発光装置及び電子機器
【課題】輝度ムラ発生の未然防止と製造容易化が可能な発光装を提供する。
【解決手段】発光装置は、基板7上に、その各々がマトリクス状の配列に従って並べられる複数のピクセル電極13と、該ピクセル電極の各々に対応し、かつ、その各々が、該ピクセル電極及び対向電極、並びに、これらに挟まれる発光機能層を含む複数の有機EL素子8と、前記発光機能層を前記マトリクス状の配列の列方向に沿って複数個の部分に区切る隔壁層340と、を備える。そして、前記マトリクス状の配列における、ある列に着目した隔壁層340の配列パターンは、他の列に着目した隔壁層340の配列パターンとは異なる。
【解決手段】発光装置は、基板7上に、その各々がマトリクス状の配列に従って並べられる複数のピクセル電極13と、該ピクセル電極の各々に対応し、かつ、その各々が、該ピクセル電極及び対向電極、並びに、これらに挟まれる発光機能層を含む複数の有機EL素子8と、前記発光機能層を前記マトリクス状の配列の列方向に沿って複数個の部分に区切る隔壁層340と、を備える。そして、前記マトリクス状の配列における、ある列に着目した隔壁層340の配列パターンは、他の列に着目した隔壁層340の配列パターンとは異なる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンスにより発光する発光装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、即ち有機EL(electro luminescent)素子が提供されている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機薄膜をピクセル電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。両電極間に電流が流されると同時に、前記有機薄膜にも電流が流れ、これにより、当該有機薄膜、ないしは有機EL素子は発光する。
このような有機EL素子を多数並べ、かつ、その各々につき発光及び非発光を適当に制御すれば、所望の意味内容をもつ画像等の表示が可能となる。
かかる有機EL素子、ないしはこれを備えた画像表示装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2001−185354号公報
【特許文献2】特開2002−75640号公報
【特許文献3】特開2003−208979号公報
【特許文献4】特開平10−151755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような画像表示装置においては、全有機EL素子のそれぞれが保有する有機薄膜の量が、均一であること、より現実的には一定の範囲内に収まることが好ましい。そうでなければ、発光に寄与する有機EL物質の量に相違が生じ、結果的に、輝度ムラを発生させるおそれが高まるからである。この要請は、当該有機薄膜が、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて製造される場合、その原材料たる液滴、ないしはインクの吐出量が各有機EL素子について同じであるべきである等の各個別の要請となって表れる。
しかし、上述の課題を解決することは一般に困難である。というのも、液滴塗布法(インクジェット法)では1回1回の吐出についてその量にムラが生じ得ること、また、液滴ないしインク塗布後の乾燥工程において各有機EL素子について乾燥ムラが生じ得ること等、完璧に統制することが困難な各種の要因が存在するからである。
とはいえ、これらの要因は、製造工程の管理を極めて厳格に行えば、一定程度解消することは可能ではある。しかし、そこには当然コスト上の限界が存在することは言うを待たない。結局、輝度ムラの発生を未然に防止すべく全有機EL素子の有機薄膜保有量を同じにするという要請とともに、可能な限り、製造工程の簡易化、容易化が達成されることが望ましいのである。
【0004】
前記の特許文献1では、「インクジェット方式により形成され」る「EL層」を「複数の画素電極に渡って〔ママ〕連続させる」技術(特許文献1の〔請求項1〕)、より具体的には、当該EL層を「ストライプ状」、「長円形或いは長方形」に形成する技術が開示されている(特許文献1の要約書、あるいは〔図1〕等)。これにより、特許文献1では、「インクヘッドを連続的に走査させることでEL層の形成が可能となり処理時間を短縮することができる」(特許文献1の〔0010〕)とする。したがって、この特許文献1に開示される技術によれば、その意味においては、製造容易性が達成されるということができる。
【0005】
しかしながら、この特許文献1では、まず、前記の乾燥工程における不具合の発生が懸念される。というのも、例えば特許文献1の〔図1〕のように、EL層を「ストライプ状」に形成してしまうとすると、その内部のある1点を中心とした長手方向と短手方向とに存在する乾燥前の原料液滴量に甚大な差がある(即ち、一般に、前者の方が遥かに多い)ことになるからである。液滴ないしインク滴の乾燥は、その端部から進行するという一般的性質を勘案すると、このような場合では、乾燥ムラが(しかも、「複数の画素電極に」亘っての乾燥ムラが)極めて生じやすくなってしまうのである。
また、前述の各有機EL素子には、その各々に異なる色の光を発する有機薄膜が形成されることがある。例えば、ある有機EL素子は第1の有機薄膜を保有し、その隣の有機EL素子は第2の有機薄膜を保有する、というが如くである。ところが、この場合、何らかの要因によって第1の有機薄膜のみがあるべきところに、第2の有機薄膜が混入するという場合が生じ得ないではない(前記の特許文献2の〔0006〕参照)。この場合、その混入を受けた有機EL素子が思ったとおりに発光する可能性は低下する。このようなことを考えると、特許文献1に開示される技術は極めて不利である。というのも、この特許文献1では、前述した混入事象が発生した場合、ある1列に存在する“全”画素が思ったとおりに発光しない、という事態を招きかねないからである。
【0006】
このような事情は、多かれ少なかれ、前述した特許文献2及び3においても同様にあてはまる。というのも、特許文献2は、「溝」を形成するとともに、そこに「ノズルを沿わせるように」して「有機EL材料を前記溝内に流し込んで塗布する」技術(特許文献2の〔請求項1〕。なお、〔図2〕あるいは〔図5〕等参照。)を開示し、特許文献3は、「連続してなる複数の画素で構成され、周囲を隔壁で区切られたセル」に、「液滴噴射する」技術(特許文献3の〔請求項1〕。なお、〔0021〕、あるいは〔図1〕等、更には〔請求項2〕等にいう「ストライプ状」、参照。)を開示するものだからである。いま摘示したところからも明らかなように、これら特許文献2及び3においても、基本的に、特許文献1に関して述べた前記の不具合を逃れられないのである。
【0007】
一方、前記の特許文献4では、「1ライン内にインクをムラ無く分布させる」(特許文献4の〔0008〕)という目的を達するために、「複数回の走査で吐出したインクが、…1つのライン内で等しい間隔で並ぶ」ように(特許文献4の〔請求項1〕、あるいは〔0010〕、更には〔0148〕等参照)、当該インクを吐出する「インクジェット記録方法」(特許文献4の〔発明の名称〕)が開示されている。かかる手法を、前述の有機EL素子、ないしは画像表示装置の製造に適用すれば、たしかに、各有機EL素子の保有する有機薄膜量を所定の範囲内に止めることが一定程度可能になるということはできる。
しかしながら、この特許文献4の技術は、前述のように「複数回の走査」を前提とするものであり、しかも、十分満足のいく効果を得るためには、同一の画素に対する相当程度多数回の走査を要求するものと考えられる。そうすると、作業開始から完了までに必要となる時間は長期化することとなってしまい、この観点からみた場合の、特許文献4の製造容易性向上への貢献度はあまり高くはないと言い得る。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、輝度ムラ発生の未然防止と製造容易化という2つの課題を中心とした、前記の課題の全部又は一部を解決することの可能な発光装置及び電子機器を提供することを課題とする。
また、本発明は、それに付随し、又は関連する課題の解決をも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発光装置は、上述した課題を解決するため、基板と、前記基板上に、その各々がマトリクス状の配列に従って並べられる複数のピクセル電極と、該ピクセル電極の各々に対応し、かつ、その各々が、該ピクセル電極及び対向電極、並びに、これらに挟まれる発光機能層を含む複数の発光素子と、前記発光機能層を前記マトリクス状の配列の列方向に沿って複数個の部分に区切る区切り部と、を備え、前記マトリクス状の配列における、ある列の前記区切り部の配列パターンは、他の列の前記区切り部の配列パターンとは異なる。
【0010】
本発明によれば、発光機能層が、区切り部によって複数個の部分に区切られる。この場合、マトリクス状の配列におけるある列において、この「区切り部」によって区切られる発光機能層の数(即ち、「複数個の部分」の、その数)と、当該の列に並ぶピクセル電極の数とは異なっていてよい。したがって、前者の数が後者の数よりも少なければ、「区切り部」間の発光機能層を1個形成すれば、同じ区間に存在する複数のピクセル電極についての発光機能層の形成が一挙に完了する、ということになる。本発明では、このような観点からまず、その製造容易性が確保される。
また、本発明では、例えば前述のように、基板の全長に亘る「ストライプ状」の溝等が設けられるわけではなく、発光機能層が、「区切り部」によって適当な数に分離されているので、当該発光機能層中のある1箇所の不具合(例えば、前述の「混入」等)が、“全”画素に影響を及ぼす、といったことも生じない。本発明では、このような観点からも、その製造容易性が確保される。
【0011】
また、前述のような「区切り部」の存在によると、発光機能層が、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて作られる場合、その原料液滴ないしインク滴の乾燥開始点は、当該区切り部が存在する位置、あるいはその近傍に設定され得ることになる(液滴ないしインク滴の乾燥は、その端部から始まるからである。)。
そして、本発明では、この「区切り部」の、ある列における配列パターンが、他の列におけるそれとは異なっている。つまり、これによると、これらある列及び他の列では、前記の乾燥開始点が一般に異なるということになり、したがってまた、乾燥終了点も一般に異なるということになる。例えば、ある列における乾燥開始点(即ち、区切り部及びその近傍)のすぐ隣の列の上の点は、乾燥終了点である、といった如くである。
これによれば、基板全面に関する、一様の乾燥ムラが生じることがない。例えば、前述した、基板の全長に亘るような「ストライプ状」の溝を形成する場合では、乾燥開始点はその溝の端部であり、乾燥終了点はその溝の長手方向の中央部分である、ということになり得るため、当該の溝を当該基板上に一様に並べてしまうと、乾燥終了点が当該基板を横切るような直線の上に並ぶ、ということが生じてしまう。すると、その結果、有機EL物質等の有効成分の凝集等が、ある特定の領域に集中する、といった事象を発生させてしまうおそれが高まるのである。こうなると、複数の発光素子全体による画像表示等において、輝度ムラがより目立つことになる。
本発明において、このような不具合は発生しないのである。
結局、本発明によれば、製造容易性の向上が図られながら、輝度ムラの発生を未然に防止することができる。
なお、本発明にいう「発光素子」は、ピクセル電極及び対向電極間に電流が流されることで、発光機能層に電流が流れ、それにより、当該発光機能層が発光する素子であることを前提とする。
【0012】
この発明の発光装置では、その各々が、前記マトリクス状の配列の列方向に沿って存在する前記ピクセル電極の1つ以上をその内部に収める、複数の開口部を形作るように、前記基板上に形成される隔壁層を更に備え、前記区切り部は、前記隔壁層を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、「区切り部」が、一般にいわゆる「バンク(bank)」と呼ばれる部材によって、好適に構成される。
なお、本発明において、「複数の開口部を形作る」という性質をもつ層に、「隔壁層」という名が与えられているのは、当該層を断面視した場合、ある1つの開口部と、その隣の開口部との間に、あたかも「隔壁」が存在するかのような状態が呈されるからである。
【0013】
また、本発明の発光装置では、前記区切り部は、そのうちの少なくとも一部が前記発光機能層の原料液滴に対する撥液性を備えている、ように構成してもよい。
この態様によれば、「区切り部」が撥液性をもつことにより、発光機能層が液滴塗布法(インクジェット法)を用いて作られる場合、その原料液滴ないしインク滴は、当該区切り部の存在する位置、ないしはその近傍からはじかれる。つまり、本態様では、「区切り部」としての機能がよりよく発揮されることになる。
なお、「区切り部」を、より具体化した態様としては、前述の「隔壁層」、あるいはここで述べた「撥液性」をもつもののほか、例えば、前記の隔壁層の厚さよりは小さい厚さをもつ「凸部」等がそれに該当し得る。
【0014】
この態様では、前記基板上に形成され、前記ピクセル電極を形成するための下地面を提供する電極形成用下地膜を更に備え、前記区切り部は、前記下地面の一部を含む、ように構成してもよい。
これによれば、撥液性をもつ区切り部が、前述した電極形成用下地膜の下地面の一部を含む。つまり、本態様では、「区切り部」を形成するために何らかの特別の部材を用意するというのではなく、当該発光装置を構成するのに殆ど必然的に必要となる部材を利用して、「区切り部」が構成され得るようになっているので、材料費の節約、製造コストの低減等という意味において、製造容易性を更に向上させることができる。
【0015】
あるいは、本発明の発光装置では、前記マトリクス状の配列における各列のうちの、ある列群は、前記発光機能層として、当該ある列群に固有の光を発する発光機能層を備え、当該ある列群のうち、隣接し合う各列の前記区切り部の配列パターンは互いに異なる、ように構成してもよい。
この態様によれば、典型的には例えば、全列数がN(ただし、Nは正の整数)あるとして、そのうちの第1,4,7,…,(N−2)列目の各列を含む“第1の列群”が赤色に対応し、第2,5,8,…,(N−1)列目の各列を含む“第2の列群”が緑色に対応し、第3,6,9,…,N列目の各列を含む“第3の列群”が青色に対応する、ということになる。
この場合、これら第1,第2及び第3の列群は、それぞれ、赤色、緑色及び青色の各「光を発する発光機能層を備え」るのであるから、好適には例えば、それら発光機能層の各々は、一連ではあるが別々の、各機会に形成される。例えば、液滴塗布法(インクジェット法)によれば、それぞれの色の光を発する有機EL物質を含むインクを塗布した後、それを乾燥させる、という工程が3回繰り返し行われる、というようである。
ところで、前述した、乾燥開始点及び乾燥終了点を基板全面に関してばらつかせる考え方は、そうした1回1回の製造機会に当てはめられて好適である。そうすれば、その各色について、前述した一様な乾燥ムラの発生を抑制することができるからである。
ここで、本態様では、前述の具体例に即して言えば、赤色に対応する第1列目と第4列目における区切り部の配列パターンが異なる、ということになる(そのほか、緑色に対応する第8列目と第11列目、あるいは青色に対応する第57列目と第60列目等々、挙げればきりがない。)。つまり、本態様では、先に述べた乾燥開始点及び乾燥終了点の基板全面に関するばらつかせが、当該各色に対して実現されるのである。
このようにして、本態様によれば、上述した本発明にかかる効果がより実効的に奏される。
【0016】
あるいは、本発明の発光装置では、前記発光機能層は、光を発する発光層と、それ以外の1以上の層と、を含み、前記区切り部は、前記発光層及び前記1以上の層の少なくとも1つを区切ることをもって、前記発光機能層を複数個の部分に区切る、ように構成してもよい。
