説明

発光装置およびその製造方法

【課題】各LEDチップから出力された光に他のLEDチップの影が生じにくい発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】発光装置1の各LEDチップ2は、それぞれ結晶成長用基板24の主表面側に積層構造膜からなる発光層22をエピタキシャル成長法により成長させてなるLED基材を用いて形成される。各LED基材は、発光層22における一対の電極21が形成された面を実装基板3に対向させる向きで、実装基板3の第1の面30上にフリップチップ実装されて構成される。各LED基材は、発光層22を実装基板3の第1の面30に固着した後で結晶成長用基板24が除去され、発光層22および電極21からなるLEDチップ2のみが実装基板3上に残るように実装基板3に実装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)チップを光源として備えた発光装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の発光装置として、実装基板を具備し、実装基板の厚み方向の一表面(以下、「第1の面」という)上に、複数のLEDチップを実装したものが知られている(たとえば特許文献1参照)。この発光装置は、実装基板上に発光色が互いに異なる複数種類のLEDチップを実装し、これらのLEDチップの混色光を出力するように構成されている。
【0003】
ところで、特許文献1記載の発光装置は、実装基板に形成された導体パターンに対し、各LEDチップの光取出面側の電極がボンディングワイヤを介して電気的に接続されている。そのため、この発光装置は、LEDチップから出力される光にボンディングワイヤの影が生じることになり、光の取出効率等の面で問題がある。
【0004】
これに対して、発光装置としては、LEDチップが実装基板に対してフェースダウン状態でフリップチップ実装されている構成のものも知られている(たとえば特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2記載の発光装置では、LEDチップは、結晶成長用基板である透光性のサファイア基板の主表面側に発光層が形成されて構成されている。このLEDチップは、発光層の厚み方向における結晶成長用基板とは反対側の一表面に形成された一対の電極を、実装基板の導体パターンにダイボンディングすることにより、実装基板の第1の面に固着される。この構成では、LEDチップの発光層で生じた光は、結晶成長用基板を通して取り出すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−177096号公報(第0016−0023段落)
【特許文献2】特開2002−319708号公報(第0002−0004段落、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2記載の発光装置は、実装基板の第1の面からのLEDチップの高さ寸法が、少なくとも発光層の厚み寸法に結晶成長用基板の厚み寸法を加えたものとなる。そのため、実装基板の同一面上に複数のLEDチップが近接して配置されると、各LEDチップの発光層から出力される光に、他のLEDチップの結晶成長用基板の影が生じることがある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、各LEDチップから出力された光に他のLEDチップの影が生じにくい発光装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発光装置は、複数のLEDチップと、前記複数の前記LEDチップが第1の面に実装される実装基板とを備え、前記LEDチップは、それぞれ前記実装基板の前記第1の面にフリップチップ実装されており、光を発生する発光層が前記実装基板と反対側の面に露出していることを特徴とする。
【0010】
この発光装置において、前記複数の前記LEDチップは発光色が互いに異なる複数種類のLEDチップを含んでおり、前記複数の前記LEDチップの混色光を出力光として出力することが望ましい。
【0011】
また、この発光装置の製造方法は、それぞれ前記発光層が基板の一面上に形成されてなる複数のLED基材を、前記実装基板の前記第1の面に前記発光層を対向させるようにフリップチップ実装する実装工程と、前記発光層を前記実装基板に固定した後で前記LED基材の前記基板を除去する除去工程とを有することを特徴とする。
【0012】
