説明

発光装置、発光方法及びプロジェクタ

【課題】発光安定性を向上させ長寿命化を図った発光装置、発光方法及びプロジェクタを提供する。
【解決手段】光源装置11は、マイクロ波の照射を受けて励起されて光を発する物質が封入された発光部71と、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生部51と、発光部71を挟んで対峙する一対の電界誘導棒77a及び77bと、マイクロ波発生部51が前記マイクロ波を発生したときに電界誘導棒77a及び77bの間に生じる電界に応じて、発光部71に及ぶ磁界を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、発光方法及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタは、映像投写装置として会議でのプレゼンテーション用や家庭におけるホームシアター用など各方面に利用されている。このようなプロジェクタに使用される光源装置は、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、及び高圧水銀ランプなどの電極を有する放電式ランプが主に用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−272726号公報
【特許文献2】特開2001−356412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の放電式ランプのように電極を用いた光源装置は、連続使用にともなう経年変化により、電極先端部の消耗や変形が進み、放電時にアークスポットが移動してアークジャンプが生じ易くなり、放電が不安定となり、発光管内部での発光が不安定となり、発光ムラが発生していた。その結果、スクリーン上での投写映像に照度変動(チラツキ)という現象が発生していた。また、電極物質の蒸発により電極物質が発光管の内壁に付着して黒化する現象や、発光管の部分的な温度上昇により発光管の内壁の一部が白濁して失透する現象などが発生していた。これらの現象などにより、電極を用いた光源装置は、ランプ寿命が低下してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発光安定性を向上させ長寿命化を図った発光装置、発光方法及び発光装置を備えたプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光装置は、マイクロ波の照射を受けて励起されて光を発する物質が封入された発光部と、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生部と、前記発光部を挟んで対峙する一対の導電体部と、前記マイクロ波発生部が前記マイクロ波を発生したときに前記一対の導電体部の間に生じる電界に応じて、前記発光部に及ぶ磁界を発生させる磁界発生部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発光装置では、発光部に封入された物質がマイクロ波の照射を受けて励起されることにより、発光部から光が発生する。つまり、この発光装置は、放電のための電極を有していない。従って、放電式ランプを用いた発光装置に比較して、発光装置の長寿命化が図られるとともに、電極の消耗にともなって発生する不安定な放電を低く抑えることができ、発光安定性の向上が図られる。
【0008】
また、この発光装置では、マイクロ波発生部からのマイクロ波の電界成分が一対の導電体部によって集められる。一対の導電体部は、発光部を挟んで互いに対峙している。このため、集められた電界成分を発光部に集中させやすくすることができる。従って、発光部に封入された物質の励起状態が高められ、発光部の輝度を向上させやすくすることができる。
【0009】
また、この発光装置では、一対の導電体部の間に生じる電界に応じて、発光部に及ぶ磁界を発生させる磁界発生部を備えている。このため、発光部に封入された物質の励起状態が磁界によって一層高められる。従って、この発光装置では、発光状態を維持しつつマイクロ波の発生にかかる電力を低減しやすくすることが可能となる。
【0010】
上記の発光装置では、前記磁界発生部は、前記電界の波形のピークに応じて、前記磁界の波形のピークが出現するように前記磁界を発生させてもよい。
【0011】
この構成によれば、電界の波形のピークと、磁界の波形のピークとを合わせやすくすることができる。なお、波形のピークには、正側のピークと、負側のピークとが含まれる。
【0012】
上記の発光装置では、前記磁界発生部は、コイル部と、前記電界に応じて前記コイル部に電流を発生させる電流発生部と、を備えていてもよい。
【0013】
この構成によれば、コイル部に電流を発生させたり、電流を停止させたりすることにより、コイル部から発生する磁界を変化させることができるため、導電体部同士間に生じる電界に応じて、磁界を発生させやすくすることが可能となる。また、コイル部では、コイル部の材質、断面積、巻き数などの設定の変更が容易であるため、発生する磁界の磁束密度を高めやすい。そのため、マイクロ波の発生にかかる電力よりも少ない電力で、発光部に封入された物質の励起状態を高めやすくすることが可能となる。
【0014】
上記の発光装置では、前記コイル部は、前記発光部を囲んで巻回されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、発光部を貫通する磁束の密度を高めやすくすることができるため、発光部に封入された物質の励起状態が一層高められる。これにより、発光状態を維持しつつマイクロ波の発生にかかる電力を一層低減しやすくすることができる。
【0016】
上記の発光装置では、前記マイクロ波発生部は、電力を生成する電力生成部と、前記電力の供給を受けて前記マイクロ波を放射する導波部と、前記電力を、前記導波部に前記マイクロ波の発生に用いられるマイクロ波発生電力として供給し、前記電流発生部に前記磁界の発生に用いられる磁界発生電力として供給する分配部と、を備えており、前記電流発生部は、前記一対の導電体部のうちの少なくとも一方の電位の変化を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記電位の変化に基づいて前記磁界発生電力の位相を調整し、前記位相が調整された前記磁界発生電力を前記コイル部に供給する位相調整部と、を備えていてもよい。