この態様によれば、発光機能層は、前述の発光層の他、例えば、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層等の一部又は全部を含む。そして、本態様では、前記の「区切り部」が、このうちの少なくとも1つの層を区切ることをもって、発光機能層を複数個の部分に区切るのである。この場合、その区切りの対象となった層について、前述した効果が奏されることになる。
より言うと、本態様によれば、発光機能層のうち、例えば発光層については、従来のように各列ごと「ストライプ状」の一様な形成を実行するとしても、その他の少なくとも1層について、前記の効果を享受することができるのであるから、当該発光機能層全体に関していえば、前述した本発明に係る効果を一定程度享受することが可能となるのである。つまり、これによると、前者により、製造容易性をより向上させながら、後者により、本発明に固有の効果が享受される、という、いわば良いとこ取りが可能となるのである。
【0017】
この態様では、前記区切り部は、前記発光層を前記列方向に沿って複数個の部分に区切る第1区切り部と、前記1以上の層のうちのある層を前記列方向に沿って複数個の部分に区切る第2区切り部と、を含み、前記マトリクス状の配列における、ある列の前記第1区切り部の配列パターンは、その列の前記第2区切り部の配列パターンとは異なる、ように構成してもよい。
これによれば、少なくとも、発光層と、それとは別の1層について、“区切り”が実行される。この場合、その“区切り”は、前者については、「第1区切り部」によって、後者については、「第2区切り部」によって実現される。
そして、本態様では更に、マトリクス状の配列における、ある列の第1区切り部の配列パターンは、その列における第2区切り部の配列パターンと異なる。つまり、発光層に関する乾燥工程での乾燥態様と、前記別の1層に関するそれとは異なることになる。
したがって、この態様によると、前述した本発明にかかる効果が、いわば、基板の面に垂直な方向に沿って重畳的に享受され得ることになるのである。
なお、本態様においては、冒頭に述べた、本発明にいう「ある列の…区切り部の配列パターンは、他の列における…区切り部の配列パターンとは異なる」という前提的要件(以下、便宜上「条件I」という。)については、前述した、第1区切り部、あるいは第2区切り部の少なくとも一方が満たせばよい。このような考え方を根拠に、例えば、本態様にいう「第2区切り部」は、その配列パターンが「第1区切り部の配列パターン」「とは異なる」という、本態様固有の条件を満たす限り、前記条件Iを満たす必要は必ずしもない。例えば、この場合、この第2区切り部は、基板全面に関して、全く規則的に配列されてもよいのである。
【0018】
また、本発明の発光装置では、前記発光機能層は、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて形成される、ように構成してもよい。
この態様は、上に述べたところからも明らかなように、本発明に係る効果を極めて実効的に享受することのできる最好適な態様の1つである。
【0019】
一方、本発明の電子機器は、上記課題を解決するため、上述した各種の発光装置を備える。
本発明の電子機器は、上述した各種の発光装置を備えているので、その製造が容易でありながら、なお高精細な画像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下では、本発明に係る第1の実施の形態について図1乃至図6を参照しながら説明する。なお、これらの図面及び後に参照する図7以降の各図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
【0021】
図1は、第1実施形態の有機EL装置の一例を示す平面図である。
この図1において、有機EL装置は、素子基板7と、この素子基板7上に形成される各種の要素を備えている。ここで各種の要素とは、有機EL素子8、走査線3及びデータ線6、走査線駆動回路103A及び103B、データ線駆動回路106、プリチャージ回路106A、並びに対向電極用電源線201である。
【0022】
有機EL素子(発光素子)8は、図1に示すように、素子基板7上に複数備えられており、それら複数の有機EL素子8はマトリクス状に配列されている。有機EL素子8の各々は、ピクセル電極、発光機能層及び対向電極から構成されている。これら各要素に関しては後に改めて触れる。
画像表示領域7aは、素子基板7上、これら複数の有機EL素子8が配列されている領域である。画像表示領域7aでは、各有機EL素子8の個別の発光及び非発光に基づき、所望の画像が表示され得る。なお、以下では、素子基板7の面のうち、この画像表示領域7aを除く領域を、「周辺領域」と呼ぶ。
【0023】
走査線3及びデータ線6は、それぞれ、マトリクス状に配列された有機EL素子8の各行及び各列に対応するように配列されている。より詳しくは、走査線3は、図1に示すように、図中左右方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されている走査線駆動回路103A及び103Bに接続されている。一方、データ線6は、図中上下方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されているデータ線駆動回路106に接続されている。これら各走査線3及び各データ線6の各交点の近傍には、前述の有機EL素子8等を含む単位回路(ピクセル回路)Pが設けられている。
【0024】
この単位回路Pは、図2に示すように、前述の有機EL素子8を含むほか、nチャネル型の第1トランジスタ68、pチャネル型の第2トランジスタ9、及び容量素子69を含む。
単位回路Pは、電流供給線113から給電を受ける。複数の電流供給線113は、図示しない電源に接続されている。
また、pチャネル型の第2トランジスタ9のソース電極は電流供給線113に接続される一方、そのドレイン電極は有機EL素子8のピクセル電極に接続される。この第2トランジスタ9のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている。一方、nチャネル型の第1トランジスタ68のゲート電極は走査線3に接続され、そのソース電極はデータ線6に接続され、そのドレイン電極は第2トランジスタ9のゲート電極と接続される。
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線3を走査線駆動回路103A及び103Bが選択すると、第1トランジスタ68がオンされて、データ線6を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、第2トランジスタ9が、データ信号のレベルに応じた電流を有機EL素子8に供給する。これにより、有機EL素子8は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0025】
素子基板7上の周辺領域上には、プリチャージ回路106Aが備えられている。このプリチャージ回路106Aは、有機EL素子8へのデータ信号の書込み動作に先立って、データ線6を所定の電位に設定するための回路である。
また、対向電極用電源線201(以下、単に「電源線201」という。)は、素子基板7の外形輪郭線にほぼ沿うように、平面視してΠ字状の形状をもつ。この電源線201は、有機EL素子8の対向電極に例えばグランドレベル等の電源電圧を供給する。
なお、前述では、走査線駆動回路103A及び103B、データ線駆動回路106、並びにプリチャージ回路106Aのすべてが素子基板7上に形成される例について説明しているが、場合によっては、そのうちの全部又は一部を、フレキシブル基板に形成するのであってもよい。この場合、当該のフレキシブル基板と素子基板7との両当接部分に適当な端子を設けておくことにより、両者間の電気的な接続を可能とする。
【0026】
以上述べたような基本的構成を備える有機EL装置は、より詳細には、図3乃至図5に示すような構造をもつ。
なお、図3と図4とは、いずれも有機EL装置の画像表示領域7aの一部を拡大視する平面図であるという点について趣旨を同じくするが、前者は、発光機能層18形成前の状態を表し、後者は、発光機能層18形成後の状態を表している点で異なっている。また、図3では、ピクセル電極13(図中破線参照)を図示しているが、図4では、煩雑さを避けるため、その図示が省略されている。
【0027】
有機EL装置は、図3又は図4に示すように、隔壁層340と、これによって形作られる、略長円形状の開口部341及び開口部342それぞれの複数と、を備えている。
このうち隔壁層340は、図5に示すように、積層構造物250の一部を構成しており、ピクセル電極13の図中上層として、かつ、コンタクトホール360を埋めるように形成されている。この隔壁層340は、例えば絶縁性の透明樹脂材料、その中でも特に撥液性をもつ材料で作られて好適である。より具体的には例えば、フッ素系樹脂、あるいは更に、アクリル樹脂の他、エポキシ樹脂、あるいはポリイミドなどを挙げることができる。
なお、隔壁層340がこのような各種の樹脂材料から作られている場合には、その基層を、例えばSiO2等の無機材料で作るようにするとよい(即ち、この場合、隔壁層340は下層側に無機物質、上層側に有機物質という積層構造を持つことになる。)。これによれば、ピクセル電極13が後述するようにITO等から作られている場合においても、当該ピクセル電極13と隔壁層340との密着性を高めることができる。
【0028】
一方、開口部341及び開口部342は、図3乃至図5に示すように、隔壁層340(より正確に言えば、その側壁)によって囲われた空間とも言い換えられ得る。この開口部341、あるいは開口部342の底面は、ピクセル電極13の表面に一致する。また、この開口部341、あるいは開口部342の内部には、発光機能層18、対向電極5及びバリア層40等が含まれている(図5参照)。
【0029】
まず、開口部341は、図3、あるいは図4に示すように、図中上下方向に沿った長さが相対的に小さい長円形状をもつ。一方、開口部342は、同長さが相対的に大きい長円形状をもつ。なお、ここでいう“長円形状”とは、図に示すように、楕円ではなく、長方形と2つの半円形とを接合したかの如き形状(より詳しくは、前記2つの半円形の径部分それぞれが、前記長方形のそれぞれの短辺部分に接合したかの如き形状)を指す用語として用いている。
このような形状の相違に対応するように、開口部341は、図3によく示されているように、その内部に、図中上下方向に沿って並ぶ2つのピクセル電極13を収めるのに対して、開口部342は、その内部に同方向に沿って並ぶ3つのピクセル電極13を収める。なお、1つ1つのピクセル電極13を平面視した形状は、概ね長方形状である。
【0030】
なお、前述のピクセル電極13の1個1個の間は物理的に分断されていて、電気的に短絡していない(図5も参照)。また、すべての開口部341、あるいはすべての開口部342の内部におけるピクセル電極13間には、図3乃至図5に示すように、例えばSiO2、あるいはSiN等からなる電極分離層345が形成されている。このようなことから、ピクセル電極13の一単位とは、前述した“長方形状をもつ電極の1個”が、それとして捉えられることになる。また、これに応じて、前述した有機EL素子8(あるいは、単位回路P)の一単位も、このピクセル電極13の一単位に即して定められることになる(図3中、最左列かつ最上段のピクセル電極13を囲む、符号“8”,“P”を付された一点差線による囲み線、参照)。
また、図3において、ピクセル電極13それ自体の配列態様に着目すれば、当該ピクセル電極13は、マトリクス状に配列されているということができる。
【0031】
このようなピクセル電極13は、図5に示すように、コンタクトホール360を介して、積層構造物250の一部を構成する回路素子薄膜11と電気的に接続されている。回路素子薄膜11は、前述の単位回路Pに含まれる第1トランジスタ68や第2トランジスタ9、等を含む。図では極めて簡略化されて描かれているが、この回路素子薄膜11は、これら各種のトランジスタを構成する半導体層、ゲート絶縁膜、ゲートメタル等や容量素子69を構成する電極用薄膜(いずれも不図示)、その他の金属薄膜から構成される。なお、前記コンタクトホール360は、積層構造物250の一部を構成する第1及び第2層間絶縁膜301及び302を貫通するようにして形成されている。
以上の構成により、ピクセル電極13は、第2トランジスタ9を介して電流供給線113から供給される電流を、発光機能層18に印加可能である。
このようなピクセル電極13は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性かつ導電性の材料から作られている。
【0032】
さて、“開口部”の説明に戻る。
開口部341及び開口部342は、図3、あるいは図4に示されているように、一定の規則に従って並べられている。
まず、開口部341は、図3中左から2,4,6,…列目の各列において、その図中最上方に配置される。以下、そこから図中下方に順次繋がるようにして、開口部342,342,342,…が並ぶ。他方、図3中左から1,3,5,…列目の各列においては、図中最上方に開口部342が配置され、以下、そこから開口部342,342,342,…が並ぶ(要するに、この場合、その全部が開口部342である。)。
このような配列態様により、図中上下方向に沿った開口部341及び342間、あるいは開口部342及び342間に現れる隔壁層340の位置は、例えば図4の太い破線で示すが如く、列の並んでいく方向(図中左右方向)に従って、ジグザグに変動する。つまり、第1実施形態では、ある列に沿った隔壁層340の配列パターンは、他の列に沿ったそれとは異なるのである。この点については、後に図6を参照して改めて説明することにする。
なお、ここで言及した隔壁層340は、本発明にいう「区切り部」への該当性を有する。
【0033】
このような配列態様をもつ開口部341、あるいは開口部342は、図4に示すように、図中左から1,4,6,…番目に位置する各列から構成される第1列群、同じく2,5,7,…番目に位置する各列から構成される第2列群、及び、3,6,9,…番目に位置する各列から構成される第3列群、のいずれかのグループに属する。
ここで、第1列群とは、そこに属する開口部341、あるいは342が、赤色光を発する有機EL物質を含む発光機能層18Rを備えるグループである。以下、同様にして、第2列群及び第3列群とは、それぞれ、緑色光を発する有機EL物質を含む発光機能層18Gを備えるグループであり、及び、青色光を発する有機EL物質を含む発光機能層18Rを備えるグループである。なお、本明細書においては、ここで述べた符号“18R”,“18G”及び“18B”を、一まとめに代表する記号として符号“18”を用いている。
【0034】
より詳細には、次のようである。すなわち、第1実施形態において、発光機能層18は、図4あるいは図5に示すように、開口部341、あるいは開口部342ごとに1個ずつ割り当てられるように形成されている。第1実施形態では特に、発光機能層18は、隔壁層340の側壁によって囲われた空間に閉じ込められるように形成されているのである。
この発光機能層18の1個1個は、少なくとも有機発光層を含み、この有機発光層は正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から構成されている。第1実施形態において、この有機EL物質としては、例えば、赤色発光に対応してシアノポリフェニレンビニレン、緑色発光に対応してポリフェニレンビニレン、並びに、青色発光に対応してポリフェニレンビニレン及びポリアルキルフェニレン、のそれぞれが該当し得る(この材料提示は、単なる一例である。)。そして、このうちの最前者の材料を含む発光機能層18Rを含む開口部341及び342が前記第1列群に含まれ、その次の材料を含む発光機能層18Gを含む開口部341及び342が前記第2列群に含まれ、最後者の材料を含む発光機能層18Bを含む開口部341及び342が前記第3列群に含まれることになるのである。
【0035】
このような第1、第2及び第3列群の区分けと、前述した開口部341及び342の配列態様との間には次の関係がある。
すなわち、まず、図3によく示されているように、例えば第3列群を構成する、図中左から3,6,9,…列目の各列に着目する(図中ハッチングされた部分参照)。
