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発泡形耐火塗料
説明

発泡形耐火塗料

【課題】本発明は、優れた耐火性能を有し且つ安全性の高い発泡形耐火塗料を提供することを課題とする。
【解決手段】多価アルコール、含窒素発泡剤、合成樹脂、難燃性発泡剤、及び人造無機繊維を含有する発泡形耐火塗料であって、前記人造無機繊維の平均繊維長が150〜600μmあり、且つ前記人造無機繊維が前記発泡形耐火塗料の固形分中に0.5〜6質量%含有されていることを特徴とする。また、前記人造無機繊維として、生体溶解性を有する人造無機繊維を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造の建築物の柱、梁に使用される鋼材を火災から保護する為に使用される耐火被覆材のうち、火災にさらされたときに発泡して断熱層を形成する耐火塗料であって、人造無機繊維を含有する耐火塗料に関するものである。
【0002】
本明細書においては、特に断りの記載がなければ、%とは質量%のことをいう。
【背景技術】
【0003】
従来の発泡形耐火塗料は一工程での塗装厚みが厚すぎる場合には、塗装された発泡形耐火塗料が乾燥する過程において、該発泡形耐火塗料の乾燥体である塗膜にひび割れが発生し易い傾向があった。また、従来の発泡形耐火塗料は発泡のコントロールが困難であったため、発泡の不均一さによる断熱層のひび割れ及び剥落、又は断熱層そのものの強度不足などが原因となり、長時間の耐火性能を発揮できない場合があった。
【0004】
上記の問題を解決する技術としては、例えば、次に示す技術があった。
本件出願人が先に出願した特許文献1には、発泡後の断熱層のひび割れ及び剥落のない耐火性能の優れた発泡形耐火塗料であって、45分以上の耐火性能を有する発泡形耐火塗料の配合組成の技術が示されている。また、該発泡形耐火塗料の充填材として、無機繊維、ロックウール(岩綿)を用いることが記載されている。
【0005】
特許文献2に記載には、バインダーとして一液変性エポキシ樹脂、発泡剤としてポリリン酸アンモニウムおよびメラミン、炭素生成材料としてペンタエリスリトール、無機質粉末、無機質繊維状物質からなる発泡耐火塗料が記載されている。
【特許文献1】特開2001−40290号公報(特許請求の範囲、段落0003〜段落0012)
【特許文献2】特許第2862419号公報(特許請求の範囲、段落0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、発泡形耐火塗料の充填材として、無機繊維、ロックウールを用いることは示されていたが、それらの好ましい配合割合、具体的な種別は示されていなかった。
【0007】
また、特許文献2の発泡耐火塗料は、無機質繊維状物質を必須成分とするものではあって、該無機質繊維状物質として、アスベスト、ロックウール、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、シリコンカーバイト繊維を例示していたが、それらの繊維を発泡耐火塗料に配合する際の好ましい形状や大きさに関する検討はされていなかった。また、前記繊維の安全性は考慮されていなかった。
【0008】
本発明は、発泡形耐火塗料が乾燥する過程においてひび割れが発生し難く、優れた耐火性能を発揮し、且つ安全性の高い発泡形耐火塗料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この出願に係る請求項1の発明では、多価アルコール、含窒素発泡剤、合成樹脂、難燃性発泡剤、及び人造無機繊維を含有する発泡形耐火塗料であって、前記人造無機繊維の平均繊維長が120〜600μmあり、且つ前記人造無機繊維が前記発泡形耐火塗料の固形分中に0.5〜6質量%含有されていることを要旨としている。
【0010】
次に、請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記人造無機繊維の平均繊維径が1〜7μmであることを要旨としている。
【0011】
