発光装置、画像形成装置および表示装置
【課題】有機膜の発光層を陽極と陰極とで挟んで構成される発光装置において、発光層の形成を容易にする。
【解決手段】有機膜の発光層10を陽極として機能する第1電極20と陰極として機能する第2電極30とで挟んで構成される発光装置であって、第1電極20は、発光単位に形成され、第1電極20同士の間に、第2電極30と同極の第3電極40を設け、発光層10は、第1電極20と第3電極40とを覆うように連続して形成される。また、第1電極20と第2電極30との間に絶縁材を設ける。
【解決手段】有機膜の発光層10を陽極として機能する第1電極20と陰極として機能する第2電極30とで挟んで構成される発光装置であって、第1電極20は、発光単位に形成され、第1電極20同士の間に、第2電極30と同極の第3電極40を設け、発光層10は、第1電極20と第3電極40とを覆うように連続して形成される。また、第1電極20と第2電極30との間に絶縁材を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機膜の発光層を陽極と陰極とで挟んで構成される発光装置、画像形成装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子に代わる次世代の発光デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下適宜「OLED素子」と略称する)素子が注目されている。このOLED素子を用いたパネルは、OLED素子が自発光型であるために視野角依存性が少なく、また、バックライトや反射光が不要であるために低消費電力化や薄型化に向いている。
【0003】
図11は、OLED素子を用いた発光装置の一例を示す断面図であり、図11(a)は基本的構造を示し、図11(b)は具体的構成を示している。OLED素子を用いた発光装置は、図11(a)に示すように、有機膜で構成される発光層10を陽極20と陰極30とで両側から挟んだ構造をしている。この構造において陽極20にプラス、陰極にマイナスの直流電圧をかけると、発光層10には図に示すような電界が発生し、正孔が陽極20から注入され陰極30に向かって進み、電子が陰極30から注入され陽極20に向かって進む。両者は発光層10内で再結合し励起状態になるが、この状態は不安定であるため、すぐに基底状態に戻る。このときに放出されるエネルギーによりOLED素子が発光する仕組みになっている。
【0004】
OLED素子を用いた発光装置の具体的な構成は以下の通りである。すなわち、図11(b)に示すように、ガラス等の透明な基材60上に配線25を介して陽極20が発光単位である画素(色画素)単位にパターニングされて形成される。陽極20は、透明電極のITO(Indium Tin Oxide)が一般に用いられる。この陽極20上に同様の形状にパターニングされた発光層10が形成され、それらを覆う形で陰極30が形成される。そして、封止材70で封止することで発光装置が構成される(例えば、特許文献1)。それぞれの発光層30は、絶縁材50により、他の発光層30と電気的に分離している。なお、本例では簡単のため有機膜として発光層のみを用いる単層型を例にしているが、電子輸送層、ホール輸送層、電子注入層、ホール注入層等を別途設けた多層型を用いる場合も多い。また、発光層が電子輸送層等を兼ねる場合もある。
【特許文献1】特開2003−7460号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、画素電極として用いられる陽極20は、画素単位にパターニングされ、陽極20の上部に形成される発光層30も同様のパターニングで形成され、隣り合う発光層同士は分離し、電気的に絶縁される。ここで、発光層30のパターン形成は、マスクを用いた蒸着法あるいはインクジェットを用いた塗布により行なわれている。
【0006】
近年、OLED素子を用いた発光装置をプリンタの光ヘッドとして用いたり、表示装置として用いることが実用化されてきている。このようなプリンタや表示装置で微細な画像形成を行なうためには、画素ピッチを細かくする必要がある。画素ピッチが細かくなると、発光層30のパターニングも微細に行なわなくてはならない。このため、マスクの精度が要求されたり、正確な塗り分けが要求されることになり、生産性が低下したり、コストの上昇を招く結果となる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、発光層を陽極と陰極とで挟んで構成される発光装置において、発光層の形成を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る発光装置は、複数の第1電極と、単一の第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層とを備えたものであって、前記第1電極同士の間に設けられ、前記第1電極の電位を基準としたとき前記第2電極と同極性の電位が供給される複数の第3電極と、前記第3電極と前記第1電極との間に設けられた絶縁材とを備え、前記発光層は、前記第1電極と前記第3電極とを覆うように連続して形成されることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、第1電極同士の間に、第1電極の電位を基準としたとき第2電極と同極性の電位が供給される第3電極を設けることで、発光層を発光単位に形成する必要がなくなる。このため、発光単位に塗り分けずに一括して形成することができるようになり、容易に発光層を形成することができる。なお、発光層は、例えば、有機EL材料を用いて形成してもよいし、あるいは、無機EL材料を用いて形成してもよい。また、発光装置は、第2電極に固定電位を供給し、第1電極に表示すべき画像の階調に応じた電位を供給し、第3電極に第1電極の電位を基準としたとき、第2電極と同極性の電位を供給する駆動回路を備えてもよい。
【0010】
具体的には、第1電極は陽極であり、第2電極および第3電極は陰極とすることができ、この場合、第3電極は、第2電極の材料よりも仕事関数の大きな材料を用いることが望ましい。第3電極の電子注入効率を低くすることにより、第1電極と第3電極との間での発光を防ぐことができるからである。
【0011】
一方、第1電極を陰極とし、第2電極および第3電極を陽極とした場合には、第3電極は、第2電極の材料よりも仕事関数の小さな材料を用いることが望ましい。第3電極の正孔注入効率を低くすることにより、第1電極と第3電極との間での発光を防ぐことができるからである。
さらに、電圧管理の容易のため、第2電極と第3電極とは同電位とすることができる。また、短絡を防ぐために第1電極と第3電極とは前記絶縁材により電気的に分離することが好ましい。
【0012】
次に、本発明に係る画像形成装置は、光の照射によって画像が形成される感光体と、前記感光体に光を照射して前記画像を形成するヘッド部とを備え、上述した発光装置を前記ヘッド部に用いることが好ましい。次に、本発明に係る表示装置は、上述した発光装置を備えることが好ましい。
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明に係る発光装置の製造方法は、基板上に複数の第1電極を発光単位にパターニングして形成するとともに、前記第1電極同士の間に補助電極を形成するステップと、前記第1電極と前記補助電極とを覆うように発光層を連続的に形成するステップと、前記発光層上に第2電極を形成するステップとを有することを特徴とする。この発明によれば、第1電極と補助電極とを覆うように発光層を連続的に形成するため、容易に発光層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<発光装置>
