説明

発光装置

【課題】逆方向電圧の印加に起因する発光ダイオードの発光不良の発生を抑制する。
【解決手段】発光装置20は、基板30上に実装され、極性が揃えられた状態で直列接続される青色LED40および保護ダイオード50を備える。そして、青色LED40に連続して印加することが許容される逆方向電圧の絶対最大定格を保護ダイオード50単体に印加した際に保護ダイオード50に流れる逆方向電流の値が、この逆方向電圧の絶対最大定格を青色LED40単体に印加した際に青色LED40に流れる逆方向電流の値より小さくなるよう、保護ダイオード50を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電球や蛍光ランプに代えて、高効率、長寿命が期待される発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下、LEDと略す)を、照明器具として利用する技術が提案されている。このようなLEDは、pn接合の順方向に電流が流れた際に発光し、逆方向に電流が流れた場合には発光しないという特性を有している。また、LEDは、一般的な整流用ダイオードと比較して、逆方向にかかる電圧(逆方向電圧)に対する耐性が低いことが知られている。
【0003】
ここで、一般的な商用電源は交流を採用しているため、交流に直接LEDを接続した場合には、周期的にLEDに過大な逆方向電圧がかかってしまい、LEDの発光不良を招くおそれがある。
【0004】
公報記載の技術として、ダイオードブリッジ回路を用いて商用交流電源を全波整流し、直列接続された複数のLEDに供給する交流電源用発光装置が存在する(特許文献1参照)。
また、別の公報記載の技術として、ダイオードブリッジ回路を用いて交流電源を全波整流し、直列接続された複数の発光ダイオードに供給するとともに、交流電源とダイオードブリッジ回路とを電気的に接続・切断するためのスイッチを設け、スイッチのオン・オフによって各発光ダイオードを点灯・消灯させる技術が存在する(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−12808号公報
【特許文献2】特開平5−66718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、LEDを採用した照明器具の実使用時においては、例えば落雷などの外乱やスイッチをオン・オフすることに起因するノイズなどにより、外部からLEDに逆方向電圧が印加されることがある。ここで、LEDは上述したように逆方向電圧に対する耐性が低いことから、外部から印加される逆方向電圧により、発光不良を招くおそれがあった。
【0007】
本発明は、逆方向電圧の印加に起因する発光ダイオードの発光不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本発明が適用される発光装置は、発光ダイオードと、発光ダイオードと極性が揃えられた状態で直列接続される保護ダイオードとを備え、保護ダイオードは、発光ダイオードに連続して印加することが許容される逆方向電圧が保護ダイオード単体に印加された際に、逆方向電圧が発光ダイオード単体に印加された際に発光ダイオードに流れる逆方向電流の値よりも小さい逆方向電流が流れる特性を有することを特徴としている。
【0009】
このような発光装置において、保護ダイオードのアノードが、発光ダイオードのカソードに接続されることを特徴とすることができる。
また、保護ダイオードは、ソース、ゲートおよびドレインを有する電界効果型トランジスタのゲートをアノードとし、ソースとドレインとを接続したものをカソードとする構造を有することを特徴とすることができる。
さらに、保護ダイオードがPINダイオードで構成されることを特徴とすることができる。
さらにまた、保護ダイオードの端子間容量が2pF以下であることを特徴とすることができる。
そして、発光ダイオードと保護ダイオードとを実装し、且つ、発光ダイオードと保護ダイオードとを直列に接続する基板をさらに備えることを特徴とすることができる。
【0010】
また、他の観点から捉えると、本発明が適用される発光装置は、発光ダイオードと、発光ダイオードと極性が揃えられた状態で直列接続され、発光ダイオードとともにダイオード列を形成する保護ダイオードとを備え、保護ダイオードは、ダイオード列の両端に逆方向電圧が印加された際に、発光ダイオードにかかる逆方向電圧が発光ダイオードに許容される逆方向電圧以下となるように、ダイオード列の両端にかかる逆方向電圧を分圧することを特徴としている。
【0011】
このような発光装置において、保護ダイオードは、ダイオード列の両端に逆方向電圧が印加された際に、発光ダイオードにかかる逆方向電圧が保護ダイオードにかかる逆電圧よりも小さくなるように、ダイオード列の両端にかかる逆方向電圧を分圧することを特徴とすることができる。
