説明

発光装置、及び発光装置の作製方法

【課題】発光部の大面積化に適した発光装置を提供する。また、上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制された発光装置を提供する。また、信頼性の高い発光装置を提供する。
【解決手段】対向基板側に配線を形成し、これと基板上に形成したEL素子の上部電極とを物理的に接触させるように封止することにより、当該上部電極の導電性を補助する補助配線とすることが出来る。このような補助配線を用いることにより、大面積の発光領域を有する発光装置であっても、上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子が適用された発光装置とその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子の研究開発が盛んに行われている。有機EL素子の基本的な構成は、一対の電極の間に発光性の有機化合物を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の有機化合物から発光を得ることができる。
【0003】
有機EL素子は膜状に形成することが可能であるため大面積の素子を容易に形成することができ、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0004】
例えば、特許文献1には、有機EL素子を用いた照明器具が開示されている。
【0005】
また、有機EL素子には、基板側に光を取り出す下面発光型と、基板表面側に光を取り出す上面発光型、または基板側と基板表面側の両面から光を取り出す両面発光型とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−130132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、有機EL素子(以下、EL素子、又は発光素子とも呼ぶ)を照明装置に適用する場合、発光部の面積が広くなると、EL素子の上部電極、下部電極の抵抗に起因する電位降下が著しくなる傾向にある。当該電位降下が著しい場合、輝度の勾配が視認されてしまう問題がある。このような問題を回避するため、上部電極や下部電極に抵抗率の低い材料で形成された補助としての電極(補助電極、又は補助配線とも呼ぶ)を設ける必要がある。
【0008】
特に、光取り出し側に透明電極として用いられる光透過性を有する材料は、比較的抵抗が高いため、補助電極を設ける必要性が高い。しかしながら、特に基板の表面側から発光を得る上面発光型(両面発光型も含む)の場合、EL素子を形成した後に補助電極のパターンを形成する必要があるため、EL素子にダメージが加わる場合がある。例えば、補助電極となる導電膜をスパッタリング法で形成する場合には、熱的、物理的なダメージが懸念される。また、当該導電膜をフォトリソグラフィ法などにより加工する際にも、光や熱によるダメージや、レジストの除去時に用いる有機溶媒などによるEL素子の溶解などの問題が挙げられる。
【0009】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、その目的は、発光部の大面積化に適した発光装置を提供することを課題の一とする。また、上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制された発光装置を提供することを課題の一とする。また、信頼性の高い発光装置を提供することを課題の一とする。
【0010】
本発明は、上記課題の少なくとも一を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、絶縁表面上に下部電極層と、少なくとも発光性の有機化合物を含む層と、上部電極層とが順に積層された発光素子を備える第1の基板と、補助配線を一表面に備える第2の基板と、を有し、第1の基板と第2の基板とは、上部電極層と補助配線とが電気的に接続するように対向して設けられた、発光装置である。
【0012】
このように、対向基板(第2の基板)側に配線を形成し、これと基板(第1の基板)上に形成したEL素子の上部電極とを物理的に接触させることにより、当該上部電極の導電性を補助する補助配線とすることが出来る。このような構成とすることにより、大面積の発光装置であっても、上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制され、信頼性の高い発光装置とすることが出来る。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、上述の発光装置において、上記補助配線は、Cuを含む。
【0014】
対向基板に設ける配線としてCuを含む材料を用いることにより、上部電極の導電性をより効果的に補助することが出来る。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、上述の発光装置において、上記第1の基板は、表面が絶縁処理された金属、又は合金からなる。
【0016】
このようにEL素子を設ける基板として、表面が絶縁処理された金属基板を用いることにより、発光装置を駆動する際に発生する熱を効果的に放出することができ、信頼性の高い発光装置とすることが出来る。
【0017】
また、本発明の一態様の発光装置の作製方法は、基板(第1の基板)の一表面上に下部電極層と発光性の有機化合物を含む層と上部電極層とが順に積層された発光素子を形成する工程と、対向基板(第2の基板)上に補助配線を形成する工程と、第1の基板と第2の基板とを、上部電極層と補助配線とが電気的に接続するように貼り合わせる工程と、を有する。
【0018】
このような作製方法により作製された発光装置は、上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制され、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、上部電極の導電性を補助する補助配線を対向基板に設けることにより、EL素子への補助配線形成時のダメージを排除することができるため、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0019】
また、本発明の他の一態様の発光装置の作製方法は、基板(第1の基板)の一表面上に下部電極層と発光性の有機化合物を含む層と上部電極層とが順に積層された発光素子を形成する工程と、下部電極層と上部電極層との間に電圧を印加して、発光素子内の不良箇所の位置を特定し、不良箇所にレーザ光を照射して、不良箇所を修復する工程と、対向基板(第2の基板)上に補助配線を形成する工程と、不良箇所が修復された発光素子を有する第1の基板と第2の基板とを、上部電極層と補助配線とが電気的に接続するように貼り合わせる工程と、を有する。
【0020】
対向基板側に補助配線を設け、これとEL素子の上部電極とを接するように基板と対向基板とを貼り合わせることにより、上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制され、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、上部電極の導電性を補助する補助配線は対向基板に設けるため、EL素子への補助配線形成時のダメージを排除することができるため、信頼性の高い発光装置を作製することができる。
【0021】
また、上記のように、発光素子(EL素子とも呼ぶ)が形成された基板(第1の基板)と、対向基板(第2の基板)とを貼り合わせる前に、EL素子の上部電極層と下部電極層との間に電圧を印加してEL素子を発光させることにより、不良箇所を事前に特定することができる。さらに、EL素子を形成した直後に当該不良箇所に対してレーザ光の照射を行い、当該不良箇所を修復することにより、当該EL素子上に構造物を設ける場合であっても、当該構造物の影響を受けることなくEL素子の発光不良箇所を容易に特定し、修復することができるため、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、このような不良箇所の特定や修復工程を含む発光装置の作製方法は、発光部の面積が大きい場合においても容易に適用可能であるため、発光部の大面積化に適している。
【0022】
また、本発明の他の一態様の発光装置の作製方法は、上記発光装置の作製方法において、第2の基板に、発光素子からの発光を拡散し、且つその可視光に対する焦点面が発光素子と交差しない構造物を設ける工程を有することを特徴とする。
【0023】
さらに対向基板にEL素子からの発光を拡散する構造物を設けることにより、上述のレーザ光の照射によって修復された発光しない領域は、当該構造物によって拡散される他の正常な領域からの発光によって目立たなくすることができる。
【0024】
対向基板に設けるEL素子からの発光を拡散する構造物は、対向基板側から見たときに当該構造物による可視光に対する焦点面とEL素子(又はEL素子内の修復箇所)とが交差しないようにすると、EL素子を発光させて対向基板側から見たときに当該修復箇所に結像することなく、より効果的に目立たなくできるため好ましい。特に、EL素子からの発光を拡散する構造物として、異なる形状の二種類のマイクロレンズアレイを重ねた構成を用いると、その焦点面をEL素子よりも十分に離すことができ、当該修復箇所の発光しない領域をより目立たなくすることが可能となる。
【0025】
また、本発明の一態様の発光装置の作製方法は、上記下部電極層と上部電極層との間に電圧を印加して、発光素子内の不良箇所の位置を特定する際に、可視光、又は赤外光を観測して不良箇所を特定することを特徴とする。
【0026】
EL素子の発光不良は、局所的に発光強度(輝度ともいう)が高い、又は輝度が低い、若しくは発光しない領域が発生する現象を含む場合がある。従って、可視光領域の波長の光の強度を測定することにより、不良箇所を特定することができる。また、発光強度に差は見られないものの、他の正常な領域よりも流れる電流が高く発熱が大きいような潜在的な不良箇所については、赤外光を観測することにより、その発熱箇所、つまり潜在的な不良箇所を事前に検出することが可能となる。
【0027】
また、本発明の一態様の発光装置の作製方法は、上記第1の基板と第2の基板とを貼り合わせるよりも前に、下部電極層と上部電極層との間に電圧を印加し、下部電極層と上部電極層との間に流れる電流と、想定される電流とを比較して不良の有無を検出する工程を有する。
【0028】
EL素子の上下電極のショート、またはショートまでは至らないがEL層が薄いなどの潜在的な不良は、上下電極間に電圧を印加した際に流れる電流の増大として現れる。したがって、上下電極間に流れる電流値と、想定される正常時の電流値とを比較することにより、EL素子内部にショート箇所、または潜在的な不良箇所が存在するか否かを事前に判断することが可能となる。
【0029】
また、本発明の一態様の発光装置の作製方法は、表面が絶縁処理された金属、又は合金をからなる基板を上記第1の基板に用いることを特徴とする。
【0030】
