説明

発酵培養液より得られるスクシネートからのピロリドンの製造方法

本発明は、化合物(II)又はその化合物(II)を含む組成物の製造方法、スクシンイミドを含む組成物、そして本発明の方法に従って製造される組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
コハク酸及びその誘導体は、大多数の、経済的関心のある生成物のための重要な前駆体であり、そして例えば、アルキド及びポリエスエル樹脂、溶剤又は多くの特殊化学製品での使用法が見出されている(非特許文献1を参照されたい)。ピロジジノンとしても時々知られているピロリドンは、γ−ブチロラクトンとアンモニア(2−ピロリドン)又はメチルアミン(N−メチルピロリドン)との反応、又は一般的にはアルキルアミン(N−アルキルピロリドン)との反応から石油化学的手段によって主として調製される。N−アルキルピロリドン、例えばNMPは、例えば、電子産業において溶剤としての使用法が見出され;2−ピロリドンは、重要な溶剤及び抽出剤であり、そしてN−ビニルピロリドンの製造での中間体として主に働くが、それぞれ重要なモノマーである。
【0002】
これまでコハク酸は、無水マレイン酸又はブタンジオールから石油化学的手段によって製造されるのが一般的であり、比較的小さな市場だけが存在していたが、ここ数年、発酵製造の分野で多数の研究がなされてきたことにより、近い将来、C4化学物質の中間体としてのコハク酸を工業的に発酵製造するのが可能になると考えられている(非特許文献2におけるMiller, Varadarjan)。コハク酸又はコハク酸塩を発酵培養液から分離する多数の精製方法が記載されてきた。コハク酸は、例えば、ろ過、結晶化、抽出、電気透析、クロマトグラフィによって発酵培養液から得られる(特許文献1〜11)。
【0003】
精製されたコハク酸及びその塩、又はこれらのエステルは、N−アルキルスクシンイミド(特許文献12及び13)に転化されるか、又は2−ピロリドン(特許文献14〜17)又はNMP(特許文献18〜21)に直接転化されるのが一般的である。
【0004】
ピロリドンをスクシンイミドから調製する方法についても記載されている。スクシンイミドそれ自体は、特許文献22により、ホスファイトの存在下、コハク酸及びアンモニアから調製できる。特許文献23では、コハク酸及び尿素からスクシンイミドを製造する方法を記載し、一方、非特許文献3によると、スクシンイミドは、ピリジン及びスルファミドの存在下、コハク酸からコハク酸モノアミドと一緒に製造可能である。スクシンイミドを製造する他の方法は、例えば、ホルムアミドを用いてコハク酸からスクシンイミドを調製する非特許文献4;スクシンイミドをコハク酸及び尿素から製造する方法を記載する非特許文献5、非特許文献6;並びに刊行物の非特許文献7(コハク酸及び炭酸アンモニウムからスクシンイミドを製造する方法)、非特許文献8(コハク酸モノアミドからスクシンイミドを製造する方法)及び非特許文献9(コハク酸ジアミドからスクシンイミドを製造する方法)に記載されている。
【0005】
非特許文献10は、反応蒸留、その後の蒸留によって化学的に純粋なジアンモニウムスクシネートをスクシンアミドに転化する方法を記載している。第1段階において、ジアンモニウムスクシネート水溶液を、溶融物が得られるまで濃縮し、その後の第2段階において、スクシンイミドを頂部から蒸留する。例えば、95%エタノール中でスクシンイミドを結晶化することにより、最大純度が達成される。
【0006】
特許文献24は、コハク酸をアンモニア及びトリアンモニウムホスフェートの存在下でスクシンイミドに化学的に転化する方法を記載している。
【0007】
特許文献25は、ジンアンモニウムスクシネートを水素化して、2−ピロリドンとN−メチルピロリドンの混合物を生成するN−メチルピロリドンの製造方法を記載している。
【特許文献1】US 5,034,105
【特許文献2】US 4,670,155
【特許文献3】US 5,814,498
【特許文献4】US 5,168,055
【特許文献5】US 5,958,744
【特許文献6】US 5,780,276
【特許文献7】US 5,143,834
【特許文献8】US 5,143,833
【特許文献9】US 5,412,126
【特許文献10】US 5,104,492
【特許文献11】US 4,670,155
【特許文献12】US 4,841,069
【特許文献13】US 4,814,464
【特許文献14】US 3,080,377
【特許文献15】US 3,198,808
【特許文献16】US 3,681,387
【特許文献17】US 4,263,175
【特許文献18】US 3,448,118
【特許文献19】US 5,157,127
【特許文献20】US 5,434,273
【特許文献21】WO02/102772
【特許文献22】JP 04282361
【特許文献23】SU 1317890
【特許文献24】DT 2313386
【特許文献25】WO 02/102772
【非特許文献1】Zeikus, Appl. Microbiol. Biotechnol, 1999, 545-552
【非特許文献2】Biotechnol. Prog. 1999, 15, 845-854
【非特許文献3】Zh. Obshch. Khim.; 20, 1950, 1145, 1149, 1191, 1195,
【非特許文献4】Yakugaku Zasshi; 62; 1942; 532, 169
【非特許文献5】Recl. Trav. Chim. Pays-Bas; 75; 1956; 164, 167
【非特許文献6】J. Indian Chem. Soc.; 10; 1933; 111, 114
【非特許文献7】J. Chem. Soc.; 1931; 443
【非特許文献8】Chem. Ber.; 23; 1890; 3285
【非特許文献9】Justus Liebigs Ann. Chem.; 49; 1844; 197
【非特許文献10】Clarke, Org. Synth. 1943, II, 562
【発明の開示】
【0008】
発酵により製造されるコハク酸及びその誘導体から転化生成物、例えばピロリドンを製造する方法において、反応工程を良好に実施するには、中間体を精製する必要が生じる場合がある。発酵培養液(Fermentationsbruhen)から得られるコハク酸又はその誘導体(例えば、塩又はエステル)を後処理する場合、例えば触媒損傷成分(栄養成分、代謝副生成物、細胞成分が考えられる)を十分に除去するために、装置及び時間のかかる処理工程、例えば、結晶化、沈殿、電気透析、抽出又はクロマトグラフィがしばしば提案されている。特に、コハク酸及びその塩に対して、必要により上述の処理工程を組み合わせることが記載されているので、これによるコストが、発酵性コハク酸を比較的低コストの生成物、例えばピロリドンに転化する工業的な方法において、これまで障害となっていた。更に、かかる後処理においては、発酵で用いられる塩基の再循環が不可能であるので、原料及び処理に関して追加のコストの要因となっている。
【0009】
従って、本発明の目的は、汚染されたスクシネート含有溶液、すなわち多くの副成分を含む溶液、例えば発酵培養液からスクシンイミド及び可能な転化生成物、特に置換及び無置換ピロリドンを安価に製造可能な方法を提供することにある。
【0010】
本発明における課題は、本願明細書に記載の発明及び特許請求の範囲で特徴付けられた実施形態による方法によって解決される。
【0011】
結果として、本発明は、スクシンイミド中間体又はスクシンイミドを含む組成物の製造方法であって、本発明の追加的な工程でピロリドンをも製造可能な方法に関する。本発明の方法は本明細書に記載の実施形態によって特徴づけられる。
【0012】
従って、一実施形態において、本発明は、化合物II:
【化1】

