説明

発泡成形機およびそれに装着される発泡成形用金型の製造方法

【課題】使用蒸気などエネルギ効率の一層の向上と、発泡成形用金型の装着取外作業の簡便化を可能とし、かつ、発泡成形機および成形用金型のコストダウン。
【解決手段】発泡成形機は、凹金型部材31と凹側背面部材33とにより、および、凸金型部材32と凸側背面部材34とにより、それぞれ囲まれ、かつ前記金型部材の成形面31m、32mに沿って配置され、独立した凹側個別用役チャンバ35、凸側個別用役チャンバ36を形成するよう、各金型部材とその背面部材との外周部(金型部材外周部31a、32aと背面部材同33a、34a)を連接して一体に成形された凹側一体金型30Aと凸側一体金型30Bとを装着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡スチロールなど熱可塑性発泡樹脂成形品を製造するための発泡成形機およびそれに装着される発泡成形用金型の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡スチロールなど発泡樹脂成形品を発泡成形するための成形金型として、特許文献(1)、(2)などに記載のものが知られている。
図12を参照して概説すると、外周をフレーム13、14に固定し、対向配置される一対の金型取付プレート13aに凹金型部材11を、金型取付プレート13aに凸金型部材12を配設し、閉型時に成形キャビティ1を形成するようにするとともに、フレーム13、バックプレート13b、凹金型部材11、金型取付プレート13aによって囲まれる凸側用役チャンバ15と、同じように、フレーム14、バックプレート14b、凸金型部材12、金型取付プレート14aによって囲まれる凹側用役チャンバ16とが形成されている。
【0003】
これら金型を用いた発泡成形方法は、充填ノズル1aを通じて成形キャビティ1内に発泡ビーズを充填し、前記凸側および凹側の用役チャンバ15、16に、通気口17a、18aを通じて加熱蒸気を導入して、凹金型部材11と凸金型部材12を加熱するとともに、ベントホール11a、12aを通じて成形キャビティ1内にも送入して内部の発泡ビーズを発泡、融着させ、成形体を形成させた後、加熱蒸気に代えて個別用役チャンバ15、16に冷却水を導入して、金型部材を介して成形キャビティ1内の発泡成形体を冷却し、次いで離型することにより、発泡樹脂製品として取り出すことができる。
【0004】
このような金型を用いた発泡成形方法では、加熱蒸気は凹凸金型部材11、12を加熱する以外に、構造材である用役チャンバ15、16を構成するフレーム13、14、バックプレート13b、14b、金型取付プレート13a、14bも加熱するのに消費され、同様に、冷却水はこれらの冷却にも消費されることになる。このような構造材の加熱、冷却は発泡成形体の加熱冷却には関りがないことから、大きなエネルギロスが発生していることとなっている。
【0005】
この事例では、金型部材11、12には、連通孔からなるベントホール11a、12aが多数設けられていて、キャビティ1に充填された発泡ビーズに加熱蒸気などを導入して接触させることができるよう配慮されている。また、この特許文献1には、それらベントホール11a、12aを省略した構造も開示しているが、加熱蒸気や冷却水のエネルギ効率を特に改善するものではなかった。
【0006】
そして、工場で用いられる発泡スチロール魚箱用生産機の場合、1成形サイクルで4〜6個の成形体が得られるよう、1組の金型取付プレート13a、14aには該当数組の凹凸金型部材が配設されているのが通例であり、このような場合には、入力エネルギの数パーセントが発泡ビーズの加熱、冷却に用いられるだけであって、大部分は無駄になっていることが知られている。
【0007】
さらに、このような1成形サイクル、多数個同時成形ができる金型を用いた場合、それぞれの金型部材の間で製品の品質にばらつきが生じるという問題があった。一個の用役チャンバから加熱蒸気や冷却水などの用役の供給が均等に行われにくい、同様に加圧、減圧などが均等に作用しないのがその理由と考えられたが、その品質のばらつきを防止する確実な手段がなかった。
【0008】
このようなエネルギ効率の問題に対応する目的で、特許文献(2)に開示されている断熱被覆金型が提案されている。すなわち、如上の金型装置において、用役チャンバを形成する金型取付プレート、フレーム、バックプレートなどの内面に中空シリカ粒子を分散させたシリコーン樹脂からなる高耐久性の断熱被覆層を設けて、加熱ロス、冷却ロスを軽減しようとするものである。
【0009】
