発泡カバーシートを備える熱可塑性フィルム
圧刻加工された３次元構造化表面（２）を外側のカバー層に備える熱可塑性フィルムが開示されている。カバー層は、発泡層として設計され、カバー層の層厚にわたって変化しかつ表面に向かって増加する発泡体密度を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、特に自動車の内装カバー用の、圧刻加工された３次元構造化表面を外部の外層に有する熱可塑性シートであって、シートが工程の成形ステップで構成要素の形状に対応する支持部に貼り付けられ、これによって、シートに構成要素の形状が付与され、シートが、シートの下方側及び支持部に対向する下側で発泡体シートの形態をとる熱可塑性シートに関する。
【背景技術】
【０００２】
熱可塑性成形物、又は自動車の内装カバー用の成形シート又は成形スキンが周知であり、車両の内装カバー用のそれらの使用例は、ダッシュボード、又はドアインサート、又はサンバイザ等のカバーである。通常、この種類の成形物は、アンダフォームされた多層のプラスチックシートから構成され、このプラスチックシートは、その上側に、３次元構造化された圧刻加工表面、すなわち、非常に広範囲の多様な形状及び仕様のパターン効果又はしぼ効果として知られるものを有する。
【０００３】
成形物又は成形シートは、比較的硬質の高密度の上層、すなわち、圧刻加工又は刻成された表面を有する外層又は装飾層と、積層／接着によって下側に貼り付けられ、カバーに魅力的な感触、すなわち魅力的に「ソフトな」手触りの性質を与える下層としての低密度発泡層とから構成される。この場合、硬質の上層はまた、「コンパクトシート」としても知られている。
【０００４】
成形物／成形シートの上層及び下層の両方は、異なる又は異なって調合された材料、例えば、ＰＶＣ（ポリ塩化ビニル）、ＰＰ（ポリプロピレン）、ＴＰＯ（ポリオレフィン）等のようなプラスチック、あるいはこれらの又は同様の材料の組み合わせからなる複数の副層から構成することができる。
【０００５】
従来技術は、この種類の成形スキンの製造に関し様々な方法を開示しており、その例は、シートの「連続的な」ウェブの製造用のロール工程であり、同様に、モールドで生産される個々の成形スキンの製造用工程である。
【０００６】
しかし、同様に、圧刻加工工程を介して、すなわち圧刻加工ロールを用いて表面構造が熱可塑性シートに付与されるロール工程に対する要求がある。
【０００７】
ダッシュボード支持部に、又はサイドドアインサート用の一例として繊維強化された板紙から製造された予成形の支持部分に、この種類の成形物又はこの種類の成形シートを引き続き貼り付けるための公知の工程には、熱成形のみならず、シートがモールドに対し又は言及した支持部に対し押圧されて、構成要素のそれらの形状を獲得する圧力工程のような多数の他の成形工程もある。
【０００８】
特許文献１（欧州特許第１５３８１７５Ａ１号明細書）は、この関連で、例えば、複数の副層を有しかつオーバシートを有する成形物の形態をとるダッシュボード用の装飾シートを開示している。オーバシートは、少なくとも部分的に架橋されたポリマ材料、例えばポリオレフィンをベースとするポリマ材料を含み、あるゲル含有量及び規定の密度を有する発泡アンダシートを有する。装飾シートは、引き続く熱成形工程の処理中に必要なしぼ安定性を付与するために、電子ビームで処理され、これによって、シート又は成形物がさらに架橋され、このように必要な安定性が付与される。
【０００９】
したがって、この種類のシート、すなわちこの種類の成形物は、上述のように、複数の層の複合材から構成され、その結果、材料消費は比較的大きくなる。表面が比較的著しく架橋されかつ発泡アンダシートもむしろ安定しているこの種類の成形物に関する他の要因は、当然、例えばダッシュボード全体を覆う、したがって、起動機構／エアバッグも覆うシートが引き裂き可能な継目に沿って弱化されない限り、現在の大量生産の車両に存在するエアバッグ起動装置にそれらを使用できないことである。この弱化のための方法の例は、レーザビームによりシートの厚さの部分が燃やされるか又は切断するレーザビームによる処理である。この場合の不都合は、あるプラスチックの場合、レーザビームによって生成された材料の裏側の弱化部分も、材料の弛緩のため、時間の経過につれて外側面で見えるようになることである。自動車の内装部分の品質向上に向かう傾向が顕著であるので、この種類の凹凸の容認性は低下の一途を辿っている。
【００１０】