このうち第3列目においては、図中上から順に、開口部342,342,342,…が並ぶ。したがって、ピクセル電極13の数を基準としてみると、図中上から順に3つのピクセル電極13を数えると、隔壁層340Aが現れ(図中二重黒丸参照)、更にまた3つのピクセル電極13を数えると、再び隔壁層340Aが現れ、ということが繰り返される。
一方、第6列目においては、図中上から順に、開口部341、そして開口部342,342,342,…が並ぶ。したがって、ピクセル電極13の数を基準としてみると、図中上から順に2つのピクセル電極13を数えると、隔壁層340Aが現れ、更にまた3つのピクセル電極13を数えると、再び隔壁層340Aが現れ、以下、3つのピクセル電極13ごとに隔壁層340Aが現れる、ということが繰り返される。
更に、第9列目においては、図から明らかなように、前記の第3列目と同じである。以後、第15,21,27,…列目も同様となる。また、第12列目においては、前記の第6列目と同じになる。以後、第12,18,24,…列目も同様となる。
【0036】
これを要するに、第1実施形態では、第3列群のうち、隣接し合う各列(例えば、第3列目と第6列目、あるいは第6列目と第9列目、等々)上に位置する隔壁層340Aの、当該各列に沿った配列パターンは互いに異なる、ということになる。このことは、残る第1列群及び第2列群についても同様に当てはまることが、図3、あるいは図4から明らかである。なお、ここで言及した隔壁層340Aは、本発明にいう「区切り部」への該当性を有する(隔壁層340Aは、隔壁層340そのものであるので、既述のように、隔壁層340が「区切り部」への該当性を有する以上、これは当然のことである。)。
【0037】
第1実施形態に係る有機EL装置は以上述べた各種の要素を備えるが、以下では、上では触れられなかった各種の要素、あるいは、上で触れた要素ではあるが補足する事項について説明する。
まず、既述の第1及び第2層間絶縁膜301及び302(以下、単に「絶縁膜301及び302」ということがある。)は、積層構造物250中の導電性要素間の短絡が生じないように、あるいは、これら導電性要素の積層構造物250中における好適な配置を実現するため等に貢献する。
絶縁膜301及び302は、様々な厚さでもって様々な絶縁性材料から作られうるが、好適には、各絶縁膜の積層構造物250中の配置位置や役割等に応じて、適宜適当な厚さ及び材料が選択されるとよい。より具体的には例えば、絶縁膜301及び302は、SiO2、SiN、SiON等々で作られて好ましい。
あるいは、第2層間絶縁膜302に関しては、これを下地層として形成される複数のピクセル電極13(図4参照)それぞれが同一面内に形成されるように、その上面が平坦面になり易いアクリル樹脂等から作られてもよい。
【0038】
次に、図5に示すバリア層40は、素子基板7の全面を覆うかのように、後述する対向電極5の上に形成されている。このバリア層40は、水及び酸素の有機EL素子8への進入を食い止める機能をもつ。このような機能を十全に発揮するべく、当該バリア層40は、具体的には例えば、SiN、SiON、SiO2、等々で作られて好適である。
【0039】
さらに、図5に示す対向電極5は、素子基板7の全面を覆うかのように、発光機能層18の上に形成されている。この対向電極5は、平面視して矩形状(その内部に特別な開口、間隙等をもたない、いわゆるベタ)に形成されており、その周囲は、図1に示した電源線201に電気的に接続される(その接続態様は不図示)。
このような対向電極5は、例えばアルミニウム、銀、等の比較的光反射性能の高い材料から作られる。
【0040】
前述の有機EL素子8の各々は、いま述べた対向電極5、及び、上で詳述したピクセル電極13及び発光機能層18から構成される。
このような構造に基づき、例えば、ピクセル電極13が陽極、対向電極5が陰極、等と設定されて、両者間に電流が流されると、それと同時に発光機能層18にも電流が流れ、これにより、当該発光機能層18は発光する。この場合、前述の有機EL物質の違いに応じた、赤、緑及び青の各色の発光が行われる。そして、この発光機能層18から発した光のうち一部は、素子基板7に向かってそのまま有機EL装置外部へと進行し、あるいは他の一部は、対向電極5の側に向かって進行した後、該対向電極5で反射した上で有機EL装置外部へと進行する(図5中の符号“L”参照)。このように、第1実施形態に係る有機EL装置は、光Lが、素子基板7の側に向かって進行するので、いわゆるボトムエミッション型である。
【0041】
以下では、以上述べたような有機EL装置によって奏される作用効果について説明する。
(1) まず、第1実施形態の有機EL装置によれば、その製造容易性の向上が図られる。というのも、第1実施形態においては、発光機能層18が1個の開口部341又は342に形成されれば、その開口部341又は342に収められている2つ又は3つのピクセル電極13についての発光機能層18の形成が一挙に完了するからである。
また、第1実施形態では、発光機能層18が、隔壁層340(特に、図3の隔壁層340A参照)によって適当な数に分離されているので、当該発光機能層18中のある1箇所の不具合が、“全”ピクセルに影響を及ぼす、といったことも生じない。ここで“不具合”とは、具体的には例えば、発光機能層18Rが供給されるべき列のある一点に、発光機能層“18G”が混入したりする不具合とか、あるいは、ある列に侵入した微少塵にインクが凝集してしまったりする不具合等が考えられる。第1実施形態では、このような観点からも、その製造容易性が確保される。
【0042】
(2) また、第1実施形態では、このような製造容易性の向上が図られながら、輝度ムラの発生を未然に防止することができる。これは、以下の事情による。
すなわち、第1実施形態では、上述のように、図3又は図4中上下方向、あるいは、ある列に沿った隔壁層340の配列パターンが、他の列におけるそれとは異なっている。例えば、図6に模式的に示すように、図3の符号“P1”を付した列の隔壁層340の配列パターンは、左から順に、隔壁層340、2つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、続いて2つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、以後同様ということが繰り返される。一方、図3の符号“P2”を付した列の隔壁層340の配列パターンは、左から順に、隔壁層340、1つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、続いて2つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、以後同様ということが繰り返される。
【0043】
このようであると、図6の上段及び下段では、発光機能層18の原料液滴DRの乾燥態様が異なることになる。すなわち、まず、図6の上段及び下段のいずれにおいても、図示するように、隔壁層340の側壁によって囲まれた空間(即ち、開口部341又は342)には、原料液滴DRが供給されるが、発光機能層18は、この原料液滴DRが乾燥させられることで得られる。ちなみに、図6の上段及び下段はそれぞれ、図3のP1列及びP2列に対応する、つまりいずれも前記第3列群に属することから、これらに関する原料液滴DRの供給及びその乾燥はほぼ同時に行われることになる。
この原料液滴DRの乾燥は、その端部、即ち「区切り部」たる隔壁層340(あるいは、この場合、隔壁層340Aと言ってもよい。)の存在位置ないしその近傍から始まる。図6に示す“丸印付き矢印”はその様子を表しており、その中の“丸印”が乾燥開始点を、それとは反対端たる矢印の終端点が乾燥終了点を表している。
これによると、図6の上段と下段とでは、乾燥開始点はずれていることがわかり、したがってまた、乾燥終了点もずれていることがわかる。つまり、図6の上段及び下段間では、原料液滴DRの乾燥態様が異なるのである。これはいうまでもなく、隔壁層340の配列パターンが互いに異なっていることによっている。
【0044】
このようなことから、第1実施形態では、素子基板7全面に関し、原料液滴DRの乾燥についての一様の乾燥ムラが生じることがない。例えば、仮に、図3の隔壁層340Aが存在せず、素子基板7の全長に亘る「ストライプ状」の溝が存在する場合を仮定すると、その乾燥終了点は当該素子基板7を横切る直線の上に並ぶ、等ということが生じてしまう。そうすると、その結果、有機EL物質等の有効成分の凝集等が、ある特定の領域に集中する、といった事象を発生させてしまうおそれが高まるのである。こうなると、複数の有機EL素子8全体による画像表示等において、輝度ムラがより目立つことになる。
第1実施形態では、そのような不具合は発生しないのである。
【0045】
以上は、たまたま、第3列群に属するP1列及びP2列の例に即して述べたが、同じことは、第1列群及び第2列群についても当てはまることは述べるまでもない。
結局、第1実施形態によれば、このようにして、輝度ムラの発生を未然に防止することができるのである。
【0046】
<第2実施形態>
以下では、本発明の第2の実施の形態に係る有機EL装置について、図7乃至図11を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態における有機EL装置の基本的な構成は、第1実施形態の有機EL装置と実質的に同じである。したがって、以下では、両者で共通する部分に関する図面の符号は共通に用いることとし、また、その説明は省略ないし簡略化することとする。
【0047】
第2実施形態の有機EL装置は、図7と図3、図8と図4、あるいは図10と図5とを対比参照するとわかるように、上記第1の実施形態と多くの共通点をもつ。そのうち、本発明に関する、代表的なものを挙げれば、次のようである。
【0048】
(1) 第2実施形態でも、隔壁層340が存在し、“開口部”が形作られる。また、この“開口部”は、やはり“長円形状”を持つ。
(2) 1個1個のピクセル電極13の形状は、第1実施形態と全く同じである。また、これらがマトリクス状の配列に従って並べられていることも同じである(なお、図7では、煩雑さを避けるため、同図中、最左列かつ最上段に位置するピクセル電極13のみ図示している。)。
(3) 第2実施形態においても、前述したと同様の、第1、第2及び第3列群の区分けが存在する(図8と図4とを対比参照。)。すなわち、図8に示すように、“開口部”は、図中左から1,4,6,…番目に位置する各列から構成される第1列群、同じく2,5,7,…番目に位置する各列から構成される第2列群、及び、3,6,9,…番目に位置する各列から構成される第3列群、のいずれかのグループに属する。これら各列群の意義、即ちそれぞれが発光機能層18R、18G及び18Bに対応することも同じである。
【0049】
このように多くの共通点をもちはするが、第2実施形態は、上記第1実施形態と対比すると、主に、“開口部”の配列態様、及び、電極分離層345に代わる電極分離帯347の存在という各点において異なっている。
【0050】
まず、第2実施形態において、“開口部”は、図7又は図8に示すように、その1個1個の面積がすべて異なっていると言っても過言ではない程、それぞれ異なっている。例えば、これらの図の最左列かつ最上段に位置する開口部343は、その内部に3つのピクセル電極13を収める長さをもつが、その右隣に位置する“開口部”は、少なくとも6つのピクセル電極13を収める長さ、より正確には図示しきれない程の長さをもつ。また、更にその右隣の“開口部”は、4つのピクセル電極13を収める長さをもつ。
このように、第2実施形態では、様々な大きさの“開口部”が存在する。ただし、すべての“開口部”の各々が異なる面積をもつということではない。例えば、開口部343自身を含めず、そこから4列離れた列の図中最上方に位置する“開口部”は、開口部343と同様、3つのピクセル電極13を収める。
なお、このようであるから、第2実施形態においては、全ての“開口部”に、符号ないし名前を付けることはしない。第2実施形態の説明では、前述した図7又は図8に示す最左列かつ最上段に位置する“開口部”についてのみ、特別に“343”という符号を付けることとする。
【0051】
一方、第2実施形態では、そのような様々な面積をもつ“開口部”が、特別に整然とした規則に従うことなく配列される。例えば、開口部343の図中下方には、2つのピクセル電極13を収める開口部が並び、図7又は図8中最右端に位置する開口部(これは、開口部343と同様、3つのピクセル電極13を収める。)の図中下方には、3つ以上のピクセル電極13を収める開口部が並ぶ、というようである。
【0052】
要するに、このような状況を一言でいうとすれば、その各々がランダムな大きさ、あるいは面積をもつ開口部のそれぞれが、ランダムに並んでいるのである。
【0053】
一方、第2実施形態では、第1実施形態では不存在の電極分離帯347が存在する。この電極分離帯347は、図10に比較的よく示されているように、積層構造物250を構成する第2層間絶縁膜302の表面の一部である。
【0054】
より詳細に、例えば開口部343を例にとって説明すると、次のようである。
まず、開口部343の内部には、既述のように、あるいは図9及び図10等に示すように、3つのピクセル電極13が収められている。また、これら3つのピクセル電極13に対応するように、かつ、その各々の辺縁を覆うように、3つの親液層346が形成されている。この親液層346は、上記第1実施形態に即していうなら、電極分離層345に該当するものであり、当該電極分離層345と同様、例えばSiO2、あるいはSiN等から作られる。ただし、親液層346は、ピクセル電極13間に位置付けられはせず、ピクセル電極13間を分離する機能をもつわけではない。
この親液層346は、例えば酸素プラズマ処理等の親液性付与処理を受ける。
なお、これに関連して、上記第1実施形態では特に説明しなかったが、前記電極分離層345についても、親液層346と同様に、親液性付与処理を受けさせると好適である。
【0055】
電極分離帯347は、開口部343内において、ピクセル電極13の非形成領域、及び、前記親液層346の非形成領域に対応する。つまり、これらピクセル電極13及び親液層346が形成されず、その下地面たる第2層間絶縁膜302の表面があたかも露出したかの如き部分が、即ち電極分離帯347なのである。
この電極分離帯347は、例えばCF4プラズマ処理等の撥液性付与処理を受ける。かかる処理を好適に行うために、第2層間絶縁膜302は、隔壁層340と同様、フッ素系樹脂、あるいは更に、アクリル樹脂の他、エポキシ樹脂、あるいはポリイミドなどから作られて好適である。
【0056】
以上に加えて、第2実施形態では、発光機能層18に関し、上記第1実施形態と以下の点で異なる。すなわち、上記第1実施形態では、発光機能層18は、少なくとも有機発光層を含むことになっているが、第2実施形態では、図10に示すように、少なくとも有機発光層18aと正孔注入層18bとを含む。このうち正孔注入層18bは、陽極たるピクセル電極13から有機発光層18aへと正孔を注入する機能をもつ。この正孔注入層18bを構成する正孔注入材料としては、例えば、バイエル社のバイトロン(登録商標)を含み得る。
【0057】
以下では、以上述べたような第2実施形態に係る有機EL装置によって奏される作用効果について説明する。
この第2実施形態では、上記第1実施形態と同様、隔壁層340が本発明にいう「区切り部」への該当性を有するのに加えて、上述した電極分離帯347もまた、その「区切り部」への該当性を有する。
【0058】
より詳細に、上記第1実施形態と同様、「第3列群」を例にとって説明すると、次のようである。
まず、第2実施形態でも、図7に示すように、第1実施形態と同様の隔壁層340Aが存在する。この隔壁層340Aは、図10、あるいは図8に示すように、発光機能層18全体の、つまり上述した有機発光層18a及び正孔注入層18bの双方を、隣接する発光機能層18全体と区切る区切り部として機能する。
【0059】
加えて、第2実施形態では、電極分離帯347が、発光機能層18を分離する機能を果たす。ただし、この場合、当該電極分離帯347の長さに応じて、発光機能層18のうち、有機発光層18a及び正孔注入層18bの双方が分離されるのか、あるいはその一方のみが分離されるのか(更にいえば、いずれも分離されないのか)が異なる。