この場合は、金型部材以外の金属構成材(金型取付プレート、フレーム、バックプレートなど)への伝熱が抑制されるので相応のエネルギ効率向上効果が認められた。しかしながら、用役チャンバの容積自体は従来と変化しないので、相応量の供給が必要であって、その効率向上効果は約20%程度に止まらざるを得なかった。
【0010】
また、この特許文献(2)の場合は、生産機用金型として1成形サイクルで6個の成形体を得ることができる構造を開示しているが、このような場合には、多数個生産用金型を構成する複数の凹凸金型部材の、加熱、冷却などの成形条件を全体として平均的に制御することはできるが、個々の凹凸金型部材に応じた個別的制御はできないので、前記したような品質のばらつきを抑制できるものではなかった。
【0011】
このような多数個生産用金型を装着した発泡成形機において、複数の凹凸金型部材の加熱、冷却などの成形条件を個別に制御することができ、かつエネルギ効率を改善できる手法を本発明の出願人は特許文献(3)に提案している。
特許文献(3)で開示した発泡成形用金型は、凹および凸金型部材の背面に間隔をもってケーシングを配設して、それらに囲まれた凹および個別用役チャンバを形成したものであり、成形機のフレーム、バックプレートなどに基づく熱ロスを削減することができる金型である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
(1)特開2000−79931号公報:図1、図2など
(2)特開2004−148779号公報:特許請求の範囲、実施例、図1、図4など
(3)特願2008−161884 出願明細書

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の技術的背景に鑑み実現されたものであり、本発明の出願人が提案した特許文献(3)の技術の更なる改善を意図したものであり、使用蒸気などのエネルギ効率の一層の向上と、発泡成形用金型の装着取外作業の簡便化を可能とし、かつ、油圧装置など動力系の小型化による発泡成形機自体のコストダウン、さらには発泡成形用金型自体のコストダウンも可能とした発泡成形機およびそれに装着される発泡成形用金型の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の問題は、開閉可能に配設された一対の凸金型部材と凹金型部材とを装着し、その凸金型部材と凹金型部材とを閉型したときに形成される成形キャビティに熱可塑性発泡用樹脂原料を充填し、加熱して発泡させて、発泡成形体を形成するようにした発泡成形機であって、その凸金型部材および凹金型部材と、それぞれの背面に間隔を設けて配設された背面部材とが、各金型部材とその背面部材との外周部において一体に連接、形成されてなる凸側一体金型と凹側一体金型とを開閉可能に配設して装着し、各金型部材とその背面部材とによって囲まれた空間をそれぞれの用役チャンバとして用いるようにしたことを特徴とする本発明の発泡成形機によって、解決することができる。
【0015】
さらに、本発明の発泡成形機は以下の各形態に好ましく具体化される。
(1)前記用役チャンバにおいて、凸金型部材およびまたは凹金型部材の背面とそれぞれの背面部材との間に補強部材を一体化して配置した凸側一体金型と凹側一体金型を装着した形態の発泡成形機。
(2)前記補強部材が仕切り壁体であって、用役チャンバを区切って複数の空間を配設した凸側一体金型と凹側一体金型を装着した形態の発泡成形機。
【0016】
(3)前記凸金型部材および凹金型部材とそれぞれの背面部材とを一体に連接する外周部の対向部位に、閉型時に形成される成形キャビティを外部から離隔するシーリング面を同一平面上に設けた凸側一体金型と凹側一体金型を装着した形態の発泡成形機。
【0017】
(4)前記各用役チャンバから成形面に通じるベントホールが配置されている凸側一体金型と凹側一体金型を装着した形態の発泡成形機。
(5)前記用役チャンバを貫通して成形キャビティと外部とを接続可能にする用役配管が配置されている凸側一体金型と凹側一体金型を装着した形態の発泡成形機。
【0018】
(6)前記用役チャンバを貫通して成形キャビティと外部とを接続可能にする用役配管が前記補強部材を通じて、配置されている凸側一体金型と凹側一体金型を装着した形態の発泡成形機。
(7)前記背面部材の外面に断熱層を配設した凸側一体金型と凹側一体金型を装着した形態の発泡成形機。
(8)前記凸側一体金型と凹側一体金型を、発泡成形機の躯体側の取付け部材に断熱材を介して装着した形態の発泡成形機。
【0019】
