発光装置および照明装置
【課題】光を変換する蛍光体層によりLEDの配光を制御した発光装置およびそれを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】発光装置30は、配線が形成されたLED搭載基板31と、LED搭載基板31上に固着されたBに発光するLED32と、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光物質を含んだ蛍光体層33とを備える。蛍光体層33のLED32と反対側の表面33aは、LED32に向かって落ち込んだ曲面で構成されている。さらに、曲面を取り囲むように、LED32に向かって円錐状に落ち込んだ傾斜面が構成されている。
【解決手段】発光装置30は、配線が形成されたLED搭載基板31と、LED搭載基板31上に固着されたBに発光するLED32と、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光物質を含んだ蛍光体層33とを備える。蛍光体層33のLED32と反対側の表面33aは、LED32に向かって落ち込んだ曲面で構成されている。さらに、曲面を取り囲むように、LED32に向かって円錐状に落ち込んだ傾斜面が構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびそれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)のバックライトなどの照明装置の光源には、冷陰極放電管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)が広く用いられている。近年では、この照明装置の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられ始めている。
【0003】
LEDを光源とする照明装置は、それぞれが赤(R)、緑(G)、青(B)に発光するLEDを組にし、それらの組を多数並べて構成されている。また、1組のR、G、Bを発光するLEDを1つのパッケージとして、それらのパッケージを多数並べて構成することも行われている。さらに、Bに発光するLEDを蛍光体層で覆うことにより、Bの光を黄(Y)の光に変換して、BとYとの混色により白色の光が出射するようにしたLEDのパッケージも使用されるようになっている。ここで、LEDのパッケージとは、発光ダイオード(LED)を備えた発光装置のことであって、例えば凹部を有する白色樹脂ケースの凹部内側にリードフレームを露出させるように配置し、凹部の内側に露出するリードフレームに発光ダイオード(LED)を取り付けるとともにこれらを電気的に接続し、半導体発光素子を覆うように、凹部に封止樹脂や蛍光体を含有させた封止樹脂を形成してなるものである。
なお、照明装置に用いられる照明方式には、照明装置の内部に複数のLEDパッケージを例えば格子の交点に配列するようにした直下方式と、アクリル等で構成された導光板の端(エッジ)に複数のLEDパッケージを配列するエッジライト方式とがある。
【0004】
特許文献1には、エッジライト方式の面状光源等に用いるため、1個のLEDにより断面が線上の出射光を発する線状光源を構成する技術が記載されている。ここでは、LEDを透光性樹脂よりなる樹脂封止体によって封止した発光装置において、その樹脂封止体のX方向断面で見れば、両側から中央に向けて左右対称に落ち込む1対の放物線を有し、Y方向断面で見れば、上面が上に凸の曲線を有する形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3905343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、直下方式の照明装置に用いられる発光装置(LEDパッケージ)には、エッジライト方式とは異なる、光の出射特性が要求される。そして、直下方式の照明装置においても、薄型化(低背化)や、発光装置(LEDパッケージ)の数の削減が求められている。すなわち、直下方式の照明装置に用いることに適した光の出射特性に制御した発光装置およびそれを用いた照明装置が求められている。
【0007】
本発明の目的は、光を変換する蛍光体層によりLEDの配光を制御した発光装置およびそれを用いた照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が適用される発光装置は、基板と、基板上に固着された発光素子と、基板上に発光素子を覆って形成され、発光素子と反対側の面が、発光素子に向かって落ち込んだ曲面を備える、蛍光物質を含有する蛍光体層とを備える。
そして、蛍光体層の曲面の落ち込んだ底が発光素子と対向するように設けられていることを特徴とすることができる。
さらに、蛍光体層の発光素子と反対側の面が、曲面と、この曲面を取り囲んで、発光素子に向かって落ち込んだ傾斜面とを備えることを特徴とすることができる。
【0009】
またさらに、基板上に、蛍光体層を覆うように形成された透明樹脂層をさらに備えることを特徴とする。そして、透明樹脂層の外形が柱状に成形されていることを特徴とすることができる。本発明においては、外形が柱状であればよく、例えば楕円柱や小判柱などの形状も含まれる。中でも、外形が角柱状であることを特徴とすることができる。
【0010】
他の観点から捉えると、本発明が適用される照明装置は、回路基板と、回路基板に接続されるように配列され、光を出射する複数の発光装置と、発光装置に対向して設けられ、発光装置から入射した光を拡散して、発光装置と反対側の面から出射する拡散板と、を備え、発光装置は、基板と、基板上に固着された発光素子と、基板上に発光素子を覆って形成され、発光素子と反対側の面が、発光素子に向かって落ち込んだ曲面を備え、蛍光物資を含有する蛍光体層とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、照明装置の低背化や、発光装置(LEDパッケージ)の数の削減ができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態における照明装置を示す図である。
【図2】第1の実施の形態における照明装置の断面構造および発光装置の配光特性を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における発光装置の構造を説明する図である。
【図4】第1の実施の形態における発光装置の配光特性を説明する図である。
【図5】蛍光体層の表面形状が発光装置の配光特性に与える影響を説明するための光線追跡の結果を示す図である。
【図6】第2の実施の形態における発光装置の構造と配光特性を説明する図である。
【図7】第3の実施の形態における発光装置の構造と配光特性を説明する図である。
【図8】実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置の構成と、評価結果との関係を説明する図である。
【図9】比較例の発光装置の構造を説明する図である。
【図10】実施例1および比較例の各発光装置における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。
【図11】実施例4の発光装置における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。
【図12】実施例5の発光装置における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態における照明装置10を示す図である。
図1では、照明装置10は、一例としてLCDパネル20のバックライトとして構成されている。
【0014】
照明装置10は、例えば配線が形成されたガラスエポキシなどで形成された回路基板11、回路基板11上に搭載されるとともに配線に接続された、LEDを含む発光装置30、回路基板11の発光装置30が搭載された面に対向して設けられた拡散板12を備える。拡散板12は、回路基板11に平行に配置されている。
発光装置30は、回路基板11上に、例えば格子の交点に配列するように規則的に配列されている。この照明装置10は、前述したように、直下方式である。
【0015】
LCDパネル20は、図示しないが、画素毎に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)および画素電極などを形成したTFT基板と、対向電極および画素毎にカラーフィルタなどを形成した対向基板との間に液晶を挟み込んだ構造をなしている。さらに、LCDパネル20は、TFT基板と対向基板の外側にそれぞれ偏光板を備えている。
【0016】
発光装置30は、回路基板11に形成された配線に接続されているので、配線に電流を供給することにより、光を出射(発光)する。
拡散板12は、発光装置30から入射した光を拡散し、入射した面と反対側の面から、光を出射する。これにより、照明装置10は光を出射する。
そして、LCDパネル20は、画素毎に液晶に印加する電圧を制御して、照明装置10から入射した光を透過または遮断することにより、画像を形成する。
【0017】
図2は、照明装置10の断面構造および発光装置30の配光特性を示す図である。
図2(a)は、図1に示した照明装置10のA−A′線での断面図である。図2(a)には、回路基板11、発光装置30、拡散板12を示している。回路基板11上には、複数の発光装置30が規則的に配列されている。
さらに、図2(a)は、発光装置30から出射する光41と、拡散板12から出射する光42とを示している。
【0018】
発光装置30から出射した光41は、広がりながら、拡散板12に入射する。そして、拡散板12は、光41が入射した面の反対側の面から光42を出射する。
発光装置30から出射した光41は、拡散板12に均一に入射することが望ましい。したがって、発光装置30から出射した光41が拡散板12に均一に入射するように、回路基板11上の発光装置30の数、配列、ピッチなどが決められる。
【0019】
拡散板12は、例えば光を吸収しない散乱体を分散した樹脂で構成されている。そして、拡散板12の散乱体は、拡散板12に入射した光41をさまざまな方向に反射する。これにより、拡散板12は、光を拡散して、拡散板12からの光の出射方向や輝度分布を制御する。
【0020】
図2(b)は、発光装置30から光の出射方向についての定義を示している。すなわち、発光装置30の位置から拡散板12に垂直に向かう方向を、発光装置30の法線方向と呼び、0°とする。そして、法線方向から紙面の右90°の方向を90°、同じく左90°の方向を−90°とする。さらに、法線方向から、右90°方向への角度θを放射角θとする。なお、左90°方向への角度θは−θ(不図示)とする。そして、発光装置30の位置における法線とA−A′線とを含む面以外の、発光装置30の位置における法線を含む他の面についても同様とする。
ここでは、発光装置30の出射する光の強度は、発光装置30の外において、光の出射方向における立体角当たりの光の放射束、すなわち放射強度で示す。
そして、発光装置30の出射する放射強度の放射角θ依存性を、発光装置30の配光特性という。
【0021】
発光装置30から放射角θで出射された光は、拡散板12に入射角θで入射する。このため、拡散板12の単位面積当たりに入射する光の放射束は、放射強度にcosθを乗じた値となる。
【0022】
ここで、配光特性の表し方に関し、2つの特別な場合の配光特性について説明する。
図2(c)は、発光装置30が均等拡散性の光源であるとした場合(ランベルトの余弦則にしたがう場合)の配光特性を示す。配光特性は、発光装置30を原点Oにおいた極座標で示す。横軸は右が90°方向の放射強度、左が−90°方向の放射強度、縦軸は発光装置30の法線方向(0°)の放射強度である。そして、それぞれの軸の間は、それぞれの方向での放射強度を示す。なお、放射強度は相対値で示している。
