説明

発泡層を含む多層錠剤

本発明は、有効成分としてヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩、炭酸塩、及び有機酸を含む発泡層と、テルミサルタン含有層とを含む多層錠剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩を含む発泡層と、テルミサルタン含有層とを含む多層錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
利尿剤、ベータ遮断剤、アルファ遮断剤、カルシウムチャンネル遮断剤、血管拡張剤及びアンジオテンシン受容体拮抗剤などの多様な抗高血圧剤が高血圧治療に使われている。また、異なる薬理学的メカニズムを有する抗高血圧剤を同時に含有する薬学組成物が、さらにすぐれた治療効果を得るために開発されている。例えば、アンジオテンシン受容体拮抗剤と利尿剤との組み合わせ、またはアンジオテンシン受容体拮抗剤とカルシウムチャンネル遮断剤との組み合わせを含む薬学的製剤が報告されている。薬学的組み合わせ組成物の設計において、考慮される重要な事項のうち一つは、前記組み合わせに含まれるそれぞれの薬物が、それぞれの単一薬物組成物と類似した生体挙動を示さねばならないということである。
【0003】
水難溶性のテルミサルタンと、利尿剤またはカルシウムチャンネル遮断剤との異なる放出特性を克服するための先行技術として、例えば、特許文献1及び特許文献2は、二層錠剤を開示している。該特許文献1は、溶解性錠剤マトリックス中に、90%以上が非晶質であるテルミサルタンを含有する第1層;崩壊性錠剤マトリックス中に、ヒドロクロロチアジドを含有する第2層;を含む二層からなる薬学的錠剤を開示している。また、該特許文献2は、溶解性錠剤マトリックス中にテルミサルタンを含有する第1層、崩壊性または侵食性の錠剤マトリックス中にアムロジピンを含有する第2層を含む薬学的錠剤を開示している。前記特許文献1及び特許文献2に開示された錠剤は、テルミサルタンの即時放出のために製剤化された第1層;速崩壊性錠剤マトリックスから、ヒドロクロロチアジドまたはアムロジピンが、膨脹による崩壊によって即時放出されるように製剤化された第2層;を含む二層錠剤である。
【0004】
前記特許文献1及び特許文献2に開示された二層錠剤は、それぞれの成分の迅速な放出を示すように製剤化されているが、胃腸管のpH変化または胃腸管の運動性変化(例えば、胃腸管の運動性低下)のような外部環境による溶出パターン偏差を最小化するにあたっては、まだ満足すべきものではない。すなわち、利尿剤またはカルシウムチャンネル遮断剤の薬物放出が、膨潤及び侵食を介してなされる崩壊性錠剤マトリックスの場合、その溶出パターンは、パドルの撹拌速度に影響され、これは、患者の胃腸管運動によって、薬物吸収が変化しうるということを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2003/059327号公報
【特許文献2】WO2006/048208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、テルミサルタンと共に、ヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩を含む薬学的組み合わせ組成物として、環境条件による影響を受けずに、迅速な薬物放出を示す組成物を開発するために、多様な研究を行った。その結果、ヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩、炭酸塩及び有機酸を含む発泡層を含む多層錠剤が、胃腸管内で炭酸ガスを生成する迅速な発泡を介して、薬物を迅速に放出することによって、患者の胃腸管運動に影響されずに、一定の溶出パターンを示すということを発見した。
【0007】
また、テルミサルタンを、噴霧乾燥器の代わりに、製薬分野で一般的に使われる流動層グラニュレータを使用して流動層造粒により製剤化し、テルミサルタン含有層を形成させる場合、テルミサルタンのすぐれた溶出特性を達成できるだけではなく、高収率での層形成が可能であり、高いプロセス効率が期待されるということを発見した。
【0008】
従って、本発明は、ヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩を含む発泡層と、テルミサルタン含有層とを含む多層錠剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によって、有効成分としてヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩、炭酸塩、及び有機酸を含む発泡層と、テルミサルタン含有層とを含む多層錠剤が提供される。