すなわち、開口部343では、図9、あるいは図10に示すように、2つの電極分離帯347が存在するが、そのうち一方の長さはW1、他方の長さはW2(>W1)となっている。ここで、これら電極分離帯347は、前述のように撥液性付与処理を受けていることを考えに入れると、より長さの大きい電極分離帯347は、当該電極分離帯347に接する2つの発光機能層18を互いにより遠くに遠ざける、ということが生じる。
もう少し具体的にいうと、図10に示すように、長さW2もつ電極分離帯347は、正孔注入層18bについても、有機発光層18aについても分離する機能をもつ。これは、当該電極分離帯347は、比較的大きい長さをもつために、正孔注入層18bを分離した後にも、その表出部分が比較的広く残存し、有機発光層18aを分離するのに十分な撥液性能を発揮することが可能だからである。他方、やはり図10に示すように、長さW1もつ電極分離帯347は、正孔注入層18bについては分離するが、有機発光層18aは分離しない。これは、当該電極分離帯347は、比較的小さい長さをもつために、正孔注入層18bを分離した後には、もはやその表出部分が極めて狭くなり、有機発光層18aを分離するのに十分な撥液性能を発揮することが不可能となるからである。
【0060】
なお、いま述べたところに即していえば、電極分離帯347(その長さがW1あるかW2であるかに関わらない)及び隔壁層340のいずれもが、本発明にいう「第2区切り部」への該当性を有する。
また、このうち特に、長さW2をもつ電極分離帯347、及び隔壁層340は、本発明にいう「第1区切り部」への該当性を有する。
【0061】
以上の趣旨を、図11を参照して改めて説明する。
この図11は、上記第1実施形態における図6と同趣旨の図である。すなわち、図11は、その上段が、図7の符号“P3”を付した列の隔壁層340A及び電極分離帯347の配列パターンを模式的に表しており、その下段が、図7の符号“P4”を付した列の隔壁層340A及び電極分離帯347の配列パターンを模式的に表している。
前者(P3列)は、左から順に、〔0〕隔壁層340、〔1〕長さ(中)の電極分離帯347、〔2〕長さ(大)の電極分離帯347、〔3〕長さ(中)の電極分離帯347、〔4〕隔壁層340A(なお、その長さは“小”)、及び〔5〕隔壁層340A(なお、その長さは“大”)、というように並ぶ。
一方、後者(P4列)は、左から順に、〔0〕隔壁層340、〔1〕長さ(中)の電極分離帯347、〔2〕隔壁層340A(なお、その長さは“大”)、〔3〕長さ(中)の電極分離帯347、〔4〕長さ(小)の電極分離帯347、及び〔5〕長さ(大)の電極分離帯347、というように並ぶ。
これらの場合、長さが“大”であるというのは、図9又は図10でいう長さW2に対応しており、したがって、その長さをもつ電極分離帯347は、発光機能層18全体を分離する。図11では符号D1が付された記号がそれを意味しており、この記号は図7においても図示されている。また、長さが“中”であるというのは、図9又は図10でいう長さW1に対応しており、したがって、その長さをもつ電極分離帯347は、発光機能層18中、正孔注入層18bのみを分離する。図11では符号D2が付された記号がそれを意味しており、この記号も図7において図示されている。
【0062】
なお、長さが“小”である電極分離帯347は、ピクセル電極13間を分離することに主眼があって、電極分離層18を分離しない(図11及び図7では符号D0(しかも当該符号のみ)が付されている。)。よって、これは、本発明にいう「第1区切り部」及び「第2区切り部」への該当性を有せず、あるいはそもそも「区切り部」への該当性を有しない。
また、隔壁層340については、その長さの如何に関わらず、発光機能層18の全体を分離する。
【0063】
以上のことから結局、発光機能層18、あるいはこれを構成する有機発光層18a、正孔注入層18bの分離の様子は、図11に示すようになる。
【0064】
このようなことから、第2実施形態では、既述のように、ランダムな大きさの“開口部”がランダムに並べられた構造をもつのではあるが、そのような第2実施形態であっても、上記第1実施形態において守られていた一定の規則は守られていることが明らかになる。
すなわち、第1に、より大きな観点からは、ある列に沿った隔壁層340及び電極分離帯347の配列パターンは、他の列におけるそれとは異なっている。これは、図7乃至図11から明らかである。
また第2に、より具体的には、ある列群を構成する各列のうち、隣接し合う各列(例えば、図7及び図11のP3列及びP4列のように第4列目と第7列目、等々)上に位置する隔壁層340及び電極分離帯347の、当該各列に沿った配列パターンは互いに異なっている。
【0065】
なお、本発明にいう「区切り部」が、この第2実施形態のように、隔壁層340と電極分離帯347というように、異なる種別を含みながら構成される場合においては、ある列の配列パターンが他の列のそれと異なる、というときの「異なる」とは、前記種別の相違も勘案された上で判別される。例えば、前述の図11において、その上段には、長さ(大)の電極分離帯347が存在するが、その下段には、これに対応して、長さ(大)の隔壁層340が存在する。この場合、両者は、発光機能層18の全体を分離するという点では機能的にはほぼ同じだが、配列パターンは異なる、とみなされるのである。このような場合であっても、両者についての発光機能層18を分離する機能には相違が生じ得るからである(例えば、隔壁層340による分離は相当程度確実だが、電極分離帯347によるそれはそこまでには至らないと考えられるので、そうであれば、前述した乾燥態様にも相違は生じ得るのである。)。
本発明にいう「区切り部の配列パターン」が「異なる」ということは、以上の事情を踏まえて解釈される。同じことは、ある列郡中の隣接する各列の配列パターンが「異なる」という場合にもいえる。
【0066】
以上述べたところから明らかなように、この第2実施形態においても、上記第1実施形態によって奏された効果と本質的に異ならない作用効果(即ち、製造容易性向上及び輝度ムラ発生抑止)が奏されることになる。
加えて、第2実施形態においては、以下に記す特有の効果もまた奏される。
【0067】
(1) 第2実施形態に係る有機EL装置は、上述のように、“開口部”の各々がランダムな大きさをもち、かつ、これらがランダムに並べられる構造をもつので、乾燥開始点及び乾燥終了点の素子基板7全面に関するばらつきの程度は、第1実施形態に比べても、より大きくなる。つまり、有機EL物質等の有効成分の凝集等が仮に生じたとしても、それは、素子基板7全面に関してランダムに散在するということになる。したがって、第2実施形態では、輝度ムラの発生抑止効果をより実効的に享受することが可能である。
【0068】
(2) 第2実施形態では、上述のように、第1実施形態における隔壁層340に加えて、電極分離帯347も「区切り部」への該当性を有し、また、該電極分離帯347の長さの相違に応じて、発光機能層18の分離態様が異ならしめられる。これにより、第2実施形態では特に、例えば図11をみるとわかるように、有機発光層18aの区切られ方と、正孔注入層18bの区切られ方とは異なっている。つまり、この場合、有機発光層18aに関する乾燥工程での乾燥態様と、正孔注入層18bに関するそれとは異なることになる。これによれば、前述した第1実施形態にかかる効果が、いわば、素子基板7の面に垂直な方向に沿って重畳的に享受され得ることになる。したがって、輝度ムラの発生抑止効果は、より実効的に享受され得る。
【0069】
(3) 第2実施形態では、電極分離帯347が「区切り部」としての機能を果たしうるので、開口部それ自体の大きさは、第1実施形態に比べて、比較的大きめにとることができる(例えば、前述のように、少なくとも6つ以上のピクセル電極13を含む“開口部”が存在し得る。)。これによれば、複数のピクセル電極13についての発光機能層18の一挙形成による製造容易性向上と言う効果が、より実効的に享受され得る。なお、この場合、図7又は図11に符号D0を付して示した、長さ(小)の電極分離帯347(即ち、発光機能層18を分離する機能をもたない電極分離帯347)の配置態様を有効に設定すれば、かかる効果の更なる実効的な享受に貢献する可能性がある。
【0070】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明に係る発光装置は、上述した形態に限定されることはなく、以下に述べる各種の変形形態を採り得る。
【0071】
(1) 上述した実施形態では、発光機能層18が、少なくとも有機発光層を含み(第1実施形態)、あるいは、有機発光層18aと正孔注入層18bとを含む(第2実施形態)場合について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。発光機能層18は、より一般に、それ以外の他の層として、電子ブロック層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層の一部又は全部を備えていてよい。
【0072】
(2) 上記第2実施形態では、ある列における隔壁層340及び電極分離帯347の配列パターンは、他の列におけるそれとは異なっているものの、例えば図8等に比較的よく示されているように、長さが“大”である電極分離帯347の図中左右方向に沿って並ぶ隔壁層340、あるいは電極分離帯347は、同じく“大”の長さをもち、あるいは、長さが“中”である電極分離帯347に並ぶ隔壁層340、あるいは電極分離帯347は、同じく“中”の長さをもつ、というように、図中左右方向については一定の規則性が存在する。本発明は、このような形態にも限定されない。つまり、場合によっては、いま述べたような規則性さえも破られてよい(即ち、これもランダムとされてよい)のである。
【0073】
(3) 上記実施形態に係る有機EL装置は、ボトムエミッション型であるが、本発明はかかる形態に限定されない。本発明は、トップエミッション型、デュアルエミッション型のいずれに対しても適用可能である。
なお、トップエミッション型とする場合には、発光機能層18から発した光を素子基板7とは反対側に進行させるための反射層が必要である。この反射層は、例えば図5を前提とする限り、第1層間絶縁膜301上、且つ、第2層間絶縁膜302下に、かつ、ピクセル電極13の形成領域に対応するように形成するとよい。なお、この場合、素子基板7は、セラミックスや金属等の不透明材料で作られてよく(これとは反対に、ボトムエミッション型の場合、素子基板7は、透光性材料から作られている必要がある。)、また、対向電極5は透光性材料から作られているとよい。
【0074】
<応用>
次に、本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器について説明する。図12は、上記実施形態に係る有機EL装置を画像表示装置に利用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての有機EL装置と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。
図13に、上記実施形態に係る有機EL装置を適用した携帯電話機を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての有機EL装置1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機EL装置に表示される画面がスクロールされる。
図14に、上記実施形態に係る有機EL装置を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての有機EL装置を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置に表示される。
【0075】
上記実施形態に係る有機EL装置が適用される電子機器としては、図12から図14に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1の単位回路Pの詳細を示す回路図である。
【図3】図1の有機EL装置の画像表示領域の一部を拡大視した平面図(ただし、発光機能層形成前の状態を示す平面図)である。
【図4】図1の有機EL装置の画像表示領域の一部を拡大視した平面図(ただし、発光機能層形成後の状態を示す平面図)である。
【図5】図4のX1-X1断面図である。
【図6】図3中符号“P1”を付した列と符号“P2”を付した列に関する、隔壁層の配列パターン等を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係り、図3と同趣旨の平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係り、図4と同趣旨の平面図である。
【図9】図8の開口部“343”のみを拡大視して示す平面図である。
【図10】図8のX2-X2断面図である。
【図11】図7中符号“P3”を付した列と符号“P4”を付した列に関する、隔壁層及び電極分離帯の配列パターン等を模式的に示す説明図である。
【図12】本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る有機EL装置を適用した他の電子機器を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る有機EL装置を適用したさらに他の電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
7……素子基板、7a……画像表示領域、P……単位回路、8……有機EL素子、13……ピクセル電極、18……発光機能層、18a……有機発光層、18b……正孔注入層、18R……(赤色光を発する有機EL物質を含む)発光機能層、18G……(緑色光を発する有機EL物質を含む)発光機能層、18B……(青色光を発する有機EL物質を含む)発光機能層、5……対向電極、340,340A……隔壁層、341,342,343……開口部、345……電極分離層、346……親液層、347……電極分離帯、11……回路素子薄膜、301……第1層間絶縁膜、302……第2層間絶縁膜、40……バリア層
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンスにより発光する発光装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、即ち有機EL(electro luminescent)素子が提供されている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機薄膜をピクセル電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。両電極間に電流が流されると同時に、前記有機薄膜にも電流が流れ、これにより、当該有機薄膜、ないしは有機EL素子は発光する。
このような有機EL素子を多数並べ、かつ、その各々につき発光及び非発光を適当に制御すれば、所望の意味内容をもつ画像等の表示が可能となる。
かかる有機EL素子、ないしはこれを備えた画像表示装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2001−185354号公報
【特許文献2】特開2002−75640号公報
【特許文献3】特開2003−208979号公報
【特許文献4】特開平10−151755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のような画像表示装置においては、全有機EL素子のそれぞれが保有する有機薄膜の量が、均一であること、より現実的には一定の範囲内に収まることが好ましい。そうでなければ、発光に寄与する有機EL物質の量に相違が生じ、結果的に、輝度ムラを発生させるおそれが高まるからである。この要請は、当該有機薄膜が、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて製造される場合、その原材料たる液滴、ないしはインクの吐出量が各有機EL素子について同じであるべきである等の各個別の要請となって表れる。
しかし、上述の課題を解決することは一般に困難である。というのも、液滴塗布法(インクジェット法)では1回1回の吐出についてその量にムラが生じ得ること、また、液滴ないしインク塗布後の乾燥工程において各有機EL素子について乾燥ムラが生じ得ること等、完璧に統制することが困難な各種の要因が存在するからである。