また、保護ダイオードの端子間容量が2pF以下であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、逆方向電圧の印加に起因する発光ダイオードの発光不良の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本実施の形態が適用される照明システムの全体構成の一例を示す図である。
この照明システムは、第1電極11および第2電極12を備え、これら第1電極11および第2電極12を介して直流の電流を供給する電源装置10と、この電源装置10に接続される発光装置20とを備えている。
【0014】
ここで、電源装置10としては、例えば商用電源等から供給される交流電流を整流回路等にて直流電流に整流して出力するもの、あるいは、例えば内蔵される乾電池等から直接直流電流を出力するものなどを用いることができる。
【0015】
また、発光装置20は、配線やスルーホール等が形成された基板30と、発光ダイオードの一例としての青色LED40と、青色LED40を電気的に保護する保護ダイオード50とを備えている。ここで、青色LED40は発光チップ60に設けられており、発光チップ60および保護ダイオード50が基板30に実装されている。
【0016】
発光装置20において、青色LED40および保護ダイオード50は、青色LED40のカソードが保護ダイオード50のアノードに接続されることによってダイオード列を形成している。また、青色LED40のアノードは電源装置10の第1電極11に、保護ダイオード50のカソードは電源装置10の第2電極12に、それぞれ接続されている。このように、本実施の形態では、青色LED40と保護ダイオード50とが、極性が揃えられた状態で直列接続されている。
【0017】
図2は、発光チップ60の構成を説明するための図である。ここで、図2(a)は発光チップ60の上面図を、図2(b)は図2(a)のIIB−IIB断面図を、それぞれ示している。
【0018】
この発光チップ60は、一方の側に凹部61aが形成された筐体61と、筐体61に形成されたリードフレームからなる第1リード部62および第2リード部63と、凹部61aの底面に取り付けられた青色LED40と、凹部61aを覆うように設けられた封止部69とを備えている。なお、図2(a)においては、封止部69の記載を省略している。
【0019】
筐体61は、第1リード部62および第2リード部63を含む金属リード部に、白色の熱可塑性樹脂を射出成型することによって形成されている。
【0020】
第1リード部62および第2リード部63は、0.1〜0.5mm程度の厚みをもつ金属板であり、加工性、熱伝導性に優れた金属として例えば鉄/銅合金をベースとし、その上にめっき層としてニッケル、チタン、金、銀などを数μm積層して構成されている。そして、本実施の形態では、第1リード部62および第2リード部63の一部が、凹部61aの底面に露出するようになっている。また、第1リード部62および第2リード部63の一端部側は筐体61の外側に露出し、且つ、筐体61の外壁面から裏面側に折り曲げられている。
【0021】
金属リード部のうち、第2リード部63は底面の中央部まで延設されており、第1リード部62は底面において中央部に到達しない部位まで延設されている。そして、青色LED40は、その裏面側が図示しないダイボンディングペーストによって第2リード部63に固定されている。また、第1リード部62と青色LED40の上面に設けられたアノード電極(図示せず)とが、金線によって電気的に接続されている。一方、第2リード部63と青色LED40の上面に設けられたカソード電極(図示せず)とが、金線によって電気的に接続されている。
【0022】
また、青色LED40の発光層はGaN(窒化ガリウム)を含む構成を有しており、青色光を出射するようになっている。そして、本実施の形態で用いた青色LED40は、25℃の環境下において20mAの順方向電流IFを流したときに、3.2Vの順方向電圧VFが発生するようになっている。また、青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格は5.0Vである。さらに、青色LED40は、25℃の環境下において5.0Vの逆方向電圧VRを印加した際に、最大で10μAの逆方向電流IRが流れるようになっている。
【0023】
封止部69は、可視領域の波長において光透過率が高く、また屈折率が高い透明樹脂にて構成される。また、封止部69の表面側は平坦面となっている。封止部69を構成する耐熱性、耐候性、及び機械的強度が高い特性を満たす樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やシリコン樹脂を用いることができる。そして、本実施の形態では、封止部69を構成する透明樹脂に、青色LED40から出射される青色光の一部を、緑色光および赤色光に変換する蛍光体を含有させている。なお、このような蛍光体に代えて、青色光の一部を黄色光に変換する蛍光体、あるいは、青色光の一部を黄色光および赤色光に変換する蛍光体を含有させるようにしてもよい。
【0024】
