説明

発光装置及び発光装置の作製方法

【課題】発光取り出し面を見る角度に依存した発光スペクトルの変化が低減された発光装置を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決するための構成の一つは、基板上に形成された第1の絶縁層を有し、前記第1の絶縁層には前記基板に達する開口部が形成されており、前記開口部を覆って第2の絶縁層が形成されており、前記第2の絶縁層上には前記開口部の少なくとも一部に重なって発光素子が設けられた構造の発光装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス型の発光装置に関し、特に発光を取り出す部分の構造
に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子(発光素子)からの発光を利用した発光装置は、高視野
角、低消費電力の表示用装置として注目されている装置である。
【0003】
主に表示用として利用されている発光装置の駆動方法には、アクティブマトリクス型と
、パッシブマトリクス型とがある。アクティブマトリクス型の駆動方式の発光装置は、発
光素子ごとに発光・非発光等を制御できる。そのため、パッシブマトリクス型の発光装置
よりも低消費電力で駆動でき、携帯電話等の小型電化製品の表示部としてのみならず、大
型のテレビ受像機等の表示部として実装するのにも適している。
【0004】
また、アクティブマトリクス型の発光装置においては、発光素子ごとに、それぞれの発
光素子の駆動を制御するための回路が設けられている。回路と発光素子とは、発光の外部
への取り出しが当該回路によって妨げられないように、基板上に配置されている。また、
発光素子と重畳する部分には透光性を有する絶縁層が積層して設けられており、発光は当
該絶縁層中を通って外部に射出する。これらの絶縁層は、回路の構成要素であるトランジ
スタや容量素子等の回路素子、若しくは配線を形成するために設けられたものである。
【0005】
ところで、積層された絶縁膜中を発光が通るとき、それぞれの絶縁層の屈折率の違いに
起因して、発光が多重干渉することがある。その結果、発光取り出し面を見る角度に依存
して発光スペクトルが変わり、発光装置において表示した画像の視認性が悪くなるという
問題が生じる。
【0006】
また、各層の屈折率の違いに起因して生じる画像の視認性の低下は、パッシブマトリク
ス型の発光装置においても生じる。例えば特許文献1では、発光素子を構成する各層の屈
折率の違いに起因して外光及び発光が界面で反射し、視認性が悪くなるといった問題を提
起し、それを解決できるように素子構造を工夫した発光素子を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−211458
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、発光取り出し面を見る角度に依存した発光スペクトルの変化が低減された発
光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為の本発明の構成の一つは、基板上に形成された第1の絶縁層を有
し、前記第1の絶縁層には前記基板に達する開口部が形成されており、前記開口部を覆っ
て第2の絶縁層が形成されており、前記第2の絶縁層上には前記開口部の少なくとも一部
に重なって発光素子が設けられている事を特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の構成は、基板と、前記基板上に形成された第1の絶縁層と前記絶縁
層上に形成された半導体層と、記半導体層を覆って形成されたゲート絶縁層と、前記半導
体層及び前記ゲート絶縁層上に形成されたゲート絶縁層とを有し、前記ゲート絶縁層には
前記第1の絶縁層を貫通し、前記基板まで達する開口部が設けられており、前記ゲート絶
縁層、前記ゲート電極及び前記開口部を覆って第2の絶縁層が形成されており、前記第2
の絶縁層上には発光前記開口部の少なくとも一部に重なって発光素子が設けられている事
を特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の構成は上記構成において、前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層
は単層構造であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の構成は上記構成において、前記第1の絶縁層又は/及び前記第2の
絶縁層は多層構造であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明における他の構成は、上記構成において、前記発光素子は第1の電極と発