同様に、請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記人造無機繊維のアルミナ含有率が30質量%以上であることを要旨としている。
【0012】
請求項4の発明では、請求項1または請求項2の発明において、前記人造無機繊維が生体溶解性を有することを要旨としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発泡形耐火塗料によれば、耐火性能を得るために発泡形耐火塗料を塗布した際に、該発泡形耐火塗料の乾燥体である塗膜にひび割れが発生しない塗料を提供することができる。また、発泡形耐火塗料は、ISO834に規定される標準加熱曲線に基づいて耐火試験に供した際に、剥落がなく、ひび割れが生じることもなく、優れた耐火性能を発揮できるものとなった。
【0014】
また、生体溶解性を有する人造無機繊維を用いることで、発泡形耐火塗料製造時はもとより塗装作業時、そして発泡形耐火塗料が塗装された建築物を利用する者に対して、健康上安全な発泡形耐火塗料が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の発泡耐火塗料は、合成樹脂、多価アルコール、含窒素発泡剤、難燃性発泡剤、及び人造無機繊維を含有する発泡形耐火塗料である 。
【0016】
発泡形耐火塗料とは、鉄骨造の建築物の柱、梁に使用される鋼材を火災から保護する為に利用される耐火被覆材料の一つである。発泡形耐火塗料は鋼材に任意の厚みで塗装して用いられ、塗装された発泡形耐火塗料は塗膜を形成する。該塗膜は火災にさらされたときに発泡して断熱層を形成する。そのため、耐火塗料の発泡前の厚み、即ち施工時の厚みは、他の耐火被覆材の施工時の厚みと比べて薄くなる。
なお、発泡形耐火塗料の発泡の程度を表す数値として発泡倍率がある。該発泡倍率とは、「発泡が完了したときの断熱層の厚み/発泡前の塗膜の厚み」である。最適な発泡倍率は、発泡形耐火塗料の組成によって異なるが、同じ組成の泡形耐火塗料の場合、発泡倍率が大きすぎると断熱層が脆弱になる傾向があり、発泡倍率が小さすぎると断熱層が十分な断熱性を持たないものになる傾向がある。
【0017】
前記合成樹脂は、常温時おいて前記発泡耐火塗料の塗膜に付着性、耐候性を与える役目をする。前記合成樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は単独にて用いても良くあるいは共重合したものにして、またこれらを混合して用いることもできる。更に、これらの樹脂の形態として、溶媒に溶解させたものあるいはエマルションとして分散させたものが利用される。これらの合成樹脂のうち、酢酸ビニル樹脂あるいはアクリル樹脂をモノマー成分の主成分にして重合されたもの、エチレン−酢ビ樹脂、酢ビ−アクリル樹脂、バーサチック酸ビニル樹脂は、樹脂骨格側鎖にC−O結合を有し、断熱層の形成を他の樹脂に比べ容易にすることができる。
【0018】
前記多価アルコールは、後述する難燃性発泡剤と脱水縮合し、難燃性発泡剤及び含窒素発泡剤の分解ガスによって発泡した炭化層を形成し、該炭化層が断熱性を有する断熱層となる。前記多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、トリエチレングリコール、ソルビトール、レゾルシノール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどが使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜選択して用いてもよい。これらの多価アルコールうち、後述の難燃性発泡剤とほぼ同一温度において分解して、発泡層を形成させるためには、分解温度が260℃前後の温度であるペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトールを用いることが好ましい。
【0019】