とはいえ、これらの要因は、製造工程の管理を極めて厳格に行えば、一定程度解消することは可能ではある。しかし、そこには当然コスト上の限界が存在することは言うを待たない。結局、輝度ムラの発生を未然に防止すべく全有機EL素子の有機薄膜保有量を同じにするという要請とともに、可能な限り、製造工程の簡易化、容易化が達成されることが望ましいのである。
【0004】
前記の特許文献1では、「インクジェット方式により形成され」る「EL層」を「複数の画素電極に渡って〔ママ〕連続させる」技術(特許文献1の〔請求項1〕)、より具体的には、当該EL層を「ストライプ状」、「長円形或いは長方形」に形成する技術が開示されている(特許文献1の要約書、あるいは〔図1〕等)。これにより、特許文献1では、「インクヘッドを連続的に走査させることでEL層の形成が可能となり処理時間を短縮することができる」(特許文献1の〔0010〕)とする。したがって、この特許文献1に開示される技術によれば、その意味においては、製造容易性が達成されるということができる。
【0005】
しかしながら、この特許文献1では、まず、前記の乾燥工程における不具合の発生が懸念される。というのも、例えば特許文献1の〔図1〕のように、EL層を「ストライプ状」に形成してしまうとすると、その内部のある1点を中心とした長手方向と短手方向とに存在する乾燥前の原料液滴量に甚大な差がある(即ち、一般に、前者の方が遥かに多い)ことになるからである。液滴ないしインク滴の乾燥は、その端部から進行するという一般的性質を勘案すると、このような場合では、乾燥ムラが(しかも、「複数の画素電極に」亘っての乾燥ムラが)極めて生じやすくなってしまうのである。
また、前述の各有機EL素子には、その各々に異なる色の光を発する有機薄膜が形成されることがある。例えば、ある有機EL素子は第1の有機薄膜を保有し、その隣の有機EL素子は第2の有機薄膜を保有する、というが如くである。ところが、この場合、何らかの要因によって第1の有機薄膜のみがあるべきところに、第2の有機薄膜が混入するという場合が生じ得ないではない(前記の特許文献2の〔0006〕参照)。この場合、その混入を受けた有機EL素子が思ったとおりに発光する可能性は低下する。このようなことを考えると、特許文献1に開示される技術は極めて不利である。というのも、この特許文献1では、前述した混入事象が発生した場合、ある1列に存在する“全”画素が思ったとおりに発光しない、という事態を招きかねないからである。
【0006】
このような事情は、多かれ少なかれ、前述した特許文献2及び3においても同様にあてはまる。というのも、特許文献2は、「溝」を形成するとともに、そこに「ノズルを沿わせるように」して「有機EL材料を前記溝内に流し込んで塗布する」技術(特許文献2の〔請求項1〕。なお、〔図2〕あるいは〔図5〕等参照。)を開示し、特許文献3は、「連続してなる複数の画素で構成され、周囲を隔壁で区切られたセル」に、「液滴噴射する」技術(特許文献3の〔請求項1〕。なお、〔0021〕、あるいは〔図1〕等、更には〔請求項2〕等にいう「ストライプ状」、参照。)を開示するものだからである。いま摘示したところからも明らかなように、これら特許文献2及び3においても、基本的に、特許文献1に関して述べた前記の不具合を逃れられないのである。
【0007】
一方、前記の特許文献4では、「1ライン内にインクをムラ無く分布させる」(特許文献4の〔0008〕)という目的を達するために、「複数回の走査で吐出したインクが、…1つのライン内で等しい間隔で並ぶ」ように(特許文献4の〔請求項1〕、あるいは〔0010〕、更には〔0148〕等参照)、当該インクを吐出する「インクジェット記録方法」(特許文献4の〔発明の名称〕)が開示されている。かかる手法を、前述の有機EL素子、ないしは画像表示装置の製造に適用すれば、たしかに、各有機EL素子の保有する有機薄膜量を所定の範囲内に止めることが一定程度可能になるということはできる。
しかしながら、この特許文献4の技術は、前述のように「複数回の走査」を前提とするものであり、しかも、十分満足のいく効果を得るためには、同一の画素に対する相当程度多数回の走査を要求するものと考えられる。そうすると、作業開始から完了までに必要となる時間は長期化することとなってしまい、この観点からみた場合の、特許文献4の製造容易性向上への貢献度はあまり高くはないと言い得る。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、輝度ムラ発生の未然防止と製造容易化という2つの課題を中心とした、前記の課題の全部又は一部を解決することの可能な発光装置及び電子機器を提供することを課題とする。
また、本発明は、それに付随し、又は関連する課題の解決をも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発光装置は、上述した課題を解決するため、基板と、前記基板上に、その各々がマトリクス状の配列に従って並べられる複数のピクセル電極と、該ピクセル電極の各々に対応し、かつ、その各々が、該ピクセル電極及び対向電極、並びに、これらに挟まれる発光機能層を含む複数の発光素子と、前記発光機能層を前記マトリクス状の配列の列方向に沿って複数個の部分に区切る区切り部と、を備え、前記マトリクス状の配列における、ある列の前記区切り部の配列パターンは、他の列の前記区切り部の配列パターンとは異なる。
【0010】
本発明によれば、発光機能層が、区切り部によって複数個の部分に区切られる。この場合、マトリクス状の配列におけるある列において、この「区切り部」によって区切られる発光機能層の数(即ち、「複数個の部分」の、その数)と、当該の列に並ぶピクセル電極の数とは異なっていてよい。したがって、前者の数が後者の数よりも少なければ、「区切り部」間の発光機能層を1個形成すれば、同じ区間に存在する複数のピクセル電極についての発光機能層の形成が一挙に完了する、ということになる。本発明では、このような観点からまず、その製造容易性が確保される。
また、本発明では、例えば前述のように、基板の全長に亘る「ストライプ状」の溝等が設けられるわけではなく、発光機能層が、「区切り部」によって適当な数に分離されているので、当該発光機能層中のある1箇所の不具合(例えば、前述の「混入」等)が、“全”画素に影響を及ぼす、といったことも生じない。本発明では、このような観点からも、その製造容易性が確保される。
【0011】
また、前述のような「区切り部」の存在によると、発光機能層が、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて作られる場合、その原料液滴ないしインク滴の乾燥開始点は、当該区切り部が存在する位置、あるいはその近傍に設定され得ることになる(液滴ないしインク滴の乾燥は、その端部から始まるからである。)。
そして、本発明では、この「区切り部」の、ある列における配列パターンが、他の列におけるそれとは異なっている。つまり、これによると、これらある列及び他の列では、前記の乾燥開始点が一般に異なるということになり、したがってまた、乾燥終了点も一般に異なるということになる。例えば、ある列における乾燥開始点(即ち、区切り部及びその近傍)のすぐ隣の列の上の点は、乾燥終了点である、といった如くである。
これによれば、基板全面に関する、一様の乾燥ムラが生じることがない。例えば、前述した、基板の全長に亘るような「ストライプ状」の溝を形成する場合では、乾燥開始点はその溝の端部であり、乾燥終了点はその溝の長手方向の中央部分である、ということになり得るため、当該の溝を当該基板上に一様に並べてしまうと、乾燥終了点が当該基板を横切るような直線の上に並ぶ、ということが生じてしまう。すると、その結果、有機EL物質等の有効成分の凝集等が、ある特定の領域に集中する、といった事象を発生させてしまうおそれが高まるのである。こうなると、複数の発光素子全体による画像表示等において、輝度ムラがより目立つことになる。
本発明において、このような不具合は発生しないのである。
結局、本発明によれば、製造容易性の向上が図られながら、輝度ムラの発生を未然に防止することができる。
なお、本発明にいう「発光素子」は、ピクセル電極及び対向電極間に電流が流されることで、発光機能層に電流が流れ、それにより、当該発光機能層が発光する素子であることを前提とする。
【0012】
この発明の発光装置では、その各々が、前記マトリクス状の配列の列方向に沿って存在する前記ピクセル電極の1つ以上をその内部に収める、複数の開口部を形作るように、前記基板上に形成される隔壁層を更に備え、前記区切り部は、前記隔壁層を含む、ように構成してもよい。
この態様によれば、「区切り部」が、一般にいわゆる「バンク(bank)」と呼ばれる部材によって、好適に構成される。
なお、本発明において、「複数の開口部を形作る」という性質をもつ層に、「隔壁層」という名が与えられているのは、当該層を断面視した場合、ある1つの開口部と、その隣の開口部との間に、あたかも「隔壁」が存在するかのような状態が呈されるからである。
【0013】
また、本発明の発光装置では、前記区切り部は、そのうちの少なくとも一部が前記発光機能層の原料液滴に対する撥液性を備えている、ように構成してもよい。
この態様によれば、「区切り部」が撥液性をもつことにより、発光機能層が液滴塗布法(インクジェット法)を用いて作られる場合、その原料液滴ないしインク滴は、当該区切り部の存在する位置、ないしはその近傍からはじかれる。つまり、本態様では、「区切り部」としての機能がよりよく発揮されることになる。
なお、「区切り部」を、より具体化した態様としては、前述の「隔壁層」、あるいはここで述べた「撥液性」をもつもののほか、例えば、前記の隔壁層の厚さよりは小さい厚さをもつ「凸部」等がそれに該当し得る。
【0014】
この態様では、前記基板上に形成され、前記ピクセル電極を形成するための下地面を提供する電極形成用下地膜を更に備え、前記区切り部は、前記下地面の一部を含む、ように構成してもよい。
これによれば、撥液性をもつ区切り部が、前述した電極形成用下地膜の下地面の一部を含む。つまり、本態様では、「区切り部」を形成するために何らかの特別の部材を用意するというのではなく、当該発光装置を構成するのに殆ど必然的に必要となる部材を利用して、「区切り部」が構成され得るようになっているので、材料費の節約、製造コストの低減等という意味において、製造容易性を更に向上させることができる。
【0015】
あるいは、本発明の発光装置では、前記マトリクス状の配列における各列のうちの、ある列群は、前記発光機能層として、当該ある列群に固有の光を発する発光機能層を備え、当該ある列群のうち、隣接し合う各列の前記区切り部の配列パターンは互いに異なる、ように構成してもよい。
この態様によれば、典型的には例えば、全列数がN(ただし、Nは正の整数)あるとして、そのうちの第1,4,7,…,(N−2)列目の各列を含む“第1の列群”が赤色に対応し、第2,5,8,…,(N−1)列目の各列を含む“第2の列群”が緑色に対応し、第3,6,9,…,N列目の各列を含む“第3の列群”が青色に対応する、ということになる。
この場合、これら第1,第2及び第3の列群は、それぞれ、赤色、緑色及び青色の各「光を発する発光機能層を備え」るのであるから、好適には例えば、それら発光機能層の各々は、一連ではあるが別々の、各機会に形成される。例えば、液滴塗布法(インクジェット法)によれば、それぞれの色の光を発する有機EL物質を含むインクを塗布した後、それを乾燥させる、という工程が3回繰り返し行われる、というようである。
ところで、前述した、乾燥開始点及び乾燥終了点を基板全面に関してばらつかせる考え方は、そうした1回1回の製造機会に当てはめられて好適である。そうすれば、その各色について、前述した一様な乾燥ムラの発生を抑制することができるからである。
ここで、本態様では、前述の具体例に即して言えば、赤色に対応する第1列目と第4列目における区切り部の配列パターンが異なる、ということになる(そのほか、緑色に対応する第8列目と第11列目、あるいは青色に対応する第57列目と第60列目等々、挙げればきりがない。)。つまり、本態様では、先に述べた乾燥開始点及び乾燥終了点の基板全面に関するばらつかせが、当該各色に対して実現されるのである。
このようにして、本態様によれば、上述した本発明にかかる効果がより実効的に奏される。
【0016】
あるいは、本発明の発光装置では、前記発光機能層は、光を発する発光層と、それ以外の1以上の層と、を含み、前記区切り部は、前記発光層及び前記1以上の層の少なくとも1つを区切ることをもって、前記発光機能層を複数個の部分に区切る、ように構成してもよい。
この態様によれば、発光機能層は、前述の発光層の他、例えば、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層等の一部又は全部を含む。そして、本態様では、前記の「区切り部」が、このうちの少なくとも1つの層を区切ることをもって、発光機能層を複数個の部分に区切るのである。この場合、その区切りの対象となった層について、前述した効果が奏されることになる。
より言うと、本態様によれば、発光機能層のうち、例えば発光層については、従来のように各列ごと「ストライプ状」の一様な形成を実行するとしても、その他の少なくとも1層について、前記の効果を享受することができるのであるから、当該発光機能層全体に関していえば、前述した本発明に係る効果を一定程度享受することが可能となるのである。つまり、これによると、前者により、製造容易性をより向上させながら、後者により、本発明に固有の効果が享受される、という、いわば良いとこ取りが可能となるのである。
【0017】
この態様では、前記区切り部は、前記発光層を前記列方向に沿って複数個の部分に区切る第1区切り部と、前記1以上の層のうちのある層を前記列方向に沿って複数個の部分に区切る第2区切り部と、を含み、前記マトリクス状の配列における、ある列の前記第1区切り部の配列パターンは、その列の前記第2区切り部の配列パターンとは異なる、ように構成してもよい。
これによれば、少なくとも、発光層と、それとは別の1層について、“区切り”が実行される。この場合、その“区切り”は、前者については、「第1区切り部」によって、後者については、「第2区切り部」によって実現される。
そして、本態様では更に、マトリクス状の配列における、ある列の第1区切り部の配列パターンは、その列における第2区切り部の配列パターンと異なる。つまり、発光層に関する乾燥工程での乾燥態様と、前記別の1層に関するそれとは異なることになる。
したがって、この態様によると、前述した本発明にかかる効果が、いわば、基板の面に垂直な方向に沿って重畳的に享受され得ることになるのである。
なお、本態様においては、冒頭に述べた、本発明にいう「ある列の…区切り部の配列パターンは、他の列における…区切り部の配列パターンとは異なる」という前提的要件(以下、便宜上「条件I」という。)については、前述した、第1区切り部、あるいは第2区切り部の少なくとも一方が満たせばよい。このような考え方を根拠に、例えば、本態様にいう「第2区切り部」は、その配列パターンが「第1区切り部の配列パターン」「とは異なる」という、本態様固有の条件を満たす限り、前記条件Iを満たす必要は必ずしもない。例えば、この場合、この第2区切り部は、基板全面に関して、全く規則的に配列されてもよいのである。
【0018】
また、本発明の発光装置では、前記発光機能層は、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて形成される、ように構成してもよい。
この態様は、上に述べたところからも明らかなように、本発明に係る効果を極めて実効的に享受することのできる最好適な態様の1つである。
【0019】
一方、本発明の電子機器は、上記課題を解決するため、上述した各種の発光装置を備える。
本発明の電子機器は、上述した各種の発光装置を備えているので、その製造が容易でありながら、なお高精細な画像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下では、本発明に係る第1の実施の形態について図1乃至図6を参照しながら説明する。なお、これらの図面及び後に参照する図7以降の各図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
【0021】
