説明

発光装置

【課題】蛍光体間の再吸収を抑制し優れた発光効率を実現する発光装置の提供。
【解決手段】基板12に実装される発光素子14と、この発光素子上に形成される径rの半円状であり、下式(1)の赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体層20と、(M1−x1Eux1SiAlO(1)(式中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、a、b、c、dは、0<x1<1、0.55<a<0.95、2.0<b<3.9、0<c<0.6、4<d<5.7)、赤色蛍光体層上に形成され、径dの半円状である透明樹脂の中間透明層22と、この中間透明層上に形成され、半円状で緑色蛍光体を含有する緑色蛍光体層24とを有し、径rと径dとの関係が、下式(2)を充足する発光装置10。2.0r(μm)≦d≦(r+1000)(μm)(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色の発光ダイオード(LED)にYAG:Ceなどの黄色蛍光体を組合せ、単一のチップで白色光を発する、いわゆる白色LEDに注目が集まっている。従来、LEDは赤色、緑色、青色と単色で発光するものであり、白色または中間色を発するためには、単色の波長を発する複数のLEDを用いてそれぞれ駆動しなければならなかった。しかし、現在では、発光ダイオードと、蛍光体とを組合せることにより、上述の煩わしさを排し、簡便な構造によって白色光を得ることができるようになっている。
【0003】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、携帯機器、PC周辺機器、OA機器、各種スイッチ、バックライト用光源、および表示板などの各種表示装置に用いられている。これらLEDランプは高効率化が強く望まれており、加えて一般照明用途には高演色化、バックライト用途には高色域化の要請がある。高効率化には、蛍光体の高効率化が必要であり、高演色化あるいは高色域化には、青色の励起光と青色で励起され緑色の発光を示す蛍光体および青色で励起され赤色の発光を示す蛍光体を組み合わせた白色光源が望ましい。
【0004】
また、高負荷LEDは駆動により発熱し、蛍光体の温度が100〜200℃程度まで上昇することが一般的である。このような温度上昇が起こると蛍光体の発光強度は一般に低下し、いわゆる温度消光が生ずる。このため、特に、高温領域、すなわち高電流範囲で発光効率が低下するという問題がある。
【0005】
さらに、複数の蛍光体を用いる場合、蛍光体間の再吸収により発光効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−31201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、蛍光体間の再吸収を抑制し優れた発光効率を実現する発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態の発光装置は、発光素子を実装する平面を有する基板と、この平面に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子と、この発光素子上に形成され、平面に対して垂直な断面における外周形状が径rの半円状であり、下記式(1)の赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体層と、
(M1−x1Eux1SiAlO (1)
(上記式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、a、b、c、dは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
0.55<a<0.95、
2.0<b<3.9、
0<c<0.6、
4<d<5.7)
上記赤色蛍光体層上に形成され、平面に対して垂直な断面における外周形状が径dの半円状である透明樹脂の中間透明層と、この中間透明層上に形成され、平面に対して垂直な断面における外周形状が半円状であり、緑色蛍光体を含有する緑色蛍光体層と、を有し、
上記径rと上記径dとの関係が、下記式(2)を充足する。
2.0r(μm)≦d≦(r+1000)(μm) (2)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図2】第1の実施の形態の赤色蛍光体の光吸収率を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の発光装置の作用を示す図である。
【図4】第1の実施の形態の発光装置の光束ロスを示す図である。
【図5】第2の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図6】実施例の白色発光モジュールの配線図である。
【図7】実施例21の赤色蛍光体のXRDプロファイルである。
【図8】実施例23の赤色蛍光体のXRDプロファイルである。
【図9】実施例3の緑色蛍光体のXRDプロファイルである。
【図10】実施例6の緑色蛍光体のXRDプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。
