説明

発泡材成形品

【課題】 使用時には立体形状を形成するとともに、保管時や輸送時には嵩張らない発泡材成形品を提供する。
【解決手段】 立体形状を形成して用いられる発泡スチロール成形品1は、発泡スチロール成形品1を折り曲げ、又は展開するためのスリット部11を有する。スリット部11は、外側に形成された外側スリット11a、内側に形成された内側スリット11b、及び外側スリット11aと内側スリット11bとの間に形成された薄肉部11cとからなり、外側スリット11aと内側スリット11bは、互いにずれて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡材成形品に関し、特に、立体形状を形成して用いられる発泡材成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡材は、断熱性、緩衝性という性質を有する。発泡材には、例えば、ビーズ法発泡材として、ビーズ法発泡スチロール(Expanded Polystyrene:EPS)、ビーズ法発泡ポリプロピレン(Expanded Polypropylene:EPP)、ビーズ法発泡ポリエチレン(Expanded Polyethylene:EPE)等が知られている。従来より、発泡材の断熱性を利用して断熱対象物を断熱したり、緩衝性を利用して衝撃保護対象物を衝撃から保護するために、それらの対象物を覆うように成形された発泡材成形品が用いられる。このとき、対象物が立体的であると、それを覆う発泡材成形品も当該対象物の形状に合うように、立体形状を形成して用いられる。
【0003】
例えば、断熱対象物として、図5に示すような、円柱形状を有する給湯機のタンクTを発泡スチロール成形品Mで覆う場合には、図6に示すように、上面及び底面をそれぞれ覆う盆状の発泡スチロール成形品Mと、側面を覆う2つの半円筒形状の発泡スチロール成形品Mとが組み合わされる。これらの発泡スチロール成形品MでタンクTを覆うことで、図7に示すように、タンクTの全面が発泡スチロールで覆われる。
【0004】
図8は、給湯機のタンクTの側面を覆う従来の発泡スチロール成形品Mの斜視図である。図8に示すように、タンクTの側面のような曲面を覆う発泡スチロール成形品Mは、その形状も曲面となり、立体的に形成される。対象物の表面が曲面でない場合にも、例えば角があれば、その角を覆う発泡スチロール成形品Mは、その角を境に折れ曲がった形状となり、立体的な形状となる。
【0005】
本発明に関連する先行技術として、以下の先行技術文献に記載された先行技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−091134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、発泡スチロール成形品が立体的に形成されると、保管時及び輸送時に必要なスペースが大きくなるという問題がある。また、保管時及び輸送時に、発泡スチロール成形品の一部に集中的な応力が加わって割れてしまうこともある。以下に具体的に説明する。
【0008】
図9は、図8に示した発泡スチロール成形品を保管又は輸送のために複数個重ねて置いた状態を示す図である。給湯機のタンクTの側面に取り付ける発泡スチロール成形品Mは、半円筒形状を有しているので、重ねた際に互いの間の空間が大きくなり、比較的大きなスペースS1が必要になる。また、上から荷重が掛った場合には、中心部において応力が集中して、割れや亀裂が生じ易い。
【0009】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、使用時には立体形状を形成するとともに、保管時や輸送時には嵩張らない発泡材成形品を提供することを目的とする。また、本発明は、保管時や輸送時に割れや亀裂が生じにくい発泡材成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発泡材成形品は、立体形状を形成して用いられる発泡材成形品であって、前記発泡材成形品を折り曲げ、又は展開するためのスリット部を有する構成を有している。この構成により、平面に近い形状で成形された発泡材成形品をスリット部で折り曲げて立体を形成し、又は目的とする立体形状に成形された発泡材成形品をスリット部で展開して(広げて)平面に近い形状を形成することで、使用時には目的とする立体形状を形成するとともに、保管や輸送の際には平面に近い形状として必要なスペースを小さく抑えることができる。