図1は、本発明の実施形態に係る発光装置の基本的構造を示す図である。上述の「背景技術」と同じ部材については同じ符号を付している。本図に示すように、本実施形態に係る発光装置は、画素電極として画素単位に区切られた陽極20を用いるが、発光層10は画素単位にパターニングされずに連続的に形成される。そして、表示される画素を分離するために、陽極20同士の間に補助電極40が設けられる。陰極30は、従来通り、共通電極として形成される。
【0015】
この構造において陽極20にプラス、陰極30にマイナス、補助電極40にマイナスの直流電圧をかけると、本図に示すような電界が生じ、正孔が陽極20から注入され陰極30に向かって進み、電子が陰極30から注入され陽極20に向かって進む。両者は発光層10内で再結合し励起状態になるが、この状態は不安定であるため、すぐに基底状態に戻る。このときに放出されるエネルギーによりOLED素子が発光する。本実施形態において、発光層10は画素単位にパターニングされずに連続しているが、陽極20同士の間にマイナスの補助電極40が設けられているため、画素間に対応する発光層10では陽極20から注入された正孔と陰極30から注入された電子との再結合は起こらないため、発光層10を塗り分けることなく、画素単位の発光制御が可能となる。
【0016】
本実施形態では、陰極30と補助電極40にかけるマイナス電圧は同じ値とするが、発光層10において陽極20同士の間および補助電極40と陽極20との間で発光が起こらない範囲で両者を異なる値としてもよい。発光層10における補助電極40と陽極20との間の発光については後述する。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係る発光装置の具体的な構成を示す断面図である。本図に示すように発光装置は、ガラス等の透明な基材60上に配線25を介して陽極20が画素単位にパターニングされて形成される。陽極20は、透明電極のITO(Indium Tin Oxide)が一般に用いられる。隣り合う陽極20の間には補助電極40が形成される。補助電極40は配線45を介して基材60上に形成され、透明電極ITO42と、陰極として機能させるための補助電極用金属41とを備えて構成される。それぞれの陽極20、補助電極40は、絶縁材50により電気的に絶縁される。有機膜で構成される発光層10を、陽極20および補助電極40と陰極30とで挟み、封止材70で封止されて発光装置が構成される。上述のように、発光層10は、画素単位のパターニングが不要であり、連続的に形成することができる。
【0018】
図3は、陽極20と補助電極40とを発光層10側から見たときの一例を示す図である。本図に示すように画素単位にパターニングされた陽極20a、陽極20bを囲むように補助電極40が形成される。ただし、陽極20および補助電極40の形状は、このような形状に限られない。なお、これらを覆って形成される発光層10は、低分子系材料、高分子系材料のいずれを用いてもよい。また、電極の駆動方法は、パッシブ型、アクティブ型のいずれを用いるようにしてもよい。
【0019】
次に、陰極30と補助電極用金属41に用いる材料について説明する。一般にOLEDの陰極には仕事関数の小さな材料を用いる。仕事関数の小さな材料としては、マグネシウムやリチウム、カルシウム等が代表的である。ここでは、陰極30には、マグネシウムを用いるものとする。補助電極用金属41も陰極として用いるため、仕事関数の小さな材料が好ましい。しかし、仕事関数が小さすぎると、陽極20と補助電極40との間で正孔と電子とのやり取りが生じ、発光層10で不要な発光が生じてしまう。このため、陰極30の材料の仕事関数よりも大きな仕事関数の物質を用いるものとする。陰極30としてマグネシウムを用いた場合には、補助電極用金属41として、例えば、アルミニウムを用いることができる。
【0020】
図4は、発光層10、陽極20、陰極30および補助電極40のエネルギー準位を示す図である。図4(A)は、接合前の準位を示している。本図に示すように、発光層10は、伝導帯と価電子帯のバンド構造を有しており、陽極20のITOのエネルギー準位、陰極30のマグネシウムのエネルギー準位はそれぞれ−4.6eV、−3.7eVである。また、補助電極用金属41として用いるアルミニウムのエネルギー準位は、マグネシウムより低い(すなわち仕事関数の大きい)−4.3eVとなっている。
【0021】
発光層10と電極とを接合すると、電圧をかけていない状態では、図4(B)に示すようにエネルギー準位がそろい、発光層10内に電界が生じる。陽極20にプラスの電圧を与え、陰極30および補助電極40にマイナスの電圧を与えると、図4(C)に示すように、仕事関数の小さいマグネシウムで構成された陰極30から電子が注入され、陽極20から注入された正孔と発光層10内で再結合し、励起状態になる。この状態は不安定であるため、すぐに基底状態に戻り、このときに放出されるエネルギーにより発光層10で発光が行なわれる。
【0022】
本実施形態において発光層10はパターニングされていないが、陽極20の周辺には、陰極として機能する補助電極40が設けられている。補助電極40部分では電子と正孔の再結合は行なわれないため、発光は単位画素としてパターニングされた陽極20に対応する発光層10の領域においてのみ行なわれる。
【0023】
一方、補助電極用金属41として用いられたアルミニウムは、陰極30のマグネシウムより仕事関数が大きいため、発光層10への電子の注入は低効率となる。このため、補助電極40と陽極20との間での発光は避けることができる。このように、本実施形態によれば、発光層をパターニングすることなく、画素単位の発光が可能となる。
【0024】
次に、図5および図6を参照して、本実施形態に係る発光装置の発光部分の製造工程について簡単に説明する。図5(A)は、基材60上に、絶縁材50と陽極20のITOと補助電極40用のITO42とを形成した図である。
【0025】
図5(B)に示すように、この表面にレジスト材を塗布して、補助電極40用のITO42が露出するように、フォトリソグラフィ・エッチングを行ない、図5(C)に示すような構造を得る。次いで、図5(D)に示すように、この表面にアルミニウムを蒸着し、リフトオフすると、図6(A)に示すように補助電極用金属41を形成することができる。この表面に発光層10を構成するEL材を蒸着あるいは塗布することにより図6(B)に示す構造を得る。EL材の蒸着あるいは塗布は、画素単位にパターニングせずに連続的に形成することができる。そして、陰極30となるマグネシウムを蒸着することにより発光装置の発光部分を製造することができる。
【0026】
なお、上述の例では、画素電極として陽極を用いたが、画素電極として陰極を用いた場合には、補助電極も陽極として機能させ、陽極に用いる材料よりも、正孔を注入しにくい材料、すなわち、仕事関数の小さな材料を補助電極用金属として用いるようにする。この場合にも発光層は画素単位にパターニングせずに連続的に形成することができる。
<画像形成装置>
本発明の実施形態に係る発光装置は、例えば、画像形成装置としてのプリンタの光ヘッドとして用いることができる。図7は、実施形態に係る発光装置を適用した画像形成装置の一部の構成を示す斜視図である。本図に示すように、この画像形成装置は、光ヘッド100と集光性レンズアレイ150と感光体ドラム(像担持体)110とを有する。
【0027】