前記含窒素発泡剤は、火災の熱で加熱された際に分解されて分解ガスを発生して断熱層を発泡させる。前記含窒素発泡剤としては、例えば、ジシアンジアミド、アゾジカルボンアミド、メラミンおよびその誘導体、尿素、グアニジン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどが使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜選択して用いてもよい。これらの含窒素発泡剤うち、分解温度が370℃にあるメラミンおよびその誘導体を用いれば、後述の難燃性発泡剤の分解温度と異なる温度にて再び発泡倍率を増加させることができ、発泡形耐火塗料を二段階で発泡させることができる。
【0020】
前記難燃性発泡剤は、前記多価アルコールと脱水縮合して、編み目構造の断熱層を形成する。難燃性発泡剤としては、分解温度が250℃〜300℃の範囲である多価アルコールとの脱水縮合反応を効率的に行うために、分解温度が多価アルコールの分解温度の範囲内にあるリン酸アンモニウム及び/又はポリリン酸アンモニウムを用いることが好ましい。なお、リン酸アンモニウム及び/又はポリリン酸アンモニウムの表面をメラミンなどでマイクロカプセル被覆した物は、耐水性向上の点からより好ましい。リン酸アンモニウム及び/又はポリリン酸アンモニウムは、加熱によって275℃前後の温度において分解し、アンモニアガスを発生させると同時に、吸熱反応によって材料温度を引き下げる機能がある。また、多価アルコールや合成樹脂との結合により難燃効果をもたらし、編み目構造の断熱層を形成する。
【0021】
前記人造無機繊維は、本発明においては、ロックウール、スラグウール、グラスウール、セラミックファイバー、シリカ繊維などの人造鉱物繊維のことを言う。なお、前記セラミックファイバーとは、アルミナとシリカを主成分とした人造無機繊維の総称である。
【0022】
前記人造無機繊維は、火災の熱に晒されてもその形状が維持されるため、前記発泡形耐火塗料に前記人造無機繊維を配合することで、該発泡形耐火塗料は、塗布後の乾燥時に塗膜にひび割れが発生し難く、発泡形耐火塗料により形成された塗膜が加熱された場合に該塗膜が発泡して形成される断熱層にひび割れが発生し難く、また、断熱層が剥落し難いものとなる。発泡形耐火塗料は1〜5mm程度の厚みで施工される場合が多く、塗装された発泡形耐火塗料の表層と内部の乾燥速度の違いなどを原因として乾燥時に塗膜にひび割れが生じ易いが、人造無機繊維を配合することでひび割れの発生を抑制することができる。また、従来の発泡形耐火塗料には、発泡形耐火塗料により形成された塗膜が加熱された場合に塗膜が発泡して形成される断熱層に、ひび割れが発生し易く、また断熱層の剥落が生じ易いといった問題があったが、人造無機繊維を配合することでこれらの現象を抑制することができる。
【0023】
また、前記発泡形耐火塗料に前記人造無機繊維を配合することで、発泡形耐火塗料により形成された塗膜の発泡倍率が安定したものとなる。人造無機繊維を配合しない発泡形耐火塗料により形成された塗膜は、発泡倍率が大きくなり、また、同一の塗膜内においても、施工部位の違い、加熱されたときの塗膜の温度の違い、塗膜の微妙な厚みの違いなどによって発泡倍率にばらつきが生じ易く、この発泡倍率のばらつきが断熱層のひび割れや剥落の原因にもなる。発泡形耐火塗料に人造無機繊維を配合すれば、発泡形耐火塗料により形成された塗膜が発泡し過ぎるのを抑えて発泡倍率のばらつきを減らすことができるため、断熱層のひび割れや剥落や剥落が生じ難くなる。なお、人造無機繊維の形状、大きさ、添加量を調整することにより、前記塗膜の発泡倍率を調整することができる。
【0024】
前記人造鉱物繊維のなかでも、耐熱性の観点からは、アルミナ(Al)成分を含む繊維であるロックウール、セラミックファイバーが望しい。前記セラミックファイバーの代表的なものとして、リフラクトリーセラミックファイバー(以下、RCFと言う)や、アルミナファイバー(以下、AFと言う)がある。アルミナ成分を含む繊維の中でも前記RCF及びAFは、アルミナ成分の含有率が繊維の全質量中に30%以上であることによって特に耐熱性に優れており、更に、前記AFは、アルミナ成分の含有率が繊維の全質量中に70%以上であことによって各段に耐熱性に優れている。
【0025】