特許文献２（独国特許１９６ ５３ ６０８ Ｂ４号）は、快い繊維の感触を有しかつプラスチックから構成された衣服又は家庭用製品の品目に適切なプラスチックシートを開示している。プラスチックシートの表面は微細セルの発泡体構造を有し、この構造は、適切ならば、支持シート又は支持構造の片側又は両側に発泡体シートの形態で適用可能である。この場合の発泡層又は発泡シートは、様々な発泡剤及び助剤を添加して、様々な原材料又は原材料の混合物から製造される。しかし、この場合、知覚される「快い繊維」の感触を再び破壊することなく、装飾効果又は圧刻を含む任意のさらなる表面加工を達成することは困難であり、したがって、この種類のシートは、例えばダッシュボードのカバーにはそれほど適切でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１１】
【特許文献１】欧州特許第１５３８１７５Ａ１号明細書
【特許文献２】独国特許１９６ ５３ ６０８ Ｂ４号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１２】
したがって、本発明の目的は、品質を損なうことなく低い材料消費で製造でき、高品質の表面を有し、また広範囲の追加の作業なしにエアバッグ起動装置の領域にも使用できる熱可塑性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
この目的は、主請求項の特徴によって達成される。他の有利な実施形態が従属請求項に開示されている。この種類のシートの製造に特に適切な方法も開示される。
【００１４】
この種類のシートの上方の外層は発泡層の形態をとり、またシートの層厚にわたって変化しかつ表面に向かって上昇する、すなわち増大する発泡体密度を有する。この種類の制御された発泡の効果は、品質の変化及びさらなる処理に関する適合性の変化を伴うことなく、従来技術で利用可能でありかつこの種類の成形物の外側シート又は外層として使用される「コンパクトシート」と比較した場合に、材料コストの割合が著しく低減されることである。
【００１５】
有利な一実施形態において、シートは発泡層の形態の単一層構造を有し、発泡層は、シートの層厚にわたって変化しかつシートの下側から外層の表面に向かって上昇する発泡体密度を有する。一例として、この種類の設計を使用する場合、シートの複数の異なる層を接合するために必要とされるであろう製造ステップは不要である。その結果、製造コストがさらに低減されるであろう。
【００１６】
他の有利な実施形態では、シートは、外側の外層を含むオーバシートと、積層によって貼り付けられた発泡アンダシートとから構成され、この場合、オーバシートは発泡層の形態をとり、オーバシートの層厚にわたって変化しかつ外層の表面に向かって上昇する発泡体密度を有する。この種類の設計を使用した場合、精密な調整及びそれぞれの層の特性の適切な適合を達成することができる。
【００１７】
当然、シートの使用部分に応じて、別の機能層／支持層を下に敷くか又は一体化することも考えられる。
【００１８】
他の有利な実施形態では、シートは、熱可塑性オレフィン（ＴＰＯ）又はポリオレフィン混合物、すなわち、架橋された熱可塑性エラストマから構成される。この種類のプラスチックシートの強さにより、エアバッグ起動装置の領域に当該シートを使用することが特に適切になる。この場合、レーザ切断によって弱化する必要はないが、この理由は、本発明の実施形態のＴＰＯシートは、従来の用途で高品質を提供する程度に十分な強さを有するが、エアバッグ発生器が起動されるときに困難なしに発泡によって引き裂かれ、エアバッグの膨張を可能にするからである。レーザ切断の必要性がない場合、材料内に目に見える継目の弛緩が生じることができない。
【００１９】
これらの目的に有利な他の実施形態は、シートが、ポリエチレン、有利には２．０ｇ／１０分（２．１６ｋｇを使用して、１９０℃）を超えるメルトフローインデックス（ＭＦＩ）を有するポリエチレンを含む実施形態である。この場合の、他の結果は、発泡シート材料の特に優れたセル壁の強さである。
【００２０】
他の有利な実施形態では、シートはポリプロピレンから構成される。この結果、優れた圧刻加工性を有するシートの特に優れた外層面が得られる。
【００２１】
他の有利な実施形態では、圧刻工程の前の外層の表面密度は、１００〜６００ｇ／ｌ、有利には２５０〜４００ｇ／ｌである。この結果、材料節減と必要な強さとのバランスのとれた関係が達成される。対照的に、従来の種類のコンパクトシートは最高９５０ｇ／ｌの密度を有し、したがって、より大量の材料を使用するため著しくより高密度になる。
【００２２】
他の有利な実施形態では、外層の表面のゲル含有量は２０〜８０％、有利には２０〜６０％である。これにより、厳しい変形にさらされる構成要素、例えば車両のカルダントンネル用のカバーの場合でも、材料の引張ひずみ値の充分な均等化が達成される。このために特に適切なゲル含有量は、３０〜５０％である。
【００２３】
他の有利な実施形態では、圧刻ステップの前に、外層の表面は密閉気孔型である。このことは、圧刻加工性、同様に塗装性を改善するための他の措置である。
【００２４】