【0011】
上記の発泡材成形品において、前記スリット部は、前記発泡材成形品の一端から他端にかけて形成されていてよい。この構成により、スリット部をヒンジとして、発泡材成形品を折り曲げ、又は展開することができる。
【0012】
また、上記の発泡材成形品において、前記スリット部は、内側に形成された内側スリット、外側に形成された外側スリット、及び前記内側スリットと前記外側スリットとの間に形成された薄肉部とからなっていてよい。この構成により、薄肉部が変形することで発泡材成形品の内側への折り曲げ、又は外側への展開を実現できる。また、スリットが内側及び外側の両方に形成されることで、折れ曲がった状態と展開した状態のいずれにおいても、当該スリット部分に応力が生じることを回避でき、立体形状を形成した際の発泡材成形品の割れを防止できる。
【0013】
また、上記の発泡材成形品において、前記内側スリットと前記外側スリットは、互いにずれて形成されてよい。この構成により、折り曲げ又は展開の際に生じる応力を分散させることができる。
【0014】
また、上記の発泡材成形品において、前記薄肉部は、前記スリット部の両側の部分の一方の外側から他方の内側に向けて斜めに形成されてよい。この構成により、折り曲げ又は展開の際に生じる応力をより効果的に分散させることができる。
【0015】
また、上記の発泡材成形品において、前記スリット部の両側の部分の各々に対する付け根部分が中央よりも厚く形成されてよい。この構成により、薄肉部における切断及び割れを効果的に防止できる。
【0016】
また、前記発泡材成形品は、前記スリット部で折れ曲がることで、前記円筒形状の全周又はその一部を形成してよい。この構成により、発泡材系製品によって円柱形状の対象物を覆うことができる。
【0017】
また、前記発泡材成形品は、ビーズ法発泡スチロール成形品、ビーズ法発泡ポリプロピレン成形品、又はビーズ法発泡ポリエチレン成形品のいずれかであってよい。この構成により、発泡材成形品を断熱材として用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、平面に近い形状で成形された発泡材成形品において、スリット部で折り曲げて目的とする立体形状を形成し、又は目的とする立体形状に成形された発泡材成形品をスリット部で展開して平面に近い形状を形成することで、使用時には目的とする立体を形成するとともに、保管や輸送の際には平面に近い形状として必要なスペースを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の発泡スチロール成形品のスリット部の拡大断面図
【図2】本発明の実施の形態の発泡スチロール成形品(保管・輸送時)の斜視図
【図3】本発明の実施の形態の発泡スチロール成形品(使用時)の斜視図
【図4】本発明の発泡スチロール成形品を保管又は輸送のために複数個重ねて置いた状態を示す図
【図5】発泡スチロール成形品で覆われる円柱形状を有する給湯機のタンクの斜視図
【図6】円柱形状を有する給湯機のタンクとそれを覆う従来の発泡スチロール成形品の分解図
【図7】従来の発泡スチロール成形品で覆われた給湯機のタンクの斜視図
【図8】給湯機のタンクの側面を覆う従来の発泡スチロール成形品の斜視図
【図9】従来の発泡スチロール成形品を保管又は輸送のために複数個重ねて置いた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の発泡材成形品について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の発泡スチロール成形品のスリット部の拡大断面図であり、図2は、本発明の実施の形態の発泡スチロール成形品(保管・輸送時)の斜視図であり、図3は、本発明の実施の形態の発泡スチロール成形品(使用時)の斜視図である。
【0021】