【0010】
本発明の一実施形態によって、前記発泡層の有効成分がヒドロクロロチアジドであり、pH1.2で、パドルの回転なしにパドル法で溶出試験を行ったとき、0分ないし15分間のヒドロクロロチアジドの溶出量が、ヒドロクロロチアジド総重量の50重量%以上である多層錠剤が提供される。
【0011】
本発明の他の実施形態によって、前記発泡層の有効成分がアムロジピンまたはその塩であり、pH1.2で、パドルの回転なしにパドル法で溶出試験を行ったとき、0分ないし15分間のアムロジピンまたはその塩の溶出量が、アムロジピンまたはその塩の総重量の50重量%以上である多層錠剤が提供される。前記アムロジピンの塩は、リンゴ酸アムロジピン、ベシル酸アムロジピン、メシル酸アムロジピンまたはカムシル酸アムロジピンでありうる。
【0012】
本発明の多層錠剤において、前記炭酸塩は、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる;また、前記有機酸は、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による多層錠剤は、ヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩を含む発泡層を含有することによって、胃腸管内での炭酸ガス生成を伴う迅速な発泡を介して、薬物を迅速に放出する。従って、本発明による多層錠剤は、胃腸管運動が低下した高齢の患者においても、有効成分の溶出パターン偏差を最小化することができる。すなわち、本発明による多層錠剤は、多様な合併症、患者の年齢または状態などから生じうる胃腸管内の環境変化による影響を最小化することにより、均一な薬物放出パターンを示すことが期待される。また、本発明による多層錠剤のテルミサルタン含有層は、流動層造粒によるテルミサルタン製剤化工程によって形成されるため、テルミサルタンのすぐれた溶出特性だけではなく、高い生産性を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によって製造された錠剤(実施例2,4−1及び7)及び比較例の錠剤のpH1.2緩衝液中でのテルミサルタンの溶出試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、有効成分としてヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩、炭酸塩、及び有機酸を含む発泡層と、テルミサルタン含有層とを含む多層錠剤を提供する。
【0016】
ヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩を含む発泡層を含有する本発明による多層錠剤は、胃腸管内で炭酸ガスを生成しながら迅速に発泡して、薬物を放出する。従って、本発明による多層錠剤は、胃腸管運動が低下した高齢の患者においても、有効成分の溶出パターン偏差を最小化することができる。すなわち、前記発泡層が水性媒体と接触すると、即時に発泡して、発泡層内にマイクロ・キャビティを形成する。前記マイクロ・キャビティを介して、有効成分が迅速に溶出する。特に、本発明による多層錠剤から、ヒドロクロロチアジドまたはアムロジピンの50%以上が、無撹拌条件下でも、15分以内に迅速に溶出される。かような迅速な溶出は、従来の製剤が、無撹拌条件では、120分後でも20%以下の薬物放出を示すということを考慮すれば、非常に驚くべきものである。
【0017】
ヒドロクロロチアジドは、化学名が6−クロロ−3,4−ジヒドロ−2H−1,2,4−ベンゾチアジアジン−7−スルホンアミド−1,1−ジオキシドであって、浮腫及び高血圧の治療に使われる利尿剤であり、一般的に経口で投与される。本発明による多層錠剤において、前記ヒドロクロロチアジドは、治療学的に有効な量に基づいて、適量を使用することができる。例えば、ヒドロクロロチアジドの含有量は、単位錠剤当たり5ないし50mgの範囲でありうる。
【0018】
アムロジピンは、カルシウムチャンネル遮断剤であり、その化学名は、3−エチル−5−メチル−2−(2−アミノエトキシメチル)−4−(2−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−6−メチル−3,5−ピリジンジカルボキシレートである。アムロジピンの塩は、リンゴ酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩またはカムシル酸塩を含み、望ましくは、ベシル酸塩である。本発明による多層錠剤において、前記アムロジピンまたはその塩は、治療学的に有効な量に基づいて、適量を使用することができる。例えば、アムロジピンまたはその塩の含有量は、単位錠剤当たり1ないし20mg(アムロジピンとして)の範囲でありうる。
