発酵培地、及びそのプロセス
本発明は、ピキア属のようなメタノール誘導性菌類発現系を用いる、生物学的変換率の向上を達成する組み換えタンパク質や、インシュリン、インシュリンの類似体、エキセンディンのようなペプチドや、リパーゼのような酵素の生産のための発酵培地における窒素を含む補助剤として、尿素又はその誘導体のような炭酸アミド、カルバミン酸塩、カルボジイミドの有用性を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、メタノール誘導性菌類発現系(例えば、ピキア属(Pichia))を用いる生物学的変換率の向上を実現した組換えタンパク質や、インシュリン、インシュリンの類似体、エキセンディン等のペプチドや、リパーゼ等の酵素の生産のための発酵培地において、窒素補助剤として尿素あるいはその誘導体等の炭酸アミド、カルバミン酸塩、カルボジイミド及びチオカルバミドの有用性を示す。本発明の重要な態様は、特に、より短い生産期間で、より高い生産量を産出するための、最適化された栄養性媒体パラメータを有する即席の発酵プロセスに関する。本発明の原理は、適切な発現微生物の発酵による広範囲なタンパク質及び二次代謝物の生産に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術と従来技術
ピキア・パストリス(P. pastoris)のような発現系に基づく酵母は、組換えタンパク質を発現するために一般的に用いられる(非特許文献1)。ピキア・パストリス発現系は、メタノール誘導性アルコール・オキシダーゼ(AOX1)プロモータ(アルコール・オキシダーゼ(メタノールの代謝の第一段階に触媒作用を及ぼす酵素)の発現をコードする遺伝子を制御する)を使用する(非特許文献2)。ピキア・パストリスは、バイオリアクタ培養における最少培地で、高発現レベルや、細胞外タンパク質の効果的な分泌や、グリコシル化のような翻訳後修飾や、高細胞密度への成育に対する潜在能力を有する。
【0003】
ピキア・パストリスを用いたフェッドバッチ発酵プロセスは、インビトロゲン社(サンディエゴ、CA)の「ピキア属発酵プロセスガイドライン」に記載されており、以下、対照群として引用する。組換えタンパク質の生産のために、炭素源としてグリセロールを用い、形質転換ピキア・パストリスを、所望の高細胞密度バイオマスに成育させる。生産段階は、誘導物質であって、唯一の炭素源であるメタノールを培養物に供給することによって開始される。バイオマス生成、及び生産段階の間、アンモニアは、窒素源として機能し、pHを調節するために用いられる。
【0004】
種々の効果が、酵母発現系によって与えられたが、バイオリアクタにおける効果的かつ最大限の組換えタンパク質生産のために、栄養的に影響される物理化学的な環境を最適化する必要性がなお存在する。高い比生産性を達成することは、非常に望ましいことである。それは、初期の培地構成や、メタノール供給の戦略や、プロセス物理化学的パラメータの最適化によって得られる。硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、二リン酸アンモニウム、硝酸カリウム、尿素、コーンスティープリカー(corn steep liquor)、大豆ミール(soya bean meal)、綿実粕(cotton seed meal)、甘しょ及びビート糖蜜(cane and beet molasses)、ペプトン、ミール加水分解物等が、細菌や酵母や菌類の成育のために、窒素源として使われてきたという報告がある。微生物の「成育」のための異なる炭素、及び窒素源の利用は、従来技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO/2007/005646号
【特許文献2】米国特許4,288,554号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Cregg, J. M. et al., in Dev. Ind. Microbiol. 29:33-41; 1988.
【非特許文献2】Cregg J M. et al.in Bio/Technology 11: 905-910; 1993.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、組換えタンパク質や、ペプチドや酵素の効果的生産のための、特に定義された炭素と窒素源の最適な組合せは、従来技術の文献において開示されていなかった。例えば、特許文献1には、コーンスティープリカー、コーン抽出物(corn extract)、酵母自己分解物質(yeast autolysate)及び尿素のような様々なより安価な窒素源と同様に複合糖質を含んでいる混合の成育培地で組換え酵母を培養することによって、それ自体によるエタノール生産を開示している。更に、このプロセスは、組換えタンパク質の生産のために、本発明で開発されたプロセスと異なり、メタノール誘導性機構を成育又は生産のために利用しない。
【0008】
同様に、特許文献2には、非GMO(遺伝子組換え生物)カンジダ属(Candida species)の単なる成育のために、窒素や基礎塩類培地の他の供給源と組み合わせた尿素を用いる連続発酵プロセスを記載する。その文献には、組換えタンパク質や、ヒト・インシュリン及びその類似体のペプチドや、リパーゼ等の酵素の効果的生産のために、メタノール誘導性GMO(遺伝子組換え生物)ピキア・パストリスを用いる発酵プロセス(バッチ、フェッドバッチ、連続的な)において尿素が利用できることについて、何らの示唆も教示もない。
【0009】
尿素加水分解から発生するアンモニアの残留濃度と同様に、尿素の残留濃度に関して最適化された濃度内で、尿素のような豊富で可溶な窒素源の制御された添加によって特徴づけられる規定された発酵培地の使用によって、生産物や生産性が高くなって、生産時間の短縮化が可能になることが、驚くべきことに見出された。
【0010】
大腸菌(E. coil)を利用している組換えタンパク質の生産は長期に亘って公知であり、発現系は明確に研究され、理解されている。発現系に基づく大腸菌は、GCSF、HGH、ストレプトキナーゼや多くの他の類似の生物学的生産物等のような分子の生産のために広く使われてきた。組換えタンパク質の生産のために、炭素源であるブドウ糖を用いて、形質転換された大腸菌を所望の高い細胞密度バイオマスに成育させる。生産段階は、必要な誘因物質を使用して誘導することによって開始され、培養は、発酵終了まで栄養分の最少供給により維持される。
【0011】
菌類培養は、酵素やその他の必需分子等の有益なバイオエンティティの生産のために、長年に亘って利用されてきた。リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属などの菌類培養は、食品、繊維、革、及びその他の産業において用いられるリパーゼ、アミラーゼ、デキストラナーゼ等の広範な種類の酵素の生産のために、古典的な発酵において用いられてきた。抗生物質生産のために多用されている放線菌は、人類のために有益ないくつかの二次代謝物の生産のために広範囲に利用されてきた。菌類及び放線菌の鍵となる特性のうちの一つは、ヒドロキシル化、エステル化などのような生物学的変換である。主な優位性は、生物学的変換がターゲット特異的であり、比較的高純度の生成物が得られることにある。古典的には、コンパクチン(compactin)のプラバスタチン(pravastatine)への変換がある。
【0012】
公知の方法論的な改良には、攪拌や酸素供給のような発酵技術に関する手段、あるいは、栄養培地の組成に関する変更(発酵中の糖濃度の下限や、下流処理(down-stream processing)変更や、微生物自身等の固有の特性に関連した変更など)がある。
【0013】
尿素のような、ある種の豊富で可溶な窒素源の制御された添加によって特徴づけられる発酵培地の使用が、より高い生産性、及び/又はより高率な生物学的変換をもたらし、短い生産時間が可能になることが、驚くべきことに見出された。
【0014】
本発明の課題
本発明の主な目的は、メタノール誘導性菌類種の発酵による、組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体を生産するための発酵培地を得ることである。
【0015】
本発明の他の主な目的は、微生物の発酵による、組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体を生産するための発酵培地を得ることである。
【0016】
本発明の更にもう一つの主な目的は、微生物の発酵による、二次代謝物を生産するための発酵培地を得ることである。
【0017】
本発明の更に別の主な目的は、組換え体、若しくは非組換え体タンパク質生成物、それらの誘導体又はその類似体の生産方法を得ることである。
【0018】
本発明の更に別の主な目的は、二次代謝物の生産方法を得ることである。
【0019】
本発明の更に別の主な目的は、コンパクチンのプラバスタチンへの生物学的変換の方法を得ることである。
【0020】
本発明の更に別の主な目的は、組換えタンパク質生成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の開示
従って、本発明は、メタノール誘導性菌類種を用いる発酵によって、組換えタンパク質、その誘導体、類似体を生産するための、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地に関する。また、本発明は、微生物を用いる発酵によって、組換えタンパク質、その誘導体、類似体を生産するための、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地に関する。また、本発明は、微生物を用いる二次代謝物の生産のための、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地に関する。また、本発明は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、メタノール誘導性菌類種を増やすことを含む組換えタンパク質、その誘導体、類似体を生産するための生産方法に関する。また、本発明は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、誘導又は非誘導タンパク質発現微生物を増やすことを含む、組換え、非組換えタンパク質生成物、それらの誘導体、類似体の生産方法に関する。また、本発明は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地で、微生物を増やすことを含む二次代謝物の生産方法に関する。また、本発明は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地でその変換が実現される、コンパクチンのプロバスタチンへの生物学的変換方法に関する。 また、本発明は、前述の請求項のいずれかによって得られる組換えタンパク質生成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】尿素添加有り/無しのIN−105前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図2】尿素添加有り/無しのIN−105前駆体の生成物濃度・プロフィールの比較。
【図3】尿素添加有り/無しのインシュリン前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図4】尿素添加有り/無しのインシュリン前駆体の生成物濃度・プロフィールの比較。
【図5】尿素添加有り/無しのインスリングラルギン前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図6】尿素添加有り/無しのインスリングラルギン前駆体の生成物濃度・プロフィールの比較。
【図7】尿素添加有り/無しのエキセンディン前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図8】尿素添加有り/無しのエキセンディン前駆体の生成物濃度のプロフィールの比較。
【図9】尿素添加有り/無しのリパーゼ酵素の生成物濃度のプロフィールの比較。
【図10】IN−105前駆体発酵における、尿素濃度によるバイオマス・プロフィール。
【図11】IN−105前駆体発酵における、尿素濃度による生成物濃度・プロフィール。
【図12】インシュリン前駆体発酵における、尿素濃度によるバイオマス・プロフィール。
【図13】インシュリン前駆体発酵における、尿素濃度による生成物濃度・プロフィール。
【図14】IN−105生産における残留尿素濃度と最大生成物濃度。
【図15】インシュリン前駆体生成における残留尿素濃度と最大生成物濃度のプロフィール。
【図16】〜20g/L/hのメタノール供給率を有するIN−105前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図17】〜20g/L/hのメタノール供給率を有するIN−105前駆体の生成物濃度・プロフィールの比較。
【図18】尿素以外の合成物の検討、ピキア属発酵の生産性の影響を検討するための他の類似化合物試験。
【図19】液体培地のリン酸塩イオンの残留濃度に対する尿素効果、菌種によるリン酸塩代謝の尿素効果。
【図20】プラバスタチン生成のための培養成育プロフィール。
【図21】尿素添加有りのプラバスタチンの力価。
【図22】尿素添加有りのコンパクチンのプラバスタチンへの変換率。
【図23】大腸菌のG−CSF生産のWCW比較。
【図24】GCSFにおける比生産性の尿素効果。
【図25】大腸菌のストレプトキナーゼ生産のWCW比較。
【図26】ストレプトキナーゼの比生産性に対する尿素効果。
【図27】リゾムコール属種を用いるリパーゼ生成の尿素効果。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、メタノール誘導性菌類種を用いる発酵による組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産の発酵培地に関する。前記培地は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある。
【0024】
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素(isopropylpylideneurea)、フェニル尿素又はこれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明のさらにもう一つの実施例において、炭酸アミドは尿素である。
本発明のさらに別の実施例において、炭酸アミドは、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えられる。
本発明のさらに別の実施例において、炭酸アミドの残留濃度は、多くとも1Mまでである。
本発明のさらに別の実施例において、炭酸アミドの残留濃度を多くとも1Mまでに保ち、かつ基礎塩類や微量元素の濃度を、対照培地の0.1Xから5Xまでの変更とする。
本発明のさらに別の実施例において、リン酸塩の取り込みが改善される。
本発明のさらに別の実施例において、組換えインシュリン生成物を発現するメタノール誘導性菌類種は、ピギア・パトリス、ピキア属種、サッカロミセス属(Saccharomyces)種、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)種、又はハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)からなる群から選択される。
【0025】
本発明は、微生物を用いる発酵による組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産のための発酵培地に関する。前記培地は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある。
本発明は、微生物を用いる発酵による二次代謝物の生産の発酵培地に関する。前記培地は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある。
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明のさらにもう一つの実施例において、炭酸アミドは尿素である。
本発明のさらに別の実施例において、炭酸アミドは、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えられる。
本発明の別の実施例において、炭酸アミドの残留濃度は、10g/Lまでである。
【0026】
本発明のさらに別の実施例において、微生物は、大腸菌、ストレプトマイセス属(Streptomyses)種、アスペルギルス属(Aspergillus)種、リゾプス(Rhizopus)、ペニシリウム属(Penillium)種、及びリゾムコール属(Rhizomucor)種からなる群から選択される。
【0027】
本発明は、炭酸アミドに有効濃度があることに特徴づけられる発酵培地において、メタノール誘導性インシュリン発現菌類種を増殖することを含む、組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産方法に関する。
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素、又はそれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、炭酸アミドは尿素である。
【0028】
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えインシュリン生成物は、IN−105である。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えインシュリン生成物は、インシュリン前駆体、インシュリン、その類似体又は誘導体である。