光ヘッド100は、アレイ状に配列された多数の発光素子を有する。これらの発光素子は、用紙などの記録材に印刷されるべき画像に応じて選択的に発光する。本例では、発光素子としてOLED素子を用いるため、本実施形態に係る発光装置を適用することができる。集光性レンズアレイ150は、光ヘッド100と感光体ドラム110との間に配置される。この集光性レンズアレイ150は、各々の光軸を光ヘッド100に向けた姿勢でアレイ状に配列された多数の屈折率分布型レンズを含む。光ヘッド100の各発光素子から発せられた光は集光性レンズアレイ150の各屈折率分布型レンズを透過して感光体ドラム110の表面において結像する。感光体ドラム110は回転し、感光体ドラム110の表面の所定の露光位置に所望の画像に応じた潜像が形成される。
【0028】
図8は、上述した光ヘッド100を用いた画像形成装置の一例を示す縦断側面図である。この画像形成装置は、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド100K、100C、100M、100Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K、110C、110M、110Yの露光位置にそれぞれ配置したものであり、タンデム方式の画像形成装置として構成されている。有機ELアレイ露光ヘッド100K、100C、100M、100Yは上述した光ヘッド100によって構成されている。
【0029】
図8に示すように、この画像形成装置は、駆動ローラ121と従動ローラ122が設けられており、図示矢印方向へ循環駆動される中間転写ベルト120を備えている。この中間転写ベルト120に対して所定間隔で配置された4個の像担持体としての外周面に感光層を有する感光体110K、110C、110M、110Yが配置される。前記符号の後に付加されたK、C、M、Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示す。他の部材についても同様である。感光体110K、110C、110M、110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0030】
各感光体110(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体110(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)111(K、C、M、Y)と、この帯電手段111(K、C、M、Y)により一様に帯電させられた外周面を感光体110(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する本発明の上記のような有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)が設けられている。
【0031】
また、この有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置114(K、C、M、Y)を有している。
【0032】
ここで、各有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)は、有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)のアレイ方向が感光体ドラム110(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置される。そして、各有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体110(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とは略一致するように設定されている。
【0033】
現像装置114(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラヘ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体110(K、C、M、Y)に接触あるいは押厚させることにより、感光体110(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させることによりトナー像として現像するものである。
【0034】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写され、中間転写ベルト120上で順次重ね合わされてフルカラーとなる。ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送された記録媒体102は、二次転写ローラ126に送られる。中間転写ベルト120上のトナー像は、二次転写ローラ126において用紙等の記録媒体102に二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることで記録媒体102上に定着される。この後、記録媒体102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙トレイ上へ排出される。
【0035】
このように、図8の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを用いているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。
【0036】
次に、上述した光ヘッド100を用いた画像形成装置の他の例について説明する。図9は、画像形成装置の縦断側面図である。図9において、画像形成装置には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、有機ELアレイが設けられている露光ヘッド167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。露光ヘッド167は上述した光ヘッド100によって構成されている。
【0037】
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として反時計回り方向に回転する。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。現像ローラ162a〜162dおよびトナー供給ローラ163a〜163は、前記4色の各像形成ユニットに各々配置されている。また、規制フレード164a〜164dによってトナーは所定の厚さに規制される。
【0038】
感光体ドラム165は、帯電器168によって帯電され、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより現像ローラ162aとは逆方向に駆動される。中間転写ベルト169は、従動ローラ170bと駆動ローラ170a間に張架されており、駆動ローラ170aが前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されて、中間転写ベルトに動力を伝達している。当該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆方向に駆動される。
【0039】
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙を搬送する。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写される。二次転写ローラ171は、クラッチにより中間転写ベルト169に当接され、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接されて用紙に画像が転写される。