図1は、第1実施形態の有機EL装置の一例を示す平面図である。
この図1において、有機EL装置は、素子基板7と、この素子基板7上に形成される各種の要素を備えている。ここで各種の要素とは、有機EL素子8、走査線3及びデータ線6、走査線駆動回路103A及び103B、データ線駆動回路106、プリチャージ回路106A、並びに対向電極用電源線201である。
【0022】
有機EL素子(発光素子)8は、図1に示すように、素子基板7上に複数備えられており、それら複数の有機EL素子8はマトリクス状に配列されている。有機EL素子8の各々は、ピクセル電極、発光機能層及び対向電極から構成されている。これら各要素に関しては後に改めて触れる。
画像表示領域7aは、素子基板7上、これら複数の有機EL素子8が配列されている領域である。画像表示領域7aでは、各有機EL素子8の個別の発光及び非発光に基づき、所望の画像が表示され得る。なお、以下では、素子基板7の面のうち、この画像表示領域7aを除く領域を、「周辺領域」と呼ぶ。
【0023】
走査線3及びデータ線6は、それぞれ、マトリクス状に配列された有機EL素子8の各行及び各列に対応するように配列されている。より詳しくは、走査線3は、図1に示すように、図中左右方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されている走査線駆動回路103A及び103Bに接続されている。一方、データ線6は、図中上下方向に沿って延び、かつ、周辺領域上に形成されているデータ線駆動回路106に接続されている。これら各走査線3及び各データ線6の各交点の近傍には、前述の有機EL素子8等を含む単位回路(ピクセル回路)Pが設けられている。
【0024】
この単位回路Pは、図2に示すように、前述の有機EL素子8を含むほか、nチャネル型の第1トランジスタ68、pチャネル型の第2トランジスタ9、及び容量素子69を含む。
単位回路Pは、電流供給線113から給電を受ける。複数の電流供給線113は、図示しない電源に接続されている。
また、pチャネル型の第2トランジスタ9のソース電極は電流供給線113に接続される一方、そのドレイン電極は有機EL素子8のピクセル電極に接続される。この第2トランジスタ9のソース電極とゲート電極との間には、容量素子69が設けられている。一方、nチャネル型の第1トランジスタ68のゲート電極は走査線3に接続され、そのソース電極はデータ線6に接続され、そのドレイン電極は第2トランジスタ9のゲート電極と接続される。
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線3を走査線駆動回路103A及び103Bが選択すると、第1トランジスタ68がオンされて、データ線6を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子69に保持する。そして、第2トランジスタ9が、データ信号のレベルに応じた電流を有機EL素子8に供給する。これにより、有機EL素子8は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0025】
素子基板7上の周辺領域上には、プリチャージ回路106Aが備えられている。このプリチャージ回路106Aは、有機EL素子8へのデータ信号の書込み動作に先立って、データ線6を所定の電位に設定するための回路である。
また、対向電極用電源線201(以下、単に「電源線201」という。)は、素子基板7の外形輪郭線にほぼ沿うように、平面視してΠ字状の形状をもつ。この電源線201は、有機EL素子8の対向電極に例えばグランドレベル等の電源電圧を供給する。
なお、前述では、走査線駆動回路103A及び103B、データ線駆動回路106、並びにプリチャージ回路106Aのすべてが素子基板7上に形成される例について説明しているが、場合によっては、そのうちの全部又は一部を、フレキシブル基板に形成するのであってもよい。この場合、当該のフレキシブル基板と素子基板7との両当接部分に適当な端子を設けておくことにより、両者間の電気的な接続を可能とする。
【0026】
以上述べたような基本的構成を備える有機EL装置は、より詳細には、図3乃至図5に示すような構造をもつ。
なお、図3と図4とは、いずれも有機EL装置の画像表示領域7aの一部を拡大視する平面図であるという点について趣旨を同じくするが、前者は、発光機能層18形成前の状態を表し、後者は、発光機能層18形成後の状態を表している点で異なっている。また、図3では、ピクセル電極13(図中破線参照)を図示しているが、図4では、煩雑さを避けるため、その図示が省略されている。
【0027】
有機EL装置は、図3又は図4に示すように、隔壁層340と、これによって形作られる、略長円形状の開口部341及び開口部342それぞれの複数と、を備えている。
このうち隔壁層340は、図5に示すように、積層構造物250の一部を構成しており、ピクセル電極13の図中上層として、かつ、コンタクトホール360を埋めるように形成されている。この隔壁層340は、例えば絶縁性の透明樹脂材料、その中でも特に撥液性をもつ材料で作られて好適である。より具体的には例えば、フッ素系樹脂、あるいは更に、アクリル樹脂の他、エポキシ樹脂、あるいはポリイミドなどを挙げることができる。
なお、隔壁層340がこのような各種の樹脂材料から作られている場合には、その基層を、例えばSiO2等の無機材料で作るようにするとよい(即ち、この場合、隔壁層340は下層側に無機物質、上層側に有機物質という積層構造を持つことになる。)。これによれば、ピクセル電極13が後述するようにITO等から作られている場合においても、当該ピクセル電極13と隔壁層340との密着性を高めることができる。
【0028】
一方、開口部341及び開口部342は、図3乃至図5に示すように、隔壁層340(より正確に言えば、その側壁)によって囲われた空間とも言い換えられ得る。この開口部341、あるいは開口部342の底面は、ピクセル電極13の表面に一致する。また、この開口部341、あるいは開口部342の内部には、発光機能層18、対向電極5及びバリア層40等が含まれている(図5参照)。
【0029】
まず、開口部341は、図3、あるいは図4に示すように、図中上下方向に沿った長さが相対的に小さい長円形状をもつ。一方、開口部342は、同長さが相対的に大きい長円形状をもつ。なお、ここでいう“長円形状”とは、図に示すように、楕円ではなく、長方形と2つの半円形とを接合したかの如き形状(より詳しくは、前記2つの半円形の径部分それぞれが、前記長方形のそれぞれの短辺部分に接合したかの如き形状)を指す用語として用いている。
このような形状の相違に対応するように、開口部341は、図3によく示されているように、その内部に、図中上下方向に沿って並ぶ2つのピクセル電極13を収めるのに対して、開口部342は、その内部に同方向に沿って並ぶ3つのピクセル電極13を収める。なお、1つ1つのピクセル電極13を平面視した形状は、概ね長方形状である。
【0030】
なお、前述のピクセル電極13の1個1個の間は物理的に分断されていて、電気的に短絡していない(図5も参照)。また、すべての開口部341、あるいはすべての開口部342の内部におけるピクセル電極13間には、図3乃至図5に示すように、例えばSiO2、あるいはSiN等からなる電極分離層345が形成されている。このようなことから、ピクセル電極13の一単位とは、前述した“長方形状をもつ電極の1個”が、それとして捉えられることになる。また、これに応じて、前述した有機EL素子8(あるいは、単位回路P)の一単位も、このピクセル電極13の一単位に即して定められることになる(図3中、最左列かつ最上段のピクセル電極13を囲む、符号“8”,“P”を付された一点差線による囲み線、参照)。
また、図3において、ピクセル電極13それ自体の配列態様に着目すれば、当該ピクセル電極13は、マトリクス状に配列されているということができる。
【0031】
このようなピクセル電極13は、図5に示すように、コンタクトホール360を介して、積層構造物250の一部を構成する回路素子薄膜11と電気的に接続されている。回路素子薄膜11は、前述の単位回路Pに含まれる第1トランジスタ68や第2トランジスタ9、等を含む。図では極めて簡略化されて描かれているが、この回路素子薄膜11は、これら各種のトランジスタを構成する半導体層、ゲート絶縁膜、ゲートメタル等や容量素子69を構成する電極用薄膜(いずれも不図示)、その他の金属薄膜から構成される。なお、前記コンタクトホール360は、積層構造物250の一部を構成する第1及び第2層間絶縁膜301及び302を貫通するようにして形成されている。
以上の構成により、ピクセル電極13は、第2トランジスタ9を介して電流供給線113から供給される電流を、発光機能層18に印加可能である。
このようなピクセル電極13は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性かつ導電性の材料から作られている。
【0032】
さて、“開口部”の説明に戻る。
開口部341及び開口部342は、図3、あるいは図4に示されているように、一定の規則に従って並べられている。
まず、開口部341は、図3中左から2,4,6,…列目の各列において、その図中最上方に配置される。以下、そこから図中下方に順次繋がるようにして、開口部342,342,342,…が並ぶ。他方、図3中左から1,3,5,…列目の各列においては、図中最上方に開口部342が配置され、以下、そこから開口部342,342,342,…が並ぶ(要するに、この場合、その全部が開口部342である。)。
このような配列態様により、図中上下方向に沿った開口部341及び342間、あるいは開口部342及び342間に現れる隔壁層340の位置は、例えば図4の太い破線で示すが如く、列の並んでいく方向(図中左右方向)に従って、ジグザグに変動する。つまり、第1実施形態では、ある列に沿った隔壁層340の配列パターンは、他の列に沿ったそれとは異なるのである。この点については、後に図6を参照して改めて説明することにする。
なお、ここで言及した隔壁層340は、本発明にいう「区切り部」への該当性を有する。
【0033】
このような配列態様をもつ開口部341、あるいは開口部342は、図4に示すように、図中左から1,4,6,…番目に位置する各列から構成される第1列群、同じく2,5,7,…番目に位置する各列から構成される第2列群、及び、3,6,9,…番目に位置する各列から構成される第3列群、のいずれかのグループに属する。
ここで、第1列群とは、そこに属する開口部341、あるいは342が、赤色光を発する有機EL物質を含む発光機能層18Rを備えるグループである。以下、同様にして、第2列群及び第3列群とは、それぞれ、緑色光を発する有機EL物質を含む発光機能層18Gを備えるグループであり、及び、青色光を発する有機EL物質を含む発光機能層18Rを備えるグループである。なお、本明細書においては、ここで述べた符号“18R”,“18G”及び“18B”を、一まとめに代表する記号として符号“18”を用いている。
【0034】
より詳細には、次のようである。すなわち、第1実施形態において、発光機能層18は、図4あるいは図5に示すように、開口部341、あるいは開口部342ごとに1個ずつ割り当てられるように形成されている。第1実施形態では特に、発光機能層18は、隔壁層340の側壁によって囲われた空間に閉じ込められるように形成されているのである。
この発光機能層18の1個1個は、少なくとも有機発光層を含み、この有機発光層は正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から構成されている。第1実施形態において、この有機EL物質としては、例えば、赤色発光に対応してシアノポリフェニレンビニレン、緑色発光に対応してポリフェニレンビニレン、並びに、青色発光に対応してポリフェニレンビニレン及びポリアルキルフェニレン、のそれぞれが該当し得る(この材料提示は、単なる一例である。)。そして、このうちの最前者の材料を含む発光機能層18Rを含む開口部341及び342が前記第1列群に含まれ、その次の材料を含む発光機能層18Gを含む開口部341及び342が前記第2列群に含まれ、最後者の材料を含む発光機能層18Bを含む開口部341及び342が前記第3列群に含まれることになるのである。
【0035】
このような第1、第2及び第3列群の区分けと、前述した開口部341及び342の配列態様との間には次の関係がある。
すなわち、まず、図3によく示されているように、例えば第3列群を構成する、図中左から3,6,9,…列目の各列に着目する(図中ハッチングされた部分参照)。
このうち第3列目においては、図中上から順に、開口部342,342,342,…が並ぶ。したがって、ピクセル電極13の数を基準としてみると、図中上から順に3つのピクセル電極13を数えると、隔壁層340Aが現れ(図中二重黒丸参照)、更にまた3つのピクセル電極13を数えると、再び隔壁層340Aが現れ、ということが繰り返される。
一方、第6列目においては、図中上から順に、開口部341、そして開口部342,342,342,…が並ぶ。したがって、ピクセル電極13の数を基準としてみると、図中上から順に2つのピクセル電極13を数えると、隔壁層340Aが現れ、更にまた3つのピクセル電極13を数えると、再び隔壁層340Aが現れ、以下、3つのピクセル電極13ごとに隔壁層340Aが現れる、ということが繰り返される。
更に、第9列目においては、図から明らかなように、前記の第3列目と同じである。以後、第15,21,27,…列目も同様となる。また、第12列目においては、前記の第6列目と同じになる。以後、第12,18,24,…列目も同様となる。
【0036】
これを要するに、第1実施形態では、第3列群のうち、隣接し合う各列(例えば、第3列目と第6列目、あるいは第6列目と第9列目、等々)上に位置する隔壁層340Aの、当該各列に沿った配列パターンは互いに異なる、ということになる。このことは、残る第1列群及び第2列群についても同様に当てはまることが、図3、あるいは図4から明らかである。なお、ここで言及した隔壁層340Aは、本発明にいう「区切り部」への該当性を有する(隔壁層340Aは、隔壁層340そのものであるので、既述のように、隔壁層340が「区切り部」への該当性を有する以上、これは当然のことである。)。
【0037】
第1実施形態に係る有機EL装置は以上述べた各種の要素を備えるが、以下では、上では触れられなかった各種の要素、あるいは、上で触れた要素ではあるが補足する事項について説明する。
まず、既述の第1及び第2層間絶縁膜301及び302(以下、単に「絶縁膜301及び302」ということがある。)は、積層構造物250中の導電性要素間の短絡が生じないように、あるいは、これら導電性要素の積層構造物250中における好適な配置を実現するため等に貢献する。
絶縁膜301及び302は、様々な厚さでもって様々な絶縁性材料から作られうるが、好適には、各絶縁膜の積層構造物250中の配置位置や役割等に応じて、適宜適当な厚さ及び材料が選択されるとよい。より具体的には例えば、絶縁膜301及び302は、SiO2、SiN、SiON等々で作られて好ましい。
あるいは、第2層間絶縁膜302に関しては、これを下地層として形成される複数のピクセル電極13(図4参照)それぞれが同一面内に形成されるように、その上面が平坦面になり易いアクリル樹脂等から作られてもよい。
【0038】
次に、図5に示すバリア層40は、素子基板7の全面を覆うかのように、後述する対向電極5の上に形成されている。このバリア層40は、水及び酸素の有機EL素子8への進入を食い止める機能をもつ。このような機能を十全に発揮するべく、当該バリア層40は、具体的には例えば、SiN、SiON、SiO2、等々で作られて好適である。
【0039】
さらに、図5に示す対向電極5は、素子基板7の全面を覆うかのように、発光機能層18の上に形成されている。この対向電極5は、平面視して矩形状(その内部に特別な開口、間隙等をもたない、いわゆるベタ)に形成されており、その周囲は、図1に示した電源線201に電気的に接続される(その接続態様は不図示)。
このような対向電極5は、例えばアルミニウム、銀、等の比較的光反射性能の高い材料から作られる。
【0040】
前述の有機EL素子8の各々は、いま述べた対向電極5、及び、上で詳述したピクセル電極13及び発光機能層18から構成される。