この種類の熱可塑性シートを製造するための特に適切な１つの方法では、シートの発泡、又はシートの層の発泡、特にオーバシートの発泡は、シート又はシートの層の押出中に発泡剤及び架橋剤の添加を介して行われる。これは、引き続くさらなる別個の発泡工程の必要なしに、シートの発泡性質／発泡体の性質の十分に精密な調整を達成する簡単な方法である。
【００２５】
本方法の有利な一実施形態では、付加的に又は独占的に、外層の表面の発泡体密度の増加が圧刻ステップ中に行われる。これにより、密度の追加の微細な機械的調整を達成することができ、厚さの精密な調整も達成することができる。
【００２６】
本方法の他の有利な実施形態では、オーバシートとアンダシートとから構成された熱可塑性シートの製造において、オーバシートの発泡は、オーバシートの押出中に発泡剤及び架橋剤の添加を介して行われ、オーバシートをアンダシートに貼り付けるための積層は圧刻ステップ中に行われる。これにより、工程の１つのステップで、密度及び厚さのより微細な機械的調整のみならず複合材の同時の構成も達成される。
【００２７】
本方法の他の有利な実施形態では、積層によるオーバシートの貼付中に、アンダシートは初期発泡された形態ですでに存在している。これにより、低コストの大量生産製品の形態で、正確に調整された化学的及び機械的特性を有する予成形のアンダシートを使用することができる。
【００２８】
均一に軟質であるが、にもかかわらず構造上安定したこの種類のシートは、熱成形工程に非常に適切なしぼ効果も有する。したがって、この種類のシートは、３次元の構成要素に、例えば熱成形工程でモールド内に、又は張力を加えることによって中実の支持部又は基部に容易に貼り付けることができる。効果は、同時に、品質の変化及びさらなる処理に関する適合性の変化を伴うことなく、従来技術で利用可能でありかつこの種類の成形物の外側シート又は外層として使用される「コンパクトシート」と比較した場合、材料コストの割合が著しく低減されることである。
【００２９】
当然、この種類のシートの上方の外層は、優れた塗装性及び熱成形工程の前に圧刻加工するための優れた能力を有する。
【００３０】
本発明の実施例を使用して、本発明についてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】オーバシート及びアンダシートから構成された本発明の図面である。
【図２】本発明の単一層シートの図面である。
【発明を実施するための形態】
【００３２】
図１は、自動車ダッシュボードのカバー用のオーバシート及びアンダシートから構成された多層熱可塑性シート１の構造を示している。熱可塑性シート１は、オーバシート３のその外側の外層に、圧刻加工された３次元構造化表面２を有し、すなわち、ロール圧刻加工を介した圧刻加工によって外部に適用されたしぼ効果を有する。シート１は、その下方側で及び支持部に向かい合う下側で発泡体シート、すなわち、ここでは発泡させたアンダシート４の形態をとる。この場合、アンダシート４は、予成形の発泡体シートの形態で積層によってオーバシートに貼り付けられており、その厚さにわたって１１０ｇ／ｌの均一な発泡体密度を有する。
【００３３】
オーバシート３はまた、発泡層の形態をとり、またその層厚５にわたって変化する発泡体密度を有し、その密度は、関連の密度グラフ６の密度プロファイルに示されているように、外層の表面に向かって上昇する。
【００３４】
この場合のオーバシート３は、大量生産に使用されたのと同様のＰＰ発泡体調合物を使用して生産され、その密度は、最初にまた圧刻工程の前に１２０ｇ／ｌであった。ゲル成分は５０％に調整され、シートの厚さは、アンダシート４の圧刻工程及び積層の前に２．０ｍｍであった。
【００３５】
アンダシート４の圧刻工程及び同時の積層後に、オーバシートの密度構造は、関連の密度グラフ６に示した方法で、すなわち、オーバシート３の外側の外層で２５０ｇ／ｌの増加した発泡体密度７に変更され、これに対し、ほぼオーバシート３の結合領域からアンダシート４に、オーバシートの中央領域まで、１２０ｇ／ｌの初期の発泡体密度８がほぼ維持された。圧刻工程及び積層後、オーバシートの層厚５は約１．０ｍｍである。シートは優れた熱成形性を有し、しぼ効果の安定性は十分に高かった。
【００３６】
図２は、純粋に質的に、単一の発泡層１０の形態の単一層構造を有する熱可塑性シート９を示している。発泡層１０は、その層厚にわたって変化する発泡体密度を有し、この密度は、関連の密度グラフ１１の密度プロファイルから理解できるように、発泡層の下側から外層の表面に向かって上昇する。ここで存在する密度変化は、シートの押出中の発泡剤及び架橋剤の添加によって引き起こされた。
【符号の説明】
【００３７】
１ 熱可塑性シート
２ ３次元構造化表面
３ オーバシート
４ アンダシート
５ 層厚
６ 密度グラフ
７ 増加した発泡体密度