【0040】
上記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータを有する定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢視F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢視G方向に進行する。用紙は、給紙トレイ178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出されるようになっている。
【0041】
用紙搬送路において、搬送ローラを駆動する駆動モータは、例えば低速のブラシレスモークが用いられる。また、中間転写ベルト169は色ずれ補正などが必要となるのでステップモータが用いられている。これらの各モータは、図示を省略している制御手段からの信号により制御される。
【0042】
図の状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ128aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持されると、現像ロータリ161aが90度回転する。
【0043】
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次にシアン(C)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0044】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後に更に回転位置が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレイ178から給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対176で反転されて、搬送径路で待機している。その後、用紙は適宜のタイミングで二次転写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。
<表示装置>
次に、上述した発光装置を表示装置に適用する場合について説明する。図10は、表示装置の構成を示すブロック図である。この表示装置は、画素領域AA、走査線駆動回路210、データ線駆動回路220、制御回路230および電源回路250を備える。このうち、画素領域AAには、X方向と平行にm本の走査線201が形成される。また、X方向と直交するY方向と平行にn本のデータ線203が形成される。そして、走査線201とデータ線203との各交差に対応して画素回路Pが各々設けられている。各画素回路400には、電源電圧VDDELが電源線205を介して供給される。本例では、画素回路Pの発光素子としてOLEDが用いられているため、上述した発光装置を適用することができる。
【0045】
走査線駆動回路210は、複数の走査線201を順次選択するための走査信号Y1、Y2、Y3、…、Ymを生成する。走査信号Y1〜YmはY転送開始パルスDYをYクロック信号YCLKに同期して順次転送することにより生成される。データ線駆動回路220は、出力階調データDoutに基づいて、選択された走査線201に位置する画素回路400の各々に対し階調信号X1、X2、X3、…、Xnを供給する。この例において、階調信号X1〜Xnは階調輝度を指示する電圧信号として与えられる。
【0046】
制御回路230は、Yクロック信号YCLK、Xクロック信号XCLK、X転送開始パルスDY、Y転送開始パルスDY等の各種の制御信号を生成してこれらを走査線駆動回路210およびデータ線駆動回路220へ出力する。また、制御回路230は、外部から供給される入力階調データDinにガンマ補正等の画像処理を施して出力階調データDoutを生成する。
【0047】
なお、表示装置を用いた電子機器としては、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、デジタルスチルカメラ、テレビジョンモニタ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、上述した表示装置が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の発光装置の基本的構造を示す図である。
【図2】発光装置の具体的な構成を示す断面図である。
【図3】陽極と補助電極とを発光層側から見たときの一例を示す図である。
【図4】発光層、陽極、陰極および補助電極のエネルギー準位を示す図である。
【図5】発光装置の発光部分の製造工程について説明する図である。
【図6】発光装置の発光部分の製造工程について説明する図である。
【図7】画像形成装置の一部の構成を示す斜視図である。
【図8】画像形成装置の一例を示す縦断側面図である。
【図9】画像形成装置の他の例を示す縦断側面図である。
【図10】表示装置の構成を示すブロック図である。
【図11】OLED素子を用いた従来の発光装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10…発光層、20…陽極、25…配線、30…陰極、30…発光層、40…補助電極。41…補助電極用金属、ITO…42、45…配線、50…絶縁材、60…基材、70…封止材、100…光ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機膜の発光層を陽極と陰極とで挟んで構成される発光装置、画像形成装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子に代わる次世代の発光デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下適宜「OLED素子」と略称する)素子が注目されている。このOLED素子を用いたパネルは、OLED素子が自発光型であるために視野角依存性が少なく、また、バックライトや反射光が不要であるために低消費電力化や薄型化に向いている。
【0003】
図11は、OLED素子を用いた発光装置の一例を示す断面図であり、図11(a)は基本的構造を示し、図11(b)は具体的構成を示している。OLED素子を用いた発光装置は、図11(a)に示すように、有機膜で構成される発光層10を陽極20と陰極30とで両側から挟んだ構造をしている。この構造において陽極20にプラス、陰極にマイナスの直流電圧をかけると、発光層10には図に示すような電界が発生し、正孔が陽極20から注入され陰極30に向かって進み、電子が陰極30から注入され陽極20に向かって進む。両者は発光層10内で再結合し励起状態になるが、この状態は不安定であるため、すぐに基底状態に戻る。このときに放出されるエネルギーによりOLED素子が発光する仕組みになっている。
【0004】
OLED素子を用いた発光装置の具体的な構成は以下の通りである。すなわち、図11(b)に示すように、ガラス等の透明な基材60上に配線25を介して陽極20が発光単位である画素(色画素)単位にパターニングされて形成される。陽極20は、透明電極のITO(Indium Tin Oxide)が一般に用いられる。この陽極20上に同様の形状にパターニングされた発光層10が形成され、それらを覆う形で陰極30が形成される。そして、封止材70で封止することで発光装置が構成される(例えば、特許文献1)。それぞれの発光層30は、絶縁材50により、他の発光層30と電気的に分離している。なお、本例では簡単のため有機膜として発光層のみを用いる単層型を例にしているが、電子輸送層、ホール輸送層、電子注入層、ホール注入層等を別途設けた多層型を用いる場合も多い。また、発光層が電子輸送層等を兼ねる場合もある。
