説明

発光装置

【課題】高品質を維持する発光装置を提供する。
【解決手段】410nm、360nm、470nm又は405nmの波長の光を発光する発光素子206と、前記発光素子206上に配置され、蛍光体210を含有する蛍光層209とを具備する発光装置200である。前記蛍光体210は、下記一般式(1)で表される組成のアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体からなるコア粒子と、前記コア粒子の表面に配置されるシリコーン樹脂などの表層材とを備え、前記波長の光で励起した際の発光スペクトルは、波長540nm乃至600nmの間に単一の発光ピークを有する。(M1-xEux2Siy2y+2(1)(上記一般式(1)中、MはCa,Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素であり、xは0.001以上0.1以下、yは0.9以上1.1以下である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いたLED等の発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、携帯機器、PC周辺機器、OA機器、各種スイッチ、バックライト用光源、表示板などの各種表示装置に用いられている。LEDチップは半導体素子であるために、長寿命でかつ信頼性が高く、光源として用いた場合に、その交換作業が軽減されることから、種々の用途への応用が試みられている。
【0003】
上述したようなLEDランプにおいては光源として、波長400nm前後の長波長紫外線を放射するLEDチップ、例えばGaN系化合物半導体層を有するLEDチップが用いられている。このため、LEDランプに用いられる蛍光体には、上記したような長波長の紫外線をよく吸収し、かつ効率よく可視光を発光するものが求められている。
【0004】
二価のユーロピウムで付活された公知の珪酸塩蛍光体は、波長360〜500nm前後の長波長紫外線を効率的に吸収し、ピーク波長が550nm付近の黄色光を効率よく発光することから、LEDランプなどに用いられる黄色蛍光体として期待されている。
【0005】
LEDランプを種々の用途に適用するに当たって、発光素子の耐用年数を高めることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この文献には、酸化物発光体、硫化物発光体、アルミン酸塩発光体、ホウ酸塩発光体、バナジン酸塩発光体ならびにケイ酸塩発光体用に共通の技術としての耐用年数の向上に関するコーティング技術が記載されている。
【0006】
YAG−Ce系、窒素含有CaO−Al23−SiO2:Eu,Crに関しては、有機物被膜によりマイクロカプセル化を行なって、発光バラツキを低減する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、YAG系蛍光体に関しては、表面改質によって分散性向上の開発がなされている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−223008号公報
【特許文献2】特開2003−46141号公報
【特許文献3】特開2003−37295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のユーロピウム付活珪酸塩蛍光体を用いたLEDランプ等の発光装置は、発光にムラが生じ、長期間使用した際には発光出力が低下するという現象が確認された。こうした現象は、LEDランプの品質を低下させる要因となってしまう。
【0008】
そこで本発明は、高品質の発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる発光装置は、410nm、360nm、470nm、または405nmの波長の光を発光する発光素子と、
前記発光素子上に配置され、蛍光体を含有する蛍光層とを具備し、
前記蛍光体は、下記一般式(1)で表わされる組成のアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体からなるコア粒子と、前記コア粒子の表面に配置され、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、テトラエトキシシラン、シリカ、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、カルシウムポリフォスフェート、シリコーンオイル、およびシリコーングリースから選択される少なくとも一種からなる表層材とを備え、波長410nm、360nm、470nm、または405nmの光で励起した際の発光スペクトルは、波長470nmないし610nmの間に単一の発光ピークを有することを特徴とする。
【0010】
(M1-xEux2Siy2y+2 (1)
(上記一般式(1)中、MはCa,SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素であり、xは0.001以上0.1以下、yは0.9以上1.1以下である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、高品質の発光装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