この発光装置の製造方法において、前記複数の前記LED基材は前記基板の材質が互いに異なる第1のLED基材と第2のLED基材とを含んでおり、前記実装工程は、前記第1のLED基材を前記実装基板に実装する第1の実装工程と、前記第2のLED基材を前記実装基板に実装する第2の実装工程とを有し、前記除去工程は、前記第1のLED基材の前記基板をウェットエッチングにより除去するエッチング工程と、前記第2のLED基材の前記基板をレーザリフトオフにより除去するリフトオフ工程とを有し、前記第1の実装工程、前記エッチング工程、前記第2の実装工程、前記リフトオフ工程の順に行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、複数のLEDチップを実装基板の同一面上に配置しながらも、各LEDチップから出力された光に他のLEDチップの影が生じにくいという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の構成を示す概略断面図である。
【図2】同上の構成を示す概略斜視図である。
【図3】同上の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
本実施形態の発光装置1は、図2に示すように発光色が互いに異なる複数種類のLED(発光ダイオード)チップ2〜2と、これらのLEDチップ2〜2が実装される実装基板3とを備えている。本実施形態では、LEDチップ2〜2(以下、各々を特に区別しないときは単に「LEDチップ2」という)として、それぞれ発光色が赤色、緑色、橙色、青色の4種類のLEDチップを採用している。
【0016】
これらのLEDチップ2〜2は、それぞれが発する赤色光、緑色光、橙色光、青色光の混色光として白色光を得ることができるように、実装基板3の厚み方向の一表面(以下、「第1の面」という)30上に互いに近接して配置される。ただし、各LEDチップ2の発光色は特に限定するものではなく、所望の混色光に応じて適宜選択すればよい。
【0017】
実装基板3は、シリコン基板を用いて形成され、外周形状が矩形のチップ状に形成されている。本実施形態では、4個のLEDチップ2は実装基板3の外周縁に沿って縦(図2の奥行き方向)2列、横(図2の左右方向)2列に並べて配置されている。
【0018】
実装基板3は、シリコン基板の表面にシリコン酸化膜からなる絶縁膜(図示せず)が形成され、図1に示すように、絶縁膜上にはLEDチップ2の一対の電極21とそれぞれ電気的に接続される2個1組の導体パターン31が4組形成されている。導体パターン31は、それぞれ第1の面30において各LED2の各電極21に対応する位置に配置された電極パッド31aと、電極パッド31aから第1の面30とは反対側の面に回り込む形で引き出されたリード部31bとを有している。なお、図1は図2のA−A断面図である。
【0019】
ここにおいて、各導体パターン31は、絶縁膜上に形成された密着性改善用のTi膜とTi膜上に形成されたAu膜との積層膜により構成されている。なお、本実施形態では、絶縁膜上のTi膜の膜厚を15〜50nm、Ti膜上のAu膜の膜厚を500nmに設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。
【0020】
各LEDチップ2は、図1に示すように、発光層22における一対の電極21が形成された面を実装基板3に対向させる向きで、実装基板3の第1の面30上にフェースダウン状態でフリップチップ実装される。ここで、各LEDチップ2は、発光層22に設けた一対の電極21がバンプ23を介して電極パッド31aにダイボンディングされることにより、発光層22が実装基板3の第1の面30に固着されるとともに、導体パターン31と電気的に接続される。
【0021】
各LEDチップ2は、それぞれ基板となる結晶成長用基板24(図3(a)参照)を有するLED基材20(図3(a)参照)を用いて形成される。各LED基材20は、それぞれ結晶成長用基板24の主表面側に、積層構造膜からなる発光層22をエピタキシャル成長法により成長させて構成される。結晶成長用基板24は、赤色、橙色のLEDチップ2,2の基になるLED基材20においてはGaAs(ガリウム砒素)基板からなり、緑色、青色のLEDチップ2,2の基になるLED基材20においてはサファイア基板からなるものとする。
【0022】
各LED基材20は、発光層22の厚み方向における結晶成長用基板24とは反対側の一表面にそれぞれアノード側、カソード側となる一対の電極21が形成される。本実施形態では、発光層22は、結晶成長用基板24上にn型半導体層22a、p型半導体層22bの順に積層されて構成される。カソード側の電極21は、p型半導体層22bの一部をエッチング除去することによりn型半導体層22aの一部を露出させた部分に形成される。
【0023】
LED基材20の電極21は、たとえばNi膜とAu膜との積層膜により構成されるものとするが、特にこれらの材料に限定されるものではない。なお、本実施形態ではLEDチップ2の発光層22は厚み寸法が4μmに設定されているものとするが、この数値は一例であって特に限定する趣旨ではない。