本発明の更に別の実施例において、組換えインシュリン生成物は、インスリングラルギンである。
【0029】
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えタンパク質は、環状、若しくは非環状ペプチドである。
本発明の更に別の実施例において、組換えペプチドはエキセンディンである。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えタンパク質は酵素である。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換え酵素生成物はリパーゼである。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えタンパク質は、インシュリン前駆体、インシュリン、その類似体又はその誘導体、インスリングラルギン、エキセンディン、カルボキシペプチダーゼ、及びリパーゼからなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、組換えインシュリン生成物を示すメタノール誘導性菌類種は、ピキア・パストリス、ピキア属種、サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエ、クルイヴェロマイシス種、又はハンゼヌラ・ポリモルファからなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、メタノール誘導性菌類種は、ピキア・パストリスである。
【0030】
本発明の更に別の実施例において、メタノール供給率は、1時間あたり液体培地(broth)の20g/Lまでとする。本発明の更に別の実施例において、得られる最大生成物力価は、0.1g/Lを超えるものである。
【0031】
本発明は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある発酵培地において、誘導性、非誘導性タンパク質発現微生物が増殖することを含む、組換え、若しくは非組換えタンパク質生成物、それらの誘導体、若しくは類似体の生産方法に関する。
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、炭酸アミドは尿素である。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えタンパク質生成物は、G−CSFである。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換え生産物は、ストレプトキナーゼである。
本発明の更に別の実施例において、タンパク質生成物はリパーゼである。
【0032】
本発明は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある発酵培地において、微生物の増殖を含む二次代謝物の生産方法に関する。
本発明の他の実施例において、生産される二次代謝物は、プラバスタチンである。
本発明はプラバスタチンのコンパクチンへの生物学的変換の方法に関する。前記転換は、炭酸アミドの有効濃度があることに特徴づけられる培地で実現される。
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、コンパクチンのプラバスタチンへの生物学的変換は、少なくとも35%である。
【0033】
本発明は上記のように得られた組換えタンパク質生産物に関する。
本発明の他の実施例において、得られた組換えタンパク質生成物は、インシュリン前駆体、インシュリン、その類似体又はその誘導体、インスリングラルギン、エキセンディン、カルボキシペプチダーゼ、及びリパーゼからなる群から選択される。
【0034】
本発明は、発酵培地の調製に用いる栄養組成物を提供する。その組成物は、より短い生産期間で、インシュリンや誘導体の関連類似体のより高い生産性を得るために特別に最適化された一以上の他の発酵培地成分と共に、尿素や関連する類似体の炭酸アミドや、前述した誘導体等の窒素を含む成分を具備する。
【0035】
特定の濃度で、尿素や関連する類似体や誘導体のような炭酸アミド等の特定の窒素源を補充した特定の発酵培地の利用は、酵母細胞の増殖に影響を及ぼさず、むしろ、生産性を改善する助けになることが、驚くべきことに見出された。尿素のような窒素を含む成分の添加は、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えることができる。
【0036】
本発明の要点は、ピキア属種によるインシュリン又はインシュリン類似体の発酵プロセスの生産性が、培養培地の尿素含有量によって大きく影響されるということにある。従って、培養培地に、尿素のような窒素を含む成分を添加することによって、生産物の収量は、減少した発酵時間において、相当増加する。
【0037】
本発明の最も好ましい実施例によれば、発酵培地への尿素添加は、生産性を改善する鍵となる成分「リン酸塩」の消費率も改善する。リン酸塩の消費が早くなれば、発酵サイクルの時間がより短くなり、従って、生産性がより高くなることがわかった。
従って、成長プロフィールに影響を及ぼさずにタンパク質やペプチドの発現率を上昇させて、発酵時間が短縮したのは、リン酸塩と共に新たに観測された尿素の代謝物である。
【0038】
本発明の別の態様においては、尿素添加は、任意のpHで発酵終了時に、生成物回収が増加することを可能にする。本発明は、これにより、タンパク質生産の高収率、生産サイクル期間の短縮化、プロセスに供給される栄養分のより良好な利用を可能にし、一般に資本や生産コストを低減する。
【0039】
化学的に定義される培地を用いた工業的な発酵プロセスの適切な微生物菌株は、関連する有益な化合物を生成する任意の野生株であってもよい。但し、前記野生株は、良好な成育パフォーマンスを有するものを用いる。生産生物体として用いる好適な酵母は、例えば、ピキア・パストリス、ピキア属種、サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエクルイヴェロマイシス種、又はハンゼヌラ・ポリモルファがある。
【0040】
さらに、化学的に定義される培地を用いる工業的な発酵プロセスに適した微生物菌株は、古典的な突然変異誘発性処理、又は組換えDNA変換に関連する親菌株を対象とすることによって得られた、及び/又は改良された菌株であってもよく、また、結果として生じる変異体や変異微生物菌株が、化学的に定義された培地上で、良好な成育パフォーマンスを有する供給に伴って得られた及び/又は改良された菌株でもよい。これにより、結果として生じる変異体や変異した菌株が改良されるかどうかは、化学的に定義される培地の親菌株の成長パフォーマンスに依存する、若しくは親菌株のそれに比較して化学的に定義された培地での類似の成長パフォーマンスに依存する。
【0041】
当業者が認識するように、最終的な結果は、あらゆるケースにおいて、より短時間で高力価が得られているが、炭酸アミド補助剤の最適濃度は、クローンによって異なる。
【0042】
「発酵培地(群)(fermentation media)」又は「発酵培地(fermentation medium)」は、発酵が実行され、特定の治療的生成物を生産するための発酵微生物によって利用される発酵基材や他の原料を含む環境と定義する。「窒素を含む成分」は、発酵培地内に同化できる窒素の供給源である発酵基材、原料又は成分である。
【0043】
重要な本発明の態様によれば、発酵培地の好適な窒素を含む成分は、炭酸アミド(例えば、尿素)である。これは、N−CON又は同類の群の化合物を含む。例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチル−N−フェニル尿素、イソプロピルイリデン尿素、N−フェニル尿素などの尿素の誘導体の利用は、本発明において意図されている。
【0044】
本明細書における「有効量」とは、本発明による尿素又はその誘導体の量であり、タンパク質の高い収量/収率を発酵培地にもたらす量であって、酵母細胞の成育に影響を及ぼすことなく、より短期間で生産される量である。
【0045】
「発酵微生物」とは、所望の発酵プロセスの使用に適している任意の微生物をいう。発酵微生物の例としては、菌類の微生物(例えば、酵母)が挙げられる。本発明の発酵微生物の例としては、ピギア・パストリス、ピキア属種、サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエ、クルイヴェロマイシス種、又はハンゼヌラ・ポリモルファが挙げられる。
【0046】
本発明は、メタノール誘導性菌類種を利用する任意の組換えペプチド発現に適するが、組換え技術により発現するペプチド、タンパク質、インシュリン、インシュリン前駆体、インシュリン誘導体又はインシュリン類似体に限定されるものではない。
【0047】
タンパク質又はポリペプチドを記載するために本明細書で用いられる「組換え体」という用語は、組換えポリヌクレオチドの発現によって生じるポリペプチドを意味する。細胞に関して本明細書で用いられる「組換え体」という用語は、組換えベクター、又は他のトランスファーDNA受容体として用いられる細胞を意味し、形質転換した原始細胞の子孫を含む。単一の親細胞の子孫は、偶然、若しくは計画的な突然変異により、形態学において、又は、ゲノムにおいて完全に同一でない場合や、最初の親のDNA補体とならない場合があることを理解すべきである。
【0048】
「ポリペプチド」、「タンパク質」、「ペプチド」の用語は、アミノ酸のポリマーに関連し、生産物の特定の長さに関連しない。従って、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。係る用語は、これらのポリペプチドの化学的修飾や発現後修飾が具体的実施例に含まれているか否かに関わらず、ポリペプチドの発言後修飾を指さないか又は除外する。一実施例において、分子は、ポリペプチドや、それらの類似体や誘導体である。好ましくは、ポリペプチドは、環状ペプチドである。他の好ましい実施例によれば、ポリペプチドは、非環状ペプチドである。さらに別の好ましい実施例において、ポリペプチドは、エキセンディン、エプチフィバチド(eptifibatide)、アトシバン(atosiban)、酵素(例えば、リパーゼ、カルボキシペプチダーゼなど)からなる群から選択される。
【0049】
インシュリンは、51個のアミノ酸からなり、21のアミノ酸を有するA鎖、及び30のアミノ酸を有するB鎖に分配される。これらの鎖は、2か所のジスルフィド架橋によって互いに結合されている。その利用は、天然に存在するインシュリンだけでなく、インシュリン誘導体及び類似体も含む。インシュリン化合物は、例えば、哺乳類のインシュリン化合物(例えば、ヒト・インシュリン)や、インシュリン化合物誘導体、又は類似体でもよい。
【0050】
インシュリン誘導体は、天然に存在するインシュリン(言い換えれば、ヒト・インシュリン、又は動物のインシュリン)の誘導体である。それは、少なくとも一つの天然に存在するアミノ酸残基の置換、及び/又は少なくとも一つのアミノ酸残基、及び/又は有機残基の付加によって対応して異なる、さもなければ同一の天然に存在するインシュリンと異なる。用語インシュリンは、B鎖とA鎖から構成されるポリペプチドを定義すると理解される。インシュリン誘導体は、天然に存在するインシュリンに少なくとも60%一致する。インシュリン誘導体は、天然に存在するインシュリンに少なくとも約75%、又は少なくとも約90%一致するのがさらによい。一般に、インシュリン誘導体は、ヒト・インシュリンと比較してわずかに変更された挙動がある。
【0051】
遺伝子工学によってインシュリンやインシュリン誘導体を生産する場合、インシュリン前駆体であるB鎖、C鎖及びA鎖を有する「プロインシュリン」がしばしば出てくる。プロインシュリンは、適切で正しく折りたたまれ、ジスルフィド架橋を形成し、C鎖を酵素や化学的に除去することによって、インシュリン又はインシュリン誘導体に変換される。プロインシュリン誘導体は、天然に存在するプロインシュリンのB鎖とA鎖において、少なくとも60%一致すればよい。しかしながら、連結したC−ペプチドは、任意の公知の天然に存在しているC−ペプチドと全く異なるものを選択してもよい。プロインシュリン誘導体は、天然に存在するインシュリンに少なくとも約75%、又は少なくとも約90%一致することがさらに好ましい。
【0052】
本発明のある実施例によれば、組換えインシュリン生成物は、IN−105である。合成された治療的な生成物は、特に、分子IN−105に関する。IN−105は、構造式CH3O−(C4H2O)3−CH2−CH2−COOHの両親媒性オリゴマーと、インシュリンB鎖の位置B29のεアミノ酸リシン(Lysine)で結合されるインシュリン分子である。その分子は、A1、B1、及びB29でモノ複合体(monoconjugated)であってもよく、A1,B1、及びB29の任意の組み合わせでジ複合体(di-conjygated)やトリ複合体(triconjugated)であってもよい。
【0053】
本発明の別の態様では、本発明の発酵培地を利用して、発酵を経て生産される組換えタンパク質は、環状や非環状ペプチドである。本発明の別の態様では、本発明の発酵培地を利用して、発酵を経て生産される組換えタンパク質は、酵素である。
【0054】
本発明の一態様において、発酵手順は、3段階とすることができる。すなわち、バッチ、フェッドバッチ(オプション)、及びメタノール誘導段階である。
【0055】
本発明の最も重要な態様によれば、本発明中で用いた発酵培地は、以下の成分を含有する。また、実施例は、培地を準備するプロセスである。
【0056】
培地組成
【0057】
個々の成分は、上述した順序において、最小量の水に溶解され、1時間121℃で殺菌された。微量塩類溶液及びD−ビオチン(濾過によってプレ殺菌された)は、無菌的に培地に加えられた。それぞれ、4.35ml/Lの速度で加えられた(微量塩類溶液の濃度は1.05であり、D−ビオチンの濃度は1.0である)。
【0058】
微量塩類溶液の成分:
【0059】
すべての塩類は、徐々に上水に溶かされ、殺菌している等級濾過装置による濾過により殺菌された。
【0060】
ビオチン溶液製剤:
D−ビオチン 0.2 g/L
ビオチンは、上水に溶かされ、殺菌している等級濾過装置で濾過することにより殺菌された。
【0061】
酵母抽出物と大豆ペプトン供給:
さらに、供給された酵母抽出物と大豆ペプトン(YEP)は、発酵の間も加えられた。以下の表のように準備する。
【0062】
成分は溶解され、容積は必要に応じて上水によって調製した。その溶液は、90分間で121〜123℃で、殺菌された。YEPの濃度供給は、約1.05とした。
【0063】
メタノール供給:
微量塩類溶液の12ml、D−ビオチン溶液の12mL、及び尿素の40gが、供給前にメタノールのリットル当たりに対して加えられた。
【0064】
発酵プロセス
発酵プロセスは、バッチ細胞増殖段階、オプションのグリセロール・フェッドバッチ段階、及びメタノール誘導段階を含む。
【0065】
バッチ細胞増殖段階
【0066】
バッチ・モニタリング及び制御
生産物の発酵体パラメータは、まず、以下の通りにセットされ、制御される。
温度 : 30o ± 2oC
pH : 5±0.2
DO : >10%
実行時間 : 22-24hr
【0067】
メタノール誘導段階(MIP)
メタノール供給は、バッチ段階の終了後、直ちに開始した。メタノールは、市販の殺菌している勾配フィルタを用いる濾過によって、殺菌された(オンライン)。
【0068】
MIPの初期に、pHは、培地にタンパク質の発現に基づいて、4.0±0.1、6.0±0.1、又は6.3±0.1に調整し、(クローンと同様に、生産物によって異なる)温度は、約18−24℃に調整した(生産物及びクローンによって異なる)。
【0069】
同時に、他の供給、酵母抽出物及び大豆ペプトン供給(YEP)も、初期量に対し0.4g/L/hの速度で、発酵槽で開始された。
【0070】
MIPモニタリング及び制御
温度 :18 to 30oC (クローンと同様に生成物によって変わる)
pH : 3.0 to 7.0
DO : >1% (液体培地のメタノール濃度を制御するために用いた)
実行時間 : 5 - 8 days (クローンによって変わる)
分析 pH : 1 - 9.5 (タンパク質の型に依存)
【0071】
本発明の別の態様では、種菌は、最小のグリセロール(MGY)培地に凍結乾燥されたグリセロール・ストック培養物を培養することによって準備される。「対照ピキア属プロセスガイドライン」に由来した基礎発酵培地は、オルトリン酸、無水硫酸カルシウム、硫酸カリウム、水和ヘプタ硫酸マグネシウム、水酸化カリウム、グリセロール、微量塩、及びD−ビオチンを含む。栄養培養培地はまた、通常、Ca、Mg、Mn、Fe、K、Co、Cu、Zn、B、Mo、Br及びIの水溶性化合物のような発酵培養培地に取り入れられる少量、又は微量の公知の化合物も含まなければならない。他の微量塩が含有していてもよい。本発明の微量食塩水は、特に、七水和硫酸第二銅、ヨウ化ナトリウム、モノ水和硫酸マンガンを含む。二水和モリブデン酸塩ナトリウム、ホウ酸、七水和コバルト塩化物、塩化亜鉛、七水和硫酸鉄(II).各培地成分の濃度は、特に、各生産物のために最適化されているが、以下に示されるのは、対照培地である。
【0072】
対照培地
発酵基材礎塩培地:
1リットルに対して以下の成分を混ぜる:
リン酸 : 85% (26.7 ml)
硫酸カルシウム : 0.93 g
硫酸カリウム :18.2 g
硫酸マグネシウム-7H2O :14.9 g
水酸化カリウム : 4.13 g
グリセロール : 40.0 g
1リットルに対する水
