説明

発光試薬用包装箱

【課題】複数の発光試薬容器を収容する包装箱において、発光試薬を用いた作業を能率的に行えるようにする。
【解決手段】本体14の天板には複数の収容孔が形成されており、それらには複数の発光試薬容器が収容される。それらの上面レベルは台座構造によって実施的に揃えられている。収容孔アレイ32は作業対象としてのサンプルチューブ74を保持する収容孔を有している。また本体14とカバーとからなる箱体を包み込むスリーブには収容孔列22が形成されている。スリーブ20を逆さにした状態で収容孔列22には作業後のサンプルチューブ60が差し込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光試薬用包装箱に関し、特に、食品等のサンプルに含まれる所定成分を発光試薬を用いて測定する場合に用いられる試薬セットを収容した包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
包装箱としては、以下の特許文献1,2に記載されているように、紙部材で構成された箱状のものが知られている。特許文献3には複数のバイアルを収容する包装箱が示されており、特許文献4には内容物の高さを揃える技術が開示されている。また、特許文献4には本体と蓋との締結状態を維持するスリーブが開示されている。これらの特許文献には試薬処理作業を円滑に遂行するための技術については開示されていない。
【0003】
ところで、食物等に含まれる所定成分(例えばポリフェノール)を測定するために吸光度測定が利用される。吸光度測定に当たっては、測定対象液体としてのサンプルが収容されたサンプルチューブ内に複数の発光試薬が滴下、注入される。これによりサンプルチューブ内で発光が生じ、その発光が吸光度測定装置において観測される。測定者が複数の発光試薬を別々に揃えるのは煩雑である。また、複数の発光試薬をサンプルチューブに順次分注する場合にサンプルチューブを複数の発光試薬の近傍に置いておければ分注作業を容易に行え、またそのための時間を短縮できる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−97370号公報
【特許文献2】特開平11−115930号公報
【特許文献3】特開平7−300156号公報
【特許文献4】実開平6−51113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光試薬測定を行うための前処理としてサンプルチューブへ複数の液体を注入する必要があるが、その場合に、サンプルチューブを手で持ちながら試薬滴下を行うのは煩雑である。なお、発光試薬を収容した複数の容器の配列や高さがバラバラであると、ピペットの移動の妨げとなり、作業効率を高められないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、発光試薬測定における前処理作業の負担を軽減し、それを能率的に行えるようにする。本発明の他の目的は、包装箱の機能性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天板を有する本体を含み、前記天板は、発光試薬を含む複数の液体を収容した複数の容器を起立保持する複数の容器収容孔と、発光測定対象であるサンプルが入れられたサンプルチューブを起立保持する補助収容孔と、を有し、前記サンプルの発光測定に先立って、前記サンプルチューブを前記補助収容孔に差し込み、その状態で前記複数の液体を前記サンプルチューブへ注入可能である、ことを特徴とする発光試薬用包装箱に関する。
【0008】
上記構成によれば、本体に、試薬等の液体用容器を収容する容器収容孔に加えて、サンプルチューブを収容する補助収容孔が形成されているので、その補助収容孔にサンプルチューブを差し込んだ状態で、それに対して試薬等の注入を行える。サンプルチューブを仮置きできるので作業性を向上できる。複数の補助収容孔を設けるようにしてもよい。補助収容孔は作業者から見て手前側に形成されるのが望ましいが、奥側等に形成されてもよい。
【0009】
望ましくは、前記本体は、前記複数の容器収容孔に起立保持された複数の容器の内で少なくとも1つの容器に対してかさ上げを行って前記複数の容器についての高さを調整する台座構造を有し、前記台座構造は前記複数の容器の上面高さを実質的に同一に揃えるものである。この構成によれば、ピペットがいずれかの容器に不用意に引っかかる等の問題を軽減でき、ピペット作業の作業性を向上できる。また、各容器の上面をカバーで押圧保持してその動きを抑制することが容易となる。
【0010】