本発明の実施の形態の発泡材成形品としてのビーズ法発泡スチロール成形品1(以下単に「発泡スチロール成形品1」という。)は、給湯機のタンクTを覆う断熱材として、タンクTの側面に取り付けて使用される。発泡スチロール成形品1が覆う対象物であるタンクTは、高さ1500mm、直径700mmの円柱形状を有する。発泡スチロール成形品1は、タンクTの側面の全周を覆うものではなく、半分のみを覆う。よって、発泡スチロール成形品1は、図3に示すように、使用時には半円筒形状を形成する。なお、残りの半分について、もう一つの同様の構成の発泡スチロール成形品でタンクTの側面を覆うことで、タンクTの全周が断熱材としての発泡スチロール成形品で覆われることになる。
【0022】
以下の説明において、上下左右、縦横、内外等の方向を示す用語は、発泡スチロール成形品1がタンクTに取り付けられた状態での方向を指す。発泡スチロール成形品1には、上端から下端まで縦方向に4本のスリット部11が形成されている。発泡スチロール成形品1では、この4本のスリット部11を境として、左から順に左接続部分12a、左部分12b、中央部分12c、右部分12d、右接続部分12eの5つの部分が形成されている。
【0023】
左接続部分12a、左部分12b、中央部分12c、右部分12d、右接続部分12eは、それぞれ、円柱形状のタンクTに取り付けられたとき、タンクTの外側表面に合致するように、外側に凸となるように湾曲した形状を有している。発泡スチロール成形品1は、4本の各スリット部11がヒンジとなって、その両側の部分が内側に所定の角度で屈曲することで、全体として半円筒形状が形成され、その内側面が円柱形状のタンクTの外側表面に合致する形状となる。なお、発泡スチロール成形品1には、タンクTに設けられた脚、操作部、配管等を逃すために、切欠きや孔が適宜形成される。
【0024】
発泡スチロール成形品1は、保管や輸送の際には、占有するスペース、特に複数の発泡スチロール成形品1を重ねた際に占有するスペースを小さくできるように、図2に示すように平面に近い形状とされる。また、使用する際には、図3に示すように、所望の立体形状(即ち、半円筒形状)とされる。
【0025】
図4は、発泡スチロール成形品1を保管又は輸送のために発泡スチロール成形品1を複数個重ねて置いた状態を示す図である。図8の従来の発泡スチロール成形品の場合と比較して明らかなように、保管又は輸送のために、発泡スチロール成形品1が平面に近い形状とされた場合には、占有するスペースS2を小さくできる。
【0026】
発泡スチロール成形品1は、上述のように、使用時には半円筒形状をなし、2つの発泡スチロール成形品1が組み合わされることで、タンクTの全周を覆う円筒形状をなす。このとき、一方の発泡スチロール成形品1の左接続部分12aと、他方の発泡スチロール成形品1の右接続部12eとが接続され、一方の発泡スチロール成形品1の右接続部分12eと、他方の発泡スチロール成形品1の右接続部12aとが接続される。組み合わせられる2つの発泡スチロール成形品1は、タンクTの脚等を逃がす部分等を除いて、基本的に同様の形状を有している。
【0027】
これらの2つの発泡スチロール成形品1のうち、一方の発泡スチロール成形品1の左接続部分12aには凹凸形状が形成されており、他方の発泡スチロール成形品1の右接続部12eには、一方の発泡スチロール成形品1の左接続部分12aの応答形状と接続されるように凹凸が形成されている。また、一方の発泡スチロール成形品1の右接続部分12eにも凹凸形状が形成されており、他方の発泡スチロール成形品1の左接続部12aにも、一方の発泡スチロール成形品1の右接続部分12eの応答形状と接続されるように凹凸が形成されている。
【0028】
一方の発泡スチロール成形品1と他方の発泡スチロール成形品1とがそれぞれ半円筒形状を形成してタンクTを取り囲んで組み合わせられることで、タンクTの全周は、合計8本のスリット部11によって、8つの部分からなる円筒形状の発泡スチロール成形品によって覆われる。各発泡スチロール成形品1は、8本のスリット部11で折れ曲がることで、内面がタンクTの外側表面に一致する形状となる。
【0029】
このような発泡スチロール成形品1が成形される際には、図2に示すように、平面に近い形状になるように、即ち、スリット部11が平面上に並ぶ形状となるように、成形される。即ち、保管や輸送の際には、図2に示すように発泡スチロール成形品1は平面に近い形状とされるが、このときにスリット部11に応力が生じないように、この平面に近い形状で成形される。
【0030】