【0023】
ランベルトの余弦則によれば、法線方向の放射強度をI0とすると、放射角θでの放射強度IθはIθ=I0cosθで表される。したがって、放射強度は、放射角θが大きくなると小さくなる。そして、配光特性は、図2(c)に示すように、発光装置30の原点Oと法線方向の縦軸の1を結んだ線を直径とする円となる。
例えば、この光が拡散板12に入射すると、拡散板12の単位面積当たりに入射する放射束は、前述したように放射強度にcosθを乗じたものになるため、I0のcos2θ倍となる。このため、拡散板12から出射する光は、発光装置30の法線方向は明るいが、その周囲は暗くなる。
このことから、複数の発光装置30を並べて構成される照明装置10は、それぞれの発光装置30が出射する光の一部が互いに重なるようにして、拡散板12からの出射光の明るさにムラが少ないように構成される必要がある。
【0024】
一方、図2(d)は、放射角θ1〜−θ1の範囲において、放射角θにおける発光装置30の放射強度が、放射角0°の1/cosθ倍である場合の配光特性を示す。このとき、放射角θにおける放射強度を結んだ線(放射強度のエンベロープ)は、放射角θ1〜−θ1の範囲において、90°と−90°を結ぶ線に平行になる。
この場合、拡散板12上の単位面積当たりの放射束は、前述したように放射強度にcosθを乗じたものになるので、拡散板12の単位面積当たりの放射束は一定である。すなわち、放射角θ1〜−θ1内において、拡散板12から出射する光42は、明るさのムラが少ない。
【0025】
この結果、照明装置10は、それぞれの発光装置30が出射する光が互いに重ならないようにして、構成すればよい。これにより、少ない数の発光装置30により、明るさにムラの少ない照明装置10が構成できる。
すなわち、直下方式の照明装置10では、図2(d)に示す配光特性を有する発光装置30が好ましい。
【0026】
なお、発光装置30からの放射された光は、放射角θが大きくなると、拡散板12で全反射されるようになる。したがって、放射角θ1の取りうる最大値は、発光装置30から出射した光が拡散板12で全反射される臨界角まででよい。
【0027】
図3は、第1の実施の形態における発光装置30の構造を説明する図の一例である。図3(a)は、発光装置30の平面図、図3(b)は、図3(a)のB−B′線での断面図である。
発光装置30は、配線が形成された基板、例えばガラスエポキシのLED搭載基板31と、LED搭載基板31上に導電性接着剤または非導電性接着剤で固着された発光素子、例えばBに発光するLED32と、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光物質を含んだ蛍光体層33とを備える。
【0028】
LED搭載基板31は、例えば円板状に構成されている。LED搭載基板31には、図示しないが、回路基板11に形成された配線と接続するための端子が設けられている。さらに、LED搭載基板31には、LED32の端子に接続するための配線が形成されている。
【0029】
LED32は、例えばサファイア基板上にn型半導体層、発光層及びp型半導体層がこの順でエピタキシャル成長されているIII族窒化物半導体から形成されている。
そして、LED32は、光を出射する面の反対側の面でLED搭載基板31に固着されている。さらに、LED32の図示しない電極と、LED搭載基板31に形成された配線とは、例えば図示しないワイヤボンドで接続されている。
【0030】
蛍光体層33は、LED搭載基板31に固着されたLED32を覆うようにLED搭載基板31の表面31a上に形成されている。蛍光体層33は、例えば約10μmのサイズのアルミン酸イットリウム(YAG:Yttrium Aluminum Garnet)の蛍光物質を約10質量%含むゴム系の樹脂である。
【0031】
蛍光体層33は、表面33a、裏面33bおよび側面33cで囲まれている。蛍光体層33の側面33cは、LED搭載基板31の側面に連なって、円柱状に形成されている。蛍光体層33の裏面33bは、LED搭載基板31の表面31aと接触している。
蛍光体層33の表面33aは、中心領域においてLED32に向かって落ち込んだ曲面、例えば曲率Rの球面で構成されている。そして、曲面は、曲面の落ち込んだ底がLED32と対向するように設けられている。
さらに、蛍光体層33の表面33aには、曲面を取り囲むように、LED32に向かって円錐状に落ち込んだ傾斜面が構成されている。すなわち、蛍光体層33は、LED32の中心を通り、LED32に対する垂線であるX−X′線を回転軸とする回転体として構成されている。
【0032】
LED搭載基板31の表面31aから、蛍光体層33の表面33aが形成する円錐の頂点に当たる点TとX−X′線とが交差する点までが距離h1である。同様に、LED搭載基板31の表面31aから、曲面の曲率Rの中心Sまでが距離h2である。さらに、LED搭載基板31の表面31aから、蛍光体層33の外周の最厚部までが距離h3である。
さらに、傾斜面のなす角度が中心角φである。LED搭載基板31は直径d1である。
そして、発光装置30は、例えば、R=0.680mm、h1=0.653mm、h2=1.300mm、h3=1.256mm、φ=136°、d1=2.983mmである。
【0033】
発光装置30は、回路基板11に形成された配線から、LED搭載基板31に形成された配線を経て、LED32に電流が供給されることにより、LED32がBの光を出射(発光)する。そして、このBの光により、蛍光体層33がYの光を出射(発光)する。
すなわち、本実施の形態1の発光装置30は、LED32の出射するBの光と、蛍光体層33がBの光により出射するYの光とが混色して白色の光を出射する。
【0034】
図4は、第1の実施の形態における発光装置30のシミュレーションにより求めた配光特性を説明する図である。
図4(a)は、発光装置30において、比較例として半球状の蛍光体層33を設けたときの配光特性を示している。図4(a)の配光特性は、図2(c)に示す配光特性に似ている。すなわち、半球状の蛍光体層33を設けた発光装置30は、ランベルトの余弦則にしたがった配光特性を示す。なお、図4(a)の配光特性は、LED32の法線と図3(a)のB−B′線を含む面での特性であるが、LED32の法線を含む他の面でも同様の配光特性を示す。
【0035】
一方、図4(b)は、図3に示す第1の実施の形態における蛍光体層33を設けた発光装置30の配光特性である。発光装置30の放射強度のエンベロープは、放射角θが−22.5°〜22.5°の範囲において、90°と−90°を結ぶ線にほぼ平行になっている。この配光特性は、図2(d)に示した配光特性に近い。なお、図4(b)の配光特性は、図3(b)のX−X′線と図3(a)のB−B′線を含む面での特性であるが、X−X′線を含む他の面でも同様の特性を示す。
【0036】
次に、第1の実施の形態における発光装置30が、図4(b)に示す配光特性を生じる理由について説明する。
第1の実施の形態では、放射角θが大きいほど、発光装置30の放射強度が大きいことが求められる。
蛍光体層33は、LED32が発光するBの光をYの光に変換するとともに、レンズとしても働く。そこで、蛍光体層33の形状を変えると、蛍光体層33から出射する光の配光を制御できることになる。
【0037】
さて、放射角θが大きいほど、発光装置30の放射強度を大きくする方法として、蛍光体層33の上面を凹レンズとすることが考えられる。また、断面において2つのプリズムを並べたV字状になるように、蛍光体層33の上面を円錐状にすることも考えられる。
図5は、蛍光体層33の表面形状が発光装置30の配光特性に与える影響を説明するための光線追跡結果を示す図である。ここでは、蛍光体層33の表面形状の影響を明らかにするため、蛍光体層33の代わりに、透明樹脂層を用いた。
【0038】
図5(a)は、LED32に対する上面をもっとも薄い凹レンズ状とした透明樹脂層34における光線追跡の結果を示す図である。
LED搭載基板31上にLED32があり、さらにLED搭載基板31上にLED32を覆うように凹レンズ状の透明樹脂層34がある。
光線追跡の結果を見ると、この構造においては、LED32から出射する光線は、LED32の法線方向にやや出過ぎとなっている。
【0039】
一方、図5(b)は、LED32に対する上面をもっとも薄い円錐状とした透明樹脂層35の場合の光線追跡の結果を示す図である。
LED搭載基板31上にLED32があり、さらにLED搭載基板31上にLED32を覆うように表面を円錐状とした透明樹脂層35がある。
光線追跡の結果を見ると、この構造においては、LED32から出射する光線は、LED32の法線方向に少なく、LED32の側方に出過ぎとなっている。
【0040】
以上のことから、第1の実施の形態に示したように、蛍光体層33の表面33aをLED32に対向する部分を曲面とし、その曲面の周囲の部分をLED32の法線に向かって傾斜する円錐状とする構成が好ましいことになる。
なお、図5に示した光線追跡の結果には、蛍光体層33中の蛍光物質によって光が散乱される効果や、蛍光体が発光する光の効果は考慮されていない。したがって、図4(b)に示した配光特性は、これらの効果が加わって得られたものであって、蛍光体層33のレンズ効果のみによるものではない。
【0041】
(第2の実施の形態)
図6は第2の実施の形態における発光装置30の構造と配光特性を説明する図である。図6(a)は、発光装置30の平面図、図6(b)は、図6(a)のC−C′線での断面図である。図6(c)は、発光装置30のシミュレーションにより求めた配光特性である。
第2の実施の形態の発光装置30は、配線が形成された例えばガラスエポキシのLED搭載基板51と、LED搭載基板51上に導電性接着剤または非導電性接着剤で固着された発光素子、例えばBに発光するLED32と、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光体層33と、蛍光体層33を覆うように形成された透明樹脂層52とを備える。
LED32および蛍光体層33は、第1の実施の形態における発光装置30でのものと同じである。
【0042】
透明樹脂層52は、例えばゴム系の樹脂であって、蛍光体層33に用いられた樹脂と同じである。そして、透明樹脂層52は、LED搭載基板51の直径d2と同じ直径d2の円柱状で、その表面52aは平坦である。そして、透明樹脂層52は、LED搭載基板51の表面51aから厚さt1である。例えば、d2=4.465mm、t1=1.920mmである。
第2の実施の形態における発光装置30は、第1の実施の形態における発光装置30を、円柱状の透明樹脂層52で覆った構造に等しい。
【0043】
図6(c)に示すように、発光装置30の放射強度のエンベロープは、放射角θが−45°から45°の範囲で、−90°と90°を結ぶ線に平行になっている。この特性は、図4(b)に示した特性より、放射角の範囲が広がっている。
なお、図6(c)の配光特性は、図6(b)のX−X′線と図6(a)のC−C′線を含む面での特性であるが、X−X′線を含む他の面でも同様の特性を示す。
【0044】
(第3の実施の形態)
図7は第3の実施の形態における発光装置30の構造と配光特性を説明する図である。図7(a)は、発光装置30の平面図、図7(b)は、図7(a)のD−D′線での断面図である。図7(c)は、発光装置30のシミュレーションにより求めた、図7(a)のD−D′線およびE−E′線の方向における配光特性である。
【0045】
第3の実施の形態における発光装置30は、配線が形成された例えばガラスエポキシのLED搭載基板61と、LED搭載基板61上に導電性接着剤または非導電性接着剤で固着された発光素子、例えばBに発光するLED32と、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光体層33と、蛍光体層33を覆うように形成された透明樹脂層62とを備える。