【特許文献1】特開2003−7460号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、画素電極として用いられる陽極20は、画素単位にパターニングされ、陽極20の上部に形成される発光層30も同様のパターニングで形成され、隣り合う発光層同士は分離し、電気的に絶縁される。ここで、発光層30のパターン形成は、マスクを用いた蒸着法あるいはインクジェットを用いた塗布により行なわれている。
【0006】
近年、OLED素子を用いた発光装置をプリンタの光ヘッドとして用いたり、表示装置として用いることが実用化されてきている。このようなプリンタや表示装置で微細な画像形成を行なうためには、画素ピッチを細かくする必要がある。画素ピッチが細かくなると、発光層30のパターニングも微細に行なわなくてはならない。このため、マスクの精度が要求されたり、正確な塗り分けが要求されることになり、生産性が低下したり、コストの上昇を招く結果となる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、発光層を陽極と陰極とで挟んで構成される発光装置において、発光層の形成を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る発光装置は、複数の第1電極と、単一の第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層とを備えたものであって、前記第1電極同士の間に設けられ、前記第1電極の電位を基準としたとき前記第2電極と同極性の電位が供給される複数の第3電極と、前記第3電極と前記第1電極との間に設けられた絶縁材とを備え、前記発光層は、前記第1電極と前記第3電極とを覆うように連続して形成されることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、第1電極同士の間に、第1電極の電位を基準としたとき第2電極と同極性の電位が供給される第3電極を設けることで、発光層を発光単位に形成する必要がなくなる。このため、発光単位に塗り分けずに一括して形成することができるようになり、容易に発光層を形成することができる。なお、発光層は、例えば、有機EL材料を用いて形成してもよいし、あるいは、無機EL材料を用いて形成してもよい。また、発光装置は、第2電極に固定電位を供給し、第1電極に表示すべき画像の階調に応じた電位を供給し、第3電極に第1電極の電位を基準としたとき、第2電極と同極性の電位を供給する駆動回路を備えてもよい。
【0010】
具体的には、第1電極は陽極であり、第2電極および第3電極は陰極とすることができ、この場合、第3電極は、第2電極の材料よりも仕事関数の大きな材料を用いることが望ましい。第3電極の電子注入効率を低くすることにより、第1電極と第3電極との間での発光を防ぐことができるからである。
【0011】
一方、第1電極を陰極とし、第2電極および第3電極を陽極とした場合には、第3電極は、第2電極の材料よりも仕事関数の小さな材料を用いることが望ましい。第3電極の正孔注入効率を低くすることにより、第1電極と第3電極との間での発光を防ぐことができるからである。
さらに、電圧管理の容易のため、第2電極と第3電極とは同電位とすることができる。また、短絡を防ぐために第1電極と第3電極とは前記絶縁材により電気的に分離することが好ましい。
【0012】
次に、本発明に係る画像形成装置は、光の照射によって画像が形成される感光体と、前記感光体に光を照射して前記画像を形成するヘッド部とを備え、上述した発光装置を前記ヘッド部に用いることが好ましい。次に、本発明に係る表示装置は、上述した発光装置を備えることが好ましい。
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明に係る発光装置の製造方法は、基板上に複数の第1電極を発光単位にパターニングして形成するとともに、前記第1電極同士の間に補助電極を形成するステップと、前記第1電極と前記補助電極とを覆うように発光層を連続的に形成するステップと、前記発光層上に第2電極を形成するステップとを有することを特徴とする。この発明によれば、第1電極と補助電極とを覆うように発光層を連続的に形成するため、容易に発光層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<発光装置>
図1は、本発明の実施形態に係る発光装置の基本的構造を示す図である。上述の「背景技術」と同じ部材については同じ符号を付している。本図に示すように、本実施形態に係る発光装置は、画素電極として画素単位に区切られた陽極20を用いるが、発光層10は画素単位にパターニングされずに連続的に形成される。そして、表示される画素を分離するために、陽極20同士の間に補助電極40が設けられる。陰極30は、従来通り、共通電極として形成される。
【0015】
この構造において陽極20にプラス、陰極30にマイナス、補助電極40にマイナスの直流電圧をかけると、本図に示すような電界が生じ、正孔が陽極20から注入され陰極30に向かって進み、電子が陰極30から注入され陽極20に向かって進む。両者は発光層10内で再結合し励起状態になるが、この状態は不安定であるため、すぐに基底状態に戻る。このときに放出されるエネルギーによりOLED素子が発光する。本実施形態において、発光層10は画素単位にパターニングされずに連続しているが、陽極20同士の間にマイナスの補助電極40が設けられているため、画素間に対応する発光層10では陽極20から注入された正孔と陰極30から注入された電子との再結合は起こらないため、発光層10を塗り分けることなく、画素単位の発光制御が可能となる。
【0016】
本実施形態では、陰極30と補助電極40にかけるマイナス電圧は同じ値とするが、発光層10において陽極20同士の間および補助電極40と陽極20との間で発光が起こらない範囲で両者を異なる値としてもよい。発光層10における補助電極40と陽極20との間の発光については後述する。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係る発光装置の具体的な構成を示す断面図である。本図に示すように発光装置は、ガラス等の透明な基材60上に配線25を介して陽極20が画素単位にパターニングされて形成される。陽極20は、透明電極のITO(Indium Tin Oxide)が一般に用いられる。隣り合う陽極20の間には補助電極40が形成される。補助電極40は配線45を介して基材60上に形成され、透明電極ITO42と、陰極として機能させるための補助電極用金属41とを備えて構成される。それぞれの陽極20、補助電極40は、絶縁材50により電気的に絶縁される。有機膜で構成される発光層10を、陽極20および補助電極40と陰極30とで挟み、封止材70で封止されて発光装置が構成される。上述のように、発光層10は、画素単位のパターニングが不要であり、連続的に形成することができる。
【0018】
図3は、陽極20と補助電極40とを発光層10側から見たときの一例を示す図である。本図に示すように画素単位にパターニングされた陽極20a、陽極20bを囲むように補助電極40が形成される。ただし、陽極20および補助電極40の形状は、このような形状に限られない。なお、これらを覆って形成される発光層10は、低分子系材料、高分子系材料のいずれを用いてもよい。また、電極の駆動方法は、パッシブ型、アクティブ型のいずれを用いるようにしてもよい。