光層と第2の電極を有しており、前記第1の電極が前記第2の電極より前記基板側に形成
されており、前記第2の絶縁層は前記第1の電極の屈折率と前記基板の屈折率の間の屈折
率を有していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明における他の構成は、上記構成において、前記発光素子は第1の電極と発
光層と第2の電極を有しており、前記第1の電極が前記第2の電極より前記基板側に形成
されており、前記開口部における前記第1の電極から前記基板までの間に存在するそれぞ
れの層が有する屈折率は前記基板側に近いほど小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、発光取り出し面を見る角度に依存した発光スペクトルの変化が低減さ
れた発光装置を得ることができる。
【0016】
また、発光取り出し面を見る角度に依存した発光スペクトルの変化が低減されることに
よって、視認性に優れた画像を提供できる表示装置等を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の発光装置の構成を示す断面図。
【図2】本発明の発光装置の構成を示す上面図。
【図3】本発明の発光装置の構成を示す断面図。
【図4】本発明の発光装置の構成を示す断面図。
【図5】本発明の発光装置の構成を示す断面図。
【図6】本発明の発光装置の構成を示す断面図。
【図7】本発明の発光装置の構成を示す断面図。
【図8】本発明の発光装置の構成を示す断面図。
【図9】本発明の発光装置の構成を示す断面図。
【図10】従来の発光装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発 明は多
くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から 逸脱する
ことなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に 理解される
。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の発光装置について、図1を参照しながら説明する。基板11上には、絶縁層1
2aおよび絶縁層12bが設けられている。絶縁層12bの上には、半導体層14とゲー
ト絶縁膜15とゲート電極16とを有するトランジスタ17が設けられている。また、ト
ランジスタ17は絶縁層21に覆われている。
【0020】
ここで基板11はガラスや石英などの透光性を有するものを用いる。また、プラスチッ
クなどの仮称性を有するものを基板11として用いても良い。このほか、透光性を有し、
トランジスタ17や発光素子24を支える為の支持体としての機能を有するものであれば
基板11として用いることができる。
【0021】
また、本形態において、絶縁層12a、12bは、基板11から拡散する不純物がトラ
ンジスタ17に混入するのを阻止する為に設けられており、それぞれ別の物質からなる。
なお、絶縁層12a、12bは、酸化珪素や窒化珪素、又は酸素を含む窒化珪素などから
なる層であることが望ましい。ただし、この他の材料からなる層であっても良い。なお、
本形態では絶縁層12は12aと12bの多層で形成されているが単層でもかまわない。
また、基板11からの不純物の混入が十分に抑制されている場合は、絶縁膜12は特に設
けなくとも良い。
【0022】
また、トランジスタ17と絶縁層21との間に図3に示したようにトランジスタ17を
覆って絶縁層31を設けても良い。絶縁層31は珪素を含む絶縁材料により形成すると良
い。絶縁層31を形成後、加熱を行うことで半導体層14のダングリングボンドを絶縁層
31に含まれる水素によって終端することができる。
【0023】
発光素子24は、第1の電極20と第2の電極23との間に発光層22を挟んでなって
いる。第1の電極20と第2の電極23はいずれか一方が陽極、他方が陰極として機能す
る。また、第1の電極20はインジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等の透光
性を有する導電物からなることが望ましい。なお、ITO以外に、酸化珪素を含有するI
TOや、酸化インジウムに2〜20%の酸化亜鉛を含有したIZO(Indium Zinc Oxide
)、もしくは酸化亜鉛などを用いても良い。
【0024】
また、発光層22は、発光物質を含み、単層、または多層で構成される。なお、発光層
22は有機物もしくは無機物のいずれからなるものであっても良いし、または無機物と有
機物の両方を含むものでも良い。
【0025】
トランジスタ17と発光素子24とは導電体からなる接続部19aを介して電気的に接
続している。なお、接続部19aは絶縁層21上に設けられており、さらに絶縁層21を
