発光素子
【課題】簡単な構成で光取り出し効率を向上させるとともに、色ずれも少なくした発光素子を提供することである。
【解決手段】透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子10において、凹凸構造は、平面部20bと、平面部20bより凹んだ凹部20aとで形成され、光取り出し面を平面部20bに垂直な方向に投影した面積に対する平面部20bの面積の割合が0〜25%であり、凹部20aの開口部d2の長さに対する凹部20aの深さh2のアスペクト比が0.25〜0.3であり、透明基板の屈折率をnとした場合、透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さい構成とする。
【解決手段】透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子10において、凹凸構造は、平面部20bと、平面部20bより凹んだ凹部20aとで形成され、光取り出し面を平面部20bに垂直な方向に投影した面積に対する平面部20bの面積の割合が0〜25%であり、凹部20aの開口部d2の長さに対する凹部20aの深さh2のアスペクト比が0.25〜0.3であり、透明基板の屈折率をnとした場合、透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さい構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、薄型の発光材料として有機発光素子やLED(Light Emitting Diode)などが注目されている。例えば、有機発光素子は、低電力で高い輝度を得ることができ、視認性、応答速度、寿命、消費電力の点で優れている。一方、有機発光素子の光の利用効率は20%程度であり、素子内での損失が大きい。
【0003】
図23は、従来の有機発光素子の概略断面図である。有機発光素子100は、図中の下層から順に、金属電極101、屈折率が約1.8の有機発光層102、屈折率が約1.8の透明電極103、屈折率が約1.5の透明基板104が積層されて構成される。図中の110a〜110eの矢印は有機発光層102から発生した光のうち特徴的なものを示している。
【0004】
光110aは、発光面である有機発光層102に対して垂直方向の光であり、透明基板104を透過して光取り出し側(空気側)に取り出される。光110bは、透明基板104と空気との界面に臨界角以下の浅い角度で入射した光であり、透明基板104と空気との界面で屈折して光取り出し側に取り出される。光110cは、透明基板104と空気との界面に臨界角より深い角度で入射した光であり、透明基板104と空気との界面で全反射して光取り出し側に取り出せない光である。これによる損失を基板損失と呼び、通常20%程度の損失がある。
【0005】
光110dは、透明電極103と透明基板104との界面に臨界角より深い角度で入射した光のうち共振条件を満たした光であり、透明電極103と透明基板104との界面で全反射して導波モードが発生し、有機発光層102及び透明電極103内に閉じ込められる光である。これによる損失を導波損失と呼び、通常20〜25%程度の損失がある。光110eは、金属電極101へ入射して金属電極101内の自由電子と作用し、導波モードの一種であるプラズモンモードが発生して金属電極101の表面近傍に閉じ込められる光である。これによる損失をプラズモン損失と呼び、通常30〜40%程度の損失がある。
【0006】
このように、従来の有機発光素子100においては、基板損失、導波損失及びプラズモン損失があるので、それらの損失を少なくし、より多くの光を取り出すことが課題となっている。
【0007】
例えば、特許文献1には、基板損失を低減して光取り出し効率を向上させるために、基板表面にマイクロレンズシートを設けた構成が開示されている。また、特許文献2には、基板損失を低減して光取り出し効率を向上させるために、基板表面に光拡散層を設けた構成が開示されている。また、特許文献3には、基板損失を低減して光取り出し効率を向上させるとともに、観察角度による色味の変化を少なくするために、基板表面に透明樹脂及び微粒子を含んだ凹凸構造層を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−123436号公報
【特許文献2】特許第4393788号公報
【特許文献3】特許第4614012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1、2の技術は、いずれも透明基板の空気との界面の形状を工夫することによって基板損失を減らし、光取り出し効率を向上させようとするものであり、特許文献3は、それに加えて観察角度による色味の変化、いわゆる色ずれを少なくしようとするものである。
【0010】
このように、特許文献1、2の構成では1つの課題(光取り出し効率向上)しか解決できないので、色ずれの課題を解決するためには他の構成を追加しなければならない。一方、特許文献3の構成では2つの課題を解決することができる。しかしながら、特許文献3の構成では凹凸構造の中に微粒子を混ぜ込まなければならず、複雑な構成となっている。構成が複雑になると生産性が低下するとともに、コストが上昇するという問題が生じる。そして、これらの問題は有機発光素子だけでなくLEDなど他の発光素子でもいえることである。
【0011】
そこで本発明は、簡単な構成で光取り出し効率を向上させるとともに、色ずれも少なくした発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より凹んだ凹部又は該平面部より突出した凸部とで形成され、前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、前記凹部の開口部の長さに対する前記凹部の深さのアスペクト比又は前記凸部の基部の長さに対する前記凸部の高さのアスペクト比が、0.25〜0.3であり、前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
上記の発光素子において、前記凹部又は凸部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることが望ましい。
【0014】
また本発明は、透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より凹んだ凹部とで形成され、前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、前記凹部の開口部の長さに対する前記凹部の深さのアスペクト比が0.75以上であり、前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする。
【0015】
上記の発光素子において、前記凹部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることが望ましい。
【0016】
また本発明は、透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より突出した凸部とで形成され、前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、前記凸部の基部の長さに対する前記凸部の高さのアスペクト比が1.0以上であり、前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする。
【0017】
上記の発光素子において、前記凸部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることが望ましい。
【0018】
また上記の発光素子において、前記凹凸構造と前記透明基板とが同じ屈折率を有することが望ましい。
【0019】
また上記の発光素子において、前記凹凸構造と前記透明基板とが近い屈折率を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、光取り出し面の凹凸構造のアスペクト比と平面部の面積の割合と透明基板の空気配光分布とを最適化することにより、簡単な構成で光取り出し効率を向上させるとともに、色ずれも少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の有機発光素子の概略断面図である。
【図2】図1の一部の平面図である。
【図3】図1のマイクロレンズシート部分の拡大図である。
【図4】a<0.5の楕円半球の凹凸構造の断面図である。
【図5】a=0.5の半球の凹凸構造の断面図である。
【図6】a>0.5の楕円半球の凹凸構造の断面図である。
【図7】アスペクト比に対する1面透過率の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態の有機発光素子からマイクロレンズシートを省略した場合の透明基板内での配光分布を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態の有機発光素子からマイクロレンズシートを省略した場合の空気配光分布を示す図である。