前記ロックウールとは、高炉スラグや玄武岩、その他の天然岩石などを主原料とする人造鉱物繊維であり、一般的な組成は、繊維の全質量に対して、SiOが35〜45%、Alが10〜20%、Feが0〜3%、MgOが4〜8%、CaOが30〜40%、MnOが0〜1%である。ただし、原料の組み合わせによっては前記組成と異なることもある。
【0026】
前記RCFとは、アルミナとシリカを主成分とした人造無機繊維であり、アルミナ及びシリカの含有率は、繊維の全質量に対して、SiOが40〜60%、Alが30〜60%である。
【0027】
前記AFとは、アルミナとシリカを主成分とした人造無機繊維であり、アルミナ及びシリカの含有率は、繊維の全質量に対して、SiOが3〜28%、Alが72〜97%である。
【0028】
また、前記人造鉱物繊維のなかでも、人の健康に問題のない繊維と言う観点からは、該人造鉱物繊維が生体溶解性を有する繊維であることが望ましい。生体溶解性を有する繊維を用いれば、繊維が人体に入り込んだとしても、該繊維は体内で溶解されるため、繊維が人体に入り込むことで健康を害する恐れが少ない。繊維が人体に入り込むことによる健康被害は、近年、石綿等で問題となっており、微細な無機繊維を吸引すると、該繊維が鼻腔や口腔を通り抜けて肺胞に到達して肺胞細胞に炎症を起すことや、DNA細胞の変質や癌細胞が誘発される可能性が指摘されている。
【0029】
石綿とは、天然鉱物繊維であり、その主たる化学組成は酸化珪素と酸化マグネシウムである。健康被害をもたらす石綿繊維は、巾が3μm未満、アスペクト比が3以上のものと言われている。石綿繊維のなかでも、繊維巾0.25μm付近で長さ8μm以上のものが腫瘍発生率を高くする傾向がり、巾0.15μm以上で長さ10μm以上のものが肺ガン発生率を高くする傾向がり、巾0.1μm付近で長さ5〜10μmのものが中皮種発生率を高くする傾向があると言われている。
【0030】
前記生体溶解性を有する繊維に関する技術としては、例えば、以下の文献に示された技術がある。
【0031】
特開2007−63078号公報には、含有率60〜80%のSiO、含有率5〜20%のMgO、含有率5〜30%のCaO、含有率0.5〜5%のAl及び含有率0.1〜5%のBaOを含有する無機繊維に関する技術が記載されている。また、段落0018には、MgO、CaOは無機繊維に生体溶解性を付与する成分であることが記載されている。
【0032】
特表平10−512232号公報には、含有率約65〜約86%のシリカ、含有率約14〜約35%のマグネシア、含有率0〜約11%のジルコニアを必須成分とする耐火性ガラス繊維に関する技術が記載されている。
【0033】
特表2003−509320号公報には、各成分の含有率が、SiO2>64.25% CaO>18% MgO<17%であって、モル%でのMgOの量は、モル%でのCaOの量よりも多く、また規定のSiO2過剰は21.8モル%以下である繊維に関する技術が記載されている。
【0034】
特許第3786424号公報には、各成分の含有率が、SiO2 32〜42%、Al23 18〜28%、CaO 10〜30%、MgO 5〜20%、FeO 5%以上10%未満、Na2O+K2O 0〜7%、TiO2 0.5〜4%、他の素成分 0%以上8%未満、SiO2+Al23 68%未満である人造ガラス質繊維に関する技術が記載されている。
【0035】
本願出願時において市販されている生体溶解性の繊維としては、新日化サーマルセラミックス社製の商品名「スーパーウール」、ラピナスファイバー社製の商品名「Lapinus」、ニチアス社製の商品名「Fineflex」などが存在する。
【0036】
前記人造無機繊維の発泡形耐火塗料中における配合量は、発泡形耐火塗料の固形分100%に対して0.5〜6%であることが好ましく、1〜4%であることがより好ましい。前記配合量が小さ過ぎる場合には、発泡形耐火塗料に人造無機繊維を添加することによる、発泡形耐火塗料の塗布後の乾燥時における塗膜のひび割れ防止効果が十分ではなく、また、発泡形耐火塗料の塗膜が加熱された場合に該塗膜が発泡して形成される断熱層にひび割れが発生し易くなる。逆に、前記配合量が大き過ぎる場合には、塗膜の発泡倍率が小さくなり過ぎるために、断熱層が断熱性の不十分なものになり易い。よって、人造無機繊維の配合量が前記範囲にある発泡形耐火塗料は、塗布後の乾燥時に塗膜にひび割れが発生し難くなり、更に、発泡形耐火塗料の塗膜が加熱されて形成される断熱層にひび割れが発生し難く、前記断熱層は十分な断熱性を備えたものとなる。
