説明

発光素子実装方法及び発光素子実装構造

【課題】LED素子11の実装方法を改善する。
【解決手段】LED素子11のn側電極15とp側電極16を、LED素子11の光放射領域の側縁に沿って直線状に形成する。p側電極16は、透明な電極材料であるITO又はAu等の金属ナノ粒子を含有する金属ナノ粒子インクをインクジェットで線状に印刷して形成する。n側電極15も、Auナノ粒子インク等の金属ナノ粒子インクをインクジェットで線状に印刷して形成しても良い。LED素子11の両側の電極15,16と配線基板20のランド21,22との間に、絶縁性樹脂を用いてディスペンサ等により斜面部23,24を形成し、LED素子11の両側の電極15,16と配線基板20のランド21,22との間を接続する配線パターン25,26を、Agナノ粒子インク等の金属ナノ粒子インクをインクジェットで斜面部23,24の表面に印刷して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の実装方法を改善した発光素子実装方法及び発光素子実装構造に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、発光素子の代表的なものとしてLED(発光ダイオード)が知られているが、LEDを搭載部材(配線基板、リード等)に実装する場合、特許文献1(特開平9−298313号公報)に記載されているように、LEDを実装する搭載部材(配線基板、リード等)とLEDの電極との間をワイヤボンディングで配線するのが一般的である。
【0003】
また、特許文献2(特開平7−288340号公報)では、LEDの発光効率の向上等を目的として、LEDの少なくとも一方の電極を直線状に形成し且つ該電極の中央部にワイヤボンディング用の円形のパッド部を形成した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−298313号公報
【特許文献2】特開平7−288340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2のものは、いずれも、LEDを実装する搭載部材とLEDの電極との間をワイヤボンディングで配線する構成となっているが、ワイヤボンディングでは、熱圧着と超音波によってワイヤを接合するため、それらの衝撃によってLEDや搭載部材が破損したり、或は、耐衝撃性を確保するためにLEDや搭載部材を厚くして機械的強度を強化する必要があった。また、ワイヤボンディング後にLEDを樹脂で封止する際にワイヤが引っ張られて破損する可能性があった。しかも、LEDの電極に接続したワイヤの一部がLEDの上方に突出するため、LEDパッケージの高さ寸法が大きくなってしまい、LEDパッケージの低背化に限界があった。
【0006】
また、従来のLEDは、発光素子の光放射領域がワイヤボンディング用の円形の電極の遮光によって狭められてしまい、LEDの発光効率が低下するという欠点もあった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、発光素子の電極と搭載部材との間を接続する際に発光素子や搭載部材が破損することを防止できると共に、低背化の要求を満たし、且つ、発光素子の発光効率を向上できる発光素子実装方法及び発光素子実装構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、発光素子を搭載部材に実装する発光素子実装方法において、前記発光素子を前記搭載部材に接着する素子接着工程と、前記発光素子の表面に少なくとも一方の電極を該発光素子の光放射領域の側縁に沿って線状に形成する電極形成工程と、前記発光素子の電極と前記搭載部材とを接続する配線パターンをインクジェットで印刷して形成する配線パターン形成工程とを含むことを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、発光素子の電極と搭載部材との間を、インクジェットで印刷した配線パターンで接続するため、ワイヤボンディングが不要となり、ワイヤボンディング時の衝撃による発光素子や搭載部材の破損を防止できると共に、低背化の要求を満たすことができる。しかも、発光素子の少なくとも一方の電極を該発光素子の光放射領域の側縁に沿って線状に形成し、且つ、該電極からワイヤボンディング用の円形のパッド部を無くすことができるため、発光素子の光放射領域の面積を拡大でき(従来はワイヤボンディング用の円形のパッド部で光放射領域の面積が狭められていた)、更に、線状の電極によって発光素子のpn接合部に流れる電流の拡散性を向上させることができ、上述した光放射領域の面積拡大効果と相俟って、発光素子の発光効率を向上できる利点もある。
【0010】
本発明は、発光素子に形成する線状の電極を、金属の蒸着、メッキ、スパッタ、イオンプレーティング、スクリーン印刷等によって形成しても良いが、請求項2のように、電極形成工程で、電極材料の微粒子を含有するインクをインクジェットで線状に印刷して電極を形成するようにすると良い。このようにすれば、インクジェットによって線状の電極を簡単に形成することができる。