貫通するコンタクトホールを介して半導体層14に至る。また、接続部19aの一部又は
全体が第1の電極20と接している。
【0026】
絶縁層12a、12b及びゲート絶縁膜15には基板11の一部が露出するように開口
部25が設けられている。そして、開口部25は絶縁膜21により覆われている。絶縁膜
21は絶縁性であり、且つ平坦化効果の高い材料により形成し、絶縁膜21を形成するこ
とで開口部25による段差を緩和し、平坦化する。絶縁膜21の材料としてはケイ素と酸
素との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む、または置換基にフッ
素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有する材料、いわゆるシ
ロキサンやアクリル、ポリイミドの塗布膜を用いると良い。また、絶縁膜21は本実施の
形態のように単層であるのが良いが、多層とした場合は発光層から発した光が取り出され
る方向に向かって積層されている膜の屈折率が小さくなってゆく構造であることが望まし
い。この際、光の取り出される場所において、基板11に接している層の屈折率は基板1
1より大きいことが望まれる。
【0027】
発光素子24は絶縁膜21上に設けられており、さらに発光素子24と開口部25は一
部、もしくは全部が重なって配置されている。このような素子構成であれば、発光素子2
4から発した光が外に出るまでの間に通過する層の数が従来(図10参照)より減るため
、薄膜間の多重干渉による影響を小さくすることが可能となり、発光取り出し面を見る角
度に依存した発光スペクトルの変化が低減される。また、絶縁層15の材料に第2の電極
23と基板11の間の屈折率を有する材料を用いることが望ましい。
【0028】
なお、トランジスタ17の構造については特に限定されない。シングルゲート型でも良
いし、マルチゲート型でも良い。また、シングルドレイン構造でもよいし、LDD(Ligh
tly Doped Drain)構造、もしくはLDD領域とゲート電極とがオーバーラップしたよう
な構造でも良い。
【0029】
図2は、本発明の発光装置の上面図である。なお、図2において、破線A−Bで表され
る部分の一部の断面が図1の断面図で表されている。従って、図1として上記で説明して
きたものと同一部分については同じ記号を付してある。つまり、14は半導体層であり、
16はゲート電極であり、19bは配線であり、19aは接続部である。また、20は第
1の電極であり、22は発光層であり、25は開口部が存在する部分を示している。また
、図1には記載されていないが、19c、29a、29bは配線であり、27、28はト
ランジスタである。
【0030】
また、図4に示したように、絶縁層21の上部に絶縁層21とは異なる材料で形成され
た絶縁層18を形成しても良い。絶縁層18は接続部19aをエッチングする際、絶縁層
21までエッチングされてしまう事を防ぐ役割や、絶縁層21から発光素子24に悪影響
を及ぼす水などが侵入するのを防ぐ役割があり、窒化珪素膜などの材料からなる。もちろ
んこれらのことが気にならないのだとしたら設ける必要はない。また、絶縁層18を形成
することで一層薄膜が増えてしまうが、絶縁層18を第1の電極20と絶縁層21の屈折
率の間の屈折率を有する様な材料で形成すれば、反射による多重干渉の影響を多少和らげ
ることが可能である。
【0031】
また、絶縁層21からの水などの発光素子24への水等の侵入が心配されなければ、図
5のように発光素子24が形成される部分において絶縁層18を除去してしまっても良い
。これにより発光する部分においては層の数が図1と同じになるため、図4の構成よりは
多重干渉の影響を抑えつつ、接続部19aのエッチングの際に絶縁層21もエッチングさ
れてしまう事を防ぐことができる。
【0032】
図6に示した構造のように、開口部25の形成をガラス基板11が露出するまで行わず
、絶縁層32のように残した構造も考えられる。この場合、発光層22から光が取り出さ
れる迄の層の数が減っている為、図1や図5ほどではないが、従来の構成(図10)より
多重干渉の影響を抑えることができ、光の透過率も向上させることができる。また、発光
層から発した光が取り出される方向に向かって積層されている膜の屈折率が小さくなって
ゆく構造であることが望ましいため、絶縁層32の屈折率は基板11と絶縁層21の間の
屈折率を有していることが望ましい。なお、本構成では基板11が絶縁層32により覆わ
れているため、基板11からの不純物の侵入が危惧される場合でも用いることが可能な構
成である。
【0033】
以上に示した本発明の発光装置は、発光素子からの発光を外部に取り出す際に、発光が
通過する総数が低減されている。従って、層と層との界面において、発光素子からの発光
が反射する回数または反射量が軽減され、結果として、反射光に起因した多重干渉が抑制