【図10】凸部のアスペクト比を変化させた場合の光取り出し効率を示すグラフである。
【図11】凸部のアスペクト比を変化させた場合の色ずれを示すグラフである。
【図12】楕円半球の凹部を有する凹凸構造の断面図である。
【図13】図12の平面図である。
【図14】凹部のアスペクト比を変化させた場合の光取り出し効率を示すグラフである。
【図15】凹部のアスペクト比を変化させた場合の色ずれを示すグラフである。
【図16】正四角錐の凸部を有する凹凸構造の断面図である。
【図17】図16の平面図である。
【図18】正四角錐の凹部を有する凹凸構造の断面図である。
【図19】図18の平面図である。
【図20】正四角錐の凹部を有する凹凸構造におけるアスペクト比に対する光取り出し効率を平面部の各種面積比について示したグラフである。
【図21】正四角錐の凹部を有する凹凸構造におけるアスペクト比に対する色ずれを平面部の各種面積比について示したグラフである。
【図22】実施例1〜10及び比較例1〜5の評価結果を示す図である。
【図23】従来の有機発光素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の発光素子の一例として以下の実施形態では有機発光素子を用いて説明するが、無機発光素子、LEDなど各種発光素子にも同様に適用できる。
【0023】
〈有機発光素子の構成〉
図1は、本発明の一実施形態の有機発光素子の概略断面図であり、図2は、その一部の平面図である。有機発光素子10は、図中の下層から順に、裏面電極11、有機発光層12、透明電極13、透明基板14、マイクロレンズシート15が積層されて構成される。この有機発光素子10は、いわゆるボトムエミッション方式である。
【0024】
説明の便宜上、図1において、紙面の左右方向をX方向、紙面に垂直な方向をY方向、紙面の上下方向(各層の積層方向)をZ方向と定義する。
【0025】
裏面電極11は、陽極又は陰極としての役割と光を透明基板14側に反射させるミラーとしての役割があり、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル、チタン、ナトリウム、カルシウム等の反射率が60%以上の金属材料又はそれらの何れかを含む合金などを用いることができる。
【0026】
有機発光層12は、発光層を含む有機化合物または錯体の単層または複数層であり、例えば、陽極と接する正孔輸送層、発光材料で形成された発光層、陰極と接する電子輸送層等からなり、数nmから数百nmの厚みである。屈折率は1.8前後である。また、フッ化リチウム層や無機金属塩の層或いはそれらを含有する層等が、任意の位置に形成されていてもよい。発光層は少なくとも一種の発光材からなるもので、蛍光発光性化合物又は燐光発光性化合物等を用いることができる。
【0027】
有機発光層12の構成としては、上述の構成も含めて例えば、以下の(i)〜(v)の構成などを採用できる。
(i)(陽極)/発光層/電子輸送層/(陰極)
(ii)(陽極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(陰極)
(iii)(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/(陰極)
(iv)(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)
(v)(陽極)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)
【0028】
正孔輸送層は正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0029】
電子輸送層は電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0030】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0031】
正孔注入層及び電子注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層間に設けられる層のことである。
【0032】
透明電極13は、裏面電極11の反対電極であり、例えば、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透過率が40%以上の導電性透明材料を用いることができる。屈折率は有機発光層12と同じく1.8前後である。
【0033】
透明基板14は透明材料であり、例えば、0.1〜1mmの厚みである。屈折率は1.5前後〜1.8前後である。
【0034】
透明基板14としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルクロライド(PVC)等の樹脂や水晶などを用いることができる。好ましくは、有機発光素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。透明基板14をフレキシブルなフィルム状の基材で形成することにより、面光源を湾曲させることができ、種々の方向に向かって発光させることができる。
【0035】
マイクロレンズシート15は、光の角度を変える素子であり、光取り出し側の表面(光取り出し面)が凹凸形状(凹凸構造)であればよく、例えば、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐、四角錐台、その他の角錐、角錐台などの凹又は凸形状を採用できる。図1では凸形状の楕円半球を採用している。
【0036】
図2に示すように、マイクロレンズシート15の凹凸構造は、楕円半球の凸部15aと、凸部15a同士の隙間の平面部15b(X−Y面)とで形成されている。換言すれば、マイクロレンズシート15の凹凸構造は、平面部15bと、平面部15bより突出した凸部15aとで形成されている。
【0037】
これにより、図23に示した、透明基板と空気との界面で全反射して光取り出し側に取り出せなかった光110cが、マイクロレンズシート15に入射し、その凹凸構造で角度を変えられて光16a、16bとして取り出されたり、角度を変えた反射によって光16c〜16eとなり、再びマイクロレンズシート15に入射して取り出されたりする。
【0038】
そして、マイクロレンズシート15は、透明基板14との境界でのフレネル反射や全反射を抑える観点から、透明基板14と近い値の屈折率を有することが望ましく(例えば、透明基板の屈折率が1.5の場合、マイクロレンズシートの屈折率が1.4〜1.6)、
透明基板14と同じ値の屈折率を有することが最も望ましい(例えば、透明基板及びマイクロレンズシートの屈折率が1.5)。
【0039】
そして、マイクロレンズシート15を貼着した透明基板14上に、透明電極13と有機発光層12と裏面電極11とを積層し、一方の端部で透明電極13を露出させ、他方の端部で裏面電極11を露出させて電極部を形成し、この電極部を電源部(不図示)の各々の電源配線(不図示)に接続し、有機発光層12に所定の直流電圧を印加して発光させる。
【0040】
なお、有機発光素子の光取り出し面が凹凸構造であればよいので、マイクロレンズシート15の代わりに、透明基板14の表面に転写等で凹凸構造を形成してもよい。
【0041】
なお、有機発光素子10を構成する有機化合物は、水分や大気中の酸素により劣化するため、透湿防止層(ガスバリア層)で封止して外部雰囲気から遮断して使用される。この透湿防止層は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0042】
〈有機発光素子の作製方法〉
次に、有機発光素子10の作製方法の一例として、マイクロレンズシート/透明基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる素子の作製法を説明する。
【0043】
まず、マイクロレンズシート15を貼着した透明基板14上に陽極用物質からなる透明電極13の薄膜を1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陽極を作製する。
【0044】
そして、この上に有機発光層12である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等の有機化合物薄膜を形成させる。
【0045】
これら各層の形成方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があり、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点からは、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
【0046】
有機発光層12を溶解または分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。また分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
【0047】