【0013】
又は化合物IIを含む組成物の製造方法であって、
少なくとも以下の工程:
(a)化合物I:
【化2】

【0014】
[式中、RはNH、H又は他のカチオンを表していてもよく、
はNH、H又は他のカチオンを表していてもよく、且つ
少なくともR又はRはNHを表す]
を含む発酵培養液(更に他の実施形態においては、例えばバイオマス除去、滅菌及び/又は濃縮によって前処理されている)を準備する工程、
(b)発酵培養液中の化合物Iを化合物IIに転化する工程、
(c)これと同時に、断続的に、又は次いで、アンモニア及び/又は水を蒸留除去する工程、
(d)次いで、蒸留工程(c)における底部生成物を減圧下に蒸留して、化合物IIを含む蒸留液を生成する工程、
(e)化合物IIを分離するか、又は工程(d)から得られる蒸留液を転化する工程、
を含む製造方法に関する。
【0015】
工程(c)において、反応で生成するか、又は培養液中に含まれる水は、部分的に又は完全に蒸留除去される。アンモニアは、R及びRがアンモニウムの場合にのみ生成される。更に、他の揮発性物質、特に、スクシンイミドより軽い物質、例えば、培養液中の副生成物として生成しうるエタノールを蒸留除去することも可能である。カチオンは、主として、発酵培養液又はその調製液中に一般的に含まれるカチオンである。他の実施形態において、カチオンは、1価のカチオンであり、例えば、以下のカチオンである:Na及び/又はK。他の実施形態において、カチオンは、2価のカチオンであり、例えばMg2+及び/又はCa2+である。他の実施形態においては、相互に異なるカチオン、例えばNa及び/又はKの混合物が存在する。他の実施形態において、カチオンは、2価のカチオン、例えばMg2+及び/又はCa2+及び/又は他のカチオン、例えば微量元素のカチオンである。
【0016】
驚くべきことに、本発明の方法において、化合物IIは、例えば、水素化において、一以上の他の精製工程を必要とすることなく化合物II及び組成物の他の成分を更に直接転化できるような組成物中に得られる。特に、「発酵培養液」出発材料を考慮に入れると、このことは驚くべきことである。有利なことに、本発明の方法では、これにより得られる混合物中に含まれる誘導体、例えばコハク酸モノアミドがピロリドンに転化され、本発明の方法の反応前に発酵培養液が多くの副成分を含むのにもかかわらず、スクシンイミドが驚くべきことに均一に転化される。
【0017】
発酵法で調製される代謝物質の後処理では、しばしば、特定の精製工程が必要とされる。なぜなら、培地における未転化の又は不完全転化の成分、培地における成分の分解生成物、生成された副生成物及びその分解生成物、溶解細胞により放出される成分及びその分解生成物、例えば塩、ポリサッカリド、タンパク質、ペプチド及びアミノ酸、アミン、アミド、有機酸、アルコール、アルデヒド及び/又はケトン、特定の分解生成物及び/又は他の有機及び無機化合物により、更なる化学反応が阻害されるか、又は中間体の精製なしでは、次の反応により可能になる精製効果が得られなくなるからである。有利には、化合物Iは熱安定性である。本発明の方法では、化合物Iの時間がかかり且つ高価な精製工程、例えばクロマトグラフィ、電気透析又は結晶化が省略される。生成されるアンモニアを水酸化アンモニウム水溶液の形で回収し、そして培養液中で再利用可能であることは更に有利である。本発明の方法は、発酵培養液における副成分による触媒毒のリスクを低減でき、そして最終生成物の蒸留精製を容易にする。なぜなら、培養液から得られる殆どの副生成物は化合物IIの蒸留又は化合物IIを含む組成物の蒸留において除去されるからである。
【0018】
従って、好ましい実施形態においては、化合物II及び/又は上述の誘導体を、更なる分離又は中間体の精製なしに、例えば以下に記載するように、特に水素化で反応させる。
【0019】
結果として、本発明の方法における他の実施形態においては、生成されるアンモニアを回収し、そして、例えば水酸化アンモニウム水溶液として、培養液中で再び使用するのが好ましい。
【0020】
化合物Iを化合物IIに転化することにより、中間体である化合物IIa:
【化3】

【0021】
[式中、RはH又は他のカチオンを表していてもよく、好ましくは、培地成分であるカチオンであり、例えば上述のカチオン又はNHを表す]及び/又は化合物IIb:
【化4】

【0022】
が生成される。
【0023】
本発明の方法において、化合物II及び/又はIIa及び/又はIIbの特定の割合は、パラメータの選択に応じて変更及び決定される。一実施形態において、温度間隔の上部領域における滞留時間は、より長時間であり、そして生成される水及びアンモニアは、主として完全に蒸留除去され、例えば少なくとも50%程度、好ましくは60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%又はそれ以上まで蒸留除去される。水は、完全に蒸留除去されるのが好ましい。従って、一実施形態において、本発明は、スクシンイミド及び/又はコハク酸モノアミド及び/又はコハク酸ジアミドを含む組成物を調製する本発明の方法に関する。
【0024】
本発明の方法の一実施形態においては、化合物IIを含む溶融物が得られるようにパラメータを選択する。従って、一実施形態において、温度は、溶融物の融点を超える。スクシンイミドの融点は、約120〜130℃の範囲であり;スクシンイミド含有溶融物の融点は、汚染度に応じて、スクシンイミドの融点未満である。一実施形態において、溶融物は、120℃を超える温度、例えば126℃を超える温度で保持される。
【0025】
一実施形態において、水及び/又はアンモニア及び他の比較的揮発性の物質の蒸留は、原則として、反応と並行して行われる。
【0026】
本発明によると、一実施形態において、スクシンイミドの蒸留は、水及びアンモニアの蒸留後に行われる。
【0027】
一実施形態において、本発明は、スクシンイミドと、更に少なくともコハク酸モノアミド、又は少なくともコハク酸モノアミド及びコハク酸ジアミドとを含む組成物に関する。処理パラメータの選択に応じて、本発明の方法により、スクシンイミド、コハク酸、コハク酸モノアミド及び/又はコハク酸ジアミドを異なる割合で含む混合物が生成する。残りの培養液副成分は、実質的に除去されるのが好ましい。有利なことに、本発明の方法においては、スクシンイミド及びコハク酸モノアミド及び/又はコハク酸ジアミドが工程(c)後の蒸留底部生成物中に存在する割合に関係なく、驚くべきことに、スクシンイミド、コハク酸モノアミド及び/又はコハク酸ジアミドが、更なる後処理無しの反応を可能にする形で提供可能な生成物として得られる。
【0028】
従って、一実施形態において、工程(d)から得られる蒸留液の反応又は工程(d)から得られる蒸留液の更なる処理は、更に後処理することなく行われる。特に、一実施形態において、工程(d)から得られる蒸留液を、更に後処理することなくピロリドンに転化させるか、又はコハク酸又はその塩若しくはコハク酸誘導体に解離させることが可能である。
【0029】
驚くべきことに、化合物II、IIa及び/又はIIbを含む工程(d)の蒸留による生成物を、還元によって更に直接、化合物IIIaに転化可能である。驚くべきことに、特に、化合物II並びにIIa及び/又はIIbを含む組成物の本発明での還元では、化合物II並びに化合物IIa及び化合物IIbが、可能な限り中間化合物IIを介して、化合物IIIaに転化される。従って、一実施形態においては、本願明細書に記載の本発明の更なる処理工程により、工程(d)から得られる蒸留液が、高収率で2−ピロリドンに転化される。
【0030】
必要により、化合物II、例えばスクシンイミド又はスクシンイミド、コハク酸、コハク酸モノアミド及び/又はコハク酸ジアミドを含む組成物を、溶融物から更に後処理、例えば更に精製してもよい。
【0031】
従って、一実施形態において、本発明は、化合物IIIa:
【化5】

【0032】
[式中、RはH(化合物IIIa)を表す]
又は化合物IIIaを含む組成物の製造方法であって、請求項1又は2に記載の方法における工程の後に、
(f)化合物IIを化合物IIIに還元する工程、
を含む製造方法に関する。
【0033】
驚くべきことに、これにより、本発明の方法を用いて、発酵培養液中に存在する化合物Iを、電気透析、結晶化、抽出等による化合物Iのコストのかかる精製を回避しつつ、化合物IIへの転化及び簡易な蒸留によって化合物IIIa及び/又はIIIbに転化するか、或いは化合物IIa及び/又はIIbに転化することができる。
【0034】
従って、特に、本発明の方法を用いて、上述したように置換又は無置換のピロリドン、特に2−ピロリドンを有利に調製できる。従って、一実施形態において、還元は、以下に記載のように、水素化である。
【0035】
本発明の方法は、安価で且つ時間のかかる精製工程のない、主として2−ピロリドンを含む組成物を提供する点において特に有利である。一実施形態において、本発明の方法に従って調製される2−ピロリドンは、NMPを含んでいない。
【0036】
従って、一実施形態において、本発明は、化合物IIIb:
【化6】