【0017】
この発光装置は、電力生成部によって生成された電力を、導波部及び電流発生部のそれぞれに供給する分配部を備えている。このため、この発光装置では、磁界の発生にかかる電力源と、マイクロ波の発生にかかる電力源との共通化が図られる。また、この発光装置は、電流発生部が、一対の導電体部のうちの少なくとも一方の電位の変化を検出する検出部と、この検出部によって検出された電位の変化に基づいて磁界発生電力の位相を調整し、位相が調整された磁界発生電力をコイル部に供給する位相調整部とを備えている。つまり、コイル部には、導電体部の電位の変化に基づいて位相が調整された状態で磁界発生電力が供給される。従って、この発光装置では、導電体部同士間に生じる電界に応じて、コイル部から磁界を発生させることができる。
【0018】
上記の発光装置では、前記分配部は、前記マイクロ波発生電力と前記磁界発生電力との比を変化させることができる可変分配部で構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、マイクロ波発生電力と磁界発生電力との比を変化させることができるため、導電体部同士間に生じる電界の強さと、コイル部から発生する磁界の強さとの比を変化させることが可能となる。
【0020】
上記の発光装置では、前記発光部の発光状態を検出する状態検出部と、前記状態検出部によって検出された前記発光状態に基づいて、前記分配部における前記比を制御する分配制御部と、を備えていてもよい。
【0021】
この構成によれば、発光部の発光状態を検出することができ、検出した発光状態に基づいて、マイクロ波発生電力と磁界発生電力との比を制御することができる。
【0022】
上記の発光装置では、前記状態検出部によって検出された前記発光状態に基づいて、前記電力生成部が生成する前記電力の量を制御する電力制御部を備えていてもよい。
【0023】
この構成によれば、状態検出部によって検出された発光状態に基づいて、電力生成部が生成する電力の量を制御することができる。これにより、例えば、発光部が発光したときに、電力を下げることが可能となる。
【0024】
上記の発光装置では、前記状態検出部は、前記導波部から放射された前記マイクロ波が、前記導波部に戻ってくる反射波の電力である反射電力を検出する電力検出部で構成され、前記分配制御部は、前記電力検出部によって検出された前記反射電力に基づいて、前記分配部における前記比を制御し、前記電力制御部は、前記電力検出部によって検出された前記反射電力に基づいて、前記電力の量を制御してもよい。
【0025】
この構成によれば、マイクロ波発生電力と磁界発生電力との比と、電力生成部が生成する電力の量とを、反射電力に基づいて制御することができる。ここで、反射電力は、発光部の発光状態に応じて変化する。従って、反射電力を検出することで、発光状態を検出することができる。つまり、この発光装置では、反射電力を検出することで発光状態を検出することができ、検出した反射電力に基づいて、マイクロ波電力と磁界発生電力との比と、電力生成部が生成する電力の量と、を制御することができる。
【0026】
上記の発光装置では、前記分配制御部は、前記反射電力が所定量に下がったことに基づいて、前記電力に対する前記磁界発生電力の割合が増加するように前記比を制御し、前記電力制御部は、前記反射電力が前記所定量に下がったことに基づいて、前記電力の量を下げるように制御してもよい。
【0027】
この構成によれば、反射電力が所定量に下がったことに基づいて、電力に対する磁界発生電力の割合を増加させ、電力生成部が生成する電力の量を下げることができる。発光部に封入された物質の励起にマイクロ波が消費され、励起状態が高くなると、反射電力の量が下がるため、反射電力が所定量に下がったことに基づいて、発光部が発光したことを検出することができる。そして、発光部が発光したことに基づいて、電力に対する磁界発生電力の割合が増加され、電力生成部が生成する電力の量が下げられるので、マイクロ波電力を低減しつつ磁界発生電力を維持しやすくすることができる。これにより、発光部の発光状態を維持しつつ、投入電力の量を低減しやすくすることができる。従って、低消費電力で発光状態を維持しやすくすることができる。
【0028】
上記の発光装置では、前記電流発生部は、前記一対の導電体部のうちの少なくとも一方に接続された一次コイル部と、前記コイル部に接続された二次コイル部とを有するトランス部で構成されていてもよい。
【0029】
この構成によれば、一対の導電体部のうちの少なくとも一方における電位の変化に応じた電力が、トランス部の二次コイル部からコイル部に供給される。トランス部を介してコイル部に供給される電力は、導電体部の電位の変化に応じた誘導起電力である。従って、この発光装置では、磁界の発生にかかる電力源を省略することができるとともに、コイル部からの磁界の強弱を、導電体部同士間に生じる電界の強弱に同期させやすくすることができる。
【0030】
本発明の発光方法は、マイクロ波の照射を受けて励起されて光を発する物質が封入された発光部と、前記発光部を挟んで対峙する一対の導電体部とに対して前記マイクロ波を照射し、前記一対の導電体部の間に生じる電界に応じて、前記発光部に及ぶ磁界を発生させることを特徴とする。
【0031】
この発光方法では、発光部に封入された物質がマイクロ波の照射を受けて励起されるので、発光部から光を発生させることができる。つまり、この発光方法では、発光部が放電のための電極を有していなくても、発光部に封入された物質を発光させることができる。従って、放電式ランプを用いた発光方法に比較して、発光部の長寿命化が図られるとともに、電極の消耗にともなって発生する不安定な放電を低く抑えることができ、発光安定性の向上が図られる。
【0032】
また、この発光方法では、照射したマイクロ波の電界成分が一対の導電体部によって集められるため、集められた電界成分を発光部に集中させやすくすることができる。従って、発光部に封入された物質の励起状態が高められ、発光部の輝度を向上させやすくすることができる。また、この発光方法では、導電体部同士間に生じる電界に応じて、発光部に及ぶ磁界を発生させるので、発光部に封入された物質の励起状態が磁界によって一層高められる。従って、この発光方法では、発光状態を維持しつつマイクロ波の発生にかかる電力を低減しやすくすることが可能となる。
【0033】