【0011】
また、本明細書中、赤色蛍光体とは、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、橙色から赤色にわたる領域の発光、すなわち波長580nm〜700nm(以下、総称して赤色とも記載)の間にピークを有する発光を示す蛍光体を意味する。
【0012】
なお、本明細書中、緑色蛍光体とは、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、青緑色から黄緑色(以下、総称して緑色とも記載)にわたる領域の発光、すなわち波長490nm〜550nmの間にピークを有する発光を示す蛍光体を意味する。
【0013】
また、本明細書中、「白色光」とは一般的に照明装置に用いられる異なる波長の光が混合し、電球色、温白色、白色、昼白色、昼光色等を包含する概念である。
【0014】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、発光素子を実装する平面を有する基板と、この平面に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子と、この発光素子上に形成され、平面に対して垂直な断面における外周形状が径rの半円状であり、下記式(1)の赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体層と、
(M1−x1Eux1SiAlO (1)
(上記式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、a、b、c、dは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
0.55<a<0.95、
2.0<b<3.9、
0<c<0.6、
4<d<5.7)
上記赤色蛍光体層上に形成され、平面に対して垂直な断面における外周形状が径dの半円状である透明樹脂の中間透明層と、この中間透明層上に形成され、平面に対して垂直な断面における外周形状が半円状であり、緑色蛍光体を含有する緑色蛍光体層と、を有し、
上記径rと上記径dとの関係が、下記式(2)を充足する。
2.0r(μm)≦d≦(r+1000)(μm) (2)
【0015】
上記式(1)で表わされる組成を有するサイアロン系蛍光体は赤色蛍光体(R)であり、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、橙色から赤色にわたる領域の発光、すなわち波長580〜700nmの間にピークを有する発光を示す。
【0016】
そして、この赤色蛍光体は、温度消光が小さいため、高温領域においても優れた発光効率が得られるという利点がある。一方で、励起スペクトルが、近紫外光から緑色までの広い範囲におよぶため、緑色蛍光体と組み合わせて白色発光装置(白色LED)を構成しようとする場合、緑色光の赤色蛍光体による再吸収が顕著になり、発光効率が低下したり色ずれが生じたりする恐れがある。
【0017】
本実施の形態の発光装置は、赤色蛍光体層と緑色蛍光体層との間に透明樹脂の中間透明層を設けるとともに、赤色蛍光体層と中間透明層の径を限定することにより、サイアロン系の赤色蛍光体による緑色光の再吸収を抑制し、発光効率が高く、色ずれが抑制される白色発光装置が実現される。
【0018】
図1は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。この発光装置10は、白色光を発する白色LEDである。発光装置10は、発光素子を実装する平面を有する基板12を備えている。基板12には、例えば、高反射材料が用いられる。
【0019】
そして、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子14として、例えば、青色LEDチップが基板12の平面上に実装されている。青色LEDチップは、例えば金のワイヤ16を介して図示しない配線に接続されている。そして、この配線を介して外部から駆動電流が青色LEDチップに供給されることにより、青色LEDチップが励起用の青色光を発生する。
【0020】
発光素子14上には、半球形状の透明樹脂からなる素子封止透明層18が設けられている。透明樹脂は例えばシリコーン樹脂である。
【0021】
さらに、素子封止透明層18を覆うように、平面に対して垂直な断面における外周形状が径rの半円状であり、下記式(1)の組成を有する赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体層20が形成される。
(M1−x1Eux1SiAlO (1)
(上記式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、a、b、c、dは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
0.55<a<0.95、
2.0<b<3.9、
0<c<0.6、
4<d<5.7)
【0022】
なお、MはSr(ストロンチウム)であることが望ましいが、Ca(カルシウム)などの他元素をMに対して約10mol%以下の割合で混ぜてもよい。
【0023】