【0019】
次に、陰極30と補助電極用金属41に用いる材料について説明する。一般にOLEDの陰極には仕事関数の小さな材料を用いる。仕事関数の小さな材料としては、マグネシウムやリチウム、カルシウム等が代表的である。ここでは、陰極30には、マグネシウムを用いるものとする。補助電極用金属41も陰極として用いるため、仕事関数の小さな材料が好ましい。しかし、仕事関数が小さすぎると、陽極20と補助電極40との間で正孔と電子とのやり取りが生じ、発光層10で不要な発光が生じてしまう。このため、陰極30の材料の仕事関数よりも大きな仕事関数の物質を用いるものとする。陰極30としてマグネシウムを用いた場合には、補助電極用金属41として、例えば、アルミニウムを用いることができる。
【0020】
図4は、発光層10、陽極20、陰極30および補助電極40のエネルギー準位を示す図である。図4(A)は、接合前の準位を示している。本図に示すように、発光層10は、伝導帯と価電子帯のバンド構造を有しており、陽極20のITOのエネルギー準位、陰極30のマグネシウムのエネルギー準位はそれぞれ−4.6eV、−3.7eVである。また、補助電極用金属41として用いるアルミニウムのエネルギー準位は、マグネシウムより低い(すなわち仕事関数の大きい)−4.3eVとなっている。
【0021】
発光層10と電極とを接合すると、電圧をかけていない状態では、図4(B)に示すようにエネルギー準位がそろい、発光層10内に電界が生じる。陽極20にプラスの電圧を与え、陰極30および補助電極40にマイナスの電圧を与えると、図4(C)に示すように、仕事関数の小さいマグネシウムで構成された陰極30から電子が注入され、陽極20から注入された正孔と発光層10内で再結合し、励起状態になる。この状態は不安定であるため、すぐに基底状態に戻り、このときに放出されるエネルギーにより発光層10で発光が行なわれる。
【0022】
本実施形態において発光層10はパターニングされていないが、陽極20の周辺には、陰極として機能する補助電極40が設けられている。補助電極40部分では電子と正孔の再結合は行なわれないため、発光は単位画素としてパターニングされた陽極20に対応する発光層10の領域においてのみ行なわれる。
【0023】
一方、補助電極用金属41として用いられたアルミニウムは、陰極30のマグネシウムより仕事関数が大きいため、発光層10への電子の注入は低効率となる。このため、補助電極40と陽極20との間での発光は避けることができる。このように、本実施形態によれば、発光層をパターニングすることなく、画素単位の発光が可能となる。
【0024】
次に、図5および図6を参照して、本実施形態に係る発光装置の発光部分の製造工程について簡単に説明する。図5(A)は、基材60上に、絶縁材50と陽極20のITOと補助電極40用のITO42とを形成した図である。
【0025】
図5(B)に示すように、この表面にレジスト材を塗布して、補助電極40用のITO42が露出するように、フォトリソグラフィ・エッチングを行ない、図5(C)に示すような構造を得る。次いで、図5(D)に示すように、この表面にアルミニウムを蒸着し、リフトオフすると、図6(A)に示すように補助電極用金属41を形成することができる。この表面に発光層10を構成するEL材を蒸着あるいは塗布することにより図6(B)に示す構造を得る。EL材の蒸着あるいは塗布は、画素単位にパターニングせずに連続的に形成することができる。そして、陰極30となるマグネシウムを蒸着することにより発光装置の発光部分を製造することができる。
【0026】
なお、上述の例では、画素電極として陽極を用いたが、画素電極として陰極を用いた場合には、補助電極も陽極として機能させ、陽極に用いる材料よりも、正孔を注入しにくい材料、すなわち、仕事関数の小さな材料を補助電極用金属として用いるようにする。この場合にも発光層は画素単位にパターニングせずに連続的に形成することができる。
<画像形成装置>
本発明の実施形態に係る発光装置は、例えば、画像形成装置としてのプリンタの光ヘッドとして用いることができる。図7は、実施形態に係る発光装置を適用した画像形成装置の一部の構成を示す斜視図である。本図に示すように、この画像形成装置は、光ヘッド100と集光性レンズアレイ150と感光体ドラム(像担持体)110とを有する。
【0027】
光ヘッド100は、アレイ状に配列された多数の発光素子を有する。これらの発光素子は、用紙などの記録材に印刷されるべき画像に応じて選択的に発光する。本例では、発光素子としてOLED素子を用いるため、本実施形態に係る発光装置を適用することができる。集光性レンズアレイ150は、光ヘッド100と感光体ドラム110との間に配置される。この集光性レンズアレイ150は、各々の光軸を光ヘッド100に向けた姿勢でアレイ状に配列された多数の屈折率分布型レンズを含む。光ヘッド100の各発光素子から発せられた光は集光性レンズアレイ150の各屈折率分布型レンズを透過して感光体ドラム110の表面において結像する。感光体ドラム110は回転し、感光体ドラム110の表面の所定の露光位置に所望の画像に応じた潜像が形成される。
【0028】
図8は、上述した光ヘッド100を用いた画像形成装置の一例を示す縦断側面図である。この画像形成装置は、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド100K、100C、100M、100Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K、110C、110M、110Yの露光位置にそれぞれ配置したものであり、タンデム方式の画像形成装置として構成されている。有機ELアレイ露光ヘッド100K、100C、100M、100Yは上述した光ヘッド100によって構成されている。
【0029】
図8に示すように、この画像形成装置は、駆動ローラ121と従動ローラ122が設けられており、図示矢印方向へ循環駆動される中間転写ベルト120を備えている。この中間転写ベルト120に対して所定間隔で配置された4個の像担持体としての外周面に感光層を有する感光体110K、110C、110M、110Yが配置される。前記符号の後に付加されたK、C、M、Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示す。他の部材についても同様である。感光体110K、110C、110M、110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0030】
各感光体110(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体110(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)111(K、C、M、Y)と、この帯電手段111(K、C、M、Y)により一様に帯電させられた外周面を感光体110(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する本発明の上記のような有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)が設けられている。
【0031】
また、この有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置114(K、C、M、Y)を有している。
【0032】