本発明者らは、従来のユーロピウム付活珪酸塩蛍光体について鋭意研究した結果、この蛍光体は吸湿性を有することを見出した。ユーロピウム付活珪酸塩蛍光体は、長期間保管した際、環境によっては容易に凝集してしまい、これに起因して種々の問題が引き起こされていた。
【0014】
LEDランプの蛍光層に用いられている粒子状の蛍光体が凝集すると、LEDランプの出力が低下する。LEDランプを作製する際に蛍光体の凝集が生じた場合には、蛍光体が樹脂中に均一に分散されてなる蛍光層を形成することができない。その結果、LEDランプからの発光にムラが生じ、LEDランプからの発光出力も低下する。
【0015】
LEDランプ等の発光装置の品質を高めるには、ユーロピウム付活珪酸塩蛍光体の防湿性の改善が必須であるという知見に基づいて、本発明は成されたものである。
【0016】
ユーロピウム付活珪酸塩蛍光体は、アルカリ土類金属元素の種類および組成を選択することにより、550nm近傍に第一の波長を有する発光スペクトルを与える。この際のスペクトルには、図1に示されるように500nm近傍の第二の波長が一般的に存在していた。こうした第二の波長に関しては、例えば、G.Blasse,W.L.Wanmaher,J.W.terVrugt,and A.Bril,Philips Res.Repts,23,189−200,(1968).(2) S.H.M.Poort,W.Janssen,G.Blasse,J.Alloys and Compounds,260,93−97,(1997)に記載されている。
【0017】
発光スペクトルに第二の波長が存在すると、ユーロピウム付活珪酸塩蛍光体の吸湿性が著しく増加すること、この第二の波長を取り除くことによって、ユーロピウム付活珪酸塩蛍光体の吸湿性が向上することが、本発明者らによって見出された。すなわち、吸湿性の低減されたユーロピウム付活珪酸塩蛍光体を得るには、第二の波長を取り除いて540nmないし600nmの波長の間に存在する発光ピークを、図2に示すように単一にしなければならない。単一の発光ピークを有するユーロピウム付活珪酸塩蛍光体は、特定の組成のアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体からなるコア粒子から作製された。
【0018】
すなわち、本発明の実施形態にかかる蛍光体は、前記一般式(1)で表わされる組成を有するアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体からなるコア粒子と、このコア粒子の表面に配置された表層材とを有する。
【0019】
コア粒子は、2価のユーロピウムで付活されたものであり、例えば以下のような手法により合成することができる。
【0020】
まず、構成元素の酸化物粉末を所定量秤量し、結晶成長剤として適当量の塩化アンモニウムを加えてボールミル等で混合する。酸化物粉末の代わりに、熱分解により酸化物となり得る各種化合物を用いることもできる。例えば、Eu原料としてはEu23等、Ca原料としてはCaCO3等、Sr原料としてはSrCO3等、Si原料としてはSiO2等を用いることができる。
【0021】
結晶成長剤としては、塩化アンモニウム以外のアンモニウム、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の塩化物、フッ化物、臭化物、あるいは沃化物などを用いてもよい。吸湿性の増加を防止するために、結晶成長剤の添加量は、原料粉末全体に対して1.0wt%以上30wt%以下程度とすることが望まれる。
【0022】
その後、坩堝に収容し、N2、H2の還元性雰囲気において、1000〜1600℃の温度で3〜7時間焼成する。得られた焼成品を水中で粉砕、篩後、吸引ろ過により脱水する。最後に、乾燥機中150℃で乾燥することによって、前記一般式(1)で表わされる2価のユーロピウムで付活されたアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体を得ることができる。
【0023】
本発明の実施形態においては蛍光体の吸湿性を低減することが必要であるので、初期のコア粒子に含有される水分量は、極力少ないことが求められる。具体的には、コア粒子中の水分量が1wt%未満となるよう、十分に乾燥させることが望ましい。なお、コア粒子中の水分量は、カールフィッシャー水分分析法により測定することができる。
【0024】
前記一般式(1)中、Mは、Ca、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ土類金属元素である。第一の波長540nmないし600nmを得る必要があることから、SrおよびBaはMとして含有されていることが好ましい。
【0025】
前記一般式(1)において、xは付活剤であるEuの組成比を示しており、その範囲は0.001以上0.1以下に規定される。xが0.001未満の場合には、発光輝度が低下し、一方、xが0.1を越えた場合には、濃度消光によって充分な発光輝度を得ることはできない。
【0026】