本発明のプロジェクタは、マイクロ波の照射を受けて励起されて光を発する物質が封入された発光部と、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生部と、前記発光部を挟んで対峙する一対の導電体部と、前記マイクロ波発生部が前記マイクロ波を発生したときに前記一対の導電体部の間に生じる電界に応じて、前記発光部に及ぶ磁界を発生させる磁界発生部と、前記発光部からの前記光を画像データに応じて変調して光学像を形成する光変調部と、前記光変調部によって形成された前記光学像を投写する投写部とを備えていることを特徴とする。
【0034】
このプロジェクタでは、発光部に封入された物質がマイクロ波の照射を受けて励起されることにより、発光部から光が発生する。そして、発光部からの光は、光変調部によって光学像に変調され、投写部によって光学像が投写される。つまり、このプロジェクタは、発光部に放電のための電極を有していない。従って、放電式ランプを用いたプロジェクタに比較して、長寿命化が図られるとともに、電極の消耗にともなって発生する不安定な放電を低く抑えることができ、発光安定性の向上が図られる。
【0035】
また、このプロジェクタでは、マイクロ波発生部からのマイクロ波の電界成分が一対の導電体部によって集められる。一対の導電体部は、発光部を挟んで互いに対峙している。このため、集められた電界成分を発光部に集中させやすくすることができる。従って、発光部に封入された物質の励起状態が高められ、発光部の輝度を向上させやすくすることができる。
【0036】
また、このプロジェクタでは、一対の導電体部の間に生じる電界に応じて、発光部に及ぶ磁界を発生させる磁界発生部を備えている。このため、発光部に封入された物質の励起状態が磁界によって一層高められる。従って、このプロジェクタでは、投写部を介して投写される光学像の明るさを向上させやすくすることができるとともに、発光部の発光状態を維持しつつマイクロ波の発生にかかる電力を低減しやすくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施形態を説明する前に、その背景について説明する。
本発明者等は、特願2006−28020において、マイクロ波を照射してプラズマを励起させることで発光部を発光させることができるとともに、プラズマを集中させる磁場を発生させることができる光源装置を提案している。この光源装置では、発光部から電極を省略できるため、放電式ランプよりも発光部の長寿命化が図られる。また、この光源装置では、磁場発生部を備えており、プラズマが磁場によって集中するため、光源を点光源に近づけることができる。
このような長寿命化や点光源化が図られる光源装置であっても、マイクロ波の発生にかかる電力を少なくすると、マイクロ波の強度が弱くなるため、発光状態を維持することが困難であるという未解決の課題がある。
本発明の実施形態は、この未解決の課題に着目してなされたものであり、発光状態を維持しつつマイクロ波の発生にかかる電力を低減しやすくすることができる光源装置、発光方法及びプロジェクタを提供することを目的としている。
次に、本発明の実施形態を、プロジェクタを例に説明する。
本実施形態におけるプロジェクタ1は、ブロック図である図1に示すように、光学系3と、制御回路5と、電源部7とを備えている。このプロジェクタ1は、外部から入力される画像信号に応じた画像を、光学系3を介してスクリーンSなどに投写するものである。なお、プロジェクタ1では、外部電源9からの交流電力が電源部7によって直流電力に変換され、直流電力が電源部7から光学系3や制御回路5などに供給される。
【0038】
光学系3は、光源装置11と、照明光学系13と、光変調部15と、色合成光学系17と、投写部19とを備えている。光源装置11は、画像をスクリーンSに投写するための光を発生する。照明光学系13は、光源装置11から射出された光束の照度を均一化し、均一化された光束を、ダイクロイックミラーや反射ミラーなどを介して赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色の光に分離する。
【0039】
光変調部15は、R、G及びBの各色の光に対応して設けられる各色一対の偏光板の間に液晶パネルを配置した構成を有し、照明光学系13で分離された各色の光束を画像データに応じて変調して光学像を形成する。色合成光学系17は、光変調部15で変調された各色の光学像を、クロスダイクロイックプリズムなどを介して合成し、カラー画像を形成する。投写部19は、色合成光学系17で各色の光学像が合成されて形成されたカラー画像を、レンズなどを介してスクリーンSに投写する。
【0040】
制御回路5は、図1に示すように、制御部31と、光源駆動部35と、パワーモニタ33と、画像処理部37と、信号変換部39と、液晶パネル駆動部41とを備えている。制御部31は、例えば、マイクロコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)43と、記憶部45とを備えている。
【0041】
CPU43は、記憶部45に格納されている制御プログラムに従って、プロジェクタ1の動作を統括制御する。記憶部45は、フラッシュメモリ等のROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を含んだ構成を有している。ROMは、CPU43が実行する制御プログラムなどが格納されている。RAMは、CPU43によって実行される制御プログラムを一時的に展開したり、各種設定値等を一時的に格納したりする。
【0042】
光源駆動部35は、制御部31からの指示に基づいて、光源装置11に駆動信号を出力して、光源装置11の駆動を制御する。なお、パワーモニタ33、反射電力及び制御信号については、詳細を後述する。
画像処理部37は、信号変換部39、液晶パネル駆動部41に接続されており、制御部31からの指示に基づいて、信号変換部39に入力された画像信号に対する各種処理や、光変調部15での画像形成の制御を行う。
【0043】
信号変換部39は、外部から供給される画像信号を、画像処理部37が処理可能な形式の画像データに変換してから画像処理部37に出力する。画像処理部37は、信号変換部39から入力された画像データを、この画像データに種々の処理を施してから、液晶パネル駆動部41に出力する。なお、画像処理部37が画像データに施す処理としては、各種の画質調整や、メニュー、メッセージ等のOSD(オンスクリーンディスプレイ)画像を合成する処理などが挙げられる。また、各種の画質調整としては、解像度変換、輝度調整、コントラスト調整、シャープネス調整などが挙げられる。