では、図1に示す照明システムの動作を、図1〜図3を参照しつつ説明する。
発光装置20には、電源装置10の第1電極11を正極とし、第2電極12を負極として、直流電圧が印加される。このとき、第1電極11に接続される青色LED40のアノードから保護ダイオード50のカソードに向かって直流の順方向電流IFが流れる。
【0025】
その結果、青色LED40は、青色に発光する。そして、青色LED40が搭載される発光チップ60では、封止部69内に存在する蛍光体が、青色LED40から出射された青色光の一部を緑色および赤色に変換する。すると、発光チップ60の封止部69からは、青色光、緑色光および赤色光を含む白色光が出射される。そして、発光チップ60から出射された白色光は、空間あるいは対象物に向けて照射される。
【0026】
一方、発光に伴って発光チップ60の青色LED40で発生した熱は、第2リード部63を介して基板30の表面に伝達され、さらに基板30に貫通形成されたスルーホール(図示せず)を介して基板30の裏面に伝達される。そして、基板30の裏面に伝達された熱は、外部に放出される。
【0027】
ところで、図1に示す照明システムを実際の使用においては、何らかの理由により、電源装置10の第2電極12が正極側となり、第1電極11が負極側となることがある。この原因としては、例えば落雷等によって電源装置10からの出力にノイズが重畳されてしまうことが挙げられる。また、電源装置10に発光装置20に対する電流の供給をオン・オフするためのスイッチが取り付けられている場合に、スイッチのオン・オフに起因する突入電流が発生してしまうことが挙げられる。さらに、電源装置10においてトライアックを用いた調光(所謂トライアック調光)を行っている場合に、スイッチングによるノイズが重畳されてしまうことが挙げられる。さらにまた、電源装置10において乾電池を電力供給源として用いている場合に、乾電池を正負逆に接続してしまうことが挙げられる。このような事態が生じると、発光装置20には、瞬間的あるいは継続的に逆方向電圧VRが印加されることになる。
【0028】
ここで、青色LED40に対し瞬間的な逆方向電圧VRが印加される場合においては、青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格が印加されたとしても、青色LED40に異常は生じにくい。ただし、瞬間的であっても、青色LED40に対し逆方向電圧VRの数倍以上の電圧が印加される場合においては、青色LED40が破壊されてしまうおそれがある。また、瞬間的な逆方向電圧VRであっても、繰り返し逆方向電圧VRの絶対最大定格が印加されることにより、青色LED40が破壊されてしまうおそれがある。
一方、青色LED40に対し定常的な逆方向電圧VRが印加される場合においては、青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格が印加され続けることにより、青色LED40が破壊されてしまうおそれがある。
【0029】
これに対し、本実施の形態では、青色LED40と保護ダイオード50とを極性を揃えた状態で直列接続するとともに、保護ダイオード50として、青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格(この例では5.0V)を保護ダイオード50単体に印加した際に保護ダイオード50に流れる逆方向の漏れ電流(逆方向電流IR)の値が、この逆方向電圧VRの絶対最大定格(5.0V)を青色LED40単体に印加した際に青色LED40に流れる逆方向電流IRの値よりも小さい特性を有するものを用いるようにした。
【0030】
これにより、発光装置20では、印加される逆方向電圧VRの多くが保護ダイオード50に分圧されることになり、青色LED40には逆方向電圧VRの絶対最大定格(5.0V)よりも小さい逆方向電圧VRが印加されることになる。その結果、発光装置20に対する逆方向電圧VRの印加に起因する青色LED40の故障の発生が抑制される。なお、保護ダイオード50には青色LED40よりも大きな逆方向電圧VRが印加されることになるが、保護ダイオード50にかかる逆方向電圧VRの大きさは保護ダイオード50の逆方向電圧VRの絶対最大定格よりも小さいので、逆方向電圧VRの印加に起因する保護ダイオード50の故障の発生も抑制されることになる。
【0031】
特に、本実施の形態では、青色LED40よりも下流側に保護ダイオード50を接続しているため、突入しようとする逆方向電流IRが保護ダイオード50によって制限されることとなり、青色LED40に流れ込む逆方向電流IRを青色LED40に許容される逆方向電流IRの大きさよりも小さくすることができる。
【0032】
では次に、発光装置20の保護ダイオード50として使用することのできるダイオードの特性について説明を行う。
図3は、青色LED40と直列に接続される保護ダイオード50の特性評価用の回路構成図を示している。