次に、図1を参照して、スリット部11の詳細構造について説明する。図1に示すように、スリット部11は、発泡スチロール成形品1の外側(表側)に形成された外側スリット11a、発泡スチロール成形品1の内側に形成された内側スリット11b、及び外側スリット11aと内側スリット11bとの間に形成された薄肉部11cからなる。図1の上側及び下側は、それぞれ発泡スチロール成形品1の外側及び内側である。
【0031】
外側スリット11a及び内側スリット11bは、深さ方向に徐々に幅が狭くなる形状を有している。具体的には、外側スリット11a及び内側スリット11bは、頂点が丸められた三角形状に形成される。外側スリット11a及び/又は内側スリット11bが円弧状に形成されてもよく、外側スリット11a及び/又は内側スリット11bが台形状に形成され、即ち底面(深さ方向に最も深い箇所)が平面に形成されてもよい。
【0032】
外側スリット11aと内側スリット11bとは、それらの一部が厚さ方向に重なるように、左右方向にずれて形成されている。その結果、外側スリット11a及び内側スリット11bが、深さ方向に徐々に幅が狭くなる形状に形成されている(スリットの切り込み面が厚さ方向に対して傾斜している)ことと相まって、スリット11の両側の一方の部分の外側から他方の内側に向けて斜めに、斜めに薄肉部11cが形成されている。また、外側スリット11aと内側スリット11bとが左右方向にずれて形成されており、かつ、外側スリット11a及び内側スリット11bは、頂点が丸められた三角形状に形成されていることで、薄肉部11cは、両側の部分に対する付け根が中央部よりも厚い形状に形成されている。
【0033】
図1の例において、発泡スチロール成形品1のスリット部11付近の厚さは10mmであり、薄肉部11cの最も薄い部分は、内側から約7mmの箇所にあり、その厚さは1mmである。外側スリット11aと内側スリット11bとのずれは約3mmである。
【0034】
本発明の発泡スチロール成形品1のスリット部11の構成はこれに限られない。例えば、薄肉部11cの最も薄い部分は、発明者らによる実験の結果、0.3mm〜3mmであってよく、0.5mm〜2mmとするのが好ましく、0.8mm〜1.5mmとするのがより好ましい。薄肉部11cの最も薄い部分が薄すぎると、取り付け作業等においてスリット部11を境に折り曲げられたときに、その部分で切断されてしまうおそれがあり、逆に薄肉部11cの最も薄い部分が厚すぎると、取り付け作業等においてスリット部11を境に折り曲げられたときに、その部分で割れが生じるおそれがある。これらの観点から、薄肉部11cの最も薄い部分の厚さは、上記の範囲とすることが望ましい。
【0035】
上記のように形成された発泡スチロール成形品1が、スリット部11において内側に折り曲げられることで、内側スリット11bの下端(内側スリット11bの両側の部分)が当接して、それ以上の折り曲げが規制され、その内面がタンクTの外側表面に沿うようになる。発泡スチロール成形品1のスリット部11で分けられた各部分は、タンクTの外側表面に沿うように湾曲しているので、発泡スチロール成形品1がスリット部11で折り曲げられてタンクTに被せられることで、発泡スチロール成形品1の内面がタンクTの外側表面に密着する。
【0036】
なお、ヒンジ部を有し、ヒンジ部で自由に折り曲げられるようにした発泡材成形品が知られているが、このような従来の発泡材成形品では、ヒンジ部の強度を確保するために、ヒンジ部において、発泡材をソリッド状にしている。発泡材成形品の一部をソリッド状にするためには、発泡材成形装置における成形の際の設定が容易ではなく、高い精度を維持するためには、製造コストが大きくなる。そうではあっても、使用に際して、ヒンジ部で頻繁に折り曲げ、展開を繰り返す用途が予定されている場合には、そのような用途に耐え得る強度を確保するために、ヒンジ部において発泡材をソリッド状にする等の対策が必要になる。
【0037】
これに対して、本実施の形態では、保管及び輸送の際に平面に近い形状とし、取付ける際に立体形状を形成するようにするという用途を想定しており、取り付けた後、即ち使用の際に、ヒンジによって折り曲げ、展開を繰り返すことは想定していない。よって、ヒンジとなるスリット部11を上述のような形状とすることで、このスリット部11をソリッド状にすることなく、必要な強度を実現でき、そのような成形をするための設定も容易であり、製造コストも抑えることができる。即ち、本実施の形態の発泡スチロール成形品1は、スリット部11の薄肉部11cも含む全体において、同一の条件で発泡ビーズを発泡させて成形される。