【0044】
液晶パネル駆動部41は、入力された画像データに応じて、光変調部15を構成する図示しない各液晶パネルの駆動を制御する。光変調部15は、各液晶パネルの駆動が液晶パネル駆動部41によって制御されることにより、R、G及びBの各色の光を画像データに応じて変調して光学像を形成する。光変調部15で形成された光学像は、色合成光学系17でカラー画像に合成されてから、投写部19を介してスクリーンSに投写される。
【0045】
ここで、光源装置11の構成を詳細に説明する。
光源装置11は、図2に示すように、マイクロ波発生部51と、ランプ53と、コイル55と、電流発生部57と、リフレクタ59と、反射器61と、ケース63とを備えている。なお、図2では、構成をわかりやすく示すため、ランプ53、コイル55、リフレクタ59、反射器61及びケース63を概略の断面図で図示した。
【0046】
マイクロ波発生部51は、マイクロ波を放射する。ランプ53は、マイクロ波発生部51からマイクロ波の照射を受けて発光する。ここで、マイクロ波とは、一般的に周波数が3GHz〜30GHzの電磁波を指すが、本明細書では、UHF帯からSHF帯に相当する300MHz〜30GHzの帯域の電磁波を指す。
【0047】
ランプ53は、図3に示すように、発光部71と、封入部73と、支持腕75a及び75bと、2つの電界誘導棒77a及び77bと、被保持部79とを有している。
発光部71は、例えば石英ガラスなどで形成された封入部73内に、マイクロ波の照射を受けて発光する物質が封入された構成を有している。
封入部73内に封入される物質としては、例えば、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガス、水銀、金属ハロゲン化合物などが採用され得る。
【0048】
支持腕75a及び75bは、例えば石英ガラスなどで封入部73と一体的に形成されており、それぞれ封入部73から封入部73の外側に向かって延びている。これらの支持腕75a及び75bは、封入部73を挟んで互いに対峙する位置に形成されている。被保持部79は、支持腕75aが延びる方向に沿って、支持腕75aの端部に形成されている。
【0049】
電界誘導棒77a及び77bのそれぞれは、導電性を有し、熱膨張係数が小さく耐熱性が高い材料から、棒状に形成されている。このような電界誘導棒77a及び77bの材料としては、例えば、タングステンやステンレスなどが採用され得る。電界誘導棒77a及び77bのそれぞれは、各支持腕75a及び75bが延びる方向に沿って延びており、電界誘導棒77aが支持腕75aに埋設され、電界誘導棒77bが支持腕75bに埋設されている。
【0050】
ここで、電界誘導棒77a及び77bは、発光部71側のそれぞれの一端が、発光部71に向かって細くなるように形成されている。以下においては、発光部71に向かって細くなるように形成されている電界誘導棒77a及び77bの各一端側を先端側と表現し、先端側の各端部を各先端部と表現する。
【0051】
これらの各電界誘導棒77a及び77bは、各先端側が発光部71に向けられた状態で、それぞれ、各支持腕75a及び75bに支持されている。つまり、2つの電界誘導棒77a及び77bは、発光部71の外側で発光部71を挟んで互いに対峙している。
【0052】
コイル55は、図2に示すように、ランプ53の発光部71の外側を囲っている。つまり、発光部71は、コイル55の内側に位置している。このコイル55は、例えば銅、アルミニウムなどの導電性や耐熱性が高い線材が、発光部71の外側を囲んで巻回された構成を有している。なお、コイル55は、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士を結ぶ線がコイル55の内側を貫く向きに設けられている。
【0053】
電流発生部57は、マイクロ波発生部51から後述する磁界発生電力が供給され、供給された磁界発生電力をコイル55に供給する。なお、電流発生部57の構成については、詳細を後述する。磁界発生電力が供給されたコイル55は、その磁界発生電力に応じた交番磁界を発生する。
【0054】
リフレクタ59は、例えば石英ガラスで形成され、図4に示すように、内面側に、放物面形状の曲面を有する光束反射面81が形成されている。光束反射面81は、マイクロ波を透過し、光束を反射する誘電体多層膜により構成されている。光束反射面81の放物面形状の頂部には、光束反射面81とは反対側、すなわちリフレクタ59の外側に、マイクロ波発生部51に結合される部位である結合部83が形成されている。結合部83の光束反射面81側には、図3に示すランプ53の被保持部79が嵌入されて、ランプ53を保持する保持部85が形成されている。
【0055】
上記の構成を有するリフレクタ59は、図2に示すように、ランプ53を保持した状態で、結合部83がマイクロ波発生部51に固定されている。光束反射面81の放物面形状は、リフレクタ59の内側に位置する発光部71に焦点が合うように形成されている。
【0056】
ここで、ランプ53の発光について説明する。マイクロ波発生部51は、図5に示すように、リフレクタ59の結合部83側からリフレクタ59の内側に向けてマイクロ波87を放射する。放射されたマイクロ波87がランプ53に照射されると、封入部73内に封入された発光物質が、マイクロ波87の電界成分によって励起されて発光部71が発光し、発光部71から光束89aが射出される。
【0057】
このとき、マイクロ波87の電界成分は、上述した電界誘導棒77a及び77bによって、電界誘導棒77a及び77b同士間に集められる。つまり、発光部71を挟んで対峙する電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に、交番する強い電界が形成される。これにより、封入部73内の発光物質の励起状態が高められ、発光状態が強まる。
【0058】
そして、発光部71からの光束89aは、発光部71に焦点が合っている光束反射面81で反射して、光軸Lに略平行な光束89bとなる。なお、この図5では、わかりやすく示すため、コイル55及び電流発生部57を省略して図示した。
【0059】