【0019】
前記発泡層は、(a)有効成分としてヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩、及び炭酸塩を含有する顆粒を形成する工程、(b)前記顆粒と有機酸とを混合する工程、及び(c)得られた混合物を打錠する工程によって製造される。あるいは、前記発泡層は、(a’)前記有効成分及び有機酸を含有する顆粒を形成する工程、(b’)前記顆粒と炭酸塩とを混合する工程、及び(c’)得られた混合物を打錠する工程によって製造することができる。
【0020】
前記顆粒は、流動層グラニュレータ中で、ヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩、希釈剤、及び炭酸塩または有機酸の混合物を流動させつつ、結合液を噴霧することによって製造される。前記結合液は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルアルコールからなる群から選択される1種以上の結合剤を、水、アルコール、またはそれらの混合物中に溶解させて製造される。従って、得られる顆粒は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルアルコールからなる群から選択される1種以上の結合剤をさらに含むことができる。
【0021】
前記希釈剤は、薬学分野で一般的に使われる任意の希釈剤でありうる。前記希釈剤の例としては、グルコース、フラクトース、ラクトース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、マルトール、イソマルトール、キシリトール、及びそれらの混合物が挙げられる。望ましくは、前記希釈剤は、イソマルトール、ラクトース、またはそれらの混合物でありうる。前記希釈剤の量は、発泡層の総重量に対して、40ないし80重量%の範囲であるが、これに限定されるものではない。
【0022】
前記炭酸塩は、人体内で有機酸と反応して炭酸ガスを放出する任意の炭酸塩でありうる。例えば、前記炭酸塩は、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム及び炭酸マグネシウムからなる群から少なくとも1種選択され、望ましくは、重炭酸ナトリウムでありうる。また、前記有機酸は、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及びフマル酸からなる群から少なくとも1種選択され、望ましくは、クエン酸でありうる。前記炭酸塩の使用量は、得られる発泡層の総重量に対して、0.5ないし30重量%、望ましくは、1ないし20重量%、さらに望ましくは、1ないし15重量%の範囲でありうる。前記有機酸の使用量は、発泡層の総重量に対して、1ないし30重量%、望ましくは、1ないし15重量%の範囲でありうる。
【0023】
有効成分(ヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩)、希釈剤、炭酸塩及び有機酸に加えて、前記発泡層は、薬学的に許容可能な一般的な添加剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウムのような滑沢剤をさらに含むことができる。
【0024】
一方、流動層造粒により得られた顆粒(すなわち、テルミサルタンを、メグルミン及び水酸化ナトリウムと共に、有機溶媒に溶解させて得られたテルミサルタン含有溶液を、糖類に噴霧して得られた顆粒)が、すぐれた溶出特性を示すということが本発明によって明らかになった。また、テルミサルタン含有層が、流動層造粒により高収率で形成されるので、高いプロセス効率が期待される。
【0025】