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる裏面電極11の薄膜を1μm以下、好ましくは、50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陰極を作製する。このようにして有機発光素子10が得られる。
【0048】
〈凹凸構造の特徴〉
図3は、図1のマイクロレンズシート15部分の拡大図である。凸部15aの基部、つまり凸部15aと平面部15bとの境界は、円形であり、その長さ(ここでは直径)をd1とする。また、凸部15aの高さをh1とする。このとき、基部の直径d1に対する凸部の高さh1のアスペクト比aは、h1/d1で表せる。例えば、a=0.5のとき凸部15aが半球になる。
【0049】
図4はa<0.5の楕円半球の凹凸構造の断面図、図5はa=0.5の半球の凹凸構造の断面図、図6はa>0.5の楕円半球の凹凸構造の断面図である。
【0050】
図4に示すように、a<0.5の場合、凸部で1回全反射した光(図4の矢印)は2回目以降も凸部で全反射し、透明基板側に戻ることになる。また、図5に示すように、a=0.5の場合も凸部で1回全反射した光(図5の矢印)は2回目以降も凸部で全反射し、透明基板側に戻ることになる。一方、図6に示すように、a>0.5の場合、凸部で1回全反射した光(図6の矢印)は2回目以降(図6では二回目)に凸部から空気側へ出射することがある。
【0051】
図7は、アスペクト比aに対する1面透過率Aの関係を示すグラフである。ここでいう1面透過率とは、一度凸部に入射した光が透明基板側に戻らずに出射する割合のことである。図7では、凸部での反射回数が1回、2回、3回、4回、1000回の光について示している。
【0052】
図7から、a≦0.5の場合は凸部での反射回数によらず1面透過率がほぼ同程度であるといえる。そして、a>0.5の場合は凸部で2回以上反射して出射する光の割合が増加することで、全体の透過率がa≦0.5の場合よりも向上している。透過率の向上は光取り出し効率の向上に直結する。
【0053】
また、凸部で複数回反射した光が空気側に取り出されることで、透明基板内での配光からずれた偏光方向となるので、出射方向がランダムになり、後述する色ずれが緩和する効果もある。
【0054】
ここまでの結果から、光取り出し効率の向上と色ずれの緩和を実現するためには、図1の有機発光素子10において、凸部15aの形状をa>0.5の楕円半球とすることが好ましいと言える。
【0055】
次に、色ずれについて検討する。光の波長、特に赤、緑、青の波長で配光分布が異なる場合、正面(0度方向)から見た色と斜め方向から見た色とがずれることに相当する。特に、照明光源等で白色光を取り出したい場合にこの色ずれが少ないことが重要となる。
【0056】
ここでの色ずれは、正面(0度)方向、5度、10度、・・・80度というように、5度刻みで光を見た場合のそれぞれの角度での波長分布から決まる色度を定義し、色度を色座標で表現する。そして、正面方向での色座標を基準色座標とした場合、5度、10度、・・・というようにそれぞれの角度での色座標の0度色座標からの座標ずれ量を各角度での色ずれとする。さらに、5〜80度までの16個の色ずれの最大値を最終的な色ずれと定義する。色ずれの値が小さい程、色ずれが小さい。
【0057】
図8は有機発光素子10からマイクロレンズシート15を省略した場合の透明基板14内での配光分布を示す図であり、図9は有機発光素子10からマイクロレンズシート15を省略した場合の空気配光分布(空気側に出射した光の分布)を示す図である。実線が青色光、長破線が緑色光、短破線が赤色光の分布であり、正面方向にて規格化している。ここでは、空気配光分布が1/n2よりも小さな透明基板14を用いている。
【0058】
図8に示すように、透明基板14内においては、斜めから見た場合、明らかに色ずれが生じていることがわかる。透明基板14内の配光が理想的な円形のランバート配光である場合、透明基板14の屈折率をnとすると、透明基板14の空気配光分布は1/n2となることが知られている。例えば、n=1.5とすると、全反射角度が約41度以内の光が空気側に出射することになる。図8では、全反射せずに空気側に出射する、約41度以内の部分のエネルギーがランバート配光の場合よりも小さくなっている。これは、空気配光分布が1/n2よりも小さな透明基板14を用いたことによる。
【0059】
また、図9の配光分布は図8の配光分布の中央部付近の分布をそのまま全体の角度に伸ばしたような形になっている。図9でも色ずれは生じていることがわかる。透明基板14に入射した光を100%としたとき、図9での光取り出し効率は22%、色ずれは0.074となる。
【0060】
次に、有機発光素子10における凸部15aのアスペクト比aと光取り出し効率と色ずれとの関係について検討する。
【0061】
図10は凸部15aのアスペクト比aを変化させた場合の光取り出し効率を示すグラフであり、図11は凸部15aのアスペクト比aを変化させた場合の色ずれを示すグラフである。
【0062】
図10に示すように、a≧0.25で光取り出し効率が良いといえる。一方、図11に示すように、a≧0.5でaが大きくなるにしたがって色ずれが小さくなっていることがわかる。そして、a≧1.0での色ずれは、色ずれが少ないといえる0.04を下回っている。
【0063】
したがって、a≧1.0の場合、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないといえる。
【0064】
また、透明基板14内の配光分布において、図8のように、全反射以上の斜め方向の光が多い場合、凹凸構造が斜め配光に対して略垂直な形状であると、光取り出し効率が向上し、かつ、色ずれが少なくなる場合がある。図11では、0.25≦a≦0.3の領域で色ずれが局所的に少なく(0.04以下)なっている。
【0065】
したがって、上記のa≧0.25で光取り出し効率が良いという結果と合わせると、0.25≦a≦0.3の場合、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないといえる。
【0066】
次に、マイクロレンズシートの凹凸構造が楕円半球の凹部と平面部とで構成される有機発光素子について説明する。凹凸構造以外は上記の有機発光素子10と同様の構成である。図12は楕円半球の凹部を有する凹凸構造の断面図、図13はその平面図である。マイクロレンズシートの凹凸構造は、楕円半球の凹部20aと、凹部20a同士の隙間の平面部20bとで形成されている。換言すれば、マイクロレンズシートの凹凸構造は、平面部20bと、平面部20bより凹んだ凹部20aとで形成されている。
【0067】
凹部20aの開口部、つまり凹部20aと平面部20bとの境界は、円形であり、その長さ(ここでは直径)をd2とする。また、凹部20aの深さをh2とする。このとき、開口部の直径d2に対する凹部20aの深さh2のアスペクト比aは、h2/d2で表せる。例えば、a=0.5のとき凹部20aが半球になる。
【0068】
この有機発光素子における凹部20aのアスペクト比aと光取り出し効率と色ずれとの関係について検討する。
【0069】
図14は凹部20aのアスペクト比aを変化させた場合の光取り出し効率を示すグラフであり、図15は凹部20aのアスペクト比aを変化させた場合の色ずれを示すグラフである。
【0070】
図14に示すように、a≧0.25で光取り出し効率が良いといえる。一方、図15に示すように、a≧0.5でaが大きくなるにしたがって色ずれが小さくなっていることがわかる。そして、a≧0.75での色ずれは、色ずれが少ないといえる0.04を下回っている。
【0071】
したがって、凹部20aを有する凹凸構造を採用したとき、a≧0.75の場合に、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないといえる。
【0072】
また、0.25≦a≦0.3の領域を見ても、局所的というわけではないが色ずれは少なく(0.04以下)なっている。したがって、上記のa≧0.25で光取り出し効率が良いという結果と合わせると、0.25≦a≦0.3の場合、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないといえる。
【0073】
上記では楕円半球の凸部15a又は凹部20aを有する凹凸構造について説明したが、円錐凸部、円錐凹部、四角錐凸部、四角錐凹部、円錐台凸部、円錐台凹部、四角錐台凸部、四角錐台凹部でも同様の傾向を示す。すなわち、各形状の凸部において、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないのは、a≧1.0の場合と、0.25≦a≦0.3の場合とである。一方、各形状の凹部において、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないのは、a≧0.75の場合と、0.25≦a≦0.3の場合とである。
【0074】