８ 初期の発泡体密度
９ 熱可塑性シート
１０ 発泡層
１１ 密度グラフ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、特に自動車の内装カバー用の、圧刻加工された３次元構造化表面を外部の外層に有する熱可塑性シートであって、シートが工程の成形ステップで構成要素の形状に対応する支持部に貼り付けられ、これによって、シートに構成要素の形状が付与され、シートが、シートの下方側及び支持部に対向する下側で発泡体シートの形態をとる熱可塑性シートに関する。
【背景技術】
【０００２】
熱可塑性成形物、又は自動車の内装カバー用の成形シート又は成形スキンが周知であり、車両の内装カバー用のそれらの使用例は、ダッシュボード、又はドアインサート、又はサンバイザ等のカバーである。通常、この種類の成形物は、アンダフォームされた多層のプラスチックシートから構成され、このプラスチックシートは、その上側に、３次元構造化された圧刻加工表面、すなわち、非常に広範囲の多様な形状及び仕様のパターン効果又はしぼ効果として知られるものを有する。
【０００３】
成形物又は成形シートは、比較的硬質の高密度の上層、すなわち、圧刻加工又は刻成された表面を有する外層又は装飾層と、積層／接着によって下側に貼り付けられ、カバーに魅力的な感触、すなわち魅力的に「ソフトな」手触りの性質を与える下層としての低密度発泡層とから構成される。この場合、硬質の上層はまた、「コンパクトシート」としても知られている。
【０００４】
成形物／成形シートの上層及び下層の両方は、異なる又は異なって調合された材料、例えば、ＰＶＣ（ポリ塩化ビニル）、ＰＰ（ポリプロピレン）、ＴＰＯ（ポリオレフィン）等のようなプラスチック、あるいはこれらの又は同様の材料の組み合わせからなる複数の副層から構成することができる。
【０００５】
従来技術は、この種類の成形スキンの製造に関し様々な方法を開示しており、その例は、シートの「連続的な」ウェブの製造用のロール工程であり、同様に、モールドで生産される個々の成形スキンの製造用工程である。
【０００６】
しかし、同様に、圧刻加工工程を介して、すなわち圧刻加工ロールを用いて表面構造が熱可塑性シートに付与されるロール工程に対する要求がある。
【０００７】
ダッシュボード支持部に、又はサイドドアインサート用の一例として繊維強化された板紙から製造された予成形の支持部分に、この種類の成形物又はこの種類の成形シートを引き続き貼り付けるための公知の工程には、熱成形のみならず、シートがモールドに対し又は言及した支持部に対し押圧されて、構成要素のそれらの形状を獲得する圧力工程のような多数の他の成形工程もある。
【０００８】
特許文献１（欧州特許第１５３８１７５Ａ１号明細書）は、この関連で、例えば、複数の副層を有しかつオーバシートを有する成形物の形態をとるダッシュボード用の装飾シートを開示している。オーバシートは、少なくとも部分的に架橋されたポリマ材料、例えばポリオレフィンをベースとするポリマ材料を含み、あるゲル含有量及び規定の密度を有する発泡アンダシートを有する。装飾シートは、引き続く熱成形工程の処理中に必要なしぼ安定性を付与するために、電子ビームで処理され、これによって、シート又は成形物がさらに架橋され、このように必要な安定性が付与される。
【０００９】
したがって、この種類のシート、すなわちこの種類の成形物は、上述のように、複数の層の複合材から構成され、その結果、材料消費は比較的大きくなる。表面が比較的著しく架橋されかつ発泡アンダシートもむしろ安定しているこの種類の成形物に関する他の要因は、当然、例えばダッシュボード全体を覆う、したがって、起動機構／エアバッグも覆うシートが引き裂き可能な継目に沿って弱化されない限り、現在の大量生産の車両に存在するエアバッグ起動装置にそれらを使用できないことである。この弱化のための方法の例は、レーザビームによりシートの厚さの部分が燃やされるか又は切断するレーザビームによる処理である。この場合の不都合は、あるプラスチックの場合、レーザビームによって生成された材料の裏側の弱化部分も、材料の弛緩のため、時間の経過につれて外側面で見えるようになることである。自動車の内装部分の品質向上に向かう傾向が顕著であるので、この種類の凹凸の容認性は低下の一途を辿っている。
【００１０】
特許文献２（独国特許１９６ ５３ ６０８ Ｂ４号）は、快い繊維の感触を有しかつプラスチックから構成された衣服又は家庭用製品の品目に適切なプラスチックシートを開示している。プラスチックシートの表面は微細セルの発泡体構造を有し、この構造は、適切ならば、支持シート又は支持構造の片側又は両側に発泡体シートの形態で適用可能である。この場合の発泡層又は発泡シートは、様々な発泡剤及び助剤を添加して、様々な原材料又は原材料の混合物から製造される。しかし、この場合、知覚される「快い繊維」の感触を再び破壊することなく、装飾効果又は圧刻を含む任意のさらなる表面加工を達成することは困難であり、したがって、この種類のシートは、例えばダッシュボードのカバーにはそれほど適切でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【００１１】