発酵槽に水を加えて、適当な容積とし、殺菌する。
【0073】
PTM1 微量塩
以下の成分を混ぜる:
硫酸第二銅5H2O 6.0 g
ヨウ化ナトリウム 0.08 g
硫酸マンガン-H2O 3.0 g
モリブデン酸塩ナトリウム-2H2O 0.2 g
ホウ酸 0.02 g
塩化コバルト 0.5 g
塩化亜鉛 20.0 g
硫酸鉄(II)-7H2O 65.0 g
ビオチン 0.2 g
塩酸 5.0 ml
1リットルの最終量に対する水
濾過し、殺菌し、常温で保存する。
【0074】
これらの成分の混合に応じて、濁った沈殿物があってもよい。培地は、濾過され、殺菌され、使用される。
【0075】
上記の対照培地に加え、尿素は、異なる濃度で含まれる。
本発明の更に別の態様によれば、バッチ段階のバイオマス生成は、グリセロールが初期培地に存在するまでである。更に、バイオマス成育は、決定的ではなく、わずかなケースにおいてなされる。
【0076】
本発明のさらに別の態様では、所望のバイオマスが達成された後、培養はメタノールと尿素を連続的に供給することによって誘発される。メタノール供給の間、酵母抽出物及びペプトン溶液も供給される。
【0077】
さらに別の態様によれば、メタノール供給率は、最大20g/L/hである。任意の当業者が認めるように、更に生産レベルを改善する供給率の最適化が、本発明によって意図されている。
【0078】
一方、本発明は、その態様がより完全に理解され、認識されるように、特定の好ましい実施例に関連して記載される。本発明は、これらの実施例に限定されない。見方を変えれば、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれる、あらゆる代替物、変形例及び均等物をカバーすることを意図する。従って、好ましい実施例を含む以下の実施例は、本発明の実施を例示するのに役立ち、それは、明細書に開示された例であって、本発明の好適な実施例の例証的考察を目的とするものであり、本発明の態様の原理と概念と同様に、発酵手順を最も有益かつ容易に理解する説明と考えられるものを提供するものであると理解されたい。
【0079】
本発明は、発酵培地の形成に利用する栄養組成物を提供する。その組成は、尿素や同種のカルバミドや、本発明は、発酵培地の形成に利用する栄養組成物を提供する。その組成物は、より短い生産期間でより高い生成率を得るために特に最適化された1以上の発酵培地成分と共に、尿素や同種のカルバミドや、カルバミン酸塩、カルボジイミド、チオカルバミド等の誘導体のような窒素を含む成分を具備する。
【0080】
本発明は、従って、酵母細胞の増殖に影響を与えることなしに、尿素添加することにより、メタノール誘導性GMOピキア・パストリスを用いた発酵プロセス(バッチ、フェッドバッチ、連続して)の間、インシュリン、グラルギン、IN105、エキセンディン、リパーゼ、カルボキシペプチダーゼのような組換えタンパク質生成物をより収率良く得ることが可能となる。
【0081】
本発明の一態様では、生産収率や生産時間に特に影響を与える窒素を含む成分は、尿素やそれらの誘導体のような炭酸アミドや、前述の類似化合物である。
本発明の別の態様では、生産生物として好適な酵母は、例えばピキア・パストリス、ピキア属種、サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエ、クルイヴェロマイシス種、又はハンセヌラ・ポリモルファを含む。
【0082】
本発明は、大腸菌や放線菌や菌類の培養に用いる、高い生物変換率を実現するためのタンパク質生産のために、発酵培地に窒素補助剤として尿素、その誘導体等の炭酸アミド、カルバミン酸塩、カルボジイミド及びチオカルバミドの有用性を示す。重要な本発明の態様は、より高い生産性のために信頼性がある最適化された栄養性培地パラメータを有する即席の発酵プロセスに、特に関する。本発明の原理は、適切な発現微生物の発酵によるタンパク質及び二次代謝物の広範囲の生産のために適用することもできる。
【0083】
本発明は、発酵培地を調製するための栄養組成物を提供する。その組成物は、より短い生産期間で、より高い生成量を得るために特別に最適化された一以上の他の発酵培地成分と共に、尿素や同類のカルバミドや、カルバメート、カルボジイミド、チオカルバミドのような誘導体等の窒素を含む成分を具備する。
【0084】
従って、本発明は、尿素の添加によって可能になる誘導性大腸菌を利用する発酵プロセス(バッチ、フェッドバッチ、連続して)の間に、酵母細胞の増殖に影響を及ぼさずに、GCSF、ストレプトキナーゼ、HGH、その他のようなタンパク質生成物のより良好な収率に得ることができる。
【0085】
本発明は、線菌及び/又は菌類の培養物を利用する発酵プロセス(バッチ、フェッドバッチ、連続して)の間、プラバスタチンのような生成物のよりよい収率を得る生物学的変換の速度を改善することもできる。
【0086】
本発明は、菌類の培養を用いるバッチプロセス又はフェッドバッチプロセスにおいて、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼのような酵素の生産率も高める。
【0087】
本発明の一態様では、生産量や生産時間に影響を特に与える窒素を含む成分は、尿素のような炭酸アミドやそれらの誘導体、及び前述の関連する化合物である。
【0088】
本発明の別の態様では、より好ましい微生物は、大腸菌に限定されず、生産微生物用途として好適な腸内細菌科系統の菌株を含む。
【0089】
本発明の別の態様では、好適な微生物は、ストレプトマイセス種、アクチノプラネス(actinomycetes)種、アスペルギルス属、リゾプス属種、ペニシリウム属種を含むが、これに限定されない、放線菌、及び/又は菌種系統の菌株である。
【0090】
本発明のその他の目的、特徴、優位点、及び態様は、以降の説明から、当業者に明白になるだろう。但し、以降の説明と実施例は、本発明の好ましい実施例を示しており、実例として記載されているのみである点を理解されたい。
開示発明の趣旨内における様々な変更や変形例は、以下の説明や現在開示されている他のものを参照することによって当業者にとって直ちに明らかになるであろう。
【0091】
本発明は、発酵培地を調製するための栄養組成物を提供する。その組成物は、所望のタンパク質生成物や二次代謝物を得るために特に最適化された一以上の他の発酵培地成分と共に、尿素や関連種類等の炭酸アミドや、前述の誘導体のような窒素を含む成分を具備する。
【0092】
特定の濃度において、尿素や関連種類等の炭酸アミドや誘導体等の特定の窒素源を補充した特定の発酵培地の利用は、発酵微生物の成育に影響を及ぼさず、むしろ、生産性を改善する助けになることが驚くことに見出された。
【0093】
尿素のような添加される窒素を含む成分は、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えることができる。
【0094】
工業的発酵プロセスに適した微生物菌株は、関連する有益な化合物を生産する任意の野生株としてもよい。但し、その野生株は、良好な成育パフォーマンスを有するものを用いる。
【0095】
さらに、工業的な発酵プロセスに適した微生物菌株は、古典的な突然変異誘発性処理、又は組換えDNA変換に関連する親菌株を対象とすることによって得られた又は改良された菌株でもよく、また、結果として生じる変異体や変異微生物菌株が、良好な成育パフォーマンスを有する供給に伴って得られた又は改良された菌株でもよい。これにより、結果として生じる変異体や変異した菌株が改良されるかどうかは、親菌株の成育パフォーマンスに依存する、若しくは、親菌株のそれに比較して類似の成育パフォーマンスに依存する。
【0096】
即時の発酵培地を用いる発酵プロセスは、生成物濃度(容積に対する生成物)、生成物収率(消費される炭素源当たり形成される生成物)、及び生成物形成(容積及び時間に対して形成される生成物)からなる群から選択される1以上のパラメータに関して改良される。さもなければ、他のプロセスパラメータやそれらの組み合わせを改良する。
【0097】
技術の当業者が認識するように、最終的な結果が、全てのケースにおいてより短時間で高力価が得られているが、炭酸アミド補助剤の最適濃度は、クローンによって異なる。
【0098】
「発酵培地(群)(fermentation media)」又は「発酵培地(fermentation medium)」とは、発酵が実行され、特定の治療的生成物を生産するための発酵微生物によって利用される発酵培養基や他の原料を含む環境と定義する。
【0099】
本発明の発酵培地は、適切な炭素発酵基材を含まなければならない。適切な発酵基材は、グルコースやフルクトース等の単糖類(グルコース、フルクトース等)や、オリゴ糖類(ラクトース、サッカロース等)や、多糖(デンプン、セルロース等)、それらの混合物や、コーンスティープリカー、甘しょ及びビート糖蜜、グリセロール、麦等のその他の成分を含んでいてもよいが、これに限定されない。さらに、炭素発酵基材は、二酸化炭素や主要な生化学中間体への代謝変換が実証されたメタノールのような一炭素発酵基材でもよい。それゆえに、本発明において利用される炭素の供給源は、広い種類の炭素を含んでいる発酵基材を含んでもよくて、微生物の選択によって限定されるだけでないことが、意図される。適当な炭素源に加えて、発酵培地は、当業者に公知なように、適切な培養物の成育のための及び所望のタンパク質や最終生成物の発現を促進するための適切なミネラル、塩類、バッファ及びその他の成分、を含まなければならない。
【0100】
「窒素を含む成分」は、発酵培地内で同化できる窒素の供給源である発酵基材、原料又は成分である。
【0101】
適切な窒素源は、大豆粉、綿実粉、ペプトン、酵母抽出物、カゼイン、カゼイン加水分解物、コーンスティープリカー、及び無機塩類であるアンモニウム・イオン、硝酸塩、そして、亜硝酸塩を含んでいてもよいが、これに限定されない。
【0102】
重要な本発明の態様によれば、発酵培地の好適な補助剤は、炭酸アミド(例えば尿素)である。これは、N−CON又は同類のグループを含んでいる化合物を含む。例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロプルピリデン尿素、フェニル尿素又はこれらの組み合わせ)等の尿素誘導体の利用は、本発明において意図されているものである。
【0103】
本明細書における「有効量」とは、生成物のかなりの高い収量/収率を発酵培地にもたらす発酵培地に導入される本発明による尿素又はその誘導体の量であり、さらに、発酵微生物の成育に影響を及ぼすことなくより短時間で生産される量である。
【0104】
「発酵微生物」は、所望の発酵プロセスにおいて好適になっている任意の微生物に関する。本発明の別の態様では、菌株バクテリア、放線菌、及び/又は菌種系統の菌株であり、大腸菌、ストレプトマイセス種、アクチノプラネス(actinomycetes)種、アスペルギルス属、リゾプス属種、ペニシリウム属種等を含むが、これに限定されない。
【0105】
タンパク質又はポリペプチドを説明するときに本明細書において用いる用語「組換え体」は、組換えポリヌクレオチドの発現によって生産されるポリペプチドを意味する。細胞に関して参照するときに本明細書において用いられる「組換え体」という用語は、組換えベクターや他のトランスファーDNAの受容体として用いられる、又は用いられている細胞を意味し、形質転換した原始細胞の子孫を含む。単一の親細胞の子孫は、偶然、若しくは計画的な突然変異により、形態学において、又は、ゲノムにおいて完全に同一でない場合や、最初の親のDNA補体とならない場合があることを理解すべきである。
【0106】
「ポリペプチド」、「タンパク質」、「ペプチド」の用語は、アミノ酸のポリマーに関連し、生成物の特定の長さに関連しない。従って、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。係る用語は、これらのポリペプチドの化学的修飾や発現後修飾が具体的実施例に含まれているか否かに関わらず、ポリペプチドの発現後修飾を指さないか又は除外する。一実施例において、分子は、ポリペプチドや、それらの類似体や誘導体である。好ましくは、ポリペプチドは、環状ペプチドである。他の好ましい実施例によれば、ポリペプチドは、非環状ペプチドである。本発明の別の態様では、組換えタンパク質は、本発明の発酵培地を利用した発酵によって生産される。
【0107】
本発明の実施例の一つは、GCSF(Granulocyte Colony stimulating factor、顆粒球コロニー刺激因子)の生産に関する。GCSFは、好中球顆粒球の激増、分化及び機能的な活性化を調整する薬学的に活性タンパク質である(Metcalf, Blood 67:257 (1986); Yan, et al. Blood 84(3): 795-799 (1994); Bensinger, et al. Blood 81(11): 3158-3163 (1993); Roberts, et al., Expt'l Hematology 22: 1156-1163 (1994); Neben, et al. Blood 81(7): 1960-1967 (1993))。
【0108】
GCSFは、任意の従来の供給源(例えば組織、タンパク質合成、自然な又は組換え体細胞を有する細胞培養物)から得られて、自然な又は組換えタンパク質(好ましくはヒト)を意味される。GCSF活性を有する任意のタンパク質(例えば、突然変異タンパク質、又は改変タンパク質)は、含まれる。
【0109】
「二次代謝物」は化合物であり、一次代謝産物から導き出される。そして、二次代謝物は、微生物により生産されるものであり、一次代謝産物でなく、かつ、標準条件で微生物の成長成育のために必要とされない化合物である。二次代謝物化合物は、二次的な化学変換や二次的な生体内変換によって有用な化合物に変わることができる。従って、このような中間体化合物の提供している改良された有用性は、究極的な有用な化合物の改良された生産にさらに通じ、本明細書ではそれ自身について、「二次代謝物」と称してもよい。
【0110】
本発明の一態様において、発酵手順は、バッチとフェッドバッチ(オプション)の2段階を具備していてもよい。
【0111】
本発明は、以下の実施例によりさらに明確化される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施例を示しており、実例として記載されているのみである点を理解されたい。上記説明とこれらの実施例から、当業者は、本発明の基本的特性を確認することができ、その趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で、それを様々な用途や条件に適応させるために、本発明から様々な変更及び変形例を行うことができる。これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。以下の実施例は、本発明の好ましい実施例を示している。
【0112】
(実施例)
実施例1
2つの発酵槽バッチが、IN105前駆体の発現のために、ピギア・パトリスを用いて実施された。1つのバッチ(実験#1)において、対照培地力価の半分は、グリセロールを除く初期培地とする。バッチ操作後、メタノールが約8g/L/hで供給される。発酵は、8日間行った。最大生成物濃度は、7日以内に3.0g/Lに達し安定した。別のバッチ(実験#2)においては、同じ培地組成物が用いられ、さらに0.1M尿素を発酵槽に加える。バッチ操作後、4%w/v尿素と共にメタノールが供給される。発酵は8日間行った。最大生成物濃度は、7日で3.5に達した。細胞増殖プロフィールに有意差はなかった。上記実験から得られるバイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図1及び図2に示す。
【0113】
実施例2
生産物の発現率を確認するため、尿素添加系のインシュリン前駆体の発現が、ピギア・パトリス発酵を使用して検討された。この試験において、対照培地組成物が用いられ、4%の尿素を有するメタノールが、20g/L/hのより高い率で供給された。尿素が発酵槽に加えられない時の最大生成物濃度が、182時間で4.26g/Lに比較して、この試験では、137での4.21g/Lを達成した。細胞増殖プロフィールの違いは観察されなかった。発酵槽への尿素添加により、発育プロフィールに影響を与えることなしに、生成物率が増加し、かつ発酵時間が減少した。上記実験から得られるバイオマス及び生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図3及び図4に示す。
【0114】
実施例3
2つの発酵槽バッチが、インスリングラルギン前駆体の発現のために、ピギア・パトリスを用いて実施された。1つのバッチ(実験#1)において、対照培地力価の半分は、グリセロールを除く初期の培地とする。バッチ操作後、メタノールが8g/L/hの供給率で供給される。発酵は、10日間行った。最大生成物濃度は、10日以内に1.03g/Lに達し安定した。別のバッチ(実験#2)においては、同じ培地組成物が用いられ、さらに0.1M尿素を初期の発酵培地に加える。バッチ操作後、4%尿素のメタノールが供給される。発酵は9日間行った。最大生成物濃度は、9日で1.75に達した。細胞増殖プロフィールに有意差はなかった。上記実験から得られるバイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図5及び図6に示す。
【0115】
実施例4