また、前記一般式(1)におけるyはSiの組成比を示し、その範囲は0.9以上1.1以下に既定される。yが0.9未満の場合には、図1に示したような500nm近傍の第二の波長が発現して、吸湿性が著しく増加する。一方、yが1.1を超えると、充分な発光輝度を得ることができない。好ましくは、yは0.95以上1.05以下の範囲内である。
【0027】
上述したようなコア粒子の表面には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、テトラエトキシシラン(TEOS)、シリカ、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、カルシウムポリフォスフェート、シリコーンオイル、およびシリコーングリースから選択される少なくとも一種からなる表層材が配置される。ケイ酸亜鉛およびケイ酸アルミニウムは、例えばZnO・aSiO2(1≦a≦4)およびAl23・bSiO2(1≦b≦10)でそれぞれ表わされる。コア粒子表面が完全に表層材で覆われている必要はなく、その一部が露出していてもよい。コア粒子の表面に、上述したような材質からなる表層材が存在していれば、その効果が得られる。
【0028】
表層材は、その分散液または溶液を用いてコア粒子表面に配置することができる。分散液または溶液中にコア粒子を所定時間浸漬した後、加熱等により乾燥させることによって表層材が配置される。蛍光体としての本来の機能を損なうことなく、表層材の効果を得るために、表層材は、コア粒子の体積の0.1〜50%程度の割合で存在することが好ましい。
【0029】
図3に、本発明の一実施形態にかかる発光装置の断面を示す。
【0030】
図示する発光装置においては、樹脂ステム200はリードフレームを成形してなるリード201およびリード202と、これに一体成形されてなる樹脂部203とを有する。樹脂部203は、上部開口部が底面部より広い凹部205を有しており、この凹部の側面には反射面204が設けられる。
【0031】
凹部205の略円形底面中央部には、発光チップ206がAgペースト等によりマウントされている。発光チップ206としては、紫外発光を行なうもの、あるいは可視領域の発光を行なうものを用いることができる。例えば、GaAs系、GaN系等の半導体発光素子等を用いることが可能である。発光チップ206の電極(図示せず)は、Auなどからなるボンデイングワイヤ207および208によって、リード201およびリード202にそれぞれ接続されている。なお、リード201および202の配置は、適宜変更することができる。
【0032】
樹脂部203の凹部205内には、蛍光層209が配置される。この蛍光層209は、本発明の実施形態にかかる蛍光体210を、例えばシリコーン樹脂からなる樹脂層211中に5wt%〜50wt%の割合で分散することによって形成することができる。
【0033】
発光チップ206としては、n型電極とp型電極とを同一面上に有するフリップチップ型のものを用いることも可能である。この場合には、ワイヤの断線や剥離、ワイヤによる光吸収等のワイヤに起因した問題を解消して、信頼性の高い高輝度な半導体発光装置が得られる。また、発光チップ206にn型基板を用いて、次のような構成とすることもできる。具体的には、n型基板の裏面にn型電極を形成し、基板上の半導体層上面にはp型電極を形成して、n型電極またはp型電極をリードにマウントする。p型電極またはn型電極は、ワイヤにより他方のリードに接続することができる。
【0034】
発光チップ206のサイズ、凹部205の寸法および形状は、適宜変更することができる。本発明の実施形態にかかる蛍光体は、360nmから500nmの波長の光で励起することによって青緑系−赤系の発光色を示す。本発明に実施形態にかかる蛍光体を、青色発光蛍光体および赤色発光蛍光体と組み合わせて用いる場合には、白色光を得ることも可能である。
【0035】
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、防湿力が優れているので、この蛍光体を含有する蛍光層を設けることによって、発光ムラがなく安定した出力で高品質の発光装置が得られる。
【0036】
以下、実施例および比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
種々の蛍光体を合成し、その防湿力を調べた。蛍光体は、内径20mm、深さ2mmの皿に収容して、湿度70%温度25℃に制御された箱内に保管した。24時間経過後、蛍光体の形状の変化を目視により観察するとともに、蛍光体1モルに対する水分量(m)をカールフィッシャー水分分析法により測定して、防湿力を次のように評価した。
【0038】
A:変化なし、m<1%
B:凝集硬化、1%≦m<3%
C:膨潤、m≧3%
また、第一の波長(λmax)におけるスペクトル強度(Ib)、および第二の波長(λmax−80)nmにおけるスペクトル強度(Ia)を測定して、スペクトル強度比(Ia/Ib)を求めた。スペクトル比(Ia/Ib)が0.1以下である場合には、実質的に第二の波長は存在しないことから、このスペクトル強度比(Ia/Ib)が0.1以下のときに、単一の発光ピークを有すると定義する。
【0039】