このようにEL素子を設ける基板として、表面が絶縁処理された金属基板を用いることにより、発光装置を駆動する際に発生する熱を効果的に放出することができ、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0031】
なお、本明細書において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられ、少なくとも発光性の有機化合物を含む層(発光層とも呼ぶ)、又は発光層を含む積層体を示すものとする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、発光部の大面積化に適した発光装置を提供できる。また、上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制された発光装置を提供できる。また、信頼性の高い発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図2】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図3】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図4】本発明の一態様の、発光装置の作製方法を説明する図。
【図5】本発明の一態様の、発光装置の作製方法を説明する図。
【図6】本発明の一態様の、発光素子の構成を説明する図。
【図7】本発明の一態様の、照明装置を説明する図。
【図8】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図9】本発明の一態様の、発光装置の作製方法を説明する図。
【図10】本発明の一態様の、発光装置の作製方法を説明する図。
【図11】本発明の一態様の、発光装置の作製方法を説明する図。
【図12】本発明の一態様の、発光装置における発光不良の修復工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0035】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0037】
<構成例>
本実施の形態で例示する発光装置100は、EL素子が設けられた基板とは反対側に光を射出する上面発光型の発光装置である。
【0038】
図1(A)は本実施の形態で例示する発光装置100の上面概略図であり、図1(B)は、図1(A)中に明示した切断線A−A’における断面の断面概略図である。なお、明瞭化のため図1(A)には、後に説明する上部電極層107、レンズアレイ125及びレンズアレイ127等は明示していない。
【0039】
まず、発光装置100の概要について説明する。発光装置100は、基板101と、対向基板121との間に、下部電極層103、EL層105及び上部電極層107が積層されたEL発光素子(EL素子)を有する発光装置である。
【0040】
また、発光装置100は、基板101上に主配線102a及び102bと、平坦化膜109と、平坦化膜109上に下部電極層103、EL層105及び上部電極層107を有する。また、対向基板121は、レンズアレイ125及び127が設けられている。また、基板101と対向基板121とは、その外周をシール材113によって封止されており、シール材113より内側の領域に封止材111を有する。
【0041】
また、対向基板121の基板101と対向する表面に補助配線123を有し、上部電極層107と接している。また、下部電極層103と重ならない領域には接続体115が設けられ、補助配線123と上部電極層107とは当該接続体115を介して電気的に接続されている。
【0042】
次に発光装置100の各構成について詳細に説明する。
【0043】
基板101は絶縁表面を有し、発光装置100の作製工程にかかる熱に耐えうる材料を用いることができる。また、基板101として、熱伝導性の高い材料、例えば金属又は合金からなる基板の表面が絶縁処理されたものを用いると、発光装置100を駆動させたときに発生する熱を効果的に放出させることが出来るため好ましい。例えば、金属基板上にCVD法、スパッタリング法などにより絶縁膜を形成したものや、金属表面を陽極酸化法などにより絶縁処理したものを用いることができる。金属基板の表面を絶縁処理することにより、発光装置100の外部の雰囲気によって金属基板が腐食することを抑制することができ、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0044】
本実施の形態では基板101として、アルミニウムからなる金属基板の表面を、陽極酸化法により酸化させ、酸化アルミニウムを形成した(アルマイト処理ともいう)基板を用いる。
【0045】
基板101上に形成される主配線102aは、EL素子の上部電極層107と、平坦化膜109に設けられたコンタクトホールを介して電気的に接続される。また、基板101上に形成される主配線102bは、EL素子の下部電極層103と、平坦化膜109に設けられたコンタクトホールを介して電気的に接続される。また、主配線102a及び102bは、それぞれ対向基板121と重なる領域よりも外側に引き出されており、AC−DCコンバータに接続することが出来る。AC−DCコンバータによって、家庭用電源など外部電源からの交流電圧が、発光装置100を駆動するための適切な電圧に調整された直流電圧に変換される。
【0046】
主配線102a及び102bは、低抵抗な導電性を有していることが好ましい。例えばめっき法などにより形成された比較的膜厚の厚い導電膜を用いることができる。また、スクリーン印刷などの印刷法により主配線102a及び102bを形成すると、工程数を削減できると共に、低抵抗な配線を形成できるため好ましい。
【0047】
平坦化膜109は、主配線102a及び102b上に形成される。また、平坦化膜109は主配線102aに達するコンタクトホール及び102bに達するコンタクトホールを有する。ここで、例えば基板101として、金属基板表面を絶縁化させたものを用いた場合に、当該絶縁表面にピンホールや凹凸部を有する場合がある。したがって、当該平坦化膜109を基板101上に設けることにより、これらピンホールや凹凸部を当該平坦化膜109で覆うことが出来るため有効である。また、主配線102a及び102bを印刷法などにより形成した場合であっても、その表面の凹凸形状を当該平坦化膜109で覆い、当該主配線102a及び102b上の当該平坦化膜109の上面を平坦化することが出来るため、当該主配線102a及び102b上にもEL素子を形成することが可能となり、発光面積を大きくすることができる。
【0048】
EL素子を構成する下部電極層103は、平坦化膜109に設けられたコンタクトホールを介して、主配線102bと電気的に接続する。また、下部電極層103を覆うようにEL層105が形成されている。さらに、EL層105を覆うように上部電極層107が形成され、当該上部電極層107は、平坦化膜109に設けられたコンタクトホールを介して、主配線102aと電気的に接続している。
【0049】
本実施の形態で例示する発光装置100が有するEL素子は、基板表面側に光を射出する上面発光型のEL素子である。したがって、上部電極層107には、EL層105の発光に対して透光性を有する材料を用いる。また、下部電極層103の表面には、当該発光を反射する材料を用いる。
【0050】
したがって、発光装置100は、対向基板121よりも外側に引き出された主配線102a及び102bに電圧を印加することにより、基板101の表面側から発光を得ることが出来る。
【0051】
対向基板121は、EL素子の発光に対して透光性を有する材料を用いることができる。例えば、対向基板121に、25μm乃至100μmの厚さを有する、極薄のガラス基板などを用いることができる。このようなガラス基板は極めて軽量で、且つ外部からの水などの不純物の浸入を排除することが出来るのに加えて曲げることが可能なため、発光装置100を湾曲させて使用することができ、軽量で、信頼性が高く、且つフレキシブルな発光装置100とすることが可能となる。
【0052】
対向基板121の、基板101に対向する表面には、補助配線123が複数設けられる。補助配線123は、低抵抗な導電性を有していることが好ましい。特に補助配線123に用いる導電性材料として銅を用いると配線抵抗を低減できるため好ましい。また、補助配線123に用いる導電性材料としてアルミニウムを用いる場合、EL素子の上部電極層107の材質によっては、補助配線123と上部電極層107の界面で反応が起こり、接触抵抗が増大してしまう場合があるため、補助配線123の上部電極層107と接触する表面をチタンなどの高融点材料からなる薄膜で被覆しておくことが好ましい。
【0053】
また、補助配線123はEL素子の光射出側に設けられるため、できるだけ配線幅を細く形成することが好ましい。配線幅が小さいほど、光を取り出すことの出来る面積を大きくすることが出来る。配線幅は、配線の抵抗と発光面積とを考慮して、適宜設定すればよい。
【0054】
なお、本実施の形態では、補助配線123を一方向に並列に配置する構成としたが、配置方法はこれに限られず、格子状に配置しても良い。また、それぞれの補助配線123は必ずしも発光素子を横断するような長い形状を有していなくともよく、適当な長さに区切られた形状やドット形状として、必要な位置に配置する構成としても良い。
【0055】
基板101と、対向基板121とは、その外周部においてシール材113によって封止されている。シール材113は、水などの不純物が透過しない材料を用いることが好ましい。また、シール材113に乾燥剤を含有させていても良い。
【0056】
また基板101と対向基板121の間に封止材111を有する。封止材111には、水などの不純物を極力含まない材料を用いることが好ましい。ここで、封止材111に用いる材料は、その屈折率が上部電極層107よりも高く、また対向基板121よりも低く調整されていることが好ましい。このように屈折率を調整することにより、EL層105からの発光の、上部電極層107と封止材111との界面、又は封止材111と対向基板121との界面における全反射が抑制され、発光の取り出し効率を向上させることが出来る。
【0057】
ここで、上部電極層107において、下部電極層103に重ならない領域では、その表面の高さが低くなってしまうことにより、対向基板121に設けられた補助配線123と接触することが出来ない場合がある。その場合、接続体115を当該領域の上部電極層107上に接して設けることにより、当該接続体115を介して上部電極層107と補助配線123とを電気的に接続することができ、上部電極層107の導電性を補助することができる。
【0058】
接続体115としては、上部電極層107と、補助配線123とを電気的に接続する材料を用いることができる。例えば、銀や銅などの導電性粒子を含む導電性ペーストをスクリーン印刷法などの印刷法によって形成した後、焼成を行って導電性の接続体115を形成すればよい。
【0059】
また、接続体115は、基板101と対向基板121との封止工程における熱圧着により、圧力のかかる方向、すなわち、基板101と垂直な方向に異方性の導電性を示す材料を用いても良い。このような性質の接続体115を用いると、当該接続体115と接する補助配線123と上部電極層107とは、接続体115の基板101と垂直な方向の導電性により、電気的に接続することができる。