反射器61は、導電性材料である金属材料で形成され、図5に示すように、球面形状の曲面を有するマイクロ波反射面91を有している。そして、反射器61には、マイクロ波87の1/4波長以下の口径を有する孔部93が複数形成されている(図示は簡略化している)。また、マイクロ波反射面91の球面形状は、ランプ53の発光部71に焦点が合うように構成されている。このマイクロ波反射面91はマイクロ波87を反射させる。また、複数の孔部93は、リフレクタ59の光束反射面81で反射した光束89bを通過させる。
【0060】
ケース63は、導電性材料でメッシュ状に形成されており、図2に示すように、マイクロ波発生部51と、リフレクタ59と、ランプ53と、コイル55と、電流発生部57とを覆っている。このケース63は、マイクロ波87を遮蔽している。ケース63において、反射器61に相対する面側には、略円形状の孔部95が形成されており、孔部95の縁辺は、反射器61の開放端部外面と同様の曲面を有する内面となるように形成されている。
【0061】
ケース63は、孔部95に反射器61の開放端部が係合されて、反射器61が固定される。従って、光源装置11は、反射器61がケース63から突出した状態となる。反射器61は、ケース63とともに、マイクロ波発生部51と、リフレクタ59と、ランプ53と、コイル55と、電流発生部57とを覆って、マイクロ波87を遮蔽している。
【0062】
マイクロ波発生部51は、図6に示すように、固体高周波発振部101と、電力分配器103と、導波部105とを備えている。固体高周波発振部101は、ダイヤモンドSAW(Surface Acoustic Wave)発振器107と、電源109と、増幅器111とを備えている。導波部105は、アンテナ113と、サーキュレータ115とを備えている。ダイヤモンドSAW発振器107は、移相回路117と、ダイヤモンドSAW共振子119と、増幅器121と、電力分配器123と、バッファ回路125とを備えている。
【0063】
電源109は、前述した制御部31からの駆動信号に基づいて、ダイヤモンドSAW発振器107と、増幅器111とに電力を供給する。ダイヤモンドSAW発振器107は、増幅器111の前段に接続されており、2.45GHz帯の高周波電力を生成するとともに、生成した高周波電力を増幅器111に供給する。増幅器111は、供給された高周波電力を増幅してから、この高周波電力を図6に示す高周波電力P1として電力分配器103に供給する。このとき、高周波電力P1は、増幅器111において、ランプ53の封入部73内に封入された物質を励起させ、発光部71を発光させることができる出力レベルに達している。
【0064】
電力分配器103は、固体高周波発振部101と導波部105との間に設けられている。電力分配器103は、供給された高周波電力P1を、導波部105にマイクロ波発生電力P2として供給し、電流発生部57に磁界発生電力P3として供給する。つまり、この電力分配器103は、高周波電力P1を導波部105と電流発生部57とに分配する。
【0065】
なお、この電力分配器103は、可変分配器で構成されており、マイクロ波発生電力P2と磁界発生電力P3との分配比を変化させることができる。電力分配器103は、前述した図1に示す制御部31から出力された制御信号に基づいて、マイクロ波発生電力P2と磁界発生電力P3との分配比が制御される。
【0066】
電力分配器103から導波部105に供給されたマイクロ波発生電力P2は、アンテナ113を介してマイクロ波87として放射される。本実施形態では、アンテナ113は、パッチアンテナとして構成されており、単一指向性を有するマイクロ波87を放射する平面アンテナとなっている。このアンテナ113により、マイクロ波87は、略平面波として放射される。
【0067】
サーキュレータ115は、電力分配器103とアンテナ113との間に設けられており、反射器61、ランプ53、ケース63などからアンテナ113を介して戻ってくる反射波の反射電力を、図1に示すパワーモニタ33に導く。これにより、反射波が固体高周波発振部101に戻ることが阻止され、電力分配器103や増幅器111などの故障が防止される。
【0068】
ダイヤモンドSAW発振器107は、図6に示すように、移相回路117、ダイヤモンドSAW共振子119、増幅器121及び電力分配器123が構成するループ回路127に、バッファ回路125を接続した構成を有している。バッファ回路125は、電力分配器123の一方の出力側に接続されている。移相回路117は、電源109から制御電圧が入力され、ループ回路127の位相を可変させるものである。これら各ブロックは、一定の特性インピーダンス、具体的には50Ωに全て整合接続されている。なお、ダイヤモンドSAW共振子119は、増幅器121が飽和状態となる入力電圧が供給されるように、増幅器121の入力側に接続されている。
【0069】
これにより、ダイヤモンドSAW共振子119を用いてGHz帯での高周波信号をダイレクト発振させることが可能となる。また、整合を保ったまま増幅器121の出力パワーを電力分配器123からバッファ回路125を介して外部に出力することができる。
【0070】
また、この回路構成により、ダイヤモンドSAW共振子119に印加する電力を最小限として連続発振状態を継続することが可能となる。また、移相回路117により、高周波信号に周波数変調をかけることが可能となり、ランプ53に対して、マイクロ波87の周波数を可変したり、調整したりすることが可能になる。なお、固体高周波発振部101に適用される発振器としては、ダイヤモンドSAW共振子119を用いたダイヤモンドSAW発振器107に限定されず、誘電体共振子やLC共振子などを用いた発振器であってもよい。
【0071】
電流発生部57は、検出部131と、位相調整部133とを有している。検出部131は、電界誘導棒77bに接続されており、電界誘導棒77bの電位の変化を検出する。位相調整部133は、コイル55の一端側に接続されている。なお、コイル55の他端側は、グランドに接地されており、グランド電位に保たれている。位相調整部133には、電力分配器103から磁界発生電力P3が供給される。
【0072】
そして、位相調整部133は、供給された磁界発生電力P3の位相を、検出部131が検出した電界誘導棒77bの電位に基づいて調整して、磁界発生電力P3を磁界発生電力P3’としてからコイル55に供給する。磁界発生電力P3’が供給されたコイル55は、磁界発生電力P3’の位相に同期した交番磁界を発生する。
【0073】
磁界発生電力P3の位相の調整では、電界誘導棒77bの電位の高低に応じて、電界誘導棒77bの電位が高いときに、コイル55の一端側の電位を高くし、電界誘導棒77bの電位が低いときに、コイル55の一端側の電位を低くするように調整することができる。