LED搭載基板61は、辺の長さがd3とd4である矩形の板状である。LED32および蛍光体層33は、第1の実施の形態における発光装置30でのものと同じである。そして、透明樹脂層62は、例えばゴム系の樹脂であって、蛍光体層33に用いられた樹脂と同じである。そして、透明樹脂層62は、LED搭載基板61と同じく、辺の長さがd3とd4で、LED搭載基板61の表面61aから厚さt2で、表面62aが平坦な矩形の角柱状である。例えば、d3=d4=4.465mm、t2=2.080mmである。
第3の実施の形態における発光装置30は、第1の実施の形態における発光装置30を、角柱状の透明樹脂層62で覆った構造に等しい。
【0046】
図7(c)に示すように、発光装置30の放射強度のエンベロープは、放射角θが−45°〜45°の範囲において、D−D′線およびE−E′線の両方向とも、−90°と90°を結ぶ線に平行になっている。このことは、拡散板12の単位面積あたりに入射する放射束が、矩形の範囲において一定となっていることを示している。このため、照明装置10において、それぞれの発光装置30が出射する光が重ならないように、いわばタイルを敷き詰めるように、発光装置30を配列すればよい。このため、第3の実施の形態の発光装置30を用いれば、もっとも効率よく配列することができる。
【0047】
なお、蛍光体層33の表面33aとLED32の対向する部分は、例として曲率Rの球面としたが、LED32に向かって落ち込んだ曲面であってよい。
そして、曲面の周りの円錐状の傾斜面のなす中心角φは、例として136°としたが、30°以上で180°未満であればよい。好ましくは、130°から140°である。なお、中心角φがこれらの値より小さいと、放射角θが小さい範囲で光が強くなる。一方、中心角φがこれらの値より大きいと、放射角θが大きい範囲で光が強くなる。
【0048】
さらに、蛍光物質を分散させた蛍光体層33の樹脂は、ゴム系の樹脂に限ることなく、レジン系の樹脂、またはシリコーン材料などを用いうる。
【0049】
また、蛍光体層33を覆うように形成された透明樹脂層62は、円柱状または角柱状としたが、側面が窪んだ柱状であってもよい。すなわち、柱状の透明樹脂層62の側面は、光の配光特性に応じて、変形して用いてよい。
【実施例】
【0050】
では次に、本発明の実施例について説明を行うが、本発明は実施例に限定されない。
本発明者は、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態について、それぞれ発光装置30の製造を行った。そして、これらの発光装置30および比較例の発光装置30の配光特性、発光効率、取り出し効率について検討を行った。
図8は、実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置30の構成と、評価結果との関係を説明する図である。
【0051】
実施例1ないし3のそれぞれの発光装置30は、第1の実施の形態において説明した構成を有している。実施例4の発光装置30は、第2の実施の形態に対応して円柱状の透明樹脂層52を用いた構成を有している。実施例5の発光装置30は、第3の実施の形態に対応して角柱状の透明樹脂層62を用いた構成を有している。
そして、実施例1ないし5のそれぞれの発光装置30の蛍光体層33は、以下で説明する事項を除いて、第1の実施の形態で例示した形状をなしている。
さらに、実施例4の発光装置30の透明樹脂層52は、第2の実施の形態で例示した形状をなしている。同様に、実施例5の発光装置30の透明樹脂層62は、第3の実施の形態で例示した形状をなしている。
【0052】
一方、比較例の発光装置30は、次に説明するように、凹部71a(後述する図9参照)を有する白色樹脂ケース70(後述する図9参照)の凹部71a内側にLED32を取り付けるとともに、LED32を覆うように、凹部71aに蛍光体層75(後述する図9参照)を形成して構成されている。
【0053】
ここで、比較例の発光装置30を説明する。
図9は比較例の発光装置30の構造を説明する図である。図9(a)は発光装置30の上面図、図9(b)は、図9(a)のF−F′線での断面図である。比較例の発光装置30は、LED32が白色樹脂ケース70に実装されている。
白色樹脂ケース70は、上部側に拡開するように立ち上がる壁面81を有する凹部71aが形成された樹脂容器71と、樹脂容器71と一体化したリードフレームからなるアノード用リード部72およびカソード用リード部73と、凹部71aを覆うように設けられた蛍光体層75とを備えている。そして、白色樹脂ケース70の凹部71aの円形状を有する底面80にLED32が固定されている。蛍光体層75は、LED32も覆うように設けられている。
【0054】
白色樹脂ケース70の樹脂容器71は、アノード用リード部72およびカソード用リード部73を含む金属リード部に、白色顔料が含有された熱可塑性樹脂を射出成型することによって形成されている。
LED32は、底面80に露出したカソード用リード部73上に、図示しないボンディングワイヤを介して、p電極がアノード用リード部72に、n電極がカソード用リード部73に、それぞれ接続されている。アノード用リード部72およびカソード用リード部73は、それぞれ樹脂容器71の裏側に折り曲げて配設されている。
比較例の発光装置30は、図9(a)における横d5が3.5mm、縦d6が2.8mmである。
【0055】
アノード用リード部72を正極とし、カソード用リード部73を負極としてLED32に電流を流すことで、LED32はBの光を出射する。LED32から出射されたBの光により、蛍光体層75がYの光を出射する。そして、比較例の発光装置30は、実施例1〜5と同様に、LED32の出射するBの光と、蛍光体層75がBの光により出射するYの光とが混色して白色の光を出射する。
【0056】
さて、図8に戻って、図8に示す構成の項目について説明する。
「LEDチップ数」は、発光装置30(パッケージ)当たりに実装したLEDチップの数を示している。いわゆるパッケージ当たりのLEDチップの数をいう。チップ数が3とは、発光装置30のLED32がLEDチップ3個で構成されていること、すなわち発光装置30は3 in 1パッケージであることを示している。
実施例1〜5のそれぞれの発光装置30のLED32は3個のLEDチップで構成されている。比較例の発光装置30のLED32は1個のLEDチップで構成されている。なお、いずれにおいても、LED32は、448nm付近にピークを有するBの光を出射する。
次の「LED放射束」は、LED32の放射束をmW単位で示している。
そして、「蛍光体(含有率)」は、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光体層33(実施例1〜5)および蛍光体層75(比較例)に用いられた蛍光体の種類と含有率とを示している。ここでは、Y450C(INTEMATIX社製)およびEY425No.2(INTEMATIX社製)の2種類の蛍光体を用いた。含有率は8質量%〜12質量%の範囲である。
【0057】
「透明樹脂」は、発光装置30の透明樹脂層52または透明樹脂層62の有無を示している。前述したように、実施例4では第2の実施の形態に対応して円柱状の透明樹脂層52を用いている。また、実施例5では第3の実施の形態に対応して角柱状の透明樹脂層62を用いている。他の実施例1〜3および比較例では透明樹脂層52および透明樹脂層62のいずれも用いていない。
【0058】
次に、評価結果を説明する。
図8では、実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置30の評価結果として、放射強度がピークの1/2以上である放射角θの範囲である半値角と、発光効率およびCIE1931表色系における色度座標と、取り出し効率とを示している。
ここでいう取り出し効率とは、実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置30からの放射束を、それぞれのLED放射束で除した値であり、LEDチップ内の損失は考えない。
以下順に、実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置30における放射強度と放射角θとの関係を説明しつつ、図8に示した評価結果を説明する。
【0059】
図10は、実施例1および比較例の各発光装置30における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。図10(a)は、放射強度と放射角θとの関係を、放射角θを横軸、放射強度を縦軸として示したものである。一方、図10(b)は、放射強度と放射角θとの関係を極座標で表したもの(極座標表記)である。それぞれ、放射強度は相対値で示している。
【0060】
まず、比較例から説明する。比較例の発光装置30は、放射束が14.26mWのLED32(1個のLEDチップからなる。)を備え、蛍光体層75の蛍光体としてY450Cを12質量%含んでいる。なお、蛍光体層75の蛍光体を除いた残りはシリコーンゴム系の樹脂であるSCR−1011(信越化学工業株式会社製)である。
図10(a)では、比較例の発光装置30の配向特性として、図9で示したF−F′線での断面における配光特性を示す。比較例の発光装置30では、放射強度は、放射角θが0°から90°または−90°に近づくにつれ、急激に減少する。そして、図10(b)から分かるように、極座標表記では、放射強度は縦長のエンベロープを示す。
図8に示す半値角は、図10(a)の比較例に示すように、放射強度がピーク値に対して1/2になる放射角θ(0°を挟んで左右の放射角θ)の範囲(差)である。比較例の発光装置30の半値角は110°であった。
また、比較例の発光装置30では、発光効率は88lm/W、色度座標はx=0.34、y=0.37であった。また、取り出し効率は82.1%であった。
【0061】
一方、実施例1の発光装置30は、放射束が19mWのLED32(3個のLEDチップからなる。)を備え、蛍光体層33の蛍光体としてY450Cを8質量%含んでいる。なお、蛍光体層33の蛍光体を除いた残りは、シリコーンゴム系の樹脂であるKER−2500(信越化学工業株式会社製)である。
図10(a)では、実施例1の発光装置30の配向特性として、図3で示したB−B′線での断面における配光特性(0°面で示す。)と、B−B′線と直交する線での断面における配向特性(90°面で示す。)とを示している。そして、実施例1の発光装置30でも、放射強度は、放射角θが0°から90°または−90°に近づくにつれ、減少する。しかし、放射角θが90°または−90°であっても0にならない。すなわち、実施例1の発光装置30では、発光装置30の横方向(放射角±90°)にも光が出射することを示している。そして、減少の割合は、比較例の発光装置30に比べて、緩やかである。実施例1の発光装置30の半値角は148°であって、比較例の発光装置30の半値角110°に比べ約40°大きい。
また、図10(b)に示すように、極座標表記において、実施例1の発光装置30の放射強度のエンベロープは横に広い楕円になっている。そして、図10(b)において、実施例1の発光装置30の放射強度のエンベロープは、比較例の発光装置30の放射強度のエンベロープに比べ、左右方向に広くなっている。
【0062】
以上説明したように、実施例1の発光装置30は、比較例の発光装置30に比べ、光が横方向(放射角±90°)まで広がることを示している。
そして、図10(b)に示す実施例1の発光装置30の放射強度のエンベロープは、第1の実施の形態においてシミュレーションで求めた図4(b)の放射強度のエンベロープに近い。よって、実施例1の発光装置30の示す特性から、第1の実施例の発光装置30が実現できていることを示している。