【0037】
[式中、化合物IIIaの場合、RはHを表し、そして
化合物IIIbの場合、Rは0又は1個のOH又はNH基を有する1〜20個の炭素原子を含む分岐又は非分岐アルキルを表す]
又は化合物IIIbを含む組成物、特に化合物IIIaと化合物IIIbを含む組成物の製造方法であって、請求項3に記載の方法における工程の後に、
(g)工程(f)中又は工程(f)の後に、化合物IIIaを完全に又は部分的にアルキル化して、化合物IIIbを生成する工程、
を含む製造方法に関する。
【0038】
置換ピロリドンを製造するために、好適なアルキル化剤、例えば以下のアルキル化剤を水素化に添加することが可能である。N−アルキルピロリドンの製造の場合、直鎖又は分岐のC1〜C20アルコール又はアルキルアミン、好ましくは直鎖又は分岐のC1〜C4アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はブタノール、又は対応のアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン又はプロピルアミンを使用するのが特に好ましい。従って、一実施形態において、アルキル化は、メタノール又はエタノールの存在下で行われる。
【0039】
従って、一実施形態において、本発明の方法で調製される2−ピロリドンは、置換ピロリドン、例えばヒドロキシエチルピロリドン又はN−メチルピロリドン(NMP)、又はこれらの混合物に転化される。有利には、処理パラメータの選択により、2−ピロリドンを、2−ピロリドンと置換ピロリドン、特にNMPとの所定の混合物に転化するか、或いは置換ピロリドンに実質的に完全に転化することができる。パラメータの選択により、反応度及びこれによる生成混合物中における生成物の分散度を決定することができる。一実施形態において、化合物IIは、アルキル化剤、例えばアミン、特にアルキルアミン又はヒドロキシアルキルアミン又はアルキルジアミンの存在下で転化される。化合物IIに対するアルキル化剤、例えばアルキルアミン又はヒドロキシアルキルアミン又はアルキルジアミンのモル比を高くすると、IIIaとの混合物中において化合物IIIbが高い割合で生成する。
【0040】
本発明の方法における一実施形態において、発酵培養液は、嫌気性又は好気性培養か、又は嫌気性及び好気性培養の組み合わせによって調製され、好ましくは、炭素源の培養、例えば油又はアルコール、特にグリセロール、エタノール、メタノール、L−ソルボース又はD−ソルボース、又は糖類、例えばC6又はC5糖類、特にグルコース、スクロース、アラビノース、キシロース又は純粋な形のCO若しくはH又は例えば、上述の物質の糖蜜若しくは混合物、又はその前駆体、例えばデンプン、例えば酵素と一緒のデンプン、又は他の考え得る炭素含有組成物、例えばセルロース、例えば古紙、廃木の形のセルロース、又はデンプン含有植物の成分の培養によって調製される。
【0041】
培養の場合、例えば、原核微生物又は真核微生物、例えば、大腸菌、Anaerobiopirillum succiniproducens、Actionbacillus suddinogenes、Mannheimia succiniproducens又はコハク酸を生成する他の細菌若しくは菌類を使用する。
【0042】
一実施形態においては、培養において、微生物、例えば大腸菌を、バイオマスを発生させるための好気増殖段階後、嫌気性条件に移す。かかる嫌気性段階において、スクシネートの合成が行われる。2種類の培養工程は、特に天然培地で実施できる。他の実施形態では、培養において、微生物、特に大腸菌の嫌気性段階での培養を、最少培地で行う。他の実施形態では、細胞を繰り返しの再利用し、そして天然又は最少培地で嫌気性増殖段階を行う。
【0043】
発酵は、撹拌型発酵槽、泡鐘カラム又はループ式反応器において実施できる。撹拌器の種類及び幾何学的形状を含む可能な実施形態の総括的な概要は、“Chmiel: Bioprozesstechnik: Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik, Band 1” [Chmiel: Bioprocess Technology: Introduction into Bioprocess Technology, volume 1]”に見出すことができる。プロセスの構成において、当該分野で知られているか、又は例えば “Chmiel, Hammes and Bailey: Biochemical Engineering”に説明されている以下の変形形態、例えばバッチ、フェドバッチ、繰り返されるフェドバッチ、又は、バイオマスを再利用する若しくは再利用しない連続発酵を通常利用できる。良好な収率を達成するために、生産菌株に応じて、酸素、二酸化炭素、水素又は窒素の散布を行うことが可能である/行う必要がある。
【0044】
本発明の方法における発酵培養液中での反応の前に、発酵培養液を前処理することが可能である:例えば、培養液のバイオマスを除去できる。バイオマスを除去する方法は、当業者に知られており、例えばろ過、沈降及び浮遊である。従って、バイオマスを、遠心機、分離器、デカンター、ろ過器を用いるか、又は浮遊装置を用いて除去可能である。価値ある生成物を得るために、バイオマスの実質的に完全な洗浄、例えば膜分離の形での洗浄を行うことが好ましい。かかる方法は、発酵培養液中のバイオマス含有量及びバイオマスの特性、そして更にバイオマスと価値ある生成物との相互作用に基づいて決定される。
【0045】
一実施形態において、発酵培養液は、滅菌又は低温殺菌され得る。
【0046】
他の実施形態においては、発酵培養液を濃縮する。かかる濃縮又は蒸発は、必要によりバッチで又は連続で実施できる。圧力及び温度の範囲は、一方で、生成物の損傷が生じず、他方で、装置及びエネルギーの最小限に抑えた使用を必要とするように選択されるべきである。
【0047】
特に、多段階蒸発の圧力及び温度段階を巧みに選択することにより、エネルギーを節約することが可能となる。
【0048】
この場合、装置に関して、撹拌槽、流下薄膜型蒸発器、薄膜型蒸発器、強制循環フラッシュ蒸発器及び自然若しくは強制循環型の他の蒸発器型を利用可能である。
【0049】
従って、「発酵培養液」なる用語は、後処理されなかった又は例えば本願明細書に記載のように後処理された、発酵法に基づく水溶液を意味すると理解される。
【0050】
処理パラメータの選択に応じて、本発明の方法では、工程(b)による反応及び蒸留において、特にコハク酸、コハク酸モノアミド、スクシンイミド及びコハク酸ジアミドの生成物を含む混合物を生成する。それぞれの生成物の割合は、例えば、滞留時間、温度、又は水及びアンモニア含有量の選択によって異なりうる。残りの発酵副成分は、蒸留において実質的に除去される。驚くべきことに、コハク酸、コハク酸モノアミド、スクシンイミド及びコハク酸ジアミドの混合物を高収率にてピロリドン、特に2−ピロリドンに転化することができる。本発明の方法の一実施形態において、反応における反応パラメータは、蒸留溶出液の温度が融点を超えて、好ましくは130℃を超えて保持される場合に、主としてスクシンイミドを含む溶融物が生成されるように選択される。
【0051】
スクシンイミドを製造する方法は、連続で又はバッチで実施できる。
【0052】
連続法において、反応及び蒸留は、以下の条件下で行われる:
(i)好ましくは、バイオマスを除去し、及び/又は発酵培養液を精製する、
(ii)好ましくは、発酵培養液を濃縮する、
(iii)副生成物、例えばHO及びNHを蒸留除去し、そして約100〜約300℃、更に好ましくは約150〜約200℃、最も好ましくは約170℃の温度にて、例えば標準圧力下に、溶融物が存在するまで発酵培養液中で化合物Iを転化させる、
(iv)好ましくは、約150〜約300℃、好ましくは約200〜約300℃、更に好ましくは約250℃で、例えば本質的に約2時間未満、例えば約0.5〜約1時間に亘って、例えば標準圧力下にて後反応させる、
(v)化合物II、適宜、化合物IIa及び化合物IIbを、例えば、副成分を除去して精製するために、例えば約150〜300℃、好ましくは170℃を超え270℃未満で、更に好ましくは約220〜約250℃の温度(但し、温度は、勿論、圧力の他に、組成物、副成分及び除去の度合い応じて異なる。)並びに例えば標準圧力又は減圧下、好ましくは0.01〜1000ミリバール、好ましくは1〜100ミリバールの圧力下で蒸留する。
【0053】
一実施形態において、反応及び蒸留は、以下の条件下、バッチ形式で行われる:
(i)好ましくは、バイオマスを除去し、及び/又は発酵培養液を精製する、
(ii)好ましくは、発酵培養液を濃縮する、
(iii)副生成物、例えばHO及びNHを蒸留除去し、そして室温〜約300℃の温度、好ましくは標準圧力下にて化合物Iを転化させる、
(iv)好ましくは、約150〜約300℃、好ましくは約200〜約300℃、更に好ましくは約250℃で、例えば2時間未満、更に好ましくは約0.5〜約1時間に亘って、例えば標準圧力下にて後反応させる、そして
(v)好ましくは、次に、例えば蒸留により副成分を除去して精製するために、反応混合物を、減圧下で、約150〜約300℃、好ましくは170〜250℃、更に好ましくは、例えば約185〜約195℃にて、例えば標準圧力又は減圧下で、好ましくは約0.01〜約1000ミリバールの圧力、好ましくは1〜100ミリバール、更に好ましくは約25ミリバールの圧力下で過剰蒸留する。
【0054】
一実施形態において、本発明の方法は、特に上述の圧力及び上述の温度で上述の全ての処理工程(i)〜(iii)を含む。各々の場合に好ましい条件下で上記の方法を行うのが好ましい。
【0055】
工程(i)の反応は、例えば、撹拌槽又は他の反応器にて、種々の蒸発器型、例えば流下薄膜型蒸発器において、蒸留塔において、又はこれらの組み合わせにおいて実施できる。
【0056】
反応性乾燥器として、噴霧乾燥器又は噴霧造粒機を利用可能であり、その場合、生成物は固体の状態で存在し、そして精製又は更に反応させる場合、その後に再び溶融又は溶解させる必要がある。
【0057】
工程(iii)で除去される副成分は、アセテート、ラクテート、ホルメート及び培地成分(例えば、塩、タンパク質、糖類、アミノ酸、酵母エキス)であるのが好ましい。出発材料に応じて、スクシンイミドの含有量は、50%、60%又は70%を超え、好ましくは80%を超え、さらに好ましくは85%を超える。例えば、連続型において、純度85%以上のスクシンイミドは、底部生成物の希釈剤、特にPluriol P600及び最少培地と混合させたDASを用いて得られ、そして発酵培養液を使用する場合、バイオマスを除去し(最少培地を用いて発酵)合成DASを追加した後、87%以上のスクシンイミドが得られる。
【0058】
バッチ型においては、最少培地の追加されたDASを使用する場合、純度70〜98%又はそれ以上のスクシンイミドが得られる。
【0059】
スクシンイミドへの転化及びその蒸留に代えて、ジアンモニウムスクシネートから副成分を除去するための精製は、膜処理、特に電気透析によって、クロマトグラフィ又は抽出によって、或いは当該分野で公知の他の処理方法によって、コハク酸を放出しそして結晶化することによって達成され得る。
【0060】
一実施形態において、1〜50%、好ましくは30%未満の底部希釈剤(Sumpfverdunner)、例えばポリアルキレングリコール、例えばPluriol(登録商標)、特にPluriol P600(登録商標)、又はシリコーン油、例えばBaysilone(登録商標)又はパラフィン油を発酵培養液に添加する。
【0061】
従って、一実施形態において、本発明は、化合物II及び底部希釈剤、例えばポリアルキレングリコール、例えばPluriol(登録商標)、特にPluriol P600(登録商標)、又はシリコーン油、例えばBaysilone(登録商標)、又は例えばPluriol P600と一緒にパラフィン油を含む組成物、例えば溶融物に関する。
【0062】
十分に粘性を低減し、そして反応混合物の撹拌性を保持することによって反応及び蒸留が改善するのに十分な底部希釈剤を使用するのが好ましい。
【0063】
一実施形態において、本発明は、本発明の方法により得られる組成物に関する。
【0064】
特に、置換又は無置換のピロリドンを製造する場合、本発明の方法でDASからスクシンイミドを製造するが有利である。なぜなら、不完全な転化の場合でさえ、DAS、コハク酸モノアミド及びジアミド並びにスクシンイミドの混合物を更に処理可能だからである。従って、本発明の方法における一実施形態において、化合物II、又は化合物IIと必要により化合物IIa及び化合物IIbとを含む組成物を化合物IIIに還元するのは、水素化、例えば、懸濁又は固定された形で配置されていてもよい均一系又は不均一系触媒の存在下で水素を用いる接触水素化、或いは複合水素化物を用いる水素化、或いは、例えば、メタノール又はイソプロパノール等のアルコールがアルデヒド又はケトンを生成しつつ水素化のための水素を放出する移動水素化によって行われる。
【0065】
好ましい実施形態において、化合物IIの還元は、接触水素化であり、気相又は液相中で実施できる。
【0066】
有用な反応器には、水素化に慣用される全ての種類が含まれ、例えば、バッチ式の反応器、例えば撹拌器付き反応器、又は連続反応器であり:反応器として、例えば、管型反応器、管束反応器、軸型反応器又は流動床反応器を使用可能である。
【0067】
水素化は、一段階又は数段階にて、例えば主反応器及び後反応器を用いて実施できる。この場合、主反応器は、少なくとも液相中において、最大の転化を達成するために、熱除去のために外部循環で、および好ましくは直列の後反応器を用いて運転されるのが好ましい。液相又は気相中で用いられる反応圧力は、以下に記載の圧力であってもよい。
【0068】
ピロリドンの製造において、水素化は、アンモニアを添加して実施できるが、それは必須ではない。アンモニアを添加すると、γ−ブチロラクトンの生成を抑制できるので、反応溶出液の後処理が容易になる。使用される反応物質に基づき、アンモニアを、10倍以下、好ましくは5倍以下、更に好ましくは2倍以下のモル過剰で使用する。
【0069】
後処理において、発生し、そしてさらに完全に転化しようとする生成物を再循環させて、収率を上昇させるのが一般的である。かかる生成物は、例えばイミド又はビスアミドである。
【0070】
本発明の方法では、水素化触媒として、カルボニル基の水素化に好適な通常不均一系の(均一系でもよい)触媒を使用できる。かかる触媒を、固定床の形で、又はその他に、移動形(可動形)で、例えば流動床反応器において使用してもよい。これらの例示は、例えば、Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Volume IV/1c, 16〜26頁に記載されている。かかる水素化触媒の中で、1種以上の、元素周期表第11、6、7、8、9、10、13、14又は15族の元素、特に銅、レニウム、マンガン、コバルト、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、パラジウム、鉄、白金、インジウム、スズ及びアンチモンを含む触媒が好ましい。銅、コバルト、ルテニウム又はレニウムを含む触媒が特に好ましい。