【0011】
この際、請求項3のように、透明な電極材料の微粒子を含有するインクを用いると良い。透明な電極材料を用いれば、発光素子の光放射領域の面積を一層拡大できる。
【0012】
更に、請求項4のように、電極形成工程で、電極を発光素子の光放射領域を取り囲むように形成しても良い。このようにすれば、発光素子のpn接合部に流れる電流の拡散性を一層向上させることができ、発光素子を効率良く発光させることができる。
【0013】
また、本発明は、発光素子の電極と搭載部材とを接続する配線パターンを発光素子の側面にインクジェットで直接印刷しても良いが、発光素子の構造によっては、発光素子の側面に配線パターンを直接印刷すると、配線パターンが発光素子とショートしたり、配線パターンの密着力が弱くなる可能性がある。しかも、発光素子の側面にインクジェットで配線パターンを印刷するには、インクジェットのインク噴射方向と発光素子の側面とが平行とならないようにどちらかを傾斜させる必要があり、面倒である。
【0014】
そこで、請求項5のように、配線パターン形成工程よりも前の工程で、発光素子の側面のうちの配線パターンを形成する領域を絶縁材料で斜面状に形成するようにすると良い。このようにすれば、インクジェットのインク噴射方向(又は発光素子)を傾斜させなくても、発光素子の側部に配線パターンをインクジェットで印刷できると共に、絶縁材料としてインクの密着力が強い材料を用いることで、配線パターンの密着力を強化しながら、配線パターンと発光素子とのショートも防止できる。
【0015】
また、請求項6のように、電極形成工程よりも前の工程で、発光素子の表面のうちインクジェットで電極を印刷する部分以外の部分にインクジェットのインクが付着しないように撥液性の表面処理を施すようにしても良い。このようにすれば、発光素子の表面のうち、インクジェットで電極を印刷する部分以外の部分に、インクジェットのインクが付着することを防止できる。
【0016】
尚、請求項7に係る発明は、前記請求項1に係る発明の技術思想を「発光素子実装構造」として表現したものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)は本発明の実施例1のLED実装構造を模式的に示す平面図、同図(b)は同縦断面図である。
【図2】図2(a)は実施例1のLEDを模式的に示す平面図、同図(b)は同縦断面図である。
【図3】図3は実施例1のLED実装方法を説明する工程図である。
【図4】図4(a)は実施例2のLEDを模式的に示す平面図、同図(b)は同縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施例1を図1乃至図3に基づいて説明する。
まず、図2に基づいてLED素子11(発光素子)の構成を説明する。
LED素子11は、サファイア基板等の絶縁性基板12上にn型半導体層13とp型半導体層14が積層されるように形成され、下側のn型半導体層13の一方側の端部が露出されてその上面にn側電極15が形成され、上側のp型半導体層14の他方側の端部上面にp側電極16が形成されている。
【0020】
本実施例1では、n側電極15とp側電極16は、LED素子11の光放射領域の側縁に沿って直線状に形成されている。n側電極15は、例えばAu、Au合金、Ag、Ag合金等の導体を用いて、蒸着、メッキ、スパッタ、イオンプレーティング、スクリーン印刷等によって形成されている。尚、n側電極15は従来と同様の円形状に形成しても良い。
【0021】
p側電極16も、n側電極15と同じ導体で形成しても良いが、本実施例1では、p側電極16は、透明な電極材料であるITOの微粒子(ナノサイズの粒子)を含有するITOナノ粒子インクをインクジェットで線状に印刷して形成している。透明な電極材料としては、ITOの他に、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)、CNT(カーボンナノチューブ)等のいずれかを用いても良い。
【0022】
或は、p側電極16は、Auナノ粒子等を含有する金属ナノ粒子インクをインクジェットで線状に印刷して形成しても良い。尚、n側電極15も、Auナノ粒子等を含有する金属ナノ粒子インクをインクジェットで線状に印刷して形成しても良い。
【0023】
LED素子11の表面のうち、両側の電極15,16以外の部分は、インクジェットのインクが付着しないように撥液性の表面処理17が施されている。両側の電極15,16の表面は、インクジェットのインクが付着しやすいように親液性の表面処理を施しても良い。
【0024】