赤色蛍光体層20は、赤色蛍光体が例えば透明なシリコーン樹脂中に分散されて形成される。赤色蛍光体層20は、青色LEDから発生された青色光を吸収して赤色光に変換する。
【0024】
さらに、赤色蛍光体層20上に形成され、基板12の平面に対して垂直な断面における外周形状が径dの半円状である透明樹脂の中間透明層22が形成されている。透明樹脂は例えばシリコーン樹脂である。
【0025】
中間透明層22を覆うように、平面に対して垂直な断面における外周形状が半円状で、緑蛍光体を含有する緑色蛍光体層24が形成される。中間透明層22を設けることにより、赤色蛍光層20による再吸収が抑制される。
【0026】
緑色蛍光体層24は、緑色蛍光体が例えば透明なシリコーン樹脂中に分散されて形成される。緑色蛍光体層24は、青色LEDから発生された青色光を吸収して緑色光に変換する。
【0027】
さらに、緑色蛍光体層24を覆うように、例えば透明なシリコーン樹脂で形成される外表面透明層26が形成される。この外表面透明層26は、発光素子14、赤色蛍光体20、緑色蛍光体層24から発せられる光が、大気との界面で全反射されることを抑制する機能がある。
【0028】
以上のように、発光装置10は、発光素子14状に半球状に積層された、赤色蛍光体層20、中間透明樹脂層22、緑色蛍光体層24を備えている。このように、蛍光体層を半球状にすることで、発光強度や色合いの均質性の高い白色光が発光装置10より発せられる。
【0029】
そして、赤色蛍光体層20の外側の径rと、中間透明層22の外側の径dとの関係が、下記式(2)を充足する。
2.0r(μm)≦d≦(r+1000)(μm) (2)
【0030】
なお、赤色蛍光体層20や中間透明層22は、例えば、製造上の要因等で完全な半球形状からずれることは許容される。この場合、径rや径dは、基板12の平面に対して垂直方向の径と、基板12の平面に対して平行な方向の径を平均することで算出すればよい。
【0031】
次に、発光装置10の作用について説明する。
【0032】
図2は、上記式(1)で示される組成を有するサイアロン系の赤色蛍光体の規格化発光強度を示す図である。横軸が励起光の波長、縦軸がモニター波長を602nmとした時の規格化発光強度である。
【0033】
ピーク波長457nmの青色LEDで励起した場合の発光特性評価から、457nmの吸収率として87%が求められている。この値と図2の特性から、比例配分により、525nmの緑色光の吸収率は68%と求められる。以降、本実施の形態の赤色蛍光体による緑色光の吸収率βを0.68で代表させて議論する。
【0034】
赤色蛍光体層20による緑色光の再吸収による光束ロスは、実使用上5%以下にすることが発光装置の特性上望まれる。以下、この条件を満たすために赤色蛍光体層20の外側の径rと、中間透明層22の外側の径dとに要求される関係を導出する。
【0035】
図3は、本実施の形態の発光装置の作用の説明図である。図3に示すように、例えば、緑色蛍光体層24中の位置Aから発せられる緑色光は、360度全方位に広がる。このうち、図中、2本の片矢印と点線楕円で概念的に示される範囲の光束、すなわち、位置Aから赤色蛍光体層20を見込んだ範囲の光束が、赤色蛍光体層20に吸収されるうる光束となる。
【0036】
緑色蛍光体層24からの全光束Lに対する赤色蛍光体層20の外面に到達する光束L(赤色蛍光体層20に吸収されるうる光束)の比、L/Lは下記式(4)で表わされる、
/L=2π(1−(1−(r/d)−1/2)/2π
=1−(1−(1−(r/d)−1/2) (4)
となる。
【0037】
緑色光が赤色蛍光体層20に再吸収されて生ずる光束ロスγは、上述の緑色光の赤色蛍光体による吸収率β(=0.68)と、上記式(4)で表わされるL/Lと、緑色光(波長525nm)と赤色光(波長600nm)との視感度差δ(=0.63)の積で表わされる。すなわち、下記式(5)で表わされる。
γ=βδ(1−(1−(1−(r/d)−1/2)) (5)
【0038】
図4は、本実施の形態の光束ロスを示すグラフである。横軸がd/r、縦軸が式(4)から算出される光束ロスγである。β=0.68、δ=0.63として計算している。
【0039】
図4から明らかなように、光束ロスγを5%以下にするためには、d/rが2.0以上であることが望ましく、2.2以上であることがより望ましい。よって、下記式(6)を充足することが望ましい。d/rが2.0以上であると、光束ロスの飽和傾向が顕著になることからも好適である。
2.0r(μm)≦d(μm) (6)
【0040】
もっとも、中間透明層22が厚くなりすぎると、中間透明層22による光の吸収による光束ロスが顕在化し、赤色蛍光体層20と中間透明層22等の径に制約を設けた効果が失われる恐れがある。代表的な透明樹脂であるシリコーン樹脂の近紫外から青色光の透過率は、2000μmの厚みの樹脂板において90%である。すなわち吸収率が10%である。
【0041】
したがって、中間透明層22における励起光や蛍光体発光の吸収による光束ロスを5%以下に抑ええるためには、中間透明層22の厚さ(d−r)は、下記式(7)を充足することが必要である。
(d−r)≦1000(μm) (7)
【0042】
さらに中間透明層22の影響を抑えるために、(d−r)≦500であることが望ましく、(d−r)≦200であることがより望ましい。