【0063】
なお、図10(a)に示す実施例1の発光装置30において、0°面での配光特性と90°面での配光特性とは放射角θに対してずれているように見える。これは、配向特性の測定において、発光装置30の設置誤差によるものである。図3(a)に示した第1の実施の形態の発光装置30の構成からも分かるように、B−B′線での断面とB−B′線と直交する線での断面とは構造上同等であるので、0°で示す配光特性と90°で示す配光特性とはほとんど差がない。これは、極座標表記の図10(b)においても同様である。
【0064】
実施例2および3の発光装置30は、実施例1の発光装置30と同様に、第1の実施の形態における発光装置30である。実施例2の発光装置30は、放射束が19mWのLED32(3個のLEDチップからなる。)を備え、蛍光体層33の蛍光体としてY450Cを10質量%含んでいる。一方、実施例3の発光装置30は、放射束が21mWのLED32(3個のLEDチップからなる。)を備え、蛍光体層33の蛍光体としてEY4254No.2を10質量%含んでいる。なお、いずれも、蛍光体層33の蛍光体を除いた残りは、シリコーンゴム系の樹脂であるKER−2500(信越化学工業株式会社製)である。
これらの実施例2および3の発光装置30は、図示しないが、実施例1の発光装置30と同様の配向特性を示す。そして、実施例2の発光装置30は、半値角が148°、発光効率は107lm/W(色度座標x=y=約0.3)であった。また、実施例3の発光装置30は、半値角が155°、発光効率が112lm/W、取り出し効率が70.7%であった。
【0065】
すなわち、実施例2および3の発光装置30は、実施例1の発光装置30と同様に、比較例の発光装置30に比べ、半値角が大きく、広い放射角θの範囲において光の出射が得られることが分かる。なお、実施例1および2と実施例3とで、半値角が148°と155°と異なっているが、これは用いた蛍光体の種類、発光装置30の形状のばらつきなどによるものと考えられる。
一方、実施例3の発光装置30の取り出し効率が70.7%と、比較例の発光装置30の取り出し効率82.1%に比べ、小さくなっている。これは、図3に示したように、蛍光体層33の側面が円筒状になっているため、円筒の側面に全反射角で入射した光が円筒の側面で反射を繰り返し、閉じ込められて、外部に取り出しにくいことによると考えられる。一方、比較例の発光装置30では、白色樹脂ケース70の内側は上部側に拡開するように立ち上がる壁面81で構成されているため、光が閉じ込められにくいと考えられる。
【0066】
図11は、実施例4の発光装置30における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。図11(a)は、放射強度と放射角θとの関係を、放射角θを横軸、放射強度を縦軸として示したものである。一方、図11(b)は、放射強度と放射角θとの関係を極座標で表したもの(極座標表記)である。それぞれ、放射強度は相対値で示している。なお、図11(a)では、図10において説明した比較例の配向特性を合わせて示している。
【0067】
実施例4の発光装置30は、第2の実施の形態の発光装置30であって、円筒状の透明樹脂層52を備えている。そして、LED32のLEDチップ数、LED32のLED放射束、蛍光体層33に用いた蛍光体(EY425No.2)およびその含有率は、実施例3の発光装置30と同様である。
そして、透明樹脂層52は、蛍光体層33の蛍光体を除いた残りのシリコーンゴム系の樹脂と同じくKER−2500(信越化学工業株式会社製)である。
【0068】
図11(a)および(b)では、図6(a)のC−C′線での断面における配光特性(0°面で示す。)とC−C′線と直交する線での断面における配向特性(90°面で示す。)とを示している。実施例4の発光装置30の放射強度は、放射角θが±20°付近で最大になり、0°付近でやや低下している。そして、放射強度は放射角θが20°から90°または−20°から−90°に近づくにつれ減少するが、その減少の割合は実施例1の発光装置30の場合より緩やかである。そして、実施例4の発光装置30の半値幅は159°と、実施例1から3の場合(148°および155°)に比べ大きくなっている。
【0069】
図11(b)の極座標表記における放射強度のエンベロープは、図10(b)に示した実施例1の場合より、さらに左右方向に広がっている。そして、図11(b)の放射強度のエンベロープは、第2の実施の形態においてシミュレーションにより求めた図6(c)の放射強度のエンベロープに近い形状となっている。なお、放射角θが±45°方向で放射強度が小さくなっているのは、実施例4の発光装置30が、図6(b)に示した円筒状の透明樹脂層52の側面と上面との境界で急峻な形状(直角)にならず、角が取れて丸くなった形状になったためと考えられる。
よって、実施例4の発光装置30の示す特性は、第2の実施例の発光装置30が実現できていることを示している。
【0070】
なお、0°面での配光特性と90°面での配光特性とは放射角θに対してずれているように見られる。これは、配向特性の測定における発光装置30の設置誤差によるものである。図6(a)に示した第2の実施の形態の発光装置30の構成からも分かるように、C−C′線での断面とC−C′線と直交する線での断面とは構造上同等であるので、0°面での配光特性と90°での配光特性とはほとんど差がない。これは、極座標で表した図11(b)においても同様である。
【0071】
実施例4の発光装置30は、発光効率が112lm/Wである。しかし、取り出し効率は68.4%と、実施例3および比較例にくらべ小さい。取り出し効率が小さいのは、図6(a)および(b)に示したように、透明樹脂層52が円筒状になっているため、円筒の側面に全反射角度で入射した光が円筒の側面で反射を繰り返し、閉じ込められて、外部に取り出しにくいことによると考えられる。
【0072】
図12は、実施例5の発光装置30における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。図12(a)は、放射強度と放射角θとの関係を、放射角θを横軸、放射強度を縦軸として示したものである。一方、図12(b)は、放射強度と放射角θとの関係を極座標で表したもの(極座標表記)である。それぞれ、放射強度は相対値で示している。なお、図12(a)には、図10において説明した比較例の配向特性を合わせて示している。
【0073】
実施例5の発光装置30は、第3の実施の形態の発光装置30であって、上面が正方形の角柱状の透明樹脂層62を備えている。そして、LED32のLEDチップ数、LED32のLED放射束、蛍光体層33に用いた蛍光体(EY425No.2)およびその含有率は、実施例3の発光装置30と同様である。
そして、透明樹脂層62は、蛍光体層33の蛍光体を除いた残りのシリコーンゴム系の樹脂と同じくKER−2500(信越化学工業株式会社製)である。
【0074】
図12(a)および(b)では、図7(a)のD−D′線での断面における配光特性(0°面で示す。)と、D−D′線と直交する線での断面における配向特性(90°面で示す。)と、D−D′線に対して40°傾いた線での断面における配向特性(40°面で示す。)とを示している。D−D′線に対して40°傾いた線は、図7(a)におけるD−D′線に対して45°傾いたE−E′線に近い。
図12(a)に示すように、0°面での配向特性および90°面での配向特性において、共に放射強度は、放射角θが±30°付近で最大で、放射角θが0°付近で放射強度がやや低下している。そして、放射角θが30°から90°または−30°から−90°に近づくにつれ、徐々に減少している。そして、0°面での配向特性と90°面での配向特性とはほぼ同じである。図7(a)から分かるように、角柱状の透明樹脂層62の上面は正方形であるので、D−D′線での断面と、それに直交する線での断面とは構造上同等であるためである。
【0075】
一方、40°面での配向特性において、0°面および90°面での配向特性より、放射角θ(θの絶対値)のより大きい範囲まで放射強度が大きく維持されている。すなわち、40°面での配向特性は、0°面での配向特性および90°面での配向特性より半値幅が広くなっている。図8に示すように、0°面での半値幅は157°であるが、40°面での半値幅は162°となっている。
このことは、図12(b)に示す極座標表記においても同様であって、40°面での放射強度のエンベロープは、0°面および90°面でのそれぞれの放射強度のエンベロープより左右方向により広がっている。
【0076】
そして、図12(b)に示す0°面、90°面、40°面のそれぞれの放射強度のエンベロープは、第3の実施の形態においてシミュレーションで求めた図7(c)のD−D′およびE−E′で示す放射強度のエンベロープに近い形状となっている。なお、40°面で放射強度のエンベロープの左右方向の広がりと0°面または90°面の放射強度のエンベロープの左右方向の広がりとの差が、図7(c)のD−D′で示す放射強度のエンベロープの左右方向の広がりとE−E′で示す放射強度のエンベロープの左右方向の広がりの差より小さいのは、E−E′がD−D′に対して45°であるのに対し、40°面は40°と浅いことによると考えられる。
また、図12(b)に示す0°面、90°面、40°面の放射強度のエンベロープにおいて、放射角θが±45°付近で放射強度が小さくなっているのは、角柱状の透明樹脂層62の上面と側面との境界が急峻な形状(直角)とならず、角が取れて丸くなった形状になったためと考えられる。
【0077】
さらに、実施例5の発光装置30は、色度座標x=y=約0.3、発光効率136lm/Wである。そして、取り出し効率は96.1%と、実施例3、4および比較例にくらべ大きい。これは、透明樹脂層62を角柱状としたことにより、角柱の側面に全反射角で入射した光であっても、他の側面から取り出すことができて、光が透明樹脂層62中に閉じ込められにくいことによると考えられる。
よって、角柱状の透明樹脂層62を設けた発光装置30は、半値角が大きく、且つ取り出し効率が高いことから最も好ましい。
【符号の説明】
【0078】
10…照明装置、11…回路基板、12…拡散板、20…LCDパネル、30…発光装置、31、51、61…LED搭載基板、32…LED、33、75…蛍光体層、34、35、52、62…透明樹脂層、70…白色樹脂ケース、71…樹脂容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびそれを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)のバックライトなどの照明装置の光源には、冷陰極放電管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)が広く用いられている。近年では、この照明装置の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられ始めている。
【0003】
LEDを光源とする照明装置は、それぞれが赤(R)、緑(G)、青(B)に発光するLEDを組にし、それらの組を多数並べて構成されている。また、1組のR、G、Bを発光するLEDを1つのパッケージとして、それらのパッケージを多数並べて構成することも行われている。さらに、Bに発光するLEDを蛍光体層で覆うことにより、Bの光を黄(Y)の光に変換して、BとYとの混色により白色の光が出射するようにしたLEDのパッケージも使用されるようになっている。ここで、LEDのパッケージとは、発光ダイオード(LED)を備えた発光装置のことであって、例えば凹部を有する白色樹脂ケースの凹部内側にリードフレームを露出させるように配置し、凹部の内側に露出するリードフレームに発光ダイオード(LED)を取り付けるとともにこれらを電気的に接続し、半導体発光素子を覆うように、凹部に封止樹脂や蛍光体を含有させた封止樹脂を形成してなるものである。