される。
【0034】
このように本発明の発光装置は、多重干渉を抑制できるような構造を有するものであり
、発光取り出し面を見る角度に依存した発光スペクトルの変化が低減された、視認性が良
好な発光装置である。
【0035】
また、本発明と同様な効果を得る為に、絶縁層21を下層の絶縁層(絶縁層12a、1
2b、15、31など)が露出するまで、あるいは、基板11が露出するまで開口部を形
成する構成も考えられるが、このような構成であると、第1の電極20や発光層21の段
切れが起きてしまう恐れがある。また、隔壁30の末端を開口部の内側に作成しなければ
いけないため、開口率が低下してしまう。
【0036】
(実施の形態2)
本実施の形態では、図1、図2に示した本発明の発光装置の作製方法について図7、図
8を用いて説明する。
【0037】
基板11上に絶縁層12a、12bを順に積層した後、さらに半導体層を絶縁層12b
上に形成する。
【0038】
次に半導体層を所望の形状に加工し、半導体層14を形成する。なお、加工は、レジス
トマスクを用いて半導体層をエッチングして行えばよい。
【0039】
次に、半導体層14及び絶縁層12b等を覆うゲート絶縁膜15を形成し、さらにゲー
ト絶縁膜15上に導電層を積層する。
【0040】
続いて、当該電極層を所望の形状に加工し、ゲート電極16を形成する。ここで、ゲー
ト電極16と共に配線29aと29bも形成する。なお、加工はレジストマスクを使用し
て当該導電層をエッチングして行えばよい。
【0041】
次に、ゲート電極16をマスクとして、半導体層14に高濃度の不純物を添加する。こ
れによって、半導体層14、ゲート絶縁膜15及びゲート電極16を含むトランジスタ1
7が作成される。
【0042】
なお、トランジスタの作成工程については特に限定されず所望の構造のトランジスタを
作成できるように適宜変更すればよい。
【0043】
続いて、絶縁層12a、12b及びゲート絶縁膜15をに開口部25を形成する。開口
部25はレジストマスクを用いてこれらを基板11が露出するまでエッチングする事によ
って形成すれば良く、ウエットエッチングでも、ドライエッチングでも行うことができる
。図3のように絶縁層31を形成する場合は、ゲート電極16を形成した後、絶縁層31
を形成し加熱を行って半導体層14の水素化を行ってから開口部25の形成を行うとよい

【0044】
次に、開口部25、ゲート電極16、ゲート絶縁膜15、配線29a、29bを覆う絶
縁層21を形成する。本実施の形態では、絶縁層18はシロキサンなどの自己平坦性を有
する無機物を用いて形成している。ただし、これに限らず、自己平坦性を有する有機物を
用いても良い。絶縁層21に自己平坦性を有する物質を用いることで、開口部25が形成
されていることでできている段差を平坦化することができる。絶縁層21は自己平坦性を
有する物質からなる層と、事項平坦性を持たない物質からなる層とを組み合わせて形成し
た多層構造の膜であってもよいが、作成される発光装置の光が取り出される方向に向かう
につれて基板11も含めその屈折率が小さくなってゆくように積層することが望ましい。
【0045】
続いて、絶縁層21を貫通して半導体層14に至るコンタクトホールを形成する。そし
て、当該コンタクトホールや絶縁層21等を覆う導電層を形成する。当該導電層は所望の
形状に加工し、接続部19a、配線19b及び配線19c等が形成される。
【0046】
次に透光性を有する導電層を接続部19aなどを覆うように形成した後、当該導電層を
加工し、第1の電極20を形成する。ここで、第1の電極20は、1部が接続部と接し、
また、開口部25と重なる用に形成される。
【0047】
次に、第1の電極の一部が露出されるように開口部を有する隔壁層30を形成する。隔
壁層30は接続部19aや絶縁層21を覆って形成される。また、隔壁層18は、感光性
の樹脂材料を露光・現像によって所望の形状に加工して形成しても良いし、または、感光
性を有しない無機物または有機物からなる層を形成した後、これらをエッチングして所望
の形状に加工して形成しても良い。
【0048】
続いて、隔壁層18から露出した第1の電極20を覆う発光層22を形成する。発光層
22は、蒸着法やインクジェット法、スピンコート法などいずれの方法を用いて形成して
もかまわない。
【0049】
次に、発光層22を覆う第2の電極23を形成する。これによって第1の電極20と発
光層22と第2の電極23とからなる発光層24を作成することができる。
【0050】
なお、図3、図4、図5及び図6に示したような構造は本実施の形態で示した作成プロ
セスを適宜変更することで当業者であれば容易に得ることができる。
【実施例1】
【0051】
本実施例では発光層22の構成について詳しく説明する。
【0052】
発光層は、有機化合物又は無機化合物を含む電荷注入輸送物質及び発光材料で形成し、