2つの発酵槽バッチが、エキセンディン前駆体の発現のために、ピキア・パストリスを用いて実施された。1つのバッチ(実験#1)において、対照培地力価の半分は、グリセロール・フェッドバッチで、グリセロールを除く初期培地が使われる。グリセロール・フェッドバッチ操作後、メタノールは、供給率11g/L/hで供給される。発酵は6日間行った。最大生成物濃度は、6日で0.74g/Lに達し安定した。別のバッチ(実験#2)において、同じ培地組成物が用いられ、さらに、0.1M尿素が発酵槽に加えられる。バッチ操作後、4%尿素のメタノールが供給される。発酵は、5日間行った。最大生成物濃度は、5日間で0.78に達した。細胞増殖プロフィールにおいて、観察される有意差はなかった。上記実験から得られるバイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図7及び図8に示す。
【0116】
実施例5
2つの発酵槽バッチが、酵素であるリパーゼの発現のために、ピギア・パトリスを用いて実施された。1つのバッチ(実験#1)において、対照培地力価の半分は、グリセロールを除く初期の培地とする。バッチ操作後、メタノールが供給率、約6g/L/hで供給される。発酵は、8日間行った。最大生産物は、7日間で約1650×106リパーゼユニットに達し安定した。別のバッチ(実験#2)において、同じ培地組成物が用いられ、さらに、0.1M尿素が発酵槽に加えられる。バッチ操作後、メタノール4%w/vと共に、尿素が供給される。発酵は8日間行った。最大生産物量は、7日で約2500×106リパーゼユニットに達し安定した。細胞増殖プロフィールに有意差はなかった。上記実験から得られる総生産物プロフィールを、図9に示す。
【0117】
実施例6
メタノール・フェッドバッチの間、1、2、3及び5%の尿素含有メタノールによって、IN105前駆体の生産のために必要とされるメタノール・バッチの尿素濃度効果が検討された。残留パラメータは、実施例1と同様に維持された。最大生成物濃度は、最大生成物濃度は、バッチ中、7日間で、メタノール中における尿素0、1、2、3、4、及び5それぞれにおいて、3.0、3.2、2.5、3.3、3.5、及び2.8g/l0に達した。より良い生産性は、メタノール誘導段階の間、メタノール中で、4%尿素が用いられた時に観察された。バイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図10及び図11に示す。
【0118】
実施例7
メタノール供給率の20g/L/hの他の試験において、最大インシュリン前駆体濃度を可能にする、最も有効な尿素濃度を確認するために、尿素の濃度を変化させた。最大生成物濃度は、0、1、2、3、4、及び5%の尿素濃度メタノールが供給されるバッチ中、それぞれ182、166、140、164、137、及び170時間で、4.26、4.03、3.39、4.16、4.21、及び5.31g/Lに達した。バイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図12及び図13に示す。その試験は、尿素の追加がインシュリン前駆体生産率を上昇させることを示し、5%の尿素濃度のメタノールが供給されるときに、発現率が最も高かった。
【0119】
実施例8
メタノール誘導段階において、残留尿素濃度を、細胞フリーの上清中で、0.1、0.3、0.5、0.7、1.2、及び1.5Mの異なるレベルで維持する試験バッチを検討し、生産性の効果を検討した。全てのバッチは、実施例1のように同様のパラメータと培地組成物とした。残留尿素は、別に尿素ストックを供給することによって維持された。結果は、バッチの全体にわたって発酵の間、尿素が、細胞フリーな上澄み中で1Mの範囲が維持されるときに、最大の生産物が達成できることを示す。残留尿素が約0.5Mのときに、最大生成物濃度4.46g/Lが達成される。この実験において、供給される全尿素は、残留尿素がそれぞれ0、0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、1.2、及び1.5Mに維持された試験における最終液体培地容積に対して0、0.2、0.5、0.9、1.2、1.8、2.3及び2.9Mであった。この結果を図14に示す。
【0120】
実施例9
インシュリン前駆体発酵の試験も行った。この試験において、メタノールは、20g/L/hの割合で供給された。インシュリン前駆体発酵において、0.7Mの残留濃度が維持されるときに、生成物濃度が最も高いことが観察された。この試験において、残留尿素がそれぞれ0、0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、1.2、及び1.5Mに維持された試験において、全尿素は、最終的な液体培地量の0.0、1.6、2.7、3.5、7.0、8.8、11.7、及び13.3Mに等しく供給された。結果は、図15に示すように、培養物が有意な量の尿素を消費することを示す。
【0121】
実施例10
IN105の別のバッチは、標準対照培地と、それに4%の尿素を有するメタノールを〜20g/L/h供給したもので実施した。尿素が発酵槽に供給されなかった場合の183時間、3.76g/Lの収率に比較して、この試験においては、3.71g/Lの生成物濃度が、113時間において達成した。研究の結果は、図16及び図17に示す。
【0122】
実施例11
更なる実験において、尿素は、発酵生産性に対するそれらの効果を観察するために、さまざまな他の合成物と置き換えられた。別々のバッチにおいて、チオ尿素、ジイミド、カルボジイミド、チオカルバミドは、1%の濃度で試験された。これらの全部が、図18に示すように、対照に対して生産性を改善することがわかった。
【0123】
実施例12
実験において、発酵中の尿素供給が、酵母によるリン酸の取り込みが増加し、尿素を供給しないバッチより早く培地におけるリン酸の消費が生じることが観察された。したがって、より速いリン酸消費とより高い生産性(g/L/h)は、ペプチド及びタンパク質の生産のための標準、あるいは改質したピキア属発酵手順の中で、尿素の取り込みに起因して達成される代謝シフトの結果である。
【0124】
実施例13
成育培地は、水1000mlに、大豆粉5.0g、ブドウ糖一水和物20.0g、大豆ペプトン5.0g、CaCO31.0g、K2HPO40.1gを含有して、準備された。種培地のpHは、NaOH溶液を用いて6.8±0.1に調製した。殺菌された接種原培地は、培養(ストレプトマイセス属種(BICC 6826))の胞子バイアル懸濁液を植え付けて、好気性条件で、48時間28±1℃で培養された。成育種は、水1000ml(phは7.0±0.1に合致した)に、大豆粉37.5g、ブドウ糖一水和物22.5g、綿種粉3.75g、穀物浸出液7.5g、NaCl7.5g、及び消泡剤SAG0.5gを含有する発酵培地へ転移される。48時間の培養後、殺菌されたコンパクチン溶液が、少量のブドウ糖と共に加えられた。24時間毎に、いくつかの同様のフラスコの1つが、コンパクチンのプラバスタチンへの生物学的変換について調べるために集められる。コンパクチンが合計3.0g/Lが供給されるまで、上記手順が24時間毎に繰り返された。
【0125】
改質発酵培地を使用する実験の開始前に、微生物の尿素毒性レベルを確立するために、異なるレベルの発酵培地に加えられた。濃度0.0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、及び4.0g/Lは、上記のように、培養される発酵培地が入っているフラスコに加えられた。48時間の培養後、フラスコの各々の生育が観察された。図20にそのデータを示す。
【0126】
尿素3.0g/Lを超える濃度は、培養の成育上の阻害を示した。繰り返し行った試験において、同様の結果を示した。そのため、3.0g/L以下の濃度が、生物学的変換上において、尿素効果があると結論した。
【0127】
上記したように、同様の課題が、付加的な構成要素として尿素を含む生産培地でなされた。生産培地の尿素の濃度は0.0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、及び3.0g/Lに保たれ、植え付け時に加えられた。
【0128】
48時間の培養後、殺菌したコンパクチン溶液は、ブドウ糖供給と共に供給された。生物学的変換は、同様の条件で操作している複数のフラスコのうちの1つの回収によって、24時間後に評価された。この手順を、3g/lのコンパクチンが累積的に供給されるまで、24時間毎に繰り返した。生物学的変換は、プラバスタチンの形成のために消費される総コンパクチンに関して評価された。力価とパーセンテージ変換の実験結果を、それぞれ図21及び図22に示す。
【0129】
59.5%変換の対照フラスコと比較し、尿素濃度1.5g/Lのフラスコは、最大で85.4%、コンパクチンのプラバスタチンへの転換を示した。
【0130】
実施例14
生成物発現率を確認するために、大腸菌発酵を用いて、尿素有りの顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)の発現が検討された。試験に用いられる培地は、プレ・シード培地、シード培地、及び生産培地から成る。プレ・シード培地は、水1000mlに対して、大豆ペプトン10.0g、NaCl10.0g、イースト抽出物10.0gを含む。シード培地は、水1000mlに対して、1.2gの硫酸アンモニウム、2.4gの硫酸マグネシウム、10gのイースト抽出物、11gのDMH、5gのK2HPO4、40mlの微量塩類を含む。生産培地は、水1000mlに対して、ブドウ糖一水和物11g、硫酸アンモニウム2.4g、硫酸マグネシウム4.8g、イースト抽出物20g、K2HPO410g、微量塩類40mlを含む。phは、アンモニアで7.0に調整される。バッチ段階完了後、バイオマスは、発酵体であるブドウ糖とイースト抽出物の連続供給によって上昇させる。"ceel mass"は、誘導され、生成物の生産のために、さらに8時間実施される。
【0131】
3つの発酵体バッチは、大腸菌発酵プロセスの尿素効果を確立するために必要とされた。第一バッチ(実験#1)は、任意の尿素添加なしの対照バッチであった。用いられる媒体は、上述される。バッチは、~180g/L WCWで誘発された。発酵は、誘導後、多くとも8時間まで継続された。達成される最大生成物は、0.028g/wcwの具体的な活性を有する6.6g/Lであった。第二バッチ(実験#2)において、1g/Lの尿素が、上で説明される媒体に加えて、発酵槽に加えられた。バッチは、尿素(1g/L)の同程度の量を有する供給によって供給された。バッチは~180g/L WCWで誘発された、そして、発酵は誘導後、8時間継続された、そして、得られた生成物は0.033g/WCWの具体的な活性を有する7.4g/Lであった。第3のバッチ(実験#3)は、2g/Lの尿素を有する以外、実験#2と同様とした。達成される最終生成物は、0.032g/wcwの具体的な活性を有する6.58g/Lであった。
【0132】
その結果が示すように、細胞生育プロフィールに関する優位さは観察されなかった。発酵槽に添加する尿素が、成長プロフィールに影響することなしに生成物形成を増加させることを示す。具体的生産性において、全体的に凡そ18%増加が得られた。その実験から生じるWCWプロフィールを図23に、具体的生産性プロフィールを図24に示す。
【0133】
実施例15
同様の実験は、ストレプトキナーゼの生産のために発現系として大腸菌を用いて実施された。用いられる培地は実施例13に記載したものと同じである、そして、濃度がテストした尿素濃度も同じである。実施例14において説明されるように、同様の3つのバッチは尿素の0g/L、1g/Lおよび2g/Lによって行われた。尿素なしの対照バッチ(実験#1)は、0.026g/wcwの具体的な生産性を有する誘導の8時間後、7.06g/Lの最終的な生産性を与えた。最大力価は、10.5g/Lの生産性と0.041g/wcwの具体的な生産性を有する1g/L尿素バッチ(実験#2)において達成された。驚くべきことに、2g/Lの尿素(実験#3)を有するバッチは、0.022g/wcwの具体的な生産性と、わずか6.56g/Lの生成物を与えた。この生成物において、1g/L以上の尿素濃度の増加は、具体的な生産性と力価の急激な低下をもたらした。
【0134】
実施例2のように、3つの試験のWCWにおける重要な変化はなかった。それは、生産性の増大は、生成物形成を増加させ、バイオマスにはリンクしていないことを明らかに示している。具体的生産性において、全体的に凡そ57%の増加が得られた。上記実験から得られるWCWプロフィールを図25に、力価プロフィールを図26に示す。
【0135】
実施例16
リパーゼ酵素を生産することが知られているリゾムコール属種(BICC 362)においても、培地において、尿素添加で生産性が改善することを示した。この培養物から生じるリパーゼは、エステル化および加水分解のような生物学的変換反応のために広範囲に用いられる。2つの発酵バッチ(10Lの容積)は、尿素添加なしのものと、尿素を0.5g/L添加したもので行った。より高い尿素濃度(1g/l)を有する試験も、行ったところ、pHを維持するために苛性アルカリの消費が大変高く、生産性がより低いという結果となった。リゾムコール属種(BICC 362)のための成育培地は、マイーダ(Maida)41.4g、サッカロース10g、ペプトン3.06g、硫酸アンモニウム2g、イースト抽出物2g、リン酸カリウム、0.85gと、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを其々1g含む。培地全体は、多くとも水1Lとされる。育てられたシード(10%のv/v)は、水1000ml中、ブドウ糖12.5g、大豆ペプトン37.5g、大豆粉25、リン酸カリウム2.5、硫酸マグネシウム0.625、大豆油12.5gを含んでいる生産培地へ移転される。培地のpHは、6.0に調整され、苛性アルカリ添加でバッチにわたって、6.0に維持された。
【0136】
尿素(0.5グラム/リットル)の添加は、対照バッチと比較して、リパーゼ生産率が増加した。尿素のより高い濃度は、より低い生産性を示した。そのデータを図27に示す。
【0137】
本発明は、記述した特定の方法論、手順、細胞系、種、属、培地成分に限定されず、変更が可能であることを理解されたい。本願明細書において用いられる用語が具体例だけを説明するためにあって、特許請求の範囲によって限定する本発明のスコープを限定する意図がないことを理解されたい。上記記載は、本発明を実践する方法を当業者に示すためのものであって、記述を読むことにより、即座に、当業者にとって明らかになる明らかな変形例やバリエーション全てを詳述することを意図していない。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、メタノール誘導性菌類発現系(例えば、ピキア属(Pichia))を用いる生物学的変換率の向上を実現した組換えタンパク質や、インシュリン、インシュリンの類似体、エキセンディン等のペプチドや、リパーゼ等の酵素の生産のための発酵培地において、窒素補助剤として尿素あるいはその誘導体等の炭酸アミド、カルバミン酸塩、カルボジイミド及びチオカルバミドの有用性を示す。本発明の重要な態様は、特に、より短い生産期間で、より高い生産量を産出するための、最適化された栄養性媒体パラメータを有する即席の発酵プロセスに関する。本発明の原理は、適切な発現微生物の発酵による広範囲なタンパク質及び二次代謝物の生産に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術と従来技術
ピキア・パストリス(P. pastoris)のような発現系に基づく酵母は、組換えタンパク質を発現するために一般的に用いられる(非特許文献1)。ピキア・パストリス発現系は、メタノール誘導性アルコール・オキシダーゼ(AOX1)プロモータ(アルコール・オキシダーゼ(メタノールの代謝の第一段階に触媒作用を及ぼす酵素)の発現をコードする遺伝子を制御する)を使用する(非特許文献2)。ピキア・パストリスは、バイオリアクタ培養における最少培地で、高発現レベルや、細胞外タンパク質の効果的な分泌や、グリコシル化のような翻訳後修飾や、高細胞密度への成育に対する潜在能力を有する。
【0003】
ピキア・パストリスを用いたフェッドバッチ発酵プロセスは、インビトロゲン社(サンディエゴ、CA)の「ピキア属発酵プロセスガイドライン」に記載されており、以下、対照群として引用する。組換えタンパク質の生産のために、炭素源としてグリセロールを用い、形質転換ピキア・パストリスを、所望の高細胞密度バイオマスに成育させる。生産段階は、誘導物質であって、唯一の炭素源であるメタノールを培養物に供給することによって開始される。バイオマス生成、及び生産段階の間、アンモニアは、窒素源として機能し、pHを調節するために用いられる。
【0004】
種々の効果が、酵母発現系によって与えられたが、バイオリアクタにおける効果的かつ最大限の組換えタンパク質生産のために、栄養的に影響される物理化学的な環境を最適化する必要性がなお存在する。高い比生産性を達成することは、非常に望ましいことである。それは、初期の培地構成や、メタノール供給の戦略や、プロセス物理化学的パラメータの最適化によって得られる。硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、二リン酸アンモニウム、硝酸カリウム、尿素、コーンスティープリカー(corn steep liquor)、大豆ミール(soya bean meal)、綿実粕(cotton seed meal)、甘しょ及びビート糖蜜(cane and beet molasses)、ペプトン、ミール加水分解物等が、細菌や酵母や菌類の成育のために、窒素源として使われてきたという報告がある。微生物の「成育」のための異なる炭素、及び窒素源の利用は、従来技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO/2007/005646号
【特許文献2】米国特許4,288,554号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Cregg, J. M. et al., in Dev. Ind. Microbiol. 29:33-41; 1988.