なお、照明装置に用いられる照明方式には、照明装置の内部に複数のLEDパッケージを例えば格子の交点に配列するようにした直下方式と、アクリル等で構成された導光板の端(エッジ)に複数のLEDパッケージを配列するエッジライト方式とがある。
【0004】
特許文献1には、エッジライト方式の面状光源等に用いるため、1個のLEDにより断面が線上の出射光を発する線状光源を構成する技術が記載されている。ここでは、LEDを透光性樹脂よりなる樹脂封止体によって封止した発光装置において、その樹脂封止体のX方向断面で見れば、両側から中央に向けて左右対称に落ち込む1対の放物線を有し、Y方向断面で見れば、上面が上に凸の曲線を有する形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3905343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、直下方式の照明装置に用いられる発光装置(LEDパッケージ)には、エッジライト方式とは異なる、光の出射特性が要求される。そして、直下方式の照明装置においても、薄型化(低背化)や、発光装置(LEDパッケージ)の数の削減が求められている。すなわち、直下方式の照明装置に用いることに適した光の出射特性に制御した発光装置およびそれを用いた照明装置が求められている。
【0007】
本発明の目的は、光を変換する蛍光体層によりLEDの配光を制御した発光装置およびそれを用いた照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が適用される発光装置は、基板と、基板上に固着された発光素子と、基板上に発光素子を覆って形成され、発光素子と反対側の面が、発光素子に向かって落ち込んだ曲面を備える、蛍光物質を含有する蛍光体層とを備える。
そして、蛍光体層の曲面の落ち込んだ底が発光素子と対向するように設けられていることを特徴とすることができる。
さらに、蛍光体層の発光素子と反対側の面が、曲面と、この曲面を取り囲んで、発光素子に向かって落ち込んだ傾斜面とを備えることを特徴とすることができる。
【0009】
またさらに、基板上に、蛍光体層を覆うように形成された透明樹脂層をさらに備えることを特徴とする。そして、透明樹脂層の外形が柱状に成形されていることを特徴とすることができる。本発明においては、外形が柱状であればよく、例えば楕円柱や小判柱などの形状も含まれる。中でも、外形が角柱状であることを特徴とすることができる。
【0010】
他の観点から捉えると、本発明が適用される照明装置は、回路基板と、回路基板に接続されるように配列され、光を出射する複数の発光装置と、発光装置に対向して設けられ、発光装置から入射した光を拡散して、発光装置と反対側の面から出射する拡散板と、を備え、発光装置は、基板と、基板上に固着された発光素子と、基板上に発光素子を覆って形成され、発光素子と反対側の面が、発光素子に向かって落ち込んだ曲面を備え、蛍光物資を含有する蛍光体層とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、照明装置の低背化や、発光装置(LEDパッケージ)の数の削減ができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態における照明装置を示す図である。
【図2】第1の実施の形態における照明装置の断面構造および発光装置の配光特性を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における発光装置の構造を説明する図である。
【図4】第1の実施の形態における発光装置の配光特性を説明する図である。
【図5】蛍光体層の表面形状が発光装置の配光特性に与える影響を説明するための光線追跡の結果を示す図である。
【図6】第2の実施の形態における発光装置の構造と配光特性を説明する図である。
【図7】第3の実施の形態における発光装置の構造と配光特性を説明する図である。
【図8】実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置の構成と、評価結果との関係を説明する図である。
【図9】比較例の発光装置の構造を説明する図である。
【図10】実施例1および比較例の各発光装置における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。
【図11】実施例4の発光装置における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。
【図12】実施例5の発光装置における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態における照明装置10を示す図である。
図1では、照明装置10は、一例としてLCDパネル20のバックライトとして構成されている。
【0014】
照明装置10は、例えば配線が形成されたガラスエポキシなどで形成された回路基板11、回路基板11上に搭載されるとともに配線に接続された、LEDを含む発光装置30、回路基板11の発光装置30が搭載された面に対向して設けられた拡散板12を備える。拡散板12は、回路基板11に平行に配置されている。
発光装置30は、回路基板11上に、例えば格子の交点に配列するように規則的に配列されている。この照明装置10は、前述したように、直下方式である。
【0015】
LCDパネル20は、図示しないが、画素毎に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)および画素電極などを形成したTFT基板と、対向電極および画素毎にカラーフィルタなどを形成した対向基板との間に液晶を挟み込んだ構造をなしている。さらに、LCDパネル20は、TFT基板と対向基板の外側にそれぞれ偏光板を備えている。
【0016】
発光装置30は、回路基板11に形成された配線に接続されているので、配線に電流を供給することにより、光を出射(発光)する。
拡散板12は、発光装置30から入射した光を拡散し、入射した面と反対側の面から、光を出射する。これにより、照明装置10は光を出射する。
そして、LCDパネル20は、画素毎に液晶に印加する電圧を制御して、照明装置10から入射した光を透過または遮断することにより、画像を形成する。
【0017】
図2は、照明装置10の断面構造および発光装置30の配光特性を示す図である。
図2(a)は、図1に示した照明装置10のA−A′線での断面図である。図2(a)には、回路基板11、発光装置30、拡散板12を示している。回路基板11上には、複数の発光装置30が規則的に配列されている。
さらに、図2(a)は、発光装置30から出射する光41と、拡散板12から出射する光42とを示している。
【0018】
発光装置30から出射した光41は、広がりながら、拡散板12に入射する。そして、拡散板12は、光41が入射した面の反対側の面から光42を出射する。
発光装置30から出射した光41は、拡散板12に均一に入射することが望ましい。したがって、発光装置30から出射した光41が拡散板12に均一に入射するように、回路基板11上の発光装置30の数、配列、ピッチなどが決められる。
【0019】
拡散板12は、例えば光を吸収しない散乱体を分散した樹脂で構成されている。そして、拡散板12の散乱体は、拡散板12に入射した光41をさまざまな方向に反射する。これにより、拡散板12は、光を拡散して、拡散板12からの光の出射方向や輝度分布を制御する。
【0020】
図2(b)は、発光装置30から光の出射方向についての定義を示している。すなわち、発光装置30の位置から拡散板12に垂直に向かう方向を、発光装置30の法線方向と呼び、0°とする。そして、法線方向から紙面の右90°の方向を90°、同じく左90°の方向を−90°とする。さらに、法線方向から、右90°方向への角度θを放射角θとする。なお、左90°方向への角度θは−θ(不図示)とする。そして、発光装置30の位置における法線とA−A′線とを含む面以外の、発光装置30の位置における法線を含む他の面についても同様とする。
ここでは、発光装置30の出射する光の強度は、発光装置30の外において、光の出射方向における立体角当たりの光の放射束、すなわち放射強度で示す。
そして、発光装置30の出射する放射強度の放射角θ依存性を、発光装置30の配光特性という。
【0021】
発光装置30から放射角θで出射された光は、拡散板12に入射角θで入射する。このため、拡散板12の単位面積当たりに入射する光の放射束は、放射強度にcosθを乗じた値となる。
【0022】
ここで、配光特性の表し方に関し、2つの特別な場合の配光特性について説明する。
図2(c)は、発光装置30が均等拡散性の光源であるとした場合(ランベルトの余弦則にしたがう場合)の配光特性を示す。配光特性は、発光装置30を原点Oにおいた極座標で示す。横軸は右が90°方向の放射強度、左が−90°方向の放射強度、縦軸は発光装置30の法線方向(0°)の放射強度である。そして、それぞれの軸の間は、それぞれの方向での放射強度を示す。なお、放射強度は相対値で示している。
【0023】
ランベルトの余弦則によれば、法線方向の放射強度をI0とすると、放射角θでの放射強度IθはIθ=I0cosθで表される。したがって、放射強度は、放射角θが大きくなると小さくなる。そして、配光特性は、図2(c)に示すように、発光装置30の原点Oと法線方向の縦軸の1を結んだ線を直径とする円となる。
例えば、この光が拡散板12に入射すると、拡散板12の単位面積当たりに入射する放射束は、前述したように放射強度にcosθを乗じたものになるため、I0のcos2θ倍となる。このため、拡散板12から出射する光は、発光装置30の法線方向は明るいが、その周囲は暗くなる。
このことから、複数の発光装置30を並べて構成される照明装置10は、それぞれの発光装置30が出射する光の一部が互いに重なるようにして、拡散板12からの出射光の明るさにムラが少ないように構成される必要がある。
【0024】
一方、図2(d)は、放射角θ1〜−θ1の範囲において、放射角θにおける発光装置30の放射強度が、放射角0°の1/cosθ倍である場合の配光特性を示す。このとき、放射角θにおける放射強度を結んだ線(放射強度のエンベロープ)は、放射角θ1〜−θ1の範囲において、90°と−90°を結ぶ線に平行になる。
この場合、拡散板12上の単位面積当たりの放射束は、前述したように放射強度にcosθを乗じたものになるので、拡散板12の単位面積当たりの放射束は一定である。すなわち、放射角θ1〜−θ1内において、拡散板12から出射する光42は、明るさのムラが少ない。
【0025】
この結果、照明装置10は、それぞれの発光装置30が出射する光が互いに重ならないようにして、構成すればよい。これにより、少ない数の発光装置30により、明るさにムラの少ない照明装置10が構成できる。
すなわち、直下方式の照明装置10では、図2(d)に示す配光特性を有する発光装置30が好ましい。
【0026】
なお、発光装置30からの放射された光は、放射角θが大きくなると、拡散板12で全反射されるようになる。したがって、放射角θ1の取りうる最大値は、発光装置30から出射した光が拡散板12で全反射される臨界角まででよい。
【0027】
図3は、第1の実施の形態における発光装置30の構造を説明する図の一例である。図3(a)は、発光装置30の平面図、図3(b)は、図3(a)のB−B′線での断面図である。
発光装置30は、配線が形成された基板、例えばガラスエポキシのLED搭載基板31と、LED搭載基板31上に導電性接着剤または非導電性接着剤で固着された発光素子、例えばBに発光するLED32と、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光物質を含んだ蛍光体層33とを備える。