【0038】
以上説明したとおり、本実施の形態によれば、タンクTに取り付けた際に半円筒形状の断熱材となる発泡スチロール成形品1にヒンジとしてのスリット部11を設けることで、取付け前の輸送時及び保管時には、より平面に近い形状とすることができる。よって、タンクTに取り付ける断熱材としての発泡スチロール成形品を従来技術のように半円筒形状に成形した場合と比較して、必要なスペースを小さくできる。
【0039】
なお、本実施の形態では、タンクTの全周を覆う2つの組み合わされた発泡スチロール成形品1は、スリット部11によって8つの部分に分けられることになり、それによって、保管や輸送の際に必要なスペースを小さくできるが、本発明の実施の形態のようにスリット部11を設けるのではなく、タンク11の全周を8等分してなる8つの発泡スチロール成形品を組み合わせることで、タンク11の全周を覆うようにしても、同様に保管や搬送の際のスペースを小さくできる。しかしながら、この場合には、どの発泡スチロール成形品をどの発泡スチロール成形品と組み合わせるかが複雑となり、取り付けの際に混乱が生じるおそれがある。また、8つの発泡スチロール成形品のそれぞれについて、輸送等の際に、縁部において欠けが生じるリスクもある。
【0040】
これに対して、本実施の形態では、タンクTの側面の全周を覆うための発泡スチロール成形品は2つでよく、タンクTへの取り付けの際にも混乱は生じにくく、8つの部分の境目において、スリット部11によって連結しているところでは欠けは生じず、欠けが生じ得る箇所が少なくなる。
【0041】
また、発泡スチロール成形品1は、取付け作業等の際に、スリット部11をヒンジとして、その両側の部分が折れ曲がり、かつ、各部分の内面が円柱形状のタンクTの外側表面に合致する湾曲形状に形成されているので、円柱形状のタンクを覆う半円筒形状を形成することができる。
【0042】
なお、上記の実施の形態では、1つの発泡スチロール成形品1がスリット部11をヒンジとして折れ曲がることで、半円筒形状を形成し、このような発泡スチロール成形品1を2つ組み合わせることで円柱形状のタンクTの全周を覆うようにしたが、1つの発泡スチロール成形品が折れ曲がることで、円筒形状を形成して、1つの発泡スチロール成形品によって円柱形状のタンクTの全周を覆うようにしてもよいし、1つの発泡スチロール成形品が折れ曲がることで四半円筒形状を形成し、このような発泡スチロール成形品を4つ組み合わせることでタンクTの全周を覆うようにしてもよい。
【0043】
また、上記の実施の形態では、半円筒形状を形成する発泡スチロール成形品1に対して、4本のスリット部11を形成したが、本発明の発泡材成形品のスリット部の本数は、それ以上であってもそれ以下であってもよい。特に、発泡材成形品によって形成される円筒形状の一部の周方向の長さに応じて、スリット部の本数は増減してよい。例えば、発泡材成形品が、スリット部をヒンジとして折れ曲がることで、円筒形状の全周の3分の1を形成する場合には、そのような発泡スチロール成形品には、2本又は3本のスリット部を形成してよい。
【0044】
また、上記の実施の形態では、発泡スチロール成形品1は、成形の際に、保管や輸送の際の形状、即ち複数のスリット部が平面上に並ぶ形状に成形され(即ち、成形に使用する金型の形状が図2に示す平面に近い形状に対応しており)、保管や輸送の際の形状において、スリット部11に応力が生じないように成形されたが、本発明はこれに限られない。本発明の発泡材成形品は、成形の際に、目的とする立体形状を形成するように成形され(即ち、成形に使用する金型の形状が図3に示す半円筒形状に対応しており)、保管や輸送の際に、発泡材成形品をスリット部にて展開することで、平面に近い形状、即ちスリット部が一平面上に並ぶようにされてもよい。この場合には、保管や輸送の際にはスリット部に応力が生じるが、使用時にはスリット部に応力が生じない。
【0045】