前記有機溶媒は、無水エタノール、あるいは無水エタノールと塩化メチレンとの混合溶媒でありうる。前記無水エタノールと塩化メチレンとの混合溶媒において、無水エタノールと塩化メチレンとの重量比は、1:2ないし7、望ましくは、1:3ないし5、さらに望ましくは、およそ1:3である。前記糖類の例は、ソルビトール、マンニトール、イソマルトールなどを含む。必要な場合、前記テルミサルタン含有溶液は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコールのような結合剤をさらに含むことができる。前記テルミサルタン含有層において、テルミサルタンは、治療学的に有効な量に基づいて、適量を使用することができ、例えば、単位錠剤(例えば、二層錠剤)当たり20ないし160mgの範囲で使用することができる。また、前記メグルミン及び水酸化ナトリウムの使用量は、それぞれ単位錠剤当たり0.5ないし10重量%の範囲であるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明の一実施形態によって、前記発泡層の有効成分がヒドロクロロチアジドであり、pH1.2で、パドルの回転なしにパドル法で溶出試験を行ったとき、0分ないし15分間のヒドロクロロチアジドの溶出量が、ヒドロクロロチアジド総重量の50重量%以上である多層錠剤が提供される。本発明の他の実施形態によって、前記発泡層の有効成分がアムロジピンまたはその塩であり、pH1.2で、パドルの回転なしにパドル法で溶出試験を行ったとき、0分ないし15分間のアムロジピンまたはその塩の溶出量が、アムロジピンまたはその塩の総重量の50重量%以上である多層錠剤が提供される。前記アムロジピンの塩は、リンゴ酸アムロジピン、ベシル酸アムロジピン、メシル酸アムロジピンまたはカムシル酸アムロジピンである。
【0027】
前記発泡層及びテルミサルタン含有層に加えて、本発明による多層錠剤は、薬学分野で一般的に使われる添加剤を含有した薬物非含有層を、別の層としてさらに含むことができる(例えば、これは、三層錠剤の形態であってもよい)。前記添加剤の例としては、乳糖、微結晶セルロース、イソマルトールなどの糖類あるいはセルロース誘導体が挙げられる。
【0028】
本発明による多層錠剤は、一般的な多層錠剤の形成方法を使用して製造されうる。例えば、前記多層錠剤を二層錠剤の形態に製造する場合、ヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩及び炭酸塩を含む顆粒と、有機酸との混合物;またはヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩及び有機酸を含む顆粒と、炭酸塩との混合物;をステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤と共に打錠して発泡層を形成する。その後、テルミサルタンを含有する顆粒;あるいは前記テルミサルタンを含有する顆粒と、薬学的に許容可能な添加剤(例えば、希釈剤、滑沢剤)との混合物を打錠して別の層を形成する。
【0029】
以下、本発明を実施例を参照しつつ、さらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明はそれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1
テルミサルタン8.00kg、ポリビニルピロリドン8.00kg、メグルミン2.40kg及び水酸化ナトリウム0.67kgを、無水エタノール106.00kgに溶解させた。流動層グラニュレータ中でソルビトール14.40kgを流動させつつ、前記溶液を噴霧して顆粒化を行った。流動層グラニュレータの吸気温度及び排気温度は、それぞれ60℃及び40℃であり、噴霧速度は、毎分100.00gであった。前記と同一の方法で、3つのバッチを製造した。各バッチで、上部、中部及び下部に位置した顆粒を取り、それぞれに含まれるテルミサルタンの量を測定し、理論的に計算された量に対する相対的百分率%重量を得た。また、各バッチで、総投入量対比の総製造量を測定して収率を計算した。その結果を、表1及び表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
前記表1及び表2の結果から、流動層造粒による顆粒化工程によって、内容量の損失なしに均一性を確保しつつ、高い生産効率でテルミサルタンを含有する顆粒を製造することができるということが分かる。
【0034】
実施例2.ヒドロクロロチアジド及びテルミサルタンを含有する錠剤の製造
ポリビニルピロリドン0.80kgをエタノール10.00kgに完全に溶解させて結合液を得た。流動層グラニュレータ中で、ヒドロクロロチアジド1.25kg、イソマルトール7.10kg、無水乳糖7.75kg及び重炭酸ナトリウム1.80kgの混合物を流動させつつ、前記結合液を、毎分60.00gで噴霧して顆粒化を行った。流動層グラニュレータの吸気温度及び排気温度は、それぞれ50℃及び30℃であった。得られた顆粒18.70kgを、クエン酸1.00kg及びステアリン酸マグネシウム0.30kgと混合させて混合物を得た(混合物A)。