また、前記の問題は、前記した発泡成形機に装着される発泡成形用金型の製造方法であって、1)凸金型部材および凹金型部材とその背面部材とを組み合せた凸側一体金型および凹側一体金型と同形の模型を消失材で形成し、2)その模型の内外に鋳造砂を充填し、その鋳物砂を減圧硬化させ、3)所定のアルミニウム合金溶湯を注入して造形し、鋳込み砂を除去し、4)鋳造品を取り出し、5)機械加工を経て、凸側一体金型および凹側一体金型を製造することを特徴とする本発明の発泡成形用金型の製造方法によって解決される。
【0020】
本発明では、用語「用役」を以下の意味に用いている。
用役とは、原料である発泡ビーズの成形過程で加熱、融着、冷却、脱水などを行うための、加熱蒸気、冷却水の供給の他、減圧ポンプによる減圧操作、加圧空気により加圧操作、ドレン排出などの運転要素を意味し、用役チャンバまたは用役配管は、これら運転要素の供給、排出のためのチャンバまたは接続管を意味するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発泡成形機は、その凸金型部材と凹金型部材のそれぞれに背面部材を配設し、その外周部を一体に連接、形成して構成した凸側一体金型と凹側一体金型とを開閉可能に配設して装着したものであり、金型部材と背面部材間の空間を各用役チャンバとしているので、金型自体をコンパクト化でき、成形機への脱着操作が簡略化され極めて容易になる他、油圧装置など動力系の小型化による発泡成形機自体のコストダウンにも寄与することができる。
【0022】
また、従来比、用役チャンバの容積を最小化でき、成形操作に際して加熱、冷却時に成形品自体には関係のないフレームやバックプレートなどの構造部材などの部材を加熱、冷却することがないための熱ロスが少なく、エネルギ効率の更なる改善が可能となる。その結果、使用加熱蒸気や冷却水などの用役コストの節減とともに、成形サイクル時間の短縮も可能となるなどの効果が得られる。
【0023】
さらに、用役チャンバを区切って複数の空間から構成した場合は、それぞれの空間を独立した用役チャンバとして機能させることが可能となり、成形キャビティに対してより最適な加熱・冷却操作などを行い、発泡成形体の品質を部位ごとに制御できるという作用効果が得られる。
【0024】
本発明の発泡成形用金型の製造方法によれば、本発明の発泡成形用金型をいわゆる消失モデル鋳造法で製造できるので、従来の組立て構造の金型に比較して工数、材料費、製作時間が少なく製造可能となり、大幅なコストダウンが期待できる。また、本発明によれば、用役チャンバの容積を最小に設定できるので、より熱効率の高い金型を得ることができる。
よって本発明は、従来の問題点を解消した発泡成形機およびそれに用いる発泡成形用金型の製造方法として、工業的価値はきわめて大なるものがある。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に使用される発泡成形用金型の要部断面図(型開き時)。
【図2】本発明に使用される発泡成形用金型の要部断面図(型閉じ時)。
【図3】本発明の発泡成形機の要部断面図(型開き時)。
【図4】本発明の発泡成形機の要部断面図(型閉じ時)。
【図5】本発明に使用される発泡成形用金型の製造工程1、2を示す要部断面図。
【図6】同じく発泡成形用金型の製造工程3を示す要部断面図。
【図7】同じく発泡成形用金型の製造工程4を示す要部断面図。
【図8】同じく発泡成形用金型の製造工程5を示す要部断面図。
【図9】同じく発泡成形用金型の装着状態を示す要部断面図。
【図10】本発明の発泡成形機内部の用役配管を示す要部断面図。
【図11】本発明に使用される他の形態の発泡成形用金型の要部断面図(型閉じ時)。
【図12】従来の発泡成形用金型の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の発泡成形機に特徴的に用いられる発泡成形用金型の形態について、図1〜4を参照しながら説明する。
(発泡成形用金型)
本発明における発泡成形用金型の基本的構造は、先ず、開閉可能に配設され、得られる発泡成形体に接する成形面31m、32mを有する一対の凹金型部材31と凸金型部材32とを装着し、その凹金型部材31と凸金型部材32とを閉型したときに、前記成形面31m、32mで形成される成形キャビティ1に発泡用樹脂原料を充填し、加熱して発泡させて、成形キャビティ1の立体形状をなす発泡成形体を形成するようにした発泡成形機を前提としている。
【0027】
そして、この発泡成形用金型は、前記凹金型部材31および凸金型部材32の背面に略一定の間隔を設けて、金型部材31、32の背面形状に倣った対向面形状の凹側背面部材33、凸側背面部材34が配置されている。この凹金型部材31および凸金型部材32の部分は、成形面31m、32mを有する略板状立体構造物であり、この凹側背面部材33および凸側背面部材34の部分も同様に略板状立体構造物で構成される。