【0071】
本発明の方法で用いられる触媒は、例えば、いわゆる沈殿触媒である。かかる触媒は、その触媒活性成分を、その塩溶液、特にその硝酸塩及び/又は酢酸塩の溶液から、例えばアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物及び/又は炭酸塩溶液、例えば難溶性の水酸化物、酸化物水和物、塩基性塩又は炭酸塩を添加することによって沈殿させ、その後、これにより得られた沈殿を乾燥し、そしてその沈殿を、一般的には約300〜約700℃、特に約400〜約600℃でのか焼によって対応の酸化物、混合酸化物及び/又は混合原子価酸化物に転化し、これを、一般的には約50〜約700℃、特に約100〜約400℃にて水素又は水素含有気体で処理することにより当該溶融物及び/又は低酸化状態(低酸化数)の酸化化合物に還元し、そして実際の、触媒活性形に転化することによって調製される。一般に、還元は、更に水が生成しなくなるまで行われる。担体材料を含む沈殿触媒の製造において、触媒活性成分を当該担体材料の存在下で沈殿させることができる。触媒活性成分は、担体材料と同時に当該塩溶液から沈殿させるのが有利である。
【0072】
本発明の方法においては、担体材料に析出された水素化を触媒する金属又は金属化合物を含む水素化触媒を使用するのが好ましい。触媒活性成分の他に、更に担体材料を含む上述の沈殿触媒とは別に、本発明の方法に好適な担体材料は、一般に、接触水素化成分を、例えば含浸によって担体材料に適用した担体材料である。触媒活性金属を担体に適用する方法は、通常重要ではなく、種々の方法で実施できる。触媒活性金属をかかる担体材料に、例えば当該元素の塩又は酸化物の溶液又は懸濁液を含浸させ、乾燥し、次に、還元剤、好ましくは水素又は複合水素化物によって金属化合物を還元して、当該金属又は低酸化状態化合物を生成することにより、適用することが可能である。触媒活性金属をかかる担体に適用する他の手段は、担体に、熱分解容易な塩、例えば硝酸塩、又は熱分解容易な錯体、例えば触媒活性金属のカルボニル又はヒドリド錯体を含浸させる工程と、そしてこれにより含浸された担体を、吸着した金属化合物を熱分解するために、300〜600℃の温度に加熱する工程とからなる。このような熱分解は、保護ガス雰囲気下にて開始するのが好ましい。好適な保護ガスは、例えば、窒素、二酸化炭素、水素又は希ガスである。触媒活性金属を、蒸着又はフレーム溶射によって触媒担体に析出させることも可能である。かかる担持触媒における触媒活性金属の含有量は、原則として、本発明の方法の成功にとって重要ではない。当業者には、担持触媒における触媒活性金属含有量をより高くすることにより、低含有量と比較して、時空収量を向上できることは自明である。一般に、触媒活性金属含有量が、触媒全体に対して、約0.1〜約90重量%、好ましくは約0.5〜約40重量%である担持触媒を使用する。かかる含有量データは担体材料を含む触媒全体に基づいているが、異なる担体材料は、異なる単位体積重量及び比表面積を有しているので、これらの数値は、本発明の方法の結果に対して悪影響を与えない限り、かかるデータ未満又はかかるデータを超えていてもよい。複数の触媒活性金属を特定の担体材料に適用してもよいことも認識されるであろう。触媒活性金属を、例えば、DE-A 2 519 817, EP-A 1 477 219及びEP-A 285 420の方法によって担体に適用することも可能である。上述の文献による触媒において、触媒活性金属は、合金の形で存在し、熱処理及び/又は還元、例えば上述の金属の塩又は錯体を含浸させることによって得られる。
【0073】
沈殿触媒及び担持触媒の両方の活性化は、反応の開始時に存在する水素によってその場で実施できるが、これらの触媒を使用前に別個に活性化するのが好ましい。
【0074】
担体材料として、一般に、アルミニウムの酸化物、及びチタンの酸化物、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、アルミナ、例えばモンモリロナイト、シリケート、例えばケイ酸マグネシウム又はケイ酸アルミニウム、ゼオライト、例えばZSM−5又はZSM−10ゼオライト、及び活性炭を使用してもよい。好ましい担体材料は、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム及び活性炭である。異なる担体材料の混合物を本発明の方法で使用する触媒の担体として使用できることが認識されるであろう。
【0075】
本発明の方法で使用可能な不均一系触媒は、例えば、以下の触媒である:活性炭上のコバルト、二酸化ケイ素上のコバルト、酸化アルミニウム上のコバルト、活性炭上のレニウム、二酸化ケイ素上のレニウム、活性炭上のレニウム/スズ、活性炭上のレニウム/白金、活性炭上の銅、銅/二酸化ケイ素、銅/酸化アルミニウム、亜クロム酸銅、亜クロム酸銅バリウム、銅/酸化アルミニウム/酸化マンガン、銅/酸化アルミニウム/酸化亜鉛、そして更にDE-A 3 932 332, US-A 3 449 445, EP-A 44 444, EP-A 147 219, DE-A 3 904 083, DE-A 2 321 101, EP-A 415 202, DE-A 2 366 264, EP 0 552 463及びEP-A 100 406による触媒である。
【0076】
スクシンイミド及びジアンモニウムスクシネートから出発して置換ピロリドンを製造する場合、水素化は、対応のアルコール又はアミンを添加して実施できる。
【0077】
他の実施形態において、本発明の方法では、2−ピロリドンを気相又は液相中でアルキル化する。好ましい実施形態において、2−ピロリドンを気相でアルキル化して、分岐若しくは非分岐のC1〜C20N−アルキルピロリドン又は分岐若しくは非分岐のN−ヒドロキシアルキルピロリドン又は分岐若しくは非分岐のアミノアルキルピロリドンを生成する:N−メチルピロリドン(NMP)及びN−エチルピロリドンにアルキル化するのが特に好ましい。この場合、ピロリドンをアルコール、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン又はジアルキルアミンと、100〜400℃、好ましくは140〜370℃、更に好ましくは180〜350℃の温度及び0.2〜50バール、好ましくは0.7〜40バール、更に好ましくは0.8〜20バールの圧力(絶対圧)下で反応させる。アルコールが好ましい。アルキル化剤は、過剰に添加されるのが好ましく、すなわち、ピロリドンに対して、1.01〜10モル当量で添加される。1.1〜3モル当量であるのが好ましい。酸性又は塩基性部位を有する触媒を使用する。一般に、このような触媒は、酸化物触媒、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン又は混合酸化物、例えばアルミナ、ゼオライトである。
【0078】
置換ピロリドンを製造するために、特に、以下に記載のアルキル化剤を水素化において添加することも可能である。N−アルキルピロリドンを製造するために、直鎖又は分岐のC1〜C20アルコール又はアルキルアミン、好ましくは直鎖又は分岐のC1〜C4アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はブタノール、或いは対応のアミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン又はプロピルアミンを使用するのが特に好ましい。従って、一実施形態において、アルキル化は、メタノール又はエタノールの存在下に行われる。
【0079】
本発明により、例えばNMPを製造するために、メタノール又はメチルアミンの存在下で水素化することが可能である。アルキル化剤をより過剰にすると、対応の生成物の割合は高くなる。ピロリドンと対応の置換ピロリドンの混合物が所望ではない場合、ピロリドンを、蒸留による後処理後、反応に再循環させてもよい。
【0080】
一実施形態において、本発明の方法では、スクシンイミドを2−ピロリドンに水素化する。
【0081】
一実施形態において、還元は、以下の条件下:
(i)約80〜約330℃の範囲、好ましくは約120〜約300℃の範囲、更に好ましくは約150〜約280℃の範囲の温度、
(ii)カルボニル基の水素化に好適な均一系又は不均一系触媒、好ましくは1種以上の、元素周期表の第11、6、7、8〜10、13、14又は15族の元素を含む触媒;好ましくは、銅、レニウム、マンガン、コバルト、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、パラジウム、鉄、白金、インジウム、スズ及びアンチモンを基礎とし、更に好ましくは銅、コバルト、ルテニウム又はレニウムを基礎とする触媒を用いて、及び/又は
(iii)気相においては、ほぼ標準圧力〜約130バール、好ましくは約2〜約100バール、更に好ましくは約5〜約60バールの圧力、又は液相においては約20〜約400バール、好ましくは約40〜約300バール、更に好ましくは約120〜約290バールの圧力下、及び/又は
(iv)アンモニアの存在下又は不存在下、好ましくは、反応物質に対して、約10倍以下の過剰のアンモニアの存在下、更に好ましくは約5倍以下の過剰のアンモニアの存在下、特に好ましくは約2倍以下の過剰のアンモニアの存在下、
で行われる気相又は液相水素化である。
【0082】
一実施形態において、上記の方法は、上述の圧力及び上述の温度の条件下、上述の触媒を用いて行われる。かかる方法は、各々の場合に最も好ましい条件下で行われるのが好ましい。
【0083】
従って、一実施形態において、水素化は、約150〜約280℃及び約5〜約60バールで、銅、コバルト、ルテニウム又はレニウムを基礎とする触媒による触媒作用で、反応物質に対して、約1〜約2倍過剰のアンモニアの存在下にて気相中で行われる。
【0084】
本発明の他の実施形態において、本発明の方法は、以下の工程:すなわち、1〜20個の炭素原子と1又は2個のOH又はNH基、好ましくは1又は2個の炭素原子と1個のOH又はNH基を有する分岐又は非分岐の飽和炭化水素で化合物IIIaをアルキル化する工程を含む。
【0085】
アルキル化は、液相又は気相中で実施できる。
【0086】
例えば、アルキル化は、以下の条件下:
(i)約50〜約600℃、好ましくは約100〜約500℃、更に好ましくは約150〜約450℃の温度、
(ii)ほぼ標準圧力〜約100バール、好ましくはほぼ標準圧力〜約50バール、更に好ましくはほぼ標準圧力〜40バールの圧力、
(iii)化学量論量又は化学量論量を越える量、好ましくは化学量論量を越える量、更に好ましくは、1モルのピロリドンに対して約1〜約10モル、更に好ましくは、1モルのピロリドンに対して、約1〜約5モルの割合のアルキル化成分を用い、そして
(iv)塩基性、中性又はルイス−若しくはブレンステッド−酸性の酸化物又は内部酸化物(Mischoxid)又は混合酸化物、或いは金属、好ましくはルテニウム、コバルト、ニッケル又は銅を触媒として用いる、
気相中にて実施できる。
【0087】
例えば、本発明のアルキル化は、以下の条件下:
(i)約50〜約600℃、好ましくは約100〜約500℃、更に好ましくは約150〜約450℃の範囲の温度、
(ii)標準圧力〜約325バール、好ましくは約10〜約250バール、更に好ましくは約20〜約200バールの圧力、
(iii)化学量論量又は化学量論量を越える量、好ましくは化学量論量を越える量、更に好ましくは、1モルのピロリドンに対して約1〜約10モル、更に好ましくは、1モルのピロリドンに対して、約1〜約5モルの割合のアルキル化成分を用い、そして
(iv)塩基性、中性又はルイス−若しくはブレンステッド−酸性の酸化物又は内部酸化物又は混合酸化物、或いは金属、好ましくはルテニウム、コバルト、ニッケル又は銅を触媒として用いる、
液相中にて実施できる。
【0088】
アルキル化は、液相中で行うのが特に好ましい。
【0089】
一実施形態において、上記の方法は、上述の圧力及び上述の温度の条件下、上述の触媒を用いて行われる。各々の場合に最も好ましい条件下で行われるのが好ましい。
【0090】
アルキル化での転化が不完全な場合、反応物質を、蒸留精製(例えば、バッチ式又は連続式蒸留)の後、再循環させることが可能である。この場合、存在する場合には低沸点物、例えば水、アミン、アンモニア、アルコールを第1のカラムにおいて最初に除去するのが一般的であり、そして適宜、再度の精製後に、適宜、再循環させる。その後、残りの生成物流を、適宜、他のカラムにおいて更に分離し、その場合、存在する場合には式IIIで表される未転化のピロリドンを除去し、そして再循環させる。
【0091】
一実施形態において、本発明の方法では、置換又は無置換のピロリドンを製造する。一実施形態において、上述の工程を組み合わせて、N−ヒドロキシアルキルピロリドン又はN−アルキルピロリドン、例えばN−メチルピロリドン(NMP)を製造する。一実施形態において、2−ピロリドンとN−メチルピロリドン(NMP)との混合物を製造する。
【0092】
従って、一実施形態において、本発明は、以下の工程:すなわち、DAS溶液を、生産菌株としての大腸菌、Anaerobiopirillum succiniproducens又はActionbacillus suddinogenesを用いてグルコースから発酵製造する工程、バイオマスを除去する工程、滅菌又は低温殺菌する工程、そして発酵培養液を濃縮する工程を含む方法に関する。
【0093】
溶液中でDASを閉環して、HO及びNHの蒸発と同時にスクシンイミドを生成し、そして蒸留によって水素化を妨害する副成分を実質的に完全に除去することによりスクシンイミドを精製するが、その際の反応及び精製は、以下の条件:すなわち、約150℃にて、溶融物が存在するまでHO及びNHをほぼ標準圧力下で蒸留除去し、その後、適宜、後反応のために、約250℃以下に更に加熱する、条件下で連続法にて行われる。蒸留によって副成分を除去するための精製は、約190℃の温度及び約20〜約30ミリバールの圧力下で行われる。次の工程で、製造されたスクシンイミド及びコハク酸モノアミド及び/又はジアミドを、カルボニル基の水素化に好適な触媒、好ましくは銅、コバルト、ルテニウム又はレニウムを基礎とする均一系又は不均一系触媒を用い、反応物質に対して、約2倍以下の過剰のアンモニアの存在下で、液相中、約250℃及び約250バールの条件下、溶融物中での接触水素化によって2−ピロリドンに転化する。次の工程で、製造された2−ピロリドンを、約150〜約450℃の温度、ほぼ標準圧力〜約6バールの圧力下、1モルのピロリドンに対して、1モルを超え、約5モルまでの割合のメタノールを用い、例えば、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅を含むか又は金属の添加のない酸化物触媒による触媒作用にて、気相中でN−メチルピロリドンにアルキル化する。
【表1】