ここで、各有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)は、有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)のアレイ方向が感光体ドラム110(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置される。そして、各有機ELアレイ露光ヘッド100(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体110(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とは略一致するように設定されている。
【0033】
現像装置114(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラヘ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体110(K、C、M、Y)に接触あるいは押厚させることにより、感光体110(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させることによりトナー像として現像するものである。
【0034】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写され、中間転写ベルト120上で順次重ね合わされてフルカラーとなる。ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送された記録媒体102は、二次転写ローラ126に送られる。中間転写ベルト120上のトナー像は、二次転写ローラ126において用紙等の記録媒体102に二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることで記録媒体102上に定着される。この後、記録媒体102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙トレイ上へ排出される。
【0035】
このように、図8の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを用いているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。
【0036】
次に、上述した光ヘッド100を用いた画像形成装置の他の例について説明する。図9は、画像形成装置の縦断側面図である。図9において、画像形成装置には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、有機ELアレイが設けられている露光ヘッド167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。露光ヘッド167は上述した光ヘッド100によって構成されている。
【0037】
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として反時計回り方向に回転する。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。現像ローラ162a〜162dおよびトナー供給ローラ163a〜163は、前記4色の各像形成ユニットに各々配置されている。また、規制フレード164a〜164dによってトナーは所定の厚さに規制される。
【0038】
感光体ドラム165は、帯電器168によって帯電され、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより現像ローラ162aとは逆方向に駆動される。中間転写ベルト169は、従動ローラ170bと駆動ローラ170a間に張架されており、駆動ローラ170aが前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されて、中間転写ベルトに動力を伝達している。当該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆方向に駆動される。
【0039】
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙を搬送する。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写される。二次転写ローラ171は、クラッチにより中間転写ベルト169に当接され、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接されて用紙に画像が転写される。
【0040】
上記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータを有する定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢視F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢視G方向に進行する。用紙は、給紙トレイ178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出されるようになっている。
【0041】
用紙搬送路において、搬送ローラを駆動する駆動モータは、例えば低速のブラシレスモークが用いられる。また、中間転写ベルト169は色ずれ補正などが必要となるのでステップモータが用いられている。これらの各モータは、図示を省略している制御手段からの信号により制御される。
【0042】
図の状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ128aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持されると、現像ロータリ161aが90度回転する。
【0043】
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次にシアン(C)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0044】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後に更に回転位置が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレイ178から給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対176で反転されて、搬送径路で待機している。その後、用紙は適宜のタイミングで二次転写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。
<表示装置>
次に、上述した発光装置を表示装置に適用する場合について説明する。図10は、表示装置の構成を示すブロック図である。この表示装置は、画素領域AA、走査線駆動回路210、データ線駆動回路220、制御回路230および電源回路250を備える。このうち、画素領域AAには、X方向と平行にm本の走査線201が形成される。また、X方向と直交するY方向と平行にn本のデータ線203が形成される。そして、走査線201とデータ線203との各交差に対応して画素回路Pが各々設けられている。各画素回路400には、電源電圧VDDELが電源線205を介して供給される。本例では、画素回路Pの発光素子としてOLEDが用いられているため、上述した発光装置を適用することができる。
【0045】