【0024】
ところで、本実施形態の発光装置1においては、各LED基材20は、発光層22を実装基板3の第1の面30に固着した後で結晶成長用基板24が除去され、発光層22および電極21のみが実装基板3上に残るように実装基板3に実装される。すなわち、各LED基材20は、発光層22および電極21のみからなるLEDチップ2が、結晶成長用基板24から実装基板3に転写されるようにして実装基板3上に実装される。そのため、各LEDチップ2は、実装基板3と反対側の面に発光層22が露出した状態となり、実装基板3からの各LEDチップ2の高さ寸法は、発光層22の厚み寸法程度に抑えられることになる。
【0025】
以下、本実施形態の発光装置1の製造にあたり、LEDチップ2を実装基板3に実装する際の具体的な工程について図3を参照して説明する。
【0026】
まず、図3(a)に示すように、結晶成長用基板24上に発光層22を形成してなるLED基材20が、導体パターン31が形成された実装基板3に対してフェースダウン状態でフリップチップ実装される(第1の実装工程)。ここでは、赤色、緑色、橙色、青色の4種類のLEDチップ2のうち、結晶成長用基板24としてGaAs基板を用いた赤色、橙色のLEDチップ2,2のLED基材20が、第1のLED基材として第1の実装工程で先に実装されるものとする。
【0027】
第1の実装工程後、図3(b)に示すように実装基板3の第1の面30のLED基材20を除く全面に、レジストが塗布されてレジスト膜4が形成される(レジスト工程)。その後、図3(c)に示すようにウェットエッチングが行われることによって、LED基材20の結晶成長用基板(GaAs基板)24が除去され(エッチング工程)、LEDチップ2,2が形成される。エッチング工程後には、図3(d)に示すようにレジスト膜4が剥離される(剥離工程)。
【0028】
その後、図3( e)に示すように、結晶成長用基板24としてサファイア基板を用いた緑色、青色のLEDチップ2,2のLED基材(第2のLED基材)20が、実装基板3に対してフェースダウン状態でフリップチップ実装される(第2の実装工程)。第2の実装工程後、レーザリフトオフによって、LED基材20の結晶成長用基板(サファイア基板)24が除去され(リフトオフ工程)、LEDチップ2,2が形成されて図1に示す状態の発光装置1が完成する。レーザリフトオフで結晶成長用基板を除去する際、実装基板3とLEDチップ2,2との隙間には樹脂(透明、白色あるいは着色されたシリコーン、エポキシ樹脂等)などを配置して空間を埋めることが望ましい。これにより、レーザリフトオフ加工時の発光層22へのダメージを抑制することが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態の発光装置1の製造にあたっては、シリコン基板として、実装基板3を多数形成可能なシリコンウェハを用いる。上述したようなLEDチップ2を実装する工程はウェハレベルで行われ、ウェハレベルの構造体を形成後ダイシング工程により各発光装置1のサイズに分割される。そのため、小型の発光装置1を実現できるとともに、製造が容易になる。
【0030】
以上説明した本実施形態の発光装置1によれば、LEDチップ2は、実装基板3からの高さ寸法が発光層22の厚み寸法程度の低さに抑えられ、発光装置1全体として薄型化を図ることができる。また、LEDチップ2の高さ寸法が低く抑えられることにより、複数のLEDチップ2を実装基板3の同一面上に近接して配置しても、LEDチップ2の発光層22から出力される光に他のLEDチップの影が生じることを回避できるという利点もある。しかも、各LEDチップ2は、実装基板3に対してフリップチップ実装されているので、導体パターン31と電気的に接続するためのボンディングワイヤが不要であり、出力光にボンディングワイヤの影が生じることもない。
【0031】
すなわち、本実施形態の発光装置1では、複数のLEDチップ2を実装基板3の同一面上に近接して配置しても、LEDチップ2から出力された光に影が生じにくいという利点がある。
【0032】
また、LED基材20の結晶成長用基板24を除去する方法として、ウェットエッチングとレーザリフトオフとを用いているので、結晶成長用基板24の材質が異なるLED基材20でも、実装基板3の同一面上に実装可能となる。しかも、エッチング工程の後にリフトオフ工程を行うことにより、発光層22上にレジスト膜4が形成されることがなく、レジスト膜4を剥離する際に発光層22がダメージを受けることがないという利点もある。
【0033】