【0035】
テルミサルタン8.00kg、ポリビニルピロリドン8.00kg、メグルミン2.40kg及び水酸化ナトリウム0.67kgを、無水エタノール106.00kgに溶解させた。流動層グラニュレータ中で、ソルビトール14.40kgを流動させつつ、前記溶液を噴霧して顆粒化を行った。流動層グラニュレータの吸気温度及び排気温度は、それぞれ60℃及び40℃であり、噴霧速度は、毎分100.00gであった。得られた顆粒33.47kg、ソルビトール14.02kg及びステアリン酸マグネシウム0.51kgを混合し、テルミサルタン含有混合物を得た(混合物B)。
【0036】
前記混合物Aと混合物Bとを二層錠用打錠機(製造会社:Gisan機械(株)、モデル名:Rotary Tablet Press SPT/TP500/41)を利用して打錠し、二層錠剤を製造した。得られた二層錠剤は、単位錠剤当たりヒドロクロロチアジド12.50mg及びテルミサルタン80.00mgを含有していた。
【0037】
実施例3.ヒドロクロロチアジド及びテルミサルタンを含有する錠剤の製造
ポリビニルピロリドン0.80kgをエタノール10.00kgに完全に溶解させて結合液を得た。流動層グラニュレータ中で、ヒドロクロロチアジド1.25kg、イソマルトール7.10kg、無水乳糖7.75kg及びクエン酸1.00kgの混合物を流動させつつ、前記結合液を、毎分60.00gで噴霧して顆粒化を行った。流動層グラニュレータの吸気温度及び排気温度は、それぞれ50℃及び30℃であった。得られた顆粒17.90kgを、重炭酸ナトリウム1.80kg及びステアリン酸マグネシウム0.30kgと混合させて混合物を得た(混合物A’)。
【0038】
前記混合物A’と実施例2と同一の方法で製造した混合物Bとを二層錠用打錠機(製造会社:Gisan機械(株)、モデル名:Rotary Tablet Press SPT/TP500/41)を利用して打錠し、二層錠剤を製造した。得られた二層錠剤は、単位錠剤当たりヒドロクロロチアジド12.50mg及びテルミサルタン80.00mgを含有していた。
【0039】
実施例4.ヒドロクロロチアジド及びテルミサルタンを含有する錠剤の製造
実施例2と同一の方法で製造したヒドロクロロチアジド含有混合物(混合物A)と、テルミサルタン含有混合物(混合物B)とを利用し、表3のように三層錠剤を製造した。表3は、1錠当たりの各成分の重量を示している。すなわち、混合物Aを使用して、ヒドロクロロチアジド12.50mgを含有する第1層を形成させた後、乳糖、微結晶セルロースまたはイソマルトールと、0.50%のステアリン酸マグネシウムとを混合して製造された混合粉末(それぞれの混合物は、表3で、「乳糖混合物」、「微結晶セルロース混合物」または「イソマルトール混合物」として示されている)を使用して第2層を形成した。その後、混合物Bを使用して、テルミサルタン80.00mgを含有する第3層を形成させて三層錠剤を製造した。
【0040】
【表3】

【0041】
実施例5.ベシル酸アムロジピン及びテルミサルタンを含有する錠剤の製造
ポリビニルピロリドン0.80kgをエタノール10.00kgに完全に溶解させて結合液を得た。流動層グラニュレータ中で、ベシル酸アムロジピン0.69kg、イソマルトール7.00kg、無水乳糖8.32kg及び重炭酸ナトリウム1.80kgの混合物を流動させつつ、前記結合液を、毎分60.00gで噴霧して顆粒化を行った。流動層グラニュレータの吸気温度及び排気温度は、それぞれ50℃及び30℃であった。得られた顆粒18.61kgを、クエン酸1.00kg及びステアリン酸マグネシウム0.30kgと混合させて混合物を得た(混合物C)。
【0042】
前記混合物Cと実施例2と同一の方法で製造した混合物Bとを二層錠用打錠機(製造会社:Gisan機械(株)、モデル名:Rotary Tablet Press SPT/TP500/41)を利用して打錠し、二層錠剤を製造した。得られた二層錠剤は、単位錠剤当たりアムロジピン5.00mg及びテルミサルタン80.00mgを含有していた。
【0043】
実施例6.ベシル酸アムロジピン及びテルミサルタンを含有する錠剤の製造
ポリビニルピロリドン0.80kgをエタノール10.00kgに完全に溶解させて結合液を得た。流動層グラニュレータ中で、ベシル酸アムロジピン0.69kg、イソマルトール7.00kg、無水乳糖8.32kg及びクエン酸1.00kgの混合物を流動させつつ、前記結合液を、毎分60.00gで噴霧して顆粒化を行った。流動層グラニュレータの吸気温度及び排気温度は、それぞれ50℃及び30℃であった。得られた顆粒17.81kgを、重炭酸ナトリウム1.80kg及びステアリン酸マグネシウム0.30kgと混合させて混合物を得た(混合物C’)。