【0043】
よって、式(6)および式(7)から、発光装置の赤色蛍光体層20や中間透明層22による吸収ロスを実使用上要請される5%以下とするためには、赤色蛍光体層20の外側の径rと、中間透明層22の外側の径dが下記式(2)を充足することが必要となる。
2.0r(μm)≦d≦(r+1000)(μm) (2)
【0044】
以上より、本実施の形態の発光装置は、温度消光の小さい赤色蛍光体を用いつつ、赤色蛍光体層による緑色光の再吸収を抑制し、優れた発光効率を有する発光装置を実現する。
【0045】
なお、本実施の形態の発光装置において、緑色蛍光体が、下記式(3)で表わされる組成を有することが望ましい。
(M’1−x2Eux23−ySi13−zAl3+z2+u21−w (3)
(上記式(3)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x2、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x2<1、
−0.1<y<0.3、
−3<z≦1、
−3<u−w≦1.5)
【0046】
上記式(3)で表わされる組成を有するサイアロン系蛍光体は緑色蛍光体(G)であり、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、青緑色から黄緑色にわたる領域の発光、すなわち波長490〜580nmの間にピークを有する発光を示す。
【0047】
そして、温度消光が小さく、特に高温領域で優れた発光効率を実現する。したがって、より温度消光特性に優れた高効率の発光装置を実現することが可能である。
【0048】
なお、M’はSr(ストロンチウム)であることが望ましいが、Ca(カルシウム)などの他元素をM’に対して約10mol%以下の割合で混ぜてもよい。
【0049】
なお、本実施の形態で用いる上記一般式(1)で表される赤色蛍光体の結晶構造は、斜方晶であり、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、図7、8に示すように、31.6−31.8°、30.9−31.1°、24.85−25.05°、35.25−35.45°、15.0−15.25°、56.4−56.65°、36.1−36.25°、33.0―33.20°、23.1―23.20°、29.3−29.6°、26.95−26.15°の回折角度(2θ)、11箇所のうち、少なくとも9箇所に同時に回折ピークを示す一成分を含有するものである。
【0050】
さらに、本実施の形態で用いる上記一般式(3)で表される緑色蛍光体の結晶構造は、斜方晶であり、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、図9、10に示すように、30.5−30.9°、25.6−30.0°、31.8−32.2°、37.2−37.6°、37.0−37.4°、29.3−29.7°、34.0−34.4°、21.7―22.1°、48.9―49.3°、45.7−46.1°、62.8−63.2°、15.2−15.6°、61.3−61.7°、40.5−40.9°、55.8°−56.2°の回折角度(2θ)、15箇所のうち、少なくとも6箇所に同時に回折ピークを示す一成分を含有するものである。
【0051】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、第1の実施の形態の発光素子が青色LEDであったのに対し、近紫外LEDであること、および、青色蛍光体層を有すること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0052】
図5は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。この発光装置20は、白色光を発する白色発光装置である。発光装置20は、発光素子14が近紫外光を発光する近紫外LEDである。また、緑色蛍光体層24と外表面透明層26との間に、さらに、青色蛍光体層28が形成されている。
【0053】
青色蛍光体層28は、青色蛍光体が例えば透明なシリコーン樹脂中に分散されて形成される。青色蛍光体層28は、近紫外光LEDから発生された近紫外光を吸収して青色光に変換する。
【0054】
上記以外の構成については第1の実施の形態と同様である。本実施の形態の発光装置においても第1の実施の形態同様、温度消光の小さい赤色蛍光体を用いつつ、赤色蛍光体層による緑色光の再吸収を抑制し、優れた発光効率が実現される。
【0055】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。
【0056】
例えば、発光装置に使用する励起光を発生する発光素子は、近紫外光または青色の発光をする半導体発光素子であれば足りる。例えば、窒化ガリウム系化合物半導体を用いたLEDを用いることが可能である。
【0057】
また、実施の形態では赤色蛍光体層の上に直接中間透明層が形成される場合を例に説明したが、例えば、赤色蛍光体層と中間透明層との間に黄色蛍光体層を形成する構成とすることも可能である。
【0058】