望ましくは、前記本体及びそれを覆う前記蓋は紙部材によって折り曲げ形成されたものである。望ましくは、前記本体及びそれを覆う蓋からなる箱体を包み込むスリーブを有する。スリーブによって本体と蓋との結合状態を自然に保持できる。望ましくは、前記スリーブには前記サンプルチューブを起立保持する他の補助収容孔が少なくとも1つ形成される。補助収容孔に試薬滴下後つまり液体添加作業を終了した状態にあるサンプルチューブを仮置きすることが可能である。望ましくは、前記本体を覆う蓋には前記サンプルチューブを立て掛けるための構造が形成される。例えば、試薬添加前あるいは後のサンプルチューブを当該構造を利用して簡便に保持できる。立て掛け状態で円筒形状のサンプルチューブが自由に運動しないようにするために立て掛け構造に波形形状等の窪みを設け、そこにサンプルチューブの底部、胴部等が引っかかるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、発光試薬測定における前処理作業の負担を軽減し、それを能率的に行える。あるいは、包装箱の機能性を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1には、本発明に係る発光試薬キットの好適な実施形態が示されており、図1は特に包装箱の外観が示されている。本実施形態に係る発光試薬キット10は、食品などの対象液体としてのサンプルに含まれる所定成分を測定するためのものである。本実施形態においては、特に、サンプルについて抗酸化能の測定が行われる。例えば食品中に含まれるポリフェノール等の所定成分の量によって食品の抗酸化能が評価されるが、本実施形態に係る発光試薬キットはそのような性質あるいは成分を定量的に測定するためのものである。
【0014】
発光試薬キット10は、大別して包装箱12と後述する試薬キットとで構成される。包装箱12は、図示されるように、本体14、カバー16及びスリーブ20によって構成されている。それらの部材はいずれも本実施形態において厚紙によって折り曲げ形成されているが、もちろんそれには限られない。本体14とカバ−16とで箱体18が構成され、その箱体18はスリーブ20内に差し込まれている。スリーブ20は箱体18の周囲を包み込むバインダとして機能する。
【0015】
図2には、箱体18がスリーブ20から半分程度引き出された状態が示されている。スリーブ20は、上板20A、測板20B,C、底板20Dを有し、その底板20Dには収容孔列22が形成されている。収容孔列22は、箱体18のスライド方向に並んだ複数の収容孔24によって構成される。具体的には、後に図7を用いて説明するように、スリーブ20を逆さにした状態において、各収容孔24にサンプルチューブが差し込まれる。すなわち、各収容孔24は補助的な収容孔として機能する。
【0016】
図3には、本体14の斜視図が示されている。上述したように、本体14の上側が上記カバーによって覆われる。本体14は、外枠26及び内枠28を有している。図3においては外枠26と内枠28との間に若干の隙間が見られるが、実際においてそのような隙間は存在しなくてよい。内枠28の内部には水平に設けられた天板30が存在しており、その天板30には収容孔アレイ32が形成されている。収容孔アレイ32には、本実施形態において6つの収容孔34,36,38,40,42,44が含まれ、更に後述するように補助的な収容孔も含まれる。各収容孔には複数のタブ46が設けられており、それらのタブの弾性によりそれぞれの収容孔に収容される容器が安定的に保持される。
【0017】
図4には本体14の上面が示されている。上述したように、天板には複数の収容孔34,36,38,40,42,44が形成されており、更に作業者から見て手前に補助的な収容孔48が形成されている。後に説明するように、その収容孔48は試薬注入作業においてサンプルを収容したサンプルチューブを仮置きする差し込み孔として機能する。
【0018】
図5には図4に示したA−A断面が示されており、図6には図4に示したB−B断面が示されている。それらの断面に示されるように、内枠28内の空間は天板30によって上下二分されており、すなわち空間50,52が形成されている。そのうち、内部空間に相当する空間50内には台座構造が設けられており、具体的には台座56,58が設けられている。それらの台座56,58は底板54上に折り曲げ形成されているものである。このような台座構造は各収容孔に収容された容器の上面レベルを実質的に同一にするためのものであり、上下方向の長さが短い容器についてはより嵩上げ量が大きく設定されている。このような構成により、各容器の上面レベルを揃えることができるので、カバーによってそれらの容器を安定的に押さえ込んで本体内での各容器の運動を抑制することができ、また各容器の高さが揃えられていればピペットを本体上側において運動させたいような場合でもピペットの先端が不用意にいずれかの容器に衝突してしまうようなことを回避あるいは軽減することが可能である。
【0019】
図7には、本実施形態に係る発光試薬キットを用いた作業状態が斜視図として示されている。本体14には上述したように収容孔アレイ32が形成されており、収容孔アレイ32を構成する各収容孔には発光試薬容器62,64,66,68,70,72が起立保持されている。それらは試薬セット61を構成するものである。また上述した補助的な収容孔には作業対象となっているサンプルチューブ74が差し込まれており、そのサンプルチューブ74が起立保持されている。ちなみに、試薬セット61は、複数の精製水、過酸化水素水、コバルト溶液、ルミノール液等によって構成されるものであり、それらを所定の順番でサンプルチューブ74内に注入することにより吸光度測定のための事前の添加作業が行われる。
【0020】
本体14に隣接して裏返しの状態でスリーブ20が置かれており、すなわちテーブル上には本体14とスリーブ20とが並んで設けられている。スリーブ20の底板20Dには上述したように収容孔列22が形成されており、それは複数の収容孔24によって構成される。各収容孔24は補助的な収容孔であり、それらには例えば作業終了後のサンプルチューブ60が差し込まれ、そこに仮置きされる。すなわち、本実施形態の包装箱には作業中のサンプルチューブを仮置きする場所と作業後のサンプルチューブを仮置きする場所とが設定されており、それらを利用することによって試薬添加作業の効率が高められている。