【特許文献１】欧州特許第１５３８１７５Ａ１号明細書
【特許文献２】独国特許１９６ ５３ ６０８ Ｂ４号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【００１２】
したがって、本発明の目的は、品質を損なうことなく低い材料消費で製造でき、高品質の表面を有し、また広範囲の追加の作業なしにエアバッグ起動装置の領域にも使用できる熱可塑性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
この目的は、主請求項の特徴によって達成される。他の有利な実施形態が従属請求項に開示されている。この種類のシートの製造に特に適切な方法も開示される。
【００１４】
この種類のシートの上方の外層は発泡層の形態をとり、またシートの層厚にわたって変化しかつ表面に向かって上昇する、すなわち増大する発泡体密度を有する。この種類の制御された発泡の効果は、品質の変化及びさらなる処理に関する適合性の変化を伴うことなく、従来技術で利用可能でありかつこの種類の成形物の外側シート又は外層として使用される「コンパクトシート」と比較した場合に、材料コストの割合が著しく低減されることである。
【００１５】
有利な一実施形態において、シートは発泡層の形態の単一層構造を有し、発泡層は、シートの層厚にわたって変化しかつシートの下側から外層の表面に向かって上昇する発泡体密度を有する。一例として、この種類の設計を使用する場合、シートの複数の異なる層を接合するために必要とされるであろう製造ステップは不要である。その結果、製造コストがさらに低減されるであろう。
【００１６】
他の有利な実施形態では、シートは、外側の外層を含むオーバシートと、積層によって貼り付けられた発泡アンダシートとから構成され、この場合、オーバシートは発泡層の形態をとり、オーバシートの層厚にわたって変化しかつ外層の表面に向かって上昇する発泡体密度を有する。この種類の設計を使用した場合、精密な調整及びそれぞれの層の特性の適切な適合を達成することができる。
【００１７】
当然、シートの使用部分に応じて、別の機能層／支持層を下に敷くか又は一体化することも考えられる。
【００１８】
他の有利な実施形態では、シートは、熱可塑性オレフィン（ＴＰＯ）又はポリオレフィン混合物、すなわち、架橋された熱可塑性エラストマから構成される。この種類のプラスチックシートの強さにより、エアバッグ起動装置の領域に当該シートを使用することが特に適切になる。この場合、レーザ切断によって弱化する必要はないが、この理由は、本発明の実施形態のＴＰＯシートは、従来の用途で高品質を提供する程度に十分な強さを有するが、エアバッグ発生器が起動されるときに困難なしに発泡によって引き裂かれ、エアバッグの膨張を可能にするからである。レーザ切断の必要性がない場合、材料内に目に見える継目の弛緩が生じることができない。
【００１９】
これらの目的に有利な他の実施形態は、シートが、ポリエチレン、有利には２．０ｇ／１０分（２．１６ｋｇを使用して、１９０℃）を超えるメルトフローインデックス（ＭＦＩ）を有するポリエチレンを含む実施形態である。この場合の、他の結果は、発泡シート材料の特に優れたセル壁の強さである。
【００２０】
他の有利な実施形態では、シートはポリプロピレンから構成される。この結果、優れた圧刻加工性を有するシートの特に優れた外層面が得られる。
【００２１】
他の有利な実施形態では、圧刻工程の前の外層の表面密度は、１００〜６００ｇ／ｌ、有利には２５０〜４００ｇ／ｌである。この結果、材料節減と必要な強さとのバランスのとれた関係が達成される。対照的に、従来の種類のコンパクトシートは最高９５０ｇ／ｌの密度を有し、したがって、より大量の材料を使用するため著しくより高密度になる。
【００２２】
他の有利な実施形態では、外層の表面のゲル含有量は２０〜８０％、有利には２０〜６０％である。これにより、厳しい変形にさらされる構成要素、例えば車両のカルダントンネル用のカバーの場合でも、材料の引張ひずみ値の充分な均等化が達成される。このために特に適切なゲル含有量は、３０〜５０％である。
【００２３】
他の有利な実施形態では、圧刻ステップの前に、外層の表面は密閉気孔型である。このことは、圧刻加工性、同様に塗装性を改善するための他の措置である。
【００２４】
この種類の熱可塑性シートを製造するための特に適切な１つの方法では、シートの発泡、又はシートの層の発泡、特にオーバシートの発泡は、シート又はシートの層の押出中に発泡剤及び架橋剤の添加を介して行われる。これは、引き続くさらなる別個の発泡工程の必要なしに、シートの発泡性質／発泡体の性質の十分に精密な調整を達成する簡単な方法である。