【0037】
また、発泡形耐火塗料に配合する前記人造無機繊維は、該人造無機繊維の繊維長の平均が120〜600μmであるものが好ましく、繊維長の平均が200〜500μmであるものがより好ましい。前記繊維長が短すぎると、発泡形耐火塗料の塗布後の乾燥時における塗膜のひび割れ防止効果が小さく、発泡形耐火塗料により形成された塗膜にひび割れが発生する場合がある。逆に、前記繊維長が長すぎると、発泡形耐火塗料内で人造無機繊維が絡まる現象が生じ易く、人造無機繊維が絡まることによって繊維が凝集するために、人造無機繊維の均一分散が難しくなる。発泡形耐火塗料内で人造無機繊維が均一に分散されていないと、発泡形耐火塗料により形成された塗膜に人造無機繊維が偏って存在することとなるため、該塗膜が加熱された場合に、該塗膜の発泡倍率に同一塗膜内でのばらつきが生じ易い。このため、前記塗膜が発泡して形成される断熱層にひび割れが発生し易く、また断熱層の剥落が生じ易くなる。また、前記発泡形耐火塗料をエアレス塗装機にて塗装する場合に、繊維長が長すぎると、前期塗装機のノズルに繊維が詰まり、塗装効率を悪くすることがある。よって、人造無機繊維の繊維長が前記範囲にある繊維を用いた発泡形耐火塗料は、塗布後の乾燥時に塗膜にひび割れが発生し難く、発泡形耐火塗料の塗膜が加熱されて形成される断熱層にひび割れが発生し難く、また、断熱層が剥落し難いものとなる。
【0038】
また、前記人造無機繊維は、繊維径の平均が1〜7μmであるものが好ましく、繊維径の平均が2〜6μmであるものがより好ましい。前記繊維径が小さ過ぎる場合には、発泡形耐火塗料に人造無機繊維を添加することによる発泡形耐火塗料の塗布後の乾燥時における塗膜のひび割れ防止効果が十分ではなく、また、発泡形耐火塗料により形成された塗膜が加熱された場合に該塗膜が発泡して形成される断熱層にひび割れが発生し易くなる。逆に、前記繊維径が大き過ぎる場合には、塗膜の発泡倍率が小さくなり過ぎるために、断熱層が断熱性の不十分なものになり易い。よって、人造無機繊維は、繊維径の平均が前記範囲にある人造無機繊維を用いた発泡形耐火塗料は、塗布後の乾燥時に塗膜にひび割れが発生し難くなり、更に、発泡形耐火塗料の塗膜が加熱されて形成される断熱層にひび割れが発生し難く、前記断熱層は十分な断熱性を備えたものとなる。
【0039】
前記発泡耐火塗料が含有する二酸化チタンは、加熱時の多価アルコールと難燃性発泡剤との結合反応において触媒として作用して結合反応を促進する。よって、発泡形耐火塗料が二酸化チタンを含有することによって、該発泡形耐火塗料により形成された塗膜は、火災の熱によって加熱された場合には、二酸化チタンを含有しない発泡形耐火塗料に比べて低温で形状保持性の高い断熱層を形成させる。
【0040】
また、前記発泡形耐火塗料には前記した成分以外の添加剤を添加することもできる。添加剤としては、従来の塗料又は耐火塗料に含有される成分が、この発明の効果を損なわない範囲内において添加することができ、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカなどの充填材、ハロゲン系、リン系、三酸化アンチモン系などの難燃剤、及び消泡剤、分散剤、湿潤剤などの界面活性剤、造膜助剤、防凍剤などの溶剤、着色顔料、体質顔料、金属石鹸、安定剤、粘度及び粘性調整のための増粘剤、防腐剤、防黴剤などを添加することができる。
【0041】