【0028】
LED搭載基板31は、例えば円板状に構成されている。LED搭載基板31には、図示しないが、回路基板11に形成された配線と接続するための端子が設けられている。さらに、LED搭載基板31には、LED32の端子に接続するための配線が形成されている。
【0029】
LED32は、例えばサファイア基板上にn型半導体層、発光層及びp型半導体層がこの順でエピタキシャル成長されているIII族窒化物半導体から形成されている。
そして、LED32は、光を出射する面の反対側の面でLED搭載基板31に固着されている。さらに、LED32の図示しない電極と、LED搭載基板31に形成された配線とは、例えば図示しないワイヤボンドで接続されている。
【0030】
蛍光体層33は、LED搭載基板31に固着されたLED32を覆うようにLED搭載基板31の表面31a上に形成されている。蛍光体層33は、例えば約10μmのサイズのアルミン酸イットリウム(YAG:Yttrium Aluminum Garnet)の蛍光物質を約10質量%含むゴム系の樹脂である。
【0031】
蛍光体層33は、表面33a、裏面33bおよび側面33cで囲まれている。蛍光体層33の側面33cは、LED搭載基板31の側面に連なって、円柱状に形成されている。蛍光体層33の裏面33bは、LED搭載基板31の表面31aと接触している。
蛍光体層33の表面33aは、中心領域においてLED32に向かって落ち込んだ曲面、例えば曲率Rの球面で構成されている。そして、曲面は、曲面の落ち込んだ底がLED32と対向するように設けられている。
さらに、蛍光体層33の表面33aには、曲面を取り囲むように、LED32に向かって円錐状に落ち込んだ傾斜面が構成されている。すなわち、蛍光体層33は、LED32の中心を通り、LED32に対する垂線であるX−X′線を回転軸とする回転体として構成されている。
【0032】
LED搭載基板31の表面31aから、蛍光体層33の表面33aが形成する円錐の頂点に当たる点TとX−X′線とが交差する点までが距離h1である。同様に、LED搭載基板31の表面31aから、曲面の曲率Rの中心Sまでが距離h2である。さらに、LED搭載基板31の表面31aから、蛍光体層33の外周の最厚部までが距離h3である。
さらに、傾斜面のなす角度が中心角φである。LED搭載基板31は直径d1である。
そして、発光装置30は、例えば、R=0.680mm、h1=0.653mm、h2=1.300mm、h3=1.256mm、φ=136°、d1=2.983mmである。
【0033】
発光装置30は、回路基板11に形成された配線から、LED搭載基板31に形成された配線を経て、LED32に電流が供給されることにより、LED32がBの光を出射(発光)する。そして、このBの光により、蛍光体層33がYの光を出射(発光)する。
すなわち、本実施の形態1の発光装置30は、LED32の出射するBの光と、蛍光体層33がBの光により出射するYの光とが混色して白色の光を出射する。
【0034】
図4は、第1の実施の形態における発光装置30のシミュレーションにより求めた配光特性を説明する図である。
図4(a)は、発光装置30において、比較例として半球状の蛍光体層33を設けたときの配光特性を示している。図4(a)の配光特性は、図2(c)に示す配光特性に似ている。すなわち、半球状の蛍光体層33を設けた発光装置30は、ランベルトの余弦則にしたがった配光特性を示す。なお、図4(a)の配光特性は、LED32の法線と図3(a)のB−B′線を含む面での特性であるが、LED32の法線を含む他の面でも同様の配光特性を示す。
【0035】
一方、図4(b)は、図3に示す第1の実施の形態における蛍光体層33を設けた発光装置30の配光特性である。発光装置30の放射強度のエンベロープは、放射角θが−22.5°〜22.5°の範囲において、90°と−90°を結ぶ線にほぼ平行になっている。この配光特性は、図2(d)に示した配光特性に近い。なお、図4(b)の配光特性は、図3(b)のX−X′線と図3(a)のB−B′線を含む面での特性であるが、X−X′線を含む他の面でも同様の特性を示す。
【0036】
次に、第1の実施の形態における発光装置30が、図4(b)に示す配光特性を生じる理由について説明する。
第1の実施の形態では、放射角θが大きいほど、発光装置30の放射強度が大きいことが求められる。
蛍光体層33は、LED32が発光するBの光をYの光に変換するとともに、レンズとしても働く。そこで、蛍光体層33の形状を変えると、蛍光体層33から出射する光の配光を制御できることになる。
【0037】
さて、放射角θが大きいほど、発光装置30の放射強度を大きくする方法として、蛍光体層33の上面を凹レンズとすることが考えられる。また、断面において2つのプリズムを並べたV字状になるように、蛍光体層33の上面を円錐状にすることも考えられる。
図5は、蛍光体層33の表面形状が発光装置30の配光特性に与える影響を説明するための光線追跡結果を示す図である。ここでは、蛍光体層33の表面形状の影響を明らかにするため、蛍光体層33の代わりに、透明樹脂層を用いた。
【0038】
図5(a)は、LED32に対する上面をもっとも薄い凹レンズ状とした透明樹脂層34における光線追跡の結果を示す図である。
LED搭載基板31上にLED32があり、さらにLED搭載基板31上にLED32を覆うように凹レンズ状の透明樹脂層34がある。
光線追跡の結果を見ると、この構造においては、LED32から出射する光線は、LED32の法線方向にやや出過ぎとなっている。
【0039】
一方、図5(b)は、LED32に対する上面をもっとも薄い円錐状とした透明樹脂層35の場合の光線追跡の結果を示す図である。
LED搭載基板31上にLED32があり、さらにLED搭載基板31上にLED32を覆うように表面を円錐状とした透明樹脂層35がある。
光線追跡の結果を見ると、この構造においては、LED32から出射する光線は、LED32の法線方向に少なく、LED32の側方に出過ぎとなっている。
【0040】
以上のことから、第1の実施の形態に示したように、蛍光体層33の表面33aをLED32に対向する部分を曲面とし、その曲面の周囲の部分をLED32の法線に向かって傾斜する円錐状とする構成が好ましいことになる。
なお、図5に示した光線追跡の結果には、蛍光体層33中の蛍光物質によって光が散乱される効果や、蛍光体が発光する光の効果は考慮されていない。したがって、図4(b)に示した配光特性は、これらの効果が加わって得られたものであって、蛍光体層33のレンズ効果のみによるものではない。
【0041】
(第2の実施の形態)
図6は第2の実施の形態における発光装置30の構造と配光特性を説明する図である。図6(a)は、発光装置30の平面図、図6(b)は、図6(a)のC−C′線での断面図である。図6(c)は、発光装置30のシミュレーションにより求めた配光特性である。
第2の実施の形態の発光装置30は、配線が形成された例えばガラスエポキシのLED搭載基板51と、LED搭載基板51上に導電性接着剤または非導電性接着剤で固着された発光素子、例えばBに発光するLED32と、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光体層33と、蛍光体層33を覆うように形成された透明樹脂層52とを備える。
LED32および蛍光体層33は、第1の実施の形態における発光装置30でのものと同じである。
【0042】
透明樹脂層52は、例えばゴム系の樹脂であって、蛍光体層33に用いられた樹脂と同じである。そして、透明樹脂層52は、LED搭載基板51の直径d2と同じ直径d2の円柱状で、その表面52aは平坦である。そして、透明樹脂層52は、LED搭載基板51の表面51aから厚さt1である。例えば、d2=4.465mm、t1=1.920mmである。
第2の実施の形態における発光装置30は、第1の実施の形態における発光装置30を、円柱状の透明樹脂層52で覆った構造に等しい。
【0043】
図6(c)に示すように、発光装置30の放射強度のエンベロープは、放射角θが−45°から45°の範囲で、−90°と90°を結ぶ線に平行になっている。この特性は、図4(b)に示した特性より、放射角の範囲が広がっている。
なお、図6(c)の配光特性は、図6(b)のX−X′線と図6(a)のC−C′線を含む面での特性であるが、X−X′線を含む他の面でも同様の特性を示す。
【0044】
(第3の実施の形態)
図7は第3の実施の形態における発光装置30の構造と配光特性を説明する図である。図7(a)は、発光装置30の平面図、図7(b)は、図7(a)のD−D′線での断面図である。図7(c)は、発光装置30のシミュレーションにより求めた、図7(a)のD−D′線およびE−E′線の方向における配光特性である。
【0045】
第3の実施の形態における発光装置30は、配線が形成された例えばガラスエポキシのLED搭載基板61と、LED搭載基板61上に導電性接着剤または非導電性接着剤で固着された発光素子、例えばBに発光するLED32と、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光体層33と、蛍光体層33を覆うように形成された透明樹脂層62とを備える。
LED搭載基板61は、辺の長さがd3とd4である矩形の板状である。LED32および蛍光体層33は、第1の実施の形態における発光装置30でのものと同じである。そして、透明樹脂層62は、例えばゴム系の樹脂であって、蛍光体層33に用いられた樹脂と同じである。そして、透明樹脂層62は、LED搭載基板61と同じく、辺の長さがd3とd4で、LED搭載基板61の表面61aから厚さt2で、表面62aが平坦な矩形の角柱状である。例えば、d3=d4=4.465mm、t2=2.080mmである。
第3の実施の形態における発光装置30は、第1の実施の形態における発光装置30を、角柱状の透明樹脂層62で覆った構造に等しい。
【0046】
図7(c)に示すように、発光装置30の放射強度のエンベロープは、放射角θが−45°〜45°の範囲において、D−D′線およびE−E′線の両方向とも、−90°と90°を結ぶ線に平行になっている。このことは、拡散板12の単位面積あたりに入射する放射束が、矩形の範囲において一定となっていることを示している。このため、照明装置10において、それぞれの発光装置30が出射する光が重ならないように、いわばタイルを敷き詰めるように、発光装置30を配列すればよい。このため、第3の実施の形態の発光装置30を用いれば、もっとも効率よく配列することができる。
【0047】
なお、蛍光体層33の表面33aとLED32の対向する部分は、例として曲率Rの球面としたが、LED32に向かって落ち込んだ曲面であってよい。
そして、曲面の周りの円錐状の傾斜面のなす中心角φは、例として136°としたが、30°以上で180°未満であればよい。好ましくは、130°から140°である。なお、中心角φがこれらの値より小さいと、放射角θが小さい範囲で光が強くなる。一方、中心角φがこれらの値より大きいと、放射角θが大きい範囲で光が強くなる。
【0048】
さらに、蛍光物質を分散させた蛍光体層33の樹脂は、ゴム系の樹脂に限ることなく、レジン系の樹脂、またはシリコーン材料などを用いうる。
【0049】
また、蛍光体層33を覆うように形成された透明樹脂層62は、円柱状または角柱状としたが、側面が窪んだ柱状であってもよい。すなわち、柱状の透明樹脂層62の側面は、光の配光特性に応じて、変形して用いてよい。
【実施例】
【0050】
では次に、本発明の実施例について説明を行うが、本発明は実施例に限定されない。
本発明者は、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態について、それぞれ発光装置30の製造を行った。そして、これらの発光装置30および比較例の発光装置30の配光特性、発光効率、取り出し効率について検討を行った。