この特性評価用の回路は、図1に示す発光装置20と同様、青色LED40のカソードと保護ダイオード50のアノードとを接続した構成となっている。そして、保護ダイオード50のカソードと青色LED40のアノードとの間に、図示しない電源にてカソード側からアノード側へと向かう電圧(以下の説明では逆方向総電圧VRTと呼ぶ)を印加し、そのときに青色LED40にかかる逆方向電圧VRLおよび保護ダイオード50にかかる逆方向電圧VRPを測定している。なお、ここでは、4種類の保護ダイオード50としてLitec社製L8102F、東芝セミコンダクター社製1SS397、VISHAY社製PAD1、および東芝セミコンダクター社製1SS370を用意し、それぞれについて評価を行った。これらのうち、1SS370および1SS397はPN接合を有する一般的なダイオードであり、L8102Fは所謂P層とN層との間に絶縁層(I層)を有するPINダイオードである。また、PAD1は、ピコアンペアダイオード(Pico Ampere Diodes)とも呼ばれ、逆方向電流IRが非常に小さいことで知られるダイオードである。
【0033】
図4は、青色LED40および上記4種類の保護ダイオード50(L8102F、1SS397、PAD1、1SS370)の、単体での逆方向電圧−逆方向電流特性を示している。図4において、横軸は逆方向電圧VRであり、縦軸は逆方向電流IRである。なお、図4では、青色LED40を単にLEDと表記している。ここで、印加する逆方向電圧VRの範囲は5V≦VR≦50Vとした。ただし、PAD1については、その逆方向電圧VRの絶対最大定格が30Vとなっているため、印加する逆方向電圧VRの範囲を5V≦VR≦30Vとしている。また、青色LED40については、その逆方向電圧VRの絶対最大定格が5.0Vであるが、ここでは印加する逆方向電圧VRの範囲を5V≦VR≦15Vとしている。
【0034】
図4より、青色LED40には、逆方向電圧VRが5V〜15Vの範囲において、10-10〜10-7Aオーダーの逆方向電流IRが流れることがわかる。また、L8102Fには、逆方向電圧VRが5V〜50Vの範囲において、10-11Aオーダーの逆方向電流IRが流れることがわかる。さらに、1SS397には、逆方向電圧VRが5V〜50Vの範囲において、10-12〜10-11Aオーダーの逆方向電流IRが流れることがわかる。さらにまた、PAD1には、逆方向電圧VRが5V〜30Vの範囲において、10-13〜10-12Aオーダーの逆方向電流IRが流れることがわかる。そして、1SS370では、逆方向電圧VRが5V〜50Vの範囲において、10-9〜10-8Aオーダーの逆方向電流IRが流れていることがわかる。
【0035】
したがって、逆方向電流IRに関していえば、L8102F、1SS397、PAD1、1SS370の中では、PAD1が最も流れにくく、1SS370が最も流れやすい特性を有している。また、L8102F、1SS397、PAD1は、逆方向電圧VRが5V〜15Vの範囲において、青色LED40よりも逆方向電流IRが流れにくいという特性を有している。これに対し、1SS370は、逆方向電圧VRが5V〜15Vの範囲において、高電圧の領域(ほぼ10V〜15V)では青色LED40よりも逆方向電流IRが流れにくいものの、低電圧の領域(5V〜ほぼ10V)では青色LED40よりも逆方向電流IRが流れやすいという特性を有している。
【0036】
図5は、図3に示す回路の保護ダイオード50として1SS397を用いた場合における、逆方向総電圧VRTと青色LED40にかかる逆方向電圧VRLおよび保護ダイオード50(1SS397)にかかる逆方向電圧VRPとの関係を示す図である。図5において、横軸は逆方向総電圧VRTであり、縦軸は各々のダイオードにかかる逆方向電圧VRである。なお、縦軸と横軸との関係については、後述する図6〜図8においても同様である。ここで、印加する逆方向総電圧VRTの範囲は、0V≦VRT≦80Vとしている。
【0037】
図5より、逆方向総電圧VRTが0V〜80Vの範囲において、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLよりも保護ダイオード50(1SS397)にかかる逆方向電圧VRPの方が大きくなっていることがわかる。また、図5より、逆方向総電圧VRTが0V〜80Vの範囲において、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLは、この青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格(5.0V)以下となっていることがわかる。
【0038】
また、図6は、図3に示す回路の保護ダイオード50としてPAD1を用いた場合における、逆方向総電圧VRTと青色LED40にかかる逆方向電圧VRLおよび保護ダイオード50(PAD1)にかかる逆方向電圧VRPとの関係を示す図である。ここで、印加する逆方向総電圧VRTの範囲は、上述した理由により0V≦VRT≦30Vとしている。
【0039】