【非特許文献2】Cregg J M. et al.in Bio/Technology 11: 905-910; 1993.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、組換えタンパク質や、ペプチドや酵素の効果的生産のための、特に定義された炭素と窒素源の最適な組合せは、従来技術の文献において開示されていなかった。例えば、特許文献1には、コーンスティープリカー、コーン抽出物(corn extract)、酵母自己分解物質(yeast autolysate)及び尿素のような様々なより安価な窒素源と同様に複合糖質を含んでいる混合の成育培地で組換え酵母を培養することによって、それ自体によるエタノール生産を開示している。更に、このプロセスは、組換えタンパク質の生産のために、本発明で開発されたプロセスと異なり、メタノール誘導性機構を成育又は生産のために利用しない。
【0008】
同様に、特許文献2には、非GMO(遺伝子組換え生物)カンジダ属(Candida species)の単なる成育のために、窒素や基礎塩類培地の他の供給源と組み合わせた尿素を用いる連続発酵プロセスを記載する。その文献には、組換えタンパク質や、ヒト・インシュリン及びその類似体のペプチドや、リパーゼ等の酵素の効果的生産のために、メタノール誘導性GMO(遺伝子組換え生物)ピキア・パストリスを用いる発酵プロセス(バッチ、フェッドバッチ、連続的な)において尿素が利用できることについて、何らの示唆も教示もない。
【0009】
尿素加水分解から発生するアンモニアの残留濃度と同様に、尿素の残留濃度に関して最適化された濃度内で、尿素のような豊富で可溶な窒素源の制御された添加によって特徴づけられる規定された発酵培地の使用によって、生産物や生産性が高くなって、生産時間の短縮化が可能になることが、驚くべきことに見出された。
【0010】
大腸菌(E. coil)を利用している組換えタンパク質の生産は長期に亘って公知であり、発現系は明確に研究され、理解されている。発現系に基づく大腸菌は、GCSF、HGH、ストレプトキナーゼや多くの他の類似の生物学的生産物等のような分子の生産のために広く使われてきた。組換えタンパク質の生産のために、炭素源であるブドウ糖を用いて、形質転換された大腸菌を所望の高い細胞密度バイオマスに成育させる。生産段階は、必要な誘因物質を使用して誘導することによって開始され、培養は、発酵終了まで栄養分の最少供給により維持される。
【0011】
菌類培養は、酵素やその他の必需分子等の有益なバイオエンティティの生産のために、長年に亘って利用されてきた。リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属などの菌類培養は、食品、繊維、革、及びその他の産業において用いられるリパーゼ、アミラーゼ、デキストラナーゼ等の広範な種類の酵素の生産のために、古典的な発酵において用いられてきた。抗生物質生産のために多用されている放線菌は、人類のために有益ないくつかの二次代謝物の生産のために広範囲に利用されてきた。菌類及び放線菌の鍵となる特性のうちの一つは、ヒドロキシル化、エステル化などのような生物学的変換である。主な優位性は、生物学的変換がターゲット特異的であり、比較的高純度の生成物が得られることにある。古典的には、コンパクチン(compactin)のプラバスタチン(pravastatine)への変換がある。
【0012】
公知の方法論的な改良には、攪拌や酸素供給のような発酵技術に関する手段、あるいは、栄養培地の組成に関する変更(発酵中の糖濃度の下限や、下流処理(down-stream processing)変更や、微生物自身等の固有の特性に関連した変更など)がある。
【0013】
尿素のような、ある種の豊富で可溶な窒素源の制御された添加によって特徴づけられる発酵培地の使用が、より高い生産性、及び/又はより高率な生物学的変換をもたらし、短い生産時間が可能になることが、驚くべきことに見出された。
【0014】
本発明の課題
本発明の主な目的は、メタノール誘導性菌類種の発酵による、組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体を生産するための発酵培地を得ることである。
【0015】
本発明の他の主な目的は、微生物の発酵による、組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体を生産するための発酵培地を得ることである。
【0016】
本発明の更にもう一つの主な目的は、微生物の発酵による、二次代謝物を生産するための発酵培地を得ることである。
【0017】
本発明の更に別の主な目的は、組換え体、若しくは非組換え体タンパク質生成物、それらの誘導体又はその類似体の生産方法を得ることである。
【0018】
本発明の更に別の主な目的は、二次代謝物の生産方法を得ることである。
【0019】
本発明の更に別の主な目的は、コンパクチンのプラバスタチンへの生物学的変換の方法を得ることである。
【0020】
本発明の更に別の主な目的は、組換えタンパク質生成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の開示
従って、本発明は、メタノール誘導性菌類種を用いる発酵によって、組換えタンパク質、その誘導体、類似体を生産するための、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地に関する。また、本発明は、微生物を用いる発酵によって、組換えタンパク質、その誘導体、類似体を生産するための、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地に関する。また、本発明は、微生物を用いる二次代謝物の生産のための、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地に関する。また、本発明は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、メタノール誘導性菌類種を増やすことを含む組換えタンパク質、その誘導体、類似体を生産するための生産方法に関する。また、本発明は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、誘導又は非誘導タンパク質発現微生物を増やすことを含む、組換え、非組換えタンパク質生成物、それらの誘導体、類似体の生産方法に関する。また、本発明は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地で、微生物を増やすことを含む二次代謝物の生産方法に関する。また、本発明は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地でその変換が実現される、コンパクチンのプロバスタチンへの生物学的変換方法に関する。 また、本発明は、前述の請求項のいずれかによって得られる組換えタンパク質生成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】尿素添加有り/無しのIN−105前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図2】尿素添加有り/無しのIN−105前駆体の生成物濃度・プロフィールの比較。
【図3】尿素添加有り/無しのインシュリン前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図4】尿素添加有り/無しのインシュリン前駆体の生成物濃度・プロフィールの比較。
【図5】尿素添加有り/無しのインスリングラルギン前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図6】尿素添加有り/無しのインスリングラルギン前駆体の生成物濃度・プロフィールの比較。
【図7】尿素添加有り/無しのエキセンディン前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図8】尿素添加有り/無しのエキセンディン前駆体の生成物濃度のプロフィールの比較。
【図9】尿素添加有り/無しのリパーゼ酵素の生成物濃度のプロフィールの比較。
【図10】IN−105前駆体発酵における、尿素濃度によるバイオマス・プロフィール。
【図11】IN−105前駆体発酵における、尿素濃度による生成物濃度・プロフィール。
【図12】インシュリン前駆体発酵における、尿素濃度によるバイオマス・プロフィール。
【図13】インシュリン前駆体発酵における、尿素濃度による生成物濃度・プロフィール。
【図14】IN−105生産における残留尿素濃度と最大生成物濃度。
【図15】インシュリン前駆体生成における残留尿素濃度と最大生成物濃度のプロフィール。
【図16】〜20g/L/hのメタノール供給率を有するIN−105前駆体のバイオマス・プロフィールの比較。
【図17】〜20g/L/hのメタノール供給率を有するIN−105前駆体の生成物濃度・プロフィールの比較。
【図18】尿素以外の合成物の検討、ピキア属発酵の生産性の影響を検討するための他の類似化合物試験。
【図19】液体培地のリン酸塩イオンの残留濃度に対する尿素効果、菌種によるリン酸塩代謝の尿素効果。
【図20】プラバスタチン生成のための培養成育プロフィール。
【図21】尿素添加有りのプラバスタチンの力価。
【図22】尿素添加有りのコンパクチンのプラバスタチンへの変換率。
【図23】大腸菌のG−CSF生産のWCW比較。
【図24】GCSFにおける比生産性の尿素効果。
【図25】大腸菌のストレプトキナーゼ生産のWCW比較。
【図26】ストレプトキナーゼの比生産性に対する尿素効果。
【図27】リゾムコール属種を用いるリパーゼ生成の尿素効果。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、メタノール誘導性菌類種を用いる発酵による組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産の発酵培地に関する。前記培地は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある。
【0024】
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素(isopropylpylideneurea)、フェニル尿素又はこれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明のさらにもう一つの実施例において、炭酸アミドは尿素である。
本発明のさらに別の実施例において、炭酸アミドは、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えられる。
本発明のさらに別の実施例において、炭酸アミドの残留濃度は、多くとも1Mまでである。
本発明のさらに別の実施例において、炭酸アミドの残留濃度を多くとも1Mまでに保ち、かつ基礎塩類や微量元素の濃度を、対照培地の0.1Xから5Xまでの変更とする。
本発明のさらに別の実施例において、リン酸塩の取り込みが改善される。
本発明のさらに別の実施例において、組換えインシュリン生成物を発現するメタノール誘導性菌類種は、ピギア・パトリス、ピキア属種、サッカロミセス属(Saccharomyces)種、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)種、又はハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)からなる群から選択される。
【0025】
本発明は、微生物を用いる発酵による組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産のための発酵培地に関する。前記培地は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある。
本発明は、微生物を用いる発酵による二次代謝物の生産の発酵培地に関する。前記培地は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある。
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明のさらにもう一つの実施例において、炭酸アミドは尿素である。
本発明のさらに別の実施例において、炭酸アミドは、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えられる。
本発明の別の実施例において、炭酸アミドの残留濃度は、10g/Lまでである。
【0026】
本発明のさらに別の実施例において、微生物は、大腸菌、ストレプトマイセス属(Streptomyses)種、アスペルギルス属(Aspergillus)種、リゾプス(Rhizopus)、ペニシリウム属(Penillium)種、及びリゾムコール属(Rhizomucor)種からなる群から選択される。
【0027】
本発明は、炭酸アミドに有効濃度があることに特徴づけられる発酵培地において、メタノール誘導性インシュリン発現菌類種を増殖することを含む、組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産方法に関する。
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素、又はそれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、炭酸アミドは尿素である。
【0028】
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えインシュリン生成物は、IN−105である。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えインシュリン生成物は、インシュリン前駆体、インシュリン、その類似体又は誘導体である。
本発明の更に別の実施例において、組換えインシュリン生成物は、インスリングラルギンである。
【0029】
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えタンパク質は、環状、若しくは非環状ペプチドである。
本発明の更に別の実施例において、組換えペプチドはエキセンディンである。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えタンパク質は酵素である。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換え酵素生成物はリパーゼである。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えタンパク質は、インシュリン前駆体、インシュリン、その類似体又はその誘導体、インスリングラルギン、エキセンディン、カルボキシペプチダーゼ、及びリパーゼからなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、組換えインシュリン生成物を示すメタノール誘導性菌類種は、ピキア・パストリス、ピキア属種、サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエ、クルイヴェロマイシス種、又はハンゼヌラ・ポリモルファからなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、メタノール誘導性菌類種は、ピキア・パストリスである。
【0030】
本発明の更に別の実施例において、メタノール供給率は、1時間あたり液体培地(broth)の20g/Lまでとする。本発明の更に別の実施例において、得られる最大生成物力価は、0.1g/Lを超えるものである。
【0031】
本発明は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある発酵培地において、誘導性、非誘導性タンパク質発現微生物が増殖することを含む、組換え、若しくは非組換えタンパク質生成物、それらの誘導体、若しくは類似体の生産方法に関する。
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、炭酸アミドは尿素である。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換えタンパク質生成物は、G−CSFである。
本発明の更に別の実施例において、生産される組換え生産物は、ストレプトキナーゼである。
本発明の更に別の実施例において、タンパク質生成物はリパーゼである。
【0032】
本発明は、炭酸アミドに有効濃度があるという特徴がある発酵培地において、微生物の増殖を含む二次代謝物の生産方法に関する。
本発明の他の実施例において、生産される二次代謝物は、プラバスタチンである。
本発明はプラバスタチンのコンパクチンへの生物学的変換の方法に関する。前記転換は、炭酸アミドの有効濃度があることに特徴づけられる培地で実現される。
本発明の他の実施例において、炭酸アミドは、尿素又はその誘導体(例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせ)からなる群から選択される。
本発明の更に別の実施例において、コンパクチンのプラバスタチンへの生物学的変換は、少なくとも35%である。
【0033】
本発明は上記のように得られた組換えタンパク質生産物に関する。
本発明の他の実施例において、得られた組換えタンパク質生成物は、インシュリン前駆体、インシュリン、その類似体又はその誘導体、インスリングラルギン、エキセンディン、カルボキシペプチダーゼ、及びリパーゼからなる群から選択される。
【0034】
本発明は、発酵培地の調製に用いる栄養組成物を提供する。その組成物は、より短い生産期間で、インシュリンや誘導体の関連類似体のより高い生産性を得るために特別に最適化された一以上の他の発酵培地成分と共に、尿素や関連する類似体の炭酸アミドや、前述した誘導体等の窒素を含む成分を具備する。
【0035】
特定の濃度で、尿素や関連する類似体や誘導体のような炭酸アミド等の特定の窒素源を補充した特定の発酵培地の利用は、酵母細胞の増殖に影響を及ぼさず、むしろ、生産性を改善する助けになることが、驚くべきことに見出された。尿素のような窒素を含む成分の添加は、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えることができる。
【0036】
本発明の要点は、ピキア属種によるインシュリン又はインシュリン類似体の発酵プロセスの生産性が、培養培地の尿素含有量によって大きく影響されるということにある。従って、培養培地に、尿素のような窒素を含む成分を添加することによって、生産物の収量は、減少した発酵時間において、相当増加する。
【0037】
本発明の最も好ましい実施例によれば、発酵培地への尿素添加は、生産性を改善する鍵となる成分「リン酸塩」の消費率も改善する。リン酸塩の消費が早くなれば、発酵サイクルの時間がより短くなり、従って、生産性がより高くなることがわかった。
従って、成長プロフィールに影響を及ぼさずにタンパク質やペプチドの発現率を上昇させて、発酵時間が短縮したのは、リン酸塩と共に新たに観測された尿素の代謝物である。
【0038】
本発明の別の態様においては、尿素添加は、任意のpHで発酵終了時に、生成物回収が増加することを可能にする。本発明は、これにより、タンパク質生産の高収率、生産サイクル期間の短縮化、プロセスに供給される栄養分のより良好な利用を可能にし、一般に資本や生産コストを低減する。
【0039】
化学的に定義される培地を用いた工業的な発酵プロセスの適切な微生物菌株は、関連する有益な化合物を生成する任意の野生株であってもよい。但し、前記野生株は、良好な成育パフォーマンスを有するものを用いる。生産生物体として用いる好適な酵母は、例えば、ピキア・パストリス、ピキア属種、サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエクルイヴェロマイシス種、又はハンゼヌラ・ポリモルファがある。
【0040】
さらに、化学的に定義される培地を用いる工業的な発酵プロセスに適した微生物菌株は、古典的な突然変異誘発性処理、又は組換えDNA変換に関連する親菌株を対象とすることによって得られた、及び/又は改良された菌株であってもよく、また、結果として生じる変異体や変異微生物菌株が、化学的に定義された培地上で、良好な成育パフォーマンスを有する供給に伴って得られた及び/又は改良された菌株でもよい。これにより、結果として生じる変異体や変異した菌株が改良されるかどうかは、化学的に定義される培地の親菌株の成長パフォーマンスに依存する、若しくは親菌株のそれに比較して化学的に定義された培地での類似の成長パフォーマンスに依存する。
【0041】
当業者が認識するように、最終的な結果は、あらゆるケースにおいて、より短時間で高力価が得られているが、炭酸アミド補助剤の最適濃度は、クローンによって異なる。