【００２５】
本方法の有利な一実施形態では、付加的に又は独占的に、外層の表面の発泡体密度の増加が圧刻ステップ中に行われる。これにより、密度の追加の微細な機械的調整を達成することができ、厚さの精密な調整も達成することができる。
【００２６】
本方法の他の有利な実施形態では、オーバシートとアンダシートとから構成された熱可塑性シートの製造において、オーバシートの発泡は、オーバシートの押出中に発泡剤及び架橋剤の添加を介して行われ、オーバシートをアンダシートに貼り付けるための積層は圧刻ステップ中に行われる。これにより、工程の１つのステップで、密度及び厚さのより微細な機械的調整のみならず複合材の同時の構成も達成される。
【００２７】
本方法の他の有利な実施形態では、積層によるオーバシートの貼付中に、アンダシートは初期発泡された形態ですでに存在している。これにより、低コストの大量生産製品の形態で、正確に調整された化学的及び機械的特性を有する予成形のアンダシートを使用することができる。
【００２８】
均一に軟質であるが、にもかかわらず構造上安定したこの種類のシートは、熱成形工程に非常に適切なしぼ効果も有する。したがって、この種類のシートは、３次元の構成要素に、例えば熱成形工程でモールド内に、又は張力を加えることによって中実の支持部又は基部に容易に貼り付けることができる。効果は、同時に、品質の変化及びさらなる処理に関する適合性の変化を伴うことなく、従来技術で利用可能でありかつこの種類の成形物の外側シート又は外層として使用される「コンパクトシート」と比較した場合、材料コストの割合が著しく低減されることである。
【００２９】
当然、この種類のシートの上方の外層は、優れた塗装性及び熱成形工程の前に圧刻加工するための優れた能力を有する。
【００３０】
本発明の実施例を使用して、本発明についてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】オーバシート及びアンダシートから構成された本発明の図面である。
【図２】本発明の単一層シートの図面である。
【発明を実施するための形態】
【００３２】
図１は、自動車ダッシュボードのカバー用のオーバシート及びアンダシートから構成された多層熱可塑性シート１の構造を示している。熱可塑性シート１は、オーバシート３のその外側の外層に、圧刻加工された３次元構造化表面２を有し、すなわち、ロール圧刻加工を介した圧刻加工によって外部に適用されたしぼ効果を有する。シート１は、その下方側で及び支持部に向かい合う下側で発泡体シート、すなわち、ここでは発泡させたアンダシート４の形態をとる。この場合、アンダシート４は、予成形の発泡体シートの形態で積層によってオーバシートに貼り付けられており、その厚さにわたって１１０ｇ／ｌの均一な発泡体密度を有する。
【００３３】
オーバシート３はまた、発泡層の形態をとり、またその層厚５にわたって変化する発泡体密度を有し、その密度は、関連の密度グラフ６の密度プロファイルに示されているように、外層の表面に向かって上昇する。
【００３４】
この場合のオーバシート３は、大量生産に使用されたのと同様のＰＰ発泡体調合物を使用して生産され、その密度は、最初にまた圧刻工程の前に１２０ｇ／ｌであった。ゲル成分は５０％に調整され、シートの厚さは、アンダシート４の圧刻工程及び積層の前に２．０ｍｍであった。
【００３５】
アンダシート４の圧刻工程及び同時の積層後に、オーバシートの密度構造は、関連の密度グラフ６に示した方法で、すなわち、オーバシート３の外側の外層で２５０ｇ／ｌの増加した発泡体密度７に変更され、これに対し、ほぼオーバシート３の結合領域からアンダシート４に、オーバシートの中央領域まで、１２０ｇ／ｌの初期の発泡体密度８がほぼ維持された。圧刻工程及び積層後、オーバシートの層厚５は約１．０ｍｍである。シートは優れた熱成形性を有し、しぼ効果の安定性は十分に高かった。
【００３６】
図２は、純粋に質的に、単一の発泡層１０の形態の単一層構造を有する熱可塑性シート９を示している。発泡層１０は、その層厚にわたって変化する発泡体密度を有し、この密度は、関連の密度グラフ１１の密度プロファイルから理解できるように、発泡層の下側から外層の表面に向かって上昇する。ここで存在する密度変化は、シートの押出中の発泡剤及び架橋剤の添加によって引き起こされた。
【符号の説明】
【００３７】
１ 熱可塑性シート
２ ３次元構造化表面
３ オーバシート
４ アンダシート
５ 層厚
６ 密度グラフ
７ 増加した発泡体密度
８ 初期の発泡体密度
９ 熱可塑性シート
１０ 発泡層
１１ 密度グラフ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