【0060】
対向基板121に設けられたレンズアレイ125及び127によって、EL素子からの発光の全反射を抑制することができ、発光を効率的に取り出すことができる。本実施の形態では、対向基板121として極めて薄いガラス基板などの基板を用いるため、対向基板121の基板101と対向しない表面にレンズアレイ125を設ける構成としたが、対向基板121が比較的厚い場合には、その表面を加工して凹凸形状を設け、レンズアレイ125としてもよい。また、レンズアレイ125及び127として、半球レンズ、マイクロレンズアレイ、凹凸構造が施されたフィルムや光拡散フィルムなどを貼り付けて用いても良い。
【0061】
また、レンズアレイ125及び127のようなEL素子の発光を拡散する構造物を光射出側に設けることにより、不良が修復され、暗点として観測される領域は、当該レンズアレイ125及び127によって拡散される他の正常な領域からの発光によって目立たなくなる。
【0062】
また、レンズアレイ125及び127のような、対向基板121に設けるEL素子からの発光を拡散する構造物は、対向基板121側から見たときに当該構造物による可視光に対する焦点面とEL素子(又はEL素子内の修復箇所)とが交差しないようにすると、EL素子を発光させて対向基板121側から見たときに当該修復箇所に結像することなく、より効果的に修復箇所を目立たなくできるため好ましい。特に、EL素子からの発光を拡散する構造物として、異なる形状の二種類のレンズアレイを重ねた構成を用いると、その焦点面をEL素子よりも十分に離すことができ、当該修復箇所の発光しない領域をより目立たなくすることが可能となる。
【0063】
ここで、上記発光装置100にコンバータを接続する構成の例を図8(A)に示す。基板101上には発光装置100と、コンバータ128と、接続電極129a及び129bとが設けられている。コンバータ128の入力側の端子は、家庭用電源などの電源に接続するための接続電極129a及び129bに電気的に接続されている。またコンバータ128の出力側の2つの端子のうち一方は配線131aを介して発光装置100の主配線102aと電気的に接続されており、他方の端子は、配線131bを介して主配線102bと電気的に接続している。なお、配線131aと主配線102a、及び配線131bと主配線102bとはコンタクトホールを介して電気的に接続されている。
【0064】
コンバータ128としては、例えば家庭用電源などの電源から供給される交流電圧を、発光装置100を駆動するための最適な直流電圧に変換するAC−DCコンバータを用いることができる。コンバータ128は発光装置100の主配線102a及び102bと電気的に接続され、変換後の直流電圧を発光装置100に供給することにより、発光装置100を駆動させる。
【0065】
また、図8(B)に示すように、基板101上に一対の発光装置100を設け、これらのそれぞれの主配線を、外部に設けた配線(配線131c、131d、131e)を用いて直列接続になるように接続し、ひとつのコンバータ128で駆動させる構成としても良い。発光装置100を直列接続させることにより、装置全体の実効的な駆動電圧を高めることが出来るため、発光装置単体に比べてコンバータ128の電力変換効率を高めることができる。なお、ここでは2つの発光装置を直列接続させる構成としたが、3以上の複数の発光装置を直列に接続しても良いし、並列に接続させる構成としてもよい。また、直列接続と並列接続を組み合わせて接続しても良い。複数の発光装置を接続することにより、発光装置1つに対するコンバータ128の数を減らせるため好ましい。
【0066】
以上のような構成の発光装置は、EL素子の上部電極の導電性を対向基板上に設けられた補助配線により補助されるため、上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制された、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、当該補助配線は、対向基板上に容易に形成することができるため発光部の大面積化に適している。さらに、EL素子が設けられた基板と対向基板との貼り合わせの際に、対向基板に設けられた補助配線が、少なくとも封止領域よりも内側になるように貼り合わせを行えばよく、高い位置合わせ精度を必要としないため、基板の大面積化に適している。
【0067】
続いて、上記とは異なる態様の発光装置について例示する。
【0068】
多くの場合、家庭用の交流電圧から発光装置を駆動させるための直流電圧に変換するAC−DCコンバータは、その変換後の電圧値が低いほど、その変換効率が悪化する傾向がある。そこで、複数の発光装置を直列に接続して装置全体として実効的な駆動電圧を高めることにより、AC−DCコンバータの変換効率を向上させることが可能となる。以下では、複数のEL素子が直列に接続された2種類の発光装置の態様について説明する。
【0069】
なお、ここでは発光装置100と共通する箇所については説明を省略する。
【0070】
<変形例1>
図2に示す発光装置150は、4つのEL素子がそれぞれ直列に接続された発光装置である。図2(A)に発光装置150の上面概略図を、また図2(B)に図2(A)中の補助配線123に沿った切断線B−B’における断面概略図を示す。なお、明瞭化のため図2(A)には基板、対向基板、主配線、副配線、下部電極層、及び補助配線のみを明示している。
【0071】
主配線102cは、第1の下部電極層103aと接続される。また、第1の下部電極層103a上に第1のEL層105a及び第1の上部電極層107aが形成され、第1のEL素子を構成している。
【0072】
また、第1の上部電極層107aは、第1の副配線151aと接するように形成され、これらは電気的に接続されている。
【0073】
また、第1の副配線151aは、第2の下部電極層103bと接して形成され、電気的に接続されている。さらに第2の下部電極層103b上には第2のEL層105b及び第2の上部電極層107bが形成され、第2のEL素子を構成している。
【0074】
したがって、第1のEL素子と第2のEL素子とは第1の副配線151aを介して直列に接続されている。同様にして、第2のEL素子と、第3の下部電極層103c、第3のEL層105c及び第3の上部電極層107cからなる第3のEL素子とは、第2の副配線151bを介して直列に接続されている。また、第3のEL素子と第4の下部電極層103d、第4のEL層105d及び第4の上部電極層107dからなる第4のEL素子とは、第3の副配線151cを介して直列に接続されている。このようにして、4つのEL素子は全て直列に接続されている。
【0075】
ここで、第4の上部電極層107dは、主配線102dに接触するように形成されており、これらが電気的に接続される。
【0076】
主配線102c及び主配線102dは、対向基板121よりも外側の領域に延長され引き出されており、ここでAC−DCコンバータと接続することができる。
【0077】
また、対向基板121には、それぞれの上部電極層に接するように補助配線123が形成されているため、それぞれの上部電極層の導電性は当該補助配線123によって補助される。また必要に応じて、上部電極層上に導電性を有する接続体115が形成されていてもよい。
【0078】
このような構成の発光装置150は、複数のEL素子が直列に接続されているため、実効的な駆動電圧を高めることにより、当該発光装置150に接続されるAC−DCコンバータの変換効率の低下が抑制され、結果的に省電力な発光装置とすることができる。また、対向基板に設けられた補助配線によって、EL素子の上部電極の導電性が補助され、当該上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制された発光装置とすることが出来る。
【0079】
<変形例2>
図3に示す発光装置160は、4つのEL素子がそれぞれ直列に接続された発光装置である。図3(A)に発光装置160の上面概略図を、また図3(B)に図3(A)中の補助配線123に沿った切断線C−C’における断面概略図を示す。なお、明瞭化のため図3(A)には基板、対向基板、主配線、下部電極層、及び補助配線のみを明示している。
【0080】
主配線102eは、第1の下部電極層103eと接続される。また、第1の下部電極層103e上に第1のEL層105e及び第1の上部電極層107eが形成され、第1のEL素子を構成している。
【0081】
また、第1の上部電極層107eは、第2の下部電極層103fと接して形成され、これらは電気的に接続されている。第2の下部電極層103f上には第2のEL層105f及び第2の上部電極層107fが形成され、第2のEL素子を構成している。
【0082】
したがって、第1のEL素子と第2のEL素子とは直列に接続されている。同様にして、第2のEL素子と、第3の下部電極層103g、第3のEL層105g及び第3の上部電極層107gからなる第3のEL素子とは直列に接続されている。また第3のEL素子と、第4の下部電極層103h、第4のEL層105h及び第4の上部電極層107hからなる第4のEL素子とは、直列に接続されている。このようにして、4つのEL素子は全て直列に接続されている。
【0083】
ここで、第4の上部電極層107hは、主配線102fに接触するように形成されており、これらが電気的に接続される。
【0084】
主配線102e及び主配線102fは、対向基板121よりも外側の領域に延長され引き出されており、ここでAC−DCコンバータと接続することができる。
【0085】
また、対向基板121には、それぞれの上部電極層に接するように補助配線123が形成されているため、それぞれの上部電極層の導電性は当該補助配線123によって補助される。また必要に応じて、上部電極層上に導電性を有する接続体115が形成されていてもよい。
【0086】
このような構成の発光装置160は、複数のEL素子が直列に接続されているため、実効的な駆動電圧を高めることにより、発光装置160に接続されるAC−DCコンバータの変換効率の低下が抑制され、結果的に省電力な発光装置とすることができる。また、対向基板に設けられた補助配線によって、EL素子の上部電極の導電性が補助され、当該上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制された発光装置とすることが出来る。
【0087】
以上のような構成の発光装置に後に示す本発明の一態様の作製工程を適用できる。このような工程を経て作製された発光装置は、EL素子の発光不良が極めて抑制され、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、不良箇所の特定や修復工程を含む上記作製工程は、発光部の面積が大きい場合であっても容易に適用可能であるため、発光部の大面積化に適している。さらに、発光を拡散するためのレンズアレイ等の凹凸形状の構造物を光射出側に設けることにより、不良の修復箇所を目立たなくする効果を奏する。
【0088】
<材料及び形成方法について>
ここで、各構成に用いることのできる材料と、その形成方法について説明する。なお、材料については以下に限られず、同様の機能を有する材料であれば適宜用いることができる。