【0094】
表1:方法の簡素化された概要:DAS→スクシンイミド→2−P→NMP、規定しなければ、例えば濃縮、特に滅菌。閉環を蒸留精製と共に、ブロックに示した。
【0095】
以下の実施例により、本発明を説明するが、限定する手法で解釈されるものではない。
【実施例】
【0096】
[実施例1]
コハク酸の発酵製造
培地及び培養条件:Vemuri, Eiteman and Altman, 2002、培地に、アンピシリン及びpH調節剤としてのNHOHを追加した。
【0097】
1.1:万能細胞バンク及び機能細胞バンクの調製
スクシネート生産菌株のサンプルをLB+グルコース寒天で縞状にし、そして37℃で20時間培養し、その後、+4℃で保存する。その後、選択されたコロニーをLB+グルコース液体培地で更に複製する。LB+グルコース液体培地は、以下の組成を有している:10g/L(リットル)のトリプトン、5g/Lの酵母エキス、10g/LのNaCl及び10g/Lのグルコース。LB+グルコース寒天は、更に、15g/Lの寒天を含む。既に調製された調製液を、Bacto LB Broth, Miller又はBacto LB-Agar, MillerとしてBecton Dickinson社(ハイデルベルグ)から購入可能である。10g/Lのグルコースを添加することにより、規格化された培地を得る。100mLのエルレンマイヤーフラスコ中で得られた20mLの培養物を、撹拌型培養器(Infors社製, Multitron型)において、37℃及び180rpmの条件下にて15時間培養する。次に、細胞懸濁液を実験室用遠心機(Heraeus社製, Biofuge Primo R; Rotor #7590, 50mLのGreiner PP遠心管, 滅菌)において、8500rpmにて15分間遠心分離する。細胞ペレットを、20%のグリセロールを追加した10mLの滅菌LB+グルコース液体培地に再懸濁させる。これにより得られた細胞懸濁液を、滅菌条件下でアリコートにおいて1mL以下にし、そして−70℃で保存する。かかる培養物を万能細胞バンクとして使用する。
【0098】
機能細胞バンク(workig cell bank)を製造するために、滅菌LB+グルコース液体培地を、100mLの滅菌エルレンマイヤーフラスコ中において滅菌条件下で20mLずつに分けて分割する。次に、これらのフラスコを100μLの上述の万能細胞バンクと一緒に滅菌条件下で培養する。撹拌型培養器(Infors社製, Multitron型)において、37℃及び180rpmの条件下にて15時間培養する。次に、細胞懸濁液を実験室用遠心機(Heraeus社製, Biofuge Primo R; Rotor #7590, 50mLのGreiner PP遠心管, 滅菌)において、8500rpmにて15分間遠心分離する。細胞ペレットを、20%のグリセロールを追加した10mLの滅菌LB+グルコース液体培地に再懸濁させる。これにより得られた細胞懸濁液を、滅菌条件下でアリコートにおいて1mL以下にし、そして−70℃で保存する。かかる培養物を機能細胞バンクとして使用する。
【0099】
1.2:スクシネート含有発酵培養液の調製
スクシネート生産菌株の機能細胞バンクの1.0mLアリコートを冷凍室から取り出し、室温条件下で10分間保存する。その100μLを滅菌条件下で抜き取り、そして、滅菌条件下、LB+グルコース寒天プレートに接種ループで分配する。37℃で20時間培養した後、細胞材料のプレートを滅菌条件下で抜き取り、前培養フラスコ(4個のシケイン(chicane)を有する2000mLの丸底フラスコ、300mLの前培養培地を含む)に接種するために使用する。前培養フラスコを、培養撹拌器(Infors社製, Multitron型)において37℃及び110rpmで6時間培養する。本培養を開始するために、3.5Lのバッチ培地に、250mLの前培養物を接種する。6個のブレードディスクスターラー及び4枚のバッフル、pH及びpO電極を有する5Lの撹拌器付きバイオリアクター(Infors社製, ISF100)において、37℃で120時間培養する。最初の5.5時間内(好気生育段階)で、900rpmの一定速度で且つ滅菌空気(3.0L/分)を散布し、その後、250rpmで且つ滅菌COガス(0.18L/分)を散布して培養する。pHは、開始時に20%のNaOH溶液及び20%のHCl溶液で7.0に調節する。5.5時間から、NaOH溶液の代わりに、25%のNHOH溶液を使用し、pHを6.8に調節する。供給培地は、発酵培養液中のグルコース濃度が常に10〜30g/Lの範囲となることを保証する固定計量分布に従って計量導入する。供給物の計量導入には、はかり(Satorius社製, LP6200S)、計量モジュール(Satorius社製, YFC02Z-V2)及びポンプ(Meredos社製, HP60)を使用する。培養中、光学密度の経過は、光度計(Pharmacia Biotech社製, Ultrospec 2000)を用いて、600nm(OD600)の測定波長にて測定する。細胞非含有上澄み液中のグルコース及びスクシネートの濃度(Braun注射器を用いて両方の培養物をろ過, 2mL注入及びMillipore社製の注射器フィルターアタッチメント, Millipore GP; φ 33 mm; 細孔幅0.22μm; PES Express膜)は、HPLC(固定相:Aminex HPX-87 H, 300 x 7.8 mm [Biorad社製]、移動相:5 mM H2SO4, RI 検出)によって定量化する。培養の最後に、発酵培養液を3Lのエルレンマイヤーフラスコに排出し、そしてオートクレーブ中において121℃にて20分間滅菌処理する。更に加工処理する前に、バイオマスを、例えば、実験室用遠心機を用いて除去するのが好ましい。
【0100】
前培養培地は、表2に記載の成分を含む。前培養培地を製造するために、22.0gのグルコース一水和物、10.0gの酵母エキス、20.0gのトリプトン、0.9gのKHPO・3HO、1.14gのKHPO、0.25gのCaCl・2HO、3.0gの(NHSO、0.5gのMgSO・7HO、20mLのビオチン溶液(50mg/L、溶剤としての脱塩水)及び1mLのチアミン溶液(1g/L、溶剤としての脱塩水)を0.95Lの脱塩水に添加する。撹拌しながら、pHを、2NのNaOH溶液を用いて7.0に調節し、その後、溶液を、脱塩水を用いて1.0L以下にする。0.22μmの細孔幅のMillipore Express PLUS膜(Millipore社製)を用いてStericupsに通過させる滅菌ろ過によって滅菌を行う。
【表2】