【0074】
このように調整すれば、交番電界と交番磁界との波形を説明する図である図7(a)に示すように、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に発生する電界Eの強弱に応じて、コイル55から磁界Fが発生する。このとき発生する磁界Fは、磁界Fの各ピークPfの発生タイミングが、電界Eの各ピークPeの発生タイミングに同期している。
【0075】
そして、発光部71は、封入部73内に封入された発光物質が、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に発生する交番電界によって励起されるとともに、発光物質の励起状態が、コイル55からの交番磁界によって一層高められる。なお、電流発生部57としては、例えば、PLL(Phase Locked Loop)回路や、DLL(Delay Locked Loop)回路などが採用され得る。
【0076】
ここで、アンテナ113から放射されたマイクロ波87が発光物質の励起に消費されると、マイクロ波87の反射波は減少する傾向にある。つまり、サーキュレータ115からパワーモニタ33に導かれる反射電力は、発光状態によって変化する。従って、反射電力の量を検出することによって発光状態を検出することができる。これは、発光部71の発光状態がプロジェクタ1にとってじゅうぶんな輝度となったときの反射電力の所定量を決定しておくことで達成され得る。
【0077】
そこで、プロジェクタ1では、図1に示すCPU43がパワーモニタ33での検出結果を判定した結果に基づいて、光源駆動部35に電力制御指示を出力し、電力分配器103に制御信号を出力する。CPU43は、パワーモニタ33が検出する反射電力が所定量に下がったときに、光源駆動部35に対して、固体高周波発振部101が生成する高周波電力P1を下げるように指示する。また、CPU43は、パワーモニタ33が検出する反射電力が所定量に下がったときに、電力分配器103に対して、磁界発生電力P3の量を維持しつつ、マイクロ波発生電力P2の量を下げるように制御信号を出力する。
【0078】
なお、本実施形態において、コイル55がコイル部に対応し、電界誘導棒77a及び77bが導電体部に対応し、パワーモニタ33が電力検出部に対応し、固体高周波発振部101が電力生成部に対応し、電力分配器103が可変分配部としての分配部に対応し、光源装置11が発光装置に対応し、高周波電力P1が電力に対応し、CPUが状態検出部並びに分配制御部及び電力制御部に対応している。
【0079】
本実施形態のプロジェクタ1では、発光部71を挟んで対峙する電界誘導棒77a及び77bを有するランプ53と、発光部71を囲むコイル55と、マイクロ波87を発生するマイクロ波発生部51と、コイル55に磁界発生電力P3’を供給する電流発生部57とを有する光源装置11が採用されている。この光源装置11では、マイクロ波発生部51からのマイクロ波87の電界成分が電界誘導棒77a及び77bによって集められるため、集められた電界成分を発光部71に集中させやすくすることができる。
【0080】
従って、封入部73内に封入された発光物質の励起状態が高められ、発光部71の輝度を向上させやすくすることができる。また、この光源装置11では、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に生じる電界Eに応じて、コイル55から磁界Fを発生させることができる。このため、発光物質の励起状態が磁界Fによって一層高められる。従って、この光源装置11では、発光状態を維持しつつマイクロ波発生電力P2を低減しやすくすることが可能となる。
【0081】
従って、このプロジェクタ1では、投写部19を介して投写される光学像の明るさを向上させやすくすることができるとともに、発光部71の発光状態を維持しつつマイクロ波発生電力P2を低減しやすくすることが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、コイル55は、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士を結ぶ線がコイル55の内側を貫く向きに設けられている。従って、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に発生する電界Eの方向と、コイル55からの磁界Fの方向とを合わせやすくすることができる。これにより、発光物質の励起状態が一層高められる。
【0083】
また、本実施形態では、電流発生部57からコイル55に磁界発生電力P3’を供給することで、コイル55から磁界Fを発生させる。コイル55では、供給される磁界発生電力P3’に応じた磁界Fを発生させることができる。従って、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に発生する電界Eの強弱に応じて、磁界Fの強弱を変化させることができる。また、コイル55では、線材の材質、断面積、巻き数などの設定の変更が容易であるため、発生する磁界Fの磁束密度を高めやすい。そのため、マイクロ波発生電力P2よりも少ない電力で、発光物質の励起状態を高めやすくすることが可能となる。
【0084】
また、本実施形態では、コイル55が、発光部71を囲んで巻回された構成を有している。このため、発光部71を貫く磁束の密度を高めやすくすることができるため、発光物質の励起状態が一層高められる。これにより、発光状態を維持しつつマイクロ波発生電力P2を一層低減しやすくすることができる。
【0085】
また、本実施形態では、光源装置11は、固体高周波発振部101によって生成された高周波電力P1を、導波部105及び電流発生部57のそれぞれに供給する電力分配器103を備えている。このため、光源装置11では、磁界Fの発生にかかる電力源と、マイクロ波87の発生にかかる電力源との共通化が図られる。また、電力分配器103が可変分配器で構成されているため、マイクロ波発生電力P2と、磁界発生電力P3との分配比を変化させることができる。
【0086】