また、上記の実施の形態では、発泡スチロール成形品1は、円柱形状のタンクTを覆うように、スリット部11で折り曲げられたときに円筒形状を形成するように形成されたが、本発明の発泡材成形品は、スリット部で折り曲げられることにより円筒形状以外の立体形状を構成するように成形されてもよい。例えば、平板上の発泡材成形品に、上端から下端まで、平行な3本のスリット部を形成し、これらのスリット部をヒンジとすることで、中空四角柱を形成するものであってもよい。また、本発明の発泡材成形品は、ヒンジとしての複数のスリット部を複数の方向に形成することで、組み立てられて多面体(例えば6面体)又はその一部(6面体の1面を除く形状)を形成するものであってもよい。
【0046】
また、上記の実施の形態では、タンクTを覆う発泡材成形品として、発泡スチロールの成形品を用いたが、本発明の発泡材成形品は、発泡ポリプロピレン成形品、又は発泡ポリエチレン成形品であってもよい。なお、発泡材成形品は、製造コスト等の観点から、ビーズ法により成形したものであることが望ましい。本発明の発泡材成形品は、本実施の形態のスリット部を有することで、強度を確保するという観点から、ビーズ法以外の製造コストが高い方法により成形し、若しくはヒンジを形成し、又は他の高価な材料を採用することを要しない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明の発泡材成形品は、発泡材成形品がスリット部を有し、スリット部をヒンジとして折れ曲げ、又は展開することで目的とする立体形状を形成するので、使用時には立体的に形成されるとともに、保管時や輸送時には嵩張らないという効果を有し、立体形状を形成して用いられる発泡材成形品等として有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 発泡スチロール成形品
11 スリット部
11a 外側スリット
11b 内側スリット
11c 薄肉部
12a 左接続部分
12b 左部分
12c 中央部分
12d 右部分
12e 右接続部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体形状を形成して用いられる発泡材成形品であって、
前記発泡材成形品を折り曲げ、又は展開するためのスリット部を有することを特徴とする発泡材成形品。
【請求項2】
前記スリット部は、前記発泡材成形品の一端から他端にかけて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡材成形品。
【請求項3】
前記スリット部は、内側に形成された内側スリット、外側に形成された外側スリット、及び前記内側スリットと前記外側スリットとの間に形成された薄肉部とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡材成形品。
【請求項4】
前記内側スリットと前記外側スリットは、互いにずれて形成されていることを特徴とする請求項3に記載の発泡材成形品。
【請求項5】
前記薄肉部は、前記スリット部の両側の部分の一方の外側から他方の内側に向けて斜めに形成されていることを特徴とする請求項4に記載の発泡材成形品。
【請求項6】
前記薄肉部は、前記スリット部の両側の部分の各々に対する付け根部分が中央よりも厚く形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の発泡材成形品。
【請求項7】
前記発泡材成形品は、前記スリット部で折れ曲がり、又は展開することで、円筒形状の全周又はその一部を形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発泡材成形品。
【請求項8】
前記発泡材成形品は、ビーズ法発泡スチロール成形品、ビーズ法発泡ポリプロピレン成形品、又はビーズ法発泡ポリエチレン成形品のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発泡材成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92218(P2013−92218A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235391(P2011−235391)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(594207447)旭化成株式会社 (7)
【Fターム(参考)】