【0101】
本培養に用いるバッチ培地は、表3に規定される成分を含む。バッチ培地を製造するために、154.0gのグルコース一水和物、35.0gの酵母エキス、70.0gのトリプトン、3.15gのKHPO・3HO、3.99gのKHPO、0.88gのCaCl・2HO、10.5gの(NHSO、1.75gのMgSO・7HO、70mLのビオチン溶液(50mg/L、溶剤としての脱塩水)及び3.5mLのチアミン溶液(1g/L、溶剤としての脱塩水)を3.30Lの脱塩水に添加する。撹拌しながら、pHを、2NのNaOH溶液を用いて7.0に調節し、その後、溶液を、脱塩水を用いて3.5L以下にする。0.22μmの細孔幅のMillipore Express PLUS膜(Millipore社製)を用いてStericupsに通過させる滅菌ろ過によって滅菌を行う。
【表3】

【0102】
供給培地の製造のために、550gのグルコース一水和物を、本培養に用いる1Lの脱塩水に溶解させる。0.22μmの細孔幅のMillipore Express PLUS膜(Millipore社製)を用いてStericupsに通過させる滅菌ろ過によって滅菌を行う。
【0103】
[実施例2]
スクシンイミドを得るためのDASの反応蒸留
2.1:
約13g/Lのジアンモニウムスクシネート(=DAS)を有する1030gの発酵培養液に、約95%の合成ジアンモニウムスクシネート58.5gを追加した。発酵培養液の乾燥質量は、約7%であった[ここでは、バイオマスを除去しなかった]。
【0104】
補充された発酵培養液を2Lのフラスコ中でロータリエバポレータにて濃縮した。濃縮後、約150mLの溶融物が残り、これを、PTFEスターラー、温度計、電熱板及び蒸留装置を備える500mLの四ツ口フラスコに移した。標準温度下で、蒸留を、175℃で5時間行い、その後、温度を底部温度で250℃まで上昇させ、そこで約45分間保持した。その後、約25バールまで減圧し、そして26.7gの生成物を、172〜182℃の蒸留温度で蒸留した。
【0105】
生成物は、88%のスクシンイミドを含んでいた。コハク酸、モノアミド又はジアミドは検出されなかった。
【0106】
2.2:
約88%の純度の合成DAS約120g及び101gのPluriol P600を、約30g/LのDASを有する1450gの発酵培養液に添加した。発酵培養液を、Pluriolと一緒に、ロータリエバポレータにて濃縮した。317gの蒸留溶出液を、電熱板、温度計及び固体蒸留装置(solid distillation system)を備える500mLの四ツ口フラスコにおける加熱された滴下漏斗に移した。四ツ口フラスコに、100gのPluriol P600を最初に充填した。Pluriolを240〜250℃に予備加熱した。濃縮された発酵培養液を、加熱されたフラスコに対して滴下し、そして23gの生成物を、減圧下(35ミリバール)、底部温度を310℃まで徐々に昇温させて同時に蒸留した。
【0107】
生成物は、64%のスクシンイミド、約4%のモノアミド及び約20%のコハク酸又はDASを含んでいた。
【0108】
2.3:
684gの25%アンモニア水を、PTFEスターラーを有する2000mLの二口フラスコに最初に充填した。その後、約600gのコハク酸を約30℃で10分以内にて添加した(ドライアイスで冷却)。混合物を、全てのコハク酸が溶解するまで1時間撹拌した。その後、アンモニア水でpHを7に調節した。反応溶液に対して、最少培地を添加し、その後、反応混合物をロータリエバポレータで濃縮した。
【0109】
残留物を、PTFEスターラー、温度計、電熱板及び蒸留装置を有する2000mLの四ツ口フラスコに移した。反応混合物を、標準圧力下、250℃の底部温度まで徐々に加熱し、そして水を最初に蒸留除去した。混合物を250℃で更に1時間撹拌した。その後、底部を170℃に冷却し、真空にした。26ミリバール及び179〜185℃の蒸留温度で、486gの生成物を蒸留除去した。生成物は、92%のスクシンイミドを含んでいた。ジアミド、モノアミド及びコハク酸は、副生成物として検出されなかった。
【0110】
かかる実験の一変形形態においては、DASのスクシンイミドへの転化を、薄膜蒸発器中で実施した。10%又は50%の合成DAS溶液を使用し、薄膜蒸発器によって2段階にて処理した。第1段階において、水及びアンモニアを標準圧力下で蒸留除去した。部分的に転化された溶融物が底部に流れ込んだ。その後、底部を250℃に加熱して、DASからスクシンイミドを生成する反応を約1時間で終了させた。第2段階において、底部生成物を薄膜蒸発器によって処理し、そしてスクシンイミドを、頂部から蒸留除去した。ジャケット温度は、約30ミリバールの圧力にて230℃であった。底部希釈剤としてPluriol E600を添加しても、第2段階におけるスクシンイミドの蒸留の結果に対して影響はなかった。
【0111】
薄層蒸発器のジャケット温度は、500L/時の供給速度条件下における50%のDAS溶液の場合に170℃であり、1時間あたり1リットルの供給速度条件下における10%溶液の場合に220℃であった。
【0112】
上述の反応は、合成DASだけでなく、最少培地中のDAS及びDASを追加した発酵溶出液に対しても実施した。良好な取り扱いのために、部分的に転化されたスクシンイミド溶融物を、それぞれPlurio E600と混合した。実験の結果を表4にまとめた。
【表4】