また、本実施形態では、導波部105にサーキュレータ115が設けられ、制御回路5にパワーモニタ33が設けられている。CPU43は、パワーモニタ33がサーキュレータ115からの反射電力を検出した結果から、反射電力が所定量に下がったか否かを判定する。そして、反射電力が所定量に下がったと判定されると、CPU43は、光源駆動部35に対して高周波電力P1を下げるように指示し、電力分配器103に対して、磁界発生電力P3の量を維持しつつ、マイクロ波発生電力P2の量を下げるように制御信号を出力する。これにより、発光部71の発光状態を維持しつつ、投入電力の量を低減しやすくすることができる。従って、プロジェクタ1では、低消費電力で発光状態を維持しやすくすることができる。
【0087】
なお、本実施形態では、コイル55がリフレクタ59の内側に設けられている場合を例に説明したが、これに限定されず、コイル55はリフレクタ59の外側に設けられていてもよい。この場合、発光部71から射出される光束89aや、リフレクタ59の光束反射面81で反射した光束89bがコイル55に遮られることを低く抑えることが可能となる。
【0088】
また、本実施形態では、検出部131で電界誘導棒77bの電位の変化を検出し、電界誘導棒77bの電位に基づいて、磁界発生電力P3の位相を調整したが、これに限定されず、検出部131で電界誘導棒77aの電位の変化を検出し、電界誘導棒77aの電位に基づいて、磁界発生電力P3の位相を調整してもよい。つまり、磁界発生電力P3の位相は、電界誘導棒77a及び77bのうちの少なくとも一方の電位の変化に基づいて調整され得る。
【0089】
また、本実施形態では、磁界発生電力P3の位相の調整において、電界誘導棒77bの電位の高低に応じて、電界誘導棒77bの電位が高いときに、コイル55の一端側の電位を高くし、電界誘導棒77bの電位が低いときに、コイル55の一端側の電位を低くするように調整するようにした。しかし、磁界発生電力P3の位相の調整は、これに限定されず、電界誘導棒77bの電位が高いときに、コイル55の一端側の電位を低くし、電界誘導棒77bの電位が低いときに、コイル55の一端側の電位を高くするように調整するようにしてもよい。
【0090】
つまり、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に発生する電界の向きと、コイル55からの磁界の向きとは、交番電界と交番磁界との波形の他の例を説明する図である図7(b)に示すように、異なる向きであってもよい。図7(b)に示す場合、磁界Fは、磁界Fの負側の各ピークPfの発生タイミングが、電界Eの正側の各ピークの発生タイミングに同期し、磁界Fの正側の各ピークPfの発生タイミングが、電界Eの負側の各ピークの発生タイミングに同期している。
【0091】
また、本実施形態では、検出部131で電界誘導棒77bの電位の変化を検出し、電界誘導棒77bの電位に基づいて、磁界発生電力P3の位相を調整したが、磁界発生電力P3の位相の調整は、これに限定されない。磁界発生電力P3の位相は、電界誘導棒77aと電界誘導棒77bとの間の電位差に基づいて調整され得る。この場合、電界誘導棒77aと電界誘導棒77bとの間の電位差としては、電界誘導棒77aの電位から電界誘導棒77bの電位を減じる場合と、電界誘導棒77bの電位から電界誘導棒77aの電位を減じる場合との2通りが考えられる。磁界発生電力P3の位相は、これら2通りのうちのいずれによっても調整され得る。
【0092】
また、本実施形態では、電流発生部57が検出部131と位相調整部133とを有する場合を例に説明したが、電流発生部57の構成はこれに限定されない。例えば、電流発生部57は、図8に示すように、一次コイル141と、二次コイル143とを有するトランスで構成され得る。この場合、マイクロ波発生部51では、図6に示す電力分配器103が省略される。固体高周波発振部101からの高周波電力P1は、図8に示すように、電流発生部57に分配されることなく、マイクロ波発生電力P2として導波部105に供給される。
【0093】
一次コイル141は、一端側が電界誘導棒77bに接続されており、他端側がグランドに接地されている。二次コイル143は、一端側がコイル55の一端側に接続されており、他端側がグランドに接地されている。一次コイル141には、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に発生する交番電界に応じて、交番電流が発生する。
【0094】
一次コイル141に交番電流が発生すると、この交番電流に応じて、二次コイル143の内側を貫く交番磁界が発生する。二次コイル143には、この二次コイル143の内側を貫く交番磁界によって、誘導起電力が発生する。そして、二次コイル143に発生した誘導起電力が、磁界発生電力P3’としてコイル55に供給される。
【0095】
また、この場合、図1に示すCPU43は、パワーモニタ33での検出結果を判定した結果に基づいて、光源駆動部35に電力制御指示を出力する。CPU43は、パワーモニタ33が検出する反射電力が所定量に下がったときに、光源駆動部35に対して、固体高周波発振部101が生成する高周波電力P1を下げるように指示する。
【0096】
この構成によれば、マイクロ波発生部51から、図6に示す電力分配器103を省略することができる。また、この構成によれば、トランスという簡易な構成で、磁界発生電力P3’を生成することができるとともに、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に発生する電界に同期した磁界をコイル55から発生させることが可能となる。また、一次コイル141、二次コイル143及びコイル55のうちのいずれかの巻き方向を変化させることで、電界誘導棒77a及び77bの先端部同士間に発生する電界の向きと、コイル55からの磁界の向きとを、同じ向きにも異なる向きにもすることができる。
【0097】
また、本実施形態では、外部に設置されるスクリーンSに対して投写を行うフロントタイプのプロジェクタ1に光源装置11を適用した場合を例に説明したが、光源装置11の適用はこれに限定されない。光源装置11は、例えば、プロジェクタに内蔵されているスクリーンに対して投写を行うリアタイプのプロジェクタにも適用され得る。
【0098】
また、光源装置11の適用は、プロジェクタ1のみならず、他の光学機器の光源や、航空、船舶、車両などの照明機器や、屋内照明機器などにも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態におけるプロジェクタの主要構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態におけるプロジェクタの光源装置の構成を説明する図。