その分子数から低分子系有機化合物、中分子系有機化合物(昇華性を有さず、且つ分子数
が20以下、又は連鎖する分子の長さが10μm以下の有機化合物を指していう)、高分
子系有機化合物から選ばれた一種又は複数種の層を含み、電子注入輸送性又は正孔注入輸
送性の無機化合物と組み合わせても良い。
【0053】
電荷注入輸送物質のうち、特に電子輸送性の高い物質としては、例えばトリス(8−キ
ノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3))、トリス(5−メチル−8−キノリノラ
ト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナ
ト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フ
ェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキ
ノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また正孔輸送性の高い物質としては、例え
ば4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称
:α−NPD)や4,4'−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ
]−ビフェニル(略称:TPD)や4,4',4''−トリス(N,N−ジフェニル−アミ
ノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4',4''−トリス[N−(3−
メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA
)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物が挙げられ
る。
【0054】
また、電荷注入輸送物質のうち、特に電子注入性の高い物質としては、フッ化リチウム
(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアル
カリ金属又はアルカリ土類金属の化合物が挙げられる。また、この他、Alq3のような
電子輸送性の高い物質とマグネシウム(Mg)のようなアルカリ土類金属との混合物であ
ってもよい。
【0055】
電荷注入輸送物質のうち、正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物
(MoOx)やバナジウム酸化物(VOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、タングス
テン酸化物(WOx)、マンガン酸化物(MnOx)等の金属酸化物が挙げられる。また
、この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(CuPC)等のフタ
ロシアニン系の化合物が挙げられる。
【0056】
発光層は、発光波長帯の異なる発光層を画素毎に形成して、カラー表示を行う構成とし
ても良い。典型的には、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した発光層を形成す
る。この場合にも、画素の光放射側にその発光波長帯の光を透過するフィルター(着色層
)を設けた構成とすることで、色純度の向上や、画素部の鏡面化(映り込み)の防止を図
ることができる。フィルター(着色層)を設けることで、従来必要であるとされていた円
偏光版などを省略することが可能となり、発光層から放射される光の損失を無くすことが
できる。さらに、斜方から画素部(表示画面)を見た場合に起こる色調の変化を低減すこ
とができる。
【0057】
発光材料には様々な材料がある。低分子系有機発光材料では、4−ジシアノメチレン−
2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル) −4H−ピラ
ン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テ
トラメチルジュロリジル−9-エニル) −4H−ピラン(略称:DPA)、ペリフランテ
ン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロ
リジル−9−エニル)ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、ク
マリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3
)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,