図8は、実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置30の構成と、評価結果との関係を説明する図である。
【0051】
実施例1ないし3のそれぞれの発光装置30は、第1の実施の形態において説明した構成を有している。実施例4の発光装置30は、第2の実施の形態に対応して円柱状の透明樹脂層52を用いた構成を有している。実施例5の発光装置30は、第3の実施の形態に対応して角柱状の透明樹脂層62を用いた構成を有している。
そして、実施例1ないし5のそれぞれの発光装置30の蛍光体層33は、以下で説明する事項を除いて、第1の実施の形態で例示した形状をなしている。
さらに、実施例4の発光装置30の透明樹脂層52は、第2の実施の形態で例示した形状をなしている。同様に、実施例5の発光装置30の透明樹脂層62は、第3の実施の形態で例示した形状をなしている。
【0052】
一方、比較例の発光装置30は、次に説明するように、凹部71a(後述する図9参照)を有する白色樹脂ケース70(後述する図9参照)の凹部71a内側にLED32を取り付けるとともに、LED32を覆うように、凹部71aに蛍光体層75(後述する図9参照)を形成して構成されている。
【0053】
ここで、比較例の発光装置30を説明する。
図9は比較例の発光装置30の構造を説明する図である。図9(a)は発光装置30の上面図、図9(b)は、図9(a)のF−F′線での断面図である。比較例の発光装置30は、LED32が白色樹脂ケース70に実装されている。
白色樹脂ケース70は、上部側に拡開するように立ち上がる壁面81を有する凹部71aが形成された樹脂容器71と、樹脂容器71と一体化したリードフレームからなるアノード用リード部72およびカソード用リード部73と、凹部71aを覆うように設けられた蛍光体層75とを備えている。そして、白色樹脂ケース70の凹部71aの円形状を有する底面80にLED32が固定されている。蛍光体層75は、LED32も覆うように設けられている。
【0054】
白色樹脂ケース70の樹脂容器71は、アノード用リード部72およびカソード用リード部73を含む金属リード部に、白色顔料が含有された熱可塑性樹脂を射出成型することによって形成されている。
LED32は、底面80に露出したカソード用リード部73上に、図示しないボンディングワイヤを介して、p電極がアノード用リード部72に、n電極がカソード用リード部73に、それぞれ接続されている。アノード用リード部72およびカソード用リード部73は、それぞれ樹脂容器71の裏側に折り曲げて配設されている。
比較例の発光装置30は、図9(a)における横d5が3.5mm、縦d6が2.8mmである。
【0055】
アノード用リード部72を正極とし、カソード用リード部73を負極としてLED32に電流を流すことで、LED32はBの光を出射する。LED32から出射されたBの光により、蛍光体層75がYの光を出射する。そして、比較例の発光装置30は、実施例1〜5と同様に、LED32の出射するBの光と、蛍光体層75がBの光により出射するYの光とが混色して白色の光を出射する。
【0056】
さて、図8に戻って、図8に示す構成の項目について説明する。
「LEDチップ数」は、発光装置30(パッケージ)当たりに実装したLEDチップの数を示している。いわゆるパッケージ当たりのLEDチップの数をいう。チップ数が3とは、発光装置30のLED32がLEDチップ3個で構成されていること、すなわち発光装置30は3 in 1パッケージであることを示している。
実施例1〜5のそれぞれの発光装置30のLED32は3個のLEDチップで構成されている。比較例の発光装置30のLED32は1個のLEDチップで構成されている。なお、いずれにおいても、LED32は、448nm付近にピークを有するBの光を出射する。
次の「LED放射束」は、LED32の放射束をmW単位で示している。
そして、「蛍光体(含有率)」は、LED32の出射するBの光によりYに発光する蛍光体層33(実施例1〜5)および蛍光体層75(比較例)に用いられた蛍光体の種類と含有率とを示している。ここでは、Y450C(INTEMATIX社製)およびEY425No.2(INTEMATIX社製)の2種類の蛍光体を用いた。含有率は8質量%〜12質量%の範囲である。
【0057】
「透明樹脂」は、発光装置30の透明樹脂層52または透明樹脂層62の有無を示している。前述したように、実施例4では第2の実施の形態に対応して円柱状の透明樹脂層52を用いている。また、実施例5では第3の実施の形態に対応して角柱状の透明樹脂層62を用いている。他の実施例1〜3および比較例では透明樹脂層52および透明樹脂層62のいずれも用いていない。
【0058】
次に、評価結果を説明する。
図8では、実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置30の評価結果として、放射強度がピークの1/2以上である放射角θの範囲である半値角と、発光効率およびCIE1931表色系における色度座標と、取り出し効率とを示している。
ここでいう取り出し効率とは、実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置30からの放射束を、それぞれのLED放射束で除した値であり、LEDチップ内の損失は考えない。
以下順に、実施例1〜5および比較例におけるそれぞれの発光装置30における放射強度と放射角θとの関係を説明しつつ、図8に示した評価結果を説明する。
【0059】
図10は、実施例1および比較例の各発光装置30における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。図10(a)は、放射強度と放射角θとの関係を、放射角θを横軸、放射強度を縦軸として示したものである。一方、図10(b)は、放射強度と放射角θとの関係を極座標で表したもの(極座標表記)である。それぞれ、放射強度は相対値で示している。
【0060】
まず、比較例から説明する。比較例の発光装置30は、放射束が14.26mWのLED32(1個のLEDチップからなる。)を備え、蛍光体層75の蛍光体としてY450Cを12質量%含んでいる。なお、蛍光体層75の蛍光体を除いた残りはシリコーンゴム系の樹脂であるSCR−1011(信越化学工業株式会社製)である。
図10(a)では、比較例の発光装置30の配向特性として、図9で示したF−F′線での断面における配光特性を示す。比較例の発光装置30では、放射強度は、放射角θが0°から90°または−90°に近づくにつれ、急激に減少する。そして、図10(b)から分かるように、極座標表記では、放射強度は縦長のエンベロープを示す。
図8に示す半値角は、図10(a)の比較例に示すように、放射強度がピーク値に対して1/2になる放射角θ(0°を挟んで左右の放射角θ)の範囲(差)である。比較例の発光装置30の半値角は110°であった。
また、比較例の発光装置30では、発光効率は88lm/W、色度座標はx=0.34、y=0.37であった。また、取り出し効率は82.1%であった。
【0061】
一方、実施例1の発光装置30は、放射束が19mWのLED32(3個のLEDチップからなる。)を備え、蛍光体層33の蛍光体としてY450Cを8質量%含んでいる。なお、蛍光体層33の蛍光体を除いた残りは、シリコーンゴム系の樹脂であるKER−2500(信越化学工業株式会社製)である。
図10(a)では、実施例1の発光装置30の配向特性として、図3で示したB−B′線での断面における配光特性(0°面で示す。)と、B−B′線と直交する線での断面における配向特性(90°面で示す。)とを示している。そして、実施例1の発光装置30でも、放射強度は、放射角θが0°から90°または−90°に近づくにつれ、減少する。しかし、放射角θが90°または−90°であっても0にならない。すなわち、実施例1の発光装置30では、発光装置30の横方向(放射角±90°)にも光が出射することを示している。そして、減少の割合は、比較例の発光装置30に比べて、緩やかである。実施例1の発光装置30の半値角は148°であって、比較例の発光装置30の半値角110°に比べ約40°大きい。
また、図10(b)に示すように、極座標表記において、実施例1の発光装置30の放射強度のエンベロープは横に広い楕円になっている。そして、図10(b)において、実施例1の発光装置30の放射強度のエンベロープは、比較例の発光装置30の放射強度のエンベロープに比べ、左右方向に広くなっている。
【0062】
以上説明したように、実施例1の発光装置30は、比較例の発光装置30に比べ、光が横方向(放射角±90°)まで広がることを示している。
そして、図10(b)に示す実施例1の発光装置30の放射強度のエンベロープは、第1の実施の形態においてシミュレーションで求めた図4(b)の放射強度のエンベロープに近い。よって、実施例1の発光装置30の示す特性から、第1の実施例の発光装置30が実現できていることを示している。
【0063】
なお、図10(a)に示す実施例1の発光装置30において、0°面での配光特性と90°面での配光特性とは放射角θに対してずれているように見える。これは、配向特性の測定において、発光装置30の設置誤差によるものである。図3(a)に示した第1の実施の形態の発光装置30の構成からも分かるように、B−B′線での断面とB−B′線と直交する線での断面とは構造上同等であるので、0°で示す配光特性と90°で示す配光特性とはほとんど差がない。これは、極座標表記の図10(b)においても同様である。
【0064】
実施例2および3の発光装置30は、実施例1の発光装置30と同様に、第1の実施の形態における発光装置30である。実施例2の発光装置30は、放射束が19mWのLED32(3個のLEDチップからなる。)を備え、蛍光体層33の蛍光体としてY450Cを10質量%含んでいる。一方、実施例3の発光装置30は、放射束が21mWのLED32(3個のLEDチップからなる。)を備え、蛍光体層33の蛍光体としてEY4254No.2を10質量%含んでいる。なお、いずれも、蛍光体層33の蛍光体を除いた残りは、シリコーンゴム系の樹脂であるKER−2500(信越化学工業株式会社製)である。
これらの実施例2および3の発光装置30は、図示しないが、実施例1の発光装置30と同様の配向特性を示す。そして、実施例2の発光装置30は、半値角が148°、発光効率は107lm/W(色度座標x=y=約0.3)であった。また、実施例3の発光装置30は、半値角が155°、発光効率が112lm/W、取り出し効率が70.7%であった。
【0065】
すなわち、実施例2および3の発光装置30は、実施例1の発光装置30と同様に、比較例の発光装置30に比べ、半値角が大きく、広い放射角θの範囲において光の出射が得られることが分かる。なお、実施例1および2と実施例3とで、半値角が148°と155°と異なっているが、これは用いた蛍光体の種類、発光装置30の形状のばらつきなどによるものと考えられる。
一方、実施例3の発光装置30の取り出し効率が70.7%と、比較例の発光装置30の取り出し効率82.1%に比べ、小さくなっている。これは、図3に示したように、蛍光体層33の側面が円筒状になっているため、円筒の側面に全反射角で入射した光が円筒の側面で反射を繰り返し、閉じ込められて、外部に取り出しにくいことによると考えられる。一方、比較例の発光装置30では、白色樹脂ケース70の内側は上部側に拡開するように立ち上がる壁面81で構成されているため、光が閉じ込められにくいと考えられる。
【0066】