【0042】
「発酵培地(群)(fermentation media)」又は「発酵培地(fermentation medium)」は、発酵が実行され、特定の治療的生成物を生産するための発酵微生物によって利用される発酵基材や他の原料を含む環境と定義する。「窒素を含む成分」は、発酵培地内に同化できる窒素の供給源である発酵基材、原料又は成分である。
【0043】
重要な本発明の態様によれば、発酵培地の好適な窒素を含む成分は、炭酸アミド(例えば、尿素)である。これは、N−CON又は同類の群の化合物を含む。例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチル−N−フェニル尿素、イソプロピルイリデン尿素、N−フェニル尿素などの尿素の誘導体の利用は、本発明において意図されている。
【0044】
本明細書における「有効量」とは、本発明による尿素又はその誘導体の量であり、タンパク質の高い収量/収率を発酵培地にもたらす量であって、酵母細胞の成育に影響を及ぼすことなく、より短期間で生産される量である。
【0045】
「発酵微生物」とは、所望の発酵プロセスの使用に適している任意の微生物をいう。発酵微生物の例としては、菌類の微生物(例えば、酵母)が挙げられる。本発明の発酵微生物の例としては、ピギア・パストリス、ピキア属種、サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエ、クルイヴェロマイシス種、又はハンゼヌラ・ポリモルファが挙げられる。
【0046】
本発明は、メタノール誘導性菌類種を利用する任意の組換えペプチド発現に適するが、組換え技術により発現するペプチド、タンパク質、インシュリン、インシュリン前駆体、インシュリン誘導体又はインシュリン類似体に限定されるものではない。
【0047】
タンパク質又はポリペプチドを記載するために本明細書で用いられる「組換え体」という用語は、組換えポリヌクレオチドの発現によって生じるポリペプチドを意味する。細胞に関して本明細書で用いられる「組換え体」という用語は、組換えベクター、又は他のトランスファーDNA受容体として用いられる細胞を意味し、形質転換した原始細胞の子孫を含む。単一の親細胞の子孫は、偶然、若しくは計画的な突然変異により、形態学において、又は、ゲノムにおいて完全に同一でない場合や、最初の親のDNA補体とならない場合があることを理解すべきである。
【0048】
「ポリペプチド」、「タンパク質」、「ペプチド」の用語は、アミノ酸のポリマーに関連し、生産物の特定の長さに関連しない。従って、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。係る用語は、これらのポリペプチドの化学的修飾や発現後修飾が具体的実施例に含まれているか否かに関わらず、ポリペプチドの発言後修飾を指さないか又は除外する。一実施例において、分子は、ポリペプチドや、それらの類似体や誘導体である。好ましくは、ポリペプチドは、環状ペプチドである。他の好ましい実施例によれば、ポリペプチドは、非環状ペプチドである。さらに別の好ましい実施例において、ポリペプチドは、エキセンディン、エプチフィバチド(eptifibatide)、アトシバン(atosiban)、酵素(例えば、リパーゼ、カルボキシペプチダーゼなど)からなる群から選択される。
【0049】
インシュリンは、51個のアミノ酸からなり、21のアミノ酸を有するA鎖、及び30のアミノ酸を有するB鎖に分配される。これらの鎖は、2か所のジスルフィド架橋によって互いに結合されている。その利用は、天然に存在するインシュリンだけでなく、インシュリン誘導体及び類似体も含む。インシュリン化合物は、例えば、哺乳類のインシュリン化合物(例えば、ヒト・インシュリン)や、インシュリン化合物誘導体、又は類似体でもよい。
【0050】
インシュリン誘導体は、天然に存在するインシュリン(言い換えれば、ヒト・インシュリン、又は動物のインシュリン)の誘導体である。それは、少なくとも一つの天然に存在するアミノ酸残基の置換、及び/又は少なくとも一つのアミノ酸残基、及び/又は有機残基の付加によって対応して異なる、さもなければ同一の天然に存在するインシュリンと異なる。用語インシュリンは、B鎖とA鎖から構成されるポリペプチドを定義すると理解される。インシュリン誘導体は、天然に存在するインシュリンに少なくとも60%一致する。インシュリン誘導体は、天然に存在するインシュリンに少なくとも約75%、又は少なくとも約90%一致するのがさらによい。一般に、インシュリン誘導体は、ヒト・インシュリンと比較してわずかに変更された挙動がある。
【0051】
遺伝子工学によってインシュリンやインシュリン誘導体を生産する場合、インシュリン前駆体であるB鎖、C鎖及びA鎖を有する「プロインシュリン」がしばしば出てくる。プロインシュリンは、適切で正しく折りたたまれ、ジスルフィド架橋を形成し、C鎖を酵素や化学的に除去することによって、インシュリン又はインシュリン誘導体に変換される。プロインシュリン誘導体は、天然に存在するプロインシュリンのB鎖とA鎖において、少なくとも60%一致すればよい。しかしながら、連結したC−ペプチドは、任意の公知の天然に存在しているC−ペプチドと全く異なるものを選択してもよい。プロインシュリン誘導体は、天然に存在するインシュリンに少なくとも約75%、又は少なくとも約90%一致することがさらに好ましい。
【0052】
本発明のある実施例によれば、組換えインシュリン生成物は、IN−105である。合成された治療的な生成物は、特に、分子IN−105に関する。IN−105は、構造式CH3O−(C4H2O)3−CH2−CH2−COOHの両親媒性オリゴマーと、インシュリンB鎖の位置B29のεアミノ酸リシン(Lysine)で結合されるインシュリン分子である。その分子は、A1、B1、及びB29でモノ複合体(monoconjugated)であってもよく、A1,B1、及びB29の任意の組み合わせでジ複合体(di-conjygated)やトリ複合体(triconjugated)であってもよい。
【0053】
本発明の別の態様では、本発明の発酵培地を利用して、発酵を経て生産される組換えタンパク質は、環状や非環状ペプチドである。本発明の別の態様では、本発明の発酵培地を利用して、発酵を経て生産される組換えタンパク質は、酵素である。
【0054】
本発明の一態様において、発酵手順は、3段階とすることができる。すなわち、バッチ、フェッドバッチ(オプション)、及びメタノール誘導段階である。
【0055】
本発明の最も重要な態様によれば、本発明中で用いた発酵培地は、以下の成分を含有する。また、実施例は、培地を準備するプロセスである。
【0056】
培地組成
【0057】
個々の成分は、上述した順序において、最小量の水に溶解され、1時間121℃で殺菌された。微量塩類溶液及びD−ビオチン(濾過によってプレ殺菌された)は、無菌的に培地に加えられた。それぞれ、4.35ml/Lの速度で加えられた(微量塩類溶液の濃度は1.05であり、D−ビオチンの濃度は1.0である)。
【0058】
微量塩類溶液の成分:
【0059】
すべての塩類は、徐々に上水に溶かされ、殺菌している等級濾過装置による濾過により殺菌された。
【0060】
ビオチン溶液製剤:
D−ビオチン 0.2 g/L
ビオチンは、上水に溶かされ、殺菌している等級濾過装置で濾過することにより殺菌された。
【0061】
酵母抽出物と大豆ペプトン供給:
さらに、供給された酵母抽出物と大豆ペプトン(YEP)は、発酵の間も加えられた。以下の表のように準備する。
【0062】
成分は溶解され、容積は必要に応じて上水によって調製した。その溶液は、90分間で121〜123℃で、殺菌された。YEPの濃度供給は、約1.05とした。
【0063】
メタノール供給:
微量塩類溶液の12ml、D−ビオチン溶液の12mL、及び尿素の40gが、供給前にメタノールのリットル当たりに対して加えられた。
【0064】
発酵プロセス
発酵プロセスは、バッチ細胞増殖段階、オプションのグリセロール・フェッドバッチ段階、及びメタノール誘導段階を含む。
【0065】
バッチ細胞増殖段階
【0066】
バッチ・モニタリング及び制御
生産物の発酵体パラメータは、まず、以下の通りにセットされ、制御される。
温度 : 30o ± 2oC
pH : 5±0.2
DO : >10%
実行時間 : 22-24hr
【0067】
メタノール誘導段階(MIP)
メタノール供給は、バッチ段階の終了後、直ちに開始した。メタノールは、市販の殺菌している勾配フィルタを用いる濾過によって、殺菌された(オンライン)。
【0068】
MIPの初期に、pHは、培地にタンパク質の発現に基づいて、4.0±0.1、6.0±0.1、又は6.3±0.1に調整し、(クローンと同様に、生産物によって異なる)温度は、約18−24℃に調整した(生産物及びクローンによって異なる)。
【0069】
同時に、他の供給、酵母抽出物及び大豆ペプトン供給(YEP)も、初期量に対し0.4g/L/hの速度で、発酵槽で開始された。
【0070】
MIPモニタリング及び制御
温度 :18 to 30oC (クローンと同様に生成物によって変わる)
pH : 3.0 to 7.0
DO : >1% (液体培地のメタノール濃度を制御するために用いた)
実行時間 : 5 - 8 days (クローンによって変わる)
分析 pH : 1 - 9.5 (タンパク質の型に依存)
【0071】
本発明の別の態様では、種菌は、最小のグリセロール(MGY)培地に凍結乾燥されたグリセロール・ストック培養物を培養することによって準備される。「対照ピキア属プロセスガイドライン」に由来した基礎発酵培地は、オルトリン酸、無水硫酸カルシウム、硫酸カリウム、水和ヘプタ硫酸マグネシウム、水酸化カリウム、グリセロール、微量塩、及びD−ビオチンを含む。栄養培養培地はまた、通常、Ca、Mg、Mn、Fe、K、Co、Cu、Zn、B、Mo、Br及びIの水溶性化合物のような発酵培養培地に取り入れられる少量、又は微量の公知の化合物も含まなければならない。他の微量塩が含有していてもよい。本発明の微量食塩水は、特に、七水和硫酸第二銅、ヨウ化ナトリウム、モノ水和硫酸マンガンを含む。二水和モリブデン酸塩ナトリウム、ホウ酸、七水和コバルト塩化物、塩化亜鉛、七水和硫酸鉄(II).各培地成分の濃度は、特に、各生産物のために最適化されているが、以下に示されるのは、対照培地である。
【0072】
対照培地
発酵基材礎塩培地:
1リットルに対して以下の成分を混ぜる:
リン酸 : 85% (26.7 ml)
硫酸カルシウム : 0.93 g
硫酸カリウム :18.2 g
硫酸マグネシウム-7H2O :14.9 g
水酸化カリウム : 4.13 g
グリセロール : 40.0 g
1リットルに対する水
発酵槽に水を加えて、適当な容積とし、殺菌する。
【0073】
PTM1 微量塩
以下の成分を混ぜる:
硫酸第二銅5H2O 6.0 g
ヨウ化ナトリウム 0.08 g
硫酸マンガン-H2O 3.0 g
モリブデン酸塩ナトリウム-2H2O 0.2 g
ホウ酸 0.02 g
塩化コバルト 0.5 g
塩化亜鉛 20.0 g
硫酸鉄(II)-7H2O 65.0 g
ビオチン 0.2 g
塩酸 5.0 ml
1リットルの最終量に対する水
濾過し、殺菌し、常温で保存する。
【0074】
これらの成分の混合に応じて、濁った沈殿物があってもよい。培地は、濾過され、殺菌され、使用される。
【0075】
上記の対照培地に加え、尿素は、異なる濃度で含まれる。
本発明の更に別の態様によれば、バッチ段階のバイオマス生成は、グリセロールが初期培地に存在するまでである。更に、バイオマス成育は、決定的ではなく、わずかなケースにおいてなされる。
【0076】
本発明のさらに別の態様では、所望のバイオマスが達成された後、培養はメタノールと尿素を連続的に供給することによって誘発される。メタノール供給の間、酵母抽出物及びペプトン溶液も供給される。
【0077】
さらに別の態様によれば、メタノール供給率は、最大20g/L/hである。任意の当業者が認めるように、更に生産レベルを改善する供給率の最適化が、本発明によって意図されている。
【0078】
一方、本発明は、その態様がより完全に理解され、認識されるように、特定の好ましい実施例に関連して記載される。本発明は、これらの実施例に限定されない。見方を変えれば、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれる、あらゆる代替物、変形例及び均等物をカバーすることを意図する。従って、好ましい実施例を含む以下の実施例は、本発明の実施を例示するのに役立ち、それは、明細書に開示された例であって、本発明の好適な実施例の例証的考察を目的とするものであり、本発明の態様の原理と概念と同様に、発酵手順を最も有益かつ容易に理解する説明と考えられるものを提供するものであると理解されたい。
【0079】
本発明は、発酵培地の形成に利用する栄養組成物を提供する。その組成は、尿素や同種のカルバミドや、本発明は、発酵培地の形成に利用する栄養組成物を提供する。その組成物は、より短い生産期間でより高い生成率を得るために特に最適化された1以上の発酵培地成分と共に、尿素や同種のカルバミドや、カルバミン酸塩、カルボジイミド、チオカルバミド等の誘導体のような窒素を含む成分を具備する。
【0080】
本発明は、従って、酵母細胞の増殖に影響を与えることなしに、尿素添加することにより、メタノール誘導性GMOピキア・パストリスを用いた発酵プロセス(バッチ、フェッドバッチ、連続して)の間、インシュリン、グラルギン、IN105、エキセンディン、リパーゼ、カルボキシペプチダーゼのような組換えタンパク質生成物をより収率良く得ることが可能となる。
【0081】
本発明の一態様では、生産収率や生産時間に特に影響を与える窒素を含む成分は、尿素やそれらの誘導体のような炭酸アミドや、前述の類似化合物である。
本発明の別の態様では、生産生物として好適な酵母は、例えばピキア・パストリス、ピキア属種、サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエ、クルイヴェロマイシス種、又はハンセヌラ・ポリモルファを含む。
【0082】
本発明は、大腸菌や放線菌や菌類の培養に用いる、高い生物変換率を実現するためのタンパク質生産のために、発酵培地に窒素補助剤として尿素、その誘導体等の炭酸アミド、カルバミン酸塩、カルボジイミド及びチオカルバミドの有用性を示す。重要な本発明の態様は、より高い生産性のために信頼性がある最適化された栄養性培地パラメータを有する即席の発酵プロセスに、特に関する。本発明の原理は、適切な発現微生物の発酵によるタンパク質及び二次代謝物の広範囲の生産のために適用することもできる。
【0083】
本発明は、発酵培地を調製するための栄養組成物を提供する。その組成物は、より短い生産期間で、より高い生成量を得るために特別に最適化された一以上の他の発酵培地成分と共に、尿素や同類のカルバミドや、カルバメート、カルボジイミド、チオカルバミドのような誘導体等の窒素を含む成分を具備する。
【0084】
従って、本発明は、尿素の添加によって可能になる誘導性大腸菌を利用する発酵プロセス(バッチ、フェッドバッチ、連続して)の間に、酵母細胞の増殖に影響を及ぼさずに、GCSF、ストレプトキナーゼ、HGH、その他のようなタンパク質生成物のより良好な収率に得ることができる。
【0085】
本発明は、線菌及び/又は菌類の培養物を利用する発酵プロセス(バッチ、フェッドバッチ、連続して)の間、プラバスタチンのような生成物のよりよい収率を得る生物学的変換の速度を改善することもできる。
【0086】
本発明は、菌類の培養を用いるバッチプロセス又はフェッドバッチプロセスにおいて、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼのような酵素の生産率も高める。
【0087】
本発明の一態様では、生産量や生産時間に影響を特に与える窒素を含む成分は、尿素のような炭酸アミドやそれらの誘導体、及び前述の関連する化合物である。
【0088】
本発明の別の態様では、より好ましい微生物は、大腸菌に限定されず、生産微生物用途として好適な腸内細菌科系統の菌株を含む。
【0089】
本発明の別の態様では、好適な微生物は、ストレプトマイセス種、アクチノプラネス(actinomycetes)種、アスペルギルス属、リゾプス属種、ペニシリウム属種を含むが、これに限定されない、放線菌、及び/又は菌種系統の菌株である。
【0090】
本発明のその他の目的、特徴、優位点、及び態様は、以降の説明から、当業者に明白になるだろう。但し、以降の説明と実施例は、本発明の好ましい実施例を示しており、実例として記載されているのみである点を理解されたい。
開示発明の趣旨内における様々な変更や変形例は、以下の説明や現在開示されている他のものを参照することによって当業者にとって直ちに明らかになるであろう。
【0091】
本発明は、発酵培地を調製するための栄養組成物を提供する。その組成物は、所望のタンパク質生成物や二次代謝物を得るために特に最適化された一以上の他の発酵培地成分と共に、尿素や関連種類等の炭酸アミドや、前述の誘導体のような窒素を含む成分を具備する。
【0092】
特定の濃度において、尿素や関連種類等の炭酸アミドや誘導体等の特定の窒素源を補充した特定の発酵培地の利用は、発酵微生物の成育に影響を及ぼさず、むしろ、生産性を改善する助けになることが驚くことに見出された。
【0093】
尿素のような添加される窒素を含む成分は、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えることができる。
【0094】
工業的発酵プロセスに適した微生物菌株は、関連する有益な化合物を生産する任意の野生株としてもよい。但し、その野生株は、良好な成育パフォーマンスを有するものを用いる。
【0095】
さらに、工業的な発酵プロセスに適した微生物菌株は、古典的な突然変異誘発性処理、又は組換えDNA変換に関連する親菌株を対象とすることによって得られた又は改良された菌株でもよく、また、結果として生じる変異体や変異微生物菌株が、良好な成育パフォーマンスを有する供給に伴って得られた又は改良された菌株でもよい。これにより、結果として生じる変異体や変異した菌株が改良されるかどうかは、親菌株の成育パフォーマンスに依存する、若しくは、親菌株のそれに比較して類似の成育パフォーマンスに依存する。
【0096】
即時の発酵培地を用いる発酵プロセスは、生成物濃度(容積に対する生成物)、生成物収率(消費される炭素源当たり形成される生成物)、及び生成物形成(容積及び時間に対して形成される生成物)からなる群から選択される1以上のパラメータに関して改良される。さもなければ、他のプロセスパラメータやそれらの組み合わせを改良する。
【0097】
技術の当業者が認識するように、最終的な結果が、全てのケースにおいてより短時間で高力価が得られているが、炭酸アミド補助剤の最適濃度は、クローンによって異なる。
【0098】
「発酵培地(群)(fermentation media)」又は「発酵培地(fermentation medium)」とは、発酵が実行され、特定の治療的生成物を生産するための発酵微生物によって利用される発酵培養基や他の原料を含む環境と定義する。
【0099】
本発明の発酵培地は、適切な炭素発酵基材を含まなければならない。適切な発酵基材は、グルコースやフルクトース等の単糖類(グルコース、フルクトース等)や、オリゴ糖類(ラクトース、サッカロース等)や、多糖(デンプン、セルロース等)、それらの混合物や、コーンスティープリカー、甘しょ及びビート糖蜜、グリセロール、麦等のその他の成分を含んでいてもよいが、これに限定されない。さらに、炭素発酵基材は、二酸化炭素や主要な生化学中間体への代謝変換が実証されたメタノールのような一炭素発酵基材でもよい。それゆえに、本発明において利用される炭素の供給源は、広い種類の炭素を含んでいる発酵基材を含んでもよくて、微生物の選択によって限定されるだけでないことが、意図される。適当な炭素源に加えて、発酵培地は、当業者に公知なように、適切な培養物の成育のための及び所望のタンパク質や最終生成物の発現を促進するための適切なミネラル、塩類、バッファ及びその他の成分、を含まなければならない。
【0100】
「窒素を含む成分」は、発酵培地内で同化できる窒素の供給源である発酵基材、原料又は成分である。
【0101】
適切な窒素源は、大豆粉、綿実粉、ペプトン、酵母抽出物、カゼイン、カゼイン加水分解物、コーンスティープリカー、及び無機塩類であるアンモニウム・イオン、硝酸塩、そして、亜硝酸塩を含んでいてもよいが、これに限定されない。
【0102】
重要な本発明の態様によれば、発酵培地の好適な補助剤は、炭酸アミド(例えば尿素)である。これは、N−CON又は同類のグループを含んでいる化合物を含む。例えば、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロプルピリデン尿素、フェニル尿素又はこれらの組み合わせ)等の尿素誘導体の利用は、本発明において意図されているものである。