さらに、得られた蛍光体をシリコーン樹脂中に分散させて、図3に示したような発光装置を作製し、発光出力を測定した。発光出力は蛍光体の樹脂中に分散される量によって変化するが、最高出力が得られる蛍光体量のときの出力を発光装置出力とした。
【0040】
(実施例1)
まず、コア粒子となる(Sr0.92Ba0.06Eu0.022SiO4で表わされる組成の蛍光体を調製した。原料粉末としては、SrCO3粉末、BaCO3粉末、Eu23粉末およびSiO2粉末を用意し、所定量秤量した。原料粉末の全量に対して1.5wt%の割合で結晶成長剤としてのNH4Clを添加して、ボールミルで均一に混合した。
【0041】
得られた混合原料を蓋付きアルミナ坩堝に充填し、N2/H2の混合ガスからなる還元性雰囲気中、1000℃で4時間焼成した。25℃に冷却後、焼成品を水中で粉砕した。篩通過後、オーブン中、150℃で10時間程度乾燥して、コア粒子となる蛍光体を得た。
【0042】
一方、表層材としてはシリコーン樹脂を用意し、これをトルエンに溶解して溶液を調製した。この溶液中にコア粒子を30分間浸漬した後、真空エバポレータにより乾燥して、表面にシリコーン樹脂からなる表層材が配置された蛍光体を得た。
【0043】
上述した方法により防湿力を評価したところ、Aであった。蛍光体の組成を、防湿力の評価とともに下記表1に示す。
【0044】
この蛍光体を、395nmの励起光源と組み合わせて、実施例1の発光装置を作製した。第一の波長は570nmであり、スペクトル比(Ia/Ib)は0.07であった。
【0045】
表層材を設けずに、実施例1で用いたコア粒子そのままの状態を比較例1の蛍光体として、前述と同様に防湿力を調べた。得られた結果を、蛍光体の組成とともに下記表2に示す。
【0046】
比較例1の蛍光体を用いる以外は実施例1と同様にして比較例1の発光装置を作製し、特性を評価した。比較例1の発光装置におけるバンド波長およびスペクトル比は、実施例1の発光装置と同等であることが確認された。比較例1の発光装置の出力を1として相対発光装置出力を求めたところ、実施例1では1.1であった。
【0047】
実施例および比較例の発光装置の特性(バンド波長、発光スペクトル比、発光装置出力)を、それぞれ下記表3および4に示す。
【0048】
さらに、下記表1および2に示すように、種々の蛍光体を合成した。
【0049】
実施例2乃至10の蛍光体は、実施例1と同様のコア粒子を用い、その表面に配置する表層材の材質を変更して作製した。エポキシ樹脂(実施例2)およびフッ素樹脂(実施例3)は、前述と同様の手法によりコア粒子の表面に配置した。TEOS(実施例4)は、トルエンに溶解して溶液を調製した。この溶液中にコア粒子を30分間浸漬した後、真空エバポレータにより乾燥してコア粒子の表面に配置した。また、シリコーンオイル(実施例5)およびシリコーングリース(実施例6)は、それぞれヘキサンに溶解して溶液を調製した。この溶液中にコア粒子を30分間浸漬した後、真空エバポレータにより乾燥してコア粒子の表面に配置した。
【0050】
実施例7乃至10の蛍光体は、それぞれ以下のような手法により表層材をコア粒子の表面に配置して作製した。
【0051】
(実施例7)
10重量%SiO2を含むコリン水溶液中にコア粒子を分散させた。これを蒸発皿に収容して150℃に加熱することにより水分を蒸発させて固形物を得、さらに、水洗してシリカ膜をコア粒子の表面に配置した。
【0052】
(実施例8)
水ガラス(K2O・3SiO2)水溶液中にコア粒子を分散させ、Al(NO33水溶液を加えてpH6.0に調整した。さらに、水洗、吸引濾過、乾燥してケイ酸アルミニウム、をコア粒子の表面に配置した。
【0053】
(実施例9)
水ガラス(K2O・3SiO2)水溶液中にコア粒子を分散させ、ZnSO4水溶液を加えた。これを水洗、吸引濾過、乾燥してケイ酸亜鉛をコア粒子の表面に配置した。
【0054】
(実施例10)
ポリメタリン酸ナトリウムを含む水溶液中にコア粒子を分散させ、硝酸カルシウム水溶液を加えてpH8.0に調整した。これを水洗、吸引濾過、乾燥してカルシウムポリフォスフェートをコア粒子の表面に配置した。
【0055】
さらに、下記表1に示すようにコア粒子の組成を変更した以外は、前述の実施例1と同様の手法により実施例11乃至28の蛍光体を得た。コア粒子の組成は、原料粉末としてのEu23粉末、CaCO3粉末、SrCO3粉末、およびBaCO3粉末の重量を変えることにより調整した。
【0056】
実施例2乃至24のいずれの蛍光体も、防湿力はAと優れていた。
【表1】

【0057】
また、結晶成長剤としてのNH4Clの量を0.5wt%に変更した以外は、実施例1と同様にしてコア粒子を作製し、比較例2の蛍光体とした。比較例2の蛍光体の発光スペクトルを図4に示す。第一の波長は550nmであり、図示するように470nm近傍に第二の波長が存在している。こうした第二の波長に起因して、後述するようにスペクトル強度比(Ia/Ib)が大きくなる。さらに、下記表2に示すようにコア粒子の組成を変更するとともに、その表面にTEOSを配置して比較例3の蛍光体を得た。コア粒子の組成は、原料粉末としてのEu23粉末、SrCO3粉末、およびBaCO3粉末の重量を変えることにより調整した。比較例3の蛍光体は大きな第二の波長を示し、Ia/Ib=0.3であった.