【0089】
[基板]
光射出側に設けられる基板の材料としては、ガラス、石英、有機樹脂などの透光性を有する材料を用いることができる。また光射出とは反対側に設けられる基板の場合は、透光性を有していなくともよく、上記の材料に加え金属、半導体、セラミック、有色の有機樹脂などの材料を用いることができる。導電性の基板を用いる場合、その表面を酸化させる、若しくは表面に絶縁膜を形成することにより絶縁性を持たせることが好ましい。
【0090】
金属や合金などの導電性の基板の表面を絶縁処理する方法としては、陽極酸化法や電着法などがある。例えば基板としてアルミニウム基板を用いた場合、陽極酸化法により表面に形成される酸化アルミニウムは絶縁性が高いため、酸化アルミニウムの層を薄く形成できるため好ましい。また、電着法ではポリアミドイミド樹脂やエポキシ樹脂などの有機樹脂を基板表面に形成することができる。このような有機樹脂は絶縁性が高く、可撓性を有しているため、基板を曲げて使用した場合であっても表面にクラックが発生しにくいため好ましい。また、耐熱性の高い材料を選択して用いると、発光装置を駆動させたときに発生する熱で基板表面が変形してしまうことを抑制できる。
【0091】
基板として有機樹脂を用いる場合、有機樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリ塩化ビニル樹脂などを用いることができる。また、ガラス繊維に有機樹脂を含浸した基板や、無機フィラーを有機樹脂に混ぜた基板を使用することもできる。
【0092】
特に、上面発光型の発光装置の場合、EL素子が形成される光射出とは反対側の基板には金属や合金などの熱伝導性の高い基板を用いることが好ましい。EL素子を用いた大型の照明装置の場合、EL素子からの発熱が問題となる場合があるため、このような熱伝導性の高い基板を用いると放熱性が高まる。例えば、ステンレス基板のほかに、アルミニウム酸化物、ジュラルミンなどを用いると、軽量且つ放熱性を高めることができる。また、アルミニウムとアルミニウム酸化物との積層、ジュラルミンとアルミニウム酸化物との積層、ジュラルミンとマグネシウム酸化物との積層などを用いると、基板表面を絶縁性とすることができるため好ましい。
【0093】
[発光素子]
光射出側の電極層に用いることができる透光性を有する材料としては、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ(ITO)、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、グラフェンなどを用いることができる。
【0094】
また、上記電極層として、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又はチタン等の金属材料や、これらの合金を用いることができる。または、それら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等を用いてもよい。なお、金属材料(又はその窒化物)を用いる場合、透光性を有する程度に薄くすればよい。
【0095】
また、上記材料の積層膜を電極層として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金とITOとの積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。
【0096】
光射出側の電極層の膜厚は、例えば50nm以上300nm以下であり、好ましくは80nm以上130nm以下、さらに好ましくは100nm以上110nm以下である。
【0097】
EL層は、少なくとも発光性の有機化合物を含む層を有する。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造とすることができる。
【0098】
なお、本発明の一態様では、上部電極層と下部電極層との間に、複数のEL層が設けられた発光素子(タンデム型発光素子)を適用することができる。好ましくは、2〜4層(特に3層)構造とする。また、これらのEL層の間に電子輸送性の高い材料や正孔輸送性の高い材料などを含む中間層を有していても良い。EL層の構成例は実施の形態3で詳細に説明する。
【0099】
光射出とは反対側に設けられる電極層は、反射性を有する材料を用いて形成される。反射性を有する材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、又はパラジウム等の金属材料を用いることができる。そのほか、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金などのアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や銀と銅の合金、銀とマグネシウムの合金などの銀を含む合金を用いることもできる。銀と銅の合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム合金膜に接する金属膜、又は金属酸化物膜を積層することでアルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。該金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタン、酸化チタンなどが挙げられる。また、電極層の材料としてアルミニウムを用いることもできるが、その場合にはITOなどと直接接して設けると腐食する恐れがある。よって、電極層を積層構造とし、ITOなどと接しない層にアルミニウムを用いればよい。
【0100】
なお、発光素子に用いられる導電膜は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの成膜方法により形成することができる。また、EL層は蒸着法などの成膜方法や、インクジェット法などにより形成できる。
【0101】
[平坦化膜]
平坦化膜に用いられる材料としては、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、エポキシ等の有機樹脂や、無機絶縁材料を用いることができる。例えば感光性の有機樹脂をスピンコート法などにより塗布した後、選択的に露光、現像を行って形成することが好ましい。このほかの形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、液滴吐出法(インクジェット法)、スクリーン印刷、オフセット印刷等などを用いればよい。
【0102】
[主配線、補助配線]
主配線や補助配線をスクリーン印刷などの印刷法で形成する場合には、粒径が数nmから数十μmの導電性粒子を有機樹脂に溶解または分散させた導電性ペーストを選択的に印刷する。導電性粒子としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上の金属粒子やハロゲン化銀の微粒子、または分散性ナノ粒子を用いることができる。また、導電性ペーストに含まれる有機樹脂は、金属粒子のバインダー、溶媒、分散剤および被覆材として機能する有機樹脂から選ばれた一つまたは複数を用いることができる。代表的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂が挙げられる。また、導電層の形成にあたり、導電性のペーストを印刷した後に焼成することが好ましい。
【0103】
また、導電膜をスパッタリング法やCVD法などの成膜方法で成膜した後に、選択的にエッチングして形成する場合では、導電膜としては上記発光素子に用いられる導電性の材料を適宜用いることができる。また、主配線や補助配線をめっき法により形成してもよい。
【0104】
[シール材]
シール材としては公知の材料を用いることができる。例えば、熱硬化型の材料、紫外線硬化型の材料を用いても良い。また二液混合型のエポキシ樹脂などを用いることができる。またシール材はその接着部位によって、無機材料同士、有機材料同士、又は無機材料と有機材料とを接着することができる材料を用いる。またシール材に用いる材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。
【0105】
またシール材には乾燥剤が含まれていても良い。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることができる。その他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0106】
シール材は、スクリーン印刷などの印刷法、インクジェット法、またはディスペンス法などの塗布法によって形成することができる。
【0107】
[封止材]
封止材としては、EL素子の発光に対する透光性を有する、無機材料、有機材料、又は無機材料と有機材料とを組み合わせた材料、又はこれらの積層を適宜用いることができる。また封止材は、上述のように発光に対する屈折率が調整されていることが好ましい。また封止材は上記シール材と同様、水分や酸素を透過しない材料であることが好ましい。また、封止材とシール材とに同じ材料を用いても良い。
【0108】
また封止材の形成方法としては、スパッタリング法、CVD法などの成膜方法や、シール材と同様の印刷法や塗布法によって形成することができる。
【0109】
[接続体]
接続体には、銀や銅などの導電性粒子を含む導電性ペーストなどを用いることができる。当該導電性ペーストを焼成することにより、導電性を有する接続体とすることができる。
【0110】
また、接続体には、熱硬化性の樹脂に導電性を有する金属粒子を混ぜ合わせたものを用いることもできる。金属粒子としては、例えばNi粒子をAuで皮膜したものなど、2種類以上の金属が層状となった粒子を用いることが好ましい。金属粒子の直径は100nm以上100μm以下、好ましくは1μm以上50μm以下とする。また接続体に用いる材料は、ペースト状であっても良いし、シート状であっても良い。
【0111】
このような材料からなる接続体を電極間に挟み、熱をかけながら圧着することにより、上記金属粒子同士が圧力方向に接触することにより導電経路が形成される。一方で圧力方向に垂直な方向では、樹脂によって絶縁性が保たれる。このように結果として異方性の導電性を示す。
【0112】
接続体の形成方法としては、上記シール材と同様、印刷法や塗布法によって形成することができる。また、接続体としてシート状の材料を用いる場合には、所望の位置に直接貼り付けて用いることができる。
【0113】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが出来る。
【0114】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で例示した発光装置100の作製方法について、図4、図5、及び図9乃至図12を用いて説明する。
【0115】
まず、基板101上に主配線102a、102b及び、平坦化膜109を形成する。
【0116】
基板101としては、実施の形態1で例示した材料を用いることができる。本実施の形態では、基板101として、表面酸化処理が施され表面が絶縁化されたアルミニウム基板を用いる。