また、素子封止透明層や外表面透明層は形成されていることが望ましいが、必ずしも必須の構成要素ではなく、いずれか一方または両方を省略することも可能である。
【0059】
さらに、封止樹脂の基材となるバインダー樹脂は、発光素子(励起素子)のピーク波長近傍およびこれよりも長波長領域で実質的に透明であれば、その種類を問わず用いることができる。一般的なものとしては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはエポキシ基を有するポリジメチルシロキサン誘導体、またはオキセタン樹脂、またはアクリル樹脂、またはシクロオレフィン樹脂、またはユリア樹脂、またはフッ素樹脂、またはポリイミド樹脂などが考えられる。
【0060】
そして、実施の形態の説明においては、発光装置等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる発光装置に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0061】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての発光装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【実施例】
【0062】
(実施例1〜10)
図6は実施例の白色発光モジュールの配線図である。図1に示した第1の実施の形態の発光装置10を、図6のように4直列4並列となるように接続し、アノード電極60とカソード電極62を形成した。
【0063】
赤色蛍光体には、下記式(8)の組成式で表わされ、表1の組成を有するサイアロン系蛍光体をそれぞれの実施例で適用した。
(Sr1−x1Eux1SiAlO (8)
【0064】
緑色蛍光体には、下記式(9)の組成式で表わされ、表2の組成を有するサイアロン系蛍光体をそれぞれの実施例で適用した。
(Sr1−x2Eux23−ySi13−zAl3+z2+u21−w (9)
【0065】
赤色蛍光体層の外側の径rは105μm、中間透明層の外側の径dは410μmとした。このrとdは、下記のように、上記式(2)を充足する。
2.0r=210(μm)≦d=410(μm)≦r+1000=1105 (μm)
【0066】
この白色発光モジュールを80mAで駆動させ、発光効率を、積分球を用いての全光束測定により求めた。結果は表3に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
(比較例1〜5)
中間透明層を形成せず、赤色蛍光体層上に直接緑色蛍光体層を形成すること以外は実施例1〜5と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表3に示す。
【0070】
(比較例6〜10)
中間透明層の外側の径dを2150μmとすること以外は実施例1〜5と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表3に示す。このrとdは、下記のように、上記式(2)を充足しない。
2.0r=210(μm)≦d=2150(μm)≧r+1000=1105 (μm)
【0071】
【表3】

【0072】
表3から明らかなように、実施例1〜10で発光効率の向上が確認された。
【0073】
(実施例11〜15)
緑色蛍光体としてEu付活アルカリ土類正ケイ酸塩蛍光体を用い、赤色蛍光体層の外側の径rを120μm、中間透明層の外側の径dを505μmとすること以外は、実施例1〜5と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表4に示す。このrとdは、下記のように、上記式(2)を充足する。
2.0r=240(μm)≦d=505(μm)≦r+1000=1120(μm)
【0074】
(比較例11〜15)
中間透明層を形成せず、赤色蛍光体層上に直接緑色蛍光体層を形成すること以外は実施例6〜10と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表4に示す。
【0075】
(比較例16〜20)
中間透明層の外側の径dを2150μmとすること以外は実施例6〜10と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表4に示す。このrとdは、下記のように、上記式(2)を充足しない。
2.0r=240(μm)≦d=2150(μm)≧r+1000=1120(μm)
【0076】
【表4】

【0077】
表4から明らかなように、実施例11〜15で発光効率の向上が確認された。
【0078】
(実施例16〜20)
図5に示した発光素子として近紫外LEDを用いた第2の実施の形態の発光装置20を、図6のように4直列4並列となるように接続し、アノード電極60とカソード電極62を形成した。
【0079】
赤色蛍光体には、下記式(8)の組成式で表わされ、表1の組成を有するサイアロン系蛍光体をそれぞれの実施例で適用した。
(Sr1−x1Eux1SiAlO (8)
【0080】
緑色蛍光体には、下記式(9)の組成式で表わされ、表2の組成を有するサイアロン系蛍光体をそれぞれの実施例で適用した。
(Sr1−x2Eux23−ySi13−zAl3+z2+u21−w (9)