比較例の蛍光体の組成を、防湿力とともに下記表2にまとめる。
【表2】

【0058】
表層材が存在しない場合(比較例1,2,7〜12)、yの値が小さい場合(比較例3)、xの値が小さい場合(比較例4)、xの値が大きく、yの値が小さい場合(比較例5)、およびyの値が大きい場合(比較例6)は、いずれも防湿力が劣ることが示されている。
【0059】
さらに、実施例2乃至24の蛍光体を用いた以外は実施例1と同様に、励起波長395nmの励起光源と組み合わせて、実施例2乃至28の発光装置を作製した。また、励起光源の波長を410nm、360nm,470nm、480nm、および405nmに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例29、30、31、32および33の発光装置を作製した。
【0060】
実施例の発光装置のバンド波長、スペクトル強度比および発光装置出力を、下記表3にまとめる。
【表3】

【0061】
表3に示されるように、本発明の実施形態にかかる発光装置は、いずれもスペクトル強度比(Ia/Ib)が0.1以下であり、十分な出力が得られている。
【0062】
比較例2乃至7の蛍光体を用いた以外は比較例1と同様に、励起波長395nmの励起光源と組み合わせて、比較例2乃至7の発光装置を作製した。また、励起光源の波長を410nm、360nm、470nm、480nm、および405nmに変更した以外は比較例1と同様にして、比較例8、9、10、11および12の発光装置を作製した。比較例2の蛍光体は、シリコーン樹脂に分散させる際に凝集が生じた。
【0063】
比較例の発光装置のバンド波長、スペクトル強度比および発光装置出力を、下記表4にまとめる。
【表4】

【0064】
比較例2の発光装置では、顕著な発光ムラが観察された。これは、蛍光体の凝集に起因するものと推測される。
【0065】
表4の結果から、スペクトル強度比(Ia/Ib)が0.3の場合(比較例2,3)には、出力が極端に低下することがわかる。出力の比較は、例えば、実施例29と比較例8のように、同一の励起光源について行なわれる。いずれの励起光源を用いた場合も、防湿力の高い蛍光体が用いられている実施例の発光装置は、比較例のものより出力が大きいことが明確に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来のユーロピウム付活珪酸塩蛍光体の発光スペクトル図。
【図2】本発明の一実施形態にかかるユーロピウム付活珪酸塩蛍光体の発光スペクトル図。
【図3】本発明の一実施形態にかかる発光装置の構成を表わす概略図。
【図4】比較例2のユーロピウム付活珪酸塩蛍光体の発光スペクトル図。
【符号の説明】
【0067】
200…樹脂ステム; 201…リード; 202…リード; 203…樹脂部
204…反射面; 205…凹部; 206…発光チップ
207…ボンディングワイヤ; 208…ボンディングワイヤ; 209…蛍光層
210…蛍光体; 211…樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
410nm、360nm、470nm、または405nmの波長の光を発光する発光素子と、
前記発光素子上に配置され、蛍光体を含有する蛍光層とを具備し、
前記蛍光体は、下記一般式(1)で表わされる組成のアルカリ土類金属珪酸塩蛍光体からなるコア粒子と、前記コア粒子の表面に配置され、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、テトラエトキシシラン、シリカ、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、カルシウムポリフォスフェート、シリコーンオイル、およびシリコーングリースから選択される少なくとも一種からなる表層材とを備え、波長410nm、360nm、470nm、または405nmの光で励起した際の発光スペクトルは、波長540nmないし600nmの間に単一の発光ピークを有することを特徴とする発光装置。
(M1-xEux2Siy2y+2 (1)
(上記一般式(1)中、MはCa,SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素であり、xは0.001以上0.1以下、yは0.9以上1.1以下である。)
【請求項2】
前記蛍光体は、波長410nm、360nm、470nm、または405nmの光で励起した際の発光スペクトルにおいて、第一の波長(λmaxnm)におけるスペクトル強度(Ib)と、第二の波長(λmax−80nm)におけるスペクトル強度(Ia)との比(Ia/Ib)が、0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−141374(P2009−141374A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328234(P2008−328234)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願2004−303428(P2004−303428)の分割
【原出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】