10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)等を用いることができる。また
、この他の物質でもよい。
【0058】
一方、高分子系有機発光材料は低分子系に比べて物理的強度が高く、素子の耐久性が高
い。また塗布により成膜することが可能であるので、素子の作製が比較的容易である。高
分子系有機発光材料を用いた発光素子の構造は、低分子系有機発光材料を用いたときと基
本的には同じであり、陰極/有機発光層/陽極となる。しかし、高分子系有機発光材料を
用いた発光層を形成する際には、低分子系有機発光材料を用いたときのような積層構造を
形成させることは難しく、多くの場合2層構造となる。具体的には、陰極/発光層/正孔
輸送層/陽極という構造である。
【0059】
発光色は、発光層を形成する材料で決まるため、これらを選択することで所望の発光を
示す発光素子を形成することができる。発光層の形成に用いることができる高分子系の電
界発光材料は、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリパラフェニレン系、ポリチオフェン
系、ポリフルオレン系が挙げられる。
【0060】
ポリパラフェニレンビニレン系には、ポリ(パラフェニレンビニレン) [PPV] の誘
導体、ポリ(2,5−ジアルコキシ−1,4−フェニレンビニレン) [RO−PPV]、
ポリ(2−(2'−エチル−ヘキソキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン
)[MEH−PPV]、ポリ(2−(ジアルコキシフェニル)−1,4−フェニレンビニレ
ン)[ROPh−PPV]等が挙げられる。ポリパラフェニレン系には、ポリパラフェニレ
ン[PPP]の誘導体、ポリ(2,5−ジアルコキシ−1,4−フェニレン)[RO−P
PP]、ポリ(2,5−ジヘキソキシ−1,4−フェニレン)等が挙げられる。ポリチオ
フェン系には、ポリチオフェン[PT]の誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)[P
AT]、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)[PHT]、ポリ(3−シクロヘキシルチオフ
ェン)[PCHT]、ポリ(3−シクロヘキシル−4−メチルチオフェン)[PCHMT
]、ポリ(3,4−ジシクロヘキシルチオフェン)[PDCHT]、ポリ[3−(4−オ
クチルフェニル)−チオフェン][POPT]、ポリ[3−(4−オクチルフェニル)−
2,2ビチオフェン][PTOPT]等が挙げられる。ポリフルオレン系には、ポリフル
オレン[PF]の誘導体、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)[PDAF]、ポリ(
9,9−ジオクチルフルオレン)[PDOF]等が挙げられる。
【0061】
なお、正孔輸送性の高分子系有機発光材料を、陽極と発光性の高分子系有機発光材料の
間に挟んで形成すると、陽極からの正孔注入性を向上させることができる。一般にアクセ
プター材料と共に水に溶解させたものをスピンコート法などで塗布する。また、有機溶媒
には不溶であるため、上述した発光性の有機発光材料との積層が可能である。正孔輸送性
の高分子系有機発光材料としては、PEDOTとアクセプター材料としてのショウノウス
ルホン酸(CSA)の混合物、ポリアニリン[PANI]とアクセプター材料としてのポ
リスチレンスルホン酸[PSS]の混合物等が挙げられる。
【0062】
また、発光層は単色又は白色の発光を呈する構成とすることができる。白色発光材料を
用いる場合には、画素の光放射側に特定の波長の光を透過するフィルター(着色層)を設
けた構成としてカラー表示を可能にすることができる。
【0063】
白色に発光する発光層を形成するには、例えば、Alq3、部分的に赤色発光色素であ
るナイルレッドをドープしたAlq3、Alq3、p−EtTAZ、TPD(芳香族ジアミ
ン)を蒸着法により順次積層することで白色を得ることができる。また、スピンコートを
用いた塗布法によりELを形成する場合には、塗布した後、真空加熱で焼成することが好
ましい。例えば、正孔注入層として作用するポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ
(スチレンスルホン酸)水溶液(PEDOT/PSS)を全面に塗布、焼成し、その後、
発光層として作用する発光中心色素(1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジ
エン(TPB)、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノ−スチ
リル)−4H−ピラン(DCM1)、ナイルレッド、クマリン6など)ドープしたポリビ