【0117】
主配線102a、102bは、実施の形態1で例示した方法を用いて基板101上に形成する。本実施の形態では、スクリーン印刷法を用いて銅を含む材料からなる主配線102a、102bを形成する。
【0118】
平坦化膜109は、基板101の露出した表面、並びに主配線102a及び102bを覆って形成する。感光性の有機樹脂をスピンコート法により塗布した後、選択的に露光し、現像処理を施すことにより、主配線102a及び102bに重なる開口部を有する平坦化膜109を形成することができる。
【0119】
なお、平坦化膜109は、基板101の露出した部分を覆って平坦化することができる。したがって、基板101の表面に凹凸形状を有する場合には、当該凹凸形状の影響を抑制することができるため好ましい。
【0120】
なお、この段階における断面概略図が図4(A)に相当する。
【0121】
続いて、主配線102bと電気的に接続する、下部電極層103を形成する。
【0122】
下部電極層103は、実施の形態1で例示した材料を用いて、スパッタリング法などの成膜方法により形成する。本実施の形態では、下部電極層103を構成する導電膜として、アルミニウム膜上にチタン膜と酸化チタン膜とを積層した膜を用いる。チタン膜よりも下層に低抵抗なアルミニウムを用いることにより、配線抵抗を下げることが出来る。また、その上層に形成したチタン膜によってアルミニウム膜が露出せず、腐食を抑えることが出来る。またEL層105と接触する層に酸化チタン膜を用いることにより、下部電極層103がEL層105とオーム接触することが出来る。
【0123】
特にEL層105の下部電極層103と接する最下層に、正孔注入性及び正孔輸送性を有する酸化モリブデンなどの遷移金属酸化物を含む膜を用いる場合、これと接する下部電極層103の最表層に酸化チタン膜を設けると、これらの接触抵抗は極めて低減されるため好ましい。一方、例えば酸化アルミニウムなどは絶縁性のため、当該接触抵抗を高めてしまう。
【0124】
下部電極層103の端部はできるだけ緩やかなテーパ形状とすることが好ましい。また、必要であれば、端部を覆う有機絶縁膜を形成することにより、下部電極層103の上層に形成されるEL層105及び上部電極層107が当該端部の段差を被覆しきれずに断線してしまうことを抑制してもよい。その場合、当該有機絶縁膜と、補助配線123とが重ならないような配置にすることが好ましい。
【0125】
続いて、下部電極層103を覆うEL層105を蒸着法により形成する。EL層105の成膜は、非成膜領域に成膜されないように遮蔽マスク(メタルマスクとも呼ぶ)を用いて成膜することが好ましい。
【0126】
さらに、EL層105を覆い、且つ主配線102aと電気的に接続する上部電極層107を形成する。本実施の形態では、上部電極層107を構成する導電膜として、ITOを用い、スパッタリング法により成膜する。
【0127】
この段階における断面概略図が図4(B)に相当する。
【0128】
ここで、対向基板121に補助配線123を設ける工程について説明する。
【0129】
対向基板121は、実施の形態1で例示した材料からなる基板を用いることができる。本実施の形態では、厚さ50μmのガラス基板を用いる。
【0130】
対向基板121の基板101と対向する表面上に、補助配線123を形成する。本実施の形態では、補助配線123を無電解めっき法によって形成する。まず、シード層となる薄い導電膜をスパッタリング法により成膜した後、公知のフォトリソグラフィ工程によってパターンを形成する。その後、無電解めっき法によりシード層を核として銅配線を形成する。
【0131】
補助配線123として、低抵抗な銅配線を用いることにより、より効果的に上部電極層107の導電性を補助することができ、上部電極層107の抵抗に起因する電位降下を抑制することができる。
【0132】
この段階における対向基板121の断面概略図が、図4(C)に相当する。
【0133】
続いて、上記の基板101と対向基板121との貼り合わせを行う工程について説明する。
【0134】
まず、基板101上に接続体115、封止材111及びシール材113を形成する。本実施の形態では、これらはスクリーン印刷法により形成する。また本実施の形態では、接続体115として後の圧着工程によって異方性の導電性を有する材料を用いる。
【0135】
続いて、基板101と対向基板121とを貼り合わせた後、減圧下において熱をかけながら真空圧着を行う。この工程により、封止材111及びシール材113は熱硬化して基板101と対向基板121とが接着する。
【0136】
またこのとき、補助配線123の先端部が、上部電極層107と物理的に接触し電気的に接続されるように、シール材113及び封止材111の厚さや、圧着工程における圧力などを適宜調整する。
【0137】
さらに上記圧着工程により、接続体115は熱と圧力によって異方性の導電性が発生し、これと接する上部電極層107と補助配線123とが電気的に接続される。
【0138】
この時点における断面概略図が、図5(A)に相当する。
【0139】
貼り合わせを行った後、対向基板121の基板101と対向しない面に、レンズアレイ125及び127を形成する。レンズアレイ125及び127は、レンズアレイが形成されたシートを貼り付けることにより形成することができる。当該シートは高屈折率な材料で構成されていることが好ましい。
【0140】
この段階における断面概略図が、図5(B)に相当する。なお、図5(B)は、図1(B)と同じ図となる。
【0141】
以上の工程により、発光装置100を作製することができる。このような工程を経て作成された発光装置100は、EL素子の上部電極層の導電性を補助する補助配線を、EL素子へのダメージを伴うことなく形成することにより、上部電極の抵抗に起因する電位降下が抑制され、且つ信頼性の高い発光装置100とすることが出来る。また、本作製方法では、対向基板に設ける補助配線が、少なくとも封止領域の内側になるように貼り合わせを行えばよく、貼り合わせの際の高い位置合わせ精度を必要としないため、大面積の基板に適用可能である。
【0142】
<変形例>
ところで、EL素子を形成する場合、絶縁表面を有する基板上に形成した下部電極上に、発光性の有機化合物を含む層と、上部電極とを順次積層する方法としては、例えば真空蒸着法がある。真空蒸着法を用いて島状の層を形成する方法としては、金属板に開口部を設けたメタルマスク(遮蔽マスク、シャドーマスクともいう)を用いる方法が知られている。基板に接して蒸着源との間にメタルマスクを設け、当該メタルマスクの開口部を介して基板に蒸着を行うと、開口部の形状に応じた形状のパターンを形成することができる。
【0143】
しかしながら、真空蒸着を行う装置の内壁や、メタルマスク等に付着したゴミ(パーティクルと呼ばれる小さな異物を含む)が基板に付着すると、EL素子がショートすることなどに伴い発光しない暗点や、その周辺部に電流が集中することなどにより他の正常な領域よりも輝度の高い輝点などの発光不良が発生する場合がある。例えば発光部内に一点でもショート箇所があった場合は、当該発光部全体が発光しない、若しくは発光部全体の輝度の低下が生じてしまう恐れがある。特に発光部の面積が大きくなると、このような不具合が起こる確率は飛躍的に増大する。
【0144】
また、EL素子が適用された発光装置においては、EL素子の上部電極よりも上部に構造物を設ける場合がある。例えば、上面発光型のEL素子が適用された発光装置においては、EL素子の発光の全反射を抑制するために対向基板の表面に凹凸形状を設け、発光の取り出し効率の向上を図る。また、EL素子の上部電極上に接するように、当該上部電極の導電性を補助するための補助電極(補助配線とも呼ぶ)を設ける場合がある。
【0145】
したがって、EL素子が適用された発光装置を駆動させた際にEL素子の発光不良が確認されたとしても、EL素子の上部電極よりも上部に設けられた構造物によって、当該不良箇所の特定は極めて難しく、またその修復が困難であった。
【0146】
そこで、以下では、EL素子の発光不良が抑制され、信頼性の高い発光装置の作製方法について説明する。
【0147】
なお、上記で説明した内容と重複する部分については、説明を省略するか、簡略化して説明するものとする。
【0148】
まず、基板101上に主配線102a、102b及び、平坦化膜109を形成する。その後、主配線102bと電気的に接続する、下部電極層103を形成する。主配線102a、102b、並びに平坦化膜109及び下部電極層103は、上述した方法と同様に形成することができる。
【0149】
この段階における断面概略図が図9(A)に相当する。また、図11に、この段階における上面概略図を示す。
【0150】
図9(A)及び図11において、下部電極層103上に異物171a及び171bが付着している様子を示している。ここで、図9(A)は、図11における異物171a及び171bを横断する切断線D−D’における断面概略図に相当する。異物171aや異物171bが付着してしまう原因としては、例えば下部電極層103やEL層105を成膜する成膜装置の内壁や、成膜時に用いる遮蔽マスク(メタルマスクとも呼ぶ)などに付着していた異物が、基板101に付着してしまうことなどが挙げられる。
【0151】
以下では、下部電極層103上に付着した、このような異物171a及び171bによって、以降の工程で発光素子に不良領域が形成される場合について説明する。
【0152】
続いて、上述の方法に倣い、下部電極層103を覆うEL層105を蒸着法により形成する。さらに、EL層105を覆い、且つ主配線102aと電気的に接続する上部電極層107を形成する。
【0153】
この段階における断面概略図が図9(B)に相当する。
【0154】
図9(B)において、領域117aではEL層105の膜厚が薄く形成されている。EL層105は後に説明するように複数の膜を連続的に積層して成膜することにより形成されるが、例えば成膜途中で異物171aが移動または消失した場合には、このようにEL層105が薄く形成される場合がある。
【0155】
なお、このようなEL層105が薄く形成された領域117aでは、他の正常な領域に比べて膜厚方向の電気抵抗が低いため、EL素子の上下電極に電圧を印加した際に電流が集中し、多くの場合、他の正常な領域よりも輝度の高い輝点の不良として観測される。
【0156】
また、領域117bにおいては、異物171bが膜中に残存している。このような領域では、異物171bが導電性を有しているか、または異物171bの周辺部で上部電極層107と下部電極層103が接触している場合には、上部電極層107と下部電極層103が電気的にショートしてしまうため、発光しない暗点の不良として観測される。一方、異物171bが絶縁性を有し、且つ異物171bの周辺部で上部電極層107と下部電極層103の接触がないような場合には、異物171bの周辺部でEL素子が絶縁化してしまうため、上記ショートの場合と同様の暗点の不良として観測される。但し、ショートによる暗点の場合においては、そのショート箇所の膜厚方向の電気抵抗によっては、発光部全体が発光しない、若しくは発光部全体の輝度の低下が生じてしまう。
【0157】