図16は正四角錐の凸部を有する凹凸構造の断面図、図17はその平面図である。マイクロレンズシートの凹凸構造は、正四角錐の凸部21aと、凸部21a同士の隙間の平面部21bとで形成されている。換言すれば、マイクロレンズシートの凹凸構造は、平面部21bと、平面部21bより突出した凸部21aとで形成されている。
【0075】
凸部21aの基部、つまり凸部21aと平面部21bとの境界は、正方形であり、その長さ(ここでは一辺の長さ)をd3とする。また、凸部21aの高さをh3とする。このとき、基部の一辺の長さd3に対する凸部21aの高さh3のアスペクト比aは、h3/d3で表せる。
【0076】
図18は正四角錐の凹部を有する凹凸構造の断面図、図19はその平面図である。マイクロレンズシートの凹凸構造は、正四角錐の凹部22aと、凹部22a同士の隙間の平面部22bとで形成されている。換言すれば、マイクロレンズシートの凹凸構造は、平面部22bと、平面部22bより凹んだ凹部22aとで形成されている。
【0077】
凹部22aの開口部、つまり凹部22aと平面部22bとの境界は、正四角錐であり、その長さ(ここでは一辺の長さ)をd4とする。また、凹部22aの深さをh4とする。このとき、開口部の一辺の長さd4に対する凹部22aの深さh4のアスペクト比aは、h4/d4で表せる。
【0078】
次に、正四角錐の凹部22aの凹凸構造を例に平面部の面積について検討する。光取り出し効率を高く、色ずれを少なくするには平面部22bの面積がなるべく小さいことが好ましい。しかし、凹凸構造を転写等によって形成する場合、加工上、ある程度の平面部22bの面積が必要となる。
【0079】
ここでは、マイクロレンズシートの各凹部22aを平面部22bに垂直な方向(Z方向)に投影した面積の和をS1とし、マイクロレンズシートの各平面部22bの面積の和をS2とする。このとき、凹凸構造の平面部22bの面積比は、マイクロレンズシートの光取り出し面を平面部22bに垂直な方向(Z方向)に投影した面積(S1+S2)に対する平面部22bの面積S2の割合として、S2/(S1+S2)で表せる。
【0080】
図20は正四角錐の凹部を有する凹凸構造におけるアスペクト比aに対する光取り出し効率を平面部の各種面積比について示したグラフである。図21は正四角錐の凹部を有する凹凸構造におけるアスペクト比aに対する色ずれを平面部の各種面積比について示したグラフである。図20、21では、平面部の面積比が0%、25%、50%、90%の場合について示している。
【0081】
図20に示すように、平面部の面積比が0%の場合に最も光取り出し効率が良く、25%でやや効率が落ち、50、90%では無視できないほど効率が落ちている。一方、図21に示すように、a≧0.25でaが大きくなるにしたがって大まかに色ずれが小さくなっていることがわかる。特に、a≧0.25で色ずれが少ないといえる0.04を下回っているのは、平面部の面積比が0%又は25%の場合である。
【0082】
したがって、正四角錐の凹部を有する凹凸構造を採用したとき、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないのは、a≧0.25においては平面部の面積比が0〜25%の場合であるといえる。
【0083】
上記の各種凹凸構造の有機発光素子の一例を実施例1〜10、比較例1〜5として図22に評価結果を示す。比較例1の有機発光素子は、有機発光素子10からマイクロレンズシート15を省略したものである。実施例1の有機発光素子は、a=1の楕円半球の凸部を接するように形成した凹凸構造を有する有機発光素子10である。実施例2の有機発光素子は、a=0.75の楕円半球の凹部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例3の有機発光素子は、a=1の円錐の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例4の有機発光素子は、a=0.75の円錐の凹部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例5の有機発光素子は、a=1の正四角錐の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例6の有機発光素子は、a=0.75の正四角錐の凹部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。
【0084】
実施例7の有機発光素子は、a=0.25の楕円半球の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例8の有機発光素子は、a=0.3の楕円半球の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。比較例3の有機発光素子は、a=0.5の楕円半球の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。
【0085】
実施例9の有機発光素子は、a=0.8の正四角錐の凹部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例10の有機発光素子は、a=0.8の正四角錐の凹部と25%の平面部とからなる凹凸構造を有するものである。比較例4の有機発光素子は、a=0.8の正四角錐の凹部と50%の平面部とからなる凹凸構造を有するものである。比較例5の有機発光素子は、a=0.8の正四角錐の凹部と90%の平面部とからなる凹凸構造を有するものである。
【0086】
図22において、光取り出し効率は、透明基板に入射した光を100%としたときの空気側へ取り出される光の割合である。また、倍率は、比較例1の光取り出し効率に対する各光取り出し効率の倍率である。また、光取り出し効率が良好であるものを○印、不良であるものを×印で表し、色ずれが良好であるものを○印、不良であるものを×印で表し、総合評価として光取り出し効率及び色ずれが良好であるものを○印、光取り出し効率及び/又は色ずれが不良であるものを×印で表している。
【0087】
この結果、実施例1〜10は比較例1よりも光取り出し効率及び色ずれが良好であり、比較例2は光取り出し効率及び色ずれが不良であり、比較例3は色ずれが不良であり、比較例4は色ずれが不良であり、比較例5は光取り出し効率及び色ずれが不良である。よって、実施例1〜10の有機発光素子であれば、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の発光素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定するものではない。特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
10 有機発光素子(発光素子)
14 透明基板
15a 凸部
15b、20b 平面部
20a 凹部
d1 基部の長さ
d2 開口部の長さ
h1 凸部の高さ
h2 凹部の深さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、薄型の発光材料として有機発光素子やLED(Light Emitting Diode)などが注目されている。例えば、有機発光素子は、低電力で高い輝度を得ることができ、視認性、応答速度、寿命、消費電力の点で優れている。一方、有機発光素子の光の利用効率は20%程度であり、素子内での損失が大きい。
【0003】
図23は、従来の有機発光素子の概略断面図である。有機発光素子100は、図中の下層から順に、金属電極101、屈折率が約1.8の有機発光層102、屈折率が約1.8の透明電極103、屈折率が約1.5の透明基板104が積層されて構成される。図中の110a〜110eの矢印は有機発光層102から発生した光のうち特徴的なものを示している。
【0004】
光110aは、発光面である有機発光層102に対して垂直方向の光であり、透明基板104を透過して光取り出し側(空気側)に取り出される。光110bは、透明基板104と空気との界面に臨界角以下の浅い角度で入射した光であり、透明基板104と空気との界面で屈折して光取り出し側に取り出される。光110cは、透明基板104と空気との界面に臨界角より深い角度で入射した光であり、透明基板104と空気との界面で全反射して光取り出し側に取り出せない光である。これによる損失を基板損失と呼び、通常20%程度の損失がある。
【0005】
光110dは、透明電極103と透明基板104との界面に臨界角より深い角度で入射した光のうち共振条件を満たした光であり、透明電極103と透明基板104との界面で全反射して導波モードが発生し、有機発光層102及び透明電極103内に閉じ込められる光である。これによる損失を導波損失と呼び、通常20〜25%程度の損失がある。光110eは、金属電極101へ入射して金属電極101内の自由電子と作用し、導波モードの一種であるプラズモンモードが発生して金属電極101の表面近傍に閉じ込められる光である。これによる損失をプラズモン損失と呼び、通常30〜40%程度の損失がある。
【0006】
このように、従来の有機発光素子100においては、基板損失、導波損失及びプラズモン損失があるので、それらの損失を少なくし、より多くの光を取り出すことが課題となっている。