ニルカルバゾール(PVK)溶液を全面に塗布、焼成すればよい。
【0064】
発光層は単層で形成することもでき、ホール輸送性のポリビニルカルバゾール(PVK
)に電子輸送性の1,3,4−オキサジアゾール誘導体(PBD)を分散させてもよい。
また、30wt%のPBDを電子輸送剤として分散し、4種類の色素(TPB、クマリン6
、DCM1、ナイルレッド)を適当量分散することで白色発光が得られる。ここで示した
白色発光が得られる発光素子の他にも、発光層の材料を適宜選択することによって、赤色
発光、緑色発光、または青色発光が得られる発光素子を作製することができる。
【0065】
なお、正孔輸送性の高分子系有機発光材料を、陽極と発光性の高分子系有機発光材料の
間に挟んで形成すると、陽極からの正孔注入性を向上させることができる。一般にアクセ
プター材料と共に水に溶解させたものをスピンコート法などで塗布する。また、有機溶媒
には不溶であるため、上述した発光性の有機発光材料との積層が可能である。正孔輸送性
の高分子系有機発光材料としては、PEDOTとアクセプター材料としてのショウノウス
ルホン酸(CSA)の混合物、ポリアニリン[PANI]とアクセプター材料としてのポ
リスチレンスルホン酸[PSS]の混合物等が挙げられる。
【0066】
さらに、発光層は、一重項励起発光材料の他、金属錯体などを含む三重項励起材料を用
いても良い。例えば、赤色の発光性の画素、緑色の発光性の画素及び青色の発光性の画素
のうち、輝度半減時間が比較的短い赤色の発光性の画素を三重項励起発光材料で形成し、
他を一重項励起発光材料で形成する。三重項励起発光材料は発光効率が良いので、同じ輝
度を得るのに消費電力が少なくて済むという特徴がある。すなわち、赤色画素に適用した
場合、発光素子に流す電流量が少なくて済むので、信頼性を向上させることができる。低
消費電力化として、赤色の発光性の画素と緑色の発光性の画素とを三重項励起発光材料で
形成し、青色の発光性の画素を一重項励起発光材料で形成しても良い。人間の視感度が高
い緑色の発光素子も三重項励起発光材料で形成することで、より低消費電力化を図ること
ができる。
【0067】
三重項励起発光材料の一例としては、金属錯体をドーパントとして用いたものがあり、
第三遷移系列元素である白金を中心金属とする金属錯体、イリジウムを中心金属とする金
属錯体などが知られている。三重項励起発光材料としては、これらの化合物に限られるこ
とはなく、上記構造を有し、且つ中心金属に周期表の8〜10属に属する元素を有する化
合物を用いることも可能である。
【0068】
以上に掲げる発光層を形成する物質は一例であり、正孔注入輸送層、正孔輸送層、電子
注入輸送層、電子輸送層、発光層、電子ブロック層、正孔ブロック層などの機能性の各層
を適宜積層することで発光素子を形成することができる。また、これらの各層を合わせた
混合層又は混合接合を形成しても良い。発光層の層構造は変化しうるものであり、特定の
電子注入領域や発光領域を備えていない代わりに、もっぱらこの目的用の電極を備えたり
、発光性の材料を分散させて備えたりする変形は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲におい
て許容されうるものである。
【0069】
上記のような材料で形成した発光素子は、順方向にバイアスすることで発光する。発光
素子を用いて形成する表示装置の画素は、単純マトリクス方式、若しくはアクティブマト
リクス方式で駆動することができる。いずれにしても、個々の画素は、ある特定のタイミ
ングで順方向バイアスを印加して発光させることとなるが、ある一定期間は非発光状態と
なっている。この非発光時間に逆方向のバイアスを印加することで発光素子の信頼性を向
上させることができる。発光素子では、一定駆動条件下で発光強度が低下する劣化や、画
素内で非発光領域が拡大して見かけ上輝度が低下する劣化モードがあるが、順方向及び逆
方向にバイアスを印加する交流的な駆動を行うことで、劣化の進行を遅くすることができ
、発光装置の信頼性を向上させることができる。
【実施例2】
【0070】
本実施例では本発明を利用した発光装置の構成の1例を図9参照しながら説明する。な
お、形が異なっていても同様の機能を示す部分には同じ符号を付し、その説明を省略する
部分もある。本実施例では、トップハット型のゲート電極16を用いたLDD構造を有す
るトランジスタ17が接続部19aを介して発光素子24に接続しており、実施の形態1
の図3に示したような絶縁膜31が形成されている構成である。
【0071】
図9(A)は第1の電極20が透光性を有する導電膜により形成されており、基板11
側に発光層22より発せられた光が取り出される構造である。なお40は対向基板であり
、発光素子24が形成された後、シール剤などを用い、基板11に固着される。対向基板