また、上述する以外の不良としては、例えば上部電極層107が形成されずにEL素子が絶縁化してしまう不良や、EL層105及び上部電極層107の両方が形成されずにEL素子が絶縁化してしまう不良などが挙げられる。また異物起因以外にも、EL層105や上部電極層107の形成時に用いるメタルマスクの開口端が下層に接触することによるキズなどにより、EL素子がショート又は絶縁化してしまう不良も挙げられる。
【0158】
また、完全なショートに至らず、他の正常な領域と比較して発光強度が高い輝点として確認されない程度にEL層105が比較的薄いような潜在的な不良も挙げられる。
【0159】
上記のような不良箇所を特定するため、EL層105及び上部電極層107を形成した後の段階において主配線102aと主配線102bとの間に電圧を印加し、EL素子を発光させる。ここで不良箇所があった場合には、輝点、又は暗点、若しくは発光部全体が発光しないなどの発光不良として観測される。
【0160】
ここで、主配線102a及び102bは基板101の外周部に引き出されているため、外部電源などを用いてEL素子に電圧を印加する際、容易に当該主配線102a及び102bに外部電源に入力する端子を接続することが出来る。また、主配線102a及び102bと当該端子とはEL素子から十分に離れた領域で接続することが可能なため、当該端子がEL素子に触れて素子を破壊してしまうなどの不具合を抑制することができる。
【0161】
不良箇所の特定には、目視、若しくは光学顕微鏡による観察や、可視光または赤外光を観測可能な撮像装置などの観測方法を適用できる。目視で確認しづらい場合でも、電流が大きい領域では発熱が大きい場合があるため、当該発熱によって発生する赤外光の観測も有効である。特に上述のような潜在的な不良に対しては、他の正常な領域に比べて電流値が比較的高いため、赤外光の観測により検出しやすくなる。
【0162】
また、EL素子を発光させる際に、EL素子に印加する電圧に対する電流値を測定しておくことが好ましい。このとき、測定した電流値が想定される電流値より高い場合には、発光部のいずれかの箇所にショート、又はEL層105の薄い箇所を有している可能性が高いため、不良の有無の判断がしやすくなる。特に上述のような潜在的な不良を有している場合には、可視光による輝度の違いにより不良の有無を判断しづらいため、測定した電流値から不良の有無を判断することは特に有効である。
【0163】
このようにして、不良箇所の特定を行った後に、当該不良箇所に対してレーザ光を照射し不良を修復する。具体的には、レーザ光を照射して不良が発生している領域の上部電極層107、又は上部電極層107及びEL層105の2層、若しくは上部電極層107、EL層105及び下部電極層103の3層を除去して絶縁化させる。
【0164】
図10(A)にレーザ光173を照射する工程における概略図を示す。レーザ光173は、上記観察方法により特定された不良箇所に対して選択的に照射される。
【0165】
レーザ光173には、少なくとも上部電極層107、EL層105、及び下部電極層103のいずれかに用いる材料に吸収される波長領域の光を含むレーザを用いる。例えばArレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。また、上記固体レーザから発振される第2高調波や第3高調波、さらに高次の高調波を用いることもできる。なお、レーザ媒体が固体である固体レーザを用いると、メンテナンスフリーの状態を長く保てるという利点や、レーザ光の出力が比較的に安定している利点を有している。また、ナノ秒、ピコ秒、フェムト秒等の短時間のパルスレーザが本工程に適している。短時間のパルスレーザを用いると、多光子吸収現象を引き起こす高密度のエネルギーを発光素子の不良箇所に与えることができる。
【0166】
レーザ光173を照射することにより、不良箇所の少なくとも上部電極層107を除去することができる。なお、使用するレーザ光173の波長やエネルギー密度によっては上部電極層107に加えてEL層105、又はEL層105及び下部電極層103も同時に除去される。
【0167】
ここで、EL素子の不良箇所を特定し、レーザ光を照射する機構の一例について図12を用いて説明する。本構成では、基板上に設けられたEL素子に電圧を印加しながらそのEL素子に流れる電流を測定すると共に、エミッション顕微鏡を用いてEL素子からの発光を観測して不良箇所を特定し、当該不良箇所にレーザ光を照射して修復を行う。
【0168】
なお、図12には明瞭化のため、基板201上に設けられたEL素子203及び主配線207を模式的に図示しているが、実際には二種類の主配線を有し、これらはEL素子203の上部電極層、又は下部電極層にそれぞれ電気的に接続されている。また、EL素子203の一部の領域に不良箇所205を有する。
【0169】
EL素子203が設けられた基板201は、ステージ215に備えられている。また基板201に設けられた主配線207は、ソースメータ213を介して外部電源211に電気的に接続されている。したがって、基板201上に形成されたEL素子203を外部電源211によって発光させることができる。またその際にソースメータ213によってEL素子203に流れる電流値を測定する。
【0170】
エミッション顕微鏡225は、カメラ219、画像処理機構221、及び表示装置223を有する。エミッション顕微鏡225に搭載されたカメラ219によって、EL素子203からの発光における光子(Photon)数を観察し、画像処理機構221を介して表示装置223にその結果を出力することができる。
【0171】
カメラ219の構成としては、超高感度カメラ(フォトンカウンティングカメラ)を具備した光学顕微鏡などを用いることができる。ここで検出された発光は、映像信号として画像処理機構221に取り込まれ、画像処理を施されて表示装置223に表示される。このとき、あらかじめ撮影しておいた基板201上のパターン像と検出された発光の画像とを重ね合わせることにより、発光箇所を特定することが出来る。例えば、表示装置223には、EL素子203が有する不良箇所205の発光の光子数の分布として色表示されるため、他の正常な領域と異なる色表示がなされたところが不良箇所205であるとして、その位置の特定が可能となる。
【0172】
輝点や暗点などの可視光で検知可能な発光不良に関しては、可視光の領域の発光の光子数を検知することにより、不良箇所205を特定することが出来る。
【0173】
また一般的に、電極間のショートによる電流のリークが生じたときには、可視光から赤外光に及ぶ広い連続スペクトルの発光が検出されることが知られている。本発明で用いる超高感度カメラ(フォトンカウンティングカメラ)は、Siを含む結晶がそのバンドギャップエネルギーに相当する波長よりも長波長の赤外光を透過する現象を利用して観測するため、ショートによる不良箇所を特定することが出来る。
【0174】
エミッション顕微鏡225は、ステージ215を動かすための位置合わせ機構217と接続されており、ステージ215を動かしながら発光209を観測することにより不良箇所の位置を特定する。また、位置合わせ機構217は、特定された不良箇所205の位置データを元に不良箇所205がレーザ光を照射される位置に移動させる。
【0175】
レーザ装置233は、不良箇所205に照射され、当該不良箇所205を絶縁化させるレーザ光173を発振することが出来る装置である。
【0176】
続いて、上記構成を用いて不良箇所205の位置を特定した後、レーザ照射によって不良箇所205を修復する方法について説明する。
【0177】
まず、外部電源211から主配線207を介してEL素子203の上下電極間に電圧を印加して発光させる。またこの際、ソースメータ213でEL素子203に流れる電流を測定する。
【0178】
EL素子203からの発光209は、シャッター231aが開くと集光レンズ227、ハーフミラー229、及びシャッター231aを介してエミッション顕微鏡225内のカメラ219によって検出され、その検出結果は画像処理機構221を介して表示装置223に表示される。このとき、シャッター231bは閉じている。
【0179】
発光209により不良箇所205の位置を特定すると、位置合わせ機構217によってステージ215を、不良箇所205がレーザ照射される位置になるように移動する。
【0180】
続いて、シャッター231aを閉じ、シャッター231bを開いて、レーザ装置233からレーザ光173を発振する。レーザ光173は、ハーフミラー229、集光レンズ227を介して基板201上の不良箇所205に照射される。
【0181】
以上のようにして位置が特定された不良箇所205に対してレーザ光173を照射することにより、不良箇所205の修復を行うことができる。
【0182】
また、レーザ光173の照射後にソースメータ213によってEL素子203に流れる電流を再度測定する。照射前後の電流を比較することにより、修復が正常に行われていることを確認することが出来る。
【0183】
なお、レーザ光173を照射して不良箇所205を絶縁化させる方法としては、下部電極層、または上部電極層を構成する材料をレーザ光173の照射により酸化物にすることで絶縁化させる、またはレーザ光173の照射により不良箇所205を物理的に引き離すことにより絶縁化させる方法などがある。本発明においては、レーザ光173の出力を調節することによりいずれの絶縁化も可能である。
【0184】
また、レーザ光173を照射する場合、不良箇所205以外の正常な領域までも破壊されるなど、周辺部への影響が出来るだけ小さくなるようにレーザ光173の出力や照射時間を調整することが必要である。また、本発明に用いるレーザ光173のビーム径は、照射する不良箇所205の径よりも大きい方が好ましく、具体的には1.0〜3.0μmであるのが望ましい。ビーム径よりも不良箇所205の径が大きい場合は、ステージ215を動かしながら複数回レーザ光173の照射を行う。
【0185】
以上がEL素子の不良箇所を特定し、レーザ光を照射する機構とその方法の一例の説明である。
【0186】
このようにしてレーザ光173を照射した後の段階における断面概略図を図10(B)に示す。
【0187】
発光不良が修復された領域119a及び119bでは、上部電極層107、EL層105及び下部電極層103がレーザ光173の照射によって除去されている。したがって、領域119a及び119bにおいて、上部電極層107と下部電極層103とは電気的に分断され、絶縁化されている。したがって、当該領域119a及び119bは、EL素子の上下電極間に電圧を印加しても発光しない暗点として観測される。
【0188】
ここで、レーザ光173の照射を終えた後に、再度主配線102a及び102bに電圧を印加してEL素子を発光させ、不良箇所が残存していないことを確認することが好ましい。さらに、主配線102a及び102bに印加する電圧に対する電流を測定し、想定される電流値と比較することにより、発光部全体にわたって不良箇所が完全に修復できているかどうかを確認することが特に好ましい。
【0189】
ここで、不良が残存している場合には、当該不良箇所を特定し、再度レーザ光173の照射により不良の修復を行う。
【0190】