【0007】
例えば、特許文献1には、基板損失を低減して光取り出し効率を向上させるために、基板表面にマイクロレンズシートを設けた構成が開示されている。また、特許文献2には、基板損失を低減して光取り出し効率を向上させるために、基板表面に光拡散層を設けた構成が開示されている。また、特許文献3には、基板損失を低減して光取り出し効率を向上させるとともに、観察角度による色味の変化を少なくするために、基板表面に透明樹脂及び微粒子を含んだ凹凸構造層を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−123436号公報
【特許文献2】特許第4393788号公報
【特許文献3】特許第4614012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1、2の技術は、いずれも透明基板の空気との界面の形状を工夫することによって基板損失を減らし、光取り出し効率を向上させようとするものであり、特許文献3は、それに加えて観察角度による色味の変化、いわゆる色ずれを少なくしようとするものである。
【0010】
このように、特許文献1、2の構成では1つの課題(光取り出し効率向上)しか解決できないので、色ずれの課題を解決するためには他の構成を追加しなければならない。一方、特許文献3の構成では2つの課題を解決することができる。しかしながら、特許文献3の構成では凹凸構造の中に微粒子を混ぜ込まなければならず、複雑な構成となっている。構成が複雑になると生産性が低下するとともに、コストが上昇するという問題が生じる。そして、これらの問題は有機発光素子だけでなくLEDなど他の発光素子でもいえることである。
【0011】
そこで本発明は、簡単な構成で光取り出し効率を向上させるとともに、色ずれも少なくした発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より凹んだ凹部又は該平面部より突出した凸部とで形成され、前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、前記凹部の開口部の長さに対する前記凹部の深さのアスペクト比又は前記凸部の基部の長さに対する前記凸部の高さのアスペクト比が、0.25〜0.3であり、前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
上記の発光素子において、前記凹部又は凸部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることが望ましい。
【0014】
また本発明は、透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より凹んだ凹部とで形成され、前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、前記凹部の開口部の長さに対する前記凹部の深さのアスペクト比が0.75以上であり、前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする。
【0015】
上記の発光素子において、前記凹部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることが望ましい。
【0016】
また本発明は、透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より突出した凸部とで形成され、前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、前記凸部の基部の長さに対する前記凸部の高さのアスペクト比が1.0以上であり、前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする。
【0017】
上記の発光素子において、前記凸部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることが望ましい。
【0018】
また上記の発光素子において、前記凹凸構造と前記透明基板とが同じ屈折率を有することが望ましい。
【0019】
また上記の発光素子において、前記凹凸構造と前記透明基板とが近い屈折率を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、光取り出し面の凹凸構造のアスペクト比と平面部の面積の割合と透明基板の空気配光分布とを最適化することにより、簡単な構成で光取り出し効率を向上させるとともに、色ずれも少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の有機発光素子の概略断面図である。
【図2】図1の一部の平面図である。
【図3】図1のマイクロレンズシート部分の拡大図である。
【図4】a<0.5の楕円半球の凹凸構造の断面図である。
【図5】a=0.5の半球の凹凸構造の断面図である。
【図6】a>0.5の楕円半球の凹凸構造の断面図である。
【図7】アスペクト比に対する1面透過率の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態の有機発光素子からマイクロレンズシートを省略した場合の透明基板内での配光分布を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態の有機発光素子からマイクロレンズシートを省略した場合の空気配光分布を示す図である。
【図10】凸部のアスペクト比を変化させた場合の光取り出し効率を示すグラフである。
【図11】凸部のアスペクト比を変化させた場合の色ずれを示すグラフである。
【図12】楕円半球の凹部を有する凹凸構造の断面図である。
【図13】図12の平面図である。
【図14】凹部のアスペクト比を変化させた場合の光取り出し効率を示すグラフである。
【図15】凹部のアスペクト比を変化させた場合の色ずれを示すグラフである。
【図16】正四角錐の凸部を有する凹凸構造の断面図である。
【図17】図16の平面図である。
【図18】正四角錐の凹部を有する凹凸構造の断面図である。
【図19】図18の平面図である。
【図20】正四角錐の凹部を有する凹凸構造におけるアスペクト比に対する光取り出し効率を平面部の各種面積比について示したグラフである。
【図21】正四角錐の凹部を有する凹凸構造におけるアスペクト比に対する色ずれを平面部の各種面積比について示したグラフである。
【図22】実施例1〜10及び比較例1〜5の評価結果を示す図である。
【図23】従来の有機発光素子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の発光素子の一例として以下の実施形態では有機発光素子を用いて説明するが、無機発光素子、LEDなど各種発光素子にも同様に適用できる。
【0023】
〈有機発光素子の構成〉
図1は、本発明の一実施形態の有機発光素子の概略断面図であり、図2は、その一部の平面図である。有機発光素子10は、図中の下層から順に、裏面電極11、有機発光層12、透明電極13、透明基板14、マイクロレンズシート15が積層されて構成される。この有機発光素子10は、いわゆるボトムエミッション方式である。
【0024】
説明の便宜上、図1において、紙面の左右方向をX方向、紙面に垂直な方向をY方向、紙面の上下方向(各層の積層方向)をZ方向と定義する。
【0025】
裏面電極11は、陽極又は陰極としての役割と光を透明基板14側に反射させるミラーとしての役割があり、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル、チタン、ナトリウム、カルシウム等の反射率が60%以上の金属材料又はそれらの何れかを含む合金などを用いることができる。
【0026】
有機発光層12は、発光層を含む有機化合物または錯体の単層または複数層であり、例えば、陽極と接する正孔輸送層、発光材料で形成された発光層、陰極と接する電子輸送層等からなり、数nmから数百nmの厚みである。屈折率は1.8前後である。また、フッ化リチウム層や無機金属塩の層或いはそれらを含有する層等が、任意の位置に形成されていてもよい。発光層は少なくとも一種の発光材からなるもので、蛍光発光性化合物又は燐光発光性化合物等を用いることができる。
【0027】
有機発光層12の構成としては、上述の構成も含めて例えば、以下の(i)〜(v)の構成などを採用できる。
(i)(陽極)/発光層/電子輸送層/(陰極)
(ii)(陽極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(陰極)
(iii)(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/(陰極)
(iv)(陽極)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)
(v)(陽極)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極)
【0028】