40と素子との間に透光性を有する樹脂45等を充填し、封止することによって発光素子
24が水分により劣化することを防ぐ事ができる。また、樹脂45が吸湿性を有している
ことが望ましい。さらに樹脂45中に透光性の高い乾燥剤46を分散させるとさらに水分
の影響を抑えることが可能になるためさらに望ましい形態である。
【0072】
図9(B)ば第1の電極20と第2の電極23両方が透光性を有する導電膜により形成
されており、基板11及び基板40両方に光を取り出すことが可能な構成となっている。
また、この構成では基板11と対向基板40の外側に偏光板41、42を設けることによ
って画面が透けてしまうことを防ぐことができ、視認性が向上する。偏光板41、42の
外側には保護フィルム43、44を設けると良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1の絶縁層及び第2の絶縁層を形成し、
前記第2の絶縁層上に半導体層を形成し、
前記第2の絶縁層及び前記半導体層上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極をマスクとして、前記半導体層に不純物を添加し、
前記第1の絶縁層、前記第2の絶縁層、及び前記ゲート絶縁膜をエッチングして、前記基板に達する第1の開口部を形成し、
前記ゲート電極、前記ゲート絶縁膜、及び前記第1の開口部を覆う第3の絶縁層を形成し、
前記第3の絶縁層及び前記ゲート絶縁膜をエッチングして、前記半導体層に達する第2の開口部を形成し、
前記第3の絶縁層の一部及び前記第2の開口部上に導電層を形成し、
前記導電層の一部及び前記第3の絶縁層上に第1の電極を形成し、
前記第3の絶縁層及び前記導電層上に、前記第1の電極の一部が露出するように第3の開口部を有する隔壁層を形成し、
露出した前記第1の電極上に発光層を形成し、
前記発光層上に第2の電極を形成し、
前記第1の開口部及び前記第3の開口部は重なっていることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第3の絶縁層は、前記第1の電極の屈折率と前記基板の屈折率との間の屈折率を有することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第3の絶縁層の屈折率は、前記第1の電極の屈折率より小さいことを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項4】
基板上に設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層上に設けられた第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層上に設けられた半導体層と、
前記半導体層及び前記第2の絶縁層上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極、前記ゲート絶縁膜及び前記基板上に設けられた第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層の一部及び前記半導体層上に設けられた導電層と、
前記第3の絶縁層及び前記導電層上に設けられた第1の電極と、
前記第3の絶縁層及び前記導電層上に設けられ、前記第1の電極の一部が露出するように第3の開口部が設けられた隔壁層と、
露出した前記第1の電極上に設けられた発光層と、
前記発光層上に設けられた第2の電極と、を有し、
前記第1の絶縁層、前記第2の絶縁層、及び前記ゲート絶縁膜に、前記基板に達する第1の開口部が設けられ、
前記第3の絶縁層及び前記ゲート絶縁膜に、前記半導体層に達する第2の開口部が設けられ、
前記第1の開口部及び前記第3の開口部は重なっていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第3の絶縁層は、前記第1の電極の屈折率と前記基板の屈折率との間の屈折率を有することを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記第3の絶縁層の屈折率は、前記第1の電極の屈折率より小さいことを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−96680(P2011−96680A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29400(P2011−29400)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【分割の表示】特願2004−17321(P2004−17321)の分割
【原出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】