【0113】
[実施例3]
水素化
全ての実施例で使用した触媒は、水素流での使用前に活性化され、そして水素活性化の前に以下の組成を有していた:63.4%のCoO、18.1%のCuO、6.8%のMn、3.1%のMoO、0.15%のNO、3.3%のHPO、残りは100%以下の水。触媒の調製は、例えばDE-A 2 321 101又はDE-A 3 904 083に記載されている。
【0114】
3.1:スクシンイミドの調製及びその水素化
50g/時の15%ジアンモニウムスクシネート水溶液を、200℃及び標準圧力下、薄膜蒸発器中において、主として水(約30g/時)を含む蒸留留分と、主としてスクシネートを含む底部生成物とに10時間で分離させた。底部生成物を、次に、薄膜蒸発器中において、約120℃の供給温度の溶融物として(供給は約40g/時)、今度は、250℃及び50ミリバールの条件下にて反応させた。これにより得られた蒸留液(約13g/時)は、少ない含有量の水及びアンモニアを一緒に有するスクシンイミドであった。スクシンイミドに加えて、底部生成物は、最初のジアンモニウムスクシネート溶液に由来する不純物を含んでいた。全体として、約65gのスクシンイミドを得て、これを、オートクレーブ中、40mLの25%アンモニア水の存在下、10gの触媒にて24時間内で水素化した。反応溶出液中において、ピロリドンを、定量ガスクロマトグラフィ分析によって95%の収率で見出した。更に、約2%のスクシンイミド、0.1%未満のγ−ブチロラクトン、1%のピロリドン及び多数のごくわずかな物質が存在していた。
【0115】
3.2:ピロリドンのNMPへの転化
外部加熱可能な反応器中、55gを超える酸性の酸化アルミニウムで、約20g/時の、ピロリドンとメタノールの1:1混合物(触媒の上流側において20mLのガラスリング床にて蒸発)を300℃で連続的に転化した。反応溶出液中に、48%の未転化ピロリドン及び23%のメタノール、そして更に27%のNMPが見出された。
【0116】
3.3:ピロリドンのNMPへの転化
実施例3.2と同様にして、酸性の酸化アルミニウムの代わりに、56gの、80%のAl/20%のSiOからなる触媒を使用した。300℃で、48.1%のピロリドン、34.2%のメタノール及び16.2%のNMPが見出された。350℃まで温度を上昇させると、18%のピロリドン、17%のメタノール及び61.3%のNMPが溶出液中に見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物II:
【化1】