正孔輸送層は正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0029】
電子輸送層は電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0030】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0031】
正孔注入層及び電子注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層間に設けられる層のことである。
【0032】
透明電極13は、裏面電極11の反対電極であり、例えば、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の透過率が40%以上の導電性透明材料を用いることができる。屈折率は有機発光層12と同じく1.8前後である。
【0033】
透明基板14は透明材料であり、例えば、0.1〜1mmの厚みである。屈折率は1.5前後〜1.8前後である。
【0034】
透明基板14としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルクロライド(PVC)等の樹脂や水晶などを用いることができる。好ましくは、有機発光素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。透明基板14をフレキシブルなフィルム状の基材で形成することにより、面光源を湾曲させることができ、種々の方向に向かって発光させることができる。
【0035】
マイクロレンズシート15は、光の角度を変える素子であり、光取り出し側の表面(光取り出し面)が凹凸形状(凹凸構造)であればよく、例えば、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐、四角錐台、その他の角錐、角錐台などの凹又は凸形状を採用できる。図1では凸形状の楕円半球を採用している。
【0036】
図2に示すように、マイクロレンズシート15の凹凸構造は、楕円半球の凸部15aと、凸部15a同士の隙間の平面部15b(X−Y面)とで形成されている。換言すれば、マイクロレンズシート15の凹凸構造は、平面部15bと、平面部15bより突出した凸部15aとで形成されている。
【0037】
これにより、図23に示した、透明基板と空気との界面で全反射して光取り出し側に取り出せなかった光110cが、マイクロレンズシート15に入射し、その凹凸構造で角度を変えられて光16a、16bとして取り出されたり、角度を変えた反射によって光16c〜16eとなり、再びマイクロレンズシート15に入射して取り出されたりする。
【0038】
そして、マイクロレンズシート15は、透明基板14との境界でのフレネル反射や全反射を抑える観点から、透明基板14と近い値の屈折率を有することが望ましく(例えば、透明基板の屈折率が1.5の場合、マイクロレンズシートの屈折率が1.4〜1.6)、
透明基板14と同じ値の屈折率を有することが最も望ましい(例えば、透明基板及びマイクロレンズシートの屈折率が1.5)。
【0039】
そして、マイクロレンズシート15を貼着した透明基板14上に、透明電極13と有機発光層12と裏面電極11とを積層し、一方の端部で透明電極13を露出させ、他方の端部で裏面電極11を露出させて電極部を形成し、この電極部を電源部(不図示)の各々の電源配線(不図示)に接続し、有機発光層12に所定の直流電圧を印加して発光させる。
【0040】
なお、有機発光素子の光取り出し面が凹凸構造であればよいので、マイクロレンズシート15の代わりに、透明基板14の表面に転写等で凹凸構造を形成してもよい。
【0041】
なお、有機発光素子10を構成する有機化合物は、水分や大気中の酸素により劣化するため、透湿防止層(ガスバリア層)で封止して外部雰囲気から遮断して使用される。この透湿防止層は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0042】
〈有機発光素子の作製方法〉
次に、有機発光素子10の作製方法の一例として、マイクロレンズシート/透明基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる素子の作製法を説明する。
【0043】
まず、マイクロレンズシート15を貼着した透明基板14上に陽極用物質からなる透明電極13の薄膜を1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陽極を作製する。
【0044】
そして、この上に有機発光層12である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等の有機化合物薄膜を形成させる。
【0045】
これら各層の形成方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があり、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点からは、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
【0046】
有機発光層12を溶解または分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。また分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
【0047】
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる裏面電極11の薄膜を1μm以下、好ましくは、50nm〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陰極を作製する。このようにして有機発光素子10が得られる。
【0048】
〈凹凸構造の特徴〉
図3は、図1のマイクロレンズシート15部分の拡大図である。凸部15aの基部、つまり凸部15aと平面部15bとの境界は、円形であり、その長さ(ここでは直径)をd1とする。また、凸部15aの高さをh1とする。このとき、基部の直径d1に対する凸部の高さh1のアスペクト比aは、h1/d1で表せる。例えば、a=0.5のとき凸部15aが半球になる。
【0049】
図4はa<0.5の楕円半球の凹凸構造の断面図、図5はa=0.5の半球の凹凸構造の断面図、図6はa>0.5の楕円半球の凹凸構造の断面図である。
【0050】
図4に示すように、a<0.5の場合、凸部で1回全反射した光(図4の矢印)は2回目以降も凸部で全反射し、透明基板側に戻ることになる。また、図5に示すように、a=0.5の場合も凸部で1回全反射した光(図5の矢印)は2回目以降も凸部で全反射し、透明基板側に戻ることになる。一方、図6に示すように、a>0.5の場合、凸部で1回全反射した光(図6の矢印)は2回目以降(図6では二回目)に凸部から空気側へ出射することがある。
【0051】
図7は、アスペクト比aに対する1面透過率Aの関係を示すグラフである。ここでいう1面透過率とは、一度凸部に入射した光が透明基板側に戻らずに出射する割合のことである。図7では、凸部での反射回数が1回、2回、3回、4回、1000回の光について示している。
【0052】
図7から、a≦0.5の場合は凸部での反射回数によらず1面透過率がほぼ同程度であるといえる。そして、a>0.5の場合は凸部で2回以上反射して出射する光の割合が増加することで、全体の透過率がa≦0.5の場合よりも向上している。透過率の向上は光取り出し効率の向上に直結する。
【0053】
また、凸部で複数回反射した光が空気側に取り出されることで、透明基板内での配光からずれた偏光方向となるので、出射方向がランダムになり、後述する色ずれが緩和する効果もある。
【0054】
ここまでの結果から、光取り出し効率の向上と色ずれの緩和を実現するためには、図1の有機発光素子10において、凸部15aの形状をa>0.5の楕円半球とすることが好ましいと言える。
【0055】
次に、色ずれについて検討する。光の波長、特に赤、緑、青の波長で配光分布が異なる場合、正面(0度方向)から見た色と斜め方向から見た色とがずれることに相当する。特に、照明光源等で白色光を取り出したい場合にこの色ずれが少ないことが重要となる。
【0056】
ここでの色ずれは、正面(0度)方向、5度、10度、・・・80度というように、5度刻みで光を見た場合のそれぞれの角度での波長分布から決まる色度を定義し、色度を色座標で表現する。そして、正面方向での色座標を基準色座標とした場合、5度、10度、・・・というようにそれぞれの角度での色座標の0度色座標からの座標ずれ量を各角度での色ずれとする。さらに、5〜80度までの16個の色ずれの最大値を最終的な色ずれと定義する。色ずれの値が小さい程、色ずれが小さい。
【0057】
図8は有機発光素子10からマイクロレンズシート15を省略した場合の透明基板14内での配光分布を示す図であり、図9は有機発光素子10からマイクロレンズシート15を省略した場合の空気配光分布(空気側に出射した光の分布)を示す図である。実線が青色光、長破線が緑色光、短破線が赤色光の分布であり、正面方向にて規格化している。ここでは、空気配光分布が1/n2よりも小さな透明基板14を用いている。