【0028】
そして、その特徴は、前記凹金型部材31と凹側背面部材33とにより、および、凸金型部材32と凸側背面部材34とにより、それぞれ囲まれ、かつ前記金型部材の成形面31m、32mに沿って設けられた、独立した凹側個別用役チャンバ35、凸側個別用役チャンバ36を形成するよう、各金型部材とその背面部材との外周部(凹金型部材外周部31aと凹側背面部材外周部33a、および凸金型部材外周部32aと凸側背面部材外周部34a)を連接して一体に形成された凹側一体金型30Aと凸側一体金型30Bとを構成している点にある。
【0029】
この凹側一体金型30Aを凹金型部材31と凹側背面部材33から一体に形成するには、それぞれの凹金型部材外周部31aと凹側背面部材同33aとを溶接することで一体化することもできるが、鋳造方法によって両者を同時に一体に形成するのが最も好ましい。凸側一体金型30Bの場合も同様に成形されるのがよい。
かくして、これら凹側一体金型30Aと凸側一体金型30Bとを閉じたときには、図2に示すよう、得られる発泡成形体に接するそれぞれの成形面31m、32mによって囲まれた成形キャビティ1が形成されるのである。
【0030】
(補強部材)
なお、前記凹金型部材31と背面部材33との間、凸金型部材32と背面部材34との間に補強部材37、38を一体化して配置すると、各金型部材と背面部材を薄肉化でき資材コストが低減できる。この補強部材37、38の形状は、直径10〜45mm程度の柱状、幅5mm〜25mm程度の仕切り壁状などの形態でもよいが、前記した凹側一体金型30A、凸側一体金型30Bの一体成形に際して同時に成形するのが好ましい。
【0031】
さらに、この補強部材を仕切り壁体で形成して、補強の目的の他、前記した単数の用役チャンバを区画して、複数個の空間から構成する目的に用いることも好ましい。
図11に例示すると、凹側一体金型30Aでは、用役チャンバを複数の仕切り壁体71によって、独立して区画された複数の空間71a〜71gが成形キャビティ1に沿って設けられる。また、凸側一体金型30Bの方も、複数の仕切り壁体72によって、独立して区画された空間72a〜72eが成形キャビティ1に沿って同様に設けられる。
【0032】
このように、用役チャンバを区切って複数の空間71a〜71g、72a〜72eから構成した場合は、それぞれの空間に個別の用役配管(図示せず)を配設することにより、それぞれを独立した小型の用役チャンバとして機能させることが可能となる。
かくして、図1、2にような両側1対の単数の用役チャンバを設けた構造では、加熱・冷却操作で成形キャビティ1の部位によって変化させることはできなかったが、本発明の場合には、複数の小型の用役チャンバを個別に操作することによって、成形キャビティ1の部位に対応したより最適な加熱・冷却操作などを行うことができるようになる。従って、得られる発泡成形体の部位ごとに成形操作を細かく制御でき、最適の品質が得られるという作用効果がある。
【0033】
(シーリング面)
前記凸金型部材32と背面部材34とを一体に連接する外周部分と、凹金型部材31と背面部材33とを一体に連接する外周部分とが対向する部位に、閉型時に形成される成形キャビティ1を外部から離隔するためのシーリング面32b、31bを、同一平面上に設けるのがよい。そして、シーリング面32b、31bに適宜なシーリング用パッキンを配置することにより、成形キャビティ1を外部から確実に離隔することができる。また、シーリング面32b、31bが、同一平面上に設けられているので、製作時に精度の良い加工が容易に行える利点がある。
【0034】
(断熱処理)
前記凸側一体金型30Bと凹側一体金型30Aとの背面部材34、33の外面に適宜な断熱層(図示せず)、例えば、ガラス発泡粒子を耐熱接着剤でコートするなどの無機質断熱層を配設すると、金型からの放熱が抑えられ、また外部からの熱的影響を受けにくくなるので、発泡成形時の温度制御が容易になる利点が得られる。
【0035】
(発泡成形用金型の発泡成形機への装着構造)
次に、発泡成形用金型の発泡成形機への装着構造を図3(型開き状態)、4(型閉め状態)を参照して説明する。
図3の例示では、凹側一体金型30Aと凸側一体金型30Bとは、それぞれ成形機の背面プレート41、42から伸びる凹金型側サポート45、凸金型側サポート46に、ボルトなど機械的結合手段によって、それぞれ固定されて対向位置に配置されているが、必ずしもこの形態に限定させることはなく、型閉め時の圧力が効果的に加えることができるよう、成形機本体の躯体構造に固定されることが必要である。