図6より、逆方向総電圧VRTが0V〜30Vの範囲において、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLよりも保護ダイオード50(PAD1)にかかる逆方向電圧VRPの方が大きくなっていることがわかる。また、図6より、逆方向総電圧VRTが0V〜30Vの範囲において、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLは、この青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格(5.0V)以下となっている。そして、保護ダイオード50としてPAD1を用いた場合は、保護ダイオード50として上記1SS397を用いた場合よりも、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLが著しく低くなり、全域においてほぼ0Vとなっていることもわかる。
【0040】
さらに、図7は、図3に示す回路の保護ダイオード50としてL8102Fを用いた場合における、逆方向総電圧VRTと青色LED40にかかる逆方向電圧VRLおよび保護ダイオード50(L8102F)にかかる逆方向電圧VRPとの関係を示す図である。ここで、印加する逆方向総電圧VRTの範囲は、0V≦VRT≦80Vとしている。
【0041】
図7より、逆方向総電圧VRTが0V〜ほぼ5Vの範囲において、保護ダイオード50(L8102F)にかかる逆方向電圧VRPよりも青色LED40にかかる逆方向電圧VRLの方が大きくなっており、逆方向総電圧VRTがほぼ5V〜80Vの範囲において、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLよりも保護ダイオード50(L8102F)にかかる逆方向電圧VRPの方が大きくなっていることがわかる。ただし、図7より、逆方向総電圧VRTが0V〜80Vの範囲において、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLは、この青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格(5.0V)以下となっていることがわかる。
【0042】
一方、図8は、図3に示す回路の保護ダイオード50として1SS370を用いた場合における、逆方向総電圧VRTと青色LED40にかかる逆方向電圧VRLおよび保護ダイオード50(1SS370)にかかる逆方向電圧VRPとの関係を示す図である。ここで、印加する逆方向総電圧VRTの範囲は、0V≦VRT≦80Vとしている。
【0043】
図8より、逆方向総電圧VRTが0V〜ほぼ22Vの範囲において、保護ダイオード50(1SS370)にかかる逆方向電圧VRPよりも青色LED40にかかる逆方向電圧VRLの方が大きくなっており、逆方向総電圧VRTがほぼ22V〜80Vの範囲において、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLよりも保護ダイオード50(1SS370)にかかる逆方向電圧VRPの方が大きくなっていることがわかる。また、図8より、逆方向総電圧VRTが0V〜ほぼ5Vの範囲において、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLは、この青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格(5.0V)以下となるのに対し、逆方向総電圧VRTがほぼ15V〜80Vの範囲において、青色LED40にかかる逆方向電圧VRLは、この青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格(5.0V)を超えていることがわかる。
【0044】
したがって、上述した1SS397、PAD1、L8102Fおよび1SS370のうち、1SS397、PAD1およびL8102Fについては、発光装置20の保護ダイオード50として使用した場合に、青色LED40に絶対最大定格を上回る逆方向電圧VRを印加させることがなく、青色LED40を保護することができる。これに対し、1SS370は、青色LED40に絶対最大定格を上回る逆方向電圧を印加させることがあるため、青色LED40を逆方向電圧VRから保護することができなくなる場合がある。
【0045】
したがって、発光装置20の保護ダイオード50としては、これらのうち、1SS397、PAD1やL8102F等を使用することができる。ただし、保護ダイオード50としてPAD1を用いる場合、PAD1は1SS397やL8102Fよりも逆方向の耐圧性能が低いことから、複数のPAD1を直列に接続することで保護ダイオード50を構成することが好ましい。
【0046】
