界面によって構成された第1界面と、抵抗層と混合層との界面によって構成された第2界面との間で、発光層で発光した光を共振させて、その一部を第2電極から出射させる請求項7に記載の発光素子。
【請求項11】
第1界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL1、第2界面から発光層の最大発光位置までの光学距離をOL2としたとき、以下の式(1−1)及び式(1−2)を満たす請求項10に記載の発光素子。
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2×OL1/λ≦1.2{−Φ1/(2π)+m1} (1−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2×OL2/λ≦1.2{−Φ2/(2π)+m2} (1−2)
ここで、
λ :発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長
Φ1:第1界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ1≦0]
Φ2:第2界面で生じる反射光の位相シフト量(単位:ラジアン)[但し、−2π<Φ2≦0]
であり、(m1,m2)の値は、(0,0)又は(1,0)又は(0,1)である。
【請求項12】
第1界面と第2界面との間の光学距離をOL、発光層で発生した光が第1界面と第2界面で反射する際に生じる位相シフトの和をΦラジアン[但し、−2π<Φ≦0]、発光層で発生した光のスペクトルの最大ピーク波長をλとした場合、
0.7≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦1.3
又は、
−0.3≦{(2×OL)/λ+Φ/(2π)}≦0.3
を満足する請求項10に記載の発光素子。
【請求項13】
(A)第1電極、
(B)有機発光材料から成る発光層を備えた有機層、
(C)抵抗層、及び、
(D)第2電極、
が、順次、積層されて成り、
第1電極は、発光層からの光を反射し、
第2電極は、発光層からの光を透過する発光素子の製造方法であって、
有機層上に、物理的気相成長法に基づき、第1半透過・反射膜及び第2半透過・反射膜を、順次、成膜する工程を含む発光素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図8】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図8】
【図14】
【公開番号】特開2011−119047(P2011−119047A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273101(P2009−273101)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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