上記した合成樹脂、多価アルコール、含窒素発泡剤、及び難燃性発泡剤の配合割合は、本発明の発泡性耐火塗料においては、多価アルコールの配合量を100質量部としたときに、合成樹脂が固形分換算で200〜500質量部、含窒素発泡剤80〜150質量部、難燃性発泡剤280〜450質量部であることが好ましい。各成分の配合割合が上記の範囲であるとき、耐火性能に優れた発泡性耐火塗料を得ることができる。更に、該発泡性耐火塗料に上記人造鉱物繊維を配合することで、より耐火性能に優れた発泡性耐火塗料を得ることができる。また、二酸化チタンを配合する場合は、その配合割合は、多価アルコールの配合量を100質量部としたときに、100〜300質量部であることが好ましい。二酸化チタンの配合量が少なすぎると触媒としての効果が十分ではなく、逆に多すぎると断熱層が脆弱なものになってしまう。
【実施例】
【0042】
(実施例1)本発明者は、合成樹脂としてのエチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション(固形分50%)、多価アルコールとしてのペンタエリスリトール、含窒素発泡剤としてのメラミン、難燃性発泡剤としてのポリリン酸アンモニウム、人造無機繊維としてのロックウール(平均繊維長300μm、平均繊維径3.5μm)、二酸化チタン、配合水、及び前記成分以外の添加剤(分散剤、湿潤剤、消泡剤、及び増粘剤)を以下に示す配合割合で混合攪拌して発泡形耐火塗料を作製した。
エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション 600質量部
ペンタエリスリトール 100質量部
メラミン 100質量部
ポリリン酸アンモニウム 300質量部
ロックウール 30質量部
二酸化チタン 150質量部
配合水 適宜
添加剤 20質量部
【0043】
(比較例1)また、前記実施例1に示す発泡形耐火塗料の配合において、人造無機繊維の配合割合を0質量部とした発泡形耐火塗料を作製して比較例1とした。なお、人造無機繊維以外の配合物の種類及び配合割合は実施例1の配合から変更していない。
【0044】
(実施例2〜13及び比較例2〜9)また、前記実施例1に示す発泡形耐火塗料の配合において、人造無機繊維の種類及び配合割合を変更して、発泡形耐火塗料を作製して、実施例2〜13及び比較例2〜9とした。なお、人造無機繊維以外の配合物の種類及び配合割合は実施例1の配合から変更していない。
【0045】
実施例2〜13及び比較例2〜9に用いた人造無機繊維、及び該人造無機繊維の発泡形耐火塗料の固形分100%に対する配合量(%)を表1に示す。なお、表1中の生体溶解性ロックウールは、平均繊維長230μm、平均繊維径5.5μmである。
【0046】
表1

【0047】
次に、前記実施例1〜13及び比較例1〜9の発泡形耐火塗料について以下の方法で試験体を作製した。
ブラスト処理したJIS G 3466:2006に規定するSTKR400正方形一般構造用角形鋼管(縦300mm横300mm厚み9mm)を、長さ1000mmに切断したものを基材として、該角形鋼管の外側の表面全面に前記実施例1〜13及び比較例1〜9の各発泡形耐火塗料をスプレー((株)明治機械製作所製、HS2−G型スプレーガン)で乾燥厚みが4mmになるように塗装(4工程に分けて塗装。各工程で1mmずつ塗装)し、温度23℃、湿度50%の環境下で21日間養生したものを試験体とした。なお、発泡形耐火塗料を塗装した2日後に試験体を観察して、発泡形耐火塗料にひび割れが発生している試験体は、塗装されている発泡形耐火塗料と同じ材料をひび割れに充填して、ひび割れを塞いだ。
【0048】
次に、前記各試験体について以下の方法で加熱試験を行った。
まず、図1に示すように試験体の基材である角形鋼管の内側にK熱電対を取り付けた後、前記試験体を基材の切断面を下にして耐火試験炉内に取り付けた。なお、K熱電対は、試験体の底部から試験体の高さの1/3の高さ、及び2/3の高さの位置にそれぞれ8箇所ずつ、即ち角形鋼管内側の角部4箇所と隣り合う角部の中心4箇所とに取り付けた。
試験体を取り付けた後、耐火試験炉を稼動して、ISO834の標準加熱曲線に従って加熱を行い、同時にK熱電対によって鋼材の裏面温度を測定した。
【0049】
前記した実施例1〜13及び比較例1〜9の発泡形耐火塗料を用いての試験体作製及び加熱試験において、以下の点を評価した。
【0050】
まず、試験体作製において、各発泡形耐火塗料の塗装作業性の評価を行った。評価の結果を表2に示す。なお、表2には、塗装作業性が良好であったものは「○」と記載する。