なお、不良箇所の特定、及びレーザ光173の照射は、水、酸素などの不純物が極力含まれない環境で行うことが好ましい。例えば減圧雰囲気下や、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行う。
【0191】
また、上部電極層107を形成した後、水や酸素などの不純物を透過しない絶縁物からなるバリア膜を形成した後、不良箇所の特定及びレーザ光173の照射を行っても良い。当該バリア膜には、EL素子の発光に対する透光性を有する材料を選択して用いる。
【0192】
以上で不良箇所の特定とその修復工程が終了する。
【0193】
続いて、上述の方法により補助配線123が設けられた対向基板121と、基板101とを貼り合わせる。
【0194】
その後、対向基板121の基板101と対向しない面に、レンズアレイ125及び127を形成する。
【0195】
この段階における断面概略図が図10(C)に相当する。
【0196】
レンズアレイ125及び127を光射出側に設けることにより、不良が修復され、暗点として観測される領域は、当該レンズアレイ125及び127によって拡散される他の正常な領域からの発光によって目立たなくなる効果を奏する。
【0197】
レンズアレイ125及び127は、対向基板121側から見たときに可視光に対する焦点面とEL素子(又はEL素子内の修復箇所)とが交差しないように設けると、EL素子を発光させて対向基板121側から見たときに当該修復箇所に結像することなく、より効果的に修復箇所が目立たなくなるため好ましい。特に、異なる形状の二種類のレンズアレイを重ねた構成を用いると、その焦点面をEL素子よりも十分に離すことができ、当該修復箇所の発光しない領域をより目立たなくすることが可能となる。
【0198】
以上の工程により、発光装置100を作製することができる。このような工程を経て作製された発光装置100は、EL素子の発光不良が極めて抑制され、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、不良箇所の特定や修復工程を含む上記作製工程は、発光部の面積が大きい場合であっても容易に適用可能であるため、発光部の大面積化に適している。さらに、発光を拡散するためのレンズアレイ等の凹凸形状の構造物を光射出側に設けることにより、不良の修復箇所を目立たなくする効果を奏する。
【0199】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが出来る。
【0200】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に適用できるEL層の一例について、図6を用いて説明する。
【0201】
図6(A)に示すEL層105は、下部電極層103と上部電極層107の間に設けられている。下部電極層103及び上部電極層107は、上記実施の形態で例示した下部電極層及び上部電極層と同様の構成を適用することができる。
【0202】
本実施の形態で例示するEL層105を有する発光素子は、上記実施の形態で例示した発光装置に適用可能である。
【0203】
EL層105は、少なくとも発光性の有機化合物を含む発光層が含まれていればよい。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。本実施の形態において、EL層105は、下部電極層103側から、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、電子輸送層704、及び電子注入層705の順で積層されている。なお、これらを反転させた積層構造としてもよい。
【0204】
図6(A)に示す発光素子の作製方法について説明する。
【0205】
正孔注入層701は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0206】
また、低分子の有機化合物である芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0207】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。また、酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0208】
特に、正孔注入層701として、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることが好ましい。正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることにより、下部電極層103からの正孔注入性を良好にし、発光素子の駆動電圧を低減することができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。該複合材料を用いて正孔注入層701を形成することにより、下部電極層103からEL層105への正孔注入が容易となる。
【0209】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0210】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、芳香族アミン化合物や、カルバゾール誘導体、そのほか正孔移動度の高い芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0211】
また、電子受容体としては、有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0212】
なお、高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層701に用いてもよい。
【0213】
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、芳香族アミン化合物を用いることができる。これは主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0214】
また、正孔輸送層702には、カルバゾール誘導体や、アントラセン誘導体や、そのほか正孔輸送性の高い高分子化合物を用いてもよい。
【0215】
発光性の有機化合物を含む層703は、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0216】
なお、発光性の有機化合物を含む層703としては、発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、発光性の物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
【0217】
また、ホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するために結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うために、さらに異なる物質を添加してもよい。
【0218】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光性の有機化合物を含む層703の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0219】
また、発光性の有機化合物を含む層703として高分子化合物を用いることができる。
【0220】
また、発光性の有機化合物を含む層を複数設け、それぞれの層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、発光性の有機化合物を含む層を2つ有する発光素子において、第1の発光性の有機化合物を含む層の発光色と第2の発光性の有機化合物を含む層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、発光性の有機化合物を含む層を3つ以上有する発光素子の場合でも同様である。
【0221】
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0222】
電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。
【0223】
なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、電子輸送層704、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、または塗布法等の方法で形成することができる。
【0224】
EL層は、図6(B)に示すように、下部電極層103と上部電極層107との間に複数積層されていてもよい。この場合、積層された第1のEL層800と第2のEL層801との間には、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は上述の複合材料で形成することができる。また、電荷発生層803は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。
【0225】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つ以上のEL層を有する発光素子の場合でも同様である。
【0226】
EL層105は、図6(C)に示すように、下部電極層103と上部電極層107との間に、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、電子輸送層704、電子注入バッファー層706、電子リレー層707、及び上部電極層107と接する複合材料層708を有していてもよい。
【0227】
上部電極層107と接する複合材料層708を設けることで、特にスパッタリング法を用いて上部電極層107を形成する際に、EL層105が受けるダメージを低減することができるため、好ましい。複合材料層708は、前述の、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。
【0228】
さらに、電子注入バッファー層706を設けることで、複合材料層708と電子輸送層704との間の注入障壁を緩和することができるため、複合材料層708で生じた電子を電子輸送層704に容易に注入することができる。
【0229】
電子注入バッファー層706には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0230】
また、電子注入バッファー層706が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した電子輸送層704の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0231】
さらに、電子注入バッファー層706と複合材料層708との間に、電子リレー層707を形成することが好ましい。電子リレー層707は、必ずしも設ける必要は無いが、電子輸送性の高い電子リレー層707を設けることで、電子注入バッファー層706へ電子を速やかに送ることが可能となる。
【0232】