なお、上記実施形態では、実装基板3はシリコン基板を用いて形成されているが、シリコン基板に限らず、たとえば窒化アルミ(AlN基板)、シリコンカーバイド基板(SiC基板)や、金属基板などを用いて形成されていてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、赤色、橙色のLEDチップ2,2を実装後、緑色、青色のLEDチップ2,2を実装する例を示したが、この例に限らず、緑色、青色のLEDチップ2,2を先に実装するようにしてもよい。
【0035】
さらにまた、上記実施形態で説明した発光装置1は、発光色が互いに異なる複数のLEDチップ2が実装基板3に実装されているが、この例に限るものではなく、一部のLEDチップ2、あるいは全てのLEDチップ2が同色であってもよい。
【0036】
(実施形態2)
本実施形態の発光装置1は、LEDチップ2から出力される光を検出する光検出素子(図示せず)を備える点が実施形態1の発光装置1と相違する。
【0037】
すなわち、LEDチップ2として互いに発光色が異なるLEDチップを用いると、発光装置1は、LEDチップ2ごとに発光層22の組成が異なり温度特性等にばらつきがあるため、各LEDチップ2からの光出力の比率を一定に保つことが難しい。そこで、本実施形態の発光装置1は、光検出素子で検出される光出力が一定に保たれるようにLEDチップ2に流す電流をフィードバック制御し、混色光の光色を一定に保つ構成とする。
【0038】
本実施形態では、光検出素子は、各LEDチップ2からの光出力の比率を検知可能なように、フォトダイオードを用いたカラーセンサからなる。実装基板3は、第1の面30上において4つのLEDチップ2に囲まれる中心位置に、光検出素子が配置された構成とする。上記構成の実装基板3は回路基板(図示せず)に実装される。
【0039】
回路基板には、各LEDチップ2を駆動する駆動回路と、光検出素子の出力を受けて駆動回路を制御する制御回路とが形成される。制御回路は、各光検出素子の検出値が所定の目標値に保たれるように、駆動回路から各LEDチップ2に流れる電流をフィードバック制御する。
【0040】
以上説明した本実施形態の発光装置1によれば、各LEDチップ2からの光出力の比率を一定に保ち、混色光の光色を一定に保つことができる。なお、光検出素子としては、それぞれ各LEDチップ2の出力光に対して感度を持つフォトダイオードを用い、LEDチップ2ごとに光検出素子が設けられるようにしてもよい。
【0041】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0042】
1 発光装置
2 LEDチップ
3 実装基板
20 LED基材
21 電極
22 発光層
24 (結晶成長用)基板
30 第1の面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDチップと、前記複数の前記LEDチップが第1の面に実装される実装基板とを備え、前記LEDチップは、それぞれ前記実装基板の前記第1の面にフリップチップ実装されており、光を発生する発光層が前記実装基板と反対側の面に露出していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記複数の前記LEDチップは発光色が互いに異なる複数種類のLEDチップを含んでおり、前記複数の前記LEDチップの混色光を出力光として出力することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の発光装置の製造方法であって、それぞれ前記発光層が基板の一面上に形成されてなる複数のLED基材を、前記実装基板の前記第1の面に前記発光層を対向させるようにフリップチップ実装する実装工程と、前記発光層を前記実装基板に固定した後で前記LED基材の前記基板を除去する除去工程とを有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記複数の前記LED基材は前記基板の材質が互いに異なる第1のLED基材と第2のLED基材とを含んでおり、前記実装工程は、前記第1のLED基材を前記実装基板に実装する第1の実装工程と、前記第2のLED基材を前記実装基板に実装する第2の実装工程とを有し、前記除去工程は、前記第1のLED基材の前記基板をウェットエッチングにより除去するエッチング工程と、前記第2のLED基材の前記基板をレーザリフトオフにより除去するリフトオフ工程とを有し、前記第1の実装工程、前記エッチング工程、前記第2の実装工程、前記リフトオフ工程の順に行うことを特徴とする請求項3記載の発光装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−222724(P2011−222724A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89851(P2010−89851)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】