次に、図1に基づいて上記構成のLED素子11を配線基板20(搭載部材)に実装するLED素子実装構造を説明する。配線基板20の素子搭載部には、接着剤(例えばAgペースト等)によりLED素子11が接着されている。配線基板20の実装面には、LED素子11の搭載部の両側にランド21,22がプリント配線方法等により形成されている。LED素子11の両側の電極15,16と配線基板20のランド21,22との間には、絶縁性樹脂(例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等)を用いてディスペンサ、インクジェット等により両側の電極15,16の側縁からランド21,22近傍に向けて下り傾斜する斜面部23,24が形成されている。斜面部23,24を形成する絶縁性樹脂は、インクの密着力が強い樹脂を用いると良い。尚、斜面部23,24の表面は、インクジェットのインクが付着しやすいように親液性の表面処理を施しても良い。
【0025】
LED素子11の両側の電極15,16と配線基板20のランド21,22との間を接続する配線パターン25,26が、Agナノ粒子インク等の金属ナノ粒子インクをインクジェットで斜面部23,24の表面に印刷して形成されている。
【0026】
この場合、LED素子11の発光層からの光が上からだけではなく、絶縁性基板12に反射して半導体層からも出光するため、n側電極15及び/又は配線パターン25,26を、上述した透明な電極材料によって形成しても良い。また、斜面部23,24を形成する絶縁性樹脂も、透明で屈折率の高い樹脂を用いると良く、更に、その樹脂の屈折率は、LED素子11を封止するモールド樹脂の屈折率と同等かそれ以上の屈折率の樹脂を用いることが望ましい。
【0027】
次に、図3を用いて、LED素子11を配線基板20に実装する各工程を説明する。
まず、工程(1)で、配線基板20の素子搭載部に接着剤(例えばAgペースト等)をディスペンサ等により塗布する。次の工程(2)で、LED素子11を配線基板20の素子搭載部に搭載して接着する。
【0028】
次の工程(3)で、LED素子11の両側の電極15,16と配線基板20のランド21,22との間に、絶縁性樹脂(例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等)を用いてディスペンサ、インクジェット等により両側の電極15,16の側縁からランド21,22近傍に向けて下り傾斜する斜面部23,24を形成する。
【0029】
斜面部23,24の硬化後、工程(4)に進み、LED素子11の光放射領域の側縁に沿ってITOナノ粒子インク又はAuナノ粒子インク等の金属ナノ粒子インクをインクジェットで直線状に印刷してp側電極16を形成する。n側電極15は、予め形成しておいても良いし、Auナノ粒子インク等の金属ナノ粒子インクをインクジェットで印刷して形成しても良い。
【0030】
尚、予め、LED素子11の表面のうち、p側電極16(n側電極15)を印刷する部分以外の部分に、インクジェットのインクが付着しないように撥液性の表面処理17を施しておいても良いし、p側電極16(n側電極15)をインクジェットで印刷する電極形成工程の前工程で、p側電極16(n側電極15)を印刷する部分以外の部分に、撥液性の表面処理17を施すようにしても良い。この際、撥液性の表面処理17のパターニングは、例えば、感光性の撥液樹脂材料をLED素子11の表面にスピンコートで成膜し、不要部分をUV光で除去することで、LED素子11の表面に撥液性の表面処理17のパターンを形成すれば良い。
【0031】
p側電極16(n側電極15)のインク乾燥後に工程(5)に進み、LED素子11の両側の電極15,16と配線基板20のランド21,22との間を接続する配線パターン25,26を、Agナノ粒子インク等の金属ナノ粒子インクをインクジェットで斜面部23,24の表面に印刷して形成する。
【0032】
配線パターン25,26のインク乾燥後に工程(6)に進み、LED素子11を搭載した配線基板20を焼成炉に搬入して、インクジェットで印刷したp側電極16(n側電極15)と配線パターン25,26を例えば150〜350℃で焼成する。これにより、LED素子11の実装工程が終了する。
【0033】
以上説明した本実施例1によれば、LED素子11の両側の電極15,16と配線基板20のランド21,22との間を、インクジェットで印刷した配線パターン25,26で接続するため、ワイヤボンディングが不要となり、ワイヤボンディング時の衝撃によるLED素子11や配線基板20の破損を防止できると共に、低背化の要求を満たすことができる。しかも、LED素子11の少なくともp側電極16を該LED素子11の光放射領域の側縁に沿って線状に形成し、且つ、該p側電極16からワイヤボンディング用の円形のパッド部を無くすことができるため、LED素子11の光放射領域の面積を拡大でき(従来はワイヤボンディング用の円形のパッド部で光放射領域の面積が狭められていた)、更に、線状のp側電極16によってLED素子11のpn接合部に流れる電流の拡散性を向上させることができ、上述した光放射領域の面積拡大効果と相俟って、LED素子11の輝度を向上できる利点もある。
【0034】