ところで、瞬時の逆電圧に対する逆電圧防止においては、保護ダイオード50の端子間容量が小さいことが好ましい。保護ダイオード50の両端に電圧が印加されると、保護ダイオード50にはQ=CVで表される電荷が蓄積される。ここで、Qは保護ダイオード50に蓄積される電荷、Cは保護ダイオード50の端子間容量、Vは保護ダイオード50の端子間に印加されている電圧である。また電流(I)は1秒間あたりに流れる電荷の量であるのでI=dQ/dtとなる。したがって、保護ダイオード50の端子間に電圧変化が生じた場合には、上記2つの式から、I=C×dV/dtで表される電流が流れてしまうため、端子間容量Cが大きいと瞬時の逆電圧が印加された際のLEDの逆電圧防止機能を発揮することが困難になる。
【0047】
かかる理由から、瞬時の逆電圧を防止するために保護ダイオード50の端子間容量Cは小さいほど好ましい。保護ダイオード50に求められる端子間容量Cは電圧変化(dV/dt)や負荷インピーダンスによって異なるが、実用的には2pF以下であることが好ましい。
【0048】
保護ダイオード50の端子間容量Cの測定は、インピーダンスアナライザーやLCRメーターを用いて測定することができる。ダイオードでは、印加する逆電圧が大きいほど端子間容量Cが減少する。端子間容量Cの測定は、一般的な青色LED40の逆方向電圧VRの絶対最大定格である5Vに1MHz、0.1V(RMS)の交流信号を重畳して行った。
【0049】
この方法で測定した端子間容量Cを表1に示した。また、表1には、上述したL8102F、1SS397、PAD1、1SS370に加え、一般的な整流ダイオードとしてUF2010(Panjit Semiconductor社製)、G3G(Vishay社製)について端子間容量Cを測定した結果も記載した。本発明の実施の形態として例示した保護ダイオード50の端子間容量Cはいずれも2pF以下の小さな値であり、一般の整流用ダイオードと比べて小さな端子間容量Cを有している。したがって、瞬時の逆電圧に対しても適した特性を有している。
【0050】
【表1】

【0051】
なお、上述した例では、保護ダイオード50として所謂ダイオード素子を用いていたが、これに限られるものではない。
図9(a)は、FET(Field Effect Transistor)を用いて保護ダイオード50を構成した例を示す図である。
この保護ダイオード50は、ゲートG、ドレインDおよびソースSを備えたJFET(接合型電界効果トランジスタ)を用い、ドレインDとソースSとを短絡した構造を有している。このような構成とすることにより、JFETを、ゲートGをアノード(A)、ドレインDとソースSとの接続部をカソード(K)とするダイオードとして利用することができ、アノード(A)からカソード(K)に向かう順方向電流IFを流すことができる。
【0052】
保護ダイオード50は、25℃の環境下において5mAの順方向電流IFを流した際に、0.8Vの順方向電圧VFが発生するようになっている。また、この保護ダイオード50の逆方向電圧VRの絶対最大定格は60Vとなっている。
【0053】
ここで、図9(b)は、保護ダイオード50の逆方向電圧−逆方向電流特性を示している。なお、図9(b)において、横軸は逆方向電圧VRであり、縦軸は逆方向電流IRである。
【0054】
JFET等のFETを用いてダイオード構造を構成した場合、逆方向電圧VRを印加した際に流れる逆方向電流IRの大きさは、整流用ダイオードとして一般的なシリコンダイオード等と比べ、著しく小さくなる。例えば、同一の逆方向電圧VRをシリコンダイオードとFETベースのダイオードで構成された保護ダイオード50とにそれぞれ印加した場合、シリコンダイオードには数nAレベルの逆方向電流IRが流れるのに対し、保護ダイオード50には1pA未満の逆方向電流IRしか流れない。
【0055】
したがって、図9(a)に示す保護ダイオード50を発光装置20に組み込んで使用することにより、保護ダイオード50に直列接続される青色LED40を逆方向電圧VRから保護することができる。ただし、図9(a)に示す構成を採用した場合、逆方の耐圧性能が低いことから、複数個を直列接続して使用することが好ましい。
【0056】
なお、本実施の形態では、1個の青色LED40と1個の保護ダイオード50とを直列接続してダイオード列を構成するようにしていたが、これに限られるものではなく、保護ダイオード50に対し、極性を揃えた状態で複数の青色LED40を直列接続するようにしてもよい。この場合において、これら複数の青色LED40に極性を揃えた状態で接続される保護ダイオード50の数は1つでかまわないが、複数であってもよい。また、その場合において、保護ダイオード50の接続部位については、直列接続される複数の青色LED40のカソード側の端部であってもよいし、アノード側の端部であってもよいし、さらにその中間部位であってもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、発光装置20を用いて照明システムを構成する例について説明を行ったが、これに限られるものではなく、上述した発光装置20を例えば信号機、液晶表示装置等のバックライト装置、スキャナの光源装置、プリンタの露光装置、車載用の照明機器、LEDのドットマトリクスを用いたLEDディスプレイ装置等にも適用することができる。
【0058】