なお、この事例では、成形機の上下にガイドポスト43、44が設けられ、凹側一体金型30Aと凸側一体金型30Bに加わる型締め力を分散させ軽減する機能を担っている。
【0036】
また、凹側一体金型30Aと凸側一体金型30Bとを前記凹金型側サポート45、凸金型側サポート46に固定するに際して、合成樹脂などからなる断熱部材45a、46aを介在させると、金型側とサポート側とが熱的に遮断され、金型全体が成形機本体とは熱的に隔離されるから、金型側における成形操作時の熱処理に及ぼす外部からの悪影響が及ばないし、金型側の熱ロスも抑制できるので好ましい。
なお、型閉め時に、凹側一体金型30Aと凸側一体金型30Bとが位置ずれを起こさないようガイドする型ずれ防止コッター47、47が一方の金型に設けられている。
【0037】
(ベントホールおよび用役配管)
本発明では、前記凸側一体金型30Bと凹側一体金型30Aでは、それぞれの用役チャンバ36、35から成形キャビティ1内面(成形面32m、31m)に通じるベントホール(図示せず)を適宜な間隔、例えば、20〜30mmピッチで複数個配置し、蒸気、空気など用役の供給、排出に用いることができる。この形態では、従来から知られているベントホールを用いた発泡成形方法が採用可能である。
【0038】
さらに、本発明では、このような通気孔であるベントホールに代えて、または、それと併用して、外部から成型キャビティ1に直接、用役が供給できる配管構造を設ける形態に具体化できる。その1例を図10に示すと、凹側一体金型30Aを貫通して成型キャビティ1に達している成形キャビティ用役配管61、凸側一体金型30Bを貫通して成型キャビティ1に達している成形キャビティ用役配管62が配設されている。
【0039】
そして、この成形キャビティ用役配管61,62は、図10に示すように、各用役チャンバ35、36に設けられている補強部材37、38の内部を通路として配置されているが、接続方法はこれに限定されず、直接に成型キャビティ1に接続してもよい。この図10の例にように補強部材37、38を通路として利用した場合は、配管接続加工が容易になり、かつ、金型側の機械的強度の悪影響を与えないなどの利点が得られる。
なお、補強部材を用役配管の通路として利用する場合、その直径(幅員)は、蒸気、空気などの配管、成形制御用温度・圧力センサの場合は25mm、原料充填機、押し出しピン、面圧センサの場合は45mmが好ましい。
【0040】
この成形キャビティ用役配管61、62は、成形キャビティ1の大きささ、形状に応じて、適宜な本数が配置され得る(図10では2本の例を示している)が、通常、少なくとも50mmのピッチを持って配置され、成形キャビティ1内の成形条件に応じて制御された個別の加熱蒸気を供給、排出あるいは冷却水の供給、排出などが可能となるよう、用役チャンバ35、36から独立して構成されている。
【0041】
また、この用役チャンバ35、36には、図10に示すように、用役チャンバ用役配管63、64を設けて、用役チャンバ35、36に対しても、同様に加熱蒸気や冷却水など用役を制御しつつ適用できるよう装着されている。
これらの配置本数も図示に限定されるものではなく、また、制御目的にため、それら用役チャンバに直接、あるいはそれぞれの用役配管に個別の圧力、温度などの用役センサを配置し、個別に好ましく調整した用役の適用が行えるように構成している。
【0042】
さらに、図10に示すように、型閉め時、凹側一体金型30Aと凸側一体金型30Bとのシーリング個所に小型の第3チャンバ65を設けて、これに第3チャンバ用役配管66を接続する構成も採用される。この第3チャンバ65の機能は、発泡用原料の充填時に減圧操作し、成形キャビティ1の外周部分まで発泡用原料をむらなく充填させるように作用するものである。
【0043】
次に、本発明の発泡成型機の利点を要約する。
従来は、凹金型側では、図12に示すように、金型部材を加熱、冷却するための用役チャンバ15が、凹金型部材11、フレーム13、金型取り付けプレート13a、バックプレート13bで囲まれ構成されているに対して、本発明では、図2に示すようにそれに相当する用役チャンバ35は、凹金型部材31、凹側背面部材33で囲まれて構成される。凸金型側の従来の用役チャンバ16と本発明の用役チャンバ36との関係も同様である。
【0044】
かくして、従来の用役チャンバ15、16を取り囲む外周部材の総重量に対して、本発明の用役チャンバ35、36を取り囲む外周部材の総重量は約40%となり、その用役チャンバ容積も従来比10%以下に少なくなり、軽量かつ小容積となるから、本発明では、成形1サイクル当りの加熱蒸気および圧縮空気あるいは冷却水の使用量は従来比50%減に削減できるという利点が得られる。
【0045】