【0044】
前記混合物C’と実施例2と同一の方法で製造した混合物Bとを二層錠用打錠機(製造会社:Gisan機械(株)、モデル名:Rotary Tablet Press SPT/TP500/41)を利用して打錠し、二層錠剤を製造した。得られた二層錠剤は、単位錠剤当たりアムロジピン5.00mg及びテルミサルタン80.00mgを含有していた。
【0045】
実施例7.ヒドロクロロチアジド及びテルミサルタンを含有する錠剤の製造
テルミサルタン240.00g、ポリビニルピロリドン72.00g、メグルミン72.00g及び水酸化ナトリウム20.16gを、無水エタノール3200.00gに溶解させた。流動層グラニュレータ中で、イソマルトール600.00gを流動させつつ、前記溶液を噴霧して顆粒化を行った。流動層グラニュレータの吸気温度及び排気温度は、それぞれ60℃及び40℃であり、噴霧速度は、毎分6gであった。得られた顆粒334.72g、イソマルトール140.27g及びステアリン酸マグネシウム5.01gを混合し、テルミサルタン含有混合物を得た。
【0046】
前記得られたテルミサルタン含有混合物と実施例2と同一の方法で製造したヒドロクロロチアジド含有混合物(すなわち、混合物A)を利用して、実施例2と同一の方法で打錠し、二層錠剤を製造した。得られた二層錠剤は、単位錠剤当たりヒドロクロロチアジド12.50mg及びテルミサルタン80.00mgを含有していた。
【0047】
試験例
溶出試験及び分析方法は、次の通りである。
(1)溶出試験
溶出液として、pH1.2の緩衝液(第9改正大韓薬典一般試験法の崩壊試験法の第1液)900mLを使用し、第9改正大韓薬典一般試験法の溶出試験第2法(パドル法)によって、37℃で溶出試験を行った。15分後、各サンプルについて溶出液5mLを取り、0.45μmの孔径を有するメンブレン・フィルタで濾過した。濾液を使用して溶出率を測定した。
【0048】
(2−1)ヒドロクロロチアジドまたはテルミサルタンに対する分析方法
−カラム:ACQUITY UPLC(登録商標) BEH C18 1.7μm 2.1×50mm
−移動相
A:0.05mol/Lリン酸二水素カリウム溶液1,000mlに、酸度がpH3.0に達するまでリン酸を加えて調製した溶液
B:アセトニトリル
【0049】
【表4】

−検出器:UV分光測光器(spectrophotometer)(271nm)
−カラム温度:40℃
【0050】
(2−2)アムロジピンに対する分析方法
−カラム:ACQUITY UPLC(登録商標) BEH C18 1.7μm 2.1×100mm
−移動相:メタノール及び0.03mol/Lリン酸二水素カリウム溶液の混合液(60:40)
−流速:0.35mL/min.
−検出器:UV分光測光器(237nm)
−カラム温度:40℃
【0051】
試験例1.ヒドロクロロチアジド及びテルミサルタンを含有する錠剤の溶出試験
実施例2及び3で製造した錠剤(ヒドロクロロチアジド12.5mg及びテルミサルタン80mg含有)に対して溶出試験を行った。また、比較例として、商業的に販売されているミカルディスプラスTM錠を使用して溶出試験を行った。溶出試験は、それぞれ6個の錠剤に対して行った。パドルの撹拌速度による影響を把握するために、パドルの回転速度を、それぞれ0、25及び50rpmに設定し、それぞれの錠剤に対して、各回転速度における溶出率を測定した。回転速度が0rpmであるときには、15、30、45、60、90、120分後の溶出率を測定した。パドルの各回転速度におけるヒドロクロロチアジドの溶出率(%)を、表5及び表6に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
前記表5の結果から、本発明による錠剤は、回転速度と関係なく、15分以内に50重量%以上の溶出率を示すということが分かる。特に、表6から分かるように、比較例の錠剤は、2時間後でも20%以下の溶出率を示すのに対して、本発明による錠剤は、15分以内に50%以上の溶出率を示している。従って、本発明による錠剤は、外部環境に関係なく、いつでも迅速な薬物放出を期待することができ、特に、胃腸管運動が弱まった高齢の患者においても、迅速な薬物放出を期待することができる。
【0055】
試験例2.ベシル酸アムロジピン及びテルミサルタンを含有する錠剤の溶出試験