また、本実施の形態では、青色LED40を搭載した発光チップ60を例として説明を行ったが、これに限られるものではなく、例えば紫外LED、緑色LED、赤色LED、あるいは赤外LEDを搭載するものであってもよく、また、異なる色のLEDを複数搭載するものであってもよい。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施の形態が適用される照明システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】(a)は発光チップの上面図であり、(b)は(a)のIIB−IIB断面図である。
【図3】保護ダイオードの特性評価用の回路構成図である。
【図4】青色LEDおよび各ダイオードの単体での逆方向電圧−逆方向電流特性を示す図である。
【図5】保護ダイオードとして1SS397を用いた場合における、逆方向総電圧と青色LEDにかかる逆方向電圧および保護ダイオードにかかる逆方向電圧との関係を示す図である。
【図6】保護ダイオードとしてPAD1を用いた場合における、逆方向総電圧と青色LEDにかかる逆方向電圧および保護ダイオードにかかる逆方向電圧との関係を示す図である。
【図7】保護ダイオードとしてL8102Fを用いた場合における、逆方向総電圧と青色LEDにかかる逆方向電圧および保護ダイオードにかかる逆方向電圧との関係を示す図である。
【図8】保護ダイオードとして1SS370を用いた場合における、逆方向総電圧と青色LEDにかかる逆方向電圧および保護ダイオードにかかる逆方向電圧との関係を示す図である。
【図9】(a)はFETを用いた保護ダイオードの構成を示す図であり、(b)は(a)に示す保護ダイオードの逆方向電圧−逆方向電流特性を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10…電源装置、20…発光装置、30…基板、40…青色LED、50…保護ダイオード、60…発光チップ、61…筐体、62…第1リード部、69…封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードと、
前記発光ダイオードと極性が揃えられた状態で直列接続される保護ダイオードと
を備え、
前記保護ダイオードは、前記発光ダイオードに連続して印加することが許容される逆方向電圧が当該保護ダイオード単体に印加された際に、当該逆方向電圧が当該発光ダイオード単体に印加された際に当該発光ダイオードに流れる逆方向電流の値よりも小さい逆方向電流が流れる特性を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記保護ダイオードのアノードが、前記発光ダイオードのカソードに接続されることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記保護ダイオードは、ソース、ゲートおよびドレインを有する電界効果型トランジスタの当該ゲートをアノードとし、当該ソースと当該ドレインとを接続したものをカソードとする構造を有することを特徴とする請求項1または2記載の発光装置。
【請求項4】
前記保護ダイオードがPINダイオードで構成されることを特徴とする請求項1または2記載の発光装置。
【請求項5】
前記保護ダイオードの端子間容量が2pF以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光ダイオードと前記保護ダイオードとを実装し、且つ、当該発光ダイオードと当該保護ダイオードとを直列に接続する基板をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の発光装置。
【請求項7】
発光ダイオードと、
前記発光ダイオードと極性が揃えられた状態で直列接続され、当該発光ダイオードとともにダイオード列を形成する保護ダイオードと
を備え、
前記保護ダイオードは、前記ダイオード列の両端に逆方向電圧が印加された際に、前記発光ダイオードにかかる逆方向電圧が当該発光ダイオードに許容される逆方向電圧以下となるように、当該ダイオード列の両端にかかる逆方向電圧を分圧することを特徴とする発光装置。
【請求項8】
前記保護ダイオードは、前記ダイオード列の両端に逆方向電圧が印加された際に、前記発光ダイオードにかかる逆方向電圧が当該保護ダイオードにかかる逆電圧よりも小さくなるように、当該ダイオード列の両端にかかる逆方向電圧を分圧することを特徴とする請求項7記載の発光装置。
【請求項9】
前記保護ダイオードの端子間容量が2pF以下であることを特徴とする請求項7または8記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−245356(P2010−245356A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93470(P2009−93470)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】