さらに、前記した凸側一体金型30Bと凹側一体金型30Aを用いるので、本発明出願人が先に提案した特許文献3記載の金型装置と比較しても、金型装置自体をよりコンパクト化でき、成形機への脱着操作の所要時間が少なくとも50%短縮できるなど、簡略化され容易になる利点がある。
【0046】
また、前記したように、凹側一体金型30Aと凸側一体金型30Bとを前記凹金型側サポート45、凸金型側サポート46に固定する場合は、型閉め時に各サポートの軸方向に応力をかけることができるので、金型装置1台当たりの型閉め時の加圧面積が約40%減となるから、油圧装置など動力系の小型化が可能となり発泡成形機自体のコストダウンにも寄与することができる。
【0047】
(発泡成形用金型の製造方法)
次に、このような発泡成形用金型の本発明の製造方法について、図5〜9を参照して説明する。本発明は、以下の順の工程からなる。1)鋳造用消失模型の製作組立て、2)鋳造砂の充填、硬化、3)溶湯の鋳込、4)鋳込み砂の除去、5)鋳造品の機械加工。
なお、ここでは、凹側一体金型30Aの場合を例として説明するが、凸側一体金型30Bの場合も全く同様なのでその説明は省略する。
【0048】
1)鋳造用消失模型の製作組立て(図5参照)
前記した凹金型部材31と凹側背面部材33との形状に相当する消失模型51、52を準備する(図5(a))。この場合、消失材料としては造形発泡スチロールが好ましい。この消失模型51、52を組み合せて、図5(b)のように、凹側一体金型30Aに相当する組立て消失模型50を製作する。この消失模型50には、内部に凹側個別用役チャンバ35に相当する空間1Aが配設される。この場合、補強部材37に相当する消失模型52aも予め準備するものとする。
【0049】
2)鋳造砂の充填、硬化(図6)
組立て消失模型50を容器55内に配置し、鋳造砂aを組立て消失模型50の外部および内部に充填する。なお、この工程に先立って、離型を容易にする塗型処理を行うのがよい。また、鋳造砂aの十分な充填が行われるように、容器ごと振動を加える振動充填が好ましい。
次いで、鋳造砂の充填中または充填後に、容器55を密閉して、減圧ポンプにより内部を減圧して、充填した鋳造砂を硬化させる。
【0050】
3)溶湯の注入、造形(図7)
アルミニウム合金の溶湯bを前記組立て消失模型50の部分に注入して、同消失模型50を高温な溶湯bの熱によって分解、消失させ、同時に、生じた空間に溶湯bを流入させ、原型である凹金型部材31と凹側背面部材33とを一体化して形成される凹側一体金型30Aを造形する。
【0051】
4)鋳造品の取り出し(図示せず)
前記造形後、冷却し、鋳込み砂を除去して鋳造品を取り出す。この場合、凹側一体金型30Aの内部の用役キャビティ35に充填されていた鋳造砂は、適宜位置に設けた排出口を開いて流出させ、排出することができる。かくして、補強部材37を有する用役キャビティ35を内部に設けた凹側一体金型30Aが取り出される。
【0052】
5)鋳造品の機械加工(図8)
鋳込み砂による凹凸粗な表面を持つ鋳造直後の鋳造品を、所定の表面精度に仕上げると同時に、所定の設定寸法に加工するため、適宜な研削装置53よって機械加工される。
かくして製作された凹側一体金型30Aは、図9に例示するように、発泡成形機の凹金型側サポート45に固定され、成形作業に供されるようになる。
【0053】
以上、説明した本発明の発泡成型用金型の製造方法によれば、対象の発泡成形用金型をいわゆる消失模型鋳造法によって、より自由形状の金型が製造できるので、従来の複数の部材を組み合わせるような組合せ構造の金型に比較して製作工数、材料費、製作時間などが約50%以上の短縮が可能となり、大幅なコストダウンが期待できる。さらに、設計上、金型形状の自由度が広がり、発泡成形品の多様なデザインに対応できるなどの利点もある。
【0054】
次に、本発明の発泡成形機による発泡成型方法に基づいて若干、補足する。
(凹凸金型部材)
本発明に用いられる凹金型部材31と凸金型部材32それ自体は、成形圧力がかかる閉型時には製品が充填されているうえ、補強部材37、38をもって補強可能なので、構造上、大きな耐圧強度は必要ではなく、5〜15mm厚さの薄肉アルミ系合金が利用可能であり、この結果、熱容量がより小さくなって熱レスポンスが早くなる利点がある。
【0055】
(用役チャンバ)
如上の通り、用役チャンバ35、36は、凸金型部材31、凸側背面部材33および凹金型部材32、凹側背面部材34で囲まれて構成されるが、それぞれの両背面部材33、34は、成形操作時の加熱蒸気の圧力に耐える機械的強度が必要であるが、この場合も補強部材37、38によって補強されるから、厚さ8〜15mmの比較的薄いアルミ系合金が用いられ得る。