このような構造に基づき、例えば、ピクセル電極13が陽極、対向電極5が陰極、等と設定されて、両者間に電流が流されると、それと同時に発光機能層18にも電流が流れ、これにより、当該発光機能層18は発光する。この場合、前述の有機EL物質の違いに応じた、赤、緑及び青の各色の発光が行われる。そして、この発光機能層18から発した光のうち一部は、素子基板7に向かってそのまま有機EL装置外部へと進行し、あるいは他の一部は、対向電極5の側に向かって進行した後、該対向電極5で反射した上で有機EL装置外部へと進行する(図5中の符号“L”参照)。このように、第1実施形態に係る有機EL装置は、光Lが、素子基板7の側に向かって進行するので、いわゆるボトムエミッション型である。
【0041】
以下では、以上述べたような有機EL装置によって奏される作用効果について説明する。
(1) まず、第1実施形態の有機EL装置によれば、その製造容易性の向上が図られる。というのも、第1実施形態においては、発光機能層18が1個の開口部341又は342に形成されれば、その開口部341又は342に収められている2つ又は3つのピクセル電極13についての発光機能層18の形成が一挙に完了するからである。
また、第1実施形態では、発光機能層18が、隔壁層340(特に、図3の隔壁層340A参照)によって適当な数に分離されているので、当該発光機能層18中のある1箇所の不具合が、“全”ピクセルに影響を及ぼす、といったことも生じない。ここで“不具合”とは、具体的には例えば、発光機能層18Rが供給されるべき列のある一点に、発光機能層“18G”が混入したりする不具合とか、あるいは、ある列に侵入した微少塵にインクが凝集してしまったりする不具合等が考えられる。第1実施形態では、このような観点からも、その製造容易性が確保される。
【0042】
(2) また、第1実施形態では、このような製造容易性の向上が図られながら、輝度ムラの発生を未然に防止することができる。これは、以下の事情による。
すなわち、第1実施形態では、上述のように、図3又は図4中上下方向、あるいは、ある列に沿った隔壁層340の配列パターンが、他の列におけるそれとは異なっている。例えば、図6に模式的に示すように、図3の符号“P1”を付した列の隔壁層340の配列パターンは、左から順に、隔壁層340、2つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、続いて2つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、以後同様ということが繰り返される。一方、図3の符号“P2”を付した列の隔壁層340の配列パターンは、左から順に、隔壁層340、1つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、続いて2つの電極分離層345を挟んで再び隔壁層340、以後同様ということが繰り返される。
【0043】
このようであると、図6の上段及び下段では、発光機能層18の原料液滴DRの乾燥態様が異なることになる。すなわち、まず、図6の上段及び下段のいずれにおいても、図示するように、隔壁層340の側壁によって囲まれた空間(即ち、開口部341又は342)には、原料液滴DRが供給されるが、発光機能層18は、この原料液滴DRが乾燥させられることで得られる。ちなみに、図6の上段及び下段はそれぞれ、図3のP1列及びP2列に対応する、つまりいずれも前記第3列群に属することから、これらに関する原料液滴DRの供給及びその乾燥はほぼ同時に行われることになる。
この原料液滴DRの乾燥は、その端部、即ち「区切り部」たる隔壁層340(あるいは、この場合、隔壁層340Aと言ってもよい。)の存在位置ないしその近傍から始まる。図6に示す“丸印付き矢印”はその様子を表しており、その中の“丸印”が乾燥開始点を、それとは反対端たる矢印の終端点が乾燥終了点を表している。
これによると、図6の上段と下段とでは、乾燥開始点はずれていることがわかり、したがってまた、乾燥終了点もずれていることがわかる。つまり、図6の上段及び下段間では、原料液滴DRの乾燥態様が異なるのである。これはいうまでもなく、隔壁層340の配列パターンが互いに異なっていることによっている。
【0044】
このようなことから、第1実施形態では、素子基板7全面に関し、原料液滴DRの乾燥についての一様の乾燥ムラが生じることがない。例えば、仮に、図3の隔壁層340Aが存在せず、素子基板7の全長に亘る「ストライプ状」の溝が存在する場合を仮定すると、その乾燥終了点は当該素子基板7を横切る直線の上に並ぶ、等ということが生じてしまう。そうすると、その結果、有機EL物質等の有効成分の凝集等が、ある特定の領域に集中する、といった事象を発生させてしまうおそれが高まるのである。こうなると、複数の有機EL素子8全体による画像表示等において、輝度ムラがより目立つことになる。
第1実施形態では、そのような不具合は発生しないのである。
【0045】
以上は、たまたま、第3列群に属するP1列及びP2列の例に即して述べたが、同じことは、第1列群及び第2列群についても当てはまることは述べるまでもない。
結局、第1実施形態によれば、このようにして、輝度ムラの発生を未然に防止することができるのである。
【0046】
<第2実施形態>
以下では、本発明の第2の実施の形態に係る有機EL装置について、図7乃至図11を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態における有機EL装置の基本的な構成は、第1実施形態の有機EL装置と実質的に同じである。したがって、以下では、両者で共通する部分に関する図面の符号は共通に用いることとし、また、その説明は省略ないし簡略化することとする。
【0047】
第2実施形態の有機EL装置は、図7と図3、図8と図4、あるいは図10と図5とを対比参照するとわかるように、上記第1の実施形態と多くの共通点をもつ。そのうち、本発明に関する、代表的なものを挙げれば、次のようである。
【0048】
(1) 第2実施形態でも、隔壁層340が存在し、“開口部”が形作られる。また、この“開口部”は、やはり“長円形状”を持つ。
(2) 1個1個のピクセル電極13の形状は、第1実施形態と全く同じである。また、これらがマトリクス状の配列に従って並べられていることも同じである(なお、図7では、煩雑さを避けるため、同図中、最左列かつ最上段に位置するピクセル電極13のみ図示している。)。
(3) 第2実施形態においても、前述したと同様の、第1、第2及び第3列群の区分けが存在する(図8と図4とを対比参照。)。すなわち、図8に示すように、“開口部”は、図中左から1,4,6,…番目に位置する各列から構成される第1列群、同じく2,5,7,…番目に位置する各列から構成される第2列群、及び、3,6,9,…番目に位置する各列から構成される第3列群、のいずれかのグループに属する。これら各列群の意義、即ちそれぞれが発光機能層18R、18G及び18Bに対応することも同じである。
【0049】
このように多くの共通点をもちはするが、第2実施形態は、上記第1実施形態と対比すると、主に、“開口部”の配列態様、及び、電極分離層345に代わる電極分離帯347の存在という各点において異なっている。
【0050】
まず、第2実施形態において、“開口部”は、図7又は図8に示すように、その1個1個の面積がすべて異なっていると言っても過言ではない程、それぞれ異なっている。例えば、これらの図の最左列かつ最上段に位置する開口部343は、その内部に3つのピクセル電極13を収める長さをもつが、その右隣に位置する“開口部”は、少なくとも6つのピクセル電極13を収める長さ、より正確には図示しきれない程の長さをもつ。また、更にその右隣の“開口部”は、4つのピクセル電極13を収める長さをもつ。
このように、第2実施形態では、様々な大きさの“開口部”が存在する。ただし、すべての“開口部”の各々が異なる面積をもつということではない。例えば、開口部343自身を含めず、そこから4列離れた列の図中最上方に位置する“開口部”は、開口部343と同様、3つのピクセル電極13を収める。
なお、このようであるから、第2実施形態においては、全ての“開口部”に、符号ないし名前を付けることはしない。第2実施形態の説明では、前述した図7又は図8に示す最左列かつ最上段に位置する“開口部”についてのみ、特別に“343”という符号を付けることとする。
【0051】
一方、第2実施形態では、そのような様々な面積をもつ“開口部”が、特別に整然とした規則に従うことなく配列される。例えば、開口部343の図中下方には、2つのピクセル電極13を収める開口部が並び、図7又は図8中最右端に位置する開口部(これは、開口部343と同様、3つのピクセル電極13を収める。)の図中下方には、3つ以上のピクセル電極13を収める開口部が並ぶ、というようである。
【0052】
要するに、このような状況を一言でいうとすれば、その各々がランダムな大きさ、あるいは面積をもつ開口部のそれぞれが、ランダムに並んでいるのである。
【0053】
一方、第2実施形態では、第1実施形態では不存在の電極分離帯347が存在する。この電極分離帯347は、図10に比較的よく示されているように、積層構造物250を構成する第2層間絶縁膜302の表面の一部である。
【0054】
より詳細に、例えば開口部343を例にとって説明すると、次のようである。
まず、開口部343の内部には、既述のように、あるいは図9及び図10等に示すように、3つのピクセル電極13が収められている。また、これら3つのピクセル電極13に対応するように、かつ、その各々の辺縁を覆うように、3つの親液層346が形成されている。この親液層346は、上記第1実施形態に即していうなら、電極分離層345に該当するものであり、当該電極分離層345と同様、例えばSiO2、あるいはSiN等から作られる。ただし、親液層346は、ピクセル電極13間に位置付けられはせず、ピクセル電極13間を分離する機能をもつわけではない。
この親液層346は、例えば酸素プラズマ処理等の親液性付与処理を受ける。
なお、これに関連して、上記第1実施形態では特に説明しなかったが、前記電極分離層345についても、親液層346と同様に、親液性付与処理を受けさせると好適である。
【0055】
電極分離帯347は、開口部343内において、ピクセル電極13の非形成領域、及び、前記親液層346の非形成領域に対応する。つまり、これらピクセル電極13及び親液層346が形成されず、その下地面たる第2層間絶縁膜302の表面があたかも露出したかの如き部分が、即ち電極分離帯347なのである。
この電極分離帯347は、例えばCF4プラズマ処理等の撥液性付与処理を受ける。かかる処理を好適に行うために、第2層間絶縁膜302は、隔壁層340と同様、フッ素系樹脂、あるいは更に、アクリル樹脂の他、エポキシ樹脂、あるいはポリイミドなどから作られて好適である。
【0056】
以上に加えて、第2実施形態では、発光機能層18に関し、上記第1実施形態と以下の点で異なる。すなわち、上記第1実施形態では、発光機能層18は、少なくとも有機発光層を含むことになっているが、第2実施形態では、図10に示すように、少なくとも有機発光層18aと正孔注入層18bとを含む。このうち正孔注入層18bは、陽極たるピクセル電極13から有機発光層18aへと正孔を注入する機能をもつ。この正孔注入層18bを構成する正孔注入材料としては、例えば、バイエル社のバイトロン(登録商標)を含み得る。
【0057】
以下では、以上述べたような第2実施形態に係る有機EL装置によって奏される作用効果について説明する。
この第2実施形態では、上記第1実施形態と同様、隔壁層340が本発明にいう「区切り部」への該当性を有するのに加えて、上述した電極分離帯347もまた、その「区切り部」への該当性を有する。
【0058】
より詳細に、上記第1実施形態と同様、「第3列群」を例にとって説明すると、次のようである。
まず、第2実施形態でも、図7に示すように、第1実施形態と同様の隔壁層340Aが存在する。この隔壁層340Aは、図10、あるいは図8に示すように、発光機能層18全体の、つまり上述した有機発光層18a及び正孔注入層18bの双方を、隣接する発光機能層18全体と区切る区切り部として機能する。
【0059】
加えて、第2実施形態では、電極分離帯347が、発光機能層18を分離する機能を果たす。ただし、この場合、当該電極分離帯347の長さに応じて、発光機能層18のうち、有機発光層18a及び正孔注入層18bの双方が分離されるのか、あるいはその一方のみが分離されるのか(更にいえば、いずれも分離されないのか)が異なる。
すなわち、開口部343では、図9、あるいは図10に示すように、2つの電極分離帯347が存在するが、そのうち一方の長さはW1、他方の長さはW2(>W1)となっている。ここで、これら電極分離帯347は、前述のように撥液性付与処理を受けていることを考えに入れると、より長さの大きい電極分離帯347は、当該電極分離帯347に接する2つの発光機能層18を互いにより遠くに遠ざける、ということが生じる。
もう少し具体的にいうと、図10に示すように、長さW2もつ電極分離帯347は、正孔注入層18bについても、有機発光層18aについても分離する機能をもつ。これは、当該電極分離帯347は、比較的大きい長さをもつために、正孔注入層18bを分離した後にも、その表出部分が比較的広く残存し、有機発光層18aを分離するのに十分な撥液性能を発揮することが可能だからである。他方、やはり図10に示すように、長さW1もつ電極分離帯347は、正孔注入層18bについては分離するが、有機発光層18aは分離しない。これは、当該電極分離帯347は、比較的小さい長さをもつために、正孔注入層18bを分離した後には、もはやその表出部分が極めて狭くなり、有機発光層18aを分離するのに十分な撥液性能を発揮することが不可能となるからである。
【0060】
なお、いま述べたところに即していえば、電極分離帯347(その長さがW1あるかW2であるかに関わらない)及び隔壁層340のいずれもが、本発明にいう「第2区切り部」への該当性を有する。
また、このうち特に、長さW2をもつ電極分離帯347、及び隔壁層340は、本発明にいう「第1区切り部」への該当性を有する。
【0061】
以上の趣旨を、図11を参照して改めて説明する。
この図11は、上記第1実施形態における図6と同趣旨の図である。すなわち、図11は、その上段が、図7の符号“P3”を付した列の隔壁層340A及び電極分離帯347の配列パターンを模式的に表しており、その下段が、図7の符号“P4”を付した列の隔壁層340A及び電極分離帯347の配列パターンを模式的に表している。
前者(P3列)は、左から順に、〔0〕隔壁層340、〔1〕長さ(中)の電極分離帯347、〔2〕長さ(大)の電極分離帯347、〔3〕長さ(中)の電極分離帯347、〔4〕隔壁層340A(なお、その長さは“小”)、及び〔5〕隔壁層340A(なお、その長さは“大”)、というように並ぶ。
一方、後者(P4列)は、左から順に、〔0〕隔壁層340、〔1〕長さ(中)の電極分離帯347、〔2〕隔壁層340A(なお、その長さは“大”)、〔3〕長さ(中)の電極分離帯347、〔4〕長さ(小)の電極分離帯347、及び〔5〕長さ(大)の電極分離帯347、というように並ぶ。
これらの場合、長さが“大”であるというのは、図9又は図10でいう長さW2に対応しており、したがって、その長さをもつ電極分離帯347は、発光機能層18全体を分離する。図11では符号D1が付された記号がそれを意味しており、この記号は図7においても図示されている。また、長さが“中”であるというのは、図9又は図10でいう長さW1に対応しており、したがって、その長さをもつ電極分離帯347は、発光機能層18中、正孔注入層18bのみを分離する。図11では符号D2が付された記号がそれを意味しており、この記号も図7において図示されている。
【0062】
なお、長さが“小”である電極分離帯347は、ピクセル電極13間を分離することに主眼があって、電極分離層18を分離しない(図11及び図7では符号D0(しかも当該符号のみ)が付されている。)。よって、これは、本発明にいう「第1区切り部」及び「第2区切り部」への該当性を有せず、あるいはそもそも「区切り部」への該当性を有しない。
また、隔壁層340については、その長さの如何に関わらず、発光機能層18の全体を分離する。
【0063】
以上のことから結局、発光機能層18、あるいはこれを構成する有機発光層18a、正孔注入層18bの分離の様子は、図11に示すようになる。