特に自動車の内装カバー用の、圧刻加工された３次元構造化表面（２）を外側の外層に有する熱可塑性シート（１、９）であって、前記シートが工程の成形ステップで構成要素の形状に対応する支持部に貼り付けられ、これによって、前記シートに前記構成要素の形状が付与され、前記シートが、前記シートの下方側及び前記支持部に対向する下側で発泡体シートの形態をとる前記熱可塑性シートにおいて、前記外層が発泡層（３、１０）の形態をとり、前記外層の層厚にわたって変化しかつ前記表面に向かって上昇する発泡体密度（６、１１）を有することを特徴とする熱可塑性シート。
【請求項２】
前記シートが発泡層（１０）の形態の単一層構造を有し、前記発泡層が、前記シートの層厚にわたって変化しかつ前記シートの下側から前記外層の表面に向かって上昇する発泡体密度（１１）を有することを特徴とする、請求項１に記載の熱可塑性シート。
【請求項３】
前記シートが、前記外側の外層を含むオーバシート（３）と、積層によって貼り付けられた発泡アンダシート（４）とから構成され、前記オーバシート（３）が発泡層の形態をとり、前記オーバシートの層厚（５）にわたって変化しかつ前記外層の表面に向かって上昇する発泡体密度（６）を有することを特徴とする、請求項１に記載の熱可塑性シート。
【請求項４】
前記シートが、熱可塑性オレフィン（ＴＰＯ）又はポリオレフィン混合物から構成されることを特徴とする、請求項１から３までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項５】
前記シートがポリプロピレンを含むことを特徴とする、請求項１から４までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項６】
前記シートがポリエチレン、有利には２．０ｇ／１０分を超えるメルトフローインデックスを有するポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項１から４までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項７】
前記圧刻工程の前の前記外層の表面密度が、１００〜６００ｇ／ｌ、有利には２５０〜４００ｇ／ｌであることを特徴とする、請求項１から５までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項８】
前記外層の表面のゲル含有量が２０〜８０％、有利には３０〜６０％であることを特徴とする、請求項１から６までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項９】
前記圧刻ステップの前に、前記外層の表面が密閉気孔型であることを特徴とする、請求項１から７までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項１０】
請求項１から８までのいずれか１項記載の、圧刻加工された３次元構造化表面を外側の外層に有する熱可塑性シートを製造するための方法において、前記シートの発泡、又は前記シートの層の発泡、特に前記オーバシートの発泡が、前記シート又は前記シートの層の押出中に発泡剤及び架橋剤の添加を介して行われる方法。
【請求項１１】
請求項１から９までのいずれか１項記載の、圧刻加工された３次元構造化表面を外側の外層に有する熱可塑性シートを製造するための方法において、前記外層の表面の前記発泡体密度の増加が圧刻ステップ中に行われることを特徴とする方法。
【請求項１２】
請求項３から１０までのいずれか１項記載の、圧刻加工された３次元構造化表面を外側の外層に有する熱可塑性シートを製造するための方法において、前記オーバシートの発泡が、前記オーバシートの押出中に発泡剤及び架橋剤の添加を介して行われ、
前記オーバシートを前記アンダシートに貼り付けるための積層が圧刻ステップ中に行われることを特徴とする方法。
【請求項１３】
積層による前記オーバシートの貼付中に、前記アンダシートが初期発泡された形態ですでに存在していることを特徴とする、請求項１０に記載の方法。
【請求項１】
特に自動車の内装カバー用の、圧刻加工された３次元構造化表面（２）を外側の外層に有する熱可塑性シート（１、９）であって、前記シートが工程の成形ステップで構成要素の形状に対応する支持部に貼り付けられ、これによって、前記シートに前記構成要素の形状が付与され、前記シートが、前記シートの下方側及び前記支持部に対向する下側で発泡体シートの形態をとる前記熱可塑性シートにおいて、前記外層が発泡層（３、１０）の形態をとり、前記外層の層厚にわたって変化しかつ前記表面に向かって上昇する発泡体密度（６、１１）を有することを特徴とする熱可塑性シート。
【請求項２】