【0056】
また、本発明では、用役チャンバ35、36は、加熱蒸気や冷却水などの用役が全体に均質に与えられるよう、用役が流通するに十分でかつ最小の厚さを持って構成されるのがよい。また、本発明のように消失模型鋳造方法を用いる場合は、用役チャンバを形成する部分に充填されていた鋳造砂がスムースに充填、排出できることも重要であり、これらを考慮して形状設計がなされるべきである。なお、凸側背面部材34および凹側背面部材33の用役チャンバ側形状は、対向する凸金型部材32よび凹金型部材31の用役チャンバ側形状に倣った形状とするのが好ましい。
【0057】
次に、本発明の成形金型を用いた発泡成形機による発泡成形方法の概略について説明する。
(発泡成形方法)
本発明では、前記した成形金型を用いる発泡成形方法であって、前記凹金型部材31と凸金型部材32がベントホールを備えている場合は、周知の成形方法が採用される。すなわち、型閉めし成形キャビティ1を形成した後、充填ノズル(図示せず)を通じて熱可塑性樹脂からなる発泡ビーズを成形キャビティ1内に充填する。この場合、用役チャンバ35、36を適宜に減圧してベントホールを通じ成形キャビティ1内も減圧すれば、発泡ビーズを成形キャビティ1内に流入し易いように操作することができる。
【0058】
次いで、用役チャンバ35、36に加熱蒸気を導入し、ベントホールを通じて、成形キャビティ1内の発泡ビーズを加熱して、発泡、融着させてキャビティ形状に規制される成形体を形成する。その後、用役チャンバ35、36に冷却水を導入して、成形キャビティ1内の発泡成形体を冷却する。冷却、乾燥した後、型を開いて、成形体を取り出す。
【0059】
さらに、前記用役チャンバから独立した成形キャビティ用役配管61、62が配置されている場合(図10参照)の発泡成形方法の場合には、以下の手順で行われる。
(発泡ビーズ充填)
成形キャビティ1内に充填ノズル(図示せず)を通じて発泡ビーズを充填する。この場合、成形キャビティ1に対して、型閉め直前まで連通可能であって、型閉め完了時に封止される小空間である第3チャンバ65を金型間に設定してある構造の成形金型を好ましく使用できる。
【0060】
すなわち、型閉め直前の第3チャンバ65が成形キャビティ1に連通している状態で、成形キャビティ1内に発泡ビーズを空気伴走させ流入させることができ、また、付属の用役配管66を通じて減圧すれば、成形キャビティ1内も減圧されるので、より均質な充填密度で全体を速やかに充填することができる。
【0061】
本発明では、この発泡ビーズ充填工程において、このような充填操作を行いながら前記個別用役チャンバ35、36に加熱蒸気または温水などを導入して各金型部材31、32を好ましい温度、例えば、発泡、融着温度直前の温度まで予備加熱することができる。かくして、発泡ビーズ充填工程と加熱工程をオーバラップさせて、成形サイクルの短縮に寄与することも可能となる。
【0062】
(加熱、発泡工程)
前記個別用役チャンバ35、36に加熱蒸気を導入して、各金型部材31、32を加熱してその伝熱によって、各金型部材31、32に接した発泡ビーズを加熱するとともに、前記成形キャビティ用役配管61,62からも加熱蒸気を成形キャビティ1内に導入して、成形キャビティ内の発泡ビーズを内部からも加熱する。この場合、発泡成形体の表皮面と内部の発泡、融着状態を調節することが可能となり、表皮部分を強固に融着させ、内部を最大限に発泡させるなど部分的に調節しながら発泡成形することができる。
【0063】
(冷却工程)
発泡工程後、前記個別用役チャンバ35、36に所定の温度に管理した、例えば、発泡ビーズが融着しない範囲で最も高い温度(スチロール樹脂の場合、80℃)などに設定した冷却水を導入、通水し、必要に応じて、冷却水を循環させ、成形キャビティ1内の発泡成形体を離型可能な温度まで冷却する。
【0064】
この場合、冷却水は所定の温度に管理されているので、離型可能な温度以下でもっとも高い温度まで冷却すればよく、必要以上の過冷却は成形サイクルの短縮化を阻害するので好ましくない。本発明では、従来のような冷却ノズルによる散水方式に較べて、器具の詰まりや、冷却むらにメンテナンスを向ける必要がなくなった。また、成形体に冷却水が直接接触しないので、冷却水に基づき成形体が含水するという不具合も生じない。
【0065】
(減圧放冷工程)
成形チャンバ用役配管61,62から加熱蒸気を供給する加熱方法を用いた場合、成形チャンバ1内の凝縮ドレンがある程度発生することは避けられないが、この冷却工程で、成形チャンバ用役配管61,62または第3チャンバ65を通じて、減圧すれば型内のドレンは容易に気化して除去することができる。
【0066】
(離型工程)