本発明は、p側電極16を、金属の蒸着、メッキ、スパッタ、イオンプレーティング、スクリーン印刷等によって形成しても良いが、本実施例1のように、ITOナノ粒子インク、Auナノ粒子インク等の金属ナノ粒子インクをインクジェットで線状に印刷してp側電極16を形成するようにすれば、インクジェットによって線状のp側電極16を簡単に形成することができる。しかも、透明な電極材料であるITOナノ粒子インクを用いてp側電極16を印刷すれば、LED素子11の光放射領域の面積を一層拡大できる。
【0035】
本発明は、LED素子11の両側の電極15,16と配線基板20のランド21,22との間を接続する配線パターンをLED素子11の側面にインクジェットで直接印刷しても良いが、LED素子の構造によっては、LED素子の側面に配線パターンを直接印刷すると、配線パターンがLED素子とショートしたり、配線パターンの密着力が弱くなる可能性がある。しかも、LED素子の側面にインクジェットで配線パターンを印刷するには、インクジェットのインク噴射方向とLED素子の側面とが平行とならないようにどちらかを傾斜させる必要があり、面倒である。
【0036】
そこで、本実施例1では、配線パターン形成工程(5)の前工程で、LED素子11の側面のうちの配線パターン25,26を形成する領域を絶縁性樹脂で斜面状に形成するようにしている。このようにすれば、インクジェットのインク噴射方向(又はLED素子11)を傾斜させなくても、LED素子11の側部に配線パターン25,26をインクジェットで印刷できると共に、絶縁性樹脂としてインクの密着力が強い樹脂を用いることで、配線パターン25,26の密着力を強化しながら、配線パターン25,26とLED素子11とのショートも防止できる。
【実施例2】
【0037】
図4に示す本発明の実施例2では、電極形成工程で、p側電極16にLED素子11の光放射領域を取り囲む包囲部16aを一体に形成するようにしている。p側電極16と包囲部16aの形成方法は、ITOナノ粒子インク、Auナノ粒子インク等の金属ナノ粒子インクをインクジェットで印刷して形成しても良いし、金属の蒸着、メッキ、スパッタ、イオンプレーティング、スクリーン印刷等によって形成しても良い。その他の事項は上記実施例1と同じである。
【0038】
本実施例2のように、p側電極16にLED素子11の光放射領域を取り囲む包囲部16aを一体に形成するようにすれば、LED素子11のpn接合部に流れる電流の拡散性を一層向上させることができ、LED素子11を効率良く発光させることができる。
尚、LED素子11を搭載する搭載部材は、配線基板に限定されず、リード等であっても良い。
【符号の説明】
【0039】
11…LED素子(発光素子)、13…n型半導体層、14…p型半導体層、15…n側電極、16…p側電極、16a…包囲部、20…配線基板(搭載部材)、21,22…ランド、23,24…斜面部、25,26…配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を搭載部材に実装する発光素子実装方法において、
前記発光素子を前記搭載部材に接着する素子接着工程と、
前記発光素子の表面に少なくとも一方の電極を該発光素子の光放射領域の側縁に沿って線状に形成する電極形成工程と、
前記発光素子の電極と前記搭載部材とを接続する配線パターンをインクジェットで印刷して形成する配線パターン形成工程と
を含むことを特徴とする発光素子実装方法。
【請求項2】
前記電極形成工程で、電極材料の微粒子を含有するインクをインクジェットで線状に印刷して前記電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の発光素子実装方法。
【請求項3】
前記電極材料は、透明な電極材料であることを特徴とする請求項2に記載の発光素子実装方法。
【請求項4】
前記電極形成工程で、前記電極を前記発光素子の光放射領域を取り囲むように形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の発光素子実装方法。
【請求項5】
前記配線パターン形成工程よりも前の工程で、前記発光素子の側面のうちの前記配線パターンを形成する領域を絶縁材料で斜面状に形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の発光素子実装方法。
【請求項6】
前記電極形成工程よりも前の工程で、前記発光素子の表面のうちインクジェットで前記電極を印刷する部分以外の部分に、インクジェットのインクが付着しないように撥液性の表面処理を施すことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の発光素子実装方法。
【請求項7】
発光素子を搭載部材に実装する発光素子実装構造において、
前記発光素子の少なくとも一方の電極は、該発光素子の光放射領域の側縁に沿って線状に形成され、
前記発光素子の電極と前記搭載部材との間は、インクジェットで印刷して形成した配線パターンで接続されていることを特徴とする発光素子実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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