【0058】
図8に示すように、透明基板14内においては、斜めから見た場合、明らかに色ずれが生じていることがわかる。透明基板14内の配光が理想的な円形のランバート配光である場合、透明基板14の屈折率をnとすると、透明基板14の空気配光分布は1/n2となることが知られている。例えば、n=1.5とすると、全反射角度が約41度以内の光が空気側に出射することになる。図8では、全反射せずに空気側に出射する、約41度以内の部分のエネルギーがランバート配光の場合よりも小さくなっている。これは、空気配光分布が1/n2よりも小さな透明基板14を用いたことによる。
【0059】
また、図9の配光分布は図8の配光分布の中央部付近の分布をそのまま全体の角度に伸ばしたような形になっている。図9でも色ずれは生じていることがわかる。透明基板14に入射した光を100%としたとき、図9での光取り出し効率は22%、色ずれは0.074となる。
【0060】
次に、有機発光素子10における凸部15aのアスペクト比aと光取り出し効率と色ずれとの関係について検討する。
【0061】
図10は凸部15aのアスペクト比aを変化させた場合の光取り出し効率を示すグラフであり、図11は凸部15aのアスペクト比aを変化させた場合の色ずれを示すグラフである。
【0062】
図10に示すように、a≧0.25で光取り出し効率が良いといえる。一方、図11に示すように、a≧0.5でaが大きくなるにしたがって色ずれが小さくなっていることがわかる。そして、a≧1.0での色ずれは、色ずれが少ないといえる0.04を下回っている。
【0063】
したがって、a≧1.0の場合、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないといえる。
【0064】
また、透明基板14内の配光分布において、図8のように、全反射以上の斜め方向の光が多い場合、凹凸構造が斜め配光に対して略垂直な形状であると、光取り出し効率が向上し、かつ、色ずれが少なくなる場合がある。図11では、0.25≦a≦0.3の領域で色ずれが局所的に少なく(0.04以下)なっている。
【0065】
したがって、上記のa≧0.25で光取り出し効率が良いという結果と合わせると、0.25≦a≦0.3の場合、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないといえる。
【0066】
次に、マイクロレンズシートの凹凸構造が楕円半球の凹部と平面部とで構成される有機発光素子について説明する。凹凸構造以外は上記の有機発光素子10と同様の構成である。図12は楕円半球の凹部を有する凹凸構造の断面図、図13はその平面図である。マイクロレンズシートの凹凸構造は、楕円半球の凹部20aと、凹部20a同士の隙間の平面部20bとで形成されている。換言すれば、マイクロレンズシートの凹凸構造は、平面部20bと、平面部20bより凹んだ凹部20aとで形成されている。
【0067】
凹部20aの開口部、つまり凹部20aと平面部20bとの境界は、円形であり、その長さ(ここでは直径)をd2とする。また、凹部20aの深さをh2とする。このとき、開口部の直径d2に対する凹部20aの深さh2のアスペクト比aは、h2/d2で表せる。例えば、a=0.5のとき凹部20aが半球になる。
【0068】
この有機発光素子における凹部20aのアスペクト比aと光取り出し効率と色ずれとの関係について検討する。
【0069】
図14は凹部20aのアスペクト比aを変化させた場合の光取り出し効率を示すグラフであり、図15は凹部20aのアスペクト比aを変化させた場合の色ずれを示すグラフである。
【0070】
図14に示すように、a≧0.25で光取り出し効率が良いといえる。一方、図15に示すように、a≧0.5でaが大きくなるにしたがって色ずれが小さくなっていることがわかる。そして、a≧0.75での色ずれは、色ずれが少ないといえる0.04を下回っている。
【0071】
したがって、凹部20aを有する凹凸構造を採用したとき、a≧0.75の場合に、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないといえる。
【0072】
また、0.25≦a≦0.3の領域を見ても、局所的というわけではないが色ずれは少なく(0.04以下)なっている。したがって、上記のa≧0.25で光取り出し効率が良いという結果と合わせると、0.25≦a≦0.3の場合、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないといえる。
【0073】
上記では楕円半球の凸部15a又は凹部20aを有する凹凸構造について説明したが、円錐凸部、円錐凹部、四角錐凸部、四角錐凹部、円錐台凸部、円錐台凹部、四角錐台凸部、四角錐台凹部でも同様の傾向を示す。すなわち、各形状の凸部において、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないのは、a≧1.0の場合と、0.25≦a≦0.3の場合とである。一方、各形状の凹部において、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないのは、a≧0.75の場合と、0.25≦a≦0.3の場合とである。
【0074】
図16は正四角錐の凸部を有する凹凸構造の断面図、図17はその平面図である。マイクロレンズシートの凹凸構造は、正四角錐の凸部21aと、凸部21a同士の隙間の平面部21bとで形成されている。換言すれば、マイクロレンズシートの凹凸構造は、平面部21bと、平面部21bより突出した凸部21aとで形成されている。
【0075】
凸部21aの基部、つまり凸部21aと平面部21bとの境界は、正方形であり、その長さ(ここでは一辺の長さ)をd3とする。また、凸部21aの高さをh3とする。このとき、基部の一辺の長さd3に対する凸部21aの高さh3のアスペクト比aは、h3/d3で表せる。
【0076】
図18は正四角錐の凹部を有する凹凸構造の断面図、図19はその平面図である。マイクロレンズシートの凹凸構造は、正四角錐の凹部22aと、凹部22a同士の隙間の平面部22bとで形成されている。換言すれば、マイクロレンズシートの凹凸構造は、平面部22bと、平面部22bより凹んだ凹部22aとで形成されている。
【0077】
凹部22aの開口部、つまり凹部22aと平面部22bとの境界は、正四角錐であり、その長さ(ここでは一辺の長さ)をd4とする。また、凹部22aの深さをh4とする。このとき、開口部の一辺の長さd4に対する凹部22aの深さh4のアスペクト比aは、h4/d4で表せる。
【0078】
次に、正四角錐の凹部22aの凹凸構造を例に平面部の面積について検討する。光取り出し効率を高く、色ずれを少なくするには平面部22bの面積がなるべく小さいことが好ましい。しかし、凹凸構造を転写等によって形成する場合、加工上、ある程度の平面部22bの面積が必要となる。
【0079】
ここでは、マイクロレンズシートの各凹部22aを平面部22bに垂直な方向(Z方向)に投影した面積の和をS1とし、マイクロレンズシートの各平面部22bの面積の和をS2とする。このとき、凹凸構造の平面部22bの面積比は、マイクロレンズシートの光取り出し面を平面部22bに垂直な方向(Z方向)に投影した面積(S1+S2)に対する平面部22bの面積S2の割合として、S2/(S1+S2)で表せる。
【0080】
図20は正四角錐の凹部を有する凹凸構造におけるアスペクト比aに対する光取り出し効率を平面部の各種面積比について示したグラフである。図21は正四角錐の凹部を有する凹凸構造におけるアスペクト比aに対する色ずれを平面部の各種面積比について示したグラフである。図20、21では、平面部の面積比が0%、25%、50%、90%の場合について示している。
【0081】
図20に示すように、平面部の面積比が0%の場合に最も光取り出し効率が良く、25%でやや効率が落ち、50、90%では無視できないほど効率が落ちている。一方、図21に示すように、a≧0.25でaが大きくなるにしたがって大まかに色ずれが小さくなっていることがわかる。特に、a≧0.25で色ずれが少ないといえる0.04を下回っているのは、平面部の面積比が0%又は25%の場合である。
【0082】
したがって、正四角錐の凹部を有する凹凸構造を採用したとき、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ないのは、a≧0.25においては平面部の面積比が0〜25%の場合であるといえる。
【0083】