【0103】
本明細書における「有効量」とは、生成物のかなりの高い収量/収率を発酵培地にもたらす発酵培地に導入される本発明による尿素又はその誘導体の量であり、さらに、発酵微生物の成育に影響を及ぼすことなくより短時間で生産される量である。
【0104】
「発酵微生物」は、所望の発酵プロセスにおいて好適になっている任意の微生物に関する。本発明の別の態様では、菌株バクテリア、放線菌、及び/又は菌種系統の菌株であり、大腸菌、ストレプトマイセス種、アクチノプラネス(actinomycetes)種、アスペルギルス属、リゾプス属種、ペニシリウム属種等を含むが、これに限定されない。
【0105】
タンパク質又はポリペプチドを説明するときに本明細書において用いる用語「組換え体」は、組換えポリヌクレオチドの発現によって生産されるポリペプチドを意味する。細胞に関して参照するときに本明細書において用いられる「組換え体」という用語は、組換えベクターや他のトランスファーDNAの受容体として用いられる、又は用いられている細胞を意味し、形質転換した原始細胞の子孫を含む。単一の親細胞の子孫は、偶然、若しくは計画的な突然変異により、形態学において、又は、ゲノムにおいて完全に同一でない場合や、最初の親のDNA補体とならない場合があることを理解すべきである。
【0106】
「ポリペプチド」、「タンパク質」、「ペプチド」の用語は、アミノ酸のポリマーに関連し、生成物の特定の長さに関連しない。従って、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。係る用語は、これらのポリペプチドの化学的修飾や発現後修飾が具体的実施例に含まれているか否かに関わらず、ポリペプチドの発現後修飾を指さないか又は除外する。一実施例において、分子は、ポリペプチドや、それらの類似体や誘導体である。好ましくは、ポリペプチドは、環状ペプチドである。他の好ましい実施例によれば、ポリペプチドは、非環状ペプチドである。本発明の別の態様では、組換えタンパク質は、本発明の発酵培地を利用した発酵によって生産される。
【0107】
本発明の実施例の一つは、GCSF(Granulocyte Colony stimulating factor、顆粒球コロニー刺激因子)の生産に関する。GCSFは、好中球顆粒球の激増、分化及び機能的な活性化を調整する薬学的に活性タンパク質である(Metcalf, Blood 67:257 (1986); Yan, et al. Blood 84(3): 795-799 (1994); Bensinger, et al. Blood 81(11): 3158-3163 (1993); Roberts, et al., Expt'l Hematology 22: 1156-1163 (1994); Neben, et al. Blood 81(7): 1960-1967 (1993))。
【0108】
GCSFは、任意の従来の供給源(例えば組織、タンパク質合成、自然な又は組換え体細胞を有する細胞培養物)から得られて、自然な又は組換えタンパク質(好ましくはヒト)を意味される。GCSF活性を有する任意のタンパク質(例えば、突然変異タンパク質、又は改変タンパク質)は、含まれる。
【0109】
「二次代謝物」は化合物であり、一次代謝産物から導き出される。そして、二次代謝物は、微生物により生産されるものであり、一次代謝産物でなく、かつ、標準条件で微生物の成長成育のために必要とされない化合物である。二次代謝物化合物は、二次的な化学変換や二次的な生体内変換によって有用な化合物に変わることができる。従って、このような中間体化合物の提供している改良された有用性は、究極的な有用な化合物の改良された生産にさらに通じ、本明細書ではそれ自身について、「二次代謝物」と称してもよい。
【0110】
本発明の一態様において、発酵手順は、バッチとフェッドバッチ(オプション)の2段階を具備していてもよい。
【0111】
本発明は、以下の実施例によりさらに明確化される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施例を示しており、実例として記載されているのみである点を理解されたい。上記説明とこれらの実施例から、当業者は、本発明の基本的特性を確認することができ、その趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で、それを様々な用途や条件に適応させるために、本発明から様々な変更及び変形例を行うことができる。これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。以下の実施例は、本発明の好ましい実施例を示している。
【0112】
(実施例)
実施例1
2つの発酵槽バッチが、IN105前駆体の発現のために、ピギア・パトリスを用いて実施された。1つのバッチ(実験#1)において、対照培地力価の半分は、グリセロールを除く初期培地とする。バッチ操作後、メタノールが約8g/L/hで供給される。発酵は、8日間行った。最大生成物濃度は、7日以内に3.0g/Lに達し安定した。別のバッチ(実験#2)においては、同じ培地組成物が用いられ、さらに0.1M尿素を発酵槽に加える。バッチ操作後、4%w/v尿素と共にメタノールが供給される。発酵は8日間行った。最大生成物濃度は、7日で3.5に達した。細胞増殖プロフィールに有意差はなかった。上記実験から得られるバイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図1及び図2に示す。
【0113】
実施例2
生産物の発現率を確認するため、尿素添加系のインシュリン前駆体の発現が、ピギア・パトリス発酵を使用して検討された。この試験において、対照培地組成物が用いられ、4%の尿素を有するメタノールが、20g/L/hのより高い率で供給された。尿素が発酵槽に加えられない時の最大生成物濃度が、182時間で4.26g/Lに比較して、この試験では、137での4.21g/Lを達成した。細胞増殖プロフィールの違いは観察されなかった。発酵槽への尿素添加により、発育プロフィールに影響を与えることなしに、生成物率が増加し、かつ発酵時間が減少した。上記実験から得られるバイオマス及び生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図3及び図4に示す。
【0114】
実施例3
2つの発酵槽バッチが、インスリングラルギン前駆体の発現のために、ピギア・パトリスを用いて実施された。1つのバッチ(実験#1)において、対照培地力価の半分は、グリセロールを除く初期の培地とする。バッチ操作後、メタノールが8g/L/hの供給率で供給される。発酵は、10日間行った。最大生成物濃度は、10日以内に1.03g/Lに達し安定した。別のバッチ(実験#2)においては、同じ培地組成物が用いられ、さらに0.1M尿素を初期の発酵培地に加える。バッチ操作後、4%尿素のメタノールが供給される。発酵は9日間行った。最大生成物濃度は、9日で1.75に達した。細胞増殖プロフィールに有意差はなかった。上記実験から得られるバイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図5及び図6に示す。
【0115】
実施例4
2つの発酵槽バッチが、エキセンディン前駆体の発現のために、ピキア・パストリスを用いて実施された。1つのバッチ(実験#1)において、対照培地力価の半分は、グリセロール・フェッドバッチで、グリセロールを除く初期培地が使われる。グリセロール・フェッドバッチ操作後、メタノールは、供給率11g/L/hで供給される。発酵は6日間行った。最大生成物濃度は、6日で0.74g/Lに達し安定した。別のバッチ(実験#2)において、同じ培地組成物が用いられ、さらに、0.1M尿素が発酵槽に加えられる。バッチ操作後、4%尿素のメタノールが供給される。発酵は、5日間行った。最大生成物濃度は、5日間で0.78に達した。細胞増殖プロフィールにおいて、観察される有意差はなかった。上記実験から得られるバイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図7及び図8に示す。
【0116】
実施例5
2つの発酵槽バッチが、酵素であるリパーゼの発現のために、ピギア・パトリスを用いて実施された。1つのバッチ(実験#1)において、対照培地力価の半分は、グリセロールを除く初期の培地とする。バッチ操作後、メタノールが供給率、約6g/L/hで供給される。発酵は、8日間行った。最大生産物は、7日間で約1650×106リパーゼユニットに達し安定した。別のバッチ(実験#2)において、同じ培地組成物が用いられ、さらに、0.1M尿素が発酵槽に加えられる。バッチ操作後、メタノール4%w/vと共に、尿素が供給される。発酵は8日間行った。最大生産物量は、7日で約2500×106リパーゼユニットに達し安定した。細胞増殖プロフィールに有意差はなかった。上記実験から得られる総生産物プロフィールを、図9に示す。
【0117】
実施例6
メタノール・フェッドバッチの間、1、2、3及び5%の尿素含有メタノールによって、IN105前駆体の生産のために必要とされるメタノール・バッチの尿素濃度効果が検討された。残留パラメータは、実施例1と同様に維持された。最大生成物濃度は、最大生成物濃度は、バッチ中、7日間で、メタノール中における尿素0、1、2、3、4、及び5それぞれにおいて、3.0、3.2、2.5、3.3、3.5、及び2.8g/l0に達した。より良い生産性は、メタノール誘導段階の間、メタノール中で、4%尿素が用いられた時に観察された。バイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図10及び図11に示す。
【0118】
実施例7
メタノール供給率の20g/L/hの他の試験において、最大インシュリン前駆体濃度を可能にする、最も有効な尿素濃度を確認するために、尿素の濃度を変化させた。最大生成物濃度は、0、1、2、3、4、及び5%の尿素濃度メタノールが供給されるバッチ中、それぞれ182、166、140、164、137、及び170時間で、4.26、4.03、3.39、4.16、4.21、及び5.31g/Lに達した。バイオマスと生成物濃度のプロフィールを、それぞれ図12及び図13に示す。その試験は、尿素の追加がインシュリン前駆体生産率を上昇させることを示し、5%の尿素濃度のメタノールが供給されるときに、発現率が最も高かった。
【0119】
実施例8
メタノール誘導段階において、残留尿素濃度を、細胞フリーの上清中で、0.1、0.3、0.5、0.7、1.2、及び1.5Mの異なるレベルで維持する試験バッチを検討し、生産性の効果を検討した。全てのバッチは、実施例1のように同様のパラメータと培地組成物とした。残留尿素は、別に尿素ストックを供給することによって維持された。結果は、バッチの全体にわたって発酵の間、尿素が、細胞フリーな上澄み中で1Mの範囲が維持されるときに、最大の生産物が達成できることを示す。残留尿素が約0.5Mのときに、最大生成物濃度4.46g/Lが達成される。この実験において、供給される全尿素は、残留尿素がそれぞれ0、0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、1.2、及び1.5Mに維持された試験における最終液体培地容積に対して0、0.2、0.5、0.9、1.2、1.8、2.3及び2.9Mであった。この結果を図14に示す。
【0120】
実施例9
インシュリン前駆体発酵の試験も行った。この試験において、メタノールは、20g/L/hの割合で供給された。インシュリン前駆体発酵において、0.7Mの残留濃度が維持されるときに、生成物濃度が最も高いことが観察された。この試験において、残留尿素がそれぞれ0、0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、1.2、及び1.5Mに維持された試験において、全尿素は、最終的な液体培地量の0.0、1.6、2.7、3.5、7.0、8.8、11.7、及び13.3Mに等しく供給された。結果は、図15に示すように、培養物が有意な量の尿素を消費することを示す。
【0121】
実施例10
IN105の別のバッチは、標準対照培地と、それに4%の尿素を有するメタノールを〜20g/L/h供給したもので実施した。尿素が発酵槽に供給されなかった場合の183時間、3.76g/Lの収率に比較して、この試験においては、3.71g/Lの生成物濃度が、113時間において達成した。研究の結果は、図16及び図17に示す。
【0122】
実施例11
更なる実験において、尿素は、発酵生産性に対するそれらの効果を観察するために、さまざまな他の合成物と置き換えられた。別々のバッチにおいて、チオ尿素、ジイミド、カルボジイミド、チオカルバミドは、1%の濃度で試験された。これらの全部が、図18に示すように、対照に対して生産性を改善することがわかった。
【0123】
実施例12
実験において、発酵中の尿素供給が、酵母によるリン酸の取り込みが増加し、尿素を供給しないバッチより早く培地におけるリン酸の消費が生じることが観察された。したがって、より速いリン酸消費とより高い生産性(g/L/h)は、ペプチド及びタンパク質の生産のための標準、あるいは改質したピキア属発酵手順の中で、尿素の取り込みに起因して達成される代謝シフトの結果である。
【0124】
実施例13
成育培地は、水1000mlに、大豆粉5.0g、ブドウ糖一水和物20.0g、大豆ペプトン5.0g、CaCO31.0g、K2HPO40.1gを含有して、準備された。種培地のpHは、NaOH溶液を用いて6.8±0.1に調製した。殺菌された接種原培地は、培養(ストレプトマイセス属種(BICC 6826))の胞子バイアル懸濁液を植え付けて、好気性条件で、48時間28±1℃で培養された。成育種は、水1000ml(phは7.0±0.1に合致した)に、大豆粉37.5g、ブドウ糖一水和物22.5g、綿種粉3.75g、穀物浸出液7.5g、NaCl7.5g、及び消泡剤SAG0.5gを含有する発酵培地へ転移される。48時間の培養後、殺菌されたコンパクチン溶液が、少量のブドウ糖と共に加えられた。24時間毎に、いくつかの同様のフラスコの1つが、コンパクチンのプラバスタチンへの生物学的変換について調べるために集められる。コンパクチンが合計3.0g/Lが供給されるまで、上記手順が24時間毎に繰り返された。
【0125】
改質発酵培地を使用する実験の開始前に、微生物の尿素毒性レベルを確立するために、異なるレベルの発酵培地に加えられた。濃度0.0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、及び4.0g/Lは、上記のように、培養される発酵培地が入っているフラスコに加えられた。48時間の培養後、フラスコの各々の生育が観察された。図20にそのデータを示す。
【0126】
尿素3.0g/Lを超える濃度は、培養の成育上の阻害を示した。繰り返し行った試験において、同様の結果を示した。そのため、3.0g/L以下の濃度が、生物学的変換上において、尿素効果があると結論した。
【0127】
上記したように、同様の課題が、付加的な構成要素として尿素を含む生産培地でなされた。生産培地の尿素の濃度は0.0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、及び3.0g/Lに保たれ、植え付け時に加えられた。
【0128】
48時間の培養後、殺菌したコンパクチン溶液は、ブドウ糖供給と共に供給された。生物学的変換は、同様の条件で操作している複数のフラスコのうちの1つの回収によって、24時間後に評価された。この手順を、3g/lのコンパクチンが累積的に供給されるまで、24時間毎に繰り返した。生物学的変換は、プラバスタチンの形成のために消費される総コンパクチンに関して評価された。力価とパーセンテージ変換の実験結果を、それぞれ図21及び図22に示す。
【0129】
59.5%変換の対照フラスコと比較し、尿素濃度1.5g/Lのフラスコは、最大で85.4%、コンパクチンのプラバスタチンへの転換を示した。
【0130】
実施例14
生成物発現率を確認するために、大腸菌発酵を用いて、尿素有りの顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)の発現が検討された。試験に用いられる培地は、プレ・シード培地、シード培地、及び生産培地から成る。プレ・シード培地は、水1000mlに対して、大豆ペプトン10.0g、NaCl10.0g、イースト抽出物10.0gを含む。シード培地は、水1000mlに対して、1.2gの硫酸アンモニウム、2.4gの硫酸マグネシウム、10gのイースト抽出物、11gのDMH、5gのK2HPO4、40mlの微量塩類を含む。生産培地は、水1000mlに対して、ブドウ糖一水和物11g、硫酸アンモニウム2.4g、硫酸マグネシウム4.8g、イースト抽出物20g、K2HPO410g、微量塩類40mlを含む。phは、アンモニアで7.0に調整される。バッチ段階完了後、バイオマスは、発酵体であるブドウ糖とイースト抽出物の連続供給によって上昇させる。"ceel mass"は、誘導され、生成物の生産のために、さらに8時間実施される。
【0131】
3つの発酵体バッチは、大腸菌発酵プロセスの尿素効果を確立するために必要とされた。第一バッチ(実験#1)は、任意の尿素添加なしの対照バッチであった。用いられる媒体は、上述される。バッチは、~180g/L WCWで誘発された。発酵は、誘導後、多くとも8時間まで継続された。達成される最大生成物は、0.028g/wcwの具体的な活性を有する6.6g/Lであった。第二バッチ(実験#2)において、1g/Lの尿素が、上で説明される媒体に加えて、発酵槽に加えられた。バッチは、尿素(1g/L)の同程度の量を有する供給によって供給された。バッチは~180g/L WCWで誘発された、そして、発酵は誘導後、8時間継続された、そして、得られた生成物は0.033g/WCWの具体的な活性を有する7.4g/Lであった。第3のバッチ(実験#3)は、2g/Lの尿素を有する以外、実験#2と同様とした。達成される最終生成物は、0.032g/wcwの具体的な活性を有する6.58g/Lであった。
【0132】
その結果が示すように、細胞生育プロフィールに関する優位さは観察されなかった。発酵槽に添加する尿素が、成長プロフィールに影響することなしに生成物形成を増加させることを示す。具体的生産性において、全体的に凡そ18%増加が得られた。その実験から生じるWCWプロフィールを図23に、具体的生産性プロフィールを図24に示す。
【0133】
実施例15
同様の実験は、ストレプトキナーゼの生産のために発現系として大腸菌を用いて実施された。用いられる培地は実施例13に記載したものと同じである、そして、濃度がテストした尿素濃度も同じである。実施例14において説明されるように、同様の3つのバッチは尿素の0g/L、1g/Lおよび2g/Lによって行われた。尿素なしの対照バッチ(実験#1)は、0.026g/wcwの具体的な生産性を有する誘導の8時間後、7.06g/Lの最終的な生産性を与えた。最大力価は、10.5g/Lの生産性と0.041g/wcwの具体的な生産性を有する1g/L尿素バッチ(実験#2)において達成された。驚くべきことに、2g/Lの尿素(実験#3)を有するバッチは、0.022g/wcwの具体的な生産性と、わずか6.56g/Lの生成物を与えた。この生成物において、1g/L以上の尿素濃度の増加は、具体的な生産性と力価の急激な低下をもたらした。
【0134】
実施例2のように、3つの試験のWCWにおける重要な変化はなかった。それは、生産性の増大は、生成物形成を増加させ、バイオマスにはリンクしていないことを明らかに示している。具体的生産性において、全体的に凡そ57%の増加が得られた。上記実験から得られるWCWプロフィールを図25に、力価プロフィールを図26に示す。
【0135】
実施例16
リパーゼ酵素を生産することが知られているリゾムコール属種(BICC 362)においても、培地において、尿素添加で生産性が改善することを示した。この培養物から生じるリパーゼは、エステル化および加水分解のような生物学的変換反応のために広範囲に用いられる。2つの発酵バッチ(10Lの容積)は、尿素添加なしのものと、尿素を0.5g/L添加したもので行った。より高い尿素濃度(1g/l)を有する試験も、行ったところ、pHを維持するために苛性アルカリの消費が大変高く、生産性がより低いという結果となった。リゾムコール属種(BICC 362)のための成育培地は、マイーダ(Maida)41.4g、サッカロース10g、ペプトン3.06g、硫酸アンモニウム2g、イースト抽出物2g、リン酸カリウム、0.85gと、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを其々1g含む。培地全体は、多くとも水1Lとされる。育てられたシード(10%のv/v)は、水1000ml中、ブドウ糖12.5g、大豆ペプトン37.5g、大豆粉25、リン酸カリウム2.5、硫酸マグネシウム0.625、大豆油12.5gを含んでいる生産培地へ移転される。培地のpHは、6.0に調整され、苛性アルカリ添加でバッチにわたって、6.0に維持された。