実施例5及び6で製造した錠剤(アムロジピン5.00mg及びテルミサルタン80mg含有)に対して溶出試験を行った。また、比較例として、商業的に販売されているノルバスクTM5.00mg錠(ファイザー株式会社)を使用して溶出試験を行った。溶出試験は、それぞれ6個の錠剤に対して行った。パドルの撹拌速度による影響を把握するために、パドルの回転速度を、それぞれ0及び50rpmに設定し、それぞれの錠剤に対して、各回転速度における溶出率を測定した。パドルの各回転速度におけるベシル酸アムロジピンの溶出率(%)を、表7及び表8に示す。
【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
前記表7及び表8の結果から、本発明による二層錠剤は、15分以内に50重量%以上の溶出率を示すということが分かる。特に、パドルの回転速度が0rpmであるとき、本発明による二層錠剤の溶出率は、比較例の錠剤に比べて、はるかにすぐれている。
【0059】
試験例3.ヒドロクロロチアジド及びテルミサルタンを含有する三層錠剤の溶出試験
実施例4で製造した錠剤(ヒドロクロロチアジド12.5mg及びテルミサルタン80mg含有)に対して溶出試験を行った。溶出試験は、それぞれ6個の錠剤に対して行った。パドルの撹拌速度による影響を把握するために、パドルの回転速度を、それぞれ0及び50rpmに設定し、それぞれの錠剤に対して、各回転速度における溶出率を測定した。パドルの各回転速度におけるヒドロクロロチアジドの溶出率(%)を、表9に示す。
【0060】
【表9】

【0061】
試験例4.ヒドロクロロチアジド及びテルミサルタンを含有する錠剤の溶出試験
実施例2、4−1、及び7で製造した錠剤に対してテルミサルタンの溶出試験を行った。また、比較例として、商業的に販売されているミカルディスプラスTM錠を使用して溶出試験を行った。溶出試験は、それぞれ3個の錠剤に対して、50rpmのパドルの回転速度で行った。テルミサルタンの溶出試験のために、試験開始から15、30、45、60、90、120分後に溶出液5mLを取った後、0.45μmの孔径を有するメンブレン・フィルタで濾過した。濾液を使用して、テルミサルタンの溶出率を測定した。溶出試験結果を図1に示す。図1から、本発明による錠剤は、比較例の錠剤と同等以上のテルミサルタンの溶出挙動を示すということが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてヒドロクロロチアジドあるいはアムロジピンまたはその塩、炭酸塩、及び有機酸を含む発泡層と、テルミサルタン含有層とを含む多層錠剤。
【請求項2】
前記発泡層の有効成分がヒドロクロロチアジドであり、pH1.2で、パドルの回転なしにパドル法で溶出試験を行ったとき、0分ないし15分間のヒドロクロロチアジドの溶出量が、ヒドロクロロチアジド総重量の50重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の多層錠剤。
【請求項3】
前記発泡層の有効成分がアムロジピンまたはその塩であり、pH1.2で、パドルの回転なしにパドル法で溶出試験を行ったとき、0分ないし15分間のアムロジピンまたはその塩の溶出量が、アムロジピンまたはその塩の総重量の50重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の多層錠剤。
【請求項4】
前記アムロジピンの塩が、リンゴ酸アムロジピン、ベシル酸アムロジピン、メシル酸アムロジピンまたはカムシル酸アムロジピンであることを特徴とする請求項3に記載の多層錠剤。
【請求項5】
前記炭酸塩が、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうち、いずれか1項に記載の多層錠剤。
【請求項6】
前記有機酸が、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうち、いずれか1項に記載の多層錠剤。

【図1】
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【公表番号】特表2012−528145(P2012−528145A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512961(P2012−512961)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003304
【国際公開番号】WO2010/137855
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511258318)ダサン メディケム カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】