【0064】
このようなことから、第2実施形態では、既述のように、ランダムな大きさの“開口部”がランダムに並べられた構造をもつのではあるが、そのような第2実施形態であっても、上記第1実施形態において守られていた一定の規則は守られていることが明らかになる。
すなわち、第1に、より大きな観点からは、ある列に沿った隔壁層340及び電極分離帯347の配列パターンは、他の列におけるそれとは異なっている。これは、図7乃至図11から明らかである。
また第2に、より具体的には、ある列群を構成する各列のうち、隣接し合う各列(例えば、図7及び図11のP3列及びP4列のように第4列目と第7列目、等々)上に位置する隔壁層340及び電極分離帯347の、当該各列に沿った配列パターンは互いに異なっている。
【0065】
なお、本発明にいう「区切り部」が、この第2実施形態のように、隔壁層340と電極分離帯347というように、異なる種別を含みながら構成される場合においては、ある列の配列パターンが他の列のそれと異なる、というときの「異なる」とは、前記種別の相違も勘案された上で判別される。例えば、前述の図11において、その上段には、長さ(大)の電極分離帯347が存在するが、その下段には、これに対応して、長さ(大)の隔壁層340が存在する。この場合、両者は、発光機能層18の全体を分離するという点では機能的にはほぼ同じだが、配列パターンは異なる、とみなされるのである。このような場合であっても、両者についての発光機能層18を分離する機能には相違が生じ得るからである(例えば、隔壁層340による分離は相当程度確実だが、電極分離帯347によるそれはそこまでには至らないと考えられるので、そうであれば、前述した乾燥態様にも相違は生じ得るのである。)。
本発明にいう「区切り部の配列パターン」が「異なる」ということは、以上の事情を踏まえて解釈される。同じことは、ある列郡中の隣接する各列の配列パターンが「異なる」という場合にもいえる。
【0066】
以上述べたところから明らかなように、この第2実施形態においても、上記第1実施形態によって奏された効果と本質的に異ならない作用効果(即ち、製造容易性向上及び輝度ムラ発生抑止)が奏されることになる。
加えて、第2実施形態においては、以下に記す特有の効果もまた奏される。
【0067】
(1) 第2実施形態に係る有機EL装置は、上述のように、“開口部”の各々がランダムな大きさをもち、かつ、これらがランダムに並べられる構造をもつので、乾燥開始点及び乾燥終了点の素子基板7全面に関するばらつきの程度は、第1実施形態に比べても、より大きくなる。つまり、有機EL物質等の有効成分の凝集等が仮に生じたとしても、それは、素子基板7全面に関してランダムに散在するということになる。したがって、第2実施形態では、輝度ムラの発生抑止効果をより実効的に享受することが可能である。
【0068】
(2) 第2実施形態では、上述のように、第1実施形態における隔壁層340に加えて、電極分離帯347も「区切り部」への該当性を有し、また、該電極分離帯347の長さの相違に応じて、発光機能層18の分離態様が異ならしめられる。これにより、第2実施形態では特に、例えば図11をみるとわかるように、有機発光層18aの区切られ方と、正孔注入層18bの区切られ方とは異なっている。つまり、この場合、有機発光層18aに関する乾燥工程での乾燥態様と、正孔注入層18bに関するそれとは異なることになる。これによれば、前述した第1実施形態にかかる効果が、いわば、素子基板7の面に垂直な方向に沿って重畳的に享受され得ることになる。したがって、輝度ムラの発生抑止効果は、より実効的に享受され得る。
【0069】
(3) 第2実施形態では、電極分離帯347が「区切り部」としての機能を果たしうるので、開口部それ自体の大きさは、第1実施形態に比べて、比較的大きめにとることができる(例えば、前述のように、少なくとも6つ以上のピクセル電極13を含む“開口部”が存在し得る。)。これによれば、複数のピクセル電極13についての発光機能層18の一挙形成による製造容易性向上と言う効果が、より実効的に享受され得る。なお、この場合、図7又は図11に符号D0を付して示した、長さ(小)の電極分離帯347(即ち、発光機能層18を分離する機能をもたない電極分離帯347)の配置態様を有効に設定すれば、かかる効果の更なる実効的な享受に貢献する可能性がある。
【0070】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明に係る発光装置は、上述した形態に限定されることはなく、以下に述べる各種の変形形態を採り得る。
【0071】
(1) 上述した実施形態では、発光機能層18が、少なくとも有機発光層を含み(第1実施形態)、あるいは、有機発光層18aと正孔注入層18bとを含む(第2実施形態)場合について説明しているが、本発明は、かかる形態に限定されない。発光機能層18は、より一般に、それ以外の他の層として、電子ブロック層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び正孔ブロック層の一部又は全部を備えていてよい。
【0072】
(2) 上記第2実施形態では、ある列における隔壁層340及び電極分離帯347の配列パターンは、他の列におけるそれとは異なっているものの、例えば図8等に比較的よく示されているように、長さが“大”である電極分離帯347の図中左右方向に沿って並ぶ隔壁層340、あるいは電極分離帯347は、同じく“大”の長さをもち、あるいは、長さが“中”である電極分離帯347に並ぶ隔壁層340、あるいは電極分離帯347は、同じく“中”の長さをもつ、というように、図中左右方向については一定の規則性が存在する。本発明は、このような形態にも限定されない。つまり、場合によっては、いま述べたような規則性さえも破られてよい(即ち、これもランダムとされてよい)のである。
【0073】
(3) 上記実施形態に係る有機EL装置は、ボトムエミッション型であるが、本発明はかかる形態に限定されない。本発明は、トップエミッション型、デュアルエミッション型のいずれに対しても適用可能である。
なお、トップエミッション型とする場合には、発光機能層18から発した光を素子基板7とは反対側に進行させるための反射層が必要である。この反射層は、例えば図5を前提とする限り、第1層間絶縁膜301上、且つ、第2層間絶縁膜302下に、かつ、ピクセル電極13の形成領域に対応するように形成するとよい。なお、この場合、素子基板7は、セラミックスや金属等の不透明材料で作られてよく(これとは反対に、ボトムエミッション型の場合、素子基板7は、透光性材料から作られている必要がある。)、また、対向電極5は透光性材料から作られているとよい。
【0074】
<応用>
次に、本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器について説明する。図12は、上記実施形態に係る有機EL装置を画像表示装置に利用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての有機EL装置と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。
図13に、上記実施形態に係る有機EL装置を適用した携帯電話機を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての有機EL装置1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機EL装置に表示される画面がスクロールされる。
図14に、上記実施形態に係る有機EL装置を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての有機EL装置を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置に表示される。
【0075】
上記実施形態に係る有機EL装置が適用される電子機器としては、図12から図14に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1の単位回路Pの詳細を示す回路図である。
【図3】図1の有機EL装置の画像表示領域の一部を拡大視した平面図(ただし、発光機能層形成前の状態を示す平面図)である。
【図4】図1の有機EL装置の画像表示領域の一部を拡大視した平面図(ただし、発光機能層形成後の状態を示す平面図)である。
【図5】図4のX1-X1断面図である。
【図6】図3中符号“P1”を付した列と符号“P2”を付した列に関する、隔壁層の配列パターン等を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係り、図3と同趣旨の平面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係り、図4と同趣旨の平面図である。
【図9】図8の開口部“343”のみを拡大視して示す平面図である。
【図10】図8のX2-X2断面図である。
【図11】図7中符号“P3”を付した列と符号“P4”を付した列に関する、隔壁層及び電極分離帯の配列パターン等を模式的に示す説明図である。
【図12】本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る有機EL装置を適用した他の電子機器を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る有機EL装置を適用したさらに他の電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0077】
7……素子基板、7a……画像表示領域、P……単位回路、8……有機EL素子、13……ピクセル電極、18……発光機能層、18a……有機発光層、18b……正孔注入層、18R……(赤色光を発する有機EL物質を含む)発光機能層、18G……(緑色光を発する有機EL物質を含む)発光機能層、18B……(青色光を発する有機EL物質を含む)発光機能層、5……対向電極、340,340A……隔壁層、341,342,343……開口部、345……電極分離層、346……親液層、347……電極分離帯、11……回路素子薄膜、301……第1層間絶縁膜、302……第2層間絶縁膜、40……バリア層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に、その各々がマトリクス状の配列に従って並べられる複数のピクセル電極と、
該ピクセル電極の各々に対応し、かつ、その各々が、該ピクセル電極及び対向電極、並びに、これらに挟まれる発光機能層を含む複数の発光素子と、
前記発光機能層を前記マトリクス状の配列の列方向に沿って複数個の部分に区切る区切り部と、
を備え、
前記マトリクス状の配列における、ある列の前記区切り部の配列パターンは、
他の列の前記区切り部の配列パターンとは異なる、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
その各々が、前記マトリクス状の配列の列方向に沿って存在する前記ピクセル電極の1つ以上をその内部に収める、複数の開口部を形作るように、前記基板上に形成される隔壁層を更に備え、
前記区切り部は、前記隔壁層を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記区切り部は、
そのうちの少なくとも一部が前記発光機能層の原料液滴に対する撥液性を備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記基板上に形成され、前記ピクセル電極を形成するための下地面を提供する電極形成用下地膜を更に備え、
前記区切り部は、前記下地面の一部を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記マトリクス状の配列における各列のうちの、ある列群は、
前記発光機能層として、当該ある列群に固有の光を発する発光機能層を備え、
当該ある列群のうち、
隣接し合う各列の前記区切り部の配列パターンは互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光機能層は、
光を発する発光層と、それ以外の1以上の層と、
を含み、
前記区切り部は、
前記発光層及び前記1以上の層の少なくとも1つを区切ることをもって、
前記発光機能層を複数個の部分に区切る、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記区切り部は、
前記発光層を前記列方向に沿って複数個の部分に区切る第1区切り部と、
前記1以上の層のうちのある層を前記列方向に沿って複数個の部分に区切る第2区切り部と、
を含み、
前記マトリクス状の配列における、ある列の前記第1区切り部の配列パターンは、
その列の前記第2区切り部の配列パターンとは異なる、
ことを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光機能層は、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に、その各々がマトリクス状の配列に従って並べられる複数のピクセル電極と、
該ピクセル電極の各々に対応し、かつ、その各々が、該ピクセル電極及び対向電極、並びに、これらに挟まれる発光機能層を含む複数の発光素子と、
前記発光機能層を前記マトリクス状の配列の列方向に沿って複数個の部分に区切る区切り部と、
を備え、
前記マトリクス状の配列における、ある列の前記区切り部の配列パターンは、
他の列の前記区切り部の配列パターンとは異なる、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
その各々が、前記マトリクス状の配列の列方向に沿って存在する前記ピクセル電極の1つ以上をその内部に収める、複数の開口部を形作るように、前記基板上に形成される隔壁層を更に備え、
前記区切り部は、前記隔壁層を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記区切り部は、
そのうちの少なくとも一部が前記発光機能層の原料液滴に対する撥液性を備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記基板上に形成され、前記ピクセル電極を形成するための下地面を提供する電極形成用下地膜を更に備え、
前記区切り部は、前記下地面の一部を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記マトリクス状の配列における各列のうちの、ある列群は、
前記発光機能層として、当該ある列群に固有の光を発する発光機能層を備え、
当該ある列群のうち、
隣接し合う各列の前記区切り部の配列パターンは互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光機能層は、
光を発する発光層と、それ以外の1以上の層と、
を含み、
前記区切り部は、
前記発光層及び前記1以上の層の少なくとも1つを区切ることをもって、
前記発光機能層を複数個の部分に区切る、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記区切り部は、
前記発光層を前記列方向に沿って複数個の部分に区切る第1区切り部と、
前記1以上の層のうちのある層を前記列方向に沿って複数個の部分に区切る第2区切り部と、
を含み、
前記マトリクス状の配列における、ある列の前記第1区切り部の配列パターンは、
その列の前記第2区切り部の配列パターンとは異なる、
ことを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光機能層は、液滴塗布法(インクジェット法)を用いて形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−146848(P2009−146848A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325590(P2007−325590)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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