【0136】
尿素(0.5グラム/リットル)の添加は、対照バッチと比較して、リパーゼ生産率が増加した。尿素のより高い濃度は、より低い生産性を示した。そのデータを図27に示す。
【0137】
本発明は、記述した特定の方法論、手順、細胞系、種、属、培地成分に限定されず、変更が可能であることを理解されたい。本願明細書において用いられる用語が具体例だけを説明するためにあって、特許請求の範囲によって限定する本発明のスコープを限定する意図がないことを理解されたい。上記記載は、本発明を実践する方法を当業者に示すためのものであって、記述を読むことにより、即座に、当業者にとって明らかになる明らかな変形例やバリエーション全てを詳述することを意図していない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸アミドの有効濃度が存在することに特徴づけられる、メタノール誘導性菌類種を用いる発酵によって、組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産のための発酵培地。
【請求項2】
前記炭酸アミドは、尿素又は、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素(isopropylpylideneurea)、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項3】
前記炭酸アミドは、尿素であることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項4】
前記炭酸アミドは、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えられることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項5】
炭酸アミドの残留濃度は、多くとも1Mまでであることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項6】
前記炭酸アミドの残留濃度は、1Mまでに保ち、かつ基礎塩類や微量元素の濃度は、対照培地の0.1Xから5Xまで可変されることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項7】
リン酸塩の取り込みは、改善されることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項8】
組換えインシュリン生成物を発現するメタノール誘導性菌類種は、ピギア・パトリス(Pichia pastoris)、ピキア属(Pichia)種、サッカロミセス属(Saccharomyces)種、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)種、又はハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項9】
炭酸アミドの有効濃度が存在することに特徴づけられる、微生物を用いる発酵による組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産のための発酵培地。
【請求項10】
炭酸アミドの有効濃度が存在することに特徴づけられる、微生物を用いる発酵による二次代謝物の生産のための発酵培地。
【請求項11】
前記炭酸アミドは、尿素又はジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項12】
前記炭酸アミドは、尿素であることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項13】
前記炭酸アミドは、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えられることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項14】
炭酸アミドの残留濃度は、多くとも10g/Lまでであることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項15】
前記微生物は、大腸菌(E.coli)、ストレプトマイセス(Streptomyses)種、アスペルギルス属(Aspergillus)種、リゾプス属(Rhizopus)種、ペニシリウム属(Penillium)種、及びリゾムコール属(Rhizomucor)種からなる群から選択されることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項16】
炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、メタノール誘導性インシュリン発現菌類種を増殖することを含む、組換えタンパク質、その誘導体、その類似体の生産方法。
【請求項17】
前記炭酸アミドは、尿素又はジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項18】
炭酸アミドは、尿素であることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項19】
生産される前記組換えインシュリン生成物は、IN−105であることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項20】
生産される前記組換えインシュリン生成物は、インシュリン前駆体、インシュリン又はその類似体又は誘導体であることを特徴とする請求項17に記載の生産方法。
【請求項21】
前記組換えインシュリン生成物は、インスリングラルギンであることを特徴とする請求項20に記載の生産方法。
【請求項22】
生産される前記組換えタンパク質は、環状、若しくは非環状ペプチドであることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項23】
前記組換えペプチドは、エキセンディンであることを特徴とする請求項22に記載の生産方法。
【請求項24】
生産される前記組換えタンパク質は、酵素であることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項25】
生産される前記組換え酵素生成物は、リパーゼであることを特徴とする請求項24に記載の生産方法。
【請求項26】
生産される前記組換えタンパク質は、インシュリン前駆体、インシュリン又はその類似体又はその誘導体、グラルギン、エキセンディン、カルボキシペプチダーゼ及びリパーゼからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項27】
組換えインシュリン生成物を示すメタノール誘導性菌類種は、ピキア・パストリス、ピキア属種.サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエ、クルイヴェロマイシス種.又はハンゼヌラ・ポリモルファからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項28】
前記メタノール誘導性菌類種は、ピキア・パストリスであることを特徴とする請求項27に記載の生産方法。
【請求項29】
メタノール供給率は、1時間あたり液体培地で、多くとも20g/Lとすることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項30】
得られる最大生成物力価は、0.1g/Lを超えることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項31】
炭酸アミドの有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、誘導性、非誘導性タンパク質発現微生物が増殖することを含む、組換え、若しくは非組換えタンパク質生成物、それらの誘導体、若しくは類似体の生産方法。
【請求項32】
炭酸アミドは、尿素又はジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項33】
前記炭酸アミドは、尿素であることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項34】
生産される前記組換えタンパク質生成物は、G−CSFであることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項35】
生産される前記組換え生成物は、ストレプトキナーゼであることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項36】
前記タンパク質生成物は、リパーゼであることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項37】
炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、微生物を増殖することを含む二次代謝物の生産方法。
【請求項38】
生産される前記二次代謝物は、プラバスタチンであることを特徴とする請求項37に記載の生産方法。
【請求項39】
プラバスタチンのコンパクチンへの生物学的変換方法であって、
前記変換は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる培地において達成される生物学的変換方法。
【請求項40】
前記炭酸アミドは、尿素又はジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項39に記載の生物学的変換方法。
【請求項41】
コンパクチンのプラバスタチンへの生物学的変換は、少なくとも35%であることを特徴とする請求項40に記載の生物学的変換方法。
【請求項42】
上記請求項のいずれかの請求項から得られる組換えタンパク質生成物。
【請求項43】
インシュリン前駆体、インシュリン又はその類似体又は誘導体、グラルギン、エキセンディン、カルボキシペプチダーゼおよびリパーゼからなる群から選らばれる上記請求項のいずれかに記載の組換えタンパク質生成物。
【請求項1】
炭酸アミドの有効濃度が存在することに特徴づけられる、メタノール誘導性菌類種を用いる発酵によって、組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産のための発酵培地。
【請求項2】
前記炭酸アミドは、尿素又は、ジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素(isopropylpylideneurea)、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項3】
前記炭酸アミドは、尿素であることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項4】
前記炭酸アミドは、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えられることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項5】
炭酸アミドの残留濃度は、多くとも1Mまでであることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項6】
前記炭酸アミドの残留濃度は、1Mまでに保ち、かつ基礎塩類や微量元素の濃度は、対照培地の0.1Xから5Xまで可変されることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項7】
リン酸塩の取り込みは、改善されることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項8】
組換えインシュリン生成物を発現するメタノール誘導性菌類種は、ピギア・パトリス(Pichia pastoris)、ピキア属(Pichia)種、サッカロミセス属(Saccharomyces)種、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)種、又はハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の発酵培地。
【請求項9】
炭酸アミドの有効濃度が存在することに特徴づけられる、微生物を用いる発酵による組換えタンパク質、その誘導体又はその類似体の生産のための発酵培地。
【請求項10】
炭酸アミドの有効濃度が存在することに特徴づけられる、微生物を用いる発酵による二次代謝物の生産のための発酵培地。
【請求項11】
前記炭酸アミドは、尿素又はジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項12】
前記炭酸アミドは、尿素であることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項13】
前記炭酸アミドは、液状、散布液、粉末又はペレット形で加えられることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項14】
炭酸アミドの残留濃度は、多くとも10g/Lまでであることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項15】
前記微生物は、大腸菌(E.coli)、ストレプトマイセス(Streptomyses)種、アスペルギルス属(Aspergillus)種、リゾプス属(Rhizopus)種、ペニシリウム属(Penillium)種、及びリゾムコール属(Rhizomucor)種からなる群から選択されることを特徴とする請求項9又は10に記載の発酵培地。
【請求項16】
炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、メタノール誘導性インシュリン発現菌類種を増殖することを含む、組換えタンパク質、その誘導体、その類似体の生産方法。
【請求項17】
前記炭酸アミドは、尿素又はジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項18】
炭酸アミドは、尿素であることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項19】
生産される前記組換えインシュリン生成物は、IN−105であることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項20】
生産される前記組換えインシュリン生成物は、インシュリン前駆体、インシュリン又はその類似体又は誘導体であることを特徴とする請求項17に記載の生産方法。
【請求項21】
前記組換えインシュリン生成物は、インスリングラルギンであることを特徴とする請求項20に記載の生産方法。
【請求項22】
生産される前記組換えタンパク質は、環状、若しくは非環状ペプチドであることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項23】
前記組換えペプチドは、エキセンディンであることを特徴とする請求項22に記載の生産方法。
【請求項24】
生産される前記組換えタンパク質は、酵素であることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項25】
生産される前記組換え酵素生成物は、リパーゼであることを特徴とする請求項24に記載の生産方法。
【請求項26】
生産される前記組換えタンパク質は、インシュリン前駆体、インシュリン又はその類似体又はその誘導体、グラルギン、エキセンディン、カルボキシペプチダーゼ及びリパーゼからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項27】
組換えインシュリン生成物を示すメタノール誘導性菌類種は、ピキア・パストリス、ピキア属種.サッカロミセス属種、サッカロマイセス・セレビシエ、クルイヴェロマイシス種.又はハンゼヌラ・ポリモルファからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項28】
前記メタノール誘導性菌類種は、ピキア・パストリスであることを特徴とする請求項27に記載の生産方法。
【請求項29】
メタノール供給率は、1時間あたり液体培地で、多くとも20g/Lとすることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項30】
得られる最大生成物力価は、0.1g/Lを超えることを特徴とする請求項16に記載の生産方法。
【請求項31】
炭酸アミドの有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、誘導性、非誘導性タンパク質発現微生物が増殖することを含む、組換え、若しくは非組換えタンパク質生成物、それらの誘導体、若しくは類似体の生産方法。
【請求項32】
炭酸アミドは、尿素又はジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項33】
前記炭酸アミドは、尿素であることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項34】
生産される前記組換えタンパク質生成物は、G−CSFであることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項35】
生産される前記組換え生成物は、ストレプトキナーゼであることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項36】
前記タンパク質生成物は、リパーゼであることを特徴とする請求項31に記載の生産方法。
【請求項37】
炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる発酵培地において、微生物を増殖することを含む二次代謝物の生産方法。
【請求項38】
生産される前記二次代謝物は、プラバスタチンであることを特徴とする請求項37に記載の生産方法。
【請求項39】
プラバスタチンのコンパクチンへの生物学的変換方法であって、
前記変換は、炭酸アミドに有効濃度が存在することに特徴づけられる培地において達成される生物学的変換方法。
【請求項40】
前記炭酸アミドは、尿素又はジメチル尿素、ジエチル尿素、N−アセチルフェニル尿素、イソプロピルピリデン尿素、フェニル尿素又はそれらの組み合わせのような誘導体からなる群から選択されることを特徴とする請求項39に記載の生物学的変換方法。
【請求項41】
コンパクチンのプラバスタチンへの生物学的変換は、少なくとも35%であることを特徴とする請求項40に記載の生物学的変換方法。
【請求項42】
上記請求項のいずれかの請求項から得られる組換えタンパク質生成物。
【請求項43】
インシュリン前駆体、インシュリン又はその類似体又は誘導体、グラルギン、エキセンディン、カルボキシペプチダーゼおよびリパーゼからなる群から選らばれる上記請求項のいずれかに記載の組換えタンパク質生成物。
【図14】
【図15】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図15】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2011−510677(P2011−510677A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545615(P2010−545615)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000078
【国際公開番号】WO2009/113099
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(502315536)バイオコン・リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Biocon Limited
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000078
【国際公開番号】WO2009/113099
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(502315536)バイオコン・リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Biocon Limited
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]