【図3】本発明の実施形態におけるプロジェクタのランプの構成を説明する図。
【図4】本発明の実施形態におけるプロジェクタのリフレクタを説明する断面図。
【図5】本発明の実施形態におけるプロジェクタのランプの発光を説明する図。
【図6】本発明の実施形態におけるプロジェクタのマイクロ波発生部及び電流発生部の主要構成を示すブロック図。
【図7】本発明の実施形態におけるプロジェクタの交番電界と交番磁界との波形を示す図。
【図8】本発明の実施形態におけるプロジェクタのマイクロ波発生部及び電流発生部の他の例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0100】
1…プロジェクタ、11…光源装置、15…光変調部、19…投写部、33…パワーモニタ、43…CPU、51…マイクロ波発生部、53…ランプ、55…コイル、57…電流発生部、71…発光部、77a,77b…電界誘導棒、87…マイクロ波、101…固体高周波発振部、103…電力分配器、105…導波部、113…アンテナ、131…検出部、133…位相調整部、141…一次コイル、143…二次コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波の照射を受けて励起されて光を発する物質が封入された発光部と、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生部と、前記発光部を挟んで対峙する一対の導電体部と、前記マイクロ波発生部が前記マイクロ波を発生したときに前記一対の導電体部の間に生じる電界に応じて、前記発光部に及ぶ磁界を発生させる磁界発生部と、を備えていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記磁界発生部は、前記電界の波形のピークに応じて、前記磁界の波形のピークが出現するように前記磁界を発生させることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記磁界発生部は、コイル部と、前記電界に応じて前記コイル部に電流を発生させる電流発生部と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記コイル部は、前記発光部を囲んで巻回されていることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記マイクロ波発生部は、電力を生成する電力生成部と、前記電力の供給を受けて前記マイクロ波を放射する導波部と、前記電力を、前記導波部に前記マイクロ波の発生に用いられるマイクロ波発生電力として供給し、前記電流発生部に前記磁界の発生に用いられる磁界発生電力として供給する分配部と、を備えており、
前記電流発生部は、前記一対の導電体部のうちの少なくとも一方の電位の変化を検出する検出部と、前記検出部によって検出された前記電位の変化に基づいて前記磁界発生電力の位相を調整し、前記位相が調整された前記磁界発生電力を前記コイル部に供給する位相調整部と、を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記分配部は、前記マイクロ波発生電力と前記磁界発生電力との比を変化させることができる可変分配部で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光部の発光状態を検出する状態検出部と、前記状態検出部によって検出された前記発光状態に基づいて、前記分配部における前記比を制御する分配制御部と、を備えていることを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記状態検出部によって検出された前記発光状態に基づいて、前記電力生成部が生成する前記電力の量を制御する電力制御部を備えていることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記状態検出部は、前記導波部から放射された前記マイクロ波が、前記導波部に戻ってくる反射波の電力である反射電力を検出する電力検出部で構成され、
前記分配制御部は、前記電力検出部によって検出された前記反射電力に基づいて、前記分配部における前記比を制御し、
前記電力制御部は、前記電力検出部によって検出された前記反射電力に基づいて、前記電力の量を制御することを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記分配制御部は、前記反射電力が所定量に下がったことに基づいて、前記電力に対する前記磁界発生電力の割合が増加するように前記比を制御し、
前記電力制御部は、前記反射電力が前記所定量に下がったことに基づいて、前記電力の量を下げるように制御することを特徴とする請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記電流発生部は、前記一対の導電体部のうちの少なくとも一方に接続された一次コイル部と、前記コイル部に接続された二次コイル部とを有するトランス部で構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の発光装置。
【請求項12】
マイクロ波の照射を受けて励起されて光を発する物質が封入された発光部と、前記発光部を挟んで対峙する一対の導電体部とに対して前記マイクロ波を照射し、前記一対の導電体部の間に生じる電界に応じて、前記発光部に及ぶ磁界を発生させることを特徴とする発光方法。
【請求項13】
マイクロ波の照射を受けて励起されて光を発する物質が封入された発光部と、前記マイクロ波を発生するマイクロ波発生部と、前記発光部を挟んで対峙する一対の導電体部と、前記マイクロ波発生部が前記マイクロ波を発生したときに前記一対の導電体部の間に生じる電界に応じて、前記発光部に及ぶ磁界を発生させる磁界発生部と、前記発光部からの前記光を画像データに応じて変調して光学像を形成する光変調部と、前記光変調部によって形成された前記光学像を投写する投写部とを備えていることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−197305(P2008−197305A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31624(P2007−31624)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】