図11は、実施例4の発光装置30における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。図11(a)は、放射強度と放射角θとの関係を、放射角θを横軸、放射強度を縦軸として示したものである。一方、図11(b)は、放射強度と放射角θとの関係を極座標で表したもの(極座標表記)である。それぞれ、放射強度は相対値で示している。なお、図11(a)では、図10において説明した比較例の配向特性を合わせて示している。
【0067】
実施例4の発光装置30は、第2の実施の形態の発光装置30であって、円筒状の透明樹脂層52を備えている。そして、LED32のLEDチップ数、LED32のLED放射束、蛍光体層33に用いた蛍光体(EY425No.2)およびその含有率は、実施例3の発光装置30と同様である。
そして、透明樹脂層52は、蛍光体層33の蛍光体を除いた残りのシリコーンゴム系の樹脂と同じくKER−2500(信越化学工業株式会社製)である。
【0068】
図11(a)および(b)では、図6(a)のC−C′線での断面における配光特性(0°面で示す。)とC−C′線と直交する線での断面における配向特性(90°面で示す。)とを示している。実施例4の発光装置30の放射強度は、放射角θが±20°付近で最大になり、0°付近でやや低下している。そして、放射強度は放射角θが20°から90°または−20°から−90°に近づくにつれ減少するが、その減少の割合は実施例1の発光装置30の場合より緩やかである。そして、実施例4の発光装置30の半値幅は159°と、実施例1から3の場合(148°および155°)に比べ大きくなっている。
【0069】
図11(b)の極座標表記における放射強度のエンベロープは、図10(b)に示した実施例1の場合より、さらに左右方向に広がっている。そして、図11(b)の放射強度のエンベロープは、第2の実施の形態においてシミュレーションにより求めた図6(c)の放射強度のエンベロープに近い形状となっている。なお、放射角θが±45°方向で放射強度が小さくなっているのは、実施例4の発光装置30が、図6(b)に示した円筒状の透明樹脂層52の側面と上面との境界で急峻な形状(直角)にならず、角が取れて丸くなった形状になったためと考えられる。
よって、実施例4の発光装置30の示す特性は、第2の実施例の発光装置30が実現できていることを示している。
【0070】
なお、0°面での配光特性と90°面での配光特性とは放射角θに対してずれているように見られる。これは、配向特性の測定における発光装置30の設置誤差によるものである。図6(a)に示した第2の実施の形態の発光装置30の構成からも分かるように、C−C′線での断面とC−C′線と直交する線での断面とは構造上同等であるので、0°面での配光特性と90°での配光特性とはほとんど差がない。これは、極座標で表した図11(b)においても同様である。
【0071】
実施例4の発光装置30は、発光効率が112lm/Wである。しかし、取り出し効率は68.4%と、実施例3および比較例にくらべ小さい。取り出し効率が小さいのは、図6(a)および(b)に示したように、透明樹脂層52が円筒状になっているため、円筒の側面に全反射角度で入射した光が円筒の側面で反射を繰り返し、閉じ込められて、外部に取り出しにくいことによると考えられる。
【0072】
図12は、実施例5の発光装置30における放射強度と放射角θとの関係を説明する図である。図12(a)は、放射強度と放射角θとの関係を、放射角θを横軸、放射強度を縦軸として示したものである。一方、図12(b)は、放射強度と放射角θとの関係を極座標で表したもの(極座標表記)である。それぞれ、放射強度は相対値で示している。なお、図12(a)には、図10において説明した比較例の配向特性を合わせて示している。
【0073】
実施例5の発光装置30は、第3の実施の形態の発光装置30であって、上面が正方形の角柱状の透明樹脂層62を備えている。そして、LED32のLEDチップ数、LED32のLED放射束、蛍光体層33に用いた蛍光体(EY425No.2)およびその含有率は、実施例3の発光装置30と同様である。
そして、透明樹脂層62は、蛍光体層33の蛍光体を除いた残りのシリコーンゴム系の樹脂と同じくKER−2500(信越化学工業株式会社製)である。
【0074】
図12(a)および(b)では、図7(a)のD−D′線での断面における配光特性(0°面で示す。)と、D−D′線と直交する線での断面における配向特性(90°面で示す。)と、D−D′線に対して40°傾いた線での断面における配向特性(40°面で示す。)とを示している。D−D′線に対して40°傾いた線は、図7(a)におけるD−D′線に対して45°傾いたE−E′線に近い。
図12(a)に示すように、0°面での配向特性および90°面での配向特性において、共に放射強度は、放射角θが±30°付近で最大で、放射角θが0°付近で放射強度がやや低下している。そして、放射角θが30°から90°または−30°から−90°に近づくにつれ、徐々に減少している。そして、0°面での配向特性と90°面での配向特性とはほぼ同じである。図7(a)から分かるように、角柱状の透明樹脂層62の上面は正方形であるので、D−D′線での断面と、それに直交する線での断面とは構造上同等であるためである。
【0075】
一方、40°面での配向特性において、0°面および90°面での配向特性より、放射角θ(θの絶対値)のより大きい範囲まで放射強度が大きく維持されている。すなわち、40°面での配向特性は、0°面での配向特性および90°面での配向特性より半値幅が広くなっている。図8に示すように、0°面での半値幅は157°であるが、40°面での半値幅は162°となっている。
このことは、図12(b)に示す極座標表記においても同様であって、40°面での放射強度のエンベロープは、0°面および90°面でのそれぞれの放射強度のエンベロープより左右方向により広がっている。
【0076】
そして、図12(b)に示す0°面、90°面、40°面のそれぞれの放射強度のエンベロープは、第3の実施の形態においてシミュレーションで求めた図7(c)のD−D′およびE−E′で示す放射強度のエンベロープに近い形状となっている。なお、40°面で放射強度のエンベロープの左右方向の広がりと0°面または90°面の放射強度のエンベロープの左右方向の広がりとの差が、図7(c)のD−D′で示す放射強度のエンベロープの左右方向の広がりとE−E′で示す放射強度のエンベロープの左右方向の広がりの差より小さいのは、E−E′がD−D′に対して45°であるのに対し、40°面は40°と浅いことによると考えられる。
また、図12(b)に示す0°面、90°面、40°面の放射強度のエンベロープにおいて、放射角θが±45°付近で放射強度が小さくなっているのは、角柱状の透明樹脂層62の上面と側面との境界が急峻な形状(直角)とならず、角が取れて丸くなった形状になったためと考えられる。
【0077】
さらに、実施例5の発光装置30は、色度座標x=y=約0.3、発光効率136lm/Wである。そして、取り出し効率は96.1%と、実施例3、4および比較例にくらべ大きい。これは、透明樹脂層62を角柱状としたことにより、角柱の側面に全反射角で入射した光であっても、他の側面から取り出すことができて、光が透明樹脂層62中に閉じ込められにくいことによると考えられる。
よって、角柱状の透明樹脂層62を設けた発光装置30は、半値角が大きく、且つ取り出し効率が高いことから最も好ましい。
【符号の説明】
【0078】
10…照明装置、11…回路基板、12…拡散板、20…LCDパネル、30…発光装置、31、51、61…LED搭載基板、32…LED、33、75…蛍光体層、34、35、52、62…透明樹脂層、70…白色樹脂ケース、71…樹脂容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に固着された発光素子と、
前記基板上に前記発光素子を覆って形成され、当該発光素子と反対側の面が、当該発光素子に向かって落ち込んだ曲面を備え、蛍光物質を含有する蛍光体層と
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記蛍光体層の前記曲面の落ち込んだ底が前記発光素子と対向するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記蛍光体層の前記発光素子と反対側の面が、
前記曲面と、
前記曲面を取り囲んで、前記発光素子に向かって落ち込んだ傾斜面と
を備えることを特徴とする請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記基板上に、前記蛍光体層を覆うように形成された透明樹脂層を
さらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記透明樹脂層の外形が柱状に成形されていることを特徴とする請求項4記載の発光装置。
【請求項6】
前記透明樹脂層の外形が角柱状に成形されていることを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項7】
回路基板と、
前記回路基板に接続されるように配列され、光を出射する複数の発光装置と、
前記発光装置に対向して設けられ、当該発光装置から入射した光を拡散して、当該発光装置と反対側の面から出射する拡散板と、
を備え、
前記発光装置は、
基板と、
前記基板上に固着された発光素子と、
前記基板上に前記発光素子を覆って形成され、当該発光素子と反対側の面が、当該発光素子に向かって落ち込んだ曲面を備え、蛍光物資を含有する蛍光体層と
を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に固着された発光素子と、
前記基板上に前記発光素子を覆って形成され、当該発光素子と反対側の面が、当該発光素子に向かって落ち込んだ曲面を備え、蛍光物質を含有する蛍光体層と
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記蛍光体層の前記曲面の落ち込んだ底が前記発光素子と対向するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記蛍光体層の前記発光素子と反対側の面が、
前記曲面と、
前記曲面を取り囲んで、前記発光素子に向かって落ち込んだ傾斜面と
を備えることを特徴とする請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記基板上に、前記蛍光体層を覆うように形成された透明樹脂層を
さらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記透明樹脂層の外形が柱状に成形されていることを特徴とする請求項4記載の発光装置。
【請求項6】
前記透明樹脂層の外形が角柱状に成形されていることを特徴とする請求項5記載の発光装置。
【請求項7】
回路基板と、
前記回路基板に接続されるように配列され、光を出射する複数の発光装置と、
前記発光装置に対向して設けられ、当該発光装置から入射した光を拡散して、当該発光装置と反対側の面から出射する拡散板と、
を備え、
前記発光装置は、
基板と、
前記基板上に固着された発光素子と、
前記基板上に前記発光素子を覆って形成され、当該発光素子と反対側の面が、当該発光素子に向かって落ち込んだ曲面を備え、蛍光物資を含有する蛍光体層と
を備えることを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−183061(P2010−183061A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259390(P2009−259390)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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