【0021】
図8には、他の実施形態に係る発光試薬キット100が示されている。発光試薬キット100は、包装箱と試薬セット108とで構成される。
【0022】
試薬セット108は上述した複数の試薬と同様の試薬を収容した複数の試薬容器によって構成される。包装箱は、本体102とカバー104とで構成され、それらは連接辺106を介して連なっている。本体102は天板102A、底板102F、複数の側板102B,102C,102D,102E等を有する。天板102Aには収容孔アレイ103が形成されている。また、天板102Aには上述した補助的な収容孔110が形成されている。側板102B,102Dの上縁は波形102Gを有している。なお、図8においては収容孔110に収容されるサンプルチューブ112が波線で示されている。
【0023】
カバー104は、側板104A,104B,104C、104Dと底板104Eとを有しており、更に図示されるようにカバー104内を跨いで折り曲げ形成された折曲板114を有している。2つの側板104A,104Cの上縁はそれぞれ波形113をもっており、上述した波形102Dと波形113とが互い違いに噛み合う関係にある。折曲板114の側辺も波形114Aを有しており、このような波形によって複数のサンプルチューブを立てかけて保持することが可能となる。すなわち、サンプルチューブ116の底部が波形114Aのいずれかの凹みによって保持され、サンプルチューブ116の胴部が波形113におけるいずれかの凹みに保持される。これによってサンプルチューブ116が横方向に転がることが効果的に防止されている。サンプルチューブ116は試薬添加前のサンプルチューブであってもよいし、試薬添加後のサンプルチューブであってもよい。
【0024】
いずれにしても、図8に示す実施形態においても、作業用のサンプルチューブを仮置きする場所が複数設定されているため、試薬添加作業を能率的に行うことができるという利点がある。また図8に示す実施形態においても、本体102内には台座構造が設けられており、それによって各容器の上下方向の長さに合わせて嵩上げ調整がなされている。すなわち各容器の上面レベルは実質的に同一である。また図8に示される包装箱全体が厚紙によって構成されているため、低廉に包装箱を構成できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る発光試薬キットの好適な実施形態を示す斜視図である。
【図2】箱体をスリーブから引き出した状態を示す図である。
【図3】本体を示す斜視図である。
【図4】本体の上面を示す図である。
【図5】図4に示されるA−A断面を示す図である。
【図6】図4に示されるB−B断面を示す図である。
【図7】作業状態を示す斜視図である。
【図8】他の実施形態に係る発光試薬キットを示す図である。
【符号の説明】
【0026】
10 発光試薬キット、12 包装箱、14 本体、16 カバー、20 スリーブ、22 収容孔列、30 天板、32 収容孔アレイ、48 収容孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板を有する本体を含み、
前記天板は、発光試薬を含む複数の液体を収容した複数の容器を起立保持する複数の容器収容孔と、発光測定対象であるサンプルが入れられたサンプルチューブを起立保持する補助収容孔と、を有し、
前記サンプルの発光測定に先立って、前記サンプルチューブを前記補助収容孔に差し込み、その状態で前記複数の液体を前記サンプルチューブへ注入可能である、ことを特徴とする発光試薬用包装箱。
【請求項2】
請求項1記載の包装箱において、
前記本体は、前記複数の容器収容孔に起立保持された複数の容器の内で少なくとも1つの容器に対してかさ上げを行って前記複数の容器についての高さを調整する台座構造を有し、
前記台座構造は前記複数の容器の上面高さを実質的に同一に揃える、ことを特徴とする発光試薬用包装箱。
【請求項3】
請求項1記載の包装箱において、
前記本体及びそれを覆う蓋は紙部材によって折り曲げ形成されたものである、ことを特徴とする発光試薬用包装箱。
【請求項4】
請求項1記載の包装箱において、
前記本体及びそれを覆う蓋とからなる箱体を包み込むスリーブを有する、ことを特徴とする発光試薬用包装箱。
【請求項5】
請求項4記載の包装箱において、
前記スリーブには前記サンプルチューブを起立保持する他の補助収容孔が少なくとも1つ形成された、ことを特徴とする発光試薬用包装箱。
【請求項6】
請求項1記載の包装箱において、
前記本体を覆う蓋には前記サンプルチューブを立て掛けるための構造が形成された、ことを特徴とする発光試薬用包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−213922(P2008−213922A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57786(P2007−57786)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】