前記シートが発泡層（１０）の形態の単一層構造を有し、前記発泡層が、前記シートの層厚にわたって変化しかつ前記シートの下側から前記外層の表面に向かって上昇する発泡体密度（１１）を有することを特徴とする、請求項１に記載の熱可塑性シート。
【請求項３】
前記シートが、前記外側の外層を含むオーバシート（３）と、積層によって貼り付けられた発泡アンダシート（４）とから構成され、前記オーバシート（３）が発泡層の形態をとり、前記オーバシートの層厚（５）にわたって変化しかつ前記外層の表面に向かって上昇する発泡体密度（６）を有することを特徴とする、請求項１に記載の熱可塑性シート。
【請求項４】
前記シートが、熱可塑性オレフィン（ＴＰＯ）又はポリオレフィン混合物から構成されることを特徴とする、請求項１から３までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項５】
前記シートがポリプロピレンを含むことを特徴とする、請求項１から４までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項６】
前記シートがポリエチレン、有利には２．０ｇ／１０分を超えるメルトフローインデックスを有するポリエチレンを含むことを特徴とする、請求項１から４までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項７】
前記圧刻工程の前の前記外層の表面密度が、１００〜６００ｇ／ｌ、有利には２５０〜４００ｇ／ｌであることを特徴とする、請求項１から５までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項８】
前記外層の表面のゲル含有量が２０〜８０％、有利には３０〜６０％であることを特徴とする、請求項１から６までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項９】
前記圧刻ステップの前に、前記外層の表面が密閉気孔型であることを特徴とする、請求項１から７までのいずれか１項記載の熱可塑性シート。
【請求項１０】
請求項１から８までのいずれか１項記載の、圧刻加工された３次元構造化表面を外側の外層に有する熱可塑性シートを製造するための方法において、前記シートの発泡、又は前記シートの層の発泡、特に前記オーバシートの発泡が、前記シート又は前記シートの層の押出中に発泡剤及び架橋剤の添加を介して行われる方法。
【請求項１１】
請求項１から９までのいずれか１項記載の、圧刻加工された３次元構造化表面を外側の外層に有する熱可塑性シートを製造するための方法において、前記外層の表面の前記発泡体密度の増加が圧刻ステップ中に行われることを特徴とする方法。
【請求項１２】
請求項３から１０までのいずれか１項記載の、圧刻加工された３次元構造化表面を外側の外層に有する熱可塑性シートを製造するための方法において、前記オーバシートの発泡が、前記オーバシートの押出中に発泡剤及び架橋剤の添加を介して行われ、
前記オーバシートを前記アンダシートに貼り付けるための積層が圧刻ステップ中に行われることを特徴とする方法。
【請求項１３】
積層による前記オーバシートの貼付中に、前記アンダシートが初期発泡された形態ですでに存在していることを特徴とする、請求項１０に記載の方法。
【図１】
【図２】
【図２】
【公表番号】特表２０１０−５１３０５３（Ｐ２０１０−５１３０５３Ａ）
【公表日】平成２２年４月３０日（２０１０．４．３０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−５４０６８３（Ｐ２００９−５４０６８３）
【出願日】平成１９年１１月５日（２００７．１１．５）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＥＰ２００７／０６１８５７
【国際公開番号】ＷＯ２００８／０７４５６３
【国際公開日】平成２０年６月２６日（２００８．６．２６）
【出願人】（５９９００４１３９）ベネツケ−カリコ・アーゲー (15)
【氏名又は名称原語表記】Ｂｅｎｅｃｋｅ−Ｋａｌｉｋｏ ＡＧ
【Ｆターム（参考）】
【公表日】平成２２年４月３０日（２０１０．４．３０）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１１月５日（２００７．１１．５）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＥＰ２００７／０６１８５７
【国際公開番号】ＷＯ２００８／０７４５６３
【国際公開日】平成２０年６月２６日（２００８．６．２６）
【出願人】（５９９００４１３９）ベネツケ−カリコ・アーゲー (15)
【氏名又は名称原語表記】Ｂｅｎｅｃｋｅ−Ｋａｌｉｋｏ ＡＧ
【Ｆターム（参考）】
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