上記の各種凹凸構造の有機発光素子の一例を実施例1〜10、比較例1〜5として図22に評価結果を示す。比較例1の有機発光素子は、有機発光素子10からマイクロレンズシート15を省略したものである。実施例1の有機発光素子は、a=1の楕円半球の凸部を接するように形成した凹凸構造を有する有機発光素子10である。実施例2の有機発光素子は、a=0.75の楕円半球の凹部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例3の有機発光素子は、a=1の円錐の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例4の有機発光素子は、a=0.75の円錐の凹部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例5の有機発光素子は、a=1の正四角錐の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例6の有機発光素子は、a=0.75の正四角錐の凹部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。
【0084】
実施例7の有機発光素子は、a=0.25の楕円半球の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例8の有機発光素子は、a=0.3の楕円半球の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。比較例3の有機発光素子は、a=0.5の楕円半球の凸部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。
【0085】
実施例9の有機発光素子は、a=0.8の正四角錐の凹部を接するように形成した凹凸構造を有するものである。実施例10の有機発光素子は、a=0.8の正四角錐の凹部と25%の平面部とからなる凹凸構造を有するものである。比較例4の有機発光素子は、a=0.8の正四角錐の凹部と50%の平面部とからなる凹凸構造を有するものである。比較例5の有機発光素子は、a=0.8の正四角錐の凹部と90%の平面部とからなる凹凸構造を有するものである。
【0086】
図22において、光取り出し効率は、透明基板に入射した光を100%としたときの空気側へ取り出される光の割合である。また、倍率は、比較例1の光取り出し効率に対する各光取り出し効率の倍率である。また、光取り出し効率が良好であるものを○印、不良であるものを×印で表し、色ずれが良好であるものを○印、不良であるものを×印で表し、総合評価として光取り出し効率及び色ずれが良好であるものを○印、光取り出し効率及び/又は色ずれが不良であるものを×印で表している。
【0087】
この結果、実施例1〜10は比較例1よりも光取り出し効率及び色ずれが良好であり、比較例2は光取り出し効率及び色ずれが不良であり、比較例3は色ずれが不良であり、比較例4は色ずれが不良であり、比較例5は光取り出し効率及び色ずれが不良である。よって、実施例1〜10の有機発光素子であれば、光取り出し効率が十分高く、かつ、色ずれが少ない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の発光素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定するものではない。特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
【符号の説明】
【0089】
10 有機発光素子(発光素子)
14 透明基板
15a 凸部
15b、20b 平面部
20a 凹部
d1 基部の長さ
d2 開口部の長さ
h1 凸部の高さ
h2 凹部の深さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、
前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より凹んだ凹部又は該平面部より突出した凸部とで形成され、
前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、
前記凹部の開口部の長さに対する前記凹部の深さのアスペクト比又は前記凸部の基部の長さに対する前記凸部の高さのアスペクト比が、0.25〜0.3であり、
前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記凹部又は凸部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、
前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より凹んだ凹部とで形成され、
前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、
前記凹部の開口部の長さに対する前記凹部の深さのアスペクト比が0.75以上であり、
前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする発光素子。
【請求項4】
前記凹部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることを特徴とする請求項3記載の発光素子。
【請求項5】
透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、
前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より突出した凸部とで形成され、
前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、
前記凸部の基部の長さに対する前記凸部の高さのアスペクト比が1.0以上であり、
前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする発光素子。
【請求項6】
前記凸部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることを特徴とする請求項5記載の発光素子。
【請求項7】
前記凹凸構造と前記透明基板とが同じ屈折率を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の発光素子。
【請求項8】
前記凹凸構造と前記透明基板とが近い屈折率を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の発光素子。
【請求項1】
透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、
前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より凹んだ凹部又は該平面部より突出した凸部とで形成され、
前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、
前記凹部の開口部の長さに対する前記凹部の深さのアスペクト比又は前記凸部の基部の長さに対する前記凸部の高さのアスペクト比が、0.25〜0.3であり、
前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記凹部又は凸部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、
前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より凹んだ凹部とで形成され、
前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、
前記凹部の開口部の長さに対する前記凹部の深さのアスペクト比が0.75以上であり、
前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする発光素子。
【請求項4】
前記凹部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることを特徴とする請求項3記載の発光素子。
【請求項5】
透明基板上に凹凸構造の光取り出し面を有する発光素子において、
前記凹凸構造は、平面部と、該平面部より突出した凸部とで形成され、
前記光取り出し面を前記平面部に垂直な方向に投影した面積に対する前記平面部の面積の割合が0〜25%であり、
前記凸部の基部の長さに対する前記凸部の高さのアスペクト比が1.0以上であり、
前記透明基板の屈折率をnとした場合、前記透明基板の空気配光分布が1/n2よりも小さいことを特徴とする発光素子。
【請求項6】
前記凸部の形状が、楕円半球、円錐、円錐台、四角錐又は四角錐台であることを特徴とする請求項5記載の発光素子。
【請求項7】
前記凹凸構造と前記透明基板とが同じ屈折率を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の発光素子。
【請求項8】
前記凹凸構造と前記透明基板とが近い屈折率を有することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−243495(P2012−243495A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111056(P2011−111056)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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