複合材料層708と電子注入バッファー層706との間に電子リレー層707が挟まれた構造は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層706に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造である。したがって、駆動電圧の上昇を防ぐことができる。
【0233】
電子リレー層707は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUMO準位は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。また、電子リレー層707がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準位も複合材料層708におけるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエネルギー準位の数値としては、電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。
【0234】
電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0235】
電子リレー層707に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がより容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低電圧でより安定に駆動することが可能になる。
【0236】
金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好ましい。特に、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用しやすい材料は、アクセプター性が高いため好ましい。
【0237】
なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。
【0238】
電子リレー層707はさらにドナー性物質を含んでいてもよい。ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いることができる。電子リレー層707にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の移動が容易となり、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。
【0239】
電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記した材料の他、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定であるため、電子リレー層707を形成する為に用いる材料として、好ましい材料である。
【0240】
なお、電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナー性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層707を形成すればよい。
【0241】
正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、及び電子輸送層704は前述の材料を用いてそれぞれ形成すればよい。
【0242】
以上により、本実施の形態のEL層105を作製することができる。
【0243】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが出来る。
【0244】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置を用いて完成させた照明装置の一例について、図7を用いて説明する。
【0245】
本発明の一態様では、発光部が曲面を有する照明装置を実現することができる。
【0246】
本発明の一態様の発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、ダッシュボードや、天井等に照明を設置することもできる。
【0247】
図7(A)では、本発明の一態様の発光装置を適用した、室内の照明装置901、卓上照明器具903、及び面状照明装置904を示す。発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、厚みが薄いため、壁に取り付けて使用することができる。その他、ロール型の照明装置902として用いることもできる。
【0248】
図7(B)に別の照明装置の例を示す。図7(B)に示す卓上照明装置は、照明部9501、支柱9503、支持台9505等を含む。照明部9501は、本発明の一態様の発光装置を含む。このように、本発明の一態様では、曲面を有する照明装置、又はフレキシブルに曲がる照明部を有する照明装置を実現することができる。このように、フレキシブルな発光装置を照明装置として用いることで、照明装置のデザインの自由度が向上するのみでなく、例えば、自動車の天井、ダッシュボード等の曲面を有する場所にも照明装置を設置することが可能となる。
【0249】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0250】
100 発光装置
101 基板
102 主配線
102a 主配線
102b 主配線
102c 主配線
102d 主配線
102e 主配線
102f 主配線
103 下部電極層
103a 下部電極層
103b 下部電極層
103c 下部電極層
103d 下部電極層
103e 下部電極層
103f 下部電極層
103g 下部電極層
103h 下部電極層
105 EL層
105a EL層
105b EL層
105c EL層
105d EL層
105e EL層
105f EL層
105g EL層
105h EL層
107 上部電極層
107a 上部電極層
107b 上部電極層
107c 上部電極層
107d 上部電極層
107e 上部電極層
107f 上部電極層
107g 上部電極層
107h 上部電極層
109 平坦化膜
111 封止材
113 シール材
115 接続体
117a 領域
117b 領域
119a 領域
119b 領域
121 対向基板
123 補助配線
125 レンズアレイ
127 レンズアレイ
128 コンバータ
129a 接続電極
129b 接続電極
131a 配線
131b 配線
131c 配線
131d 配線
131e 配線
150 発光装置
151a 副配線
151b 副配線
151c 副配線
160 発光装置
171a 異物
171b 異物
173 レーザ光
201 基板
203 EL素子
205 不良箇所
207 主配線
209 発光
211 外部電源
213 ソースメータ
215 ステージ
217 位置合わせ機構
219 カメラ
221 画像処理機構
223 表示装置
225 エミッション顕微鏡
227 集光レンズ
229 ハーフミラー
231a シャッター
231b シャッター
233 レーザ装置
701 正孔注入層
702 正孔輸送層
703 発光性の有機化合物を含む層
704 電子輸送層
705 電子注入層
706 電子注入バッファー層
707 電子リレー層
708 複合材料層
800 第1のEL層
801 第2のEL層
803 電荷発生層
901 照明装置
902 照明装置
903 卓上照明器具
904 面状照明装置
9501 照明部
9503 支柱
9505 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面上に下部電極層と、少なくとも発光性の有機化合物を含む層と、上部電極層とが順に積層された発光素子を備える第1の基板と、
補助配線を一表面に備える第2の基板と、を有し、
前記第1の基板と前記第2の基板とは、前記上部電極層と前記補助配線とが電気的に接続するように対向して設けられた、発光装置。
【請求項2】
前記補助配線はCuを含む、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1の基板は、表面が絶縁処理された金属、又は合金からなる、請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
第1の基板の一表面上に下部電極層と発光性の有機化合物を含む層と上部電極層とが順に積層された発光素子を形成する工程と、
第2の基板上に補助配線を形成する工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを、前記上部電極層と前記補助配線とが電気的に接続するように貼り合わせる工程と、を有する、発光装置の作製方法。
【請求項5】
第1の基板の一表面上に下部電極層と発光性の有機化合物を含む層と上部電極層とが順に積層された発光素子を形成する工程と、
前記下部電極層と前記上部電極層との間に電圧を印加して、前記発光素子内の不良箇所の位置を特定し、前記不良箇所にレーザ光を照射して、前記不良箇所を修復する工程と、
第2の基板上に補助配線を形成する工程と、
前記不良箇所が修復された前記発光素子を有する前記第1の基板と前記第2の基板とを、前記上部電極層と前記補助配線とが電気的に接続するように貼り合わせる工程と、を有する、発光装置の作製方法。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置の作製方法において、
前記第2の基板に、前記発光素子からの発光を拡散し、且つその可視光に対する焦点面が前記発光素子と交差しない構造物を設ける工程を有する、発光装置の作製方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6のいずれか一に記載の発光装置の作製方法において、
前記下部電極層と前記上部電極層との間に電圧を印加して、前記発光素子内の不良箇所の位置を特定する際に、
可視光、又は赤外光を観測して不良箇所を特定する、発光素子の作製方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか一に記載の発光装置の作製方法において、
前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせるよりも前に、
前記下部電極層と前記上部電極層との間に電圧を印加し、
前記下部電極層と前記上部電極層との間に流れる電流と、想定される電流とを比較して不良の有無を検出する工程を有する、発光装置の作製方法。
【請求項9】
請求項4乃至請求項8のいずれか一に記載の発光装置の作製方法において、
表面が絶縁処理された金属、又は合金からなる基板を、前記第1の基板に用いる、発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−216514(P2012−216514A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62921(P2012−62921)
【出願日】平成24年3月20日(2012.3.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】