【0081】
青色蛍光体には、(Sr,Ca,Ba)10(POCl:Eu2+を用いた。
【0082】
赤色蛍光体層の外側の径rは95μm、中間透明層の外側の径dは320μmとした。このrとdは、下記のように、上記式(2)を充足する。
2.0r=190(μm)≦d=320(μm)≦r+1000=1095(μm)
【0083】
実施例1〜5と同様に、この白色発光モジュールを20mAで駆動させ、発光効率を、積分球を用いての全光束測定により求めた。結果は表5に示す。
【0084】
(比較例21〜25)
中間透明層を形成せず、赤色蛍光体層上に直接緑色蛍光体層を形成すること以外は実施例11〜15と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表5に示す。
【0085】
(比較例26〜30)
中間透明層の外側の径dを1850μmとすること以外は実施例11〜15と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表5に示す。このrとdは、下記のように、上記式(2)を充足しない。
2.0r=190(μm)≦d=1850(μm)≧r+1000=1095 (μm)
【0086】
【表5】

【0087】
表5から明らかなように、実施例16〜20で発光効率の向上が確認された。
【0088】
(実施例21〜25)
緑色蛍光体としてEu付アルカリ土類正ケイ酸塩蛍光体を用い、赤色蛍光体層の外側の径rは130μm、中間透明層の外側の径dは450μmとすること以外は、実施例11〜15と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表6に示す。このrとdは、下記のように、上記式(2)を充足する。
2.0r=260(μm)≦d=450(μm)≦r+1000=1130(μm)
【0089】
(比較例31〜35)
中間透明層を形成せず、赤色蛍光体層上に直接緑色蛍光体層を形成すること以外は実施例16〜20と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表6に示す。
【0090】
(比較例36〜40)
中間透明層の外側の径dを2150μmとすること以外は実施例16〜20と同様に白色発光モジュールを製造し、評価した。結果は表6に示す。このrとdは、下記のように、上記式(2)を充足しない。
2.0r=260(μm)≦d=2150(μm)≧r+1000=1130(μm)
【0091】
【表6】

【0092】
表6から明らかなように、実施例21〜25で発光効率の向上が確認された。
【符号の説明】
【0093】
10 発光装置
12 基板
14 発光素子
16 ワイヤ
18 素子封止透明層
20 赤色蛍光体層
22 中間透明層
24 緑色蛍光体層
26 外表面透明層
28 青色蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を実装する平面を有する基板と、
前記平面に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する発光素子と、
前記発光素子上に形成され、前記平面に対して垂直な断面における外周形状が径rの半円状であり、下記式(1)の赤色蛍光体を含有する赤色蛍光体層と、
(M1−x1Eux1SiAlO (1)
(上記式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、a、b、c、dは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
0.55<a<0.95、
2.0<b<3.9、
0<c<0.6、
4<d<5.7)
前記赤色蛍光体層上に形成され、前記平面に対して垂直な断面における外周形状が径dの半円状である透明樹脂の中間透明層と、
前記中間透明層上に形成され、前記平面に対して垂直な断面における外周形状が半円状であり、緑色蛍光体を含有する緑色蛍光体層と、を有し、
前記径rと前記径dとの関係が、下記式(2)を充足することを特徴とする発光装置。
2.0r(μm)≦d≦(r+1000)(μm) (2)
【請求項2】
前記緑色蛍光体が、下記式(3)で表わされる組成を有することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
(M’1−x2Eux23−ySi13−zAl3+z2+u21−w (3)
(上記式(3)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x2、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x2<1、
−0.1<y<0.3、
−3<z≦1、
−3<u−w≦1.5)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−77290(P2012−77290A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177808(P2011−177808)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】