走査線駆動回路210は、複数の走査線201を順次選択するための走査信号Y1、Y2、Y3、…、Ymを生成する。走査信号Y1〜YmはY転送開始パルスDYをYクロック信号YCLKに同期して順次転送することにより生成される。データ線駆動回路220は、出力階調データDoutに基づいて、選択された走査線201に位置する画素回路400の各々に対し階調信号X1、X2、X3、…、Xnを供給する。この例において、階調信号X1〜Xnは階調輝度を指示する電圧信号として与えられる。
【0046】
制御回路230は、Yクロック信号YCLK、Xクロック信号XCLK、X転送開始パルスDY、Y転送開始パルスDY等の各種の制御信号を生成してこれらを走査線駆動回路210およびデータ線駆動回路220へ出力する。また、制御回路230は、外部から供給される入力階調データDinにガンマ補正等の画像処理を施して出力階調データDoutを生成する。
【0047】
なお、表示装置を用いた電子機器としては、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、デジタルスチルカメラ、テレビジョンモニタ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、上述した表示装置が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の発光装置の基本的構造を示す図である。
【図2】発光装置の具体的な構成を示す断面図である。
【図3】陽極と補助電極とを発光層側から見たときの一例を示す図である。
【図4】発光層、陽極、陰極および補助電極のエネルギー準位を示す図である。
【図5】発光装置の発光部分の製造工程について説明する図である。
【図6】発光装置の発光部分の製造工程について説明する図である。
【図7】画像形成装置の一部の構成を示す斜視図である。
【図8】画像形成装置の一例を示す縦断側面図である。
【図9】画像形成装置の他の例を示す縦断側面図である。
【図10】表示装置の構成を示すブロック図である。
【図11】OLED素子を用いた従来の発光装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10…発光層、20…陽極、25…配線、30…陰極、30…発光層、40…補助電極。41…補助電極用金属、ITO…42、45…配線、50…絶縁材、60…基材、70…封止材、100…光ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1電極と、単一の第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層とを備えた発光装置であって、
前記第1電極同士の間に設けられ、前記第1電極の電位を基準としたとき前記第2電極と同極性の電位が供給される複数の第3電極と、
前記第3電極と前記第1電極との間に設けられた絶縁材とを備え、
前記発光層は、前記第1電極と前記第3電極とを覆うように連続して形成される、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1電極は陽極であり、前記第2電極および前記第3電極は陰極であり、
前記第3電極は、前記第2電極の材料よりも仕事関数の大きな材料を用いている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1電極は陰極であり、前記第2電極および前記第3電極は陽極であり、
前記第3電極は、前記第2電極の材料よりも仕事関数の小さな材料を用いている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2電極と前記第3電極とは同電位であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1電極と前記第3電極とは前記絶縁材により電気的に分離されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
光の照射によって画像が形成される感光体と、
前記感光体に光を照射して前記画像を形成するヘッド部とを備え、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の発光装置を前記ヘッド部に用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の発光装置を備えた表示装置。
【請求項8】
基板上に複数の第1電極を発光単位にパターニングして形成するとともに、前記第1電極同士の間に補助電極を形成するステップと、
前記第1電極と前記補助電極とを覆うように発光層を連続的に形成するステップと、
前記発光層上に第2電極を形成するステップとを有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項1】
複数の第1電極と、単一の第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層とを備えた発光装置であって、
前記第1電極同士の間に設けられ、前記第1電極の電位を基準としたとき前記第2電極と同極性の電位が供給される複数の第3電極と、
前記第3電極と前記第1電極との間に設けられた絶縁材とを備え、
前記発光層は、前記第1電極と前記第3電極とを覆うように連続して形成される、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第1電極は陽極であり、前記第2電極および前記第3電極は陰極であり、
前記第3電極は、前記第2電極の材料よりも仕事関数の大きな材料を用いている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1電極は陰極であり、前記第2電極および前記第3電極は陽極であり、
前記第3電極は、前記第2電極の材料よりも仕事関数の小さな材料を用いている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2電極と前記第3電極とは同電位であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1電極と前記第3電極とは前記絶縁材により電気的に分離されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
光の照射によって画像が形成される感光体と、
前記感光体に光を照射して前記画像を形成するヘッド部とを備え、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の発光装置を前記ヘッド部に用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の発光装置を備えた表示装置。
【請求項8】
基板上に複数の第1電極を発光単位にパターニングして形成するとともに、前記第1電極同士の間に補助電極を形成するステップと、
前記第1電極と前記補助電極とを覆うように発光層を連続的に形成するステップと、
前記発光層上に第2電極を形成するステップとを有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−288123(P2008−288123A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133803(P2007−133803)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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