【0051】
また、試験体作製においては、各発泡形耐火塗料の塗装後の乾燥時及び養生時におけるひび割れの発生の有無を評価した。この評価を行うために、各発泡形耐火塗料を塗装して乾燥させた後、試験体を目視で観察して、ひび割れが発生の有無を確認した。前記確認は塗装工程毎に、各試験体について4回ずつ行った。評価の結果を表3に示す。なお、表3には、試験体にひび割れが発生しなかったものを「○」、4回工程中1回でもひび割れが発生したものを「×」と記載する。
【0052】
次に、加熱試験においては、試験体の16箇所に取り付けたK熱電対を用いて鋼材内側の温度を測定して、全測定箇所の温度を平均した温度が500℃に達するまでの時間(分)を計測した。計測の結果を表4に示す。
【0053】
また、加熱試験終了後の試験体における断熱層のひび割れ及び剥落の有無を評価した。この評価を行うために、試験終了後の試験体を目視によって観察して、断熱層のひび割れ発生の有無及び断熱層の剥落の有無を確認した。評価の結果を表5に示す。なお、表5には、断熱層にひび割れ及び剥落が発生しなかったものは「○」と記載する。
【0054】
表2

【0055】
表3

【0056】
表4

【0057】
表5

【0058】
試験の結果、人造無機繊維を0.5〜6%含有した発泡形耐火塗料は耐火性能に優れたものであった。また、人造無機繊維を1〜4%含有した発泡形耐火塗料は特に耐火性能に優れたものであった。
【0059】
また、添加する人造無機繊維の平均繊維長は120〜600μm程度であれば、発泡形耐火塗料の耐火性性能を向上させることができ、200〜500μm程度であれば、発泡形耐火塗料の耐火性性能が特に向上した。
【0060】
また、添加する人造無機繊維の平均繊維径は、1〜7μm程度であれば、発泡形耐火塗料の耐火性性能を向上させることができた。
【0061】
また、表2〜5には記載していないが、人造無機繊維の平均繊維径が大き過ぎた場合には発泡形耐火塗料塗膜の発泡倍率が小さくなる傾向があった。また、人造無機繊維の添加量が多過ぎた場合にも発泡形耐火塗料塗膜の発泡倍率が小さくなる傾向があった。そして、前記発泡倍率が小さい場合には、前記加熱試験において、全測定箇所の温度を平均した温度が500℃に達するまでの時間(分)が短くなる傾向があった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】K熱電対を取り付けた試験体を上方から観察した模式図(a)、及び該試験体をA−A´で切断した断面模式図(b)
【符号の説明】
【0063】
1 角形鋼管
2 発泡形耐火塗料により形成された塗膜
3 K熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール、含窒素発泡剤、合成樹脂、難燃性発泡剤、及び人造無機繊維を含有する発泡形耐火塗料であって、前記人造無機繊維の平均繊維長が120〜600μmあり、且つ前記人造無機繊維が前記発泡形耐火塗料の固形分中に0.5〜6質量%含有されていることを特徴とする発泡形耐火塗料 。
【請求項2】
前記人造無機繊維の平均繊維径が1〜7μmであることを特徴とする請求項1記載の耐火塗料。
【請求項3】
前記人造無機繊維のアルミナ含有率が30質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火塗料。
【請求項4】
前記人造無機繊維が生体溶解性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火塗料。



【図1】
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【公開番号】特開2010−138217(P2010−138217A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313075(P2008−313075)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】