又は該化合物IIを含む組成物の製造方法であって、
少なくとも以下の工程:
(a)化合物I:
【化2】

[式中、RはNH、H又は他のカチオンを表していてもよく、
はNH、H又は他のカチオンを表していてもよく、且つ
少なくともR又はRはNHを表す]
を含む発酵培養液を準備する工程、
(b)発酵培養液中の化合物Iを化合物IIに転化する工程、
(c)これと同時に、断続的に、又は次いで、アンモニア及び/又は水を蒸留除去する工程、
(d)次いで、蒸留工程(c)における底部生成物を減圧下に蒸留して、化合物IIを含む蒸留液を生成する工程、
(e)化合物IIを分離するか、又は工程(d)から得られる蒸留液を転化する工程、
を含む前記製造方法。
【請求項2】
化合物IIが、更に、少なくとも
【化3】

[式中、RはH又は他のカチオンを表していてもよい]、及び/又は
【化4】

を含む組成物中に得られる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物IIIa:
【化5】

[式中、化合物IIIaの場合、RはHを表す]
又は該化合物IIIaを含む組成物の製造方法であって、請求項1又は2に記載の方法における工程の後に、
(f)化合物IIを化合物IIIaに還元する工程、
を含む前記製造方法。
【請求項4】
化合物IIIb:
【化6】

[式中、化合物IIIaの場合、RはHを表し、そして
化合物IIIbの場合、Rは0又は1個のOH又はNH基を有する1〜20個の炭素原子を含む分岐又は非分岐アルキルを表す]
、又は化合物IIIaと化合物IIIbを含む組成物の製造方法であって、請求項3に記載の方法における工程の後に、
(g)工程(f)中又は工程(f)の後に、化合物IIIaを完全に又は部分的にアルキル化して、化合物IIIbを生成する工程、
を含む前記製造方法。
【請求項5】
ピロリドン、ヒドロキシエチルピロリドン及び/又はN−メチルピロリドン(NMP)を製造する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
転化及び蒸留が、以下の条件下:
(i)必要により、バイオマスを除去し、及び/又は発酵培養液を精製する、
(ii)必要により、発酵培養液を濃縮する、
(iii)副生成物を蒸留除去し、そして100〜300℃の温度にて化合物Iを転化させる、
(iv)必要により、150〜約300℃で後反応させる、
(v)化合物IIを、又は化合物IIと化合物IIa及び/又は化合物IIbとを、150〜300℃の温度及び標準圧力又は約0.01〜約1000ミリバールの圧力下で蒸留除去する、
連続法にて行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
転化及び蒸留が、以下の条件下:
(i)必要により、バイオマスを除去し、及び/又は発酵培養液を精製する、
(ii)必要により、発酵培養液を濃縮する、
(iii)副生成物を蒸留除去し、そして室温〜300℃の温度にて化合物Iを転化させる、
(iv)必要により、蒸留液を150〜約300℃で2時間未満に亘って後反応させる、
(v)必要により、反応混合物を、標準圧力又は減圧下で且つ150〜300℃の温度で過剰蒸留する、
バッチ法にて行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
化合物Iの反応前又は化合物IIの蒸留前の発酵培養液が、該培養発酵液に添加された底部希釈剤を50%以下で有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
化合物IIの化合物IIIへの還元が水素化である請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
還元が、以下の条件下:
(i)80〜330℃の範囲の温度、
(ii)1種以上の、元素周期表の第11、6、7、8〜10、13、14又は15族の元素を含み、カルボニル基の水素化に好適な均一系又は不均一系触媒を用い、及び/又は
(iii)気相においては標準圧力〜130バールの圧力、又は液相においては20〜400バールの圧力、
で行われる気相又は液相水素化である請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
以下の工程:
1〜20個の炭素原子と1又は2個のOH又はNH基を有する分岐又は非分岐の飽和炭化水素で化合物IIIaをアルキル化する工程、
を含む請求項4〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アルキル化が、以下の条件下:
(i)50〜600℃の温度、
(ii)標準圧力〜100バールの圧力、
(iii)化学量論量又は化学量論量を越える量のアルキル化成分を用い、そして
(iv)塩基性、中性又はルイス−若しくはブレンステッド−酸性の酸化物又は内部酸化物又は混合酸化物、或いは金属を用いる、
気相にて行われる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アルキル化が、以下の条件下:
(i)50〜600℃の温度、
(ii)標準圧力〜325バールの圧力、
(iii)化学量論量又は化学量論量を越える量のアルキル化成分を用い、そして
(iv)塩基性、中性又はルイス−若しくはブレンステッド−酸性の酸化物又は内部酸化物又は混合酸化物、或いは金属を用いる、
液相にて行われる請求項11に記載の方法。
【請求項14】
スクシンイミド及び底部希釈剤を含む組成物。
【請求項15】
請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法により得られる組成物。

【公表番号】特表2008−531067(P2008−531067A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518536(P2008−518536)
【出願日】平成17年12月17日(2005.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013630
【国際公開番号】WO2006/066839
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】