離型可能になったとき、成形体が凹金型部材31側に残るようにして、両金型を離間させ、離型ピン(図示せず)を突き出して成形体を離型させる。かくして、所定形状に発泡成形した成形体を乾燥状態で得ることができる。この場合、凹金型部材31側の成形チャンバ用役配管61から減圧すれば、成形体を凹金型部材31側に吸着し、容易に残留させることができる。

【符号の説明】
【0067】
1:成形キャビティ
30A:凹側一体金型、30B:凸側一体金型
31:凹金型部材、31a:凹金型部材外周部、31b:シーリング面、31m:成形面
32:凸金型部材、32a:凸金型部材外周部、32b:シーリング面、32m:成形面
33:凹側背面部材、33a:凹側背面部材外周部
34:凸側背面部材、34a:凸側背面部材外周部
35:凹側個別用役チャンバ
36:凸側個別用役チャンバ
37、38:補強部材
41、42:背面プレート
43、44:ガイドポスト
45:凹金型側サポート、45a:断熱部材
46:凸金型側サポート、46a:断熱部材
47:型ずれ防止コッター
71:仕切り壁体、71a〜71g:空間
72:仕切り壁体、72a〜72e:空間、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能に配設された一対の凸金型部材と凹金型部材とを装着し、その凸金型部材と凹金型部材とを閉型したときに形成される成形キャビティに熱可塑性発泡用樹脂原料を充填し、加熱して発泡させて、発泡成形体を形成するようにした発泡成形機であって、その凸金型部材および凹金型部材と、それぞれの背面に間隔を設けて配設された背面部材とが、各金型部材とその背面部材との外周部において一体に連接、形成されてなる凸側一体金型と凹側一体金型とを開閉可能に配設して装着し、各金型部材とその背面部材とによって囲まれた空間をそれぞれの用役チャンバとして用いるようにしたことを特徴とする発泡成形機。
【請求項2】
前記用役チャンバにおいて、凸金型部材およびまたは凹金型部材の背面とそれぞれの背面部材との間に補強部材を一体化して配置した凸側一体金型と凹側一体金型を装着した請求項1に記載の発泡成形機。
【請求項3】
前記補強部材が仕切り壁体であって、用役チャンバを区切って複数の空間を配設した凸側一体金型と凹側一体金型を装着した請求項2に記載の発泡成形機。
【請求項4】
前記凸金型部材および凹金型部材とそれぞれの背面部材とを一体に連接する外周部の対向部位に、閉型時に形成される成形キャビティを外部から離隔するシーリング面を同一平面上に設けた凸側一体金型と凹側一体金型を装着した請求項1または2または3に記載の発泡成形機。
【請求項5】
前記各用役チャンバから成形面に通じるベントホールが配置されている凸側一体金型と凹側一体金型を装着した請求項1〜4のいずれかに記載の発泡成形機。
【請求項6】
前記用役チャンバを貫通して成形キャビティと外部とを接続可能にする用役配管が配置されている凸側一体金型と凹側一体金型を装着した請求項1〜5のいずれかに記載の発泡成形機。
【請求項7】
前記用役チャンバを貫通して成形キャビティと外部とを接続可能にする用役配管が前記補強部材を通じて、配置されている凸側一体金型と凹側一体金型を装着した請求項6に記載の発泡成形機。
【請求項8】
前記背面部材の外面に断熱層を配設した凸側一体金型と凹側一体金型を装着した請求項1〜7のいずれかに記載の発泡成形機。
【請求項9】
前記凸側一体金型と凹側一体金型を、発泡成形機の躯体側の取付け部材に断熱材を介して装着した請求項1〜8に記載の発泡成形機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の発泡成形機に装着される発泡成形用金型の製造方法であって、1)凸金型部材および凹金型部材とその背面部材とを組み合せた凸側一体金型および凹側一体金型と同形の模型を消失材で形成し、2)その模型の内外に鋳造砂を充填し、その鋳物砂を減圧硬化させ、3)所定のアルミニウム合金溶湯を注入して造形し、鋳込み砂を除去し、4)鋳造品を取り出し、5)機械加工を経て、凸側一体金型および凹側一体金型を製造することを特徴とする発泡成形用金型の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−221535(P2010−221535A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71568(P2009−71568)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(591209361)DAISEN株式会社 (9)
【Fターム(参考)】